●
カタカタと揺れる大きな要石。
細々とした欠片が落ちたかと思えば、小さなヒビが入る。
暗闇に響き続ける音――少しずつ大きくなるその音が封印の崩壊を告げる。
広がる隙間からは、墨汁を思わせる黒い靄が浮き上がった。
靄が形作るは大きな瞳。
その瞳は、貴方の過去を映し出す。
●
「過去ってのは大事なもの……でも、囚われるもんじゃねぇな」
並んだ猟兵たちへとそう声をかけるのは、ゴリ・ゴリ(ミュータント・ゴリラーズ・f18193)だ。
バナナを猟兵たちへ配りながら行なわれたゴリの説明によれば、事件が発生するのはエンパイアのとある田舎だという。
そこには、過去大きな被害を出した“呪われた式神”が封印されているというのだ。
「どうやら、そこの封印が限界を迎えているみたいでな。封印から解放された式神で辺りの村々が壊滅する予知があった」
古くに行なわれた封印の綻び。
だが、依頼内容は再封印をして欲しい……というわけでは無いようだ。
「なんというか、溜まったマグマというか、振った後の炭酸飲料というか……封印が崩壊した勢いに乗って広範囲に広がってしまえば大問題だが、戦闘で相対した場合にはそこまで脅威というわけでは無いようだな」
封印の要となっている大きな要石。
式神が広い範囲に広がってしまっては、周囲の村々に大きな被害が発生してしまう。
その為、むしろ猟兵たちによって要石を外すことにより、飛び出る勢いを削いだ状態でその場に留め、呪われた式神を撃退して欲しいという。
古くに封印された技術も途絶えて久しく、再封印も難しいようで、その対応がベターとのことだ。
対し、式神は直接の戦闘能力には乏しい。
だが、同時に厄介な能力を持っているという。
「そいつは相対した相手が手を出すのを躊躇うような、過去で“重要な相手”の姿の幻影を見せるという……面倒な能力だな」
“重要”とは、もちろん家族や恋人、恩師など……ポジティブな意味で重要という場合もある。
しかしながら、例えば逃げ出したくなるようなトラウマのような相手や、決して好いてはいないが己が人格形成に重要な相手であれば、その姿を形どるという。
「悪いが、その封印が存在するのは森の中で目印になるようなモノが何も無くてな……おおまかな位置は分かるので、まずはその場所の目途付けから初めて欲しい」
近くには平和な農村が一つあるようだ。
分かり辛い場所にあるとはいえ、目立つ大きな要石。
地元の人間に聞けば、容易に場所が見つけ出せるだろう。
猟兵達は、一先ずその村で情報収集を行なう必要がありそうだ。
ゴリラの偉丈夫は、猟兵達を激励するように胸を大きく叩く。
「それじゃあ、宜しく頼む!」
猟兵達は向かう――バナナを片手に。
きみはる
お世話になります、きみはるです。
本作は心情描写中心に頑張れたらと考えております。
皆様の魅力的なキャラクターの掘り下げの役に立てれば幸いです。
一章日常フラグメントで早めに規定数に達してしまうかと思われますので、それに間に合わなくとも二章からでも歓迎しております。
●一章 平和な農村で情報収集
平和な農村を見て、貴方は何を思うのか。
幸せに共感するのか、妬みを感じるのか。
村人への情報収集はほどほどに、心のうちを吐露して頂ければと思います。
●二章 封印
封印を解く為の行動をして頂きます。
その際、貴方の過去で“重要な人”の幻想を見ます。
重要とは、想い出のウェイトを占める人物。
決してポジティブな意味とは限りません。
どんな相手なのか、イメージが伝わるように書いて頂いた方が、三章がより楽しくなるかと思います。
●三章 戦闘
相手は二章で描写された貴方にとって重要な人を形どります。
それがポジティブな相手であれ、そうでなくとも、当然攻撃を仕掛けてきます。
お前は偽物だ!と格好良く切り捨てるのか、トラウマに立ち向かうのか、皆様それぞれの過去との向き合い方を教えて頂ければと思います。
●注意事項
シナリオの描写上、基本個人毎の描写になると思います。
グループ参加の場合、上手く書けそうになければこちら判断でセパレートさせて頂きますことをご承知おき下さい。
第1章 日常
『とある農村の一日』
|
POW : 村人から作物の収穫の手伝いを頼まれる
SPD : 人懐っこい子供にまとわりつかれる
WIZ : 何かへ祈りを捧げる村人と遭遇
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
セプテンバー・トリル
こちらから積極的に封印を解く、というのは珍しい話かもしれませんわね。
【WIZ】アドリブ歓迎
とりあえず、UC【追跡測量班・招集】で【サーベイヤー】にこの村周辺を観測させましょう。
空からではどの程度の調査が可能かは不明ですけど…まぁ、やらないよりは良いでしょう。
地上は私自身で探索しませんとね。
それにしても…平和ですわねぇ。
まるで子供の頃に遊んだ故郷のよう。
何もないけど、かけがえのない平穏があった…あの田舎町。
『トリル義姉さん』
……ええ、たぶん、呪いが呼ぶのは貴女なんでしょうね。
『私、この国をもっと良い国にしたいの』
いけませんわね。
出遭う前から落ち込んでしまうのは…
さあ、まずは封印を見つけないと!
