バトルオブフラワーズ⑪〜その風をぶっ飛ばせ
新たな怪人への道が開いたよ……と、羅刹のグリモア猟兵――蛍火・りょう(ゆらぎきえゆく・f18049)は、集った猟兵たちを見回した。
「と言う訳で、今度は風をぶっ飛ばして来てくれるかな?」
マニアック怪人『エイプモンキー』と、カワイイ怪人『ラビットバニー』。
2体の幹部を討ち取り、怪人軍団の大首領である『ドン・フリーダム』は目と鼻の先。
だが、最後の門番を倒さなければ、そこにたどり着くことは出来ない。
3体目の幹部、スピード怪人『ウインドゼファー』。
その能力は『風を操る』と言う、至ってシンプルなもの。
「今までの幹部と戦った人は、ちょっと拍子抜けだったりするかな?」
反則級な能力を持ってる怪人ばっかりだったもんね。
「でも、そんなシンプルな能力で幹部を務めてるって事は、それだけ単純に『強い』とも言えるね」
ウインドゼファーの操る風は、飛行さえも可能にするほどに強い。
だが真に脅威なのは風の威力ではなく、その技の『速さ』なのだ。
「ウインドゼファーを相手に、先手を取る事は不可能だ。どんなユーベルコードを使おうとも、彼女の技の方が確実に早く、君たちに届く」
対策を講じなければ、その1撃で戦闘不能に追い込まれてしまいかねない。
まずは、いかにして敵の先制攻撃を凌ぐのか。
そして、いかに反撃をしていくかが鍵となる。
「彼女、本当に強いよ。一切の油断なく、全力を尽くして戦って、それでも勝てる保証なんて無いくらいに」
そこまで言って、りょうはふふっ……と、笑みをこぼした。
そこまで強い奴と殴りあえるなんて、何だか楽しい気分になってしまうね?と。
「案内役でなければ、僕もみんなと一緒に、殴りに行きたかったなぁ」
風そのもののような、速さと激しさを持つ怪人、ウインドゼファー。
だが風とは違い、彼女には実体がある。
しっかりと策を練り、覚悟を持って挑めば、猟兵達の牙は必ず彼女に届くはずだ。
「それじゃ、覚悟は決まったかな?――君たちの武運を祈っているよ」
音切
音切と申します。
このシナリオは、リアイベ『バトルオブフラワーズ』のシナリオとなります。
下記の注意書きをよく読んで、ご参加ください。
====================
敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。
====================
※ウインドゼファーの戦場の戦力「40」をゼロにできれば制圧成功ですが、
それ以上の成功数があった場合、上回った成功数の半分だけ、
「⑬『ドン・フリーダム』」の戦力を減らせます。
第1章 ボス戦
『スピード怪人『ウインドゼファー』』
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POW : フルスロットル・ゼファー
全身を【荒れ狂う暴風】で覆い、自身の【誰よりも速くなりたいという欲望】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : ソード・オブ・ダイアモード
対象の攻撃を軽減する【全タイヤ高速回転モード】に変身しつつ、【「嗤う竜巻」を放つ2本の車輪剣】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:藤本キシノ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
勘解由小路・津雲
最後にひねりのない実力勝負か、おもしろい。
【攻撃】 【符術・結界陣】を使用。
【作戦】
(防御)まずユーベルコードを使用しようとし、先制攻撃で足場が崩される。このとき崩された足場に飛込むなど、風にあまり抵抗せず吹き飛ばされ、ダメージを最小限にしようとする。そのあと、道具の「式神」につかまり、体勢を立て直す。
(攻撃)その間、霊符は一度吹き飛ばされたように見せかける。そして密かに、ウィンドゼファーの周囲に展開、狭めていって行動を封じる。
