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バトルオブフラワーズ⑪~颶風逆巻く

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ #ウインドゼファー

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●守人
「モンキーに続きバニーまでとは、驚きました――しかし、私たちはすべてを手に入れる。それは、誰にも、邪魔は、させないッ!」
 その声音には強固な決意が発露している。
 門番としての矜持。自信。自覚――手にした剣は、風を巻き起こさせ、足元の花々の花弁を舞い上がらせた。

●覚悟
 鳴北・誉人(荒寥の刃・f02030)はその手に、仄青く光るグリモアを出現させながら、猟兵を迎えた。
「風を操るユーベルコードを使う、スピード怪人『ウインドゼファー』が待ちかまえてる」
 三人目だ。
 ドン・フリーダムがシステム・フラワーズを取り戻すまでの時間稼ぎ――ということだが、その力は、先の猿にも兎にも引けをとることはない。
 むしろ、その風の力によって先制攻撃をしかけてくる。
「真っ向勝負になっから、それ相応の覚悟しとけよ」
 エイプモンキーのような創造も、ラビットバニーのような無敵の力も持っていない。
 それゆえに強い。
 ただただ、純粋な力比べとなるだろう。
 その戦闘力は、猟兵を凌駕している――先手を受ければ、そこからの巻き返しは不可能だ。
 敵のユーベルコードに対してなんの対策も取らなければ、敗北は必至だ。
「けどよ、おめえらならなんとか出来んだろォ。今までも、そうして勝って切り抜けてきた、違えかよ」
 誉人なりの激励だ。
「足元はこれまでと変わらねえ、花畑だ。相手は風を操る。知ってっか、巻き上げられた花弁がどんだけ視界を遮ってくるか。足場を崩すような攻撃をしかけてもくっからな、気ィ抜いてるヒマなんかねえ」
 躱すか。
 無効化するか。
 相殺するか。
「絞れよ、一分の隙もねえぐらい、おめえらの知恵絞って、渾身のユーベルコードで討ってきてくれ」
 炯々と尖る双眼が、グリモアの光に照らされ――そして、その先には、一面の花畑が広がっていた。
「頼んだぜ、おめえらが頼りだ」


藤野キワミ
敵は必ず先制攻撃します。
敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。
====================
また、戦場の戦力「40」をゼロにできれば制圧成功ですが、それ以上の成功数があった場合、上回った成功数の半分だけ、「⑬『ドン・フリーダム』」の戦力を減らせます。
====================

ですので、気合い入れてください。藤野キワミです。
純戦ですね。
超絶カッコいいユーベルコードで、猟兵がゼファーを倒すとこを見てみたいです。
相応の覚悟を。

みなさまのプレイングをお待ちしています。
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第1章 ボス戦 『スピード怪人『ウインドゼファー』』

POW   :    フルスロットル・ゼファー
全身を【荒れ狂う暴風】で覆い、自身の【誰よりも速くなりたいという欲望】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    ソード・オブ・ダイアモード
対象の攻撃を軽減する【全タイヤ高速回転モード】に変身しつつ、【「嗤う竜巻」を放つ2本の車輪剣】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:藤本キシノ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

セルマ・エンフィールド
私の【氷の狙撃主】ならば敵よりおそらく射程は長い。

が、スピード怪人というくらいです。狙おうとしたらいつの間にか接近されていて吹き飛ばされる、というのがオチでしょう。

なので、吹き飛ばされることを前提に遮蔽の少ない、吹き飛ばされた勢いで何かに叩きつけられそうにない場所を確保し、敵に狙いをつけます。

間違いなく吹き飛ばされるか足場が崩れて落下するでしょうが、そこから私の射程外にでるには時間があります。

よりよい体勢、状況を作るのも大事ですが、そうでなければ当てられないようでは、スナイパーとは名乗れません。

二射目は不要。吹き飛ばされながらもしくは落下しながらの【氷の狙撃主】に全てを込めます。




 吹き荒ぶ風は、花弁を巻き上げ色づいている。
 転送されたセルマ・エンフィールド(終わらぬ冬・f06556)は、ウインドゼファーと相対する。
(「私の【氷の狙撃主】の方が、おそらく射程は長い……ですが、」)
 彼女は必ず先制攻撃を仕掛けてくる。それは、例外のない決定事項――しかも、強力ときた。
 援軍は続々と到着するだろうが、今はセルマ一人で対処せねばなるまい。
 『スピード怪人』と冠するほどだ。
 セルマは、ウインドゼファーに気取られないよう、背後に障害物のない場所へと移動する。
 まだ彼女の射程には入りこんでないだろう。
 構える《フィンブルヴェト》のグリップは、セルマの手のひらによく馴染んでいる。
「来ましたね、猟兵。しかし、ここは行かせません」
「……だったら、撃ち抜くだけ」
 赤い仮面の下で、どんな表情になったのか、見てみたい気もするが、セルマは構えた《フィンブルヴェト》のスコープを覗き込む。
 そこに映り込むのは、すべからく獲物のみ。
 いかなウインドゼファーとて、射程外にいるセルマに攻撃することはできまいて。
 否、ウインドゼファーはその距離を驚くほどのスピードで詰め、暴風を纏い、あらゆるものを巻き上げ、足場を崩しにかかる。
 これを無理やり耐えることはせず、セルマは、吹き飛ばされることを前提に策を練ってきた。
 だが、この颶風はなんだ。
 純度の高い力だけで幹部に座す実力者だ。
 失念していたわけではない。

