バトルオブフラワーズ⑪〜花園のテンペスト
「ふふっ、キマイラフューチャーでの戦いもそろそろ佳境かな?」
集まった猟兵たちを前に、グリモア猟兵・ロベリアはグリモアを展開する。
「システム・フラワーズの攻略は順調みたいだね。残る敵もあと僅かだ」
グリモアベースに映し出されるのは、花びらの舞う「システム・フラワーズ」内部の風景。
そして中枢への道を塞ぐ最後の幹部の姿だ。
「もう知ってると思うけど、敵の幹部もオブリビオン。つまり倒しても即座に骸の海から復活する。……だけど、こっちのやる事はシンプルだよ」
復活する能力を超えるだけの死を与える……即ち、短期間に何度も撃破しつづければ、何れは復活出来なくなるというワケだ。
「さて、今回戦ってもらう相手はウィンドゼファー……風を操るユーベルコードの使い手だね」
グリモアによって敵の情報が開示される。
これまで戦った2人の幹部と違い、ウィンドゼファーは条件を満たさなければ無敵というような反則的な能力の持ち主ではない。
だが、その2人に並べるほどに強い。
単純に強いというのが、この相手だ。
「正直、これまで以上の強敵かもね。この相手には絶対に先手を取られるっていう前提で戦って」
相手は速度の上でもこちらを上回る。
敵からの先制攻撃を対策しなければ、敗北は必至だ。
「私から言えることはこれだけだよ。コイツに対しては正攻法で勝つ以外に無いかな……。それでも、皆ならきっと勝てるよ!」
激励とともにロベリアのグリモアが展開し、猟兵たちを転移させる。
この戦場を制すれば、中枢への道が開かれる。
オブリビオンフォーミュラとの決戦は、目の前まで迫っていた。
桃園緋色
桃園緋色です。
出遅れましたが、戦争シナリオにも参加させていただきます。
今回の戦いでは、以下の特殊ルールが設定されています。
====================
敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。
====================
上記を含め、強敵との戦いになります。
普段以上に難しいシナリオとなりますが、皆様のご活躍を上手く演出したいと思います。
では、プレイングをお待ちしています。
第1章 ボス戦
『スピード怪人『ウインドゼファー』』
|
POW : フルスロットル・ゼファー
全身を【荒れ狂う暴風】で覆い、自身の【誰よりも速くなりたいという欲望】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : ソード・オブ・ダイアモード
対象の攻撃を軽減する【全タイヤ高速回転モード】に変身しつつ、【「嗤う竜巻」を放つ2本の車輪剣】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:藤本キシノ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ルルティア・サーゲイト
「ふむ、厄介じゃなぁ。当たらなければどんな攻撃も意味は無い」
生憎とそんな超高速で動き回る奴に大鎌を当てる手段など持ち合わせておらぬ。故に、
「こちらも少しばかり本気で当たらせてもらおう!」
ならば、当たる物を斬れば良い。当たる物は斬れる。
「死の閃きにて永きを断つ、即ち死閃永断衝!」
奴から見れば妾は何の意味も無い攻撃をただ繰り出しているだけに過ぎぬじゃろう。故に、気付かぬ。
妾が斬っているのは空間の繋がり。空間が繋がっていないという事はそこは移動できない、ただそれだけの事である。まあ、それほど長い時間持続する訳でも無いのじゃが。
「それほどの速さで壊せぬ壁にぶつかれば、当然こうなる」
花が咲き乱れ、舞い散る花弁が鮮やかな足場を構成する【システム・フラワーズ】内部。
