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吸血鬼は狩りに興じる

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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 夜と闇に覆われた空を、吸血猟姫ディアナが見上げた。そこに浮かぶ真円に近い月に、ディアナは吐息をこぼす。
「あぁ、いい夜だ。今夜は狩り日和――アンタ達もそう思うだろう」
『ギギッ!』
 ディアナの言葉に答えたのは、猟犬がごとく従う小型の騎竜の群れ――『暴虐の青風』カエルラマヌスだ。ディアナは散歩に行くような気楽さで、深く暗い森へと踏み入っていく。
「今夜の狩り場は、この森の先にある村だよ。上手に獲物を駆り立てられたヤツには褒美をたんまりとくれてやる。せいぜい励みな」
『ギギギッ!』
 ダッ、とカエルラマヌス達が地面を蹴って森の中に駆け込んでいった。追い越され、悠然と歩み続けながらディアナはニヤリと笑う。
 あのカエルラマヌス達は、ディアナが狩りのために手塩にかけて仕込んだ騎竜達だ。特定の獲物の味を、よく覚え込ませている――。

 ――すなわち、人間の肉の味を。

「今夜は生きのいい獲物はいるかねぇ。アタシとしちゃ、歯ごたえがあった方が嬉しいんだけど」
 あんな猟犬もどきに食い殺される獲物など、価値はない。逃げる気力のある、あるいは牙を剥ける獲物がいい――カエルラマヌス達は、その『篩』なのだ。
 今夜はどんな狩りに興じれるだろう? 期待しながらディアナは、鼻歌混じりに森の中を歩いていった……。

「狩り、と呼ぶには悪趣味すぎるがの」
 ガングラン・ガーフィールド(ドワーフのパラディン・f00859)は、そう苦虫を噛み潰した顔で言った。
「ダークセイヴァー世界、吸血猟姫ディアナという吸血鬼の領地では時折、狩りと称して集落が襲われるらしくてな。今回は、その集落を救って吸血鬼を討ってほしいのじゃ」
 問題は猟犬のように仕込まれたカエルラマヌスが、先に村を襲うという事だ。そのため、バラバラに訪れるカエルラマヌス達に対処しながら50人ほどの村人達を逃がす必要がある。
「村の方では、諦めムードが濃くての。当然じゃな、いつ狩り殺されるかわからん恐怖に押し潰されて来たんじゃ」
 そんな村人達を説得しながら、逃さなくてはならない。不幸中の幸い、ディアナは遊んでいる。一気にカエルラマヌス達を襲わせるのではなく、競わせているのだ。数が揃わなければさほど脅威ではない、そうなる前に避難を完了させる必要があるだろう。
「ディアナにとって、村についてからが狩りの本番じゃ。向こうの遊び、その時間差をつけば対処可能じゃろう。とにかく、犠牲者を出さぬようにうまく立ち回ってくれ」


波多野志郎
救えるか、救えないかの瀬戸際です。どうも、波多野志郎です。
今回は、狩りと称して一つの村を襲う吸血鬼を討っていただきます。

まずは村人達を説得するなり宥めるなり力づくなりで、パラパラと到着する少数のカエルラマヌス達に対処しながら避難をしていただきます。

一体、誰の狩りとなるのか? 皆様のプレイングをお待ちいたしております。
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第1章 冒険 『戦禍からの撤退』

POW   :    身をもって村人を庇ったり、力づくで村人を避難させる

SPD   :    隠れ道をさがし出すなど、技能を活用して村人を非難させる

WIZ   :    頭脳や魔法を活用し、村人を避難させる

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

コナミルク・トゥモロー
うあっっああああ!!

(村人を襲う直前のカエルラマヌスに【捨て身の一撃】)

に、にっ、に、にぃ、逃げろ…!
こ、こ、こっ……こんなやつら、わ、私達がっ、たっ、た、倒すから!!
まっ、ま、ま、ま、まだ死ぬとき、じゃない!!

(【殺気】を放って【おびき寄せ】)
(《この爪が届くなら》…攻撃と共にルールを制定する)

わっ、わ、わ、『私以外を、見るな』!

に、にぃ、逃げろ、よぉ……!!!
(戦うことしかできないなら、どれだけこの身を裂かれても。【捨て身の一撃】を放ちながら、村人達に伝えるしか術がない)

ま、まま、ま、っ、守る、から、ま、守るから!
だっ、だっ、だ、だから、生きて……い、い、っい、生きて逃げろ!!!


ジロー・フォルスター
差し迫る脅威は排除しとくぜ
「こっちだ!くく…よく狙えよ」
【ロープワーク】で銀の鞭を絡め、ジャマダハルで【武器受け・見切り、カウンター】
村人は【かばう・オーラ防御】で守る

「命あってこそだ。まずは逃げるぞ」
村人は【誘き寄せ】て【コミュ力・言いくるめ・礼儀作法】と聖者の気配で落ち着かせる
怪我があれば【医術】や『聖痕』で応急処置
老人・女子供を優先して『静寂の廃聖堂』に匿うぜ。全員入れりゃいいがな

周辺に詳しい奴はいないか?猟師や木こり、行商人か
「しばらく身を隠せる場所はないか?」
【地形の利用・情報収集】で検討し村人を護衛して連れていこう
俺は【暗視】で見えるが「カンテラには覆いを。静かに歩いて移動するぞ」


フラウロス・ハウレス
ふん、狩りか。
弱者を嬲り楽しむのが吸血鬼の性とはいえ、随分俗物的ではないか、此度の吸血鬼は。
クク、その趣向を妨害してやるのは楽しそうだな?

【血統覚醒】にて吸血鬼の姿を取り、村に赴こう。
「民どもに告ぐ!妾の名は血風姫フラウロス!
他領の民よ、これより『領主狩り』を行う!領主に忠誠を誓う死にたい奴は立ち向かって来るがよい、妾が殺してやろう!そうでない者は巻き込まれる前にこの村から逃げ出すが良い!!」

逃げ出す者どもを見届けて、吸血鬼状態を解こう。
「ふん……下らん茶番をさせてくれる。これではどちらが悪役かわからぬな」
村に到着した騎竜どもは黒爪で仕留めよう。
「良かろう、狩られるものの恐怖を与えてくれる!」


アッシュ・ボーンファイア
悪趣味だな。そういう奴らだとわかっているが
まずは避難が先だ

・POW行動
数で押されなければ、対処できる
村人を襲うカエルラマヌスには、遠いならば【早業】でブレイズフレイム
続いて【2回攻撃】で村人と分かつように炎の壁を作る
近くなら炎の盾で庇う。【気合い】でダメージは耐え、【捨て身の一撃】でブレイズフレイムだ
その後は村人に

「動けるか?動けるなら避難しろ。無理なら抱えて行く」

口は上手く無いのでな、力尽くで避難させる

「私は猟兵。この怪物どもを狩る、専門家だ。安心しろ」

言っておけば聞く人もいるだろう
避難を確認したら炎は消す
火事になると困る。戦闘の邪魔でもあるからな

アドリブ協力改変歓迎


モース・レフレクソン
チーム【鉄の人形】

【目的】
威力偵察及び情報を他猟兵へ伝える

【行動】
大暴れしてやりたい所だが住人の避難が先だ…だが敵の数や動きがわからない以上、猟兵達も避難させるのも困難だろう。
ならば………敵の位置や配置を各猟兵に伝わりやすいように戦うとしよう。

先ずはアイリスに索敵をしてもらって、敵の配置を教えてもらう。その後俺は接敵して【蒼炎放射】を発動する。
蒼炎を出すのは攻撃の為だけでは無い…この闇夜の中で蒼炎を出せばかなり目立つ…多分、他の猟兵に敵がいると伝わるはずだ…できるだけ派手にやるか…。
後は蒼炎を出しつつ武器であるベイリルの銃撃を敵に浴びせる。

これで避難の助けになればいいが……


アイリス・クラウディア
【鉄の人形】アドリブ歓迎 口調プレ
モースと傭兵時代からの相棒。普段は犬と猿のような仲。言い切りの女の子口調。言葉を慎重に選ぶので無口で途切れやすい。