 しかし、だが、それでも。

 壊れ砕け崩れていく足場の瓦礫と花弁を巻き込んで、セルマの体をいとも簡単に吹き飛ばしてしまうほどの、暴風。
 空気は問答無用で撹拌され、押し付けられる風圧はセルマの呼気を奪う。
 視界を遮る花弁の隙間から、ウインドゼファーの姿が見える。
 銃を構える余裕はない。体を切り刻む風刃による衝撃は一瞬遅れて激痛となって、意識を奪おうと奔走する。
 恐るべき力の濁流は、セルマを翻弄する。
 唸りを上げて逆巻き、縦横無尽に飛び回る脅威と化す瓦礫のひとつがセルマの額を撃ち抜く。
 脳が揺れる――否、その衝撃は、むしろ、セルマを引き戻す。
 まだだ。
 一撃で倒れ伏さぬように位置どりを捻り、覚悟を決めてきた。
「こんなところで、散るわけにはいきません……!」
 セルマはスナイパーだ。
 腰を据えて、獲物に照準を合わせ、針の穴に糸を通すような正確無比なショットを、また獲物を蜂の巣にするだけの度胸を、有している。
 狙いを定めれば最後、何人たりともセルマからは逃れられない。
 すべからく、彼女は撃ち抜く。
 ウインドゼファーの射程をまるっと飲み込むセルマの射程だ――ここに入り込んだのは、彼女だ。
 揺れる脳、霞む視界、止まらない落下感。
 しかし、そこにウインドゼファーがいる。
 セルマは、《フィンブルヴェト》を構え、スコープを覗いた、次の瞬間、弾丸を撃ち出す!
 純粋なスナイパーとしての矜持がそうさせる。

「スナイパーを名乗るからには、これくらい……やってやれないことはありません」

 セルマの放った弾丸は、ウインドゼファーの肩先を掠め、僅かに傷をつけただけだったが。
 その傷は、じわじわと温度を下げ、氷結していく。
「なに……!?」
 予想外の事態に驚いた彼女だったが、すぐに冷静さを取り戻す。
 凍る肩を回せば、薄氷はパラパラと落ちて溶け消えていく。
 それだけで、大した傷を負わせることができなかったと悟る――セルマの金瞳は曇った。
「一矢報いたこと、褒めればいいかしら? 私の風に流され、消えなさい」
 遠のく意識の中、ウインドゼファーの声音だけが、セルマの耳にこびりついた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ゼット・ドラグ
「なるほど、速くて強い。単純だが強力な奴だな」
速いのは苦手だ。次に繋げる一撃を叩き込む事だけを考える。
相手の攻撃に対して身構える間も無いだろうが、逆に無警戒で突っ立ってる事は出来るだろう。
相手が飛んで上から攻撃してくるなら、頭を狙うように意図的に頭(特に後頭部)をさらけ出す。
狙いは【リヴァイヴモード】の発動条件である自身の死。戦闘力の増強と相まって、急所に当たれば条件を満たせると踏んで相手の攻撃を受ける。
上手く行ったら攻撃力を強化しつつ、自慢の【怪力】で相手を押さえつけ、敵の肺に向かって右手の【ギガンティックハンド】を叩きつける。
「どうだ!ただ強くなれば敵を倒せるというものでもないぞ!」



