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生者と罪業の狂騒曲

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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「……全く、あの村の禍根はまだ残っている様だな」
 グリモアベースの片隅で、静かに黙祷を捧げていた北条・優希斗(人間の妖剣士・e02283)
 彼の言葉に何人かの猟兵が耳を傾け彼の下に集まってくる。
 集まってきた猟兵達に向けて、優希斗は小さく息をついた。
「先日、俺は皆にイマジナリィと呼ばれる死人達の村を探索してもらい、そこにいたオブリビオンを撃破してもらった」
 そこまで告げたところで優希斗が軽く頭を振った。
「この時、皆にはイマジナリィの近くにあった村……名をテンバランスと言うんだが……此処を訪れてもらった。今度はそこに向かって新たなオブリビオンが侵攻している」
 恐らく、其の村を支配し、自らの勢力を拡大することを望んでいるのだろう。
「と言うわけで皆には、村の外でオブリビオンを待ち構えて迎撃して欲しい。ただ……」
 そこまで告げた所で表情を曇らせる優希斗。
 何処か遠い目で彼の目は虚空を見ていた。
「……敵は、かつて異端の神と呼ばれていた者だ。そして大量の彼女達を簡単に支配下に置いているオブリビオン……何だが、とても嫌な予感がする。だから……くれぐれも、気を付けて」
 優希斗の言葉に背を押され、彼の開いたゲートを潜り、目的地へと猟兵達はテレポートするのであった。

 ーー得体の知れない何かに、身を震わせながら。


 テレポートされた先で猟兵達が見たもの、それは……。
『破壊せよ、破壊せよ、破壊せよ』
『我ら神を甦らせる礎足らんことを求めし我等の意志で』
『贄を寄越せ……我等に贄を……』
 首なき神々のおぞましい意思が猟兵達を圧迫する。
 ……偶々、であろうか。
 近くを通りかかった村人達がその様を見て怯えの色を顔に出した。
「そ、そんな……お館様のご加護は……何故、こんな化物達が……」
「に、逃げろ、逃げろ! こ、この村はもう御仕舞いだ!」
 逃げ惑う人々とかの村を襲わんと。
 オブリビオン達が襲撃を掛ける。
 やむを得ぬ、と猟兵達は村人を守りながら、戦端を切った。

 ーー其々の思いを、胸に抱いて。


長野聖夜
 ーーこれは、罪業と贖罪の物語。
 いつも大変お世話になっております。
 長野聖夜です。
 と言うわけでテンバランスと呼ばれる村がオブリビオンの襲撃を受けております。
 と言うわけで、下記拙著の続編です。
 尚、確認せずともシナリオは問題なく参加可能です。
 シナリオ名:死人と贖罪の鎮魂曲
 URL:https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=8976
 今回は、第1章の村を守るべく行動していただきます。
 難易度はやや高めです。
 第一章は異端の神々との戦いです。
 村人の犠牲については判定結果とは別に行われます。
 尚、第3章は村の復興です。
 お声がけがあれば北条・優希斗(人間の妖剣士・e02283)もお話いたしますので、お気軽にお声がけ下さい。
 第1章プレイング受付期間:5月21日(火)~5月22日(水)一杯。
 執筆予定:5月23日(木)~5月25日(土)。
 プレイングはこの3日間が入るようにお送りいただけますと幸甚です。

 ーーそれでは、良き更なる旅路を。
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第1章 集団戦 『喰われた神々』

POW   :    この世のものでない植物
見えない【無数の蔦】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD   :    名称不明の毒花
自身の装備武器を無数の【金属を錆びつかせる異形】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    異端の一柱
【一瞬だけ能力が全盛期のもの】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

加賀・琴
禍王アポレイアを倒した歪み、ですか
それにしても手の早いオブリビオンもいたものですね
彼女が倒されてからまだ幾らも経ってないのに、もう倒されたことを知って手勢を差し向けるなんて

これは、仕方ないですね
神楽舞で荒ぶる神々を鎮めようかと思いましたが、逃げ惑う人々にその時間はないと弓矢を手に取ります
彼女達の相手は私達がします、その間に逃げてください。と村の人々に声をかけてから【破魔幻想の矢】を放ちます
村の人々を襲うものから優先して攻撃して、人々から引き剥がすように誘導します
逃げるよう促しても無秩序に逃げ惑っているようでしたら、弓矢で牽制しつつ声をかけて避難誘導を行います
自棄になられては危ないですしね


ガーネット・グレイローズ
亡霊の次は、異端の神か。どれだけの災いが降りかかるというんだ。
【SPD】
戦いながら、村人の避難を同時に行う。困難だが、ベストを
尽くさなければ。
『念動武闘法』を発動し、スラッシュストリングを複製。
戦闘区域を封鎖するように張り巡らせ、視認しやすい
ように『ブラッドエーテル』の赤い光を糸に流す。
「ここから中は立入禁止だ。走って逃げろ!」
できるだけ頑丈な建物の中に避難するよう村人に指示。
〈念動力〉で鋼糸を操作し、喰われた神々をなぎ払うように
攻撃。手足を絡め取り、翼を削ぎ斬るように素早く切断。
「貴様らがどんな神だったかは知らんが、誰も生け贄に
捧げはしないぞ。私達がいる限りはな!」


館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携可

この人たちが少女を差し出して自らの安寧を図っていたとはいえ
目の前で襲われていたら放っておけるわけ、ないだろ…!

1体たりとも村へ行かせるか!

【魂魄解放】発動
高速移動と衝撃波攻撃可能に
纏う魂はあの時斬った少女たちの魂

村人たちを守るためだ
君たちを差し出した人達だから納得いかないかもしれないけど
…今は力を貸して

村人への攻撃は「かばう」
ダメージは「武器受け、オーラ防御、激痛耐性」で耐え
大声で後ろを見ずに村へ逃げろと叫ぶ
※避難誘導する人がいたらお任せ

神々を「殺気、挑発」で引き付け村人から引き離すように誘導
固まったら「2回攻撃、範囲攻撃、怪力、マヒ攻撃、鎧砕き」の斬撃
+衝撃波で一掃




(「禍王アポレイアを倒した歪み、ですか」)
 加賀・琴が目前の異形の神々を前に先ず思ったことはそれだった。
「亡霊の次は異端の神か。どれだけの災いが降りかかるというんだろうな」
「……どう、なんでしょうね」
 喰われた神々の異形を前にしたガーネット・グレイローズの呟きに、様々な思いが綯い交ぜになった館野・敬輔が何処か遠くを見る眼差しでそう答える。
「……な、なんだ?!」
「か……怪物の仲……いや、あ、アンタ達は?!」
 恐怖に顔を引き攣らせた村人が敬輔の姿を見て思わずあげた声に応じる様に。
 目前の神々が甲高い音波の様な羽音を立て始めた。
『ォォォォォォォォ!』
『我等に贄を! 我等に贄を!』
『我等の魂の拠所たる体をよこせ……! 我等が同胞を討ち取りし者達を我等に差し出せ……!』
「……同胞? 今、同胞と言ったか?」
 30を越える概念武装が一つ、戦闘用のブレードワイヤー、スラッシュストリングを展開したガーネットが目前の敵の声に思わず眉を顰め。
 琴もまた和弓・蒼月を構え、破魔の矢を番えながらまさか、と呟いていた。
「彼女が倒されてからまだ幾らも経っていないのに、もう倒されたことを知って手勢を差し向けるなんて手の早いオブリビオンもいたものだと思っていたのですが……」
「今は、その話は後だ」
 琴達の推測の解を察しつつ怯え慄く村人達を一瞥もせず黒剣を構える敬輔。
(「この人たちが少女を差し出して自らの安寧を図っていたとはいえ、目の前で襲われていたら放っておけるわけ、ないだろ……!」)
「さっさと逃げろ! こいつらは俺達が引き受ける!」
 敬輔の大声に応じる様に。
 敬輔の黒剣に白い靄が立ちこめてくる。
 その靄達が何であるのかに気がつき思わず顔を見合わせる琴とガーネット。
 けれどもそれもほんの一瞬。
 琴が和弓・蒼月に番えた矢をヒョウ、と放って100を優に越える『破魔の矢』を大地と水平に射って嘆き続ける神々を引きつけ、その間にガーネットが自らの周囲に展開したスラッシュストリングを戦場に張り巡らせ戦場を覆う様な結界を作成。
 流石に戦場全てを覆いきることは出来ないが、それでもガーネット達が戦う戦場を覆えるだけの結界の構築に成功する。
「ここから中は立入禁止だ。走って逃げろ! 奥だ! 村の奥に向かって走れ! そうすれば安全だ! 他の村人達にも同じ事を伝えて逃げろ!」
 自分達がテレポートされたよりも村から見て手前の方角の光を確認しながら告げるガーネットの声音に押される様に。
 神々に追われる村人達が蜘蛛の子を撒散らす様に逃げ始めた。


(「戦いながら、村人の避難を同時に行う。困難だが、ベストを尽くさなければな」)
 琴の放った100を優に超えた破魔の矢に先手を打たれ、僅かに進軍の速度を緩めた神々を見つめながらガーネットが村人達に呼びかけつつ気持ちを新たに引き締める。
『ァァァァァァァァァァァ!!!』
 琴の聖なる矢にその身を射貫かれ、理性をかなぐり捨て、雄叫びをあげる神々。
 その彼女達の叫びに応じる様に。
 神々の白腕が無数の異形の花弁となって襲いかかってきた。
 それらの攻撃をガーネットがスラッシュストリングで絡め取る間、全身に白き靄を纏った敬輔が戦場を駆け抜け黒剣を大地に擦過。
 ――なんで、なんで、なんで。
 白い靄……即ちテンバランスを守るため、イマジナリィにいたお館様の贄とされた少女の怨念達が、憤怒と悲哀に彩られた感情をぶつけてくる。
 敬輔は自分の中の『何か』が削り取られていくのを感じながらも『彼女』達へと必死に呼びかけていた。
(「村人達を守るためだ……君達を差し出した人達だから納得いかないかもしれないけれど……今は力を貸して」)
 敬輔の言葉に納得してくれたのかどうかは定かでは無いが。
 それでも大地に擦過させていた黒剣を敬輔が斬撃を伴って振り切った時、凄まじい衝撃波が刃となって神々に向かって襲いかかった。
 神々の放った異形の花弁と衝撃波が正面からぶつかり合い、まるで水面に浮かぶ月影の様な波紋を立てて消えていく。
『ゴァァァァァァァァァァ!』
 ――こいつらは、こいつらが……!
 バサリと宙を舞い、上空で片翼の翼を羽ばたかせ風の刃を作り出して村人達を攻めようとする神々に何かを察したか、少女の怨念達がざわついている。
 ……憤怒と憎悪、そして恐怖という人間の根源にある感情と共に。
(「やはり、あの神々は……」)
 空中の神々が自分達とガーネットの指示に従い逃げようとする村人達に向けて放つ風の刃を次々に射落としながら、琴が巫女として感じ取ったそれで確証を得て、小さく息を一つ吐く。
「これは、仕方ないですね」
 それでも出来ることなら静かに鎮魂の舞を捧げて眠って欲しかったと思うのは、琴の優しさ故か。
 ……それとも、神々を己が先祖に重ね合わせているからなのか。
 真意の程は分からぬが、最前線をかの怨霊達と共に駆け抜け戦線を攪乱する敬輔の支援を行う琴。
「貴様らがどんな神だったかは知らんが、誰もこれ以上生け贄に捧げはしないぞ。私達がいる限りはな!」
 ガーネットの声音にも複雑な想いが籠められている。
 鞘に納めた妖刀・アカツキの鍔に象られた翼を広げた朱雀が淡く赤く輝いている様な、そんな気がした。
 それが……。
(「あの子達を、あの様な目に遭わせた神であるのならば尚更だ!」)
 内心でそう告げ自らを奮い立たせ、空中を浮遊させていたスラッシュストリングを念動力で自在に操るガーネット。
 それは更なる追撃を、と異形の花弁と化そうとしていたその翼を絡め取り、そして捥ぎ取る様に斬り裂いていた。
「急げ! 早く村の方へ行くんだ!」
「落ち着いて村に向かって避難して下さい! あの神々は私達が必ず足止めしますから!」
 ガーネットに合わせてそう呼びかけながら、執拗に村人を追おうとする神々と、彼女達の放つ花弁と風の刃を撃ち落とし続ける琴。
 ガーネットによって翼をもがれ地面へと落ちてくる神々を、敬輔が自らが纏う亡者達の感情を自らのオブリビオンへの憎悪から発する殺気へと転化させて誘き寄せ、自らを軸に黒剣を円状に振るって斬り捨てた。
「お前達を一体たりとも逃すものか!」
「続くぞ。行け、スラッシュストリング!」
 続けざまにガーネットが念動力で自在にスラッシュストリングを操り、今度は一度再構築された腕を二度と異形の花弁へと変貌させることが出来ぬ様に絡め取って締め上げる。
 そこに琴の放った破魔の矢が突き刺さり、ガーネットの最初に召喚したスラッシュストリングに流し込んだブラッドエーテルの赤い光の中にいる神々を貫き、浄化させていく。
 琴達がそうして神々との戦いを繰り広げる間に、この場にいた村人達は何とか全員、村に向かって避難することが出来たようだ。
「良いか! 絶対にこの赤い光の範囲内に入らない様、他の村人達にも伝えるんだぞ、お前達!」
 自らのエーテルを流し込んだ特製のスラッシュストリングの光を指差しながら念を押すガーネットに、村人達は短く分かった、とだけ答えていた。
「……村人の避難は何とか上手く行きましたか」
 破魔の矢で神々を撃ち抜きながら呟く琴。
 ――と、その時。
 後方で、巨大な爆発音が響く。
 恐らく此処に現われた神々以外にも別の場所から現われた神々……そして今、この場から避難させた村人達を守るべく、他の猟兵達が奮闘しているのだろう。
「どうやら、まだ神々は彼方此方にいる様だな」
「そうですね。ですが、今私達がこの場を離れるわけには行きません。……どうも巨大な何かが潜んでいる様な、そんな気がします」
 念動力で操ったスラッシュストリングで神々を細切れにしたガーネットがちらりと村人達が走り去った後方を見やり呟くのに、琴が頷く。
 不安を孕んだ琴の言葉を聞いて、最前線で神々を斬り倒し、或いは突き倒していた敬輔がそっと自らに力を貸してくれている怨霊達に声を掛けた。
(「……君達の想い、必ず黒幕にぶつけるからね」)
 それから、程なくして。
 周囲の敵を殲滅したガーネット達がそれに感づき、其方に向かって駆けていく。

 ――其々の想いを、胸に抱いて。



 

 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

美星・アイナ
優希斗君の見た物って一体何?
あれだけ口が重い姿は今まで見た事が無いわ

先の事件の話も脳裏を過り

辛く泣きたい感情を堪えつつペンダントを握りしめ

力を貸してと交代する人格は
浄化の焔を纏う焔の姫
『降りかかる悪意の火の粉、我の焔で浄化せん!』

剣形態の黒剣を振るい、剣の舞を思わすステップから
なぎ払い、2回攻撃、武器落としで攻撃

UCで生み出した赤水晶を傷口をえぐる様に一斉発射
力溜めのジャンプから串刺し、踏みつけで更に水晶をめり込ませる

地形の利用、空中戦を駆使し移動
村人への攻撃の隙を与えない

攻撃は激痛耐性、見切り、カウンターで凌ぐ

さぁ、出て来なさい
優希斗君が言ってた異端の神!
好き勝手、させないわ

アドリブ、連携可


荒谷・つかさ
こんな近くにまで……
でも、私の目の前でそう簡単にやらせはしないわよ!

