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バトルオブフラワーズ⑪〜風を操る者

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ #ウインドゼファー

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●最後の関門
 風が吹いていた。
 キマイラフューチャーの最深部、システム・フラワーズへと続く通路、その先にある門の前に一人の怪人がたたずんでいる。
 見上げる視線の先には、巨大な吹き抜けの空間に、折り重なるように幾重にも張り巡らされた通路が、まるでツタのように絡み合っていた。
 まもなく、この通路を猟兵達が駆け降りてくるのだろう。
「ドン・フリーダムがシステム・フラワーズを取り戻すまでの時間稼ぎならば、私でも十分でしょう。」
 決意の強さを示すかのように、吹き上がる風がますますその力を強めてゆく。
「私達は全てを手に入れる。誰にも、邪魔は、させないッ!」

●グリモアベース
「それでは~、今回の作戦を説明し……にゃふ!」
 消えた!!
 グリモア猟兵のリルム・ラルム(すーぱーさいえんてぃっくまじかるにゃふふ・f00317)がまさに説明を始めようとしたその瞬間、その姿が机の上から忽然と消え去った。
 彼女は体が小さなケットシーだということで、机の上によじ登って説明をしていたのだが……。おそらく足を踏み外して下に落ちたのだろう。

 ……ということで、今回もリルムの説明はアレなので代わりに説明が必要となる。
 今回の作戦目標はスピード怪人「ウインドゼファー」の撃破だ。
 ウインドゼファーは今回の敵怪人達の幹部であり、キマイラフューチャーの最深部へ至る最後の関門でもある。
 かなりの強敵であり、しっかりと事前対策をしていなければ勝利は望めないだろう。

 ウインドゼファーはスピード怪人の名のとおり、速度を重視した戦い方を好む。風を操るユーベルコードを駆使して、戦場を縦横無尽に駆け巡る戦いを仕掛けてくるはずだ。
 スピードに自信がある猟兵は機動戦を挑んでもよいし、そうでない猟兵は何らかの対策を準備して戦うとよいだろう。

「ウインドゼファーさんは誰よりも速くなりたいって願った女の子なんですよ~。」
 机の影から這い出てきたリルムが補足する。
 そう、ウインドゼファーは純粋にただ誰よりも速くありたいと渇望した女の子なのだ。純粋ゆえにその願いは強い。……って、なっ! 女の子だと!?
「私もさっき知ったばかりなんですけどね~。にゃふふ~。」
 そう笑いながらリルムはひょい!っと机の上に飛び乗るのであった。


五条ながれ
 こんにちは。五条ながれです。
 今回はシステム・フラワーズへつづく第三の関門を守る怪人、スピード怪人「ウインドゼファー」を撃破してください。注意点として、怪人軍団の幹部である彼女との戦闘には次の特殊ルールが設けられています。

●特殊ルール
 敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
 この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。

 まずは、敵の攻撃に何らかの手段で対抗したうえで、反撃に転じてください。
 厳しい戦いが予想されますが、ここを抜ければいよいよドン・フリーダムへの道が開くことになります。頑張ってください。
 それでは皆さんのプレイングをお待ちしています。

●運営シナリオ数について(お知らせ)
 運営シナリオ数に制限はありません。戦場の戦力「40」をゼロにできれば制圧成功ですが、それ以上の成功数があった場合、上回った成功数の半分だけ、「⑬『ドン・フリーダム』」の戦力を減らせます。
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第1章 ボス戦 『スピード怪人『ウインドゼファー』』

POW   :    フルスロットル・ゼファー
全身を【荒れ狂う暴風】で覆い、自身の【誰よりも速くなりたいという欲望】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    ソード・オブ・ダイアモード
対象の攻撃を軽減する【全タイヤ高速回転モード】に変身しつつ、【「嗤う竜巻」を放つ2本の車輪剣】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:藤本キシノ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

虚・楓
荒ぶる風の化身、と言ったところか。素のままでは厳しそうなので、真の姿で戦いを挑む。武器は太刀型の「夕凪」

【POW】
さて、まずは先制攻撃をどうにかせねばな。とは言え俺のやる事は決まっている。相手の攻撃の軌道を「見切り」、「武器受け」で受け止める。突進のような攻撃を受け止められるのならばその後に繋げやすいが……受けた姿勢のまま「属性攻撃(雷)」で受け止めた己ごと相手を攻撃する。この距離でならばかわせまい……あぁ、俺も耐性などはないので苦しいがな。
相手がその攻撃で怯むのであれば、その隙に「二回攻撃・鎧無視攻撃」を組み合わせて「UC」で辺り一面を斬る。
逃がしはせん、一気に畳ませてもらう。



 複雑な層を織り成す通路の迷宮を先陣切って駆け抜ける若者がいた。
 虚・楓(霊魂料理人・f14143)である。

「荒ぶる風の化身、と言ったところか。」
 強敵を前に、虚はすでに臨戦態勢。「角」を取ることで自身に蓄積した「穢れ」を解放した虚は真の姿をさらけ出し、おそらく敵がいるであろう通路の先へと突き進む。
 もちろん敵に先手を打たれないよう、鋭い眼光で周囲の警戒もおこたらない。敵が攻撃してきたときには、その突進を見切り、攻撃を受け止めたうえで一気に畳みかけるつもりだ。

