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バトルオブフラワーズ⑪〜嵐をもたらす者

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ #ウインドゼファー

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 猿を屠り、兎を蹴散らした猟兵たちに立ち塞がるは一陣の風。タイヤとハンドルを組み合わせたような奇妙な武装を携えて、第三の門番は猟兵を待ち受ける。その名はウインドゼファー。スピードの化身、風を操り嵐をもたらす者。
 大首領へと至るために――猟兵たちよ、嵐を超えていけ。

●グリモアベースにて
「はいはーいっ、みんな注目だよーっ」

 グリモアベースに集った猟兵たちに、マリアンネ・アーベントロート(ゼーブスタスの催眠術師・f00623)は手を叩いて呼びかける。

「まずはエイプモンキーにラビットバニー、立て続けの幹部怪人との戦闘お疲れ様っ。みんな疲れてると思うけど、もうひと頑張り……ふた頑張りぐらい? してもらう必要があるみたいっ。三人目の幹部、ウインドゼファーの登場だよっ」

 ウインドゼファーは風を操る力を持つ怪人であり、その身体はバイクめいた機械で構成されている。外見から想像できる通り、スピード自慢の怪人だ。外見からは性別が判断しづらいが、口調を見るにどうやら女性らしい。

「ウインドゼファーはこれまでの幹部みたいにとんでもない特殊能力を持ってるわけじゃないけれど、その分純粋に戦闘能力が高いみたい。そのスピードでみんながユーベルコードを使うよりも早く確実に先制攻撃をしてくるから、対策が必要だねっ」

 ウインドゼファーは絡め手などではなく、純粋な速さと力、そして風の猛威を武器に攻めてくる。ユーベルコードが間に合わない中で先制攻撃をどのように凌ぐか。エイプモンキーやラビットバニーとはまた性質の違う対応が求められると言える。
 もちろん、先制攻撃を凌いだからと言って安心はできない。適切な対応ができればバリアを無効化できたラビットバニーとは違い、ウインドゼファーの能力は先制攻撃を凌いでも健在だからだ。先制攻撃への対処だけに意識を割き過ぎると有効打は与えにくいかもしれない。対策と反撃、この二つが重要になるだろう。

「これまでの幹部と同じく強敵だけど、みんなならきっと大丈夫っ。みんなの力と知恵で、三番目の幹部もやっつけちゃおうっ。大切なのは発想力、だよっ」

 マリアンネは胸の前で両手をぎゅっと握りしめ、猟兵たちを鼓舞する。そして、転送が始まった。

「それじゃあみんな、いってらっしゃーいっ」

 どこかお気楽な声を聞きながら、猟兵たちは戦場へと降り立つのだった。


後ろにある
 はじめまして、後ろにあると申します。後ろに何があるのかご存知の方は教えてください。
 戦争も終盤戦となってきましたが、ここで正統派幹部の登場です。スピード怪人『ウインドゼファー』。バイクと合体するのではなく元からバイクっぽい要素を持った怪人のようです。

 今回のシナリオは1章のみで完結する戦争シナリオであり、以下のような特殊ルールがございます。特に、先制攻撃に関しましては対策がプレイングに記載されていないと、問答無用で失敗あるいは大失敗となる場合がございます。ご注意ください。

●先制攻撃
 敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
 この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。

●復活
 ウインドゼファーは1体しか存在しません。青丸がすべて貯まりきれば当シナリオに登場するウインドゼファーを撃破できますが、戦場「⑪スピード怪人『ウインドゼファー』」を完全に制圧するまでは撃破しても躯の海より復活します。

●戦場の制圧と⑬『ドン・フリーダム』」への影響
 戦場「⑪スピード怪人『ウインドゼファー』」の戦力「40」をゼロにできれば制圧成功ですが、それ以上の成功数があった場合、上回った成功数の半分だけ、「⑬『ドン・フリーダム』」の戦力を減らせます。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『スピード怪人『ウインドゼファー』』

POW   :    フルスロットル・ゼファー
全身を【荒れ狂う暴風】で覆い、自身の【誰よりも速くなりたいという欲望】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    ソード・オブ・ダイアモード
対象の攻撃を軽減する【全タイヤ高速回転モード】に変身しつつ、【「嗤う竜巻」を放つ2本の車輪剣】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:藤本キシノ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シャルロット・クリスティア
速い上に風の防壁……!
相性の良い相手とは言い難いですが……やるしかないですね!

