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バトルオブフラワーズ⑪〜嗤う車輪と嗤わぬ疾風

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ #ウインドゼファー #挿絵

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『私達は全てを手に入れる。誰にも、邪魔は、させないッ!』
 廻る廻る軋み廻る……車輪の哄笑はやがて訪れる崩壊の嵐の先触れ。
 果てなき欲望の果て――希望も絶望も置き去りにして吹き抜ける『風』はただ疾さのみを渇望して、吼える。
 全てを喰らう嵐を前に花々は何も語らず。千々に散り、そして、待ち詫びる……。

「お疲れサマ~! エイプモンキーに続いてラビットバニーまでエモエモッと撃破完了、お見事サマ!」
 今日も今日とてゴキゲンな笑顔。
 巳六・荊(枯涙骨・f14646)はグリモアベースへ猟兵達を迎え入れた。
 そんな彼女が、労いのことばの後に集う猟兵へと告げたのは次なる幹部怪人との闘い。
「続く第三の関門で立ち塞がる敵はその名もスピード怪人『ウインドゼファー』。彼女がどんな怪人かかいつまんで言うとー……メチャクチャ強くてデタラメに速いっ! だけをひたむきに愚直に磨き続けた風使いってトコかな?」
 うん、あんな厳ついナリしてるけど今度のゼファーも女性みたいなんだよねとさらりと補足した後、荊は敵能力についての説明を続ける。
 予知された3種のユーベルコードはいずれも『風』に纏わるもので攻・防・飛翔と実に堅実で隙の無い構成である。
「ここまでに撃破してきた他の幹部達みたいな、反則級チート! だけど付け込みやすい弱点と表裏一体!! みたいなクセの強い特殊能力はいっさいナシ。つまり~……」
 笑顔はそのままに、グリモア猟兵の金色の双眸は、すぅと剣呑な色を孕む。
「――幹部に相応しい実力者である彼女の速さや強さに対して、こっちも、猟兵としての戦闘力で対抗しなきゃならないってワケ」
 その手段はもちろんただ武力のみとは限らないだろう。
 知略、連携、真っ向勝負に搦め手に――、
「あとは、……あー、勇気とか?」
 指折り数えながらクスクス笑ったグリモア猟兵の言葉は冗談なのかあるいは案外と本心からか。
「それが何だろうが構わない、何だっていいよ。キミ達が持てる全てを以って、彼女を、あの『風』を――消し去って来て」


銀條彦
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「バトルオブフラワーズ」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 今回は第三の関門の番人にして怪人軍団幹部のひとり、スピード怪人『ウインドゼファー』との戦いとなります。
 シナリオ内では以下の特殊ルールが適用されます。

●特殊ルールについて
 敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
 この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。

 これまでの幹部と異なり『風を操る能力』のみを駆使して戦い、他に特殊なルールは存在しません。シンプル、故にこそ強靭。
 先制の一撃によって倒されない為の対抗策とそこからの反撃手段についてをプレイングに明記お願います。
 また門番である彼女の戦力「40」をゼロにできれば「⑪スピード怪人『ウインドゼファー』」は制圧成功となりますが、それ以上の成功数があった場合、上回った成功数の半分だけ「⑬『ドン・フリーダム』」の戦力を減らせます。

 御武運を。
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第1章 ボス戦 『スピード怪人『ウインドゼファー』』

POW   :    フルスロットル・ゼファー
全身を【荒れ狂う暴風】で覆い、自身の【誰よりも速くなりたいという欲望】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    ソード・オブ・ダイアモード
対象の攻撃を軽減する【全タイヤ高速回転モード】に変身しつつ、【「嗤う竜巻」を放つ2本の車輪剣】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:藤本キシノ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

幻武・極
誰よりも速くなりたいという欲望か
なら、キミのユーベルコードの弱点はこれだね。
『そもそも、キミより速い人はいるのかな?』
頂点を追い求めている内にいつのまにか自分が頂点になっていることってあるよね。
そして、求道者がたどり着く最後の大きな壁だよね。
これまで目標としてしていたものを失い、その先に進めるかどうか。