■目的
観測手&狙撃手として振る舞う。
まずは高い場所から街を見下ろし、索敵。
敵を見つけ次第、モースと共有。余裕があればほかの猟兵にも伝達。危険が迫っている村人は見逃せない、私がいち早く見つけて必ず射止める。

■行動

「ー標的確認。位置情報を転送。戦闘開始次第、援護する。」
「モース、そこの角を右に、その方が早い。」

私は高台に登り、サイバーアイを駆使して敵の位置を把握。
モースの戦闘をカバーしながら他に襲われている村人がいる場合は高台からの狙撃で敵を始末する。


フルール・ラファラン
狩りは生きる為にだけすることで、遊びじゃないのよ

「怪我、したら痛いよね」
大丈夫、ルーが治してあげる。何度だって、何回だって

敵に攻撃されたりして、怪我をした猟兵、村人を治療することに専念
余裕があるなら、避難のお手伝い

「ルーたち、強いのよ。絶対、助けてあげるから」
信じて、って
怖いよね、諦めたくなるよね
わかるよ、ルーも怖い
でも、怖がってるだけじゃ何もできない
生き残るためには、立ち上がらないと

「貴方の大切なものを守ろ?ルーも、お手伝いする」

ルーは魔法が得意だから、妖精さんにもお願いして、皆を一か所に集めたらどうかな
狙われやすくはなるけど
散らばるよりはずっと守りやすいと思うの
助けるからもう一度だけ立って


リーヴァルディ・カーライル
周囲の第六感に訴える“誘惑の呪詛”を自身に施し
目立たない仕草でも注目を集めるように存在感を増幅する
その後、UCを発動し女神のような姿に変装して防具を改造
血の翼を広げて空を飛んで注目を集め、言葉に耳を傾けてもらおう。

…時間が無いから手短に。私達は猟兵。
吸血鬼や魔獣を狩って回っている集団よ…。

…この村を襲う小竜と吸血鬼を狩りにきたの。
だけど、このままだと貴方達まで犠牲になる。

…これ以上、誰一人として犠牲は出さない。
そしてこれ以上、誰一人恐怖に押し潰される事も無い。

…その為にも、どうか今は避難して欲しい。
貴方達は、私達が護ってみせるから。

説得が済めばUCの光輪の光を村人達に浴びせ、逃げる手助けをする



●始まりは――
 森の中を、騎竜の群れが走る。どこに村があるか、教えられていない。早く付けばそれだけ『獲物』にありつける、いわばそういう『人参』を鼻先にぶらさげられているのだ。

 ただ、その『獲物』と『人参』が――人間なだけで。

『ギギ』
 愉悦の声が漏れる。だから、狩りの時間は好きだ。『暴虐の青風』カエルラマヌス達は、そう笑みをこぼす。そう、躾けられたのだから当たり前だ。
 だからこそ、協力はしない。『獲物』を捜して、競って森の中を散っていく――これもまた、飼い主である吸血鬼の狙いではあるのだが。
 これに抵抗するも良し、逃げ出すも良し――ただ喰われるだけの『獲物』を撃っても面白くない、これはそういう『ルール』なのだ。

 ――だから、まずはその『ルール』を覆す。

「ふん、狩りか。弱者を嬲り楽しむのが吸血鬼の性とはいえ、随分俗物的ではないか、此度の吸血鬼は」
 悠然と、フラウロス・ハウレス(リベリオンブラッド・f08151)が夜の村を歩く。口の端を笑みの形に歪め、そして村の中央にある建物の上へと跳んだ。
「クク、その趣向を妨害してやるのは楽しそうだな?」
 音もなく屋根へと降り立ったフラウロスが、真紅に瞳を輝かせる。血統覚醒――吸血鬼へと変身したフラウロスは、よく通る声で言い放った。

「民どもに告ぐ! 妾の名は血風姫フラウロス! 他領の民よ、これより『領主狩り』を行う! 領主に忠誠を誓う死にたい奴は立ち向かって来るがよい、妾が殺してやろう!そうでない者は巻き込まれる前にこの村から逃げ出すが良い!!」

 その声に、静まり返っていた村が騒ぎ出す。ダークセイヴァーにあって、吸血鬼の宣言は死刑宣言に等しいのだ。慌てて村人達が動き出すのも、当然というものだ。
 同じく屋根に飛び乗っていたアイリス・クラウディア(戦場に咲き誇る小さな花・f09353)が、MR-24のスコープ越しに捉えた熱源反応に口を開いた。
「反応、四、五、六――。こちらへ接近中」
「ほう」
 アイリスの言葉に、フラウロスが興味深げに声を漏らす。数が増えていく、という事はこちらの探知範囲内に近づいてきているという事――間違いなく、猟犬もどきが村の存在に気付いたからだ。
「――標的確認。位置情報を転送。戦闘開始次第、援護する」
 ジジ、とサイバーアイが小さな音を立てた瞬間、その通信が返る。
『了解した』
 モース・レフレクソン(サイボーグの戦場傭兵・f06734)は返答を一つ残すと、夜の森を駆けていく。アイリスのサイバーアイから送られてきた場所情報と同期――直後、いくつかの熱源反応がモースの視界に浮かんだ。
「大暴れしてやりたい所だが住人の避難が先だ…だが敵の数や動きがわからない以上、猟兵達も避難させるのも困難だろう。ならば………敵の位置や配置を各猟兵に伝わりやすいように戦うとしよう」
 本来なら、遭遇戦にもさまざまな戦い方がある。こちらを敵が認識していないのならば、潜伏して数を減らすのが有効だろう――いくつもの戦場を渡り歩いたモースの知識と勘が、そう訴えている。
 しかし、それも戦況で変わる――ならば、『これ』が最善手だ。

「塵になれっ……!」

 ゴォ!! と、夜の森に蒼い炎の壁が立ち上った。モースの蒼炎放射(ソウエンホウシャ)だ。

(「蒼炎を出すのは攻撃の為だけでは無い……この闇夜の中で蒼炎を出せばかなり目立つ……。多分、他の猟兵に敵がいると伝わるはずだ……できるだけ派手にやるか……」)

 いわば、狼煙だ。敵が来たという証明、情報共有。攻撃ではなく、合図として。モースはすかさず、ベイリルを構え銃撃を放っていく。
『ギギギ!!』
 銃弾に穿たれながら、カエルラマヌスがモースへ襲いかかる。だが、モースは次の対象へと銃口を向けた――次の瞬間、カエルラマヌスの額が撃ち抜かれた。
 そして、遅れた銃声と共にその通信が届く。
『モース、その先を右に、その方が早い』
「了解した」
 アイリスのMR-24による一撃必殺(イーグルアイ)による支援狙撃を受けながら、ベイリルを構えたモースが駆け出した。傭兵時代からの相棒同士だ、もはや余計な言葉はいらない。二人は最小のやり取りで最大の戦果を叩き出すべく、戦闘を続行した。

●騒乱の狩り場
 村人達が、混乱のまま外に駆け出してくる。銃声、蒼炎、そして死刑執行宣言――ダークセイヴァーという明日を知れない世界において、彼等が混乱するのも仕方がない状況が揃っていた。
「……くそ!! お前の相手は俺だ!」
 農具の鋤を手に、フラウロスの目の前に一人の男が現われる。体は震え、涙目になりながらも敵わないと思う相手の前に立ったのだ。それだけでも、勇気を讃えるべきだろう。
「みんな、逃げろ! 俺が少しでも時間を稼ぐ!!」
「ふん……下らん茶番をさせてくれる。これではどちらが悪役かわからぬな」
 フラウロスが吸血鬼の姿を解いた瞬間だ、タン! と屋根を蹴って夜空を舞うと、黒爪を振るった。
「ひ……!」
 男が死を覚悟して目を瞑る……しかし、予想した痛みは、いつまで立ってもこなかった。
「……いつまでそうしている? とっとと逃げるがいい」
「え?」
 目を開けば、黒爪についた血を払うフラウロスの姿がそこにあった。男は呆然と、彼女の足元に転がる騎竜の躯を見た。
「あ、ありが、とう……?」
 状況が飲み込めず、助けられたのだと思った男が礼を言う。そして逃げ出す男の後ろ姿を見送って、フラウロスは笑った。
 もう、四方八方からカエルラマヌス達の気配が近づいてくる。駄犬もどきは、そこそこ使えるらしい――フラウトスは、地を蹴りながら吐き捨てた。
「良かろう、狩られるものの恐怖を与えてくれる!」