初手で地形はまず破壊されるでしょうし、アンカーショットで手近な足場……この際、花でも瓦礫でも何でもいいです。
そのあたりの【地形を利用】して次々跳び移っていくように足場を確保。
風の直撃を極力避けるため、出来るだけ距離は取って戦いたいですね。

反撃は弓を使いましょう。
私の【視力】と【スナイパー】としての腕前なら、動きを追う程度はできるとは思いますが……問題は相手の風ですね。
なので、足止めの【時間稼ぎ】の為の通常射撃に紛れ、【目立たない】ように天高く矢を放ち、相手の頭上から落とす。
台風の『目』……そこなら風は無いでしょう!



 システム・フラワーズ内部にて。シャルロット・クリスティア(ファントム・バレット・f00330)はウインドゼファーと対峙する。その額には、一筋の汗がつたっていた。弓使いとスピード自慢の風使い。これほど相性の悪い組み合わせもなかなかないだろう。放つ矢は風に遮られ、そのまま相手は即座に近接戦闘に持ち込むこともできる。しかし、それを踏まえた上でシャルロットは戦場に立っている。

「貴女が猟兵の先陣ですか。いえ、誰が相手であろうと……誰にも、邪魔は、させないッ!」

 ウインドゼファーはシャルロットを一瞥すると、その力――進化する暴風を解き放った。刹那、ウインドゼファーの周囲の花畑が地面ごと砕け、ひび割れ、花弁が吹き飛ばされていく。完全な無差別全方位広範囲攻撃。地形すら破壊する嵐が自身に直撃すれば……シャルロットの脳裏を、冗談ではない想像が駆け抜ける。故にシャルロットは即座に動いた。全方位を攻撃する技であれば、それを回避する手段は射程範囲外への離脱一択だ。シャルロットが構えたのは弓ではなくアンカーショット。すでにここに来るまでにアンカーを引っ掛けられるポイントは把握してある。アンカーを放ち、巻取り、また放ち……おそらく数十メートルはあるであろう射程から逃れるために、シャルロットは後方へと翔ぶ。

「くっ、うぅう……ッ!」

 しかし、だ。暴風の速度はアンカーショットの離脱速度を上回っていた。暴風に追いつかれたシャルロットの身体は、大きく弾かれて花畑を転がることとなる。

 (負傷は……軽くはない、ですか。しかし直撃ではない。……なら、戦える)

 体勢を立て直しつつシャルロットは自身の状態を確認する。後方へと飛んで距離を取ったこと、事前に地形を把握し利用したことが功を奏し、シャルロットへのダメージは大幅に削減されていた。五体があり、武器があり、策もある。ならば、とシャルロットは弓を構えた。

 暴風の命中を確認をして追撃をかけようとしていたウインドゼファーは、シャルロットが構えた弓を見て思案する。スピードを活かして相手に接近してもいいが、相手の弓の技量が不明だ。自身のスピードを捉えるほどの相手であれば、相手が放った矢に自分から突っ込む形になりかねない。そうなれば、自身のスピードと矢の飛来速度が合わさって、より深く自らの身体に刺さるだろう。であれば、こうだ。
 
「弓矢ですか……吹き飛ばすことなど、造作もない!」

 ウインドゼファーが取った選択肢は風の防壁。竜巻や台風のようにウインドゼファーの周囲360度を覆った風は、シャルロットの放つ矢の尽くを絡め取り明後日の方向へと吹き飛ばしてしまう。しかし、それはシャルロットの想定通りだった。
 ウインドゼファーの周囲に風の防壁がある以上、ウインドゼファーの視界はその風に遮られることとなる。ましてや戦場は花畑。吹きすさぶ暴風に飛ばされた大量の花びらは、ウインドゼファーの視界を奪うに足るものだった。故に、シャルロットの仕込みは気取られることなく完遂される。
 風は移ろうもの。その風量は一定ではなく、そして吹き方には法則がある。流れがあり、強弱があり、凪があり、そして――目がある。ウインドゼファーが自身の周囲を取り巻くように風の防壁を生み出したのであれば、必然その上方は台風の目のごとく、突破口となる――!

