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わたしの友達、わたしの家族

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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 広い、明かりの少ないホールに死が満ちていた。死体、死体、死体、100や200では効かない数の死体が整然と並べられている。
 そんな地獄のような場所を、黒いローブをまとった少女が歩いていた。
「うーん、迷うなー。こっちがいいかな。それともこっち?」
 買ってもらう玩具を選ぶ子供のように一つ一つ死体の顔を覗き込みながら歩いていく。全て回り終わると、少女は比較的整った死体を二つ選び出し、全体を見渡せる舞台へと立った。
「よし、こっちをお父さん、こっちをお母さんにします!後はみーんな、私のお友達!」
 その言葉とともに"両親"役を割り当てられた二つの死体と"お友達"となった死体達が立ち上がる。少女が抱きついてほおずりすると、二つの"両親"は少女をぎこちなく抱きしめ返し、冷たい手で少女の頭を撫でた。
 それは幸せな家族を演ずるおままごと、血の通わぬ人形遊び。
 どこまでいっても虚構は虚構に過ぎない。
 だが、それでも少女は、"両親"を強く抱きしめながら涙を流していた。

「嬉しいな。やっと、わたしにも家族ができたんだ」

 やがて、少女は"両親"の手から離れると目の前に立ち並ぶ"お友達"に目を向けた。
 あるものは腐り、あるものは骨がはみ出した彼らを一つ一つ愛おし気になでながら、少女は歩く。そうして最後の一人に辿り着いたところで、悲し気に目を閉じた。

「でも、まだ寂しいな。もっと、もーっと、お友達を増やさなきゃ」

 その言葉に従い、ゆっくりと"お友達"が動き出す。少女の願いを叶えるために。


「という予知です」
 いつも以上に嫌そうな顔を浮かべて飯田・柘榴(白紙の魔道書・f02221)は言う。
「それほど難しい任務ではありません。はじめに敵がいる領主館への侵入経路を確保し、次に護衛の亡者を撃破。最後に本命のオブリビオンを倒すだけです」
 淡々と猟兵達がすべきことを述べながらも、その表情は優れない。『すべきこと』と『したいこと』は別で今の彼女はグリモア猟兵なのだから。

「実害がなければ……彼女たちだけで完結していたならば放っておいても良かったのですが。亡者の群れは近隣の村を襲っており、規模は拡大する一方です。今、ここで潰す必要があります」
 猟兵達の一部が覚えた同情心を打ち消すように、あえて強い言葉で柘榴が言い切る。
 それは自分に言い聞かせているようにも見えた。
「まずは村の内部に潜入し、館への侵入経路を確保してください。幸いにも、村は表向き平和の村を装っているようですから、旅人は歓迎されるでしょう。うっかり出された料理を食べて捕まるとか、笑えないのでやめてくださいね」

 そこまで言うと。柘榴はしばし間をあけて、ふと思いついたかのように言葉をつづけた。
「予知で見た少女のローブ。あれは確か少女に憑りつき徐々に意思を乗っ取るオブリビオン、ゼラの死髪黒衣というものです。おそらく彼女が力を得たのもそれが原因でしょう。ああいった行動をとる個体は今のところ見つかっていませんから、行動原理は少女本人のものでしょうが」
 その言葉はまるで、独り言のように。
「もしも、多くの命を奪い、多くの死を弄んでなお。彼女が生きるべきと思うのであれば。ローブを引きはがすか破壊すれば彼女は解放されるでしょう」
 そうして欲しいとも、すべきでないとも言わず。だが祈るように柘榴はそう告げた。
「我々の使命はあくまでオブリビオンから世界を守ること。それが果たされるのであれば、いかなる選択肢も正解といえるでしょう。私は皆さんを信じます。どうか、お気をつけて」


Uravis
 Uravisです。よく考えずにシナリオ作ると大変な事になりますね。

 今回は集団戦とボス戦を含む、戦闘メインのシナリオとなります。
 オープニングは色々それっぽい事を書きましたが、さっくり倒してしまっても問題ありません、どっちでも大丈夫です。

 プレイングお待ちしています。
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第1章 冒険 『不穏な気配の漂う村』

POW   :    力づくで情報を聞き出す/罠を強引に突破する

SPD   :    村人に自分の存在を気づかせずに情報収集する

WIZ   :    交渉できそうな村人を見つけ出し情報を得る/罠にかかったふりをする

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

八坂・操
【SPD】

ワォ☆ 死体が少女と真夜中お遊戯! まるでホラー映画みたーい♪ ……エンドクレジットに書かれるのが少女一人って時点で、面白味には欠けるけどね。
操ちゃんは最後まで楽しむ派なのである☆

村に侵入したらなるべく『目立たない』ようにして、こっそり『忍び足』で館周辺を探ってみよっか。『情報収集』は自分の足で稼いでこそだよ☆
勿論見るだけでなく、『聞き耳』で人……かな? うん、生きているかどうか怪しい生き物が、館を出入りしていないかを確認しておくよ。
バレたら『逃げ足』☆ 『怪糸』で『逃げ足』♪ ワイヤーアクションもビックリな『逃げ足』! 帰るまでが情報収集なのです☆


二神・マ尾
こういう……
死んだやつを弄ぶ行為が一番嫌いだ。
それをさせてるのなら、尚更。

【SPD】
村内部の家や地形、わかるなら人の流れを望遠鏡で確認しておく。
村人じゃねえ奴は目立つだろうから、夜に行動開始だ。

情報が得られそうな場所は役場、村で地位のある人の家、人の出入りの多い所。
それ以外の怪しい場所は「野生の勘」も使いつつ調べる。

灯りは最小限に、「忍び足」を使って警備が手薄な順に忍び込む。
潜入したら物音や気配には気を配り地図や鍵、隠し経路などないか探そう。
警備の会話とか聞きたいけど、技能がねえから聞こえた時は見つからないよう注意する。

長い時間滞在しない。
万が一の時は「フェイント」と「逃げ足」で逃げ切んぞ。


レナ・ヴァレンタイン
……寂しいところだ。玩具箱にいくら人形を積もうが人にはならんだろうに
さて、仕事だ。隠密活動は得意ではないが、……表面上は平和な村。そうするためにある程度決まった行動ルーチンでうごいている筈だ、と推察
村人の動き、巡回ルート、行動の手順
村の外から観察してそういった「法則」がないか洗い出す
ある程度その手のものがわかれば村に接近
自身の安全を確保し、隠れながら村人の会話を盗み聞きする
領主たる少女のことに関して何か話していればいいが…
あるいは、貢物を持っていくための荷馬車の跡でもあれば分かりやすいが

領主へ素敵な贈り物をしたい、などと言えば情報を引き出せるだろうか?




潜入前の情報収集のため、村を一望できる高台に立った二神・マ尾(真尾・f07441)は、そこで端末に何かを書き込むレナ・ヴァレンタイン(ブラッドワンダラー・f00996)の姿を見つけ声をかけた。
「アンタ、猟兵だよな、そこで何してんだ?」
 その言葉に対し、レナは手を止めることなく答える。どうにも目線を外せないほど集中しているようだ。
「うん?村人の行動を記録している」
「村人の?怪しい場所を探すんじゃなくてか」
「ああ、話を聞く限り彼らは自分の意志で動いているわけではないようだ。ならば、表面上平和に見せるための行動ルーチンがあるはずだ」
 確かにどう行動するのかが分かっていれば見つからずに行動するのは格段に楽になるだろう。
「それを見つけるってのか?」
 そこでようやく、レナは手を動かすのを止め、マ尾へと向き直った。
「そういうことだ、あなたも似たような目的だろう?良ければ手伝ってくれないか?」
「まあ、どうせ潜入するのは夜の予定だったから構わねえけど」
 レナが手渡した端末を受け取り、マ尾は本来の行動へ戻るべく双眼鏡を取り出した。


2人は広げた端末に周辺地図を表示し、村人たちの動きを記録していく。夕刻になって村人たちが家に入り始めたころ。ようやく地図の上に1つのネットワークが姿を現した。
レナは完成したそれを俯瞰するように眺め、唸りをあげる。
「一般の亡者は持ち場を離れず、夜になると家に入るようだが。衛兵役だけは道に従って全体をランダムに徘徊しているようだな。道が無いところを通れば見つからずに行けるだろうが、領主館の周りは厳しいな」
単独潜入ならともかく、このままでは本格的な攻撃を行うのは難しい。どうしたものかとレナが頭を悩ませていると、未だに双眼鏡で村の様子を観察していたマ尾が声をかけた。
「なあ、あそこだけ誰も近づいてないんじゃないか?」
「何、どれだ?」
マ尾が指さす先にあるのは、特徴的な屋根を持つ1棟。周囲の家がぼんやりと薄明かりに包まれる中でただ1つ暗闇の中に溶け込んでいる。
「あれは……教会か?見る限り人も出入りしていないようだが」
 地図に描かれた村人の行動と照らし合わせると、確かにその建物だけ人が入った記録が無い。何かある、という思いを深めた瞬間、2人の後ろから底抜けに明るい声が響いた。
「何か分かったの?操ちゃんにも教えてほしいなー」
 振り返って、驚きの声をあげたのは果たしてどちらだったか。気づけばそこには、亡霊染みた容姿の猟兵、八坂・操(怪異・f04936)が立っていた。
「な、アンタ、猟兵だよな?いつからそこに?」
「今来たとこ。なんちゃって♪ 本当はすぐ調べに行こうと思ってたんだけどね。2人が楽しそうにしてたからつい釣られちゃった☆」
「楽しそう……だったか?」
レナとマ尾は目線で互いに問いかけ合うが、どちらの目も肯定を示す様子はない。つまりはそういう奴なのだろう。とどちらともなく納得する。
 一方、操は自分に向けられる胡乱な視線を気にすることなくフラフラと近寄ると、レナの端末を覗き込んだ。
「なるほど、村人さんたちがどう動くか調べてたんだね♪」
「ああ、大体把握できたから、今から直接情報収集しに行くところだったんだが、来るか?」
 言動はよくわからないが、猟兵にすら気づかれない隠密能力だ、腕は確かだろうと尋ねると操は勢いよくそれに応じた。
「もっちろん!操ちゃんにお任せだよ☆」


