バトルオブフラワーズ⑪〜疾風の征く先~
●疾風は斯く語りて
――システム・フラワーズにて。
モンキーに続きバニーまでとは、驚きました。
でも、私の役目は門番。
ドン・フリーダムがシステム・フラワーズを取り戻すまでの時間稼ぎならば、私の『風を操るユーベルコード』でも、決してあの二人にひけは取りません。
かつて、ドン・フリーダムが開放した『無限大の欲望(リビドー)』は、人類を怪人化させ、滅亡へと導いた。だけど今なら、オブリビオンとして蘇った私達なら、無限大の欲望も喰らい尽くせるはず。
私達は全てを手に入れる。誰にも、邪魔は、させないッ!
そう語るウインドゼファーは二振りの車輪剣を構え、猟兵たちを迎え撃つ。
●希望の西風と絶望の暴風
「――ということで、次の戦いじゃ!」
システムフラワーズへと至る第二の関門、ラビットバニーの撃破後。
次なる第三の関門へと向かう時だと告げた鴛海・エチカ(ユークリッド・f02721)は猟兵たちに真剣な眼差しを向ける。
「これまでの敵と違ってウインドゼファーは小細工を行って来ぬようじゃ。つまりは真っ向勝負。純粋な力の見せ所となるわけじゃの」
転送先は都市を模した広場めいた開けた場所。
其処に居るウインドゼファーと対峙し、倒すことが今回の目的となる。
されど彼女を倒したとて何度でも骸の海から蘇る。
だが、短期間に許容値を超えるほどの撃破を繰り返せば、復活は不可能となるようだ。
「ウインドゼファー……彼女は『風を操る能力』で戦うようじゃのう。必ず先制攻撃を行われる動きにどう対応するか、そして受け切ったとてどのように対処するかが肝心じゃ」
相手は強敵。
しかし、これまでの戦いを勝ち抜けてきた猟兵たちならばきっとこの先にも進めるだろう。そしてエチカは指先をびしりと向け、声高に宣言する。
「なあに、心配はいらぬ。彼の者が荒れ狂う疾き暴風となるのならば、対する我らはやさいき希望の西風となれば良い!」
さすれば勝利の路は拓けるはず。
そう信じたエチカは信頼の宿った瞳に仲間を映した。
犬塚ひなこ
こちらは戦争フラグメントの一章のみのシナリオとなります。
スピード怪人『ウインドゼファー』との真っ向勝負です。皆様の活躍をめいっぱい格好良く書かせて頂きたいと思っております。
また、こちらはゼファーに因んでスピード執筆&早期完結予定です。
描写は必ずしも先着順ではありませんが、成功(または失敗)に達成した時点でシナリオを終了させていただきたいと思っておりますのでご了承ください。
●!重要!
敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。
プレイングには必ず【先制攻撃の対応法】と【その後の攻撃方法】を明記してください。そのふたつが書かれていなかった場合、その方の行動は失敗判定となりますのでご注意ください。
システム上でユーベルコードを設定していない場合、プレイングに記載したものとは違うユーベルコードを活性してしまっている場合は採用見送りとさせていただきます。
●撃破について
敵は同時に一体しか存在しませんが、何度でも骸の海から蘇ります。
ですが、短期間に許容値を超える回数分倒されれば、復活は不可能になります。
戦場の戦力「40」をゼロにできれば制圧成功です。
しかしそれ以上の成功数があった場合、上回った成功数の半分だけ「⑬『ドン・フリーダム』」の戦力を減らせます。
第1章 ボス戦
『スピード怪人『ウインドゼファー』』
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POW : フルスロットル・ゼファー
全身を【荒れ狂う暴風】で覆い、自身の【誰よりも速くなりたいという欲望】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : ソード・オブ・ダイアモード
対象の攻撃を軽減する【全タイヤ高速回転モード】に変身しつつ、【「嗤う竜巻」を放つ2本の車輪剣】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:藤本キシノ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ジュリア・ホワイト
敵UCの特性…速くなりたい欲望?