転移後の行き先が村の外であったなら、まずは村人達をかばいつつ村へ避難。
村に入ったならできるだけ素早くかつ広範囲を巻き込んで【五行相生・精霊砦】発動
村そのものをそのまま砦へと変形させることで村人の安全確保を目指す
(盾受け・かばう・地形の利用・オーラ防御)

砦を打ち立てたら、右腕に機関砲、左腕に鬼大筒を持って遊撃と逃げ遅れた村人の捜索及び保護を行う
飛び道具なのは咄嗟の事態にに間に合わせるため
私のPOWなら機関砲を拳銃のように扱って早撃ち(クイックドロウ)の真似事も出来る
近寄られたなら鬼大筒の砲身で殴って接射(零距離射撃)よ


彩瑠・理恵
あの戦いの結果がこうですか
いえ、後悔はしません
今出来ることをしましょう

【オルタナティブ・ダブル】で二人に分かれます
私はスレイヤーカードで、武蔵坂制服にバベルブレイカーを
ボクはダークネスカードで、朱雀門制服に鮮血槍と鮮血の影業を

私は村人達の避難誘導と護衛を行います
前回、私はこの村には寄ってないですからお館様関係で変に疑われることはないでしょうからバラバラに逃げ惑う村人を落ち着いて逃げるよう言って、誘導します

ボクは活動可能な距離ギリギリで喰われた神々相手に暴れ回るわ
ふん、使いっぱしりやってる負け犬風情が殺しで六六六人衆を越えられると思わないことね!
ボクの武器は血液そのもの、金属どうこうは無意味よ!


奇鳥・カイト
はー、メンドくせ
ただでさえこの世界戻ってくんのがヤなのによ
吸血鬼が跋扈してるとこの空気は淀んでるからな、やってらんねェぜ
ま、人間の俺にゃ関係ねー話か。暗いとなんか調子いい気もするが

にしても
何度も狙われるたァ難儀な村だな



チッ、首がないと……ちとやりにくいな
糸は取っておくか…
苦手だが、こっちを使うことにしよう

昏き血の刃で羽根を中心に狙い穿っていきます
貫通力のある武器を中心に生成し、放ちます

【連携・アドリブ歓迎】


ウィリアム・バークリー
相変わらず生贄を求めるんですね、この神々は。
今度は誰に喰らわれたか知りませんが、おまえ達に与える命はない!
せめて安らかに眠らせてあげます!

初手でActive Ice Wallを展開したら、攻撃に移ります。
Icicle Edgeを「全力魔法」氷の「属性攻撃」「高速詠唱」「範囲攻撃」「串刺し」で。まとめて穿ち貫きます。

敵の攻撃は氷塊を動かして「盾受け」で。ただし必要最小限。まあ、毒花を受けるには最適でしょう。何しろ金属じゃない。
劣勢とみたら、攻撃より防御重視にシフト。氷塊の盾を目一杯使って攻撃を防ぎます。そして反撃の時を待つ。

さあ、これで終わりです。
神の座を追われた怪異に、かける情けはありません。




「はー、メンドくせ。ただでさえこの世界戻ってくんのがヤなのによ……」
 先に転移した猟兵達の戦いを見ながら、ヤレヤレと疲れた様に溜息を一つつくのは、奇鳥・カイト。
「カイト君、この間もそんな事言っていたけれど、それでもまた一緒に戦ってくれるのね」
 オラトリオの女戦士達の亡霊との戦いの時を思い出しながら、美星・アイナがさらりとそう告げると、思わずと言った様子でプイ、とカイトがそっぽを向く。
「……ただ、吸血鬼が跋扈してるとこの空気が澱んでいるのが嫌いってだけの話だけだよ。……ま、人間の俺にゃ関係ねー話だが」
(「つっても、暗いとなんか調子いい気もするけれどな……」)
 カイトの胸中に在る複雑なその想いは、言の葉として紡がれる事は無かったけれども。
「それにしても、相変わらず生贄を求めるんですね、あの神々は」
「……そう言えば、あの時もそうだったわね」
 そっと目を細めて神々と『彼女』達との戦いに想いを馳せるウィリアム・バークリーの呟きに同じ戦いに同道していた荒谷・つかさもまた同意とばかりに頷き返した。
 つかさ達が転送されたのは、先にテレポートされた猟兵達と村の中間点。
 村の手前付近であった。
 村人達の姿は今の所見えないが、周囲に潜む異端の神々が発する神聖で有りながらも邪悪な気配が漂うその場所に。
(「先発隊の皆は、村人達を無事に此方に逃がすことが出来たのかしら」)
 そう思うつかさの隣で彩瑠・理恵が両手に2枚のカードを携えて状況を見ている。
「あの戦いの結果が、こうですか」
 その呟きは、つかさの耳にしっかりと届いていた。
「後悔しているの?」
「いえ、しませんが……」
「何度も狙われるたぁ、難儀な村だよなって所か?」
 カイトの問いかけに、ウィリアムが確かにそうですね、と相槌を一つ返す。
 理恵がそれにそうですね、と静かに息を一つ吐いた。
「取り敢えず今は、今出来ることをしましょうか。きっとその先に道が開けるでしょうから」
「……そうね、理恵ちゃん」
 理恵の呟きにこの村を襲った事件のことを思い起こして泣き出しそうになる感情を堪えたアイナが頷きながら、それにしても、と瞼を閉じる。
 瞼の裏には自分達をテレポートした時の彼の表情がはっきりと浮かび上がってきた。
 ――同時にその背に背負った、何処か澱んだその空気を。
(「優希斗君の見た物って一体何? あれだけ口が重い姿は今まで見た事が無いわ……」)
 アイナがその時の事を思い起こしながら、自らの胸元のペンダントに接吻を一つ。
 村人達の境遇を思い出し、今にも泣き出しそうになる想いを隠すために。
 そして、彼の懸念の答えを知るために。
(「……お願い。私に力を貸して」)
 祈りと共に、己が肉体を浄化の焔を纏う焔の姫へと預けるアイナ。
『降りかかる悪意の火の粉、我の焔で浄化せん!』
 アイナの……否、浄化の焔を纏う焔の姫の呼びかけに応じる様に。
「た……助けてくれ~!」
『ヲヲヲヲヲヲヲヲヲ!』
『贄を! 我等に贄を捧げよ!』
『我等の為に産めよ、殖やせよ……。出来ぬのならば今この場で我等の体となれ……!』
「ひっ……ひぃぃぃぃぃ!」
「嫌だ……嫌だぁ!」
「私だ! 私が先よ!」
「いいや、僕だ! 僕が先だ!」
 新たに現われ、宙を舞う神々が上空から降り注がせる無数の異形の花弁に。
 村人達が押し合い、へし合い、時には他の村人を押しのけ必死の形相で此方へと逃げてくる。

 ――恐怖と言う名の病に、その心を苛まれながら。


「……ケッ。やんなるぜ全く」
 恐怖に押し潰され、生に執着し、此方に向かってくる村人達の姿を見てカイトが思わず舌打ちを一つ。
「落ち着いて下さい。私達はあなた達を守る味方です。……リエ、神々の方は頼みます」
「村よ! 村に入って! 死にたくないなら、お互いに助け合って村に逃げ込みなさい!」
 ダークネスカードを解放しながら、混乱を来した村人達を落ち着かせるために呼びかける理恵と、その村人達を背に庇い、鬼瓦を填めた両腕を突き出して、巨大な白き結界を張り巡らし、天空から降り注ぐ異形の花弁から、村人達を守る盾となり叫ぶつかさ。
「ふん、使いっぱしりやってる負け犬風情が、殺しでボクを越えられると思わないことね!」
 理恵に呼び出されたリエが飛び出しながら、とある高校の制服を翻し、その足下に生まれた鮮血の影業を無数の杭へと変化させて撃ち出している。
 その間にもウィリアムがルーンソード『スプラッシュ』の先端で青と若葉色の魔法陣を描いていた。
 「今度は誰に喰らわれたか知りませんが、おまえ達に与える命はない! せめて安らかに眠らせてあげます!」
 ウィリアムの叫びに応じる様に。
 何処からともなく辛うじて茂っている木々の葉から、木の精霊達が魔法陣に混ざり合い溶け込んでいく。
 その結果生まれ出でたのは、青と深緑色が混ざり合った魔法陣。
(「どうやら、この地の精霊達もそれを望んでいる様ですしね……!」)
「……ったく、首の無い敵ってのは……ちとやりにくいな」
 幾重にも生み出されたウィリアムの魔法陣から生み出された無数の氷塊の盾に身を潜めながら。
 カイトがチッ、と舌を一つ鳴らし自らの体にWILD CASEで傷を付け、己が黒い血を地面へと滴らせた。
「苦手だが、こっちを使うとしよう。『今ここに契約を交わす。血の誓いよ、悉くを討ち滅ぼせ──』」
「……Icicle Edge!」
 カイトの自らの血への呼びかけと、更なるウィリアムの呪文の詠唱が重なり合い。
 カイトの黒血で生み出された先端が鋭く尖った無数の槍や細剣が上空から強襲をかけてきた神々の翼を貫き、そのまま落ちてくる神々をウィリアムの氷槍が貫き、氷塊に叩き付けて消滅させている。
『オノレオノレオノレオノレオノレ……!』
『我等の邪魔を……邪魔をするな!』
「そういう訳には行かない。眠れ、異端の神々よ!」
 空中から叩き落とされた神々の群れとは別に現われた神々の呪詛の籠もった呼びかけにアイナが応じながら、タン、とShadow Dancerで氷塊を蹴り漆黒の焔となって宙を舞いながら肉薄。
 そのまま華麗な着地を決めると同時に、黒剣形態のDeathBladeを振るう。
「アハハハハハッ! お前達如きじゃボクを殺すことなんて出来やしないよ!」
 鮮血の影業で地上に現われた神々に杭を解き放ち、その翼を貫き身動きを止めた神々に鮮血槍を振るうリエ。
 リエの元に駆けつけ、真っ向からDeathBladeを横薙ぎに振るうアイナ。
 放たれた横薙ぎの刃を起点に、神としての真の姿を現した神々へとDeathBladeを振り下ろして十文字に斬り裂き、Shadow Dancerで黒い軌跡を描きながら、舞う様に滑らかにDeathBladeを撥ね上げて神々を斬り上げ、更に刺突を繰り出して後方の村人目掛けて自らの翼を変形させた異形の花弁ごと、神々の胸を刺し貫いた。
『ヲヲヲヲヲヲヲヲヲ!』
『贄をよこせ……その肉を我等によこせ……!』
 同胞達を殺された怒りを帯びた神々が叫びと共に大地に芽吹く草花の先から、鋭く先端の尖った目に見えぬ蔦を解き放つ。
「ひっ……ひぃ?!」
 目前に迫ったそれに村人が悲鳴を上げ思わずその場にしゃがみ込むが。
「させないわよ」
 目に見えぬ蔦の気配を察したつかさが素早く前に立ち、その攻撃を受け止め。
「私達があなた達を守ります。落ち着いて村の中に避難して下さい」
 理恵が宥める様に告げながら、蔦をバベルブレイカーから射出した杭で撃ち抜き、蔦による被害を抑える。
「さあ、早く行って下さい。慌てず騒がず、村の中に」
「わ……分かったよ!」
 年に似合わぬ落ち着いた理恵の呼びかけに村人は気勢を削がれたか静かに頷き村に入る。
「村に入ったら大人しくしているのよ」
「わ……分かった……」
 怯える村人達にそう呼びかけたつかさに、村人達が頷き村の中へ。
(「こんな事なら、あの亡霊達にも呼びかけて協力を要請するべきだったかしら」)
 イマジナリィで浄化した亡霊達の事を思い出しながら内心で呟くつかさ。
 けれども、今更そんな事を言っても仕方ない。
 今は出来る限りのことをやるしか無いのだ。
 そう結論づけ、つかさが巨大な五芒星を大地に描き出し、自らの全身に溜めに溜めておいたカロリーを燃焼させて注ぎこむ。
『刹那の時を以て、今ここに顕現したまへ……五行相生、精霊砦!』
 つかさの叫びに合せる様に、その姿を現したのは……。
「壁に、扉に……窓、じゃないですか」
 突然現われた何処でも見られるそれらの素材を見てパチリ、と目を瞬かせる理恵。
 つかさは涼しい顔のままにそうねと頷き、大地に描き出した五芒星の中央に着けていた両手をパッ、と天空へと突き出している。
 つかさの命に応じる様に召喚された壁、扉、窓が氷塊をも巻き込んで瞬く間に精霊砦を築き上げた。
 ――グゥ。
 盛大に、つかさの胃袋に音を鳴らさせながら。
『ヲヲヲヲヲヲヲ!』
『その村をよこせ! 我等に贄を……!』
 神々が無数の目に見えぬ蔦を用いて避難した村人達を絡め取らんと砦へと攻撃を仕掛けるが、それらの攻撃はつかさが作り出した城塞を貫くことが出来ない。
「……拠点内って訳じゃ無いけれど。でも、維持するのにも結構カロリー使うのよね、これ」
 呟きながら、その背に背負っていたアルダワ式普及型機関砲を右腕の鬼瓦に嵌め込み、左腕に鬼大筒を構えている。
 理恵が再びパチクリ、と目を瞬かせた。
「……とても重そうなのですが、それ使えるのですか、つかささん」
「ええ、撃ってよし、殴って良しの万能品よ」
(「いや、大砲は殴る道具じゃ無いと思うのですが」)
 そう言って軽く鬼大筒を持ち上げるつかさに内心で突っ込みを入れる理恵。

