バトルオブフラワーズ⑪〜速さのその先に
●風の番人
「モンキーに続きバニーまでとは、驚きました」
強風が吹き荒れ花吹雪の舞い散るシステム・フラワーズ内部で、しかし強風に小揺るぎもせずに立つ怪人がつぶやいた。
「でも、私の役目は門番。ドン・フリーダムがシステム・フラワーズを取り戻すまでの時間稼ぎならば、私の『風を操るユーベルコード』でも、決してあの2人にひけは取りません」
赤い仮面のような頭部に、細身の体。一見して華奢にも見えるその怪人の声にはしかし、並々ならぬ自信が感じられた。それは、自らの風を操る能力への、そして何より、自分自身の『速さ』への、絶対的な自信。
「私達は全てを手に入れる。誰にも、邪魔は、させないッ!」
その怪人――ウインドゼファーは、先端に車輪の付いた剣のような異形の武器を構え、侵入者達を待ち構えるのだった。
●第三の関門
「皆さんの活躍で、怪人軍団の幹部であるエイプモンキーとラビットバニーは倒れ、新たな道が拓けました」
エルシー・ナイン(微笑の破壊兵器・f04299)は、どこか誇らしげに猟兵達の戦果を称えた。
「ですが、その先に待つのは第3の幹部『ウインドゼファー』、風を自在に操る強敵です。彼女は――ええ、驚くことに女性のようなのですが、ともかく彼女は他の2人のように、特殊なバリアなどの装置は持っていません」
だがそのような装置もなしに他の二人と肩を並べているということは、それだけ強力な能力を持っているということだ。
「彼女はとにかく速度に自信とこだわりを持っているようです。ゆえに、彼女よりも先に攻撃することは不可能に近いでしょう。まずは彼女のユーベルコードにどう対抗するかを考える必要があります」
これまでの幹部同様、ウインドゼファーも同時には一体しか存在しないが、何度でも骸の海から蘇ってくる。だが、短期間に許容値を超える回数倒されれば、復活は不可能にななるはずだ。
「かなりの強敵ではありますが、エイプモンキーとラビットバニーを撃破してきた皆さんなら、きっとウインドゼファーにも勝利できるはずです。ドン・フリーダムの元まであと一歩。皆さんのご武運をお祈りしています」
エルシーは祈るようにそう言って、猟兵達を送り出したのだった。
J九郎
こんにちは、J九郎です。
バトルフラワーズもいよいよ佳境。気を引き締めていきましょう。
オープニングにもある通り、敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。
難易度の高いシナリオですが、皆さんが知恵と勇気で乗り切ってくれると信じています。
それでは、皆さんの渾身のプレイングをお待ちしています。
第1章 ボス戦
『スピード怪人『ウインドゼファー』』
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POW : フルスロットル・ゼファー
全身を【荒れ狂う暴風】で覆い、自身の【誰よりも速くなりたいという欲望】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : ソード・オブ・ダイアモード
対象の攻撃を軽減する【全タイヤ高速回転モード】に変身しつつ、【「嗤う竜巻」を放つ2本の車輪剣】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:藤本キシノ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
レナ・フォルトゥス
相手が先に攻撃してくるというのなら、色々と、妨害入れてしまえばいいのよ。
相手が風を名乗るなら、こちらは炎。
こちらとしても、負けるつもりはないわ。
相手が回転するってことなら、こちらは、【属性攻撃】【全力魔法】【範囲攻撃】【高速詠唱】で岩の柱を何十個も作り上げて通り抜け出来にくいようにする「こうすれば、回転する腕に岩の柱が当たるわよ」
相手が幾度も引っかかるところを見定めて、UCを打ち込む「今のうちに行くわ!ウィザードミサイル全発射!!」
「回転することで、周りの把握ができにくくなっているからこそ、こういう手で行くのよ。