ならば問おう
「すごい速さだね、君は!君は自分より早い者に出会ったことは在るのかな?」
「君は今でも圧倒的に速い…少なくとも今この場で一番速い」
「しかし数を頼む猟兵を全て退けるには至らない!速さだけでなく分裂能力でも鍛えるべきだったね!」
狙うのは敵の速度に対する欲望を削ぐこと
別の欲望に意識を逸らせば戦闘力強化は小幅になる
問いかけをし終わるまでは回避と防御に専念して戦闘不能にならないことが最優先だ
そして反撃は
【そして、果てなき疾走の果てに】
敵の近接攻撃にカウンターする形で、自分の足元に結界を召喚
移動を制限するこの結界に囚われたが最後、飛翔能力があっても逃げられないよ!
●そして、果てなき疾走の果てに
早く、速く、疾く。
荒れ狂う暴風がウインドゼファーの身を覆い、周囲の花を激しく散らす。
戦いの場に降り立ったジュリア・ホワイト(白い蒸気と黒い鋼・f17335)は、その矛先が己に向けられているのだと察して、即座に身構えた。
旧式とは云えどジュリアとて蒸気機関車のヤドリガミである身。
速さとは無縁ではなく、走ることへの志は強い。
そして相手もまた誰よりも速くなりたいと求むる者。
その圧倒的な力にどう相対するか、ジュリアが思い立ったのは――そう、速度に対する欲望を削ぐこと。
「時間稼ぎといえど、私は手を抜きませんッ!」
決意を言葉にしたウインドゼファーは疾走る。だが、ジュリアとてこのまま一閃をただ受ける気はない。
「すごい速さだね、君は! 君は自分より早い者に出会ったことは在るのかな?」
問いかけながら相手と渡り合うように戦場を駆ける。
すぐに追いつかれてしまうことは分かっている。されど、ひととしての形を得ている今、紡ぐ言葉こそ力になる。
「君は今でも圧倒的に速い……少なくとも今この場で一番速い」
敵に語りかけるジュリアに向け、素早いダイアモードの一閃が振り下ろされた。
鋭い衝撃が走り、痛みは暴風のように身体を蝕む。されどジュリアはそれに耐え、ウインドゼファーへと言い放った。
「しかし数を頼む猟兵を全て退けるには至らない! 速さだけでなく分裂能力でも鍛えるべきだったね!」
「何ですって……?」
一瞬だけウインドゼファーが否定交じりの疑問を浮かべた。
速度ではない、別の欲望に意識を逸らせば戦闘力強化は多少防げる。其処に反撃の機があると読んだジュリアは激痛を堪え、己の力を顕現させた。
「――さあ、列車が通過するよ! 線路内への立ち入りはご遠慮願おうか!」
敵へと向け、召喚されたのは相手の移動を制限する踏切結界。
太陽のように明るく、されど好戦的な橙の瞳がウインドゼファーに向けられる。強化した速さを封じられた敵は車輪剣でそれを迎え撃とうと構えた。
だが、それすら通過してみせる。
そう決めたジュリアは本体の蒸気機関車となって全力で吶喊した。
疾く、それでいて重く。
それはまさに果てなき疾走の果てへと敵を蹴散らすが如き攻撃。ウインドゼファーは受けきれぬと判断したのか咄嗟に頭上に跳ぶことで避けようとした。
されど蒸気機関の車体はそれを逃さぬように宙を舞う。
まるでそれは空に続く視えぬレールを辿るかのように、真っ直ぐで――真正面から敵を貫いた一閃は標的に大きな痛みを与えた。
そして、即座に敵との距離をあけたジュリアはその眼差しを怪人に向ける。此方も痛みは大きいが、この世界を守るためにも押し負けるわけにはいかない。
「まだまだだよ。時間稼ぎにもならないくらい、速攻で倒してみせるよ!」
言葉にした決意は強く、高らかに戦場に響き渡った。
成功
🔵🔵🔴
花畑・花束
おお…速そうだねえ。…。速いんだったね。
システム・フラワーズ内部なら《ハッキング》が通用するはずだ。先制攻撃に対してグラフィック周辺のプログラムを書き換えよう。
そっちのぼくはハリボテだよ。微妙にアスペクト比がちがうよ。
うまくやりすごせたら反撃といこう。【電脳花輪】、リリーベル。
花園に花頭の鳥って、絶妙に見えづらいんじゃないかな。
これも一種の《地形の利用》だね。
全員攻撃に回すよ。
ぼくは《ハッキング》を続けて彼の動きを牽制したいところ。
そうだねえ…やっぱりシステム・フラワーズそのものに働きかけてみるのが良さそうかな。電脳迷彩をかけるにしても、おとりを作るにしても。
め めっちゃ疲れるけどね…!
