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バトルオブフラワーズ⑪〜勁風吹き荒び

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ #ウインドゼファー

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「モンキーに続きバニーまでとは、驚きました」
 驚きを声色には乗せず、怪人は静かに呟いた。
 吹き荒れる風の中心。佇む赤い仮面からは、その感情を窺い知る事は叶わない。
 知れる事はただ一つ。仲間の敗北の報を受けながらこの場を退かぬ彼女こそ、その門番であるという事。
 花嵐の下、暴風の使徒が敵を待つ。


「女性らしいですよ」
 と、あまり役に立たない情報からカルパ・メルカは切り出した。
 何の話かと言えば、キマイラフューチャーでの話。もっと言えば、比喩ではなく物理的に真っ二つに割れたキマイラフューチャーで繰り広げられる、大戦争バトルオブフラワーズの話である。
 かのメンテナンスルートは中々にショッキングな絵面であったが、戦場が中枢部システム・フラワーズへと移る頃には全く話題に上らなくなった。慣れとは恐ろしいものだ。
 さておき、今回のお仕事について説明しよう。六種のザ・ステージの攻略を経て新たな局面を迎えた当戦争では、ここまでにエイプモンキー、ラビットバニーと、二つの関門を突破してきた。
 となれば当然、続く目標は第三の関門である。ここを通らなければオブリビオン・フォーミュラたる大首領の下へと辿り着く事はできない。

「そんな訳で今回は、スピード怪人『ウインドゼファー』のお相手をお願い致したく」
 ウインドゼファー、それが門番の名。怪人軍団の幹部の一人である。
 そして、幹部である、という事は、攻略に際して先の二人と同じ手順が必要になる、という事を意味した。
 即ち、過去の例と同様に、何度でも骸の海から蘇る、という事であり、一定の期間内に許容値を超える数を打ち倒さなければならない、という事である。
「全く厄介な能力ですよね。で、能力と言えばユーベルコードですが、どうやら風を用いるみたいです」
 風の名を冠するだけあり、第三の幹部は『風を操る能力』を有するようだ。
 そう、風を操る。たったのそれだけ。
 マニアック怪人らのそれに比べると随分と慎ましく思えるが、油断はできない。他の幹部のような特異性を持たずして、彼らと肩を並べているのだ。弱い筈はない。
「この場にいる皆様の誰よりも速い、そう考えて頂いて差し支えないかと」
 スピード怪人の力は、その速度。彼女に先んずる事は絶対に不可能、そう断言できる程に圧倒的なスピードが、その真価。
 シンプルな技能であり、それ故に強力だ。何しろエモさで無効化されたりとかしない。キマイラフューチャーだしどうせ今回もああいうノリだろう、なんて高を括っていては、為す術なく敗北を喫する結果になるだろう。予想外にガチ勢である。
「とは言え、先制攻撃を掛けてくる相手なら過去にもありましたし、工夫次第で破れなくはない筈ですから」
 強敵ではあるが、どうにかして破らなければこの戦争の勝利はなく、敗北した時どうなるかは知っての通り。
「難しい仕事ですが、よろしくお願いします」


井深ロド
 お目通しありがとうございます、井深と申します。
 佳境のようです。お付き合い下さい。

 敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
 この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。
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第1章 ボス戦 『スピード怪人『ウインドゼファー』』

POW   :    フルスロットル・ゼファー
全身を【荒れ狂う暴風】で覆い、自身の【誰よりも速くなりたいという欲望】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    ソード・オブ・ダイアモード
対象の攻撃を軽減する【全タイヤ高速回転モード】に変身しつつ、【「嗤う竜巻」を放つ2本の車輪剣】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:藤本キシノ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リアナ・トラヴェリア
…この人、速さを求めたんだ
何かを求めることで人から外れてしまったのならその先に何を見たかったんだろう
考える時間はないよね戦わないと

迫ってくるのは高速飛行からの突撃、だよね
なら追いかけるのは得策じゃない、狙うは動きを見切ってからのカウンター
黒剣の形をいつでも振り抜けるようにして…イアイ、だったかな。ああいう感じで反撃を狙うよ

目覚めゆく白翼の閃光は黒剣での攻撃が当たった瞬間に使うよ、逃れられないタイミングで
もしゼファーに攻撃を突き刺す事ができれば黒剣を変形させて抜けにくくするよ。捕まえたら確実にダメージを与えたいな

…貴女は走ることで見える世界を変えたかったの?
でも、欲しいものは渡せないよ!