 ――そんな他愛も無いやり取りの間に。

『地に落ちた血涙達、姿を変えて此処に集え……行き場のない哀しみと怒り、水晶の炎に変えてここに放たん! さあ、骸も遺さず焼き尽くせ!』
 アイナが30を越える赤水晶の欠片型の焔を神々に向かって解き放つ。
 カイトの黒血によって作り出された槍や細剣、ウィリアムの解き放った氷柱の槍にその身を貫かれていた神々をアイナの解き放った赤水晶の欠片型焔が硝子の破片の様な形を取って神々に埋め込まれる。
 そして欠片達が内側から焔を放射、体内からその身を焼き、神々の傷を抉っていった。
「ほらほら、どうしたの!? 君達ご自慢の毒花でボクを溶かしてみせなよ!」
 からかう様に挑発しながらリエが鮮血の影業で深紅の刃を形作り、異形の花弁……毒花と化したその腕を残虐に斬り捨てていく。
「まあ、出来るはず無いわよねぇ! ボクの武器は血液そのもの、金属どうこうは無意味だもの!」
 鮮血槍を横薙ぎに振るい、神々を斬り裂くリエの背後から忍び寄る無数の蔦。
 だが蔦がリエの体を貫くよりも先に、ウィリアムの氷塊がリエと蔦の間に割り込む。
 その隙を見逃さず大地を蹴って肉薄し、アルダワ式普及型機関砲の引金をつかさが引いた。
 無数の炎の弾丸がバラバラとリエと氷塊の周囲に撒散らされ、リエの首を狙っていた蔦を一斉に焼き尽くす。
「逃げ遅れた人はいるかしら? いたら返事をしなさい!」
 周囲に鋭く呼びかけながら、アルダワ式普及型機関砲の砲口を全方位に向けて振り回すつかさ。
 ――ドルルルルルルル……!
 銃口が回転し、轟音が辺り一帯に響き渡り、アイナの刃やウィリアムの氷柱の槍、カイトの黒血の槍や細剣で貫かれた神々を次々に撃ち落とした。
 理恵もつかさの背後を守る様に立ち回り彼女の肩に手を乗せて、バベルブレイカーから杭を射出し、神々を貫き止めを刺す。
「さあ、これで終わりです。神の座を追われた怪異に、かける情けはありません」
 そう呟きながら。自らの目前に十重二十重の魔法陣を展開したウィリアムがルーンソード『スプラッシュ』を地面に突き刺し、大地の魔力の流れをあの時竜脈で感じ取った時と同様に感じ取る。
 ルーンソード『スプラッシュ』とウィリアム自身を通して展開された無数の魔法陣に土色が混ざりあうのに一つ頷き、ウィリアムは心の命じるままにその呪を紡いだ。
「……Disaster!」
 ウィリアムの叫びに応じる様に。
 氷の精霊と風の精霊、そして風と反対の属性を持つ大地の精霊の力が重なり合い、神々を裁く大災害を引き起こした。
 Icicle Edgeの刃が風に砕かれ氷の礫となって吹雪の様に神々に叩き付けられ身動きが取れぬ間に、雪崩の様に土砂が降り注ぎ、神々を蹂躙する。
(「……精霊達が力を貸してくれているとは言え……これを制御するのは今の僕にはまだ無理ですね……」)
「ケッ……そろそろ終いだな」
「異形の神々よ、浄化の焔と共に永久の眠りにつくが良い」
 カイトがヒュッ、と自らの手を振り下ろすと同時に彼の黒血によって生み出された無数の武器が神々の翼を刺突するべく縦横無尽に飛び回り。
 残されていた神々の全ての翼を貫いた所で、アイナの召喚した赤水晶の欠片型が重なって巨大な焔の姫君となり、アイナの舞う様なDeathBladeの斬撃とShadow Dancerによる黒い弧を描いた蹴打と共に舞い、残された神々を焼き尽くす。
「さて、これで終わりね」
 辛うじて生き残りその場を離脱しようとした神々に接近し、鬼大筒の砲身で神々を殴り倒しその場で鬼大筒から砲弾を発射するつかさ。
 瀕死の神々の中心点で轟音と共に大爆発が起こり、神々が跡形も無く消失していく。
 ――そして。
「後はあなただけですね」
「アハハッ! 此処までだよ!」
 最後に残された2体の内1体の翼と体の付け根に当たる中心点を理恵がバベルブレイカーの杭で貫き止めを刺し、リエの鮮血の影業が、神々の最後の一体を近くの木に磔にし、鮮血槍でその心臓を抉り貫き通すのだった。

 ――かくて、人的被害は出ること無く戦闘には勝利する。
 けれども神々を操りし者を倒した後、村人達がどの様な表情となるのか。
 彼等に植え付けられた心の瑕疵は、如何程のものか。
 その答えは……未だ出ていない。


「……ケッ、取り敢えず終わったみてぇだな」
 武器と化していた黒血を元に戻し、微かに顔を青ざめさせながらカイトが軽く息を一つ。
「そうですね。ですが、これは始まりにしか過ぎません」
 精霊達に誘導される様に、初めて使った魔法の感触に疲労を感じながら、ふぅ、とウィリアムが息を一つつく。
 ――グゥ。
「……これからが本当の戦いなのに。カロリーかなり使ってしまったわね」
 村人を守るためにそれが最善だったとは言え、それだけの体力を消費したことを素直に示す胃袋を一撫でしながら、息を吐くつかさ。
「この神々を従えていた相手は、一体何者なんでしょうね?」
 ダークネスカードにリエが戻ったのを確認した理恵が軽く肩を解しながらくいっ、と小首を傾げている。
「分からないわ。でも……」
 呟きながら、アイナが前方で戦っていた先遣隊である猟兵達の方を見やる。
 向こうも既に戦闘が終了したのであろう。
 既にその姿を消していたが……どうやらある方向に向かっていった様だ。
(「多分、そこに異端の神々のボスがいるのね」)
 ――きっと、彼に見えた何かが。
「待っていなさい。優希斗君の言っていた異端の神々を操っていた親玉さん。私達が必ずあなたを倒してみせるわ」
 呟きながらアイナが歩みを進み始めたところで、カイト達他の猟兵達もその後を追って敵地へと向かう。

 ――全ての元凶たる黒幕の元へ。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『十字皇シュラウディス』

POW   :    我を暴くことかなわず
全身を【漆黒の霧】で覆い、自身が敵から受けた【攻撃の威力】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
SPD   :    堕天十字翔
【天空から双剣による衝撃波】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    我を欺くこと能わず
対象のユーベルコードの弱点を指摘し、実際に実証してみせると、【無数の光の鎖】が出現してそれを180秒封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠白石・明日香です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


*業務連絡:次回更新予定は少々先になりますが、6月1日(土)夜~6月2日(日)の2日間となります。その為、プレイングの受付は、5月30日(木)8時31分以降~6月1日(土)の15:00頃までとなります。何卒、宜しくお願い申し上げます*

 ――イマジナリィ。
 つい先日猟兵達が救った今はもう誰もいないその場所に、『彼』はいた。
 まるでこの場所だけ時間が止まってしまった様な……凍てつく様な気配と共に。
「フム……所詮は出来損ないの神。この程度か」
 呟きながら姿を現したその男。
 深紅の双剣を携えたその男から漂うのは、濃厚な瘴気の気配。

 ――その瘴気を浴び続けるだけで、気が触れてしまいそうに強大な。

「奴を倒した者達がいるという話だったが……成程、汝等がそうであったということか。ならば名乗ろう。我が名は十字皇シュラウディス。又の名を十字卿。汝等がくだせしかのオブリビオンと同盟を組み、『人造魔神生誕計画』を進めし吸血鬼なり」
 ――十字皇シュラウディスの言葉に、猟兵達はこの一連の事件の全貌を理解する。
 元々イマジナリィのお館様は、この十字皇シュラウディスと同盟を結んでいた。
 相互不可侵条約だったのか、それとも横の連携であったのかは定かでは無い。
 ただ、はっきりしていることがある。
 イマジナリィに贄として捧げられた少女達……その少女達にくっつけられていた『かみさま』の部品を、先程葬った異端の神々から提供していたのは、このオブリビオンであったのだと。
「計画のための贄に奴の被支配者は最適な器だった。我が民達の中には、適合する者もいなかったのでな。だからこそその実験結果を回収するべく進軍してきたが……思わぬ拾いものをしたわ」
 ――カツリ、カツリ、カツリ。
 悠然とした足取りで十字皇シュラウディスが近付いてくる。
 一歩、ただ一歩と近付かれる度に、恐怖……畏怖であろうか? 
 そんな生物の根源に根付いた感情に支配されていく猟兵達。

 ――けれども。

 このまま彼を放置しておけば、被害は拡大する一方なのだ。
 だからこそ……猟兵達は、恐怖を押し殺して立ち向かう。

 ――其々の想いを、胸に抱いて。
ウィリアム・バークリー
『十字卿』――吸血鬼の領主。それと戦うのは初めてですね。本物の吸血鬼。油断はなりません。
しかし、オブリビオンが魔神を作ろうとは、一体何のために?
いえ、今は考えるよりも対処しなければ。

氷の魔法騎士ウィリアム・バークリー、お相手仕ります!

名乗りを上げ注意を引いて、「高速詠唱」でActive Ice Wallを己の周囲に小規模展開。大量に作成しても、今回はかえって邪魔です。
Icicle Edgeを「高速詠唱」「範囲攻撃」で『十字卿』を中心とした広範囲に降り注がせます。対処法はよけるのでなく砕くしかないですよ。
足止めはこんなものか。皆さん、後をお願いします。

回復が必要なら、生まれながらの光を使います。


ガーネット・グレイローズ
【真の姿を解放】し、ヴァンパイアの姿に。
体表から大量のブラッドエーテルを放出

ご丁寧な解説痛み入るよ、十字皇。「人造の魔神」とやらを
生み出し、成し遂げたい目的があるのだろうが……
それもこれまで。異端の使徒にはこれにて退場願おう。

相手が卓越した剣士であることは明らか。上級ヴァンパイアで
あるなら更に特別な力を備えていることも見越して
慎重に立ち回ろう。クロスグレイブの光弾とブラックバングルの衝撃波を撃ち分けながら距離を詰めての接近戦。緊急反撃は
ブレイドウイングによる〈カウンター〉〈武器受け〉で。
攻撃を捌き損ねて武器を落としたと見せて【サイキックブラスト】を近距離から打ち込み、味方の有効打への布石に。


火土金水・明
「やれやれ、『禍王オメガ・アポレイア』の次は『十字皇シュラウディス』ですか。ダークセイヴァーの世界の人々のためにも、あなたを倒しにきました。」
【WIZ】で攻撃です。
【先制攻撃】で【高速詠唱】した【属性攻撃】の【全力魔法】の【破魔】属性の【サンダーボルト】で『十字皇シュラウディス』を【フェイント】を掛けつつ【範囲攻撃】でどこに動いても狙えるようにして【2回攻撃】します。
「『人造魔神生誕計画』がどんな内容かは知る気もありませんが、生きとし生けるものたちを害するのであれば、全力で潰します。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。


荒谷・つかさ
あんたが何者だろうと、知った事ではないのよ。
この事件の後始末、ここでつけさせてもらうわ!

予め消費したカロリーを「手作り弁当」を食べて補給しておく
そして「気合い」を込めて【1/5スケール G・オウガ】を喚ぶわ
この地に鋼の巨人が場違いなのは承知の上
真の目的は私の振る舞いとG・オウガの威容を仲間に見せつけて、恐怖に打ち克つ「勇気」を与える事
戦う前から気持ちが負けていたら、勝てる戦も勝てないもの
皆のためなら道化くらい、演じて見せるわ

戦闘では「見切り・残像」技能を活かした、巨体に似合わぬ高速戦闘を展開
「怪力・鎧砕き・早業」技能による高速高威力の拳打と、炎の「属性攻撃」を帯びた「衝撃波」を放って攻撃するわ


美星・アイナ
こいつが全ての黒幕か
威圧感が半端ない、でも膝を着く訳にいかない

もう一度、優希斗君の顔を思い出し冥目

力を貸して、と願う相手は
英雄達を鼓舞する天上の歌姫
『英雄達よ、けして狼狽える事なかれ!私の歌がその背を支えよう!』

大鎌形態の黒剣を振りかざし力溜めからのなぎ払い、2回攻撃、鎧無視攻撃、武器落とし、武器受け、串刺しで交戦
UC詠唱に鼓舞と覚悟と祈りを載せつつ
踏みつけ、鎧砕き、地形の利用のダンスパフォーマンスを

攻撃は激痛耐性、見切り、呪詛耐性で堪え勝機を見出せるなら鋼糸をロープワークの要領で放ってカウンター

未来の扉を開ける事も叶わず散った花
返して貰うぞ
彼女達の涙と魂と尊厳を

状況修了後堰が切れる様に慟哭


加賀・琴
なるほど、禍王アポレイアの同盟者でしたか
それならこの動きの速さにも納得です
いえ、元々彼女ごと相手にするつもりでの進軍だったのかもしれませんね
……これだけの力があれば、そういう行動に出ても驚きません
しかし、何故でしょうか。強大な敵には違いないはずなのに、何故か実は小者なのではと脳裏によぎるのは?

和弓・蒼月を構えて、皆さんの援護を兼ねて【破魔幻想の矢】を放ちます
百を超える破魔の矢を十字皇シュラウディス一人に放ちますが、まぁ最悪目くらましになればいいです
【破魔幻想の矢】の中に【破魔清浄の矢】も織り交ぜてみますが、さて通じるか否か
光の鎖を見たら、無意識にバベルの鎖と呟きますが、私も意味が分かりません


館野・敬輔
【SPD】
アドリブ大歓迎

黒剣の中の魂がざわついている
こいつが…真の黒幕

恐怖と畏怖を、憎悪と怒りで上書き

お前にとって彼女たちはただの実験体か
…なら、お前をここで殺す!!

真の姿解放後【魂魄解放】発動
赤黒く禍々しい全身鎧と黒剣、口元を隠すマスク、瞳は両目とも赤
本来は残酷かつ冷酷な性格になるが、今回は纏った魂の感情に同調
…彼女たちと共に、戦う

敵が空中にいる間は【魂魄解放】の衝撃波で攻撃
地上にいる時は「先制攻撃、2回攻撃、なぎ払い、吹き飛ばし、鎧砕き、マヒ攻撃」で真正面から全力で黒剣を叩き込む

堕天十字翔は「オーラ防御、武器受け、残像、激痛耐性」で可能な限り軽減した後「カウンター、咄嗟の一撃」で反撃


彩瑠・理恵
十字皇シュラウディス、十字卿……ですか
何処かで聞き覚えが……え、リエ?

無理矢理ボクに入れ替わるわ
ハハッ、爵位級ヴァンパイア、十字卿シュラウド?
アハハッ!戦神アポリア似の次は十字卿シュラウドとは面白いわね!

鮮血槍と鮮血の影業を持って突っ込むわ!
さぁ、かのシュラウドのように意志の純粋さも無く、知見も浅く、浅薄な自意識とプライドに囚われた愚かで矮小な男なのか、それとも違うのか見せてみなさい!

懐に潜り込んだら私に変わります
ごめんなさい、リエ。でも私にやらせて欲しいです
母さんの娘として、灼滅者としての私の手で戦わないといけない気がして
【蹂躙のバベルインパクト】慄け咎人、今宵はアナタが串刺しです!


彩瑠・姫桜
【血統覚醒】で戦闘力強化
基本は前衛で敵を牽制
攻撃手として前衛で立ち回る仲間の攻撃が通るよう、意識して動くわ
必要応じ積極的に仲間を【かばう】わね
敵からの攻撃は可能な限り【武器受け】で回避
隙が生じるようなら【串刺し】にして【傷口をえぐる】わね


駆けつけるのが遅れてしまったけれど
あの村に一度は関わり持った身だもの、そのままにしてはおけない
ここからは私も参戦するわ

これが、ヴァンパイア、なのね……
常から戦いが怖いって言ってるけど、そういうのとはまた違う、怖さがある
確かに、怖いわ

でも、立ち止まるわけにも、負けるわけにもいかないのよ
『人造魔神生誕計画』だなんて趣味の悪い企みはでここで潰してみせるんだから……!




