バトルオブフラワーズ⑩〜Emotional cutie
●考えるな、感じるんだ
キマイラフューチャーの予知を得たテス・ヘンドリクス(人間のクレリック・f04950)が、ぴょんぴょこ跳ねながら猟兵たちを出迎えた。
「すごいよみんな! みんなのおかげで、エイプモンキーが撃破できたね!」
エイプ……エイプでモンキー? と一瞬首を傾げたテスである。星の回りでも悪かったのか彼に関する予知はできなかったが、ウサギはなんとか間に合ったようだ。
「次の敵はラビットバニーだよ。こんな、こう、スゴくせくしーな感じの」
モニターの操作も少しは慣れて、表示されたのはダイナマイトボディながら被り物をした女性だった。
カワイイ怪人『ラビットバニー』。
もちろん彼女も外見に似合わぬ強力な力を持っている。彼女のユーベルコードは『絶対無敵バリア』と言って、もうありとあらゆる攻撃が通用しない。
そんなんじゃ勝負にならない。猟兵たちのツッコミや抗議をうんうんと頷いて聞いて、ぱっとテスが笑顔を見せた。
「そこで弱点の解説だよ。バリアは彼女の心の乱れで解けるんだ……『エモさ』で!」
落ちる沈黙。
そりゃそうだ。『エモさ』ってなんだ。
さっきから準備していたらしいテスがモニターとタブレットに色々な画面をアップして説明を始めた。
「いやほんと、彼女が『エモい』って感じるハードルがめっちゃ低くて助かるんだよね」
可愛らしいわんこににゃんこを筆頭に、世界のありとあらゆる動物たち。
ネットを騒がせる面白映像、少年漫画の世界のようにアツい展開や血にまみれた男たち。もちろん可愛らしい女の子や彼女を襲う突然のハプニング、乙女ゲームのようなイケメンとのときめきシチュエーション。
大自然や生物の驚きの映像まで、ラインナップの幅広さに驚きを禁じ得ない。それだけ張ったアンテナが広いということだろう。
いずれにしろ普通にしていたらこちらの攻撃は一切通用しないので、猟兵の皆さまにおかれましては相対する時に工夫してほしいのだ。
SNSでとても流行りそうな何かをラビットバニーに見せることで、『絶対無敵バリア』を解き、攻撃を叩きこむ。そこに尽きる。
そこまで説明したテスは、ふと眉を寄せて真顔になった。
「でもね、油断はしないで。バリアがなくたって彼女は本当にすごく強いよ」
『エモさ』判定がガバくてもそこは幹部級のオブリビオン。相当の実力者なのだ。
のみならず、システム・フラワーズの内部の「咲き乱れる花々の足場」は彼女に集中している。彼女を倒さなくては先に進むこともできない。
「それじゃみんな、頑張ってね! ……水を吐き出すフグ……?」
ラビットバニーにとっての『エモいもの』一覧の末尾を見て首をひねるテスを残し、猟兵たちは戦場へと転移していったのだった。
六堂ぱるな
はじめまして、もしくはこんにちは。
六堂ぱるなと申します。
拙文をご覧下さいましてありがとうございます。
●ご注意!
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「バトルオブフラワーズ」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●状況
第二の関門に立ちふさがるのはカワイイ怪人『ラビットバニー』です。
システム・フラワーズの中の咲き乱れる花々の足場は彼女に集中しており、彼女を倒さないと先へ進めません。
●敵:ラビットバニー
ラビットバニーは必ず、猟兵に先制して『絶対無敵バリアを展開するユーベルコード(POW、SPD、WIZ)』を使ってきます。
絶対無敵バリアは本当に絶対無敵で、あらゆる攻撃を無効化しますが、「ラビットバニーがエモい物を目撃する」と、精神集中が乱れてバリアが消滅します。
ラビットバニーのエモい基準はかなりユルいので、バリアの解除は比較的容易と思われますが、バリアなしでも彼女は相当の実力者です。
皆さまのご参戦をお待ちしております。
第1章 ボス戦
『カワイイ怪人『ラビットバニー』』
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POW : 赤べこキャノン
【絶対無敵バリア展開後、赤べこキャノン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : うさちゃんカンフー
【絶対無敵バリア展開後、兎面の目が光る】事で【うさちゃんカンフーモード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : おはなハッキング
【絶対無敵バリア展開後、両手の指先】から【システム・フラワーズ制御ビーム】を放ち、【花の足場を自在に操作する事】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:和狸56
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ユーフィ・バウム
※アドリブ・連携歓迎
初の幹部オブリビオン戦…油断しません!