ちなみに暴風のせいで聞こえなかった時の為にプラカードでも弱点の告知をしておくよ。

キミの先制攻撃に対しては暴風に逆らわず吹き飛ばされておくよ。
キミの攻撃の直撃は避けられるだろうし、オーラ防御や衝撃波で最低限の防御をしておくよ。



 転移した先は、ぽっかりと割れた星と星のはざま。
 そこは、ふわふわと浮かぶ花弁を無数に重ねて形づくられた不可思議な空間だった。

 高く結い上げた蒼髪を颯爽と揺らし、柔らかな道を躊躇いなく蹴りつけて、黒角の羅刹の少女は弾けるように駆け出した。
 そんな幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)の行く手に立ちはだかるは、天翔ける暴風。
「これ以上は行かせません、何人たりとも」
 風圧に耐えながら見上げた先、何処か炎を想わせる真紅のフルフェイス越しにそう言い放ったウインドゼファーは最初からフルスロットル。
 急速に歪む視界。
 更に加速したスピード怪人の飛翔を捉え切る事が出来ずその姿を見失い……気がつけば荒れ狂う暴風域へと呑まれて死角を取られ、車輪剣の一撃が極の脳天めがけて振り下ろされていた。花びらへと降り注ぐ鮮血――だが。

「誰よりも速くなりたいという欲望か……」
 我が身を襲う苛烈な嵐すらも冷徹に値踏みするかのような、呟きが漏れる。
 ウインドゼファーとの遭遇と同時、全身に纏わせておいた護身の闘気に加えて襲いかかる『風』に全く逆らわずむしろ自らその流れへと乗る為に発せられた衝撃波。
 満身創痍ながらも、依然、極を戦場へと立たせていたのはそれら守りの備えである。
「なら、キミのユーベルコードの弱点はこれだね。 ――『そもそも、キミより速い人はいるのかな?』」
「なに?」
 何処からか取り出したプラカードも併用し極が反撃のユーベルコート『モフィンクスの謎かけ』を仕掛けてゆく。
 まあさっきから、普通に、風に遮られる事もなく互いの声は届いているのだがせっかく用意したのだし。
 ウインドゼファーも極との対話に乗って来ており、今のところ追い打ちの気配は無い。
「頂点を追い求めている内に、いつのまにか自分が頂点になっていることってあるよね」
「――――――」
「そして、それは求道者がたどり着く最後の大きな壁だよね。これまで目標としてしていたものを失い、その先に進めるかどうか」
「――ですがそれは、貴女が考え結論した『求道』に限っての話、私の進む『求道』とは異なります」
 投げ返された反論。
 もしも仮に、今の己が既に速さの頂点そのものと化していたとしてもそれが永遠の壁となる事は決して無いのだとウインドゼファーは断言する。
「なぜなら、私は人類の欲望を信じています。私と同様に……もしかしたら私以上に速さを求めるものがこの世界から絶え失せるなど有り得ません」
 頂点がどれほどの高みにあろうと、高みだというだけで人類は諦めたりなどしない。
 頂点を眼にして挑まない筈は無い――貴女が、こうして私達へと挑み続けている様に。
「故に、立ち止まった瞬間に頂点は既に頂点たりえない」
 それこそがひたむきで愚直とグリモア猟兵にも評されたスピード怪人の考える『求道』なのである。

「きっとニコリともせずさも当然って真顔でその台詞は吐かれているんだろうね……」
 羅刹の少女は軽い苦笑いを浮かべながら掲げていたプラカードを放り投げて、魔法拳の構えを取る。戦意に呼応して浮かび上がる魔導羅刹紋。
 『モフィンクスの謎かけ』は対象のユーベルコードの弱点を指摘し実際に実証できればもっふもふなモフィンクスが召喚され3分もの間そのユーベルコードを完全に封じ込めてしまうという、恐るべき効果を発揮する筈であった。しかし召喚は叶わなかった。
 極が弱点だと告げた内容は現時点ではまだ正解では無く不正解ですら無く、実証のない仮説のひとつに過ぎないのだから。
「全てを手に入れた先でも私は私のままでいられるのか……貴女から戴いたその問いかけは確かに意義深く傾聴に値するものでした。ですが――」
 改めて戦闘態勢へと入った拳鬼に対しスピード怪人もまた自らの『暴風』に白きコートなびかせて突撃の構え。風は俄かに激しさを増し、その暴虐は、無惨に散らされる花など顧みもしない。
「欲望(わたし)は、止まらない、決してッ!」
「だったら見せてあげるよ、ボクの武術をっ!」
 一閃と一閃が激突する、死線。
 嗤う車輪を黙らせたまま奔らせた車輪二刀は真っ直ぐと闘気すらも穿ち、極の小さな体を大きく轢き飛ばした。
 宙へと投げ出される寸前、オブリビオンへの肉薄果たした猟兵が叩き込んだ抗いの一矢はルーンの魔力を上乗した渾身の正拳突き。
 ユーベルコードならぬ徒手空拳はウインドゼファーへ効果的なダメージを負わせるには到らず、ただ、硬い真紅色の頭部へくっきりと拳の痕跡を刻むに留まった。
 それは、だが、星の未来守る猟兵から怪人に向けた反撃の嚆矢として後陣へと繋がってゆくだろう。

