4
バトルオブフラワーズ⑪〜突破するウインドブレイク

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ #ウインドゼファー

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#キマイラフューチャー
🔒
#戦争
🔒
#バトルオブフラワーズ
🔒
#ウインドゼファー


0





「モンキーに続きバニーまでとは、驚きました」
 二体の幹部を撃ち破った猟兵たちの前に、一陣の風と共に姿を現したのは、二振りの車輪付きの剣で武装した紅いマスクの怪人。
 言葉とは裏腹に動揺の気配を見せないスピード怪人『ウインドゼファー』は、これより先の道を阻まんと武器を構える。
「でも、私の役目は門番。ドン・フリーダムがシステム・フラワーズを取り戻すまでの時間稼ぎならば、私の『風を操るユーベルコード』でも、決してあの2人にひけは取りません」
 この戦争において時はオブリビオンの味方だ。こうしている間にもカタストロフの到来は刻一刻と迫っている。それを知るが故に彼女は覚悟の上で時を稼がんとしている。
「私達は全てを手に入れる。誰にも、邪魔は、させないッ!」
 その身に暴風を纏い、怪人幹部最後の一人は嵐の如く猟兵たちに挑み掛かった。


「バトルオブフラワーズへの参戦に感謝します。リムは現在の戦況を報告します」
 グリモアベースに集った猟兵たちの前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(人間の精霊術士・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「皆様の活躍によって、6つの『ザ・ステージ』は制圧され、キマイラフューチャーの中枢である『システム・フラワーズ』への道は開かれました。ここを守るのはオブリビオン・フォーミュラに仕える怪人幹部たち。第三の関門として立ちはだかるのはスピード怪人『ウインドゼファー』です」
 最後の幹部である彼女――そう、ゼファーは女性である――を撃破すれば、システム・フラワーズを占領せんとする『ドン・フリーダム』の元への道がついに開かれる。
 カタストロフ到来までに残された時間はあと半月を切っている。この最後の関門で時間をかけている余裕は無いだろう。

「システム・フラワーズの内部は『咲き乱れる花々の空間』で、花々が集まって足場になる仕組みになっています。ウィンドゼファーはドン・フリーダムの所在へ辿り着く道を阻む最後の門番として、皆様の前に立ちはだかります」
 先に現れたエイプモンキー、ラビットバニーとは異なり、彼女はことさら特殊なユーベルコードを有しているわけではない。
「ウィンドゼファーの能力は『風を操るユーベルコード』。これまでの幹部とは違い、ある意味普通で素直な能力と言えるかもしれませんが、それゆえにシンプルに強大な能力とも言えます」
 彼女もこれまでの二人と同様、幹部に相応しいだけの実力は備えている。加えてここを突破されれば後がないとなれば、決死の覚悟でこの場を死守せんと戦うだろう。
「得意の風とスピードを活かした先制攻撃にご注意を。油断すればその一撃だけで戦闘不能になりかねない、警戒すべき強敵です」
 ここまで戦ってきた皆様には言うまでもないことでしょうが、と呟きながらもリミティアは猟兵たちに念を押した。

 スピード怪人ウインドゼファーは強大なオブリビオンである。たとえ撃破に成功しても、完全に力尽きるまで骸の海から蘇る力を持つ。
「ですが、短期間に許容値を超える回数倒されれば、それ以上の復活は不可能となります。何度でも門番として立ちはだかる彼女に挑み続け、他の猟兵のチームと合わせた撃破数が一定に達すれば、彼女を完全に撃破できるでしょう」
 ウインドゼファーを突破すれば、この戦争もいよいよクライマックスに。キマイラフューチャーを脅かすオブリビオン・フォーミュラ『ドン・フリーダム』の座す玉座に、王手をかけられる。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」
 猟兵たちへの期待と信頼をその眼差しに込めて、リミティアはシステム・フラワーズへの道を開くのだった。



 こんにちは、戌です。
 本シナリオの攻略目標は「⑪スピード怪人『ウインドゼファー』」となります。
 困難な闘いが予想されますので、以下の注意事項にも目を通したうえで、苦戦や失敗も覚悟の上で挑戦してください。

 敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
 この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。

 また、この戦場は戦力「40」をゼロにできれば制圧成功ですが、それ以上の成功数があった場合、上回った成功数の半分だけ、「⑬『ドン・フリーダム』」の戦力を減らせます。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
288




第1章 ボス戦 『スピード怪人『ウインドゼファー』』

POW   :    フルスロットル・ゼファー
全身を【荒れ狂う暴風】で覆い、自身の【誰よりも速くなりたいという欲望】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    ソード・オブ・ダイアモード
対象の攻撃を軽減する【全タイヤ高速回転モード】に変身しつつ、【「嗤う竜巻」を放つ2本の車輪剣】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:藤本キシノ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

フロッシュ・フェローチェス
速さ、速さ勝負か……ハハ――燃えて来たじゃないか。
ならお前の周りを加速式起動の、残像付きでグルグル包囲してやるよ。
攻撃の隙を見つけるために!