「いくら早くても、閉じ込められてはかわせまい!」
霊符は閉じ込めることに全力を使い、もたもたする時間はないだろうから、錫杖を「投擲」して攻撃。
アドリブ・連携歓迎
一一・一一
「足遅いんですよ、僕は…でも、いくらでもやりようはあるんですよね」
まず『エスクード』を起動し相手の攻撃を「盾受け」で防ぎつつ『スパイダー』起動して壊れてない足場にワイヤーを飛ばし、「ロープワーク」で巻き上げて崩壊してる足場から逃げつつ上空へ飛び上がります
それと同時に『噂話の友人達』を起動。この場面で出てくのはおそらく『ヘルメットを貫くカブトムシ』
相手の頭部めがけて飛ばします。当たれば貫いたヘルメットめがけて『イーグレット』で「炸裂弾」を「スナイパー」するっす。
…首なしライダー呼べばかっこいいけど、効果的じゃないっすからね
アドリブ等歓迎です
●
「来ましたね」
足元には花。ふわりと、花びらの舞い飛ぶ幻想的な光景の中に、それは居た。
硬質的な光を放つ金属の体は、この光景の中ではあまりに異質。
「モンキーに続きバニーまで倒した貴方方の実力を、過小評価はしません」
では、始めましょう……と。
猟兵達の前に立ちはだかる、最後の怪人。ウインドゼファーが風を纏う。
その風は、徐々に激しく、強く。
言葉よりも雄弁に、これ以上先へは進ませないと、そう猟兵達に語っていた。
●
吹き荒れる風に目を細めて、勘解由小路・津雲(明鏡止水の陰陽師・f07917)は、口元を上げた。
これまでの幹部は『創造』の勝負であったり『あはれ』が必要であったりと、まぁ随分と手を焼かされたものだが……。
「最後にひねりのない実力勝負か、おもしろい」
ならば、全身全霊で己の技をぶつけるのみと、津雲は霊符を構える。
「遅いっ!」
ゼファーの放つ風は速い。
どの猟兵の、どの攻撃よりも早く、息も出来ない程に、めちゃくちゃに吹き荒れる。
一一・一一(都市伝説と歩む者・f12570)は、発現した大盾を両手でしっかりと支えて。
腰は低く、片足を大きく後ろへ。激しい暴風を、盾によって正面から受けとめた。
時折複雑に向きを変える風が、盾をめくらんとしてくるが、しっかりと体重を使って支えれば、さしもの風も厚さ31mmの大盾を貫くことは出来ない。
だが、ゼファーの攻撃は、ただ風をぶつけるだけのものではない。
ふいに、津雲の足元が沈む。
しかと猟兵達を支えていたはずの、花の床が解けていく。
「危ない……!」
誰かが、津雲に向かって叫んだ気がした。
落ちていく体。
手にしていた霊符は風に攫われて。
咄嗟に手を伸ばすけれど、伸ばした先の床が、更に崩れていく。
何も掴めないままに、津雲の体が穴へと消えた。
「――っ」
床の崩壊は止まらない。
何とか盾により踏みとどまっていた一一もまた、下手に動けば風と餌食となるがゆえに、動く事ができない。
なす術のないまま、ついに床の崩壊は、一一の足元へと達する。
一一の体もまた、崩壊していく花と共に落ちていく。
「他愛のない。この程度の者達に、モンキーとバニーは倒されたというのですか」
赤い仮面に覆われた表情を読むことはできないが、風を収めたゼファーが落胆したような声色で言葉を紡ぐ。
だがその時、崩れた足場。穴の中から、声がした。
「噂話から産まれた僕の友達…一緒に戦おう」
崩れた足場から飛び出してくる一つの影。
「戦って、勝って、僕らの存在を証明しよう!」
ワイヤーを手にした、その影……一一が、叫ぶ。
「なるほど。落ちる直前に、それを引っかけていたと……」
身構えたゼファーに迫るのは、大量のカブトムシ。
いや、ただのカブトムシではない。これは一一のユーベルコードによって発現した都市伝説。
本物のカブトムシではあり得ぬ大きさの鋭い角を備えたそれは、羽を震わせてゼファーへと飛ぶ。
「この程度で」
すかさず、ゼファーが風を巻き起こす。
見た目は屈強そうなカブトムシであっても、その激しい風の前には、ゼファーに近づくことができず、瞬く間に吹き飛ばされてしまった。
(効果が薄い都市伝説だったっすか……?)