(「こいつが……真の黒幕」)
 ただ、一歩一歩此方に近付いて来られるだけで全身を貫く様に覆う恐怖と畏怖の念を、ゴクリ、と生唾を飲み干し誤魔化すのは、館野・敬輔。
 ――あいつが、あいつが、あいつが……!
 先日、この村で敬輔の黒剣が喰らった『彼女』達の念が震えるのを感じ取った。
「ほぅ……どうやら汝の喰らった魂達には分かるのか。我の事が」
「お陰様でね。ご丁寧な解説痛み入るよ、十字皇。お前の目的が何だったのか……それを知ることが出来たのだからな」
 その瞳を真紅に染め上げ犬歯が伸び、その体表から大量の自らの全身を駆け巡るサイキックエナジーのエーテル体……ブラッドエーテルをバチリ、バチリと放出しながら小さく頷いたのは、ガーネット・グレイローズ。
 ダラリ、と真紅の双剣を自然体で構える十字皇のその静かな佇まいは、明らかに自分達よりも彼が『格上』である事を本能的に理解させられ、強気で嘯きながらも、声音が自然強張っている。
「……なるほど。禍王アポレイアの同盟者、でしたか」
 呟きながら和弓・蒼月を構え、全身を駆け巡る冷たい悪寒に目を細めるは、加賀・琴。
「然様だ。禍王は、我にとっては良き同盟者であった。この辺り一帯にそれなりに影響を与えていたのだからな、奴は」
「そうですか。同盟者、と言いつつ元々は、彼女事相手にするつもりでの進軍だったのでは無いですか? ……まあ、これだけの力があれば、そう言う行動に出たのだとしても驚きませんが」
 琴の問いにさて、と呟くシュラウディス。
「それに答える謂れは無いな」
(「……それにしても」)
 全身の細胞という細胞が恐怖で縮み上がる程に強大な敵である事は間違いの無いことだと分かっているのに……。
(「実は小物なのでは? と脳裏に過ぎるのは、何故なのでしょうね」)
 最も此処にいる敬輔達3人で戦うにはあまりにも分が悪い。
 そう感じ、次の一手について考え始めたその時……。
「あんたが何者だろうと、知ったことではないのよ。この事件の後始末、ここでつけさせてもらうわ!」
 ――ぱちぃぃぃぃぃぃぃぃぃんっ!
 戦場全体に鳴り響かんばかりの指パッチンの音。
 そして……。
『出ろおおおッ! G・オウガッッッッッッッ------!!!!!』
  高らかな声音と共にその姿を現したのは……。
「……ろ……ろぼ?」
 彩瑠・姫桜が転送されてくるや否や、唐突に現われたそれ。
 その機体の名は、G・オウガ(1/5)
 搭乗者の動きをトレースする鬼型機体。
 柔軟な動きとパワーが持ち味で格闘戦が得意。
 背面の折り畳まれた6枚羽。
 尚、光と共に羽が広がるのは真の姿では無いので今回は再現できないのはご愛敬。
 それでもパイロットに支給されるは、ビッチビッチのスーツ。
 なんとか魂とか呼ばれそうな精巧なデザインを持つそのモビ……いや、動くせん……キョダイロボットの搭乗者且つ制作者は、荒谷・つかさと言う。
 同時にG・オウガ(1/5)の右肩にチョコンと乗るのは、ハイレグ仕様な黒いウイザードローブと黒色のマントを着用し、黒色のウイザードハットを被った右手に空・炎・森・海・闇・氷・幻の七色の光を纏った杖を、左手に魔法使いの持っている箒を構えた少女。
「やれやれ、『禍王オメガ・アポレイア』の次は『十字皇シュラウディス』、ですか」
 溜息の様に呟く少女……火土金水・明の言葉にシュラウディスは、訝しげに眉を顰めるが、程なくして合点がいった、と言う様に頷きを一つ。
「そうか……汝等も、奴が倒された戦場にいた者か」
「ええその通りです、十字皇シュラウディス。私達はダークセイヴァーの世界の人々のためにも、あなたを倒しにきました」
 明の言葉に、突然現われた巨大ロボットに呆気に取られていた姫桜が我に返り、その瞳を真紅に染め、schwarzとWeißの二槍を構え直す。
 姫桜もまた犬歯が異様な長さに伸び、その背に血色の双翼を広げながら、シュラウディスに向けて二槍を突きつけていた。
 ――膝が笑う。
 それは戦いへの恐怖なのか、それともヴァンパイア、と言う存在に対するものなのかは分からない。
 けれどもその怖さに対して、大丈夫、とG・オウガ(1/5)の存在はその背を押してくれ、そして。
「姉さん」
「姫桜さん、来ましたか」
 つかさの後を追ってやって来た、彩瑠・理恵と、ウィリアム・バークリーの呼びかけに姫桜は振り返り微笑を零す。
「駆けつけるのが遅れてしまったけれど。私もあの村と、この村に一度は関わりを持った身よ。このままにしてはおけない」
 姫桜の想いに応じる様に。
 水面を駆ける静かな波紋の様に、彼女の指に嵌め込まれた桜を象った玻璃鏡が玻璃色の輝きを発していた。
(「……こいつが、全ての黒幕、か」)
 姫桜の姿に一つ頷きつつ、全身が総毛立つ様な感触を感じながら瞑目し、優希斗の表情を思い出しながらそっとペンダントを握りしめるは、美星・アイナ。
「威圧感が半端ない、わね」
「でも、膝をつくわけには行かないでしょ?」
 手作り弁当を食べて消費したカロリーを補充し終え、通信機越しにそう呼びかけてくるつかさにそうね、と首肯するアイナ。
(「お願い、力を貸して」)
 願いと共に、胸のペンダントに接吻を一つ。
 アイナの願いに応じて、その姿を現したのは……。
『英雄達よ、決して狼狽える事なかれ! 私の歌がその背を支えよう!』
「私達の存在が、皆の力になる。だから、行くわよ」
 つかさの呼びかけに応じる様に、猟兵達は十字皇シュラウディスに向かって駆けだした。

 ――セイヴァーファイトレディー……GO!

