バトルオブフラワーズ⑪〜高機動門番ウインドゼファー
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風は待たぬ力だ。こなたからかなたへ、在ろうと望まば既に在る。
遠く、手の届かない果実にこの身を届け、遠く、手の届かない夢にこの身を届ける。
かくあるべく、ウィンドゼファーはこの場を駆けた。
駆け続けている。
「――私達は全てを手に入れる。誰にも、邪魔は、させないッ!」
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猟兵の皆様、こんにちは。日々の戦争行為、お疲れ様です。
そしてようこそ、最先端の戦場へ。日々の戦争行為は、しばらく続きます。
この度の戦場では、スピード怪人『ウインドゼファー』に対し、間断ない攻撃を仕掛けてください。ウインドゼファーは何度でも骸の海から蘇ってきますが、短期間のうちに許容量を超える回数倒すことで、その復活を不可能とすることができます。
この度の戦場においては、全猟兵が遵守すべき特殊ルールが存在します。よく読み、理解して、戦いに臨んでください。
敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。
ウィンドゼファーは、戦闘能力で猟兵を上回ります。
猟兵は、そのウィンドゼファーの戦闘能力を、余すところなく知っています。
悲観的に見れば、五分五分の戦いとなるでしょう。
それでもなお、と意気込む猟兵には、ええ、貴方のための戦端を開きましょう。
ここは勝利と敗北の坩堝(るつぼ)。
入り混じり融かし合うそれらは、いかなる景色を描くのか。
確かめることができるのは、内側にいる者だけなのです。
――では。
君島世界
こんにちは、はじめまして。
マスターの君島世界です。
今回は、純粋戦闘のシナリオです。風を操るスピード怪人『ウインドゼファー』に対し、いかに勝つかを考えてみてください。そうすれば、きっと何かが見えてくるはずです。
それでは、皆様のプレイングを心待ちにしております。
第1章 ボス戦
『スピード怪人『ウインドゼファー』』
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POW : フルスロットル・ゼファー
全身を【荒れ狂う暴風】で覆い、自身の【誰よりも速くなりたいという欲望】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : ソード・オブ・ダイアモード
対象の攻撃を軽減する【全タイヤ高速回転モード】に変身しつつ、【「嗤う竜巻」を放つ2本の車輪剣】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:藤本キシノ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
神埜・常盤
そよ風と云うより暴風だねェ、君は
掴めない物ほど手を伸ばしたくなるものだ、暫し遊んでくれ給え!
おや、面白い剣を持っているねェ
嗤う竜巻、と云う事は意志でも有るのかね
破魔を纏わせた符をそれらに投擲し弱体化狙い
見切りと第六感を活かして避けよう
剣の斬撃は可能なら、怪力で彼女の腕ごと受け止めるか
オーラ纏わせた符を盾状に展開して防御
上手く嵌ればカウンターで呪詛を与えよう
此方は無貌婦人の円舞曲で応戦、マヌカンに全力魔法の加護を与え
毒属性の鎧無視攻撃で痛みをくれてやる
――さァ、お前も踊れ、ゼファー
痛みは激痛体勢で堪え、体力が危うい時には
暗殺技能で不意打ちして彼女を吸血
さて、君のいのちは貴腐の酒より美味だろうか
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散。
直列多重展開した霊符の防御線は、その一音で千々に吹き飛んだ。
その最先端に、ウィンドゼファーはいたはずだ。見えているのは残像。
――後ろだねェ、きっと。
神埜・常盤(宵色ガイヤルド・f04783)は瞬発する。知覚は第六までフル稼働、それでようやく、利き手を後ろに振る程度の答えが導き出された。
前もって腕に巻きつけておいた霊符の盾。それらごと、嗤う竜巻が薙ぎ払った。
「遅いですね」
「そのようだ……が」
佇むウィンドゼファー。溢れる血に流れる痛みを、微笑みで噛み殺す常盤。
常盤は無事の手を掲げ、指先より外に走る赤い線を引き上げた。
「その力、しばしお借りするよ」
ドレスの婦人がすると立ち上がり、両の手にウィンドゼファーと同じ、車輪剣を構える。ユーベルコード、無貌婦人の円舞曲(マヌカンワルツ)。
「――さァ、お前も踊れ、ゼファー。僕に浪漫の舞踏を見せてくれ」
「そのお誘いはお断りしましょう。私には私の、夢がありますので」
