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バトルオブフラワーズ⑪〜駆け抜けた者、再び

作者：西灰三

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「さあて、次はいよいよ三番手の門番。覚悟は良いな？」
　アルミィ・キングフィッシャー（「ネフライト」・f02059）はニヤリと笑った。ここを超えればドン・オブ・フリーダムへの道は開ける。
「ウィンドゼファー、こいつは前の猿や兎と比べて単純だ。必ずアンタ達より先にユーベールコードを使って攻撃してくる。これは防御のユーベルコードよりも早くだ」
　つまり早撃ちでは絶対に勝てない。
「基本的にはアンタ達が使おうとしたユーベルコードに対応して行動してくる、それをいかに見切って対応するかが一つの分かれ道だ。……とにかく分かりやすいくらいに速く強い。真っ直ぐなくらいにな」
　盗賊は語る。
「なんというか恐ろしいくらいに純粋なんだ、一応女らしいが……。まあそれは関係ない。基本こいつは風を操って攻撃してくる。それ自体は猟兵でもできるやつがいるだろうが、とにかく鋭く早い。ある意味対応しやすく、ある意味最も戦いにくい相手だ。こちらのペースに巻き込んで、ってのは苦しい相手だな」
　基本的に相手の先制攻撃以外には正攻法で挑まなければならない相手だという。
「能力は３つ。嵐をまとい速く強くなるもの、強風で足場ごと周りを吹き飛ばすもの、身体の車輪を回転させて防御力を上げてから武器で嵐を呼ぶものだ」
　そのいずれも高い実力から繰り出されてくるという、詳細を確認し対策を立てる必要があるだろう。
「ともかくここを超えればいよいよ黒幕の顔が拝める。それじゃ行っといで、猟兵（イェーガー）！」

第1章 ボス戦 『スピード怪人『ウインドゼファー』』

POW   :    フルスロットル・ゼファー 全身を【荒れ狂う暴風】で覆い、自身の【誰よりも速くなりたいという欲望】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。 SPD   :    レボリューション・ストーム 【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。 WIZ   :    ソード・オブ・ダイアモード 対象の攻撃を軽減する【全タイヤ高速回転モード】に変身しつつ、【「嗤う竜巻」を放つ2本の車輪剣】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。 イラスト：藤本キシノ 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

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「早速来ましたか、あなた方に私を止められるでしょうか」
「怖いけど、レティちゃんだって戦うよ！」
　ウィンドゼファーに対しレティエル・フォルクエイン（オラトリオのサウンドソルジャー・f15293）とアテナ・カナメ（アテナマスク・f14759）は立ち向かう。
（「今までは厄介な条件があったけど今回は純戦…でもこっちも厄介そうね……宛那」）
　アテナは肉体の方の主である宛那に呼びかける。宛那の方もぎゅっと拳を握り体勢を整える。
「行きます」
　ウィンドゼファーが言葉を置き去りにして猟兵の二人に突っ込んでくる。最高速では無いというのにかなりのスピードである。ウィンドゼファーの体にある全ての車輪が高速で回転する音が聞こえる頃には二つの竜巻が生まれていた。
「……！」
　レティエルはけたたましく笑うような音を発する竜巻をすんでのところで見切り、転がるように避ける。他方その炎を吹き消されようとしているのはアテナだ。相手の持つ車輪剣だけならヒーローゆえの怪力で捕まえる事も可能だが、竜巻相手に対して掴む事もできない。
「ぐっ……」
「この程度ですか、これならば……」
　強かに花畑に打ち付けられたアテナはよろよろと立ち上がる、その瞳に灯った炎は消えてはいない。
「確かに、強いわね……。でも、負ける訳にはいかないの！　キマイラフューチャーの為にもね！　このアテナマスクが相手よ！」
「この世界の未来を掴むのは私達です。あなた方に邪魔される訳には行きません」
「アイドルを教えてくれたこの世界を怪人さんたちには渡さないよ！　……花よ、風よ、お願いっ！」
　ふわりとレティエルのかけたワイヤレスマイクからスズランの花びらが舞いウィンドゼファーを取り囲む。
「ダイモード！」
　車輪剣にウィンドゼファーが呼びかけると、再び竜巻が生じ始める。これで花びらを払うつもりなのだろう。だが今度こそはと密かに近づいていたアテナが刃の生えた車輪の片方をがっしりと掴む。
「二回目はさせないわ！」
　掴んた掌から炎をそのまま生み出しウィンドゼファーの身体を焼こうとする、だが返ってくる答えはいたって冷静だ。
「この程度の熱で私が止まるとでも……」
　そう言いかけた所でアテナを振り払い距離を取る。ウィンドゼファーは自らの胸に視線をやると車輪に巻き込まれた花びらが炎を上げていた。
「くっ……」
「どんなにゼファーさんが頑丈でも、回転部分にお花さんが詰まったらどうなるかな？」
　車輪を逆回転させ炎を追い出そうとするウィンドゼファーに対し、二人は追撃をかける。
「やはりエイプモンキーとラビットバニーを超えてきただけありますか……！」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