グリモアによる転移を経てそこに降り立ったルルティア・サーゲイト(はかなき凶殲姫・f03155)が、オブリビオン―――ウインドゼファーの姿を捉えた時には既に遅かった。
「な―――ガッ!!」
白い影が暴風と共にルルティアを襲い、一瞬の交錯の後……。
咄嗟に大鎌を構えた和装の少女は、その防御諸共に撥ね飛ばされ、花弁と共に吹き飛ぶ。
「ぐ……これは、想像以上じゃな」
キマイラの証である異種双翼で風を叩き、吹き飛ばされながらも体勢を整えるルルティア。
歴戦の傭兵としての経験は、自身が受けたダメージの大きさをルルティアに正確に理解させる。
「……ふむ、厄介じゃなぁ。当たらなければどんな攻撃も意味は無い」
だが、彼女の戦意には些かの衰えも無い。
眼の前の敵を斬る―――そう決めた以上、ルルティアが退く事はあり得ない。
「―――仕留め切れませんでしたか」
超高速の突撃を敢行した後、文字通り風のごとく戦場を駆け抜けて離脱したウインドゼファー。
自らが振るう異形の剣が、咄嗟に防御された事実を認識した彼女は、ならば次で仕留めるまでとルルティアを見据える。
風を纏い、巡航するように駆け抜けるウインドゼファーが眼にしたのは、大きくダメージを受けながらもなお怯えすら見せない猟兵の姿。
「さて、あの速度で動き回る敵に大鎌を当てる手段などこちらには無い……だが」
ニヤリと口元を歪ませ、大鎌を構え直すルルティア。
「こちらも少しばかり本気で当たらせてもらおう!」
「―――だが、遅い!」
戦場を大きく周回するような軌道から、物理法則を無視したように進路を曲げ、再度ルルティアへと襲いかかる白い暴風。
その動きは、おおよそ捉えられるものではない。
「死の閃きにて永きを断つ、即ち死閃永断衝!」
対してルルティアが繰り出すのは、遠心力を以て大きく旋回する軌道を描く、大鎌の一閃。
己が使う業の中で、最も練度が高いそれを、ウィンドゼファーに対して繰り出す。
「―――破れかぶれで、私は捉えられません!」
その行動を敵はどう認識したのか。
タイミングも何もない、ただウィンドゼファーを向いて繰り出されただけの一撃。
それは、万に一つの確率で彼女を捉えたかもしれない。
だがそのタイミングは怪人の到達より遥かに―――少なくとも怪人の認識では遥かに早い。
白い装いに傷一つつけること無く鎌を振り抜いた後には、無防備なルルティアだけが残り―――。
「な、あ……!」
ウィンドゼファーは壁にでも激突したように大きく軌道から弾かれ、宙を舞う事となった。
「当たらねば斬れぬ。ならば当たるものを斬れば良い」
そう語るルルティアが斬ったのは、空間の繋がり。
神業とも言えるその一閃によって、刃状に刻まれた空間の断絶は、ルルティアの前に不可視の壁となってウィンドゼファーを弾き飛ばしたのだ。
「……じゃが、ここまでか」
だが、ルルティアもただでは済まない。
先手を取られた一撃に加え、眼の前まで接近したウィンドゼファーの纏う暴風は、一閃の軌跡に過ぎない不可視の壁を超えてルルティアを切り刻んでいる。
「まあ、一矢報いることは出来たかのぅ……」
なおもその疾走を止めぬ白い影を一瞥し、ルルティアは転移によって戦場を後にした。
苦戦
🔵🔴🔴
黒滝・龍也
風を操るスピードスター、か。速さを求める者としては自分の力を試してみたくなる相手だな。
必ず先手を取られる。だが、予知のおかげで「何をしてくるか」は分かる。
バリア的な暴風発生…なら、「盾受け」で身を固め、バック「ダッシュ」と「早業」で風の動きに逆らわずに受け流せるだけ受け流す。
が、あの爆発的な暴風の中に入らなきゃ攻撃は届かない。衝撃波ではなく風なら必ず気流が、渦がある……よし、【クロックアップスピード】も使っての「ダッシュ」で渦に沿いながら少しずつ中心に向かって円を描きながら走り、台風の目にいるゼファーに近づいて一撃を入れてやる。