す、とマネキンが仕掛けた。斜め回転からの車輪剣二重袈裟懸けを、ウィンドゼファーのタイヤが反らす。回って回って、二合三合、合いの手の火花が咲いた。
刹那の花壇には、常盤の仕掛けた毒が交じっている。それらはウィンドゼファーの装甲をすり抜け、確実にその体を蝕んでいった。
互角……いや、しかし。
ある時、マネキンの髪が抜けた。
白磁の肌にくすみが見えた。ビードロの瞳が、濁った。
ドレスのふくらみは痩せ、もはや、まとわりつくだけの古衣と化していた。
永遠の美女であるはずのマネキンが、見る間に衰えていく――。
き、ギ。
「寿命の尽きた人形とは、醜いものだなッ!」
軋むマネキンの首を、終に、ウィンドゼファーの双剣が刎ねた。くるくるとボールのごとく、豪奢な生首が無秩序に飛んでいく。
常盤はそれを、地に落ちる前に抱きとめた。
嗤う竜巻が、マネキンの残った躰を陵辱していく。
苦戦
🔵🔴🔴
ジュリア・ホワイト
とにかく速い強敵、やっかいだな…
会敵すると同時に、こちらはML106を発射するよ
無論敵のUC発動のほうが速いだろう、それを阻止するには至らない
でも、こちらも発射した後は回避と防御に専念できるんだ
竜巻を死ぬ気で避けながら距離を取るよ
ML106の弾は竜巻を迂回するよう誘導してウィンドゼファーを狙わせる
(【2回攻撃】【範囲攻撃】)
そうすれば相手は迎撃に手を使わざるを得ない
その隙にこちらのUC【線路開通、発射準備よし!】を起動
バトルフィールドをこちらの線路に塗り替えてあげよう
「これでやっと対等かな!さあ、真っ向勝負と行こう!」
君の車輪剣とボクの動輪剣、砕けるのはどちらかな…!
【アドリブ歓迎】
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トリガーを引く指が、まるで動きのそのままに、相手を招いたかのようだ。
ジュリア・ホワイト(白い蒸気と黒い鋼・f17335)の携行ロケットランチャー『ML106』のマズルフラッシュが、ウィンドゼファーの赤いマスクを照らし上げた。
「!」
ジュリアは両足の踏ん張りを解除。反動を背後に逃し、己も踵で跳ぶ。ウィンドゼファーの初撃は、首を狙うものであったらしい。運良く助かった。
「シ――」
続く二刀が、ガードの空いた腹に迫る。ぞく、と総毛立つジュリア。トリガーを、祈るように絞った。
シャガアアアァァァン!
ガラスの割れるような爆音を、嗤う竜巻が切り裂いて開いた。地面でのバウンドを二度、三度と繰り返したジュリアは、四度目で地に爪立てて姿勢制御。
下腹の温かく溢れる感覚を、無視する。そうしなければ――。
「あ・た・れえええええええっ!」
――狙いが、逸れる。
ML106の一発目は、ジュリアの思い通りに飛ぶ、念力誘導弾だ。ウィンドゼファーが残心に構えている、その死角を突けと、ジュリアは掲げた手を振った。
「(あの竜巻を、抜いてみせる!)」
4連装の残弾2発を、左右45度に掃射。続けて、魔法のように装填したもう4発のために、無我夢中で引き金を連弾した。
ジュリアの人差し指に、熱煙蒸気が上がる。その陽炎の向こうを、強く見定めて。
「仕掛けますか、猟兵」
ウィンドゼファーは、やおら背後に後ろ回し蹴りを飛ばす。するとその踵にある高速回転タイヤが、飛来していた誘導ミサイルを撃墜した。
それは練達の鞭さばきにも似て、次々と撃墜数を重ねていく。2発、3発。
4発目。ジュリアは異空間への扉を開く。
5発目。正面からのミサイルを、ウィンドゼファーは車輪剣で切り落とす。
6発目が落ち、ジュリアは最後の、遅延させた誘導ミサイルを、命中する寸前で遠隔爆破した。
爆炎を貫いて――鋼鉄の線路が走る。
「線路開通、発車準備よし!」
ウィンドゼファーは、将棋倒しのように上から降ってくる線路の蛇を、車輪のクッションで受け止めた。その駆動により、全身を堅く力ませたままに抜け出させる。
ごぉんと重い音立てて、ウィンドゼファーの正にすぐ横に、線路が敷設された。
ゆえに、形勢は冒頭と逆転する。
まばたきが落ちきるまでの、わずかな、ほんとうにわずかな時間――。
「真っ向、勝負だ!」
線路に乗ったジュリアの速度は、いまやウィンドゼファーに勝るとも劣らない。爪先に火花を散らして、オブリビオンへの元へと急ぐ。
ウィンドゼファーも、待つのは本意ではないと、同じくジュリアの元へと急いだ。
ジュリアは動輪剣を、ウィンドゼファーは車輪剣を。
両者構え、狙い、解き放ち、そして。
――ジュリアは、『切り抜けた』。
成功
🔵🔵🔴
佐倉・理仁
……その竜巻は、テメェより遅いモン全てに向けてかいね。誰より速く、置いてくものを嗤ってんのが、本心だろ。
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奴の攻撃は必殺だろうが感覚で追い切れる自信は無ぇ、勘で行く。『第六感』てとこか!