 道なき道を通り、教会にたどり着くと、中はひっそりと静まり返っていた。
「ここしばらく誰かが立ち入った後は無いみてえだな」
「もう少し調べる必要はあるだろうが、攻撃の拠点として使えそうだ、全体に連絡しておこう。あとは館の情報収集だが」
 レナの目が操に向く。ここに来るまでに三人の技能は共有済みだ。
「操さん、頼めるだろうか?」
「了解☆」
 無駄に大仰な返答を返し、操が教会から飛び出していく。ほどなくして足取りも軽く帰還すると身振りを交えながら聞き出した内容を語り始めた。
「毎日深夜になると領主様が戻ってきて、村人みんなでパーティーするんだって。真夜中のゾンビパーティだなんて、楽しそう♪ 操ちゃんも頼んだら混ぜてくれるかな?」
 その報告を聞いて、マ尾の金と水色の双眼が鋭く細められた。
「知らねーよ、聞いてみたらどうだ」
「どうした?気分が悪そうだな」
「別に……そういう、死んだやつを無理やり思い通りにしようとするような事が嫌いなだけだ」
 ぶっきらぼうな言葉に込められた確かな思いにレナの口元がわずかに緩む。
「なるほど。それには私も同意できるな」
 行動も、思いも、決して玩具にされて良いものではない。それはきっと、レナもよく知っていることだ。だが、今は語るべきことが別にある。
「だが、この情報でより重要なのは領主が戻ってくる、というところだ」
「つまり、昼の間はどこにいるか分からないってことか」
「確実にやるにはパーティーにお邪魔しないとってことだね♪とっておきのドレスを用意しないと☆ っていうか、そろそろそのパーティーの時間じゃないかな?」
 操が芝居がかった動作で人差し指を立てる。つられて見れば、月は今にも中天にかかろうとし、呼応して村全体からざわめくような音が鳴り始めていた。
「巻き込まれてもマズいな。一時撤退だ」
 レナの声に応えて他2人が動き出す。遠ざかっていく視界の端に、沢山の村人が領主の館に集まる姿が映っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

石上・道順
まずは情報を集めねばならぬが、強行突破や強引な手段は最後の手。初めにすべきは式神を放ち、周辺の地形を探り罠や敵がいないか探ること。同時に、近隣の村人からの情報収集だ。

飯田殿からの情報によれば、亡者による被害が出ていると聞く。なれば、亡者達を安らかなとこしえの眠りに帰すために参った、という切り口から話を進めていくとしよう。

その際、信憑性を高めるためにこの世界の聖者の特徴を利用する。すなわち、自身からの聖光の放射を。

話を進めながら、ユーベルコードを用いて消耗を抑えるため短時間だけ神霊体となって、体から神聖な霊気を放射し信頼をえる。
普段光を出さない理由は身柄を狙われにくくするためと言えばよいだろう。




 他の猟兵達が村を捜査しているのを確認し、石上・道順(彷徨える禁足地・f08728)はあえて村の外へと目を向けた。
 荒らされた後の色濃く残る近隣の村はとても旅人を迎える空気ではない。しばらくして、遠巻きに見守る村人たちの中から1人の男性が現れた。
「旅の方……ですか。来ていただいて早々ですが、この村は亡者に狙われています。できるだけ早いうちにここをお発ちになられるべきかと……」
 この村のまとめ役だろうか?やつれはてた顔からは申し訳なさと、疲れがにじみ出ている。それだけ亡者の災禍に悩まされているのだろう。
「案ずるな、私はその亡者達を安らかなとこしえの眠りに返すために参った。証拠は、こうして見せた方が分かりやすいだろうか?」
 言葉と共に道順の体から光が放たれる。他の世界において、神気とも称されるそれは、聖者が放つそれとは別のものだ。しかし、村人たちにそれを知るすべはない。
 理解できるのは、ようやく救いが来てくれたこと、ただそれだけだ。光が収まると、まとめ役の男は喜びに満ちた表情を浮かべていた。


 信じてしまえば話は早い、人々は救われるために、救い手を助けるために、亡者について知っていることを口々に告げる。
 無論、その大半は役に立たない情報だ。しかし、時にそんなどうでもよい情報の中に敵を貫く銀の弾丸が眠っているものだ。今回ならば、まとめ役の男が語ったものがそうだ。
「どこから来ているのかすら、皆目見当がつかないのです。わかっているのは、5日に1度必ず深夜に現れるということくらいでして……」
「必ず?他の日や時間に現れることは無いのか?」
「はい、今のところは……」
「亡者の中に黒いローブの少女がいたことは?」
「少女……ですか?いえ、ありませんが」
 と、すれば。その日は少女を守る亡者の数が減っているかもしれない。もちろん外の村を襲う専門の亡者がいる可能性もあるが……。
(他の日よりは目がある、か?)
 突然言葉を止めた道順にまとめ役の男が不安そうな目を向ける。それに気づいた道順は見るものを安心させるような笑みを浮かべ、男に再度問いかけた。
「ちなみに、次はいつになるか分かるか?」
「おそらく、明日の夜かと」
 絶好のタイミングだ。
「なるほど、助かった。これで亡者を鎮めることができるだろう」
 期待と、不安を纏う村人たちに見送られながら、村を発つ。亡者に突き立てる牙の用意はすでに整いつつあった。

成功 🔵​🔵​🔴​


憎悪、同情、共感。ただ憎むべき敵ではなく、ただ許されるべき無垢でもないがゆえに、渦中の少女へと向けられる感情は様々だ。
 それは渦の外側に立つ猟兵であっても。否、猟兵であるからこそ強く思うのだろう。だから、猟兵の中でも人一倍優しい少年、リンセ・ノーチェ(野原と詩と・f01331)が彼女に強い共感を覚えたのも当然の事だった。
「……家族……僕も、もういない」
 だから、寂しい気持ちもわかるんだ。共に任務に参加した友人サヴァー・リェス(揺蕩ウ月梟・f02271)の隣で、リンセは抑えきれない感情を吐露する。
 心の内にとどめる事ができずに漏れ出た言葉、言葉にすらならなかった共感。誰に向けられたものでもないそれを、サヴァーは優しく受け止めると、リンセの頭をそっと撫でた。
「……リンセ、優しい」
「ありがとう、サヴァーさん……」 
 サヴァーから向けられた微笑みに再び思う、自分は言葉を受け止めてくれる人の大切さを知っている。だから……
「このやり方は間違いだと思うから。助けたいです」
 リンセは微笑みで答えた。
鈴鳴・藜
家族ねぇ…。
血の繋がりがなくても家族だって言うヤツを知ってる。
俺もそれは否定することはない。
…しかし『家族』になるため『友達』がほしいため。
その理由で殺されるなんて堪ったもんじゃねぇな。

▼SPD重視
まずは情報収集だな。
【技能:変装】で見つかっても違和感がない程度に村の連中が着てるものに近い服装を事前調達しておくぜ。
まぁ見つかんなけりゃいいことだけど念には念を。
この村の連中が集まりそうな場所とか分かればいいんだが…。
【第六感+忍び足】を屈指して隠れつつ行動しようか。

あまり気は進まねぇが口を割ってくれそうな女性には【誘惑+優しさ】で口を割ってくれねぇか試す――…いや、これは本当に最終手段で。


リンセ・ノーチェ
サヴァー(f02271)さんと共に
「…家族…僕も、もういない」
寂しいって気持ち、わかるんだ
「有難う、サヴァーさん…でも、このやり方は間違いだと思うから。助けたいです」
サヴァーさんも優しいと僕は知ってる。微笑で応えるよ

ここから別行動
僕は目立たぬ様に村の近くで
村に出入りしてそうな鳥や犬猫に【動物と話す】で
領主の館(人が良く入り出てこない大きな建物と、動物に分かり易く)の場所を訊く
その情報も頼りに小さい体や素早さを活かし人気のない所を選び移動し村を偵察
時に【聞き耳】で人の話を扉の外や物陰で集める…館の噂、聞けるかも

