バトルオブフラワーズ⑪〜風は何よりも早いのか
「こんにちは、猟兵さん!」
『怪人が出たわ。……面倒なヤツよ』
グリモアベースで猟兵たちはドリー・ビスクだ。一見して双子と見紛う彼女たちだが、片方はビスクと呼ばれる人形である。
『キマイラフューチャー世界の戦争、バトルオブフラワーズ。あたしたちはキマイラフューチャーの中枢“システム・フラワーズ”に辿り着いたわ』
「おサルさんもバニーガールさんも大変だったよね。今度出て来たのはバイクさんみたい!」
『スピード怪人“ウインドゼファー”。今回アナタたちが相手する怪人の名前よ』
戦場は8車線もある広々とした高架橋の高速道路。不思議な空間内に再現された、キマイラフューチャーのどこぞのリゾート地の一つなのだろう。映し出された映像をよくよく見ると、道路には到るところに花模様が刻まれているのがわかる。
「ウインドゼファーさんの攻撃方法は3つ! 1つ目は、全身をすごい風で覆って、とっても強くなってびゅーんって飛んで行っちゃう能力! 本当にすごい風だから、何か工夫しないと銃の弾も届かなさそう! 一輪車みたいな車輪剣ですれ違いざまに何度も攻撃して来るみたい!」
『防御としての暴風と、回避のための飛翔能力。これらを同時に対策するかどうかしなくちゃいけないってわけ。面倒くさいったらありゃしない』
純粋な戦闘力の増強も侮れない。敵の防御と回避を突破するか、あるいは智謀で敵をハメるか。生半可な面制圧如きでは回避されてしまうため、注意が必要だ。
怪人とはいえ慣性の法則には逆らえないし、超高速で移動する中での対応力というのも限られて来る。厄介な怪人だが、敵にも限界があるということを覚えておくと良いだろう。
「2つ目はすごい風でばびゅーんってやる力! 道路にお花模様が刻まれてるのは見つけたかな? あれがあるところを、ばびゅーんってやってガラガラ~って壊しちゃうみたい!」
『要するに一点集中した暴風で、高架の足場を崩す力ね。戦場は広いから、あたしたちで戦い続ける中で足場がなくなって詰むことはないと思うけど……いきなり足元を狙われてハイサイヨウナラが挨拶代わりになるわね』
花模様は高架の至るところに描かれていて、このユーベルコードによって崩れないところは実質的に無いものだと考えて良いだろう。どうにかして足場を崩されても対応できるような対策を考えなくてはならない。
残念ながらオラトリオやドラゴニアン、フェアリーなどの翼を持つ者たちでも、飛んでいても足場が崩されるとそのまま落とされてしまうため、必ずユーベルコードやアイテム、技能などで対策しよう。
「最後、3つ目! 全部のタイヤがぐるぐる回るよ! ぐるんぐるーん! それであの一輪車みたいな車輪剣から竜巻を出すんだって!」
『こっちは純粋に敵が固くなって、厄介な遠距離攻撃をしてくるってことね。1つ目の暴風の比じゃないぐらい固くなるから、相手の防御を上回るほどの一撃を与えるか……あるいは、防御なんて関係ないような一撃を出すか、ってところかしら』
繰り出して来る竜巻の名は『嗤う竜巻』。吹き荒ぶ風が嗤うようで、まさしく名前通りの竜巻だ。
車輪剣は2本あることから、敵が一度に繰り出して来る『嗤う竜巻』もまた2つ。喰らえば風に引き裂かれるのはもちろんのこと、上空高くまで打ち上げられてしまうだろう。レベルの高い攻防が求められる厄介なユーベルコードである。
「敵は必ずこっちよりも先に攻撃して来るから気をつけてね!」
『敵の攻撃を受けて、こっちが反撃する。基本的にはそういうコト。戦場で相手よりも先に何かができると思わないことね。やられた後、アナタはどうするか。それが重要よ。でなきゃ相手に傷一つ付けられずにハイオシマイ、なんてことになりかねないわ』
敵の先制攻撃。猟兵がそれを防ぐ。
猟兵の攻撃。相手の防御が高まっているなら、それを突破する何らかの手段を使って敵に攻撃する――。
と、いうのが大体の流れになる。とれる対策を全て取って、敵に一撃を与える。そうしなければ戦いとしてお話にもならないだろう。
『……正直、言ってるこっちが憂鬱になるぐらい厳しい戦いになると思うわ』
「でも大丈夫だよ。あなたたちならきっと倒せる!」
ドリーはにこにこと猟兵たちへと笑いかけて。ビスクは心配そうに猟兵たちを見つめて。
最後に二人は口を揃える。
「『信じてる。いってらっしゃい』」
三味なずな
いつもお世話になっております、三味なずなです。
戦争シナリオ3本目。対「ウインドゼファー」戦となります。
非常に強いです。今回は今までの比ではなく判定が厳しくなるのでご注意下さい。
判定に寄与するものは「技能」「ユーベルコード」「アイテム」など。データを伴わないものはフレーバーとして処理し、判定には一切関わらず、演出にのみ貢献させます。この点ご了承下さい。
また、技能の値もしっかり見ていきます。低いと微弱にしか有利になれませんが、高ければ高いほど判定に強く寄与します。技能同士、あるいはユーベルコードやアイテムなどと絡めるとより強く判定に影響を出しやすくなるでしょう。つまりダイスの試行回数が増えます。
以下は今回の特殊ルール「先制攻撃」です。
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敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。
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また、なずなのマスターページにアドリブ度などの便利な記号がございます。よろしければご参考下さい。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております!
第1章 ボス戦
『スピード怪人『ウインドゼファー』』
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POW : フルスロットル・ゼファー
全身を【荒れ狂う暴風】で覆い、自身の【誰よりも速くなりたいという欲望】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : ソード・オブ・ダイアモード
対象の攻撃を軽減する【全タイヤ高速回転モード】に変身しつつ、【「嗤う竜巻」を放つ2本の車輪剣】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:藤本キシノ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ルイーネ・フェアドラク
◎
身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ
あるいは……肉を切らせて骨を断つ、とも
咄嗟に触手を重ね、肉の盾とします
触手も己の肉体の一部に相違なく、苦痛は逃れえぬでしょうが…
自分の血で刻印が活性化すれば、二撃目はより硬く
見切りでなんとか間に合わせ、激痛耐性で耐えつつの捨て身の攻撃を
いや、耐えきれずともトリガーを引く程度の意地は見せてみせます
狙いは精密でなくていい
敵の肉体、あるいは武器の端、どこでも当たりさえすればいい
この弾丸ひとつで、重力の楔に捕らえてみせます
足下の地面でも、一瞬の隙程度は作れるかもしれません
スピード狂に、速度を鈍らせる重力は天敵でしょうよ
世界の重みを知るのは、どんな気分ですか
身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ。
捨て身の覚悟で挑むことで、危機の中で活路を見出すことを意味する言葉だ。こういった強敵を前にした戦う者たちの言葉は類する物が実に多い。肉を切らせて骨を断つ、死中に活を求める、死を恐れては生きられない、幸運の女神は勇者を助ける、背水の陣……。