この際死ななけりゃ戦える。そういう手を持ってきた。
守るべきは、俺自身の意識、どーにもならん頭くらいだ!
防御する場所決めて『高速詠唱』の間を耐え切ってやるさ!
俺は比べるまでもなく遅いし、弱いだろーよ。
俺じゃ足元にも及ばん。俺だけ、ならな。
【死を振り払う神】(機械喉から下が無傷の「別物」への変化する)
ライフ。俺たちは全てのキズをさらう風。
「俺たち」なら、ゼファーの足元すくう事が、出来るはずだ!
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なお嗤う嗤う嗤う竜巻が立ち続ける戦場に、佐倉・理仁(死霊使い・f14517)は来た。噛み締めた奥歯の音は、彼の怒りと覚悟を表す。
「……その竜巻は、テメェより遅いモン全てに向けてかいね」
ウィンドゼファーは答えない。
「誰より速く、置いてくものを嗤ってんのが、本心だろ」
ウィンドゼファーは応えた。
両の車輪剣を切り閉じ、すると一条の嗤う竜巻が新生する。戦闘の残骸を撒き散らし、ゆえに軌道は清浄に澄んで、嗤い声が耳に届いた。
理仁は思考する。思考は行動に、詠唱に直結した。
高速の詠唱が、まるでいつもどおりの話し言葉だ。
それほどまでに加速した世界が、表出する――!
「今、この手は死さえも奪う奇跡を叶える」
迫る脅威。それを見ない。見てからの反応は、圧倒的に遅すぎるからだ。
「ライフ、俺たちは全てのキズをさらう風!」
嗤う竜巻。それを、聞かない。音は一瞬前の位置から響くからだ。
「そう、俺たちだ。俺じゃ足元にも及ばん。俺だけ、ならな」
ウィンドゼファーの挙動。それを、知覚の外で認知する。曰く第六感。自分でもそう名付ける他にない、理仁をして未だ説明のつけられていない感覚である。
「【俺たち】なら、ゼファーの足元を掬う事が、出来るはずだ!」
延髄のあたりに閃光が走った。その手応え。肩関節が軋む。
防御が成功した証拠だと、理仁は捉えた。流れる思考が証明する。未だ断たれず。
「…………」
ウィンドゼファーは、理仁から距離を取った。チリチリと頬に殺意が突き刺さる。
嗤う竜巻は、いつの間にか消えていた。仕切り直しということか。
敵と対峙する理仁の身体は、首から下が別物に成り代わっていた。
黒衣、異端の神。その顕現。
「私の、足元を。大きく出ましたね、猟兵」
「聞こえていたか。高速詠唱していたんだが」
「あの程度で【高速】を僭称するとは、私への挑戦と受け取ります」
ウィンドゼファーと理仁、双方がその場から消える。
追いつききれない感覚は、淡く輪郭だけの景色を描写しはじめた。
敵の右ハイキック……だろうか。理仁の左手首がそれをいなす。ウィンドゼファーの足首だった接触点は、いつの間にか踵の車輪になっていた。理仁は目を見張る。
重さはない。それが不気味だった。
理仁は突き放すべきと判断し、そのようにした。伸びた腕を、ウィンドゼファーの車輪が走る。肘を、肩を通り過ぎ、一気に反対側の指先まで。
ギャキキキィ!
