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バトルオブフラワーズ⑪〜論理的神速領域

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ #ウインドゼファー

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●何よりも速さが足りない
「皆さん、これまでの戦い、本当にお疲れ様でした」
 グリモアベースの会議室で、ユーノ・ディエール(アレキサンドライト・f06261)が集まった猟兵達に頭を下げる。
「エイプモンキー、ラビットバニーと強力な大幹部怪人を退け、システム・フラワーズ中枢への道程もあと少しとなりました」
 背後のスクリーンには倒された怪人が遺影めいた姿で表示され、その隣に新たな怪人の姿が映し出されていた。
「続く第三の関門、今回の敵は風を操るスピード怪人『ウインドゼファー』です。彼女はこれまでの大幹部と違い、特殊な能力はありません。ですが」
 矢張り、というか。ウインドゼファーも大幹部怪人達と同じ様に、何度でも骸の海から蘇る強敵だ。
「なので短い期間に復活の許容値を超えるくらい何度も斃し、復活を止める必要があります」

 それならばこれまで数え切れない程やってきている。であれば、と勘のいい猟兵が口を開いた。今度はどんな先制攻撃を封じればいいんだ?
「はい。それぞれ三つの手段――全身を暴風で覆い行う超高速飛行攻撃、花の足場をバラバラにする暴風攻撃、高速回転モードに変身して2本の剣から放たれる竜巻攻撃が確認されています」
 どれもが風を使った攻撃手段、これを封じる事が攻略の鍵だろう。
「それぞれの攻撃手段に対して対策をしっかりとらないと、必ず先制されますので気を付けて下さい」
 逆にその先制攻撃さえ封じてしまえば、純粋な力比べとなろう。しかし速さを侮ってはいけない。兵は神速を尊ぶ、生半な手段ではその壁を超える事は決して容易くない。
「――純粋な戦闘能力だけならばこれまでの大幹部以上かもしれません。何せその速さだけで絶対の先制攻撃を仕掛けてきますから」
 搦め手無しの真っ向勝負です、と。ユーノは再び猟兵達を見渡して、ぺこりと頭を下げた。
「でも、ここまで来た皆さんならきっと大丈夫です! どうかよろしくお願いします」


ブラツ
 こんにちはブラツです。
 今回はボス戦です。
 下記の特殊ルールをご確認下さい。
 ====================
 敵は必ず先制攻撃します。
 敵は猟兵が使用するユーベルコードと、
 同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、
 猟兵より先に使用してきます。
 この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、
 自分の攻撃だけを行おうとした場合は、
 必ず先制攻撃で撃破されダメージを与えることもできません。
 ====================
 以上になります。
 上記無対策の場合はプレイングの成功率が激減し、
 最悪失敗する場合がありますのでご注意下さい。
 また連携を希望される方はお相手が分かる様に、
 IDを文頭に記載する等、識別子の記入をお願いします。
 それでは、よろしくお願い致します。
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第1章 ボス戦 『スピード怪人『ウインドゼファー』』

POW   :    フルスロットル・ゼファー
全身を【荒れ狂う暴風】で覆い、自身の【誰よりも速くなりたいという欲望】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    ソード・オブ・ダイアモード
対象の攻撃を軽減する【全タイヤ高速回転モード】に変身しつつ、【「嗤う竜巻」を放つ2本の車輪剣】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:藤本キシノ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ユーイ・コスモナッツ
スピード勝負なら私も自信があるのですが、
今回ばかりは分が悪そう……
だけど、そこにこそ、勝ち筋があると見ました

つまり、
ウインドゼファーは無敵のスピードを持つばかりに、
大抵の相手にはそれだけで勝ててしまうから、
『スピードに頼った戦いかたしかできない』

くわえて、
『スピードを殺されたときの対策が疎か』

さらに、
『自慢の戦法を破られると精神的動揺も大きい』

……これら3つの弱点を狙おうと思います

転送と同時に【天球の虚数変換】を起動
外部からの運動エネルギーを虚数化するバリアで、
【フルスロットル・ゼファー】を防ぎます

うまく攻撃を受け止めたら、
ただちにバリアを解除して上半身を掴みます
そしてそのまま背負い投げっ!



●荒れ狂う暴風
(スピード勝負なら私も自信があるのですが、今回ばかりは分が悪そう……)
 極彩色の空間、システム・フラワーズに転送中のユーイ・コスモナッツ(宇宙騎士・f06690)はこれから対峙する『スピード怪人『ウインドゼファー』』に思いを馳せる。
 単純な速さ勝負では恐らく勝てない。だからこそ、そのスピード自体が勝負の分かれ目。だからこそ、そこに勝ち筋があると見る。
(だからこそ、スピードに頼った戦い方しか出来ない筈)
 先ずはそこを狙う。そろそろ出口だ――周囲の色が無くなって、その先から僅かに光が漏れる。
 行きましょう。ユーイは勇気を振り絞り、戦場へと降り立った。

 転移完了と同時に自らのユーベルコードを発動――しかしその目論見は脆くも崩れ去る。
 最初にユーイが感じたものは視界に飛び散る火花と、遅れて全身を襲った凄まじき衝撃だった。
「なっ……これ、は」
『私の速さは覆せない』
 最速で絶対のバリアを張る。考え方は非常にシンプル。故に、攻めの枕を押さえられては如何様にも出来ない。
『空間の揺らぎ、風の流れ、私が気付かないと思いましたか?』
 貴女が現れた瞬間を、その乱れを見過ごすとでも、と。ゼファーの全身を流れる夥しい量の荒れ狂う暴風は、既にその威力を発している。
「そう……です、か!」
 足元の『反重力シールド』に力を込め、後ろを跳ね上げる。花々に満たされた激突の寸前、かろうじで体勢を立て直したユーイ。その衝撃で辺りに花びらが舞い散る。
(先手は取られた、でも追撃は未だ来ない――ならば!)
 ならば、相手の土俵で再び対峙せざるを得ない。『GALLOPPY-30XX』の磁力を最大に上げて、高機動体勢に移行するユーイ。
「でも、まだ終わっていない」
『いえ、これで終りです』
 瞬間、ゼファーの姿が消える――違う、ゼファーが既にこちらへ迫っているのだ。恐らく空中からジグザグの軌道で私の死角を狙って。
 ならばこのまま……。花の大地を舐める様に滑空するユーイ。こうすれば少なくとも、下からは襲われない。
(正面から来ない。ならばきっと攻めてくるのは)
 武器を振り回せない右後方。その場で『ヴァルキリーランス』を投げ捨てて、『クレストソード』を右脇構えに移行する。
『成程、迎撃ですか』
 しかし遅い。ゼファーが現れたのは左側方正面、手にした2本の車輪剣を高々と掲げ、暴風を放ちながら。
(位置は、当たった。後は!)
「バリア展開っ!」
 全身を球状のバリアが包む。【天球の虚数変換】は絶対の安全空間、そのままぶつかればゼファーの運動エネルギーは削ぎ落される。
『そういう事ですが――』
 暴風がユーイのバリアに触れて、消える。ベクトルを失った空気の流れが辺りに広がって、その威力を無効化したのだ。だが、触れなければどうという事は無い。