 咲き乱れる花々の領域、システム・フラワーズ。決戦場を謳うには聊か華やかに過ぎるその空間に、それはいた。
「来ましたか、猟兵」
 短く紡がれた言葉と共に、花の絨毯が巻き上がる。荒ぶる颶風を纏い、空高く飛翔する彼女こそが番人。ウインドゼファー。
 一体どれほど速さを求めれば至れるのだろうか。それが尋常の速度域にない事は一目で見て取れた。速さを求め続けて、その先に何を見たかったんだろう。そう浮かんだ疑問を振り払い、猟兵、リアナ・トラヴェリアは刀を構える。
 言葉の通じぬ手合いではないのだろうが、交わす時間はない。考える時間も。音すらも置き去りにするあの恐るべき加速が自身へと向けられれば、半端な距離などないに等しい。勝負は一瞬。カウンターの一撃に全てを懸けて、黒騎士はその瞬間を待つ。そして。

 リアナの誤算は、その速力。十全に備えた上で尚、反撃と回避の両立は叶わず。居合の一閃は過たず装甲を削るも、襲撃の威力を殺すには至らず、白翼は目覚めの機を逸した。
 激突の後、吹雪く花弁を引き裂いて奔る影が、一つ。それは一人が勝ち、一人が斃れた事の証左。
 否。二人がまだそこにいた。嵐の化身の猛撃をその身に受けて、しかし撥ね飛ばされる事なく、振り落とされる事なく、浅く突き立った黒剣にしがみ付き、喰らい付く竜の子。
 ウインドゼファーの誤算は、その覚悟。未来をもたらす為の戦いが無傷で済むものばかりの訳はなく、衝撃に貫かれて尚、少女の闘志は衰えない。
「墜ちなさい」
 仮面の下から放たれた声は、周章を伴って聞こえた。暴風が狂い、航跡が荒れる。根を張った剣が剥がされるまでに、数秒。
 僅かな、しかし先の交錯に比すれば永遠にも近い時間の中、リアナは流れ行く世界を見る。彼女は、走る事でこの世界に触れたかったのだろうか。あるいは、このもっと先にあるものに。
 それはきっと悪くない景色で。でも。
「でも、欲しいものは渡せないよ!」
 今日は、その為にここへ来たのだ。決意を乗せた黒剣が初撃の傷を今一度抉り、喰い込む。待ち望んだ、逃しようのない好機。
 風の中、解き放たれた白が吼えた。今度こそ、必殺の閃光が天を灼く。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ブイバル・ブランドー
機動力、火力、判断力…どれも勝てそうにないな。近接戦闘は危険だと判断した。どうにかして遠距離戦に持ち込みたいところだ

恐らく相手は高速の突撃を仕掛けてくるだろう。互いの距離が近くなった時に、兵器マグネティックビットを奴に投擲する。奴は全身も武器も金属で構成されているようだから、これでゼファーを遠くまで飛ばせれれば遠距離戦に持ち込めるのだが。

けれどまあ、飛ばしたところですぐに距離を詰めてくるのだろう。その前にユーベルコードで荷電粒子砲を大量複製して弾幕を張る。狙撃の才能は無いから、徹底的な面攻撃で対処する

この防衛線まで突破されたのなら、もう荷電粒子砲を自動鋸形態にして捨て身の攻撃を狙うしかあるまい



 カメラアイが静かに稼働した。映像を解析。機械の眼が見据える先には、侵入者を認め旋回する神速の魔人。
 なるほど、速い。いや、ただ速いだけではない。恐らくは機動力、火力、判断力、どれをとっても自身の性能では及ぶまい。
 ではどうするか。データが必要だ。判断力で敵わぬなら、判断材料を増してその差を埋めなければならない。
 観察、計測、分析、集積。
 彼はあらゆる戦場に適応する兵器として造られた。あらゆる戦場だ。雑兵を嬲るだけが戦場の全てである筈がなく、大なり小なり、戦力差を覆してこその適応。
 冷静に、迅速に、ブイバル・ブランドーの戦闘頭脳が勝利への道を探る。