 そんな声が聞こえてくる様な、そんな気がしながら。


(「『十字卿』――吸血鬼の領主。それと戦うのは初めてですね。本物の吸血鬼、油断はなりません。しかし……」)
「何故、オブリビオンであるあなた達が魔神を作るつもりなのですか?」
 青と深緑色の魔法陣をルーンソード『スプラッシュ』の先端で幾重にも描き出しながら思考を言の葉に乗せて問いかけるウィリアムに答えず、深紅の双剣を構えるシュラウディス。
「……お前の考えていることなどどうでも良い。今は、お前のことを彼女達と共に、僕達が倒す!」
 赤黒く禍々しい全身鎧、その口元を覆い隠す面頬を引き下ろし、全身を少女達の白き靄で覆われた敬輔が、鉄仮面の向こうから鋭い赤い眼光を光らせながら黒剣を大地に擦過させて振り上げる。
 放たれた斬撃の刃、そして姫桜とG・オウガ(1/5)が、琴の和弓・蒼月から放たれた1本の矢が分裂した100を優に越える破魔の矢と、ガーネットの巨大な十字架状の携行型ビーム砲塔デバイスから射出された光弾の援護を受けて一気に迫るが、シュラウディスはそれに特に驚いた様子を見せぬままに、じっとそれらの攻撃を見やっていた。
「数百のその矢……起点となるは、100にして1足る一本の矢か。なればその中心点を見誤ら無ければ、我には無力だ」
 呟きに応じる様に。
 100を越えた破魔の矢の内の一本を光の鎖で縛り上げるシュラウディス。
 金色の光の鎖が、まるで絡め取っていく様に周囲の無数の矢に広がり、それらを次々に縛り上げていく。
(「まだ、破魔清浄の矢は加えておりませんが、それにしたって……」)
 それ以前に……この無数の金色の鎖はまるで……。
「■■■の鎖……?」
(「今……私、何を口走りましたか……?」)
 自分でさえも聞き取れ無い位の小声で自分が呟いた言葉の意味を考え、微かに首を傾げる琴。
 意味が分からない以上、考えても仕方の無いことだとは分かっていても、何となく自分の口から零れそうになった言葉の意味を考えずにはいられなかった。
「流石に卓越した剣士だけのことはあるか」
 琴の矢の様子を見ながら呟いたガーネットの光弾はシュラウディスの右脇腹を掠め僅かな隙を作り、そこに……。
『慄け咎人、今宵はお前が串刺しよ!』
「皆の思い……その身で受けろ!」
「そりゃそりゃそりゃそりゃそりゃそりゃぁ!」
 姫桜のschwarzとWeißによる二槍による刺突、敬輔の放った衝撃波そしてその巨体からは想像の付かぬ速度で残像を引いたG・オウガの無数の拳の乱打が迫る。
「むう!」
 姫桜の二槍による攻撃は左の深紅の剣で受け止め、敬輔の衝撃波は右の深紅の剣で掻き消し、つかさの放った無数の拳はその拳の軌道を読み、頬や耳朶、そして衣服の内側の所々に織り込まれた固い部分で受け流し、被害を最小限に留めたが……。
「そこですね。『受けよ、天からの贈り物!』」
「氷の魔法騎士、ウィリアム・バークリー、お相手仕ります! ……Active Ice Wall!」
 箒に跨がり、空中を浮遊する明が七色の杖の切っ先をシュラウディスに向けて突きつけると同時に、ウィリアムが魔法陣から幾何かの氷塊を射出。
 明の杖の切っ先から放たれた七色の光が、天空より飛来する雷を受け止めて拡散し、それがウィリアムの放った氷塊と混ざり合って、戦場全体を塗り潰さんばかりの大地を這う雷獣となってシュラウディスに襲いかかる。
「ぐうっ?!」
「十字卿シュラウディス? アハハッ! 戦神似の次は十字卿とは面白いわね!」
 戦場に来てからずっとその名前に引っかかる様な表情を見せていた理恵から無理矢理人格を奪い取ったリエが鮮血槍を螺旋状の捻りを加えながら突き出してシュラウディスの足を貫かんと迫る。
「さあ、かの十字卿の様に意志の純粋さも無く、知見も浅く、浅薄な自意識とプライドに囚われた愚かで矮小な男なのか、それとも違うのか見せてみなさい!」
「さて……何のことであろうか?」
 気にした素振りも見せず、双剣を撥ね上げて姫桜達の攻撃を弾き飛ばすと同時に堂々とリエに向かって踏み込みながらギロリ、と眼光鋭くリエを睨め付けるシュラウディス。
 鋭き眼光と共に放たれた逆十字型の深紅の光矢がリエの肩を射貫く。
「チッ!」
「汝は少々、力任せが過ぎる様だな。それでは我と刃を交えること叶わぬ!」
 カッ、と咆哮と共に凄まじい程の殺気を叩き付けながら、深紅の双剣を振り抜くシュラウディス。
 咄嗟に鮮血の影業を解放し、深紅の双剣を受け止めるリエだが……。
「隙だらけだ!」
「理恵!」
 返す刃で逆袈裟に深紅の双剣を振り抜くシュラウディスに姫桜が表情を変え、リエとシュラウディスの間に割り込み、二槍を十字に構えてその一撃を受け止める。
 闇属性の瘴気の載せられた双剣を受け止めながらも、ズシリ、と全体にのし掛かる様な衝撃を覚えた姫桜の瞳からヴァンパイア化の影響とでも言うべき血涙が1滴、2滴と滴り落ちた。
『君よ、明日を望むなら剣を取れ! 艱難辛苦の群れを薙ぎ払い、扉の向こう側へ駆け抜けろ! 手にした剣、それは未来への扉を開ける鍵になる!』
 姫桜が傷を負いよろけたところに響き渡るは、『英雄達を鼓舞する天上の歌姫』
と化していたアイナの旋律。
 それは、信ずる未来の為に戦う者達に捧ぐ、希望の歌。
『未来の扉を開ける事も叶わず散った花! 返して貰うぞ、彼女達の涙と魂と尊厳を!』
 マイク型のサウンドウエポンを使って絶えずそれを歌い続けるアイナが、明とウィリアム、そしてリエによって生まれたその隙を見逃さず戦場を疾駆して接敵し、大鎌形態のDeathBladeを横薙ぎに振るう。
「ぬぅ!」
 シュラウディスはその攻撃が自らの武器を取り落とさせ様としている事を見切り、咄嗟にサイドステップでその攻撃を躱すが……。
「それは『かみさま』と同じだ」
 自らの黒剣が喰らった魂の感情と記憶からその動きを読んだ敬輔がその正面に回り込み黒剣を唐竹割りに振り下ろし、更にガーネットがブラックバングルから漆黒の衝撃波を解き放ちながら至近に迫る。
「如何に格上と言えど、これだけの連続攻撃には対応できないだろう」
「燃え尽きなさい!」
 ガーネットの衝撃波に地面を抉られ、足止めを喰らったシュラウディスに無数の分身を周囲に展開、シュラウディスの目を欺きながらG・オウガが接近し、真正面から両掌に集った炎の精霊達を解き放つ。
「行くわよ、荒谷流の名の下に! オウガ・爆竜拳!」
 コクピットのつかさの叫びと共に、両掌を重ねて突き出したそのモーションに合せる様に、G・オウガの両掌から炎の精霊達が極太の光線となって解き放たれる。
 解き放たれた炎の精霊達の莫大な力に思わず驚愕の表情を浮かべながらも、自らを漆黒の霧で覆い尽くすシュラウディス。
 ――炎の光線が、シュラウディスを焼き払う。
 だが……体の彼方此方に火傷を追いながらも、シュラウディスは立っていた。
「その絡繰り……どうやらただの木偶人形では無い様だな、貴様。ならば我も一つ芸を見せよう」
 呟きと共に漆黒のマントを翻しながらタン、と大地を踏み抜くシュラウディス。
「逃がしません……Icicle Edge!」
「これなら、どうですか?!」
 咄嗟に左手で十重二十重に魔法陣を構築、青と深緑色のそれから100を越える氷柱の槍を撃ち出すウィリアムと、和弓・蒼月に再び破魔の矢を番え、天空に向かって撃ち出す琴。
『逃がすものか!』
 アイナが近くの木にKillingWireを放ってそのまま木の方へと体を引き上げて高みに上がり、大地をShadow Dancerで蹴って黒い軌跡を描きながらシュラウディスへと接近。
(「……来る、来る、来る! 『かみさま』が……!」)
「大丈夫。そんな事はさせない!」
「天に近付けば近付く程、格好の餌食だとは気がつかないのでしょうかね」
 自らと感情を共有した亡者達の声に耳を傾け一つ頷いた敬輔が、彼女達の諸悪の根源へと抱える憎悪と憤怒を黒剣に乗せて、白き衝撃波を解き放ち、明が箒に跨がったまま、七色の杖をシュラウディスに突きつける。
 明の解き放った100を優に越える氷属性の魔法の矢が、ウィリアムのIcicle Edgeと混ざり合い、数百の氷柱の槍となってシュラウディスの身を貫き、更にアイナの空中でのムーンサルトキックが、シュラウディスの顎に命中。
「それで攻撃が途切れると思うな」
「私達は……立ち止まるわけには行かないのよ!」
 ガーネットがクロスグレイブの引金を引いて光弾を撃ち出し、更にschwarzを全力で投擲する姫桜。
 ガーネットの光弾と、姫桜のschwarzが琴の解き放った100を越える矢を目眩ましにしてシュラウディスのマントを貫きその飛行を阻害しようとするが、シュラウディスは止まらない。
「行くぞ……堕天十字翔!」
 叫びと共に双剣を振り抜き、超々広範囲の巨大な深紅の三日月型の刃を放つシュラウディス。
 ――それは、生きとし生けるもの、全てを斬り裂く堕天使の業技。
「やれると……思うな!」
 その叫びは敬輔のものか、それとも……『少女達』のものだったのか。
 敬輔の放った衝撃波が、まるでその技が来るのが分かっていたかの様に白き三日月型の刃に分身して、空中でそれとぶつかり合う。
 その勢いに勝利したのは、シュラウディスの放った深紅の刃だったが……。
「!」
 ――敬輔のそれは、琴の放った100を越える破魔の矢の内の一本を、シュラウディスに突き立てるには十分だった。
 その矢が突き刺さったことに驚いたのは、果たして誰であったのだろう。
『遠つ御祖の神、御照覧ましませ!』
 すかさず琴が、祝詞を捧げる。
 その祝詞に応じる様にシュラウディスの右肩に突き刺さった破魔の矢が発光。
 それは……全てを浄化する、破魔の力を持った破邪の光。
「ぐぅっ!」
「アハハッ! 良い様だね、十字卿!」
 破邪の光に内側からその身を食い尽くされそのまま地面へと落下し咄嗟に受け身を取って被害を最小限に抑えるシュラウディス。
 そんな彼をリエが嘲笑しながら、その左肩に鮮血槍を突き出し。
「『人造魔神生誕計画』だなんて趣味の悪い企みは此処で潰してみせるんだから……!」
 深紅の涙を瞳から流し、自らの寿命が削れていく感触を存分に味わいながら、突き出した姫桜のWeißがシュラウディスの腹部を串刺しにしようとする。
「ぐっ……まだだ、まだこの程度で……!」
 バク転しながら空中で態勢を整え直したシュラウディスが双剣を十字型に構えて姫桜とリエの攻撃を辛うじて受け止めたその時を逃がさず。
「そこだ!」
「荒谷流殺法……オゥゥゥゥゥガ、シャドウ!」
 ウィリアムの展開していた氷塊を盾に、敬輔の放った衝撃波によって威力を削がれていた衝撃波を受け流したガーネットとつかさの搭乗するG・オウガが氷塊の影から飛び出しシュラウディスに飛びかかった。
 その後方では、ウィリアムが静かに祈りを捧げている。
(「どうか皆さんに、癒しの力を……!」)
 Active Ice Wallを維持しながらのウィリアムの疲労は並々ならぬものがあったが、それでもそれによってガーネット達の被害が最小限に留められたのは、恐らくその祈りが届いた結果であろう。
「ふんっ!」
 持ち前の怪力で十字に構えた双剣を振るって姫桜とリエを弾いたシュラウディスの胸に飛び込む様にガーネットが接近し、G・オウガが覆い被さる様にシュラウディスの背後を取っている。
「チャンスですね。援護しますよ」
 空中から眼下の状況を観察していた明が天空へと七色の杖を掲げ、左手の指先でシュラウディスを指し示す。
 同時に明の魔力による補助を受けた天雷が、シュラウディスに降り注いだ。
「ガァッ!」
 それに体を痺れさせながらも、右の深紅の剣でガーネットを、左の深紅の剣で背後のG・オウガを貫こうとするシュラウディス。
 自分に向かって放たれたその攻撃に、ガーネットがしてやったとばかりに口元に笑みを一つ。
 ――それは正しく、謀を成功させた、吸血鬼の笑み。
「しまった!」
 ブレイドウイングをエッジ化させて辛うじてその刺突を受け、受けきれなかった様な表情を見せて体勢を崩しながら、両手を引いて自らのエーテルを溜め込むガーネット。
「汝の技、見切らせて貰った! これで……!」
 ブレイドウイングを弾き切り返してガーネットを斬り裂こうとするシュラウディス。
 だが、背後のG・オウガ……つかさへの攻撃に気を取られていた事もあり、彼は気がつかなかった。
 両掌を後ろに引きながら懐に飛び込みその両掌を突き出し、強パンチと共に高圧電流を放出するという……ガーネットの作戦に。
「痺れろ!」
 明の放ったサンダーボルトに全身を感電させられていたシュラウディスに更に放たれたガーネットの高圧電流。
 それはシュラウディスの全身を麻痺させた。
「グォォォォォッ!?」
 思わずつかさを狙った深紅の剣を取り落とすシュラウディス。
 最もガーネットのその攻撃は、味方の有効打への布石を与えるには十分過ぎる役割を果たしていた。
「その隙は見逃さないわ! 行くわよ……荒谷流・零式旋風剣!!!!!」
 自らの『零式・改三』と『歯噛剣』を二刀流で抜いて回転しながら振り回し一陣の竜巻となって、シュラウディスを残虐に斬り裂いていくつかさとG・オウガ。
 背中からの強烈な斬撃の海に飲まれたシュラウディスは、右腕と背中をズタズタに切り裂かれ大きくよろよろと前によろけた。
 ――と、そこに……。
『……皆の無念、晴らさせて貰うよ!』
 全身に纏われた白い靄の様な霧達と共に、全身鎧を身に纏った敬輔が飛び出した。
 黒剣を突き出して、つかさの一撃でよろけたシュラウディスの胸に突き立て、そのまま横薙ぎに刃を振るう。
 ――許せない、許せない、許せない……!
 ――お前は、お前だけは……!
 黒剣で喰らい尽くした少女達の怨念が黒剣よりシュラウディスの体内で放射され、そのままグイ、と横に引き切る敬輔の動きに合せる様に、シュラウディスの胸に大きな傷跡が出来る。
「グッ……ゲボハッ……この……我が……!」
『此処で一気に決着を付ける!』
 上空を飛んでいたアイナが、ウィリアムが上空に召喚した氷塊を足がかりにそれを蹴ってその身を加速させ、黒い光となって大鎌形態へと変形させたDeathBladeを振り下ろした。
 振り下ろされたアイナの大鎌に左肩を切り刻まれ、血飛沫を宙へと舞わせるシュラウディス。
「さてと、これで終わりになりそうですね、終わらせましょう」
 ――魔法使いが空を飛ぶ乗り物、箒に跨がり、上空から敵を見下ろす明の様は、正しく天からの目。
 明のその命に応じる様に。
 幾度目かの雷光が、シュラウディスを裁かんと天空から降り注ぎシュラウディスの全身を打つ。
「さて、その状態で『十字卿』、貴方はこれに耐えることが出来ますか? ……行け、Icicle Edge!」
 ひゅっ、とルーンソード『スプラッシュ』を振り下ろし、今までずっと維持していた青と深緑色の魔法陣から100を越えた氷柱の槍を解き放つウィリアム。
「これで……終わりにしましょう」
 琴もまたそれに合わせる様に、和弓・蒼月に番えた『破魔の矢』を射る。
 大地と水平に疾走する100を優に越える破魔の矢の群れが……初撃こそ封じることの出来たそれらの矢が……シュラウディスの全身を貫いて破邪の光と共に爆発を起こし更にウィリアムのIcicle Edgeの氷柱の槍がシュラウディスの全身を貫いていく。
「が……はっ……?!」
 ヒュー、ヒュー、と喉を鳴らすシュラウディス。
「足止め、と言うかぼくの攻撃は此処までか。皆さん、後をお願いします」
「分かったわ!」 
 ウィリアムの呼びかけに応じた姫桜がschwarzを呼び戻し、Weißと共に吸血鬼化した結果として得た怪力で、ねじ伏せる様にシュラウディスを串刺しにした。
「理恵!」
 姫桜の呼びかけに応じたリエがシュラウディスの懐に飛び込んだその時。
(「ごめんなさい、リエ。彼は私にやらせて下さい」)
 ――理由は、分からない。
 けれど母の娘として、理恵という一人の戦士としての手で、シュラウディスとの決着は付けなければいけない。
 そう……理恵は感じていたから。
「チェッ! しょうが無いな……分かったよ、理恵!」
 つまらなそうに舌を一つ鳴らし、お別れの挨拶がてら鮮血の影業を解き放ちシュラウディスの身を縛り上げるリエ。
 そしてリエ……否、理恵は。
「……慄け咎人、今宵はアナタが串刺しです!」
 母や、姉である姫桜の決め台詞を叫びながら。
 ――理恵がパイルバンカーを射出し、シュラウディスの『死の中心点』……即ち心臓を穿った。
「ゴ……ゴハァ……?!」
「終わらせよう、皆」
 理恵の杭に心臓を貫かれて近くの壁に縫い止められたシュラウディスに。
 シュラウディスの野望によって、その全てを狂わされた少女達の魂が形を為した白い靄を纏った黒剣を敬輔が唐竹割りに振り下ろす。
「あなたによって苦しんだあの子達の想い……その報いを受け止めなさい!」
 つかさの乗るG・オウガに背後から羽交い締めにされ。
「これ以上、あの子達の苦しみを増やさせないわ!」
『これで終わりだ……十字卿!』
 姫桜に右腕を、アイナの大剣形態に変化したDeathBladeに左腕を串刺しにされ。
「年貢の納め時の様ですね、十字皇シュラウディス」
「『人造の魔神』とやらを生み出し、成し遂げたい目的もあったのだろうが……それもこれまで。異端の使徒にはこれにて退場願おう」
 明が天空から雷を降り注がせ、更に両掌に溜め込んだ高圧電流を、両足に両掌を叩き付けたガーネットが放出し、その全身を麻痺させたところで。
 敬輔の黒剣が、十字皇を真っ向両断に斬り裂いた。
(「こ、こんな……こんな所で……我が……我が……!」)
「……貴様等の勝ち、か。だが努々忘れるなかれ。我等十字皇は一人に非ず。たとえ、我が倒れようとも……第2、第3の十字皇が貴様達を……」
「だが、お前の野望と彼女達の人生を奪ったお前は、終わりだ。終わりなんだよ!」
 黒剣を通して、敵を討てたという少女達の愉悦に同調しながら敬輔がそう告げて黒剣を振り抜き終わったその時。
 十字皇シュラウディスは、灰燼と帰すのだった。


「……終わりました、か」
 ふぅ、と額から零れ落ちていた汗を拭い、肩の力を抜きながら琴がそっと息を一つ吐く。
「これで、全部が終わったわけじゃないけれどね」
 G・オウガから普段の巫女服姿に戻ったつかさがタラップを伝って降りてそう呟くのに、そうですね、と微かに憂いげな表情になった琴が頷き返していた。
(「敵については一段落、でしょうか」)
 でも、この戦いが終わったからと言ってこの地での全ての問題が解決したわけでは無いのだとウィリアムが思い、空を見上げて想いを馳せる。
「皆さんは、これから一度戻るのですか?」
 箒から降りて問いかけてきた明にそうね、と姫桜が首肯を返した。
「やらなきゃ行けないことは、沢山あるものね……」
「……そうだな」
 姫桜の呟きにガーネットが沈痛な表情を浮かべて頷き。
 理恵も同様に、軽く首を縦に振っていた。
 ……と、その時。
 ――ガン!
 大地に拳を振り下ろす、鈍い音が辺り一帯に轟いた。
 微かに驚いた敬輔が其方を振り向けば、そこにはきつく唇を噛み締め、その目に涙を溜め込んだアイナ。
「くっ……ウァァァァァァァァァァァ!」
 堰が切れた様に慟哭するアイナのそれは、少女達への手向けであろうか。
 それとも……?
「アイナさん……ありがとう」
 真の姿を解除した敬輔が小さく呟き、彼女のその背に手を添えようとしたその時。

 ――敬輔に力を貸してくれた少女達の幻影がアイナの隣にひっそりと佇み、アイナの肩を温める様に、そっと手を置いてくれている姿を幻視した気がした。

(「いや、此処は……」)
 嘗て、ホープと呼ばれた死者達の村、イマジナリィ。
 禍王によって支配されていた時の魔力の残り香が、或いはアイナの慟哭に応じてプラスに働き、敬輔に彼女達の姿を見せてくれたのかも知れないけれど。
(「だとしたら、この村も……テンバランスのこの後も……」)
 見届けなければいけない。
 確信に近いそれに一つ頷き、敬輔達は静かにその場を後にする。

 ――テンバランスの人々の心を解きほぐし、村の再興を行うために。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『救われた者の明日の為に』

POW   :    体の鍛え方や力仕事のコツを教える

SPD   :    生活に必要な技術を教える

WIZ   :    心を豊かにしてくれる芸術や知識を教える

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


*業務連絡:次回更新予定は、6月4日(火)~6月6日(木)の夜の予定です。プレイングはこの3日間がプレイング期間として入るよう、お送り頂けます様、お願い申し上げます*

 ――テンバランス。
 イマジナリィで十字皇シュラウディスを撃退した猟兵達。
 疲れを感じながら、猟兵達がテンバランスに戻ってきたその時、猟兵達を迎えたのは……。
「あ、ああ……お前達は……」
 恐怖と畏怖、2つの感情に支配され凍り付いた表情を浮かべた村人達。
 彼等はお館様を失い、そして十字皇に直に暴力を見せつけられた。
 だが、一方で十字皇シュラウディスの『人造魔神計画』に自らの保身の為に間接的に協力していた加害者だという見方も出来る。
 けれど、この村人の全てがそうだったのかまでは分からない。
 そして彼等の脅威が無くなった以上、新たな偶像としての英雄、心の拠所となる者達とこの村の復興を彼等は必要としている。
 ――その事は、其々がどんな思いを抱いているかは定かでは無いにせよ、猟兵達にも一目瞭然だった。
 なれば、此処で彼等を見捨てるわけにも行かないだろう。
 故に猟兵達は、村人達の心を解きほぐし、そして村の再興を行うべくテンバランスへと足を向ける。

 ――それが今、自分達が為すべき事なのだから。
ウィリアム・バークリー
「存在感」を前面に、「優しさ」と「覚悟」を込めた声で村人を鼓舞します。

皆さん、オブリビオンによる圧政は終わりを告げました。
これからは、自分たちで行き先を決めて、道を切り開いてください。

と言うだけなら簡単だけど。
『ホープ』のことを知る人たちが、自分達の足で歩こうとするかどうか――

忘れないでください。ぼくらは二度にわたってオブリビオンを討ち滅ぼしました。彼らは決して絶対の存在ではない。
三度このテンバランスが危機に見舞われたなら、ぼくらもまた救いに現れましょう。
その誓いとして、このお守りを望む方に。
(「祈り」を込めて氷の精霊の力を凝縮して作った、水晶のような溶けない氷の護符)

願わくばこの地に安寧を。


彩瑠・姫桜
村の人達と料理を作りたいわ
負の感情をほぐすのは温かい食べものだと思うのよ
作業しながら、その後は食べながら、村の人達とたくさん話をするわ
少しでも感情がほぐれるように尽力するわね

【コミュ力、料理、優しさ、礼儀作法】使用
他の方との絡み歓迎


被害者でもあり加害者でもある……ね
(村人達の表情を見つめ、目を閉じ、小さく息を吐き)

怖がらないで、なんて
言われたところで抱く感情がなくなるわけじゃないけど
それでもあえて言うわね

今までをなかった事にはできないし
怖い事はこの先もたくさんある
それでも、貴方達は、これからもこの場所で生きていくんでしょう?
なら、怖くても進まなくちゃ
ちゃんと受け止めて、また始めていきましょう?