 ゼファーの纏う暴風がその向きを変える。逆噴射、たすき掛けにしたカプセル状の噴射装置が一斉に制動を駆けて。刹那、その動きが止まった。
「今ですっ!」
 ユーイはバリアを解除、シールドを垂直に立てブーツの磁力を逆に、更にシールドを自ら蹴って跳躍。反発力で一気にゼファーの懐へ間合いを詰める。
 もう一つの勝機、ゼファーのスピードを殺した時、必ず隙は生まれる。この瞬間に白き旋風と化したユーイは、紙一重でゼファーの上半身をしっかりと掴んだ。
『甲冑組打ちですか、騎士!』
「やあぁぁぁぁぁ!!!!」
 滑り込む様に着地をすると、そのまま両脚でしっかりと大地を踏みしめ、反作用が威力を倍増。腰を屈めて伸ばし、肩口から思い切りゼファーを放り投げる。
 流れる様なその動作にゼファーも受け身を取り損ね、落下と同時に凄まじい土埃と散った花びらが大地を覆った。
『流石に、ここまで来ただけはあります。ですが』
 まだ足りない。車輪剣を杖にして立ち上がったゼファーは再び暴風を巻き起こすと、今度こそとユーイに迫る。しかし再び発動した虚数防壁を見るや、踵を返して他の大地へと飛び立った。
「何という、速さ」
 最後まで、あの戦法を破る事は敵わなかった。しかし能力だけではない猟兵の威力をその身体に教えてやれた。
 宇宙騎士の乾坤一擲は確かに、ゼファーに届いていたのだ。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

メイスン・ドットハック
【WIZ】
荒れ狂う風を使った攻撃をしてくるとはのー
じゃけど、先にいくためには戦わなければならんのー

初手の攻撃は竜巻を放った場合は電脳魔術で再現した防壁で防ぐ
空間をハッキングし、壁を精製し続ける(ハッキング、地形の利用)
近寄って攻撃してきた場合、「G線上のアーリア」の電脳重力爆弾を相手に向かって放つ
命中して爆裂すればよし、外れても3.8倍の重力がかかるようになって相手の行動が必ず鈍るはず
その隙を狙って電脳魔術によるバーチャルミサイルの一斉射撃で攻撃する(一斉射撃、誘導弾、破壊工作)
壊された壁の遮蔽物の内部に地雷や爆弾を潜ませて、自身が離脱する隙を作るのを忘れずに仕込む(罠使い、破壊工作)



●電脳・稲妻・烈風
「荒れ狂う風を使った攻撃をしてくるとはのー」
 極彩色の転移空間、メイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)は難敵に頭を悩ませていた。
 風を使った攻撃、単純な物理現象による攻撃ほど相性の悪いものは無い。電子的な制御も魔術的な操作も介在しない純粋な物理現象は、メイスンにとって最もやりにくい相手の一つであろう。
「じゃけど、先にいくためには戦わなければならんのー」
 闇を裂いて光が漏れる。微かに花の香りが鼻孔をくすぐり、メイスンは戦場へと降り立った。

 途端に荒れ狂う風の刃がメイスンを歓待する。織り込み済みだったとはいえ、流石に厄介じゃのー。纏った『アメジストドレス』に容赦の無い裂傷が刻まれて、透き通る鉱物の肌を突風が穿つ。どうしたって回避は出来んか――じゃが。
「距離は、あるようじゃのー」
 辛うじで痛みを堪えつつメイスンは電脳魔術で防壁の展開を試みる。幸い端末の『HIROSHIMA』は無事だった。システム・フラワーズの中枢制御エンジン外縁部の一部をハッキングし、即座に自身の周囲へ防壁を――紫電を纏った薄緑色の防壁を幾重にも展開する。全てとはいかないが、これで幾何かの竜巻は防げる。時間も稼げるじゃろー。
『またバリアですか。そんなもので、私を止める事は、出来ないッ!』
『攻撃手段は俺ちゃんだけじゃないんだよ、それ行け主、アイツを轢き殺せ!』
 徐々に威力が削がれた嗤う竜巻がメイスンの防壁を嘲笑い、ゼファーは全身のタイヤをギャリギャリと高速回転させる。【ソード・オブ・ダイアモード】は寿命と引き換えの遠近無双の攻撃手段、たかが防壁程度でこの回転は、速さは止められない。
「来よるか、それじゃのー」
 ぶちまわしたる。メイスンは続けて【G線上のアーリア】――紫色の電脳重力爆弾を顕現する。
『――遅い、その程度では』
『ヒャヒャヒャ、当たらねえんだよ!』
 超高速で地上を疾駆するゼファーは大地に火花を散らしながら、稲妻の様な軌道でメイスンに迫る。瞬間、正面に現れたかと思えば即座に側面へ。変幻自在のハイスピードは、幾らウィザード級ハッカーの腕を持っても捉える事は難しい。だが。
「当たらないならのー、それでも」
 構わない。闇雲に放たれた様に見えた電脳重力爆弾はゼファーに掠りすらせず、しかしその進路上に不可視の超重力フィールドを形成せしめた。
『! これは、まさか』
 ほんの僅か、時間にしてマイクロ秒にも等しい間隙。異変に気付いたゼファーが体勢を立て直そうとした刹那、メイスンが仕込んだ電脳の牙が一斉に牙を剥く。
「ここのシステムにちょいと自動生成スクリプトを混ぜただけ、それじゃのー」
 空間を歪ませて多数のバーチャルミサイルがゼファーに殺到した。ここがコンコンするシステムの中枢なら、その力を借りる事も可能では無いかという目論見は成功したのだ。

『やりますね――ですが!』
 ブォンと、車輪剣を杖にして立つゼファーの肩口から、尋常ではない量の排気が溢れ出る。そして全身を震わせて放たれた甲高い爆音が空間を揺るがせ、全身のタイヤがこれまで以上の回転を見せつけた。
『この重さを振り切る為、グリップを犠牲にして走り続けるか。流石だ主! こうでなければ!』
 ヒャヒャヒャと竜巻がメイスンを、主を嗤う様に不快な声を漏らして。
「まだ早くなるという訳かのー。これ以上はちと厄介じゃ」
 でも、ユーベルコードで作った隙に一撃以上加える事が出来た。矢張り、決して斃せない敵ではない。
『これ以上、邪魔はさせないっ!』
 そうかい、じゃがこれまで。
 メイスンは再び電脳防壁を再構築。重力を振り切って迫るゼファーの周囲を囲む様に、紫電を纏った薄緑の壁が次々と姿を現した。
『ヒャヒャ! 無駄無駄ァ!』
 しかし嗤う竜巻はそんなモノを物の数ともせずに、突進と荒れ狂う暴風がそれらを問答無用で薙ぎ倒した。
「馬鹿め、それこそ僕の逃走経路じゃ」
 その声と共に薙ぎ倒された電脳防壁が一斉に起爆、防壁に仕込まれた電脳爆弾が足場の花々を容赦なく崩していく。

