バトルオブフラワーズ⑬〜氾濫するグリード
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「惑星に住む次世代人類の皆様、そして猟兵の皆様、はじめましてですわ」
突如、キマイラフューチャーの惑星全域に同時に放送されたその映像と声は、驚きをもって迎えられた。
「このわたくしが、かつてシステム・フラワーズを作り上げたちょうてんさい、『ドン・フリーダム』でございますわ」
スマイルの仮面で顔を覆い隠した、花弁を纏う長髪の女性。
それが、ついに猟兵たちの前に表れた、キマイラフューチャーのオブリビオン・フォーミュラの姿であった。
彼女は語る。自らの目的はシステム・フラワーズの『修理』であると。
この修理が完了すれば、この世界の人々はコンコンコンするだけで、望むものがなんでもコンコンコンされる。コンコンコンとはそうあるべきではないのかと。
そして、その時はもう間近に迫っているのだと。
「我慢しなくていいのですよ。欲望は止めなくていいのです」
愉しげに、優しげに、艶やかに。その女は人々に、猟兵に語りかける。
「オール・フォー・フリーダム! 自由が、この世の全てなのです!」
彼女は欲望を肯定する。そしてきっと誰よりも、彼女の欲望は止まらない。
たとえ過去となり、その身が骸の海に沈んでも止まらなかったのだろう。
だからこそ、彼女を止められるのは、猟兵たちだけなのだ。
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「バトルオブフラワーズへの参戦に感謝します。リムは現在の戦況を報告します」
グリモアベースに集った猟兵たちの前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(人間の精霊術士・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「皆様の活躍によって6つの『ザ・ステージ』ならびに三体の怪人幹部は突破され、戦局もいよいよ大詰めとなりました。キマイラフューチャーを救うための最後の障害は、この世界のオブリビオン・フォーミュラ『ドン・フリーダム』です」
怪人軍団を束ねていたかの大首領を撃破すれば、キマイラフューチャーに新たなオブリビオンが出現することは無くなる。逆にもし彼女がこの世界の中枢たる『システム・フラワーズ』の掌握――本人曰く「修理」を完了すれば、世界の終局、カタストロフが到来してしまう。
「残された猶予は決して多くはありません。我々猟兵も全力で挑む必要があります」
ここが最後の勝負所だと、無表情なリミティアの瞳は静かに燃えていた。
「ドン・フリーダムの能力はある意味でシンプルであり、そして極めて凶悪です。彼女はこれまで猟兵が撃破してきた『3幹部の能力』を使用します」
マニアック怪人エイプモンキーの『想像力の及ぶあらゆるものを創造する能力』。
カワイイ怪人ラビットバニーの『絶対無敵バリア』。
スピード怪人ウィンドゼファーの『風を操るユーベルコード』。
「ドン・フリーダムはその3つの能力を、3幹部以上の実力と精度で使いこなします。当然、撃破の難易度も幹部より遥かに高くなるでしょう」
だが、猟兵たちに勝機が無いわけではない。3幹部の能力を使用してくるということは、その攻略法もまたこれまでの3幹部と同じだという事だ。例えばエイプモンキーの創造力には「反撃に反撃するマニアックな理論や戦術」が、ラビットバニーのバリアには「エモいものを見せて無効化する」のが突破口になる。
「これまでの戦いで培った経験、知識、機転、そのすべてが彼女を撃破するカギとなります。持てる力や仲間との連携、その全てを尽くせば、必ず勝機はあるはずです」
彼女がこの戦いにおける最強の敵であることは間違いない。それでも彼女は「絶対」でも「無敵」でもない。猟兵の振るう刃は、きっと彼女の命に届く筈だ。
そしてもはや言うまでもなく、幹部たちと同様、ドン・フリーダムも倒されても骸の海から何度でも復活する力を持つ。そしてその対処法も、これまでの幹部と同じ。
「彼女の復活能力が許容値を超えるまで、短期間に繰り返し撃破すること。ドン・フリーダムはその能力の特性上、これまでに倒された幹部たちの分まで復活能力が弱体化しているらしく、その戦力はそう高いものではありません」
とは言っても彼女こそ怪人軍団の大首領。一度撃破するだけでも相当の困難を要するだろうが、他の猟兵のチームと合わせて繰り返し挑めば、復活限界まで彼女を追い詰めることも不可能ではない。
「これが正真正銘、キマイラフューチャーの運命を決める戦いです。皆様の全力を出し尽くしてください」
まっすぐな期待と信頼の意志を瞳に宿して猟兵たちを見つめながら、リミティアは手のひらにグリモアを浮かべ、最終決戦の地への道を開く。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」
戌
こんにちは、戌です。
本シナリオの攻略目標は「⑬『ドン・フリーダム』」となります。
非常に困難な戦いが予想されます。以下の注意事項に目を通したうえで、失敗も覚悟の上で挑戦してください。
敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
加えて、ドン・フリーダムは使用する能力値別に違う対処が必要です。これらに対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。
POW:絶対無敵バリアを展開します。エモいものを見せれば無効化できます(エモいの基準はラビットバニーと同じ)。
SPD:風で足場を崩してきます。
WIZ:猟兵のユーベルコードの弱点を見抜き、確実に反撃するマシンを作り出してきます。 その反撃マシンに反撃する方法を考えなければいけません。
これらの能力はそれぞれ「ラビットバニー」「ウインドゼファー」「エイプモンキー」と同じですが、ドン・フリーダムは彼ら以上の実力者です。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
どうか悔いのない戦いを。
第1章 ボス戦
『ドン・フリーダム』
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POW : 赤べこキャノン
【絶対無敵バリア展開後、赤べこキャノン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : マニアックマシン