【世界知識】でSNS映えしそうな
エモいポーズは知ってますよ!
【属性攻撃】で武器に火を灯し
見栄えの良いポーズでびしりと決めます
バリア解除時に攻撃を打ち込む
敵からの攻撃は致命的な攻撃は【見切り】回避
避けきれない攻撃は【勇気】と【覚悟】をもって
【オーラ防御】で受け、耐え抜く
ダメージに、苦悶して血を零しつつもきりりと起き上がる
「猟兵は、けして負けませんっ!」
立ち上がる様も見栄えよく、屈しない魂を見せつけ
仲間と連携し、バリアが解除されたところに攻撃を重ねる
隙を見出せば【ダッシュ】で鋭く寄り、【力溜め】
【怪力】を生かしての《トランスバスター》です!
パフィン・ネクロニア
なるほど、厄介なバリアじゃが攻略法さえ解ればどうという事もない。
『エモさ』が必要というならばここはひよこファイブの出番じゃな。
日ごろの訓練の成果を見せる時じゃ。アクロバット飛行からパントマイム、しめのタップダンスとよそでは見れぬひよこパフォーマンスで存分にエモらせてやろう。
あ、一応芸事なんじゃし気に入ったらおひねりもよろしくね。
と、なんやかんやでバリアを解除できたらすかさず剣刃一閃で攻撃。
バリア解除後もひよこファイブは引き続きなんやかんやとパフォーマンスを続けて『エモ』らせておくのじゃ。
そうすりゃ多少は攻撃を見切りやすくなるじゃろうしね。
フェルト・ユメノアール
バリアなんて関係ない!
ボクはいつものエンタメをするだけさ!
レディースエーンジェントルメン!
今日はキミに最高のマジックを披露するよ!
地面に『ワンダースモーク』を叩きつけ、煙の中でいつもの道化服からマジシャン風のスーツ姿に早着替えをして登場
帽子の中から花火を打ち上げ、『パフォーマンス』を披露
まだまだ本番はここからさ!
服の袖から取り出した複数の『トリックスターをバニーに投擲』攻撃を仕掛ける
ボクの狙いはこれをバリア解除のためのパフォーマンスだと敵に思わせる事
一連の行動は煙に紛れて【SPウィングウィッチ】を召喚
影に潜航させ、花火や飛び道具で敵の注意をこちらに引き付け
死角からバニーに不意打ちするための布石
シビラ・レーヴェンス
『エモいもの』というのをみせると無効化できるのか。
そうか。(自前の検索機能で色々調べ始めた)
よくわからなかったが要は『心に響くもの』を視覚化すればいいのだろう?