 落ちるメイスン、その下には別の花々が。
「矢張り、単純な物理攻撃は苦手じゃのー」
 すとん、と降り立ったメイスンは天井を見上げ、追撃が無い事を確認するとその場から立ち去る。
 しかし一撃くれてやった。決して当てられない、斃せない相手ではない事をメイスンは確信したのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

影山・弘美
と、とにかく早い人ですか
じゃあ……こうするしか

暴風を纏って襲ってくるゼファーに対し、最初の一撃は無防備に受けます
血を流しながら、2撃目は無理矢理ゼファーの体のどこかを掴んで離さずにいます
流れ出る血から出てきたもう一人の自分のため、本人は体を犠牲にゼファーの動きを止めさせます
血の自分は拷問具を手に、ゼファーを縛り上げていきます

……まったく、気弱なくせに無茶をするのよね
でも、そのおかげで捕まえられたわ



●BloodyTears
 一筋縄ではいかない。現にあの攻撃を防ぐ手立ては無きに等しい。
「じゃあ……こうするしか」
 影山・弘美(吸血鬼恐怖症・f13961)はあの早い人――ウインドゼファーをこの身を以て止める事を心に決めた。
 怖い。尋常じゃなく、もしかしたら触れる事すら敵わないかもしれない。それでも……。
「こうするしか、ないもの……」
 転移空間から光が漏れる。そこからは風が、血を孕んだ咽る様な風が、吹いていた。

 嵐の如き暴風は弘美が足をつける間も無く、積もる花の足場をバラバラに崩落させていた。その中心には真紅の仮面、ウインドゼファーが全身の噴射装置から絶えず膨大な風を巻き起こしている。
「あれに近づくなんて、そんな」
 無理だ。突風が、吹き荒ぶ花びらが刃となって弘美の肌を裂く。鮮血が自身を染めて、風の流れがその身体を否応なくゼファーへと向かわせない。矢張り無謀だったのだ。風の流れは変わる事無く、崩れた足場と一緒に弘美は揺蕩う。
 しかしその風は、吹き荒ぶ風は大気を吸い込んで放たれるもの。ふわりと浮かんだ弘美は気を失って、そのまま流れに乗る様に、徐々にではあるがゼファーへと近付いてしまっていた。
 
 チャンスは唐突に訪れた。暴力的な嵐に全身を痛めつけられながらも、その嵐を作る為に吸い込まれる空気の流れに、ほんの僅かだが弘美の携えたロープ――『拷問具』が引っかかった。本来であればその様な異物は吸い込まれる訳もない。しかしそれは猟兵の仕事道具、ただの縄如きでは決して無い。
「……。あ、れ」
 うっすらと目を開いた弘美の手元からは、血塗られた己の装備がゆらゆらと、しかし確実にゼファーの元へ迫る姿が映っている。
(こ、れ――最後の、チャンス)
 決して目論見通りにはならなかった。それでも、まだ希望は失われていない。
(……まったく、気弱なくせに無茶をするのよね)

 ゼファーの嵐は止まらない。その暴威はあらゆる威力を寄せ付けない。この領域に猟兵が来ている事は知っている。ならば顔を合わせるまでも無く、一思いにその命を絶ってやろうという強い意志が感じ取られた。
(そうです。ここで止まる訳には、行かない)
 オブリビオンとして本懐を成し遂げる為、ほんの僅かでも立ち止まる事は許されない。嵐は更に威力を増して、足場だった花々をバラバラに吹き飛ばし続ける。しかしその中に、殺意を秘めたモノが潜んでいる事には気が付かなかった。気が付けなかったのだ。何故ならば。
「でも、そのおかげで捕まえられたわ」
 鮮血が実体に、宙を舞う血塗れのロープからもう一人の弘美が、吸血鬼たる【血の宿命】己が獰猛な姿を現した。ここまでこうして隠れていたのだ。ただの物では気配すら感じられるわけもない。
『いつの間に――この嵐で吹き飛ばした筈!?』
「そうね、あなたが吹き飛ばしたのは紛れもなく私」
 だけどそれは、私じゃない。手にした拷問具がゼファーの暴風発生器の吸い込み口に引き寄せられて、そのままの勢いを以て全身を雁字搦めに縛って封じる。
『愚かな、そんなもので私を封じられると思っているのですか!』
 ゼファーは全身のタイヤを勢いよく回転させる。だがロープはその回転に巻き込まれるように更に奥へと食い込んでいった。
「血の一滴でも喰らいたい所、だけどね」
 今はあの子を拾って行かなきゃ。もう一つの得物――『メイス』で思い切りゼファーの腹をブン殴ると、その勢いで倒れた弘美の元へと戻る。
「今はまだ止まっているけど」
 さっさと逃げるわよ、と血塗れの弘美を担いで。吸血鬼の弘美は舞う様にその場を退散した。

『猟兵――何故こうまでして私達の邪魔をするのです』
 時間が経ち拘束から解放されたゼファーは、花びらの大地の上で血塗れのロープを投げ捨てる。
 致命には至らなかった。ですが、もう一人いたら本当に危ない所だった。
『――もう負ける訳には、いかない』
 仮面の奥に思いを秘めて、ウインドゼファーは次なる刺客を待ち受ける。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ステラ・リデル
【SPD】
今度の敵はシンプルに速い、ですか。難敵ですね。
>敵SPDUC対策
『第六感』×『見切り』で発動タイミングを察知して『オーラ防御』を流線形に形成。暴風を受け流す。

《魔剣舞踏》を発動。
暴風でバラバラになった足場の代わりに宙に浮く光の剣を足場として戦います。
また、複数の光の剣を彼女を捉える結界の様に配置。行動を阻害します。
「速いのが敵の長所ならば、それを発揮できない様にすれば良い」
剣の結界で敵の行動予測をしやすくして、攻めてきたところをカウンターでしとめます。(オーラセイバーを振るって)



●剣の嵐
「今度の敵はシンプルに速い、ですか。難敵ですね」
 ステラ・リデル(ウルブス・ノウムの管理者・f13273)はこれまでの癖がある敵とは違う、ウインドゼファーに対して畏怖を覚えた。純粋な力のみで絶対的な先制を仕掛けてくる難敵だ。恐らくその攻撃は避けようにも避けられまい。ならば出来る事は発動のタイミングを見切って、その攻撃を受け流すしかないだろう。そして転移が終わる。準備は十全、どこからでも来なさいと意志を強く持ち、青い瞳に光が映って……。

 先ず訪れたのは容赦の無い暴風。発動タイミングなんてモノは無い、転移完了と同時に襲い掛かったその威力は、流れを御そうともそもそも間に合わない。
「これ程までとは――ですが」
 かろうじで発動出来た気のフィールドで危うく致命の一撃からは逃れたものの、眼前の猛威は、その中心で間断無く嵐を放つゼファーは、猛然とステラへ迫りつつ足場の花々を蹴散らしていく。
「地に下りる事は叶わず、ここまでは想定通りですね……」
 流れる血を拭いながらステラは、続けて発動した【魔剣舞踏】――光の剣を、無くした足場の代わりに空中で階段の様に連ねて、その上にふわりと下り立った。あくまでゼファーの嵐から避けるべく、ギリギリの距離を取った上で、両者は嵐を挟んで対峙する。
「――速いのが敵の長所ならば、それを発揮できない様にすれば良い」
 あくまでも冷静に、4本の剣の足場を交互に展開しつつ、ステラは動き回りながらゼファーに対し残る30本の光の剣を投げ放った。念動力で自在に動かされるそれは、一部はゼファーの行く手を阻む様に舞い、一部は吹き飛ばされる花の足場がステラにぶつからない様、正面からその塊を両断する。
『遠隔攻撃ですか、確かにそれならば私の嵐に巻き込まれる事は無いでしょう――ですが!』