●
セプテンバー・トリル(ゼネコンのお姫様・f16535)は空を見上げる。
澄み渡る青空、流れる雲……美味しい空気を楽しむようにゆっくりと深呼吸。
猟兵である彼女が目を凝らせば、空には己が召喚した測量支援隠密ヘリ『サーベイヤー』が飛行していた。
微かな音を立てながら飛行するサーベイヤー。
しかし、一般人には視認すら出来ないだろう。
空を飛行する絡繰りに気付くこともなく、村人たちは平和を謳歌していた。
丘の上から村を眺め、トリルは想いを馳せる。
平和……間違いなく、平和と言い切れるほどにのどかな農村。
まるで子供の頃に遊びまわった己が故郷のようだ。
何もない、寂れた田舎町――でもそこには確かに、かけがえのない平穏があった。
それはまさに、この貧しくとも平和な村のように。
トリルの目の前を姉妹と思われる少女たちが走っていく。
慈しむような微笑みを浮かべるトリル――ふと彼女の脳裏に、懐かしい情景がフラッシュバックした。
『トリル義姉さん』
そう呼ぶのは己が義兄弟が一人。
グリモアベースで説明を受けた際、真っ先に頭に浮かんだ人物だ――呪いが幻想を見せるのであれば、一人しかいないと思えるほどの人物。
『私、この国をもっと良い国にしたいの』
そう言っていた時、あの子は一体どういう表情を浮かべていたのだろうか。
忘れられない想い出。
しかし、細部を思い出そうとすれば、脳が拒否をするかのように靄がかかる。
そして……ゆっくりと気持ちが沈んでいく。
(いけませんわね……)
落ち込んではいられない。
まずは、封印を見つけなければ。
気持ちを奮い立たせたトリルは、ゆっくりと歩きだした。
己が過去と向き合う覚悟を持って。
成功
🔵🔵🔴
エレノア・クレメンス
【SPD】
懐かしさですか…。
今はもう住んでた所はないけれど、幸せなこともありましたよ…多少はね。
1つ言えることは、妬みを感じたことはないです。
と、そこへ子供達が来て囲まれ
村の遊びに誘われましたが
「ごめんね。不器用だからさ、見てるだけでもいい?」
少し時間が経ち、仲良くなった子供達に、大人達がこんな話をしてたよ…とかがあったら、教えてくれると嬉しいです。
《アドリブ歓迎》
●
エレノア・クレメンス(エルフのアーチャー・f18391)は農村の子供達に囲まれていた。
あまり娯楽も無い狭い農村。
その狭い村社会で普段見かけないエレノアを物珍しく感じたのであろう――キラキラとした視線を向けながら、様々な遊びへの誘いの言葉を口々に、同時に口にする。
「ごめんね。私……不器用だからさ、見てるだけでもいい?」
どの遊びを取っても喧嘩が始まりそうだと感じたエレノアは、優しい笑みを浮かべながらそっと子供達に語り掛ける。
遊んでおいでと子供達を送り出しながら、ゆっくりとあぜ道を歩き出した。
(故郷、ですか……)
彼女の故郷は既に滅んでいる。
嫌なことが何一つ無かったというわけでは無いが……幸せなこともあったとは思う。
(懐かしい、懐かしい……のでしょうか?)
懐かしむ程に尊いわけでも無く。
しかして卑しむほどに問題があった訳では無い。
唯一つ言えることは――この平和な風景を妬む程、悪いものでは無かったはずだ。
ふと、気になる単語が耳に入ったような気がして、思考の海から意識を戻す。
目の前には、友人同士で話しながらカエルを追いかける少年たちがいた。
「ねぇ、今何って言ったの?」
話しかけられた少年は、不思議そうな顔をしてエレノアを見上げた。
「えー?なんかねー、村の大人達が言ってたんだけど、裏山のお社の調子が悪いんだってー」
お社――探すべきものが要石であることから、調べてみる価値はあるだろう。
(幸せな思い出があれば……私は大丈夫)
鬼が出るか蛇が出るかは分からないが、きっと問題ない。
そう心を強く持ち、エレノアは歩き出した。
成功
🔵🔵🔴
アルマニア・シングリッド
【SPD】
過去の幻影、ですか
まぁ、十中八九あの人が出るのでしょう
それを楽しみに情報収集に勤しみますか
検索召喚を使用
念動力で我ハ古キ書ノ一篇ナリを動物の姿に変えて(武器改造)
村の中を情報収集
私は子供たちにちょっとした冒険譚でもお話しましょう
心情
この村の雰囲気もいいですね
とても長閑で
お昼寝がしたくなるぐらいに
…あの人のお陰でこのような体験ができると考えると
大変複雑な思いなのですが
何せ、狐の皮を被ったあっぱらぱーですからね
ご主人
まぁ、ヤドリガミとして肉体を得て
自分の意思で自由に動けるのはとても素晴らしいです
他の主たちは本体の記録にある限り
ほぼ好ましい方々ですし
私は『私』として
今を謳歌いたしましょう
●
アルマニア・シングリッド(世界を跨ぐ爆走天然ロリっ子な空想召喚師・f03794)は想う。
彼女は、手帳のヤドリガミだ。
故に彼女にとって重要となる人物は――十中八九、元の持ち主の一人だろう。
主人のことは、正直記憶が朧気な部分もある。
だからだろうか、不謹慎かもしれないが……正直、少し楽しみともアルマニアは感じていた。
情報収集をすべく彼女が手にしたのは、彼女の本体の一部でもある『我ハ古キ書ノ一篇ナリ』
手の平に置かれたその虹色の紙は、手を触れずとも一人でに鳥を形どった。
村の中へと飛び立った己が半身でもある鳥を見送り、アルマニアは歩き出す。
この村は良い。
周囲に絡み、アルマニアの語る話に興奮する子供たちへと微笑む。
自然にこぼれた欠伸を噛み殺すと、のどかで平和な雰囲気に思わず昼寝がしたくなるほどだ。
こうした今の自分がいるのは、もちろん“あの”主人がいたからこそ。
そう思えば思うほど、アルマニアは複雑な思いがあふれ出る。
(何せ、狐の皮を被ったあっぱらぱーですからね、ご主人)
外観に反し、己が主人はまともだっただろうか。