まあ猫耳カチューシャでも購入して装着しよう。
そうそう。失念していたが相手は幹部クラスだったな。
焼け石に水だか二つ対策を。
私の身体を気で防護し少しでも攻撃に耐性を。
(【オーラ防御】使用)
私の黒ずくめの着衣を利用し僅かでも命中困難に。
(【残像】と【フェイント】使用)
バリアーが無効化されたら、ありったけの【ウィザード・ミサイル】を叩き込むぞ。
戦法はヒットアンドアウェイでいく。無理せずに狙っていくぞ。
(【高速詠唱】【全力魔法】【2回攻撃】使用)
レイニーア・ノックス
【アート3】で自身が好きな吹き抜けるような青空を再現。(エモさ)
『ウサギさんはこういう風景は好きかしら?』
バリア解除されたなら【ドラゴンライド】で召喚した竜に乗り戦いを挑む。使用スキルは【騎乗2、オーラ防御2、残像1】でヒットアンドウェイスタイル。
折りを見て【串刺し】などの重い一撃も狙っていく。
そこは美しい花びらの舞う空間、『システム・フラワーズ』。
現れた猟兵たちを一瞥して、ラビットバニーは拍子抜けしたような口調で呟いた。
「なんつーか? あーしと必死で戦おーって感じじゃないっつーか?」
リラックスして見える彼女だが、その細い全身に力が漲っているのがわかる。いつも笑顔で事件に臨むユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)も、自然と心身が緊張するのを感じ取った。
(「初の幹部オブリビオン戦……油断しません!」)
『エモさ』追及のため、SNS映えしそうなポーズはリサーチ済みだ。
既に『絶対無敵バリア』は張られているようで、あちらが油断していないのはわかる。
「そんなことないよ!」
いつも朗らかなフェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)は、ここに来てももちろん笑顔で告げた。
「レディースエーンジェントルメン! 今日はキミに最高のマジックを披露するよ!」
「まじで?」
「バリアなんて関係ない! ボクはいつものエンタメをするだけさ!」
エンタメと聞いてラビットバニーがいくぶん身を乗り出した。食いつきはよさそうだ。この機を逃す手はない。レイニーア・ノックス(ドラゴニアンの竜騎士・f18202)は自慢のペイントを繰り出した。
「ウサギさんはこういう風景は好きかしら?」
季節もよくわからない、花の舞う空間は一閃で吹き抜けるような青空を描きだす。初夏のようにすがすがしい青のペイントは、ラビットバニーに感嘆の声をあげさせた。
「うわ、超気持ちいー空じゃん?」
目を瞠る彼女の目の前に、ぽんとピンクの煙が沸き起こる。その中からマジシャンスーツに早着替えしたフェルトが現れて、帽子の中から花火を打ち上げた。
青空にぱっと広がる色とりどりの花火を背に、ユーフィが炎を噴きあげるディアボロスを手にしてポーズを決めた。ファンタジー系美少女でかつ蛮族、布部分極小はインパクトが強い。
「いーんじゃん? いーよ、もちょっと布少なくても!」
「まだまだ本番はここからさ!」
フェルトのスーツの袖から綺麗な装飾のあるダガーが放たれた。
花火に目を奪われていたラビットバニーはその不意打ちを避けきれない。いつのまにかバリアは解けていて、ダガーがつぎつぎ玉のお肌に突き刺さる。
「いった! 何するし?!」
その叫びが終わるより早く、レイニーアの槍の刺突とユーフィの残撃がラビットバニーを襲った。ドラゴンランスが突き刺さり、燃え上がる剣にざっくりと切り裂かれる。
くっ、と唸りをもらしたラビットバニーの兎面の目が光ったと思うと、不意にユーフィの懐へ踏み込んだ。【うさちゃんカンフーモード】だ、と認識はしても間に合わない。
目にもとまらぬ速さでラビットバニーの拳の連撃がユーフィを打ち据えた。見切ろうにもおよそ目がついていかない。覚悟とオーラをもって防げる限りを防いだが、一撃一撃が信じられない重さで食い込んだ。
「くあっ!」
勢いで吹き飛んで転がる彼女と入れ替わるように、ラビットバニーの目の前へ黒い小柄な姿が飛びこんでくる。
「飛んで火にいるってヤツだし……?!」
皆まで言いきれなかったのは、間合いへの侵入者が彼女の心を大きく揺さぶったから。
猫耳カチューシャをつけた黒いドレスの美少女に目が釘付けになる。