 花園の空に大きな、彼女の駿足を思えば十二分に小さな弧を描いて、ウインドゼファーは紅のウォーマシンを正面に捉えた。
 窮屈な飛行はここまでだ。門番の任がある以上、全くの自由とは行かないが。それでもこの瞬間は、何にも縛られず、ただ真っ直ぐに駆け抜けるだけで良い。
「疾く。もっと捷く。もっと、もっと‥‥!」
 欲望が溢れた。新たな敵に、自らと似た形質を認めたからだろうか。誰よりも、彼よりも速くと。膨れ上がり、止まらない。
 纏う暴風が引き離されて、視界に映る豆粒が瞬く間に拡大した。そして、衝撃。
「‥‥!?」
 それが、伝わる筈の感触が、なかった。対の車輪剣にも、身体にも、衣服にも。直撃はおろか掠めた形跡すらない。
 何が。そう思う間もなく、探していた衝撃が襲った。

 自動二輪車を構成する素材。鉄、チタン、アルミ。炭素繊維、プラスチック、セラミック。エトセトラ、エトセトラ。
「当たりか」
 読み通り、奴の身体には強磁性体が含まれていたようだ。全てとは言わずとも、しかし戦闘用ドローンが見逃す程の少量ではなく、ならばこのマグネティックビットにとっては弾丸に違いない。
 はためく花葉を頼りに軌跡を追う。遅れて通過した暴風が、あわや、というところまで接近を許した事を教えていた。最大出力でもあらぬ方向へと撃ち返す事は叶わなかったようだ。危険な賭けだったが、これで良い。これが良い。
 その速度故に僅かな歪みで攻撃は外れ、二重の加速は即時の反転を阻み、番人の役目は戦域外への離脱も赦さない。敵の機動力を殺し、己の火力だけが活きる。この瞬間は、この一瞬だけは、ブイバルの、幻影機甲師団の間合い。
「お前に逃げ場は」
 現れたのは砲の群れ。凡百の戦車部隊のそれではない。銀河帝国が誇る超兵器たる荷電粒子砲。その数、二十九。
 針の穴を通す腕はないが、問題ない。その為の面制圧であり、飽和攻撃。
「──ない」
 光の雨が、二人の視界を埋め尽くす。

成功 🔵​🔵​🔴​

オクタ・ゴート
攻略は難しいでしょうが――しかし。それでもこの世界は終わらせません、必ず。

飛翔し、迫る暴風……なんと恐ろしい。防ぐ手立てがない。如何に防御を固めた所で私の身体は千々に飛び散る事でしょう。
――が、それこそ私の強み。撒き散らされた油は彼女の自慢の武具に侵入し、その動きを鈍らせるはず。私は潤滑油ではなく、廃油なのですから。
更に機械に入り込んだ我が身を炎で燃やし更に武具にダメ押しを。
もし暴風の鎧で相手に油が付着すること叶わぬなら……飛び散った我が身を繋いで巨大な網を形作り、その体を捕えましょう。西風を封じるは我が燃える汚泥の網。

「終わった世界に得るものなどない。既に貴方は負けている。もう、眠りなさい」



 目に映ったそれは、黒。花色の世界に混じる異物。迷うまでもない、幾度目かの来客に、怪人は纏う風を一段強めた。
 今の彼女は自らが定義した通り、門番。ドン・フリーダムがシステム・フラワーズを掌握するまでの時間稼ぎがその役目である。そして、その為の方法は大まかに二つあった。端的に言えば、敵の攻撃を凌ぎ続けるか、そもそも攻撃が不可能な状況へと追い込むか、この二択だ。
 ウインドゼファーの選択は断然、後者。粘り強く耐える事に適した能力ではない。速く、より速く。早急に脅威を排除する事こそが彼女の防戦。
「私達は、全てを手に入れる」
 疾風が強風へと変じた。そして強風が烈風に。接客の時間だ。