いや。そんな筈はない。
このユーベルコードの効果を考えれば、あれはゼファーに最も有効な都市伝説であった筈だ。
カブトムシの都市伝説。あの立派な角。そしてゼファーの姿。
ならば、この場面で出てきた都市伝説は恐らく……。
――『ヘルメットを貫くカブトムシ』
ならばゼファーの頭部に当てれば、大きなダメージを入れられるに違いない。
だが、風を操り、速さに長けるゼファーの頭部に当てるには、相応の工夫が必要だった。
「このような小細工で、私を倒せるとでも?」
吹き荒れる風を纏って、ゼファーが一一へと迫る。
しかし何故か、一一の口元には笑みが浮かんでいた。
「えぇ。倒せるっすよ」
――僕たちなら、ね?
ゼファーの動きが止まった。
いつの間にかゼファーを囲むように展開していた霊符が、その動きを阻むように結果を成している。
「お前、生きていたのか!」
ゼファーが振り返った先には、式神である鳥に捕まっている津雲の姿。
その身に纏う白き儀礼服は、今や真っ赤に染まっている。
あのゼファーによる先制攻撃。あえて抵抗しないことで、損傷を最小限に出来ればと思ったのだが……。
逆に言えばそれは、無抵抗で風を喰らったという事。
無差別の全方向攻撃であったとはいえ、ゼファー程の実力者の攻撃ならば、相応の威力がある。身を任せるにしても、最低限の防御をする用意はあった方が良かったかもしれない。
津雲にも、一一にも、それぞれに思惑が外れた部分こそあるものの、しかしそれは大きなミスではない。
だが今は、実力者であるゼファーがこの戦いの流れを握っている状況だった。
ならば、その流れを覆すのみ。
それは今からでも遅くはない。
ゼファーの攻撃に、あえて抵抗をしなかった事で津雲が得た、大きなメリット。
それは崩落した足場から落ちて見せた事によって、ゼファーが津雲は戦闘不能になったと判断した事。
完全に注意が外れていたがゆえに、ゼファーは気付かなかったのだ。
ただ暴風に吹き飛ばされてしまったように見えた津雲の霊符が、ゼファーが一一を相手取っていた間に、確実に彼女を包囲していた事に。
「足遅いんですよ、僕は……でも、いくらでもやりようはあるんですよね」
共に崩落した足場から落ちたがゆえに、津雲の無事を知っていた一一が呟く。
そう例えば、1人では届かずとも。仲間とならば。
「いくら早くても、閉じ込められてはかわせまい!」
深手を負った体が、痛みと言う悲鳴を上げている。
血が染みた儀礼服は重く、式神に捕まる手も痺れて、いつ落ちてもおかしくなかった。
だがこの好機、決して逃しはしないと、津雲は更なる霊符を放って、より強くより堅固に境界を結ぶ。
「おのれ!」
ゼファーが吼え、霊符を打ち砕かんと風が荒れ狂う。
だが今度ばかりは、一一の放つカブトムシと、津雲の錫杖の方が速い。
交差するような、頭部と背中への攻撃にゼファーが呻く。
だがまだ、終わらない。
間髪入れずに放った炸裂弾を、一一が射抜けば。甲高い炸裂音と共に、ゼファーの体が吹き飛んだ。
「き、貴様ら……」
「さすがに、首なしライダーとはいかなかったっすか」
僅かな閃光の消えた後、ゼファーの姿はまだそこにあった。
膝も付いていない。
だが、その頭部には深々と刻まれた裂傷と、焼け焦げた跡。
戦いの流れは、今、確実に猟兵達に傾きつつあった――。
苦戦
🔵🔵🔴🔴🔴🔴
ニレッド・アロウン
ただその能力だけでここまで来たのはお見事ですね。個人的にそれだけでボス格なのはお見事だと思いますよ?
相手の先制攻撃は、【オーラ防御】で魔力を纏わせた水晶鋏による【武器受け】で耐えましょうか。
その後は相手の攻撃を【視力】である程度捉えて水晶鋏で対応しましょう。相手もどんどんギアを上げていくでしょうが、そこで思いっきり【挑発】しましょう。貴女のスピードは、その程度の物なのですか?