 村人達の間に、動揺が走る――何かがおかしい、そう誰かが気付いたのがきっかけだ。
「吸血鬼が、来たはずじゃ――」
 そう女性は言いかけ、言葉を失った。夜空から舞い降りる人影を、目にしたからだ。血の翼を広げた、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)だ。
 ただ、呆然と女性はその光景を見上げていた。まるで、宗教画のような現実感のない光景から、目が離せない。それも当然だ、リーヴァルディ自身が女神のような姿に変装して、そう『演出』したのだから。
「……時間が無いから手短に。私達は猟兵。吸血鬼や魔獣を狩って回っている集団よ……。……この村を襲う小竜と吸血鬼を狩りにきたの。だけど、このままだと貴方達まで犠牲になる」
「……え?」
 その声に、仕草に、表情に、視線が引き寄せられる。ぞろぞろと、他の村人達も集まってくる。誘惑の呪詛を自らに施し、どんな些細な仕草でも注目を集めるように存在感を増幅しているのだ。
「……これ以上、誰一人として犠牲は出さない。そしてこれ以上、誰一人恐怖に押し潰される事も無い。……その為にも、どうか今は避難して欲しい。貴方達は、私達が護ってみせるから」
 手を差し出し告げるリーヴァルディに、村人達はその場で膝をつき涙を流す。
「……さぁ、行って。……ここは、私達が」
 代行憑依・繁栄の時、来たれり(ポゼッション・ラグナソピア)――リーヴァルディの背に光輪が生まれ、その光が村人達に力を与えていく。希望が胸の奥から湧き出すような感覚に、村人達は感謝の言葉を残してその場を去っていく。
 リーヴァルディが、地面に降り立つ。そこにはもう、女神はいない。ヴァンパイアを狩る――ただそれだけのための、いつもの彼女に戻っていた。


 村人達は、ただ意味もなく逃げているのではない。こうなった時には、どこに逃げるべきか? こんな世界だからこそ、普段から話し合っているのだ。
 それでも、全員は逃げられない。そんな『ご褒美』を、カエルラマヌスは見逃さなかった。
『ギギギ!』
「あ――」
 小さな女の子が、足をもつれさせて転ぶ。母親は慌てて、引き返す。しかし、それは無駄な行為だ。二人共、餌になるだけ――そのはずだった。

「うあっっああああ!!」

 その叫びと共に、女の子と母親に飛び掛かる寸前だったカエルラマヌスが吹き飛ばされた。捨て身の一撃、それを放ったコナミルク・トゥモロー(Seize the day・f18015)が親子に言う。
「に、にっ、に、にぃ、逃げろ……! こ、こ、こっ……こんなやつら、わ、私達がっ、たっ、た、倒すから!! まっ、ま、ま、ま、まだ死ぬとき、じゃない!!」
「あ……!」
 女の子が、声を上げる。二体、三体とカエルラマヌスがコナミルクに飛びかかり、食らいついたからだ。その間に、吹き飛ばされたカエルラマヌスが戻ってくる――が。
「わっ、わ、わ、『私以外を、見るな』!」
 この爪が届くなら(コノコエガトドクナラ)――コナミルクの決めたルールに、カエルラマヌスが攻撃目標を変えた。
「に、にぃ、逃げろ、よぉ……!!!」
「で、でも……」
 母親は、迷う。自分の子供と同じくらいの少女が、目の前で襲われたからだ。優しい、とコナミルクは思う。だからこそ、必死に叫んだ。

「ま、まま、ま、っ、守る、から、ま、守るから! だっ、だっ、だ、だから、生きて……い、い、っい、生きて逃げろ!!!」

 優しい人に傷ついてほしくない、その一心でコナミルクはカエルラマヌスを吹き飛ばしていく。だが、カエルラマヌス達は立ち上がり――不意に、体を縛り付ける鎖に動きを止めた。
『ギギギ!?』
「こっちだ! くく……よく狙えよ」
 ジロー・フォルスター(現実主義者の聖者・f02140)が、銀鎖の鞭を振るう。吹き飛ばされた、カエルラマヌス達。そこに一人の男が、慌てて駆け込んできた。
「だ、大丈夫か!?」
「あなた!」
「パパ!」
 母と娘、二人を抱きしめた男に、コナミルクがようやく安堵の息をこぼす。そんなコナミルクに微笑むと、ジローは改めて口を開いた。
「命あってこそだ。まずは逃げるぞ」
「はい!」
 ジローの後ろには、他に数人の村人の姿がある。ここに来るまでに合流して、守ってきた人々だ。言葉と聖者の気配に信頼を得たジローが、ここまで守ってきたのだ。
「しばらく身を隠せる場所はないか?」
「この先に、落ち合うはずだった洞窟があります!」
「そうか。カンテラには覆いを。静かに歩いて移動するぞ」
 手際よく人々をまとめあげると、ジローはふと気付く。コナミルクが、ジローを見上げていた。ジローは、コナミルクへ言う。
「この人達を避難させる。手伝ってくれるか?」
「う、ううう、う……ん」
 こくん、とうなずいて同意するコナミルクに、ジローは改めて笑みを浮かべて走り出す。カエルラマヌス達は、決して諦めない――まずはこの人達を安全な場所へ。ジローとコナミルクは、協力して村人達を避難させていった。

 ――村の中心で、紅蓮の炎が吹き上がる。
『ギギ!』
 その地獄の炎に阻まれ、カエルラマヌス達は距離を計る。アッシュ・ボーンファイア(怪物狩り・f15659)は、ブレイズフレイムを放ちながら振り返らずに言った。
「動けるか? 動けるなら避難しろ。無理なら抱えて行く」
「あ、ああ。動けるが――」
 あんたは? そう問いたげな男の先を読んで、アッシュは答える。
「私は猟兵。この怪物どもを狩る、専門家だ。安心しろ」
 口がうまくない自覚はある、だからこそアッシュは淡々と事実のみを伝えた。猟兵、その名を村人は知らない。それでも、怪物を狩る専門家という言葉と真摯な態度を村人は信じた。
「あんたも、気をつけて……!」
 村人は、そう言い残して走っていく。その後ろ姿を見送り、改めてアッシュはカエルラマヌス達と向き合った。
「邪魔はさせない」
『ギギギ!』
 カエルラマヌス達が、地を蹴った。向かうのはアッシュ――ではない。よく楽に狩れる方、村人の後ろ姿だ。しかし、そのカエルラマヌス達を背後から紅蓮の炎が飲み込んだ。
「何度だって言う。邪魔は、させない」
 そして、アッシュは駆け込む。傷口から地獄の炎をこぼし――ドォ! と一気に古き大鉄塊を炎で包むと横一閃に薙ぎ払った。ザシュ! とカエルラマヌス達がアッシュの一閃に断ち切られ、燃え尽きていく。
「火事になると困るからな」
 戦闘の邪魔になっても困る、アッシュは必要のない炎をすぐに消すと次の場所を目指して走り出した。