――そういう音が、きっと鳴ったのだろう。
理仁の顔面に、ウィンドゼファーの膝が大回りにブチ込まれた。
視野がちかちかと点滅する。
苦戦
🔵🔴🔴
揺歌語・なびき
全ての勘を駆使し暴風をなるべく回避
足場を崩される寸前を狙って別の足場に飛び乗り敵のテンポを崩す
流しきれない攻撃は耐える
【第六感、野生の勘、激痛耐性】
拘束具を放って彼女の速さを少しでも落とす
叩き落されようが諦めてたまるか
射撃で銃弾を浴びせるのを囮に次々放つ
【呪詛、援護射撃】
一つでも縛りつければ急接近し終の道化
足場を崩される前に棘鞭を彼女の身体に突き刺し絶対に離れない
彼女の攻撃を受けようが全力で食らいつく
【目立たない、傷口をえぐる、串刺し】
この一撃、一撃が、おまえの敗北に近付くんだ
誰も追いつけない暴風がなんだ
一度でも緩めてしまえば、そこで終わりだろ
這いつくばってでもその腕へし折ってやる
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揺歌語・なびき(春怨・f02050)。彼の持つすべての勘が、ウィンドゼファーに対する接近戦の無謀を咎めていた。
わかっている、と発狂寸前の理性で、自分を捻じ曲げる。
「(わかっている。だから、死ぬとしても一番安全な場所を教えてほしい!)」
跳ぶ。飛ばない。軌道を高くすれば、そこを狙い撃ちにされる。
側頭を地面にこすりつけるような、異形の跳躍だ。少しでもバランスを崩せば、みじめに転倒し、何もかもが終わるだろう。
そうはなっていないことに感謝しながら、なびきは横っ跳びのまま銃を構えた。
「……なるほど」
初撃をかわされたウィンドゼファーは、敵の挙動に一瞬面食らったが、それこそが敵の狙いなのだと解釈した。自分の射程範囲ギリギリを、無秩序に移動していると。
なびきの銃が発射される。と同時に、彼は肘打ちを地面に突き刺し、肩の筋力で一気に減速した。頭頂、耳の間を、ウィンドゼファーの暴風が通り過ぎていく。
「(あっっっっっっ! ぶないよこれ! よくこんな動きできたね、おれ!)」
理性がそうおっとりとコメントを出している間にも、勘はとめどない移動を要求してくる。だからそうした。
――ここで間合いを詰めなさい。
素直に踏み出してから、その行動の異常さに、血の気が引く。
引いたところに、狂奔する熱血の波を寄せた。
「おおおおおオオオオオッ!」
懐、ワンインチの距離。手のひらの中の銃を押し付け、接射するなびき。
霞のように消えたウィンドゼファーを、追いすがり時計回り。すると視界の端に現れた敵が、掌をこちらに向けていた。
今更だ。こいつは何に気を取られていたのか。なびきは――否、なびきの裡に巣食うUDCが、敵の甘さを舐め取った。
ユーベルコード【終の道化】発動。人狼が嗤う。
「――っ!」
爪撃、一閃。
ウィンドゼファーの左掌が、なびきの棘鞭に串刺しにされた。回転のベクトルをそこで止めず、まるでダンスの誘いのように、彼女を回して下方向に絡め取る。
ぐるん。
なびきは、うつ伏せに引き倒したウィンドゼファーを、馬乗りになって閉じ込めた。暴れる動きを、一度目は膝のクッションで吸収する。
大きく身を反らしてから、ウィンドゼファーの後頭部に向けてハンマーパンチを叩きつけた。と同時に、両拳を支点に前転し、バックマウントを意図的に解除。敵の跳ね上げの動きを、空中へ無駄撃ちさせることに成功する。
「へし折れろォッ!」
無防備に跳ねた相手を、ローキックでしたたかに打ち据えた。衝撃が骨を揺らし、ならばヒビの一つでも入れてやることができたのだろう。
成功
🔵🔵🔴
天津・麻羅
他の猟兵達が攻撃を受けてピンチになっておる所に颯爽と現れ相手の注意を引くのじゃ。それで相手がユーベルコードを使うまで堂々しておく!全タイヤ高速回転モードになったら、
「タイヤを高速回転する事で攻撃を軽減するようじゃが…タイヤは縦回転しかせん!横からの攻撃には弱いはずじゃ、喰らえ!!」
と弱点を指摘して、如何にも弱点を攻撃すると見せかけて生まれながらの光でさっきまで攻撃を受けておった猟兵達を回復するのじゃ。相手は音速、こちらは光速、光が何らかの攻撃じゃと思うてくれれば良し。立ち直ったもの達が攻撃してくれると信じて。わしの冒険はここまでじゃ…残りのもの達に未来を委ねる……(ガク
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「ふふふ……苦戦しておるようじゃの! 猟兵!」
天津・麻羅(神・f16621)の一喝が、凛と響いた。腕を組み、直立不動の姿勢で、上の方からゆっくりと降りてきた彼女は、着地すると瞳を深く閉じ、不敵に見開いた。
「このわしが、全知全能の神が来たからには、もはや心配は不要じゃ。そして!