成功失敗どちらでも、一旦村を離れサヴァーさんと合流
互いの情報を共有し猟兵皆にも伝えよう




「家族ねぇ……」
 鈴鳴・藜(宵暁・f00576)は元凶たる少女に思いを巡らせる。たしかに可哀そうだと思わないわけではない。彼女の言う”家族”や”友達”の在り方がまるきり間違っているとも言えない。だが、そのやり方だけはどうしても許すことはできなかった。
「『家族』になるため、『友達』が欲しいため。そんな理由で殺されるなんてたまったもんじゃねぇな」
 調達したこの世界の一般的な服装に袖を通しつつ村へと歩き出す。形はどうあれ、彼女の凶行を止めるために。


 人気のない路地裏を進んでいると、不意に景色に似つかわしくない白が通りを横切った。
(なんだ今の?猫っぽかったが)
 路地裏から半身を乗り出して通りを確認すると、ケットシーの少年が曲がり角で様子を伺っている。この世界に居ない種族だ、猟兵とみて間違いないだろう。
 そう考えを巡らしていると少年はとっさに身をひるがえした、どうやら角の向こうに村人がいたらしい。思わず身を乗り出し、身振りで呼びかけると、少年はすぐさま藜の隠れている路地裏へと身を滑り込ませた。しばらくたっても村人が近づく気配はない、どうやら気づかれずに済んだようだ。

「ありがとうございます、助かりました。えっと、僕はリンセ・ノーチェと言います。あなたは?」
「鈴鳴・藜だ。困ったときはお互いさまってやつだ、気にすんな。それより、ここであったのも何かの縁だ、よければ協力しないか?」
 単なる情報収集と違い、潜入において人数が増えればそれだけ気づかれる確率も増えるだろう。だが、2人程度であればカバーできる範囲が増えるメリットの方が大きい。そして、何より、万一戦闘になってしまったときの安心感が違う。組むのは有りな選択肢だ。
 リンセは少し考えるそぶりを見せたが、やがて笑みを浮かべて答えた。
「はい、僕でよければ」


 リンセの情報収集能力と、藜の直感・隠密能力によって危うい場面を切り抜けながら2人は領主館からやや離れた墓地へとたどり着いた。そこより先、館の周りは衛兵が絶えず巡回しており、見つからずに潜入するには非常に高い技術が必要となることは間違いない。
「できれば盗み聞きなりなんなりしたいところだが、この数じゃなあ」
「どこかに隠れられる場所が無いか、動物たちに聞いてみます」
「つってもここに動物なんて……居たな」
 藜が言いかけていた言葉がしぼむ。気づけば、リンセはすでに近くに居たネズミに話しかけていた。ケットシーは猫の姿をした妖精であって、猫そのものではないはずなのだが。妙に見つけるのが早かったのは種族の特性以外の何かなのだろうか。あまり気にしないようにしながら動物と会話するリンセを見守っていると、気になる言葉が耳に入った。
「すぐ下に広い場所がある?でもここにはお墓しか……」
 改めて周囲を見渡すと、ふと、1つの墓石に目が留まる。意識して探さなければ気づかないような違いだが。たった1つ、その墓石だけは地面との間にわずかな隙間があった。
「待て、なんかこれ妙じゃねえか?」
「え、そうですか?」
 接地面をくまなく調べ、見つけた留め金のようなものを外すと墓石はあっさりと動き、人ひとりやっと通れる程度の階段が姿を現した。
「墓石の下に通路が……もしかして、領主館の隠し通路とかでしょうか?」
「可能性はあるな、調べてみるか」
 慎重に下へと降りると、それほど広くない空間には明かりの一つもなくただひたすらに暗闇が続いている。互いに背後を庇いあうように奥へと向かうと、わずかに光の漏れる場所へとたどり着いた。
 ようやく視界が通る程度の切れ目の向こうに、薄明かりに照らされたホールが、そして整然と並べられた、沢山の死体が見えている。
 そう、予知に示された光景、少女に捧ぐ人形置き場だ。
「当たり、だな」
 他の報告と合わせ、侵入経路は整った。あとは領主の帰還を待つだけだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

サヴァー・リェス
リンセ(f01331)と共に
リンセが、呟くの…聞き、頭、そっと撫でる
「…リンセ、優しい」
返る言葉は、強く…眩しい
少し、目を細めた…微笑、みたいに、なったかしら

此処から…別行動
私、村に行き…村人に声を掛ける…偶然立ち寄った旅の詩人を装う
【歌唱】心得ある…人を集めない程度に実力を、示す
警戒が解ける程効くと思う、から…そこで
村人に【誘惑】と【催眠術】使い…領主館へ入る道筋、訊く
…後は、この事、忘れて貰う
(微笑なくとも優しい瞳)
「私は、遠くから来た、あなたの大切な友
領主さまにお目通り
道をそっと教えて、そして、この事、忘れて…」

成功…失敗…いずれでも、村を離れリンセと合流
互いの情報を共有…猟兵皆に伝える




 サヴァー・リェス(揺蕩ウ月梟・f02271)はリンセと別れ、1人歌いながら歩いていた。聞き覚えのない、しかしどこかで聞いた気がする言葉で紡がれる歌に。1人の村人の男……男の姿をした人形が動きを止める。すでに消え去ったはずの意思が、心が、少女に与えられた使命と競合し、スパークを起こす。自分が動けていない事すらも理解できずに立ち尽くす男の前に白銀の月が歩み出た。
「少し……良い?」
 言葉をかけられ、男の機能が再度働き出す。与えられたロール、気のいい村人としての役目に従い、男は満面の笑みを浮かべた。
「やあ、構わないよ。旅の詩人さんかな?とても良い歌だったね」
「そう、遠くから来た、詩人……あなたの大切な友……領主さまにお目通り……道、そっと教えて」
 静かで、途切れがちな声。男の記憶領域が詩人とはこのようなものだったか、と照合を行うが。先ほど聞いた、耳から離れない歌が照合を強引に打ち切った。
「ああ、もちろん。これだけ素敵な歌ならきっと領主様もお喜びになる。館への道だけど、そこに大通りがあるだろう。そこを真っすぐ行って、毎回広い方に曲がればつくよ」
 疑う気配もなく、男は館への道を示し。そしてこう付け加える。
「昼のうちなら衛兵に頼めば連れて行ってもらえるだろうけど、今日の夜は特別な晩餐会で衛兵も殆ど参加しちゃうから、早めに行くといいよ。なんなら今案内しようか?」
 特別な晩餐会、何が特別かを示すことはなかったが。情報共有にあった他の村からの犠牲者を連れてくる日なのだろうか?今ある情報からそれ以上を知ることはできなかったが。もう、そう時間があるわけではない、サヴァーは準備のために1度戻るべきだと判断した。
「大丈夫……友達が、一緒に居るから……その人も連れてくる……」
「そうかい?それならいいんだ」
 男はそれ以上迫る事はせず、素直に引き下がる。これもまた役割通りだ、この村は”平和な村”なのだから、村人が平和を崩すことは無い、そう定義づけられている。そうだ、彼らの行動は一から十まで、少女の願うがままに動いている。それがどうにも歪で、どうにも悲しかった。
「ありがとう……お礼に、歌を……」
 だからせめて、これから忘れる今この時くらいは、と……サヴァー・リェスは再び歌う。記憶を、意志を揺さぶる歌を。この邂逅の時間を塗りつぶす歌を。男は歌が終わるまでじっと立ち尽くしていた。
「あれ、何をしていたんだったかな?」
 そうして歌が去り、男は元のロールへ戻る。その頬には、少女の人形には理解する事すらできない涙がゆっくりと伝っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『篝火を持つ亡者』

POW   :    篝火からの炎
【篝火から放たれる炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【赤々と燃える】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    篝火の影
【篝火が造る影に触れた】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    新たなる亡者
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自分と同じ姿の篝火を持つ亡者】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 月は中天にあり、雲は無く、空気は冷え切っている。哀れな人形劇に幕を下ろすにはうってつけの夜だ。深夜というには明るい月明かりの下で猟兵達はひっそりと時を待っていた。
 そして、各自の端末に通知が入る。
『亡者達が各村に進行したのを確認しました、統率者は含まれていない模様』
 周囲の村の防衛を請け負った猟兵達からの連絡だ。それを機に、すでに確保されたルートを通り、猟兵達は館へと踏み込む。
 館の中に監視の目は無く、楽しげな音楽だけが鳴り響いていた。
 猟兵達は音楽に誘われるように歩き、やがて、一際豪奢な扉の前で全員が一斉に足を止めた。ここだ、と誰もが確信する。扉の向こうからは見た目の華美さではぬぐい切れぬ濃密な死の臭いが漂っていた。
 誰かが意を決して扉を開ける。

 広い、華々しいホールに死が満ちていた。死体、死体、死体、100や200では効かない数の死体がそろいもそろって生きているふりをしていた……いや、させられていた。そんな地獄の奥で、"両親"に挟まれた黒いローブの少女が目を丸くする。
「あれ?お客さん、それもこんなにいっぱいだなんて」
 少女の言葉に敵意はない。しかし、彼女が次の言葉を発するよりも早く、"両親"が、"お友達"が立ち上がった。“両親”が少女を連れ奥の扉から抜け出すと同時に、"お友達"がそれぞれに武器を構えて、猟兵の前に立ちふさがる。
 それは無意識の防衛機構、少女が猟兵を敵とみなさずとも少女の中のオブリビオンは猟兵を害とみなしたのだ。少女の"お友達"、哀れな人形の群れは、今ここに、不死の防壁となって猟兵達に牙を剥いた。

