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バトルオブフラワーズ⑪〜その風は疾風怒濤の如く

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ #ウインドゼファー

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「皆、お疲れ様」
 ホワイトボードに新たな資料を貼り付けながら、ラビットバニー戦から戻った猟兵達に告げる瑠璃凰花・未来(神避の熾天使・f13139)。
「うさぎもどきなラビットバニーが倒されたことで、新たな道が開けたわ」
 貼り出された資料は、やはり予知から描き出したのだろう、そこそこ上手いイラスト。
 他には、現在の戦争の状態を纏めたのであろう資料がいくつか貼り出されていた。
「ウィンドゼファーって言うそうね。見た目まるでバイクね? 男みたいな見た目だけれど、女らしいわよ」
 その言葉に驚き、声を上げる何人かの猟兵達。
「驚くのも無理はないわね、私も驚いてるもの」
 それもそうだろう、バイクと言うと男性なイメージがある上に、全体的にスレンダーな印象のあるのだ。
「まぁ、そこは良いわ。彼女の力は『風を操る』ことみたいね。スピード怪人、というだけあって、誰よりも早くあろうとする欲がかなり強いみたい。その欲をかくだけあって、実際相当に早いわ」
 その速さはまさしく風の如く。いや、疾風怒濤の如く、と言う方が正しいだろう。
「あれ、どれくらい出てるのかしらね? マッハは行ってないと思うけれど……」
 少なくとも、未来の知る範囲では例えとして出せる車両は思い当たらない。しいて言えば、毎時500kmを超える速度を出せると言われるリニアモーターカーですら敵わない速度かもしれない、ということだ。
「そんな存在だから、速度ではまず勝てないと思ったほうが良いんじゃないかしらね」
 それでも速度で挑もうというのなら、それは猟兵の自由だろう。
「やることはこれまでと変わらないわ。怪人が護る花の道を切り開くために、倒すこと。それだけよ」
 システムフラワーズへのルートを作る花の道はエイプモンキー戦、ラビットバニー戦と変わらず、横道はない。また、あるのは花のみで、構造物は愚か、花以外の植物は一切存在しない空間だ。常に花が舞っている以外は特別なことはなにもないだろう。
「時間稼ぎだなんて言ってたし、早期撃破が好ましいけれど、倒すのを焦るあまりその速度を持って絶対先制してくるっていう点を忘れないようにね。風を使った攻撃を仕向けてくるだろうから、それに対する対策は万全にすること。それが出来なきゃ、何も出来ずにとんぼ返りすることになるわよ」
 そう言って、水晶玉に念を込める。
「あ、そうそう。能力を使った攻撃の応用とかで、鎌鼬を使った斬撃なんかのユーベルコードを伴わない攻撃なんかも振るってくるから気をつけたほうが良いわよ」
 魔法陣を展開し、その状態を維持ながら、そう付け加える。
「それじゃ、健闘を祈るわね」
 そうして、転送の魔法陣を活性化させた。


るっこい
 はいどうも、新人マスターるっこいです。第16作目、キマフュ戦争4作目となります。
 まずは公式からの注釈です。

====================
 敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
 この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。
====================
 戦場の戦力「40」をゼロにできれば制圧成功ですが、それ以上の成功数があった場合、上回った成功数の半分だけ、「⑬『ドン・フリーダム』」の戦力を減らせます。
====================

 では、解説。

●第1章
 ウィンドゼファーとのボス戦のみとなります。
 OPにもあります通り、猟兵がマッハに至るでもない限りは速度ではまず勝てません。逆に言えば、マッハを超えれば簡単に勝てる相手ということになりますが……それはそれです。
 今回は先制攻撃されるという点以外は特殊ギミックがなくかなり素直です。先制攻撃に対する対策を万全にしていれば、倒すことは難しくありません。
 ※普段るっこいの依頼に参加してくれる方に注釈です。普段は結構な頻度でMMORPGのスキルをMP解かして連打するようにユーベルコード乱射、なんてことをよくやるるっこいですが、今回はプレイングに指定がない場合1度きりの使用となりますことはご了承ください。

●プレイングについて
 同行者の方がいる場合は1行目にお相手さんのお名前とID、もしくはグループ名をお書きください。お名前の場合はフルネームでなくて構いません。
 絡み歓迎、アドリブ歓迎、連携歓迎の方、字数に余裕があればお書きいただけると助かります。ステシでもOKです。とてもとても書きやすくなります。
 また省略文字もご利用いただけます。詳しくはマスターページを御覧くださいませ。

 まだまだ不慣れな部分が多く拙い文章になってしまうかもしれませんが、よろしくお願いします。
 皆様の素敵なプレイング、お待ちしております。
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第1章 ボス戦 『スピード怪人『ウインドゼファー』』

POW   :    フルスロットル・ゼファー
全身を【荒れ狂う暴風】で覆い、自身の【誰よりも速くなりたいという欲望】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    ソード・オブ・ダイアモード
対象の攻撃を軽減する【全タイヤ高速回転モード】に変身しつつ、【「嗤う竜巻」を放つ2本の車輪剣】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:藤本キシノ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アリス・フェアリィハート
アドリブや他の方との絡みや連携も歓迎です

遂に三人目の幹部さんが…

ウィンドゼファーさんの
スピードには
今の私の力では…
…それでも
何とか戦わなきゃです…!