対象のユーベルコードに対し【敵の死角から反撃するマシン】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:由依あきら
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
エミリー・ローレライ
「キマイラ最終戦…出し惜しみはしない…」【崩壊因子:『 』】で試験管に入った崩壊因子を神鉄の剣に付与。敵の先制攻撃には【Not Responding】が自動的に発動して打ち消す。『戦闘知識』『2回攻撃』『属性攻撃:崩壊』『シールドバッシュ』『盾受け』『カウンター』『薙ぎ払い』『時間稼ぎ』を使いながら剣や盾で攻撃する。「肉体、精神、空間、概念を崩壊させる…当たるだけでいい…それだけで侵食が始まる…」
「キマイラ最終戦……出し惜しみはしない……」
純白の翼を羽ばたかせ、戦いの先陣を切ったのはエミリー・ローレライ(麺の神に愛された天使・f05348)。右手に神鉄の剣を握り締めた彼女は、左手で一本の試験管の封を開けると、その中身を刀身に付与していく。
「親の研究成果を使わせてもらう……」
世界を渡る研究者であったというエミリーの親が開発した【崩壊因子:『 』】。本当に危ない時に使うよう言い含められていたそれを、この決戦において彼女は解禁する。
「あらあら、ずいぶんヤバヤバなものをお持ちですの。ちょうてんさいはわたくし一人だけでは無かったようですわね」
ドン・フリーダムの軽口に構うことなく、エミリーは攻撃を開始する。初手は銀色に輝く守護者の大盾によるシールドバッシュ。
「おっと危ないですわん」
敵は大盾の一撃を軽い身のこなしで躱すが、これは牽制。本命は続く神鉄剣による斬撃。そこに付与された因子は、あまねく万象全てに侵食し崩壊に導く神の力。
「肉体、精神、空間、概念を崩壊させる……当たるだけでいい……それだけで侵食が始まる……」
「本当にとってもヤバヤバですわね。一体どんな欲望がソレを生み出したのか、とっても興味がありますわん」
想像力によって虚空から剣を創造し、崩壊因子の刃を受け止めようとするドン・フリーダム。ならばその剣ごと侵食するまでと、エミリーは剣を握る手に力を込める。
――だが、エミリーの想定に反して、彼女の剣を受け止めたドン・フリーダムの剣は、崩壊することなく因子の侵食に耐えていた。
「その因子が無差別に全てを崩壊させているなら、ヤバすぎて扱えないでしょう」
ドン・フリーダムが創造したのはエミリーと同じ新鉄製の剣。因子を付与された武器と同じ材質であれば、その侵食に耐性を持つと読んだのだ。
「まあ完全に侵食を防げるわけではないみたいですけど。でも十分ですわん」
スマイルの仮面の裏でそう呟いた直後、エミリーの死角から同様の新鉄製の刀剣が矢のように襲い掛かる。その瞬間、エミリーのユーベルコード【Not Responding】が自動的に作動。敵のユーベルコードの効果を虚無に――「なかったこと」に書き換える奇跡を起こす――筈だった。
「残念、予測済みですわん」
本来ならかき消えるはずのドン・フリーダムの剣は、そのままエミリーの身体を深々と貫いた。
「なぜ……」
ドレスアーマーを深い紅に染めながら、呟くエミリー。重傷を負った彼女にドン・フリーダムは種明かしをする。
「その剣には【虚無】の属性を付与しておきましたわん。それならあなたの因子でも崩壊させられないし、虚無化することもできないでしょう」
だってそれは初めから"存在しない"のだから、と。常識を超えた天才性と知識、そして欲望を備えたオブリビオンは笑う。
「どんなヤバい能力にも、想像力を働かせれば突破口は見つかりますわん。皆様がモンキーやバニーをぶっ殺したように」
「そう……それでもせめて、一矢は報いる……」
この世界の人々を護るという、覚悟と意志の力を振り絞ったエミリーは、もう一度神鉄の剣を振るう。既に決着はついたと油断していたドン・フリーダムはそれ避けきれずに、指先に浅く傷を負う。
「あらら。ブーメランぶん投げちゃったかしら」
傷口から侵食する因子による崩壊を止めるため、即座に指を切り落とすドン・フリーダム。その間にエミリーは重い体に鞭打って、前線から後退していくのだった。
苦戦
🔵🔴🔴
ボアネル・ゼブダイ
ようやく敵の首魁のお出ましか
手強そうではあるが…ここまで来ればあと一息という所か
奴を倒すためにはまず無敵バリアを崩さなければなるまい
そのためには…時期的に怖い話だな
これは私が実際にUDCアースで体験した話だが…ある暑い日のことだった…
(中略)
…最後に、後部座席に乗っていた友人がこう言った
「アレは身体が半分なんじゃない、右半身だけ真っ黒に焼けこげていたんだ」と
敵のバリアが崩れたら早業で人工血液セットから吸血しUCを発動
攻撃力と身体能力を高め、赤ベコキャノンの砲撃を第六感で見切り、カウンターを発動
黒剣グルーラングで一撃を与える
自由であれ、と人々に強いる時点で
貴様もそれを拒む人々の不自由でしかない
「ようやく敵の首魁のお出ましか。手強そうではあるが……ここまで来ればあと一息という所か」
後退する味方への追撃を阻止すべく、敵の前に立ちはだかったのはボアネル・ゼブダイ(Livin' On A Prayer・f07146)。
「あと一息だなんて勿体無い。まだまだ楽しめますわよん? わたくしがシステム・フラワーズの修理を完成させれば」
「悪いが待つつもりはない」
「つれないですわん」
なら仕方ないと、ドン・フリーダムは赤べこキャノンをどこからともなく取り出し、その身に絶対無敵バリアを纏う。
(奴を倒すためにはまず無敵バリアを崩さなければなるまい)
怪人幹部ラビットバニーとの戦いでバリア能力と相対した経験のあるボアネルは、その対抗手段がエモいものを見せて動揺させる事だと知っている。
(そのためには……時期的に怖い話だな)
後退の時間稼ぎにも丁度良いだろうと判断した彼は、敵がキャノンのトリガーを引く寸前で口を開く。
「これは私が実際にUDCアースで体験した話だが……」
「え? なんですわの?」
定番の語り出しから唐突に始まった話に、思わずドン・フリーダムは攻撃の手を止めて耳を傾けてしまう。
「ある暑い日のことだった……」
「え、なにもしかして怪談ですわの? ヤダ、わたくしオバケとか苦手ですわ!」
猟兵たちにとって幸いな事に、ドン・フリーダムのエモさの判定基準はラビットバニーとどっこいどっこいだった。
あと、オブリビオンもある意味オバケみたいなものだろうとツッコむ者もここには居なかった。
「……最後に、後部座席に乗っていた友人がこう言った」
「どきどき……」