藤崎・美雪
※この章からの参加

遅くなってすまない
経緯はずっと気にしていたのだが
人手が必要だと感じて手伝いに来た

この村の人々の口に合いそうなハーブティーとお菓子を用意して
酒場の一角をお借りして臨時喫茶を開こう

ハーブティーとお菓子で場が和んだら歌を披露しようか
穏やかなメロディと歌詞の歌を何曲か選び、披露
【シンフォニック・キュア】は…使っていないからな?(お任せします)

芸術や趣味は、心に余裕がないと楽しめない
今、楽しめるかどうかはわからないが
少しでも大人達の心を落ち着かせ、癒し、
そして今後のことを考える手助けになればそれでいい

一仕事終えた他の猟兵達にも
ハーブティーとお菓子を振る舞うぞ

アドリブ連携大歓迎




 ――テンバランスに戻ってきた猟兵達。
 その入口で自分達を待っているかの様に立っている娘の姿を見て、彩瑠・姫桜が瞬きを一つ。
「初めまして、だな。遅くなってすまない」
「貴女は?」
「藤崎・美雪という」
「美雪さん、貴女はどうして此処に?」
 問いかける姫桜にそう答える美雪に、軽く首を傾げたウィリアム・バークリーに、実は、と美雪が話を続けた。
「知人が戦っている事も有り、私も経緯をずっと気にしていてな。それでこの村の復興の為に、人出が多い方が良いのでは無いかと思い、転送して貰った。私ではあまり力になれないかも知れないが、どうかよろしく頼む」
「良い匂いね」
 その匂いを感じ取った姫桜の呟きに、美雪がふと、柔らかな微笑を零した。
「これでも喫茶店を経営していてな。村人の心が落ち着けば、とハーブティーとお菓子を用意してきたんだ」
「ああ、ハーブティーですか。確かに良いかも知れませんね」
(「きちんと、話をして少し落ち着いてからになるでしょうけれど」)
 美雪の解に内心でそう呟きながらも、納得の声を上げて首肯するウィリアム。
「確かに人手は多いに越したことはありませんね。宜しくお願いします、美雪さん」
「ああ、宜しく頼む、ウィリアムさん」
 ウィリアムの言葉に美雪が頷き返し、姫桜達は恐怖と畏怖、2つの感情に彩られた村人達の方へと足を向けた。


 辿り着いた猟兵達の何人かが其々に行動を起こすその間に、ウィリアムが大仰に身振り、手振りを交えて人々に呼びかけた。
「皆さん、オブリビオンによる圧政は終わりを告げました」
 ――ザワザワ、ザワザワ。
 様々な感情が綯い交ぜになった村人達の反応は多種多様。
「じゃ、じゃあ、アンタ達がお館様を……?」
「そ、そんな、まさか……」
「この事に関してぼく達が皆さんに嘘をつく理由はありません。少なくとも皆さんの内の何人かは、ぼく達がオブリビオン達を倒している姿を見たことがある筈です」
 慌てふためく人々に対してそう話し続けるウィリアムの言葉に、何人かの村人が声を上げた。
「そうか。あんた達、あの時……」
「私達を……助けてくれた……」
 つい先程、村の前で繰り広げられた異端の神々との戦いの中で救われた村人達が輪に含まれていたのであろう。
 あの時、その場にいたウィリアムや其々に向かうべき場所へ向かった猟兵達の姿を見て口々に囁き合い、それが広がっていく。
(「でも、だからと言って簡単に心が解れることは無いわよね」)
 それでも尚硬い表情のままの村人達の反応は当然だろう、と姫桜は思う。
 猟兵に覚醒するまで、自分はただの人間だと思っていた。
 もし、その頃の自分が彼等と同じ立場に立っていたとしたら……きっと、彼等と同様に、不安げな表情を浮かべて自分達を見つめていたに違いない。
 ……如何に自分達が村人達の窮地を救った救世主だったとしても。
 そんな村人達の想いは、自分に特殊な力があると気がつき、人知れず家族の元を離れた美雪にも共感できる部分である。
 だから……。
「すまない、皆さん。一つ私の頼みを聞いて貰えないだろうか?」
「えっ?」
 美雪の問いかけに、村人達が怪訝そうな表情になる。
 姫桜も似た様な事を考えていたのだろう。
 同感、とばかりに一つ頷き、村人達に微笑みかけた。
「良かったら、私達と一緒に料理でも作ってみない?」
「私は、酒場の一角をお借りしたい。皆さんの口に合いそうな、ハーブティーとお菓子を用意してきたんだ」
 姫桜と美雪の呼びかけに、村人達は虚をつかれた表情になりつつもそれに頷き、ウィリアム達を酒場へと案内するのだった。


(「あの時は情報収集をするために入った酒場でしたが、今度は村人の皆さんの心を解すために入るんですね」)
 徒然なくそんな事を思いながら、ふと、ウィリアムは先日この酒場で話し込んだソーティスの事を思い出す。
 この村を訪れた時、彼らしき姿は見なかった。
 今頃はまた、何処か別の村に向かっているのだろうか。
「ここをこうして……こうすれば良いのよ」
「……こうか?」
「ええ、そうよ」
 あの時は渋い表情をしていた酒場のマスターが、今回は姫桜に誘われるがままに料理に精を出している。
 異端の神々の戦いから逃げ込んだ村人達を守るために、ウィリアム達が体を張って守ってくれたと言う事実は、この酒場を中心に広がっていた。
 つまり彼等にとっては恩人であり、同時にある意味では『お館様』以上に畏怖すべき対象と言う事だ。
 そんな相手が柔らかい調子で一緒に料理をしてみないか? と誘ってきたら、彼等に断る理由は無いだろう。
「少しでも口に合えば幸いだ。どうだ?」
 酒場の一角で臨時喫茶を開き、お菓子とリラックス効果のあるハーブティーを穏やかに勧める美雪に頷き、村人達がそれを啜り始めた。
「あっ……」
「!」
 幸い、それらは村人達の口に合ったらしく、彼等は少しだけ緊張の表情を解く。
 その様子に美雪は微笑み、穏やかな歌を口遊んだ。
 それは、この村の人々が生き残った事を喜ぶ生命の歌。
 そして……生きている事への感謝の祈りを捧げる歌。
(「シンフォニック・キュアは……使っていないぞ」)
 そもそもあれは人々が『共感』出来なければ、その力を発揮しない。
 あくまでも励ましを与えるためにはシンフォニック・キュアでは無く、普通にその歌を口遊み続ける方が効果的だと美雪は思うのだ。
「さあ、出来たわよ」
 美雪の歌声に聞き惚れて、少し心が解れウィリアムの言葉の意味を考える余裕が育まれつつある人々に対して、姫桜がマスターや他の女性達と一緒に作った手料理を振る舞った。
 温かな熱の籠もった料理達が並べられていく。
「どうぞ、召し上がれ」
 微笑む姫桜の優しげな笑みに促され、人々がそれらに手を付けた。
「ウィリアムさんと美雪さんもどうぞ」
 姫桜に促され、村人達と共に姫桜達の手料理を食すウィリアム達。
(「この風味は……」)
 UDCアース流の『家庭の味』だと美雪は思う。
 丹精込めて作られた愛情の籠もったそれらの料理は、美雪が最初に入れたハーブティーの効果とも相まって村人達の表情を、自然柔らかくさせた。
 ――と。
「……リィ」
 誰かが、啜り泣く様な声。
 姫桜が振り向けば、そこでは村人の一人が嗚咽を堪える様な表情をしていた。
「リ……リィ」
 その味を味わい、恐らく彼は思い出したのだろう。
 ――大切な……生贄となった少女のことを。
 それは彼にとって家族だったのか、それとも恋人であったのか。
 それは、姫桜には分からないけれど。
 啜り泣く青年の様子を見て思わず吐息を一つ零し、そっと祈りを捧げる様に目を瞑る姫桜。
(「被害者でもあり、加害者でもある……ね」)
 彼の涙は、犠牲となった者達への贖罪の涙なのだろうか。
 それとも……。
(「今、私に出来ることは……」)
 姫桜の用意してくれた食事に手を付けていた感傷に浸っていた美雪もまた、食事の手を止め、先程とは異なる――そこには独りでいる事への寂しさや、家族への思いが込められた――歌を歌う。
 美しく、静かで、けれどもほんの少しだけ物悲しい旋律は、村人達の今までの行動を顧みるために、十分な意味を持って心に響く。
 中には姫桜の料理と美雪の歌に引かれる様に、涙を流し始める者もいた。
 或いは最初に啜り泣きを始めた青年に、触発されたのかも知れないが。
 ――でも。
(「……これで、良いんだ」)
 涙を流す。
 悲しいことや、苦しいこと、辛いこと――時には嬉しいことも含まれるが――涙を流すという行為は、村人達のそれらの感情を洗い流す行為でもあるから。
 そしてその行為が、村人達の心を癒す効果を齎す。
(「まだ、彼等が今後のことを考えることが出来るとは私には思えないが」)
 それでも……負の感情を涙で洗い流して心を楽にし、今後のことを考える手助けになってくれれば、それで良い。
 そう美雪は思い、静かに旋律を口遊み続けるのであった。


 ――そうして、暫くして。
 それなりに人々が落ち着いてきた頃を見計らって、ウィリアムが言の葉を紡いだ。
「これからは、自分たちで行き先を決めて、道を切り開いてください」
 ウィリアムの言葉は、少しだけ物事を考える余裕が出来ていた人々を戸惑わせるに十分だった。
 無理も無い話である。
(「口で言うのは簡単ですけれど、この村の人々は……」)
 嘗て『ホープ』と呼ばれた村の残酷な結末を知っている。
 そんな人々が、いきなり『貴方方は自由です』等と言われて、果たして自分達の足で歩こうとする事が出来るのだろうか――?
「……怖がらないで、なんて――言われたところで、抱く感情がなくなるわけじゃないと思うけれど、それでも敢えて続けさせて貰うわね」
 ウィリアムの言葉を引き取ったのは、姫桜。
 姫桜の目は、特に最初に泣き出した青年の方へと向けられていた。
「今までを無かった事にはできないし、怖い事はこの先も沢山あるわ」
 ――ザワザワ、ザワザワ。
 姫桜のその言葉に村人達が戦々恐々とした表情になり、其々にざわつき始めた。
(「無理も無い話よね」)
 でも……それでも。
「それでも貴方達は、これからもこの場所で生きていくんでしょう?」
 何処か確信の籠められた姫桜の言葉に村人達がハッ、とした表情になり息を呑む。
「……チッ、まさか嬢ちゃんにそんな説教をされることになるなんてな」
 酒場のマスターが少しだけ苛立たしげに舌打ちを一つ。
 だがそれは、姫桜に真実を言い当てられたが故の不快感である事をマスターは理解していた。
 そしてそのマスターの舌打ちの意味を、村人達が分からぬ筈が無い。
「なら、怖くても進まなくちゃ」
「忘れないでください。ぼく達は、二度にわたってオブリビオンを討ち滅ぼしました」
 姫桜の言葉を引き取る様に、ウィリアムがそう告げると。
 村人達がウィリアムのその言葉に釣られてウィリアム達を見つめてきた。
 ウィリアムは、彼等は、と出来る限りゆっくりと、諭す様に言葉を続ける。
「彼等オブリビオンも、決して絶対の存在ではありません。もし……三度このテンバランスが危機に見舞われたなら、ぼく達もまた救いに現れましょう」
 ――それは誓いであり、同時に村人達の心に希望の火を灯す為の、第一歩。
「でも、もしあんた達が現われなかったら、その時は……?」
「ぼく達は約束を違えません。その為の証として、これを用意しています」
 そう呟き、ウィリアムが『祈り』を籠めてそれを紡いだ。
「……Amulet」
 ウィリアムの呪に応じる様に。
 青と深緑色の魔法陣が大地に描き出され、そこにこの村の地下を流れているのだろうか、地脈の力が流れ込み、黄土色の輝きを発する。
 ――そうしてウィリアムの前に生まれたのは、水晶のような溶けない氷の護符。
「これは……?」
 村人の一人が現われたそれに思わず息を飲むのに、ウィリアムが約束の印です、と静かに返した。
「もし、またこの村が襲われたら、ぼく達が来ることを誓う護符です。望む方がいらっしゃれば、お望みの皆さんにぼくはこれをお渡しします」
(「この地の精霊達も、この護符を作るためならば、幾らでも力を貸してくれるようですしね」)
 胸中で独りごちるウィリアムの言葉に、村人達が迷う様な表情を向け合っていた。
「ちゃんと受け止めて、また始めていきましょう?」
 そう、姫桜がその背を押す様に呟くと。
 村人達が、ウィリアムが作り出した護符を受け取っていく。

 ――そこに籠められた其々の想いを、胸に秘めて。


「お疲れ様だ、姫桜さん、ウィリアムさん」
 一頻り村人達に護符を渡し、そして彼等が解散したところで。
 美雪がウィリアムと姫桜にそう告げ、ハーブティーとお菓子を振る舞う。
 姫桜がありがとう、と一礼しそれを食べる間に、ウィリアムがハーブティーを啜って、ポツリと呟いた。
「彼等はこれから、どうなるんでしょうね……?」
「それは……」
 ウィリアムの呟きに、美雪は静かに首を横に振る。
 他の猟兵達がどの様に動いているかは分からないが、自分達に出来ることは残念ながらそれ程多くない。
 それだけは、何となく分かっていたから。
「正直、分からないわ。でも……あの子達の事を忘れない限り、そしてこの村を愛する心が在る限り、あの人達は生きていける。私はそう信じてもいるの」
 姫桜が自らの腕に嵌め込まれた桜を象った玻璃鏡を優しく撫でると。

 ――桜鏡が、彼女の思いを如実に表わす様に玻璃色に淡く輝き、静かに波紋を広げていった。

 