 ――そして、花の路上。
 墜ちる極を見届けた後も、独り、逆巻き荒ぶる『暴風』はいまだ止むを知らぬまま。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ルイズ・ペレンナ
純粋な速度勝負では勝てなさそう
となれば、やはり勇気かしら。ふふ
暴風に飛び込み、身を晒し受けるためにね

フルスロットルで暴風の中を突っ切りますわ
花の嵐を振り切る事は適わずダメージ覚悟で
足場から落ちぬよう【騎乗】テクを駆使しながら
宇宙バイクを盾に【武器受け】し致命傷を避けながら
彼女に肉薄、接敵できれば【シーブス・ギャンビット】
暴風でナノマシン製の装飾が削れていれば服を脱ぐに等しい速度増加になる
必ず牙を突き立ててみせますわ

あわよくば【盗み攻撃】で車輪剣か、せめて車輪の一つも奪取を試みますわ
荒れ狂う暴風を弱められれば御の字ね

欲望を満たす為の速度
ええ、貴女とわたくしは似ているのかもしれませんわね、少しだけ



 跨る愛機は自身のすこぶる快調ぶりをパネル上の各種メーターを輝き瞬かせて告げる。
 星の内とも外ともつかぬ無数の花咲き誇る胎のような空間の道にも重力は作用し……、したがってルイズ・ペレンナ(怪盗淑女・f06141)駆る宇宙バイク『JET-WIDOW』もフルスペックを発揮とはいかなかった。
(……純粋な速度勝負では『疾風』には勝てぬでしょうね、おそらくは)
 だがトルクフルな躍動は死闘へと臨んで疾走を続けるブラックタールの胸を揺さぶり、沸き立たせてやまない。
「となれば、やはり勇気かしら」
 かたち好く艶やかなその漆黒の唇は、ふふ、と、薔薇のような笑みを零すのだった。

 爆走としか形容しようのない速度で急速接近する猟兵の存在は、当然、程なくウインドゼファーに察知される事となる。
 人機一体のその走りを眼にした、眼無き真紅の貌が、何を想ったかは知る由も無い。
「無策な正面突破といった所でしょうが……近付けさせません」
 門番たる幹部怪人が選んだのは、いまだ遠く隔たった両者の距離を苦ともせず一方的に進路たる足場もろとも侵入者を粉砕する蹂躙。
 世界を取り戻し、壊し、そしてあるべき姿へと――そんな切なる渇望はユーベルコード『レボリューション・ストーム』発動へと結実する。
 暴圧。
 散華。
 そして――崩壊。
 限界までエンジンを吹かせてまるで駿馬の如き連続跳躍で、宇宙バイクは、バラバラになった足場から足場へと強引に突き進んでゆく。
 同時に騎乗者たるルイズの卓越した武器受けと運転技術を受けた車体はそれ自体が巨大な盾として機能して致命傷を回避していた……が、それでも尚、全方位から襲いかかる『暴風』が全てを散らす迄に残された時間は僅かだった。
 掻き乱され千切れ飛ぶ花弁の嵐へ、はらりはらりと、――『黒』が混じる。
「これは……?」
 『黒』の発生元は『JET-WIDOW』機上から起死回生、『シーブズ・ギャンビット』で大駒盗りに狙いを定めたルイズその人であった。
 ウインドゼファーが訝しむ間にも『黒』はその濃度を増してゆく。
 優雅に波打つロングドレスの裾も、喪服を思わせるヴェールのレース柄も……ブラックタールの貴婦人が『黒真珠』を飲み干してその肢体に纏わせた装飾の全てが加速する走りの中で粉々に崩壊し喪われ始めたのだ。
「――フルスロットルは貴女だけの専売特許ではありませんの」
「なっッ!?」
 スペック勝負で勝ち目なしと冷静に見極めたルイズがそれでも速度勝負を仕掛ける為に持ち出したものは、まさしく『勇気』と呼ぶ他は無かった。
 装飾も羞恥も恐怖も生命すらも、何もかも晒け出して脱ぎ去って、置き去りに。
 疾く、疾く、より疾く――ただひたすらに敵たる女の喉元へと喰らいつく為に女はその牙を研ぎ澄ませ……遂に、届かせるに到る。

