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バトルオブフラワーズ⑪〜颶風を裂くは

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ #ウインドゼファー

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●立塞がる颶風
 システム・フラワーズ、その咲き乱れる花の足場に風が吹き荒ぶ。舞い散る花びらの中に姿を現したのは赤い面の女だった。その姿を見て怪人と疑う余地はない。
「猟兵達もここまで来ましたか。」
 風邪を纏うその女が、独り言ちる。無機質な面からは表情を読み取る事は出来ないが、その腕の先のタイヤが唸りを上げた。身に纏う暴風、足場を崩す暴風、そして敵を引き裂く竜巻。猟兵たちがどのようなユーベルコードで来ようとも、己が風で先んじて倒す。
「私達にも、見たい先があります。猟兵達をこの先へは行かせない。」
 花の足場に颶風が吹き荒れる。スピード怪人『ウインドゼファー』は来る猟兵をしかと見据えていた。

●グリモアベースにて
 『バトルオブフラワーズ』で慌ただしいグリモアベースで、アルトリンデ・エーデルシュタインは聖典のグリモアを閉じ、猟兵たちに呼びかけた。
「皆さん、三人目の幹部スピード怪人『ウインドゼファー』の出現を予知しました。」
 猟兵たちはついに三人目の幹部までたどり着いたのだ。ここを突破できれば、大首領まであとわずか。
「ですが、ウインドゼファーは他の幹部と同じく一筋縄ではいかないようです。」
 スピード怪人の名は伊達ではなく、猟兵たちに先んじて、“必ず先制攻撃をしてくる”というのだ。故に、無対策では何もできないまま倒されてしまうだろう。
「エイプやバニーのような特別な能力はないようなのですが、それ故に対処が難しいかもしれません。」
 相手が使ってくるであろうユーベルコードに対し、しっかりと対策をしたうえで戦う必要がある。無論、相手のユーベルコードの対策だけでは勝てないだろう。攻撃手段も用意しなければならない。
「難敵ですが、皆さんの力なら倒す事ができると信じています。」
 そう言葉を括り、アルトリンデは猟兵たちをウインドゼファーの出現するフィールドへ送り出すのだった。


こげとら
 しばらくぶりです、こげとらです。
 このシナリオは『バトルオブフラワーズ』のシナリオとなります。

 戦場となるフィールドは花の足場で構成されており、開始時点では穴などはなく戦闘に支障はない広さとなります。ただし、戦闘によっては足場が壊れる可能性はあります。(意図して破壊しない限りは壊れません)
 また、ウインドゼファーは以下の能力を持ちます。

 ====================
 敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
 この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。
 ====================

 防御系のユーベルコードを使う際も、相手の使うユーベルコードに合わせて工夫すると良いかもしれません。

 それでは、皆さんのご参加をお待ちしております!
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第1章 ボス戦 『スピード怪人『ウインドゼファー』』

POW   :    フルスロットル・ゼファー
全身を【荒れ狂う暴風】で覆い、自身の【誰よりも速くなりたいという欲望】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    ソード・オブ・ダイアモード
対象の攻撃を軽減する【全タイヤ高速回転モード】に変身しつつ、【「嗤う竜巻」を放つ2本の車輪剣】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:藤本キシノ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

錬金天使・サバティエル
一対一で勝てる相手とは思っていない。こちらが数で勝っている以上、相手に手傷を与えられればそれで十分。

まずは敵の暴風に吹き飛ばされないよう盾を斜めにして地面に固定し、敵の攻撃を可能な限り防ぐ。こちらは本体さえ無事なら死にはしない、何とか耐えて見せるよ。

強力な攻撃を受けたらこちらもユーベルコード発動だ。
速度で追いつけるようになるとは思えない。だが奴の速度の半分、いや三分の一でも出せるようになれば戦いの形にはなるはずだ。
風は賢者の石の力を纏えば受け流せるし純金の翼のウェイトもある。
カウンター気味に正面衝突すれば如何に奴といえどただではすまないはずだ。



