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バトルオブフラワーズ⑪~花仕舞、風死舞

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ #ウインドゼファー

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「『キマイラフューチャー』の戦争は、行く手を阻んでいた第一、第二の各怪人を退けることに成功し、順調に作戦を展開している。これより第三の関門として相対するのは、オブリビオンの女。怪人幹部『ウインドゼファー』だ」
 ダンピールの黒騎士、ヴォルフラム・ヴンダー(ダンピールの黒騎士・f01774)が、厳かにそう告げて。
 集まった猟兵たちを見渡し、説明を続ける。
「スピード怪人と呼ばれる『ウインドゼファー』は、『風を操る能力』をもち、必ず先制攻撃を仕掛けてくる。……かの風を出し抜くすべを持たずに挑めば、いたずらに傷を負うことになるだろう」
 怪人とはいえ、幹部のひとり。
 仲間たちに門番を託される立場からも、その実力、戦闘力がうかがえる。
「容易くくだせる敵ではない。しかし、ここを越えれば、システム・フラワーズへ至る道がひらく」
 実のところ、ヴォルフラムはキマイラフューチャーという世界のことを、なにひとつ理解できないままここに立っている。
 ここまでは慣れない戦場ばかりで、戸惑うこともあったのだが。
 「この戦場であれば、俺も多少は役に立てると思ったのでな」と、言い添えて。
「俺は皆の転送に専念する。油断なく任務完遂できるよう、武運を祈る」
 掲げた手のひらにグリモアを浮かべ。
 灰の眼を静かに閉ざし、転送準備に入った。


 真紅の仮面を彼方へと向け。
 怪人幹部『ウインドゼファー』は、仲間の敗北を悟った。
「モンキーに続きバニーまでとは、驚きました」
 声とは裏腹に、怪人の声音は、凪いだ湖面のように落ちついている。
 怪人幹部としてともに立っていた、モンキーとバニー。
 彼らとて、決して猟兵たちを侮っていたわけではなかったろう。
 それでも、進軍するイェーガーたちを抑えることは、叶わなかった。
「でも、私の役目は門番。ドン・フリーダムがシステム・フラワーズを取り戻すまでの時間稼ぎならば、私の『風を操るユーベルコード』でも、決してあの2人にひけは取りません」
 かつて、ドン・フリーダムが開放した『無限大の欲望(リビドー)』は、人類を怪人化させ、滅亡へと導いた。
「――しかし今ならば。オブリビオンとして蘇った私達なら、無限大の欲望も喰らい尽くせるはず」
 力込め、握り締めた両の手には、禍々しい2本の車輪剣が存在する。
「私達は全てを手に入れる。誰にも、邪魔は、させないッ!」


西東西
 こんにちは、西東西です。

 本シナリオは、『キマイラフューチャー』の戦争「バトルオブフラワーズ」に関するシナリオとなります。
 マップ【11】スピード怪人『ウインドゼファー』での戦闘となります。

 ●特殊ルール
 ウインドゼファーは必ず先制攻撃します。
 敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
 この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。

 また、戦場の戦力「40」をゼロにできれば制圧成功ですが、それ以上の成功数があった場合、上回った成功数の半分だけ、「⑬『ドン・フリーダム』」の戦力を減らせます。

 ●プレイングについて
 ここまでの戦争シナリオと異なり、やや厳しめに判定を行います。
 挑戦多数となった場合は全採用とならない可能性がありますため、あらかじめご了承ください。

 それでは、ご武運を。
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第1章 ボス戦 『スピード怪人『ウインドゼファー』』

POW   :    フルスロットル・ゼファー
全身を【荒れ狂う暴風】で覆い、自身の【誰よりも速くなりたいという欲望】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    ソード・オブ・ダイアモード
対象の攻撃を軽減する【全タイヤ高速回転モード】に変身しつつ、【「嗤う竜巻」を放つ2本の車輪剣】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:藤本キシノ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

平良・荒野
…女性だったのですね。

必ず先手を取ってくる。逆に言うと、此方が相手の出方を誘導できる、と思って…良いのでしょうか。
未熟ゆえ迷いはありますが。向こうの力量を増さず、他の方に余波を広げない為。
ジャッジメント・クルセイドで挑みます。