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ようやく戦闘です、時間と体力の都合上書ききれなかった人ごめんなさい。
石上・道順
オブビリオンめ、小癪な真似を……!怒りに任せ、神降しによる浄化で一気に薙ぎ払ってしまいたい所だが、この数相手では消耗し過ぎる危険性がある。神降ろしはオブビリオンのみを滅し、少女を救い出す時のために取っておかなければならない。…家族も友もおらず、無垢なまま、罪も分からないまま敵意を向けられて殺されるなど余りに救いがなさ過ぎる。

「オブビリオンから少女を救い出す為に、出来る限り力を温存させていただきたく!幸い、相手は私の得意とする亡者!全力は出せずとも援護は出来ます故!何卒!」

他の猟兵達に謝りつつユーベルコードで注連縄と霊符を展開、注連縄による破魔の結界による敵の術の防御や、霊符による援護を行う



● 触れえざる者
 奥の扉が閉まる音を開戦の嚆矢とし、亡者達が波涛となって押し寄せる。
 そして激突の瞬間、突如現れた光の障壁がその攻撃を遮った。
 突如として勢いを殺された亡者達が折り重なって蠢く中。障壁の発動者、石上・道順が一歩前に歩み出る。
「申し訳ない、オブビリオンから少女を救い出す為に、出来る限り力を温存させていただきたく」
 反発を受ける事も覚悟の上で、道順は言う。
 たしかに彼女は罪を犯した。しかし、家族も友もおらず、無垢なまま、罪もわからぬまま敵意だけを向けられて死ぬなど……あまりにも救われない。だから、たとえ甘い選択と言われようとも、少女と相対するまでは切り札を切る選択肢をとることはできなかったのだ。
 だから、というべきか。力を温存した障壁程度で亡者達の数が減る事は無く、後から後から亡者達は殺到し、障壁は少しずつ削られていく。
 しかしながら、道順の顔に焦りはない。なぜなら、もとより彼の本領は防ぐ事には無いのだから。神域と不浄の境を司るモノとして生まれた彼の本質は、区切り・別つことにある。障壁で時間を稼いでいる内に、道順の体から走る注連縄が猟兵-ヒト-と亡者-ヒトならざる者-の領域を別ち、霊符がその隙間を埋めていく。
 そして、いまにも障壁が破壊される瞬間、道順は大きく目を見開いた。
「しかしながら、幸い相手は私の得意とする亡者!全力は出せずとも援護は出来ます故……後ろの守りはお任せあれ!」
 言葉と共に障壁が消えた。突然に行動を押しとどめていたものが消えたことにより、亡者達の体がふらつき一瞬の隙が生まれる。たかだか一瞬の隙、しかしそれだけの時間があれば十分だった。張り巡らせた霊符が一斉に光を放ち、殺到していた亡者達をまとめて弾き飛ばす。
 大きなダメージは無いだろうが、戦局は大きく猟兵に傾いた。少なくとも数の有利で一方的に押し切られることがなくなったのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

クレイ・ギルベルン
【SPD】

たくさん集めたものですね。
……しませんよ、同情なんて。少女にも、ここの亡者たちにも。

なるべく多くの敵が視野(射程内)に入る位置を取り、
レーザーポインタでマークしたら
『範囲攻撃』で出力を高めた【光線拡散EX】で焼き払います。

一度マークした対象は『追跡』で見逃さず
『2回攻撃』で畳み掛けを狙いましょう。

影を作らせないよう
《ギミックゴーグル》から閃光を放ち『目潰し』
『恐怖を与えて』怯ませることが出来れば儲けものですね。


レナ・ヴァレンタイン
※他猟兵との絡み大歓迎

――殺しも殺したり。私たちがなんとか救った分よりもずっと多くが失われる
なればこそ、出し惜しみは不要
奴らが『遊び』で死者を出すなら、私たちは『本気』でその差を補う

射線注意。仲間への誤射はしないつもりだが、それでも流れ弾の危険は減らしたい。警告は飛ばす
奴らと似たようなのを前に相手をしたことがある
奴らの影は踏むな、思考が読まれるぞ

故に私は遠距離戦で殺る
ユーベルコード、起動
手持ちの銃火器、『黒衣のウィリアム』『解放者メイヴ』を増やし、空中操作
少しでも数を減らす、少しでも負傷させて戦力を削る
下手な鉄砲、数打ち当たるというやつだ
私の手の中の銃も含めて、全弾持っていくがいい!



●彼岸より
 戦況は五分と五分。激突は未だ起こらず。猟兵は質、亡者は量で上回る。つまり、先に仕掛けた側が有利を握る状況だ。
 そのような状況で必要になるのは同情や共感ではなく客観的な判断だ。
 そして今この場で、それを一切の迷いなく為せたのは、猟兵としてかくあれかしと望むケットシーの少年。クレイ・ギルベルン(迷いの夜に・f04293)とレナ・ヴァレンタインの2人だけだった。
 道順による結界の構成を見るなり、すぐさま攻撃行動に移ろうとする互いを認識した2人は、小さくうなずき合って言葉を交わした。
「先鋒は私がもらおう。撃ち漏らしは頼んだ!」
「任されました」

 張り巡らされた注連縄を足場に駆け上がるクレイを横目に捉えながら、レナは漆黒のマスケット銃『黒衣のウィリアム』とリボルバー『解放者メイヴ』を抜き放つ。
 どちらも多数を相手取るには心もとない兵器だが、数が揃えば話は別だ。
 瞬く間に地面から双銃の複製が浮き上がり、それぞれが敵をにらみつける、その銃口の数は合わせて36、弾幕を張るには十分すぎる。

「石上道順だったか……なるほど、良い仕事をする」
 思わずそんな言葉が出てくる位には、完璧な状況だった。
 敵味方で別れた陣地は誤射の心配がなく、敵の配置も適度にまとまっている。
 つまり……撃ち放題だ。

 わずかな間、射線に味方がいないことを確認し、レナは攻勢の始まりを告げる。
「さあ、戦争をはじめよう。出し惜しみは無しだ、全弾持っていくがいい!」

 激しい発砲音が連続し、銃口の数以上の亡者達がまとめて撃ち貫かれていく。
 気を抜けば状況の把握を諦めてしまいそうな光景の中、天井のシャンデリアに立ったクレイは冷静に戦場を見極めていた。
(今果たすべきは掃討ではなく突破、ならば道を塞ぐ相手は確実に落としておきましょう)
 そうして視線を動かせば、その先にレーザポインタが走り、弾幕から逃れている亡者を確実にロックしていく。
 都合4秒、途切れなく撃ち続けていたレナの銃が弾切れを起こす。
 比較的傷の浅い亡者たちが再び攻撃に戻ろうとするが、戦場を俯瞰していたクレイがそれを見逃すはずがない。
「眩しいのであまり使いたくありませんが……光拡散EX(プラズマレイ・エクステンション)!」
 言葉と共に放たれた光線は補足済みの亡者達に殺到し、次々に薙ぎ払う。
 光が収まった後には、元の死体に戻った亡者が転がるだけだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​


かくして戦端は開かれる。当初こそ猟兵優位ではじまった戦闘だが、現状はそれほど芳しくない。その原因は一重に亡者達の継戦能力の高さにある。
 回避、復活を兼ね備えた彼らは消耗戦とひたすらに相性が良い。どれだけ個の戦力差が圧倒的であっても、敵が無限であればいつかは崩れる。
 ゆえに打つ手は2つ、まとめて砕くか、本丸を叩くかだ。
マリアドール・シュシュ
「”お人形さんごっこ”はお終いにしましょう?
あなたがそれを本当にお友達と呼ぶならば…マリアは、お友達のやってる事を止めるのよ。
こんな事はあなたが真に望んだ結果ではないと思うから。誰しも一人は寂しいものね。
ごめんなさい、マリアはあなたに恨まれてもいい。
悲劇の幕は閉じなくちゃ」

青のドレスに白のローブを頭に羽織る
仲間がいれば連携意識
【華水晶の宴】使用
16体の一角獣を散らばらせ一斉攻撃
角や前足で攻撃
敵が少なくなったら合体
亡者を増やされる前に一気に畳みかける

自分は攻撃が届く範囲で距離取り、竪琴を奏でながら【マヒ攻撃】
支援寄り
【おびき寄せ】で仲間が攻撃しやすい様に隙を作る
注意を惹きつける様に綺麗な音で演奏



●華水晶の祈り
その手が汚れていることすらも理解できないただただ無垢なだけの少女と、意志を奪われた亡者のいびつな芝居を前にして、マリアドール・シュシュ(クリスタリアンのサウンドソルジャー・f03102)の心は決まっていた。
「こんな”お人形さんごっこ”はお終いにしましょう」
1人でいる寂しさは知っている。だから分かる。
あなたが本当に欲しかったのは"こんなもの"ではないだろう。と
「可愛い可愛い一角獣さん、いらっしゃい」
 歌うような声と華水晶のきらめきが交差し、輝く水晶の一角獣たちが彼女を守るように現れる。
 マリアはその一匹をやさしくなでると、竪琴を手に取り、軽くはじいた。
 澄んだ音が鳴る。こんな状況でも音に狂いはなかった。なら、きっと上手くいく。
「マリアが隙を作りますのよ。詰めはお願いしますわ」
 近くに居る猟兵に呼びかけつつ、マリアの指が音楽を奏で始める。
 心に直接響くような音は意思を失った亡者達にも確かに届き、彼らはわずかに動きを止める。しかし、ここは戦場だ。少女の命令を思い出した亡者は即座に戦闘の意思を取り戻し、音の出どころたるマリアへと攻撃を開始した。