 ステラの放ったそれは正しく剣の結界――自在に動き回るゼファーの進路を塞ぐ様に配された嵐がその進路を変えた。ステラへでは無く、自らを取り巻く光の剣の悉くを払う様に、その威力を内側へ向けて放ったのだ。
 その猛威に阻まれて、檻の様にゼファーを囲んだ光の剣が一振り、また一振りと嵐の外へ弾き飛ばされる。ゼファーは緩やかに速度を抑えつつも、嵐の防壁が光の剣の侵入を許さない。
『その程度で私の元に剣を突きつける事が叶うなどと、思わない事です』
 徐々に嵐が引いて、くるくると旋風を巻いて舞う花びらが吹雪の様に辺りを覆い尽くす。そしてその陰には――ステラの姿が。
『いつの間にここまで!?』
「道はあなたが作ってくれました」
 嵐が弾き飛ばした光の剣はそのまま空中に留まって、ステラとゼファーを結ぶ道を作り出していた。狙うべきは嵐が引いた刹那、再び嵐がステラへと牙を剥くであろう、その瞬間。
「私はその上を進んできただけ」
 造られた道を駆けあがり、ゼファーの眼下へと迫って。手にした『オーラセイバー』が振るわれ、逆袈裟からの一刀がたすき掛けに連なった噴射装置の一帯を綺麗にこそぎ落とす。
『この瞬間まで牙を伏せていたとでも、ならば!』
 機動を削がれたゼファーが吼える。残る二帯の噴射装置から再び暴風が放たれて、その勢いでステラは弾き飛ばされる。しかしステラの一刀は切り裂いた噴射装置を遅れて爆ぜさせた。最早それは使い物にならない程に、紫電を纏わせ徐々に残りの噴射装置にその暴威を移さんとにじり寄る。
『――クッ!』
 これ以上の損壊は免れるべきと、破壊された噴射装置の一帯をそのまま投棄して、ゼファーは再び花の大地へと戻っていく。

「やれましたか、ですが」
 これ以上はどうなるか。奇襲は二度も通じないだろう。束になった光の剣に支えられてステラは立ち上がり、その場を後にした。
 それでも、奴の速さの幾何かを抑える事は出来たはず。
 大勢は徐々にではあるが、猟兵側へ傾きつつあった。

成功 🔵​🔵​🔴​

荒谷・つかさ
予め防具改造で盾代わりの扉と壁を耐風仕様で金属製の頑丈なものに
加えて鎧に耐熱加工と呼吸用酸素供給機を追加

初手の先制攻撃は武器防具及び持ち込んだ壁をフル活用(武器受け、盾受け、オーラ防御、地形の利用)して防御
耐えたら反撃と見せかけて【轟熱鬼神熱破】を拡散モードで照射し全方位に範囲攻撃&なぎ払い
この際必ず地上の花の足場を全力で巻き込む

狙いはこの戦場そのものを「炎熱地獄」へ変える事
如何に強い風を纏おうと、熱線からは逃れられない
そしてこの戦場の番人たるお前は、この場から逃げる事は許されない筈
さあ、我慢比べと行きましょうか

後は改造防具と火炎耐性で耐えつつ、ユーベルコードや風の属性攻撃で炎の竜巻を出し攻撃



●オーヴァー・フレイム
 猟兵を侮り過ぎていたか、とウインドゼファーは新たに下りた花の大地で先の戦を思う。その弱気に手元の車輪剣が嗤ったような気がした。違う、私は番人。この地を守り、必ずやドン・フリーダムが開放した『無限大の欲望(リビドー)』を喰らい尽くす。その為には何人たりとも通す訳にはいかない。現に次の猟兵が、この地に辿り着こうとしている。
『――止めなければ』
 それが今の私の役目。邪魔はさせない。

 荒れ狂う暴風が荒谷・つかさ(風剣と炎拳の羅刹巫女・f02032)を襲った。大地に咲く花々を吹き飛ばしながら、その上に立つつかさの足元を容赦なく削り取る。
「飛ばされぬ様強化はしたけど、よもやこれ程とはね……」
 暴風対策に防具を改造して挑んだものの、まさか足場ごと削られるとは。流石に致命には至らなかったが、身動きを取る事も出来ない。
『この先へは行かせません』
 嵐に乗って現れたゼファーが、不動の姿勢でつかさに車輪剣の切っ先を向ける。それは絶対阻止の意思表示。
「それでも、押し通らせてもらうわ」
 ゼファーを睨むつかさの心は明鏡止水、されど魂は烈火の如く――合わせた両の掌より【轟烈鬼神熱破】を放たんと、上空のゼファーに向けてその手を掲げた。
『そんなものが――当たりますか!』
 一瞥、剣で空を払い――呼び起された暴風がつかさの灼熱に真っ向からぶつかって。容赦の無い暴力的な風は魂の炎を問答無用でバラバラにし、散り散りになった炎は花の大地へと浴びせられた。だがそれこそがつかさの狙い。
 広がる火勢が花の大地を舐める様に、一面を炎熱地獄へ様変わりさせる。色とりどりも芳しき香りも全て、灰に変わる。灼熱は暴風に巻き上げられて、他の大地すら燃やして。
「この戦場の番人たるお前は、この場から逃げる事は許されない筈」
 爆炎の中、ゼファーへと宣言するつかさ。耐熱加工した『鐵城甲冑』からエアマスクを取り出して装着する。準備は万全、さあ、我慢比べと行きましょうか。
『望む所よ。超高速の機動に耐えるこのスーツ、熱対策は既に施されている!』
 常に超高速機動の摩擦熱に晒されるゼファーは、多少の温度上昇ではびくともしない。炎など何するものと再び暴風を纏ってつかさに迫る。しかし異変は直ちに起こった。

『外した分の噴射装置か――!』
 ゼファーの軌道が一瞬フラつく。噴射装置の減少による不安定か――いや、それだけじゃない。空間を焼き尽くす炎が、上昇した温度が気圧を変えた。これまでと同じ制御では思い通りに飛ぶ事は出来ない。
『ならばあなたを、正面から轢き裂く!』
 この炎の発生源たるつかさを始末すればいい。そうすれば元に戻る筈。二振りの車輪剣を再びつかさへ向けて、目にも止まらぬジグザグ機動でゼファーがつかさに迫った。真っ直ぐ飛べないのならば飛ばなければいい。速さはまだある、風もある。幾ら強固な『屋根』だの『壁』だの『扉』だので防ごうと、直接の攻撃までは耐えきれまいと考えた。目の前に出られれば私の勝ちだ。
 炎熱地獄は想定以上の効果を齎した。しかし放たれる本命の炎は未だに届かず、圧倒的威力を誇るゼファーの暴風に弾かれてしまう。それでも。
「来なさい……。後は真っ向から叩き斬るのみよ」
 炎を止め、スラリと『暁』と『黄昏』の二振りを手に取る。『Hidden arm』が全ての追加装甲をその手から離す。近付くならば僥倖、私の間合いだ。