敵の先制攻撃は
【第六感】や【見切り】
【早業】をフルに
活用してUCを発動
相殺を試みます

何とか相殺できたら
再度【早業】で攻撃に転じ
自身の剣
『ヴォーパルソード』で
【属性攻撃】や【なぎ払い】
【2回攻撃】での時間差攻撃
等の剣戟や
剣からの【衝撃波】
剣の光焔の【誘導弾】等の
遠距離攻撃で
可能な限り
行動範囲を狭める等しつつ
攻撃

敵の攻撃は
【第六感】【見切り】
【残像】【オーラ防御】等で
防御・回避
少しでもダメージ軽減
出来る様に

『すごいスピードです…けど…頑張らなきゃ…!』



「……来ましたか」
 無言で佇むウィンドゼファー。花びら舞い散るその場所で、彼女はただ一人、佇んでいた。
 風の噂を聞きつけてか、こまねいていた腕を解き、バイクの車輪のようなその武器を手に取る。
 そして、エンジン音を唸らせ、その武器を初め体の各所に存在する全てのタイヤを高速回転させ始めた
「――ふっ!」
 刹那のタイミングで放たれる、嗤うような竜巻。
「もう攻撃が……!?」
 離れた位置に転送されていたのが幸いした。相対したアリス・フェアリィハート(猟兵の国のアリス・f01939)は迫る竜巻に即座に気づく。嫌な予感がしていた、という点も彼女を行動させるのに十分な理由と言えた。
 《アリスと不思議の国の鏡》を繰り出し、敵が放つ嗤うような竜巻を繰り出す。
「風に風で対抗、ですか」
 タイヤを高速回転させたまま、鼻で笑うゼファー。
「いいえ、違います。白の女王の鏡に、映らないものはありません……!」
 答えるアリス。竜巻の行方を追わず、そのまま真っすぐゼファーに迫る。
 2つの竜巻は、周囲の花を巻き上げながら互いに迫り。
 答えの意図を理解できない様子を軽く見せるが、しかし気にすることはしない。
「あなたは少し、風というものを知らなすぎるようですね」
 頑なにその場を動かないゼファー。彼女の視界に映るのは、自身とアリスが放った、2つの竜巻の行方。
 それらは、回転方向はもちろんのこと、勢力や速度までも全く変わらない。ゼファーが1つしか放たないのは、とある理由からだ。
「っ……!」
 何かを感じ、アリスは咄嗟に急制動を駆け、隙を晒すことも構わず咄嗟に横に飛んだ。
 その横で、2つの竜巻がぶつかるその瞬間、突然2方向に吹っ飛んだ。そのうちの一つが、アリスを掠めていく。
「強力な勢力を持つ風の塊というのは、私にも想像できない動きをします。今のは相反した形ですね。風同士がぶつかり、相殺し合うことは決してありえないのですよ」
 そう、1つ放たないのは何も能力による制約ではない。自身が考えうる動きをさせられる範囲が、1つまで、ということに過ぎない。その気になれば、100でも1000でも放てるのだ。
 そう言いながら、ゼファーは転がるアリスに向けて2本の車輪剣を唸らせ、迫る。
「そう言うあなたこそ、油断がすぎるみたいですね……!」
 アリスが隙を晒すことも構わずそうした理由。
「これは……!?」
 驚きの声を上げるゼファー。そこに居たのは、鏡写しの自分。
「私は言ったはずです……白の女王の鏡に、映らないものはないと……!」
 それは、アリスが繰り出した《アリスと不思議の国の鏡》の効果。
 相手の繰り出すユーベルコードは、その気になれば1回で持続し続ける技だ。つまり、アリスの相殺させようという能力も、持続し続けることになる。
 そしてそれは、2つの車輪剣同士がぶつかったことで、完全に相殺させたのだろう、鏡写しのゼファーが消えていく。
「小癪な……!」
 先程の圧倒的な回転力はないが、それでもエンジン音を唸らせ鎌鼬で攻撃を図る。
「すごいスピードです……けど、頑張らなきゃ……!」
 自身に言い聞かせるように、とてつもない速度で迫る攻撃を冴える勘となんとか見える影を見据え、回避。
 同時に、入れ違いになる形で、背後に向けて白銀の鋭い刃を閃かせる。
 ゼファーも鎌鼬を飛ばしこれに応戦。風の刃と衝撃波は互いにぶつかるも、風の刃が押し負ける。それは、後から放たれた2つ目の衝撃波によるもの。
 ゼファーの肩を切り裂く衝撃波。更にそこへ、光焔の弾が飛来し、追撃する。
「くっ……」
 十分に負傷させた、そう判断したアリスは、敵の速さのことも考え、後を託し撤退した。

成功 🔵​🔵​🔴​

イヴ・クロノサージュ
▼対策

WIZは攻撃寄りの防戦戦闘術ね

全タイヤ高速回転モードにより、
車輪剣が高速回転して2回攻撃してくる

ダイアモードの特記すべき特徴は
このモードの攻撃速度は《最速》
移動速度は《常速》

つまりこちらの移動速度を相手よりも早い状態で接近させない事を
重点に置いて対策する事が最も重要!