「『アレは身体が半分なんじゃない、右半身だけ真っ黒に焼けこげていたんだ』と」
「ぎゃぁぁぁぁぁー!! おっそろしいですわー!!!!」
ボアネルが怪談を締めると、オーバーリアクション気味な悲鳴と同時に、ドン・フリーダムを護っていたバリアがパリンと割れる。その瞬間を逃さず、彼は懐から人工血液セットを素早く取り出すと、パックを噛み破って中に詰まった赤い液体を啜る。
「血の香りに狂う忌まわしき半身よ……人の理を外れた悍ましき吸血鬼の力よ……我が正義を示すためにその呪われた力を解放せよ!」
ユーベルコード【血呪解放】。ヴァンパイアの力を解禁した彼の口からは鋭い犬歯が覗き、瞳は煌々と赤く輝き、むせ返るような鉄錆と薔薇の香りが辺りに漂う。
ここからが本当の勝負だ。黒剣グルーラングを構えた青年は花の足場を力強く蹴ると、ガクブル震えているドン・フリーダムに挑み掛かる。
「コレ今晩夢に出るやつですわ……って、ブルッてる場合じゃなかったですわ!」
向けられた敵意で我に返ったドン・フリーダムは、慌てて赤べこキャノンを構え直すと照準を合わせ、発砲。空中で分裂し降り注ぐ砲弾の雨を、ボアネルは研ぎ澄まされた第六感によって見切り、躱す。
避けられた砲弾は花の足場に着弾し、凄まじい爆音と衝撃が戦場を揺るがす。だが、ボアネルは臆することなく砲弾の雨を駆け抜ける。
「自由であれ、と人々に強いる時点で、貴様もそれを拒む人々の不自由でしかない」
糾弾の言葉と共に振るわれた黒剣の一撃は、血呪の力を得て鋭さを増し――無防備極まるドン・フリーダムの身体を真一文字に斬り裂いた。
「ふふ……わたくしは何も強いてなどいません。人はいずれ皆、自分の欲望のままに自由を望むことでしょう」
傷を負いながらも、ドン・フリーダムの態度から今だ余裕の色は消えない。
戦いはまだ、始まったばかりだった。
成功
🔵🔵🔴
須藤・莉亜
「ドーンって感じな敵さんだなぁ。流石ボスって感じ?」
風はマントさんを盾にするのと、血飲み子と奇剣を持たせた悪魔の見えざる手で【武器受け】。
吹っ飛ばされた後は、落下中にUCで腐蝕竜さんを召喚して、彼にキャッチしてもらおうかな。
腐蝕竜さんの巨体を盾ににしながら、血を捧げて強化したLadyで狙撃。体は悪魔の見えざる手に支えてもらってしっかり狙ってこう。
チャンスがあれば【吸血】したいとこ。腐蝕竜さんには頑張って近くまで進んで欲しいね。
近くまで行けたら、腐蝕竜さんにぶん投げてもらって直接【吸血】するのも楽しそう。
外れたら悪魔の見えざる手にキャッチしてもらって、そのまま離脱。
「ドーンって感じな敵さんだなぁ。流石ボスって感じ?」
「ドンですもの。ドンドンいきますわ!」
続いて現れた須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)の呟きにに、ドーンと胸を張りながら応じるドン・フリーダム。彼女がさっと腕を振ると、巻き起こった風は瞬時に荒れ狂う暴風と化して莉亜に襲い掛かる。
技自体はウインドゼファーのレボリューション・ストームと同様だが、その規模と威力は比較にならない。風が通り過ぎたあとの花の足場は文字通り消し飛び、後には何も残らない。
莉亜を防風から守る盾となったのは、彼の血を与えられた「マントさん」と、彼と契約した「悪魔の見えざる手」だった。
手足の生えたマントさんはその身を広げて風除けとなり、見えざる手は白い大鎌「血飲み子」と無色透明の奇剣【極無】を交差して暴風を受け止める。だが、それでもドン・フリーダムの操る風を防ぎ切ることはできず、莉亜の身体は風圧に押し負けて吹き飛んだ。
「着地よろしく、腐蝕竜さん」
彼は冷静にユーベルコードを発動すると、落下していく自らの真下に巨大なドラゴンゾンビを召喚する。喚び出された眷属は腐敗した翼を広げて空を舞うと、落ちてきた主をキャッチしてその窮地を救った。
「あらあら、ずいぶんゴツくてグロいのが現れましたわね。でも良い的ですの!」
ドン・フリーダムは再び腕を振って、破壊の暴風を莉亜と腐蝕竜に叩きつける。莉亜は腐蝕竜の巨体を盾にして風を凌ぎながら、白い対物ライフル「Lady」に弾丸と自らの血を装填する。
(狙撃のチャンスはそう何度もないよね。落ち着いて――今だ)
風が若干弱まったタイミングで腐蝕竜の陰から身を乗り出すと、悪魔の見えざる手によって姿勢を安定させながら、暴風の中心に立つ女へと照準を合わせ――発砲。
契約者の血を捧げることによって射程と威力の増した銃弾は、狙い過たず標的の身体を撃ち抜いた。
「あらあららん?」
ダメージを負ったことで集中が乱れたのか、ドン・フリーダムの操る風が弱まる。その好機を逃すまいと、腐蝕竜は莉亜を両腕で抱えながら全速力で空を翔けた。
「ちょっ、臭うので来ないで欲しいですわ!」
鼻をつまむような女のジェスチャーと共に暴風の勢いが再び増し、腐蝕竜の進撃はあと数メートルの距離で止まる。どれだけ必死に翼を羽ばたかせても、押し戻されないのが精一杯。暴風の刃は竜の腐肉を容赦なく削り取っていく。
「ここまで近くまで行けたなら、あとは直接行こうか」
莉亜は崩れていく腐蝕竜に命じる。思いっきりぶん投げて、と。
その命令は忠実に果たされ、腐蝕竜は残されたありったけの力を奮って、莉亜の身体をドン・フリーダム目掛けて投げつけた。
「まさかの人間砲弾ですわの?!」
暴風に切り裂かれながらも風圧の壁を突き破り、自分めがけてすっ飛んでくる莉亜に驚愕するドン・フリーダム。
「やっと届いた。じゃあ、いただきます」
ダンピールの牙を剥き出しにした莉亜は、無防備な女の首筋にがぶりと食らいつくと、その血を啜る。
――濃い。甘味も苦味も辛味も酸味も旨味もごちゃ混ぜの、欲望でドロドロと濁った血の味がした。
「吸い過ぎたら胃もたれ起こしそうだなぁ、これ」
目的を果たした彼は口元を拭うと、それ以上風の勢いに逆らわず吹き飛ばされることで、戦線から離脱していった。
成功
🔵🔵🔴
エルス・クロウディス
ちょっと久々な感じの劉迅さん、出番ですよ。
<早業>で<騎乗>してぇ! 反転してぇ!
「さよーなりぃ――――――――!」
<ダッシュ>で<逃げ足>だぁー!
いやいや、理由があってね。
まず距離がいるんですよ。
これ、貴重な平時から構えてる状態の武器ですから。
聿氣統穿のための、<時間稼ぎ>が――!
これなるは一つの鏃。
駆け回るほどに力をため、その力を推進力に、さらに力を。
相乗を重ねながら、敵を<串刺し>にせんと駆け抜ける物。
さぁ。
クロークの闇套を穂先に捩り被せ、壊態で補強して、<武器受け>としての補強も完了だ。
今なら足も必要ない、機動は<空中戦>に移った。
風<属性攻撃>を纏いながら、鋼の魔弾が飛んでくるぞぉ!
