バトルオブフラワーズ⑦~今を生きる応援歌~
●過去に染みるその音色
サウンドステージを支配しているオブリビオン。その怪人は一言の言葉を使わず。その身体を僅かに動かすそれだけで。このステージ全体を支配していた。
――ポロン。
単音が1つ。葉から降りゆく雫のように。優雅に舞うかのように響き。地面に溶け込んでいくかのように。その音色は会場に染み渡る。
――ポロン。
僅かな音だけでも思い出してしまう悲観的な感情。それはまるでメリーゴーランドのように。走馬灯のように。
己自身だけが知っている。黒く暗い感情を呼び覚ます。悪魔の様な音色。それでいて。子供の歓声。恋人たちの囁き声。輝くイルミネーション。人の楽しい思い出が浮かんでいく。
――ポロロン。
そして、消えていく――。楽しかった思い出、素敵なプレゼント。しかし、人との運命の隔絶は。その怪人と共に舞う刃の重なる音と共に。消えていく。奪われていく。失っていく。
暗い過去を知るもの程に。その心を抉り。感傷に引きずり込み。藁を掴むかのような気持ちでようやく手に入れた僅かな勇気を、奪っていく。
――最後はいつだって、バッドエンドさ。
一言も喋らずに。オルゴールの音だけで意思を想いを波に乗せる怪人。その辛くとも現実的な音色の力強さに。会場は完全に乗っ取られてしまっていた――。
●そうだとしても
サウンドステージの映像が猟兵たちの前に流れていく。その音は動画として聞いているだけでも悲しい気持ちに襲われる。
「最後はいつだって、バッドエンド。そうだとしても、さ」
神坂・急須(神坂として。店主として。・f15846)は静かに呟く。誰だって最後はいつか死ぬ。そして過去に追いやられてしまう。
オブリビオンの存在。それは確定的に自分たちに襲われる未来のカタチ――。
「そうだとしても。今を俺たちは生きているんだ。苦しい過去も、苦しい最期を迎える未来があるとしても。いいんじゃないかな。今を後悔しなければ」
だからこそ、見つけよう。今を生きる猟兵たちの。この世界で今もなお強く生きている者達の強さを。過去に未来に後悔しても。それでも悪あがきのように生きるこの生き様をウタに込めて。
猟兵たちは、ステージへと向かう。ひたむきに。がむしゃらに。己が人生に後悔などあろうはずかないと。仲間と共に信じる未来をただ、見つめて――!
えんぷ茶
●ご挨拶
オープニングを読んで頂きましてありがとうございます。えんぷ茶です。重かれ軽かれ。猟兵たちも過去、未来の不安や後悔を背負って生きているのではないかと思います。
そして、オブリビオンのウタ『オルゴールの音色』は、そんな猟兵たちの負の感情に付け入るように浸透してきます。
パッショネイトソングの戦闘ルールが適応されていますので、そんな不安や苦難。悲しい想い、苦しい想いを払うかのような、強い想いをウタに乗せて表現して頂ければと思います。
オブリビオンのウタに多くの猟兵たちが打ち勝つことが出来れば、直接的な攻撃をしなくてもオブリビオンはステージを放棄し、海の骸に帰ります。
また、オブリビオンは喋ることができない為、ラップバトル等の口上戦には応じません。自分や仲間を鼓舞するようなウタで自分自身に抱える負の感情に打ち勝ってください。
●パッショネイトソング
このシナリオでは、『パッショネイトソング』という特殊戦闘ルールが適用されます。
この戦場では、戦闘中、常に『自分自身を奮い立たせる歌』を歌い続けなければなりません。
歌を歌わずに行った攻撃は、効果を発揮しません。
『秘密にしている事をカミングアウト』したり『恋人への告白を歌にして捧げる』など、強い思いを歌に乗せる事ができれば、より強力な攻撃を行う事が出来るでしょう。
第1章 ボス戦
『ギヴ』
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POW : あそんであげる
小さな【メリーゴーランド】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【遊園地】で、いつでも外に出られる。
SPD : しあわせになあれ
いま戦っている対象に有効な【すてきなプレゼント】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ : ……わすれちゃったの?