▼戦闘開始

さて、向かってくるわね!
搭乗している魔導巨兵を操り後方へ加速させます(操縦)
一定距離を開けつつ、攻撃を予測し回避(見切り)

バーニアを噴かせ上空へ跳び(空中戦)
そこで光学迷彩を仕掛け(迷彩)
《ブラスターアーム》によるビーム攻撃で
脚周りのタイヤを狙うわ(属性攻撃=光熱、鎧無視攻撃、鎧砕き)

攻撃後は、そのまま戦線を離脱よ



「次から次へと……」
 撤退していく猟兵を深追いはしない。再び風のうわさを聞きつけ車輪剣を唸らせるゼファー。
「さて、向かってくるわね!」
 相対するはイヴ・クロノサージュ(《機甲天使》変幻自在の魔導者・f02113)。向かってくるのを視認して魔導巨兵を呼び寄せようと行動に出るが――
「え?」
 その次の直後には、頬に何かを受けた。
「っ……早い!」
 魔導巨兵を召喚することを一旦諦め、その身に迫る見えない無数の攻撃を巧みに回避する。
 見えない攻撃を相手にそれが出来るのは、宙を舞う花が瞬時に切り裂かれるのを見てか。
「浅はかですね。離れていれば私より先に行動できたとでも?」
「っ……」
 それらの鎌鼬と共に風に乗り近くまで移動してきたゼファーを生身で見据える。本当なら、魔導巨兵に乗り込んだ状態だったはずなのだが、その状態での転送は出来ない為に、離れた位置への転送を行ってもらったのだ。しかし、それも失敗に終わった。
「でも、離れてればあなたは私を倒せない……倒せてるなら、既に倒してるわ」
 ゼファーの言葉を指摘しつつ、後ろ手に隠し手にしたクロユニ専用スマホから魔導巨兵を呼び寄せる。
「なるほど、確かに。アナタの言い分も間違いではないですね……けど、こうなってしまっては、既に決したも同然では。でなければ、あなたは離れた位置に現れていないでしょう?」
 そう口ではいうゼファーだが、その行動や声音に同様の素振りはなく。続く言葉で図星を指され、妙な声を出しそうになるがぐっとこらえた。
「では、決着をつけて差し上げます。逃げるなら今のうちですよ?」
 そう言って、少し回転力を抑えていた車輪剣を唸らせ始めた。
「これを避けれるなら、避けてみなさい」
 その言葉と共に放たれる嗤う竜巻。
「いいえ、その必要はないわ」
 真剣な表情でゼファーの言葉に返すイヴ。その竜巻は、突然何かに切り裂かれたかのように霧散する。
「……それがアナタの。なるほど、確かに厄介ですね」
 目に見えないはずの存在を認識しているかのような素振りを見せるゼファー。竜巻を霧散させたのは、イヴが呼び寄せた魔導巨兵。光学迷彩によって視覚的に捕らえることは出来ないが、そこに何かいることだけはわかる。
「行きますよ……!」
 素早く魔導巨兵に搭乗したイヴ。己の騎士を信じ、まずは一度バーニアを吹かせて空中へ。
「相手が巨体だろうと変わらないですね」
 そう言って、ゼファーは更に強く車輪剣を唸らせると、片方から巨大な竜巻を放ち、もう片方からは巨大な鎌鼬を生み出した。それは、光学迷彩で姿を隠蔽しているこちらの居場所を完全に把握しているといった素振りの攻撃だ。
「視覚的に隠れようが、質量それ自体は隠せません。空気を割って進む存在である以上、私の目を暗ますことは不可能ですよ」
 そう、実際に把握していた。風とは、空気の流れ。つまり、空気そのもの。それを動かすことも、止めることもまた彼女の自由。ならば、広い範囲の存在を認知することも容易いということだ。
 その巨大な攻撃は完全にこちらの魔導巨兵に合わせた大きさ。喰らえば一溜まりもないことは安易にわかる。距離を取りつつそれらを安全に躱したイヴは、その位置からブラスターアームを構え、ビームを放った。
「おっと……」
 認識はできても、目に見えないという要素は大きいようだ。既でのところで躱したゼファーだが、足の一部掠め、を焦がされた。
(「……ダメです、出直しましょう」)
 イヴは、そのまま攻撃を続けることを断念。そのまま更にバーニアを吹かせ戦線を離脱した。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

クー・フロスト
▼対策

WIZ攻撃は
全タイヤ高速回転モードで
攻撃速度は《最速》かつ速度は《常速》
かなり厳しいが《フルスロットルではない為》
ギリギリ目視できる速度で突入してくるという事だな