そこな好き勝手絶頂ぶっ飛びタイヤ女よ! 貴様の命もあとわずか。
――心せよ。お前の弱点、既に見切ったわ」
「なにを」
瞬足。引き摺った車輪剣の火花が、烈々ときらめいて消える。
「言うかと思えば」
その軌道が、麻羅の背後へと続いていた。
背の低い少女神に対し、ウィンドゼファーは、最も威力の出る一刀……縦斬りで、正中線を狙う。
一連の動きだ。一連の動きの中に、麻羅も己を組み込んでいた。
「聞きたいか?」
後ろに振り上げる肘打ちに、バックステップを合わせる麻羅。ウィンドゼファーにとっては、懐への飛び込みと打撃が同時に来たようなものだ。
満足な斬撃には至らず、しかし高速回転するタイヤで、麻羅の神衣を巻き込むようにして、打撃をずらした。
ぎゅるん!
麻羅の身体は弾かれ、天地逆になって中空へと飛ばされる。足場がないにもかかわらず、少女神はそこでも、腕組み仁王立ちの姿勢をとっていた。
「ならば聞かせよう。その防御の、構造的欠陥を」
「欠陥などありえません。担う私が、私である限り」
「おぬしの増上慢、説破してつかわす。よいか?
――おぬし、さすがに光よりは遅かろう」
ビシィ! と麻羅はウィンドゼファーを指さした。
その指先が、淡く光を放つ。
「そしてそのタイヤ。タイヤを高速回転する事で、攻撃を軽減するようじゃが……タイヤは、とどのつまり縦回転しかせん!
点の攻撃にはめっぽう強い。面の攻撃にも、それ自体を踏破する柔軟性がある。
じゃが、線の攻撃にはどうじゃ?
車輪の動き、もしくはそれ自体に対し、水平にではなく垂直に攻撃が当てられたのであれば、そしてそれが、【一瞬】のものであれば。
……と、ここまで言えば答えは明白じゃろう。おぬしは、わしには勝てんよ」
「理屈のように聞こえますが」
ウィンドゼファーは、臆すこと無く答える。
「タイヤの担い手は私です。光も、操る者の初動を見切ることは可能。
私の貴女の間にある戦力差は、理屈では埋められないッ!」
「ならば、神を試すか! よかろう――来い!」
言われるまでもなく、ウィンドゼファーは一足を踏み切った。麻羅の動きを見る。
左の人差し指を上、右の人差し指を右外に向けたあの構え。
十字に切るか、時間差で来るか。どちらにしても、対応は可能だ。
ウィンドゼファーは、車輪剣を十字に構える。あとは角度を変えるだけで良い。
宣言通り、麻羅の初動を見切るために、彼女の姿にのみ注目し。
麻羅は、己の腹づもりが正確に事を為したことに満足した。
ザシュッッ!