●疾風電脳戦
一陣の風が戦場に吹き抜けた。
それは本当の風ではない。先んじて転送された猟兵が怪人と渡り合う、その動きが風圧へと変わって走り抜けていったもの。
「おお……速そうだねえ。……。速いんだったね」
花畑・花束(デジタルブーケ・f14692)は目ですら追えぬ攻防に思わず呆気にとられそうになる。だが、はっとした彼は意識を集中させる。
とても大きな、世界まるごとを制御するものだとしてもシステムはシステム。
システム・フラワーズ内部ならばハッキングも比較的容易だと考えた花束は己の持てる限りの力を発揮し、周辺の環境へと手を加えようと試みる。
だが、ウインドゼファーが花束の動きに気が付いた。
「何やら小細工を行っているようですが、その前に薙ぎ倒します」
覚悟を、と告げた敵は花束に意識を向け、手にした車輪剣を振りあげる。その速さはまさに風の如く、一瞬で彼の目の前に刃付きのタイヤが迫った。
刹那。
白衣ごと花束の身が貫かれ、白い布地が辺りに散った。白と透明の身体はその場で掻き消えるようにして、薄れ――。
「何ですか、今のは。まるで手応えが無……しまったッ!」
ウインドゼファーは花束が跡形もなく消えてしまったことに疑問を覚えた。だが、すぐにその理由に気が付いて顔を上げる。
されど時既に遅し。
「そっちのぼくはハリボテだよ。微妙にアスペクト比がちがうよ」
花束がハッキング能力を駆使して作り上げたのは偽物の自分。グラフィック周辺のプログラムは書き換えられており、敵が貫いたのは幻だったということだ。
ひやひやしたけどね、と内心の思いを言葉にした花束。
彼は既に反撃に移っていた。
偽のグラフィックが貫かれていた間に召喚していたのは花頭をした白い鳩の群。
リリーベルの名を冠した鳩たちはウインドゼファーの死角へと回り込んでおり、あとひといきで相手を貫かんとするところまで迫っていた。
「喰らって堪るものですか。此方には速さが――」
対する相手もそれらを避けようとして身を翻す。だが、一切の容赦なく舞い飛ぶ鳩は次々とウインドゼファーへと突撃していった。
何体かは車輪剣で弾かれたが、白鳩の嘴は幾度も敵を貫く。
「甘いね、これも一種の地形の利用だよ。敵は全方位にありってね」
花鳩たちは吶喊した一撃や蹴散らされた一閃で消滅していく儚いものだが、花束は次々と新たな情報生命体を創り出してゆく。
それに、戦っているのは自分だけではない。
花束は己の力を最大限に使い、共に戦う仲間の援護をしようと決めた。
「そうだねえ……やっぱりシステム・フラワーズそのものに働きかけられれば……」
星をひとつ包むほどのプログラムだ。
電脳迷彩に囮、そして目の前の敵を斃すための力。きっとそれを使うにはかなりの分析とハッキングが必要だろう。
それでも、先程できたように次も必ず利用してみせると心に決めた。
「め めっちゃ疲れるけどね……!」
言葉通りに既に疲弊し始めているが、花束は気を強く持つ。
相手が物理的な疾さを誇るのならば自分は頭脳と思考の回る速さで勝負するだけ。まだ終わらぬ戦いを見据え、花束は揺らがぬ決意を懐いた。
大成功
🔵🔵🔵
バル・マスケレード
クソッ、足場ごと吹き飛ばすたァでたらめな風だな!