自身が戦闘で瀕死になると【楽しかった思い出】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
イラスト:棘ナツ
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠コルチェ・ウーパニャン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
八雲・椿
【ランドルフ(f17691)と同行】
最後はいつだって、バッドエンド。そうでしょうね。いつかは死ぬんですもの。でも、だからこそ。過去も未来も関係なく、今を楽しまなくちゃ。
「NOW ON STAGE!」
メロディなんて顔面メリーゴーランド女のモノで十分よ。いっそ、どんな旋律があろうとも、力強く、私たちの声で歩くというところを見せつけてあげましょう。
ノッてきたところでシーブズ・ギャンビットを。マントと帽子を一瞬で脱ぎ去り、オブリビオンにダガーで斬りつけるわ。
「鉄錆の音だって、潜血に滴る雫の音も、音楽よね?」
ランドルフ・アルテンブルク
【椿(f17407)と同行】
まずは今を楽しく生きることから考えなってな。過去未来の良し悪し考えられるほど今が充実しているなら、なんて贅沢な話ってこった。
俺も、この歳までロクな仕事してなかったし、未来の不安はよくわかるけど、よ。
「NOW ON STAGE!」
鉄塊剣で地面を叩き、金属音を響かせて声を張り上げる。過去も未来もクソくらえ。俺たちが立っているのはステージ、戦場だ。
金属の散らす火花のように、目の色を更に紅く染め、ヴァンパイアに覚醒したら、ギヴを全力で殴る。
「これが、俺たちのウタだ、ってな」
「最後はいつだって、バッドエンド。そうでしょうね」
八雲・椿(自警団のオブザーバー・f17407)は、帽子を片手で抑え、風を受けてなびくマントを背にステージへと上がる。
「まずは今を楽しく生きることから考えなってな」
その後ろにはランドルフ・アルテンブルク(炎の殴らせ闘拳乱舞・f17691)の姿もあった。オルゴールの音色に合わせて鉄塊剣を地面に叩き、生々しい音を重ね、そのメロディを血肉漂うロックな雰囲気へと変えていく。
「NOW ON STAGE!」
椿は叫ぶ。いつかは必ず死ぬのであれば。今この時を飽和せよと力強く。力強く。過去も未来も関係なく、ただ今を見据えて声を荒げる。
「NOW ON STAGE!」
ランドルフも負けじと叫ぶ。未来の不安は確かにある。それでも、世界を知り。変えたい、助けたいと切に願うおっさんは、柄にもなく真剣に。熱く声を張り上げる。
ギヴも負けじと、オルゴールの音色をより深く響かせて、猟兵たちの戦意を削ごうと画策する。さらにプレゼントの箱を召喚すると、2人の目の前に置いていく。
その箱はパンドラボックス。開ければ中には2人の心を蝕む過去か未来か。何かを連想させるものが入っているのだろう。
「気にはなるけれども。私には必要ないのよね」
「俺たちが立っているのはステージ、戦場だ。罠でなくとも願い下げだぜ!」
好奇心に襲われる2人だが、椿はダガーで、ランドルフは鉄塊剣でそのプレゼントを振り払う。十分に己を鼓舞し続けた2人は、ついにその得物でギヴを狙う。
「これが、俺たちのウタだ、ってな」
金属の散らす火花のように瞳をより紅く染めたランドルフは、ヴァンパイアのような姿に変身する。
「いくぜぇ!!」
ギヴに向かって正面から殴り込むランドルフ。ギヴはその素早い一撃を避ける為に空高くジャンプして避ける――が。
「椿!」
「悪いわね。その命、頂戴するわよ?」
ギヴより遥か空高く。帽子とマントを脱いでいた椿が身体を回転させながら飛んでいた。とても人間業とは思えない身のこなしから、ダガーをしっかりと握り、ギブの心臓をめがけて振り下ろす――!