 チタンカラーを思わせる虹の光沢から戦場へと轟く痺れる様なエキゾーストノート。
 貌を持たぬ彼女が嗤うことは無いのかもしれない。だがこのスピード怪人の欲望が生み出す『風』はなんと雄弁に尽くせぬその悦びを語ることか。
「ただ、惜しむらくは――」
 密やかな微笑を乗せて、その時、疵まみれの黒玉のウィドウは宇宙ならぬ花の空間を、飛翔した。
 『虎の牙』と銘されたダガーが、鎧通しの要領で、怪人の右腕関節の継ぎ目めがけて深々と突き立てられる。
 咄嗟に回避は間に合わぬと判断したウインドゼファーが受け太刀に翳そうとした車輪剣の防御も間に合わず――廻刃は虚しくカラカラと常よりも小さな嗤い声を立てるのみ。
「この、ふざけた雑音だけは貴女という走り屋には相応しくございませんわ」

 重力の天上、刹那、交錯した風と風が再び花の大地へと降り立った、その時。
 ルイズの片手は何かを掲げ、見せ付けるかの様に玩んでいた。
 すれ違いざま抜き取られていたのは車輪ひとつ。
 嗤い嘲る歯の如き大小の凶刃連ねたそれは、紛れも無くソード・オブ・ダイアモードの片輪パーツであった。
「――ッ」
 ウインドゼファーに油断は無かった。しかし、変幻自在な指先は、『黒真珠』の残滓を呑んだまま荒れ狂う暴風の護りすら盗みの隠れ蓑へと利用してのけたのだから初見で防ぎよう筈も無い。
 とはいえ、ひととき虚を衝き出し抜かれたとて戦闘面で両者の力量差・消耗差は歴然ですぐさま力尽くで取り戻そうとすれば容易くそれは成った筈である。
 しかし……『言語』を同じくするものの口から語られたその台詞に何処か納得した様子を見せたゼファーはそれっきり『怪盗淑女』に対して奪還を試みようともしなかった。

「欲望を満たす為の速度――ええ、貴女とわたくしは似ているのでしょうね、少しだけ」
「光栄、と、答えておきましょう……黒く麗しいネイキッドとその翼たる名機よ」
 花の路上、黒き乙女達がそんなやりとりを交わした後に。
 ヒール代わりの踵車輪をフル回転させ、ウインドゼファーが繰り出した旋風の如き回し蹴りが既に殆どの守りを剥ぎ棄てたルイズの肉体を両断するかと思われた、瞬間。
 不意に大きく傾きウィリーの走行姿勢を取った『JET-WIDOW』の正面装甲がその威力の殆どを引き受けた。深く一文字に抉られ軋む車体。
 殺しきれぬ衝撃に人機はそのまま宙高く放り出され……先の『レボリューション・ストーム』で生じた花の裂け目へとそのまま吸い込まれるように消えてゆくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

セロ・アルコイリス
リュカ(f02586)と
【SPD】
先制攻撃、上等ですよ
おれは元々、『カウンター』技磨いてんだ
まずは集中
『見切り』『学習力』『早業』『野生の勘』……使えるモンなんでも使って
足場が崩れると同時に【突風】、リュカごと掬い上げて

隙がありゃダガーで『投擲』なんかも使って攻撃しますけど
おれだけだと難しそうかな
【存在意義】も使えりゃいいんですが
おれは『かばう』こと、ラファガを繰ることに集中して、
リュカに攻撃してもらうのもアリでしょうか
任せていいですよね? リュカ

邪魔ってのは思い通りにいかねーから邪魔なんですよ
恨まれても憎まれてもいい──あんたもそうでしょ?


リュカ・エンキアンサス
【SPD】
セロお兄さんと
攻撃はセロお兄さんに任せて銃を構える
先制攻撃が飛んでくるだろうけれども、それはお兄さんに任せる
自分は唯……的確に狙って、銃を撃つだけ
なんだけど

浮いてる
なんだろう、ちょっとこれは楽しいかもしれない
勿論、解っているよ
どんな体勢でも外しはしない
なるべく急所を狙って、手早く片づけるように試みる
時間が掛かれば掛かる分だけ、お兄さんの負担も大変になるだろうからね

お兄さんのほうは、結構攻撃がいくかもしれないけれど……
怯まない。信じてるから

あなたが…何を犠牲にしてでも革命を行うというのなら
俺も…俺の基準で、それを止めてみせるよ
誰よりも早くなって、どこへ行こうというんだろう



「次の侵入者は2人ですか」
 ――『革命』は唐突に彼らへと降りかかった。
 花に彩られた風景は吹き荒れる嵐の中で掻き乱され脆くも毀される。
 だが蒼の翼たちは押し寄せる狂奔をしなやかに躱して飛び立っていた。