だが、花の足場は俺らが足場にできるぐらい丈夫な花。
だったら、バラバラになった足場も相応の質量があるハズだ。
【ロープワーク】を駆使し、舞い飛ぶ花の足場に得物である伸縮自在の棘を巻きつけ
高く遠く、暴風の勢いが届かないトコまでいったん避難だ。
敵の攻撃をやり過ごしたらUCを発動して、徹底的に気配を薄める。
無数に舞い飛ぶ花びら……
木の葉隠れならぬ、花隠れの術と洒落込もうじゃねェか。
風の音に紛れ、飛び散る花々の間を棘で縫い飛び、
奴の死角に入った瞬間が好機。
棘をゼファーへと伸ばし、引き戻して急接近。
勢いをつけ、【暗殺】技術を活かしたナイフの一撃をくれてやる!
●風に花、月に棘
転移の先、降り立ったのは都市めいた場所。
周囲の風景はこの世界によく似た外観へと変えられている。だが、その実は幾重にも折り重なった花の足場である。
「新たな敵が現れましたか。ですが、これ以上好きにはさせません」
「チッ、こっちに来やがる!」
バル・マスケレード(エンドブリンガー・f10010)が転送されたことに逸早く気付いたウインドゼファーが暴風を巻き起こす。
それはどうあっても抗えぬ一閃。何故ならば攻撃はバルそのものではなく、彼が立っている地面へと向けられたからだ。
「クソッ、足場ごと吹き飛ばすたァでたらめな風だな!」
散る花弁が崩れるということは立つ場所がなくなるということだ。
足元をすくわれた身体が急激に落下し、奈落の底へと落ちていくような感覚に陥る。されどバルは慌てることなく腕を伸ばし、頭上に棘を解き放った。
その狙いは舞う花弁を新たな足場にすること。暴風によって散るものとはいえど花の足場は自分たちが立てていたほどに丈夫なものだ。
絡みついた久遠の棘は伸縮し、花弁とバルの身体が一気に近付く。その力を利用したバルは次々と花を蹴って上空近くまで跳んでいった。
「ここまで来りゃなんとか……!」
高く遠く、勢いのままに辿り着いたところに暴風は届いていない。
棘を駆使したとは云え、宿主の身体に少しばかり無理をさせたかもしれない。僅かに息が上がっている様子にバルは気付いていたが、このまま此処で高みの見物をしているわけにもいかない。
「相手が速いってんならこっちも即刻勝負を付けるだけだ。……行くぜ」
静かに呟いたバルは己の力を発動させる。
それは忍の極意――霧影。
気配を極限まで薄めたバルは花弁を蹴り、一気に跳躍した。ウインドゼファーは暴風を巻き起こしながらも別の猟兵と相対している。
おそらく、先程の足場を崩した時点でバルを排除できたと感じたのだろう。
それならばそれで好都合だとしてバルは敵との距離を縮めてゆく。
無数に舞い飛ぶ花は妙に幻想的に視える。ふ、と笑ったような仕草をみせたバルは短剣を強く握った。
「木の葉隠れならぬ、花隠れの術と洒落込もうじゃねェか」
風の音に紛れ、飛び散る花々の間を棘で縫い飛ぶ。
敵は此方に気が付いたようだがすぐさま花を利用して死角に入る。その瞬間こそが好機。棘をゼファーへと伸ばしたバルはひといきにそれを引き戻す。
そして、急接近からの一閃。
「さっきのお返しだ、喰らっとけ」
「く……!」
三日月型に弧を描く月の魔力を宿した刃が煌めき、標的の胸を貫いた。
鋭い衝撃を与えられたが、相手は未だ戦う力を失っていない。滲む敵意を感じたバルは即座に距離を取り、ウインドゼファーの動きに意識を向けた。
やはり一筋縄ではいかない。
されどまだ戦い続ける意志を抱き、バルは凶々しき荊棘を周囲に張り巡らせた。
捉えて、逃さない。まるでそう告げるかのように――。
成功
🔵🔵🔴
オブシダン・ソード
へえ、変わった剣だね
どっちが鋭いか、勝負してみようよお姉さん
嗤う竜巻にはある程度ダメージを覚悟
ちょっとずたずたにされるくらいなら御の字じゃない?