速度500m対応しうる速度を持つ者は少ない…
私は無理だぞ
対策を講じねばな…。


車輪による移動は
床面が頼りだ
つまり凍結させればスピンさせる事が出来るな

使用判断は瞬時で行う
来たと思ったら即発動

扇状にUCを放つ、床面を凍結させる
ヤツの侵攻√のみ凍結


凍結させる氷にところどころ凹凸が出来る様に
巧妙な罠を仕掛け(罠使い)
大クラッシュによる自滅を狙う

ダメージは速度500mで事故した分だから
相当であろう

周囲は大雪原&綺麗な花畑となっているだろう



「次は、そちらですか」
 やはり去っていく猟兵を追うことはなく、次に現れる猟兵に気づくゼファー。
「今度はこの剣のサビにして差し上げましょう」
 そう言って、足につくタイヤと車輪剣を花の道に接地させ、急加速。車輪剣の刃は引っ込めることが出来るらしう、刃が見えない状態になっていた。
 追い風を伴わせ、更に進行先の空気を逃して擬似的な真空空間を作り出しながら、転送された猟兵、クー・フロスト(《疑心の姫君》かつて甦生氷姫と呼ばれた者・f08503)へと迫る。
「来たかっ……! 纏めて氷になってしまえ!《フロストシュネーヴァイス》」
 そう思うと同時には、花の道目掛け扇状に氷結させる極太のビームを放つ。
 瞬く間に花の道を凍った路面に変化させていくクー。その長さは、とにかく限界まで引っ張った。
「何処目掛けて撃って……これはっ……!?」
 クーの思わぬ行動に疑問符を浮かべていたゼファーだが、直ぐにそれは驚きへと転じた。
「車輪による移動は、路面が頼りだろう?」
 凍った路面に足を取られたのをしっかり見届けつつ、道を開けるように避けるクー。
「くっ……止まれ……!」
 見事にクーの思惑通り物凄い勢いで滑っていく。彼女の意図に反して、止まるどころか加速さえしていた。それは、自身が使った追い風の影響。即座にそれに気づき追い風を向かい風へと変化させ、更に引っ込めていた刃を出してスパイク代わりに強引に止まろうと試みる。だが、その行動は返って危険だった。
「しまっ……」
 それは、ツルッと呆気なく。擬似的な4輪車ではあるが、実際に4輪車というわけではない。
「自爆待ったなしだな」
 左手に持っていた車輪剣はすっぽ抜け勢いで何処かに滑っていき、支えを失ってそのまま転倒。
「あががっ、がが……がっ!?」
 それで止まるわけがなく、そのまま更に滑り続ける。
 その先には、クーが仕込んだ大小様々な凹凸。
 そこまで滑れば起きることは明白だ。その凹凸に合わせ軽い飛び跳ねを繰り返すゼファー。
 手足を使ってなんとか止まろうとするが、まるで氷に水をかけ再凍結したかのような状態のその場所は、抗えば抗うほどに自滅を招く。
「ふふ……後は他の猟兵に任せるとしようか」
 クーは、最後までそれを見届けることなくその場を離れる。
 ようやく止まる頃には、全身ボロボロの状態になっていた。
「やって、くれましたね、本当に……」
 氷の上に慣れていないのか、車輪剣の腕を使ってなんとか立ち上がれる程度のようで。いや、ぼろぼろな身体が言うことを聞かないのかもしれない。
 氷を生み出した張本人を探すが、既にその姿はなく。その周囲は雪原と雪の中に咲く花のコントラストが織りなす美しい世界が広がるのみだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

レクシア・ノーレッド
―ナノマシン強制駆動。制限開放。
…面白い相手だもの、持てる全てで相手しなきゃ損、でしょ!

【POW】

相手が強化するタイミングを《見切って》、私も自己強化をするよ!
相手の速度自体に追い付くことはできなくても、反応はできる筈!
通常攻撃の鎌鼬や車輪剣は液体の体を活かして、分裂したり合体したりすることで人には出来ない素早い回避を試みるよ。

そのまま《ダッシュ》と《見切り》を駆使して接近、可能な限り相手に触りにいくよ!
相手は金属のパーツが多いみたいだし、触る度に感電させて体力を削いでいこう。
距離を取られそうなら《2回攻撃》でUC【侵食/捕食】を狙おうかな。

持久戦なら、私だってできるんだよ!