相手が先程より素早く攻撃するのを【第六感】で捉えたのなら、【無敵城塞】を発動します。あの速さです、硬すぎるものにぶつかれば自壊するでしょう。
私も無事じゃない?当たり前です、だから【覚悟】して立つんですよ。
アドリブ・絡み歓迎
風を操る……ただそれだけの力。
「ただその能力だけでここまで来たのはお見事ですね」
ニレッド・アロウン(水晶鋏の似非天使・f09465)の口からこぼれたのは、素直な心からの言葉。
エモい等という、今一つ意味が分からないものを求められるよりは、ずっと分かりやすい。それゆえに、その力だけで他の幹部達と並び立つ姿は、見事という他にない。
「私もお前たちを侮り過ぎていたようです」
過小評価はしていないつもりでしたが……と、呟くゼファーの表情は読めないが。
その声色と、零れた吐息。もしや笑ったのだろうか。
ゼファーの体を暴風が包んでいく。
何にしても、先に戦い始めた者達の奮戦が、彼女の闘志を更に燃え上がらせてしまった事は間違いない。
「――っ!?」
忽然と、ゼファーの姿が消えた。
考えるよりも先に、ニレッドは全開にしたオーラを纏って、鋏を構える。
それと同時、金属の塊を叩きつけるような、異音。
しかと構えていたはずの鋏が強く押し返されて、ニレッドの腹部を打つ。
かはっ……と、息がこぼれるが、それでもこの鋏だけは離すわけにいかない。
必死で柄を握り直して。足に力を籠め、ゼファーの刃をいなす。
弾かれたゼファーの体はその勢いのまま、高く、空へ。
(なんて速さと威力ですか)
だが、いい速さだった。
ゼファーは空の上。まだ彼女の攻撃は続いている。
次はもっと速くなるだろう。その次は更に……。
口元が笑いそうになるのを、抑えて。ニレッドは鋏を握り直した。
ここから先は、いわば駆け引きだ。
ニレッドの攻撃が決まるのが早いか。それともゼファーの攻撃に沈められてしまうのが早いか。
集中する。その目に、全神経を研ぎ澄ませて。
二度、三度。高速で向かい来る刃を、辛うじて鋏でいなす。
だが……。
(私の『視力』では、この辺が限界ですか)
打ち合うごとに徐々に、威力を殺しきれない攻撃が増えていく。
花を散らして、羽を散らして、ニレッドの体に、傷が刻まれていく。
力の差はハッキリしている。
あの速さに、正面から武器を振るっては、一方戦になる事など端から承知の上。
だから、ニレッドは笑っていた。
「何がおかしい?」
くすくすと、楽し気に。ニレッドはゼファーに微笑んで見せた。
「貴女のスピードは、その程度の物なのですか?」
「貴様っ……」
ゼファーが更に速さを増す。
もう、目で捉える事などできはしない。
だが、視力だけでは無理でも、彼女の速さはこの体に、感覚として刻まれている。
ゼファーが敵意を向けてくる、その瞬間の総毛立つ感覚。
――今!