「収容されている呪具の研究の方が、まだしも気が楽なんですがね」
ルイーネ・フェアドラクは、高架の上で紫煙を上げながら彼方を見ていた。視線の先にいるのは怪人『ウインドゼファー』である。
強敵との戦い。呪具の研究。どちらも危険の代名詞に使っても遜色ないもので、どちらも誰かがやらなくてはならないものだ。だからこれは単純に、慣れの差と――それから、薫り高いコーヒーを飲む余裕があるかの差だろう。
「ゆっくり煙草を吸ってる余裕も……なさそうですね」
彼方より駆けて来るウインドゼファー。車輪剣を大きく振り被るモーションはルイーネの目にもはっきりと見えた。
煙草はアスファルトへ。ケースは白衣のポケットへ。今日はわざわざ残りの少ないケースを選んで来て良かった。強敵を目の前にしながら、ソフトケースに入った煙草が折れる心配はしたくない。
来た。黒い竜巻が二つ。ケタケタとはしゃぎ回る子供のような、あるいはピエロのような不気味な嗤い声を上げながら、ルイーネの元へと一直線に迫って来る。
「おいでなさい」
いざないの言葉は、ウインドゼファーに対する物ではない。体内に埋め込まれた刻印が脈動して、軽い目眩がした。刻印の中を巡る血が一気に喪われたのだ。
それをトリガーにしたかのように、彼の周囲を触手が覆う。
「無駄です、切り刻まれなさい!」
触手の壁越しにウインドゼファーの声が聞こえる。嗤い声が近付いて来て、触手の壁へと直撃した。
一発目の竜巻が、念入りに重ねられた触手の重ねた分を暴力的に削り取って来た。触手も元を辿れば彼の身体の一部であり、痛覚も通っている。ぐ、と奥歯を噛み締めてルイーネは苦痛に耐える。暴風の音、嗤い声、触手の軋む音。耐え続ける時間が永劫のようにも感じられる。
甲高く不愉快な嗤いが過ぎ去って、間を置かずに二発目の嗤い竜巻が直撃した。追加で刻印の中の血を支払い、ルイーネは触手の壁を内側から補強する。
嫌な汗が浮かんでいるのは、そして身体がかすかに震えているのは、死の予感を前にしているからなのか、それとも失血性貧血を発症しているからなのか。それでもまだ生きている。死んでいない。
死んでいなければ、一矢報いることができる。
「世界の楔、世界の歪み――」 シルバーバレット
ルイーネが構えるのは一丁の銃だ。弾倉に入っているのは彼にとっての銀の弾丸。
重力を司る精霊による、特殊精霊弾。
震える手で照準する。狙いは精密である必要はない。一直線にこちらへ向かって来る敵のどこかに当たりさえすれば良い。
「これは、物質を支配する力です。……スピード狂に、重力の足枷はいかにも忌々しいものでしょうね」
銃声。銀色の弾丸が空を裂き、一直線に怪人の元へと吸い込まれる。
「銃弾など、私の前では遅すぎますね!」
ウインドゼファーは武器を振るって銃弾を打ち払い、しかしそれによって加重されて急激に減速してしまう。
「ぬ、おぉぉおおお……ッ! こ、この弾丸は……!?」
「世界の重みですよ」
血を失った青い顔でありながらも、ルイーネは口元に笑みを刻む。ソフトケースから出した煙草を咥え、まだ震える手で火を付けた。
紫煙を揺らしながら、牛歩のような遅々とした歩みに変わった敵を見遣る。
「世界の重みを知るのは、どんな気分ですか」
成功
🔵🔵🔴
セゲル・スヴェアボルグ
動きが直線的であるならば回避自体は可能だが……
まぁ、ある程度の補正はしてくるだろうな。
ならば、こちらを視認できないようするしかないか。
煙幕は吹き飛ばされるのが落ちだな……ならば閃光玉か。
一瞬でも阻害できれば問題ない。
可能な限り移動すれば直撃は避けられる。
そのあとは出せる武器をすべて出せば、暴風に飛ばされることはないだろう。
念のため、盾を奴さん側に構えてシールバッシュも狙っておこう。
こちらも動きは制限されるが、さしたる問題はない。
再度突っ込んできたところに狂飆の王を合わせてやればいい。
目には目を暴風には暴風を――だな。
耐性さえ崩せれば、あとはいつも通りだ。
味方をかばいつつ、ぶん殴るのみよ。
勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求むる、とは孫子の言葉だったか。
戦う前から勝てる状況を作る、という意味から転じて、戦いに臨む者へ事前準備の入念を説く言葉としても時折使われる格言だ。
ウインドゼファーは強敵だ。エイプモンキーのような対策の対策を必要とされることもなければ、ラビットバニーのように無敵化も無い。だが、その代わりに純粋な戦闘力が高い。
「それでも、勝てる」
セゲル・スヴェアボルグはそう確信していた。いかな強者とて常勝無敗は至難である。そしてそれを至難たらしめているのは、いつだって戦に用いられる多くの知恵と、ほんの僅かな勇気だ。
「次の相手はあなたですか。では私の速度の前で! 疾く死になさい!」
セゲルと対峙するウインドゼファーが叫んだ。その身に暴風を纏い、受けていた重力の軛から脱して浮かび上がる。
まったく厄介な手合いだ、とセゲルは喉を鳴らす。彼はドラゴニアンだが、彼が担う装備の数々はどれも超重量であり、とてもではないが飛翔などできない。ゆえに彼は翼を持てど、地竜のように空を飛ぶウインドゼファーの相手をせざるを得なかった。
「恨むならば、鈍重な自分を恨むのですね!」
「なに、重量級も悪くはないものだ」
だが、彼は同時に知竜でもあった。
彼の手から転がり落ちる物があった。閃光発音筒――フラッシュバンだ。
世界が白く染まり、爆音が空気をつんざく。
「なっ――!?」
まともに閃光を食らったウインドゼファーの軌道がやにわに乱れる。急制動をかけようとするが、止まらない。止められない。いかな怪人であろうと慣性の法則からは逃れられない。
「さあ、来い」
突撃してくる――否、墜ちてくるウインドゼファーへと、セゲルは大盾を構える。
まず来たのは風圧だった。正面から、後ろから右から左から、押し寄せて来るそれを、展開した装備の重量と膂力でもって捩じ伏せる。
次に来たのは衝撃だった。ウインドゼファーの身体が直撃する、その瞬間に合わせて彼は大盾を振るう。
鈍い音と金属音が鳴って、ウインドゼファーの身体が地に墜ちる。
「打撃力は兵力と速度の二乗に比例する、だったか」
カール・フォン・クラウゼヴィッツの機動戦を指した言葉だ。類稀なる速度を持ったウインドゼファーは、なるほど確かに強大な打撃力を有するだろう。
だが、それはあくまで機動戦に限った話だ。
地に墜ちてしまった怪人に、その理屈はもう通用しない。
「無理も通れば道理になる。その土手っ腹に風穴を開けてやろう!」
地に伏したウインドゼファーへと、セゲルの錨斧が唸りを上げて襲い掛かる。
纏った暴風がアンカーの行く手を阻むが、超重量の前では障子紙ほどの障害にもならない。錨斧は怪人の腹へと深々と突き刺さり、着撃と同時に巻き起こされたセゲルの暴風によって、ウインドゼファーは吹き飛ばされた。
「ば、馬鹿、な……! 私の、風が……!?」
暴風によって吹き飛ばされたウインドゼファーを見ながら、セゲルは錨斧を肩に担ぐ。
「目には目を、暴風には暴風を、だ。俺の暴風は、お前さんにはちと荒々しかったかな」
大成功
🔵🔵🔵
黒川・闇慈
◎
「ここまでの曲芸大会もなかなか楽しかったのですが、今度は実力勝負ですか。クックック」
【行動】
wizで対抗です。
まずは竜巻への対処です。竜巻というのは渦を巻く上昇気流、であれば逆方向の気流をぶつけてみましょうか。下降気流、ダウンバーストというやつです。
高速詠唱、属性攻撃、全力魔法の技能で迅速に炎獄砲軍を使用し、二十個の火球を二つそれぞれの竜巻の上から叩きつけて一斉爆破します。これで発生させた直下方向の爆風でもって竜巻を打ち消しましょう。