 風が止んだ、奴が来た。火花を散らし金属同士がぶつかる鈍い音が響く。自身も相手も二刀、炎を止めるだけならば、意識を飛ばすだけならばもっとも狙いやすい腹部を狙うだろう。揺らめく気の流れが敵の位置を静かに伝え、本能のみで身体を動かす。手にした刃は先端で回転する車輪を受け流して、滑らせた刀身がゼファーの手元を抑え込んだ。
『やりますね、ですが』
「叩き斬るといったわね、アレは嘘よ」
 ゼファーの言を遮り『誉』が火を噴いた。連なる『鬼瓦』が――刀を放した鋼鉄の拳がゼファーの顔面に強烈な一撃を喰らわせる。
『ガフッ!?』
 砕かれた仮面の奥から真っ赤な瞳を覗かせて。ちらりとはみ出た金髪が風に揺れ、燃える。
『ハアッ……よく、も!』
 しかしこれで倒れるゼファーでは無い。よろめいた反動を利用して、すかさず暴風を纏った左の拳が唸る。その一撃がつかさの顔面を捉え、エアマスクごと遠くへ吹き飛ばした。
『クッ……。まあいいでしょう』
 顔を抑えてゼファーは更に下層へ飛び込んだ。しばらく燃えているでしょうが、この炎の中心から離れるべき、と。

 逃げられた、それにエアマスクが。
 意識が朦朧とする中、つかさは炎を燃やし続ける。
 ほんの僅かでも、この戦いを勝利へと繋ぐ為、炎を燃やし続ける。
 確実に勝利への道は、近付きつつあるのだから。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

夜乃・瞳
こいつを倒せばようやくボスの所にいけるのです、頑張るのですよ

足場を壊す暴風に対抗する為なるべく距離を取りつつ宇宙バイクに乗って戦うのです
【騎乗、操縦、空中戦】の技能を活かして崩れていく足場の上でもうまく立ち回るのです
また、少しでも攻撃の威力を弱める為【オーラ防御、盾受け】の技能を活かしつつバリア弾をばら撒いておくのです

攻撃は通常武器のレールキャノンとコールオプションで呼び出した二機の浮遊砲台(オレンジの発光球体から砲身が生えている)で【スナイパー】を活かしてなるべく敵の射程外からバイクで逃げ回りながら攻撃していくのですよ
敵が攻撃をよけても【範囲攻撃、衝撃波】で少しずつでもダメージを与えるのです



●LastDancer
「こいつを倒せばようやくボスの所にいけるのです、頑張るのですよ」
 極彩色の転移空間の中、夜乃・瞳(ミレナリィドールのスターライダー・f01213)は愛機たる『宇宙バイク』に跨って疾走する。
 絶対先制の攻撃に超高速の無差別攻撃、尋常ではないその戦いぶりもこれまでの戦闘記録のお陰でようやく全貌が掴めていた。
「そろそろなのです」
 無色の帳の奥底から光が漏れる。全装備アクティブ、コンディションオールグリーン。煤けた香りを一身に受けて、瞳は戦場へ飛翔した。

 そこは地獄の様相であった。花々が咲き乱れた大地は炎熱地獄に塗れ、芳しき芳醇な香りも灰混りの澱んだ空気に。
「本当に、ここはシステム・フラワーズなのですか?」
『その通りです』
 だから、もう邪魔をしないで。灼熱を纏った暴風が宇宙バイクの底面に直撃する。来たのです、ここまではまだ、何とか。
 身に宿した『追加展開式空間戦闘用ウォードレス”月光”』がなければ死んでいたかもしれない。恐るべき熱波の暴威は展開したナノマシンアーマーが自らを防いだものの、機体の吸排気系に著しいダメージを与える。
『私は、止まらない。これ以上何をしようと、絶対に!』
 ウインドゼファーが、風の猛者が、バラバラに吹き飛ばした花びらだった炎を纏って火中より現れる。割れた仮面の奥底に宿る猛々しい執念が、噴射装置の爆音を借りて、炎熱地獄の獄主めいた様相を滲ませる。
「流石にもう、これ以上は――」
 更に重ねて気のフィールドを纏うも、圧倒的な炎の嵐は絶え間なく瞳を焦がし続ける。しかし。
「これ以上は――使わざるを得ないのです」
 方位測定完了、『超高速電磁レールキャノン』に『バリア弾』を装填。一時距離を取りつつ、あの攻撃を何としても耐える。
 瞬間、紫電が疾って。稲妻の化身めいた長大な砲身から放たれた砲弾が、瞳の進路――戦場の下層に青白く輝くバリアを形成する。
『ここまで来て、逃げるとでも』
 させない。ゼファーが更に速度を増して。バリアなど張らせるかと、炎を突き抜けて風が迫る。
「違うのですよ、ここから反撃なのです」
 転送システム開放、ゼファーの背後にふわりと【コールオプション】――二機の球形浮遊砲台がその身を晒す。
『今更伏兵か! しかし届かない!』
 この速さには! 砲台はしかし、その照準をゼファーには合わせない。弾種エネルギー弾。青白い閃光が放たれて、先回りしたバリアに反射される。
『何とッ!』
 跳弾。不規則に飛ぶエネルギー弾が不意にゼファーの進路を塞ぐ。その刹那が、天を仰いだ瞳とゼファーが顔を合わせた最後となった。

 戦闘領域下層部分。まだ火の手が上がっていないそこで、瞳は最後の攻撃準備に入る。落下と加速で通常の倍以上の速さを出したのだ、幾らゼファーとて少しは時間を稼げただろう。
「……。では、狙うのです」
 バリア弾の範囲展開による跳弾での機動封じ、持って5秒かそこらか。
「充分、なのです」
 頭上で煌くエネルギー弾とゼファーの乱舞を捉えて、機体の主砲を高々と天に向ける。
「……。流石に早いのです」
 ワンショットで決めなければ次は恐らく無い。離脱はどうにかなるにしても、せめてもの一矢を喰らわせねば。
「一発で当てなければ、ならば」
 弾種選択、音速衝撃散弾。本来は対空砲火を沈黙させる広範囲攻撃兵装を『書物型亜空間格納コンテナ認証キー』から取り出して、展開したレールキャノンに無理矢理挟み込む。
「――気づかれたのです」
 ですが、もう遅い。照準は、向きは捉えているのだから。後はトリガーを引くだけ。
『そんなもので狙撃などと!』
「砲撃開始、なのです」
 音の壁を越えて、切り札が飛翔する。その反動でズタズタに引き裂かれたレールキャノンをしまい込み、天を穿つ轟音を背に、瞳は戦果も確認せず離脱――転送された。