 ……それは、まさにこの世界を象徴した光景だったかもしれない。
 逃げる途中で転んだ男の子と、呆然と見下ろすしかない父親の姿だ。子供を抱えて逃げる事は出来る、しかし、そうなれば追いつかれる事は必至だ。逃げる意味がない、その答えに行き着いてしまったのだ……だから、呆然と立ち尽くすしか無い。
 希望のない、絶望の世界――ダークセイヴァーでならば、どこでも見られる『日常』がそこにはあった。
 しかし、それを否定するように彼女は彼等に歩み寄った。
「怪我、したら痛いよね」
 フルール・ラファラン(森に住まう人・f00467)は柔らかな笑みと共に、膝を擦りむいた男の子へその手をかざした。聖なる光が傷口を照らすと、瞬く間に塞がっていく。その光景に、男の子は目を丸くていた。
「痛くない?」
「うん、大丈夫!」
「ああ、ありがとうございます……!」
 父親からの礼を受けて、フルールは笑みのまま首を左右に振る。
「大丈夫、ルーが治してあげる。何度だって、何回だって」
 それは、彼女にとって当然の事だ。父親と男の子に、フルールは穏やかに告げた。
「ルーたち、強いのよ。絶対、助けてあげるから」
 信じて、とフルールが男の子の頭を撫でる。男の子は、どこか春の草原のようなフルールの香りを感じた。
「怖いよね、諦めたくなるよね。わかるよ、ルーも怖い。でも、怖がってるだけじゃ何もできない、生き残るためには、立ち上がらないと」
 優しい笑みはそのままに、どこか胸の奥に染み込むような言葉に男の子は立ち上がる。その場で地面を踏みしめ、もう大丈夫だよと言いたげに笑う男の子に、フルールは目を細めた。
「貴方の大切なものを守ろ? ルーも、お手伝いする」
「うん!」
 男の子の元気な返事に、父親もようやく笑みを見せる。それは、小さく弱々しくとも確かに生まれた希望の光だ。
「皆を一か所に集めたらどうかな?」
「ああ、落ち合う場所は決まってますから――」
 もう、生きる希望を手放しはしない。そう確信できる親子の目の輝きを見て、フルールは嬉しそうに微笑んだ。

 ――避難は、実にスムーズに行われた。
「……もういないみたい」
「そのようだ」
 リーヴァルディの言葉を、アッシュは肯定する。村からもう、人の気配はしない。カエルラマヌス達の気配も、途切れ――。

「――敵、接近」

 アイリスのその言葉が、村に響く。熱源反応は、遠くカエルラマヌス達が合流し、群がってこっちに向かっている現状を伝えていた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『『暴虐の青風』カエルラマヌス』

POW   :    蹂躙する騎竜
戦闘中に食べた【犠牲者の血肉】の量と質に応じて【身を覆う青紫色の鱗が禍々しく輝き】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    飛躍する騎竜
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
WIZ   :    邪悪な騎竜
自身の装備武器に【哀れな犠牲者の一部】を搭載し、破壊力を増加する。

イラスト:小日向 マキナ

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●『暴虐の青風』

『ギギギ!!』

 カエルラマヌスの鳴き声が、森の中にいくつもいくつも響いていく。普段なら、一部のカエルラマヌスならば、『獲物』を諦めているモノも出る頃だ。しかし、今回は違う――先に乗り込んだヤツほど、貧乏くじを引いたのだ。

『ギギ!』
『ギギ!』
『ギギギギ!!』

 だが、このままでは自分達も同じになる。ならば、無駄な欲は一度は捨てよう。力を合わせ、『獲物』を狩るのだ。何、取り分は減っても仕方がない。少なくとも『餌』にありつけた方が、マシなのだから。

 ――元来、群れで行動するカエルラマヌスだからこそ、こういう状況で結束する。ここまで見越して吸血猟姫ディアナは、猟犬もどきとしてカエルラマヌスを使っているのだ。
 ならばこそ、これから狩り場である村に乗り込んでくるカエルラマヌス達に油断はない。確実に『獲物』にありつくため、全力を尽くして来るだろう……。
 
フルール・ラファラン
そうね、狩りは集団で力を合わせた方がいい時もあるのよ
でも、その狩りはルーたちが邪魔するの

みんなを守るって、約束したからね。
ルー、まだ怖いけど、でも仲間がいるから大丈夫よ


キッと口を結んでから、意を決して静かに手を組む
「清らかで、静かな森よ……此処に顕現して、私を助けて……!」

大きく手を広げてきらきら光る森を召喚するのよ。

森の儀式で出来るだけ敵を引きつけて、たくさん一気に狙うなよ
可愛そうだから、終わりにする
失敗しても、ここはルーの森になった
森の加護はルーたちについてるのよ

大きな狩りを集団でするときは、リーダーがいるはずなのよ
そのリーダーを倒さないと、また繰り返えされちゃう
何処だろ……


アッシュ・ボーンファイア
さて、ここからは防衛か。避難地点まで通さないようにする必要がある
私の能力を鑑みれば、前か後ろか

・POW行動
味方の配置次第だが、前に立つとしよう
引き続きブレイズフレイムだ。炎の壁を、敵の進路を狭めるようにして作る
ただし、味方の邪魔にならないよう配慮しよう
何かあれば指示をもらう
後は、古き大鉄塊を抜いて待ち構える
群れに対し炎の【なぎ払い】、跳び越える奴に【二回攻撃】の炎を放つ
接近されたら【早業】の【カウンター】で、鱗ごと【鎧砕き】の一撃で叩き斬る
ダメージは【覚悟】の上、燃やし、焼いて、斬る

「一切合切灰燼と成す。貴様ら全て、例外はない」

これは狩りではない。駆除だ
村人には近づけさせん

アドリブ協力改変歓迎


リーヴァルディ・カーライル
…ん。気配が変わった。
ようやく本腰を入れて来たみたいだけど…無駄なこと。
狩られるのはどちらか、思い知らせてあげる。

女神の変装は解除するけど“誘惑の呪詛”は維持し、
魔力を溜め第六感に訴え存在感を発する残像を形成するように防具を改造。
自身は【見えざる鏡像】で不可視化して目立たないよう気配を消す。
殺気を感じたら武器で受け攻撃を弾きカウンターを試みる。

…さぁ、獲物は此処よ。掛かってきなさい。

敵が囮に釣られている隙に忍び足で接近して鱗の隙間を見切り、
怪力任せに大鎌の刃を突き立て生命力を吸収した後、
傷口を抉るようになぎ払う2回攻撃で仕留めましょう。

…一匹たりとも逃しはしない。お前達はここで終わりなさい。


ジロー・フォルスター
くく、悲しい事に俺も血に飢える側でな

敵は目の小ささや耳孔を鎧で覆う辺り、嗅覚を補助的に使っていそうだ

建て直しに負担の少なそうな納屋か閉所でも探そうか
【地形の利用】で藁を敷き、梁の上に油を詰めたボトルを用意
藁の山を作ったらジャマダハルで自分の血を吸い上げて撒いておくぜ
【属性魔法】で風を操り血の匂いを広げて【おびき寄せ】
敵が中に入るのを【暗視】で確認したら【高速詠唱・全力魔法・属性攻撃】の『カタストロフ』で火炎旋風を起こす
梁の上からボトルを割り落とし、全体を火に包んだら暴走前に収める
逃げる奴は追撃
周囲の延焼を避け水魔法を準備

「結局、飼い主が一番悪いんだがな」
酷い手段で奪った命にも【祈り】を捧げよう


フラウロス・ハウレス
ふん……駄犬と思いきや、なかなか狩人の動きをしているではないか。
しかし、哀れだな。そのまま油断しておれば楽に死ねたであろうに。
良かろう、戦いを選んだことを後悔させてやる!

黒爪を鋭く伸ばし、迫り来る駄龍どもに逆に駆け寄り、その爪で引き裂き、貫こう。
左右の爪で『2回攻撃』し、受けたダメージは『吸血』と『生命力吸収』で補う
「どうした、束になってもその程度か。油断していたままの方が良かったのではないか?」

敵を多く集めたところで【ブラッディストーム】でまとめて薙ぎ払うぞ!
「ククク……集まってくれてご苦労。ならば、本気の一端、垣間見せてやろう。
ゆくぞ。我が放つは嵐の惨禍!唸れ血風、ブラッディストーム!!」


コナミルク・トゥモロー
こ、こッ、来い、来い!
ぜ、ぜ、ぜっ、全部ぅっ、まとめて……!!

(【ダッシュ】でカエルラマヌスらの前に躍り出て、その場で【力溜め】)

っふ、うううう……!
(弱々しい少女の体躯を蹲らせて【おびき寄せ】)
(相手の攻撃は牙と爪、襲い掛かってくるしか無いなら、此方も待つ。待って、待って、力を溜めて)


ッッ!《うあああああ!!!》

(ユーベルコードの力を纏っての【捨て身の一撃】、嵐の様に右腕の巨大な機械爪を振り抜き、徒党を組むカエルラマヌスらに【範囲攻撃】)

じ、じゃッ……じゃ、邪魔だ……!
ぺっ……ペットに、なんかっ、かっ、かっ、構ってられるかっ……!!