何人もの主人の手に渡った手帳であった朧げな己の記憶を探っても、やはり自分の過去の多くを占めている“あの”主人こそ、一番の変人であった気がする。
過去がどうであれ、ヤドリガミとして肉体を得て自立した今、アルマニアは己が自由を満喫している。
自身で考え、自身の意思で行動する。
普通の人間であれば、それは当たり前なのかもしれない。
だが、そうでなかった時を知るが故に、彼女はそうであることの尊さが理解出来た。
アルマニアは歩みを進める。
己が人生を、己が足で。
「まっ、私は『私』として……今を謳歌いたしましょう」
成功
🔵🔵🔴
熱海・靖久
(持たされたバナナを手に転送されつつ)
封印、か…
あ、作物の収穫の手伝いですか。構いません、はい
後で要石の場所教えていただけるならば、喜んで
(作業しながら)
僕は今、UDCアースの世界に住んでいるけど
こうした畑仕事は殆どしないから新鮮だよね
(周りの人々の笑顔を見て)
物資は恵まれた僕らの世界だけれど
こうしたサムライエンパイアのような時代があったから、今があるんだよね
(しみじみと)
…ねぇ、春。(靖久の心の中の人格。若くして亡くなった親友)
僕らもこんな世界に生きて居たら、2人で年を重ねられたのかな
(バナナを食し)
いや、過去を悔やんでも仕方ないね
…どんな敵が現れても。
僕は前に進むだけだ
※アドリブ大歓迎♡
●
「すまないねぇ、田植えまで手伝ってもらっちまって」
腰を曲げた老婆に感謝を受けながら、熱海・靖久(多重人格者のおじさまダンサー・f06809)は農作業を手伝っていた。
「あ、はい、構いませんとも……後で要石の場所教えて頂けるともっと嬉しいですが」
そう言葉を返す靖久に対し、大したことでも無いと老婆は笑った。
「要石ってのは、裏山のお社様のところにあるヤツかねぇ?そんなんでよけりゃぁ、ええさぁ」
どうやら事前情報の通り、村人ならば要石に思い当たるものがあるらしい。
ならば後は農作業を片付けるだけだと靖久は気合を入れた。
まだ肌寒い時期だというのに、澄んだ青空から照り付ける日差しを熱く感じる。
止まっていれば寒かろうとも、こうして体を動かしていれば汗を掻く一方だ。
(こうした畑仕事なんて、殆どしないから新鮮だよね……)
思わず靖久は、仏頂面の口元を僅かに吊り上げる。
彼が住んでいるUDCアースだって、もちろん畑はある。
だが、靖久の私生活の周りでは、農作業と接する機会は無かった。
軽く痛む腰を伸ばしながら、靖久は村を眺める。
何てことないかのように、自分よりも手早く田植えを進める老婆たち。
ふとあぜ道に目をやれば、子供達が元気に走り回っている。
遊んでいる子供どころか、労働に従事する老婆でさえ笑顔を浮かべている。
家々を見れば、間違いなくUDCアースの方が豊かだろう。
だが……
(物資は恵まれた僕らの世界だけれど、こうしたサムライエンパイアのような時代があったから、今があるんだよね)
幸せとは何なのか……感慨深げに人々の笑顔を眺めていると、靖久の思考は自然と親友を思い出していた。
(ねぇ、春……僕らもこんな世界に生きて居たら、2人で年を重ねられたのかな)
亡き親友に思いを馳せながら、靖久は懐からバナナを取り出す。
口の中に広がる甘みが、疲れた身体に活力を与えるようだ。
「ねー、おっちゃん何食べてるの?俺にもくれよー」
(どんな敵が現れても……僕は前に進むだけだ)
過去を悔やんでも仕方がない。
奪われたバナナを悲し目に眺めながら、靖久は前に進んだ。
……田植えを終わらせる為に。
成功
🔵🔵🔴
第2章 冒険
『大要石を動かせ』
|
POW : 俺様が気合を入れて、まっすぐぶつかれば動かないモノなどねえ、壊してしまったらすまんな。
SPD : テコの原理で…ちょうどいい棒なんて落ちてませんよねえ、持ってきたアイテムでなんとか。
WIZ : 金剛力士を召喚する我が秘術を持ってすれば、このような石などたちどころに…。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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猟兵たちは、村人の情報を頼りに山を登った。
しばらくすると事前に聞いていた通りの鳥居が見え、その奥には古びた社を発見した。
猟兵たちは互いに視線を交わすと、険しい顔をしたまま歩みを進める。
境内に視線を這わせると、件の要石は簡単に見つかった。
成人男性の身の丈はあろうかという巨大な要石は、境内の一角に祀られていた。
しかしその周囲には、既に瘴気が蔓延しているではないか。
要石をよくよく見れば、細かいヒビが全面に走っている。
どうやら、猟兵たちに与えられている時間はそう長くは無いらしい。
猟兵は急いで要石へと手をかける。
声を掛け合いながら力を込めれば、常人ではまず動かせないほどの大きさの要石を浮かすことに成功した。
次の瞬間、猟兵達の周囲を埋めつくすほどの黒い靄が噴出した。
靄に飲まれた猟兵たちの意識が、一瞬途切れる。
その無意識が見せるのは……猟兵たちの心に浮かぶのは過去で“重要な人物”だ。
今、貴方の過去が顔を出す。
セプテンバー・トリル
引っ込み思案で臆病で少し後ろ向きな貴女と会ったのは10年前。
『…ジャンヌ・アリア・カレンデュラ…です』
いつか女王となって国を導く貴女の力になりたくて、私たちは義兄弟の契りを結んだ。
『トリル義姉さん!あのね……様が私の専属執事になってくれたの!』
常に貴女の影になって助けてくれるあの方の尽力のおかげか、貴女はどんどん立派になった。
黄金の髪、太陽の笑顔、純白のドレス、皇女の王冠…どれも私には眩しかった。
『…ねぇ、トリル義姉さん…どうして?』
でも、貴女のその輝きが、全部嘘だったなんて!