●風と炎
「相手が先に攻撃してくるというのなら、色々と、妨害入れてしまえばいいのよ」
舞い散る花びらの向こう。悠然と佇むウインドゼファーの姿を確認したレナ・フォルトゥス(森羅万象爆裂魔人・f09846)は、即座に魔術の高速詠唱を開始した。が、
「圧倒的に、遅いです!」
ウインドゼファーの速度は、レナの想定を遥かに超越していた。レナの詠唱が終わるまで、ほんの数秒。そのわずかの間に、全タイヤ高速回転モードで花びらを巻き上げながら疾走してきたウインドゼファーは、レナの眼前に迫っていた。
ウインドゼファーが先端に車輪の付いた異形の剣を横薙ぎに払う。だが、その瞬間に地面から突然隆起した岩が、車輪剣を受け止めていた。
「成程、先程の魔術は岩を盾代わりにするためのものですか。しかし!!」
構わず剣を振り抜くウインドゼファー。刃の付いた車輪が高速回転し岩を両断。さらにその勢いのままにレナを切り裂く。わずかでもレナが飛び退くのが遅れていれば、その一撃だけで致命傷になっていただろう。だが、決して浅くはない傷が、レナの身に刻まれていた。
「一撃で仕留め損ねましたか。しかし、次は確実に止めを刺します」
その超高速の代償として、ウインドゼファーは一箇所に留まることができない。まるで竜巻の如くレナの前を駆け抜けたウインドゼファーは反転すると、再びレナに迫らんとする。
そこでウインドゼファーは、ようやく周囲の状況に気付いた。
レナが呪文の詠唱で創り出した岩の柱は、先程破壊した一本だけではなかった。戦場となる花畑のあちこちに、岩の柱が林立している。
「これは!?」
「高速で動くことで周りの把握ができにくくなっているからこそ、こういう手で行くのよ」
レナが、目論見通りとクールな笑みを浮かべた。林立した岩の柱は絶妙な障害物となり、ウインドゼファーの進路を妨害する。破壊しながら進むことは可能だが、それでは全タイヤ高速回転モードの最大のメリットであるスピードが失われる。
「考えましたね。この岩の柱は盾代わりとするためのものではなく、私の高速移動を封じるためのもの……!!」
「今頃気付いても遅いわよ。あなたが風を名乗るなら、こちらは炎。こちらとしても、負けるつもりはないわ!!」
レナが、反撃とばかりに得意の炎の魔術をウインドゼファー目掛けて放った。
「……私の『風を操る能力』の真価が、高速移動だけだと思わないでもらいたいものですね」
ウインドゼファーは強風を巻き起こすと、その風に乗り上空へと舞い上がった。風に乗り空を飛べるのも、彼女の能力の一つなのだ。そして飛んでしまえば、岩に引っかかり速度を殺す必要もない。
だが、その瞬間こそが、レナの狙っていたもの。
「やはり、飛び上がる時はスピードを落とさざるを得ないようね。今のうちに行くわ! ウィザードミサイル全発射!!」
レナの詠唱と共に、総数125本にも及ぶ燃え盛る炎の矢が、一斉にウインドゼファー目掛け放たれた。
「くっ!」
咄嗟に竜巻で身を包み、身を守るウインドゼファー。だが、相殺しきれなかった炎の矢が、次々にウインドゼファーの身を焼いていく。
「初撃を受けてしまったのは計算外だったけど、概ね先鋒としての役割は果たせたようね」
連続して大魔法を使った反動と、ウインドゼファーの先制攻撃によるダメージで思わずその場で膝をつきながら、レナは満足げにそう呟いたのだった。
苦戦
🔵🔴🔴
エル・クーゴー
●WIZ
●対先制
花弁舞う周辺風景を取り込み生成(撮影+学習力)した、被視認性を低下させる【迷彩】を己にコート、回避率増を期します
電脳世界、展開
敵所有兵装「2本の車輪剣」の内「少しでも脆弱性を見出せた方」一本に対し【ハッキング】を試みます
課す指令は単純かつ明瞭、即ち「逆回転」
敵がもう一本の車輪剣で起こす竜巻に同出力・逆ベクトルの竜巻を当て込ませ攻撃を不全とさせる目論見です
●反撃
コール、ウイングキャット『マネギ』(マックス175体召喚)
【武器改造】により皮下へトリモチを仕込んだ群体を差し向けます
破壊されたとして高速回転中の全タイヤや車輪剣のシャフト部分へ身を挺して突っ込み、動作不全の誘発を狙います
●その回転を止めて