「先制攻撃、上等ですよ――」
 渦巻き乱れ飛ぶ無数の花片の只中。
 激しく煽られ翻る青のマフラーのさまは自由に羽搏く鳥にも似て。
 覆う首筋へふいに伝った悪寒から致命の危機を嗅ぎ取ったセロ・アルコイリス(花盗人・f06061)がおいでと囁けば吹き抜けた追い風と共に顕れる【突風(ラファガ)】。
 元々得意としていた後の先の動きの為のみに、この瞬間、全能力全集中を費やして。
(――使えるモンなら、形振り構わず、なんだって)
 咄嗟に小柄なリュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)をひょいと引っ掴み、喚び出した白き風竜の背へと飛び乗ったセロは辛くも『レボリューション・ストーム』の直撃やそれが齎した崩落からの回避に成功する。
 既に傷だらけの旋回飛行から一気に距離を詰めた『突風(ラファガ)』と『暴風』――共に風纏い空翔けるもの同士が、宙空、散り散りの花散り敷かれた地より離れた高みにて対峙した。
 眼で追うだけでもやっとの高速機動に乗せた車輪剣が、片輪を欠いたまま、二刀交互に振り下ろされて始まった白刃の闘いはほぼセロの防戦一方であった。
 『ラファガ』を駆り劣勢から更に嵐の目へと踏み入ったセロは鍔迫り合いへと持ち込んだが、哄笑を奏でる廻刃は容赦なく白虹髪の青年を切り裂いてゆく。
 先に言葉を発したのはウインドゼファーの側であった。
「世界(フューチャー)の歩みはあまりにも遅い。『与えられた平和』という澱みに浸りきったまま停滞する世界(いま)のすべてを――私達は否む」
 毅然と唾棄すべしと世界を断じたオブリビオンは、だが、としばしの間のあとに。
 此処まで闘って来た猟兵達は……今まさにウインドゼファーと刃交えるセロ達も含め、いずれもが強き意思携えた勇者であると認めざるを得なかったとウインドゼファーは衒いもせずに語る。
 だからこそ、と、骸の海から還って来た女は何処か口惜しげな様子で問い掛けてきた。
「それなのに……どうして私達の邪魔をするのですか、猟兵」
 ――もしかしたら、今、自分達はこのオブリビオンから説得あるいは説教を受けているのだろうか。互いに相容れないことなど最初から分かり切っているのに。
 知ったことかと切って捨てるかわりに後手の態勢から狙いすまして投じられたダガーの刃があっさり躱されると、へらり笑って、彼は答えた。
「邪魔ってのは思い通りにいかねーから邪魔なんですよ」
 今在るキマイラフューチャーを犠牲にして成し遂げる何かなど容れられる筈も無い。
「革命に代償はつきもの、などと、手垢のついた常套句を並べても貴方達は退かないのでしょうね」
 怪人の排気マフラーが吐き出したものはあるいは溜め息だろうか。猟兵への敬意は敬意として、為すべきは実力排除。
 もはや満身創痍のこの猟兵へトドメを刺すことなど容易い……筈だった、その時。

 ――あなたが……何を犠牲にしてでも革命を行うというのなら。
 夜更けの色に染まるマフラーの下、息潜め続けてきたリュカが声無き声でそう呟いたのと銃声がほぼ同時。

 舞い散る花々に紛れて『ラファガ』の背から秘かに独り飛び降りた彼は、
(……浮いてる……なんだろう、ちょっとこれは楽しいかもしれない)
 砕かれてなお浮遊する『システム・フラワーズ』の足場の1つを遮蔽に、己を潜ませていたのだ。
(勿論、解っているよ――どんな体勢でも外しはしない)

 届け願いの先へと、生まれ出でたその『星(バレット・オブ・シリウス)』は暴風すら物ともせずまっしぐらに花散り急ぐ宙を翔け、紅きフルフェイスを貫いた後ひときわ眩く輝きを発して――溶けるように消え失せた。
「……俺も……俺の基準で、それを止めてみせるよ」

 被弾の衝撃がガクンとウインドゼファーを揺さぶった後その姿勢は大きく傾いだ。
 それはこの戦場で起きた、初めての光景。
 ウインドゼファーは粘戦続けたセロの存在のみに集中しすぎていた。消耗重なり始めた今の彼女ではそうせざるを得なかった。
 そうしてこじ開けた僅かな意識の死角を衝き、刻まれた頭部の微かな瑕疵を突いて。
 遂にリュカの狙撃は成されたのだ。
「――な、るほど……仲間を犠牲にしてでも、勝ち取る……それが、貴方達の覚悟……」
 見事ですと続けられようとしたであろうウインドゼファーの声を、違う、と静かなままに蒼き熱帯びる星を思わせる少年の声が強く遮った、その後に。
「セロお兄さんなら大丈夫。そう、信じていたから」
 どこか幼さを残したままけっして揺るがぬ少年の声がそう告げればもうひとりの少年の左頬ではハートのペイントがニヤリと踊る。
 今度はリュカからセロへと救援の手は伸ばされ、ふわり、ひらり、『革命』の中にも残存しいまだ浮遊する花の足場の残滓に紛れて彼ら2人は戦場からの離脱を果した。
 まんまと深傷を負わされた格好となるスピード怪人は、だが、あくまでも門番役を完遂する事こそが最重要と考えており追撃の気配は無い。
「あと少し――もう少し耐え切れば、再び『無限大の欲望(リビドー)』は開放される……」