竜巻の対処が終わったら残りの火球で攻撃です。火球を接触と同時に爆破。炎の高熱ではなく、相手の内部へ与える衝撃でダメージを狙いましょうか。
「ここまでの曲芸大会もなかなか楽しかったですが……」
怪人ウインドゼファーを見遣りながら、黒川・闇慈は口元に薄っすらと笑みを浮かべる。
「今度は実力勝負ですか。いや、一介の魔術師には荷が勝つ展開ですねぇ。クックック」
「ならば吹き飛びなさい、空の彼方まで!」
問答は無用だとばかりにウインドゼファーが車輪剣を振るう。竜巻二連。二重に聞こえる嗤い声に、闇慈は肩を竦めながら首を横に振る。
「やれやれ、せっかちですねぇ。そう焦っても勝敗は変わりませんよ」
黒い十字架のような魔術杖を掲げ、彼が展開するのは30超の魔法陣だ。まるで壁のように幾重にも重なったそれらの中から、一際大きな陣が2つ前へと浮かび上がる。
「――戦場を満たすは灼炎の王威なり。戦場を轟かすは炎獄の御稜威なり。あらゆる全てを喰らい糧とし、世に産み落とすは数多の嗣子。今これより始まるは炎王の聖戦、破壊の砲火」
魔法陣から火炎球が生み出される。闇慈が追加詠唱を行うことで過剰に供給された魔力を糧に多重に火属性を得て、火炎球が巨大化していく。
インフェルノ・アーティラリ
「一切全て灰に帰せ、 炎獄砲軍 」
. アーティラリ
大砲 の名に相応しく、巨大な火炎球が轟音と共にまずは2つ、竜巻へと射出された。緩やかな弧のような弾道を描きながら、火炎球は竜巻の直上へと至る。
爆裂。
鼓膜を破かんばかりの爆発音と共に、火炎球が爆ぜる。遥か上空であるにも関わらず、その衝撃波と圧倒的な熱量は暴風を打ち消し地上にまで届いた。嗤う竜巻の笑い声は、いつの間にか途絶えている。
「私の嗤う竜巻が、爆発だけで打ち消された……!?」
「おや、それぞれ1発ずつで打ち消せましたか。これは僥倖。クックック」
目を剥かんばかりのウインドゼファーに対して、闇慈は薄く嗤うのみ。彼にしてみればこんな打ち消しなど、子供が自分の玩具を突き合わせて勝負ごっこをしているようなものだ。
相手の玩具も面白い。が、自分の持つ玩具の方が強かった。これは彼にしてみれば、それだけのことなのだ。
「……ですが、竜巻が二つだけだと思わないことです!」
ウインドゼファーが2本の車輪剣を振るえば、また同じように竜巻が2つ現れる。
闇慈は鷹揚に一つうち頷き、30ほども魔法陣から作り出された火炎球を挙げた手を下ろして射出する。
「ええ、そうですね。ですがそれはもう見ました」
多重爆発。最初の二つが同じように竜巻を打ち消し、残りの火炎球がウインドゼファーへ襲い掛かる。直撃の直前、全ての火炎球は爆裂し、ウインドゼファーへと多重に衝撃によるダメージを与えた。
幾重もの爆裂を受けて、膝をつくウインドゼファー。その視線の先には、変わらず口元に笑みを浮かべた闇慈が立っていた。
「曲芸大会と同じように、とまではいきませんが。楽しんで頂けましたかねえ? クックック」
成功
🔵🔵🔴
天御鏡・百々
◎
貴殿が最後の番人か
この世界を救うため、押し通らせてもらおうぞ
我は真実と未来を映す神鏡なり
「ソード・オブ・ダイアモード」によって変身しようとも
我が本体は貴殿の本来の姿を映し出すのだ
『真実を映す神鏡』によって、ユーベルコードを封じ変身を解除してやろう
その後はすかさず追撃だな
真朱神楽(武器:薙刀)で防御の隙間を狙ってなぎ払ってやろう
(なぎ払い20、鎧無視攻撃5)
敵の攻撃は神通力(武器)による障壁(オーラ防御51)で防御するぞ
風が如何に早くとも、光よりも早いことはあり得ぬのだ
貴殿の姿は、我が身にて捉えたり
●神鏡のヤドリガミ
●連携、アドリブ歓迎
猟兵たちは想像以上の実力を秘めていた。
それはウインドゼファーにとって最早目を逸らしようのない事実だった。
代わるがわる現れる猟兵へと初撃を見舞おうとも、それは対処された上に反撃されてしまう。こちらが致命傷を与える前に猟兵は退避していく。敵へ大した被害を与えることができないままに、ウインドゼファーにはダメージが蓄積していた。
「次は――」
次は誰だ、とウインドゼファーは2本の車輪剣を構える。誰が来ようとも戦意の起こり、虚を突いて先制する。
「貴殿が最後の番人か」
そして現れた猟兵の一人を見て、ウインドゼファーは硬直した。その和装は本当に戦場に来たのかと疑いたくなるほどに華美なもの。見下ろすほどの矮躯は若いどころではなく幼い。それでいて、その小さな口から流れ出るのはいかにも古めかしい口調だった。
「我が名は天御鏡・百々。――この世界を救うため、押し通らせてもらおうぞ」
紅玉の如き赤い瞳は真剣そのもの。口調からは幼さを感じさせぬどころか、決意すら伝わって来るものだった。ひゅ、と風切り音が鳴らして天御鏡・百々が薙刀を構えると、一枚の鏡が浮かび上がる。
「……スピード怪人、ウインドゼファーと申します」
幼い外見に惑わされもしたが、ウインドゼファーも車輪剣を構え直し名乗りを上げる。
踵部の、車輪剣の、肩部の、体中の車輪が、一斉に回転を始めるのと同時。ウインドゼファーは疾走した。
●
早い、というのがウインドゼファーの初撃を見た百々の率直な感想だった。ヤドリガミとしてヒトの形を得て、色々な物を見聞したがあれほどの速さを有する者もそうはいまい。
あるいは。――あるいは、自分もあれほどに早ければ、自分の諸国漫遊も様々な場所を見て回れるのだろうが。あらゆる場所を高速で移動しうるであろうウインドゼファーを見て、百々はそこから連想した“自由”を思う。
だが、それも今は益体もない思考。
思考を中断。百々は鏡を前へ出し、宣言する。
「我は真実を映す神鏡なり! 貴殿の真の姿、映し出してくれようぞ!」
未だ一足一刀の間合いより遥かに遠い距離。車輪剣を振るうウインドゼファーの姿を神鏡に映し出す。
一瞬だけ。ボロ布のような衣服を着た、金髪赤瞳の少女が鏡面に映し出された――気がした。
「くっ……!?」
ウインドゼファーの動きが止まる。車輪の回転はまるで動力の供給が立たれたかのように空転し、ついには止まる。
「――貴殿の姿、我が身にて捉えたり」
百々の正体とは即ち鏡。魔を打ち破り、真実を、そして時には未来さえ映し出す神鏡である。
それに映し出された怪人ウインドゼファーは、破魔の力に抗し得ない。ユーベルコードを封じられ、その身を光によって拘束されてしまう。
「――覚悟」
舞うような足運びで百々はウインドゼファーへと肉薄し、朱色の薙刀を振るった。
一閃、赤い軌跡。金属音。
右肩、タイヤとの結合部分の節目へと薙刀の刃が入る。身動きの取れないウインドゼファーが、苦悶の呻き声を上げた。
矮躯の少女が――否。ヤドリガミの猟兵が、ウインドゼファーを見上げる。ヘルメットのバイザーに包まれたその向こう側を見透かすような、鋭い眼差しで。
「風がいかに早くとも、光よりも早いことはあり得ぬのだ。我が鏡面からそうやすやすと抜け出せるとは思わないことだな」
成功
🔵🔵🔴
櫟・陽里
空力、ダウンフォース、スリップストリームに乱気流
大昔からレーサーと風はオトモダチってね
勝利の女神かとんでもねぇ悪魔か
ま、何にせよ目の前に道がある
しかも8車線!
全速全開で走るのみ!
レースバイクは風を上手く切り裂き後ろに流しつつ
ダウンフォースを利用できるよう設計されてんだ
勝負しようぜ女神様!
その風に負けず切り裂きタイヤのグリップ力に利用し加速をキメて俺と相棒がファステストを叩き出すか!
風圧に負けてクラッシュするのかを!
地面が割れたら角度がつくからジャンプ台に利用できる
落下前の一瞬の判断と騎乗テクで派手なジャンプをご披露だ
暴風を抜けたらあとは単純
ゴッドスピード体当たり!