エル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)が戦場に到達したのと、ウインドゼファーが動いたのはほぼ同時だった。
「私の速さは絶対。そちらに対応する暇など、与えません!!」
ウインドゼファーが先の猟兵との戦い同様、全タイヤ高速回転モードに移行する。脚部及び肩部、そして双剣に装備されたタイヤが一斉に回転を始め、瞬く間にエルとの距離を詰める。エルに回避行動に移る時間すら与えず、二本の剣の先端に付いた車輪が高速回転で生み出した竜巻が、エルを切り裂いた――かに見えた。が、
「……何!?」
確かに命中はした。だが、予測していたよりもずっと手応えが浅い。
「間合いを外された……? いえ、私が間合いを読み違えていたとでもいうのですか」
「――光学迷彩、正常作動確認。自身への損傷レベル、戦闘続行には影響なしと判定」
淡々と、まるでシステムメッセージのようにエルは状況を分析していく。自身の纏うコートに花弁舞う周辺風景を取り込み、迷彩とすることでウインドゼファーの距離感を狂わす作戦は、とりあえず成功だ。
「作戦を次のフェイズに移行します。電脳世界、展開」
エルの装着した『L95式電脳ゴーグル』が光を明滅させ、ウインドゼファーの武器である車輪剣の分析を開始する。右腕の剣はウインドゼファー本人と一体化しており、干渉は非常に困難。しかし手持ち武器である左腕の剣なら……、
「戦場で足を止めることは、すなわち死を意味します!!」
エルが動いていないことに気付いたウインドゼファーが、再び迫りくる。光学迷彩は未だ有効だが、完全に姿を隠しきれるものではない。次も致命傷を避け切れるとは限らない。にもかかわらず、エルは冷静沈着だ。
「あなたこそ、主武装に対するそのセキュリティの甘さは、すなわち死を意味します」
「!?」
2人の影が交錯する。
ウインドゼファーの車輪剣が巻き起こす竜巻がエルの肩を深く抉ったのに対し、エルはわずかに左の車輪剣の柄に触れるのが精いっぱい。だが、それで充分だった。
「この程度のハッキングならば、1秒と時間はかかりません。そして、課す指令は単純かつ明瞭、即ち『逆回転』」
エルが淡々とそう告げた瞬間、左の車輪剣の先端のホイールが、急ブレーキをかけられたかのように停止し、次いで逆回転を開始した。
「これは!?」
右の車輪剣と左の車輪剣、それぞれが逆方向に回転を始めたことで、発生する竜巻同士が反発し合い、ウインドゼファーのバランスが崩れる。
「反撃準備、完了。コール、ウイングキャット『マネギ』」
エルの召喚に応じ、無数の翼を持ったデブ猫型の機械兵器が、花びら舞う戦場に舞い降りた。
「一斉攻撃、開始」
そしてエルの指令の元、姿勢を崩したウインドゼファーに殺到していく。
「いかにバランスを崩したとはいえ、このような雑兵以下の存在に後れは取りません」
ウインドゼファーは、右腕の車輪剣の回転も逆回転させることで双剣のバランスを取り直すと、次々に迫りくる『マネギ』の大群を、竜巻を纏った車輪剣で切り裂き破壊していった。
「敵性体の行動、想定の範囲内」
だが、エルは顔色一つ変えずにその様子を見守っている。そして、動揺の声を上げたのはウインドゼファーの方だった。
「車輪剣の回転が、鈍る!? これは……!!」
「今あなたが相手をしているマネギは、皮下へトリモチを仕込んだ特別製。それを切り裂くということは、剣にトリモチを自ら塗り込んでいるようなものです」
エルが指摘した直後、シャフトにトリモチが絡みついた車輪剣のタイヤが、動きを停止する。さらに飛び散ったトリモチは、ウインドゼファーの肩や足の車輪にも絡みついていき、その動きを鈍らせていったのだった。
成功
🔵🔵🔴
ギルベルト・クオーレハイド
バイオモンスターの特性を活かして体を超硬化、少しでも被ダメを削る。
車輪攻撃は【怪力】で武器を横から殴り軌道を逸らす。
タイヤの側面には刃がないし、致命傷だけは食らわないようにするぜ。
竜巻攻撃は俺の【4次元コート】の内側に仕舞いこんでやる。
機械の敵って言ったら、錆だよな?
金属に付着した血はほっとくと錆になる_OK?