ゼファーの体がニレッドへとぶつかる刹那。
ニレッドの体が、花びらの一弁から、髪の一筋、魔力の一滴に至るまで。その全てが『防御』という1点に集約する。
金属の塊を叩きつけるような、異音。
だが、今回弾き飛ばされたのは、ニレッドの鋏ではなかった。
「馬鹿な……正面から、受けるなんて……」
あらゆるものを跳ね除ける、鉄壁の守り。
まさに無敵の城塞に、真正面から突っ込んだゼファーは、マフラーが折れ、腕がひしゃげた惨憺たる姿であった。
「下手をすれば、お前が死ぬというのに……」
立ち上がらんとするゼファーに、無敵城塞を解いて振り返るニレッド。
ほぼ無敵の力とはいえ、先の一撃は流石に堪えたか、少し足元がふらつく。
それでも何を当たり前の事を……と、ニレッドは再び笑ってみせた。
だから『覚悟』して立つんですよ、と――。
大成功
🔵🔵🔵
アリス・フォーサイス
あの竜巻は厄介だな。遠距離から魔法を打っても届かなそうだもん。
こうなったら踏み込むしかないね。
攻撃を見切ってかわしながら、接近するよ。避けきれないと思ったら、ファデエフ・ポポフゴーストで瞬間テレポートしてなんとかかわすよ。
近距離までつめたら、手のひらを相手の頭につけて、ここからウィザード・ミサイルを全力魔法で発射だ。
どんなに速くても、ゼロ距離の魔法は避けられないよね。
ぼくだって、こんな超強力な攻撃をかいくぐるなんて怖いよ。でも、勇気を出して前に、これが新しいお話を作るなら、ぼくは進むよ。
状況は、一進一退と言ったところだろうか。
確実にダメージを与える事は出来ている。だが、ウインドゼファーの纏う風は、未だ強く。猟兵達もまた無事とは言い難い。
戦場に響くのは、けたたましいまでの摩擦音。
ゼファーの肩と両足、そして手にする車輪剣が唸りを上げて回る。
(あの技は厄介だな)
ゼファーが使う技の情報は、既に揃えてある。
これよりあの車輪剣から放たれるのは、嗤う竜巻。
それなりに距離を取っているにも関わらず、ゼファーの放つ風の余波で、アリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)のチョコレート色の髪が柔らかに揺れていた。
「――っ」
巻き起こった竜巻が、アリスに迫るのはまさに一瞬。
ほとんど勘を頼りに、アリスは真横へと飛んでいた。
耳元……ほんの数センチと言った所を、しゃがれた人をイラつかせるような笑い声が通り過ぎていく。
(この速さは、想定以上だな)
見切れると踏んでいたけれど、今のアリスの技量では足りない。
技能をどう使うのかを工夫できれば話は変わるが、ゼファー程の実力者の攻撃を、技能頼りにかわそうと言うのならば相当な技量が必要だ。
ユーベルコードを使うべきかなと、そんな考えが頭をよぎる。
けれど、それはダメだと自身に言い聞かせるように、ふるふるとアリスは頭を振った。
――どんなユーベルコードを使おうとも、彼女の技の方が確実に早く、君たちに届く。
出発前に、そう言われたのだから。
では、どうする?
諦めるのか。
速すぎる竜巻を前に、打つ手が無いとそう言って。
(そんなの、ぼくらしくないよね!)
アリスは顔を上げて、足を進める。
1歩、2歩。徐々に速さを増して、ゼファーへと向かい駆けていく。
襲い来る竜巻をかわしきれずに、体は傷ついて。
電子の海より生まれし人形の体でも、壊されるという恐怖はある。
出来る事なら逃げてしまいたいと、足が震えるけれど。
止まる事はしない。踏み込むしかないのだから。
だって……。
(遠距離から魔法を打っても届かなそうだもん)
だから近くへ。より近くへ。
「うろちょろと……いい加減、倒れなさい」
最大の竜巻が、アリスを襲う。
直撃は辛うじて避けた。
避けた……が、四肢にヒビが広がっていく。
ここまでだ。
先ほどまでとは違った意味で、足は震えて。腕も重すぎて。
あと1撃攻撃を受けてしまったら、もう立ち上がる事はできないだろう。
ゼロ距離とはいかなかった……けれど。
(どんなに速くても、この距離なら避けられないよね)
もう次はないのなら、力を残しておく必要などない。
だからこそ、全ての魔力で。
掌より放たれるのは、ここまで進み続けた意味を無にしないための、全身全霊の炎。
その激しい火柱は、容赦なくゼファーの体を焼き焦がす。
――これは、とある少女の勇気の物語。
苦戦
🔵🔴🔴
星群・ヒカル
姐ちゃんにおれの宇宙バイク『銀翼号』との絆を見せてやるッ!