「誰よりも早くなって、どこへ行こうというんだろう……」
 一度だけうしろを振り返り……瞬いた少年の蒼き双眸には『疾風』の願いの先を捉える事は、叶わなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

幻武・極
さて、コンティニューさせてもらうよ。
一度や二度壁にぶち当たったからって諦めていたら武術家は名乗れないからね。
それにキミのいる場所にはボクも辿り着かないといけないような気がするから、もう一度挑戦させてもらうよ。

さっきは風に身を任せたけど今度はその暴風を突き抜けてみせるよ。
オーラ防御と防具改造で鋭角なオーラを展開し、暴風の壁を突き抜けるよ。
攻撃はトリニティ・エンハンスⅡと属性攻撃を雷にして攻撃するよ。
金属は電気をよく通すっていうけど、雷を引き付ける性質もあるんだよね。
さっきはキミより速い人がいるのか聞いたけど、この一瞬だけはボクの方が速いかもしれないね。



 割れた星の中から現れた花々の路(システム・フラワーズ)。
 奇想天外な絵本めいたこの風景の各所でここまで死闘の数々が繰り広げられて来た。
 いや、むしろ――ゲーム画面のような、と、ここでは表現すべきであろうか。
「さて、コンティニューさせてもらうよ」
 この戦場はたった今、幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)の不敵な笑みを取り戻したのだから。
 彼女はもう一度ウインドゼファーへ挑戦状を叩きつけるべく再出撃を果たしていた。

「貴女は――やはり諦めないのですねプラカードの武術家よ」
「そりゃ一度や二度壁にぶち当たったからって……って、ちょっと待った! その覚えられ方はいくらなんでも不本意だし語弊も大アリ!」
 先の緒戦において、極独自のユーベルコードを使用するにあたり発動条件に絡んでウインドゼファーと交わすこととなった一連の問答は、彼女にもそれなりに考えさせられる処があったのだ。
 確かにこちらも特には名乗らなかったが、そんな、実際の戦いを知らぬ者が聞いたら、いかにもキマイラフューチャーっぽそうなノリのバトルの末に敗れちゃいました~みたいなコトになってそうな話へと上書きされてはたまらない。
「そうなのですか? ですが、正直、貴女があの時掲げたプラカードには様々な意味で、意表を突かれました」
 ウインドゼファー当人は120%大真面目である。
 あるいはこれもまた門番としての時間稼ぎ策の一環かと疑いたくもなってきたが、全くそんな意図は無い。けれど、このまま長話などというゆるい展開に持ちこまれる事も当然無く、スピード怪人は一切の無駄を削ぎ落とした構えから機動戦へと移行する。
「――『フルスロットル・ゼファー』」
 そう口にしたと同時、よくよく観察すれば各種破損が目立つウインドゼファーの全身は『暴風』を纏って更なる戦闘力増強が遂げてゆく。
 度重なる猟兵達からの怒涛の攻勢を経てどれほど損耗を重ねても、誰よりも速くなりたいという彼女の欲望(スピード)だけはますます膨れあがるばかりだ。
「とにかくっ、キミという壁にぶち当たったからって諦めていたら、武術家は名乗れないからね。それに……」
 少女は間合いを詰めるべく駆け出した。嵐のなか乱れ踊る蒼きポニーテール。
 先の闘いで極は衝撃波を巧みに用いた姿勢制御で荒れ狂う風に逆らわずその身を任せる戦法でダメージを抑えたのだが、2度も同じ手が通用する相手などと侮っていない。
 羅刹の少女の闘気は、今度は、真っ向から『暴風』を突き破る為に立ち昇った。
 嵐を切り拓いて突破する衝角の如く己が肉体をよりいっそう硬く、鋭く、速く。
 そして、愚直に――ただ、前へと。
「キミのいる場所にはボクも辿り着かないといけないような気がするから――っ!」