オーバーテイク、決まったろ?
◎
「ヒィィィィィヤッハァァァアアアアッ!!!!」
櫟・陽里は疾走していた。
高架式高速道路、8車線。素晴らしい舞台だと陽里は口元に笑みを浮かべる。宇宙ほどではないにせよ、コースは広大。障害物も無し。走ってくれと道路がこっちに手招きしてくれているような物だ。いや、そうに違いない。
愛機ライは雷鳴の如く唸りを上げ、加速に加速を重ねていく。ヘルメット越しにでも感じられる風の抵抗。それらを全て薙ぎ払い突き抜けて、更に早くもっと速く。乗り手の抱く速度への渇望に応じて速度を上げていく。無人の高速道を駆け抜ける。
――否、人はまだいたか。
「よお、女神様」
陽里が見上げる先には、白いコートの怪人が立っていた。ウインドゼファーだ。
風は良い。ダウンフォース、スリップストリーム、タービュランス――空力はいつだってレーサーの隣にいた。風は大昔からレーサーの友達だった。
だから、あの風を操る怪人ウインドゼファーは陽里にとっては女神様に違いなかった。それが良きにしろ悪しきにしろ、勝利の女神かとんでもない悪魔かはさておいて、だが。
「――勝負しようぜ」
走り抜ければ俺の勝ち。
クラッシュすれば俺の負け。
勝利条件はレースのようにシンプルだ。
「速さで私に勝とうなど!」
烏滸がましいのだ、と言うように。ウインドゼファーは暴風を放つ。
凄まじいまでの風圧。あれは足場が崩れるまでもないだろう。バイク諸共、風の揚力に攫われて放り上げられ、地面に叩きつけられるのがオチだ。よしんば避けられたとしても、猛烈な横からの風はハンドリングを狂わせる。高速走行時の転倒は即ち死だ。
――もっとも、これらの話は彼の愛機が普通であれば、の話だが。
「ようこそオトモダチ!」
ニィ、と陽里はヘルメットの中で口元に笑みを浮かべる。
限界まで身を屈め、まるでこの身体がパーツの一つであるかのようにバイクと一体となる。そうすることで、ライは完成する。
暴力的な風圧が来た。
ウイングが切り裂く。ボディが受け流す。
ダウンフォースがタイヤのグリップを高め、更なる加速への余地を産み出す。
勝負の結果は二つに一つ。
「風圧に負けてクラッシュするか!」
暴風が道路を砕き、瓦礫に変える。バイク諸共陽里はその中に巻き込まれる。
「俺と相棒がファステストを叩き出すか!」
崩れ行く瓦礫をグリップして駆け上がる!
疾走感、解放感、浮遊感、上昇感、大ジャンプ!
崩れる道路を飛躍台にして陽里とライは宙を駆ける!
優秀なレースバイクは空力を利用することを前提に設計されているのは当然のことだ。そして優秀なレーサーは空気の流れを読み取り、それを利用することに長ける。
ゆえに、ウインドゼファーの放つ風が陽里とライに利用されない理由はなかった。
「喰らえよゴッドスピード体当たり……!」
風の力で温存していた余力を解き放ち、ウィリー状態のバイクを怪人に叩き付ける!
速度の乗った質量頼みの一撃は、怪人の身体に亀裂を入れた。
「オーバーテイク、決まったろ?」
成功
🔵🔵🔴
奇鳥・カイト
◎
対抗:pow
速いっつーのはいいな、機動力があるってだけで有利だもんな
俺なんかじゃ残影を目で追うのがやっとだ
──だからよ
その速さ。絡め取らせて貰うぜ
超スピードに対抗する速さなんざ持ち合わせてねェ
真っ向から打ち砕くパワーも俺にゃありましねー
だから俺は俺のやり方でいく、
空蝉で鋼糸を放ち、蜘蛛の巣──糸の結界を作り出す
触れた箇所に絡まり始めるその糸、そう簡単には途切れはしない
敵の体、防具、武器……何でもいい、何だっていい。どこかに絡まりゃそこから繋がる
暴風上等、回転は糸が絡まりやすい
そんでもって、動き鈍らせてよ
止まりゃなんとかなるだろ、多分な
そうなりゃ
心置きなく、蹴って殴れる
思い切り、な
速い、というのはそれだけで長所だ。
レーサーやアスリートなどであれば何者にも代えがたい魅力だ。機械や人間などの性能であれば他とは違った価値だ。そして、戦闘では他者よりも先んじて動く有利性だ。
奇鳥・カイトの目では、ウインドゼファーの残像をようやく目で追うのがやっとである。あの超スピードに対抗する速さも持ち合わせてはいない。かと言って、道理を捩じ伏せるほどの力も有さない。
単純な性能の比較であれば圧倒的な差。暴風を身に纏いながらこちらを見下すウインドゼファーとカイトの立つ場所は、そのまま彼らの実力差を表している。
「それなら、俺は俺のやり方で行く」
見下ろすウインドゼファーを、赤い瞳で睨め付けて。彼が腕を振るうと、ひゅ、と音がした。
「来いよ。――来れるもんならな」
「安い挑発ですね。ですが行かない理由もなし。速攻で叩き潰して差し上げます!」
どう、と暴力的な音がした。暴風が一斉に吹き荒れて、ウインドゼファーが突撃してくる音。怪人の握る車輪剣の刃が鈍い光りを帯びる。
「ああ、速えなぁ」
こんなに速ければ世界が小さく見えるだろう。
こんなに速ければどこでも自由に行けるだろう。
こんなに速ければ誰かに捕まることもないだろう。
こんなに速ければ誰かに囚われることもないだろう。
「――だから気に入らねェ」
赤い瞳が、強い闘志を帯びる。
カイトが一つ、手を振ると、あれだけ激しかった暴風の音が急速に弱まった。見上げる先、ウインドゼファーは突撃姿勢のまま、時が止まったかのように静止している。
エンプティパペット
「――【操糸術・空蝉】」
彼の得物は糸だ。視認されにくく、切れにくく、そして刃のように鋭い鋼糸。それを使って、彼はウインドゼファーの突撃経路に“巣”を張った。まるで、蜘蛛のように。
無論ウインドゼファーも抗うが、糸はそうやすやすとは切れない。それどころか、藻掻けば藻掻くほど糸は更に絡み付く。
「謀りましたね……!?」
「俺だって好きでやってるわけじゃねえよ」
半分本当、半分嘘。中途半端な言葉が、中途半端な口からこぼれる。
地面へと墜落したウインドゼファーへと歩み寄りながらカイトが脳裏に浮かべるのは、彼をまるで蜘蛛のように束縛する家のこと。
「……ああ、いや。アレは鳥籠か」
誰にともなく、彼は一人ごちる。誰かに聞いて欲しいわけじゃない。ただ、自分のこれはあの家と同じじゃないと、自分が納得したいだけの言葉だ。
スタイル
「けど、こっから先は俺の 好み だ」
墜ちた鳥はどうなるか。
その答えは、奇鳥・カイトが知っている。
成功
🔵🔵🔴
ヌル・リリファ
◆零時さん(f00283)と
◆アドリブ歓迎
ちかづかないとうてないけど。ただちかづいてもふっとばされる、と。
なら、そこまではまかせて。
シールドを半球状に展開。【盾受け】で零時さんを【かばう】よ。しばらくは、たえて相手にシールドはこのおおきさだっておもいこませる。
印象が固定された、とおもったら、相手がこっちにきたときに【カウンター】として【シールドバッシュ】。
シールドの範囲を一瞬ひろげ、はじきとばす。
これで、一瞬くらいは硬直するはず。
すきはつくったよ。だから、よろしく。
(UCを起動。一体の大きな鳥は零時に宿り、炎の【属性攻撃】を載せる)
わたしのぶんもうわのせした。流石に、無傷ではすまないでしょ?
兎乃・零時
ヌル(f05378)と!