 だが、その時。虚の視界の端に赤い光がまたたいた。
「!?」
 本能的に身体を半身ずらし、防御の構えをとる虚。それは意識ではない。長い戦いのなかで培ってきた本能のようなものであった。

 次の瞬間、虚の身体が激しく弾き飛ばされる。そして、
 ――ドゴォン!!
 遅れてやってきた激しい衝撃波が、追い打ちをかけるように虚の身体に襲い掛かった。

 それはまさに奇襲であった。複雑に絡み合う通路を利用して虚の死角に回り込んだウインドゼファーは、荒れ狂う暴風を身にまとい、音速をはるかに凌駕する飛翔で虚へと襲い掛かったのだ。

 もちろん虚も死角からの奇襲を予測していなかったわけではない。
 しかし、相手の動きを見切るためには、相手を視界にとらえるか、あるいは敵が動くことで生じる音や空気の流れ、そういった何らかの予兆をつかむ必要がある。
 一方で、空気の壁を己の身体で切り裂きながら、文字通り音を超える速度で接近してきたウインドゼファーの一撃は、虚にとってまさに認知の外。ウインドゼファーの圧倒的な速度は、虚が見切りの予兆をつかむことすら許しはしなかったのだ。
 さらに一瞬で加速するその動きはまさに神速。もし、その姿を完全にとらえていたとしても、果たしてその攻撃を受け止められただろうか。確かなことは何も言えない。

 だが、とっさに防御姿勢をとることができたのは少なくとも僥倖であった。それで致命傷は免れたのだ。初めから真の姿を解放し全力で戦う決意と、敵の攻撃を見切るため周囲を警戒する視線。そのどちらか一方でも欠けていれば、即死していたことだけは間違いない。

 ゴホゴホとせき込みながら虚が起き上がり、膝をついたまま敵をにらみつける。鈍い痛みが全身を襲い、血の味が口の中に広がった。

 そんな虚の様子をウインドゼファーは冷ややかに見降ろす。
「ほう……。まだ生きていますか。なかなか手強い。」
 それはウインドゼファーの本心からの賛辞であった。だが虚にとっては侮辱以外のなにものでもない。

「ぐっ……。まだまだ!」
 痛みを押し殺して、ゆらりと立ち上がる虚。
 愛刀、夕凪の形状を素早く振るえる短刀の形に変形させ、ユーベルコード、空開きを発動させる。
「既にそこも間合いの内よ、参の型・空開き!」
 空間を断つ無数の斬撃がウインドゼファーに向けて放たれる。と同時に、絶った空間を利用して自らも素早く位置取りを変える。
「くらえ!」
 斬撃をかわすウインドゼファーに向けて、虚は雷撃をまとった攻撃を放つ。
「この距離でならばかわせまい!」
 そして再び、空開き。
 至近距離から立て続けに放たれた斬撃が空間ごとウインドゼファーの腕を切り裂いた。

「ふむ。なるほど。これならあの2人が倒されたこともうなずけます。」
 ウインドゼファーの腕からにじみ出た血が、彼女のコートを染めるあげた。

「その『角』、取らせてもらうぞ。」
 ウインドゼファーに一撃を加えた手ごたえを感じながら、まつろわぬもの達との戦いを思い返した虚はそうつぶやくと、再びウインドゼファーと激しく切り結び始めたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

尾崎・ナオ
スピード勝負!望むところ!
ナオちゃん、こういう純戦闘、だぁいすき!!

●防御
SPDで攻撃するから、SPDで先制攻撃がくるって事よね。
バラバラにされる足場の位置を【第六感28】で察知し距離を取って暴風は回避しよう。
回避に使うのは【煽りは任せろ】
「あっは!もうちょっとお淑やかにしたらぁ?ナオちゃんみたいに!」
自画自賛を吐き煽りながら、スピードと反応速度が爆発的に増大させる。
暴風から逃れたタイミングで解除し、即座に反撃開始!

●攻撃
【クイックドロウ】と、技能【クイックドロウ112】【早業28】
相手も避けるだろうが、関係ないね!
一体何発…いや、何本の銃を持ってると思ってるの?



「ナオちゃん、こういう戦い、だぁいすき!!」
 またひとり、キマイラフューチャーの中枢部を目指し、通路を駆け抜ける猟兵がいた。
 尾崎・ナオ(ウザイは褒め言葉・f14041)である。

 長い髪をなびかせながら疾走する彼女もまた、自身のスピードに自信を持っていた。
 はたしてウインドゼファーのスピードはどれほどのものなのか?
 スピードを誇るウインドゼファーに真正面からぶつかることも辞さない面持ちである。
 本質的に気分屋なナオではあるが、その気分はいまや最高潮に達しようとしていた。

(……!)
 だがその時、ナオの第六感が何かを告げる。
 ナオは慌ててステップを踏み変え急制動をかけると、迷うことなく手すりを飛び越え通路から虚空へと、その身を投げ出した。
 それはまさに本能的反射。ナオ自身、なぜ自分がそうしたのか? まだ論理的に説明する余裕はない。

 だが次の瞬間、ナオの眼が驚愕に見開かれる。彼女がいままで疾走していた通路が、突如現れた暴風によってバラバラに引き裂かれたのだ。
 同時にナオは、己の使命を直観する。
 彼女が見つめるその視線の先には、ウインドゼファーの特徴的な真っ赤な仮面がその存在を誇示していた。