 システム・フラワーズの内部、花の咲き乱れる足場にウインドゼファーは佇んでいた。この先への道を塞ぐ門番として、ただ真っ向から猟兵達を阻むために。
「……来ましたか。」
 赤い面が向けられた先に、一人の猟兵の姿が見えた。

 ウインドゼファーの前に降り立った錬金天使・サバティエルは、眼前の敵が自分の想定していた通りかなりの実力者だと肌で感じていた。一対一で勝てる相手ではないだろう。だが。

「こちらが数で勝っている以上、相手に手傷を与えられればそれで十分。」

 それならばやりようはある。高速の怪人の動きを見極め、勝機をつかむ事は至難だが無理ではない。純金の翼から取り出した盾『泥の霊(カーボン)』を構えようとした矢先、強烈な風が吹きつけた。何が、などと知覚するより先に『泥の霊』を地面に斜めに打ち付け固定する。瞬きの間もなく盾を持つ手に衝撃、そして盾の表面を削る耳障りな音が響いた。
「やりますね。盾など何するものぞと思っていましたが。」
 ただ相手の動きを見て、などと考えていれば対応する間もなく吹き飛んでいたかもしれない。だが初撃を防げたとてそれで終わりでは無い。ウインドゼファーの振う車輪が盾に沿って振り抜かれ、間髪入れずにもう一方の車輪が横から叩き込まれる。盾の側面を抉った一撃がサバティエルの身体を掠めた。衝撃と暴風に飛ばされないようサバティエルは純金の翼の重みも使って重心を落として堪える。
「ですが、防ぐだけでは私には勝てない。」
 纏う暴風の如く、四方八方から襲い来るウインドゼファーの連撃。それは盾一つで防ぎきれるものではなく、サバティエルを打ち付けた。致命傷は避けているが、負傷は徐々に増えている。それでも、ウインドゼファーを見据えるサバティエルの眼は戦意を失っていない。

 こちらは本体さえ無事なら死にはしない、何とか耐えて見せるよ。

 賢者の石のヤドリガミであるサバティエルは本体である賢者の石を砕かれなければ本当の意味での致命傷ではない。それでも現身を失えば戦闘は継続できないが、今はまだ耐える必要がある。賢者の石に溜め込んだエネルギーごと打ち砕かれないよう、打ち下される駆動輪を『泥の霊』で受け流す。盾越しでも腕を貫く衝撃は重く、『泥の霊』も幾度も受けた攻撃により限界が近い。

 まだだ、もう少し――。

「これで終わりにしましょう。」
 盾の限界、サバティエル自身の負傷、それらを見て取ったウインドゼファーが2つの車輪剣を猛る暴風の迸りと共に打ち上げる。その一撃は地を抉り、花を散らしながら盾ごとサバティエルの身体を吹き飛ばした。暴風に巻き上げられるように宙を舞うサバティエルに止めを刺すべくウインドゼファーが全霊を込めて追撃する。守るべき盾もそれを支える地面もない今ならば、渾身の一撃であの猟兵は倒せる。そう、ウインドゼファーが確信したその時。

「事ここに至れば出し惜しみは不要だな。全力で行こう。」

 上空に吹き飛ぶサバティエルの全身が圧倒的なエネルギーに包まれる。開放された【覚醒・賢者の石(リベレート・サバティエル)】が今まで受けた攻撃の強さに見合う力を与え、その背の純金の翼が大きく広がった。サバティエルは空中で反転し、即座にウインドゼファーに向かい、堕ちる。
「なっ!?」
 驚愕の声をあげながらも咄嗟に距離を離そうとするウインドゼファー。だが、全力で加速したのがアダとなったか急な方向転換はできず、それでも衝突を避けるべく進行方向をずらした。だが、追いつくのではなく、迎え撃つのなら。