「この状況で、また別の方ですか」
 風の力を使って取りこぼした車輪剣を回収しつつ、風のうわさで猟兵を見つけるゼファー。
 その周囲は、先の猟兵の影響でただの花の道ではなく、雪原と氷が広がる領域へと変じていた。
 遠くからは、一人の猟兵が向かってくる様子が見える。
「厳しい状況を強いられているようですが……ドン・フリーダムのため。絶対に通しません」
 そう言いながら、徐々に周囲の風を強くし始めた。荒れ狂う暴風を身に纏うつもりらしい。
「っとと、もう始まってるんだね。――ナノマシン強制駆動。制限開放」
 ゼファーのもとに辿り着く前にそれに気づいたレクシア・ノーレッド(『捕食者』・f01101)は、ゼファーのそれに合わせ自己強化を図る。
「――遅いっ!」
 それは、コンマ1秒にも満たない。100m以上の距離はあったはずだというのに、その距離を瞬きすら許さない速度で詰められた。
「おっと!?」
 言葉とは裏腹に車輪剣に切り裂かれる身体。しかし、その身体は直ぐに元通りになる。
「ブラックタールか……!」
「そのとおりだ!」
 既にその身体は《接続/解放》による高圧電流が流れている。その身体で、レクシアはゼファーに触ろうと迫った。
「っ――!」
 咄嗟の判断でレクシアの身体を切りつけつつ、そのまま攻撃を切り抜けた。
「逃さないよ!」
 離れようとするゼファー目掛け、手を伸ばすレクシア。高圧電流が流れる身体を避けるためだろう、無理な体制でレクシアの身体の間を通り抜けたことで、大きな隙を伴う回避行動となっていた。
「くっ……!」
 身体を方向け回避するが、空いた手をゼファーの死角から近づけていた。
「あばばばばばば!?」
 レクシアが触ったその瞬間、全身に走る電撃にビリビリにされるゼファー。しかし、全身丸焦げになっても止まることはない。風を使って強引にレクシアの手から逃れると、車輪剣を構え。
「ここです……!」
 相打ち覚悟。そのつもりで振るうゼファーだったが、ブラックタールであるレクシアにその攻撃は通らない。常にゼファーの攻撃には警戒を払っているためだろう。不定形の身体を活かして全てを綺麗に回避する。
「ならば……!」
 どうあがいても自身の攻撃は当たらない、そう考えたゼファーは、一旦距離を取ろうとその場を離れた。
「逃さないよ!」
 だが、それはレクシアも黙って見過ごすわけではない。
 右手から放たれる、雷魔法。
「くっ……」
 掠めながら飛んでったそれを視線で追いかけるゼファー。それは、命取り。
 左手から放たれた、《侵食/捕食》によるもう一撃が、空中で身動きの取れないゼファーに襲いかかる。
「捕まえたよ――それじゃあ、イタダキマス」
 雷魔法さえ当たれば、勝ちも同然。次の直後、全身を口のような形に変化させたレクシアは、ゼファーを丸呑みにした。
 がりっごりっ。おおよそ生物が立てる音ではない咀嚼音を立てる。
「ん、んんっ!?」
 暫くそうしていると、突然、口のような形のレクシアの両顎が、大きく膨らむ。堪えるレクシアだが、膨張する力に耐えきれなくなり、強引に口が開かれた。
「ぷはっ……はぁ、はぁ……」
「よもや、私を食べようは……」
 どうやら、風の能力で暴風を生み出しレクシアの体内を膨張させたようだ。
 そう言って距離をとったゼファー。対するレクシアも元の姿に戻る。
「……あれは、まずそうだね」
 それだけ大きく距離を取られれば、何が来るかわからない。肩部分の車輪を得られただけでも十分と判断し、その場から撤退するのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リーファ・レイウォール
▼WIZ
※連携可能なら連携ね

◆先制攻撃対策
【高速詠唱】と【全力魔法】のUCで双戟を召喚
敵の攻撃を【見切り】
2本の車輪剣には、20本ずつ召喚した双戟で【武器受け】

▼攻撃
正面で相対しつつ、敵の動きを見てタイミングを【見切り】
10本を残して、双戟を【誘導弾】で嗾ける
【鎧砕き】して防御を崩すわ
砕けないなら【鎧無視攻撃】で『全タイヤ高速回転モード』すら無視
【串刺し】にしてあげる
【スナイパー】で一点集中の波状攻撃

双戟の特性を活かせば、風を切り裂いて穿ち貫ける。絶対にね

残した10本は、敵を囲むように地面に穿つわ
そこへ雷【属性攻撃】の通常魔法を放ち『誘雷』
【生命力吸収】を乗せ、ダメージ与え敵の足下を崩すわ



「私の風からは、逃れられませんよ……!」
 ボロボロの身体に鞭打って、ゼファーは車輪剣を唸らせる。
「と言う割には、勢い衰えてるんじゃないの?」
 入れ替わる形でユーベルコードを詠唱しながら迫る、リーファ・レイウォール(Scarlet Crimson・f06465)。
「どうでしょうね……!」
 リーファの言葉に、ゼファーは強がりを見せながら、車輪剣を振るう。
 今までであればユーベルコードの詠唱すら許さないほどの速度で一撃を入れていた状態と比較すれば、だいぶ弱っているのは明白だろう。傷による影響もそうだろうが、度重なる連戦で、疲れも生じ始めているのだ。
「くっ……」
 ゼファーの攻撃は止まった。リーファとゼファーの間には、リーファが召喚したいくつかの双戟。
 強烈な一撃を受けたことで、いくつか折れて消えてしまったものの、なんとか攻撃は防いでいる。
「存分に猛威を振るいなさい」
 車輪剣を受けて生き残った双戟たちは、三日月状の刃と柄の間にその手を掛け、固定する。
「雷……甘いですね……!」
 しかしゼファーは、それをタイヤを唸らせ竜巻を自身の足元から発生させることでやり過ごそうと試みてきた。
 一点集中で差し迫る双戟の数々は、次々と風の壁に阻まれ弾かれていく。周辺に巻き上げられる花びらの影響か、双戟が持つ電撃が外へと逃されている為に、双戟の特性を活かしきれていないようだ。だが――
「ぐぅっ……!? 身体が万全でさえいれば……」
 一点集中の効果はあった。数は決して多くないが、風の壁を突き抜けた一本を起点に、何本かが次々と身体の各所を掠め、或いは突き刺さった。
 リーファの手元には10本の双戟を残っている。
「これで決めるわ」
「させませんよ……!」
 敵を囲むようにして放たれた残る10本の双戟。それに対しゼファーは嗤う竜巻を放ち応戦。
「誰があなたを狙うと言ったかしら?」
「何……!?」
 嗤う竜巻を容易く回避しながら、残る10本の双戟をゼファーの周辺足元目掛け降らせる。
「遊雷!」
 放たれる鎌鼬を躱しながら、突き刺した双戟目掛け雷を落とす。その地点を起点に、近くに存在する物体同士で連鎖しあい、瞬く間に雷に囚われるゼファー。その目的は――
「地面を……!?」
 穿たれる花の道。落ちれば、常人には戻る手段はない。ゼファーはその手段を持っているため落ちても問題はないのだが、しかし、全身に走る電流と生命力を奪われる感覚に藻掻く。
 リーファは後を託し、その場を後にした。