【UC】を発動して血液の薔薇の花びらで目眩し。
その隙に機械の接合部に入り込ませ、瞬間蒸発と鉄分の硬化して錆を作る。
逃げようとしたら地面から棘蔓生やして足を捕縛、そこからも錆を侵食。
動きが鈍ったところをナイフで【2回攻撃。怪力】も込めてな。
俺の血は赤だが、お前の血は、何色なんだろうなぁ?
●血の束縛
「よもや、このような手段で車輪剣を封じにかかるとは」
車輪剣に絡みついたトリモチを車輪を高速回転させることで吹き飛ばしながら、ウインドゼファーが次なる挑戦者に目を向けた。
「チャオ。気軽に『ギル』って呼んでいいぜ!」
言葉通りに気軽な様子で片手を挙げて見せるギルベルト・クオーレハイド(紅蓮の大漢・f17151)に、しかしウインドゼファーは返事を返すこともなく、いきなり全タイヤ高速回転モードに移行して突撃していった。そして、ギルベルトが反応する間もなく、車輪剣から嗤う竜巻を放つ。
「おいおい、挨拶も無しかよ」
その竜巻を、ギルベルトはバイオモンスターの特性を活かして超硬化させた体で耐えきろうとする。だが、
「どれだけ肉体に自信があるのかは知りませんが、私の車輪剣も侮られたものですね」
なんとか竜巻に耐えるギルベルトに、さらに車輪剣の先端で回転する、刃物付きのタイヤが襲い掛かった。どれだけ頑強で強固な肉体であろうと、鋼すら切り裂く車輪剣に耐えきれるものではなく、ギルベルトの胸部が深く切り裂かれていく。
「このっ……んなもんでやられるか!」
ギルベルトは車輪剣の車輪の側面を、強引に殴りつけた。その一撃で車輪剣の軌道が逸れ、なんとか致命傷を免れる。
「タイヤの側面には刃がなくて助かったぜ」
ふうっと息を吐くギルベルト。一方、一旦ギルベルトと距離を取ったウインドゼファーは、再び高速移動でギルベルトへの突撃を仕掛けてきた。嗤う竜巻が、またもギルベルトに襲い掛かる。が、
「おおっと。そいつの対策は検討済みだ」
先程は使う暇もなかったが、今度はわずかだが態勢を整える時間があった。ギルベルトは自らの纏う4次元コートを広げると、竜巻をコート内に『仕舞い込んだ』。
「バカな!? そんなことが物理的に可能だというのですか!?」
流石のウインドゼファーも予想外の事態に戸惑いの声を上げる。そしてその隙を、ギルベルトは見逃さない。
「キレイな花には、要注意ってな!」
ギルベルトの手にしていたアサルトウェポンが、血液で出来た薔薇の棘蔓と深紅の花びらに変じた。そして舞い上がった花びらは、目潰しをするかのようにウインドゼファーの頭部に襲い掛かっていく。
「小癪な真似をしますね」
ウインドゼファーは竜巻を発生させ、深紅の花びらを吹き飛ばそうとするが、その間に足元に忍び寄っていた薔薇の棘蔓が、ウインドゼファーの足を絡めとっていった。
「このようなもので、私の速さを止められると思っているのですか!」
ウインドゼファーは車輪剣を振り抜き、自らに絡みつく棘蔓を切り裂き、花びらを吹き飛ばす。その度に花びらと棘蔓が血に戻り、車輪剣やウインドゼファー自身を真っ赤に染め上げていくが、ウインドゼファーは気に掛ける様子もなかった。
「なあ。機械の敵って言ったら、錆だよな?」
そんなウインドゼファーに、キルベルトは気楽な様子で声を掛けた。
「? それがどうしたというのです?」
「金属に付着した血はほっとくと錆になる。――OK?」
そのキルベルトの言葉に、ウインドゼファーがハッとする。次の瞬間、ウインドゼファーや車輪剣を赤く染めていた血液が、瞬間蒸発し鉄分を硬化することで錆に変じていった。高速回転していた車輪が、きしむ音を上げながら動きを鈍らせていく。
「俺の血は赤だが、お前の血は、何色なんだろうなぁ?」
自慢のスピードが殺されて動揺するウインドゼファーに、キルベルトは全力でナイフで切りつけた。そして噴き出したのは、その全身を染めていたのと同じ、赤い血だった。
苦戦
🔵🔴🔴
イデア・ファンタジア
速さじゃ負けるかもしれないけど、情熱なら負けないよ!