「やってくれますわね、猟兵の皆様。みんながぶっ殺されちゃうわけですわ」
一つ一つ、積み重なっていく負傷や流血。ドン・フリーダムが敵への警戒レベルを一段引き上げた時、戦場に姿を現したのはエルス・クロウディス(昔日の残響・f11252)。
「あんたを倒せばこの戦争も終わりだ。いっちょ気合い入れますかね」
「ふふ、良いですわ。それもまた欲望。どうぞ自由にかかっていらっしゃいませ!」
彼の宣言にしごく楽しげな口ぶりで答えた女は、再び暴風を巻き起こす。
「ちょっと久々な感じの劉迅さん、出番ですよ」
荒れ狂う風に吹き飛ばされる前に、エルスは自らの得物たる「骸装」を騎乗形態の「劉迅」に変形させると、さっと跨って機首を反転させ。
「さよーなりぃ――――――――!」
疾風もかくやというスピードで、迫り来る風から全速力で逃げ始めた。
「あらあら?」
遠ざかっていく敵を見たドン・フリーダムは、解せぬと言わんばかりに首を傾げ。
「何をしに来たのかしら? 如何にも胡散臭いですし、逃しませんわ」
その周囲に暴風を纏ったまま、猛然とエルスを追い始めた。
「いやいや、理由があってね。まず距離がいるんですよ」
背後から追ってくる敵意と風を肌で感じながら、エルスは劉迅のアクセルをいっぱいに吹かしつつ答える。
「これ、貴重な平時から構えてる状態の武器ですから」
劉迅に跨がりながら疾走する、この「構え」をなるべく長く維持する必要が彼にはあった。ユーベルコード【聿氣統穿】――骸装の力を最大まで引き出した一撃を放つための、時間稼ぎが。
人機一体と化したエルスと劉迅は、例えるなら一つの鏃。駆け回るほどに力をため、その力を推進力に、さらに力を。相乗を重ねながら、敵を串刺しにするその瞬間まで、戦場を駆け続ける。
「ふむふむ、分かってきましたわ。そのまま走り回らせるのは危険なようですわね」
疾走する劉迅に力が収束していくのを感じ取ったドン・フリーダムは、その機動を妨害するように暴風を放つ。エルスは巧みに劉迅を駆って暴風を回避していくが、吹き荒れる風が花の足場を吹き飛ばしていくのは止められない。
ドン・フリーダムの狙いは足止め。足場を破壊して駆け回る余地をなくしてしまえば、後はどうとでも蹂躙できる。その推測と戦術は正しかった。
「――だが残念、ちょっと遅かったな」
十分に力を収束させた劉迅は、もはや足場を必要とせず。風を纏った機体はそのまま宙へ舞い上がり、機動は空中戦に移る。
そのままエルスはクロークとして纏う骸装「闇套」を劉迅の穂先に捩り被せ、手袋から伸ばす糸状の骸装「壊態」を機体に巻き付けていき。
「さぁ。これで補強も完了だ」
満を持して万全の体制を整えたエルスは、再び機首を反転させ。追走するドン・フリーダムに正面から相対する。
「妨害は間に合いませんでしたか。だったら真っ向から打ち破るまでですわ!」
何人たりとも近づけまいと、ドン・フリーダムの操る暴風がさらに勢いを増す。対するエルスはここまでに収束させた全ての力を一気に解放し、翔ける。
「ぃいっけえッ!」
風を纏う鋼の魔弾と化したエルスと劉迅は、一直線に暴風圏の中を突き進み――荒れ狂う風の刃に切り刻まれようとも、速度を落とすことはなく。
「ごっふぁぁですわぁっ?!」
突撃を受けたドン・フリーダムの身体は撥ね飛ばされ、戦場の彼方まで吹っ飛んでいくのだった。
成功
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駆爛・由貴
オイオイオイ、俺いたいけな美少年なんだけど事案じゃねーのこれは
フリーダムってそう言う意味かよ…
まずは俺の衣服に魔力を通して身軽になって
花の足場を次々にジャンプで移動
飛び回りながら自律ポッドにわざと声を出して指示を出すぜ
「オンモラキ!右を狙え!」
「バサン!左に回って撃て!」
花の足場は無くなるだろうが、そん時は指示を大声で叫んで最後のジャンプだ
「今だ!後ろからぶっ放せ!」
…かかったなアホが!
俺のマスターキーは鍵の他に粗悪なコピーも作れる
つまり即席の足場も作れるって事だ!
敵が後ろに気を取られたら即座に足場を形成
ジャンプで敵に肉薄してベロボーグで一撃
さらにオンモラキ・バサンで至近距離からの一斉射撃だ!
「くぅ~効きましたわ。けど、この程度ではわたくしは倒れませんわ……!」
派手に吹っ飛ばされたドン・フリーダムだったが、怪人的な頑丈さを発揮して再び立ち上がってくる。そこに飛ばされた彼女を追って現れた駆爛・由貴(ストリート系エルフ・f14107)は、相手の格好を見るなり思わず呟く。
「オイオイオイ、俺いたいけな美少年なんだけど事案じゃねーのこれは。フリーダムってそう言う意味かよ……」
「あらあら、この姿こそまさに自由と欲望を体現した格好ですわよ?」
少なくともドン・フリーダムに自らの格好に対する羞恥心の類は皆無のようだ。邪魔者に向かって彼女はまたも暴風を放ち、周囲の足場ごと由貴を吹き飛ばさんとする。
「オンモラキ! 右を狙え!」
由貴は自らの衣服に魔力を通すことで軽量化と加速の術式を作動させ、切り刻まれていく花の足場を次々に跳び回りながら、指揮下の自律ポッドに指示を飛ばす。搭載された長距離狙撃用ビームランチャーの砲撃が放たれるが、ドン・フリーダムは巻き上げた花弁を防壁としてビームの軌道を逸らす。
「バサン! 左に回って撃て!」
ならばともう一機のポッドが対装甲ライフルによる機銃掃射を加えるが、吹き荒れる暴風は分厚い風圧の壁となって弾道を歪めてしまう。
「ふふ。いちいち声に出していたら狙いが丸わかりですわ」
風を攻撃手段としてだけでなく防御にも活用するドン・フリーダムは、まったく攻撃を寄せ付けないまま暴風圏を広げていく。跳び移る足場を吹き飛ばされる由貴は、徐々に逃げ場を失い、追い詰められていく。
進退窮まった由貴は、意を決した表情でドン・フリーダムに向かって最後のジャンプを行い、同時に大声で叫んだ。
「今だ! 後ろからぶっ放せ!」
「あらあらっ? いつの間に――?」
思わずぱっと背後を振り返る女。だが、そこには何もいない。由貴がこれまでわざと声に出してポッドへの指示を出してきたのは、全てこの一瞬、一度きりの隙を作るため。