「奴の速度の半分、いや三分の一でも出せるようになれば戦いの形にはなるはずだ。」

 加速するサバティエルの翼が猛禽のそれとなった。弾き飛ばそうと吹き荒れる暴風を、纏う賢者の石のエネルギーが受け流し、巨大化する純金の翼の重みがさらに落下に加速をかける。金の鳥が舞うが如く暴風に突き立った。ウインドゼファーに正面からぶつかったサバティエルは、そのまま諸共に花の足場に激突する。もうもうと上がる花びらの中、立ち上がったのは。
「く……猟兵が、ここまでするとは……」
 軋む身体に、ウインドゼファーの声も苦い。その身体は確かに、サバティエルの一撃によって無視できないダメージを負っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ゾーク・ディナイアル
キャハハハハハ!強敵かぁ!強敵だねぇ!
ならさぁ、ボクの手柄になってくれよぉ!

☆戦術
先制攻撃を『野生の勘』で『見切り』回避跳躍、暴風を『空中戦』で華麗に避けながら『クイックドロウ』で飛来する危険物を撃ち抜き迎撃!
「当たらないんだよぉ!」
そしてすかさずUC【ハルシオン起動】で愛機に搭乗!
スラスターを吹かせ巧みな『騎乗・操縦』技術で高機動『空中戦』をしながら敵の攻撃を『野生の勘』で『見切り』躱して、ハイ・ビームライフルを『クイックドロウ』で『二回攻撃』して乱射したり、接近して『怪力』機構でビームサーベルを振るい『カウンター』で斬り裂き、突き刺して『傷口を抉る』よ。
「死んじゃえぇぇ!」
※アドリブ歓迎



 花びら舞い散る足場の上、ウインドゼファーは己が身体を一瞥した。思いのほか消耗したとはいえ、まだ戦闘は十分に続けられる。再び唸りを上げる車輪剣を構え、暴風が次なる猟兵を迎え撃つべく吹き荒れた。
「次は貴女が相手、ですか。」
 射貫くような視線の先、相対するはゾーク・ディナイアルの姿。

「キャハハハハハ! 強敵かぁ! 強敵だねぇ!」

 どこか狂気を滲ませる笑い声を上げながらゾークが走る。しかと倒すべき敵を見据えながら。

「ならさぁ、ボクの手柄になってくれよぉ!」

 その姿にウインドゼファーを取り巻く暴風が一層強まった。
「その力が貴女にあるならば。ですが、なければ……」
 一呼吸にも満たない間、幾重にも重なり吹き荒れる暴風が足場ごと花びらを巻き上げゾークに襲い掛かる。
「これで終わるだけです。」
 ただでさえ見えぬ風を躱すのは難しい。それが一陣ではなく、異なる風が折り重なっているなら尚の事。ウインドゼファーが放った【レボリューション・ストーム】はさながら風の暴壁の如く、ゾークを飲み込まんとしていた。だが、ゾークは荒れ狂う暴風の中に身を躍らせる。

「当たらないんだよぉ!」

 風と風の隙間、わずかに威力の弱い断層を己の勘を頼りに見切ってゆく。暴威に引きずり込まんとする暴風の渦が身体を軋ませるも、わずかな活路を縫うように暴風を華麗に舞うゾークを落とすには至らない。風に巻き上げられた足場が飛んでくるのを試作型魔導拳銃《スタイン》を抜きざまに放って砕き、それを踏み落としてさらに跳ぶ。
「死と紙一重の事を躊躇わずするとは……!」
 僅かでの見切りを誤ればたちまち暴風はゾークの身体をひき潰していただろう。或いは、躊躇いが動きを鈍らせても同じだったかもしれない。死線を抜けたゾークを落とすべく暴風を操るウインドゼファー。再び放たれた風が届くより先に、ゾークの背後には巨大な灰銀色の人型機動兵器が現れていた。

