バトルオブフラワーズ⑪~西風の女神は疾く駆け抜ける
●疾風の怪人
システム・フラワーズ中枢を目指し、猟兵たちは第一の番人、第二の番人を突破した。
グリモア猟兵は最初にそう告げた。
「しかし、ドン・フリーダムへとたどり着くには、まだ最後の関門が残っています」
白金・伶奈(プラチナの先導者・f05249)は集まっている猟兵たちへ最後の門番について語り始めた。
「倒さねばならない第3の敵はスピード怪人『ウインドゼファー』です」
ある意味でこれまでの幹部の中で一番楽な相手かもしれない。
なぜなら、マニアックな理論やエモい演出などを求められたりはしないからだ。
ただ風を操るだけの怪人。それがウインドゼファーだった。
「ある意味では、もっとも厄介な敵とも言えます。風を操るという普通の能力で、これまでの2体と比肩する実力を発揮できるということですから」
エイプモンキーの『想像力の及ぶ限りなんでも創造できる』能力。
ラビットバニーの『絶対無敵バリア』。
それに匹敵する風操作能力というのがどれ程のものなのか……。
「とりあえずわかっているのは、これまで同様花咲き乱れる空間にウインドゼファーが潜んでいるということです」
花は固まって足場となるが、その先はウインドゼファーにしかつながらない。そこはこれまでの戦いと同様だ。
「敵は赤い仮面をつけて、弾帯を体に巻きつけています。そして、両手には刃のついた車輪剣を持っているようです」
わかりにくいが、性別は女性だ。
戦闘になれば体を荒れ狂う暴風で包んで戦闘能力を強化した上、高速で飛翔する能力まで得る。
また、周囲を無差別攻撃する暴風で、花の足場ごと猟兵たちを排除することもできるようだ。
身につけたタイヤを高速回転させて攻撃を軽減しつつ、車輪剣から嗤う竜巻を放つこともできる。
「皆様の動きに合わせて、ウインドゼファーはこのどれかをしかけてきます」
風使いらしく反応速度は早い。先手を取ることは不可能だと考えていいだろう。
「しかけられた攻撃に対処する方法を考えておかなければ、なにもできないまま倒されてもおかしくありません」
まず守る方法を考え、それから速度にすぐれるウインドゼファーに攻撃を当てる方法も考えておかねばならない。
「これもこれまでの2体と同様ですが、ウインドゼファーは一度倒しただけで完全に倒すことはできません。『骸の海』から即座によみがえり、エリア内の別の場所で出現します」
しかし、復活が無限でないこともこれまでと同じだ。短期間にその能力を超える回数撃破すれば、彼女はもう蘇ることはできなくなる。
「彼女さえ倒せば、中枢にたどり着くことができます。猟兵の皆様の力で、どうかこの強大な風を打ち破ってください」
キマイラフューチャーに災厄をもたらすウインドゼファーの風を消せるのは、猟兵たちだけなのだ。
青葉桂都
おはようございます、青葉桂都(あおば・けいと)です。
今回は怪人軍団の幹部、スピード怪人『ウインドゼファー』を撃破していただきます。
●シナリオについて
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「バトルオブフラワーズ」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
このシナリオの戦場は『⑪スピード怪人『ウインドゼファー』』になります。
●先制攻撃について
敵は必ず先制攻撃します。
敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。
ただ、ウインドゼファーは強敵です。
先制攻撃対策だけでなく、攻撃を当てる方法も考えておかなければ苦戦する可能性も十分にあるとお考えください。
●ウインドゼファーの撃破について
青丸が規定以上たまれば、シナリオが成功になり、ウインドゼファーを撃破できます。
ただし、この戦場の戦力が残っている限り、ウインドゼファーは即座にエリア内の別の場所に復活します。
なお、シナリオが失敗に終わっても、ウインドゼファーは回復して態勢を立て直すため、別の場所に移動してしまうとお考えください。