……けど、やっぱ駄目か。向こうの方が速い。範囲が広い以上、突っ込んでも意味がない。
なら全力バックジャンプや衝撃波交えながらの超速ダッシュ後退だ。攻撃なんて考えない。

――と、思ったか?
残った僅かな足場を踏みつけ、お前にアタシの最速を叩き込んでやるよ。
其処に居るお前へアタシの蹴りを!

……ああ、全部当たらなかったね。
けど気が付いてるか?弾丸が来てる事に。
悪いけどさっき銃撃ってたんだ。――そして、その弾丸を追い越しただけ。
まだ速くなれる……ありがとウィンドゼファー



「速さ、速さ勝負か……ハハ――燃えて来たじゃないか」
 湧き上がる興奮を隠すこともなく、最高速で戦場に駆けつけたのはフロッシュ・フェローチェス(偽りの疾咬・f04767)。
 キマイラの証たる右眼の「翡翠の龍眼」で見据える相手は、スピード怪人ウィンドゼファー。「速さ」を求め極めんとする彼女にとっては何としても超えたい敵手。
 概念術理「加速式」を起動して、フロッシュは一迅の風と化して戦場を駆ける。

 その速度に、怪人はほう、と僅かに感心を示しながらも、二振りの車輪剣を構え。
「立場が異なれば存分に競い合ったでしょうが、今の私の役目は門番。この先へは通しません、誰一人」
 地を抉るように低く双剣を振り上げれば、巻き起こった暴風が花の足場をバラバラに切り刻みながら吹き荒れる。迂闊にその暴風圏の内に突っ込めば、重傷は免れ得ないだろう。
「……やっぱ駄目か。向こうの方が速い」
 ゼファーの周囲をグルグルと駆け巡りながら隙を窺っていたフロッシュは、暴風に捉えられるよりも速く後方へと跳躍。メカブーツ「衝角炉」から放つ衝撃波の反動も加速に利用して、超速のダッシュで破壊の嵐から逃れる。

「逃げ切りましたか。しかし消極的ですね」
 ゼファーはフロッシュを追撃することなく、再び車輪剣を構えなおしながら遭遇時と同じ位置に佇んでいた。彼女に深追いの理由はない。ドン・フリーダムがシステム・フラワーズを掌握するまで時間を稼ぐことが、彼女の勝利条件なのだから。
「このまま貴女に攻撃の意図がないなら――」
「――と、思ったか?」
「え?」
 不敵な言葉にゼファーが訝しんだ瞬間、フロッシュは再び地を蹴った。後退から、前進へと。開いた距離を助走に活かし、バラバラにされた足場の一部を踏みつけて。
「お前にアタシの最速を叩き込んでやるよ」
 瞬時に敵の懐に飛び込んだフロッシュが放つのは翠碧惨刹『デスストーカー』。接近時の速度を乗せた蹴撃がゼファーを襲う。
「ほう……」
 再び感嘆の声を漏らしながら、ゼファーが動いた。その速度はフロッシュに勝るとも劣らず、軽々と蹴撃を躱す。しかしフロッシュの攻撃は止まらない。執拗に標的を追い狙いながら、刹那の内に連続蹴り。しかしゼファーはこれも見切る。
 ならばと繰り出された渾身の超速蹴りさえも、ゼファーの仮面を僅かに掠めるだけで、有効打とはなり得なかった。

「これで終わりですか?」
「……ああ、全部当たらなかったね」
 ほぼ無傷のまま余裕を崩さないゼファーに対して、全力の連撃を躱され息の上がったフロッシュは悔しさを滲ませながら零し――だが、口元に笑みを浮かべる。
「けど気が付いてるか? 弾丸が来てる事に」
「なに……ッ?!」
 言葉とほぼ同時に、降り注いだ無数の散弾がゼファーのボディを叩いた。反射的に回避運動を取るゼファーだが、全弾は躱し切れない。
「悪いけどさっき銃撃ってたんだ、後退した時に。――そして、その弾丸を追い越しただけ」
 フロッシュの連撃は、敵にそれを気付かせずに散弾の範囲に誘導するためのもの。
「当てられぬことは承知の上で……自分の速度を囮に使ったということですか」
 メタリックなボディに弾痕を刻まれたゼファーの問いを肯定するように、フロッシュは清々しい表情で笑い。
「アタシはまだ速くなれる……ありがとウィンドゼファー」
 そのまま反撃を受けるよりも速く、前線から俊足で後退していくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

桜雨・カイ
連携歓迎
速さを競うのは難しそうですね…。どうにかして抑える方法を考えないと。

UCを発動されたら抵抗せず脱力して【柳桜】で受ける(UC無効+怪我回復)そのまま倒されたフリをします。

直後、相手が油断している間に【念動力】で【念糸】を地を這うように敵へと移動させ(【地形の利用・物をかくす】利用)、タイヤの金具や棒に絡みつかせる、可能な限り何重にも。
タイヤの外側は刃がありますが、そうでない部分は絡みつく余地があると思います。