 ウインドゼファーは関門に至るすべての道を破壊しようというのだろうか?
 荒れ狂う無差別攻撃が、かたっぱしに通路を破壊し、ナオを追い詰めようとする。

「あっは! もうちょっとお淑やかにしたらぁ? ナオちゃんみたいに!」
 そんなウインドゼファーの攻撃を通路を次から次へと飛び移ることでかわしながら、ナオはまるでウインドゼファーを煽るかのように軽口をたたき挑発を繰り返す。
 そして暴風の嵐が、そんな二人を追いかけるかのように、全てをバラバラに引き裂いていった。

 無論、ナオはただ敵を挑発しているわけではない。
 挑発を行う度に、ナオの神経は研ぎ澄まされ、反応速度は確実に増していく。
 だが、それでもなおウインドゼファーのスピードに対抗するには速度が足りなかった。
 それを裏付けるかのようにウインドゼファーはナオの挑発を意にも介さず、ただ淡々と、しかし確実にナオを追い詰めてゆく。

 このまま、ウインドゼファーの攻撃を避けながら反応速度を稼いだところでやがて消耗し、やられるのは自分自身だ。
 そう感じ取ったナオは、覚悟を決めた。

「スピード勝負! 望むところ!」
 ナオは通路の手すりを掴むと、それを軸に身体をひねる。
 そして、そのまま落下してきた通路の破片を足場にし、今までとは全く逆、すなわち暴れる狂う暴風の中心、ウインドゼファーへ向けて鋭く跳躍した。
 相対するふたりの速度が一瞬で劇的に加速する。

 すかさずナオはユーベルコード、クイックドロウを発動する!
「これ、見える~ぅ?」
 バラバラに破壊された通路の破片が、まるでスローモーションのようにゆっくりと落下していく。
 そんな中、ウインドゼファーへ至る射線を見極めたナオは、黒い拳銃を抜き放ち、その引き金を引いた。
 拳銃より放たれる弾丸。
 同時に反作用で銃に反動が生じる。
 だが、その反動がまだ治まらぬうちに、ナオは拳銃から手を離すと、次なる獲物を抜き放った。
 そして再び引かれる引き金。
 それは、自動拳銃のリロードをはるかに超える速度で撃ちだされる弾丸の嵐であった。

 ナオが撃ち放った弾丸の嵐。
 ウインドゼファーが操る破壊の暴風。
 その2つが両者の間で激突する。
 だが、ナオはその眼ではっきりと捉えていた。
 目標の未来位置を予測して放たれた弾丸が、空気を切り裂き、そのいくつかが、まるで吸い込まれるようにウインドゼファーの身体を撃ちぬくのを。

「ぐっっ!」
 低くうなるウインドゼファー。
 それはウインドゼファーが誇る風を操るユーベルコードが切り裂かれた瞬間であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

グレース・マクローリン
【WIZ】
WIZは防御よりのUCだけど竜巻が厄介…竜巻をどう抑えるかが肝要だね。
先制攻撃は【戦闘知識】から太刀筋と竜巻を【見切り】つつ、【残像】【逃げ足】で極力回避に徹するよ。

避けながら閃光発音筒を【投擲】して【目潰し】。

恐らく目潰しで時間稼ぎが出来るのは一瞬…ガンガン畳み掛けよう。

ここでUC【影喰ひ海蛆】を発動、フナムシを一匹潜行させると同時に、アタシは拳銃ヴォルフファングの【クイックドロウ】【スナイパー】【2回攻撃】【武器落とし】の合わせ技で2振りの車輪剣を撃ち落とす。
丸腰になった所を影から潜行させてた【影喰ひ海蛆】で【毒使い】【鎧無視攻撃】【暗殺】を載せて背後から刺し貫くとしようかな。



 銃弾で撃ち抜かれバランスを崩したウインドゼファーに勝機とばかりに猟兵達が集まり、一気に間合いを詰める。
 はためく帆のように長いスカートをたなびかせ、颯爽と駆け抜けるグレース・マクローリン(副業海賊・f12443)もその一人だ。
 一気にケリをつけようと、海賊衣スタイルの彼女によく似合う、船のアンカーから削り出して作られた大剣、ヴォーパルソードを握りしめると、それを大きく振りかぶる。

 だが、殺到する猟兵を前にしてもウインドゼファーの意思はまったく乱れない。
「まさか私の風を、速度で切り裂くとは。油断しました……。ですが、侮ってもらっては困ります。猟兵どもガッ!」
 受けた銃弾の傷口を庇いつつも、ウインドゼファーは手に持った車輪剣をやや短く持ちかえる。
 車輪剣の回転刃が高速で回し始めたかと思うと、ウインドゼファーの周りに空気の渦が巻き上がり、一気に荒れ狂う竜巻へとその姿を変えていった。

 ウインドゼファーが巻き起こす空気の奔流に、バラバラに引き裂かれた通路の破片が次々と飲み込まれていく。それらは互いに衝突し、粉々に砕かれ、砂塵へとその姿を変えることで、あっというまにウインドゼファーを守る砂嵐となり、猟兵達の視界を遮った。