 「――グッ!? な、に……!?」

 上方より飛来しウインドゼファーの肩を穿ったのは、無論シャルロットの矢だ。シャルロットは風の防壁を張らせて矢を連射することでウインドゼファーを足止めしつつ、風の弱まる一点――すなわち台風の目に相当する部分である上方よりの曲射を織り交ぜたのだ。目と言えども完全に無風ではないため頭部への射撃は叶わなかったが……シャルロットは見事、その一射をウインドゼファーの元へと届かせた。

「上手く行ってくれたようですね。そろそろ潮時でしょうか」

 着弾を確認してからのシャルロットの判断は早かった。策により矢を届かせたとはいえ、同じ方法では二度目はないだろう。元より相性の良い相手とは言い難い以上、欲を張るのは禁物だ。ましてや相手はスピード自慢。撤退を選べるタイミングなどそうそうあるものではない。後方、手近な物体にアンカーショットを射出して、シャルロットは高速で戦場を離脱した。その胸に、確かな戦果を携えて。

成功 🔵​🔵​🔴​

蒼焔・赫煌
真っ向勝負!
コイツは燃えるね、燃えるとも!
でもでも、可愛いボクは負けないさ! だって正義の味方だからね!

どんなに速くても接近戦を仕掛けてきた時なら攻撃を当てるチャンスはあるはずさ!
相手が動いたのと同時に【蒼き焔は煌めくように】で全身を覆って防御体勢!
合わせて【ブルーブラッドアーツ】にも血をたっぷり吸わせて強度向上!
暴風を纏っているなら飛んでくる方角は音とかで大体分かるはず……!
その方向を【見切り】、【赫く煌めく焔のように】で生成した盾で【盾受け】!
ダメージを受けるのは【覚悟】の上!
【気合い】で耐えたら、動きが止まったとこに【捨て身の一撃】からの【カウンター】!


【アドリブ、他の方との絡みも歓迎】



 花嵐吹き荒れるシステム・フラワーズ中枢に蒼焔・赫煌(ブレイズオブヒロイック・f00749)は降り立った。花びらが風に吹かれて舞い踊る様子は実に絵になるものだったが、生憎とそちらを楽しむような余裕はなかった。

「なるほど、次は貴女が相手というわけですか」

 花畑の只中にウインドゼファーは立っていた。先のシャルロットとの交戦で手傷こそ負っているが、未だその力は、意志は衰えていない。 

「そうとも! さぁさぁ、真っ向勝負の時間だよ! そしてボクは負けやしない! だって可愛い上に正義の味方だからね!」

 そんな風の化身を前にして、赫煌はまるで臆することもなく賑やかに宣言する。それはある意味では正義の味方の理想と言ってもいい、堂々たる姿。自信に満ち溢れ、迷うことなき瞳で、赫煌はウインドゼファーを見据える。

「威勢のいいことです。貴女のような人は嫌いではありませんが……生憎、こちらも負けるつもりはありません。私はウインドゼファー、スピードの怪人であるがゆえに!」

 ふっ……と、ウインドゼファーが纏う雰囲気が幾分か和らいだ。しかし、それは一瞬のこと。ウインドゼファーの言葉に導かれるように、気ままに吹いていた風がウインドゼファーの周囲に収束していく。集まり、重なり、その暴威を増していく。そして荒れ狂う狂風を纏ったウインドゼファーの姿が、かき消える。

(消えっ……!?)

 赫煌がそれを知覚したときには、既にその身体は宙を舞っていた。暴風を纏う予備動作の間に展開した三重の武装、三重の護りをもってしても完全には防ぎきれぬ、音速を遥かに超えた神速の一撃。それは、覚悟や気合ではどうにもならない衝撃として赫煌の身体を駆け抜けた。後方に吹き飛ばされ、転がる赫煌。
 三重の防御は確かに効果を発揮していた。直撃ならばとっくに意識を失っていただろう一撃に対しても意識を繋ぎ止めるほどに。それでも、ウインドゼファーの動きを止めてカウンターを実現させるほど完全に防ぎきるためには、大樹の根がごとき盤石の支えか、あるいは卓越した防御の技量が必要だった。それらがなければ、ダメージを抑えられても激突の衝撃で弾き飛ばされるのが道理というもの。