そうやってタイヤの機動力を抑えて味方のサポートに回ります。
可能なら【なぎ払い】【2回攻撃】で攻撃を仕掛けます。


ルカ・ウェンズ
やっと悪党らしい怪人が来てくれたわ!足場をバラバラにするのなら空中戦を仕掛けるわよ。
【行動SPD】敵のUCに対抗するために【空中戦】を仕掛け
①(どこが目や耳か、わからないけど)対オブリビオン用スタングレネードで【恐怖を与える】ことで動きを止めて敵の後ろをとる
②【残像】を使い敵を惑わしUCを回避しながら敵の後ろをとる
③【戦闘知識】を使っての空中戦で敵の後ろをとる
どれか一つでも上手くいったらUCでの攻撃と【怪力】任せの【2回攻撃】で敵を破壊するわ。
【心情】どれも失敗して敵のUC攻撃を受けたときに備えて宇宙昆虫を盾にする♪のは後が怖いから【オーラ防御と激痛耐性】で身を守りその後は…UCで反撃するわ!



「やっと悪党らしい怪人が来てくれたわ!」
「ここは通らせてもらいます」
 後退する味方に代わって前線へと姿を表したのは、悪党狩りを生業とするルカ・ウェンズ(風変わりな仕事人・f03582)と、からくり人形「カイ」を伴った桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)。
「速さを競うのは難しそうですね……。どうにかして抑える方法を考えないと」
「足場をバラバラにするのなら空中戦を仕掛けるわよ」
 先の攻防から敵の能力の程を目の当たりにした二人は、そこから対応策を頭の中で組み立てながら交戦を開始する。

「何人来ようと同じこと。私の風は全てを拒みます」
 負傷の動揺から即座に立ち直ったゼファーは、再びレボリューション・ストームを放つ。吹き荒れる暴風が、花の足場を破壊しながらまたも猟兵たちに襲い掛かる。
 ルカは足場の崩壊に備えて使役する宇宙昆虫に飛び乗ると、残像を描きながら変幻自在な軌道で暴風を躱していく。
 だが、ゼファーの操る暴風は執拗にして苛烈。宇宙空間ではないために本来の速度を発揮できない宇宙昆虫ではその全てを振り切ることはできず、ルカの身体は徐々に風の刃に切り裂かれていく。
(宇宙昆虫を盾にする♪ のは後が怖いから……)
 乗騎へのダメージを最小限に抑えながら、自らは身に纏ったオーラで風の威力を和らげ耐えるルカ。このままどうにかして相手の背後に回り込みたいのだが、既に猟兵たちの力を警戒している敵は、容易に隙を見せようとはしない。

 一方、カイは――ルカと異なり空を舞う術を持たない彼は、足場の崩壊に巻き込まれながら暴風の直撃をもろに食らうことになった。操る人形であり、ヤドリガミたる彼の本体でもある「カイ」と共に、彼の身体は糸が切れた人形のように脱力しながらその場に崩れ落ちる。
「まずは一人」
 暴風の中心に立つゼファーが、仮面の下で微かに笑ったような気配がした。

 ――だが、敵を仕留めたと思った瞬間、ゼファーに生じた僅かな気の緩みを、ルカは見逃さなかった。
「どこが目や耳か、わからないけど……五感があるならこれは効くわよね」
 彼女が投じたのは対オブリビオン用スタングレネード。標的の仮面の目前で炸裂したそれは、凄まじい爆音と閃光を放ち、オブリビオンに恐怖をもたらす。
「く……ッ!」
 五感と精神に叩き込まれた衝撃によって、ゼファーの身体が一瞬硬直する。その間隙を突いてルカは宇宙昆虫を全速力で駆り、敵の後ろを取った。

「やって、くれますね……!」
 視聴覚にダメージを負ったゼファーは、それでも風の流れを読むことで周囲の様子を把握し、背後から迫るルカ目掛けて振り返りざまに車輪剣を一閃せんとする――しかしその時、彼女の身体が再び硬直した。
「っ、何、これは、糸?」
 ゼファーの身体や車輪剣のタイヤ部分の金具や棒に、細く、されど強靭な糸が絡みつき、彼女の動きを束縛していたのだ。
「一体誰が、いつの間に……」
「あなたの攻撃を受けて倒れた直後から、ですよ」
「なっ、貴方は!?」
 そこでゼファーは、倒したと思っていたカイがいつの間にか無傷の状態で起き上がっているのにいるのに気付き、驚愕する。
 彼はゼファーの暴風を受けた瞬間、ユーベルコード【柳桜】によってそれを無効化していた。そして倒されたフリをしたまま自らの念動力で糸を地に這わせ、悟られない内にゼファーを束縛したのだ。
「この力……みんなを癒やす力とさせてもらいます」
 カイが懐に入れていた護符「糸編符」を放つと、符が受け止めた破壊の力が回復力に変換されて解き放たれ、ルカと昆虫、そして「カイ」の負傷を癒やしていく。