●ドン・フリーダム戦への影響について
この戦場の戦力がゼロになれば制圧は成功したことになります。
ただし、戦力を上回る成功があった場合、その半分だけドン・フリーダムの戦力が減少します。
戦力以上にウインドゼファーを撃破しても無駄にはなりませんので、できるだけ多くのシナリオを成功させていただけますようお願いいたします。
それでは、ご参加いただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。
第1章 ボス戦
『スピード怪人『ウインドゼファー』』
|
POW : フルスロットル・ゼファー
全身を【荒れ狂う暴風】で覆い、自身の【誰よりも速くなりたいという欲望】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : ソード・オブ・ダイアモード
対象の攻撃を軽減する【全タイヤ高速回転モード】に変身しつつ、【「嗤う竜巻」を放つ2本の車輪剣】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:藤本キシノ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アルトリンデ・エーデルシュタイン
天への祈りが私の心を鼓舞する限り。決して諦めはしません。
竜巻も車輪剣も可能な限り斧槍で打ち払い、聖剣で斬り弾きます。
防げない攻撃は聖鎧の纏うオーラ防御の力で減衰を。
防御をしながら自分の足元に【聖光示すは神苑の階】で聖域を敷いていきます。
初撃には間に合わずとも、重ね続ければその加護は増すはず。ならば一撃で倒されないよう意識して守りを固め、聖域を重ねていきましょう。
あの回転するタイヤには剣や槍は通りにくいでしょうね。ならば聖域の加護を乗せた【聖光示すは神苑の階】の聖光で討つのみです。
どこか一つでもタイヤの駆動にダメージを入れられれば良し、たとえダメージだけでも与えられれば次につなげられるはずです。
●聖なる光は風を切り裂く
花咲き乱れる空間を進む猟兵の行く手に、仮面の怪人が見えてきた。
「おりましたわね、スピード怪人!」
アルトリンデ・エーデルシュタイン(神なき祈り・f00243)は聖別された銀の斧槍を掲げて足を速める。
咲き乱れる花が舞う中、金色の長い髪と、斧槍に結んだ白い旗がなびく。
「……来ましたね」
腕を組んで立っていたウインドゼファーが両手の車輪剣を構えた。
「天への祈りが私の心を鼓舞する限り。決して諦めはしません」
「ならば、その祈りを私の風が吹き散らしましょう」
吹き付けてきた風に、アルトリンデの前進がわずかの間、阻まれる。
その間に、両手の車輪剣の先端についたタイヤが激しく回転し始めた。
……いや、それだけでなくウインドゼファーの体を装着されたいくつものタイヤや、さらには身を守る位置に出現したタイヤが回転を始める。
「言っておきますが、そのグレイブを振るう機会を与えるつもりはありません」
まだ遠い間合いであるにも関わらず、アルトリンデに向かってウインドゼファーが車輪剣を素早く薙いだ。
耳障りな嗤い声がダンピールの少女へとまず届いた。
その嗤い声は、車輪剣によって産み出された竜巻が風を引き裂く音だ。
もう片方の手に祝福を受けた聖銀のバスタードソードを抜いて、アルトリンデは竜巻を受け止めようとする。
「この程度の逆風で、止まるつもりはありません」
祈りを捧げながら両手の刃を振り下ろす。
神を見失って、それでもなお捧げる祈りは少女へと敵に立ち向かう力を与えてくれる。
竜巻のうち1つを刃がかき消した。
けれど、両手で放った竜巻は2条ある。
聖鎧『デュナメイス』にオーラを込めて守りを固めようとするが、竜巻はオーラすら吹き飛ばして少女をその場に釘付けにした。
「天よ光を与えたまえ。我らが闇に惑わぬよう、神の庭へと至る道を照らしたまえ」
聖なる光が、祈りと共にウインドゼファーへと飛んだ。
だが、竜巻はその光をたやすく打ち砕く。