頭部保護と視界確保のため超宇宙学生服はヘルメット付き《宇宙空間モード》に
銀翼号に『騎乗』し、全力前進
足場がなくなる直前にジャンプし、『銀翼号』を宇宙空間対応モードに変形
宇宙空間と同じ要領で銀翼号搭載のエンジンとスラスターを使い
姿勢を立て直したら「さあ、反撃だ!」と『存在感』を出そう
奴が速いのは反応と移動速度
思考の速度は人並みだから
急に「予想もつかない動き」をすれば隙ができるはずだ
このまま自然落下すると思わせ、銀翼号で敢えて「真下に加速」
重力と合わさって猛スピードだ
そしてゴッドスピードライドを発動し、驚いている敵へ流れるように突っ込むぞ!
猟兵達の決死の攻撃によって、ウインドゼファーは目に見えて消耗していた。
肩のマフラーは折れ、手にした車輪剣もひしゃげている。
「私達は全てを手に入れる。誰にも、邪魔は、させない」
だが猟兵達へ与えてくるこのプレッシャーだけは。依然として衰える様子もなく。
そんな肌を刺すようなゼファーの敵意も、星群・ヒカル(超宇宙番長・f01648)にはどこ吹く風。
喧嘩が始まるというのなら、番長として駆け付ける。ただそれだけの事。
そこに気負いはない。緊張もない。
普段となんら変わらぬ調子で、行こうかと。並び立つ愛用のバイク―銀翼号―へ声を掛けて。
身に纏う魔改造済みの学ランは、瞬く間に宇宙空間モードへと形を変える。
これから始めるのは、言わばチキンレースだ。
タネも仕掛けも小細工もない、真正面からの特攻。
手際よく瞬く間にギアを上げ、銀翼号のエンジンが唸る。
「私の風を、正面から突破できるつもりか」
ゼファーの放つ風が、花の足場をめくりあげながらヒカル達に迫る。
だが、足場が消えるその直前、銀翼号は空を舞う。
「ぐっ……!」
激しい風圧に、銀翼号のボディがきしむ。
ゼファー攻撃は崩れる足場ではなく、足場を崩す程に強烈な全方位へ向けての『暴風』。
それをかわすには、飛ぶタイミングがやや遅かった。
切りつける容赦の無い風に、レバーの握る手がちぎれてしまいそうに痛む。
それでもこの手を、相棒の手を離す訳には行かない。
(カチコミしといて返り討ちってのは、格好付かないぜ)
信じろ。自分自身を、そして銀翼号を。
見せつけてやるのだ。車輪剣を構え直している、そこの姐ちゃんに。自分たちの絆を。
吼えた。
それはヒカルの咆哮だったのか、それとも銀翼号のエンジン音だったのか。
迫りくる風を割いて。
ついにヒカル達の疾走は、ゼファーの風を突破する。
ズタズタに裂けた腕から血が流れて尾を引けば、それはまさに赤い流星。
ちらりと下方に目を向ければ、そこには車輪剣を構えるゼファーの姿。
着地の隙を狙うつもりか、その体は再び風を纏い始めている。
銀翼号が普通のバイクであったなら、このまま慣性に任せて着地していただろう。
だが、ゼファーは知らないのだ。
とある世界には、無重力の空間さえ疾走できるバイクがある事を。
「さあ、反撃だ!」
応えるように銀翼号が唸りを上げるのと、ヒカルがハンドルを切るのは同時。
慣性を無視して、ヒカルたちは真下落ちた……いや、走った。
「なっ!?」
飛び退こうとゼファーが動く。
だが間に合わない、あまりにもヒカルたちの行動が予想外であったために。
受け止めんと車輪剣を掲げる事も、飛び退く事も、全てが。
「遅いぜ!」
今この一時、ヒカルたちの速さが、ゼファーのそれを上回る。
それはまさに、目にも映らぬ神速の一撃――。
成功
🔵🔵🔴
アイン・セラフィナイト
風を操るユーベルコード…強敵だね。どうにかにて反撃しないと。
『乖離咒・災禍封滅』と『神封の書』で二重の防壁を構築する。先制攻撃は魔力のオーラと歪む空間の防壁でオーラ防御だ。
もちろん、それだけじゃ反撃はできない。相手は竜巻を使ってボクを攻撃してくる、それなら…。
『万象』、キミの出番だ!はるか大空を飛ぶ鴉たちは、風を見極めて強風の中でも飛んでいく。看破の力を持つ『万象』なら尚更だよ!