 突如現れた巨大な竜巻を前に、攻撃の機会を失った猟兵達は思わず立ち止まってしまう。
「死ねい!」
 そこを狙いすましたかのように、轟々とした騒音の向こうから、ウインドゼファーの声が響いた。

 次の瞬間、ウインドゼファーを囲む巨大な竜巻から2本の細い竜巻が分裂したかと思うと、辺りに散らばる猟兵達を薙ぎ払い始める。
風の力によって加速された破片が、逆らうものをすり潰さんとばかりに、次々と猟兵達に襲いかかる。
 それはあたかも巨大な竜巻から生える2本の腕のようであった。

 その様子の一部始終を見ていたグレースは、まるで巨大な怪物が突如現れたように感じた。
(……危ない!)
 そう思った瞬間、身体が自然と反応する。素早くジャンプすると、ウインドゼファーと距離を取るため走りだした。
 それはグレースに襲い掛かった竜巻が、彼女が立っていた通路の床を鋭くえぐるのとほぼ同時であった。

 獲物を捕らえ損なったウインドゼファーは、完全にグレースに狙いを定めたようだ。うねるように竜巻でできた腕をくねらせ、ジグザグに走り回避を続けるグレースを追撃する。
 さらに悪いことに、竜巻が通過した個所は、まるでドリルで削られたかのように破壊され、その破片が新たな凶器となって、さらに破壊力を増してゆく。

 刻一刻とグレースは追い詰められ、状況は悪化の一途をたどる。
 なんとか勝機を見出だそうと、必死に思考をめぐらすグレース。その時、ふと視界の端で、新たに砕かれた通路の破片が、ウインドゼファーが巻き起こす巨大な竜巻に吸い込まれていく様子が目に留まった。

「これだ!」
 グレースは胸元からいくつか筒を取り出すと、それらに取り付けられたピンを一気に引き抜き、ウインドゼファーの脚元めがけ、低く投擲する。2度、3度と床をバウンドした筒は、やがて風の奔流に乗り、ウインドゼファーが巻き起こす竜巻へと巻き込まれていった。
「3……、2……、1……、」
 必死にウインドゼファーの攻撃を避けながら、ゆっくりタイミングをカウントし反攻のチャンスを伺うグレース。
「ゼロ!」
 その瞬間、辺りに閃光が走り、間髪入れず轟音が空気を震わせた。

 そう、グレースが投げたのは閃光発音筒だ。
 スタングレネードともよばれるそれは、爆発時に強烈な閃光と轟音で対象の視聴覚を一時的に麻痺させ、行動を阻害する。
 ただ、通常であれば普通の人間ならまだしも、怪人であるウインドゼファーに閃光発音筒はさほど効果をおよぼさなかっただろう。
 だが、竜巻を操るウインドゼファーは、風の感覚を掴むためその意識を周囲の空気の流れに同調させていた。そこへ襲い掛かった轟音は、閃光とともに強烈なショックパルスとなり、ウインドゼファーの意識に直接響いた。それが予想以上の効果を及ぼすこととなる。

 竜巻が消え去り、嵐が止んだ。

 二度目のチャンスは無い。
 すぐさまそう悟ったグレースは、ウインドゼファーに正対するため鋭く跳躍しながら、ユーベルコード、影喰ひ海蛆を発動させる。
 同時に、腰にさしていた愛用の銃、ヴォルフファングを抜き放った。
 
 狙うは、ウインドゼファーの武器。そう考えたグレースは、ふとウインドゼファーのコートに広がったシミに目を止める。
 武器を持つ腕に広がるそのシミは、明らかにウインドゼファーが深く負傷していることを示していた。

「そこだね!」
 グレースは迷わず引き金を引いた。
 ヴォルフファングの銀色のスライドが跳ね、銃口より蹴りだされた弾丸がウインドゼファーの腕にあった傷口に寸分たがわず命中する。

「影喰ひ海蛆!」
 すかさずグレースが叫ぶ。
 するとウインドゼファーの撃ち抜かれた傷口に一匹のフナムシが現れた。
 それはグレースのユーベルコード、影喰ひ海蛆が生み出したフナムシであった。
 銃弾の影に潜みウインドゼファーへ接近したフナムシは、グレースの呼びかけに応じるように実体化すると、ウインドゼファーの傷口をえぐり、その身体を突き刺し貫く。

 ――ゴトン!
 通路の床に鈍い金属音が響く。
 それはウインドゼファーの回点剣が床に落ちる音であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

純・ハイト
【特攻隊A】

先にフェアリーが乗れるように性能を上げて魔改造されたレオパルト5の戦車でソード・オブ・ダイアモード攻撃を受けるために操作しながら運転して砲撃攻撃をするが支援の準備の布石で戦車が破壊される前にバレないように脱出すると同時に全力魔法と高速詠唱で派手に爆破して迷彩・目立たない・忍び足で隠れながら移動して運命の時の支援できる位置に移動する、その間にバレずに支援が可能ならフェアリー用スナイパーライフルで援護してゼファーのUCを妨害する。ロダさんが突撃した時に運命の時で支援行動をして守るようにする。

この作戦がうまくいけばいいのだが。


アーサー・ツヴァイク
※何でも歓迎、【特攻隊A】で参加だ。

相手は足場を崩す嵐とタイヤ剣で攻めてくるな。
まずモルツクルスが足場を整えるためにUCを発動してくれるんで、邪魔されないように一手。相手のタイヤ剣に対し、ライドランを槍モードにして敵に【槍投げ】、相手の攻撃を邪魔するぜ。

次に嵐対策。一発目はバスターホーンの【盾受け】と【オーラ防御】【激痛耐性】、そして【気合い】で耐える。ついでに近くの味方を【かばう】ぜ。右腕さえ守り切れば、俺はまだ戦える!
2発目については、ハイトのUC相殺に託すぜ。
2発目相殺の隙を突いて、限界まで【力溜め】した【ブーステッド・ソニックアーム】をぶちかます!