「不味い……ッ!」
 窮地を悟ったゼファーは焦って束縛を振りほどこうとするが、何重にも絡まった念糸から逃れるには彼女とて数瞬を要する。そしてその数瞬があれば猟兵たちには十分だった。
「やっぱり悪党には遠慮がいらなくていいわ」
 愉しげな笑みと共に、ルカはその身を守っていたオーラを右手の変形式オーラ刀に収束させ、同時に左手の仕事人の拷問具に己の血を吸わせる。殺傷力を最大まで高められた二振りの刃は、無防備な敵の背中へと力任せに振り下ろされ――そのボディにバツ字の傷を深々と刻む。
 すかさずルカは【虫の本】によって召喚した昆虫型機械生命体の群れに、怪人への追撃を行わせた。
「がぁぁぁぁっ?!」
 無数の昆虫に全身を這い回られ、傷口を抉られ、ボティを齧られる苦痛と嫌悪感。ゼファーは再び風を巻き起こして虫を吹き飛ばすが、その直後に彼女が見たのは正面から迫る二人の「カイ」。
「行きます!」
 ヤドリガミとからくり人形が同時に繰り出すなぎなたの斬撃が、ゼファーのボディにさらなる損傷を刻み付けた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

エルト・ドーントレス
アドリブ歓迎

POW選択

UC発動の時間を稼ぐ為に、敵の接近に合わせて『自分の』足元に向けてグレネードを発射する
もちろん事前に追加装甲を施したうえでね

超高速で動く者にとっては破片一つでも致命傷になる可能性がある
仮にも幹部がリスクを無視して突っ込むほど馬鹿じゃないだろう

わずかでも足が止まったなら、ニグルで水蒸気から無数の氷を生み出しスルーアの起こした乱気流に巻き込む形で周囲を囲わせる
風と氷の防護壁…って言っても暴風に身を包んだ相手にはこけおどしにしかならないかも

本当の目的はこの擬似積乱雲で生み出した雷で敵を迎撃する事なんだけどね

あんたがどんなに早くとも雷光には及ばない
それを今実証して見せようか



「なるほど……これが猟兵の力ですか。モンキーやバニーが倒されたのも頷けます」
 傷ついた己の体を見つめ、ぽつりと呟くウィンドゼファー。そこに追撃の体制を取ったのは、パワードスーツ「レッキス」を装着したエルト・ドーントレス(灰色猟兵・f14009)だった。
「コード実行。パラメータ設定……」
「させません」
 ユーベルコードの発動準備に入った彼を止めるべく、瞬時にゼファーは動く。全身を暴風で覆った彼女の身体は重力の軛から解き放たれ、凄まじい速度で飛翔する。

 このままではユーベルコードの発動より敵の接近の方が速い。そう予測したエルトは携行したグレネードランチャーを自分の足元に向けて発射する。
 放たれた炸裂弾は爆音を上げて幾つもの破片を周囲に撒き散らす。超高速で動く者にとっては、この破片の一つでも直撃すれば、致命傷となり得る危れもあるだろう。
(仮にも幹部がリスクを無視して突っ込むほど馬鹿じゃないだろう)
 それでわずかでも足が止まればいい。それがエルトの狙いだった――だが、敵の行動は彼の予測の上をいった。

「私は認識を改めました。貴方たちは強い。リスクを覚悟せずして勝利できる相手ではない、と」
 炸裂弾の爆発を見てもゼファーは直進を続ける。猟兵の驚異をその身で体感した彼女は、消極的な足止めではなく、積極的な敵の排除へと目的をシフトさせていた。
 この変化は誰にも予測できず、エルトにとっては不運としか言いようがない。
「私は風。どんな障害であろうと私を止められはしない!」
 吶喊するゼファーは、避け切れなかった破片の一部がボディを掠めるのにも構わず、エルトに肉迫した勢いのままに車輪剣を一閃。
「ぐ……っ!」
 パワードスーツの装甲が一文字に切り裂かれ、中にいるエルトの肉体を刃が抉る。
 自らがグレネードの爆発で損傷しないように施した追加装甲が結果的に功を奏した。もしこれが無ければ、命まで真っ二つに断たれていたかもしれない。

