バトルオブフラワーズ⑪〜『風』を越えていけ!
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バトルオブフラワーズも、ついに次の段階へと進む事となった。ガングラン・ガーフィールド(ドワーフのパラディン・f00859)は、真剣な表情で語り始める。
「第三の関門は、スピード怪人『ウインドゼファー』というオブリビオンが守っておる」
今までの特殊ルールは、さまざまな知恵や工夫が求められるものだった。今回も同じではあるが、少し趣が違う――問題は彼女自身の風を操る能力だ。
「風を操り、わしらよりも速く――必ず、先手を取ってくる相手じゃ。真っ向勝負であるが、この先手に対して無策で挑めば、ただ敗北を積み重ねるだけとなるじゃろう」
ウインドゼファーは必ず風を操る事により、猟兵よりも先制攻撃を行って来るのだ。今までのモンキーやバニーと違い直接的な戦闘に関わる能力だ。しかし、これに対処する手段がなければ、まともに戦う事も出来ないだろう。
「元々、素の戦闘能力でこちらを大きく凌ぐ強敵じゃ。こうなると、この先制攻撃にどう対処して戦うかが重要になる」
一口に猟兵と言っても、みなの能力は千差万別だ。ユーベルコードや創意工夫で、対処していくしかない。そして、千差万別だからこそ、その者ならではの方法で対処する事も可能なはずだ――それが、ガングランの考えだった。
「今までの敵も、おぬしらはそれぞれの方法で切り抜けた来たはずじゃ。今回も、それに期待したい……どうじゃ?」
そう語るガングランの眼差しには、信頼がある。ここまでの苦しい戦いをくぐり抜けてきた猟兵にこそ、見つけられる手段があるはずだ、と。
「ドン・フリーダムへの道のりはもう少しじゃ、頼んだぞ」
波多野志郎
速さは強さ! どうも、波多野志郎です。
今回は、戦争バトルオブフラワーズの戦場で、スピード怪人『ウインドゼファー』と戦っていただきます。
敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。
●運営シナリオ数について
運営シナリオ数に制限はありません。戦場の戦力「40」をゼロにできれば制圧成功ですが、それ以上の成功数があった場合、上回った成功数の半分だけ、「⑬『ドン・フリーダム』」の戦力を減らせます。
それでは、みなさんがいかにこの風を乗り越えていくかプレイングをお待ちいたしております。
第1章 ボス戦
『スピード怪人『ウインドゼファー』』
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POW : フルスロットル・ゼファー
全身を【荒れ狂う暴風】で覆い、自身の【誰よりも速くなりたいという欲望】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : ソード・オブ・ダイアモード
対象の攻撃を軽減する【全タイヤ高速回転モード】に変身しつつ、【「嗤う竜巻」を放つ2本の車輪剣】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:藤本キシノ
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ナナシ・ナナイ
自分女やったんかい。バニーちゃんも顔隠してたし皆恥ずかしがり屋やな。…サングラスしてるしモンキーも女やったりして…。
レボリューション・ストームが発動したらわいもUC発動や。複製したアサルトウェポンを風除けと足場にして空中に立つで。そして複製した拷問具で結界を形成、攻撃から身を守る!そいで足場以外のアサルトウェポンを結界を中心して360度に撃って撃って打ちまくるわ!(【2回攻撃、一斉発射】)
下手な鉄砲数撃ちゃ当たるやで。
霑国・永一
いいじゃないか、速度を求めてやまないその欲望は。
その手に入れるというところ、シーフに通じるところあって大変好ましい。