さあ……勝負だ、ウィンドゼファー!


ロダ・アイアゲート
【特攻隊A】で参加
UCを使って速度を上げつつ相手に勝負を持ちかける
「バイク風なのは見た目だけなのでしょうか?」と煽るような感じで
UCを使う際に足場がバラバラになる技を使ってくるので、それを仲間に相殺してもらい足場が残っている状態でバイク走行

嵐は【覚悟】【オーラ防御】で耐え、それでも止まないようならバイクを【操縦】しつつ、抜かされるようなことがあれば【追跡】
必要であれば【Dear pal】を盾がわりに展開
2発目の相殺で敵に隙が出来れば、一気に距離を詰め【Avrioscope】を使う

懐まで潜り込めれば【Toolkit】を使ってハッキングや分解したいところですが、これは状況に応じて…という感じですね


モルツクルス・ゼーレヴェックス
【特攻隊A】
「さあ、勝ちにいくっすよ!」
【鼓舞】して
転移したならば【高速詠唱】一瞬でも早く術を撃つ
アーサー殿と【オーラ防御(改)】に頼り吹き飛ばされても【空中戦】で姿勢を制御
どんな態勢でも【パフォーマンス】は落とさない
【物質変換】で【範囲攻撃】当たればその身を重く鈍く
本命は外れた場合の地形変化
不安定な花弁を硬く、重く、広く繋げて足場を確保
「なんで自分達を倒せないか、分かるっすか?」
高速でさらに足場を広げながら【戦闘知識】で機会を見計らって【存在感】醸し挑発
「……あんたがノロマだからっすよ」
事前【情報】を【学習】した上での長所貶し
【コミュ力】を発揮して思い切りムカつくように言い放って注意を惹く



 武器を落としたウインドゼファーが、片膝をついたまま地にうずくまる。
 幾度となく猟兵達の攻撃をその身に受け、今にも崩れ落ちそうになる身体を必死に支える彼女の脳裏に去来するのは、骸の海に捨て去られし彼女自身の生きざま。
 スピードを追い求め続けるウインドゼファーは今、何を思うのだろうか。

「私は……、私は、手に入れるッ!」
 ウインドゼファーに備わる内燃機関がけたたましい音を立て始めると、肩から突き出た排気口からはどす黒い煙と共に、まるで羽虫が飛び立つかのように細かな火花が噴出した。
 エギゾーストパイプは熱を帯び、やがて鮮やかな青へとその色を変えると、止まることなくその色を赤黒く変色させる。
 それでもなお、ウインドゼファーは熱くなる。
 いまや彼女が身に着けていた白いコートは熱で黒く炭化して、漆黒の衣へと変貌を遂げていた。

「誰にも、邪魔は、させないッ!」
 それは決意、あるいは慟哭だろうか。
 一瞬にしてすべてを吹き飛ばす風の奔流が巻き起こると、ウインドゼファーを中心に巨大な竜巻が巻き起こり、あらゆるものをバラバラに引き裂き始めた。

 ――。

 そのころ、やや時間をさかのぼって、通路最上層。
 そこではグリモア猟兵のリルムによって転送された猟兵達が立ち往生していた。

「やっぱり、戦車でこの通路を通るのは無理じゃないっすか?」
 冷静に指摘するモルツクルス・ゼーレヴェックス(自由を飛ぶ天使・f10673)の目の前には巨大な戦車が鎮座している。その幅、なんと17メートル。
 ちょっと幅の狭い乗用車ならば、優に10台も並べることができる大きさだ。さすがに通路を通過するには大きすぎる。
「どうしますか? 一度戻って別の場所に転送しなおしてもらいましょうか?」
 ロダ・アイアゲート(ヒトになれなかったモノ・f00643)が問いかける。
「うーん、そうしてもらった方がいいかもしれないんだけど……。じゃあどこに出してもらう?」
 それに答える純・ハイト(数の召喚と大魔法を使うフェアリー・f05649)も迷っていた。
「……。」
 一方、アーサー・ツヴァイク(ドーンブレイカー・f03446)は議論には参加せず、ただ成り行きを見守っている。

 あーでもない、こーでもないと話し合う猟兵達。その時、突然床が裂け、猟兵達を飲み込むように崩れ落ちた。

 落ちた先に待ち受けていたのは暴風の嵐。
 吹き荒れる空気の奔流に乗って、バラバラに引き裂かれた通路の破片が猟兵達に襲いかかる。
 ――ガンッ! ガンッ!
 ハイトの戦車に次々と破片が当たり、鈍い音を響かせる。
 慌ててロダとモルツクルスはオーラ防御を、アーサーはバスターホーンを盾にして、防御を固め必死に耐える。