風に追い付かれて巻き込まれるか否か、そんなバクチも悪くない。
「風を操るスピードスター、か。速さを求める者としては自分の力を試してみたくなる相手だな」
そう呟く黒滝・龍也(ストームドラゴン・f17315)はヒーローとしての戦装束、東洋の龍を模した黒と緑のコスチュームを身にまとい、戦場を見据える。
視線の先には戦場を駆け抜ける白い影。
システム・フラワーズ内部の広い空間。だが、ウインドゼファーはその距離を物ともせず、一気に距離を詰めてくる。
「―――次は貴方です!」
一瞬にして龍也の眼前に現れたウインドゼファーはその疾走を止めると、花で形作られた足場諸共に敵を殲滅するべくその身に纏う暴風を解き放った。
吹き荒れる風が足場を、そして龍也自身を一瞬にして飲み込み、その暴威を余すこと無く振るう。
「ぐっ、流石に相手が格上か……だが」
目にも留まらぬ速さ。
同じく速さを己の力とするヒーローとして、その事実は龍也に重くのしかかる。
だが、龍也はヒーロー・ストームドラゴンであると同時にグリモア猟兵の支援を受ける猟兵だ。
相手が風による攻撃を仕掛けてくるとわかっている以上、対策は既に用意してある。
(……風の流れに逆らうな。逆にこれを利用しろ)
その衝撃に負けぬように防御を固めながらも、流れには逆らうこと無く。
龍也は敢えて吹き飛ばされるように、風にに身を躍らせた。
(この風の流れは渦を巻くような竜巻……ならば)
策は功を奏した。受けるダメージは最低限に、龍也はウインドゼファーの先制攻撃を受け流す。
そして、龍也の……ヒーロー・ストームドラゴンの逆襲はここから始まるのだ。
風を読み、己の身に纏うジェットストリームに敵が放った竜巻の力を取り込むように。
空中でパチンと指を鳴らした龍也は、己の寿命を削る代償と共に高速戦闘モードを解禁した。
「いくぞ!」
その声がウインドゼファーに届いた時、彼女自身が放った竜巻の流れに乗るように加速していた。
怪人の周囲に渦を巻く風の流れに、黒い龍の影が軌跡を描き出す。
「なっ、まさか……!」
その目的地は中心部。
己に向かって竜巻の渦を駆け抜けんとするストームドラゴンに、ウインドゼファーが驚愕を見せた。
「させません……!」
咄嗟に怪人が風の流れに干渉する。
渦を巻く竜巻を解除し、己の身に纏う暴風を再構築せんと規模を収縮させていく。
だが、一度放った破壊力を即座にコントロール出来る道理は無い。
竜巻が解除され、怪人が再び暴風を纏うまでの数瞬。
龍也は、己のヒーローとしての原点となる記憶を思い返していた。
(追いつかれたらただでは済まないな)
嘗て、嵐によって吹き飛ばされ生死の境を彷徨った記憶。
敵のユーベルコード。制御された竜巻が崩壊し、無秩序な暴風が解き放たれれば、嘗て以上のダメージを受けるかもしれない。
だが。
「そんなバクチも悪くない」
覚悟と共に、龍也が加速する。
渦を巻く軌跡は範囲を狭め、刻一刻と迫る崩壊を前にストームドラゴンは加速し続ける。
そして。
「……まずは一撃だ!」
台風の目と言うべき中心部にたどり着いた龍也は、これまでの加速の全てを載せ、龍を模したガントレットをウインドゼファーへと叩き込んだ!
「ぐああ……っ!」
全身全霊の一撃。
それは確かに、ウインドゼファーを捉えていた。
成功
🔵🔵🔴
バーン・マーディ
うむ…見事なヴィランである
その強さに打ち勝ってこそ我もまたヴィランとしての在り方を高められよう
…また会ったな…といっても…貴様は別の「貴様」なのか
対ソード
【オーラ防御】展開
竜巻に対しては【武器受け】からの【カウンター】での竜巻に対する迎撃に掛かり【生命力吸収】での回復で少しでも蓄積ダメージを防ぐ
…これでも無事で済むとは思っておらん
全霊で耐え抜く事を念頭に置く
これでも尚血を流そうと
痛みに堪えよう
その上で
ダーク・ヴェンジャンス発動!