 少女の赤瞳と振り上げた拳とが黒鋼のボディを捉える……寸前に怪人の姿は吹き荒れる花弁の狭間へと消失した。
 回避行動を選んだウインドゼファーは今や、がら空きの、極の頭上はるか上。
 ――その欲望(ねがい)は今はまだ辿り着くには足らない。
 そう言わんばかり、拳の間合い及ばぬ高みから睥睨するスピード怪人の周囲から、バチバチと唐突に湧き上がったのは、一筋の、猛り狂う迅雷。
「……金属は電気をよく通すって、いうけど……雷を引き付ける性質も、あるんだよ、ね」
 苦しげに呼吸を乱し片膝をついた極の顔は、だが、やり遂げた者のそれだった。
 両者の間に横たわる隔たりを……足らぬ筈の間合いや速さを補ったものの正体は属性強化のユーベルコード『トリニティ・エンハンスⅡ』。
 魔法拳の基本にして真髄たるその一撃は『雷』にと特化して光の速さへと迫り、自身が穿った『暴風』の壁を越えて、遂にウインドゼファーの肉体を打ち据えた。
 バイクを想起させるスピード怪人は自慢の駆動へ深刻なダメージを蒙るに到る。
「……くっ――ッ」
「さっきはキミより速い人がいるのか聞いたけど……この一瞬だけはボクの方が速いかもしれないね」
 喰らいつき辿り着き、そして、立ち止まらず超えてゆく。
 『最速』すら超えてその先へ――それが『最高』求める羅刹の進む道なのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

鎹・たから
あなたが自分の速さを信じているのなら
その速さに挑みます
【勇気、覚悟】

花の足場を崩されれば即座に灰雪で飛び跳ね
地面に足をつけるのは最小限に
暴風に流されぬようなるべく威力を受け流し
【空中戦、オーラ防御】

以降も跳ねて暴風を受け流し回避しつつ
荒雪で遠距離から攻撃を
たとえ当たらずとも、これは囮です
【念動力、範囲攻撃、衝撃波】

急接近し連珠とオーラで拳の連打を叩き込みましょう
その鋼の身体に少しでもヒビを入れられたなら
たからも挑んだ甲斐があります
【ダッシュ、気絶攻撃、グラップル、鎧砕き、2回攻撃】

あなたの風は苛烈です
誰かを癒す優しいそよ風は吹かないのですね
たからの意志は、あなたの風に負けません


ヴィクトル・サリヴァン
真面目だね。そのスタイルは嫌いじゃないけど。
でも門番というのは停止だし、速度を追求するキミの本質にはあってないんじゃないかな?

可能なら他の猟兵と連携。
速度勝負で敵わぬなら耐えるしかないよね。
ゼファーの攻撃は急所への攻撃を野性の勘で特にヤバいのの直撃を銛で全力で防ぐ。
多少は受けてもいい、意識さえ残せれば治せる。
受けた時氷属性纏わせた銛で車輪剣伝いに凍らせて攻撃を鈍らせる事が出来ればいいんだけど。
何とか凌げたら他猟兵含め活力の雷で治療。
生命の速度を加速させるから反応とかそういうのも活性化するからね、多少の助けにはなるだろう。
可能なら相手の攻撃に合わせ銛を狙い澄まし投擲、妨害。

※アドリブ絡み等お任せ



 ――いまだ止むこと知らず吹き荒れる『暴風』の只中。
 自らの欲望がもたらす負荷にもはや耐え切れぬウインドゼファーの体は限界寸前、黒煙伴う軋みの異音と押し殺した悲鳴のような火花が全身から噴き上がり始めていた。

「門番というのは停止だし速度を追求するキミの本質にはあってないんじゃないかな?」
 辺りに色濃くたちこめる雷気を、帽子越し、クンと一嗅ぎした後にそのいでたちからは意外な程に紳士的な一礼で声を掛けたのはシャチの偉丈夫であった。
 それは怪人ではなくキマイラ、ウインドゼファー達が呼ぶところのこの星の次世代人類のひとりである。
「その心配は御無用。神速をもってすれば、あらゆる戦場に現われすべての侵入者を討つ事も不可能ではありません」
「……それはそれは、脳筋な解決法、痛み入るよ」
 更なる猟兵戦力の増援、ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)に対して、スピード怪人は変身――全タイヤ高速回転モード発動をもって自らの破損をカバーした。
 振るわれた魔剣の斬軌は空間を切り裂いて奔り、たちまちの内に巨大な『嗤う竜巻』と化してヴィクトルへと襲い掛かる。

 ――ギャハハハハハ……ッ!!!