竜巻の中心には『目』があるよね。防壁に一瞬穴を開けて、ボクに直撃している竜巻のその『目』に『万象』を飛び立たせるよ。
『万象』、【魔烏の看破】だ!!弱点を創り、光の刃でウインドゼファーを討て!!
猟兵達の決死の攻撃によって、ウインドゼファーは目に見えて消耗していた。
肩のマフラーは折れ、手にした車輪剣もひしゃげている。
「私達は全てを手に入れる。誰にも、邪魔は、させない」
ゼファーの周囲で、風が渦巻く様を見つめて。
腰に備えた魔導書の背表紙を撫でて、アイン・セラフィナイト(精霊の愛し子・f15171)は、身構える。
マントを揺らす風の中に混じる、肌を焼くようなプレッシャー。
それが、まだ幼さの残るアインにも、一瞬の判断の遅れが明暗を分けるのだと、そう感じさせている。
アインが霊符を取り出すのと、戦場に花びらが舞うのは、同時。
それは、幻想的な光景である筈なのに。花びらは、凶悪なまでの暴風に飲み込まれて、赤き嵐へとなり果てる。
軽い体は、容易く後方へ吹き飛ばされた。
それでも何とか、足場の花を踏み散らしながら着地して。息を吐く。
霊符による守りが無ければ、今の一撃でやられていたかもしれない。
だが、足りない。
次いで解き放つのは、魔導書による守り。
空間が、歪む。
距離や時間の概念を捻じ曲げて作り上げた、目には映らぬ二重の断層。
ゼファーの放つ竜巻が、再びアインを襲うけれど、今度は髪の一筋さえも動くことはなく。
(でも、これだけじゃ……)
反撃はできない。
あまりにも苛烈なゼファーの竜巻。
うかつにこの守りを解けば、風は瞬く間にアインの体を切り刻むだろう。
それは神秘の力を秘めた使い魔たちとて、同じ事。技の相性があまりにも悪すぎる。
だが、時は必ず来るはずだ。
二重の対策によって、『守り』という点においては、アインはこの場に居る猟兵の誰よりも優位に立っている。
ゆえに、金の双眸でしかりと前を見据えて、時を待つ。
目の端に、ゼファーへと突進していく見覚えのある頼もしい背中が見えた気がしたけれど。
今は時を待つことが、アインの戦いであった。
霊符と魔導書に、意識を集中して。
幾度、竜巻をやり過ごしたか。
この守りとて、いつまでも展開し続けられる訳ではない。まだかと、焦りを覚える。
時は来る。必ず来る。
耳障りな笑い声を上げるこの竜巻が、狙いを違わず正確に、アインを通り過ぎる――その一瞬。
「万象、魔烏の看破だ!!」
鳥が立つ。高く、高く。
竜巻が渦を巻く風であるがゆえに、一切の風が消える中心点がアインに重なる瞬間……それが、アインの待っていた『時』。
竜巻の目を貫いて、真白き使い魔は遥か高き空へと舞い上がる。
「弱点を創り、光の刃でウインドゼファーを討て!!」
その声は、ゼファーの耳にも届いただろう。
けれど、構わない。知っているのだ。
飛び立つことさえ出来れば、白き使い魔―万象―が、風に捕まる事などあり得ないのだと。
今までアインを苦しめた竜巻が、今度はゼファーから万象を隠す壁となる。
その青い目に写し取ってしまえば、ゼファーも竜巻も同じ事。
作り出した竜巻の弱点を突き抜けて、光の刃が次々ゼファーへと突き刺さった――。
成功
🔵🔵🔴
勘解由小路・津雲
くっ、ひどくやられた、さすがだな。「この体」で戦闘を続けるのは、あまりに無謀かもしれんな。……しかし!