貴様の蹂躙に我は叛逆しよう!
奴自身の直接攻撃に対して受け止めた上で【怪力・カウンター・生命力吸収・吸血】を以て切り裂く
我では貴様は追いきれん
だから…受けきろう!!!
ルルティア・サーゲイト
【アドリブ連携お任せ】
「ふん、死ななければ安いのじゃよ。荒っぽく往くぞ!」
希望の断片により真の姿である半獣の化生の姿を取ると受けた傷は即座に縫合される。一日一度きりの裏技じゃ。今回の変異部位は大鎌。実はこれ妾の体の一部でのう。さらに歪に、長く大きく変異させる。
「手品の種はさっき明かしてしもうたが、無効化は出来まい!」
当然、この攻撃でも空間を斬る。暴風も斬る。文字通りの妾の一部である大鎌の攻撃はより早く鋭い。空間ごと切り裂く斬撃は盾にも鉾にもなり、妾の殲術は降れば振るほど早くなる。暴風の如き攻撃を以って、暴風を征する。
「死閃永断衝、千迅ッ!」
斬った空間を足場に追撃をかけて仕留めるぞッ!
「―――まだ……まだです! 【無限大の欲望】を手にするまで、私は止まらない!」
猟兵に攻撃によって傷を負いながらも、その風は弱まることはない。
体勢を立て直したウインドゼファーを追撃すべく、2人の猟兵が花の足場を駆ける。
「また会ったな…といっても…貴様は別の「貴様」なのか」
その鎧から禍々しき覇気を発し、黄金の柄を持つ魔剣を携えるバーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)は、既に対峙していた別の個体を意識し、目の前の怪人―――否、ヴィランを内心で称賛する。
その上で。
「その強さに打ち勝ってこそ我もまたヴィランとしての在り方を高められよう……覚悟!」
「生憎と狙った相手は逃さないことに決めていてのぅ……もう少し付き合ってもらうぞ!」
最低限の治療だけを済ませ、再び戦場に舞い戻ったルルティア・サーゲイト(はかなき凶殲姫・f03155)。
先の傷は間違無く痛みを訴えているが、それでも戦意は留まる事を知らない。
痛手を負った隙を逃さず迫りくる猟兵を前にして、それでも先手を取るのがウインドゼファーだ。
「まとめて吹き飛びなさい!」
再度、竜巻を解放。
怪人を中心として吹き荒れる竜巻が、花の足場諸共2人の猟兵を飲み込み、なおも吹き荒ぶ。
……だが、次の瞬間に、ウインドゼファーはマスクの奥で驚愕に目を見開く事となる。
「受けきったぞ!」
「ふん、死ななければ安いのじゃよ。荒っぽく往くぞ!」
幾千もの風の刃をその身で受け、尚も足を止めぬ2人が竜巻の障壁を突破する。
「……っ! 死に体で私に挑むとは!」
当然ながら、2人が受けるダメージは無視できない程に大きい。
トドメを差すべく異形の双剣を構えるウインドゼファーに対し、猟兵たちのユーベルコードが発動する。
「……ダーク・ヴェンジャンス発動!」
バーンの肉体を漆黒の粘液が覆い、異形の姿へと変える。
それは敵から受けた傷に応じて自らの力を増すユーベルコード。
ボロボロに成りながらも、敵を打倒する力を得たバーンは剣を構え、怪人へと肉薄する。
「貴様の蹂躙に我は叛逆しよう!」
一方でルルティアは真の姿を解放、半獣の化生としての姿を現す。
同時に、切り刻まれた傷が縫合するように繋がれ、戦闘に支障がない程に負傷を補完した。
「貴様を斬るにはこれで十分じゃ。そして」
同時に、その手に携える大鎌・凶鳥の翼がより歪に、そして頂戴に姿を変える。