 ゼット・ドラグ(竜殺し・f03370)が到着した瞬間、銀髪の少女は、崩れた足場に吸い込まれるように落ちていった。
 助け出すことは叶わなかったが、そこはグリモア猟兵の仕事だ――ゼットは、素早く思考を切り替えた。
 ストンと地に降り立ったウインドゼファーの手に握られた、ふた振りの車輪剣が、凶悪に回転を始める。
「心配はいりません。すぐに、あなたも後を追うことに、なります!」
 赤い仮面がこちらを向いて、一足飛びに距離を縮めてくる。
「なるほど、速くて強い。単純だが強力な奴だな」
 前情報との誤差はない。
 ゼットの苦手とするところなのも、変わらなかった。
 花弁を纏うように巻き上げるウインドゼファーは、花弁だけでなく猛然たる暴風を従え、ゼット目がけて突っ込んでくる!
 その速さたるや、息をする間もないほどだ。
 しかし、これもここに立つ前から分かっていたことだ。
 だから、特段慌てることもなく、ゼットは予め決めていた通り、次に繋げる一撃を叩き込む事だけを考える――「次」だ。「今」でなく。
 一瞬のことなのに、スローモーションのように感じる現象をなんといったか。
 ゼットはまさにそれを体感している最中だった。
 ウインドゼファーの、強烈な【フルスロットル】から身を守ることは放棄した。
 今更身構えたところで、結果が変わるとは思えなかった。
 ならば、やりようはある。
 ゼットは、ウインドゼファーを誘うように、一撃で死ねるように、頭を曝け出す。
「愚かな!」
 凛乎たる怒号が降る。ウインドゼファーは気づいていない。
 ゼットの真なる狙いは、この先にあるということに。
 衝撃――頭蓋が砕ける音、失われた平衡感覚、血が止めどなく流れていく寒さを感じる。
 頰に感じるのは、柔らかく冷たい、花弁の感触だった。
 瞬間、心臓が大きく跳ねる。
 血流はドラゴンの呪いを帯びて全身を巡り、力を細胞の奥の奥まで送り届ける。
 【リヴァイヴモード】が発動したのだ。
 ウインドゼファーの戦闘力の増強、飛翔による上空からの痛烈な一撃を想定し、わざと急所を曝け出した。
 ゆっくりと、ゆらりと立ち上がる。
「……どうだ! ただ強くなれば倒せると思ったか!」
「そう……厄介な力ですね。死ぬたびに強くなって蘇る、ってとこでしょうか――ならば、うっかり殺さないようにしないと」
 冷え切った声。
 それは、次の瞬間には、嘲笑が混じる。
「存分にいたぶってあげないと」
「やれるものなら!」
 烈声を迸らせ、ゼットは《ギガンティックハンド》をチューアップさせ、並外れた膂力でもってウインドゼファーを捕まえようと接近。
 しかし、ゼットの手は虚空を切る。その手を飛び上がって躱した彼女は、四肢を荒れ狂う暴風で覆い、花弁を舞い上げて、彼女自身が鋭い槍になったかのように、突っ込んでくる!
 躱すか、このまま受けて、もう一度【リヴァイヴモード】で蘇るか――逡巡は一瞬だった。
 ウインドゼファーは、先刻告げた。
 うっかり殺さないようにする、と。見た目の強烈さに騙されて、その一撃を受けてみろ、死ねずに重傷を負い役立たずになってしまう可能性だってある。
 この力は諸刃の剣だ。使いどころを見極めなければ。
 ここは躱すほかない。
「避けましたね!」
「くぅっ!?」
 車輪剣の猛襲がゼットを追い詰める。
「自ら死のうとする覚悟、大変立派です」
 振り下ろされ、横薙ぎに振るわれる車輪剣は、止まらない。
「惜しむらくは、私の方が力強く、さらに速いということ」
 大型の義手で、せめて一撃を叩き込もうと――渾身の力を、一度死して増した力を発揮させた一発をくらわそうとすれど、ゼットの攻撃は、ウインドゼファーにいなされ、躱され、反対に死なないような斬撃がその身に襲いかかってくる!
 一刀目は躱した。しかし、連撃による刺突がゼットの腹に穴をあける。
 奥歯を噛み締め、その激痛に耐え飛び退って距離をとるが、花園の中、彼は膝を折った。
 睨み据える先には、表情を読み取ることのできない赤い仮面。角度からして、ゼットを見下ろしている。
「たしかに、ただただ強くなれば倒せるというわけではないようですね」
 先に言ったゼットのセリフをそのままそっくり嫌味にして彼女はのたまう。
 ゼットは舌をうち、退路を確認した。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

四王天・燦
「今までとキャラ違い過ぎだろ。でも良いね、風…」
暴風でも瞬きを耐える為ゴーグル装着。
アークウィンドを抜いて突撃

(風に逆らうから転ぶ、叩きつけられる、間合が乱れる)
舞う花びらは風の通り道と信じ、瓦礫を蹴ってジャンプし風に乗る。
吹き飛ばされても、空中戦の要領で平衡感覚を維持してゼファーの動向を見切る。
風を肌で感じ視界は広く持つよう意識。
攻めてきたら短剣の背で武器受け、武器落とし

「風のまま―音速の領域へ!」
ゼファーを越えるべく妖魔解放・ハーピーの魂を霊着。
短剣投擲。
高速移動+ダッシュで神鳴の居合い…のフェイントから金切り声による音の衝撃波!