で、でぇっ、でてっ、出てこいよ、吸血鬼ぃ……!!!


アイリス・クラウディア
【鉄の人形】アドリブ大歓迎! 口調プレ スナイパー102 UC使用
モースと傭兵時代からの相棒。普段は犬と猿のような仲。言い切りの女の子口調。言葉を慎重に選ぶので無口で途切れやすい。

■目的
モースと共に向かってくる敵を一撃必殺(UC)で迎え撃つ(仲間猟兵の戦闘をカバー)

■行動
私は先ほど同様、愛銃MR-24を使って狙撃&伝達。
確認できた群の数などをいち早く仲間に伝達し、スムーズに戦闘態勢に入れるようフォローも行う。…どうやら相手も一筋縄ではいかないみたい。
ふっ、跳んだとしてもそんな巨体じゃ、動く的。立ち向かってくるならば、撃ち落とすのみ。一匹たりとも逃しはしない。

…戦闘開始。


モース・レフレクソン
【鉄の人形】

ほう……まだあんなにいたのか…
まぁいい…避難はあらかた済んだだろう…やるぞアイリス…撃ちもらすんじゃないぞ

装甲突破特化アンチマテリアルライフルを用意する…こういう時のために用意しておいた俺の新兵器だ。
そして【破壊狙撃】を発動する。群れに、この改造だけでなくエネルギーを詰め込んだ対物ライフルをぶち込んでやる。一体はグチャグチャに…そして周りも衝撃で巻き込まれるだろう

悪いが1発だけではない…弾はいくらでもある

全滅させるまでやめはしないぞ…!



●『暴虐の青風』の本領
 ――その異常は、すぐに猟兵達に察知された。
「あ、ああ、あれ……!」
「ああ、おかしいな」
 村へと急いで戻る最中、コナミルク・トゥモロー(Seize the day・f18015)の指摘にジロー・フォルスター(現実主義者の聖者・f02140)は返す。
 森が、静まり返っている。あれだけ騒がしかったと言うのに、だ。村にいる者には、その変化はより強く感じられた。
「ふん……駄犬と思いきや、なかなか狩人の動きをしているではないか」
 フラウロス・ハウレス(リベリオンブラッド・f08151)が、ニヤリと笑う。カエルラマヌスの変化に、気付いたからだ。
 本来、狩猟とはそういうものだ。気配を殺し、獲物が逃げられない範囲へと引き込んでから、襲いかかる――先ほどまでのカエルラマヌスの行ないは、文字通り猟犬のそれだ。隠れた獲物を主の前に追い立てる、そのためのもの。
 ならば、これこそが『暴虐の青風』カエルラマヌスの本領なのだろう。女神の変装を解いたリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、小さくこぼす。
「……ん。気配が変わった。ようやく本腰を入れて来たみたいだけど……無駄なこと」
「まったくだな。哀れなことだ、そのまま油断しておれば楽に死ねたであろうに。良かろう、戦いを選んだことを後悔させてやる!」
 ミシリ、とフラウロスの黒爪が、軋みを上げる。その言葉に同意し、リーヴァルディも言った。
「狩られるのはどちらか、思い知らせてあげる」
 ――気配はなくとも、確かにカエルラマヌス達は存在している。数体ずつで組み、村を囲むように展開する騎竜達の動きを熱源反応で察知して、アイリス・クラウディア(戦場に咲き誇る小さな花・f09353)は告げる。
「……目標、展開中。数組が、先行しているみたい。前衛と接触するまで、後10秒――」
 アイリスのカウントダウンが、仲間達に届く。そのカウントが0になった瞬間、すべてのカエルラマヌス達が威嚇するように、殺気を放った。

「……戦闘開始」

●狩る者と狩るモノ
 獣が襲う前に殺気を放つのは、獲物を萎縮させるためだ。そして、この距離まで詰めればもう獲物を逃さないという確信を抱いたからでもある。
「さて、ここからは防衛か。避難地点まで通さないようにする必要がある」
 村の北側にいたアッシュ・ボーンファイア(怪物狩り・f15659)は、迫る殺気に怯む事なく言い捨てた。そして、自身の掌を無造作に切って傷口を作る。
「私の能力を鑑みれば――前か」
 アッシュは掌を眼前に突き出し――ゴォ!! とブレイズフレイムによる炎の壁を展開した。森の中に突如として生まれた炎の向こうで、『ギギィ!?』と困惑した声がする。
「そうね、狩りは集団で力を合わせた方がいい時もあるのよ。でも、その狩りはルーたちが邪魔するの。みんなを守るって、約束したからね」
 その炎を背後に見て、森の南側にいたフルール・ラファラン(森に住まう人・f00467)はキッと口を結んでから、意を決して静かに手を組む。
「ルー、まだ怖いけど、でも仲間がいるから大丈夫よ」
 その決意を持って、フルールは静かに告げた。

「清らかで、静かな森よ……此処に顕現して、私を助けて……!」

 大きく手を広げるフルールを中心に、光り輝く森が拡がっていく。森の儀式(フォレ・リチュエル)――召喚された、フルールの小さな森の世界樹だ。
 その輝きに目を奪われたように、カエルラマヌス達が集まっていく。アイリスのサイバーアイと同調したモース・レフレクソン(サイボーグの戦場傭兵・f06734)が言い捨てた。
「ほう……まだあんなにいたのか……」
 先鋒、斥候、捨て石――先ほどまでのカエルラマヌス達を表現する言葉が、いくつもモースの脳裏に浮かぶ。
「まぁいい……避難はあらかた済んだだろう……やるぞアイリス……撃ちもらすんじゃないぞ」
『任せて』
 MR-24を構えて返答するアイリスに、木陰に隠れたモースもまたライフルを持ち出した。装甲突破特化アンチマテリアルライフル――少なくとも、生物に持ち出していい規模ではない。だが、相手は騎竜であり、オブリビオンだ。常識で判断できる相手ではない。
 ――不意に、銃声が重なった。アイリスのMR-24に合わせ、モースが引き金を引いたのだ。弾丸は森の木々を縫うように放たれ、アイリスの一発が額をモースのそれが胴体を大きく抉った。そして、ドン!! と衝撃が森を揺るがす。
『ギィ!?』
「……こういう時のために用意しておいた俺の新兵器だ。悪いが1発だけではない……弾はいくらでもある。全滅させるまでやめはしないぞ……!」
 輝く森に誘われたカエルラマヌス達が、撃ち殺されていく。まさに、戦場さながら――否、戦場そのものの苛烈さだった。
「……さぁ、獲物は此処よ。掛かってきなさい」
 村の西側、見えざる鏡像(インビジブル・ミラー)で気配と姿を隠したリーヴァルディが大鎌を構えた。眼前には、誘惑の呪詛によって視線を引きつける、存在感のある残像が立っている。
『ギギ!!』
 残像に襲いかかろうと森から飛び出したカエルラマヌス、その一体へと駆け込みリーヴァルディは大鎌を振るった。ザン! と唐突な痛みにカエルラマヌスが、困惑したように地面を転がった。
 仲間の異常に、カエルラマヌス達が動きを止める。そこへ、黒爪を手にフラウロスが襲いかかった。左右の黒爪を深く突き刺し、紙か何かのようにあっさりとカエルラマヌス達を引き裂いていく。濁った血を爪から吸いながら、フラウロスは不敵に笑った。
「どうした、束になってもその程度か。油断していたままの方が良かったのではないか?」
『ギギギギ!!』
 挑発には乗らない、そう言いたげに騎竜の群れは陣形を立て直す。なるほど、確かに頭は悪いわけではない――しかし、その動きにフラウロスの笑みは濃いものになった。
「こ、こッ、来い、来い! ぜ、ぜ、ぜっ、全部ぅっ、まとめて……!!」
 村の東側、コナミルクが迫るカエルラマヌス達へと駆け込んだ。カエルラマヌス達からすれば、コナミルクなどただの小さな獲物に過ぎない。喜んで、牙を剥いて群がっていった。
「っふ、うううう……!」
 牙が、爪が、コナミルクを傷つけていく。だが、まだだ。コナミルクは、地面に押しつぶされるように引き倒される間際、力を溜めて、溜めて、溜めて――!