「さぁ! お返しといこうかぁ!」

 【ハルシオン起動】により開いた胸部からゾークが風に舞うように乗り込んだ。暴風を潜った身体のあちこちが鈍く痛むが、四肢はまだ動く。ハルシオンを駆るには何の不足もない……そう、口に笑みを刻みながらゾークは胸部装甲を閉じた。主を乗せたゾークの愛機ハルシオンがスラスターを吹かして嵐を突き進む。ゾークにならば十分な威力だったであろう暴風は、しかしハルシオンの巨体を落とすには至らず。
「見誤りましたか……ですが、その巨躯で私の風を避けられると思わぬ事です。」
 ハルシオンを落とすべく、より強さを増した暴風で迎え撃つ。その風を貫くようにハイ・ビームライフルが乱射された。ウインドゼファーの暴風はビームにすら影響するのか、僅かに逸らされ躱される。だが、そのビームの軌跡で暴風の渦を見切り、ゾークはハルシオンをさらに加速させる。

「捕まえたぁ!!」

 突き進む速度を落とさず振るわれるビームサーベルがウインドゼファーの構える車輪剣と拮抗する。そのままハルシオンの巨体と怪力機構による力で押し斬らんとするゾークに、ウインドゼファーが暴風を纏わせた車輪剣が唸りを上げて押し返さんとした。
「正面からの力押しなど……!」
 横殴りの暴風がハルシオンの体勢を僅かに崩す。ウインドゼファーの右腕に直結されている車輪が風をも巻き込みながら轟然と回転し、ビームサーベルの切先が身をひねり躱すウインドゼファーの肩を掠めた。振り抜いたサーベルの勢いのまま反転したハルシオンのハイ・ビームライフルが再び乱射される。

「この距離ならさぁ!」

 暴風で逸らす事は出来まい。されど、スピード怪人の名は伊達ではない。暴風纏う車輪を振い、躱しきれないビームのみ轢き散らしてウインドゼファーは逆にゾークに向かい距離を詰める。対するゾークもハルシオンを吶喊させた。互いが激突するまでのわずかな間、だがそれはお互いが相手の攻撃をいなし自分の一撃を入れる刹那の読み合い。わずかでも傷を負わせた右肩を狙い、ゾークがハルシオンのスラスターを吹かして機体を滑り込ませるように捻る。ウインドゼファーはゾークの動きを読み、左の車輪剣を受け流すように添え右の車輪で轢き裂かんと突き進む。

「死んじゃえぇぇ!」

 ビームサーベルを阻む車輪剣、暴風でそのまま受け流そうとした左腕が僅かに圧される。万全の状態ならば弾き返せた一撃、だが先の猟兵から受けたダメージがその力を僅かながら削いでいた。
「く……っ!」
 ハルシオンに唸りを上げる車輪が突き込まれ、暴風が吹き飛ばす。だが、ウインドゼファーも振り抜かれたビームサーベルに斬り飛ばされた。じわりと広がる右肩の痛み。
「手を抜いたつもりはありませんが……」
 右腕は動く。まだ、車輪剣を振うには問題あるまい。だがウインドゼファーは改めて猟兵の力を感じていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

サンディ・ノックス
早く重いであろう斬撃と竜巻
僅かな無駄な動きでも致命傷になりかねない
相手の動きに神経を集中させ、急所に当たるのだけは【見切】って防がないと
暗夜の剣を構え、弾き飛ばされないよう【怪力】で持ちこたえつつダメージは【オーラ防御】で耐える
痛みのあまり動いて隙を作るわけにはいかない、【激痛耐性】も駆使