「くっ、ううっ……!」

 よろよろと赫煌は立ち上がる。その瞳には未だ確かな戦意が宿っている。しかし、その一方で赫煌の冷静な部分は理解していた。攻撃を防ぐために武装に吸わせた血液と生命力。受けたダメージ。自身の燃費の悪さ。どう勘案しても、余力があるとは言えない。赫煌は撤退を選択する。それは赫煌にとっては苦渋の決断で。それでも、守ることと、犬死することは違うとわかっていたから。

「――退きましたか」

 撤退する赫煌の後ろ姿を、ウインドゼファーは見つめていた。その気になれば、ウインドゼファーは追撃をかけることもできただろう。――状態が、万全だったなら。
 ウインドゼファーは自らの右肩から腕にかけてを見やる。そこには、酷く抉られたような傷が広がっていた。
 突撃の際、ウインドゼファーが選択したのは振るうタイミングを合わせる必要がある武器での攻撃ではなく、単純な体当たりだった。神速をもってして身体をぶつけたウインドゼファーの身体に突き刺さったのは、赫煌が発現させた骨鎧。名を粉骨再刃ガシャドクロという。
 ウインドゼファーの攻撃は猟兵のユーベルコードの発動に先んじる。ゆえに赫煌はガシャドクロを展開し待ち構えることこそ叶わなかったが――体当たりがヒットしたその瞬間に、発動させることはできた。それは赫煌の覚悟が為せる技だっただろうか。
 故に、ウインドゼファーが赫煌にぶつけた範囲、右肩から前腕にかけての尽くに、展開された刃が突き刺さることとなる。

 「負けやしない、ですか。ええ、確かに。貴女は負けなかった。私に損傷を与え、自らは生還を果たした。それを敗北と呼ぶほど、私は傲慢ではない」

 ウインドゼファーは思う。ここまでに交戦した猟兵は退けた。しかし、討ち果たすことは叶わず、こちらには少なくない手傷を負わされている。今ならエイプモンキーとラビットバニーが破れた理由が、真の意味で理解できる。
 ウインドゼファーは猟兵の実力を理解し、認識を新たにし――その戦意を猛らせる。強敵であるからこそ、私のスピードでその先を行く価値がある。

 そして、戦いは中盤戦へと移っていく。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ナミル・タグイール

幹部なのにおふざけ要素がないにゃ!まともにゃ!
追いかけてもスピードでは勝てそうにないし、相手を迎え撃つ感じで戦うにゃ。
思いっきり突進されたら避けきれないにゃ!
相手の姿勢とか見ながら【野生の勘】で来るタイミングを予想して致命傷だけは喰らわないように頑張るにゃ。
ガードと回避で手一杯の振り…というか手一杯になりそうだけど余裕なさそうにして油断させたいにゃ。
近づいた時に【捨て身の一撃】で【幸運を呼ぶ黄金の爪】をカリっとカウンター狙いにゃ。
爪が掠るだけでも効果があるから当てれそうと感じたときは防御捨てて突貫にゃ!
【呪詛】いっぱいの素敵な爪にゃ。きっとイイ事が起こるマスにゃ!



「幹部なのにおふざけ要素がないにゃ! まともにゃ!」
「……まあ、あの二人と比べたら私はまともでしょうね」

 相対するやいなや驚愕するナミル・タグイール(呪飾獣・f00003)に、ウインドゼファーはため息をつきながら答えた。たしかにあの二人と比べればウインドゼファーは正統派とも言えるだろう。

「しかし、まともだからと言って油断はなさらぬよう。私も油断はしませんので」
「当然にゃ! 色物でも強かった幹部がまともならその脅威はまさにマタタビ級にゃ!」

 言われるまでもない。これまでに二人の幹部と戦っているナミルはその強さをよく理解している。それと同格が相手なのだから、油断などできようはずもない。全身の毛が逆立ち、まさに臨戦態勢といった様相でウインドゼファーの出方を伺う。

「貴女たちは強い。だからこそ、私はその先を行く! 全身全霊のスピードで!」

荒れ狂う暴風を纏い始めるウインドゼファーを見据え、ナミルは今一度覚悟を決めた。狙うのはカウンター。回避やガードで手一杯な振りをして相手の油断を誘うのは難しいかもしれないが、どうせ振りなどしなくとも手一杯になるのだ。やることに変わりはない。戦闘不能だけは避け続け、隙を見て爪での一撃を見舞う。幾度攻撃を凌げば隙が生まれるか……いや、数などどうでもいい。何度だって凌いでやる。猫の勘は鋭いのだ。