「―――!」
ギヴはなんとか両腕で心臓を守るものの、腕に深く突き刺さったギヴの身体から血が流れていく。
「潜血に滴る雫の音も、音楽よね?」
猟兵たちの攻勢にギヴのオルゴールの音色は鳴り止む。今がチャンスと、猟兵たちは、追うように自分たちの歌を奏で始めていく――。
大成功
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プラシオライト・エターナルバド
最近ですよ、未来に光を見るようになったのは
あなたの哀しいメロディーに
過去に負けない、思い出を歌いましょう
憧れてたの 光
宝石箱の夜はおしまい オルゴールの続き 冒険が始まる音
窮屈な世界飛び出して 希望の指先マジックアワー
これからの約束 しかたないね キミの世界を隣で守るよ
憧れてるの 光
無表情の微笑みは夢 モノガタリの続き 色遊びはご自由に
無表情で、静かなバラードを
ギヴの周りで歌いながら
念動力やトリックワイヤーを使って空中遊泳
本来は敵の攻撃を打ち消すカラーチェンジを空に撃ちます
あの時見たマジックアワーを呼びましょう
おしまいはこんな優しい色で
貴女を見送りたいと思うのです
これはバッドエンドでしょうか?
「最近ですよ、未来に光を見るようになったのは。哀しいメロディーに過去に負けない、思い出を歌いましょう」
オルゴールの音色から漂う絶望感を受け取り、プラシオライト・エターナルバド(かわらないもの・f15252)は、ステージへと登る。
『憧れてたの 光
宝石箱の夜はおしまい オルゴールの続き 冒険が始まる音』
無表情で、静かなバラードを奏でるプラシオライト。そのうちに秘めている心はきっと、輝きを求めていたのだろう。
観客の居ないステージでも自然と歌に合わせて手が動く。冒険が始まったその日、始めて実感した光と、胸の鼓動を慈しむように両手を胸に当てる。
『窮屈な世界飛び出して 希望の指先マジックアワー
これからの約束 しかたないね キミの世界を隣で守るよ』
胸から手は大きく伸ばされて感情が弾けるかのように大きく拡げる。いつの間にかギヴの周りまで近づき、念動力や仕込んでいたトリックワイヤーを使って空中を泳いて動きまわる。
アメグリーンの薬を空中でばら撒いて、キヴのメロディを塞いでいく。プラシオライトにとっての楽しかった思い出は、今もこの道の先へと続いている。
『憧れてるの 光
無表情の微笑みは夢 モノガタリの続き 色遊びはご自由に』
歌う思いは、過去ではなく思い出。過去は昔から今を繋ぐもの。そして思い出は昔を今を経由して、未来にウタうもの――。
無表情の中を渦巻く、微かに芽生えるワクワク感。歌い、言葉にする度に。物語の続きを夢見て静かに高揚する。
キヴも、どうにかその心を貶めようと、楽しかった思い出を具現化する。それはプラシオライトの歌にあるマジックアワーそのものだった。
雲より高い茜色の空。太陽よりも高い風景。キヴはそこから絶望へと旋律を刻むが、景色は一向に変わらない。
「配合番号09。効能は≪事象の停止≫です。……おしまいはこんな優しい色で貴女を見送りたいと思うのです」
自身のユーベルコードを封じられたキヴは、プラシオライトと共にその美しい景色を眺めようとする。
「これはバッドエンドでしょうか?」
最後まで淡々と語るプラシオライト。しかし、歌で景色で。心を覗いしてしまったギヴは。その問いに答えることはできなかった――。
大成功
🔵🔵🔵
リグレース・ロディット
オルゴールは好きだけど、そんな使い方嫌……だから……ウタあんまり聞かせたことないけど頑張るよ。
【WIZ】僕のを見てよ!僕のを聞いてよ!