「これが妾の裏技じゃよ!」
銘が現す通り、その鎌もまたルルティアの肉体、その一部。
嘗て倒した怪異へと自らの肉体を変化させるユーベルコードは、得物である大鎌をより強力な形態へと変異させた。
「先刻の礼じゃ……遠慮せず受け取れ!」
翼で風を打ち、ルルティアが加速。先行してウインドゼファーを迎え撃つ。
「……廻れ、我が車輪よ!」
怪人の体を構成する、バイクを模したパーツ群。
取り付けられたタイヤ、そして剣の先端で得物を切り刻まんと吠え立てるスパイク付きの車輪が、突如として高速回転を始める。
全タイヤ高速回転モード。
車輪剣ダイアモードの力を解放し、なおかつ攻撃を軽減する回転を身にまとうその形態は、これまでにウインドゼファーが繰り出したユーベルコードと比べても遜色ない、強力なモノだ。
だが、それは怪人の失策でもある。
本気で疾走する自らに追いつく手段を持たぬ相手に対し、接近戦を挑む……あるいは、猟兵の行動に動揺した結果としての行動だったのかもしれない。
ルルティアとウィンドゼファーの武器が交差する。
鋼鉄すら削り斬らんと回転するダイアモードを火花と共に受け止め、それでも凶鳥の翼は描けることも無い。
返す刃は鋭く、そしてそこに込められた威力は、先の一撃と遜色ないものだ。
「くっ……これは!」
「手品の種はさっき明かしてしもうたが、無効化は出来まい!」
空間すら切り裂く大鎌の一閃。
それを警戒するウインドゼファーは、車輪剣で鎌を弾き飛ばすように打ち上げ、対となるもう片方で胴体を薙ぐような一撃を放つ。
だが、それすらもルルティアは弾き飛ばす。
振るう大鎌はその動きを止めること無く。
弾かれてもまた軌道を整え、怪人を死角から襲うように一閃。
暴風を放つ車輪剣と、暴風の如く振るわれる鎌が幾度となく火花を散らし……。
「ぐうっ……!」
ついに凶鳥の翼が、ウインドゼファーを袈裟懸けに斬り裂いた。
「浅い……!」
ルルティアは油断なく、次の一撃を繰り出す。
それに対し、ウインドゼファーは分が悪いと判断。即にダイアモードの力を解放した。
―――……ァハハハハハ!
剣の一閃と共に放たれたその風は猟兵を嗤うかのような音を立てて吹き荒れ、竜巻となってルルティアを弾き飛ばす。
「チィッ……!」
咄嗟に飛び退くルルティア。
嗤う竜巻を壁として放ったウインドゼファーは、そこで後退に意識が向き……。
「言ったはずだ……。貴様の蹂躙に反逆すると!」
嗤う竜巻を突き破り、バーンが姿を表した。
「馬鹿な!」
二度目となる自殺行為に絶句するウインドゼファー。
なお前進を止めぬバーンに対し咄嗟に後退を選ぶが、それを阻む物があった。
「これは、あの猟兵の……!」
怪人の動きを封じたのは、ルルティアの鎌が作り上げた空間の断層。
攻防の最中で相手を逃さぬように繰り出されたその攻撃は、バーンの攻撃の一助となって白い暴風の足を止める。
「……受けるが良い! これがヴィランの誇りだ!」
その一閃は咄嗟に翳された車輪剣を弾き飛ばし。
二度目の斬撃……バーンの持つ戦闘技術の集大成が深々とウインドゼファーを切り裂き、魔剣がその生命を食らうように血を吸い上げた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ヴァシリッサ・フロレスク
――『Zephyr』 ?“そよ風”が何イキッてんだい?