それでもアルトリンデはくじけない。痛みすらともなう激しい風を全身に浴びながら、光を放ち続ける。
「いくらやっても無駄です。その光が私に届くことはありませんよ」
「いいえ。諦めなければ、必ず道は開けます」
ウインドゼファーの言葉にそう応じて、アルトリンデは1歩を踏み出した。
「……なに?」
「この地はすでに聖域。その竜巻に対抗する力は、すでに私のうちにあります」
聖なる光は、敵に命中せずとも彼女に力を与える聖域を作り出しているのだ。
光によって刻んだ聖印が、あたかもオブリビオンへといたる階段のごとくつながっていた。
聖域によって力を得た少女は、今度こそ前進する。
守りを固めていたつもりだったが、強力な竜巻を浴び続けた少女の体は悲鳴をあげていた。
それでもアルトリンデは足を止めない。
「回転するタイヤに剣や槍は通じないでしょうね。ならば、聖光で討つのみです!」
いかに強力なオブリビオンでもかわしえぬ距離まで近づき、アルトリンデは再び光を放った。
敵の全身についたタイヤが、光を消そうと激しく回転する……が、光をすべて打ち消すことはできなかった。
「どれかのタイヤの駆動にダメージを与えられれば、それだけでも次につながるはず……!」
金属がきしむ音。
聖なる光がウインドゼファーのどこかにダメージを与えたのだ。
けれど、敵のどこにダメージを与えたか確かめる時間はなかった。
嗤う竜巻にとうとう耐えきれなくなった少女の体は、花の足場から投げ出されていたからだ。
ウインドゼファーが苦痛にうめく声を聞きながら、アルトリンデは足場から落下していった。
成功
🔵🔵🔴
ビスマス・テルマール
●POW&先制対策
『先制攻撃』で
弾に『オーラ防御・属性攻撃(真空)・誘導弾・範囲攻撃』を込め『早業・クイックドロウ』を駆使の『一斉発射』で『盾受け』の弾幕を張り
『ダッシュ』と『残像』で地の破片の『地形の利用』もしながら動き回り攻撃を『見切り』つつ面制圧を意識し立ち回り
展開した真空の弾幕で
敵の荒れ狂う暴風の勢いを削ぐ事を狙い
隙を見て早業でUC発動
攻撃は『属性攻撃(暴風)・誘導弾・鎧無視攻撃』を弾に込め風に乗せ『一斉発射』を
防御はダメージ軽減に『オーラ防御』に『属性攻撃(真空)』を付与し『第六感』にも頼り『見切り』回避
当たれば『盾受け・激痛耐性』で受け流し『早業』で間を取る
※アドリブ掛け合い大歓迎
●空駆ける車輪となめろう
きしむ音を立てて、ウインドゼファーの体についていたタイヤが止まる。
「できれば少しタイヤを冷やしたいところですが……そんな暇はないようですね」
「当然です!」
次なる猟兵の接近に気づいて、ウインドゼファーが身構える。
砲台を前方に向けたまま走り込んできたのは、ピンク色をした鎧を身にまとい、ビスマス結晶で構成された青い人影だった。
ビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)の接近に、オブリビオンはすぐさま反応する。
「あなたをすぐに倒して、休ませてもらうことにします!」
暴風を身にまとい、ウインドゼファーが加速する。
ユーベルコード発動は間に合わない……が、ピンクの鎧装に装着した砲台の引き金を引くことはできた。
一斉砲撃で弾幕を形成する。
しかし、ウインドゼファーは高速飛行で弾幕を迂回してみせた。
ぶつけられた車輪剣を受けて、ビスマスの体が花の足場に転がりそうになる。だが、弾を避けたぶん威力は減じている。
彼女は強く足場を蹴り、ウインドゼファーから離れる方向へとダッシュした。
少しでも目をくらますために、削れて舞い上がった足場の破片の中に飛び込む。
風を切る音は背後で聞こえていた。見えてはいないが、ウインドゼファーが弧を描いて方向転換をしているのはわかりきっている。
当てることは考えず、振り向きながらビスマスは砲台から連続して弾を発射し続ける。
敵はまた弾幕を避けて車輪剣による攻撃を仕掛けてこようとしているが、一撃目より広く弾幕を形成している分、敵は大きく動かねばならなかった。
『Namerou Hearts tuna! banana! Avocado!』