 最初に聞こえたのは風の音、否、空を裂いた礫の音だった。浮遊砲台からの位置情報で起動した信管が弾頭に込められた無数の牙を解き放ち、半径数十メートルに及ぶ絶対迎撃圏を形成する。
 遅れて鐘を打った様な響き、衝撃が襲って来た。1秒にも満たない間隙、それでも全力で飛べれば回避は容易い――筈だった。
 バリア弾、浮遊砲台、一つ一つを蹂躙するのは容易い。だが予測不可能な領域からの跳弾、連携攻撃、波状攻撃、範囲攻撃、一つ一つが小さくとも、それらが束になって襲い掛かれば、只事では済まない。
『このっ……噴射装置が』
 躱し切れなかった礫を受けて、幾つかの噴射装置が文字通り駄目になる。だがパージは危険、先程の様に速さを失う事は、これ以上は、いけない。
 ほんの僅か、1秒にも満たないその瞬間に、数多の小さな牙がゼファーの全身に想像以上のダメージを与えた。
 一時地に降りて、体勢を立て直す他ないでしょう。
 まだ花々が残る下層に降り立った風の猛者は、天より降る火の礫を見やり、最後の戦いに備える。

成功 🔵​🔵​🔴​

テン・オクトー
スピード勝負にはボクは勝てないよ。でもここで立ち止まるわけにはいかないよね。
作戦はシンプル。攻撃を食らいながらも後手になりながらもスピードに食らいついて頑張るのみ。
WIS
【オーラ防御、見切り、第六感、激痛耐性】で先制攻撃を受ける。受けつつ【高速詠唱】で【UC】展開。竜巻効果で敵の竜巻威力を相殺、鉤爪効果で車輪を抑え込むよう尽力。

満身創痍気味だけれどここから【ダッシュ】で武器攻撃。【UC】の竜巻効果で敵の視野を邪魔し、体の小ささも利用し舞う花びらに紛れ、余計な事は考えず本能でスピードに対応。

ゼファーの速さで花びらが舞って…
この花びらが再び地に戻った時、ボクは立っていられるのかな…

連携アドリブ歓迎



●ヘルキャット
 それほど長い時間は立っていない筈。
 なのに、かつて無い程に私は疲弊し、蹂躙され、翼をもがれた。
 もう飛び立つ事は叶わないのか?
 そんな訳はないと手にした剣がせせら笑う。
 しかし思いを果たすにはまだ、戦いは終わらない。
 ここで終わる事など、出来ない。

「スピード勝負にはボクは勝てないよ。でもここで立ち止まるわけにはいかないよね」
 ふらりと、煤けた花々の間からテン・オクトー(ケットシーのシャーマン・f03824)が姿を現す。
『それは私も同じです、小さい者』
 ウインドゼファーは手にした車輪剣をオクトーに突きつけて。ぞれは絶対に引かぬという意志表示。
「ご」
『遅い』
 オクトーの詠唱を遮る様に、喧しい嗤う竜巻が姿を現すと共にその小柄な体を問答無用で吹き飛ばす。鋒鋩の体、たった一撃を喰らっただけで既に全身を裂くような痛みが走る。それでも耐える、そうなる事は分かっていた。意識が飛びそうだ、それでもやらなきゃならない。
「……先祖様」
 詠唱が、圧縮された呪力の文言が【サモニング・ガイスト】――祖先の英霊を呼び起こして。竜巻を纏い鉤爪を手にした英霊がふわりと、ゼファーの正面に対峙した。
『ヒャヒャ! 自分で戦わないでご先祖に丸投げってか!』
 力無きものはいつもこうだ。いつだって、何処でも、そうやって無理難題を押し付ける!
『全く逆だな、主よ』
『黙りなさい』
 哄笑を上げる剣をいつになく強い語気で諫めるゼファー。表情は覗けなくとも苛立ちを募らせている事は十分に分かった。
「ゼファー、違うよ」
 ふらふらと、血塗れの身体を引きずってオクトーが近寄る。オクトーを守る様に英霊が立ちはだかって。
「ボクは一人じゃないから、戦えるんだ」
 だからここにいるんだ。だから皆の為に戦えるんだと。
「ゼファーは何の為に、戦うの?」
『黙れ!』
 その無邪気な質問に激昂したゼファーは、手にした車輪剣を再びオクトーの元へと振り抜いた。ギャリギャリと切っ先が回転する奇怪な音が辺りに響く。だがそれは、僅かな時を以て止まった。
『回転が!』
 オクトーが『フレイル』を柄ごと車輪に絡ませたのだ。ただのフレイルだ、数多の邪悪を屠ったただの鉄球と鎖が、嗤う竜巻を放つ猛剣を塞いだのだ。
 その刹那、動きを止めた車輪剣を英霊の鉤爪が叩き折る。そしてそのままゼファーの懐へ――しかし二撃目はもう一振りの車輪剣に抑えられて、英霊はその身を引いた。

『――何処ですッ!?』
 しかし答えは返ってこない。刹那の応酬に紛れてオクトーは、その姿を花々の中へと隠した。小柄なケットシー、易々とは見つかるまい。しかし隠れても無駄たと言わんばかりに、残された車輪剣から再び竜巻が放たれる。
 花々を散らして、僅かな炎を飲み込んで、嗤う竜巻が大地を削る。如何に隠れようと、この威力をいつまで避ける事が出来るかと嘲りながら。
 だからこそ英霊が呼ばれたのだ。竜巻――それは奇しくも同じ能力。揺らめく影から放たれた同質の威力が車輪剣の暴威とぶつかった時、小さな影がゼファーの前へと現れた。
「盾!」
『そんな、ものッ!』
 攻撃では無く防御。オクトーはミスリルの『丸盾』を高々と掲げて、車輪剣の一撃だけを防いだのだった。そして空いた懐に英霊が飛び込む。
『馬鹿、な……』
 鉤爪がゼファーの脇腹をごっそりと抉る様に切り裂いた。爆ぜる噴射装置の一帯がぼとりと地面に落ちて。
『こ、の……!』
 返す刃が、逆手に持たれた車輪剣の切っ先が英霊の頭上に突き立てられる。霧散するガイストは幼い子孫を残して、ふわりと風の中に消えた。
「もう少し、あと少しなのに……!」
 続けて足元のオクトーをゼファーが蹴り上げる。既に初手の竜巻でボロボロの身体だ。これ以上は持たない。
『あと少し、そうですね――あと少しで』
 あなたの息の根を止められる。だけど。
 一振りの剣と噴射装置を失った今、下手な深追いで刺し違えられては、私がここにいる意味がない。
 ふわりと、ゼファーは更に下層へ跳ぶ。幾何かの炎を孕んだ風に乗って、その身体が虚空へと消え去った。

「助かっ、た……けれど」
 本当に、これ以上は、立って、いられない。
 後はよろしく、お願いします。
 瞳を閉じたオクトーの身体が光に包まれて。
 戦いは終着点へと迫りつつあった。