成功 🔵​🔵​🔴​

ンァルマ・カーンジャール
正念場ですね・・・!
何としてもここを抜けて先に参りましょう!

元より無傷で抜けられるとは思っておりません。
被弾は覚悟の上、必ず貴方の元に尖刃をお届けします!

「嗤う竜巻」にはこちらも風の精霊さんにお願いし竜巻で対応です!
物理攻撃には土の精霊さんを盾に変えて受けます!
悔しいですがどちらも正面からぶつかっては力負けするでしょう・・・、力点をずらして直撃を受けぬようにしますっ!

攻撃のチャンスが出来たらUCを放ちします!
周囲に数多と舞う花びらを無数の槍に変えて射出です!
存在確立を調整し本体を直接穿ちますっ!

お願い!届いて!



「正念場ですね……! 何としてもここを抜けて先に参りましょう!」
 後を託され入れ替わる形でゼファーの前に躍り出る、ンァルマ・カーンジャール(大地と共に・f07553)。
 その両脇には、友達である大地の精霊と風の精霊がついており、すでに臨戦態勢の状態。
「らぁっ……!」
 圧縮した空気を軽く爆発させる容量で先の猟兵の攻撃から強引に抜け出したゼファーは、そのままンァルマ目掛けいくつかの嗤う竜巻を放ってきた。
「風の精霊さん、お願いします!」
 ンァルマの呼びかけに応じ、似たような竜巻を複数発生させる風の精霊。
 竜巻は、複数存在しても互いに相殺し合うことは決してない。能力を用いて放たれている分、勢力は完全にゼファーの放った複数の竜巻が勝る。風の精霊が放った竜巻は、真正面から放っていないにもかかわらず、そのまま嗤う竜巻の勢力に巻き込まれ、吸収されるように飲み込まれる。複数の竜巻が存在する状況下は竜巻自体の動きが読めない。その影響か、あるいは別の要因か。更に威力を増した竜巻のうちの一つがンァルマに襲いかかった。
「っ――!」
 咄嗟に横に飛んだことでなんとか回避するも、突然目の前に迫ってきたゼファー自身の攻撃に、呆気にとられたンァルマ。しかし、盾化した土の精霊が半ば庇うような形でンァルマを護った。受けることは敵わないとわかっていたのか、端から受け流すつもりで盾を傾けている。
「助かりました、ありがとうございます、土の精霊さん」
 お礼をいいつつ、盾を手にしながらゼファーと入れ違う。
「小癪な盾ですね……!」
 言いながら再び放とうと大きくその腕を動かす。
「ここです……!」
 竜巻を放つためには、足を止めなければならないのだろう。そこがチャンスと見たンァルマは、素早く周辺に舞う無数の花びらに《[複合接続]【量子力学制御】涅槃仏槍》を用いて繋ぐ。
「お願い!届いて!」
 大きい嗤う竜巻を放とうとしたのがすっかり仇になった。突如周辺に発生した無数の槍が、ゼファーに襲いかかる。
 これにゼファーは咄嗟に自身を中心とした竜巻を発生させることで対処を試みるが、関係なかった。
「これは……ぐぅっ!」
 直撃を避けれなかったものの、致命傷だけは避けた当たりは、流石幹部と言うべきか。身体のあちこちに刺さる槍は、その効力を失うと花びらに戻っていく。もはや立つのがやっとだろうというはずの身体で、ゼファーはなおも抗った。
「これでどうです……!」
 自身の周囲に発生したままのその風を利用し無数の鎌鼬を放ってきたのだ。
「……流石にこれ以上は禁物ですね、撤退です」
 攻め込めば落とせたかもしれないが、こちらの手は既に見られた。2度目は通用しないだろうと考え、ンァルマは後を託しその場を退いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