「仕留め損ないましたか。ですが次で決めます」
 速度を維持したまま離脱していくゼファー。もう一度あの加速を乗せた一撃を食らえば、今度こそ戦闘不能は免れない。
 だが、エルトには「次」を与えてやるつもりはなかった。綱渡りになったが、ユーベルコード発動までの時は稼げたのだ。
「擬似精霊の生成開始……ニグル、スルーア、頼む」
 現れるのは彼の【守護擬精】。主の命に従って、先ずは氷の疑似精霊ニグルが大気中の水蒸気の原子運動を停止させる。生じた無数の氷を、風の疑似精霊スルーアが起こした乱気流に巻き込ませ、エルトの周囲を囲わせる。
「風と氷の防護壁……って言っても、あんたにはこけおどしにしかならないかも」
「ええ、その通りです」
 氷風の渦の中心に立つエルトに向かって、暴風を纏うゼファーが再び吶喊する。風を操ることにかけては彼女の方が数段上だ。炸裂弾の爆発にも怯まなかった彼女が、この程度の障害では止まる筈はない。

 ――しかし、今度のエルトの本当の目的は防御ではない。
 無数の氷の粒を含んだ乱気流の塊は疑似積乱雲となり、その内部での粒子の衝突は静電気を生み出す。そしてエルトの第三の疑似精霊アウロラの力によって、増幅された電流は空気の絶縁を突き破り、雷となって迸る。
「あんたがどんなに速くとも雷光には及ばない。それを今実証して見せようか」
 平均秒速200kmという恐るべき自然の猛威の再現が、一直線に迫るゼファーを迎撃する。ゼファーはそれに反応こそしてみせたものの、躱すことは叶わない。
「――ッ!!!!」
 雷光の矢に貫かれたゼファーの身体は勢いを失い、花の足場に向かって墜ちていった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ヴィサラ・ヴァイン
[毒使い]の蛇髪をチラつかせ[恐怖を与える]事で近接攻撃を牽制し竜巻攻撃を誘います
先制攻撃対策として《魔眼『コラリオ』》を使用し自身の体を[範囲攻撃]で周囲ごと石化、重量で竜巻をやり過ごす
その後【宝石の谷】を発動し周囲ごと身体を不滅の宝石に変え敵の攻撃を耐え抜きます
ソード・オブ・ダイアモードを解除させないよう[全力魔法]で宝石を操りダイアの刃で上空から攻撃
あのモードでは攻撃を軽減されるけど…本命は足元から伸びるダイアの鎖による拘束…逃さない事です
そうですねウインドゼファー、貴女の願い事は『時間稼ぎ』
その願い、叶えてあげますよ…その代わり、貴女が寿命を迎えるまでお付き合い願いますね?


トリテレイア・ゼロナイン
貴女が目的の為、仲間の為、門番として立ち塞がるならば、私はキマイラFの人々の為、騎士として戦いましょう。
参ります

風を纏った飛翔からの一撃……機械馬を遠隔●操縦して死角をカバーさせ、いつでも私を●かばえるように追従させ、攻撃される方向を限定
ある程度の攻撃進路を予想してセンサーで接近を●見切り、脚部パイルも併用して地面をしっかりと●踏みつけ姿勢を安定させ、攻撃を●怪力による●盾受けで受け流して防御

初撃を凌いだらUCのフィールドを展開。力を暴走させ飛翔の制御を狂わせてUCの解除か墜落を狙います
いずれかで生まれた隙にスラスターでの●スライディングで急速接近
●怪力で振るう剣の一撃で攻撃します



「くっ……これでもまだ及びませんか。ですが私は退くわけにはいかない!」
 猟兵の反撃によって撃墜されたゼファーは、墜落する前にフルスロットル・ゼファーを再発動。再び高度を上げ、覚悟を暴風として纏いながら猟兵たちと対峙する。
「貴女が目的の為、仲間の為、門番として立ち塞がるならば、私はキマイラFの人々の為、騎士として戦いましょう」
 迎え撃つのは白の騎士。大盾と儀礼剣を構え、機械白馬「ロシナンテⅡ」を従えたトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が、誓いを胸に対峙する。
「貴女の願い事は『時間稼ぎ』……そうですねウインドゼファー。その願い、叶えてあげますよ……その代わり、最後までお付き合い願いますね?」
 騎士と並び立つのは蛇髪の少女。ヴィサラ・ヴァイン(魔女噛みのゴルゴン・f00702)は赤き魔眼「コラリオ」を輝かせながら、上空に浮かぶ標的を見つめた。

「望むところです。私も全力を以って挑ませてもらいます」
 二人の猟兵を次なる驚異と判断し、上空を旋回しながら隙を窺うゼファー。だが、敵のスピードを活かした近接攻撃を警戒していた二人は、容易にその機を与えない。
 トリテレイアは遠隔操縦したロシナンテⅡに死角をカバーさせ、事によれば即座に自身をかばえるよう追従させることで、ゼファーの攻撃の方向を限定。
 ヴィサラは他者に恐怖を与える自らの性質を活かし、帽子の隙間からチラつく蛇髪と共にゼファーを威嚇する。オブリビオンであろうとも関係なくもたらされる本能的な恐怖は、ゼファーにヴィサラたちへの接近を躊躇させる。