成功 🔵​🔵​🔴​

レナータ・バルダーヌ
スピード怪人……わたしはその道は素人ですから、相手の得意分野で挑むのは避けた方が賢明なのでしょう。
ですが、だからこそ敢えてこの技で挑み、願わくばお墨付きをいただきたいものです。

先制攻撃の「嗤う竜巻」には念動力の【オーラで防御】を固め、正面から受けて立ちます。
巻き上げられたら【痛みに耐え】つつ、【ブレイズソニックトレイル】による両翼の痕からの炎の噴射に竜巻の勢いも利用して、この身が許す限界まで加速して飛び出し体当たりを敢行します。

「この一撃で勝負です……!」

あぁ…よく考えたらこの場合、半分はゼファーさんのお力ですよね……。
道のりはまだまだ遠い、でしょうか……。



●堕天
 どさり、と地面に落ちる。
 機動兵装・噴射装置は残り50%の稼働率。車輪剣はあと一振り。
 全身の回転機構は健在、されど十全に威力を発揮する為には、装備が足りない。
 天を仰ぎゼファーは思う。無限大の欲望も喰らい尽くす。何の為に?
 そんなモノ、喰らってから考えればいいと竜巻を放つ車輪が嗤う。
 誰の為に? 仲間の為、オブリビオンの為、世界の破滅の為、それは、何故?
 朦朧とする意識の先に天使が――空から天使が舞い降りる姿が見えた。

「スピード怪人……わたしはその道は素人ですから、相手の得意分野で挑むのは避けた方が賢明なのでしょう」
 レナータ・バルダーヌ(復讐の輪廻・f13031)はばさりと翼を広げて、辺りを警戒しながら静かに下層へ降りていた。
「ですが、だからこそ敢えてこの技で挑み、願わくばお墨付きをいただきたいものです」
 誰に聞かせる訳でも無く、己自身の為に。私の復讐の為に、この力が真なる力であると証明する為に。
 舞う火の粉の数が徐々に減っていき、灰色の空気を裂いて見えたその先に、ウインドゼファーはいた。
「もしかして、今なら」
 そんな考えが頭をよぎる。そして直ちに過ちであると証明された。
 竜巻が、哄笑を上げる悍ましい竜巻がレナータの真正面に迫る。地獄の業火を巻き上げて迫り来るようなそれは、心と気流を乱して突き進む。
「そうですよね、分かっています」
 だからこそ、せめてダメージを減らせるように己の<エゴ>を身に纏う。痛みは耐えられる、だけど失くした物は戻らない事を、よく知っているから。
 どさり、と地面に落ちる。

『天使かと思えば、死神の使いでしたか』
「それはどちらかというと、あなたの方では……」
 顔面から突っ伏して落ちたレナータは痛みを堪えながら、もごもごとゼファーの皮肉に応じた。
 ゼファーも天を仰いだまま、微動だにしない。ただその手に持たれた車輪剣が、レナータの方へと向けられている。
『天使も、死神も同じです』
 死出の旅への誘い。運ぶ先が違うだけ。だったら――
「だったらわたしはきっと、天使です」
 あなたを骸の海へは、決して戻さない。
 翼が炎を放つ。燃え尽きる前の蝋燭の様に高々と、煌々と輝いている。
『炎、ですか』
 折角涼しい所へ来たのに、本当に……。
『本当に、しつこいですね、猟兵!』
 風が唸る。嵐が叫ぶ。竜巻が嗤う。放たれた威力をそのまま利用して、ゼファーは再び大地に立った。そして竜巻はレナータに迫る。最早逃げる事は、敵わない。
『ヒャヒャ! そのまま地面ごと抉られて死ねッ!』
 がりがりと花の大地を抉る竜巻はレナータを巻き込んで、天高くに堕ちた天使を放り上げる。巻き込まれた炎が渦を巻いて、再び大地を舐める様に焼きながら。
『先程の様に時間は取らせません。さようなら』
 ゼファーが全身のタイヤを回転させ、その威力で火の粉を吹き飛ばす。高々と放り上げられたレナータを見据えて、直下へ猛然と迫った。

 竜巻の回転が全身を切り刻み、噴き出した炎を飲み込んで大地に広げる。これで準備は整った。
 回転の最後、竜巻の頂点でレナータはばさりと勇ましく『獄炎の翼』を開いた。最高点から落下と回転の衝撃と速度を加えれば、ゼファーさんの速さを越えられるかもしれない。私が目指すのはただ一つ、この一点のみ。
「この一撃で勝負です……!」
 回転が己の五体を引き裂く様に暴力的な衝撃を加える。炎が包帯を焼け焦がし、裂傷を抉るような痛みが襲う。わたしへ確実に止めを刺すならば、恐らく真下に。
(この間の傷が開きませんように……)
 その願いは恐らく叶わない。炎の翼が色を変えてロケットの噴射炎の様に――【ブレイズソニックトレイル】がまるで隕石の様に、音を裂いて大地へと堕ちる。
 目先には剣を構えたゼファーが、車輪剣を頭上に掲げた風の猛者が全身のタイヤを回転させて、残る噴射装置を最大限に稼働させて飛翔する。
『その姿、まるで天から堕とされた――』
 堕天使の様。ゼファーの言葉が紡がれるより早く、炎の翼が風を飲み込んだ。

 燃え尽きた炎は僅か一瞬、ゼファーを越えられたのかもしれない。紙一重で己を守ったゼファーは、その代償に残る車輪剣を失ったのだ。
 あぁ……よく考えたらこの場合、半分はゼファーさんのお力ですよね……。
 道のりはまだまだ遠い、でしょうか……。
 大地を抉ってそのまま意識を失ったレナータを光が包んで。
『矢張り、地獄の死神じゃないですか』
 再び燃える大地を眺めて、ゼファーは深く息を吐いた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ツェリスカ・ディートリッヒ
【POW】
余は美しいものには敬意を払う主義だ。
汝の速さへの美学を前に、なりふり構ってはいられぬな。

「エッケザックスの栞」を大剣に変化させ、渾身の《怪力》と《属性攻撃》を込めて【覇界断章・巨人之剣】を放つ。
だが元より当たるとは思っていない。狙いは地形破壊効果で花の足場を砕くことにある。
相手の突進はそのまま砕いた足場を突き抜けることで真下へ回避、同時に《地形の利用》をさせてもらう。
敵が暴風を纏うなら、舞い散った大量の花びらはひとりでに敵の周囲へ巻き込まれるはずだ。
《空中戦》を挑むなら、奴の視界が奪われるその一瞬に賭けるしかない。
あとはエッケザックスに《覚悟》を込めて《捨て身の一撃》を放つまで……!


ハピィ・エンゲルオル
美味しそうな物、アタシも食べたい!
独り占めズルイ


衝撃一番吸収するソザイ、それ、実はナマニク!
だからいーっぱい買ってきたよ!

全部フセグの多分むーりー
壊れちゃったお肉、食べながら頑張るね

アタシよりずーっと、ツヨイしハヤイ
普通にやる、カナワナイ
そのスピードでナニかに正面衝突してもらう、イチバン?
そだ、宇宙ダツさんにしよ!