車輪剣の攻撃は、錫杖による「武器受け」で受け止めます。二刀流は「二回攻撃」の要領で、多少なりともあちらの動きに追いつきたく思います。
痛みに構え、怯まぬように気合を込めて。
こちらからの攻撃は威力は弱まっても命中率を重視して、「スナイパー」の要領で集中し、放ちます。
…寿命を多少削ったところで、それで勝てるとはいかないでしょうが…僅かなりとも力を殺ぎ、仲間の攻勢に繋げます。




(「……彼の方は、女性だったのですね」)
 猟兵たちの前にたちはだかるスピード怪人『ウインドゼファー』の姿は、敵ながら威風堂々としていて。
 その勇ましさに、グリモア猟兵の言う『女』というやわらかな言葉とは、どこか相容れぬように聞こえる。
 ウインドゼファーの居ずまいからは、門番としての矜持を貫くべく、彼の――もとい彼女の決意の固さがうかがえて。
 次の瞬間、周囲の空気の圧が、変わった。
(「――来る!」)
 額に黒曜石のごとく美しい角をいただいた少年、平良・荒野(羅刹のクレリック・f09467)は、手にしていた錫杖をとっさに横に構えた。
 まっ先に届いたのは、足を踏ん張らねば吹き飛ばされそうなほどの、突風。
 そして、
 ――ヂン! ギギギギギィン!!!
 耳障りな金属音が響いたかと思うと、錫杖の柄が眼前で火花を散らした。
 己のはなった竜巻を隠れ蓑にして、ウインドゼファーが死角から斬りかかって来たのだ。
 二閃目の斬撃も、構え直した錫杖でなんとか受け止める。
 額の角に触れるか、触れないかという至近距離で、ウインドゼファーの二つの車輪剣が唸りをあげる。
「くッ……!」
 荒野は一瞬たりとも気を抜くまいと、眉間にしわを寄せながらも、力の限り抗がい続けた。
「このまま、車輪剣の餌食になるがいい!」
 流線型の真紅の仮面から響く声は、凛として。
 荒野の錫杖を両断すべく、車輪剣へすべての力を傾ける。
 圧し斬られまいと錫杖を掲げ続けながら、羅刹の少年は心中で零した。
(「未熟ゆえ、迷いはありますが。向こうの力量を増さず、他の方に余波を広げない為には――」)
 しゃらり、錫杖の柄を傾ければ、体重を乗せるように斬りかかっていたウインドゼファーが、一瞬、体勢を崩した。
 攻撃をいなした際に、流れた刃で額が裂ける。
 顔面を濡らす血に構わず、荒野はウインドゼファーを杖先で突き飛ばすようにして距離を置いた。
 ――しゃん、しゃらん。
 鈴のごとき音を響かせ錫杖がさし示すと同時に、女怪人の頭上から、光が降りそそいて。
「な、にッ!?」
 ウインドゼファーが回避するよりも早く、光は女に降りそそいでいる。
 やけつくような痛みに襲われ、たまらず、女は荒野から距離をおいた。
「……寿命を多少削ったところで、それで勝てるとは、いかないでしょうが……」
 錫杖を片手に、額の裂傷から流れ続ける血を、乱暴にぬぐう。
 漆黒の瞳を静かに向けたまま、荒野は手にした錫杖の先を、油断なく敵へと向け直した。
「僅かなりとも、力を殺ぎ。仲間の攻勢に、繋げます」

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒蛇・宵蔭
止まらず駆け抜ける風……ああ、門番にもかかわらず。
鮮やかなひとだ。

私では回避の術はない。ゆえに、致命傷を避ける立ち回りをします。
可能な限り周囲を溶け込むように位置取り、気配を殺し。
軸をずらして、攻撃を甘んじ反撃。
苦痛は耐えてみせましょう。片腕でも残っていれば、それでいい。

血界刺鞭にて反撃。
いくら加速しようとも私が生存する限り、攻撃の接触がある。
視界では追わず、気配を追い、範囲拡大した鉄錆の尾にて、一矢報いる。
鉄錆は喰らいつけば、なかなかしつこいものですよ。