アドリブ大歓迎!
射程が短いのがなぁ…難しいもんだぜ…
…良いのか?
なら…頼むぜ、ヌル。任せた!
「紙兎パル」にはヌルの動きを【学習力】で上手く合わさせつつ
【スナイパー】として【属性攻撃・誘導弾】を使って【援護射撃】をして貰う
俺様は
【全力魔法】でビームっぽい魔力の塊をゼファーに連射
これが全力と思わせ
庇われてる間も目を凝らしてタイミングを見極める!
あぁ、任された……これなら…やれる―――ッ!
(強い相手ですっごく怖くとも、体に宿りし炎の力が【勇気】をくれる
【覚悟】を決めて【ダッシュ】で近づき、杖を構えガチの【全力魔法】
そう、UCをつかう!)
行くぜ、ウィンドゼファーッ!!!
「難しいもんだぜ……」
兎乃・零時は普段は勝ち気なその表情を難しそうに歪めながら呟いた。
視線の先は怪人、ウインドゼファー。紛うことなき強敵である。
対抗手段は、ある。怪人の防御を上回る火力で敵にダメージを与えることは不可能では決して無い。
だが、他の全てが欠落していた。相手の一撃を耐える方法。そして、こちらの一撃を当てる方法。それらが無ければ、この対抗手段は無きに等しい。
「ちかづかないと、うてない。ただちかづいても、ふっとばされる……」
青い瞳でウインドゼファーを見上げながら、ヌル・リリファは確認するように呟く。
「――なら、わたしがなんとかできると思う」
零時は隣に立つヌルを一瞥するように見上げてから、問いかける。
「……良いのか?」
できるのか、とは問わなかった。
本当か、とも疑わなかった。
良いのか、と。ただ確認した。
「まかせて」
ヌルは頷きを返す。「良いよ」とも、「うん」とも、簡単な返事はせずに。ただ共に戦う者として「任せて欲しい」と彼女は言った。
ごう、と風が吹く。ヌルの銀髪が風でたなびき、零時の魔法帽子が飛ばされそうになる。
「ご相談は済みましたか? では、こちらから参ります」
ウインドゼファーだ。彼女は暴風を身に纏ったまま、身体の車輪を回転させて車輪剣を構える。
動きが見えた。音は、一拍遅れて聞こえた。振るわれる車輪剣から竜巻が二つ現れる。
「――アイギス」
片手を前に、ブレスレットの銘を呼ぶ。神話の防具の名に違わず、腕輪はシールドを半球状に展開した。零時はそれに合わせてシールドの中に逃げ込む。
竜巻が襲い掛かる。小さな二人を嘲笑うかのような嗤い声と共に、シールドに負荷が掛かる。竜巻の巻き起こす強烈な揚力を打ち消し、斬撃のように鋭い風を防ぎ切る。通過する竜巻に合わせてアイギスを向けて、なんとか敵の攻撃を凌ぐ。
「今のを耐え凌ぎましたか。ですが、そのシールドは私の攻撃でも耐えられますか?」
風切り音と共にウインドゼファーが来る。
それを、ヌルは天眼で捉える。
敵が車輪剣を振り被り、シールドを攻撃しようと肉薄したその刹那。
ヌルはもう片腕を前に出して、ブレスレットの銘を呼んだ。
「アイギス」
今度は守るためではない。
今度は、一瞬の隙を作り出すために。
ウインドゼファーの目測よりも近く。怪人のすぐ眼の前にシールドを展開することで激突させる。パキリ、とシールドに亀裂が入った。あの速度ならば運動エネルギーも相当なもの。であればウインドゼファーとてただではすまぬ。
「すきはつくったよ」
だから、よろしく。そう言うように、ヌルは半身を横にずらして。
その横から、零時は前へと躍り出た。
「ああ、今度は俺様が“まかされた”!」
これならやれる。零時は確信を持って、体内で魔力を練り上げる。
ヌルの構築した術式が不死鳥の形となって、零時の背に加護となって降り注ぐ。燃える炎の温かさが、凍えるほどに冷たい恐怖を融かしてくれる。敵へと詰める一歩に変わってくれる。
杖から放射されるレーザー光のような魔力を、まるで道標のように怪人へ照射して。
「行くぜ、ウインドゼファーッ! これが俺様の、本気の本気だァ――ッ!!」
次に放つのは、式神たちの補助を受けた膨大な魔力の放出だ。
出力限界を超えた魔力の奔流――否、暴走は到底コントロールできる代物ではなく。大爆発を引き起こすものの、式神とアイギスが零時とヌルを守る。
果たして、爆発に紛れて後退した二人が振り返った先に見えたのは、膝をつくウインドゼファーの姿であった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ヴィクティム・ウィンターミュート
◎【ジャックと】
──攻撃はお前に任せる
お前の力を信じてるぜ、チューマ
先制攻撃は
各種サイバネに【ハッキング】を仕掛けて強化
反応速度向上、身体能力向上、体感時間の鈍化、演算能力拡張
奴の攻撃を高速で【見切り】、崩れる足場がどれか予測
ジャックに情報を共有して
【ダッシュ】【ジャンプ】【早業】【クライミング】を併用した三次元機動で崩れる足場から足場へ飛び、戦線復帰
保険としてジャックが復帰できるルートも選定しておく
奴が2回目の足場崩しを敢行した時が狙い目
【覚悟】を決めて、UCであえて受ける
無効化して得たバフをジャックに【ハッキング】で受け渡し
強化プログラムもおまけだ
「──後はお前の仕事だ。雷霆を見せてくれ」
ジャガーノート・ジャック
◎【ヴィクティムと】
(ザザッ)
受諾した、任務を開始する。
(ザザッ)
本機は崩れた足場にわざと呑まれ落ちるフリをする。バーニアなりで飛空はできる。
ヴィムの強化を受けてからが本番だ。
"Thunderbolt"を限界容量、35㎥で精製。
敵との相対距離350m、それに見合う形状(350m*10㎝100㎝)で精製。
光速はナノ秒換算で約30cm進む。実に光の千倍速超だ。
それでも足りない。
想定していた、今のは"フェイント"だ。
『C.C.』。
強化したのは遠隔操作性。
3.5㎞先から包囲する様に雷霆を遠隔精製。
サイズ規定3.5㎞*1㎝*100㎝。それを34発。
光の万倍速の光条、狙いはスナイパーと誘導弾にて外さない。
強風の吹き付ける高架の上。彼方の怪人を視界に収め、二人は立っていた。
「攻撃はお前に任せる」
黒いマントを翻して、ヴィクティム・ウィンターミュートは言った。視線は怪人から離れていない。わかっていることだろうが、と確認するような口振りだった。
「お前の力を信じてるぜ、チューマ(ダチ公)」
「受諾した」
無線音声のようなノイズ混じりの声で、ジャガーノート・ジャックがヘルメットのバイザーを明滅させながら応える。
彼方に見える怪人ウインドゼファーが攻撃動作に入ったのが見えた。風鳴り音。足場をも砕くほどの暴風の弾だ。
「――任務を開始する」
ジャガーノートの言葉の直後に、二人の足場が崩落した。鉄筋が露出し、頑丈なアスファルトが砕けて高架の下、地の底へと飲み込まれて行く。
瓦礫と共に落下しながらも、しかしヴィクティムとジャガーノートの表情に惑いはなかった。
「ハリウッド映画みたいなことさせやがって」
口元に悪辣な笑みを浮かべながら、ヴィクティムはプログラムを起動する。サイバネ化された四肢が唸りを上げる。リフレックス/フィジカルの強化。主観時間の拡大化。演算領域拡張による情報処理能力のブースト。違法に機能を解放された今のサイバネ義肢は優にカタログスペックを超えている。
全てがスロウに見える中。視界情報は全て電脳電算機で把握され、物理演算による未来予測で数秒先の状況までをも把握する。そこから最適解を導き出して後は行動するのみだ。彼は空中にあって、崩れゆく瓦礫を足場にして飛び上がる。崩れた高架、剥き出しになった鉄骨に掴まり、這い上がる。
「おいおい、これで終わりかよ? 怪人の幹部っても大したことねえじゃねえか」
声を張り上げ、ウインドゼファーへ挑発の言葉を投げかける。その間の“保険”と“仕込み”も決して忘れない。左腕のサイバーデッキ“トランシス・アヴァロン”に指を走らせる。
「ならばもう一度墜ちなさい!」
挑発に乗ってか乗らずか、ウインドゼファーから再び暴風が放たれる。ヴィクティムを足場諸共葬り去ろうとせんほどの破壊力。
「テメェの暴風は確かに強い」
しかしヴィクティムはそれを避けない。どころか、敢えて受け切る姿勢だ。彼は口元に酷薄な笑みを浮かべながら呟く。
「だから利用させて貰うぜ、テメェの力! エネルギー変換完了!」