「なるほど。『エモいもの』というのをみせると無効化できるのか。そうか」
シビラ・レーヴェンス(ダンピールの電脳魔術士・f14377)は躱しようのない間合いから全力で魔力を集中させた。高速詠唱によって顕現する炎、その数は優に百を超える。
「要は『心に響くもの』を視覚化すればいいのだろう?」
囁くような声とは対照的に、激しい爆音をあげて炎弾はラビットバニーを呑みこんだ。『エモさ』はよくわからなかったが、お得意の検索でシビラが出した結論は確かに彼女の急所だったのだ。
その間にレイニーアがユーフィを確保して距離をとる。かなりのダメージは受けているがまだ戦えそうだ。
「ナメた手仕掛けてくるじゃん?!」
炎の中からラビットバニーが飛び出してきた。まだまだ体力に余裕がありそうだ。肩をすくめたフェルトめがけ、赤べこキャノンが炎を噴く。
「でももうひっかからないし! 道化師から落ちればいいっしょ!」
案外根に持っていたらしい。そしてそれはフェルトの狙い通りだった。とうにバリアは復活しているだろう、それも予定のうち。
背後で花火の音が聞こえたラビットバニーは、フェルト目がけて撃ってから振り返った。まだ消えきらないピンクの煙の陰のあちこちで、小さな花火が幾つも鳴る。それは煙に紛れてフェルトが召喚した【SPウィングウィッチ】であり、ラビットバニーは数分の間、文字通り引きずり回された。
「なるほど、厄介なバリアじゃが、攻略法さえ解ればどうという事もない」
パフィン・ネクロニア(ダンジョン商人・f08423)のこともなげで、それも実際無理はなかった。『エモさ』なら無類の強さを誇る手札があるのだ。
「日ごろの訓練の成果を見せる時じゃ」
そう言ってパフィンが放ったのは。振り返ったラビットバニーが反射的に、とんでもない声量で黄色い声をあげた。
「なにそれ可愛すぎるしー?!」
その名もひよこファイブ。可愛らしい五色のカラーひよこ戦隊がアクロバット飛行を始めた。続いて順ぐりに向き合ってのパントマイム、それが終わればタップダンス。よそでは絶対に見られぬひよこパフォーマンスを畳みかける。
「うそじゃん?! めっちゃ可愛いじゃん! うわエモいまじむりしぬ」
もはやのたうち回るラビットバニーが、一羽ずつにおひねりをくわえさせた。
「うむ、芸事はかくあらねばな――さて」
ひよこの目線まで頭が下がった、つまるところほぼ転がっていたラビットバニーに、迅曇天はその名とは対照的な輝きと早さで一閃。
パフィンの斬撃がラビットバニーの胴を抜けるより早く、フェルトのダガーが再び雨のように降り注いだ。先ほどよりも深く多く突き立つ刃に悲鳴があがる。
「猟兵は、けして負けませんっ!」
ユーフィもまた、滴る血をものともせず立ち上がった。体力を振り絞ってダッシュし、バリアの展開よりも早く飛びかかる。
「行きますよぉっ! これが森の勇者の、一撃ですっ!」
胴をクラッチして一気に投げをうつ。しなやかな身体は難なく大柄な相手を持ち上げ、地面に当たるらしき部分にラビットバニーを叩きつけた。
「ったああ?!」
叫びはバリアを一瞬復活させたが、しかし。眼前に迫っていた猫耳つきのシビラの姿が一瞬でその絶対防御を放棄する。
「来たれ、来たれ。血の盟約に従え。我が翼!」
レイニーアの召喚に応じてドラゴンが現れると、彼女を乗せて一気に加速した。槍は一閃でラビットバニーを串刺しにしてのける。その槍が抜けるまでに、シビラの呼んだ炎は再び激しい熱を放って集まった。
爆音。
ラビットバニーは炎に呑まれた。
大成功
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パーヴォ・シニネン
※イルカ、鯨等の海洋生物を模したマスクが子供の肉体に憑依
見た目に騙されてはいけないようだネ
相棒、この世界を二人で救うんだ(頷く子
(簡易テーブルの上に大量のホットドッグ
これは命のやりとりだ
さぁ相棒、思う存分食べてくれ!【大食い】
相棒は飢えていた
親を亡くし生きる希望すら見失った
この子を愛し、生かし、守り、独り立ちさせるのが我輩の役目だ
この子がこれだけ食べられるようになったのも
みずから生きようと思ったからだ
そして命に感謝しているからだ
君には、その輝きが見えないのか!