「風は気紛れ。風神様が味方しただけさ」
何か敬意持つ相手だぜ…




「……いや、今までとキャラ違いすぎだろ」
 呻くように呟いたのは四王天・燦(月夜の翼・f04448)だ。
 ウインドゼファーの颶風に晒されても目を開けていられるようゴーグルで眼球を守る。
「でも良いね、風……」
 逸る心は隠しきれない。
「風を褒めますか。しかし、そんなもので私の心は揺るぎません――猟兵は排除します」
「いいんじゃない!? アタシだって、あんたを排除するために、ここに立ってんだ!」
 愛刀《アークウィンド》を抜いた瞬間、眼前が色とりどりの――きわめてピンクが多いか――花弁が吹き荒れる。
 むろんそれだけではない。襲い来るのは圧倒的な質量を感じさせる風刃。それは暴風の中にいるかぎり燦へと牙を剥き襲いかかってくる。
(「風に逆らうから転ぶ、叩きつけられる、間合が乱れる」)
 さっくりと裂けた頰の傷から溢れる血が風に巻かれて飛び散っていく。
 崩された足場は、ぼろぼろと瓦礫へと変容し、瓦礫は礫となって燦目がけて飛来する。無数の礫と、颶風の奔流は燦の肢体を吹き飛ばし、襤褸のように空中に放り出される。
 だが、燦は見ていた。
 乱舞する花びらは、ウインドゼファーの操る風の向きを示している。それを見極めることは困難だが、常から空中戦を得意としている燦には心得があった。
 飛来する瓦礫を足場として風刃の隙を縫うように風に乗る。
 礫が顔面を掠め、短剣の背でそれをいなしたが、その反動で体勢を崩れた。しかし、極限の集中力が瞬時に足場たりうる瓦礫を見つけ出し、平衡感覚を維持、その広がった視野にウインドゼファーを収め続ける。
 無傷とはいかなかった。されど、動けないほどの重傷ではない。
「よく、見切りましたね……賞賛に値します」
「風は気紛れ……たまたま、風神様が味方してくれただけさ」
 己に言い聞かせるように、燦は呟く。
 その幸運をオブリビオンに褒められたところで――と斜にかまえかけた燦だったが、風を手足のように御すウインドゼファーに言われた言葉は、なぜだが胸に響く。
 しかし、これは倒すべき敵。
 燦は、息を整える間も惜しんで、己の中に眠る妖魔の魂を喚び起こす。

「風のまま――音速の領域へ!」
 
 風のスピードを凌駕する音速を超える。燦が愛した魔物娘の魂を憑依させ纏わせ、燦は《神鳴》をも抜き、その刀身に宿る紅色の電雷を弾けさせる。吹き荒れる暴風は燦の銀髪をかき混ぜて、丸い額を露わにさせる。
 ウインドゼファーへ肉薄――するため、《アークウィンド》を、彼女の赤い仮面目がけて投擲。これを対処する一瞬で、燦は彼女に近づける。
 手に入れたのは、神速にも近いスピードと、彼女の耳を劈く金切り声。
 赤い仮面は、車輪剣を一振り、燦の短剣を弾き落とす。そのわずかな隙で構わない。
「……――ッ!」
 鋭く呼気。高速で駆け寄りほぼ無合いにまで持ち込んだ燦は、雷花を散らせる。
 ウインドゼファーとて、ただ突っ立っているわけではない。
 燦の《神鳴》の剣筋を読み、猛然たる風を纏わせた車輪剣を返しざまに閃かせる!

 ギィイイン!

 花弁舞う颶風の中で、その衝撃音は耳に鮮烈だ。
「覚悟しとけよ、――――っ!!」
 燦の忠告は、遅かった。
 その言葉を吐くと同時に、凄惨な金切り声を上げ、ウインドゼファーの体内から破壊する衝撃波を叩き込んだのだから。
 甲高い悲鳴を短くあげて、仮面は燦から距離をとった。
「剣は、囮……そんなことも見破れなかったなんて……!」
 己を恥じるウインドゼファーに、燦はその白い頰に笑みを刻んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

仁科・恭介
※アドリブ、連携歓迎
ゼファーの変わりゆく姿を真紅の瞳で観察
「そっか、本気か」
何故か…にっと笑みがこぼれる
咄嗟に避けることができるよう【ダッシュ】を準備し警戒

【残像】でゼファーの攻撃を誘いつつ【学習力】で癖を確認
ギリギリで対峙しないと見えないものもある
「あの回転に流される。それにこの竜巻…」
笑うような竜巻にイライラしつつも【失せ物探し】で粗を探す
戦いを急いでいるような気がする
なぜ?
そっか…削るタイプか
なら焦らせば大技で来るだろう

ギリギリまで粘り竜巻を防御
この笑いが目障りだったが…これを簒奪する
貴女が削るなら私もそれに応えよう
【ダッシュ】の勢いそのまま「嗤う竜巻」を乗せ【鎧無視攻撃】を叩き込む