「……かかったなアホが!」
何もない空間にその身を躍らせた由貴は【マスターキー】によって即席の足場を形成し、着地。本来は合鍵や電子カードキーなどを複製するためのユーベルコードなので造りは荒いが、次の跳躍のための踏み台にさえなればいい。
衣服の軽量化機能を最大限に発揮し、ありったけの脚力で足場を蹴って、暴風の中心に立つドン・フリーダムに肉薄する。
「この距離なら防げないだろ!」
風の刃にその身を切り刻まれながら、握りしめた短剣「ベロボーグ」の刃を一閃。血飛沫が舞うのと同時に、距離を詰めてきたオンモラキ・バサンが至近距離からの一斉射撃を放った。
「油断しましたわ……わたくしがこんな単純な手に引っかかるなんて……くぅぅっ!!」
ビームと銃弾が標的の肌を焼き、肉を抉る。たまらず後退していくドン・フリーダムの態度は、仮面越しからもありありとした悔しさに満ちていた。
「余裕ぶってるからだぜ。じゃあな!」
にやりと笑った由貴は後退用の足場を形成すると、反撃を受ける前に素早く前線から離脱していくのだった。
成功
🔵🔵🔴
トリテレイア・ゼロナイン
際限無しの自由…その結果が旧人類の滅亡なら看過できません。次世代人類への危険を取り除く為、貴女を討たせていただきます
……その前に騎士として気になることがあるのですがひとまず置いておいて
●防具改造でマントと煙幕発生装置を装備
キャノンに対し、煙幕で●目潰ししつつ命中率を下げ、此方はセンサーでの熱源感知で位置を●見切り接近
当たりかねない攻撃は遠隔●操縦する機械馬に攻撃を●かばわせ、UCを発動
未来予測で攻撃を避けつつドンの移動先に先回りし、装備していたマントを羽織らせます
その恰好、お寒くはありませんか? 敵を心配する自由があってもよいでしょう
何か感情が動いたら格納銃器での●だまし討ち
(どちらも本気)
「ぐぬぬ、このままやられっぱなしではいられませんわ!」
徐々に自らが追い詰められているのを感じながら、赤べこキャノンを担いで再び絶対無敵バリアを展開するドン・フリーダム。
離脱する味方の背は追わせまいと、彼女の前に立ちはだかったのはトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)だった。
「際限無しの自由……その結果が旧人類の滅亡なら看過できません。次世代人類への危険を取り除く為、貴女を討たせていただきます」
「それがあなたの信念かしら? それもまた欲望。素晴らしいですわね!」
どのような信念も矜持も、彼女にとっては欲望のひとつの発露でしかない。
騎士の誓いに興味を引かれたドン・フリーダムは、キャノンの砲口をトリテレイアに向けた。
「……その前に騎士として気になることがあるのですがひとまず置いておいて」
ぽつりと呟きながらトリテレイアは装甲フレームに装着したマントを翻すと、裏側に仕込んだ煙幕発生装置を作動させる。
「小癪なですわ!」
分厚い煙の中に消えた標的に向かってキャノンを発射するドン・フリーダム。センサーの熱源感知機能を起動したトリテレイアは、煙幕に紛れて砲撃を回避しながら密やかに敵への接近を試みる。
だが、次々と発射される赤べこキャノンの砲弾は、たとえ命中せずとも爆風と衝撃波によって煙幕を吹き飛ばしていく。
「いつまでも隠れていられるとは思わないことですわよ!」
やがて、薄れていく煙の中に騎士のシルエットを発見したドン・フリーダムは、ここぞとばかりに攻撃力を重視した砲撃を放った。
「!!」
トリテレイアの窮地を救ったのは、遠隔操縦によって彼に追従する機械白馬「ロシナンテⅡ」だった。主にかわって砲弾の直撃を受けた機械馬は、その一撃で大破し、装甲の破片を撒き散らして倒れ伏す。
「あらあら、仕損じちゃいましたわ。でも次はないですの」
赤べこキャノンの砲身に、再びエネルギーが収束していく。だが、初弾を機械馬がかばってから次弾が発射されるまでの僅かな間隙に、トリテレイアはユーベルコードを発動していた。
「コード入力【ディアブロ】! 演算機能リミット解除……帝国最強ウォーマシンの再現を今ここに!」
それは嘗て、彼の故郷スペースシップワールドに存在した恐るべきオブリビオンの力の再現。寿命と引き換えに限定的な未来予測演算能力を獲得したトリテレイアは、砲撃の軌道とタイミングを予測して的確な機動でそれを回避する。
「おやおや? 急に動きが変わりましたわね?」
接近されることを嫌ったドン・フリーダムは、矢継ぎ早の砲撃を続けながら距離を保とうと後退する。だが、トリテレイアはその行動さえも予測して砲弾の雨をくぐり抜けながら、敵の移動先に先回りする。
「あらら、近付かれちゃいましたわ。でもこっちには無敵のバリアが……」
どんな攻撃でもどんと来い、と身構えるドン・フリーダムに対して、トリテレイアはばさっ、とマントを翻し――。
「その恰好、お寒くはありませんか?」
一糸まとわぬ彼女の身体に、そっとマントを羽織らせる。
「……あららららん? なんのつもりですの?」
「言葉通りの意味です。敵を心配する自由があってもよいでしょう」
彼の言葉は本心だった。もし、その行動に一片でも敵意が含まれていれば、絶対防御バリアはそれを「攻撃」と見做してマントを弾いていただろう。
「あ、あらあら、ご心配なく。でも、ヤダ、ちょっとキュンときちゃいましたわ!」
頬を赤らめ――ているかは分からないが、満更ではなさそうな様子で身体をくねらせるドン・フリーダム。それを見たトリテレイアは安心したように頷き。
「では攻撃させていただきます」
直後、装甲に隠されていた全身の格納銃器が火を噴いた。
「ぎゃっふぅ!!??」
至近距離からの銃弾の雨を浴びて吹き飛ぶドン・フリーダム。彼女の絶対防御バリアはキュンときちゃった瞬間に解除されていた。
「お、乙女心を弄びましたわね! この外道ー! 鬼畜ー!」
だくだくと血を流しながらキーキー文句を言う怪人に対して、トリテレイアは冷静に一言。
「最初に言った筈です。貴女を討たせていただきます、と」
敵の身を気遣うのも敵を討ち倒すのも、どちらも偽らざる彼の本心であった。
成功
🔵🔵🔴
ルキフェル・レガリア
アドリブ連携歓迎