もっとも、欲望なら俺も負けないのでねぇ…
狂気の速刃を発動。
【ダッシュ・逃げ足】で花の足場から可能な範囲で距離を取り、相手の暴風を【見切り】、なるべく暴風の風速を狂気の速刃で盗み続ける。【盗み・盗み攻撃】
十分な速度を得られたら、相手の攻撃が止むと共に盗んだ速度で高速接近し斬りかかり、刻み続ける。
攻めてる間も相手の速度は盗み続ける
余裕あれば攻撃の最中に盗み攻撃で車輪剣も奪って破壊or遠くへ捨てる
拾いに行くようなら追撃
「君が望む速度の戦いさ。もっとも、君は段々遅くなって貰うけどねぇ」
エルネスト・ポラリス
行きますよ、最後の門番
UCでは遅い、剣での【武器受け】でどうにかしなくては
【野生の勘】を働かせた【見切り】……ただし、見切るのは敵ではありません、自分がどの程度の負傷までなら耐えられるか、です
完全に防げるなんて思っていません。【医術】の知識も活かし、限界までダメージは【覚悟】します
さて、此方の攻撃ですが飛翔能力を攻略しなければ叶わないでしょうね
ゆえに、【ロープワーク】でワイヤーを風に乗せ、動ける範囲を制限します
暴風で吹き飛ばすなら、糸を風に乗せる蜘蛛のように、私が空中に突っ込む
ワイヤーを操り、接敵できても一瞬でしょうが……
ええ、旧人類の英雄よ
敵を認める【勇気】をもって、この剣を振るいましょう
レクシア・ノーレッド
初めまして、こんにちは♪私、レクシアっていうの。
バイクの怪人、なんだっけ?かっこいいし、欲しくてさ。
…その「武器」と「肢体」。壊しに来たの。私の目的は、貴女なの。
…貴女を。喰らいに来たの。
【SPD】
初撃を可能な限り《ダッシュ》で離れて、暴風を喰らいそうなら自作のバイクを自律操作させて盾にすることで防ぐよ。
崩れた足場、風の影響も使って距離を取って。
宇宙で使った《空中戦》で体制を整えて、黒喰銃を体内から生やして【虚弾「黒喰」】。
不定形な体を駆使して、アクロバティックに狙い撃とう。
「さぁ、狙い撃つよー【虚弾「黒喰」】!」
ネムネ・ロムネ
※アドリブ連携歓迎
花が崩壊する程の風
この暴風域から逃れる術は持ちあわせてないです
右手にはバズーカ
左手にはガトリング
背中には狙撃銃とスペアのガトリングを背負い
スカートの裏地には幾つかの手榴弾
腿のベルトに拳銃とナイフを下げて
重量は限界まで盛ったです
吹き飛ばされない様に耐えるのですよ
ネムの体力が尽きる前
花弁が舞い視界が色とりどりに埋まる頃合いまで
ここが分水嶺です
行きましょう
UCを発動
その瞬間激しい頭痛と鼻血
即座に誘導式のバズーカを放つと使い捨てるのです
重い物はパージして
風に舞い上がるままに身を任せて宙で狙撃銃のスコープを覗いて待つのです
花弁の隙間から顔を見せるその瞬間を
ネムの交渉の邪魔はさせねーです
仁科・恭介
※アドリブ、連携歓迎
「誰よりも速くか。なら、それを越えてみせる!」
pow
先制攻撃に【残像】【ダッシュ】で備える
「何が西風だよ。テンペストじゃ無いか!」
携帯食料を食みテンションをゼファーへ
ゼファーの欲望に呼応させ細胞を活性化
特に脳細胞(【学習力】)と動体視力を強化
暴風を纏っているが、速度を求めるなら風は相手の後方に吹くはず
その勢いそのまま攻撃が来るだろう
ならそれに合わせよう
どんなに速くても、斬る瞬間だけ見えれば良い
【鎧無視攻撃】を叩きこむ
その瞬間だけ風が来るなら【ダッシュ】で乗りこえろ
速度と速度のクイックドローだ
真紅の瞳で見つめ【礼儀作法】通りに挨拶
「さぁ、貴女に応えよう。私は楽しくて仕方ない」
宮落・ライア
さて、絶対先制上等。併用行くぜ。
勝つ為だったら…この身をいくらでも削ってみせる
【自己証明】
まずは暴風か。無差別の高威力は脅威だけれど…それはあくまで暴風圏内の話。被害圏内ぎりぎりであれば被害を少なく、逆にそれを利用して風に乗ることも出来るはず。野生の感で見切って上空へ、距離をとる。
呪縛を引いていた場合【止まることなかれ】
上空遠距離にて