「ッ!」

 ウインドゼファーの姿がかき消えるとほぼ同時に初撃が襲い来る。勘に突き動かされて交差させた両腕でそれを受けたナミルの身体を衝撃が駆け抜ける。ガードの上からでもここまで響くとは。だが、凌いだ。
 ナミルは二つの幸運に恵まれていた。一つはウインドゼファーのユーベルコードに認識能力を向上させる効果がないことだ。高速移動しながら精密な攻撃を加えることは不可能であり、小回りも効かない。ゆえにその攻撃は大雑把かつ直線的なものに限定され、勘によって対処がしやすくなる。そしてもう一つは、これまでの猟兵の奮戦だ。彼女らによって与えられたダメージは、確実にウインドゼファーの戦闘力を削いでいた。さらには一度受けたカウンターへの警戒が、タックル等の大威力攻撃ではなく掌打などの小技によるヒットアンドアウェイをウインドゼファーに選択させていた。

 後方からの二撃目を横っ飛びで躱し、着地を狙う三撃目は身体を丸めてガードする。四撃、五撃、六撃……徐々に蓄積していくダメージの中で、それでもナミルは好機を待った。
 七撃目。足元を掬うように放たれたスライディングをナミルは跳躍で間一髪躱し……そしてウインドゼファーが纏う暴風によって体勢を崩される。

 急停止をかけてナミルの状況を視認したウインドゼファーは。
 なんとか体勢を立て直さんともがくナミルは。
 勝負を決めるべく、この瞬間に賭けた。

「「今こそ、好機(にゃ)!」」

 八撃目。突進したウインドゼファーの正拳が未だ空中にあるナミルの腹部に突き刺さる。ガードはない。吹き飛ばされ、ナミルは地面を転がった。

「ぐ、おおおおおおおおっ!?」

 しかして苦悶の声をあげたのは、正拳による一撃を決めたはずのウインドゼファーだ。見れば、身体の随所から火花と煙が上がっている。これまでの戦闘の蓄積ダメージと高速移動による各パーツの消耗によるオーバーヒート。ああ、それがこのタイミングで起こるとは、なんて不運なのだろうか。この戦闘で負った傷など皆無……いや、正拳を放った際に腕をかすった、小さなひっかき傷だけだというのに。

「ふふ、してやったりにゃ……」

 ふらつきながらも、ナミルは苦しむウインドゼファーを見て不敵に笑う。最後の交錯の瞬間、ここでウインドゼファーが決めに来ると直感したナミルは防御を捨てた。防御を捨てて、ただ勘の導くままに手を伸ばした。伸ばした爪先は飛び込んできたウインドゼファーの腕部にかすり、そして目論見は達成される。
 幸運を呼ぶ黄金の爪。あまりにも濃密な呪詛が込められたその爪は、たしかにナミルに幸運をもたらした。ウインドゼファーへの理不尽な不運という、幸運を。だが、真にその幸運を呼び込んだのはナミルの行動があってこそだ。勘による予測と防御を捨てる捨て身の覚悟。そのどちらか一方でも欠けていたらその爪は空を切っていただろう。
 かくして幸運の黒猫は目的を達した。呼び込んだ幸運はナミル自身だけではなく、後続に続く猟兵たちにもきっと作用するに違いない。

成功 🔵​🔵​🔴​

黒天・夜久
高速移動と暴風による飛び道具への防御能力ですか……。近づくのにも一苦労しそうですね。

宇宙バイク・アトラタスに乗り、花の足場に接しそうなくらいの高さを飛行状態で走って真正面からフルスロットルで突撃します。暴風による攻撃には【オーラ防御】を風を受け流すような形に展開して対応。車体がブレた場合は、【操縦】【運転】で対応します。
風によって花びらが舞い上がったタイミングで【迷彩】を使用し、花びらに紛れて至近距離まで接近。ユーベルコードを使用します。
おそらく迎撃がくるので、そちらはブラックウィドウに薙刀を持たせて【武器受け】で対処します。
攻撃を仕掛けた後はそのままフルスロットルで離脱します。