 目の当たりにしてみれば、それは正しく暴風だった。それも自然災害と異なり、自ら敵を選び、意思を持って一直線に襲い来る猛威。
 ‥‥なんと恐ろしい。
 そう思考した直後、いや、最中に彼の五体は弾けて飛んだ。攻略は難しいだろう、そう考えてはいたが、想定以上の敏速と破壊の力。いかに防御を固めたとて、これの前では薄皮一枚と違いあるまい。
 ――故に彼、オクタ・ゴートの策は成る。
 少し遅ければ気付いただろう。貫いた敵の感触が、肉ではなく水風船のそれに近かった事を。千々に飛び散ったかに見えた断片がその実、風に流されぬよう細く繋がっていた事を。
 つぶさに観察すれば、接触する以前に気付けた筈だ。山羊頭のヒトガタが、秘かに触腕を隠し持ったヒトデナシである事を。それ以前に、接触せずとも良かった筈だ。例えば、一度足を止めて“嗤う竜巻”を軸にした戦法へと切り替えれば、近付かずして封殺できた。
 ああ、しかし。ウインドゼファーは何よりも速度を選び、故にオクタ・ゴートの策は成った。

「終わった世界に得るものなどない」
 声が、聞こえた。右から、左から。上から、下から。前から、後ろから。そして中から。
 気付いた時には、遅い。気付きが遅かった訳ではない。西風は変わらず速く、ただ、勝敗はそれ以前に決していた。
「これは」
 剣の、肩の、踵の。高速回転モードでなくとも風に圧される筈の車輪が、止まっている。
 車輪だけではない。手足の関節で、装甲の隙間で、全身の動きを内から阻む何者かの存在。より適切に言い換えるなら、轢き潰した筈の猟兵。
「まさか‥‥!」
 防げなかったのではなく、防がなかったのか、と。叫ぶと同時、熱を伴い答えが返った。
 絡み付いた掩網が、忍び込んだ廃油が、燃える。内から、外から。
「既に貴方は負けている」
 宣告を振り払うように暴風が猛り、狂う。花弁が舞い上がり、ゴムの焼ける臭いが飛散した。
 だが、それだけ。いかに速くとも、既に命中した攻撃を避ける事は叶わない。
「もう、眠りなさい」
 赫々たる炎が揺らめいて、風の主が、墜ちる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雷田・龍子
◎SPD
ウインドゼファーが風を操るなら、私はそれを利用する。
対象の先制攻撃は受けるのではなく【見切り】、対象の力を利用し少しだけベクトルに変化を与え、いなす。
対象の力が強力であればあるほど効果がある。
受けてしまったダメージはアイテム【ドラゴンコイル】で攻撃力に変換する。
対象の先制攻撃に対処出来ても出来なくても構わずUC発動。

私に足場は関係ない。
私は雷を操る。
雷は暴風程度に負けない。
全身を帯電させる。

対象を【催眠術】にかけ惑わせようと試みる。
花の足場を【念動力】で操り、こちらの有利に働かせようと試みる。
対象の攻撃を【見切り】【カウンター】で渾身の【マヒ攻撃】を試みる。



 これで何度目だろう、万花の戦場に突風が巻き起こった。
 咲き匂う花々を舞い上げて、まだこの程度では足りぬと言わんばかりに、一帯を根こそぎ吹き散らす。今までの比ではない、気流そのものを武器とし、立ち入った全てを余さず飲み込む嵐の奔流。
 花陰へと沈んだ西風は、まだ死んではいない。

 揉まれる飛英の残骸を横目に、剣豪は悠々と死地へと踏み込んだ。
 剣の腕だけではない、豪放たる度量を兼ね備えてこその豪傑。雷は暴風如きには負けぬ、そう豪語する雷田・龍子は、この程度の風脚に怖気付く新兵ではなく、そして浅略に猛進するばかりの猪武者とも異なる。
 闖入者を斬り捨てんと迫る風の刃は、しかし血を流させる事なく空を切った。一度ではなく、二度、三度。その悉くが、寄手へと触れる前に自ずから進路を変える。不可視の斬撃を躱す神業。
 否。竜騎士にははっきりと見えていた。勢力故に互いに干渉する風圧が攻撃の型を単調にし、成立する数少ない経路を花唇の糸が明々と照らす。崩れた大地を念動力で積み固めれば、古流合氣の足運びにも支障ない。
 ゆるりと、しかし慥かに、赤毛の竜は間合いを詰める。反撃の距離へと。
「これが私の全力だ!」
 雷火が走り、風が、爆ぜた。