ある程度戦闘が進んで戦場に血が満ちる時を見計らってから戦う
「少し目を離しているうちに何やら面白いことになっているではないか
っはは、その戯れに余も交ぜよ」
敵の攻撃は[第六感]・[武器受け]でまともに攻撃を受けないように
攻撃を受けても動きを止めないよう[激痛耐性]
敵の攻撃をくらっても逆に高揚し楽しそうに[預言の剣]で反撃し[恐怖を与える]ことで敵の動揺・エモ判定を狙う
戦場に残るものだけでなく己の血すらも[血の刃]の糧にし集中攻撃
「道化役ご苦労
だが時は満ち余も満足した
これよりはお前の葬送の宴である
多くの者の想いを乗せた美しき血の刃に魅せられて逝くがいい」
「少し目を離しているうちに何やら面白いことになっているではないか。っはは、その戯れに余も交ぜよ」
戦いが佳境を迎える中、戦場に満ちた血の匂いに誘われるように姿を現したのは、ルキフェル・レガリア(闇の中を導く明けの明星・f11011)。
猟兵の度重なる猛攻によって、一糸まとわぬその身を紅に染めたドン・フリーダムは、負傷をかばいながらも彼の参戦を歓迎する。
「欲望に満ちたいい目をしていますわ。たっぷりおもてなしさせて頂きますわよ!」
パーティのクラッカーを鳴らすような気軽さで、彼女は赤べこキャノンのトリガーを引いた。
放たれた砲弾の弾道を直感的に予測したルキフェルは、戦場に散った敵味方の血を武器の形へと結晶化させて迎撃する。
砲弾と血の刃が激突し、爆音と衝撃波が吹き荒れる。たとえ直撃を避けようとも、オブリビオン・フォーミュラの攻撃はその余波だけでも十分な破壊力を秘めている。
爆風に吹き飛ばされ、飛散した砲弾の破片にその身を抉られるルキフェル。だが、彼の口元は苦痛に歪むのではなく、逆に高揚した笑みを浮かべていた。
「面白い。戦いはこうでなくてはな」
即座に体制を立て直し、駆ける。次々と放たれる砲弾を新たな血の刃で迎撃し、余波でその身が傷つこうとも決して動きを止めはしない。
「ブッ飛んでますわね、あなた!」
まるで痛みを感じていないかのように、楽しげに笑みを浮かべながら近付いてくるルキフェルをそう評するドン・フリーダム。ルキフェルはにやりと口の端をつり上げて返答とし、その手に構えた「予言の剣」を振り下ろす。純粋に闘争を愉しむかの如きその壮絶な戦いぶりに心動かされた怪人のバリアは、いつしか剥がれ落ちていた。
「ふふ、とても良いですわね、あなた」
光を吸い込むような漆黒の刃にその身を切り裂かれながら、ドン・フリーダムはルキフェルに呼びかける。
「だからこそ残念ですわ。あと少しお待ちいただければ、あなたや皆様のどんな欲望も叶う、素晴らしい世界がご提供できますのに」
「悪いが、お前に与えられるものなぞに興味はない」
あっさりと誘いを拒んだルキフェルは、戦場に残る血だけではなく傷口から滴る己の血すらも結晶化させ、無数の紅き剣を作り上げる。
「道化役ご苦労。だが時は満ち余も満足した。これよりはお前の葬送の宴である。多くの者の想いを乗せた美しき血の刃に魅せられて逝くがいい」
この戦場で流された全ての血が、刃となって牙を剥く。バリアの加護を失ったドン・フリーダムにその全てを防ぎ切る術はない。躱しきれなかった刃が肉を裂き、鮮血がその身と戦場をより深い紅に染めていく。
「――ふふ、残念。ですが確かにこれは美しい。エモいですわ」
それでも彼女は仮面の下でなおも笑っている。だが、その限界が近付きつつあることは、誰の目にも明らかであった。
成功
🔵🔵🔴
セリオン・アーヴニル
さて、どう攻め…くっ!
――ふふ、面白そうな相手ですので『強制交代』させて貰いますよ?
【対UC・戦術】
可能なら予め、ウインドゼファー戦のレポートを熟読し事前知識を蓄えます。
敵の初手は『早業、高速詠唱』を複合し高速発動させた【穿雷迅威】を一瞬使い『第六感、見切り』を併用しながら高速移動で躱しつつ一気に距離を取り足場を確保。
即座にUCを解除し手の内を極力晒さず、中距離で銃剣と拳銃の連射でダメージを稼ぎ、戦況がある程度動いたら『全力魔法』でブーストをかけた最大速度最大出力の【穿雷迅威】で死角を狙って突っ込み、零距離でノクシスの大一撃を叩き込みます。
あぁ…出来ればその仮面、引き剥がしてやりたいですねぇ?
「これが、この世界のオブリビオンの元凶か」
血塗れとなって消耗しながらも、どこか人を食った態度を崩そうとしないドン・フリーダムの様子を観察しながら、セリオン・アーヴニル(並行世界のエトランジェ・f00924)は静かに思案する。
「さて、どう攻め……くっ!」
その時、不意に彼の髪と瞳の色、そして表情が、彼の精神の中に同居する別の人格のものへと変わる。
「――ふふ、面白そうな相手ですので『強制交代』させて貰いますよ?」
セリオンであってセリオンでない「彼」は、楽しげな笑みをその口元に浮かべた。
「猟兵というのは本当に変わった方ばかりですわね」
仮面越しに好奇の視線を向けながら、ドン・フリーダムは再び破壊の暴風を放つ。事前にウインドゼファー戦のレポートを熟読し知識を蓄えていたセリオンは、ゼファーと同様のその攻撃に瞬時に反応した。
培った技術を総動員して、ユーベルコード【穿雷迅威】を高速発動。瞬きするほどの僅かな間、彼の身体の7割は雷の精霊へと変質し、雷光の如きスピードで敵の暴風圏から退避する。
「あらあら? 今いったい何をしたんですの?」
「さあ、何でしょうね」
回避完了後、即座に半霊体化を解除しながら敵の問いかけをはぐらかす。手の内は極力晒さない。攻め込む好機が来るまでは。
初撃を躱すことに成功したセリオンは、両手に構えた銃剣『レヒト』と漆黒の拳銃『Guiltfeeder』のトリガーを引く。次々と撃ち込まれる銃弾をドン・フリーダムは渦巻く暴風を障壁として防御。
「この程度ではやられませんわ」
彼女はゼファーのユーベルコードをゼファー以上の精度と威力で操っている。その暴風を突き破るためにはより強力な一撃がいる。そう判断したセリオンは接近の機会を伺うものの、敵もそれを警戒しているのか容易に隙を見せようとはしない。
撃ち続けるセリオン。風を巻き起こすドン・フリーダム。二人の膠着した戦況に変化が訪れたのは唐突だった。