当たれば少しは命を啜りとれるでしょうが、期待はせず。
一撃でも多く削ることを目標に。

貴方の戦いは――
いえ、余計な話ですね。私達も前に進まねば。




 ウインドゼファーが荒野(f09467)と剣戟を振るうさなか、ダンピールの咎人殺し、黒蛇・宵蔭(聖釘・f02394)は徹底して仲間の影に位置どっていた。
 視界の隅に女を留めながら、気配を殺し、拷問具『鉄錆』――有刺鉄線のごとき鞭を手に敵の死角を狙う。
 しかし。
「見くびられたものですね」
 気付いた女怪人が全身を荒れ狂う暴風で覆うと、すぐさま身体を反転させた。
 足もとの花弁を巻きあげるよう、風が逆巻いて。
 そのまま深く身を落とし、荒野へと下段からの回し蹴りを叩きこむ。
 ――隙のない身のこなしに、迷いのない判断力。
(「止まらず駆け抜ける風……ああ、門番にもかかわらず。鮮やかなひとだ」)
 女の一挙手一投足は精彩をはなち、宵蔭を魅了する。
(「だが、己に回避の術はない。察知されたとあれば、隠れてばかりもいられない」)
 致命傷を避けるべく敵の死角へ飛びこもうと地を蹴るも、『スピード怪人』と呼ばれる女の速さには、敵わなかった。
 ごうと風が唸った次の瞬間、宵蔭の身を衝撃が襲って。
 痛みを感じるよりもはやく、己の左腕があらぬ形状に捻りつぶされているのが見えた。
 もう一撃、攻撃を加えるつもりなのだろう。
 超高速で戦場を飛翔したウインドゼファーは、たずさえた車輪剣を両翼のように広げ、ふたたび宵蔭を見据えている。
(「苦痛は耐えてみせましょう。片腕でも残っていれば、それでいい」)
 さいわい、右腕は健在だ。
 使い物にならなくなった左腕から赤黒い体液が滴るのを確認し、宵蔭は有刺鉄線のごとき鞭に、己の血を捧げるべく、唱えた。
「――呪われた血、その真を少しだけ」
 拷問具『鉄錆』に血液が吸い取られた瞬間、その色を真紅へと変えて。
 暴風にあおられ舞い散る花弁が、宵蔭の視界をもあざやかに染めた。
 眼を閉ざし、風の流れと気配を追い。
 再び突撃をしかけるウインドゼファーめがけ刺鞭を振るえば、
「『鉄錆』は、喰らいつけば、なかなかしつこいものですよ」
 鞭の尾は、使い手の意を汲むかのように空を駆け、女の身を引き裂いた。
 身体の一部、あるいはほとんどを機械化しているように見受けられるが、ユーベルコードによる攻撃ゆえ、痛みをともなうのだろう。
「おのれ……!」
 強い怒りをはらむ声音。
 その裏に、女の意志の強さを垣間みるようで。
「貴方の戦いは――。いえ、余計な話ですね。私たちも前に進まねば」
 宵蔭は一撃でも多く削ることを目標に、ふたたび刺鞭を構えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

虻須・志郎
推して参るぜ、全機能開放
初撃は覚悟して耐え
流れた血は王者の石で回収し体力を戻す

流石の速さだ、風が違うってか

足場をバラバラにされた時に
内臓無限紡績兵装の武器改造で
罠の爆弾造花を生成し崩れた足場に仕込む

こっからが蜘蛛の本領だ……行くぜ

俺自身はロープワークで生成したワイヤーを
崩れる足場に次々と引っ掛けて空中を渡り
嵐を巻き起こしている間は回避と仕込みに勤しむ

速さでは敵わんが動きを解析して見切り
罠を仕込んだエリアから奴を封じて
嵐が止んだら一斉に爆弾を発動してだまし討ち
僅かでも動きを止めてやる

そこが勝機だ
ワイヤーを奴に掛け
咄嗟に引っ掛けて一気に間合いを詰め
そのまま捨て身でブン殴って倒す!