 これがウインドゼファーの起こした嵐だと瞬時に判断したハイトは仲間に告げる。
「みんな、戦車につかまって!」
 戦車を操るハイトは、そのまま砲塔を右に90度旋回。仲間が戦車に取りついたのを確認すると、発射トリガーを引き絞った。
 ――ズドンッ!
 鈍い音とともに発射される戦車砲。同時に空中を自由落下する戦車は、その反動で左に吹っ飛ぶ。
 ――ズドンッ!
 ――ズドンッ!
 さらに連続して砲弾を発射。左、左へと車体を飛ばす。
「すげぇ! 戦車が空を飛んでるぜ!」
 アーサーが叫んだ。

 砲撃の反動で風もやや穏やかな嵐の中心まで抜け出したハイトの戦車。それにしがみつく猟兵達は、落下するその先に赤い兜を視認する。
「ウインドゼファー!」
 すかさず砲塔を旋回させ、ウインドゼファーを中心にとらえるハイト。発射トリガーを引こうとしたその瞬間、ウインドゼファーの姿が消え去る!
「危険です! 緊急離脱!」
 ロダが警告する。
 ――バガンッ!
 変な音が鳴り響いた。
 砲塔内に座っていたハイトがふと足元を見ると、戦車の車体部分が丸々消え去っている。
「ウインドゼファーだ! 真上にいるぞ!」
 アーサーが叫ぶその先には、全タイヤ高速回転モードに変身したウインドゼファーが、猟兵達へさらなる追撃を繰り出さんとしていた。
「Dear pal!」
 慌ててロダが、自立駆動ガジェットDear palを盾がわりに展開する。
 だが、それも一時しのぎに過ぎない。
 ――ガガガッ!
 まるでそれを嗤うかのようにウインドゼファーが繰り出した竜巻が、次々とガジェットをすり潰していく。
そして、そのまま車輪剣を振りかざすと、フリーになった猟兵めがけ2撃目の竜巻を放とうとした。
 その時、
「運命は自身の力で幸運を掴み取る!」
 それはハイトのユーベルコード、運命の時。
 運命を捻じ曲げるオーラが広がり、ウインドゼファーの竜巻を相殺する。

 反撃のチャンスだ。
 変身モードを解除されたウインドゼファーめがけ、槍に変形したアーサーのライドランと、ロダのAvrioscopeから放たれた弾丸が同時に襲い掛かる。
 だが、ウインドゼファーは風を巻き起こし跳躍。猟兵の攻撃をたやすくかわすと、そのまま反撃も無しに空へ向かって上昇する。

 ウインドゼファーからの反撃が無いことをいぶかしむまもなく、誰かが叫ぶ。
「まずい! 地面に激突するぞ!」
「任せるっす!」
 だが、モルツクルスがそれを制する。空中戦が得意なモルツクルスはどんな時でもパフォーマンスを落とさない。
「変形せよ変身せよ変転せよ変換せよ我が示す真実を現したまえ。」
 モルツクルスはユーベルコード、物質変換を地面めがけて打ち放つと、その素材を柔らかいものへと変化させた。

 ――ボスンッ! ボスンッ!
 エアクッションのような地面に、めり込むように着地する猟兵達。

 ――ドドドドドド!
 それに続いて巻き上げられていた通路の破片が一斉にその周囲に落下すると、真っ白な砂ぼこりが辺りを覆いつくし、猟兵達の視界を遮った。

 ――。

 ――ゲホッ! ゲホッ! ゲホッ!
 砂ぼこりがやや晴れ、せき込む猟兵達の姿がうっすらと現れる。同時に猟兵達は、彼らの傍らに立つ人影を視認した。
「猟兵も存外強いものだと思っていましたが、所詮はこの程度ですか。」
 ウインドゼファーだ。
「しかし、感謝はする必要がありそうですね。おかげで新たなスピードの境地に達することができました。」
 オブリビオンとして覚醒し、より増した己のスピードを満足そうに反芻するウインドゼファー。
 もうすっかり傷も癒えたのだろうか。
 両手にしっかりと回転剣を握りしめ、一歩、また一歩とゆっくり猟兵達に近づいてくる。

 そんなウインドゼファーに対して、猟兵達はまだ戦闘態勢が取れていない。
 ゆったりと語りつつも、しかし全く隙が無いウインドゼファーを前に、猟兵達は反撃の機会を見出だせていなかった。
 攻撃しようと動いた瞬間、その猟兵はスピードを極めたウインドゼファーの回転剣で切り裂かれるだろう。

「これならば、猟兵達を倒し、ドン・フリーダムがシステム・フラワーズを取り戻すまで時間を稼ぐのも問題なさそうですね。」
 まだ起き上がることすらできていない猟兵の前で立ち止まったウインドゼファーは、止めを刺そうと回転剣を振り上げる。
 だがその時、モルツクルスの言葉がその動きを遮った。
「でも、まだ自分達を倒せてなくないっすか?」