足場を崩されたら墜落しちゃう!?私は空は飛べないし……なら泳ぐしかないわね!
『空の白鯨』で相手から距離を取って、暴風の届かない所まで避難しましょう。
ただこの技、絵を描かないと効果を発揮しないのよね。
落ちながらアートを完成させる……やってやろうじゃない!
極限までデフォルメした小魚ならパッと描けるでしょ、その群れで水中を表現するよ!
やり過ごしたら、右手で銃を撃つ仕草で『片手の拳銃』を発動して反撃するわ。
きっと敵は再び暴風を放って盾代わりにするだろうね。
だけど、夢想呪法はいつか夢見た理想を実現する力。
この弾丸はどこまでも真っ直ぐ進むわ!いっけーっ!
●現出する海
「トリモチに錆とは、どこまでも小賢しい存在ですね、猟兵というのは」
度重なる戦闘で動きの鈍くなった車輪剣を振り回しつつ、ウインドゼファーがそう吐き捨てる。
その姿を見て、イデア・ファンタジア(理想も空想も描き出す・f04404)は目を輝かせた。
「万全の状態に比べてスピードの落ちてる今なら、勝てるかも!」
だが、そんな淡い期待はすぐに裏切られる。全タイヤ高速回転モードの継続は不可能と判断したウインドゼファーは、これまでの戦法を改めて、いきなり暴風を放ったのだ。その暴風は、この戦場の足場となっている花びらを瞬時に吹き飛ばしていく。そしてそれは、イデアの立つ足場も例外ではなかった。
「前言撤回! やっぱり速さじゃ負けるかもしれないけど、情熱なら負けないよ!」
足場を崩され虚空に投げ出されたイデアは、咄嗟に絵筆を取り出していた。
「このままじゃ墜落しちゃう!? 私は空は飛べないし……なら泳ぐしかないわね!」
荒れ狂う暴風に全身を切り刻まれ翻弄されながらも、イデアの絵筆を構える姿勢は崩れない。
「ファンタジアを今ここに、その姿を描き出そう! 君の名は――ディープダイバー!」
イデアが発動させたのは、全てが水没した世界を描くことで、空中遊泳を可能とするユーベルコードだ。ただしこの技、絵を描かないと効果を発揮することはできない。
「落ちながらアートを完成させる……やってやろうじゃない!」
育ちから来るハングリー精神を発揮させたイデアは、風に負けじと絵筆を振るい、極限までデフォルメした小魚を宙に描き出していく。それも一匹や二匹ではない、群れと呼べるほどの数の魚を短時間で描ききり、見事に水中を表現してみせた。
「これなら、泳げる!!」
イデアは宙を舞うように現出した海を遊泳すると、暴風の圏内から巧みに離脱し、新たな足場に着地する。
「空中を泳ぐとは、本当に非常識なのですね、猟兵というのは」
あきれた様子のウインドゼファーに向けてイデアは右腕をまっすぐ伸ばすと、右手で銃を撃つ仕草をして見せた。たちまち、指先に呪法による魔力の弾丸が形成される。
「BANG!!」
イデアの元気な声と共に放たれた呪法の魔力弾は、一直線にウインドゼファーに向かい飛んでいった。
「そのような空砲が、私に届く道理がありません」
ウインドゼファーはその場から動くことなく、再び暴風を発生させ、イデア目掛けて放つ。暴風は花びらを吹き飛ばしながら、イデアの放った魔力弾をも飲み込んでいった。
「そして当然、私の風を打ち破ることも出来ません」
「それはどうかな。夢想呪法はいつか夢見た理想を実現する力。この弾丸はどこまでも真っ直ぐ進むわ! いっけーっ!」
その言葉通り、魔力弾は暴風に飲まれてもその動きを止めることも逸れることもなく、真っ直ぐに、ただ真っ直ぐにウインドゼファー目掛けて突き進む。
そして。
暴風を突破した弾丸がウインドゼファーの仮面に命中し、その仮面にヒビを生じさせたのと。
暴風がイデアを飲み込み吹き飛ばしたのは、ほぼ同時だった。
成功
🔵🔵🔴
吾唐木・貫二
【先制対策】
離れた場所で挑発し正常な判断を奪う
「速い?それでか?ノロすぎんだよ亀女(笑)」
「その仮面似合ってんぜ?甲羅みたいでな(笑)」
まあ、俺みたいなPOW特化が速いわけないんだけどな
POW選択に見せ掛け、一瞬だけ首元に隙をつくり相手のPOW攻撃を仕込んでおいた墓碑の欠片に誘導
UC『墓碑死界』発動
さて、あの女は出てくるまでに何回死ぬかな?