『どうして私の邪魔をしたの?セプテンバー・トリル!』
貴女と戦う時が来るなんて、思いもしなかった!
酷い…幻想、ですわ。
●
「ジャンヌ・アリア・カレンデュラ……です」
幻想の中で語り掛けてきたのは、セプテンバー・トリル(ゼネコンのお姫様・f16535)の記憶にある義妹の一人、ジャンヌであった。
トリルの意識は深く潜る。
もうかれこれ……10年程前になろうか?
トリルがジャンヌと義兄弟の契りを結ぶとき――ジャンヌこそ女王となり、国を導いていくのだと確信していた。
だからこそ契りを結び、だからこそ彼女の力になりたいと我武者羅に働いたのだ。
記憶の中のジャンヌは、いつだって輝いていた。
「トリル義姉さん!あのね――様が私の専属執事になってくれたの!」
彼女の笑顔に、トリルは自然と笑みがこぼれる。
様々な想い出が、まるで早回しのように流れていく。
幻想の中のジャンヌの姿が次々とうつろう。
幼き姿から、少女と呼べるほどの姿に。
(常に貴女の影になって助けてくれるあの方の尽力のおかげか、貴女はどんどん立派になったわよね)
黄金に輝く髪
太陽のような笑顔
純白のドレス
皇女の王冠
どれもがトリルにとって、眩しく見えた。
全てが尊く、そして愛おしく感じた。
「……ねぇ、トリル義姉さん…どうして?……どうして私の邪魔をしたの?セプテンバー・トリル!」
しかしその輝きは、偽りのものだと気付いたのはいつだったか。
思考が鈍くなった頭が、鮮明になっていく。
幻想の中の暗い霧が、晴れていくようだ。
愛しき義妹と戦う時が来るなんて、思いもしなかった。
戦いたくて戦ったのでは無い。
避けられるものなら、避けたかった。
でも、そうはいかない。
今観ているのは“過去”なのだから。
吐き気を堪え、腕を振るう。
意識を戻したトリルの視界には、地を転がる要石が再び映った。
怨敵に相対したかのように溢れ続ける靄を睨みつける。
「酷い…幻想、ですわ」
成功
🔵🔵🔴
剣堂・御空
【POW】
石を持ち上げようとする。
過去の幻影…。って言うと俺が逃げたした過去でも帰ってくるんだろうな。となれば出てくるのは間違いなく俺の養母だな。
俺は養母に育てられた。家の為に英才教育というか麗しい存在になるよう、きつくしつけられた。そのせいか淑女的な作法を教えられ、服装も女性の服を着るよう強制されていた。俺は養母の人形になってしまうのが怖くて家出したんだ…。
養母は黒のポニーテールが特徴。そして広島弁を話す。
「ようやく見つけたんよ、御空。今までどこをほっつき歩いとったん?」
多分、「(淑女的な立ち方が)なっとらんよ!」ってガミガミ説教するだろう。
…やっぱりトラウマだよな。
※アドリブ歓迎
●
「ようやく見つけたんよ、御空。今までどこをほっつき歩いとったん?」
剣堂・御空(ダンピールの黒騎士・f17701)が観たのは、艶やかな黒髪を後ろに引き寄せ纏めた髪型をした女性。
(やっぱり……アンタか)
御空が幻想の中で観たのは――彼の継母だ。
その瞳に睨みつけられれば、今でも身体が竦んでしまう。
御空にとって、逃げ出した過去。
だが、間違いなく今の彼の人格形成において、少なくない影響を与えた人物だ。
だからこそ、出てくるのであれば継母に違い無いと御空は確信していた。
継母のことは苦手だ。
恐らく継母は悪意ではなく、継母なりの考えをもっていたのだろう。
“家の為”という継母にとって一番の正義を優先した考えを。
家の為の英才教育――様々な習い事に、淑女に相応しい作法。
何度厳しく叱責され、何度打たれたことか。
身なりにすら自由は無かった。
女性らしい、麗しい存在に見合う身なり。
派手なフリルのついたロリータドレスに、メイド服。
まるで着せ替え人形のような扱いを受ける度に、本当に自信が継母の人形になってしまうのでは無いかという恐怖が、彼を蝕んだ。
(あぁ……やっぱりトラウマだよな)
継母に相対するだけで、自分が間違っているような気になってくる。
継母こそが、全て正しいのだと。
だが御空の意識に、“何か”が引っかかる。
あの家では何ら疑問に思わなかった“何か”
猟兵としての人生経験が、初めて与えてくれた疑問。
「家の為に……俺の女装は関係ねェだろぉ!アンタの趣味じゃねぇか!」
急激に意識が覚醒する。
焦点のあった目が、溢れ続ける靄を捉える。
御空は拳を握りしめた。
今度こそ、あの継母に一歩も引かないと心に誓い……
成功
🔵🔵🔴
アスカ・ユークレース
まさか私にも効くなんて、ね。
無数のコンピュータで埋め尽くされたラボ。
沢山の姉妹に囲まれて、私を作った技師がいて。きっと私は幸せだったのでしょう。だけどそれは永遠ではなかった。
ある日突然追われる身になった…他でもない姉妹や技師に。
『違う、私じゃない!お願い信じて!…信じてってば……』
必死の抵抗も虚しく捕まって、体中弄られて眠らされて……!