【作戦】 道具「式神」につかまって近づき、気付かれたら飛び降りる。「喰らえ!」 命を懸けた最後の特攻(と見せかける)。
(防御)本体の鏡は飛び降りるとき式神に持たせておく。暴風がこちらに向かうなら、あたる瞬間、仮初の姿を消す。こうして相手の先制攻撃の回避を試みる。
(攻撃)本体の鏡の中から錫杖をくわえて「真の姿」登場。仮初の姿に気を取られているウインドゼファーに【氷術・絶対零度】を使用。「不意をつけなければ、また真の姿になれなければ、この攻撃すらあなたはかわせたでしょうね」(真の姿に伴い口調変更)
満身創痍であった。
猟兵達だけの話ではない、ウインドゼファーもまた光の刃を喰らったのを最後に、倒れ伏したまま。
そしてそれは、津雲も例外ではなかった。
血を失い過ぎたのか、酷く寒い。
気を抜くと、意識が遠く持っていかれてしまいそうで、まだ式神に捕まっていられるのが自分でも不思議な程。
(「この体」で戦闘を続けるのは、あまりに無謀かもしれんな)
出来る事ならば、このまま倒れていてくれないものかと、視線をゼファーへと向ける。
だがそんな思いも空しく、ゼファーの手が動いた。
光沢のあった赤いメットも、銀に輝いていたボディももはや色褪せ。車輪剣も折れている。
タイヤはひしゃげ、白き衣も、申し訳程度に燃え残っているような有様で。
どう見ても、動けるはずがないボロボロの姿であった。それなのに。
ゼファーが吼える。立ち上がる。
オブリビオンに魂があるのかは知らないが、おそらく魂や精神といった、そんな目に見えない何かが――肉体を凌駕している。
間違いなく、これが猟兵達とウインドゼファーの最後の攻防になるだろう。
ならば、応えよう。
人より与えられし、この身と心と技の全てを賭けて。
――今、この風を打ち砕く。
「終わりだ、猟兵ども!」
その傷だらけの体のどこに、そんな力が残っていたというのだろう。これまでで最大の風が、津雲へと迫る。
それが通り過ぎた後には、何も残らぬのではないかというほどに、極限まで凝縮された風の刃。
「喰らえ!」
その暴風へ向かって、津雲は体一つで飛び込んでいく。
自棄になったとしか思えぬ、あまりにも無謀な特攻。
だが暴風に触れる直前、津雲の体が消えた。
「何!?」
忽然と消えた。
手品か何かのように、唐突に。忽然と、津雲の姿が消えたのだ。
目を凝らしても、空に見えるのは、ただ『鏡』を携えた鳥の姿だけ。
かわしたというのか?いや、そんな暇は――。
ゼファーの目の前が、陰る。
何かが空から襲い掛かってきたのだと、そう気付いた時にはもう、衝撃が胸から背中へと抜けていた。
「ぁ……あぁ…………」
ゼファーの体が傾ぎ、倒れゆく。
見えるのは、己を貫いた錫杖と、それを咥えた白き虎の姿。
その神々しいまでに真白き虎へ、手を伸ばすけれど、届かない。
――氷帝招来。
聞こえた声は遠い。
いや、全ての音が遠くなっていく。
風は凪いで。
手から、勝利が零れ落ちていく。
それが、ゼファーの見た最後の光景。
錫杖から噴き出した冷気は、全てを凍らせていた。
白き虎が1歩足を踏み出せば、花の足場がパリパリと音を立てる。
「不意をつけなければ、また真の姿になれなければ、この攻撃すらあなたはかわせたでしょうね」
動かなくなったゼファーを見つめて、虎が語り掛ける。
その声は、その目の色は、忽然と姿を消してしまった津雲と全く同じもの。
それも当然の事。
この白き虎こそ、真の姿を現した津雲なのだから。
仮初の人の体とは別に本体を持つヤドリガミの特性と、真の姿を利用した転移こそ、津雲が仕掛けた最後の策。
それはあえて本体を戦場に晒した、決死の覚悟の勝利であった。
●
誰も、一言も発しない。
互いの健闘を称えあうには、あまりにも損傷がひど過ぎたというのもある。
だが、ゼファーの顔が見えないために、まだ起き上がるのではという警戒の方が強かった。
それでも、一陣の風に猟兵達が思わず目を細めた、その間に。
ウインドゼファーの体は風と共に、跡形もなく姿を消していたのだった。
大成功
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