 折り重なるようにして襲い掛かる亡者の波を一角獣が受け止め、かろうじて拮抗する。
 嘆きと、怒声と、銃弾の飛び交う音と、魔法が爆ぜる轟音と。
 ありとあらゆる音を閉じ込めた嵐のような戦場で、マリアは竪琴を奏で続ける。
 少女が踊る悲しい人形劇に幕を下ろすために。

成功 🔵​🔵​🔴​

八坂・操
【SPD】

いやー、想像以上に多いね。三桁のゾンビダンスって操ちゃんも初めて見たよ☆ やぁ、奇観かな奇観かな……値千金なんて、腐っても言えないがな。死んだ後ぐらい、ゆっくり眠らせておくべきだろう。

とはいえ、この中に突っ込むのは流石に厳しい操ちゃん♪ 【メリーさんの電話】で先陣を切って貰うよ☆
「もしもし、メリーちゃん? 素敵なダンスパーティがあるんだけど来ない?」
騒ぎに乗じて操ちゃんは『忍び足』。メリーちゃんに遊撃して貰いながら、『目立たない』よう背後から『だまし討ち』して回るよ♪
こう数が多いと、一時離脱も視野に入れておいた方が良いね。その時は『逃げ足』でさっさと会場を後にしよう☆



●戦場の怪談
 戦場は踊る。状況は乱戦の体をなし、誰が誰とも気づかない。
 そんな戦場を、八坂操は見下ろしていた。
「いやー、想像以上に多いね。三桁のゾンビダンスって操ちゃんも初めて見たよ☆ 」
 言葉だけは楽し気に、顔だけは笑顔で、彼女は言う。
「値千金なんて、腐っても言えないがな。死んだ後ぐらい、ゆっくり眠らせておくべきだろう」
 その声は確かな敵意をもって操の口から放たれた。しかし、その表情は依然笑顔のまま、楽し気な顔のままだ。
 それも当然、笑顔を浮かべている"八坂操"は彼らに、亡者や黒衣の少女に敵意など持っていないのだから。
 だから、きっと彼女ではない誰かが言ったのだ。それは1人かもしれないし、そうでないかもしれない。だが、誰でもない"彼ら"は死を弄ぶオブリビオンを決して許そうとはしていなかった。
 "彼ら"の思いに応え、操は無造作に短刀を手に取った。
 前線は他の猟兵が維持している。狙うならば後詰、直接戦闘に参加せず倒れた亡者を復活させている集団だ。
「とはいえ、1人で踊るにはちょっとお相手が多すぎだね♪ せっかくだからお友達も読んじゃおう☆」
 誰に言うとでもなく1人話しながら、操は慣れた調子で電話をかける。
「もしもし、メリーちゃん? 素敵なダンスパーティがあるんだけど来ない?」
 伝えたのはそれだけ、返答はないが、それで十分。縁は繋がれ、彼岸の境は断ちきられた。"彼ら"に必要なのはそれだけだ。
 間を置かず返された非通知の着信と共に亡者の集団がざわめく、彼らの中心にはいつの間にやら刃物を持った少女……メリーさんの姿があった。

 1人暴れるメリーさんにかく乱を任せ、操は敵陣の後方へと飛び降りる。アクロバティックなその動きは本来であれば敵の注意を惹くものだ。しかし、今、彼女に気づくものは一人もいない。
 亡者達にとっては前線の強力な猟兵や、中心で暴れているメリーさんの対処こそが重要で、居るか居ないかも分からない亡霊など相手するだけ無駄なことなのだから。
 だから認識できない、いつの間にか周囲の仲間が倒れていることなど。
 だから最期まで気づけない、真に警戒すべきが誰なのかに。
 そうして、気づいた瞬間……飾り気のない短刀が亡者の首を断ち切った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サヴァー・リェス
リンセ(f01331)と、猟兵皆と共に、亡者と、戦う…
「この村は…悲哀に、満ちている。急ぎましょう…」
村の男性の瞳が、歌に、潤むのを…私は、見た
黒ローブの少女も、村人も…早く、解放したいと、思う
リンセが力強く頷き、私も頷く

私は、体力や素早さ…余り、ないから…
亡者から離れ、味方の後ろに位置、しておく
亡者の造る影、なるべく踏まぬ様に注意して…
彼らのユーベルコードにタイミングを合わせ…
私のユーベルコードで、相殺、していく
特に…、彼らが仲間を増やさぬ様、「新たなる亡者」の技は…絶対に、阻止
「かなしみ、増えるだけ…だから。おやすみ…」
私に、攻撃する余裕があれば…、媒介道具を翳し…【衝撃波】で…亡者を攻撃


リンセ・ノーチェ
サヴァー(f02271)さんや、猟兵の皆と、亡者と戦うよ
「うん、急ぎましょう…あの子を止めて、皆を助けないと」
サヴァーさんの悲しむ優しい心が伝わるから、僕は強く頷いて
ユーベルコードで友達の夜鷹を呼び出し、黒ローブの少女を追跡させておく
どこに行っても、見つけられる様に
夜鷹と五感を共有できるけど、今はなるべく戦いに集中する
亡者の造る影を踏まない様に気をつけて、敵の攻撃は【見切り】回避するよ
素早く動いて敵の的にならない様、そして敵を攪乱する様に立ち回り
【フェイント】を使って、時間差で本命の攻撃を撃ち込んで行く
遠くの敵は精霊銃・近くの敵はエレメンタルロッドで
それぞれ可能なら素早く【2回攻撃】していくよ



●月と星と
 戦場が荒れに荒れる中、リンセ・ノーチェは比較的落ち着いていた。
 状況はこちらに傾いている、であれば、次の行動の準備をしておくべきだ。
「夜鷹、よたか、星になんかならないで。僕のそばに、いておくれ」
 リンセの声に応え、一匹の夜鷹がその身を寄り添わせる。全身で信愛の情を示す夜鷹にリンセが一言、二言言葉を交わすと、夜鷹は弾丸のように亡者の上空を駆け、わずかに開いた扉から少女の後を追った。
 その後ろ姿を見送り、美しい彫刻の施された拳銃とエレメンタルロッドを抜く。
 覚悟をにじませるリンセの姿を見て、サヴァー・リェスはその横に並び立った。
「この村は……悲哀に、満ちている。急ぎましょう……」
「うん、急ぎましょう……あの子を止めて、皆を助けないと」
 互いの思う事は分かっている。だからそれ以上の言葉を交わす必要は無く、2人はただ強く頷き合った。

 リンセは乱戦によって隙間の空いた亡者の群れの中に体を滑り込ませ、エレメンタルロッドと精霊銃を振るう。
 緩急織り交ぜたその身のこなしは機械的な判断を行う亡者に見抜けるものではなく、瞬く間に撃ちぬかれ、元の死体へと戻っていく。
 しかし、その数が減る事は無い。彼らは死体がある限り何度でも作り直され、無尽蔵に襲い掛かる。やがて、そのうちの一体の手がリンセの体に触れようとした瞬間。
 銀色の蜃気楼がそれを止めた。

「かなしみ、増えるだけ……だから。おやすみ……」
 物理的には歌は音の塊で、音は空気の振動だ。多少振動が強かろうが早かろうが、亡者をどうこう程の力は無い。
 だが、彼女の、サヴァー・リェスの歌は違う。空気だけでなく、人を、世界を揺らす彼女の歌は、亡者の在り方そのものに働きかける。それは、成ったばかりの人形を人に戻すには十分すぎた。
 蜃気楼、世界の揺らぎに触れ、蘇りかけていた亡者達が次々と倒れていく。
 互いの行動を理解しているからこそのアシストにリンセは素早く体勢を立て直し、身近な亡者を撃ち抜きながら感謝の言葉を飛ばした。
「ありがとう、サヴァーさん!」
 サヴァーは紡ぐ歌を止めることなく、優しい笑顔だけを返した。

 既に大多数が倒され、蘇りによってようやく戦線を維持していた亡者達は、彼女の歌によって急激に数を減らし、遂にその戦線は崩壊した。
 リンセはまばらになった亡者達の間を駆け抜けながら、少女の姿を追う。
 夜鷹の目を通して見える扉の向こうでは、広いホールの奥、少女が"両親"に挟まれて震えているのが見えていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『ゼラの死髪黒衣』

POW   :    囚われの慟哭
【憑依された少女の悲痛な慟哭】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    小さな十字架(ベル・クロス)
【呪われた大鎌】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
WIZ   :    眷族召喚
レベル×5体の、小型の戦闘用【眷族】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑17
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は吾唐木・貫二です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