 ウインドゼファーが飛び退って銀毛の妖狐から距離をとったところには、仁科・恭介(観察する人・f14065)がいた。
 そのことに驚いたウインドゼファーは、息をするように滑らかに、【ソード・オブ・ダイアモード】を発動させた。
 彼女の肢体にある多くの車輪が高速で回転を始める。
「そっか、本気か」
 赤い仮面の下には、どんな顔が隠れているのだろうか――恭介には推察するほかないが、なぜだか、笑みがこぼれた。
「笑った……? それは、どんな笑みですか?」
「さあ。強敵と相対した時の、発破の笑みかな」
 この問答に意味はない。
 まずは初撃をクリアしなければ、ならないのだ。
 花筵の中を駆ける準備はできている。不吉なタービン音はどんどん甲高く、風を逆巻かせる車輪剣は低く轟音を上げて、恭介へと凶刃がふるわれる。
 その剣閃を躱しきれるように、彼は縦横無尽に駆ける。
 だが、哄笑のような唸り声を上げ、風を巻き起こす車輪剣は、猛然と天高く登り行く竜巻を従え、竜頭を得たように恭介へと牙を向く。
 いつでも回避できるように恭介は、体勢を整える。
 しかし回避し続けることは困難を極めた。嗤う竜巻を巻き起こしながらの剣撃だ。
 どこかに粗がないかと目を凝らし探せども、ウインドゼファーの猛攻は止まることを知らない。
 恭介の身に多くの傷が刻み込まれていく。
(「なんだ……戦いを急いでいるような気がする……なぜ?」)
 それでも恭介は頭を働かせることをやめない。できうる限り近づいて、対峙せねば見つけ出すことは難しいだろう、彼女の癖。
 耳にこびりつく、神経を逆なでする哄笑に、恭介は苛立ちを覚えながら、
「あの回転に流される……それにこの竜巻……っ!」
 憶測は鮮明に姿を変え、理解した。
「そっか……削るタイプか……!」
 いかなウインドゼファーとて、何度も蘇るオブリビオンとはいえ命はあるだろう。
 それを賭しているのだとすれば。
 恭介もその手のユーベルコードを使うことがある。
 効果が高い分、己の命と引き換えという、瞬間的に使う分には問題ないだろうが、ずっと使っていられないものだ。
 だからこそ、恭介に攻撃が当たらないとなると、ウインドゼファーも焦ってぼろを出すかもしれない。
 ともあれ、それには恭介が彼女の攻撃を防御して耐えなければならない。

「貴女が命を削るというなら、私もそれに応えよう」

 恭介は、裂かれた傷から生まれる痛みを意識の外へと追いやり、挑発すれば、赤い仮面は不機嫌を吐露する。
「見くびらないでほしい――ものすごく不愉快です」
 車輪剣が唸りを上げ、暴風を生み出し、恭介へと襲い来る!
 これを防御すれば、簒奪することができる――眼前に迫り来るウインドゼファーの、剣閃の無慈悲さにひゅっと息を飲んだ。
 抜いてあった《サムライブレイド》で防御の姿勢をとるが、一合目で剣は弾かれ、竜巻の暴風に曝され、刺突されるもう一本の車輪剣が、コマ送りのように見えた。
「くっ!」
 先のように剣閃は弾けない。
 軌道を変える手はない。
 体勢は崩されている。
 だが、このままでは、腹を割かれる。
 恭介は、一瞬後、本能的に後ろに倒れ込み、花筵の中を転がった。
 刺突された颶風を纏う尖鋭を蹴り上げ、反動で跳ね起きる。
 片足が花を踏んだと同時に、全身のバネを弾けさせ、加速、一足飛びにウインドゼファーの懐へ飛び込む!
 思考を止めるな。
 防御できなかったからといって、退いてはいけない。
 見ろ、恭介。
 ウインドゼファーは、攻撃が外れてわずかな隙が生まれているだろう。
 逃すな。
 逃すな。
 《サムライブレイド》の柄を持つ指の先まで烈気を漲らせる。覇気を滾らせる。
 息を詰めて、勢いのままに、ウインドゼファーの右脚に一太刀を浴びせる!
 恭介はウインドゼファーの背後へと走り抜けた――が、瞬時に振り向く。
「はあッ……ふう……――」
 激しくなった呼吸を整え、肺の奥まで空気を行き渡らせ、体を傾げさせたウインドゼファーを見据える。
「見くびっているのは、貴女のほうでは? 私は、まだ立っているよ?」
 恭介は、今一度、血が流れる白い頬に僅かな笑みを刻んだ。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

アレク・アドレーヌ
【選択:SPD】
創造、無敵バリアの次は風を操る能力な…もう対策を考えるのも面倒になってきたが対策を講じないといけないから考えるとして

相手が早くなるならこっちも速さで対抗する…が先制攻撃の対策として【見切り】【ジャンプ】とUCを使用することによって得られる【ダッシュ】【早業】【先制攻撃】で敵の先手を敵より速くなって回避することで対応することにしよう