【攻撃】
『墓碑死界』から出てくる前にUC『邪鬼葬送』と『厄災の騎士』を発動
出てきた瞬間に【捨て身の一撃】の【覚悟】でUC『邪勝の騎士』とUC『極限浄化術式』を同時に発動して【傷口をえぐって】やろう
そうそう、【麻痺】の【毒】を仕込むのも忘れないようにしないと
●挑発の先に
「速い? それでか? ノロすぎんだよ亀女」
ウインドゼファーからある程度距離を置いた場所で、戦いを見守っていた吾唐木・貫二(BRASS EATER・f03189)は、侮蔑の言葉をウインドゼファーへ投げかけた。
「……今、何と言いました?」
耳聡く聞きつけたウインドゼファーが、貫二に向き直る。
「その仮面似合ってんぜ? 甲羅みたいでな」
そんなウインドゼファーに対し、貫二はさらに嘲るような言葉を投げつけた。
「……」
ウインドゼファーは沈黙していたが、その身の周囲を渦巻き始めた荒れ狂う暴風が、彼女の怒りを如実に示すかのようだった。
そして次の瞬間、ウインドゼファーが消えた。いや、貫二が動きを追えないほどの速度で、ウインドゼファーが動いたのだ。気付いた時には、ウインドゼファーは貫二の目前に迫っていた。
「!?」
挑発してウインドゼファーをおびき寄せ、用意していた墓石にウインドゼファーを閉じ込めようと目論んでいた貫二だったが、その暇すら与えられない。ウインドゼファーの纏う暴風に巻き上げられ、宙に投げ出されてしまう。
「ちっ、ならこれしかねえ」
貫二は空中で、自らを超高速葬送形態に移行させた。
「これより貴様の葬送を執り行う。さあ死ね。疾く死ね。すぐに死ね」
素早く着地した貫二は、自身の限界を超えた速度でウインドゼファーに立ち向かう。超高速で動き回る貫二とウインドゼファーの戦いは、傍から見ればその軌跡すら捉えきれぬほどのスピードを持って繰り広げられていた。
そして、刹那の激突の末、ようやく両者の動きが止まった。
「……ぐはっ!」
先に口から血を吐いて、膝をついたのは貫二だ。その全身には暴風と車輪剣に刻まれた無数の傷が残されており、もはやこれ以上の戦いの継続は不可能と、一目で見て取れた。
だがそんな貫二に対し、ウインドゼファーは止めを刺そうとはしなかった。いや、刺そうとしないのではない。できなかったのだ。
「……へへっ、俺の捨て身の一撃も、無駄じゃなかったみてえだな」
激突の一瞬。捨て身の覚悟で放った、鉤爪状にした『黒装夜刃』による身を抉り傷口を広げる一撃。ウインドゼファーにまともにヒットしたのはその一撃のみだったが、貫二にとってはそれで充分だった。なぜなら、『黒装夜刃』には、触れた者を痺れさせ動きを封じる麻痺性の毒が塗り込まれていたのだから。
苦戦
🔵🔴🔴
フィロメーラ・アステール
「うむむ、なかなかの強敵感!」
こいつは出し惜しみしてられない! やるぞ!
自分を【鼓舞】しつつ挑む!
【迷彩】魔法を【物を隠す】技術で忍ばせておく!
これで狙いをずらして回避率アップ!
しかしこの手は先の人もやっているようで?
敵も対策を取って来るかな! 竜巻いっぱい出すとか!
じゃあこっちもいっぱい出す!
高速【空中戦】テクで無数の【残像】を放つ!
狙いがばらけた所に【第六感】で竜巻の弱い所を見つける!
そこへ【オーラ防御】を展開しつつ【スライディング】して突破!
飛び込む【勇気】が決め手だ!
その勢いで【スーパー流れ星キック】へ移行!
【全力魔法】でさらに加速して!
【気合い】の【踏みつけ】キックを食らわせるぞ!