「く……っ」
猟兵たちとの相次ぐ戦闘による負傷と疲労から、ほんの僅かにドン・フリーダムの集中が乱れる。それは隙と呼ぶにはあまりに小さな揺らぎだったが、攻め込むならばここしかないと、セリオンの第六感は告げていた。
「最大速度、最大出力で……!」
再び【穿雷迅威】を発動すると、切り刻まれた花の足場の間を飛ぶように駆ける。寄らせまいと吹き荒れる暴風をかいくぐり、風の刃に切り裂かれながらも、彼はドン・フリーダムの死角からその懐に潜り込むことに成功した。
「しま……ッ!」
かざした腕に装着されているのは、光を操る魔導兵器『ノクシス』。驚愕する敵の仮面の前で、セリオンは笑いながら掌中に光球を生成し。
「あぁ……出来ればその仮面、引き剥がしてやりたいですねぇ?」
直後、零距離から放たれた最大出力の光線が、ドン・フリーダムの顔面を撃ち抜いた。
「く、あぁぁっ……乙女の素顔を晒そうなんて、失礼な方ですわね……ッ!」
のけぞるように吹き飛ばされ、片手で仮面を押さえながらフラフラと立ち上がるドン・フリーダム。その仮面には、一筋の大きなヒビが刻み付けられていた。
成功
🔵🔵🔴
スヴェトラーナ・リーフテル
「情報二相展開、起動。コード:青い貴人。心的属性:土、自然現象:極小ブラックホール」
「ははははは、これが世界の加護ぞ!」
おそらくは、この術式の弱点である暴走のしやすさを狙ってくるはずです。何故なら、この術式は出が速いので出現する前を妨害するよりも出た後術式に干渉して暴走させることの方が容易いからです。何より彼女はオブリビオン、世界の破滅が大好物ですからね。従って、私のすることは単純です。もっと暴走しやすくしておきましょう。少し暴走させようとした瞬間世界から引き出された魔力が逆流し、相手も私も消滅する程の大爆発を起こす様に
「ハレルヤ!!!」
ところで、私は別に用意してある自分の体から復帰します。
「情報二相展開、起動。コード:青い貴人。心的属性:土、自然現象:極小ブラックホール」
負傷を重ねていく敵に休息の余地を与えまいと、即座に術式を展開したのはスヴェトラーナ・リーフテル(実装者・f03738)。まだ実験段階にあるその魔術は、基底情報より指定空間へ対称群の既約表現の要素を展開、現出。つまりは彼女の指定した属性と現象をこの場に再現する。
「ははははは、これが世界の加護ぞ!」
高笑いするスヴェトラーナの目前には全てを飲み込む黒い重力の球体が現れ、彼女の敵を事象の地平線の向こう側に放逐せんとする。
「あだだだ……うわぁ、なんだかあなた、わたくしと同じ匂いがしますわ。ちょうてんさいの素質があるかもしれませんわね」
学者肌なスヴェトラーナの気質を感じ取ったのか、ドン・フリーダムは傷ついた身体でふらつきながらも、呆れと感服が入り混じった様子で展開された術式を見つめ。
「でも今はまだこのちょうてんさいには及びませんわね。術式の粗が丸見えですわ」
パチンと指を鳴らすと、虚空から出現した用途不明のマニアックマシンが作動し、スヴェトラーナの術式に干渉を始める。まだ実験段階ということもあって、この術式は暴走の危険性が高い。ドン・フリーダムはその弱点を見抜いて、敵を自らの術式で自滅へと追いやらんとする。
「このくらい、わたくしにかかればチョチョイのチョイで……あ、あらら?」
だが、直後に彼女は困惑することになる。術式への干渉ができなかったからではなく、ほんのちょっと指先でつついた程度の干渉で、たちまち術式の暴走が始まったことに。
「ええ、そう来ると思っていました」
無差別に周囲の物質を飲み込み拡大していくブラックホールをよそに、まったく動じる気配のないスヴェトラーナが言う。
「この術式は出現する前を妨害するよりも出た後に暴走させることの方が容易い。何よりあなたはオブリビオン、世界の破滅が大好物ですからね。ですので――」
自身の術式の弱点と相手の性質を把握していた彼女が、あらかじめ採っていた対策は単純明快だった。
「――もっと暴走しやすくしておきました」
ブラックホールを形成・維持するために世界から引き出されていた魔力が逆流し、純粋なエネルギーとして荒れ狂い始める。それが、この戦場一帯を吹き飛ばすほどの大爆発の予兆であることに気付いたドン・フリーダムは、身体を強張らせて叫んだ。
「ちょっ、正気ですわの?! こんなのあなたも一緒に消し飛びますわよ?!」
「あ、私は別に用意してある自分の体から復帰します」
サイボーグである自らの身体を拡張子、予備のボディを無数に持つスヴェトラーナは、現在の身体が大破しても本当に意味で死にはしない。
だからこその、この自爆戦術であった。
「あなたのその理論と発想、技術者としてはチョー興味深いですけれど……今はゆっくり聞いている暇はなさそうですわねぇぇぇぇっ!!」
爆発の中心地から一ミリでも遠くへ逃れるため、全速力で後退していくドン・フリーダム。暴走した術式が炸裂する瞬間、スヴェトラーナは悠々と腕を広げ、笑顔で。
「ハレルヤ!!!」
直後、システム・フラワーズを震撼させるような轟音と共に、凄まじい爆発と熱量と衝撃波が、戦場の一角を文字通り消し飛ばした。スヴェトラーナごと。
「あっづづづづづづづづづづづぅっ?! ヤバッ! 猟兵ヤバヤバですわ!」
ドン・フリーダムはどうにか消滅は免れたものの、爆発の規模から完全に逃れることはできず、爆熱にその身を焼き焦がされるのであった。
成功
🔵🔵🔴
尾崎・ナオ
【SPD】
●防御(回避)
バラバラにされる足場の位置を【第六感30】で察知。
UC【煽りは任せろ】を使って、回避。
自画自賛する事で、寿命を削りつつ一時的にスピードと反応速度を爆発的に増大させる。
「可愛いナオちゃんの見せ場、到来♪」
敵に気付かれないよう小さな声でUC発動し、前に現れる。
●対処
UC継続で反応速度を上げたまま、敵攻撃の吹き飛ばしを利用して距離を取る。
黙る事10秒。視線はそらさない。
敵が「このまま退場したかな」と錯覚したタイミングで、UC解除し、即座に反撃開始!
●攻撃
UC【千里眼射ち】
対象は、レベルの二乗mまでの視認している対象!
例え米粒だろうと、見えていれば攻撃可能だ!