「――迂闊に近付いては、先の二の舞ですね。ならが我が車輪剣の真の力をお見せしましょう」
 接近戦を諦めたゼファーは、第三のユーベルコード【ソード・オブ・ダイアモード】の封印を解いた。全身のタイヤが高速回転を始めて彼女の防御力を強化し、両手の車輪剣からは風が巻き起こる。
「すべてを嘲笑い、吹き飛ばし、消し去りなさい、ダイアモード!!」
 彼女が二本の車輪剣を勢いよく振るうと、回転する剣先の車輪からは巨大な竜巻が放たれ、嗤うような風音を響かせながら猟兵たちに襲いかる。
 それは巻き込んだあらゆる者を彼方へと吹き飛ばす、凄まじき破壊の大渦だった。

 迫る大竜巻に対し、トリテレイアは脚部のアンカーパイルを足元に突き刺すことで姿勢を安定させ、大盾を構えて受け止める。一方のヴィサラは魔眼の力で自らの身体を周囲ごと石化させ、足場を固定しながらその重量で竜巻をやりすごそうとする。
 その対策の方針に誤りはなかったろう。されど予想外だったのは、決死の覚悟を決めた怪人幹部が放つユーベルコード、その威力。
 嗤う竜巻に巻き込まれた二人の身体はそのまま飛ばされることは無かったものの、トリテレイアは盾を保持しながら風を受け止めるので精一杯。石化中とはいえ剥き身のまま暴風に晒されることとなったヴィサラの身体にはピシリと無数のヒビが入る。
 ――その時、機械白馬とトリテレイアに搭載されたセンサーが急速接近する飛翔体を捉え、トリテレイアは咄嗟にそちらに盾を向ける。
「良い反応です」
 竜巻に紛れて距離を詰めたゼファーの斬撃が、トリテレイアを襲う。暴風を纏った車輪剣の初太刀は力任せに盾で受け流せたものの、続く二の太刀を防ぐ間はない。
 回転する刃が白色の装甲を切り裂き、ボディの内側をズタズタに抉っていく。

 やがて嗤う竜巻が収まった時には、二人はもはや満身創痍だった。だが、それでも二人の眼差しから戦意は失われず、不屈の意志で上空のゼファーを見据えていた。
「この形態となった私の攻撃を耐え抜くとは、見事です。でもこれで終わりです」
 二重のユーベルコードによって強化されたゼファーが、再び旋風を纏う車輪剣を振り下ろさんとした――その寸前、トリテレイアが動いた。
「確かに貴女のユーベルコードは強力です。ですが過剰な破壊力や効果が命取りとなる場合もあります」
 肩のハードポイントに内蔵した【アンチ・ユーベルコードフィールドジェネレーター】を起動。ユニットより射出された発振器がゼファーの周囲に特殊なフィールドを展開する。その効果は即座に現れた。
「――ッ?! なに、これは……?!」
 ゼファーの全身のホイールが異常な速度での回転を始め、身に纏っていた暴風は激しさを増し、彼女自身の身体を傷つける。
「力が……制御、できない……ッ?!」
 トリテレイアの展開したフィールドは、対象のユーベルコードの制御を暴走させ、自滅へと誘う。本人の意志とは関係なく荒れ狂う暴風はゼファーから空中での自由を奪い、彼女は自由に飛ぶどころか墜落しないようバランスを取るだけで精一杯になる。

「やってくれますね……ッ!!」
 ヨロヨロと空中を彷徨うゼファーが苦し紛れに車輪剣を振るう。だがソード・オブ・ダイアモードの制御も失われている以上、放たれた嗤う竜巻に初撃ほどの威力はない。そこにすかさず竜巻の前に立ちはだかったのはヴィサラだった。
「この不滅の輝きに、願いを込めて」
 ユーベルコード【宝石の谷】――ヒビ割れた自らの身体を含む無機物を変換して彼女が創造するのは『不滅』と『願い事の成就』を約束するダイアモンドの輝き。
 展開された不滅の宝石の防壁を、嗤う竜巻は砕くことも吹き飛ばすこともできず、空虚な嗤い声だけを残して消滅していった。

 敵の攻撃を凌いだヴィサラはそのまま宝石を操り、無数のダイアの刃をゼファーの上空から降り注がせる。
「言いましたよね? 貴女の願い、叶えてあげるって」
「ッ……!!」
 刃の雨は異常回転するゼファーの全身のホイールによって弾かれ、ほとんどダメージは与えられていない。だがヴィサラの狙いはそれではなく、敵にユーベルコードを解除させる隙を与えないことだった。
 ソード・オブ・ダイアモードには使用者の寿命を削るという代償がある。本来であれば少なくともこの戦闘中に命が尽きるほどのリスクでは無かった筈だが、アンチ・ユーベルコードフィールドによって暴走した能力の代償は何十倍にも膨れ上がっている。
「改めてお付き合い願いますね? 貴女が寿命を迎えるまでの『時間稼ぎ』に」
「こ、の…………ッ!!?」
 焦りは視野を狭めさせる。上空からの刃とヴィサラの言葉に意識を集中させていたゼファーは、足元から伸びてくるダイアの鎖に気が付かなかった。
 この鎖こそがヴィサラの本命。空中をふらつくゼファーを逃すまいと拘束した鎖は、そのまま彼女の身体を地上へと引きずり下ろす。