次に目覚めたときは妙にキラキラした世界で……私は独りでした。
…これが、私がずっと知りたかった事なの…?
何も知らないまま、キマフュで自由気ままに生きていた方が良かったのかしら……?
●
「まさか私にも効くなんて、ね」
バーチャルキャラクターである自分でも幻想を見るのかと驚くアスカ・ユークレース(電子の射手・f03928)
彼女が見ているのは何かの研究所であろうか――その空間は無数のコンピューターで埋め尽くされていた。
薄暗い部屋の白い壁は無数のディスプレイに照らされ、部屋中に放熱ファンの作動音が木霊する。
(きっと私は幸せだったのでしょう)
その日常には……たくさんの姉妹がいて、親とも言えるアスカを産み出した技師もいた。
笑顔の絶えない、穏やかな日々。
しかしそれは、永遠では無かった。
「違う、私じゃない!お願い信じて!…信じてってば……」
記憶の中で、アスカの悲痛な叫び声が響く。
色褪せた写真のように、セピア色の映像がノイズを混ぜながら流れていく。
何が起きたのか分からないまま、家族に追われることになったあの日。
必死の抵抗も意味をなさず、捕縛された。
体を固定され、必死に身じろぐ彼女へと向けられる様々な医療器具。
押さえつけられた腕へと挿し込まれた針。
流し込まれる“何か”に、彼女の意識は奪われる。
アスカが眠らされた瞬間――映像の乱れは一際大きくなった。
流れる砂嵐。
響くノイズ。
気付けば彼女の世界は変質していて……その妙にキラキラした世界に、アスカは取り残されていた。
(……これが、私がずっと知りたかった事なの…?)
不鮮明であった過去の記憶を見せつけられるアスカ。
その内容は決して平和とは言えず、何も知らないまま今の世界で自由気ままに生きていた方が良かったのではという考えが浮かぶ。
そう思い悩む彼女の意識は、ゆっくりと浮上していった。
光を取り戻した彼女の視界は、溢れ続ける靄を捉えた。
彼女は選ばなければならない。
再び、その過去と――向かい合うか否かを。
成功
🔵🔵🔴
アルマニア・シングリッド
私には、過去の記憶はない
ないのに………
どうして、貴女のことは覚えているのでしょうね?
ご主人――アルマニア・シングリッド
ご主人
貴女が私を気まぐれに異空間に放り投げてくれてから
様々な、それはいい方々(アルマニアたち)に出会いましたよ
私のヤドリガミとしての本体に刻まれた
貴女の記述もある
あのルーズリーフ手帳がその証拠です
私と同じ、漆黒の髪と瞳と身長
違うとすれば
ご主人は猫のようにいたずらっ子な顔つきとアクティブな服装
私はマイペースで和装っぽい格好でしょうか
私の心配をしてた?
はっ
呆れた冗談ですね
どこまでも人でなしで
いい性格をしている貴女がそうするなんて思ってもいないです
まぁ、元気にはやっていますよ
ご主人
●
自分には過去の記憶が無い。
無い……はずなのに……
(どうして……どうして、貴女のことは覚えているのでしょうね?ご主人――いや、アルマニア・シングリッド)
目の前に映るのは、己――アルマニア・シングリッド(世界を跨ぐ爆走天然ロリっ子な空想召喚師・f03794)と似た人物――自身の器物としての主人。
艶やかな漆黒の髪。
同じ小ぶりな身長故に、その何も映し出さない黒い瞳と視線が合う。
落ち着いた服装を身に纏い、穏やかな雰囲気を漂わせているアルマニア。
体格も、身体のパーツも似ているのに……
己と違い……はつらつとした服装に身をつつみ、猫を思わせる愛嬌のある表情の主人。
自身と似ているはずなのに違った性格の主人が疎ましいのか、羨ましいのか……アルマニアは、無性に心臓を掻きむしりたくなるほどに心が乱れるのを感じていた。
ヤドリガミとしての本体である、ルーズリーフ手帳に刻まれた主人の記述。
その一文字一文字が、主人の――主人たちの存在が幻でないことを教えてくれる。
ろくでもない人間のはずなのに。
気まぐれで異空間へと己を放り投げられるような人物なのに。
なぜこんなにも、この人は自分の心の中で存在が大きいのか。
見つめ合う主人の唇が動く。
ゆっくりと、艶かしく動く唇がメッセージを伝える。
し……ん……ぱ……い?
(私の心配をしてた?はっ、呆れた冗談ですね……)
どこまでも人でなしであった主人。
どこまでも人を食ったかのような性格をしてた主人。
その主人が自身を心配していたなどと、最近の幻想は冗談も言うようだ。
腹の底から湧き出た感情は――怒りだろうか?
急激に明確になっていく意識が、心の中から幻想を追い出していく。
ピントが合い始めた視界が溢れ続ける黒い靄を捉えた。
彼女の唇から思わず零れた言葉の意味は――哀愁か、決別か。
「まぁ、元気にはやっていますよ……ご主人」
成功
🔵🔵🔴
熱海・靖久
…春……!?
(親友の姿に目を見張る。
その姿は亡くなった25歳ではなく、靖久と同じく53歳程。
痩身で、怪しい雰囲気の漂うロックなイケオジ)
■前提
親友、春。享年25歳。
若い頃、バンドを組み活動していた。
「なァ靖久。俺は靖久となら天下獲れると思ってんだぜ?」
ケケケと笑う春に誘われ。
ボーカルは春、ギターは靖久。バンド名は『Myuilar』
激しいパンクロックで、知る人ぞ知るバンドとなった。
メジャーデビューも決まり、順風満帆…の筈だったが
春が、殺された。
ライブ後、薬物中毒者によって刺され、呆気なく。
守れなかった
守りきれなかった
僕が代われたら良かったのに。
そう思う程に、春は天才的だった
※アドリブ大歓迎
●
(…春……!?)