んな風じゃアタシん炎の“鞴”にも為んないよ。
敢えて【挑発】、ヤツの“最大出力”を【激痛耐性】で耐える。
無様に蹂躙されて、「スヴァローグ」も“不用意に”取落としてやるよ。
その間、軌道を目で【追跡】、【情報収集】しつつ、“なけなし”の「ノインテーター」で足掻いて、【おびき寄せる】。
止めの一撃を待って、UCを発動。限界まで研ぎ澄ました知覚と膂力で、その刹那を【見切】る。
【捨身の】【カウンター】。【早業】で「クルースニク」を抜刀。
アンタの“超音速”、その身で味わいな。
「仮痴不癲 、兵は詭道なり――」
【戦闘】じゃ、正攻法はいつだって【だまし討ち】さ。
受けた傷から血を流し、白い服を赤く染めながらも、ウインドゼファーは健在だった。
その力を示すように、未だに彼女の周囲に風は吹き荒れる。
傷を受けたウインドゼファーは大きく後退。一息で別の足場へと飛び退くと、周囲を警戒する。
「ウインドゼファー――『Zephyr』 ?“そよ風”が何イキッてんだい?」
そこに追撃を仕掛ける赤い影があった。
ヴァシリッサ・フロレスク(浄火の血胤(自称)・f09894)は尖った牙を剥くように獰猛に嗤いながら、巨大な射突杭・スヴァローグを担いでウインドゼファーに迫る。
吹き荒れる風を意にも介さぬと、花の足場を踏みしめるヴァシリッサの挑発にウインドゼファーはピクリと反応した。
「―――試してみますか?」
ヴァシリッサの言葉が、何らかの意図を伴う挑発であることなど、ウインドゼファーにも分かりきっていた事だ。
だが、風を操るユーベルコード―――その源となった願望、あるいは欲望。
それを土足で踏みにじる言葉を無視するなど、彼女には不可能だった。
「ぐ、ああっ……!」
暴風を纏った、超高速の一撃。
ただすれ違いざまに車輪剣で斬りつけた……ただそれだけの攻撃をヴァシリッサは視認できなかった。
これまでに超えてきた死線の数々で培われた経験が、彼女に防御を行わせただけだ。
「―――まだそよ風と言えるなら褒めて上げましょう」
重い音とともに、スヴァローグがヴァシリッサの手を離れて地面に落ちる。
防御の代償は武器の喪失。
それに加え、ウインドゼファーの纏う暴風の余波がヴァシリッサを切り刻む。
白い肌を自らの血で赤に染め、武器をも失った赤髪の猟兵。
……だが、その牙を剥くような笑みが口元から消えることは無い。
「ハッ! まんまと攻撃を防がれたくせに、何を勝ち誇ってやがる」
振り向き様に自動拳銃・ノインテーター発砲。
連続した炸裂音と共に放たれた弾丸は、しかしウインドゼファーにとってはあまりにも遅い。
「―――そちらこそ、態度の大きさだけは大したものです」
その言葉が聞こえた時に、既に第二撃は放たれていた。
咄嗟に身をひねったヴァシリッサの脇腹を車輪が抉っていく。
激痛に耐えながら放った弾丸は、怪人に追いつくことすら出来ない。
(チッ、思ったより良いのを貰っちまったな……)
そのまま暴風を纏い、ヴァシリッサの周囲を駆け抜けては視界の外から接近して剣戟を見舞うウインドゼファー。
その度にヴァシリッサはなんとか攻撃のタイミングを見切り、致命傷を躱していった。
傍から見れば甚振っているとも取れる攻防。あるいは、ウインドゼファーも思考の隅にそのような目論見が有ったのかも知れない。
……それ故、ウインドゼファーは気づけなかった。
攻撃を繰り返す度に、ヴァシリッサの目が徐々に自分の姿を追えるようになっていた事に。
「―――次は躱せますか?」
そして、その時は訪れた。
ヴァシリッサの体力が限界だと判断したウインドゼファーは、トドメを刺すべく最後の一撃を見舞う。
その瞬間。
「Meine Damen und Herren. ――さぁ、猟(かり)の時間だ」
それは、ヴァシリッサ自身に流れる血の暴走。
その結果として、彼女の力は段違いに強化され、理性を失う。