 そして、敵が剣の届く高度まで墜ちてきたこの好機をトリテレイアは待っていた。
「参ります」
 傷ついたボディに鞭打って、スラスターの出力を最大に。滑るように目標に急速接近していく彼は、長剣を握る手に残された力のすべてを籠める。
 風のコントロールを失い、その身を拘束された今のゼファーの速度は死んだも同然。避ける術などありはしない。
「ぐ、ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ?!?!」
 斬撃がボディを深々と貫くのと同時に、ゼファーのユーベルコードが解除される。
 自発的に解いたのではなく、力を維持できなくなったのだ――それはすなわち、彼女の命の灯火が、限界に迫りつつあることを意味していた。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

ボアネル・ゼブダイ
【ブルーダイヤ】

王手まで後一歩という所か
これまでの敵とは様相が違うな、ならば我々も心してかかろう

由貴がやられただと!?

私も最小限のダメージとなるよう『見切り』
【彼方からの来訪者】を発動
相手が二本の剣ならこちらは四本の剣だ
竜巻を二本の剣で切り刻み、残る二本の剣で攻撃
来訪者と連携を取り相手を攻撃する

おのれ!よくも由貴を!

相手は来訪者を操る私に狙いを定め一気に攻撃してくるだろう
車輪剣が私の肉体を引き裂こうと刃を突き立てた瞬間がチャンスだ
『激痛耐性』で痛みをこらえ
剣の『カウンター』で相手の腕を『串刺し』
敵の動きを止める
あとは来訪者の攻撃を由貴と合わせるだけだ

風は掴んだ
タイミングは私に合わせろ、由貴


駆爛・由貴
【ブルーダイヤ】

なんかすげぇ厳つい奴が出てきたな…
え?女?…まじ?

まずはボアネルと一緒に相手の攻撃を受けて
俺はそのまま吹き飛ばされる

残念!由貴の冒険はここで終わってしまった!!
…なんてな!

死なねーように防御に集中して
吹き飛ばされた後はそのまま死んだふりだ
バレねーようにベロボーグの『マヒ攻撃』で軽く自分を傷つけて仮死状態になるぜ
マヒから回復したら後はボアネルの合図待ちだ
頼むからバレるなよ…

よっしゃ!!
攻撃を軽減?だったら効くまでぶち当てるだけだぜ!!

ボアネルの合図が出たら【ヘイル・シュート】を発動!
アイツの来訪者と同時に砲撃の集中豪雨を敵に降らせるぜ!

ってかあんまり無茶すんじゃねぇぞボアネル!!



「っ、う……まだ……まだです……!」
 膝を突きかける身体を車輪剣を支えにして立ち続けるウインドゼファー。度重なる猟兵の猛攻によって、その身は満身創痍。だが、ここで一分一秒でも時を稼ぐことが自分たちの勝利に繋がると信じて、彼女は猟兵たちの前を阻み続ける。
「王手まで後一歩という所か」
 そんな彼女の様相を見て静かに呟いたのはボアネル・ゼブダイ(Livin' On A Prayer・f07146)。ここを突破すれば、この戦争の首魁に手が届く――そして、この戦いの決着は最早間近であった。

「なんかすげぇ厳つい奴が出てきたな……え? 女? ……まじ?」
 ボアネルの相棒の駆爛・由貴(ストリート系エルフ・f14107)は、相手の外観から予想のし辛い性別に若干困惑するも、すぐに気を取り直して戦闘態勢を取る。それに合わせてボアネルも、一族の宝剣たる黒剣グルーラングを構えて前に出る。
「これまでの敵とは様相が違うな、ならば我々も心してかかろう」
「いい覚悟です。だけど、私たちは負けない……!!」
 最後に残った命の灯を燃やし尽くす覚悟で、ゼファーはソード・オブ・ダイアモードを再起動。唸りを上げる車輪剣より放たれた竜巻が、けたたましい笑い声と風音を響かせて、猟兵たちに牙を剥く。