熱海・靖久(多重人格者のおじさまダンサー・f06809)が見開いたその瞳の先には、亡くなったはずの親友が立っていた。
しかしその姿は靖久の記憶にある当時のものでは無く、そのまま共に年を重ねていればこうなったであろうと、彼が想像し……納得し得る姿をしていた。
長髪痩身。
ギラついた瞳が、その危険さを――ロックさを物語る。
「なァ靖久。俺は靖久となら天下獲れると思ってたんだぜ?」
ケケケと怪しげな笑い声をあげる目の前の春。
その笑顔が、独特の笑い声が……間違い無く靖久の記憶の中にある春だと彼に確信させた。
ボーカルは春、ギターは靖久。
バンド名は『Myuilar』
激しいパンクロックで、インディーズながらも根強い人気を得た。
知る人ぞ知るバンドとなったのだ。
メジャーデビューも決まり、順風満帆……の筈だったが……
靖久の脳裏に、思い出したく無い光景がフラッシュバックする。
甲高い悲鳴。
響く怒声。
遠くから聞こえるサイレン。
靖久の大切な親友は、呆気なく亡くなったのだ――ライブ後、薬物中毒者によって刺されることによって。
今でも忘れられない。
自分は先に気付いていたのだ。
不信感を覚える男の雰囲気に。
外灯の光を鈍く照らし返す、懐から取り出された刃物の存在に。
そんな事件が起こり得るとは考えもしなかった平和な日常。
その思考が、その光景の意味するところを理解させてはくれなかった。
(守れなかった……僕は、守りきれなかった)
僕が代われたら良かったのに。
そう思う程に、春は天才的だった。
その春が、もう一度共に歩もうと手を差し伸べている。
共に年を重ねた、53歳の春が。
咄嗟に手を握り返そうとする靖久。
しかしその脳裏に、その行動を歯止めする何かが蠢いた。
目の前の幻想とは別の、ケケケと独特の笑い声が脳裏に響く。
急激に開ける視界――目の前の春が消え、溢れ出る靄を捉える。
その光景を眺める靖久の口元に浮かぶのは、彼らしく無い満面の笑み。
今、もう一人の彼が顔を出す。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 集団戦
『暴走する式』
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POW : 魔弾呪式
【幾つもの呪力弾】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : 分裂呪式
レベル×1体の、【一つ目の中】に1と刻印された戦闘用【自身と同じ姿の暴力する式】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : 憑依呪式
無機物と合体し、自身の身長の2倍のロボに変形する。特に【武器や殺傷力のあるもの】と合体した時に最大の効果を発揮する。
イラスト:灰色月夜
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
猟兵たちがひっくり返した巨大な要石は、大きな音を立てながら転がった。
その勢いのまま真っ二つに割れた惨状が、猟兵たちの対応がギリギリ間に合ったものであったことを物語っていた。
流れ落ちる滝を逆再生で見ているかのように溢れ続ける黒き靄は、それでも空へと羽ばたくには勢い足りず……
猟兵たちの頭上で脈打つように姿を変えると、それぞれの塊から大きな瞳が顔を覗かせた。
大小様々な異形の瞳は、その真っすぐな視線で猟兵たちの顔を覗き込む。
ギョロギョロと上下左右に動いたかと思えば、それぞれが集合し塊となり、人型を形作ったでは無いか。
ブラックタールの擬態のように姿を変えたその人型は、猟兵たちが先ほどまで見ていた幻想に映し出された人物を形どっていた。
猟兵達は拳を握る。
大切な想い出を弄んだ報いを受けさせる為か。
はたまた、己が過去を乗り越える為か。
アルマニア・シングリッド
【POW】
はい
予想通り過ぎる相手を寄こしてくださって
誠にありがとうございます(実にいい(黒い)笑顔
まったく
只々、嫌悪感しか抱いていない最初のご主人と
幻覚とはいえ会わせられたので
今の私は御機嫌斜めですよ
事前に情報収集をしておきましたから
幻覚を見せられている間も魔力を力溜めができましたし
地形も利用することができました
目立たない罠も仕込み済み
さぁ
空想召喚で私の鉄槌を喰らってくださいな
地面に幾つもの魔法陣を設置(罠使い)
敵が魔法陣の上に来たのを見計らって
雷の爆発を起こす(味方の猟兵にはノーダメージ)
他にも爆風、水からの念動力で氷の嵐と
私の想像は世界と戦闘の知識と学習力が活きるのです
アドリブ・連携大歓迎
●
「はいはい、予想通り過ぎる相手を寄こしてくださって……誠にありがとうございます」
アルマニア・シングリッド(世界を跨ぐ爆走天然ロリっ子な空想召喚師・f03794)は嗤う。
彼女の精神は最高に苛立っていた。
嫌悪感の塊である、己が最初の主人の幻想を見せられて……
彼女は深紅の瞳を持った異形が己が主を形どる様子を眺め、笑みをより深く――より凶暴なものに変えてゆく。
アルマニアは、己が体内で練り続けていた魔力を解放した。
練り上げられていた魔力の封が外され、彼女の感情の赴くままに体内を駆け巡る。
「これは、貴方たちが築き上げたものの結晶。私が得たものすべて、この術に込めましょうっ!サモンっ!」
アルマニアが構えた双手から放たれた強力な魔力は不可視の魔法陣となり、溶けるように地面へと消えていった。
対し、主人……の面を被ったオブリビオンは艶のある笑みを浮かべ歩み寄る。
久しぶりだと、つれないのではないかと、馴れ馴れしく話しかける。
壊れたラジオのように繰り返し同じセリフを吐くオブリビオンは、一人、また一人と姿を増やしていった。
ギチリ、とアルマニアの奥歯が音を立てる。
最早、眼前のオブリビオンの全てが気に入らない。
「もう、貴方はお呼びじゃ無いんですよ!」
オブリビオンの一人が、アルマニアの仕込んだ不可視の魔法陣を踏み抜いた……その瞬間――辺りに轟音が響き渡る。
煌く雷光。
響く雷鳴。
不可視の罠として散りばめられた魔法陣が、連鎖的に開放される。
連なる爆発。
薙ぎ払う洪水。
飛び交う氷弾。
その全てが、オブリビオンを蹂躙していく。
アルマニアのユーベルコード『空想召喚(サモン・イマジネーション)』
練り上げられた魔力がアルマニアの想像を具現化し、創造する。
猟兵として様々な世界を旅し……重ねた戦闘の経験が、その想像をより現実に近いものとし、より強力な魔術へと変えたのだ。
「それじゃあ、元気で……ご主人」
荒れ狂う災害で消えた塵へと、アルマニアは静かに声をかけた。
大成功
🔵🔵🔵
セプテンバー・トリル
その金髪もドレスも王冠も、あの時のまま…
そして、邪神の眷属に堕した証…道化の仮面と王位の光錫も。
【POW】アドリブ歓迎
『私は頑張った!国の為、民の為、義兄弟たちの為に頑張ったのに!』
貴女の戦い方は光錫による爆光魔法…でも、弱いですわ。
あの時の光には遠く及ばない!