そのわずかな隙を逃さず、ディメイション・なめろうブレイカーから電子音声が響いた。
「生成(ビルド)! ナメローズマバア!」
敵の剣が振り下ろされる寸前、ビスマスは足場から離れて飛翔していた。
鮪、アボカド、バナナの3種の神器によって構成された鎧装の力でビスマスもまた飛行する。
ビスマスとウインドゼファー、2人の姿が花咲き乱れる空間を飛び回り、幾度も交差する。2つの残像が絡み合い、螺旋や二重円を形作る。
「……向こうのほうが速いですね」
「無限の欲望によって加速する私を上回ることなどできません」
車輪剣は幾度かビスマスの体をかすめるが、ビスマスの砲撃は暴風に吹き飛ばされるばかり。
だが、意志の力で強化されるナメローズマバアとて、暴風による強化に負けない力を発揮するはずだ。
地力の差が速度の差となって現れているのだ。少しずつ傷が刻まれていくが、ビスマスはそれでも砲台をウインドゼファーに向け続ける。
「私の速度を上回ることなど、誰にもできません!」
「そうですね……ですが、近づくことならできますよ!」
幾度めかの交錯を
その中で、敵の速度がわずかながら、徐々に下がっていることをビスマスは見逃さなかった。
「なに!?」
「私の弾にまとわせた真空があなたの暴風を削っていたことに、気づいていなかったでしょう!」
速度認識のわずかなずれを見逃さずに、ビスマスはまた一斉砲撃を放つ。
車輪剣が彼女を切り裂くが、同時にウインドゼファーへと砲撃のすべてが直撃していた。
高速移動の勢いでビスマスとウインドゼファーがそれぞれ別の方向へと吹き飛ばされていく。
ビスマスが負わされた傷、そしてウインドゼファーが最後の直撃で負った傷はまだ致命的なものではないが、けして浅くはない。
2人の女性の血が、花咲き乱れる空間に舞っていた。
成功
🔵🔵🔴
テリブル・カトラリー
風か、装備を変えてくるべきだったか…いや、
どのみちこの速度について行くのは難しいか。
超重金属の機体で地を踏みつけ暴風に備え、
怪力で武器を振るい武器受け、鎧の装甲を信じて耐え、
敵の残像等から動きを追跡し、戦闘知識から攻撃のタイミングを見切り、
ここぞという時にカウンターの一撃、スタンロッドを突き出し攻撃
フェイント。
敵がこの攻撃を避け、攻撃してくう事を予測し、【戦争腕・三腕】発動
周囲に向けて電撃を放電し、属性攻撃。
自身は電撃耐性で耐えて敵に体を向け、
早業で鎧から飛び出てジャンプ、ブーストで自身を吹き飛ばし接近し、
超高熱の機械刀で鎧無視攻撃。
千栄院・奏
『スプラッター』参上。お疲れのところ悪いけど、私の相手も頼むよ。
敵を目で捕らえ、纏う暴風を肌で感じ、耳で風の音を聞き、五感全てを使って敵を追うよ。
敵も二刀だけどこっちも二刀。両手の鎖鋸剣で敵の両手の武器を『2回攻撃』するようにして受けよう。勢いで弾き飛ばされたりしてもしっかり受け身を。高速移動を利用した連続攻撃はさせないようにして致命傷だけは避けるよ。
発動条件が満たされ次第【不滅の『スプラッター』】で亡霊を召喚。
さらに敵がこちらに飛んできたときに合わせて進路上に奥の手の丸鋸飛刃10枚を展開。一回の足止めになればそれで充分さ。あとは私と亡霊の鎖鋸剣で挟むようにして『2回攻撃』を見舞おう。
●血まみれの風が走る
ウインドゼファーが落下した先に、別の猟兵たちが走りこんでいた。
「『スプラッター』参上。お疲れのところ悪いけど、私の相手も頼むよ」
眼鏡をかけた若い女性が、膝をついているオブリビオンに告げた。
千栄院・奏(『スプラッター』・f16527)の知的な風貌は花咲き乱れる空間によく似合っていただろう。
ただし、その両手にオブリビオンに劣らぬ凶悪な得物を構えていなければ。
二刀のチェーンソー剣を手に、ダークヒーロー『スプラッター』は花を踏みしめて敵へと走っていく。
その瞬間、強い風が吹き抜けた。
一瞬のうちにウインドゼファーは2本の足で立ち、車輪権を構えている。
隙のない物腰でオブリビオンは奏を迎え撃とうとしている。
だが、猟兵側も1人ではない。無骨なマスクで顔を覆った敵の側面から大柄な女性もウインドゼファーへと接近していく。