アドリブ表現お任せ




 ごうと唸る風は花の足場をランダムに崩壊させ、寄る辺をうしなった花弁が次々と中空へ舞いあがる。
 いかに前情報があったとて、喰らう傷の痛みまでは予測できない。
 敵の操る風を、文字通り肌身に刻んだサイボーグの元電脳工兵――虻須・志郎(第四の蜘蛛・f00103)は、
「ハ! 流石の速さだ、風が違うってか」
 崩壊をはじめ、振動する足場にしゃがみ込み、不敵な笑みを浮かべた。
 斬り刻まれた全身の傷口から次々と血が流れ出るのを見やり、王者の石――血液で動くコアマシンの成れの果てで回収し、急ぎ回復を図る。
「誰にも邪魔はさせないと、言ったはずです」
 静かな声音とは裏腹に、スピード怪人『ウインドゼファー』は車輪剣を高速回転させ、さらに暴風を招き寄せて。
「風の藻屑と散るがいい!」
 次の瞬間には、淡色の花弁が、ふたたび群れ飛ぶ生き物のように猟兵たちへと襲いかかる。
 だが今回ばかりは、志郎が動く方が、早い。
「こっからが蜘蛛の本領だ。――推して参るぜ、全機能開放!」
 【邪神・第四の蜘蛛】【戦闘知性体ファルシオン】【アヴス・シロンのバックアップ】をその身に宿し、自らの感覚を超強化。
 ロープワークで生成したワイヤーを崩れる足場に引っ掛け、反動を利用して次々と空中を渡っていく。
「速さでは敵わんが、動きを読めれば、俺にだって見切れる……!」
 回避の合間に仕込むのは、内臓無限紡績兵装の武器改造でつくりあげた、爆弾造花の罠。
 そう。
 一番最初にしゃがみこみ、罠を仕掛け始めた時から、志郎の反撃は始まっていたのだ。
 罠を仕込んだエリアに女を封じ、嵐が消え去ると同時に一斉爆破!
「――なにッ!?」
 ウインドゼファーの注意が逸れた隙に、その機械的な身体にワイヤーを引っかけて。
 ぐんとワイヤーを手繰り寄せ、距離を詰めると同時に、拳を固めた。
「行くぜ……!」
 ――ゴガッ!!!
 鈍い音が響きわたり、ウインドゼファーの身体が吹っ飛んだ。
 真紅の仮面に亀裂が入り、車輪剣もろとも、ふたたび集まった花の足場に叩きつけられる。
 会心の一撃が入れば、気分も上々。
「どうだ! 速さばかりが能じゃねぇってな!」
 満面の笑みを浮かべ、志郎はさらにウインドゼファーを牽制すべく、敵の死角めがけワイヤーをはなった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鎹・たから
あなたの欲望のために
こども達が泣いてはいけないのです

風を操る、シンプルな攻撃こそ脅威です
突風をオーラ防御で受け流すと同時に終雪で相殺を試みます
相手の風の威力は決して甘く見ず
可能な限り攻撃の威力を殺し灰雪で跳ねて回避
あなたの風、乗ってみせましょう
【念動力、空中戦】

終雪と彼女の突風に身を隠し
二刀流には同じく二刀で接近
手裏剣とフォースセイバーで斬り返し
暗殺に失敗したとしても攻撃の手は決して緩めず
再び灰雪で跳んで剣戟を続けましょう
【ダッシュ、暗殺、2回攻撃、衝撃波、気絶攻撃】

痛みはあろうとも退くことはありません
あなたがこの門をまもるように
たからもこの世界を守るのですから
【覚悟、勇気】


輓馬・桜
※アドリブ・連携歓迎します。
[WIZ]

★防御
霊的存在すら大地に縛り付けるほどの頑丈な鎖である[地縛鎖]を[地形の利用]で花の足場へ隠すように張り巡らせ、自分の体が風に吹き飛ばされるのを防ぐと同時に、高速回転する刃に絡ませて攻撃を防ぎます。

★攻撃
[サモニングガイスト]で呼び出した古代の戦士に、[生命力吸収]の[呪詛]によって、相手や大地から[地縛鎖]によって吸い上げた力と情報のすべてを託して、矛と炎で攻撃してもらいます。
風に舞い散る花びらは、さぞかしよく燃えることでしょう。
その間、僕は[記憶消去銃]で、ささやかな援護射撃をしながら[コミュ力]で戦士にアドバイスをします。
いけ、戦士!