 このままではまずい。
 圧倒的な形勢の不利を感じとっていたモルツクルスは、せめて仲間が態勢を立て直す間だけでもと思い、自分に注意を引き付けようとする。

「なんで自分達を倒せないか、分かるっすか?」
 その、やや主張が強い存在感にウインドゼファーは振り上げた手もそのままに、モルツクルスをゆっくりと見つめ返す。しめた!とばかりに言葉をつづけるモルツクルス。
「……あんたがノロマだからっすよ!」

 ピタリとウインドゼファーの動きが止まった。
 突然動きを止めたウインドゼファーに違和感を覚えた猟兵達が思わず息を呑む。
 辺りを不気味な静寂が包み込んだ。

「貴様……。」
 ウインドゼファーが静かに口を開いた。だが同時に肩の排気口からは恐ろしい勢いで火の粉が噴出している。
「もしかして、自分達は決して死なないとでも思っているのですか?」

 いくら挑発とはいえ、それはウインドゼファーには絶対に言ってはならない言葉であった。
 誰よりもスピードを求め続けた彼女に対する最大の侮辱。
 モルツクルスが言い放った言葉はそういう類のものである。
「良いでしょう。では本当に倒せないのか試してみましょう。」
 ウインドゼファーは静かに告げる。
 そんな態度とは裏腹に、排気口からは激しいエンジン音が響き、黒煙が吹き上がると同時に、激しく火の粉が飛び散った。
 それはもはや排気口ではない。花火だ。

 ウインドゼファーの周りに、風が巻き上がったかと思うと、次の瞬間その身体はいきなり音速を超えて真上に上昇した。
 そのまま信じられない勢いで上へ上へと加速してゆく。

 その様子を唖然と見上げる猟兵達。だが、状況を把握すると一斉にその表情が青ざめる。
「ヤバイっす……。」
 モルツクルスがつぶやいた。

 突然目の前から姿を消したウインドゼファーに、猟兵達は態勢を立て直しつつも軽くパニックに陥る。
 ウインドゼファーは自分達を倒すといった。だが、その行動は上空への飛翔だ。そしてまだ、上を目指して飛んでいる。
 なんなのだこれは? どうすればいいのだ?

 とにかく、ウインドゼファーは倒さなければならない。
 ウインドゼファーが真上に跳躍したのなら、自分達はそれを追って戦いを挑み、撃破するしかない。
 だがどうやって?

 その時、アーサーがふとあるものを見つけた。
 それはさきほど破壊されたレオパルト5の砲塔部分だ。
「ハイト、この戦車の大砲はまだ撃てるのか?」
 アーサーが問いかける。
「砲塔部分だけ綺麗にもげたみたいだから、まだ使えると思うけど……。どうして?」
「俺達は何が何でもウインドゼファーを倒さなければならない。だがスピードが足りない……。」
 悔しそうに語るアーサー。
「だから、この大砲で弾を撃ち出してくれ。俺はそれをつかんで加速し、ウインドゼファーを追いかける。大丈夫! 右腕さえ守り切れば、俺はまだ戦える!」
 高らかに宣言するアーサー。

 あまりにも突拍子な提案に、顔を見合わせる猟兵達。
 そんな逡巡を打ち破ったのは、ロダだった。
「やりましょう。ハイトとアーサーは砲塔から砲身だけを取り出してください。私がToolkitを使って宇宙バイクに固定します。モルツクルスはウインドゼファーを追うための通路の準備を。」
 そう、彼らはスペシャル・タスク・フォース。特攻隊Aチーム。
 どんなに敵が強大であろうと、無茶な作戦であろうと、目標達成のためならば決して諦めたりはしない。
 そのことを思い返した猟兵達は、一斉に散らばり、準備を始める。

 ――。

 そのころ、ウインドゼファーは速度を増しながらぐんぐん上昇を続けていた。
 その高さは、すでにキマイラフューチャーの中心部を抜けだし、ふたつに割れた半球部も目前へと迫る。
 さらに上昇を続けるウインドゼファーは、半球の断面をしっかりと見据えると、くるりと身体を反転させ、速度はそのままに、その断面を思いっきり蹴り込んだ。
 大きくたわむ半球。
 半球に深々と突き刺さるウインドゼファー。
 次の瞬間、波打つ半球の断面がバネの様に大きくうねると、蹴り込まれた反動でウインドゼファーを思いっきりはじき返した。
 そして強度限界を超えたうねりで破壊された構造物が巻き起こす大爆発。

 半球の断面で起きた反動と、爆発の威力を利用して、速度ベクトルと逆方向に変化させたウインドゼファーは、今度は猟兵めがけて星の隙間を飛び降りる。
 己の身体をさらに変形させたウインドゼファーは、巨大な回転剣を先頭に突き立て、空気を切り裂き、その抵抗を減らしてゆく。
 巻き起こし続ける竜巻の奔流と、そして不思議な力で今なお、あらゆるものをその中心部へと引き寄せるキマイラフューチャーの重力を利用して、さらに速度を増してゆくウインドゼファー。
 切り裂かれた空気が衝撃波を形成し、その波面に沿って断熱圧縮により加熱された空気がプラズマと化し、発光しはじめた。
 そして、その熱の輻射を受けたウインドゼファーの真紅の兜もまた紅く輝きだす。