UC「黒化装甲」発動
負傷しての戦いなら短期決戦だね
戦意は衰えない、口元の血をぺろりと舐めて笑う

朔を【投擲】、高速回転中のタイヤが巻き込むのを期待
続いて暗夜の剣を大剣に変形させ斬りかかる

敵の攻撃は先制攻撃を耐えた方法や【フェイント】で躱しつつ【カウンター】を仕掛ける
傷をつけたら以降の攻撃は追撃し【傷口をえぐる】



 花びらの舞い散る足場を踏みサンディ・ノックスは前方に立つ強敵、ウインドゼファーを視界に収めた。風を操るユーベルコードの使い手、その一撃はどれも早く重い。先の受けたダメージの具合を確かめるように緩やかに回転していた車輪が、その勢いを増していく。
「この程度の傷ならば、貴方を相手取るのに問題はありませんね。」
 ウインドゼファーがそう言ちながら、サンディへ視線を向ける。肩の車輪のみならず、両手の車輪剣や踵の走輪までもが高速で回転を始めた。その回転に巻かれるように渦巻く暴風が強まった瞬間、ウインドゼファーが両手の車輪剣を振り抜いた。その剣閃はたちまち2本の竜巻となり、サンディに襲い掛かる。

「思ってた通り、早い……!」

 そんな思考をする間もなくサンディは暗夜の剣を一閃し、竜巻を裂いていた。嗤うように渦巻く竜巻の風圧を落とすも全てを霧散させるには至らず、サンディの身体を打ちのめし真空の刃で切り裂いていく。だが、致命傷は避けるように威力は削いだ。戦うには問題のない負傷に抑えている。

 相手の動きに神経を集中させ、急所に当たるのだけは見切って防がないと。

 嗤う竜巻を斬り散らしながらも意識はウインドゼファーを捉えている。ただ竜巻を放つだけのような甘い相手ではなく、すでにウインドゼファーは足の走輪で地を削りながら高速で斬りかかってきていた。
「私の嗤う竜巻を凌いだ腕前は見事、ですが……!」
 車輪剣が続けざまに振るわれる。袈裟懸けの一撃を暗夜の剣で流す。強い衝撃と振動がサンディの腕を震わせた。続いて薙ぐように振るわれた車輪剣が脚を抉る。咄嗟に半歩引き、オーラで減衰したため浅く削られるに留まったが、痛みにふら付きそうになる。だが、痛みのままに動いて隙を作るわけにはいかない。

「僅かな無駄な動きでも致命傷になりかねない。」

 車輪剣の連撃、そこからさらに竜巻が生まれる。ふら付いてなどいたら、たちまち空高く巻き上げられていただろう。サンディは自分の身体を走る激痛ごと抑え込むように、竜巻を叩き伏せた。
「なかなか耐えますね。」
 だがこれで終わりだと、ウインドゼファーは車輪剣をサンディの身体に振り下ろした。

「いいや、まだだ。」

 剣が打ち合わされる音が鳴る。先ほどまでとは明らかに違う速度、力で暗夜の剣が車輪剣を受け止めていた。サンディの全身が【黒化装甲】により魔力で覆われる。それは悪意が変じた魔力、己が傷をすら力に変える装甲。

「負傷しての戦いなら短期決戦だね。」

 全身に傷を負ってなお衰えぬ戦意を胸に、サンディは口元の血をぺろりと舐める。その口の端は笑みを刻んでいた。増していく力のまま車輪剣ごとウインドゼファーを圧し飛ばし、体勢を整える間も与えずに漆黒のフック付きワイヤー・朔を投げ放つ。咄嗟に切り落とそうとしたウインドゼファーの右腕が軋む。朔は車輪剣の片方に食い込み、高速回転する車輪がワイヤーを巻き込んでいく。
「小細工などッ!!」
 鈍くなった回転に舌打ちしながらも無事な車輪剣を振い竜巻を放つ。強まる風に斬り込むように距離を詰めるサンディが剣を一閃する。その漆黒の刀身は見る間に巨大化し、大剣となって竜巻を突き抜けた。身を打ち切り裂く風がサンディを苛むも、その行く手を阻むには至らない。むしろその痛みすら力に変え、サンディの剣閃がウインドゼファーに放たれる。防ぐため打ち付けられた車輪剣すら弾き退け、その切先がウインドゼファーの胴を斬りつけた。サンディの追撃を防ぐためウインドゼファーの振った車輪剣を翻した剣で僅かに逸らしその剣身を遡るように再度剣を奔らせる。