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「お主のスピードに対する矜持、称賛に値するぞ！」
「まさか敵から称賛されるとは、褒め言葉として受け取っておきましょう」
「だが妾の方が強い！」
　御形・菘（邪神様のお通りだ・f12350）がウィンドゼファーとパフォーマンスめいたやり取りをしている間、弥久・銀花（隻眼の人狼少女剣士・f00983）は相手の能力を検分していた。
（「必ずこちらよりも早く攻撃してくるオブリビオン……、厄介ですね」）
　そう考えた彼女は背中の鞘に愛刀を収める。
「……まさかここまで来て逃げるつもりですか？」
「これは私が最善だと思う戦法です」
　真っ直ぐに彼女はウィンドゼファーを見つめる、菘は銀花のその様子を見て悔しいような嬉しいような表情を一瞬だけ浮かべると直ぐ様に傲岸不遜ないつもの表情へと戻る。
「良いでしょう、貴女達が何を企んでいようとも砕けばいいだけの事」
　車輪をフル回転させ直ぐ様に銀花へと、車輪剣を振り下ろす。
「これで一人」
　まるで紙を切り裂くように銀花の身体に大きな裂け目が生じる。その勢いを風へと変えたのかウィンドゼファーを中心に荒れ狂う暴風が巻き起こりなお速く菘へと文字通り飛びかかる。
「これで終わりです」
　ウィンドゼファーの声が聞こえたのは菘が衝撃を受けた後だった。意識が朦朧とする中で彼女は己の尾に命ずる。『巻きつけろ』と。
「これは……」
「不可視の速度で飛ぼうが、突撃の瞬間の距離はゼロ！　狙わせてもらったぞ！」
「なるほど、分かりました。ですが」
　ウィンドゼファーは彼女を貼り付けたまま空中をグルグルと高速で巡り始める。恐らく遠心力で振り払うつもりらしい。
（「絶対に離しはせんよ！」）
　今の彼女に有るのはその意志だけ。ただこのままいけば猟兵といえども意識を飛ばされてしまうだろう。しかしこの高速の回転木馬はウィンドゼファーを突如襲った衝撃で中断される。
「……何が！？」
　衝撃に驚いて辺りを見渡せば、鞘の付いた剣を向けた銀花が立っていた。
「馬鹿な！　あれ程の傷を負って！」
「私はどんな攻撃にも負けません……！」
　彼女の身体からは液体が弾けるような音と水煙のようなものが立ち上っていた。驚愕するウィンドゼファーは、更に別の引き締められるような衝撃に襲われる。
「妾を忘れていては困るのう？」
　不意の衝撃で集中が途切れたウィンドゼファーと菘は地面へと落ちる。未だ尾は絡まったままだ。
「攻め手は色々考えたが、バトルをきっちりカメラに映すにはこの方法がベストであったのでな」
「そんな事のために自分の身を……！」
「目的のためならその程度の事は当然です」
　剣を抜いた銀花もまたウィンドゼファーへと近づく。
「ですが、私もまたここで止まるわけにはいきません。全てを手に入れます！」
「そうか、だが妾たちもここからが徹底的にしぶとい！」
　絡みついた状態のまま菘はウィンドゼファーのカウルにも似た頭部に頭突きをかます。しかしてウィンドゼファーも同じように頭突きを仕返し、怯んだ所で車輪を回転させ尾から逃れる。
「お互いに賭けるものがある、良いでしょう。ですが最後に勝つのは私達です！」
　迫りくるウィンドゼファーに菘は折れた腕を武器に、銀花は傷の治りきらぬ身体を盾に戦いを続ける。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