月代・十六夜
【雑連携チーム】で連携。
事前にドロレス嬢に予備の護符の譲渡とフィニッシャーのレオウ君を背負って待機。
風は見えないが【聞き耳】で音を図り、【視力】で花びらの動きから攻撃範囲を【見切っ】て【野生の勘】全開でUC抜きの【ジャンプ】で飛び退く。
避け切れなかったら身代わりの護符で軽減をはかる。
最悪俺もレオウ君も行動不能にならなきゃ必要経費だ。
これを凌げればボーナスタイム。
【韋駄天足】の【ジャンプ】で舞い散る花びらを逆に足場に【空中戦】で抜刀【フェイント】を混ぜて相手の周囲を飛び回って【時間稼ぎ】する。
飛び回りながら【様々な種類の属性結晶】を宙に撒いてドロテア嬢の跳弾用の弾にするのも忘れずにってな。


レオウ・ヴァナターク
【チーム雑連携】で連携。
自身の身体能力の差を十六夜に背負ってもらってカバー。基本的に敵の攻撃の回避は全て十六夜に負担してもらう。
しっかりとしがみついて、十六夜が攻撃を避けたときに自分の身体が離れないように気を付ける。

「衛星砲のチャージが終わるまで、2人とも耐えてなのだ…!」

十六夜が逃げている間、ゼファーから絶対に目を離さず、モニター付きの銃のような形をしたビーコンをずっと向ける。

「ま、まだ50%…。」

ビーコンに表示された衛星砲の準備完了割合を見つつ、その数値を二人にリアルタイムで伝え、数値が100%になったら退避を命令。直後にゼファーを座標とし、【人工衛星による超荷電粒子砲】を降り注がせる。


ドロレス・コスタクルタ
【雑連携チーム】で連携。

事前に月代様から身代わり護符を借ります。
先制攻撃に対して身代わり護符を使いつつ、【戦闘情報】で戦場の風・気圧・気流を検知。
【見切り】でダメージを最小に抑えられる位置を探りつつ【オーラ防御】。

愛用の二丁拳銃を連射し程々の精度で弾丸をバラ撒きつつ接敵。
「弾丸をバラ撒いて牽制に使う」「狙いはあまり正確ではない」
と思わせる布石。

最短距離で間合いを詰め、零距離射撃と近接格闘を組み合わせて攻撃を仕掛ける…が、これは囮。
銃撃を外したように見せかけ先程与えた印象を強めながらUCを使用し月代様が宙に撒いた属性結晶を属性弾丸として死角から打ち込む。