「ぐ……っ!」

 漏れた声はどちらの物か。ウインドゼファーの車輪剣はサンディの肩に叩き込まれ、サンディの剣は先ほどの傷口に抉り込まれていた。オーラで防御し、さらに抉った傷から吸い取った生命力でまだ身体は動く。ならば為すべき事など決まっている。けたたましく嗤う暴風が吹き荒れ、朱のさす漆黒の刃が舞う。打ち合う剣戟の応酬は激しさを増していく。
「これで……!!」
 その終局、叩きつけた車輪剣が受けた暗夜の剣ごとサンディを打ち据える。致命傷を避けていたとはいえ度重なる応酬で受けた傷は浅くなく、流した血も少なくない。巻き上がる風に抗う力は残されておらず、サンディは吹き飛ばされた。だが、ウインドゼファーの受けた傷も決して軽くはない。忌々し気に車輪剣に絡んでいたワイヤーを引きちぎり、ウインドゼファーは息を吐いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

オウカ・キサラギ
さすがの強敵だ!真正面から勝つのは難しいね。
ならボクは搦め手でいかせてもらうよ!

UC【桜花驚乱・狂裂】は敵がボクに「呆れる」ことが条件。
ということで余裕な表情で武器すら抜かずに【挑発】するよ!
「強敵って聞いてきてみれば、なーんだたいしたことなさそうじゃん」って感じで敵の攻撃をあえて受けるように動くよ。
敵が「何しに来たんだこいつ」って呆れるように無様にふっ飛ばされての演技だ!がんばるぞ!
さらに攻撃が被弾する瞬間を【見切る】【オーラ防御】で被害を抑える!
成功すれば隙は生まれるから【激痛耐性】で無理しながらでもスリングショットを撃つよ!
【属性攻撃】【クイックドロウ】でこれでもかってくらいにぶち込む!



 ウインドゼファーが身体から滴る血を拭う。すでに三度、猟兵と戦い、未だ倒れる事無く門番として立塞がっている。今までの戦闘で傷を負ってなお、その視線は戦意を失っていない。

「さすがの強敵だ! 真正面から勝つのは難しいね。」

 その姿を遠目にオウカ・キサラギはどう攻めるか思案する。真っ向勝負が難しいなら、他の手を取るしかない。

「ならボクは搦め手でいかせてもらうよ!」

 一計を胸に秘め、オウカはウインドゼファーに向かい歩を進めた。

「次は貴女が相手となりますか。」
 自身の消耗はおくびにも出さずウインドゼファーは車輪剣の切先、猛り回転する車輪を向けた。対するオウカは武器すら抜いていない。構えすら取らぬその姿にウインドゼファーの脳裏に様々な可能性が過ぎる。無為の構えという訳でもなさそうだが……探るような視線、だが手の読み合いなど埒の外とでも言うようにオウカは肩をすくめた。

「強敵って聞いてきてみれば、なーんだたいしたことなさそうじゃん。」

 まるで物見遊山に来たかのような物言い。いっそ場違いともいえる言葉にウインドゼファーの向けた車輪剣が揺れる。
「猟兵の力、侮るべきではないと思っていましたが……」
 どこか落胆を滲ませながら暴風が渦巻く。身体の各所で回転を早める車輪は、もはや語る事はあるまいと轟然と猛り。
「あえて私の前に立ちながら、何のために来たかも分からないと見える。」
 【ソード・オブ・ダイアモード】により全タイヤを高速回転させながら両の車輪剣を振り抜く。暴風が渦を巻き、嗤うように吼えたてた。
「貴女には、心底呆れました。」
 放たれる2つの竜巻は足場の花々を撒き散らしながら飛び退く間すら与えずにオウカを飲み込んだ。巻き上げられながら、暴風と真空の断層が荒れ狂う中を無様に吹き飛んでいくオウカ。だが、全身に傷を負いながらもその口元には笑みが浮かんでいた。