●数と速さと
「油断しました。まさか一時的とはいえ、私が毒にやられるとは」
驚くべき回復速度で麻痺から回復したウインドゼファーが、ゆっくりと首を横に振った。
「……ですが、もう油断はしません。全身全霊をもって迎え討ちます」
そして、戦場に現れたフィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)の姿を睨み据える。
「うむむ、なかなかの強敵感!」
仮面越しとはいえその殺気を感じ取り、フィロメーラは思わず身震いした。
「こいつは出し惜しみしてられない! やるぞ!」
自分を鼓舞しつつ、背中の羽を羽ばたかせてウインドゼファーに向かっていくフィロメーラ。
「遅いです!!」
だが、ウインドゼファーも大人しくフィロメーラを待っていてはくれない。全身のタイヤをフル回転させて全タイヤ高速回転モードに移行すると、『嗤う竜巻』を纏った車輪剣を構え、自らフィロメーラに突撃してくる。これまでの戦いで或いはトリモチに絡まれ、或いは錆の浮いた車輪だが、それでもその風の如き速度は健在だ。
「きたなー! でもこの迷彩、見切れるかなー?」
迷彩の魔法で自らの体を周囲の光景に溶け込ませるフィロメーラ。フェアリー特有の小さな体と合わせ、通常の視力では捉えることも難しい。しかし、
「迷彩で視覚を惑わす戦術は、先程既に体験しました。対策も、構築済みです」
ウインドゼファーは車輪剣に纏っていた『嗤う竜巻』を解き放った。2つの竜巻は荒れ狂いながら周囲のものを巻き込んでいく。
「これならば、多少狙いが外れても確実にダメージを与えられます」
「うわっ! 竜巻がいっぱい来た!?」
フィロメーラは竜巻の間を縫うように空中戦のテクニックを活かして高速で飛行。巧みに竜巻を避けていく。だが、
「例え迷彩があろうと、竜巻から逃れるように動くのであれば狙いを定められます!」
それもウインドゼファーの計算の内だったようで、横薙ぎに振るわれた車輪剣がフィロメーラの小さな体を捉えた――かに見えたのだが。
「そっちが攻撃一杯出してくるなら! じゃあこっちもいっぱい出す!!」
ウインドゼファーの切り裂いたもの。それはフィロメーラの残像だった。
「これは!?」
気付けば無数のフィロメーラの残像が、宙に漂っては消えている。
「小癪ですね。ならばこちらも数で勝負と行きましょう」
ウインドゼファーが車輪剣を振るえば、新たに2つの竜巻が発生。合計4つとなった竜巻は、周囲の花びらを巻き上げながらも次々にフィロメーラの残像をかき消していく。
「数が増えた分、一つ一つの竜巻の威力は弱まってる! これならいけるかも!」
フィロメーラは直感的に竜巻の最も風の弱いポイントを見つけ出すと、自らの身をオーラで包み込み、そのポイント目掛けてスライディングするように突っ込んでいった。
「飛び込む勇気が決め手だ!!」
竜巻の暴風に煽られ切り刻まれながらも、なんとか竜巻を突破したフィロメーラは、竜巻の風圧すら利用して、一気に上空高く飛び上がる。そして、
「スーパー! 流れ星!! キーーーック!!!」
空中をで宙がえりをするように反転すると、隕石の落下するが如き超加速で、ウインドゼファーに迫っていった。その加速は最早風すらも超えて音速に迫り、ウインドゼファーに反応する隙すら与えない。
「これがあたしの全力だーっ!!」
そして炸裂した光り輝く必殺のキックが、ウインドゼファーの腹部を貫いたのだった。
成功
🔵🔵🔴
揺歌語・なびき
もてる全ての勘を駆使し回避行動
足場が崩れる瞬間を狙って躱すことで、敵の狙いが定まりにくくする
回避しきれないなら耐え凌ぐしかない
【野生の勘、第六感、激痛耐性】
喚んだ手鞠を敵の暴風に煽られるフリで操作
彼女の四方八方に配置
なるべく不規則に、悟られぬよう
銃による攻撃とおれ自身が負傷することで囮になる
視線はあくまでも手鞠ではなく彼女へ向け言葉重ね
【援護射撃、催眠術、誘惑、コミュ力】
そのまっすぐさはいっそ憧れるよ
欲望を受け入れる様も清々しいくらいだ
きみは、おれを死なせてくれるか