これで敵の注意を引き付け続ける。



「この体では、あと持って……少しでも、長く」
 去っていくならば、決して深追いはしない。自身の役目、ここを護ることを徹底するゼファー。
「纏めてかかってこようと、関係ありませんよ……!」
 目の前に現れた3人に、臆することなく向かっていく。
「衛星砲のチャージが終わるまで、2人とも耐えてなのだ……!」
 月代・十六夜(韋駄天足・f10620)の背に背負われながら、お互いにしか聞こえない程度の声量で願うレオウ・ヴァナターク(少年の憧れ・f01149)。その言葉に2人は頷く。
 レオウのその手には、モニターがついた銃のような形をしている小型のビーコンが握られていた。
 それをゼファーに気づかれないよう照準しはじめる。モニターに映し出されるのは、何らかのゲージ。0%の表示がなされていた。
「来たな……!」
 そう言って、十六夜は突如回避行動を取った。それは、目を凝らさずともわかる、空中を舞う花びらが大玉のように転がり抜けていく様子を見てだ。しかも、その後には花の道を構成する花々すら残らない。まるでそれは、台風の如き業風がその一箇所にだけ吹き抜けたかのよう。
「す、すっごい風……」
 十六夜の背中でひたすらに振り落とされないよう耐えるレオウ。
 その暴風は、一回ではなかった。
「わ、わわっ!?」
「振り落とされんなよ!」
「う、うん……!」
 花の道がどんどん削られ、避ける場所が狭まっていく。
「ぐぅっ……」
 遂には絶え間なく放たれる暴風の嵐を前に、被弾を避けられなくなる。
「十六夜!?」
「大丈夫だ……レオウ君はそっちに集中しろ」
「う、うん……」
 心配するレオウだったが、十六夜の身体に傷はない。それは、手にしていた身代わりの護符のおかげだ。
 ビーコンのモニターが映し出す数字は、驚いたことで照準がそれたのか、増えていた数字が僅かに下がった。レオウは慌てて照準し直し、再チャージさせる。
 共にいるドロレス・コスタクルタ(ルビーレッド・f12180)も、十六夜とは逆方向に回避行動を取っていた。
「まずはあなたからです……!」
 全身ボロボロの身体からまだそれほどの速度を出せるかという速度でドロレスに迫るゼファー。
「先にわたくしからですのね……!」
 明確に穴といえる、十六夜を狙わずに自身に迫ってきたことには驚きながらも、風、気圧や気流などの情報を的確に収集していたおかげでその動き自体は読めていた。最も、その圧倒的速度を前に、身体はついてこなかったが――
「なっ……!?」
 しかし、事前に十六夜から貰っていた身代わりの護符のおかげで大ダメージは免れた。オーラ防御を展開していたのも一枚噛んでいるだろう。
 一旦ドロレスは距離を取るべく身を引く。入れ替わる形で十六夜がゼファーの前に出た。
「よう、元気か?」
「っ……!?」
 目の前に現れる十六夜に驚いて飛び引くゼファー。
 その手に握られているのは、見た目は刀の形をした型無というアクセサリー。それ本当にアクセサリーか?
 十六夜はそれを目の前で素早い動作を用い、それっぽく閃かせる。
「何をした……!?」
「さてな?」
 まんまと十六夜のフェイクに引っかかるゼファー。そのアクセサリーは刀身を持たない柄と鞘だけのものだ。それ故に軽く、素人目相手ならば容易く騙せるだろう。ゼファーは車輪剣を扱いこそするものの、スピードに己のすべてを注いできただけあって抜刀などの知識は無知に等しく、まさしく素人目。
「この……!」
 それだけならばいいのだが、レオウを背負いながらもどうやってそんな動きが出来るのかという素早い動きで目の前をチョロチョロするのだから鬱陶しいことこの上ない。それが出来るのは、コンマ1秒にも満たない花びらを足場とした連続ジャンプを繰り出す《韋駄天足》が為せる技。
 自身の周囲にはいくつもの属性結晶が撒かれていることにも気づかず、またそれがスピード勝負を持ちかけているのかと勘違い――十六夜自身もそんな狙いはないのだが――してか、十六夜の動きに合わせ次々と鎌鼬を放つ。傍から見れば闇雲に鎌鼬を放っているようにしか見えない。
 その後ろから、ゼファーを狙って放たれるドロレスの銃撃。
「っ……!」 
 十六夜を援護した攻撃だと判断したゼファーはドロレスに対しても鎌鼬を振るった。
「レオク君、まだか?」
「ま、まだ50%……」
 そんな状態が繰り広げられる中、レオウだけはただひたすらにビーコンをゼファーに向け続けていた。超高速で動き回る十六夜は、ただ闇雲に移動していたわけではない。レオウがその照準を決して外さないよう配慮している。だからこそ、レオウもしっかり捕まりながら、その照準に集中することが出来ていた。
「キリがありません、こうなれば……!」
 どれだけ十六夜の動きを予測して鎌鼬を放とうとも、その攻撃が当たることはまったくない。ドロレスに関しては離れていればまず当たらない事に気づき、たまに牽制の鎌鼬を逆に飛ばしてやるくらいで相手しなくなっていた。が、いつ当たるかもわからない。ならばと、纏めて攻撃するべく大きく距離をとったゼファー。
「させませんわ」
 しかし、そこでドロレスは大きく行動を変えた。
 ゼファーを相手に、一気に距離を詰める。
「いいでしょう、相手して差し上げます!」
 近づくのは銃撃を確実なものにするためだろうと考えたゼファーは、敢えてその距離を自ら近づけた。近かろうと、その銃撃は自身には当たらないと踏んでのことだろう。
 車輪剣を唸らせドロレスに対し振るう。
 これを屈んで躱したドロレスは、カウンターに銃撃を仕掛ける。
「あら……?」
 が、当たらない。
「……お前、なんで銃なんか使ってるんです?」
 それを見て、思わずそう聞きたくなるほど。
「あなたを騙すためですよ?」
 そう返したドロレスの言葉に、ゼファーは一瞬何を言われたのか理解できず、固まる。
 後ろ手に手にした属性結晶を弾丸のように指で背後にある属性結晶目掛け弾くと、その属性結晶は次々と跳弾。
 ドロレスの《リフレク・ショット・リレー》だ。
「なんです!?」
 急に周囲で動き出す結晶体に驚く。だが、身体は既にその結晶体から逃れるべく行動を起こしていた。
「いちいち小賢しいのですよ……!」
 その時。
「ドロレス!」
 レオウからの呼びかけが掛かる。
「残念ですが、ここまでのようですね」
 そう言って、ドロレスは大きく飛び退いた。十六夜も離れている。
 なにか仕掛けてくる、そう悟ったゼファーは高速移動しようとするも、その周囲には跳弾しまくる結晶体が飛び交っていて、それをどうにかしないことには被弾は免れ得ない。
 ならばと風を圧縮し始めるが。
「これで終わり!」
 レオウの口から告げられる、その言葉。
 ビーコンにあるトリガーを躊躇いなく引ききったその瞬間。
「あ……ああ!?」
 何かを感じたのか、頭上を見上げるゼファー。そこには、とんでもない勢いで迫る極太ビーム。
 慌ててしまったのが運の尽き。集約させていた風の力は儚くも霧散。被弾覚悟で強引に抜けようにも、そのビームの太さは、既に逃れられない距離だ。
「ここまで、ですか……」
 何かを悟ったように、全てを諦めたゼファー。次の直後には、花の道もろとも、青白いビームがその場所に降り注いでいた。
 ビームが終わる頃。そこにあったのは、ポッカリと空いた大穴。ゼファーの姿は、塵すらも残っては居なかった。
 抉られた花の道も、程なくすれば元通りになるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月22日


挿絵イラスト