無差別攻撃をしてくるなら回避に専念して隙を見て一発殴るを地道に繰り返して少しでも削るのが結果的に一番突破口になるはず

倒しきれんでも後々に響いてくるくらいには足掻かせてもらうとしよう
(アドリブ歓迎




 正直な話をしよう。
 アレク・アドレーヌ(出来損ない・f17347)は、幹部どもの能力に対する策を講じるのは、もう飽き飽きしていた。
 創造、無敵バリア――奇怪な策を講じなければならなかった。
 次に出てきたのは、風を自在に操る力一辺倒のスピード怪人ときた。
 とはいえ、わざわざグリモア猟兵が、対策せねば敗北すると言い切ったほどの危険が内包されているのだ。
(「講じるさ、もちろん、考えてきた」)
 アレクは、しかし、穴だらけになったフィールドを見て、ぞっとした。まだここに穴をあけるつもりなのか。
 しかし、ウインドゼファーも自分の首を絞めるような位置取りはしていない。
 猟兵に追い詰められないように、うまく穴を躱しながら、足場を崩している。
「いくら速く動こうとも、私の風から逃れることはできません」
 ウインドゼファーの声音は、颶風の中にいてもよく聞こえた。
 アレクは、その言葉を無視して、ウインドゼファーの攻撃に備える。
 そうしなければ、アレクは眼前の女に一発を叩き込むことなく、グリモアベースへと送り返されてしまう。
 そんなふざけた話はない。
 攪拌された花弁はなくなることを知らない――それ自体は脅威ではないが、こうも数で圧倒されると、確かに視界は良くない。
 加えて瓦解した足場は、驚異的な質量でアレクに飛来する。
 しかし、これくらいであれば、その身体能力で回避し逃れることは可能だ。
 風上を見据え、逆風に気を張り、上も下もない空中で、バラバラになった瓦礫に足をかけ、跳ねる。
(「……くっそ……近づくのも一苦労だな、っと!」)
 【スピードシフト】にスタイルチェンジをしたアレクは、ウインドゼファーの風をも上回るスピードを手に入れる。
(「これでどうだ、かかってこいよ!」)
 ぶわりと空気の壁を突き破ってアレクは加速――足場にしていた瓦礫が耐えきれずに木っ端に砕け、風に吹き飛ばされていく。
「私の風を超えてくる……!?」
「そのびっくり顔、仮面越しでなく拝んでやりたかった!」
  体内に隠してある《アームブレイド》の刃を光らせ、拳を叩きつけるように振り抜く!
 腕に這い上がってくる確かな感触、鈍く重い衝撃は、彼女の装甲を砕いたものか。
 風に靡き翻弄され続けていた白外套は、アレクの一閃を受け、破れ吹き飛んでいった。
「くう!」
 赤い仮面が呻く。と同時に、考えるよりも速くその場から飛び退いていたアレクは、その己の反応に肌を粟立たせた。
 アレクが一瞬前までいた場所に、車輪剣が突き込まれていた。
 悪意しかない凶暴な車輪は地を抉って花を切り刻んでいた。
「そこか!」
 もう片方の手――そのものが車輪剣であるウインドゼファーは、頭上のアレクめがけてそれを振り上げた。
 彼女の風は衰えない。
 舞い上がる花弁に隠れるよう、アレクはさらに加速する。
 大きな一撃を与えずとも、この先、転送されてくる仲間の助けになるような、じわじわと効く毒のような、小さくとも確実に死に追い込めるような――確実な一手を叩き込むことに重きをおいた。
 結果が全てだ。
 今は小さく心許ない傷であろうとも、結果的にウインドゼファーを斃すことができるのなら、今、ここで全力を尽くす理由になる。
「まだもう少し、足掻かせてもらうとしよう」
 風刃がアレクの腿を掠めたが、怯むことなく彼は砲弾となってウインドゼファーへと落ちていく。
 《アームブレイド》の切っ先は、仮面へと伸びる、首を傾げて回避される、ならば――その肩へと突き込む!
 赤い花弁が、悲鳴とともに散った。

成功 🔵​🔵​🔴​

香神乃・饗
この前似た技食らったっすからよく知ってるっす!あれはもっと…。

香神写しで増やした剛糸で苦無を手足に括り念で支え地形の影響を受けない足場を造り
体ごと飛ばされない様に固定

風の抵抗を出来るだけ受けない様地に伏せ
残りの苦無を風から身を守る盾や鎧のように使い
念の力で波動の殺気の中央に向け花弁が吹きすさぶ地形を利用し花に隠れ風よりも早く強く突っ切り近接暗殺を狙う