 花弁を巻き上げながら、黒天・夜久(ふらり漂う黒海月・f16951)が駆る宇宙バイク・アトラタスはその速度を上げていた。黒き弾丸と化したマシンは、先程聞こえた戦闘音の出処に向かって一直線に突き進む。

(……捉えた)

 その速度が最高速に達したとき、夜久は挑むべき敵の姿を捕捉した。幹部、ウインドゼファーは武装を杖代わりにし立ち上がろうとしていた。その身体の各所に損傷が見られる。先に交戦した猟兵が上手くやったのだろう。ならば、自分も同じように上手くやるだけだ。
 異音に気付き顔をあげたウインドゼファーと夜久の視線が交錯する。ウインドゼファーの目はどこか笑っているようにも感じられた。私に正面からスピードで向かってくるとは、面白い。そう言っているかのようだ。片膝をついた体勢のまま、ウインドゼファーは腕を横薙ぎに振るった。瞬間、周囲の花畑がひび割れる。地形すら粉砕する暴風の領域に、夜久は迷うこと無く突っ込んだ。
 がくん、と大きく車体が揺れる。暴風が幾度となく夜久とアトラタスを襲い、しかしそれでも彼らはウインドゼファーへと突き進む。彼らを包むように展開されたオーラは暴風を受け流し、その衝撃を最小限に押さえていた。仮に正面から受け止める形で防御していたならば、間違いなく夜久はクラッシュしていただろう。地面スレスレを駆けるアトラタスは破壊された地形の影響を受けることもなく、ウインドゼファーとの距離を詰めていく。
 突破される。そう判断したウインドゼファーの行動は迅速だった。武装を構え、タイミングを見計らう。それは奇しくも、これまでウインドゼファーは猟兵たちに苦汁を舐めさせられていたカウンターの構えだった。
 4。夜久のバイクが暴風の領域を突破し躍り出る。
 3。その首を刈り取らんと、ウインドゼファーが横薙ぎに武装を振るう。
 2。花弁が舞い上がり、夜久の姿を覆い隠す。
 1。ウインドゼファーの斬撃が空を切る。
 0。その首筋に、何者かが牙を立てた。

 何者か。無論、その下手人は夜久であり――ウインドゼファーの首筋に食らいついたのは、夜久の腕先が変じた大蛇の頭だった。
 交錯の瞬間、夜久は花弁を巻き上げながらドリフトを行った。巻き上げられた花弁はウインドゼファーの視界を覆い、その瞬間に夜久はアトラタスの光学迷彩を発動させる。それによりウインドゼファーは敵を見失い、夜久はドリフトにより減速しながら姿勢を下げて致命の一撃の下をくぐり抜ける。まんまとウインドゼファーの背後に回った夜久は右腕を蛇へと変じさせ、無防備な首筋へと襲いかかったのだ。
 生命力を吸われていく不快な感覚に耐え、ウインドゼファーはなんとか背後に向けて武器を振るった。しかし、そこにすでに夜久の姿はなく。バイクに乗り、戦場を離脱する後ろ姿のみが見えた。生命力を奪われた身体は鉛のように重く、それは追跡が不可能なことを示していた。
 幹部たる自分が、完全に手球に取られた。その事実にウインドゼファーは歯噛みするしかなかった。

 フルスロットルで戦場を離脱しながら、夜久は後方を確認する。追ってくる気配はない。

「ふぅ、上手くいきましたね」

 死線を越えたという実感が、今更ながらに湧いてくる。アトラタスのボディを見れば、そこには細かな傷が大量に刻まれていた。酷使してしまったこの相棒も、労ってやるべきかもしれない。
 暴風などではない爽やかな風を受けながら、夜久は仲間の元へと帰還していく。舞い踊る花弁が、その戦果を祝福しているかのようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

忍足・鈴女
だーりん(f03956)瑞樹殿(f03860)と連携
(アドリブ可)

庇う担当のだーりんの後ろに立って
被害を少なく…その際にむにゅんとか
【誘惑】しながらだーりんを【鼓舞】
んふふ、元気でたやろ?
んじゃ頑張ってや

敵の先制攻撃を緩和する為に
瑞樹殿に教えて貰った方向に
【拠点防御】の様に張り巡らせた糸を
ユーベルコードで操作し網のように展開し
【盾受け】で衝撃を和らげる
だーりんが吹っ飛びそうやったら【怪力】で背中を支える