 なおも立ちはだかるウインドゼファーの身体は、猟兵たちの攻撃によって半壊しつつあった。
 車輪剣は未だ機能しているものの、腕や脚には、かなりのダメージが蓄積されている。
 しかし、何よりも女怪人を追い詰めたのは、『自らの役目を全うすることができず、ここで倒れるかもしれない』という、精神的苦痛だった。
 それは、女にとってなによりの屈辱。
 ――これは、安っぽい支配欲などではない。私達には、望むものがある。
「私達は全てを手に入れる。そのために蘇ったのだから!!」
 叫びとともに、ウインドゼファーは全タイヤ高速回転モードへと移行。
 唸りをあげる車輪剣を振りかざし、『嗤う竜巻』と呼ばれる暴風を、猟兵たちへと叩きつける。
「凍えなさい、ほろびなさい」
 羅刹の少女、鎹・たから(雪氣硝・f01148)はすかさずユーベルコードをはなち、天から降り注ぐ雪と霰の奔流で、風の威力を相殺。
(「風を操る、シンプルな攻撃こそ脅威です」)
「あなたの風、乗ってみせましょう」
 少女は相手の力を見誤ることなく、はなたれる風をひとつひとつ見切っていった。
 オーラ防御も併せ風の威力を削ぎながら、跳躍を駆使し、回避していく。
 たからがユーベルコードをはなつと同時に、霊的存在すら大地に縛りつける『地縛鎖』を花の足場に仕込んでいたのは、人間の少年、輓馬・桜(少年呪術師・f17773)。
 ごく普通の小学1年生とUDCエージェントという2つの顔を持つ少年は、この場にあっては、大人びたエージェントの顔をしていた。
 無策であれば簡単に吹き飛ばされていたであろう6歳の身体は、張り巡らせた鎖によって、しっかりと足場に固定されている。
 同じころあいに仕掛けたたからが派手に立ちまわっているおかげで、小柄な桜がウインドゼファーの死角にまわるのは、簡単だった。
 高速回転する刃めがけ、二本の剣を絡めとるように鎖をはなつも、車輪剣の威力は凄まじかった。
「手負いだからと、甘くみないことです」
 肩越しに振り返ったウインドゼファーが、桜を睨みつけるように、鎖を引きちぎり。
 しかし、その一瞬。
 一瞬さえあれば、たからには十分だった。
「あなたの欲望のために、こども達が泣いてはいけないのです」
 幼い笑顔――かけがえのない宝を守ること。
 それこそが、ヒーローたるたからの務め。
 跳躍したヒーローの身体は、すでに中空に舞っている。
 両の手には、女と同じく二つの刃――『不香の花』と『玻璃の花』。
 敵の風の流れをも利用し、空を蹴るようにぐんと降下すれば、一気にその距離を縮め、迫った。
「あなたがこの門をまもるように。たからも。この世界を守ります」
 先行して閃いたのは、むつの結晶をかたどる鋭い刃。
 そら降る雪のように音もなく舞ったかと思えば、透明無垢な硝子のつるぎが、後を追うように女の胴を薙いだ。
 たからの胸元を彩るあざやかなスカーフが、まるで女の流した血のように、風にふくらんで。
 しかし猟兵たちは、女に絶望する隙さえ与えはしない。
 ユーベルコード『サモニングガイスト』による桜の召喚は、すでに完了している。
 古代の戦士の霊に、彼の持てる力と情報のすべてを託し、命じた。
「いけ、戦士!」
 援護射撃を行う主の意志を引き継ぎ、忠実なる亡霊は果敢に攻撃を仕掛けた。
 矛で貫き、炎をはなてば、間合いを取ろうとする敵めがけ、桜の射撃が追撃する。
 その合間にも、たからの刃が間断なく閃き、ウインドゼファーは反撃の糸口を見出すことができない。
「っ……!」
 うめき、ふたたび風を呼ぶべく車輪剣を掲げるも、
「させませんよ!」
 桜の命を受けた戦士がすかさず炎をはなち、女の身を焼き尽くした。
「風に舞い散る花びらは、さぞかしよく燃えることでしょう」
 足場もろとも、炎にまかれながら。
 誰よりも速くなりたいと願った女は、それでも膝をつかなかった。
「私達は、こんなところで……。こんなところで終わるわけにはいかないのです……!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

杜鬼・クロウ
アドリブ厨二怪我◎

時間稼ぎの繋ぎってか?
敵ながら涙ぐましいなァ
ならテメェの欲望、見せてみろや(挑発

小細工無し
真剣勝負
至って単純

躱す?冗談じゃねェ
受けて立つ(深呼吸し愉しげに笑う
真正面から斬り捨ててヤんよ(刃を撫ぞり玄夜叉を構え

【トリニティ・エンハンス】使用
攻撃力重視
敵の初撃は属性攻撃・2回攻撃・カウンターで剣に紅焔を宿し、敵の暴風すら取り込み跳ね返す
力で応戦

目で追うな
感じろ(第六感
お前の最速を俺の力で捻じ伏せてこそ本当の勝利ってヤツだろうがよッ!!