再び攻撃されるタイミングを狙い
彼女を中心として一気に手鞠を集め爆破
【罠使い、追跡、串刺し】
おまえじゃ俺を殺せない
まっすぐすぎるから
●手毬の包囲
「どうやら、追い詰められていたのは私の方だったようです」
腹部に開いた穴から血を滴らせながら、ウインドゼファーは独白する。
「ですが最後まで、門番としての役割は果たして見せましょう」
ウインドゼファーが覚悟を決めたように車輪剣を振り上げると、彼女を中心に発生した巨大な竜巻が、花の足場を含めた全てを無差別に破壊し始めた。
「来た――。持てる力の全てを駆使して、躱してみせる」
揺歌語・なびき(春怨・f02050)は人狼としての勘を研ぎ澄まし、竜巻の動きを見極め、崩れる足場からまだ残っている足場へと飛び移っていく。だが、竜巻の動きは不規則で荒々しい。やがて、飛び移れる範囲に無事な足場がなくなっていった。残された道は、竜巻を突破してその効果範囲外へ逃れること。
「耐え凌ぐしかないか」
痛みへの耐性を持つなびきは、大きく跳躍し竜巻に飛び込んだ。痛みは無くても当然体は無傷で済むわけではない。竜巻を抜けた頃には、すでに彼の全身はボロボロになっていた。
「後方へ逃げましたか。そのまま帰るのであれば見逃しましょう。ですが、ここを突破しようというのなら、命を捨てる覚悟はしてもらいます」
竜巻の中心から、ウインドゼファーの声が響く。
「そのまっすぐさはいっそ憧れるよ。けど、少しは抵抗させてもらおう」
なびきはユーベルコードを発動させ、28個の手毬を自身の周囲に呼び出した。
「あの花が、見えるだろ。さあお行き」
なびきの念力によって操られた手毬が、一斉に竜巻に突入していく。目指すはその中心に佇むウインドゼファー只一人。だが、彼女の周囲を吹き荒れる暴風が手毬を散り散りに吹き飛ばし、ひとつとしてウインドゼファーの元までは辿り着けない。
「帰る気がない、というのなら、私自ら止めを刺して差し上げましょう」
ウインドゼファーが車輪剣を構える。なびきは小型銃『ハローグッバイ』を構えると、向かってくるウインドゼファーに銃口を向けた。
「きみの欲望を受け入れる様は清々しいくらいだ。きみは、おれを死なせてくれるか」
なびきが銃を発射したのと、ウインドゼファーが動いたのは、ほぼ同時。風に乗ったウインドゼファーはわずかに身を逸らすだけで銃弾を回避し、
「死にたいというのであれば、あなたのその欲望、叶えてあげましょう」
車輪剣でなびきに斬りかかった。なびきは野生の勘でなんとか致命傷を避けたものの、下腹部を深く抉られる。
そのまま駆け抜けていったウインドゼファーは地面を蹴って反転すると、なびきに止めを刺すべく、再度突撃を仕掛けた。
「その手負いの体では、もはや避けられないでしょう。これで望みどおりに殺してあげます」
まっすぐになびきを見つめるウインドゼファーは、逆にその集中力故に、気付いていなかった。いつの間にか自分の周囲が、28個の手毬に包囲されていたことに。
「おまえじゃ俺を殺せない。まっすぐすぎるから」
「!?」
ウインドゼファーが自分に向かってくるように仕向けたのも。
あえて手毬を竜巻に突っ込ませ、周囲に散らばらせたのも。
ウインドゼファーの注意を自分一人に向けさせたのも。
全てはこのための布石。
次の瞬間、全ての手毬が同時に爆発を起こした。全方位での同時爆発には、いかに風を操るウインドゼファーとはいえ対処しきれない。
彼女の体は吹き飛ばされ、そして花の足場に叩きつけられた。ぶわっと舞い上がった花びらが、彼女の体を包みこんでいく。これまでの戦いのダメージがなければ、或いは耐えられたかも知れない。だが相次ぐ激戦に、彼女の体はもう、限界を迎えていた。
「門番としての役割すら果たせないとは。何より、私の速さが通用しないとは。無念……です……」
その言葉を最期に残し。ウインドゼファーの姿は骸の海に飲まれていったのだった。
成功
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