オーラ防御、炎属性の壁で対抗しながら竜巻に分け入って、中心部をUCで捌いて斬り抜ける!
剣の本質は願いを断つこと
ふふふ、奇遇だね。僕も『笑う剣』なんだ
……さて、先制は終わりかな? 追いついたよ、ウインドゼファー
後は竜巻のでがかりにUCを重ねられるよう意識して、炎の魔法と剣術を駆使して攻撃
それでも僕は剣士としてはそんな強くないからね、圧倒されてしまうのだろうけど
それなら
君と《手を繋いで》、剣を一太刀止めてみせよう
あとはざっくりいってあげる
隙あり、ってね
●嗤う刃と笑う剣
幾つもの花欠片が舞い、風が奔る。
戦場の空気から、誰よりも疾く、と願う思いが伝わって来た気がした。
転移の力で戦場に降り立ったオブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)は猟兵と交戦する怪人に目を向ける。
強き願いの主はウインドゼファー。彼の者は疾風の名を持つもの。
彼女が振るう力にも興味をひかれるが、オブシダンが目を留めたのはその手に握られた二振りの得物。
「へえ、変わった剣だね」
軽い口調で語りかければ、ウインドゼファーが此方に意識を向ける。両者とも目元はフードや装備に隠れて視えないが、視線が交差したように思えた。
オブシダンは己を示すかのように鞘から剣を抜き、その切っ先を差し向ける。
「どっちが鋭いか、勝負してみようよお姉さん」
「面白い。私の疾さに挑むのならば容赦はしません」
対するウインドゼファーは車輪剣を構え、地面を強く蹴り上げた。同時に彼女の肩の車輪が回り、踵の輪までもが駆動音を響かせて奔る。
その疾さは捉えきれぬほど。
だが、オブシダンは敢えて真正面からそれを受けると決めた。されどただ待つだけではなく、その身に宿る魔力は紡いだ防御壁に回されている。
迫る車輪剣。廻る炎の護り。
「『嗤う剣』の一閃よ、竜巻となれ」
ソード・オブ・ダイアモードに呼び掛けたウインドゼファーの声が暴風と共に鋭く響いた。竜巻は刃の如くオブシダンへと襲いかかり、炎の防護を掻き消す。
次の瞬間には鋭利な痛みが彼の身を貫いた。
黒の外套が切り裂かれ、その身体に大きな衝撃が駆け巡る。だが、オブシダンの剣――彼自身の刃は竜巻の一部を相殺していた。
炎属性の防護が風で掻き消される中で彼は竜巻へと自ら割り入り、その刃で以て威力を削ぎ落としていたのだ。それゆえに痛みは大きいが膝をつくほどではない。少しずたずたにされるくらいで済んだのだから御の字。
オブシダンは風の残滓を振り落とすように黒曜石の刃を軽く振った。圧倒されそうにもなったがそれでこそ強敵。
嘲笑うかのように轟いた竜巻の音を思い返し、オブシダンは笑ってみせる。
「ふふふ、奇遇だね。僕も『笑う剣』なんだ」
「その笑み、油断ならぬと読みました。ですが誰にも――邪魔は、させないッ!」
ウインドゼファーが強く言い放ち、次なる一手を打ち込んで来ようと狙う。されどオブシダンは揺らぐことなく、その裡から溢れる願いに思いを向けていた。
そう、剣の本質は願いを断つこと。
その希いがこの世界を壊すものだというのならば。