敵の先制攻撃をだーりんが受け止めた後は
糸を【ロープワーク】で縒り合わせて切れん様にした縄で
敵をええ感じに拘束してだーりんの攻撃のアシストや
(拘束方法はお任せ)


鈴原・瑞樹
コロッサスさん(f03956)、鈴女さん(f03727)と一緒に行動します。

「すごい強い相手ですけど、みんなで立てた作戦通りに出来れば勝てないことはないはずです」
私は【第六感】を使って敵が攻撃しようとしている味方を予測して、コロッサスさんが攻撃を防ぎやすいようにコロッサスさんに伝えます。
その際、私自身が敵の注意を引かないようになるべくみんなより先にユーベルコードを使わないように気を付けながら、【生まれながらの光】でみんなをサポートします。
基本は敵の攻撃を一人で防ぐ役のコロッサスさんの回復に専念ですけど、他の人に攻撃がいきそうな予感がしたら、ダメージを受けた人をまとめて回復していきます。


コロッサス・ロードス
鈴女(f03727)瑞樹(f03860)と連携

●先制対策
回避は捨て、大盾[不退転]を構えて守りを固め『武器受け、盾受け、オーラ防御、見切り』を駆使して致命傷を防ぐ
また『かばう』事で仲間の被害を抑える

●反撃
仲間の支援を受けて反撃を目論む
下準備として『鎧砕き』で地面を穿ち、生じた亀裂に『怪力』を以て剣を深く突き立てて即席の杭にし、それを利用して暴風に抗する

武器を使えぬ状況を作り油断を誘いつつ、攻撃に耐えながら高速の敵に『カウンター』を仕掛ける機会を計る
そして、敵が肉薄してきた所に相討ち『覚悟』の『捨て身の一撃』【黎明の剣】を放つ

「この世界の未来は我らの剣で切り開く。悪しき風よ、蒼穹の彼方に散れ!」



 満身創痍。今のウインドゼファーの状態を示すのに、これほど適切な言葉もないだろう。随所から煙を噴き出し、呪詛に蝕まれ生命力を奪われた身体は鉛のように重い。しかし、それでもウインドゼファーは立っていた。それは幹部としての矜持の為せる技か。ウインドゼファーが見据える先には猟兵の姿。決着は、近い。


 盾を構え、偉丈夫はウインドゼファーの挙動を警戒する。敵は神速の持ち主。一瞬でも気を抜いたらそこを突かれるという確信がコロッサス・ロードス(金剛神将・f03956)にはあった。視線は一切動かさず、背に立つ二人の仲間に声をかける。
 
「俺の後ろから離れるなよ。護り切れると断言できなくなる」
「つまり、ぴったりくっついてたら守ってくれはるんやろ? 安心してや、うちがだーりんから離れるなんてありえへんよ」
「は、はいっ。なるべく目立たないように……頑張ります」

 忍足・鈴女(最終猫型暗殺兵器・f03727)はけらけらと笑うとコロッサスの背中に身体を押し付け、鈴原・瑞樹(オラトリオの聖者・f03860)は戦闘の予感に身体を強張らせた。

「ふっ、賑やかなことです。――行きますよ」

 微笑むウインドゼファーの周囲に暴風が巻き起こる。風の流れが変わる。コロッサスは数瞬後に到来するであろう衝撃に備え、盾を構える前腕に力を込めた。
 
「来ます、正面!」
「応ッ!」
「任せてや!」

 第六感でウインドゼファーの動きを感じ取った瑞樹の指示が飛ぶ。コロッサスは前方へと全ての意識を集中させ、鈴女はウインドゼファーの速度を減じさせるべく糸を展開せんと試みる。しかし、ユーベルコードによる糸の操作よりも早く、ウインドゼファーは一陣の疾風となって三人の元へと到来した。直後、盾に走る鋭い衝撃。コロッサスの技量をもってしてもなお後退させられそうになる身体を、鈴女が怪力でもって押し止める。再び風を纏い疾駆するウインドゼファー。指示を飛ばす瑞樹。だーりんを支える鈴女。その大盾でもって攻撃を受け切るコロッサス。それが、幾度となく繰り返された。