「速く、早く、はやく、ハヤクハヤクハヤク」
 紡がれる言葉は呪詛のように。催眠が効いているのか、精神に変調を来しているのは明白で。しかし、ウインドゼファーの暴風は未だに強大であった。
 先手を取る、その一芸だけで幹部の席にいる訳ではない。並みの怪人と一線を画するその力は、見切られて尚、仇敵を上から捩じ伏せる。
 外縁の旋風が微風にも思える殺し間の中心、雷電の鉄鎚は嵐の壁に阻まれた。颶風の凶刃が縦横に走り、その数と同じだけ稲妻の化身を刻む。
「雷は」
 しかし、龍子は退かず、更に一歩を踏み込んだ。
 光が弾ける。雷龍の毛が唸りを上げて、膨れ上がる電光。一度は掻き消された筈の雷が、蘇る。それは、全力の一撃を大きく越えて。
「――負けない!」
 己の全力で届かぬのなら、他者のそれを頂くのみ。
 風と雷が一つになり、今再び竜が吼えた。十重二十重の城壁を打ち破り、西風が穿たれる。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

吾唐木・貫二
速い?いや疾いな

【対策】
転移した瞬間にUC『邪鬼葬送』発動


【捨て身の一撃】の【覚悟】で【麻痺攻撃】かつ【気絶攻撃】の【カウンター】を放つ

カウンターにカウンターされたら?
そらぁ、【激痛耐性】で耐えながら避けられないように相手の体を押さえ込んでさらに【範囲攻撃】を乗っけてもう一度さね

重石を持ったままじゃ飛べねぇよ

【攻撃】
押さえ込めたのならUC【厄災の騎士】やUC【涙の痛みを拭う者】などの強化系UCで自身にバフを盛りに盛ってUC【極限浄化術式】をブチかます!

重く、想く、思い。そんな祈りを背負った一撃……それが俺の拘りなんでな

速いだけじゃ軽すぎて足りねぇんだよ

速くとも疾くとも想いから逃げられねぇんだよ



 風が吹き抜けた。

 戦地へと降り立った青年の五体へと、力が充ち満ちる。
 いや、言い直そう。彼は既に青年と呼ぶべきものではなかった。情に厚い好漢の姿は最早なく、そこに在るのは怪異を屠る機士の威容。
『これより貴様の葬送を執り行う』
 恩情が。憐憫が。宥恕が。手心へと繋がるあらゆる思考が、彼、吾唐木・貫二から抜けて落ちた。疾く殺せ、疾く果たせと、全身の細胞が叫んでいる。
 肉体の変容が殺傷力を、精神の変容が殺意を、二つの相互作用が殺害効率を爆発的に増大させる。ただの死者ではない、オブリビオンを葬り見送る為の異能。これこそが超高速葬送形態。この牙ならば、かの韋駄天にも届き得る。そう、この牙ならば。
 ――では、その牙がなければどうか。

 世界が傾ぐ。否、世界は、忌々しい程に鮮やかな花の領域は、今も変わらず安定を保っている。傾いたのは鉄騎の身体だ。満ちていた筈の力が、掌から零れ落ちる感覚。
 なぜ? 決まっている。この場で敵となるものは、ウインドゼファーただ一人。
 いつ? 決まっている。この場に現れたその瞬間。彼女に先んずる事は絶対に不可能で、先んじた彼女が外敵の準備を待つ理由はない。怪人は、人外の真鍮喰らいが取り得る最速のタイミングすらを踏み越えた。

 しかし、まだだ。動きを押さえ込むまでには至らなかったが、捨て身で放った反撃は魔人の仮面へと爪痕を残した。もう一度だ。次こそブチかます。
 覚悟が、痛みへの抵抗が、ふらつく身体に倒れる事を許さない。思い。想い。一撃に籠める祈りこそが騎械の神髄。重みを持たぬ、ただ速いだけの攻撃に膝を屈する訳はない。
 だが、本当にそうだろうか。彼女の一撃は軽かっただろうか。彼女の想いを、彼が知らないだけではなかったか。そして、敵の一撃は軽いと、そう断ずる男の想いは。脅威を安く見積もった上での覚悟は、油断と呼べるものではなかったか。
 ああ、こんなものはただの言葉遊びだ。想念の優劣など見えはしない。ここにはただ、厳然たる事実があるのみ。攻撃に回す筈だった熱量は、その多くを生命の維持に費やされて。魂だけで身を支える貫二の下へ、もう怨敵は降りて来ない。