脱力状態で受けた暴風は全て飲み込まれていくように集束し、それらは全て純粋なエネルギーとして変換され。そして、合図と共に“トランシス・アヴァロン”から射出された。
これはカウンターアタックでもなければリベンジアタックでもない。
デュランダル
あれは、“勇者の剣”。勇者へと与えられる魔を断つ剣にほかならない。
高架の上で煌々と輝くエネルギー塊は、まるで悪を滅せよと命じる太陽のようだった。
「――後はお前の仕事だ。雷霆を見せてくれ」
●
バーニアが機能しないのは想定済みだった。
普段は火を噴き揚力を与えてくれるそれは、今は沈黙している。どういうわけだか、この空間内では特別に力が付与された物品やユーベルコードでなければ飛行能力を得られない、という話は眉唾ものではなかったらしい。
「プランBだ」
想定済みならば切り替えも速やかに。ジャガーノートは呟いて、ヴィクティムからリンクを受けている周辺状況を把握する。最適解を導き出すのは一瞬。瓦礫を足場にして跳躍し、剥き出しになった鉄筋に掴まる。
カッ、と。まるで太陽が突如として雲間から顔を出したかのような光が頭上で輝いた。
それをジャガーノートはバイザー越しに確認して。彼はもう片手で瓦礫の隙間からウインドゼファーへ照準する。
「ターゲット・ロックオン。――複製開始」
生み出されるのは破壊の雷光。光の壁とも形容すべきそれは、暴力的な光を放ちながら突如として現れる。瓦礫の破片が一片、光の壁に吸い込まると粒子となって消えた。
特殊破壊光線兵器“サンダーボルト”。接触物を破壊する、破滅の光。それはまるで閃光のように現れて、次の瞬間には崩壊する。
「今のは……」
明らかに過剰な破壊力を見せつける破壊の光に、息を呑むウインドゼファー。しかし所詮は虚仮威しに過ぎないとばかりに再び暴風を作り始める。
二度目の暴風を受けてしまえばもう高架上への復帰は難しい。つまり敵の再攻撃を認めてしまえば即ち死である。
「風速は速い」
ジャガーノートは事実として呟く。彼が、あるいはヴィクティムが全速力で走ったとしても、風の速さに、そしてウインドゼファーの速さには勝てまい。
しかし、これもまた事実として風速よりも速いものは存在する。
Copy Code
「【コピー・コード】。――複製、完了」
ジャガーノートはウインドゼファーへ向けた照準器をそのままに。音声による起動を行う。
「対象の操作を実行」
光だ。
否、特殊破壊光線兵器“サンダーボルト”が再び現れる。
今度は光の壁としてではなく、まるで魔を断つ剣のように。あるいは悪へ降り注ぐ、雷霆のように。
現れたその数は、およそ30超。ウインドゼファーを完全に包囲した形での生成。
「――敵を殲滅する」
瞬時に生成されたそれを、ジャガーノートは遠隔操作によって射出する。
風がいかに早かろうとも、光はそれを常に上回る。
光条が怪人へと突き刺さり、雷霆は瞬時に散乱した。“サンダーボルト”は圧倒的な破壊性能を持つが、その一方でナノ秒――つまり10のマイナス9乗秒という極々短い時間の中でしか存在し得ない。普通ならば操作できたとして敵に届く前に崩壊してしまうその光を、一瞬を更に寸刻みにしたような刹那の時間を使ってジャガーノートは怪人へ届かせたのだ。
だが、彼をして怪人のボディに破壊の痕を与えながらも、しかし致命打には足りていない。“サンダーボルト”の崩壊が早すぎて、刃が敵を貫く前に砕けたのだ。
「――対象の損害を確認。全身に破壊痕」
裂傷とも火傷ともつかない傷を負いながら、ウインドゼファーは一時後退しているのが見えた。あれではもう、そう長くはもたないだろう。
「チューマ、無事か? 俺たちもズラかるぞ」
「……了解。撤収する」
道路の上からヴィクティムが差し伸べる手を握り、ジャガーノートは高架の上へと這い上がった。
高架を見回す。暴風によって崩落した跡。“サンダーボルト”によって消滅した跡。破壊の爪痕は色濃い。
「……速度とは、かくも暴力的なものなのだな」
ノイズ走る声でジャガーノートは呟く。風であれ、光であれ。この戦場という場にもたらしたものは破壊だった。
「ノロマは平和的でも創造的でもねえだろ」
ヴィクティムもジャガーノートに倣って戦場跡を見渡す。
「……ただ、ノロマは死にやすいってだけだ。それだけさ」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
非在・究子
◎【SPD】
速さへの、渇望、か……ぐ、ぐひひっ。
は、速いだけじゃ、たどり着けない、世界が、ある。それを、見せて、やる、ぞ。
て、敵のUCの、爆風が来るのに、合わせて、システムフラワーズに【ハッキング】して、あ、足場を操作する。ら、ラビットバニーが、『花の足場の制御の仕方』は、教えてくれた、から、な。
飛ばされた、足場が、一瞬だけ、敵までの、道を作るように、計算して、操作する、ぞ。
せ、精密な、操作が、いる、けど、あ、アシストツール【Q】で、スローとポーズを、使えば、よ、余裕だ。
……い、一瞬でも、道が出来れば、アタシのUCの速さが有れば、余裕で、相手に届かせ、られる。
さ、最速の一撃を、叩き込んでやる。
速さだけでは辿り着けない“世界”もある。
非在・究子はそれを知っていたし、信じていた。
「速さへの、渇望、か……ぐ、ぐひひっ……」
卑屈な笑みを浮かべながら、究子はウインドゼファーを髪の隙間から眺める。
究子の生まれたゲームの世界でも、速さを重視するような戦士はいた。そして、そのゲーム自体でも速さというものは時に重視されることがあった。クリアタイム、あるいは処理速度……。
とかくこの世では速度というものが重要視されがちだ。
「は、は、速ければ、良いってもんじゃ、ないんだよなぁ……」
笑みの性質が変わる。こいつはまるでわかっていないと言わんばかりの、嘲るような笑み。
「速さ以上に必要な物に何があると?」
小柄な究子を見下ろしながら、手負いのウインドゼファーはなおも余裕を崩さぬ口調で言葉を紡ぐ。
「た、たくさん、ある。いくらでも、たくさん……ふへへっ」
「……虚言を。あなたも猟兵であるならば、それを戦いで示して下さい」
吐き捨てるように呟き、ウインドゼファーは構える。怪人の車輪剣から放たれるのは圧倒的な暴風だ。
「へ、へへへっ、み、見せてあげるよ……。速さだけじゃ、勝てないってこと……」
速さは確かに重要なファクターだ。それは究子も認めるところだろう。
だが、絶対的ではない。
究子から見て現実とはゲームに等しい。ゲームの世界に生まれ、ゲームの世界で生きて、こうしてバーチャルキャラクターとして形を得て、けれど彼女の目には世界はゲームとして映る。まるでプレイヤーへの配慮のなっていないクソゲーだ。
滅茶苦茶な個々人の能力値設定などはさておいて、しかしクソゲーはクソゲーなりにゲームバランスは存外にしっかりしている分野もある。
例えば、戦闘システムであるだとか。
「は、速さよりも“強い”ものは、たくさん……たくさんある……ふ、ふひひひっ」
あれはメタ・ゲームだ。究子はそのようにゲームを認識していた。
速さは非常に強い“性能”を持っている。だが、絶対的ではない。メタが取れる。
暴風が来た。ユーベルコードを発動して、ダメージの射程外へと恐るべき反応速度とスピードで逃げるも、足場が崩される。
だが、究子の立っている場所だけはまだ崩れていない。
現実への介入。ハッキングを超えたハッキング。
「り、リアリティハッカーに、落下即死は通用、しない……!」
ラビットバニーの時と同じようにはいかなかったが、それでも限定的であれば足場の制御を掌握することも可能だ。例えば、崩落パターンであるだとか。
恐るべき崩落する足場を使って、究子はユーベルコードで上昇した反応速度とスピードでもって駆け抜ける。目指す場所はウインドゼファーのいる場所。
究子はウインドゼファーの後に、ウインドゼファーよりも遅い一撃を見舞った。
「ふ、ふへへ……人生ってクソゲー、だろ?」
成功
🔵🔵🔴
朧・紅
◎
裏人格の殺人鬼《朧》のみで行動
強敵好きの殺人鬼はギラつく瞳で殺し愛を楽しむ
攻撃は【第六感】と【聞き耳】で察知し回避しつつ【武器受け】
それでも無理なら【血糸】で血を操り傷口縫合応急処置
「致命傷にならない」事を重点に戦えりャそれでいい
こッちが苦戦してぼろチョンになッてりャ相手も油断すッかねェ?