乱戦を抜け、猟兵達は部屋の奥へとたどり着く。
 勢いよく扉を開けると、その向こうでは黒いローブの少女が"両親"に抱きしめられ、身を震わせていた。
 怯えたような、か細い声が猟兵達に届く。
「な、なんで……なんでこんなことに、やっと幸せになれると思ったのに」
 ただ不幸を嘆き、啜り泣くだけの少女に、もはや反撃の意思は無いように見える。
 これならば戦闘は回避できるかもしれない。そう思った猟兵達が一歩踏み出すと、残った"両親"が戦闘態勢をとる。黒衣の少女はそんな2人に縋りついた。
「もうやめて!お父さんもお母さんも死んじゃうよ!」
 それを命じているのは彼女だ……正確には彼女の中のオブリビオンだが、どちらでも同じことだ。彼女は一方の手で処刑台への道を押しながら、一方の手で歩みを止めようと縋りついている。それも、死体で作った人形にだ。
 なんとまあ、滑稽で悲劇的で無意味な一人芝居だろうか。
 だがしかし、彼女の世界では、それは本当の愛なのだ。

 "両親"の足にすがりつき、泣いていた彼女はいつしか泣くのをやめていた。
 涙を拭きながら立ち上がり、猟兵達へと向き合う。少女の目は覚悟と純真に燃えていた。
「お父さんや、お母さんが苦しむくらいなら、わたしが……わたしが戦うから」
 "娘"のために戦おうとする"両親"を手で制し、黒衣から鎌を顕現させ、前へと進み出る。
 自分のために生きていた少女が、愛する人のために戦うことを選ぶ。それはもしかしたら成長と呼ぶのかもしれない。きっと正しくあったならば、そう呼んだはずだ。
「わたしたちの幸せを邪魔するなら!全員わたしがやっつけてやる!!」
 今のそれを、そう呼んでいいのかは分からない。
―――――――――――

ここまでありがとうございます。
お待たせしました、クライマックスフェイズ、
黒衣の少女 with 亡者2体戦です。
クレイ・ギルベルン
おままごとにも満たないお芝居、もう……見ていられません。
幕切れと致しましょう。

【WIZ】

『高速詠唱』で即ユーベルコードを発動
亡者や眷属の相手は、一先ず召喚した霊にやらせましょう。
『2回攻撃』『範囲攻撃』も活用します。猛るままに貪りなさい。

私は『呪詛耐性』で、慟哭に心を揺さぶられぬよう備え
また物理攻撃からは『見切り』や『第六感』を駆使して回避を優先します。

先の戦闘と同じく、高所を陣取れたなら
いつでも撃てるよう、少女にゴーグルの照準を合わせておきます。
明瞭な『視力』に『スナイパー』の技能がありますから。

……まあ、少女は助けたい、という方がいらっしゃるなら
直接頭を狙うのは控えておいてあげましょう。



オブリビオンと猟兵の戦闘能力は対等ではない。多くの場合、オブリビオンの個体としての強さは猟兵数人分であり、多少の数の差は問題にならない。
 しかし、守るということを主眼におけば話は異なる。1人では、手数が圧倒的に足りないのだ。
「みんな、お願い!」
 その差を埋めるのが眷属だ。
 彼女の声に応え、辛うじて人型を取る亡霊たちが次々と地面から湧き出し、生命への怨嗟を叫ぶ。多対多、戦場の開幕にはふさわしい華々しさだ。

「もう……見ていられません」
 そんな、少女が織りなす一人芝居を白けた目で見ながら、クレイ・ギルベルンは迅速に対応を進めていた。彼の戦闘スタイルは数を真正面から相手取るものではない、ゆえに、重要なのは壁役だった。
「おいでなさい、狂える怪奇よ」
 編み上げた術理は現と幻の境界を揺らがせ、空間に扉を開く。底知れぬ狭間の闇から燃え盛る異形の獣が進み出た。
 燻り狂うままに亡霊に突貫する獣を目で追いながら、クレイは戦場を俯瞰できる位置へと後退する。狙うべきは黒衣の少女本体。獣が亡霊たちをかみ砕き、燃え盛る体で亡霊たちを弾き飛ばす混乱の中、クレイは冷静に少女の姿を捉えていた。
 ターゲットサイトを一度少女の頭に合わせ、思い直したように狙いをずらす。
「……まあ、少女を助けたいという方もいらっしゃるでしょうし、直接頭を狙うのは控えておいてあげましょう」
 冷徹に、無慈悲に、正しく猟兵の使命に準ずるロールは崩れる事はない。だが、他の猟兵への配慮という名目に隠れた一縷の純真は、確かに少女の黒衣に狙いを定めていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

リンセ・ノーチェ
サヴァー(f02271)さん、猟兵皆と戦う
ユーベルコードで友達を呼び騎乗
少女が生きるべきかなんてわからない
でも
死者の世界に閉じこもらず、生きて欲しいって思う
僕のわがままでも
「だから…助けるよ」

真の姿:影が立ち、揺らぎ煌き体に寄り添う

ローブを引き剥がすか破壊…考える猟兵は他にもいる筈
皆と協力していくよ
【騎乗】には少し自信があるんだ
「行こう、フォルテ」
敵の攻撃を【見切り】回避しつつ亡者達を惹きつけ少女から引き離し
亡者達に精霊銃の【2回攻撃】を撃ち込んでいく
大切な両親である亡者が倒れた時や少女がノーガード状態の時がチャンス、
他の猟兵に託すよ
引き剥がせたローブはロッドの【全力魔法】で徹底的に破壊するよ


サヴァー・リェス
リンセ(f01331)、他の猟兵と共に
瞬時に花と翼を仕舞い…人間、装う
…リンセの心、伝わる
助かったとして…少女が生きる道は、辛いもの
けれどそれでもとリンセが願う
…私も、願う

真の姿:白金に輝く髪と梟の金瞳

リンセが亡者を惹きつける…から
私は、少女の死角へ移動
少女を救おうとしている猟兵がいれば
【オーラ防御】でリンセや私、少女の視野内の猟兵を守り
ユーベルコードで少女のユーベルコードを相殺し続け
狙いに気づかれない様…陽動を

誰もいなければ
亡者を倒した時など…少女の隙、【第六感】も活かし…逃さず
翼も使い、少女と距離を一気に詰め
ローブという物の構造上一番脱げ易い方法で引き剥がす
私の傷は、後で癒える…気にしない




 生きるべきか、死ぬべきか。そんなことを決めることは誰にもできない。
 助かったって、彼女の生きる道はきっとつらいものになるだろう。
 ここで終わってしまった方がずっと楽なのかもしれない。

 けれど、と思った。それでも、と反駁した。
 死者の輪に踊る人形ではなく、できるならば人の間で生きてほしい、と願った。
 たとえそれが自分のわがままでしかないと理解していたとしても。
 リンセ・ノーチェは少女に生きていてほしいと思ってしまったのだ。
「だから……助けるよ」
 強い決意の言葉とともにリンセの影が煌めきとともに立ち上がり、そっと彼に寄り添う。
 世界の法則に反するその光景は、世界の埒外にある存在、猟兵がその在り方を真に発揮した証に他ならない。
「不可能を、可能に!強き嘴と爪、気高き翼と蹄。奇跡なす友フォルテよ、来て……!」
 そして、その隣に琥珀色に輝くヒポグリフ、フォルテがリンセに並び立つ。1mにも満たない、ヒポグリフにしては小さな体躯に反して、その在り方はどこまでも、生の力強さに満ちていた。
「行こう、フォルテ」
 リンセがその背中に飛び乗ると、フォルテは一声大きく鳴いて亡者たちへと飛翔した。

 戦場において一際目立つヒポグリフは当然攻撃の対象となる。しかし、一陣の風のごとく宙を駆ける彼を撃ち落すことは誰にもできない。
 それは、フォルテの速さやリンセの乗りこなしの巧さだけが理由ではない。
 彼らには仲間がいるからだ

 頭に血が上り、遮二無二攻撃する少女には見えていないが、迫る攻撃は蜃気楼によって狙いをずらされ、眷属や鎌の一撃は優しい光によって防がれている。
 その出どころを辿れば、白金に輝く髪の女性サヴァー・リェスが目に入った。
 少女がリンセ達の行動に気を取られている隙に死角へと周りこんだ彼女は。他の猟兵達を守りながら、ローブを引きはがすための機を伺っていた。

 そして、その時が来る。リンセの銃撃が亡者の片割れを射抜き、吹き飛ばされるのを見た黒衣の少女がとっさに亡者へと駆け寄る。その瞬間を見逃さず、サヴァーが放った衝撃波が少女のローブの一部をちぎり飛ばす。
 宙を舞ったローブの破片は、宿主の元に戻る暇もなく、即座にリンセの全力の攻撃によって跡形もなく消え去った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

八坂・操
【SPD】

悲劇と喜劇を混ぜ合わせたホラー……うーん、これは脚本監督の手腕が問われるね☆
……黄泉戸喫、ペルセポネの冥界下り。神人問わず、生死は何時だって一方通行だ。愛する両親に二度目の死を望んだのは、他ならぬアンタだよ。
っと、操ちゃんは思うなー♪