以下3つを同時に行うっす!
剛糸で手足と首の束縛を狙う
盾にしていた苦無を他方向から攻めさせる
手足に括った苦無で殴る蹴る様に斬る

結果2つがフェイントになる位、3つ全てで必殺の覚悟で暗殺を狙う
速攻で決めるっす

風使い
この風は読めなかったっすか
死の風は



「次から次へと……それでも、私はここを守ってみせます……!」
 苦渋を滲ませたウインドゼファーは独りごちて、剣を薙ぐ。
 生み出される風は、足元の花々を掻き乱して、視界を覆った。
 しかし、香神乃・饗(東風・f00169)はその程度では怯まない。
 先に激突した猟兵たちとの傷を負ったウインドゼファーは、気丈にも力強く立ち、凶悪な風を生み出し、操っている。
 ちょうど先日、この「足元が崩れて落ちいていく最中に決着をつける」という、事件に遭遇したばかりだ。しかし、あのときと、今の状況では、似て非なるものだ。
(「あれはもっと……」)
 饗はそこで思考を止めた。たらればで考えても詮ないこと。考え込む場面ではない。
 今やるべきは、この状況を打破することだ。
 手足に苦無を剛糸で括り付け、解けていかないように念で更に固定する。
 いくらウインドゼファーが足元を崩落させようとも影響を受けないように剛糸を収斂させ足場を出現させ、さらに、その暴風を身に受けても吹き飛ばされないように、糸と体を念で繫ぎ止める。
 猛然と荒れ舞い狂う花弁の嵐と、風刃の猛襲が本格化する。
 ウインドゼファーは黙して、饗の動きを見ていた。
 赤い仮面越しとはいえ、その視線を感じないわけではない。殺気を隠すことなく溢れさせて、饗を睨めつける。
「瓦礫を足場として猫のように跳ねていた猟兵もいましたが、あなたは、」
「なんっすか?」
「創り出すのですか……面白い」
「そりゃどーもっす!」
 オブリビオンに褒められて嬉しいものか。風の抵抗をなるたけ受けないように身を伏せ、余った苦無は、風を遮る盾のように、この身を守る鎧のよう展開させる。
 それでもそれを搔い潜って、風刃は饗の体を切り裂いていく。
 頰を、腿を、二の腕を。そして、瓦礫が眉の上を掠めて飛んでいった。
 だらりと垂れてくる血が、視界を遮る前に乱暴に拭う。
「そっちは、そろそろ疲れてきたっすか?」
 いかな風の繰り人とはいえ、延々と操れるわけではない。ふっと風が熄んだ瞬間――饗はその好機を逃すことなく、疾風迅雷に疾駆する。
 未だに舞い狂う花吹雪の中、芳しくない視界の中だが、ウインドゼファーの殺気はそこにあって、どうやったって痛いくらいに感じることができる。
 殺気の中心へ、波動を飛ばす――それに巻かれるように花弁が饗の姿を隠していく。
 色とりどりの花筵を駆け抜け、ウインドゼファーへと肉薄。
 【香神写し】で増やした剛糸が、彼女の首という首に放たれる。
「――!」
 それを察したウインドゼファーはステップを踏むように素早く躱し、車輪剣を振って糸を絡め取る。鋼の糸だったが、その車輪に巻かれて千切れていく。
 だが、策が破られてしまうことは、饗とて想定していた。
「この風、この死の風は読めなかったっすか」
 言下、ウインドゼファーの眼前に躍り出る。突き出す拳には苦無が括り付けられている。その鈍い輝きを放つ拳打を、彼女は躱す。
 しかし、体を傾げた先に、もう一方の拳――それを躱されたところで、ガラ空きになった足元へと沈み込んで回し蹴りを放つ!
 風を巻き起こすほどの、高速の蹴撃は彼女に血を撒き散らさせた。
 否、饗が放ったのは、それだけではない。その肉弾を隠れ蓑に、先刻まで饗を守るように展開していた苦無が奔る!
 刃は、ウインドゼファーの肩を、背を、腹を刺し貫く。
「チィっ!」
 憎らしげに舌を打ったウインドゼファーは、饗を嫌がって車輪剣を薙ぐ!
 その軌道よりも沈み込み、疾風のごとき速さで彼女の背後へと回り込んだ。
 花弁が饗のスピードに煽られて舞い上がる。
「風使いを名乗るんなら、これくらい読んでみたらどうっすか」
 梅花が彫られた切っ先が、ウインドゼファーの体へと深く深く、沈み込んでいく。
 いつもの快活な饗はなりを潜め、熾烈な気迫をくゆらせている。
 漆黒の苛烈な双眼に、仮面が映り込んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​



 セルマの放った凍結の銃弾は、開戦の合図。
 ゼットの猛攻は、ウインドゼファーの体力を奪った。
 燦が解き放った強烈な衝撃波は、いまだに体を駆け巡っているかのようだ。
 憎々しいうすら笑みを浮かべた恭介の剣によって斬られた足の感覚は鈍い。
 追い討ちをかけるべく放たれたアレクの拳は痛烈だった。
 そして、饗による斬撃――
 次だ。
 肩で息をするウインドゼファーにトドメの一撃をさし斃すか。
 これほど戦ってなお立ち続ける彼女に敗北を喫するか。

 いよいよ決着する。
アレク・アドレーヌ
…とどめを刺す余裕がなさそうだったが誰かがとどめ刺さねば進まないならば動けるうちにさすべきか。

最後の一撃にはもうスピード特化もいらない。今の今まで使わなかった(真の姿※色が変わるくらいで姿は変わらない)とお前さんの風をも利用し纏った一撃を放つ。

これで終わるはず…だが先制してくるだろうことはわかってるからこそギリギリまで【見切り】で攻撃を見極めて【ジャンプ】で避けて敵の風を利用したうえで肉を切らせて骨を断つ。