テリブル・カトラリー(女人型ウォーマシン・f04808)は力強い瞳でオブリビオンを見据えたまま、放電するロッドを構えていた。
接近する猟兵たちが攻撃するより早く、ウインドゼファーは再び暴風をまとった。
「風か、装備を変えてくるべきだったか…いや、どのみちこの速度について行くのは難しいか」
強烈な風が吹き荒れる中でも冷静に、テリブルは戦力を評価する。
暴風の中でかすかに浮いているウインドゼファーが奏とテリブルのどちらを狙おうとしているか、仮面で視線を隠しているためわからない。
2人とも敵の攻撃に備えて守りを固める。
一瞬ウインドゼファーの姿が消えた……と、思った次の瞬間、奏の前にオブリビオンが出現していた。
タイヤを回転させながら車輪剣が襲ってくる。
「……速い、けど……っ!」
奏は目だけでなく肌に感じる風や、耳に届く轟音にも集中し、彼女は敵の攻撃を捕らえようとした。
両手の鎖鋸剣、【桜花】と【梅花】を車輪剣めがけて振り下ろす。
互いに激しく回転する刃がぶつかり合う嫌な音が一度だけ響く。
奏は連続で刃を繰り出していたが、その動きが素早いため音が重なって聞こえたのだ。
桁の違う攻撃速度は一度車輪剣をはじいたが、しかしユーべるコードによって強化されたオブリビオンの戦闘能力と速度はさらにその上を行った。
弾かれた勢いのままに体をタイヤのように回転させて、ウインドゼファーは車輪剣で奏の胴体を薙いだのだ。
動きが止まった瞬間にさらに刃のついた車輪が肩から彼女を切り裂いた。
身にまとう暴風が追い打ちのように奏を吹き飛ばし、無数の花で構成された足場にスタイルのいい体が倒れこむ。
「……無事か?」
テリブルがその間に距離を詰めていた。合成音声による淡々とした問いかけ。答えを待つことなく、彼女はスタンロッドを突き出す。
「致命傷では……ないよ……」
奏の答え――よりも早くウインドゼファーの車輪剣がテリブルに届いた。
暴風はウォーマシンであるテリブルの大柄な体を吹き飛ばす勢いで吹き付けてくるが、宇宙船の外装に使われるような超重金属の装甲でしっかり足場を踏みしめて耐える。
電撃を放つロッドと車輪剣がぶつかった。
いや、もとより敵の反撃のほうが早いと見切って、テリブルはそれを受け止めるつもりでスタンロッドを繰り出したのだ。
ウインドゼファーのもう片方の車輪剣がテリブルの超重装甲を削り取る。
敵が両手の武器を振り切った瞬間を狙って、彼女は今度こそ攻撃のためにスタンロッドを繰り出していた。
次の瞬間、ウインドゼファーはテリブルの頭上に浮いていた。
(「……避けてくるだろうと、わかっていたさ」)
本命の攻撃は次だった。
追加兵装のついた戦争腕をすでに彼女は起動している。
内蔵した電撃機能が、周囲に放電をまき散らす。テリブル自身も巻き込まれるが、彼女はそれに耐えて敵へ視線を向けた。
ブースターを起動して装甲から一気に飛び出した彼女の体は飛行しているウインドゼファーへと向かう。
同時にテリブルは機械刀を抜いていた。
超高熱を発した刃を敵めがけて突き出すと、得物はウインドゼファーの装甲を熱で溶かしながら貫く。
「……くっ。……ですが……まだ私の欲望は止められません!」
うめき声を上げはしたものの、まだオブリビオンは倒れない。
思い切りテリブルを蹴り飛ばし、機械刀を無理やり体から抜いて、高速移動でウインドゼファーはテリブルから距離をとった。
「もう1人は……なにっ!」
奏の動きを敵は確かめようとしたようだった。
けれど、ウインドゼファーが見たのは、巨大なチェーンソーを持った首なしの亡霊。
「召喚のユーべルコードですか!」
「その通り……『スプラッター』は不滅なんだ。後悔するがいい……」
瀕死の傷を負いながら、鎖鋸剣を支えに奏はなんとか立ち上がっていた。
もう動く力もろくに残っていない……が、使える手はある。十の丸鋸型武器が、亡霊と挟み込むようにウインドゼファーへと襲いかかる。
とっさに、敵は亡霊のチェーンソーと丸鋸のどちらを防ぐべきか迷ったようだった。
桁違いの連続攻撃技術を持つ奏にとって、それは十分な隙だった。