車輪剣が少女神の身体を貫き通す。その指は力なく曲がり、腕ごと垂れ落ちた。
「……ふ、ふふふ……。不遜者め、だーから見誤るのじゃ。
この慈愛の光が、おぬしに傷一つつけられるわけ、なかろうに……ごほっ」
血の塊を吐く麻羅。ウィンドゼファーは、ゆっくりと車輪剣を引き抜いた。
「謀りましたね」
「謀って、やったわ――がくり」
全身の力を失った麻羅は、その場に倒れ込む。
「敵の口車に乗せられるとは。私としたことが、どうにも青い」
自嘲するウィンドゼファーを、取り囲む者たちがいた。
それは、力及ばず斃れた者たちだ。
それは、力使い果たし動けなくなっていた者たちだ。
それは、力託され再起した、猟兵たちだ。
麻羅が使ったユーベルコードは、たった一つ。
全猟兵に対して放たれた、【生まれながらの光】!
大成功
🔵🔵🔵
雷田・龍子
◎SPD
ウインドゼファーが風を操るなら、私はそれを利用する。
受けるのではなく【見切り】、対象の力を利用し少しだけベクトルに変化を与え、いなす。
対象の力が強力であればあるほど効果がある。
受けてしまったダメージはアイテム【ドラゴンコイル】で攻撃力に変換する。
対象の先制攻撃に対処出来ても出来なくても構わずUC発動。
私に足場は関係ない。
私は雷を操る。
雷は暴風程度に負けない。
全身を帯電させる。
対象を【催眠術】にかけ惑わせようと試みる。
花の足場を【念動力】で操り、こちらの有利に働かせようと試みる。
対象の攻撃を【見切り】【カウンター】の【グラップル】から渾身のドラゴンスープレックスを試みる。
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――ひとつの、物理的真実として。
どれほど数値に差があろうとも、接触した2つのベクトルは必ず合成される。
もちろんこれは、こと戦いにおいては机上の企みだ。敵の力の方向を瞬時に見切り、ましてそれを利用するなどというのは、至難の技である。
雷田・龍子(人派ドラゴニアンの剣豪・f14251)は、それを実践してみせた。
「……ッ!」
龍子の破れたこめかみから血がにじむ。
垂直、否、わずかに外に傾けた手刀。それを分水嶺――分風嶺として、ウィンドゼファーの放つ暴風が、彼女を避けて通っていた。
完全に無傷とはいかない。気圧差で、皮膚や服など、龍子の薄いところからどんどん破れていく。それでも。
「直撃を免れるとは、大したものですが」
ウィンドゼファーは無感動に言った。暴風の第一陣を止める。龍子は呼吸を整えると、血の流れ込む片目をぴっと拭った。
「ベクトル操作で抗うのであれば、やりようは幾らでも」
「ならばかかってくるがいい。私は【ここにいる】ぞ」
半身の姿勢で構える龍子に、すると渦を巻く紫電の竜がまとわりつく。
龍子とウィンドゼファー。ぶつかりあう両者の視線を、放電のスパークが弾いた。
「せっ!」
ウィンドゼファーが先手を取る。第二陣の暴風は、龍子本人ではなく、その足元広範囲を崩した。
踏み込む脚を宙に突きこむ龍子の姿。それを見て、ウィンドゼファーは第三陣の暴風を彼女に叩きつける!
「どれだけいなそうと関係ありません。あなたを無限遠の彼方まで、吹き飛ばす!」
散らされた花の残骸が、一気に龍子を覆い隠す。一枚一枚の軽さが、重ねられ極大の重さとなって、彼女の動きを封じた。
「その花は手向けと受け取りなさい。彼方、世界の果てを見るあなたへの――」
「――とった」
「ッ! あ」
振り返る……ことはできない。羽交い締めにされている。
ウィンドゼファーは、手の届かない背後にこそ、龍子がいることを認識した。
「な、ぜ……ウッ!」
龍子は羽交い締めにした両の手をクラッチ、容赦なく締め付けを厳しくする。彼女の帯電がそのままウィンドゼファーに流れ込み、苦痛の声を挙げさせた。
「世界の果て。そんな【幻】でも見ていたのか、ウィンドゼファー」
「…………っ」
「続きは、骸の海で見てくるといい」
身を反らし、ゆっくりと――視界が縦に回る。
逆さになった天地が、ウィンドゼファーの脳天を衝いた。
成功
🔵🔵🔴