「追いついたよ、ウインドゼファー。残念だけど――」
君の願いは届かない。
一気に反撃に入ったオブシダンの口許が笑みを形作る。次の瞬間、黒曜石の刃が鈍く煌めいた。まるでそれは嘗ての剣の主の一太刀をなぞっているかのように鋭く、真っ直ぐに振るわれる。
そして――振り上げた笑う剣と嗤う剣が重なり、両者は鍔迫り合う。
ウインドゼファーのダイアモード。オブシダンの刃。刃同士がぶつかる鋭い音が響き渡った刹那。
「隙あり、ってね」
一瞬の好機を掴み取ったオブシダンは敵の手から剣を弾き飛ばした。
疾さは敵に軍配が上がる。だが、剣としての鋭さは彼が勝ち取った。そのことを証明するかの如く、嗤う剣の片割れが真二つに折れた。
成功
🔵🔵🔴
玖・珂
無限大の欲望を喰らう、全てを手に入れるか
喰らい尽くしたところで、私には欲望に支配された儘にみえるがな
此のまま絶望の風を吹かせるわけにはゆかぬ
その野望、阻ませて貰うぞ
第六感も駆使し、挙動から攻撃の軌道や狙いを予測
車輪剣を長杖で受け流す、または弾き返そう
早業で補っても避け切れぬ衝撃は激痛耐性で凌ぐぞ
翠の花を咲かせて得た軽減も役に立つだろう
竜巻には高速詠唱した全力魔法で異なる回転の風を呼び相殺を狙う
完全に消せずとも風圧が弱まれば好機
渦巻く風を縫いダッシュで接敵し
怪力のせた2回攻撃の突きで其の武器ごと鎧砕きしてやろう
風は、過去に留まり未来を閉じ込める檻ではない
希望を運び、自由に駆けるものだ
●希望と欲望の狭間に
無限大の欲望。
そう表わされる力はこの世界の人類を滅亡に導いたという。
戦場に降り立ち、舞う花を見つめた玖・珂(モノトーン・f07438)はオブリビオンとなって蘇った者たちを思う。
「無限大の欲望を喰らう、全てを手に入れるか」
それは罪深きもの。
珂は首を横に振り、己の考えを言葉へと変えた。
「たとえ喰らい尽くしたところで、私には欲望に支配された儘にみえるがな」
此のまま絶望の風を吹かせるわけにはいかない。
「その野望、阻ませて貰うぞ」
珂は地を蹴り、戦陣に加わった。既に幾名もの猟兵がウインドゼファーと刃を交えていたようだ。その証にこの戦場の敵が持っていた嗤う剣、ダイアモードの片割れは真二つに折られていた。
されどウインドゼファーは片腕の車輪剣を構え、珂を見据える姿勢を取る。
「幾ら来ようとも、私の暴風はすべてを蹴散らすッ!」
恐ろしいほどの速度で駆けた敵の狙いは珂に向けられていた。眸を相手に差し向ければ、其処に翠色の花が咲く。
途端に羽雲が白き長杖へと変じ、振り下ろされる刃を受け止めるべく掲げられた。
車輪剣から嗤う声のような轟音を響かせる竜巻が迸る。しかし、珂は流れるように白杖を振るい、可能な限りそれを受け流した。
「其れが欲望を喰らう風か」
珂は疾き詠唱から全力の風を紡ぎ返し、迸る竜巻とは逆の回転を加えた。それによって衝撃は幾分か相殺できたようだ。
それでも幾重もの暴風がその身に襲いかかり、痛みを与える。
珂は身体に走る激痛に耐え、衝撃を内で押し殺した。咲かせた翠花の力もあり、普通に受ければ膝をついてしまうほどの一閃は凌げた。
短く息を吐いた珂は渦巻く風を縫い、強く地面を蹴りあげる。