いいタイミングでするりと【血液パック】から【血糸】を「透明」にして網目状に展開するぜ
研ぎ澄まされた刃の強度にして、な?
俺はココだぜェ?
さァ
テメェご自慢の速度で突ッ込んで来なァ…!
受ける痛みも楽しくて、躍る相手にステップ合わせ狂気のロンドをご一緒に
シャルロット・クリスティア
成程。嵐の壁……確かにただの銃弾なら突破はまず無理でしょうね。
捉えることも容易ではないでしょう……が!
アンカーショットを使います。
直撃は無理でも、相手の接近と同時に撃ちこめばどこかに引っ掛けることならできる筈。
これならいかに速く動こうとも、距離は取らせません。
当然、私の側は振り回されるでしょうが……それでいい。
身を覆う風となれば竜巻。渦です。大きく、強力な渦であるほど、その中心である『目』ははっきりとする。
巻き上げられようと振り回されようと、その『目』に射線が重なった瞬間。
そこに私の【目】、【早業】、【スナイパー】としての技術、すべてを賭けます。
最大威力の弾丸を叩き込んで差し上げましょう!
ああ、これは上玉だ。
朧・紅は――否、殺人鬼たる朧は、ウインドゼファーを見て一目でそう判断した。
血が沸くような。そして肉が躍るような。そんな戦いを予感して、朧は大きな胸の高鳴りを抑えきれなかった。
この感情をいかように表現すれば良いのだろうか。心臓は早鐘を打ち、流れる血潮で頬は上気して赤く染まり、瞳は爛々と金色の光を灯す。そして「殺したい」という一途な思いばかりが頭の中で駆け巡る。
「あァ……こりャあ“愛”だな、“愛”」
いかにも甘い言葉に反して、それを紡ぐ口が形作るのは凶悪な肉食獣の如き笑みだ。
対するウインドゼファーは、表情こそわからぬものの明らかに嫌悪するような雰囲気を滲み出していた。
「痴れ言を」
言葉と共に、暴風を身に纏って浮き上がる。
「ツレねえなァ……。お前もそう思うだろ? ……えェッと、名前なんだッけ?」
「……シャルロットです」
ニタニタと笑いながらも、彼は銃を構えながらへ後ろへ声を掛ける。それに応えるのは控えていたシャルロット・クリスティアだ。彼女は半ば苦笑気味に二人のやり取りを見ていた。
「よォしそれじャあ、シャル。ここぞッて時に頼むぜ。テメェは俺のキューピッドだ」
「引くのは弓じゃなくて銃の引き金ですけどね。――来ますよ!」
シャルロットの警告通りに、暴風が来た。ウインドゼファーが来た。
超音速で来たそれへと朧は身を捩ってギロチンの刃で防御し、シャルロットはアンカーショットを使って牽制する。
衝撃波。遅れて轟音。
二人の身体が吹き飛ばされる。
「けッヒヒ……ンだよ、ツレねェこと言ッてた割には熱烈アプローチじャねェか。あァ、クッソ痛ェな楽しいなァ! オイ、そっちは死んでねェな!?」
「なん、とか……っ」
吹き飛ばされ、地面の上を横転し。それでも二人はまだ生きている。
ギロチンで防御姿勢を取っていて、なおかつ応急処置をしていた朧はまだ気休めではあるものの良い。が、防御手段に欠ける狙撃手という立場のシャルロットの方は手痛い攻撃だったようだ。敵の攻撃が衝撃波による吹き飛ばしだったのが、不幸中の幸いであろう。
「アンカーは……ダメですね、どこかに引っかかればよかったのですが」
彼方へと飛ばされたアンカーを見て、シャルロットは渋面する。彼女はウインドゼファーの纏う風を渦状であるため、どこかに引っ掛けることができないかとも考えていた。だが、身に纏っていた暴風は乱気流だったのか、それとも竜巻のように上昇気流を伴う旋回によって文字通り“巻き上げられて”しまったのか。彼女の目論見はうまくはいかなかったようだ。
「なら予定通りに行くゼェ。ちゃんと“視えて”るかァ?」
「ええ、“視えて”ます」
二人の視線が向く先は一点。しかしそこは何も無い虚空――そのはずだ。
シャルロットが膝をつきながらも、ライフル銃を構えて狙撃姿勢に入る。銃口の先は視線の先、虚空へ向けて。
「とどめです――!」
傷だらけの朧とシャルロットを見て取って、一気に勝負を決しようと考えたウインドゼファーが再び衝撃波と共に超音速の突撃を敢行する。
「さァ、来いよ」
血反吐を吐き捨てながら、迫る強敵を見て朧は笑う。
「テメェご自慢の速度で突ッ込んで来なァ……!」
その笑みは、まるで今からトラバサミに掛かる獲物を見るかのような笑顔で。
「――今っ!」
シャルロットが術式刻印弾を射出する。本来であれば暴風によって弾き飛ばされてしまうようなそれは――しかし、暴風の壁をすり抜けるように進んで行った。
「な――!?」
直後、暴風と共に襲来したウインドゼファーがその身体を空中で折る。衝撃波や何か慮外な一撃を受けたわけではない。
これは単なるブービートラップ。
朧の仕掛けた、血液によって作られた無色透明な糸が進路上に張られていたのだ。
何本か束ねて張られた糸は、風の流れを斬り裂き銃弾の経路を半ば以上無理矢理強引に作り上げる。
【血糸】がウインドゼファーの飛翔を止める。そして、銃弾経路を作り、その装甲を穿ち――。
「最大威力の弾丸……受けて下さい!」
穿たれた装甲の向こう側に至ったシャルロットの術式刻印弾が炸裂する。装甲の内側を炎で灼く。ウインドゼファーの絶叫が響いた。
本来であれば装甲を引っ掻く程度の【血糸】が装甲を穿ったのも。来る暴風と、それ以上の速度で迫るウインドゼファーの生み出す一瞬しかないタイムラグが銃弾の到達を可能にしたのも。全てウインドゼファーの速度を逆利用したものだ。
「けッヒヒヒハハハッ!! 良ィ声で啼くじゃねえかよォッ!!」
傷も忘れて哄笑する朧。
狂気のロンドは、まだ続く――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
六六六・たかし
【アドリブ歓迎】
風とスピード…確かに良いものだ(かかしバイクに乗りながら颯爽と登場)
そんなものを操れるお前は相当に強いのだろうな。
だが、俺が負けることはない
なぜなら俺はたかしだから。
大…変…身…!!!(バイクになっていたかかしと融合しデビルズナンバーたかしかかしモードになる)
【WIZ】
お前がどんなに素早く強い一撃を繰り出そうとも俺には一切関係ない!