神元・眞白
【SPD/割と自由に】
自由。必要なことだけど過ぎた自由は困るぐらい。
あの仮面の下、どうなってるのかちょっと気になる。
飛威、隙を見て剥がしてみて。……冗談だけど。
先んじて動いてくるって分かっているなら受けに備えるけど…
風の流れの音を聞き分けるのと足場の崩れ方で接近率を見切ってみよう。
間に合わない様なら私が受けを。飛威と符雨は攻撃手だから回避を。
受けるダメージが大きそうだし魅医はお願いね。私は簡単に。
終わったら2人の補佐を。私は多分、きっとそんなに動けなくなるから。
相手の2撃目は状況を見て時間差を。
ツーマンセルでの状況判断は飛威、纏め役は一旦渡すから指示を。
「あら、あら、あら……もしかしてわたくし、ヤバいですわの?」
戦場の一角を飲み込んだ大爆発から辛うじて逃れてきたドン・フリーダムは、今更としか言いようのないことを呟く。全身に刻まれた無数の負傷、ヒビ割れた仮面、それらはいかにオブリビオン・フォーミュラと言えども無視できないダメージである。
「ちょーっとお休みさせて貰いたいですけど……許してくれませんわよね」
彼女の五感は、接近する新たな猟兵の気配を感じ取っていた。
「自由。必要なことだけど過ぎた自由は困るぐらい」
そう呟いたのは神元・眞白(真白のキャンパス・f00949)。並び立つは彼女が操る戦術器「飛威」「符雨」「魅医」。すっと指差す動きに合わせて、三機の人形は主人と共に戦闘態勢を整える。
「あの仮面の下、どうなってるのかちょっと気になる。飛威、隙を見て剥がしてみて。……冗談だけど」
「冗談でも笑えませんわん!」
指の欠けた血まみれの腕を振るってドン・フリーダムはレボリューション・ストームを放つ。花の足場を切り刻みながら、破壊の暴風が眞白と人形たちに襲いかかる。
「飛威と符雨は攻撃手だから回避を」
眞白は風の流れの音に耳を澄ませ、足場の崩れ方を見て暴風の接近を見切り、回避を指示する。そして自らは防御を――急所をかばいながら戦術器たちの風除けとなって、暴風をその身に受ける。
しかし満身創痍とはいえ相手はフォーミュラ。たとえ躱そうとも身を守ろうとも、吹き荒れる風の刃は容赦なく彼女たちを切り刻んでいく。特に、受けに回った眞白はアンティークなドレスを朱に染め、傷だらけになってその場に崩れ落ちた。
「わたくしはここで倒れるわけにはいきませんの。誰もが欲望を叶えられる、フリーダムな世界を完成させるために!」
荒れ狂う風の中心で己が信念を叫ぶドン・フリーダム。その情動に煽られるかのように、暴風はさらに勢いを増す。
だが、そこに颯爽と戦場に駆けつける一つの人影があった。
「可愛いナオちゃんの見せ場、到来♪」
敵に気付かれないよう小さな声で自画自賛し、ユーベルコード【煽りは任せろ】を発動させた尾崎・ナオ(ウザイは褒め言葉・f14041)。
寿命と引き換えにスピードと反応速度を爆発的に増大させた彼女は、バラバラになった足場の位置を見極めて飛び移り、暴風の刃を躱しながらドン・フリーダムの目前に姿を現した。
「自由とか欲望なんて、アンタに言われなくても好きにするし。っていうかアンタみたいな痴女に言われたくないですよ~ぅ?」
「ムカッ。わたくしのフリーダムファッションにケチつけるなんて、初対面で失礼な人ですわね?!」
ケラケラと笑いながら相手を小馬鹿にした軽口を連発するナオに、煽り耐性のなかったドン・フリーダムはあっさりと釣られ、暴風を彼女に集中させる。
ナオは強化された反応速度を活かしてその動きを見切ると、あえて風の流れに逆らわずに飛び退くことで、ダメージを軽減しながら敵との距離を取る。
そして吹き飛んでいくナオと入れ違いに、前線へと駆けていくのは飛威と符雨。ナオが敵の注意を引きつけている間に、魅医の癒やしの力によってダメージを回復させていたのだ。
「10秒よろしく」
すれ違う瞬間、小声で囁くナオ。それを聞いた戦術器たちは振り返ることなくこくりと頷き、それぞれの得物を握りしめた。
「ツーマンセルでの状況判断は飛威、纏め役は一旦渡すから指示を」
後方より肩で息をしながら呟く眞白。攻撃手の治療を優先したため、彼女の負傷は最低限にしか癒やされていない。動けない主に代わって、双刃を構えた飛威が符雨の援護射撃に助けられながら、ドン・フリーダムに斬りかかる。
「あらあら、可愛らしい。でもわたくし、欲望のないお人形には興味ないですわ!」
刃と銃弾が標的の肉を抉り血飛沫を散らすが、ドン・フリーダムは怯むことなく反撃の暴風を浴びせる。再び風の刃に切り裂かれる二機を、後方から魅医が即座に治療する。
だが、魅医の治癒能力は主である眞白の力を変換したもの。その使用は少しずつ眞白の命を削っている。
「無制限な治癒能力なんて無いですわよね」
それを見抜いたドン・フリーダムは、間断なく攻めを継続することで回復を強要する戦法に出る。さらに吹き荒れる暴風は花の足場を削り取り、接近戦を行う飛威の立ち回るスペースを奪っていく。
徐々に劣勢に追い込まれながらも、戦術器たちは懸命に戦線を維持する。1秒1秒がひどく長く感じる、息の詰まるような時間が流れる――その戦いを、ナオは戦場の遙か後方から、まばたき一つせずにじっと見つめていた。
沈黙を貫き、視線はそらさず。気配を殺したままタイミングを待つ。敵が眼の前の相手に気を取られ、自分のことを「このまま退場したかな」と錯覚するまで。
――そして、集中すること10秒。今だ、と直感したナオは速度強化を解除すると、お気に入りの黒い拳銃を米粒サイズのドン・フリーダムに向けて。
「吹っ飛べ☆」
放たれた銃弾は狙い過たず正確に、標的の眉間を撃ち貫いた。
「あ、ら――?」
意識外からの長距離狙撃を受けたドン・フリーダムの身体から、がくりと力が抜ける。ナオはそのまま余す限りの銃弾を叩き込み、眞白の操る戦術器たちが残された全力で追撃を仕掛ける。
「あら……あらあら、そんな……」
限界に達した怪人の身体は、やがてボロボロと崩壊を始め――。
「わたくし……まだまだ全然、満足しておりませんのに……」
名残惜しそうな呟きを最期に残し、パキン、と仮面が真っ二つに割れるのと同時に、怪人軍団の首領ドン・フリーダムは、骸の海の底へと再び沈んでいった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