「なーんてね! 呆れた瞬間、君は負けたんだよ!」

 花が舞う。美しく吹雪く桜の花が。だが、システム・フラワーズの足場に桜などあっただろうか。その花弁がウインドゼファーへ届いた時、花弁から魔力の斬撃が放たれた。
「これは……!?」
 オウカの放った【桜花驚乱・狂裂(オウカキョウラン・クルイザキ)】により喚ばれた花は呆れの感情を抱く者にその刃を振う。ウインドゼファーは不意打ちともいえる攻撃を高速回転するタイヤに当て弾いた。それでも減衰しきれずに薄く傷が刻まれていく。

「その隙、逃さないよ!」

 オウカはただ吹き飛ばされたわけではない。竜巻の流れを見切り、オーラを纏う事で負傷を抑えながら無様に吹っ飛んだように見せていたのだ。すべてはこの時のために。【桜花驚乱・狂裂】にウインドゼファーの意識が割かれた隙に攻撃を集中的に叩き込む。いまだ竜巻の中に在るオウカは全身の痛みを押さえつけ、スリングショットを構えて矢継ぎ早に撃ち続けていった。その弾丸は迅雷の如く暴風を裂き、驟雨の如くウインドゼファーを打ち付ける。
「まさか、侮っていたのは私だった、と……ッ!」
 桜の花が舞い斬撃が飛ぶ中を潜り抜け、降り注ぐ弾丸に竜巻をぶつけて散らす。それでも抜けてくる攻撃を車輪剣が弾き、タイヤが逸らしていく。それでも全てを防ぎきれた訳ではなかった。赤の面、右の頬を斬撃が掠める。急激な回避行動がたたったか、胴の傷口から血が服を赤く染めていた。
「まだ……!!」
 金属の擦れるような耳障りな音が響いた。弾丸を叩き落すべく振るった車輪剣、その車輪の動きが鈍い。回転の弱まった車輪では威力を殺しきれずにウインドゼファーの身体に叩き込まれた。その車輪の接合部から覗くはワイヤーの切れ端。だが、無理を重ねているのはオウカも同じだった。強敵であるウインドゼファーにスリングショットから放った弾丸が命中したのを見、さらに続けて放とうとするも身体は限界がきていた。竜巻ごと花の足場に叩きつけられたオウカの意識が刈り取られる。一方のウインドゼファーも消耗が激しい。全身のタイヤは酷使により白煙を上げ、車輪剣の片方はその回転を止めていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

三千院・操
欲を以て欲を制する。……成程、良く考えましたね。
ですが、欲というものは持ちすぎれば身を滅ぼします。身に余る力が自滅を招くことと同じように。もしも欲を飲みきれなかった時、貴方はどうするつもりですか?
何れにせよ、貴方の行いを看過するわけにはいきません。
ここで、落とさせてもらいましょう。

【閃光黙示】を使用して回避を試みます。回避が間に合わなさそうであれば高速詠唱と呪詛を利用して防壁を展開、凌ぎます。呪詛とは即ち魔術の言語。幾重にも張り巡らせて多重防壁としましょう。
その後は「The Healer」にも雷を纏わせ属性攻撃を行います。

雷と風、どちらが疾いかご存知ですか?
失敬、貴方にとっては愚問でしたね。



「欲を以て欲を制する。……成程、良く考えましたね。」

 強く吹く風音にかき消される事なく届く声にウインドゼファーは面を上げる。風に舞い散る花を踏みしめて歩みを進める三千院・操はウインドゼファーの満身創痍と言える姿にさらに言葉を続けた。