【破壊衝動】【魔眼の継嗣】
【狼の餓え】発動準備。
空中だから回避は無理。激痛耐性・覚悟・気合い・武器受けで頑張る。
【剣刃一閃】
こっちが発動する前に荒れ狂う暴風で突っ込んでくるだろうから
事前準備した【狼の餓え】で防ぎ吸収する。
それによって得た力も上乗せし、切り伏せる。
上野・修介
アドリブOK
・POW
狙うは一撃。
――恐れず、迷わず、侮らず
呼吸を整え、無駄な力を抜き、ただ一撃に専心。
先ずは観【視力+第六感+情報取集】る。
体格・得物・構え・視線等から呼吸と間合いを量【学習力+戦闘知識】る。
UCで攻撃力を強化。
敵が速度に長け『先』を取られるなら、その『後の先』に合わせる。
体幹と視線、殺気を【視力】と【第六感】で読み、軌道と呼吸を【見切】ってダメージを恐れず【勇気+激痛耐性】相打ち【覚悟】で紙一重――否、当たる刹那まで引き付け【カウンター】にて渾身の拳【グラップル+捨て身の一撃】を叩き込む。
もし接近してこないなら【挑発】
「そんなそよ風では、砂埃を巻き上げるのが精々だろうな」
●暴風の主
「――来ましたか」
花園に立つスピード怪人『ウインドゼファー』が、そう呟いた。その声に、ナナシ・ナナイ(ナニワのマンハンター・f00913)が愕然と呟いた。
「自分女やったんかい」
「それが何ですか?」
ナナシの驚きを、さらりとかわすウインドゼファー。ナナシは、しみじみと続けた。
「バニーちゃんも顔隠してたし皆恥ずかしがり屋やな。……サングラスしてるしモンキーも女やったりして……」
「――――」
「おい!? 否定せんのかい!?」
もちろん、肯定もしていない。ウインドゼファーはこの会話が不毛と思ったのだろう、それ以上続ける事はなかった。
「初めまして、こんにちは♪ 私、レクシアっていうの。バイクの怪人、なんだっけ? かっこいいし、欲しくてさ」
レクシア・ノーレッド(『捕食者』・f01101)が微笑み、次の瞬間に耳まで裂けたような笑みを浮かべて言い切った。
「……その「武器」と「肢体」。壊しに来たの。私の目的は、貴女なの……貴女を。喰らいに来たの」
「随分と悪食のようですね」
慣れたもの、と言うようにウインドゼファーは切り捨てる。彼女が一歩前に出た瞬間、ヒュオ――! と一陣の、優しい西風が花びらを運んだ。
「私達は全てを手に入れる。誰にも邪魔は、させません」
「いいじゃないか、速度を求めてやまないその欲望は。その手に入れるというところ、シーフに通じるところあって大変好ましい。もっとも、欲望なら俺も負けないのでねぇ……」
霑国・永一(盗みの名SAN値・f01542)が、ダガーを構える。そして、エルネスト・ポラリス(いつか満月の下で・f00066)が凛と告げた。
「行きますよ、最後の門番」
「そうですか。では、こちらも遠慮なく――」
ウインドゼファーが、さらなる一歩を踏み出した刹那。
「――来ました」
猟兵達の背後で聞こえる、涼やかな声。その直後、音さえ置き去りにした暴風が花園を抉った。
●『絶対先制』
――音が、聞こえない。それは無音という意味ではない、巻き起こった暴風の轟音が全ての音を飲み込んだという意味だ。
――花が崩壊する程の風……この暴風域から逃れる術は持ちあわせてないです。
思ったのか、呟いたのか、ネムネ・ロムネ(ホワイトワンダラー・f04456)自身にもわからない。逃れる術はないから――その後に、対処した。右手にはバズーカ、左手にはガトリング。背中には狙撃銃とスペアのガトリングを背負い、スカートの裏地には幾つかの手榴弾。腿のベルトに拳銃とナイフを下げて重量は限界まで盛って、踏ん張った――普段のネムネなら、この暴風域でまともに立つ事も叶わなかったろう。
しかし、覚悟と準備さえあれば――! 振り返り様に、ネムネはバズーカの一撃を撃ち込んだ。
「――――」
ウインドゼファーは、振り返らない。バキバキバキ! と砲弾が風の圧力で圧壊、届く前に爆発した。
――何が西風だよ。テンペストじゃ無いか!