それ故に、その攻撃は本能によって行われていた。
「―――ば、かなっ……!」
クルースニク―――吸血鬼ハンターの銘を冠すそのナイフは、抜刀術の要領でウインドゼファーを斬り裂いた。
強化された膂力に、他ならぬウインドゼファー自身の速度。
その相乗が炸裂した怪人のダメージの大きさは言うまでもない。
「仮痴不癲 、兵は詭道なり――」
戦闘の正攻法は、いつだっただまし討ちさ―――
全身を赤に染めるヴァシリッサは、それでも不敵に怪人に言い放つ。
成功
🔵🔵🔴
雷田・龍子
◎SPD
ウインドゼファーが風を操るなら、私はそれを利用する。
対象の先制攻撃は受けるのではなく【見切り】、対象の力を利用し少しだけベクトルに変化を与え、いなす。
対象の力が強力であればあるほど効果がある。
受けてしまったダメージはアイテム【ドラゴンコイル】で攻撃力に変換する。
対象の先制攻撃に対処出来ても出来なくても構わずUC発動。
私に足場は関係ない。
私は雷を操る。
雷は暴風程度に負けない。
全身を帯電させる。
対象を【催眠術】にかけ惑わせようと試みる。
花の足場を【念動力】で操り、こちらの有利に働かせようと試みる。
対象の攻撃を【見切り】【カウンター】で雷撃による渾身の【マヒ攻撃】を試みる。
「これで終わりだ」
そして最後の瞬間が訪れる。
大剣を手に駆けるのは、人派ドラゴニアンの女性、雷田・龍子(人派ドラゴニアンの剣豪・f14251)。
赤い竜尾の剣士は、一切の油断もなく花舞う戦場を斬り裂いて怪人を討たんとする。
蓄積したダメージによって、もはや誰の目にも限界が見えるウインドゼファー。
白い衣装は斑に染まり、バイクを模したパーツにも欠損が隠しきれない。
それでも止まることをしないが故に、彼女は怪人だった。
「まだ、だ……!」
次の瞬間、暴風が吹き荒れる。
ウインドゼファーを中心に周囲をまとめて薙ぎ払う、革命の嵐。
その威力が衰えないのは彼女の欲望、あるいは信念ゆえなのか。
その暴威は足場を吹き飛ばし、龍子をアッサリと飲み込んだ。
(……やはり、凄まじいな。これが奴の欲望か……。だが―――)
風に呑まれた龍子は、それでも焦燥に駆られる事はない。
自らを切り刻み、吹き飛ばさんとする暴風に刃を立て、龍子はその暴威を受け流す。
結果として、彼女は怪人の一撃を凌いで見せる。眼鏡の奥に除く彼女の瞳は、風すら捉えたのだ。
だが、無傷とは行かない。
直撃を受けて戦闘不能になる事は無かったものの、足場すら崩され、半ば風に流された龍子は、このままでは着地すら出来ずに戦場から放逐されるだろう。
「……雷は、暴風程度には負けない」
花と共に宙に放り出された龍子が、バチリと青白い火花を散らす。
彼女が受けたダメージによって、彼女の身に付けるコイルが帯電する。
雷竜の毛を巻いて作られたそのコイルから還元された力を元に、龍子自身の全身が帯電し、バチバチと音を立てた。
「くっ……仕留められないか!」
その光景に、逆に焦燥に包まれるウインドゼファー。
彼女の目の前では鮮やかな花たちが風に逆らって対空し、自ら道を開くように龍子の足場を作ってみせた。
「夢幻龍合氣……これが私の全力だ!」
稲妻が空を切り裂くように、ウインドゼファーへと肉薄する龍人の剣豪。
それを迎え撃つウインドゼファーは、それでもまだ自らの勝利を諦めない。
「まだだ……私は止まらない!絶対に―――!」
車輪剣を振るい、雷をも切らんとする暴風の怪人。
雷を纏い、嵐すらも切り裂かんとする雷龍の剣豪。
交錯は一瞬だった。
「……ばか、なっ、何故……」
雷光が彼女の目をくらませたのか。
龍子の発揮したあらゆる技能をその一瞬に集約した一閃。
ウインドゼファーの剣は空を斬り、龍子の剣はウインドゼファーを捉えた。
そうして風の怪人は、システム・フラワーズの花たちが散るのと同じように、風に溶けて消えていった―――
成功
🔵🔵🔴