失敗 🔴​🔴​🔴​

龍ヶ崎・紅音
アドリブ歓迎

【SPD】

まず、【力溜め】と【怪力】による、全力の【槍投げ】でウィンドゼファーを彼女から放たれる"暴風"もろとも【串刺し】するよ
槍の勢いがなくなっても、『焔竜化身』でホムラを焔竜形態にして炎【属性攻撃】の息吹を吐かせるよ
ホムラはそのまま、牽制と陽動のために彼女を足止めしておこうかな

わたしはその"暴風"を大剣で【武器受け】で防御してから、焔の翼で飛んで彼女の態勢が崩れた隙に、頭上から急降下して彼女が反応するまで早く黒い焔を纏った大剣の【捨て身の一撃】を仕掛けるよ
もし、この【鎧砕き】の一太刀を浴びせてさらに態勢を崩したらすかさず、横【なぎ払い】で追撃するよ
ホムラも援護してもらうよ



 楽園と見紛う薄紅の地平で、しかし景観を気に掛ける者などここにはいない。動くものは破壊者のみ。今もまた大地の欠片が引き剥がされて、微塵となって風に舞う。
 暴威の形は、円。立ち入る全てを区別なく刻み散らす嵐の渦。
 対するは、線。空気を焦がし突き進む一条の光芒。
 狂風の結界を白光が穿つ。風と熱とがせめぎ合い、踊る花吹雪が灰と化して崩れて消えた。ブラスター銃も斯くやと思われるその光の正体は、猛炎を纏う銀の槍。それも科学や魔術によるものではない、原始的な投擲による一撃。
「チ」
 舌打ちはどちらのものだったか。銀閃が怪人の肩部マフラーを溶断して抜けたが、浅い。最短最速の一投を芯から外された襲撃者は僅かに眉根を寄せて、攻防一体の暴風圏を膂力のみで打ち破られた門番は警戒の色を強める。初手はどちらにとっても満足の行かぬ結果で。
 ならば、次の手で優劣を争うまで。
「二度はありません」
 原動機と輪胎の鬼人が、花々を大地の軛から解き放ち。
『ゴォオオゥ!』
 その背後で、先刻まで槍だったものが唸りを上げた。

 車輪の剣が奔り、灼熱の息吹が爆ぜる。焼き切られた外套の切れ端が、削り取られた白銀の鱗が、花弁に混ざり舞い上がった。形勢はウインドゼファーが優位。埒外の力により通常のドラゴンランスの十倍もの体躯と化した槍焔竜だが、少しずつ、いや、急激に押されている。流石に幹部が相手では分が悪い。
 だが、かの竜の任務は撃滅ではなく牽制。そして、かの竜はただの竜ではなく、彼女の、龍ヶ崎・紅音の竜だ。単独行動ではなく、共闘こそがその本領。
「ホムラッ!」
 声は上から。深紅の翼を翻し、その少女は降ってきた。自由落下を凌ぐ、燃える地獄による急加速。身の丈近くある大剣が番人の鼻先を掠め、既に死に体だった花の足場へ止めを刺す。
「チ」
 二度目の舌打ちは、間違いなく西風のもの。
 力任せの強襲は隙だらけで、しかし反撃の道筋は劫火に覆われた。続く黒炎の斬撃が槍竜を守り、銀の尾撃が竜人を補う。人外の膂力で以て巨剣を軽々と振り回す少女だが、風の如き怪人と比ぶれば遥かに鈍重。紅蓮の噴流を用いた加速機動も、同じく怪人のそれには及ばない。だが。
「速い」
 名を一言告げただけ、ただのそれだけで成立する完全な連携は、正しく怒涛。袈裟懸け、体当たり、唐竹割り、炎の吐息、薙ぎ払い。連撃の嵐が、真の嵐に追い縋り。
「行っけぇええ!」
 そして、追い抜く。鉄塊の如き黒刃が閃き、鈍く、何かの砕ける音が響いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