魂を研ぎ澄ます
黒鴉の如き駆ける
ありったけの総てを振り絞った一撃を

四の型、―(任意

敵の心臓を狙う
僅か一撃の錯綜
血反吐吐いての互角か辛勝目指す

…温い風だ


イデア・ファンタジア
風が一所に留まるなんてナンセンスね。私達は進むわよ。

剣を避けることは多分出来ないわね。だから覚悟して――捨て身で受け止める!
それと同時に発動させた『生命賛火』で瞬時に傷を癒すわ。
といっても相手には竜巻がある、普通に炎を灯しても消し飛ばされちゃうよね。
だから私の体の中で、たきぎのように活力の炎を燃やす!
こんなのやったこと無いけど、ダメージを負うような炎じゃないし、やってみるしかないね。
そして、強化された怪力ですかさず相手の両腕を掴んで逃がさないようにして。
攻撃を軽減するタイヤの無い部分、つまり頭部へと――頭突きするよ!




 ――切り裂かれても、穿たれても、焼き尽くされてもなお、屈することなく立ち続ける。
 もはや女を立ちあがらせているのは、信念と意地であったのかもしれない。
 その強固な意志には感心こそすれ、
「時間稼ぎの繋ぎってか? 敵ながら涙ぐましいなァ」
 ヤドリガミの青年、杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)の眼には、滑稽にしか映らなかった。
「私の命に代えても。貴方がたには、ここで倒れていただきます」
「ハ! 言いやがったな。なら、テメェの欲望、見せてみろや」
 夕赤と青浅葱の瞳を細め、クロウは笑みを深めて。
 女は青年の言葉に応えるかのように、全身を荒れ狂う暴風で覆った。
 延焼していた炎が風にかき消され、煤けた花弁が戦場一杯に散っていく。

 ――誰よりも速くなりたい。
 単純明快。
 それが、女の望みで。

 ――小細工無しの真剣勝負。
 敵であっても仁義を通す。
 それが、青年の望みだった。

 わずかに、女が身を沈めた。
 そうと判じた次の瞬間、クロウの間合いにウインドゼファーの切っ先が迫っていた。
 瞬きをする間もない。
 電撃のように脳裏に閃いたのは、
(「かわす? 冗談じゃねェ。――受けて立つ」)
 射干玉の黒髪に車輪剣の先が触れるかと思われた瞬間、ユーベルコード『トリニティ・エンハンス』を展開。
 【炎の魔力】【水の魔力】【風の魔力】で自身の攻撃力を強化し、その威力をもって、身の丈ほどもある黒魔剣を振りかぶった。
「真正面から斬り捨ててヤんよ!」
 ――ドガガガガガ、ヅギンッ!!
 風をまとった二本の車輪剣と、紅焔を宿した『玄夜叉(アスラデウス)』が交差し、赤い火花が花火のように飛び散っていく。
 生と死のせめぎあいにあって、青年はより笑みを深めた。
 ウインドゼファーは底知れぬ恐ろしさを感じ、間を置こうとしたが、
(「目で追うな、感じろ」)
 クロウは自らに命じ、吠えた。
「お前の最速を俺の力で捻じ伏せてこそ、本当の勝利ってヤツだろうがよッ!!」
 黒鴉のごとく駆け、はなったのは、ありったけの総てを振り絞った一撃。
 魂を研ぎ澄まし、狙うは敵の心臓。
 しかし黒鴉の翼は、最速の風には一歩届かず。
「鴉が風に抗おうなど、――笑止」
 最初こそ勢いにのまれはしたが、クロウの性質さえわかれば、その動きを予想するのは容易かった。
 太刀筋を避けるよう、わずかに身をよじり、クロウの攻撃をブロック。
 すぐさまもうひとつの車輪剣を繰りだし、青年の身へと押し付ける。
「お返しです」
 闇に溶ける外套が、無慈悲な刃に引き裂かれて。
 風に散っていく血を見送りながら、クロウは花の足場に倒れた。
「……温い風だ」
 傷を押さえながらうめいた声は、女に届いたかどうか。