声に出して……少しだけ、なんだか恥ずかしいけど……楽しかった思い出より、いや、そもそも思い出あんまりない!今を見てこれから作る!!上手じゃないけど、響くかわかんないけど、出来る事を全力で。だから皆僕の思い出作りを手伝ってよ。
どうかな?もうちょっといる?音だけでダメなら見える物も綺麗にしてあげる。『赤く煌く影が散る』で『暴食紫炎』で魅せるよ。壊すよ。きっとこれはハッピーエンド。バッドエンドは僕だけで十二分だからね。
(アドリブ・絡み大歓迎)
「オルゴールは好きだけど、そんな使い方嫌……」
リグレース・ロディット(夢みる虚・f03337)は、残るオルゴールの音色の余韻に深く悲しみを覚えていた。
それだけの過去を持ち、過去というナイフで身体中を切り刻まれるこのステージで。リグレースはあまり人前で披露はしてこなかった歌を奏でる。
声に出して……少しだけ。楽しかった思い出を思い返して歌おうとするが、その記憶の回路の先は砂嵐。覗くことができないもどかしさ。
――それでも。
「今を見てこれから作る!」
即席の歌は決して上手な歌ではなかった。その場で思い綴っただけのより言葉に近い歌。しかし、出来る事を全力で。ひたむきに今を生きようとするその姿は、何よりも力強く。言霊には魂が宿っていた。
それでもギヴは止まらない。どうにかリグレースの歌を妨害しようと思い出を生み出そうとするが、楽しかった思い出が分からない以上、その世界に作り替えることはできなかった。
「音だけでダメなら見える物も綺麗にしてあげる」
リグレースは血を付けて紫の炎を出しながら大きくなっていく鎌を血と影でできた夕顔に変える。
「バッドエンドは僕だけで十二分だからね」
バッドエンドの先でもがくリグレースは、きっとこれはハッピーエンドになると信じてキヴを切り刻んでいく――。
大成功
🔵🔵🔵
ジェフリエイル・ロディタ
さて奏で歌おうか。沈み揺蕩うも良いけれど、
輝きに連なるものを取りこぼさせるのは頂けない。
ただ僕は僕を歌うのは趣味じゃないからね。
何せ輝くの当たり前過ぎて。だからこうしよう。
入りは相手の音色に合わせて、逆に辿る。
そうして、大切なものを拾い集め直す、
持っていた事をただ思い出して貰う歌に繋げるよ。
寂しい音に晒されても、
その日を確かめ微笑んで今日を終えられるように。
鋏の刃は念動力で結び包んでしまえるのなら、
皆が拾い集めたものをまた落とされずにすむかな。
誰かが確かと想う輝きは、手放しに謳えるものの一つだからね。
その為の歌だから僕のテンションは上がるさ。
色んなエンドがあること、忘れてしまうのは勿体ないよ。
「さて奏で歌おうか」
ジェフリエイル・ロディタ(光り繋ぐ手・f04365)は、沈み揺蕩うも良いけれど、
輝きに連なるものを取りこぼさせるのは頂けない。そんな想いを胸に、旋律のみでウタを紡ごうとしていた。
自分語りは趣味ではないのだろう。光渡りの吟遊詩人にとって、その輝きは日常そのもの。だからこそ。ジェフリエイルは敢えてキヴのウタに乗る道を選ぶ――。
楽しかった思い出が移り変わり、現れては消えていく世界。それがキヴの音色だった。そんな雰囲気にもジェフリエイルは冷静にキヴの音色に合わせて、共に過去へと遡っていく。
朽ちてしまう思い出を前に、ジェフリエイルはそこで初めて音色を変えて音を奏でる。
そうすれば、大切なものはジェフリエイルの元に還り、それを拾い集め直す。寂しい音に晒されても、その日を確かめ微笑んで今日を終えられるように。
「そうだ。……こうすれば皆が拾い集めたものをまた落とされずにすむかな」
拾い集めた思い出を鋏が襲う前に、念動力で鋏の刃を結び包んで動けなくするジェフリエイルの表情は物静か。それでも明るい顔だった。
「誰かが確かと想う輝きは、手放しに謳えるものの一つだからね」
その輝きを守り、誇りに思う歌を繋ぐ。それは吟遊詩人としての本懐。それが世界を守るべく生きる猟兵の歌であればなおのことだろう。
「色んなエンドがあること、忘れてしまうのは勿体ないよ」
その一言が、キヴの心に深く刻まれる。振り返れば過去。想像すれば未来。そして。人生を切り抜けば、それは物語になる。
今という物語を生きる猟兵の明るさ、懸命さ。ひたむきさ。今ここに集う猟兵たちは、ハッピーエンドを目指す物語の主人公。
ギヴは、その想い捻じ曲げるには到底及ばないことを悟るとステージを放棄し、海の骸へと帰っていった。残された猟兵たちは、サウンドステージにキマイラフューチャーらしい明るさが再び灯るまで、それぞれのウタを歌い続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