「ッッ!《うあああああ!!!》」

 カエルラマヌス達の群れ、その間から巨大な機械の腕が伸びる――コナミルクの生体融合:右腕だ。捨て身から放たれる、機械腕の薙ぎ払いが覆いかぶさっていたカエルラマヌス達を薙ぎ払った。
 まさに暴風、暴力だ。小さな体から伸びる機械の腕が、騎竜を打ち砕いていく。それを一瞥し、ジローは喉を鳴らした。
「くく、悲しい事に俺も血に飢える側でな」
 カエルラマヌス達に、怯えはない。むしろ、血に酔ったように凶暴性を増していくだけだ。ただただ、狩るために――狩る者と狩るモノの戦いは、激しさを増していく……。

●「狩人は、同じ狩り場に共存できない」
 カエルラマヌスは、戦士ではない。狩るモノであって、戦いに意味を見出さないのだ。だからこそ弱く、そして狩りやすい対象を選ぶモノもいる。
『ギギ……』
 カエルラマヌス達がその納屋に目をつけたのは、血の匂いに誘われてだ。これだけの血の匂いだ、決して軽傷ではない――ならば、楽に狩れるはずだ。そう、判断したのだ。
『ギギ――』
 納屋に入り込んだカエルラマヌス達が見たのは、中心に置かれた藁の山だった。濃厚な血の匂いは、その藁の山からする――その時だ。
『ギギギ!!』
 一体の騎竜が、血以外の匂いに気付き仲間達へ警戒の鳴き声を発する。だが、遅い。

「暴れ狂え……!」

 ジローのカタストロフが、納屋を炎で包んでいく――バリン! と梁の上に仕込んでいた油を詰めたボトルが割れ、一気に炎が広がった。その炎は即座に上昇気流を生み出し、火炎旋風が巻き起こる!
『ギギ――!』
「逃がすか」
 炎の竜巻の中から飛び出そうとするカエルラマヌスは、ジローの風に引き戻された。暴走するその寸前に、ジローの水の魔法が火炎旋風をかき消していく。
『ギギギ!!』
 その炎に、一旦退こうとしたカエルラマヌス達の行く手を防いだのは、コナミルクだ。
「じ、じゃッ……じゃ、邪魔だ……! ぺっ……ペットに、なんかっ、かっ、かっ、構ってられるかっ……!!」
 横へ薙ぎ払われる機械の腕が、カエルラマヌス達を吹き飛ばしていく。木や建物に叩きつけられ、カエルラマヌス達は地面に倒れ伏した。
「全滅させるまでやめはしないぞ……!」
 ドン! ドン! と村の南側ではモースの破壊狙撃(ハカイソゲキ)による衝撃音が鳴り響く。その衝撃から逃れた個体を、確実にアイリスが一撃必殺(イーグルアイ)によって急所を撃ち抜いていった。
「ふっ、跳んだとしてもそんな巨体じゃ、動く的。立ち向かってくるならば、撃ち落とすのみ。一匹たりとも逃しはしない」
 カエルラマヌス達の機動力は、並ではない。むしろ、アイリスとモースの狙撃力が高すぎるのだ。障害物の多い森の中を高速で動き回る騎竜達を、モースの狙撃で翻弄し漏れたモノはアイリスは確実に処理する――それに加えて、これだ。
「可愛そうだから、終わりにする」
 フルールの森の儀式(フォレ・リチュエル)が、光の森に引き寄せられたカエルラマヌス達を貫き、倒していく。南側は、そのまま大した抵抗もできずに駆逐されていった。
「一切合切灰燼と成す。貴様ら全て、例外はない」
 村の北側、アッシュが古き大鉄塊を手にカエルラマヌス達に待ち構えている。炎の壁を回り込もうとするカエルラマヌス達は、東と西へ散っている――だからこそ、アッシュの狙いは炎の壁を突き破ってきたモノ達だ。
『ギギギ!!』
 炎の壁を、二体のカエルラマヌスが跳躍で越えてくる。足の爪を使って地面に引き倒そう、そう襲いかかってくるカエルラマヌス達に、まずアッシュは二発の炎を叩き込んで撃ち落とした。
『ギ――』
「遅い」
 かろうじて着地したカエルラマヌス達へ間合いを詰めると、アッシュは古き大鉄塊を横一線振り払った。ザン! と鈍い斬撃音と共に、二体のカエルラマヌスが豪快に両断された。
「これは狩りではない。駆除だ――村人には近づけさせん」
 アッシュは炎の向こう側で機を窺うカエルラマヌス達へ、そう言い捨てた。
「……一匹たりとも逃しはしない。お前達はここで終わりなさい」
 村の西側、短く過去を刻むものを構えたリーヴァルディが体重を乗せる動きでカエルラマヌスへ鎌を突き立てた。そして生命力を吸収しながら柄に手を滑らせ、長く持ち直した大鎌をその怪力で振り切る!
 ブン! とカエルラマヌスが投げ飛ばされ、フラウロスへ殺到していた騎竜達にぶつかる。動きが乱れたと判断した刹那、フラウロスが喉を鳴らした。
「ククク……集まってくれてご苦労。ならば、本気の一端、垣間見せてやろう。ゆくぞ。我が放つは嵐の惨禍! 唸れ血風、ブラッディストーム!!」
 フラウロスが左右の黒爪を横回転で振り払った瞬間、血のように赤黒い、風の刃をまとった竜巻がカエルラマヌス達を飲み込んだ。
『ギギギギギギギギギギ!?』
 青が赤く、染め上げられていく――文字通り切り刻まれ、血煙となったカエルラマヌス達の姿は、血風が消えた時にはどこにもなかった……。

「これで最後だ」
 古き大鉄塊を突き立て、最後の一体を倒したアッシュが村へと戻ってくる。他の仲間達も、無事らしい。まずは、これで一安心だ。
「大きな狩りを集団でするときは、リーダーがいるはずなのよ。そのリーダーを倒さないと、また繰り返えされちゃう」
 何処だろ……と小首を傾げるフルールに、ジローはふとカエルラマヌス達の亡骸を見る。
「結局、飼い主が一番悪いんだがな」
 命は命だ、ジローはカエルラマヌス達の冥福を祈った。それぐらいは、赦されてしかるべきだろう。
 不意に、コナミルクが声を張り上げた。

「で、でぇっ、でてっ、出てこいよ、吸血鬼ぃ……!!!」

 騎竜達を操り、惨劇を引き起こそうとした相手がまだ残っている。その叫びは遠く、森を歩く吸血猟姫にまで届いていた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『吸血猟姫ディアナ』

POW   :    インビジブルハッピー
【銃口】を向けた対象に、【見えない弾丸】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD   :    バレットパーティー
【血から無数の猟銃を生み弾丸】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    ドレスフォーハンティング
全身を【これまでに狩った獲物の血】で覆い、自身が敵から受けた【負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。

イラスト:蛭野摩耶

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ナイ・ノイナイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●そして、狩人は狩り場へと――

「へぇ」

 森の奥まで届く声に、吸血猟姫ディアナは感嘆の声を漏らす。なるほど、どうやら今回の獲物は随分と活きがいいらしい――その事が、楽しくて仕方がない。ニィ、と持ち上がった口の端が、そう物語っていた。

「だったら、もう時間を潰す必要はないね。アタシも、待ちくたびれたところだ」

 ディアナが、地面を蹴る。優雅に散歩をしていた時とはまるで違う、それは四足の狩猟動物が喜び勇んで駆け出した姿によく似ていた。
 そう、ただの獲物では潤せない『渇き』もあるのだ。今回の獲物なら、それを癒やしてくれる――その確信を持って、吸血猟姫は夜の森を駆け抜けていった……。
フルール・ラファラン
リーダー、だね
餓えた音と気配がとってもする……

狩りは、引き際が大事って、ルーが教えてあげる
「勝負、なのよ」
この”狩り”にルーは負けるわけにはいかないの

守るって、約束したから。あの子と、村の人みんなと!
ルーの魔法、喰らって!!