『どうして私には何も残らないの?!少しくらいご褒美があってもいいじゃない!』
【全力魔法】の【オーラ防御】で光を弾きます。
『助けてよ!誰か、私を助けて!』
UC【螺旋魔導光】で一気に倒します!消えなさい、過去の亡霊!
『ねえ…さ…』
…きっと、私達が貴女を助けます。
だから…その時は、本当にくだらない…普通の姉妹喧嘩をしましょう、ね?
●
異形が形どった人型は、全てがセプテンバー・トリル(ゼネコンのお姫様・f16535)の記憶の通りであった。
黄金に輝く髪
純白のドレス
皇女の王冠
そして……邪神の眷属に堕した証――道化の仮面と王位の光錫
「私は頑張った!国の為、民の為、義兄弟たちの為に頑張ったのに!」
取り乱すように叫ぶ少女。
その動きがトリルの記憶とまた一致し、彼女の心の水面を波打たせる。
「どうして私には何も残らないの?!少しくらいご褒美があってもいいじゃない!」
ヒステリックな叫びをあげながら少女が錫杖を振るうと、星々のように宙へと光が生み出される。
膨れ上がった光はトリルへと飛来すると、突如轟音を鳴り響かせ爆発した。
周囲へと飛び散る飛礫。
立ち上る土煙。
しかしその中から現れたトリルは半透明の膜に覆われ、傷一つ負ってはいなかった。
「確かに貴方はうり二つ……でも、弱いですわ。あの時の光には遠く及ばない!」
目の前の少女の姿は、確かにトリルの記憶と合致していた。
しかしその魔術の威力は、記憶のものに遠く及ばない。
「助けてよ!誰か、私を助けて!」
叫び続ける少女。
もう見てはいられないとばかりに、トリルは静かに、そして力強く己が相棒である槍にも似た剣を構える。
「一・旋・貫・通!シュピラーレカイザー!」
螺の先端へと圧縮された魔力が剣の周囲を螺旋を描くように伝う。
手もとへと伸びた魔力が、そのままトリルの全身を覆っていく。
後方へと吐き出される魔力はそのまま推進力となり、武器と一体となったトリルを弾き飛ばす。
「消えなさい、過去の亡霊!」
荒れ狂う螺旋の力を携えた剣が放たれた呪術を弾き飛ばし、オブリビオンへと突き刺さる。
その破壊力はまさに一撃必殺。
「ねえ……さ……」
塵のように崩れていく少女を眺め、トリルは言葉を零す。
「きっと、私達が貴女を助けます……だからその時は、本当にくだらない……普通の姉妹喧嘩をしましょう、ね?」
それは消えゆくオブリビオンでは無く……何れ再開する、愛しい義妹へと送られた言葉だった。
大成功
🔵🔵🔵
剣堂・御空
過去を超えないとな。このなりすましオブリビオンは倒してやる。
なりすました相手は俺の養母だ。養母とはうまく話さずに家出したけどそれは逃げではなかったことを示さないと。打ち負かせる事が出来るならそこに説得力や正しさがあるはずだ。
戦いかたは至ってシンプル。血統覚醒して吸血鬼としての力を解放して妖刀カワエグリを使ってで斬るだけだ。
「俺は選んだんだ。この力で新しい自分を見つけてやるって!」
多分全力を出してもこの養母を越えるのは精神的になんかキツい気がする。こいつは呪力弾を使うだろうし、養母が得意な薙刀でダメージは避けられないだろうな。
過去を吹っ切るために最後の一撃にグーで殴ってやる。
●
剣堂・御空(ダンピールの黒騎士・f17701)は静かに汗を流す。
異形が形どったのは、予想通り彼の養母。
決して得意では無いこの義母と、ろくに話さず家を出たこと……
しかしそれは決して逃げでは無いと、勝利を以って示さねばならない。
御空は拳を握り決意を新たにした。
「はぁぁぁあっ!」
御空の赤い瞳がより深く、より紅く輝く。
彼の犬歯がより太く、より鋭く突き出した。
ダンピールである己に流れる血に含まれるヴァンパイアの血。
その血の力を高め、ヴァンパイアへと覚醒するユーベルコード『血統覚醒』だ。
御空は『妖刀カワエグリ』を手に、眼前へと飛び出した。
オブリビオンが迎え撃つように次々と放つ呪力弾を弾き飛ばす。
前へ、前へと駆ける御空。
駆ける度に砕ける敷石が、あがる土煙が……ヴァンパイアとして覚醒した彼の人間離れした身体能力を物語る。
オブリビオンが持つのは薙刀。
御空の記憶にある養母が、得意としていた得物だ。
地を這うように低く構えた御空は、振るわれた薙刀を潜るように肉薄する。
ヴァンパイアの強靭な膂力による鋭い斬撃――しかしその一撃は精彩さを欠き、容易く柄で弾かれてしまう。
たたらを踏む御空。
踏みとどまり、視線を前に向けた彼が目にしたのは相手の背中。