「ですが、欲というものは持ちすぎれば身を滅ぼします。身に余る力が自滅を招くことと同じように。
 もしも欲を飲みきれなかった時、貴方はどうするつもりですか?」

 ウインドゼファーの握る車輪剣の柄が鳴る。かつて抱いたかもしれない想い、その果てに見た物。それらが過去の光景だとしても。
「それでも、進まなければ得られるものはありません。その結果ならば……」
 ウインドゼファーの纏う風が強まり、轟々と吼える。極限まで高まる風圧が【レボリューション・ストーム】となって放たれた。

「何れにせよ、貴方の行いを看過するわけにはいきません。」

 足場を砕きながら広がる暴威を、その中心に在るウインドゼファーをしかと見据えて。

「ここで、落とさせてもらいましょう。」

 操の身体に雷が奔る。【閃光黙示(ラミエル)】は雷による肉体強化、そして未来の幻視を可能とする。だが未来を視る故に強化が間に合わない事も、対抗策なく受ければそれで勝敗が決する未来も見えていた。顎で呑み砕くが如く迫る暴風を前に、操の唇が呪詛を紡ぐ。その言の葉の一言一言が防波堤の如く暴風を打ち砕き、その力を削いでいった。

「呪詛とは即ち魔術の言語。幾重にも張り巡らせて多重防壁としましょう。」

 防壁となるのは守りの力だけではない。攻撃を冒して殺ぎ落とせば同じ事。操の前に広がる呪詛が襲い来る暴風を減衰させる。それでも暴風は操の身体を引き裂かんと軋ませ、吹き飛ばされてくる足場が瓦礫となってその身を打ち据えた。その只中に在ってなお、操は一歩踏み出す。

「開示せよ。」

 暴風を裂くように雷が閃く。バラバラに崩れ行く足場を蹴り、雷を纏った操がウインドゼファーへ一気に距離を詰めていく。
「……ッ!! なんという速さ!!」
 スピード怪人をしてそう言わしめる速度。だが、ウインドゼファーとて容易く接近を許すつもりはない。回避するスピードを持つ相手ならば、回避できぬほど重ねて放てばいいだけの事。続けざまに放たれる暴風がさながら乱気流のように襲い掛かる。だが操は複雑に入り乱れる風の流れを、自らに起こる未来を幻視しながら的確に読み、対処していった。致命となる風を強化した身体能力で躱し、躱せぬならば呪詛を展開して威力を殺ぐ。それでも操の身体には傷が増えていくが、その足は止まらない。

「雷と風、どちらが疾いかご存知ですか?」

 距離を離そうとするウインドゼファーの眼前で、雷を纏った大鎌が閃いた。受け止めた車輪剣がギシリと軋む。

「失敬、貴方にとっては愚問でしたね。」

 操が振う大鎌『The Healer』が雷を纏い、暴風の中を雷光の如く斬り裂く。幾度となく打ち合わされる大鎌と車輪剣。
「まだ……まだ!!」
 激しさを増す応酬、お互いに相手を屠らんと全力を賭している。
「私は、まだ何も……!!」
 打ち合わされた雷に、車輪が火花を散らして剣先から落ちる。打ち下し、翻って右下から切り返す雷光にウインドゼファーの反応が僅かに遅れ。

「これで、終わりです。」

 操の『The Healer』の刃がウインドゼファーを裂いていた。
「何も、手に出来ず……ですか。」
 崩れ落ちるように膝をつき、誰へともなく呟く言葉。面の右頬の傷跡から赤い欠片が一つ、欠け落ちた。その言葉を最後に、ウインドゼファーは倒れ、消えてゆく。
 システム・フラワーズを巡る戦いはまだ続いている。この場の勝利を胸に、猟兵たちは次の戦場へと向かうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月23日


挿絵イラスト