バリア解除と同時にキャノンを避け全力の攻撃を
ナイフとフォークで素早く斬りかかろう
斃れることなどない、我輩は必ずこの子を守るのだから
空気を焼いて渦をまく炎の中から飛び出してきたラビットバニーは、ぶすぶすと煙をあげる体をさすりながら半ギレの絶叫をあげた。
「あーしをここまで追い詰めるとか、まじ信じらんないんですけどー!」
とはいえ、当初にくらべればだいぶぼろぼろになっているが、気迫はまだまだ圧倒的に感じる。流石幹部級と言うべきか。そんな彼女のペースに呑まれることなく、怯むこともない子供が一人いる。
子供はイルカや鯨のように見える、海洋生物を模したマスクをしていた。
「見た目に騙されてはいけないようだネ。相棒、この世界を二人で救うんだ」
子供がこくりと頷く。子供に話しかけているものこそマスクであり、猟兵としての力を持つもの――💠パーヴォ・シニネン(波偲沫・f14183)といった。
「望むところだっつーの。あーしだってこんなんで帰れねーし!」
激昂する彼女の動きに合わせて、彼女の肩で紫色の赤べこが頭をガンガン振っている。なんだろう、紫色で赤べことか哲学かな。
「ちゃちゃっと片づけるし!」
叫んだラビットバニーの指先からまたしてもビームが迸る。空間を舞う花びらが集まってきて、動きを激しく縛めた。
苦しげなパーヴォを前にラビットバニーが楽しげに笑う。
「何か打つ手があるなら見てみたいし?」
「……ならば見せよう」
余裕を見せる彼女は己の優位を疑わなかった。だから目の前に簡易テーブルが置かれても、その上にたくさんのホットドッグが積み上げられても、怪訝な顔をしただけだ。
「これは命のやりとりだ」
彼の言葉に子供がこくりと首肯する。
「さぁ相棒、思う存分食べてくれ!」
パーヴォの言葉に頷いて、子供がホットドッグに手を伸ばす。そして凄まじい勢いで食べ始めた。否、貪り始めた。
「な、なに? どうしたし!」
「相棒は飢えていた。親を亡くし生きる希望すら見失った。この子を愛し、生かし、守り、独り立ちさせるのが我輩の役目だ」
マスクの語りを聞いてラビットバニーが驚いたようによろめく。
「この子がこれだけ食べられるようになったのも、みずから生きようと思ったからだ。そして命に感謝しているからだ」
子供の食べ方は単に空腹という様子を超えて、まさに貪り食っていた。究極までの飢えを経験していなければありえない、食べ物に対する執着を感じさせる。
「ま、まじ……? そんなヒドいことばっかだったとか、ヒドすぎね?!」
「君には、その輝きが見えないのか!」
ぱりーん。パーヴォのだめおしで、音をたてて『絶対無敵バリア』が砕けちる。
その隙をパーヴォは見逃さなかった。意を受けた子供がすぐさまナイフとフォークを手に立ち上がり、懐めがけて飛び込んでいく。
食べた肉の分、【フードファイト・ワイルドモード】が驚くべき力を与え、その分ラビットバニーの魂にも『エモい』ダメージを叩きこんでいた。
「感動巨編じゃん!」
叫ぶラビットバニーの体にナイフとフォークが突き立つ。苦しげな声にも構わず一気に一閃、ぱっと血を散らしてレオタードが引き裂かれた。
「っくう!」
「斃れることなどない、我輩は必ずこの子を守るのだから」
もう一度バリアが展開されるよりも早く、ナイフがまっすぐに腹を穿つ。
「……あ、あ、ああ」
そして絶叫した。
「このあーしがっ……。こんなんで倒されるとか、チョーおかしいんですけど!」
相当な強がりだと言わざるを得ないが、ともかく。そう言う彼女自身の体が少しずつ、花びらになって散り始めている。
「あーしはいくらでも戻ってくるし。次に会うときは覚悟しろって感じ!」
指つきつけてそう宣言すると、魅力的な肢体は潔いほどにぱっと四散した。
「……頑張ったな」
パーヴォののねぎらいに、心を通わせた子供がこくりと頷く。ふたりは力を合わせ、力の限り戦い抜いたのだ。
ラビットバニーは消え去った。残機があれば復活できるゲームといえど、彼女にはもういくらも手持ちはないだろう。
そして彼女を倒した時、システム・フラワーズの次なる敵もまた現れるのだ。
大成功
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