 バーチャルキャラクターのイデア・ファンタジア(理想も空想も描き出す・f04404)は、重傷を負ったクロウをすぐさま後方へ退避させると、もはや当初の面影もない女へ向け、言った。
「風が一所に留まるなんて、ナンセンスね。私達は進むわよ」
「できるものなら」
 これ以上の問答など、もはや意味を成すまい。
 互いにそうとわかっているからこそ、ウインドゼファーは再び全タイヤ高速回転モードに移行する。
 全身がきしみ、あちこちに亀裂が入っていたが、死んだわけではない。
 ――まだ動く。動くことができる。
 執念にかられた女は、ふたたび唸りをあげる車輪剣を振りかざし、『嗤う竜巻』と呼ばれる暴風を、イデアへと叩きつける。
 避けるかと思われた、その一撃を。
 芸術家の少女は、笑みを浮かべて受け止めた。
(「やったこと無いけど。理想も空想も描き出す、その力を信じて、やってみるしかないよね……!」)
 身を引き裂く風と刃。
 そして、苦痛に血を吐きながらも、叫ぶ。
「夢見た力を今ここに。――灯れ、『生命賛火』(ワイルドワイルドファイア)!!」
 本来であれば外界に炎を顕現させて使用する夢想呪法(アルスマグナ)であったが、その使い方では風に蹴散らされてしまう。
 だからイデアは、己の身の内で炎を燃やした。
 熱き想いが、蹴散らされぬように。
 たぎる勇気が、潰えぬように。
「なんだと……!?」
 眼前でみるみる回復してく少女を前に、ウインドゼファーは体勢を立て直すべく、身をひこうとした。
 しかしイデアはその怪力で、女の体をしかと掴み、逃さない。
 友達に悪戯をしかける幼子のように、弾けるような笑顔を浮かべて。
「さあ、いっくわよ~!!」
 攻撃を軽減するタイヤの無い部分、つまり頭部めがけ、
 ――ガゴッ!!
 渾身の頭突きをはなった。

 薄れかけた意識の中、ウインドゼファーは混乱していた。
 クロウしかり、イデアしかり。
 これまでの猟兵たちにしても、彼らは絶望することなく、立ち向かってくる。
(「なぜだ」)
 花の足場に叩きつけられながら、握る拳が震えているのを感じる。
 ――そのまっすぐな情念に、恐れをなしたとでもいうのか。

 しかしまだ、私の欲望も生きている――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アルバ・アルフライラ
力を持つ者は、その用途を見誤ってはならない
――貴様のそれは驕りに他ならぬよ

初手を防げぬならば耐える迄の事
幸い鉱石の身体故、多少砕けようが取り返しはつく
我が第六感にて車輪剣の軌道を予測
魔方陣すら描けぬ程の致命傷のみ避け、敢えて一撃を受けよう
激痛耐性で失神だけはせぬよう意識を繋ぎ止め
…態と倒れる素振りを見せたならば、更に奴の油断を誘えるだろうか

四肢の一本でも残っていれば魔術の行使は容易
高速詠唱で召喚するは、渾身の【暴虐たる贋槍】
風の扱いに長けているのは貴様だけではない
逃れる隙すら与えぬよう広範に風槍を布陣――降り注げ

全く老体に鞭を打たせおって
さて、私と貴様の欲――想いの強さはどちらが上であろうな?