敵から齎された風圧が弱まった今こそが好機。勢いに乗せて振り上げた得物で以て、狙い定めるのはウインドゼファーの胸元。
其処には別の者が齎した切り傷が見て取れた。敵は其処を狙われまいと残った剣を構えて防御するが、それもまた別の好機を呼ぶものだ。
己の持てる限りの力を乗せた突きでただ一点を貫く。その一閃はダイアモードの剣を見る間に砕き、破片が辺りに飛び散った。
地に刃が落ちる最中、珂はウインドゼファーに目を向ける。
未だ敵は戦意を失っていない。だが、珂は過去の残滓でしかないそれを滅ぼすのだと決め、静かに、それでいて強く言い放った。
「――風は、過去に留まり未来を閉じ込める檻ではない」
●西風の往く先
荒れ狂う暴風が戦場を駆け抜けた。
車輪剣の刃を折られ、胸を貫かれようともウインドゼファーは未だ其処に立っていた。誰よりも速くなりたいという欲望が彼女を突き動かしているのだろう。
「そろそろ終わりにしよう。どうあっても逃がさないよ!」
敵を見据えたジュリアはふたたび力を紡ぐ。
自分の足元に結界を召喚し、ウインドゼファーの動きを捉えた彼女は其処に全力を籠めた。たとえ敵が荒れ狂う暴風を纏い飛翔したとてもう遅い。
敵の動きを鈍らせるジュリアの力に重ねる形で花束も花鳩を飛ばした。
「疲れてなんかいられないね。ここで決めよう……!」
刹那、白い翼が風に舞う。
抵抗するウインドゼファーの暴風によって鳩たちは散るが、敵の意識が其方に向けられていることこそが花束の狙い。
仲間の意図に気付いたオブシダンとバルは其々敵の左右に回り込んだ。
「あとはざっくりいってあげる」
「最後の一撃だ。余すことなくくれてやる!」
黒曜の刃と月めいた刃。それらを振り下ろした彼らの描く軌跡は交差し、ウインドゼファーの身を深く抉った。
珂は傾いだ敵を眼差しでしかと捉え、羽雲と共に駆ける。
よろめいたウインドゼファーはせめてもの反撃として風を操り、ジュリアや珂へと鋭い一閃を放った。だが、彼女たちは果敢に痛みに耐える。
翠の花が揺れ、珂は大きく腕を振るいあげた。
其れが欲望の風であるならば、自分は紡ぐ新たな風ですべてを吹き飛ばそう。
何故なら、西風とは――。
「希望を運び、自由に駆けるものだ」
珂から解き放たれた静かな風はオブリビオンを貫き、戦いの終わりを導いた。
「……さて、まずは一回目かな」
オブシダンは自身である剣を下ろし、骸の海に還ってゆく怪人を見つめた。
一度倒したとて彼女はまた蘇ってくることを皆知っている。
珂は戦いで傷ついた身体をそっと擦り、バルもいつの間にか風で切り裂かれていたフードに触れて肩を竦めた。
花束も、もうくたくただと言ってその場にぺたんと座り込んだ。勝利は掴めたがみな無事とは云えず、大きな痛みと疲弊が身体に残っている。
それほどに敵は強大で脅威。
それでも、と掌を握り締めたジュリアは顔をあげた。
「暴風も嵐もいつか止むよ。きっと……ううん、絶対に!」
この世界を巻き込む騒乱の花嵐は必ずこの手で止めてみせる。
猟兵たちがそれぞれに胸に懐いた決意は強く、風に舞う花に向けられた眸はこの先の戦いへの思いを映していた。
大成功
🔵🔵🔵