「……私の攻撃をここまでを完璧に受けきったのは、貴方たちがはじめてです」

 幾度もの攻防を経てウインドゼファーは感嘆の声を漏らす。高速の一撃を真っ向から受け止めるその防御力。眼前の猟兵たちは、まさに要塞とも言うべき堅牢さでもってウインドゼファーを押し留めていた。

「当然や、うちとだーりんと瑞樹殿、三人揃えば怖いものなんてありはしまへん」
「ならば、一人欠ければその強靭さは瓦解する、ということですね」

 鈴女の言葉に、ウインドゼファーは不敵に返した。瞬間、ウインドゼファーは後方に距離を取った。その身体の全てのタイヤが高速回転を始め、呼応するように二振りの車輪拳が唸りをあげる。そうして放たれたのは嗤うかのごとき異音を奏でる竜巻だった。大きく迂回するように猟兵たちに迫りくる竜巻と、正面にて再度暴風を纏い始めるウインドゼファー。コロッサスは直感する。これは、二方向からの同時攻撃だと。

「どれだけ貴方たちが強靭だろうと、守り手は一人のみ。この攻撃、捌き切れますか?」

 迫る竜巻。かき消えるウインドゼファー。コロッサスは、鈴女は、瑞樹は。三者三様の覚悟を決めて、それに相対する。
 竜巻が炸裂し、金属音が周囲に響き渡った。

「なる、ほど」
「……我、金剛不壊の穂先也」

 ウインドゼファーは呟いた。その拳は、狙い通りにコロッサスの胸部に撃ち込まれていた。口から血を滴らせながら、それでも――偉丈夫は未だ健在なり。
攻撃の瞬間、コロッサスは覚悟を決めていた。三人に危害が及ぶ竜巻と、一人を狙う突進。どちらにどのように対処するかなど、決まっている。竜巻を大盾でもって受け、突進は自身の身体を盾とし防ぎ切る。盾を構えながらも地面に撃ち込んだ巨剣を楔として、鈴女の支えを力として。コロッサスはウインドゼファーの双撃を、双方共に受けきった。
 攻撃の瞬間、鈴女は覚悟を決めていた。だーりんの考えることなど予想がつく。身を削るに等しいその行為を、鈴女は全力でサポートすると決めていた。敵の先制攻撃にこそ間に合わなかったが、糸の展開はすべて完了している。ウインドゼファーが同時攻撃を狙うのなら、それを阻害する。ウインドゼファーが突進してくる方向に展開した糸に意識を集中させ、ウインドゼファーの速度を減じさせる。ゆえに、ウインドゼファーの攻撃にはほんの僅かなズレが生まれた。同時でないのなら、間違いなくだーりんは両方を捌き切る。鈴女は信じ、ただ支えた。
 攻撃の瞬間、瑞希は覚悟を決めていた。自分が為すべきことを為すために。恩人が必ず傷つくことを予期して、それでもその先で彼を癒やすために。攻撃の瞬間には何もできない自分を、何かをしたいと願う自分を諌めて、瑞希はその瞬間を待った。……そして、ああ。彼はやってのけたのだ。なら次は自分の番だと、瑞希は祈りを込めた。
 聖なる光が、傷ついたコロッサスの身体を癒やす。その身に活力を取り戻させる。回復の代償に疲労した瑞希が崩れ落ちる音を聞き、鈴女の糸によって抜け目なく拘束されたウインドゼファーを見て、コロッサスは内心で二人に感謝を捧げた。地面に撃ち込んだ剣を引き抜き、大上段に構える。ウインドゼファーと視線が交錯した。
 黎明の剣が振り下ろされる。焔を纏い、輝きを放つ神剣がウインドゼファーの身体を両断する。それは、決着の一撃と相成った。

 倒れた瑞希を丁重に抱えあげ、コロッサスは戦場を後にする。その後ろを、鈴女が自分も抱き上げてほしいとねだりながら続いた。
 暴風は止み、システム・フラワーズにはしばしの平穏が取り戻される。三人が、否、ウインドゼファーに挑んだ全ての猟兵が掴み取った、紛れもない勝利の証だった。そして戦争は最終局面へと突入していく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年05月25日


挿絵イラスト