目的
自分も無限大の欲望を食べてみたい

手段
事前に生肉の山を買ってから転移
それを盾に暴風を防ぎ、肉を神の右手で食すことにより回復に繋ぐ(早業生命力吸収料理

コードで呼び出すのは宇宙ダツ(後で荒谷嬢の火で焼いて食べる
エーテル風吹き荒れる宇宙を泳ぐソレとゼファーの正面衝突を狙う(動物系スキル



●ばらばらに散る
 地獄の業火めいた炎が全てを包み込む。最早逃れようはない。
『それでも、ここを守らなければ……』
 システムの番人たるウインドゼファーはボロボロの身体を無理やり起こして、現れるであろう侵入者を待ち受ける。
『例えどの様な犠牲を払っても、私達は絶対に……負けるわけには、いかない!』
 嗤う竜巻の剣は二振りとも折られ、残る噴射装置も3割程。だが、戦う力を全て失った訳じゃない。
『――来ましたか、猟兵』
 ゆらりと空間が歪む。もう見えている。既に届く。後は動くだけだ。
 きん、と熱い風が吹いた。

 最初に二人を――ツェリスカ・ディートリッヒ(熔熱界の主・f06873)とハピィ・エンゲルオル(時空神の美食家・f16387)を襲ったのは、炎を纏った風と、暴力的な突撃だった。
「矢張り、か」
 ツェリスカはその一撃を身を挺して受け止め、弾かれる。全身を襲う痛みが、覚悟をしてきたとは言え己の動きを鈍らせて。そしてゼファーの突撃はそのまま炎と花の大地を砕き、既に着地すべき足場は無い。
「あー、焼けちゃった」
 衝撃一番吸収するソザイ、それ、実はナマニク! だからいーっぱい買ってきたよ! でも殆ど焼けちゃった!
 ツェリスカを襲い、続くゼファーの追撃を展開した生肉で防いだものの、想定外の炎がハピィの生肉を無慈悲にウェルダンへと変えて。
「だが……元より全て躱せるとは思っていない」
「そーだよねー」
 しかし力の過半を失っているゼファーの突進は、以前ほどの精彩を欠いている。纏った炎が、逆にその速さを殺しているのだ。
『熱い……これまで、ずっと浴びてきた分が、ここで……』
 獄炎と爆炎を立て続けに浴びた結果、機関の冷却部分は既にまともな機能を失っていた。熱いだけでは速さは生まれない。冷静なコントロールと、的確な冷却があってこそ、真の速さは生まれる。
『それに……まさかここに来て、最初の攻撃が響くとは』
 最初の、受け身を取りそこなった一撃、腹部に一撃、顔面に一撃。それらだけであれば耐えられたものの、揺らされた頭は徐々に己を蝕み、炎が酸素を阻み、痛めつけられた内臓が呪いの様に己を鈍らせる。
『舐めていたのは……私の方でしたか』
 だからといって、戦いは決して捨てられない。ここで終わらせる、とゼファーは残る噴射装置を全力で吹かし、再び二人の猟兵へと迫った。

「余は美しいものには敬意を払う主義だ」
 空を落ちるツェリスカは眼前を飛翔するゼファーを見上げて呟く。
「だが、汝の速さへの美学を前に、なりふり構ってはいられぬな」
 痛みを堪え、手にした『エッケザックスの栞』を長大な黒剣に。今は砕かれた花の足場の影に身を隠し、必殺の一撃の機会を伺う。
「アタシよりずーっと、ツヨイしハヤイ」
 ハピィは神の右手で焼けた肉を喰らい、己を治癒しながら思考する。
 普通にやる、カナワナイ。そのスピードでナニかに正面衝突してもらう、イチバン?
「そだ、宇宙ダツさんにしよ!」
 決めた。正面から勝負をかける。終わったらダツも食べよう。
 灰色の空、決着の時は近付きつつある。

『勝負です、猟兵』
 ゼファーが再び加速する。やれる事はただ一つ。
「行くぞ」
 黒剣を担いだツェリスカが跳ぶ。仕掛けられるのは、恐らく一瞬。
「独り占めズルイ、させないよ!」
 ハピィが叫ぶ。紡がれた神の奇跡が、空間を揺らして。

 炎が、赤熱化した神速が稲妻めいた軌道で足場だった残骸の尽くを破壊していく。地形に隠れるなど、させない。
 だがその慎重さが仇となった。空中に召喚された【わくわくしあわせディナー】は、宇宙ダツはその牙を剥き出しにして、残骸の影よりゼファー目掛けて突進した。
『今更、そんな伏兵で!』
 止められると思わない事です! くるりと残骸を蹴り飛ばし、その反動で宇宙ダツに向かうゼファー。噴射装置は全て加速に、今は燃える全身が威力。異形の怪魚を左の拳で、そのまま無慈悲に焼き貫いた。
「伏兵は、一人じゃない」
 貫いたその先、足場ではなく怪魚の影に隠れていたツェリスカが、熔熱界の主がその炎すら呑み込まんと、正面に長大な黒剣を構えた。
『今更、そんなもので!』
「エッケザックスの栞よ! 今こそ、その真価を余に示せ!」
 覚悟はいいか――【覇界断章・巨人之剣】が黒剣を地獄の炎で包み込む。炎を以て立ち向かうならば、いいだろう――勝負だ!
 赤と黒が交錯して、灼熱の波が空間を揺らす。塵を孕んだ空気が爆ぜて、神速の拳がツェリスカの右肩を溶かし、抉る。
「言っただろう……覚悟は、いいかと!」
 外された一太刀を、黒剣の切先を押し込まんと、最早柄を握る事すらままならない右手を外して、その掌で柄頭をゼファーの肩口へ押し込む。
「なりふり構って、いられるか!」
 灼熱の刃がゼファーの肩口を抉る、埋まる、断ち切る。肉の焦げる様な匂いが立ち、そのまま左脇腹へと刃を進めて。
『こ、の……』
 何故、そこまでして、何を求めると、言うの……? 空にゼファーの呟きが漏れる。
「それはね、ゼファー」
 焼けた怪魚を口にして、ふわりと浮かんだハピィが続ける。
「アタシも、無限大の欲望を食べてみたい」
 一緒だよ? と。
『無限大の、欲望』
 ああ、私はそれで何をしたかったのだろう。純粋に、何が欲しかったのだろうか?
「欲なんて、誰もが、持っている」
 焼け爛れた肩口からぬらりと血を流すツェリスカ。その身体は最早飛ぶ事も叶わず、ゆっくりと地に落ちていく。 
「汝は、本当は、何を望んだ」
 そう語り、そのまま意識を落として。その後ろにひらりとハピィが付きそう。
『矢張り、分から、ない』
 両断されたゼファーの全身から虚ろな光が漏れて。
『ただ、少し』
 あなた達が、羨ましいかも。
 そう呟いて、ゼファーは消えた。

 システム下層部分、火の手から逃れた二人の猟兵はそこで続く道を見つける。
 だが今は体を癒して。次に来た時が恐らく、最後の戦いだろう。
 風が哭いていた。それは冷たい風だった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年05月25日


挿絵イラスト