ウインドゼファーの装甲を無数の刃が削り取る音が、花咲き乱れる空間へと響く。
暴風で刃をまとめて吹き飛ばす。
「……さすがの力です。エイプモンキーやラビットバニーを倒したことだけありますね」
そう呟いて、オブリビオンは全力で飛行してテリブルと奏から距離を取る。
敵が移動していった方向へと花の足場が伸びていく。
まだ倒れるほどではない……が、猟兵たちの攻撃は確実に強敵の体力を削り取り、追い込んでいた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アムレイド・スヴェントヴィット
「何につけても速さは有益です。事が速く済む」
ですが、貴方は少々喧しすぎますね。
◆行動
先制攻撃に対し、フック付きワイヤーと逃げ足でゼファーとの接近を避ける
その際ワイヤーは可能な限り広域へ引き伸ばす
花の足場が破損した際はワイヤーを頼る
彼女からの攻撃はマントを使いつつ、出来る限り回避
致命傷さえ避けられれば良い発想
「身体が動けばどうにかなるものです」
ある程度回避+自身の消耗が大きく見せられるようになれば黒剣を構え接近
可能な限り接触
生きているワイヤーがあればそれを活用しつつ、マントを使いながら近接へ
サンザシの枝を活かすのは一瞬でいい。囁くだけの暇で。
「動けばどうにかなるものです。私の方は――指一本でも」
フロッシュ・フェローチェス
ウインドゼファー……スピードを求めるものとして――必ず超える……!
先制攻撃が何かは分からない。見切るため敢えてゆっくり歩いて近寄る。加速式を充填し力を溜めよう。
野生の勘を研ぎ澄ませろ……残像生む速さで一発目の攻撃を回避だ。
その勢いでギアを上げてダッシュに移行し次も、今度は影も残さない早業回避で対処だ。
キツいなら伸縮自在の短刀を最大にして盾に。間隙を作って避けるよ。
くそ、コッチの攻撃も当たらないしそも暴風が……接近しかけても車輪がキツイ……!
なら――激痛覚悟で風の勢いに乗り、衝撃波あわせ上空へ退避。
UC発動。一気に火力を上げ、爆熱の気流で風の鎧を僅かでも剥がす。
そして火炎の爪で……えぐり取る!!
●風が止まるとき
傷ついたウインドゼファーは、猟兵たちから距離を取りつつ戦いを続けた。
攻撃の精度は多少鈍っているようだが、それでも怪人軍団の幹部たる彼女は猟兵たちを上回る戦闘能力を発揮する。
なにより、スピード怪人の矜持と言うべきか、その速度だけはほとんど落ちていない。
唸りをあげる刃を、高熱の刃を車輪剣と暴風で受け流し、飛んでくる真空や光を竜巻で迎撃する。
一度足場から落とされた者も含めて、少なくない数の猟兵たちが攻撃を繰り出すが、倒しきることはできないでいた。
それでも、猟兵たちはあと一息を埋めるべく攻撃を続ける。
「ウインドゼファー……スピードを求めるものとして――必ず超える……!」
高速の戦いが繰り広げられる中で、あえてフロッシュ・フェローチェス(偽りの疾咬・f04767)はゆっくりと敵に近づいていた。
こちらを見ているようには思えないが、
フロッシュももちろん、ただゆっくり歩いているわけではない。
一気に爆発させられるよう足に力を溜め、そして神経を研ぎ澄ます。
視線の先では、暗い赤茶色の髪を持つ青年がマントをなびかせて風の中を突き進んでいた。
「何につけても速さは有益です。事が速く済む」
アムレイド・スヴェントヴィット(断裂者・f14644)は丁寧だがどこか冷たさを感じさせる口調で言った。
(「――ですが、貴方は少々喧しすぎますね」)
続く言葉の代わりに小さなサンザシの枝を手の中に握り込んだ。
攻撃の気配を察して、即座に暴風をまとったウインドゼファーがアムレイドへと突っ込んでくる。
アムレイドは後方へと跳躍した。気にせず接近してくる敵を見て、彼は思いきり握っていたワイヤーを引っ張る。
別の足場につないでおいたワイヤーを利用して攻撃を回避……したと考えた瞬間、横にウインドゼファーがいた。
進行方向から薙ぎ払われる車輪剣をマントで受け止めるが、それでもアムレイドの腹部には大きな傷が刻まれ、血が流れる。