 主の窮状すら含めてこの世の全てを見下し嘲るかのような邪悪な哄笑と風圧を浴びながらも、勘任せに跳んで躱したヴィクトルは、二刀の車輪剣のうち車輪の無い左剣は既に、完全に砕け散っていた事に気がつく。
(不完全な状態から無理矢理『ソード・オブ・ダイアモード』を使った代償か……)
 残すは一振りのみとなり剣の魔力が大幅に減退しているこの状態からならば、あるいは、車輪剣伝いにその使い手すらも凍りつかせる事も可能では無いかと三又銛を構えるも……惜しむらくは、今の彼にはそれを実行する為の突破力が無い。
 速さ追い求める為のパーツを守りにと廻すユーベルコードに頼らざる得ない状態にまで追い込まれたウインドゼファー本人は大きく距離を保ったまま自ら近接戦を仕掛けて来る気配は無く、『竜巻』の維持に集中し続けている。
(多少は受けてもいい、意識さえ残せれば――)
 『嗤う竜巻』はデタラメに大気を掻き毟るばかりの様でありながら、一方で、まるでそれ自体に悪意が備わっているかのような精確さでヴィクトルを執拗に追尾し続けており、全力回避と全力防御の繰り返しはそう長くは続かず、遂に、狂奔の渦へとキマイラの術士は飲み込まれてゆく。

 ――ヒャヒャヒャヒャァッ!!!

 チリリ……チリ……微かに何かが灼け爆ぜるような気配。
 それを察知したウインドゼファーが勝ち誇る片車輪をまた黙らせようと意識を緩めた、一瞬のその空隙に。
 雪花散らす黒曜角を戴く羅刹の化身忍者――鎹・たから(雪氣硝・f01148)が敢然と舞い降りる。

「あなたが自分の速さを信じているのなら、その速さに、挑みます」
「!? 新手かッ」
 どれほど限界近付けど絶対の速さ誇る幹部怪人の反応は迅速だった。
 片剣からの『ソード・オブ・ダイアモード』連発は無理と判断したウインドゼファーが迎撃にと吹かせた風は『レボリューション・ストーム』。
 増援が1人限りという保証がない故に無差別範囲攻撃を選んだのであろう。
 全ての命革める嵐の到来を爪先で感知すると同時、銀雪の如き『氣』を発して仮初めの踏み場を得た少女の体は天目指して大きく跳ね上がる。
「雪は舞うものでしょう?」
 幾重もの不可視の防壁を纏った少女は、花弁から花弁を、かろやかな『灰雪(ハネユキ)』の足運びで跳躍する。
 『暴風』受ける中でのその自在さは、たとえ既に敵が大きく弱体化しているとは言えども有り得ない筈の光景。
「……多少の助けにはなるかなって」
「感謝します」
 微動だにせぬ銀瞳の少女の無表情は、戦友からの『力』に包まれなおいっそうの覚悟を引き絞る。
 それは先に『嗤う竜巻』の渦中で引き裂かれた筈のヴィクトルから発せられたチリリと優しき癒しの稲光。
 辺りの精霊たちのみならず、もう1人の羅刹の少女が残した雷性の残滓魔力をも合わせて紡がれた高速治療『活力の雷(ガルバニズム)』が超再生ともいえる威力を自他に向けて複数同時に発動させることで『暴風』のダメージを相殺し続けていたのだ。
 そして術士から少女への贈り物は、更にもう一つ。
 生命活動全般の超活性――爆発的な『速さ』である。

「たからの意志は、あなたの風に負けません」
 短い呼吸音。裂帛の気合とともに急接近で神速の怪人の死角へと滑り込むや繰り出されたのは、耀く大連珠をしかと巻きつけた拳の連打。
 惨禍よふたたびゆめへと還れと、少女の持てる闘技の全てを注ぎ込んだまさに電光石火のラッシュは鋼の装甲へ大きな亀裂を穿つに到る。

 ――ギャハハハハハァッッッ!!!

 最期の最後、足掻きを見せたのは『剣(ダイアモード)』だった。
 強制的に彼女の命を代償に全タイヤ高速回転モードを再起動させ、逆操縦を試みようとしたのだ。
「もう黙っていてくれないかな。真面目なキミのそのスタイル、嫌いじゃなかったよ――『疾風(ゼファー)』」
 だが、間一髪、ヴィクトルが投擲した銛の命中部分から注がれた絶対零度の魔力の前にその不快な嗤い声は永遠に沈黙する事となる。

 ――ヒャヒャ……ヒャ……ャ……。

「私は……ただ、速く……もっと、――」
 ほぼ時を同じくして苛烈なる『暴風』も完全に止み、スピード怪人の亡骸はさらさらと朽ち崩れて自ら散らせた花びらとともに千々にと消える。
 たからの頬を撫でた名残り風はもうすっかりとか弱いけれどほのかに暖かで……。
「『還る』までの刹那、あなたは優しいそよ風になれたのでしょうか」

 そして、ようやく凪の静寂を取り戻した枯れずの花々の道の先を、猟兵達は征く。
 ――星と未来とを、取り戻す為に。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年05月24日


挿絵イラスト