さらば、ウインドゼファー…




 ウインドゼファーを背後から刺し貫いた黒髪の美丈夫を振り返ったのは、よほど苛立ったのか、それとも彼以外意識から排除してしまったか。
 なんにせよ、アレクにとって好都合きわまりない、ウインドゼファーの悪手だった。
 死角となった彼女の右側から、急接近する。
「俺の一撃は効いたか?」
 ウインドゼファーの装甲を斬り砕いたアレクは問う。
 驚いた様子の彼女は、車輪剣を乱暴に振るって横薙ぎに一閃させ、アレクを遠ざけようとした。
「この……!」
「そう慌てんなよ」
 アレクは、真の姿を解放させる。
 その姿形は変わらずとも、力は存分に底上げされている。
 先刻の激突では、息の根を止める一撃を放つことはできなかったが、それではいけない。
 アレク以外の誰かが刺すかと思ったが、人任せにするよりも、動けるのならば自分が奔ればいい。
 誰かがやらなければ先へ進むこともできないのだ。
 されど、それでも攻撃を加えようとすれば、彼女はその素早い反応をフルで働かせて傷にまみれながらも、アレクの一手を上回ってくる。
 スリルを望んでいるわけでも、死を覚悟したわけでもない。
 だが、もはやウインドゼファーに対して、先ほどみせた神速を纏うシフトチェンジをして翻弄し回避するよりも、とるべき手はあるのではないか。
 漆黒の旋風でその身を覆ったアレクは、荒れ狂う颶風を逆巻かせたウインドゼファーを睨み据える。
 互いに風を巻きながら、一方は空を駆け、一方は地に足をつけ、一瞬後、激突する――ことはなかった。
 疾風迅雷のごときウインドゼファーの剣閃は、アレクによって見切られた。彼は、しっかと見据えたのちに横っ跳びに躱し、着地した瞬間、その足に力を込め立て続けに跳躍、ウインドゼファーの懐へ飛び入って、彼女の纏う暴風に漆黒を侵食させていく。
 今まで曝さなかった真の姿のアレクは、
「お前さんの、その風、利用させてもらうぜ!」
 言下、【黒風鎧装】の疾風と、彼女の颶風を巻き込んで、《アームブレイド》を出現させ、まだ体勢が整えきれていないウインドゼファーへ向けて突き込む!
 腕を駆けあがってくる衝撃は、クリーンヒットを約束させ、その次の行動へ移す。
「まだです! 私は、まだ……!」
 凶悪な暴風が巻きあがり、アレクを押し返そうとしたが、それは彼の想定内の攻撃だった。
 いったん距離をおき、体勢を整えて、もう一度万全の状態で攻撃に転じてくる――もちろんその方が、ウインドゼファーの勝率は跳ねあがる。
 それは、アレクにとって面白くない。その風を乗っ取ろうと彼は、さらに漆黒の旋風を舞い上がらせる。
 車輪剣の刺突!
 それを辛くも避ける、避けざまに《バトルガントレット》の嵌った拳を見舞うが、これは空振りに終わった。
「まだ、じゃない――もう、終わりの時間だろう」
「私は門番です! あなたがたを、必ず、排除しろと……!」
「それは、俺たちだって同じだな、お前さんを排除するまで、帰還できない!」
 猟兵の矜持だ。
 今、アレクが纏う強力な風は、己一人では成しえなかったものだ。
 これまで仲間たちが積み重ねてきた結果が、まるっとアレクの力となっている。
 これを無駄にできるか。答えはすでに出ている。
 車輪剣による二撃目で、その凶悪な尖鋭を見切り、その先――ウインドゼファーへと突っ込む、刹那、回転刃の放つ風刃に肩を裂かれたが、それも覚悟の上。
 腰だめに突き出した《アームブレイド》の刺突は、彼女の腹に大きな穴をあけた。
 刃を抜き取ると同時に、その体を蹴りつけた。その蹴撃によろけバランスを崩したウインドゼファーは、一歩、二歩と後退して、糸が切れた操り人形のように崩れ伏し、その体は、文字通り、落ちていく。

「さらば、ウインドゼファー……」

 凄まじいスピードと純粋に強烈な力だった。相対したときの烈気はさすがだった。
 しかし、最後まで花筵の中で立っていたのは、アレクだった。
 彼の声は、彼女に聞こえていただろうか。
 【レボリューション・ストーム】の連発によって瓦解した足場の奥――闇が広がる奈落に消えていく、ウインドゼファーから返事はなかった。
 俄かに風が流れた。
 花弁を巻き上げるような強いものではない。花々をざわつかせるような不気味なものでもない。
 ただただ、やわらかな風が吹き抜けた。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年05月22日


挿絵イラスト