「う、おぉぉぉ……っ?!」
 同時に竜巻に巻き込まれた二人は防御に徹するものの、死力を尽くしたゼファーの暴風は凄まじい。ボアネルは風の流れを見切ることで凌ぐものの、対策が十分ではなかった由貴の身体は宙に舞い上げられ、高所から地面に勢いよく叩き付けられた。
「由貴がやられただと!?」
 驚愕の叫びを上げるボアネルだったが、すぐさま相棒のもとに駆け寄る余裕はこちらにもない。暴風は容赦なく彼の身体も切り刻んでいく。
「来たれ異界からの魂よ、闘争と流血を友とし、安寧と静謐を敵と呼び、戦場を自らの臥所とする戦士の魂よ、今一度蘇り、その力を我に示せ!」
 風に抗いながらボアネルが召喚した【彼方からの来訪者】は、四本の手に携えた鉈のような大剣と湾曲した剣を振るい、竜巻を切り払う。
「おのれ! よくも由貴を!」
 辛うじて初撃を凌いだボアネルは、そのまま来訪者と共に怒りも露わにゼファーへと挑み掛かった。

(残念! 由貴の冒険はここで終わってしまった!! ……なんてな! ってて……)
 その様子を倒れたまま見守り、好機を待つのは由貴。実はここまでの行動は、彼らが事前に打ち合わせた作戦通りのものだ。
 しかしあくまで「死んだふり」のつもりが、相手の攻撃力を見誤り予想以上のダメージを負ってしまい、今は指先一つ動かすのも億劫な有様だ。
(動けるのはあと一回きりってとこか。頼むからバレるなよ……)
 由貴は短剣「ベロボーグ」で自らを傷つけ、その魔力で自らを仮死状態にする。
 おそらく好機は一度きり。それをボアネルが作ってくれるまで自らの生存がバレないように。

 相棒の信頼を背負ったボアネルは、来訪者との連携でゼファーを攻め立てる。
「相手が二本の剣ならこちらは四本の剣だ」
「数が多ければ強いというものではありませんよ」
 矢継ぎ早に繰り出される斬撃を、ゼファーは両手の車輪剣で捌きながら小型の嗤う竜巻を放つ。対する来訪者は四刀のうちの二振りで竜巻を切り刻みながら残る二振りで同時に攻め、そこにボアネルが追撃する。
 両者の戦いは拮抗していたが、やがてゼファーが敵の連携につけ入る隙を見出す。
「ユーベルコードによって召喚された存在なら、召喚者を撃破すれば消えるはず!」
 来訪者を竜巻の連発で牽制すると、召喚者に標的を絞って一気に猛攻を繰り出す――だが、この瞬間こそをボアネルは待っていた。
「ぐぅ……ッ!!」
 車輪剣が突き立てられた瞬間、彼は肉体を引き裂く刃の痛みをこらえながら、剣と一体化した相手の腕に目掛けて剣を突き立てた。
「なっ!!」
 剣に腕を貫かれたゼファーの動きが止まる。驚愕した彼女はボアネルと剣を振りほどこうと車輪剣の回転数を上げる。
「放しなさい!」
「放すものか。 ――風は掴んだ。タイミングは私に合わせろ、由貴」
「よっしゃ!!」
 刃に身体を切り刻まれながらもゼファーの動きを封じ続けるボアネル。その合図を受けて、仮死状態から復活した由貴が立ち上がった。

「攻撃を軽減? だったら効くまでぶち当てるだけだぜ!!」
 悲鳴を上げる身体に鞭打って、由貴は展開した電脳ゴーグルの照準をゼファーに合わせる。それに呼応して、喚びだされた自律ポッド群が一斉に砲台を向ける。
 同時にボアネルの召喚した来訪者も、口内にエネルギーのチャージを開始する。
「くっ……このぉ……っ!!」
 どうにかして照準から逃れようと暴れるゼファーだが、満身創痍の今の彼女にボアネルの拘束を振り解くだけの力は残っていない。
 出血と苦痛で朦朧とする意識の中で、ボアネルは最後の力を振り絞り――叫ぶ。
「今だ!!」
「おう!!」
 その瞬間、来訪者の放つ怪光線と、自律ポッド群の撃ち出す砲弾の嵐が、一斉にゼファーに襲いかかった。

「ぐ、うぅぅぅぅぅぅぅ……ッ!!」
 ゼファーは高速回転するホイールで二人の一斉攻撃を防ごうとするが、その物量はもはや凌ぎ切れるものではない。傷ついたボディを砲弾と光線が砕き、貫いていく。
「――申し訳ありません、ドン・フリーダム……」
 怪人幹部最後の一人は、無念の呟きだけを残して、跡形もなく消滅した。

 戦いの終わりを見届けた由貴とボアネルは、重い体を引きずりながら互いに近寄り、手を叩く。
「ってかあんまり無茶すんじゃねぇぞボアネル!!」
「お互い様だろう、由貴」
 ふっ、と笑みを浮かべあった二人は、そのまま重なり合って崩れ落ちる。体力と気力を振り絞った末の勝利であった。

 ――かくして最後の関門の門番、スピード怪人ウインドゼファーは斃れた。
 もしまだ彼女に復活の余力があっても、中枢へ向かう猟兵の進撃は止められない。
 この戦争の終わりが近付きつつあることを、猟兵たちの誰もが感じつつあった。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年05月21日


挿絵イラスト