ユーベルコード『悪魔の模倣(デビルコピー)』!
攻撃を無効化…そしてその高速回転する力…貰い受ける…!!
高速回転の力で「チャクラム」を回転させ威力を上げる
終わりだ…デビル!!たかし!!スライサー!!!!
「風とスピード……。確かに良いものだ」
バイクに乗って高架の上、ウイングゼファーの眼前に現れたのはパーカー姿の青年、六六六・たかしだった。
「その二つに秀でたお前は相当に強いのだろう。だが、俺が負けることはない」
「大した自信ですね。何を根拠に?」
ウイングゼファーが冷笑する。負けないだの、勝つだの。そう豪語した者ほど早く敗れて死んでいくものだと知っていた。
「根拠はただ一つ。――なぜなら俺はたかしだから」
バイクから飛び降りる。そしてバイクが変形する!
「大・変・身……!!」
おお、なんということか! 彼の身に纏う黒っぽいタートルネックとフード付きパーカーは、まるで西部劇のようなカウボーイのようなウエスタンスタイルへと瞬く間に変貌を遂げたではないか!
これぞたかし、そしてかかしが融合した姿、デビルズナンバー・たかし=かかしモードである。
「さあ、来い」
CDのようなチャクラムを両手の指で回しながら、たかしは敵の出方を伺う。
「姿が変わったところで――」
ウインドゼファーの踵の、肩部の、そして剣のタイヤが一斉に回転を始める。全タイヤ高速回転モードである。
「私に勝てると思わないことですねッ!」
言葉と共に、両手の車輪剣から二つの嗤う竜巻が放たれる。絶大な威力を秘めた風の二連撃。
それに対してたかしは――動かない。
「いいや、勝てる」
彼は防御性能に優れた盾や鎧を身に付けているわけでもない。
何かシールドやバリヤ、あるいは結界のような防御術式を起動するわけでもない。
代わりに、彼はその手に持ったチャクラムを、迫り来る竜巻へと挿し込む。
デビルズコピー
「【悪魔の模倣】。――お前の竜巻、貰い受ける……!」
言葉と共に、竜巻が掻き消された。
「な……!?」
無効化された。その事実にウインドゼファーは驚愕する。一体いかなる原理でもってあの嗤う竜巻が打ち消されたのか、彼女の目をしてまったく見当もつかなかった。ただ、彼がたかしであるから。そうとしか言いようがなかった。
そして、そのウインドゼファーの心の動きは致命的な隙を作り出してしまう。
「デビル!! たかし!!」
たかしのデビルスロットドライバーが唸りを上げてリールを回す。現れる数字が二つ!
「6」! また「6」! そして最後に「6」!
なんたることか、3本のリールが示したのは悪魔的獣の数字だ!
「スライッ、サァァァァァァァアアアッ!!!!」
裂帛の雄叫びと共に、たかしの両手からチャクラムが放たれる。
チャクラムの回転速度はまさしく竜巻の如し――否、竜巻そのものである! たかしは無効化した嗤う竜巻の回転力をチャクラムへと転化してその威力を向上させたのだ!
放たれたチャクラムがウインドゼファーの装甲に深々とその傷を負わせる。
「これで終わりだ。……ここから先は、俺が手を出すまでもないだろう」
大成功
🔵🔵🔵
トルメンタ・アンゲルス
◎
へぇ、速さがご自慢ですか。
奇遇ですねぇ、俺もなんですよ。
どうです、ここはお互いに――
『MaximumEngine――』
――本気で走りませんか?
『――Mode:Formula』
暴風を纏って突っ込んできたなら、対の先を狙います。
時速が何万kmだろうと。
強烈な暴風だろうと。
光より遅い。
第六感、見切りを生かし刹那に判断。
瞬間的なダッシュと残像で狙いを狂わせます。
奮撃のブリッツガストによる咄嗟の一撃の早業で先制攻撃。
攻撃力重視の攻撃を2回攻撃し、鎧無視攻撃となる威力で腕ごと武器落としを狙います。
一瞬でも隙が出来たらお見せしましょう。
俺の速さを。
――HyperDrive
『Full Throttle──』
速さは大別して二つに分類される。
“速い”か、それとも“遅い”かだ。
そしてその分類方法は単純明快。速さを比較するだけで良い。
「へえ、速さがご自慢ですか」
高架の上。濃いスポーツサングラスをかけたトルメンタ・アンゲルスが立っていた。
「奇遇ですねえ、俺もなんですよ」
「戦いにおいて速さとは至上のもの。ゆえにこれは必然です」
ウインドゼファーは暴風を身に纏いながら答える。
そう、これは必然。各々戦いにおける最も重きを置く要素は違う。だが、速さに魅入られた者は“惹かれ合う”。強者と強者が戦うために巡り合うかのごとく。
そして、惹かれ合った者たちがすることはただ一つだ。
「どうです、ここはお互いに――」
『Maximum Engine――』
ベルトの音声と共に、騎乗していたバイクが変形してトルメンタの身体へと装甲として装着されていく。
「――本気で走りませんか?」
『――Mode:Formula』
それは宣戦布告の言葉。
白手袋を投げ付けるかの如き決闘の申し込み。
その応えは、“YES”以外に存在せず。
そしてここは、戦場だった。
「良いでしょうッ!」
戦場において“始め”の合図など必要ない。“YES”以外の答えが無い以上、すぐに攻撃して来るのは自明の理。不文律にして暗黙の了解が互いの中にあればこそ、合図は必要ないのだ。
答えと同時にウインドゼファーが動く。暴風を身に纏い、トルメンタへと飛翔する。
「そうこなくては!」
それに虚を突かれるようなトルメンタではない。
彼女もまた、爆発的な速度でウインドゼファーへと駆けていく。
――先制攻撃、という言葉がある。
戦術、あるいは技能の一つとしてよく知られる言葉だ。「先んじて攻撃を行うことで機先を制する」ものである。
ところで、この先制攻撃とはどこからが“先制攻撃”なのだろうか?
結果として攻撃が先にできれば“先制”だろうか?
あるいは攻撃を振っている最中こそが“先制”だろうか?
否。いずれも否である。それではあまりに“遅すぎる”。結果は終点であって然るべきだし、振っている最中は過程に過ぎない。
攻撃とは――先制とは、“気の起こり”から始まっている。攻撃しようと行動を起こすその直前、心の動きより始まっているのだ。
そう、つまりウインドゼファーはすでに先制攻撃を“行っている”。
であれば、トルメンタの取るべき行動はただ一つ。
“対の先”を狙うこと。
ほんの一刹那だけ遅れて動き出し、そして相手を上回るスピードで打ち砕くことだ。
『Hyper Drive――』
敵がいかに速くとも。敵がいかに猛烈な暴風を身に纏っていようとも。
「光より遅い」
トルメンタとウインドゼファーの一合は刹那の内に。
トルメンタが接近する。
ウインドゼファーが車輪剣を振るう。
残像が斬り裂かれる。
怪人の胸へと、猟兵の蹴撃が襲い掛かる。
『――Full Throttle』
「――蹴り抜く!」 Blitz Gust
その蹴りはまさしく光速。雷撃の如く、そして突風のように。
一撃が装甲をこじ開け、続く二撃目が装甲の向こう側を打ち抜く。
「猟、兵……。まさかここまで、とは……」
遂に生命途絶えたウインドゼファーは、トルメンタの一撃を受けながら黒い灰と化して消滅するのだった。
「俺は速くて、あなたは遅かった」
装甲を解除して、バイクに跨がりながらトルメンタは呟く。
速い奴が勝つ。遅い奴は負ける。
「ただ、それだけです」
高速道路の上に、バイクの轍だけが残った。
成功
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