だが、かわしきれないことなどわかっていたことだ。
「身体が動けばどうにかなるものです」
ワイヤーを利用して体を起こし、なおもアムレイドは敵から距離を取ろうとする。
その進行方向に、フロッシュがいた。
空中で回転しながら、ウインドゼファーは片方の車輪剣をアムレイドに、もう一方をフロッシュに向ける。
2人を狙ってもその攻撃は正確だった。
ただ、攻撃される瞬間を待ち構えていたフロッシュをとらえるには、わずかに遅かった。
(「――今!」)
足に溜めていた力を一気に解放することで、フロッシュはウインドゼファーの速度を一瞬上回る。
だが、追撃まではかわせない。
体を切り裂こうと迫る車輪剣を、伸縮自在の短刀・碧穿炉を伸ばしてなんとか防ぐ……が、ゼファーの刃は短刀を押し込んでフロッシュの体を裂いた。
アムレイドも傷つきながら黒剣を構えて近接戦をしかける。
2人の剣をいなしながら、時に暴風で、時に剣で、ウインドゼファーは猟兵たちの体力を削る。
「くそ、コッチの攻撃も当たらないしそもそも暴風が……接近しかけても車輪がキツイ……!」
「ええ、本当に厄介な相手です」
致命的な傷は避けていたが、フロッシュもアムレイドは攻撃を十分に当てることはできずにいた。
もちろん、2人以外の攻撃も同様だ。
「くそっ、こうなったら激痛覚悟で……!」
「無駄です」
思いきり武器を振り上げたフロッシュへとウインドゼファーの身にまとった暴風が襲いかかる。
激しい風が少女を上空へと吹き飛ばす。
さしものオブリビオンも一瞬アムレイドから注意をそらしたが、しかし襲ってきた黒剣を彼女はギリギリのところで受け止めた。
赤いヘルメットに包まれた頭を、アムレイドの金色をした瞳が間近に見据える。
「あなたも吹き飛んでください」
言葉と共に風がアムレイドの体を花の足場へと叩きつけた。
ウインドゼファーが自分の胸に目をやった。
そこには小さなサンザシの枝が刺さっている。吹き飛ばされる瞬間、指の力だけで投げられたそれに、彼女は気づかなかったのだ。
「動けばどうにかなるものです。私の方は――指一本でも」
倒れたままの状態で、アムレイドがウインドゼファーへと告げた。
囁くような声で。
「罪の褥に安らぎなさい」
そして、光の柱がウインドゼファーの足元から頭までを貫く。
天を降りあおぐ形になったオブリビオンは、そこにフロッシュが浮いていることに気づいた。
「飛んでいる……!?」
少し大きな異形の右眼、翡翠の竜眼から放たれる黒緑の炎が、全身を覆う加速の術式を回路に変えて身体中に走っていた。
「獄炎を一度封じ込める――そして、解き放つ……!!」
一時的に飛行能力を得た彼女はウインドゼファーに向かって空中を加速した。
全力で突きだしたメカブーツはすでにアップグレードパーツを装着済で、炎の爪と化している。
黒緑の炎は燃え盛り、ウインドゼファーの暴風とせめぎ合う。
「私よりも……高く飛ばせはしません!」
すでに十分消耗し、さらにアムレイドの高威力の一撃まで受けた状態では、さすがのウインドゼファーと言えどもフロッシュの炎を圧倒することができないでいる。
「いいや超えさせてもらう! そして……!」
熱が気流を歪ませて、ウインドゼファーのまとう暴風が吹き散らされた。
爪が風を貫き、装甲にぶつかる。
「えぐり取る!!」
炎を吹き出して加速し、フロッシュの爪はウインドゼファーの装甲を一気に貫いた。
敵もまた残った力で風を操り、押し戻そうとする……が、猟兵たちの一斉攻撃が残った力を奪い去る。
花の足場が砕けた。
爪でウインドゼファーを貫いたままフロッシュは加速を続け、さらに下方に形成された足場に敵を縫い止める。
仮面から血を吐き、ウインドゼファーは骸の海へと還っていく。
再び戻ってくる力がまだ残っているかどうかはわからないが、少なくとも一度ウインドゼファーを打ち倒し、その力を削り取ることに成功したことは間違いない。
ドン・フリーダムへたどり着き、キマイラフューチャーを救うための道が、また少し縮まった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