子供まで死ぬのは流石に駄目だよねー♪ という訳で、【咎力封じ】でちょっと拘束させて貰うよ☆
……諸手を挙げて真正面から近付けば、正直に攻撃して来るだろう。そこで怪糸を用いて『敵を盾にする』。対象は両親どちらでも良い。自らが手を掛けた事で、行動が止まる隙を狙う。
「アンタがやるんだ。寝ている両親を無理矢理起こしたアンタが、眠らせてやるんだ」
“私”は甘くないよ。




 弾き飛ばされた”両親”を見て黒衣の少女は即座に獣の相手をやめ、疾駆する。
 そんな少女の前に八坂・操は一人ふらりと歩み出た。
「神人問わず、生死はいつだって一方通行だ」
 気味の悪いまでの笑顔を浮かべ、劇場に立つがごとく悠々と口上を述べる操に少女は一瞬たじろいだ様子を見せる。
「それだというのに、愛する両親に二度目の死を望んだのは、ほかならぬアンタだ」
 しかし、今なお窮地にある”両親”を救うため、少女は操へと足を進める。
 対して操は諸手を挙げたまま動こうともしない。少女の事など見えてもいないかのように、朗々と言葉を継ぐばかり。
 なめられている。
 年端もいかない少女がそう思うのは無理もないことだ。少女は怒りのままに操へと走り寄る、そして。
「邪魔するなっ!どいて!!」
 ヒステリックな叫びとともに大鎌が振り下ろされ……
「だから、アンタが眠らせてやるんだ」
 少女と操の間に割り込んだ”父”を両断した。
「あ……」

 鎌が地面を砕く鋭い音。
 少女の口から洩れた間の抜けた声。
 “父”だった死体が崩れ落ちる湿った音。
 肺に届かない、浅い呼吸の繰り返し。
 あらゆる音が奏でる、うるさいほどの沈黙の中に操の声だけが静かに残響する。

「あ、あぁぁああああああああ!!!お父さん!違うの!私、そんなつもりじゃ!」
 少しでも冷静さが残っていたならば、”父”は盾にされたのだと理解できるはずだ。だが、もうそんなことはどうでも良かった。
 少女は鎌を取り落とし必死に”父”だったものをかき集める。
 無意味だ。
 頭ごと2つに立ち割られた死体はオブリビオンの法を以てしても亡者たりえぬ蠢く死体となるだけ。少女の”父”はここにようやく永久の眠りを迎えていた。

 そんな姿をしり目に、操は少女の鎌を無造作に放り捨てると、拘束ロープを手に取る。
「”私”は甘くないよ」
 死骸に縋りつき、抵抗なく囚われる少女に向けたその表情が、笑顔なのかどうかは、もう誰にも分からなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​


 拘束具に囚われながら、少女は自らが手にかけた死体を前に泣き崩れる。
 そんな彼女に救いの手を差し伸べる者は無かった。

 それも妙な話だ。

 彼女は絶対に自分を愛する存在として"家族"を作った。
 自分を傷つけない遊び相手として"友達"を作った。
 だから、彼らはそのロールをまっとうしなくてはならない。
 そのはずなのだ。

 しかし、亡霊も、残った"母"ですら少女に手を差し伸べようとはしない。
 それどころか。彼らは猟兵ではなく、仲間の命を奪った少女に敵意と恐怖を向けていた。

「え……ま、って……みん、な、ちが……」
 理由など語るまでもない。
 結局の所彼女には"いつだって自分を愛してくれる誰か"なんて想像できなかった。
 ただそれだけのことだ。

 だが、物語はここで終わらない。
 生者は彼女を虐げた。死者すら彼女を見捨てた。ならばどうするか。
「そっか……ならもういい」
 不意に彼女を縛る拘束の一部がはじけ飛ぶ、猟兵達が警戒体制をとる中、少女は亡者達の方へと歩き始めた。
「もう、友達も、家族も、いらないや」
 亡霊を踏み砕きながら歩く、誰も動かない。
「わたしは1人で幸せになる。邪魔する奴らは全員」
 かつて"母"だった亡者に手をかける、誰も動けない
「私が殺してやる」
 そうして、少女の姿をしたオブリビオンはゆっくりとその手を振り下ろした。
リンセ・ノーチェ
【Folklore】の皆、猟兵皆と戦う
真の姿を維持しつつフォルテを降り
少女に【優しさ】籠め語りかける
「自棄にならないで
…ううん。君が諦めても、僕は、君を諦めない
君を、助けに来たんだ
殺しても、幸せにはなれないよ」
攻撃は【見切り】躱していく
ユーンさんや皆の攻撃などで少女に出来る隙を見逃さず
僕は素早く少女の懐に潜り込み
温もり伝えるために少女と【手をつなぐ】よ
「助かろう、ね、一緒に、生きよう」
僕が傷ついても生きてるなら構わない、この距離なら出来る筈
彼女のローブを確実に完全に引き剥がし【全力攻撃】で破壊する
「僕の家族も、早くに死んでしまったよ
でも、空から見てるって思う
だから、空見上げて、笑顔みせるんだ」


サヴァー・リェス
【Folklore】の皆と…他の猟兵皆と、共に…真の姿、継続し、戦う…
辛い、思いは…時に、心を壊す…。けれど、蘇るのも、心と…信じている
少女を【優しさ】籠めて見つめ
「あなたが、いま、いらないと思うのは…
友達、家族ではなくて…あなた自身…ね
でも…私は、あなたを要らないと、思えない」
【催眠術】の心得を活かし…催眠ではなくとも、
乱れた心、落ち着ける術を使い、話しかける
亡者や、少女の攻撃は…ユーベルコードで、相殺…
【第六感】も活かし、タイミングを合わせて、しっかり、相殺…
【オーラ防御】も使い、リンセ、ユーン、私、猟兵皆と…少女をも、守る
ユーンの気絶攻撃は、通し…私も、少女のローブを、完全に引き剥がす…


ユーン・オルタンシア
【Folklore】の皆様と。猟兵皆様とも連携を
少女を救いたいリンセとサヴァーの思い、痛いほど伝わります
私も最後まで手段と心を尽くします
ユーベルコードにて少女を狙い【気絶攻撃】で弓を使い射抜きます
少女を殺害してしまう危険性あればユーベルコードは使わずに狙える所から
少女が気絶次第残りのローブを引き剥がします
鎌も取り上げてユーベルコードで破壊
気絶攻撃が効かない時も焦らず少女に隙を作り皆様と協力しローブを剥がします
少女の安全を確保し優しく話しましょう
「道は、これから幾らでも。この世界に在っても、あなたを支えて下さる人は少なからずいます
あなたはとてもお若い。だから、まだ、出会っていなかっただけですよ」


八坂・操
【WIZ】

ワーオ! そう来たか♪ 呪物を使い続けている内に自分自身が呪われるなんて、ホラー映画じゃありがちなヤツだね☆
……だから、もう遠慮はなしだ。他人を蹴落としてまで掴んだ幸福に、先なんてものはないんだ。

「……ヒヒッ」
キレてオブリビオンになっただけの子供だ。纏っていた悪意をその身に落とし込んだ、子供だ。
「ヒヒヒヒヒヒッ!」
ならば聞く。故に聴く。だから効く。意図の分からぬ哄笑は、殺意を含んだ視線は、怪異と呼ばれる存在は、明確な『恐怖を与える』。
「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!!」
笑い哂い嗤い、【怪異】を放つ。
人を呪わば穴二つ。ツァラトゥストラはかく語りき。自分が何を扱っていたのか、身をもって知れ。


石上・道順
人の温かさを焦がれ、愛に飢える少女を、このまま絶望の末に、闇に飲ませてなるものか!
傀儡を親や友と呼んだのも全てはただ、温かい繋がりを取り戻したかったからのはずだ。願わくば、この奮闘が少女の闇を切り開く一陣の光とならんことを。

この世界の神と、大いなる天照大御神、そしてこれより降ろす布都御霊に【祈り】を捧げ、ユーベルコードを発動する。

「この地の神よ、大いなる天照大御神よ、そして布都御霊よ!その温かい清き光にて少女をむしばむ闇を切り開き、照らし給え!」

我が本質は領域を分けるモノ。闇に覆われている少女の心を【失せもの探し】、【情報収集】で探し、今一度同化の進むオブビリオンから少女を解き放つことを狙う。


クレイ・ギルベルン
(ダークセイヴァー、オブリビオンの手に落ちた世界……陰惨さたるや、これまでとは)
(本当に目を覆ってしまいたい……ですが)

【WIZ】

幸せというものは、
愛されることを諦めて掴めるものだと思っているのですか。
独り遊びに耽っていれば手に入ると思っているのですか。

……いえ、オブリビオンに言葉など無益ですね。
私たちはあなたの身勝手を止めに来た。それだけです。

私は膂力に自信がありませんし、この矮躯ですから、
拘束なり引き剥がしなりは他の方にお任せしますね。
その代わり《閃光照射》で『目潰し』して動きを止め、隙を作りましょう。
少女とオブリビオンの結束を緩める事が出来ないか、
試しに『破魔』の力も込めてみます。