 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ガーネット・グレイローズ
なんだ、ひどく疲れた顔をしているな。
まあ、無理もないか……。
あのオブリビオンに何を吹き込まれたのかは知らないが……
生きるための選択を後悔してはいかんぞ。
泣いても笑っても、生きている限り明日はやって来る。
命ある限り日常は続く。なら、せめて人間らしく誇りを持って
生きるんだ。食事をし、働いて、共に語り合おうじゃないか。

村人と食卓を囲み、今まで生きてきた中で得た
知識や経験を語って聞かせよう。子どもたちに読み書きを
教えてもいいし、詩や音楽などの授業を開くのもいい。
いつか大人になったとき、何かの役に立つかもしれない。
だが、これだけは忘れないでほしい。
人を人たらしめているのは、希望。希望を持ち続けて欲しい。




 まるで、逃げる様に。
 酒場の中から居心地悪げに出てきた村人の姿を見かけたガーネット・グレイローズが思わず溜息を一つつく。
(「なんだ、ひどく疲れた顔をしているな」)
 最も、テンバランスの村人達を襲った悲劇のことを鑑みれば、そう言った表情になるのもむべなるかな。
「……俺は、俺達は……」
 ブツブツと俯き加減になって歩いているその村人にガーネットがそっと近付いた。
「どうした? 何かあったか?」
 さりげなく自分へと水を向けたガーネットに、興味をそそられたのだろうか。
 村人がガーネットの方を振り向き、あっ、と思わず声を上げた。
「貴女は確か、あの時俺達を……」
「私のことを覚えていてくれたか」
 素直に嬉しい話だなと内心で首肯するガーネット。
 程なくして彼女は、村人の表情に慚愧の念が浮かんでいることに気がつく。
(「ああ、成程。そう言うことか」)
 酒場の中から聞こえてくる歌声やそれに混ざって聞こえてくる哀惜の声音を聞き取り、何となく事情を察するガーネット。
 恐らくガーネットのこの男は良心の呵責に耐えきれなくなって出てきたのだろう。
 自分達の村の娘達を贄にした事への罪の意識と向き合うことが出来るほど、全ての人々が強いわけでは無い。
「気にするな。生きるための選択を後悔しても仕方ないぞ」
「でも、俺達は俺達の命を守るために、娘達を……」
「それでもだ。禍王……いや、お前達にとってはお館様、か。あのオブリビオンにお前達が何を吹き込まれたのかは知らないが、それはお前達が生き残るために必要な選択だったんだ」
(「もし、私達がもっと早く来ることが出来れば……」)
 少女達の犠牲を、少しでも減らすことが出来たのだろうか。
 真偽の程は定かでは無い。
 ただ、確かなことは一つある。
 それは……。
「泣いても笑っても、生きている限り明日はやって来る」
「……っ!」
 ガーネットの確信を持って放たれた言葉に、男が思わず目を見開いた。
 それは真理であり、唯一の真実。
 ――故に。
「命ある限り日常は続く。なら、せめて人間らしく誇りを持って生きるんだ」
 それが、ガーネットの答え。
 口元に笑みを閃かせて告げるガーネットに村人がふっ、と肩の支えが取れた様な溜息を吐いた。
「……そうだな」
「よし」
 それに一つ頷き、ガーネットがそうだと続ける。
「どうした?」
「此処で会ったのも何かの縁だ。一緒に食事をし、働いて、共に語り合おうじゃないか。そうだ。子供達も一緒だと尚良いな」
 うんうん、と一人合点するガーネットに村人がそれならば、と一つ頷き、人々が集まって食事を取る広場へとガーネットを案内するのだった。


 ――広場。
「酒場以外にもこうして人々が集まって共に食事をする場所があるのだな」
「大人はともかく、子連れでなるべく大勢で食べるってなると、俺達は此処で食事をする。特に……今回みたいな事があれば尚更な」
 感心した表情でそう呟くガーネットに男が丁寧に教えてくれた。
「……そうか」
 ガーネットが相槌を返すや否や、広場の子供達が興味深げに集まってきてガーネットの隣の男に呼びかける。
「ジョン兄ちゃん、この人は?」
「俺達の恩人だよ」
「ガーネットだ。此処でお前達と一緒に食事が出来る、とジョンから聞いてな」
 ガーネットが返すと、子供達がわー、わーと賑やかになった。
 あれよあれよという間に子供達にその背を押され、子供達の輪の中心に連れて行かれる。
「それで、お姉ちゃんは何か僕達に教えてくれるの?」
「? 教えてくれる?」
 微かに怪訝そうに首を傾げるガーネットに子供達が素直にうん、と首肯した。
「さっきまでお姉ちゃんが歌を教えてくれていたんだ。見慣れないお兄ちゃんを見つけて、そのお兄ちゃんと一緒にいなくなっちゃったけれど」
「そうか」
(「多分、猟兵の誰かが子供達に歌を教えていたのだろうな」)
 その歌が、どんな歌なのかは分からないけれど。
 嬉しそうな子供達の表情から察するに、きっと心が明るくなる様な、そんな歌だったのだろう。
「よし。それなら私はお前達に読み書きを教えよう」
「読み書き? ……えっ!? お姉ちゃん、読み書き得意なの?!」
「そうだな。お前達に教える程度には得意だぞ」
「俺達は、ちょっと食事の用意をしてくるから、その間子供達の相手は頼むぜ」
 ガーネットに対する子供達の反応から気を利かせたジョンが、周囲の村人達に呼びかけて、食事の用意に取りかかる。
 その間、ガーネットは初歩の読み書きや、今まで彼女が経験してきた事柄を物語にして、面白おかしく子供達に聞かせていた。
 子供達の反応も上々だ。
「出来たぞ」
 暫くして。
 ジョンの呼びかけに子供達が歓声をあげ、料理へと向かおうとする。
「お姉ちゃん! お話聞かせてくれたり、色々教えてくれてありがとう!」
「ああ。でも、一つだけ君達に忘れないで欲しいことがあるんだ」
 ガーネットが子供達と共に、食事に向かいながらそう呟く。
「何?」
 純真な表情で首を傾げて問い返してくる子供達に、微笑を零しけれども真剣な表情でガーネットは言の葉を紡いだ。
「人を人たらしめているのは、希望。希望を持ち続けて欲しい」
「きぼー? ……うん、分かったよ!」
 本当に意味が分かっているのかいないのか。
 ただ、分からないなりに笑って頷く子供達の向日葵の様な笑顔は本物だ。
 その笑顔に微笑み返してその背を促し、大人達が用意してくれた料理に手を付けさせるガーネット。
 そんなガーネットの様子に、ジョンが微苦笑を零していた。
「今の言葉……」
「ああ。子供達だけじゃ無い。寧ろお前達……大人にこそ、忘れないで欲しい言葉だ」
 ――だって子供達がいるということ。それが大人達にとっての希望なのだから。
 口にはせずとも態度と表情でそう語るガーネットに、ジョンがこの場にいる村人達を代表して静かに頷き、そして頭を垂れたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

美星・アイナ
終わったね、やっと

今回の事、優希斗君も酷く気に病んでたみたいだし
ちゃんと終わったわと伝えないと
(くしくし、と涙を拭って)

私が皆に教えるのは自分が傷付いてた時に
生きる力を与えてくれた『歌の力』
最初は短い小節で少しづつ繰り返し教える
慣れてきたら旋律を長くして分からない所は一緒に

仕事が一区切り後
少し場所を変えて話す

優希斗君、教えてくれて有難う
前の事件の事もあったし予知するの辛かったよね
これで一先ず落ち着くと思う


涙を拭っても瞼の腫れは隠せず


御免ね
全て終わる迄泣かないと決めてた
でもあの子達の事を思ったら・・・!

再度零れる雫

それは身も魂も尊厳も蹂躙された人々を悼む想いと
未来を食い潰した悪意への怒りに満ちて




 ――少し、時は遡り。
(「終わったね、やっと」)
 十字皇シュラウディスを倒した時に堪えきれなくなって流した涙をくしくしと拭いながら、美星・アイナは深呼吸を一つ。
 ふとアイナの脳裏に、北条・優希斗……この事件を予知した青年の虚空を見る様な表情が思い起こされる。
(「優希斗君も、今回の事凄く気に病んでいたみたいだった……」)
 それは、当然のことかも知れない。
 彼が予知した最初の事件、イマジナリィで起きた事件を解決した直後に、テンバランス……イマジナリィの傍のこの村が襲われ、村人達が窮地に陥ったのだ。
 十字皇の強さもさることながら、それらの事が彼の心に昏い影を落とした事は、想像に難くない。
「でも、それを考えるのは後だよね。今は……」

 ――心に深い瑕疵を負った村人達の心と魂に、細やかな癒しと安らぎを。

 そう願い、アイナは村へと歩を進める。
 無意識にまた瞳から零れ落ちそうになった雫を堪えながら。


「~♪ ~♪」
 テンバランスの村の広場に、歌声が響き渡る。
 それは、生きる力を与えてくれる『希望の歌』
 即ち、多重人格である事が分かった時、それに傷ついたアイナを救ってくれた力。
 歌声に惹かれたのだろうか。
「あっ……歌だ! 歌だ!」
「お姉ちゃん、それ、何の歌? どんな歌なの?」
 ワラワラと集まってくる子供達。
 大人達は、用心深く広場で歌うアイナを遠巻きに見つめているだけだったが、アイナの歌は、子供達の関心を惹くには十分だった様だ。
「この歌? この歌はね、皆に元気になって貰える歌よ」
 優しくそう答えるアイナに子供達が、えっ、と驚いた表情になる。
「その歌を歌えば、皆元気になれるの?」
「うん、なれるよ。皆が頑張って覚えて、お父さんやお母さん達に聞かせてあげれば、きっと皆元気になれる」
 ――そうすることで、きっと大人達は希望を抱いてくれる。
 少女達を贄とし、そうしてどうにか命を繋ぎ続けてきた大人達の心は、きっと悲しみと痛みに血を流し続けている。
 けれども、この歌で少しでも大人達の心の瑕疵が癒されるなら。
 子供達が、これに興味を持ってくれるのなら。
 アイナにこの歌を子供達に教えない道理は無かった。
 最初は、短い小節を少しずつ繰り返して。
 そうして子供達に反復練習を行って貰い、一緒にこの歌を覚えて貰う。
 子供達が少しずつ慣れた所で。
 アイナは、旋律を長くした。
 もし分からないところがあれば、一緒に何度も何度も歌い、そうして人々に希望と勇気を与えるこの歌を教え込む。

 ――そして、遂に。

「~♪」
 子供達が、自力でその旋律を完成させた。
「出来たね!」
 そんな子供達ににっこりと笑うアイナ。
 子供達も満足そうだ。
「今度は皆がその歌を、お父さんお母さん達に聞かせてあげて」
「うん!」
 アイナの呼びかけに子供達が無邪気な笑顔で頷いて。
 そして、歌を歌い始めた。
 大人達も、子供達が集まって歌っているその歌に耳を傾け、聞き入っている。
(「これが……今、私に出来る精一杯、かな?」)
 そう思い、何となくキョロキョロと周囲を見回すアイナ。
 ――と。
「アイナさん」
 子供達の旋律の向こうから、一人の漆黒のコートに身を包んだ青年が姿を現す。
「優希斗君」
 変わることの無い微笑を閃かせてまるで全てが分かっているかの様に自分に呼びかけてくる優希斗に、アイナが安堵の息を吐くのだった。


「アイナさん、お疲れ様です」
「優希斗君こそ、お疲れ様」
 歌い始めた子供達の輪と村人から少し離れて。
 人通りの少ない場所を2人で歩き始めた所でアイナに掛けられた気遣に、アイナがそっと返事を返す。
 それからお互いに何を言うでも無く、村を少しの間散歩していた。

 ――そよ風が囁きかける様に吹き、決して居心地の悪くない沈黙が、アイナ達の周囲を漂う。

 そうして暫く歩いていたが……先にその口を開いたのはアイナだった。
「優希斗君」
「はい」
「教えてくれて有難う、ね」
 優希斗の顔を覗き込む様にして。
 目を合せて礼を述べるアイナに優希斗がいえ、と軽く頭を振った。
「それが俺の役割です。俺には予知は出来ても、その事件に介入することは出来ません。どんなにそれが辛い戦場だと分かっていても、アイナさん達を送ることしか出来ない……そこに無力さを感じます」
 そっと腰に納めた月下美人を撫でる優希斗に小さく頭を振るアイナ。
「そんな事、無いよ。前の事件の事もあったし、予知すること自体、辛かったのに……」
 アイナの言葉に、優希斗は微苦笑を零した。
「こういうのは、慣れていますから。この世界ではよくあることですし」
 呟き空を見上げる優希斗の瞳は、まるで此処では無い何か……誰か? を見つめているかの様。
「それでも、これでこの村の事件については、一先ず落ち着くと思うよ」
「そうですね」
 アイナの言葉に小さく首肯する優希斗。
 けれども何処か悟りきった優希斗の表情が、アイナの胸をギュッ、と締め付け、その胸の中に数え切れない程、多くの想いを呼び起こさせた。
 ――ポタリ。
 瞳から、自然と雫が一つ零れ落ちる程に。
 それに気がついた優希斗が面食らった表情になる。
「あ……アイナさん?」
「御免ね」
 零れ落ちてしまった雫を拭い、謝罪の言葉を口にするアイナに、狼狽えた表情になる優希斗。
「何でアイナさんが謝るんですか? 寧ろ謝るのは……」
 俺の方、と続けようとした優希斗の唇に、人差し指を立ててそれを遮るアイナ。
 涙は、相変わらず零れ続けていた。
(「本当は……」)
「全て終わる迄泣かないって、決めてたの……。でも、あの子達の事を思ったら……!」
「泣いてあげられるんですね、アイナさんは」
 それは、アイナがアイナであるが故に見せることの出来た優しさであろう。
 そんな風に泣くことが出来るアイナの事を、好ましく思う。
 ――俺にはもう、そんな事は出来ないだろうから。
 そっと、アイナの肩に手を置く優希斗。
 アイナはそれに自分の中に浮かび上がってくる感情を叩き付けた。
 肩に置かれた優希斗の手を、自分の手でギュッ、と強く握りしめながら。
「悲しくて……!」

 ――身も魂も尊厳も蹂躙された人々の事が。

「悔しいから……!」

 ――そんな人々の未来を食い潰した悪意達の存在が。
 
 犠牲になった人々を悼む心と、悪意達の存在に憤る心。
 膨れ上がったそれらの感情を涙に変えて、アイナは嗚咽を漏らし続ける。
 優希斗は、アイナが落ち着くまで傍にいて……落ち着いたところで、また、とその場を離れるのだった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