制御が難しいから、みんな上手に避けてね?
ルーも頑張って制御するから

草木の竜巻でも起こせるかな
鋭利な風で切り刻むよ

怖いのも、痛いのも、暗いのも
そんなの与えるのはだめだよ。かわいそう

ルーはまだまだだから、皆の援護に重きを置こうかな

「まだ、この”狩り”続けるの……?」
引き際がわからなくなったのかな
もうね、貴方は追い詰められてるの。
狩る側じゃなくて……うん、狩られる側なの
さようなら


リーヴァルディ・カーライル
…ん。人が獣を狩るように吸血鬼は戯れに人間を狩る。
お前はそんな吸血鬼の在り方そのものね。

…私は、お前達のような吸血鬼を狩る者よ。
吸血鬼狩りの業を見せてあげる。

【吸血鬼狩りの業】や第六感を頼りに敵の忍び足や目立たない存在感を捉え、
魔力を溜めた両目に殺気の残像を可視化(暗視)して攻撃を見切り、
【封の型】によるカウンターを試みるわ。

あえて隙を作り攻撃を誘惑した後、
銃撃を怪力の踏み込みから“血の翼”の空中戦を行う推進力を加え加速して回避し接近、
生命力を吸収する呪詛を宿した大鎌をなぎ払う連撃(2回攻撃)を行い、
傷口を抉り動きを封じましょう。

一手、一手、お前の力を削いであげる。
…さぁ、覚悟は良いかしら?


アッシュ・ボーンファイア
さて本命だ
言葉は不要。ただ、必ず狩るのみ

・POW行動
銃使いかつ機敏と見た。接近は難しい、最後までブレイズフレイムだな
奴の動きを【追跡】し、銃口と射線と弾道を塞ぐように【早業】で炎の壁を作る
多くの弾丸をばら撒かれても、焼き溶かせば私も味方も多少は回避が楽になろう
炎を使う俺は目立つが、味方が【目立たない】ようにできる。炎を消せば、味方の攻撃も邪魔しない
被弾は【覚悟】して耐える
上手く接近でき、機会があれば、銃撃に【カウンター】して傷から炎の放射と、炎のショートソードの【2回攻撃】する

「貴様を満たすは地獄の炎。渇いて塵と果てろ、怪物」

仲間がいる。今まで経験は無かったが……悪くないな

アドリブ協力改変歓迎


コナミルク・トゥモロー
っがあああぁあぁあ!!!

(放たれた矢の《鏃》の如く、右腕の巨大な爪‪‪──‬Seize the dayを突き出しての突進による【先制攻撃】)

お、お、おっ、おっ、お前が、おっ、親玉か!!

(見えない弾丸を避けるような、防ぐような技術は持っていない。痛みに対する耐性も、別にあるわけじゃない。痛い。でも、でも、元より【捨て身の一撃】なれば)
(猟銃ごと叩き潰すような暴力的な一撃で【武器落とし】)

か、かっ、か、狩られる側の気持ち、とかっ…
お、お、お、思い知れなんて言わないっ!
さ、さぁ、さ、悟ったフリなんかしてる暇あったら!さ、っさ、さっさと、死ねっっ!!


ジロー・フォルスター
攻撃が得意な、頼りになる仲間が多いようだからな
俺は守りに徹することにするぜ
【地形の利用】でより多くを守るのに効率のいい場所を探り
ディアナが銃口を向ける動きを【暗視・見切り】でとらえ『禍祓陣』
聖痕と【祈る・高速詠唱】を使って味方のケガを治してサポートしよう
余裕があれば銀の鞭を【ロープワーク】で操ってディアナを拘束して支援するぜ

煽って【言いくるめ】、冷静さを奪って【おびき寄せ】るかね
「くく、手ごたえねえなあ。お前の『猟犬たち』のほうが連携できてた分、熱かったぜ!」
その渇き、嫌なことに理解できなくもない
が、修羅場を幾つもくぐってきた俺たち猟兵には、ぬるま湯もいい所だったな!


フラウロス・ハウレス
ふん、来たかディアナとやら。
ククク……待ち侘びたぞ。
駄龍どもにも言ったが、狩られる側の恐怖をくれてやろう!

黒爪を鋭く伸ばし、こやつに斬りかかろう。
迎え撃たれるであろう透明な弾丸は我が身で受け止め、勢いは殺さずに黒爪の一撃を放つ!
「ほう、見えざる弾丸か。小細工をしてくるものだな。
だがこの程度の小細工、妨げにもならんわ!」

ふと、我が眼前に立ちはだかった村人のことを思い出そう。
ヤツはそこまでして守りたいものがあったのだな。
その心意気は汲んでやらねばなるまいよ。

黒爪を拳状に変化させ両手に装着し、【ブラッディ・インパクト】だ!
「貴様の"獲物"の覚悟を、その身で受けて見せよ!!ブラッディ・インパクトッ!」



●吸血猟姫
 村へたどり着いた吸血猟姫ディアナは、足を止めて笑った。
「――ハンッ」
 停止と共に流れる動作でライフルを手にするディアナは、横へ視線を送る。そこには、加速して突っ込んでくる異形の影があった。

「っがあああぁあぁあ!!!」

 それは放たれた矢の《鏃》の如く右腕の巨大な機械の爪Seize the dayを突き出した、コナミルク・トゥモロー(Seize the day・f18015)だ。ディアナがライフルの引き金を引く、銃声と共に吐き出された見えない弾丸がコナミルクの足と肩を撃ち抜くが――止まらない!
「狂獣め」
 脇腹を爪でかすられながら、楽しげにディアナが舞う。それを視線で追って、コナミルクが叫んだ。
「お、お、おっ、おっ、お前が、おっ、親玉か!!」
「そうだが?」
 さらりと返すディアナへ、フルール・ラファラン(森に住まう人・f00467)はどこな懐かしい感覚を覚えていた。
(「リーダー、だね。餓えた音と気配がとってもする……」)
 森に潜む、飢えた狩猟獣のそれに近い。しかも、飢えを楽しむ獣のものだ。時折、いるのだ。ただ貪るだけでは飽き足らず、飢えが満たされた充足感に溺れるモノが。森に生まれ森に生きるフルールのような存在にとって、そういうイレギュラーな獣も知らないではない。
(「その渇き、嫌なことに理解できなくもない」)
 一人、ジロー・フォルスター(現実主義者の聖者・f02140)は笑みを濃いものにした。サングラスの下、ジローの視線に気付いたのか否か――ディアナが大きく猟兵達から、間合いをあけた。
「ふん、来たかディアナとやら。ククク……待ち侘びたぞ。駄龍どもにも言ったが、狩られる側の恐怖をくれてやろう!」
「そうか、それは素敵だね。そのくらいの気概が獲物にないと、楽しめない」
 フラウロス・ハウレス(リベリオンブラッド・f08151)とディアナが、同じ笑みで視線をかわす。ジワリ、と周囲の気温が上がった、そう錯覚する程の敵意が両者の間でぶつかった。
「……ん。人が獣を狩るように吸血鬼は戯れに人間を狩る。お前はそんな吸血鬼の在り方そのものね。……私は、お前達のような吸血鬼を狩る者よ。吸血鬼狩りの業を見せてあげる」
「ハハッ」
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)の言葉に、吸血猟姫は笑い――。

「――やれるものなら、やってみろ」

 その言葉がトリガーとなり、猟兵と吸血鬼が同時に動いた。

●狩猟場での舞踏
 後は本命――言葉は不要。ただ、必ず狩るのみ。アッシュ・ボーンファイア(怪物狩り・f15659)は、即座に掌の傷口から地獄の炎を吹き出させた。ゴォ! と視界が紅に染まる中、ディアナは跳んだ。