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「仲間……？　いや違いますね」
　自らの傷を顧みずに迫る猟兵たちを追い払ったウィンドゼファーは、次に現れた者に対して訝しげな様子を見せた。それはたぬきのきぐるみを着た高柳・源三郎（流浪の酔いどれおやじ、たぬき人形と共に・f15710）であり、陽気にウィンドゼファーに手を振っている。
「あなたも猟兵ですね。そしてここにいるという事は、どんな姿であれ私と戦うつもりなのでしょう」
　ウィンドゼファーが回転剣を掲げたぬきのきぐるみへと迫る。振り回される剣はその風で着ぐるみの毛皮をはためかせ、ゆるりと避けた源三郎の足元の花を切り散らす。
「中々やりますね」
　着ぐるみは迫りくる二刀の剣をギリギリの所で避け続けるが、ジリジリと裂傷が目立ってくる。それでも戦い方を変えたほうが判断したのか、ウィンドゼファーは剣から二つの笑う竜巻を放つ。
「これならどうです？」
　ヒャヒャヒャと笑うような轟音を立てながら二本の竜巻が周りの花びらを巻き込みながら源三郎に迫る。システム・フラワーズを巻き込んでの攻撃が着ぐるみを包み込み切り刻む。
「……あっけない。……！」
　ウィンドゼファーとて残心はあったはずだ。それでも切り裂いた相手から無数の花びらが現れて自らに飛びかかれば逃れきれない。
「……はなが花。綺麗じゃ」
　竜巻の少し向こう、ウィンドゼファーは自らにまとわりつく花びらと格闘しながらそちらを見る。そこには恐らく先程まで着ぐるみの中にいた男、源三郎が立っていた。
「身代わりですか……！」
「そうじゃ」
　赤ら顔の男は短刀を持ち、ウィンドゼファーへと迫る。どこか気の抜けようにも見える男は存外に早足でウィンドゼファーに近づき、短刀を突き出す。間合いの近すぎる攻撃はウィンドゼファーの鋼の身体に傷を増やしていく。

成功 🔵​🔵​🔴​

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「くっ……」
　ウィンドゼファーの身体はあちこちひしゃげており、亀裂も有る。そこからは燃料にも見える液体が流れ出している。他方二本の回転剣の刃は所々欠けている。
「この体も限界が近い……ですが」
　すっとウィンドゼファーが見上げれば、雷陣・通（ライトニングキッド・f03680）が彼女を睨んでいる。
「あなたも、ですね」
「雷陣・通。……治に居て、乱を鎮める武を以って汝が欲を断たん」
　そう名乗る通に彼女もまた自ら名乗る。
「私はスピード怪人・ウィンドゼファー。ドン・フリーダムのさきがけとなり、全てを手に入れるために駆け抜けるもの」
　やや離れた二人の間に緊張した空気が横たわる。通もウィンドゼファーも構える。互いに最初の一撃で決まることを知っているかのように。
「来いよ――待っていたら速くなれないぞ」
　挑発にも似た彼の発言はそうではない。戦いの合図だ。
「そうですね、では――行きます」
　ウィンドゼファーが音よりも早く通目掛けて迫る。それを捉えようとする彼の目は反射的に身体を動かす。そして、それだけで終わる。
「………」
「………」
　ウィンドゼファーが彼の背中の後ろに着地して立ち上がる。
「……なぜ、あなたはそこまでして私達と戦うのですか」
「父ちゃんが言っていた――人は欲をコントロール出来て初めて人と言えると。渇望だけの身になり、過去の欲望が形になったお前に未来はない。……っ！」
　通が膝をつき、手を抑える。すれ違いざまに手刀を放った時に砕けたのだろう。
「……ですが人の欲とは尽きせぬものですよ、たとえそれがいつどこであっても」
「だからといって、人をやめる理由にはならない。……さよならだ、ウィンドゼファー」
　ウィンドゼファーの大きな傷跡から流れ出た液体、傷口に残っていた電気が火花となりそれに燃え移り彼女の身体を爆発させる。
　通は燃え上がる彼女の残骸を背に歩き出す。暴風を断てども、最後の欲は残っている。果たして自由という欲は何を彼に見せるのだろうか。

成功 🔵​🔵​🔴​

最終結果：成功 完成日:2019年05月21日