 それはまさに紅き流星であった。

 一方、即席の宇宙バイク戦車を完成させた猟兵達は、ウインドゼファーをまっすぐ追って瓦礫を固めて作った仮設の通路を垂直に駆けあがっていた。
 バイクの側面にはハイトの戦車砲が無骨に取り付けられ、その先端にはアーサーがぶら下がっている。いささか急造りなのは仕方がない。
 追跡スキルを駆使してバイクを操るロダが後ろに座るモルツクルスへと指示を出し、モルツクルスのユーベルコードが、バイクが垂直な壁を駆け抜けられるよう通路の材質を特殊な素材へと作り替え、上へ上へと道を伸ばす。

「む……。どうやら反転してきたようです。」
 ウインドゼファーの動きの変化にロダが気付く。
「えっ? こちらに向かってくるってことっすか?」
「照準点を教えてくれ、ロダ!」
 慌ててハイトが戦車砲の照準を合わせようとする。
「今、光ったキマイラフューチャーの半球断面からまっすぐ来ます。あとはカンで。」
 慌てて、半球断面で起きた爆発の光点へと戦車砲を向けるハイト。
 だが、詳細な位置はわからない。
 照準の全てはハイトの腕にゆだねられた。
 ……1秒、……2秒。
 そして、ウインドゼファーの紅い光点が現れる。

「見えた!」
 スコープを除くハイトが短く告げる。すかさずスナイパーライフルで鍛えた狙撃術であっという間に照準を合わせこむ。瞬間、アーサーが叫んだ。
「カウントゼロで発射してくれ! Select…COUNT ACTION! 3…2…1…Fire!!」
 ――ズドンッ!
 戦車砲が火を噴いた。
 瞬時に、アーサーは放たれた弾丸をハシッ! と左手でつかみ取ると、
「ぶっ飛べええええ!!」
 そのまま砲弾のエネルギーを利用して、ウインドゼファーめがけて加速する。
「運命は自身の力で幸運を掴み取る!」
 間髪入れず、射程に入ったウインドゼファーめがけ、ユーベルコードを相殺しようと運命の時を放つハイト。
 嵐が消え去り、ウインドゼファーの回転が止まる。だが、すでに加速しきった速度は相殺しきれない。

 ウインドゼファーめがけ真っすぐ突き進むアーサー。
「光よりも速く…ぶちのめしてやるぜ!」
 そして止めとばかりにアーサーは、ブーステッド・ソニックアームを紅い光めがけて撃ち込んだ。

 その直後、猟兵達は、はっきりとウインドゼファーの叫びを聴く。
「喜べ猟兵! お前たちはこの戦いの戦死者として永遠にその名を歴史に残すのですッ! このウインドゼファーのスピードと共にッ!!」
 そんなウインドゼファーの叫びが猟兵達の耳に届いたのは、紅い光が彼らを貫いた後だった。

 ――。

 ぼろぼろに破壊された通路がわずかに残る最後の門の前で、地上から駆けあがる赤い光と、天から降りおちる紅い光が交差する。
 直後、衝突によって行き場を失ったエネルギーが熱と変わり、真っ白な光の球がその場に出現した。
 出現と同時に急激に膨張したそのエネルギーの塊は、全てを真っ白に塗りつぶし、直後に到来した衝撃波が轟く爆音と共に、あらゆるものを完全に引き裂き吹き飛ばす。
 最後に残ったのは、ただ静寂とどこまでも白い空間のみであった。

 ――。

●スピードを追い求めた者
 キマイラフューチャーの最深部、システム・フラワーズへと続く通路。
 その最後の関門が見下ろす部屋の床には大穴が開いていた。
 絡み合うツタのように張り巡らされた通路は完全に崩れ落ち、残骸となって床に積みあがる。
 その情景は、さながら大きなクレーターの様であった。
 
 その内部、瓦礫の山のあちらこちらで、ちろちろと燃える炎が辺りを照らし出している。
 ――ガコン。
 瓦礫がひとつ崩れ落ちた。

 見ると崩れ落ちた瓦礫の隙間から這い出ようとする一人の人物が目に留まる。
 金属質なその身体が、辺りの炎に照らされ金色に光る。
 そう。それは、ロダの姿であった。

「ふう……。本当に死ぬかと思いました。」
 そう呟きながら、ロダはごそごそと瓦礫の山を除け始める。
 すると中から、次々と猟兵達がその姿を現した。
 モルツクルス、ハイト、そしてアーサー。
 アーサーのブーステッド・ソニックアームとウインドゼファーが交差するその瞬間、物質変換術式でとっさに猟兵達を守る盾を造ったのはモルツクルスであった。
 おかげで、ボロボロの状態ではあるが、幸いなことに全員健在である。

「……。勝ったのか?」
 ハイトが問う。
「どうやらそうみたいっすね。」
 ほっとした表情でモルツクルスが応える。
「俺の右腕は確実にヤツにヒットした。間違いないぜ。」
 にかっと笑うアーサーが敵の撃破を宣言する。
 そんな死地から生還したとは思えない、いつもと変わらぬアーサーの姿を見た猟兵達は、くすりと笑い合う。
 やがて思い思いに立ち上がり、システム・フラワーズ、その中枢へむけて門を潜り抜けていった。

 そう彼らはスペシャル・タスク・フォース。「特攻隊A」チーム。
 キマイラフューチャーに平和をもたらす彼らの戦いは今始まったばかりなのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年05月23日


挿絵イラスト