 殺意のままに振るわれる刃を時に受け流し、時に躱しながら、八坂・操は嗤う。
 心の底から、愉し気に。
「ヒヒッ、ヒヒヒヒッ。そう、そう来たかぁ♪ 実にありがちなバッドエンドだね☆」
「何……笑ってるんだっ!」
 強い嘲りを含む彼女の笑いに、怒りの籠った刃が振るわれる。無理な体制から放たれた渾身の一撃は、しかして操の肌に触れることなく、その麦わら帽子だけを跳ね飛ばした。
 はじめて少女と操の目線が合う。
「ひっ」
 隔意、敵意も、散々に向けられてきた。
 だが、こんな、昏く深い、底無しの殺意に満ちた瞳を向けられたのは初めてだった。
「ヒヒヒヒヒヒヒヒ、人を呪わば穴二つ。自分が何を扱っていたのか、身をもって知れ」
 理解を遠く外れた狂笑に、少女は怒りも忘れて後ずさる。語るまでもなく、少女は眼の前の不気味な存在に恐怖を抱いていた。
 ゆえに道は開かれる。”畏れ”に生まれ、”恐れ”によって形を成す。そうあるべくしてそう生まれた”彼ら”――操の内側に蠢く怪異達は少女の恐怖を喰らい、次々にその姿を現した。
 刃物を持った少女が、妙に背の高い女性が、将校のような怪人が背広を纏った無貌の男が。黒く塗りつぶされた幾人もの”彼ら”はそれぞれ思い思いの武器を手に取ると、さらなる恐怖を求め、目前の少女へと襲い掛かった。
「あ、く、来るなぁ!!!!」
 物量と脅威に、少女は立ち向かうこともできずに逃げ惑う。その姿は、濁流に押し流される木の葉とそう変わりはなかった。


 もはやどちらが脅威なのか判別に困る同輩のユーベルコードと、それに追われる少女を見ながら石上・道順は密かに眉を顰めていた。
 ああまで強い殺意と狂気を少女一人に向けるというのは、例え正しい事だったとしても好ましいとは言い難い。だがしかし、これはチャンスでもあった。オブリビオンと少女は強く同化してはいるが、彼女の感情、特に根源に根差す怒りや悲しみ、そして“恐怖”は未だオブリビオンの物ではない。ならばそれこそが、少女とオブリビオンを別つ起点となるはずだ。
 心を落ち着け、静かに祝詞を口にする。
「この地の神よ、大いなる天照大御神よ、そして布都御霊よ!その温かい清き光にて少女をむしばむ闇を切り開き、照らし給え!」
 全ては、ただ人の温かさを求めただけの少女を闇から救い出すために。
 道順の祈りに応え、未だ抜くことのできない神刀が彼に力を貸す。三柱の神と神刀、道順の力をより合わせたそれは、光り輝く巨大な刃となり少女へと振り下ろされた。
 刃は過たず少女を両断し、地面で砕けて消える。しかし、確かに直撃したはずの少女の体には傷一つついていなかった。
 誰もが目を疑う中、少女の姿が二重にブレ始める。最初同じ形をしていたそのブレは徐々に拡大し、やがて少女とそれに纏わりつく半透明の女吸血鬼という二つの像へと姿を変えた。
 そう、領域を別ち、聖邪を区切る道順の力が、少女の心をオブリビオンから切り離したのだ。
「あれを討てばオブリビオンだけを滅ぼすことができましょう! 後はお願いいたします!」
 三柱もの神を降ろしたことで消耗した体はすでに大技を放てる状態には無い、しかし彼は、頼もしい仲間たちがきっと少女を救ってくれると信じていた。


「難しいことを言いますね」
「どうしました?」
 ゴーグルによる女吸血鬼の解析結果に苦い顔をするクレイ・ギルベルンに、同じく後衛に立っていたユーン・オルタンシア(森の声を聴く・f09146)が尋ねる。
「あのオブリビオン、可視化されてはいますが物理的な実体がないようです」
「なるほど、それは……少々困りますね。何か手は?」
 魔術や降霊術、その他様々。2人とも猟兵として、触れられない相手と戦う手法は修めているが、それでもやはり火力は一段落ちる。
(解析結果は霊体に近い。破魔の力であれば一時的に実体化できるかもしれませんが……)
 確実とは言えない手段だ。ただ倒すだけならより良い手段があるだろう。少女の巻き添えを許容するならだが。それが選択肢に出てこなかったのはきっと……許せないからだ。
 幸せの妄執に憑りつかれ、孤独と諦めを選ぶ少女が。そして、少女にそんな願いを抱かせてしまう世界の陰惨さが。どうしても認められないからだ。
 首を振って雑念を追い払う。今、猟兵としてなすべきはオブリビオンの撃破に最適な手段を選定することだ。そこに強い思いなど必要ない。
「破魔の力を与えた閃光をぶつけます。運が良ければ実体を炙り出せるはずです。無理でも動きを止めるくらいにはなるでしょう」
 結果として不確実な手段を選択する。仲間との協力を考えた結果だが、そこにクレイ自身の思いが無かったかといえば、それは彼にしか分からない事だ。
「なるほど、ならば物理と魔法の両方を用意しておきましょう」
 ユーンが準備を整えるのを見計らって、ゴーグルの照準をオブリビオンに合わせる。
「照準良し……行きます」
 合図とともにゴーグルからまばゆい光がオブリビオンに照射される。強い光が影を地に焼き付けるように、破魔の力を込めた閃光は少女に纏わりつく像を照らし、空中にその姿を縫い付けた。すかさずゴーグルの解析を走らせる。実体は……有った。
「成功です!今なら行けます!」
 クレイの声に応え、ユーンが放った矢が10、20と突き刺さる。肉体の鎧から放たれたオブリビオンにはその攻撃を耐え抜くことは不可能だ。オブリビオンは騒々しい断末の叫びと共にふらふらと空中を漂い、やがて地面へと墜落するとその動きを止めた。


 力の源だったオブリビオンが墜ち、少女の体から力が抜けていく。それでもなお、少女は抗う姿勢を崩そうとはしない。ボロボロの体を必死で動かして、ただただ前へと進み続ける。
 自分に選べる道はこれしかない。そう頑なに信じ込んで。
 もう、見ていられなかった。
 リンセ・ノーチェは乗っていたヒポグリフ、フォルテの背を飛び降り、手を差し伸べる。
「信じられないのも分かる。でも、信じてほしい。僕は、君を、助けに来たんだ」
「うるさい……近寄るなっ!!!」
 最後の力を振り絞り放たれた慟哭が、嵐となってリンセを襲う。戦いの中彼を守り続けてきた光のオーラが音を立てて削られていくが、彼が足を止めることはない。
 だがそれでもあと数歩、数歩を残して前へと進む力が押し負ける。わずか2m、一歩踏み出すことができれば、すぐにでも埋まってしまう。そんな僅かな距離がどうしようもなく遠い。
 諦めが心をよぎった瞬間、聞き覚えのある歌声が耳に届いた。それはいつでも自分を支えてくれる心強い仲間、サヴァー・リェスの声。暖かく優しい許容と、人の心への確かな祈りに満ちた、少女に向けたメッセージ。
 声が生み出す白銀の蜃気楼は少女の慟哭と拮抗し、歌に込められた祈りは少女の頑なな心を優しく融かしていく。いつしか慟哭は嗚咽へと変わり、そよ風のようにリンセの頬を撫でていた。
 今一度、足を踏み出す。ずっと伸ばし続けていた手が、ようやく触れ合った。
「助かろう、ね。一緒に、生きよう」
 声から伝わる、どこまでも優しい思いが。握られた手から伝わる、忘れたはずのぬくもりが。
 記憶の奥底に沈む誰かと重なって。
 そうしてやっと、少女は逃げ続けてきた全てと向き合うことができた。

● カーテンコール
 全てが終わり、グリモア猟兵が事態の後処理に走り回るころ。
 リンセ・ノーチェと【Forklore】の面々、サヴァー・リェスとユーン・オルタンシアは、少女を連れ立って中庭の芝生に座っていた。自らが背負う罪とこれからを思う少女の顔は憂いに満ち、いまにも消え去ってしまいそうだ。
「私は、生きていても良いのかな?」
 そんな弱音がポツリと漏れる。
「それを決めるのはあなたです。ですが、あなたはまだお若い、進む道もこれから幾らでもあります。答えを出すには、まだまだ早すぎますよ」
 ユーンが言うそれは、必ずしも生き続ける理由とはならない。だが、少女はその言葉に含まれた励ましを確かに受け取った。
「そっか……」
 それでも不安は重く、少女の顔は俯きがちに地面に向かう。痛いほどの沈黙、苦しい程の暗闇。それを払えるのはきっと、言葉ではない。リンセは、片手を少女の手にそっと重ねた。
「僕の家族も、早くに死んでしまって。時々寂しくなったり悲しくなったりするときがあるんだ」
 互いの鼓動が静かに伝わり、少女は小さく頷く。
「そんな時は、空を見ることにしてる」
「空、を?」
「きっと空から見ていてくれるから。だから、空を見上げて、笑顔を見せるんだ」
 指さした先に暗闇はない。少女の前には、朝焼けに染まり始めた空がどこまでも広がっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月14日


挿絵イラスト