携帯食料を食み、テンションをウインドゼファーへ――仁科・恭介(観察する人・f14065)が集中する。恭介がウインドゼファーの欲望に呼応させ細胞を活性化、特に脳細胞と動体視力を強化。ウインドゼファーの姿が消えた、その直後の花の動きに右へ跳んだと判斷した。
直後、無造作に振るわれた車輪剣が恭介を薙ぎ払う。だが、反応出来た――紙一重で受け止め、そのまま弾き飛ばされた。
ウインドゼファーは、即座に車輪剣を振り上げる。切り裂かれたのは、ワイヤー。ウインドゼファーの動きを封じようとした、エルネストのロープワークだ。動きを封じるまでに至らない、しかし、コンマ数秒。音速超過の世界で、その動作こそが静止に等しい。
「――ッ!」
永一のダガーが、ウインドゼファーの脇腹をかすめる。だが、浅いはずのその一閃の効果は劇的だ。一部の風が解け、永一のマフラーを踊らせた。
それに対するウインドゼファーの反応は、劇的だった。
「私の速度を盗みますか、コソ泥!!」
――ここまでで、戦いが始まって二秒。怒りの叫びと共に、永一の盗み斬る狂気の速刃(スチールスピード)で盗まれた分の速度を補充――レボリューション・ストームの花嵐が、周囲を吹き飛ばした。
「勝つ為だったら……この身をいくらでも削ってみせる」
タイミングを見切って、宮落・ライア(ノゾム者・f05053)が上空へ飛ぶ。暴風に煽られ、ライアの体が軋みを上げる。それでも構わない、ライアが歯を食いしばり叫んだ。
「ボクはっ! ボクはっ! ……わたしはっ!!」
侵食:破壊衝動(シンショク・ハカイショウドウ)――暴風さえ貫くライアの黒き殺気が、ウインドゼファーを襲う。ウインドゼファーは後方へ跳ぶ、しかし、ライアの殺気波逃さない。
「さぁ、狙い撃つよー! 【虚弾「黒喰」】!」
自律戦闘型バイク「アリア」を盾に、黒喰銃「PHY(ファイ)」を体から露出させてレクシアが虚弾「黒喰」(ロストショット)を撃ち放った。空中でのけぞっての一射、本来であれば狙えるような状況ではない。しかし、宇宙の無重力という方向を持たない環境で慣れたレクシアからすれば、無茶でも無理ではない。
ゴッ! と花嵐の一部が、虚弾「黒喰」(ロストショット)の着弾と同時に消滅する。その隙間へ、アサルトウェポンを風除けと足場にして空中に立っていたナナシが銃弾を撃ち込んでいく。
「おらおらおら!」
しかし、その銃弾の雨をウインドゼファーは左右にかいくぐっていく。その動きから視線を外さないのは、上野・修介(元フリーター、今は猟兵・f13887)だ。
「フゥ――」
呼気を、細く、長く。先ずは観、体格・得物・構え・視線等から呼吸と間合いを量る。修介は理解している、速度で追いつけないという事は届かないという事。距離を、速度を、埋める『何カ』がいる。
だから、集中する。狙うは一撃――恐れず、迷わず、侮らず。呼吸を整え、無駄な力を抜き、ただ一撃に専心する。
「――力は溜めず――息は止めず――意地は貫く」
拳は手を以て放つに非ず、修介はただ、その時を待った。
●『風』を掴め
ウインドゼファーの強さは、圧倒的だった。風さえ置き去りにする、絶対先制。圧倒的速度が生み出す破壊力――だが、ウインドゼファーに余裕はない。
――食い下がり、ますか。
圧倒的速度と破壊力をもってして、戦いを終わらせられない――その意味を、ウインドゼファーは理解していた。
対応しているのだ、こちらの速度へ。ならば、もっと。もっと速く――!