揺歌語・なびき
もてる勘全てを駆使して回避行動
足場を崩されるタイミングで別の足場へ飛び移る
不規則なテンポで敵に認識され辛いように意識
避けきれぬ痛みは耐え凌ぐ
【第六感、野生の勘、激痛耐性】

その程度の風なら
子供の作った凧だって壊せないだろうな

そう挑発して
自分の銃撃と敵の暴風による花の嵐を盾に人狼咆哮
動きを鈍らせられたなら棘鞭で敵の身体を抉るように貫き無理矢理接近
【援護射撃、目立たない、追跡、串刺し】

鞭を支えに終の道化で大ダメージを狙う
回避されぬよう鞭で串刺しの身体は離さない
【傷口をえぐる、呪詛】

おそろしい野生が喰らえと嗤う
なけなしの理性が殺せと叫ぶ

死んでも離してたまるか
おまえを殺しきらなきゃ、おれも死ねないんだよ



 戻れ、と。そう、第六感が訴えていた。六番目のそれだけでなく、眼が、耳が、肌が、五感の全てが後退を叫ぶ中、人狼は軽やかに危地を歩む。
 余裕、ではない。ただ、辛うじてまともに歩けるこの足元は、力強く踏み締めれば保たないだろう、というだけの事。
「その程度の風なら」
 呟いた喉元を、掻き切らんとする勢いで何某かの金属片が掠めて行った。恐らくは、かの怪人の身体を構成していたであろうもの。あちらも万全からは程遠いのだろう。
 ならば勝機はある。そう理性に言い聞かせ、雑音の群れから前進の道を拾い出し、更に一歩。鎌風が脇腹を裂いて抜ける。己が増しな経路を選べているのか甚だ疑問だったが、足場の崩れ方から見て威力に多少の偏りはある筈で、ここまで死なずに来られているのだから成功の部類だろうか。少なくとも、その距離まで辿り着いた時、嘲りの言葉を口にする程度の余力は残せていた。
「子供の作った凧だって壊せないだろうな」
 烈風の影響を多大に受けて尚、攻撃が相手に届き得る、目と鼻の先。果たして挑発は効いているのかいないのか、無機質な表情からは読み取れない。
 ただ、門番は更なる暴風でそれに応え。揺歌語・なびきは、銃撃と咆哮を以て返した。

 灯滅せんとして光を増すと聞くが、今の彼女がそうなのだろうか。隠していた第三の手札を避け損ねる程度には死に掛けのようでいて、肩口に突き刺さる鞭を引き抜かんとする程度には活きが良い。
 まあ、どちらでも構うまい。同じ事だ。どちらにしても、敵は詰んだ。
「嗚呼」
 灰緑の男の口元が、歪んだ。哂うように。泣き叫ぶように。
 怪人の瞳には、どう映っていただろうか。ただの狂人か。それとも。
「――!!」
 ウインドゼファーの腕に今日一番の力が籠り、しかし、遅い。並みの猟兵が相手なら逆転の目もあり得たが、これは既に別のものだ。撃ち合いの距離ならいざ知らず、殴り合い、掴み合いの距離でこれが生贄を逃す事はない。
 深紅の仮面が、花園の成れの果てへと打ち付けられた。暴れる腕を鋼糸で縛り、カウルの隙間へと銃口を捻じ込み、疵を棘で押し広げ。得体の知れぬものが、なびきの顔で嗤う。何かの壊れる音が響いた。そして。
 一瞬の静寂の後。風が、止んだ。

 猟兵は残り、西風は去った。悍ましいものも。狼は独り、戦場の名残で天を仰ぐ。
『私は――』
 最期に、何と言ったのだろうか。明け渡していた耳には、はっきりとは残っていない。あるいは、彼女が骸の海から黄泉帰れば訊けるのかもしれないが。
「もう二度と遭いませんように」
 独白は最早、嵐に掻き消される事もなく。凪が、死闘の終わりを告げていた。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年05月30日


挿絵イラスト