館野・敬輔
【POW】
アドリブ可

今回は英雄と呼ばれることも受け入れる
必要なことだろうしな
ただし、少女を差し出して保身を図ったことは忘れないで

子供達と遊びながら
体力つけの方法を伝授

一区切りついたら優希斗さんと接触
※1対1希望

香草茶を差し出して名を名乗り
何気ない会話から

頃合い見て月下美人の事と禍王、十字皇の事を出して
何か、心当たりがあるのか

僕も猟兵になった時の記憶はない
ほんの少しずつ思い出しているけど
全部思い出すと多分心は闇に呑まれる

それでも真実を知りたいから恐れない

僕も心配なんだ
必要なら力になるからいつでも頼って


最後に黒剣の中の少女達に

僕と一緒に戦ってくれてありがとう
これから君たちはどうしたい?
※反応お任せ




(「英雄、か……」)
 館野・敬輔が村の中を歩き、村人達の視線を受けながら、内心でポツリと呟く。
 それは、敬輔がこの村を守るための柵の作り方や、田畑を耕す手伝い等を率先して行う間に、知らず知らずに付けられた呼び名。
 どうやら御伽噺に登場する英雄達の冒険譚は、嘗てホープと呼ばれたイマジナリィを傍に持つ村人達にとっても既知の事らしい。
(「いや、ある意味では当然、か」)
 昔は、名のある戦士達がイマジナリィには駐在していたのだ。
 此処は、そんな嘗てのイマジナリィとも交流があったであろう村。
 であれば……『英雄』に関する物語が伝わっていたとしても可笑しくない。
「それに、あなたは……」
 敬輔を畏敬の念を交えた表情で見ているその村人を、敬輔は記憶していた。
 何故なら彼は、敬輔が異端の神々との戦いで守った村人の一人だったから。
「……僕達にとっての、英雄ですから」
 そう言って一礼する村人達に、敬輔が一つ息をつく。
「そうか」
 英雄、と言われることを今回は敬輔は受け入れている。
 以前、英雄として自分達の事を迎え入れてくれた村では、自分が英雄だなんて欠片も思わなかったけれど。
 この村の人々にとって英雄は心の拠所であり、同時に今頼れる唯一の存在なのだ。
(「でも……」)
 だからこそ、と言うべきだろうか。
「そう言うことだったら、僕の方から一つだけ言わせて欲しい」
「えっ……?」
 敬輔の言葉に村人達がお互いに顔を見合わせ、それから敬輔へと視線を送った。
 軽く咳払いを一つし、敬輔は鞘に納めた黒剣を引き抜き、それを天に翳す。
 ――そこに白い靄……『彼女』達が姿を現すのを感じながら。
「少女達を差し出して保身を図ったこと、これだけは、失われた彼女達のためにも、忘れないで」
 そう告げて。
 子供達と遊び始めた敬輔に向けて、大人達が一礼するのを、此方に向かって歩いてくる黒いコートの青年がじっと目を細めて見つめていた。


「……優希斗さん、だね?」
 群衆の中で。
 目を細めていた両腰に刀を差した青年……北条・優希斗の姿を認めた敬輔が、ゆっくりと彼に近付いていく。
 優希斗がそれに軽く頷きそれからふぅ、と息を一つ吐いた。
「君は確か……」
「改めて。館野・敬輔だ」
「北条・優希斗だ。ドラゴンテイマーの件と、今回の件では世話になったな」
 そう言って軽く手を差し出してくる優希斗に軽く頷きを返し、敬輔が懐から香草茶を差し出した。
「良かったら、どうぞ」
「ありがとう」
 軽く礼を述べ、香草茶……ハーブティーを一口飲む優希斗。
「今回の件、予知お疲れ様」
「いつもの事だよ。これも俺達の役割だろ?」
 ちらりと目配せをしながら問いかける優希斗に、思わず苦笑を零す敬輔。
 確かに、互いにグリモア猟兵。
 こう言った類の事件を予知するのはよくある話と言えば、よくある話だろう。
 それがこの世界であれば尚更だ。
(「とは言え……」)
 彼の場合、幾つかのノイズが時折混ざっている様に感じるが。

 ――少しだけ冷たい風が吹き付ける。

 その風に背を押される様に敬輔が口を開いた。
 敬輔の目は、右腰に下げられた二刀の内の一刀……月下美人へと向けられている。
「禍王……彼女のことを優希斗さんが予知した時、その刀は白銀の妖艶な輝きを発していたね」
「……」
 敬輔の呟きに優希斗がふっ、と微苦笑を零して月下美人の鍔を見つめる。
 あの時の様な妖艶な白銀の輝きは、今は無い。
「そして今回の十字皇の時の事も……まるで奥歯に物が挟まったような言い方だった」
「そうだね」
 ふっ、と微笑を零す優希斗。
 その微笑は、何処か達観している様にも見える。
 その笑みの意味を考えながら、敬輔が言の葉を紡いだ。
「何か、心当たりがあるのか?」
 優希斗が軽く頬を掻き、参ったね、と小さく呟いた。
「無いと言えば嘘になる。が、確証が持てているわけでは無い。そんな感じだね。禍王については、2つ、心当たりがあるけれど」
「2つ?」
 さらりと告げられた優希斗の真実に敬輔が流石に目を白黒させる。
 優希斗はそれに軽く首肯した。
「1つは俺の記憶。もう一つは俺であって俺で無い、時折夢に見る過去の『俺』の記憶。十字皇については……奴が名乗った二つ名『十字卿』が時折過去に見る夢に引っ掛かった。まあ、此方はそこまで悪い記憶では無いけれど、元々彼は『強かった』みたいだから」
(「強かった……?」)
 真偽の程は定かでは無いけれど。
 少なくとも嘘を言っている様には見えない。
 同時に、今の言葉で確信できる事もある。
 それは……。
「僕には、猟兵になった時の記憶は無い。でも君は……」
「猟兵になった時の記憶はある。そもそもそう言う家系だしね。ただ、それからなんだよな。俺が、俺の知らない、けれども知っているそれを時折夢に見るようになったのは。幾ら掴もうとしても、掴み切れないけれど」
 呟き、虚空を見つめる様な表情で空を見上げ、微笑する優希斗。
 それはまるで、そこにはいない『誰か』と語り合っているかの様。
(「どうして……」)
 彼は微笑を零せるのだろう、と敬輔は思う。
 彼は、自分の心の奥深くに根付くその『闇』と向き合い続けている筈なのに。
 ――束の間の沈黙。
 先に口を開いたのは、優希斗だった。
「敬輔さんは、猟兵になった時の記憶が無いって言っていたね。今でも、そうなのかい?」
 問いかけられた敬輔が顔を俯け、目を逸らした。
「……ほんの少しずつではあるけれど、思い出している。でも……」
 呟きながら瞼を閉じる敬輔。
 ――それは、暗い、昏い闇。
 本当はそれは、目を逸らさなければならない程の深淵なのかも知れない、と感じてしまう程の闇。
「でも?」
「……全部思い出すと、多分心は闇に呑まれる。そんな気が、僕にはするんだ」
 ――それでも。
(「僕は、真実を……」)
「知りたいから、恐れない」
 誓いの様に呟く敬輔に優希斗がそうか、と頷きを一つ。
 微笑は相変わらず崩れぬままだ。
 その優希斗の様子を見て、敬輔が思わず溜息をついた。
「僕は、心配だな」
「何が?」
「君が、君の抱えている闇に耐えきれなくなった時、君自身が壊れてしまう可能性がね」
 敬輔の言葉に、優希斗は微笑を崩さない。
 泰然としていられるのは、そう言われることを予期していたからか。
 それとも……?
 答えの出ぬままに敬輔が首肯を一つ。
「もし、僕の力が必要なら、力になるからいつでも頼って」
「……分かったよ。そうさせて貰うさ」
 敬輔の言葉に香草茶を一口啜って優希斗が微笑んだままに頷いた。


「頃合い、か」
 優希斗が呟きその場で立ち上がり、村の中央広場を見る。
「えっ?」
 敬輔が優希斗の言葉に少し驚いた声音を上げて、彼と同じく中央広場を見つめた。
「俺はちょっと用事が出来たから行くよ、敬輔さん」
「あっ、うん。それじゃあ、また」
 軽く手を振りその場を立ち去る優希斗に頷き束の間呆けた様に彼を見送る敬輔。
 ――ふと、優希斗が向かった先で何かが起きようとしているのを感じ取り、敬輔が黒剣を抜剣。
 黒剣は、再び白い靄に包まれていた。
 霧の様に黒剣の周りをふわふわと揺蕩う彼女達に、敬輔が静かに呼びかける。
(「僕と一緒に戦ってくれてありがとう」)
 敬輔の言葉に、少女達の魂がざわめいた。
 ――大丈夫。
 ――お陰で私達はこの村を護ることが出来た。
 ――あいつを、私達をこんな目に合わせた存在に一矢報いることが出来た。
 感謝と労りの念を送ってくる少女達の霊に一つ頷き、敬輔が話を続ける。
「これから君達はどうしたい? 今なら多分、君達が思うことが出来ると思うよ」
 敬輔の言葉に応じる様に。
 中央広場に向かって駆けていく白い靄もいれば、そのまま黒剣の中に戻っていく者達もいる。

 ――それが、少女達の『選択』だった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

荒谷・つかさ
今彼らに必要なのは、武力でも勇気でもない。
過去と現実に向き合う、心の強さよ。

瑞智を慰霊形態(大蛇の姿)で連れて、村のできるだけ広い所に向かう
そこに精霊砦の材料として使った「ホープの城」の石壁の一部を設置
更にその石壁に今回の顛末を刻んで石碑とし、【祈祷術・破邪浄魂法】を発動して浄化の力を注ぎこむ

暴力と恐怖に負けたのも、保身のために人を売ったのも。
私は非難するつもりはないわ。
圧倒的強者の前で弱者が生きていくには、そうなるしかないもの。
……でもね。
だからこそ、明日に進むために犠牲……いいえ、礎となった者への「敬意」と「感謝」は、忘れてはいけないのよ。



……優希斗。見てたの?
難しいわね、こういうのって。




 ――今彼らに必要なのは、武力でも勇気でもない。
 ――過去と現実に向き合う、心の強さよ。

 あの村人達の表情と、彼等の言葉を耳にした、荒谷・つかさはそう思う。
 なれば自分が出来ることは、過去と現実に向き合う心の強さを彼等に与えること。
 その使命感と共に、つかさは村の中央広場に向かう。

 ――白い大蛇の姿をした、神の化身では無いかとも言われる瑞智と共に。


 村人達に呼びかけて、村の中央広場へと足を運ぶつかさ。
 その肩に瑞智を纏い、更にその両手には、異端の神々との戦いの折に精霊砦の材料として使った『ホープの城』の石壁の一部を抱えている。
「あ、あの、それは……」
「ちょっとしたおまじない、それから、あなた達に力を与えてくれる材料よ」
 恐る恐る、と言った様子で問いかけてくる村人につかさが返し、『ホープの城』の石壁の一部をその場に設置。

 ――それはまるで、この地で死んでいった者達への弔いの墓か、或いは、ある誓いの籠められた石碑の様で。

 実際、つかさはこの『ホープの城』の石壁の一部を、石碑にしようと決めていた。
 ……此度の戦いの顛末を、決して村人達が忘れ得ぬ様に。
 そしてその罪を抱えても尚、村人達が前に向かうための誓いとするために。
 無言で石碑に今回の事件の顛末を、自らの霊力に満ちた血液で刻み込んでいくつかさに、村人達が流石に強張った表情になる。
「あ、あの、まさか、今回の件を……?」
「ええ。刻み込ませて貰っているわ」
 問いかけてきた村人に首肯するつかさ。
 周囲に響き渡る声音で呟かれたつかさのそれに、この場に集まっていた村人達が思わず息を飲む。
 村人達の反応を予想していたのだろう。
 疲れた様に一つ息をつきながら、黙々とその作業を続けるつかさが、その場に集った村人達に聞こえる声音で話しかけ続けた。
「でも、間違えないで。私は、あなた達が暴力と恐怖に負けたのも、保身のために人を売ったのも、非難するつもりは無いわ」
 ――圧倒的な暴力による恐怖。
 それは、強者が弱者を支配するのに最も都合の良い方法であり、古来より代々行われ続けてきた単純且つ最強の手段。
「……圧倒的強者の前で弱者が生きていくためには、弱者が強者に従うしか無いもの」
 その事実に想いを馳せ、少しだけ嘆じる様に呟きながらつかさが肩に乗った瑞智に命じた。
 瑞智がつかさの想いに答える様に、白き大蛇の姿を輝かせ、そのままつかさが今回の事件の顛末を刻み込んだ石碑を舌でそっと一舐めする。
 つかさの血液で書かれた石碑の文字が、瑞智の舌に応じて白い輝きを発し、周囲に白い靄達を引き寄せていく。

 ――奇しくもその中には、この村を守る『守護者』として、この地に留まることを望んだ少女達の霊も存在していた。

 犠牲となった少女達の霊の中にも未だ、この村を守りたいと思う者達もいた事実につかさが安堵の息をつく。
 完成したのは、浄化された怨念や亡霊達の想いを糧に、この村を守るための守護霊の宿った白い石碑。
 その石碑に籠められた霊達の想いをこの場に集った村人達は感じ取り、それ以上何かを言うでも無く、ただ、呆然と作り出された守護の石碑を見つめている。
「……でもね」
 そんな村人達の方へと振り返り、つかさが自分の右腕に巻き付く様に戻ってきた瑞智の背を撫でながら、語り続けた。
「だからこそ、明日に進むために犠牲……いいえ、礎となった者への『敬意』と『感謝』は、忘れてはいけないのよ」
 忘れてしまえば、その先に待つのは誰かに依存し、頼ることしか出来ぬ生きた屍と化す未来。
 そう言う村があったと言う話は、つかさの知る御伽噺の中でも伝わっている。
 つかさが、そっと息を吐いた。
「……あの子達を、そしてこの村を守ろうとして散っていった英雄達の事を決して忘れないで語り継いでいって。あなた達がそうして彼女達に謝意を示し続ける限り……彼女達はきっとこの石碑の中からあなた達を見守り、外敵からあなた達を守る為の、そして、あなた達が生き続けるための『力』にきっとなってくれるわ」
 今すぐに納得し、そして理解して貰えるかどうかは分からない。
 けれども彼女達や、この村を守るために散っていた者達の亡霊の一部は、この地を護り続ける道を選んだのだ。
 であれば……村人達もその期待に応える必要があるだろう。
 つかさの言葉に対する村人達の反応は様々だった。
 やはり今すぐに全員が強い心を持ち、前を向いて歩き始める事は出来そうに無い。
 ある意味で、それは仕方の無いことだとも思うけれど。
「……つかささん」
 ざわめき囁き合う村人達の間から姿を現し、自分に呼びかけてきた北条・優希斗を見て、つかさはふぅ、と息を吐いた。
「……優希斗。見てたの?」
「ええ。少し離れた所からですが。……らしいですね、つかささん」
 そう言って微笑を零す優希斗にそっと頷き、何となく空を見上げるつかさ。
「……難しいわね、こういうのって」
「そうですね。でも……誰かが言わなければいけない事ですよ、それは」
「……ありがと」
 自分を肯定してくれる優希斗に振り向き、微笑を零して礼を述べるつかさ。

 ――風が、そっと村人達と、彼等を守る石碑を撫でる様に、吹き抜けていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年06月06日


挿絵イラスト