「幹部怪人ともあろう者が、ひどいありさまだ」
 直線上に、いくらか間合いをとった、その先。
 満身創痍で花の足場に埋もれるウインドゼファーを見やり、クリスタリアンのアルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)は女怪人の前に進みでた。
 燃える星をとじこめた瞳で、一瞥。
 砕け、欠け、ひびだらけの姿を目の当たりにすれば、敵とはいえ憐憫の情を抱きもする。
 だが、それも一瞬。
 これまで戦ってきた猟兵たちの苦闘を思えば、告げる言葉は他にない。
「力を持つ者は、その用途を見誤ってはならぬ」
 薔薇色輝石の指先に、『星追い』と名付けたルーンソードを携え、続ける。
「――貴様のそれは、ただの驕りに他ならぬよ」
「ハ……、ハハハ!」
 『速さ』にすべてを求めた女は、損傷だらけの身体をきしませながら立ちあがり、真紅の仮面を双星の魔術師へ向け、体を揺すった。
 この戦いの中で聞いた、もっとも愉快そうな声音。
「猟兵風情が、私達の、一体なにを知っていると言うのです」
 左手で車輪剣を拾いあげ、心底不思議そうに言った。
「私達は今度こそ、滅びることなく欲望を呑みこんでみせる。オブリビオンと成った今であれば、それが叶うのだから。それが、どれほど素晴らしいことか!」
 ――伝えた言葉は、右から左に流れたか。
 あるいは、いずこかの螺子が外れたか。
 アルバは戦場の空気が、ふたたび動き出そうとするのを察した。
 仲間たちの戦いを前に、敵の手の内はもう何度も確認している。
 しかし、己では、その技を回避する術は見つからなかった。
(「初手を防げぬならば、耐えるまでのこと」)
 さいわい、この身は鉱石でできている。
 多少砕けようとも、拾い集めて継ぎあわせれば良い。
 ――ヒトの身体よりは、取り返しはつく。
 対するウインドゼファーの身体も、猟兵たちの度重なる攻撃を受け、もはや限界に達している。
 それでも女は、躊躇なく全タイヤ高速回転モードへ移行した。
 ふたたび得た魂を、燃やし尽くしてでも。
 ドン・フリーダムへ、望みを繋げるために。
 ぎしり、女が身をかがめた次の瞬間、花の足場に突風が吹いた。
 舞いあがった淡色の花弁が、中空を満たし。
 次いで、衝撃。
 パリン、と乾いた音色。
 視界の端に、ブルーサファイアの破片が煌めいている。
 良く知る輝きだ。
 なにしろあれは、己の身体の一部なのだから――。
 『第六感』で軌跡を逸らそうとも、その威力は絶大。
 まともに攻撃を喰らおうものなら、クリスタリアンの身体は粉々になっていただろう。
 竜巻のひとつはなんとか凌いだが、次なる一撃は避けきれなかった。
「――ッ!!」
 喰らった車輪剣が右肩を抉り、ひび割れたそこから、ごそり、腕が地に落ちる。
 ぶつかりあった衝撃で、脚にも亀裂が入ったらしい。
 がくんと膝が落ちたかと思うと、膝先の感覚が消え、頭から地に倒れた。
 花に紛れ、煌めく青。
 ウインドゼファーは欠け落ちたアルバの腕を踏みしめ、さらに砕いた。
「もろい身体ですね」
 眼前に、女のつま先。
 片足は砕け、片足はひび割れ、もはや立ちあがることもできない。
(「まだ片腕は、残っている」)
 砕けた片腕を支えに身を起こそうとするアルバの頭蓋を、ウインドゼファーは容赦なく地に押しつけた。
 みしりと、頭蓋がきしむ。
「終わりです」
 冷たく言いはなてば、アルバの口から、かぼそい声が漏れた。
「今さら命乞いなど――」
 女がいぶかった、次の瞬間。
 密かに唱えていた高速詠唱が完成し、倒れたアルバを中心に、魔法陣が浮かびあがる。
「これは……!?」
「風の扱いに長けているのは、貴様だけではない」
 気づいた時には、もう遅い。
 アルバとウインドゼファーの頭上を覆い尽くすように、190本の『暴虐たる贋槍(ワイルド・ハント)』が待ち構えている。
「――降りそそげ」
 四方八方から貫かれれば、さすがのウインドゼファーも逃げようがなかった。
 後頭部に乗っていた負荷が消えると同時に、オブリビオンの気配が霧散していく。

 花の足場に倒れながら、吹きすぎていく風を感じ、目を閉ざす。
「さて。私と貴様の欲――想いの強さは、どちらが上であったろうな?」
 一か八か、無謀にも近い賭けではあったが。
 なんにせよアルバは生き残った。
 実際は、文字通り全身ボロボロであったが。
 あのグリモア猟兵なら、すぐに連れを呼んできてくれるだろう。
 散らばった欠片を集めるのに一苦労だが、それも、命あっての贅沢な戯言だ。
「まったく、老体に鞭を打たせおって」
 嘆息とともに、そうこぼし。
 アルバはまどろみへと、意識を手放した。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月25日


挿絵イラスト