「さぁ、飲めや歌えやの――パーティの始まりだッ!!」

 ダークセイヴァーの曇天を背に、大量の血弾をディアナが生み出していく! ヒュガガガガガガガガガガガガガガガガッ! と降り注ぐバレットパーティーの雨あられに、リーヴァルディが魔力によって広げた血色の双翼で空を舞った。放たれるリーヴァルディのグリムリーパーを、ディアナは猟銃で受け止める。
「いい牙だッ」
 振り払われるリーヴァルディの鎌に、ディアナは逆らわない。そのまま吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる寸前で着地に成功した。
「狩りは、引き際が大事って、ルーが教えてあげる――勝負、なのよ」
 この”狩り”にルーは負けるわけにはいかないの、とフルールが思い出すのは男の子の姿だ。フルールの言葉に立ち上がってくれた、あの子のために――。
「守るって、約束したから。あの子と、村の人みんなと! ルーの魔法、喰らって!!」
 ヒュオ! とディアナを中心に巻き起こったのは草木を含んだ竜巻だ。草が、枝が、竜巻で飲み込んだものを切り裂いていく――フルールのエレメンタル・ファンタジアを、ディアナは傷つきながらも強引に抜けた。
 しかし、その目の前を銀の鞭による網が防ぐ――ジローだ。
「攻撃が得意な、頼りになる仲間が多いようだからな」
 俺は守りに徹することにするぜ、とジローが笑った瞬間、フラウロスが踏み込んだ。伸ばした黒爪、それを振り払うより早く――振り返らずに、ディアナが猟銃の引き金を引いた。
 ドンドン! とインビジブルハッピーの銃弾が、フラウロスの脇腹を撃ち抜く。だが、フラウロスの笑みは増すだけだ。
「ほう、見えざる弾丸か。小細工をしてくるものだな。だがこの程度の小細工、妨げにもならんわ!」
 怯むどころか、勢いを殺さずフラウロスが黒爪を繰り出す! それを火花を散らしながら、ディアナは紙一重で猟銃で受け止めた。
「ク、ハハ――面白いッ!!」
 歯を剥いて笑い、ディアナは後退する――そこへ、コナミルクが一気に駆け込んだ。
「わ、わ、っわ、私は、矢だ……は、はっ、放たれた矢だ!!」
 まさに、鏃(イノチ)の一撃。コナミルクの突撃が、横からディアナを捉える。そして繰り出されたSeize the dayの巨大な爪が、ディアナを突き刺した。

「ガ、ハ!」

 そのまま吹き飛ばされ、ディアナが地面を転がる。それを追おうとして――猟兵達は、踏みとどまった。
「ハ、ハハ! いい嗅覚だ」
 ぞぶり、とディアナの体から血が吹き出していく。大量の、あまりにも大量の血が、地面を吸血猟姫を塗り潰していった。
 ドレスフォーハンティング、全身をこれまでに狩った獲物の血で覆う狩猟者の装い。それはもはや、吸血鬼と呼んでいいものか――どれほどの獲物を狩ったのか、まさに異形とも言うべき獣が、そこにいた。

「これだ、こうじゃなくちゃ駄目だ。狩るか、狩られるか、狩りとは命のやり取りの先にこそ真価がある!」

 己の傷さえも力に変えて、吸血猟姫は高らかに笑った。

●狩りの果てにあるものは――

「ハーハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」

 異形の狩人が、村の建物の屋根を踏み砕きながら駆ける。振り返りざま、ディアナは血弾を生み出し射出。縦横無尽に駆ける銃弾の猟犬に、ジローが告げた。
「やらせるかよ」
 ジローが全身を覆う聖痕の力を拡大、自分の周囲にいた味方に届くはずであった血弾を解除、消し飛ばしていった。ジローは禍祓陣(カフツジン)で吸血鬼の血を防ぎながら、笑っていった。
「くく、手ごたえねえなあ。お前の『猟犬たち』のほうが連携できてた分、熱かったぜ!」
「その挑発、乗ってやる!」
 ディアナも笑い、着地と同時にジローへ迫る。血のドレスは、もはやそれ自体が獣のようだ。
「怖いのも、痛いのも、暗いのも。そんなの与えるのはだめだよ。かわいそう」
「悪いな、ソレこそが吸血鬼なものでなぁ!!」
 フルールが繰り出す草の雨をくぐり抜け、ディアナが吐き捨てる。言葉を交わせる獲物とのやり取りを、この吸血猟姫は心の底から楽しんでいた。

 ――戦いは、獣同士がお互いの喉笛に牙を向け合う様によく似ていた。互いに命の届く場所に『牙』がある、それを防ぐのではなくどちらが先に届かせるか? これはそういう戦いだ。

 元より、狩猟とは刹那で決着がつくもの。だからこそ、狩人同士の戦いは唐突に――しかし、必然を持って終わりへと向かった。
「ク、ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
 ディアナが、猟銃を構える。その銃口さえ向ければ、見えない弾丸が放たれる――だが、その猟銃がガン! と大きく弾かれた。
「……お前に、この構えを破る事はできない」
 吸血鬼狩りの業・封の型(カーライル)、吸血鬼狩りの業が可能とする連撃が、猟銃を構えようとするディアナの動きをことごとく弾く!
「一手、一手、お前の力を削いであげる……さぁ、覚悟は良いかしら?」
「ならば、それを食い破――!」
 る、と続くはずだったディアナの言葉が止まる。ジャラララララララララララ! とジローの手元から放たれた銀の鎖がその動きを封じたからだ。
「修羅場を幾つもくぐってきた俺たち猟兵には、ぬるま湯もいい所だったな!」
 その刹那、ディアナの懐にフラウロスが踏み込む。
 思い出すのは、あの時自分に立ち塞がった男の姿だ。
(「ヤツはそこまでして守りたいものがあったのだな。その心意気は汲んでやらねばなるまいよ」)
 自身よりも強大な敵に、立ち向かう勇気。力は伴わなくとも、あの時の男には強さがあった。ならば、その強さに見合った『力』を示さなくてはならないだろう。
 フラウロスは横に大きく振りかぶる両腕――その両の拳を黒爪が覆っていった。

「貴様の"獲物"の覚悟を、その身で受けて見せよ!! ブラッディ・インパクトッ!」

 血風をまとった真紅の拳が、異形の狩人を吹き飛ばす! 無数の建物を砕きながら吹き飛ぶディアナへ、コナミルクが迫った。
「か、かっ、か、狩られる側の気持ち、とかっ……お、お、お、思い知れなんて言わないっ! さ、さぁ、さ、悟ったフリなんかしてる暇あったら! さ、っさ、さっさと、死ねっっ!!」
 ドン! と上から振り下ろされたコナミルクの暴力的な一撃が、地面ごとディアナを押し潰す! それでもなお、ディアナは笑って動いた。
「まだ、だ!」
「まだ、この”狩り”続けるの……?」
 フルールの問いかけに、ディアナは答えない。ただ、行動で応えるのみ。
「引き際がわからなくなったのかな。もうね、貴方は追い詰められてるの。狩る側じゃなくて……うん、狩られる側なの。さようなら」
 ザン! とディアナの全身を、植物の竜巻が切り刻んだ。そこへ、リーヴァルディとアッシュが同時に踏み込んだ。
 リーヴァルディの鎌による二連撃と、アッシュの炎のショートソードによる袈裟斬りからの切り上げ――それが、止めとなった。
「貴様を満たすは地獄の炎。渇いて塵と果てろ、怪物」
「く、はは、は……」
 ゴォ! と地獄の炎がディアナを覆い、血の装いごと燃やし尽くしていく。狩人として狩った獲物もまた彼女自身であった、と言うように……吸血猟姫は、笑って灰となった。

「仲間がいる。今まで経験は無かったが……悪くないな」
 腕を振るい、炎のショートソードをアッシュは消す。勝敗を分けたものは、まさにそれだっただろう。もしも、ディアナがカエルラマヌスと共に戦っていれば――あるいは、結果は違ったものだったかもしれない。猟兵達には負けられない理由があったが……おそらく、あの吸血鬼にはなかったのだろう。
 戦っていたか、戯れていたか、命のやり取りにおいてそれは大きい。猟兵達は、その事を噛み締めながら夜風に舞って消える灰を見送った……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月31日


挿絵イラスト