大きく身体を捻り振るわれた薙刀が、空気を振るわせながら肉薄する。
「がっ!」
袈裟切りを受けた身体が熱い。
遅れて来た痛みが体を蝕む。
手中には愛刀は無く、何処かに弾き飛ばされたようだ。
気づけば彼の膝は……小さく震えていた。
引いていく血の気が、鋭い痛みが彼を冷静にさせる。
理解はしているのだ。
勝てない相手では無い。
事実、オブリビオンの呪力弾を弾いている間は、何ら危機感を感じなかった。
しかし養母を強く連想させる薙刀を目にした瞬間――相対した瞬間、体が拒否をするように動きが鈍ったのだ。
「俺は選んだんだ。この力で新しい自分を見つけてやるって!」
自分自身を鼓舞するように叫ぶ。
震えを止めるように強く膝を殴る。
痛みで余計な思考を止めるよう、己が傷口を握りしめた。
全力で地を蹴る。
己が手中は無手――だが、関係無い。
一瞬で詰められたオブリビオンが、驚きの表情を見せる。
「いくぜぇえ!」
過去を吹っ切る為に振るわれた全力の拳が、オブリビオンの頭部を塵へと変えた。
勢いのまま倒れ込む御空。
体の傷で、そして『血統覚醒』によりかけられた強大な負荷により、立ち上がることが出来ない。
しかし倒れたまま、御空は強く拳り宙へと掲げる。
その笑顔は、満足気なものであった。
大成功
🔵🔵🔵
熱海・靖久
●真の姿として25歳青年である『春』の姿に。人格も『春』
…ケケケ。
年取った俺と対面させてくれるなんて粋な敵じゃぁねぇか。
なぁ、靖久。…あぁ聞こえねぇか、おやすみ親友。
(満面の笑みで)
■敵
「偽物だってわかってんだ、思いっきりやってやんぜぇ!」
格闘攻撃をメインに、ダンスのような流れる攻撃を
「はん!残念だが今の俺のが数段格好良いな!」
キレッキレの動きで
「ったく、俺の親友に嫌な事思い出させんじゃねぇよ」
UC【灰燼拳】多用
「俺が死んだのは只の運命だ。…ま、靖久の身体借りることになるのは計算違いだけどな!」
■戦闘後
…そりゃあ俺だってよ、お前と年取りたかったぜ
(ケケケと笑い、真の姿を解く)
※アドリブ大歓迎!
●
「……ケケケ」
その独特な笑い声をあげる男は、熱海・靖久(多重人格者のおじさまダンサー・f06809)の記憶する、亡くなった友人に似ていた。
長髪痩身、ギラついた目付きに怪しい笑い声。
そして若ささえ……靖久の記憶する、亡くなったあの日のままの姿だ。
その男――春は、目の前に立つ自身に似た壮年の男を眺める。
それは靖久が見ていた幻想の中にいた、年を重ねた春――黒き異形が形どる、まやかしの姿。
「年取った俺と対面させてくれるなんて粋な敵じゃぁねぇか。なぁ、靖久……あぁ聞こえねぇか、おやすみ親友……」
春は――靖久の多重人格者としてのもう一つの姿は、肉食獣をも連想させる獰猛な……狂気をも感じる満面の笑みを浮かべ、鏡写しの虚像へと躍りかかった。
「偽物だってわかってんだ、思いっきりやってやんぜぇ!」
地を蹴り、鋭く突き出される拳。
受け止め、勢いを流すように繰り出される裏拳。
掻い潜り、投げ出される勢いのまま放たれる蹴り。
二人の動きはまるで訓練された殺陣のように組み合わさり……流れるようなダンスのように洗練されていた。
地を蹴り、宙で重ねられる拳。
地を掴み、風を切る踵。
二人の初動は互角。
互いが互いを理解しているかのような動き。
しかしダンスが続けば、その洗練された流れに……キレのある動きに、差が現れる。
それは年を重ねた姿に身体が引かれたのか……はたまた、虚像の限界か。
「はん!残念だが今の俺のが数段格好良いな!」
一つ、二つ、三つ……
繰り返し繰り出される春の凶悪な拳が、己が虚像を捉え始めた。
たまらず呪力弾を繰り出すオブリビオン。
しかしそれを見た春の表情は、より一層凶暴なものとなる。
「俺の姿で、そんなモンに頼ってんじゃねぇ!」
顔面を掴み、そのまま地に転がる岩へと叩きつける。
潰れた肉塊は、黒き塵となって風に飛ばされていった。
消えてゆく虚像に、春は戦闘の終わりを……自身の自由の終わりを感じ取る。
「ったく、俺の親友に嫌な事思い出させんじゃねぇよ」
しかし“それ”には不満は無く、彼が想うのは過去を悔やむ親友のことばかり。
「俺が死んだのは只の運命だ……ま、靖久の身体借りることになるのは計算違いだけどな!」
そう笑い飛ばす彼は願う……もう一人の彼が、過去を乗り越えられる日のことを。
大成功
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