「君が望む速度の戦いさ。もっとも、君は段々遅くなって貰うけどねぇ」
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギン! と花園に、火花が咲き乱れる。ダガーと車輪剣が、永一とウインドゼファーが、打ち合っているのだ。まだ、ウインドゼファーの方が速い――だと、言うのに!
「私の、速さ、を――!!」
二つの暴風が、鎬を削る。削り、削り、削り――その瞬間は、訪れた。
「ガ、ハ!?」
紙一重、ウインドゼファーの速度に迫った永一のダガーが深々と突き刺さる! 永一は、叫ぶ。
「盗んだぞ、ゼファー!!」
ドン! と永一が速度で越えた瞬間、ウインドゼファーが吹き飛ばされた。その体を受け止めたのは、エルネストのワイヤーだ。
「ワイヤーを操り、接敵できても一瞬でしょうが……ええ、旧人類の英雄よ。敵を認める【勇気】をもって、この剣を振るいましょう」
ウインドゼファーが止まった刹那、エルネストのイーデム・ウィンクルムによる英雄殺し(アンチヒーロー)による一撃が深々と胴を切り裂いた。それでも、ウインドゼファーは否定する。
「奪われたならば、それ以上に速くなればいいだけの事――ッ!」
再び嵐を背負い、ウインドゼファーが飛んだ。だが、その上をナナシのアサルトウェポンによる結界とレクシアが取った。
「逃さんで!」
「――穿ち、喰らえ」
ナナシの一斉掃射と、レクシアの虚弾「黒喰」(ロストショット)の精密射撃が、ウインドゼファーの行く手を阻む。それでも、構わない。ウインドゼファーは、穿たれながら速度を優先した。
欲望のままに、先へ、先へ、先へ――!! 全てを置き去りにする速度を手に、残らず薙ぎ払うそのために!
「ここが分水嶺です――行きましょう」
ネムネが激しい頭痛に襲われ、鼻血をこぼす。体内動力によるリスクを伴う脳のブースト――風さえも遅く見える世界に足を強引に踏み入れ、ネムネは誘導式のバズーカを放ち使い捨てた。
ゴォ! と巻き起こる爆発。花園の花が散り、風に舞い上げられる。その一枚一枚をスローモーションで見極めながら、ネムネは狙撃銃を構えた。
ウインドゼファーが花びらの中を突っ切った瞬間、狙いをすませた銃撃がその頭部に着弾した。
「ネムの交渉の邪魔はさせねーです」
ヘルメットがなければ即死だったろう、それほどの正確無比な銃弾を受けてウインドゼファーは方向転換。一直線に、猟兵達の元へ落下!
「さぁ、貴女に応えよう。私は楽しくて仕方ない」
真紅の瞳で見つめ、礼儀作法通りに恭介は一礼。風さえ置き去りにするならば、その前を狙えばいい――どんなに速くても、斬る瞬間だけ見えれば良いのだ。
恭介は、狩猟刀『牙咬』の切っ先を『置いた』。暴風の前へ、音速を超える敵の前に。
「――フッ!!」
そして、捨て身の一撃を持って修介もそこへ拳を重ねた。完全なタイミングのカウンターだ――その一撃が、ウインドゼファーを捉えた。
直後、恭介と修介が暴風に薙ぎ払われた。失敗したのではない、成功したからだ。もはや、体の大半を失ってなおウインドゼファーは止まらない――止められない。
「一度で決められなかった事……後悔して」
急激に、暴風が崩れていく。復讐を望む白狼の継嗣:狼の餓え(フクシュウコソワガセイ)――ライアは暴風を喰らいながら、骨肉の剣を振るった。
ドォ!! とウインドゼファーが、両断された。速度を求め、欲望のままに振り切った風の名を持つ女の、最期であった。
――風が、解れて消えていく。
ゼファーとはギリシャ神話におけるアネモイが一柱、春の訪れを告げる西風のゼピュロスの事を指すのだと言う。欲望のまま走りきった彼女が最期に吹かせた風が、優しく花びらを踊らせた光景がそれを思わせたのは……きっと、質の悪い皮肉の類であっただろう。 こうして、『風』を越えた先へと猟兵達は進んでいく……。
大成功
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