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バトルオブフラワーズ⑩~エモさ、エモさってなんだ

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ #ラビットバニー

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●振り向かないことかな
「バトルオブフラワーズ、継続戦闘お疲れ様。……まあ、予知していたことではあるんだけど、次の強敵が現れたので向かって討伐してほしい。敵の名は、『ラビットバニー』。こいつが進撃するに当たって次の壁になる」
 壥・灰色(ゴーストノート・f00067)が立体パズル状のグリモアを人差し指でトンとトスすると、宙にホロ・モニターが投映された。映し出されるのは、戯画化された巨大なウサギの被り物をした、肉感的な体付きの女性である。
「エイプモンキーに続いて頭痛が痛いみたいな名前のが来たものだけど、ふざけた名前の割に能力は強力だ。彼女は『絶対無敵バリア』だとかいう……まあその、そのまんまな名前のバリアに守られている。このバリアが展開されている限り、極論、核弾頭だろうが彼女にダメージを与えることは出来ない。文字通りの難攻不落、絶対無敵の盾を持つ敵だ」
 見上げたラビットバニーの映像から目を落とし、だが、と灰色は言葉を継ぐ。
「この絶対無敵バリアも、『展開されている限り』絶対無敵なだけで、解除する方法はある。……それが、『エモさ』だ」
 エモさ?
 一様に猟兵達が解せない、という顔をするのに、気持ちは解る、というように頷く灰色。
「ラビットバニーは『エモい』と思うものを見ている間、この絶対無敵バリアを展開することが出来ない。つまり彼女がエモさを感じている間は攻撃が通るってことだ。理屈は知らないけど。……まあ、何だろうね。感動している間は心の壁を張ることが出来ないとでも言おうか」
 仔細な理屈については知る由もない。故に説明を省き、絶対無敵バリアの弱点を告げると、ホロ投影を切り、パズルを一つ捻って六面揃え、現地への“門”を開く。
「ラビットバニーがなにを『エモい』と感じるかは、わりと基準が緩そうだ。他の事例もいくつか見たけれど、勢い、熱さ、笑い、可愛さ、男らしさ、感動、その他諸々……感情を強く揺さぶれば、『エモさ』を感じさせるのは難しくないだろう。知恵と工夫を凝らして事に当たって欲しい」
 灰色は開いた“門”の向こう側を見ながら、気を付けて、と猟兵達に目礼をし、
「……しかしホントに『エモい』って、何なんだろうね」
 今以て理解出来ない概念に、首を捻るのだった。



 お世話になっております。
 煙です。吹き荒れろクソエモの嵐。

●注意事項
 ラビットバニーは必ず、猟兵に先制して『絶対無敵バリアを展開するユーベルコード(POW、SPD、WIZ)』を使ってきます。
 絶対無敵バリアは本当に絶対無敵で、あらゆる攻撃を無効化しますが、「ラビットバニーがエモい物を目撃する」と、精神集中が乱れてバリアが消滅します。
 ラビットバニーのエモい基準はかなりユルいので、バリアの解除は比較的容易と思われますが、バリアなしでも彼女は相当の実力者です。

●プレイング受付開始日時
『2019/05/13 08:30』

●お受けできる人数について
 今回の描写範囲は『一日あたり三名様程度のお返し』となります。プレイングの着順による優先等はありませんので、お手数に思わなければ、受付中の限りは再送などなどお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『カワイイ怪人『ラビットバニー』』

POW   :    赤べこキャノン
【絶対無敵バリア展開後、赤べこキャノン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    うさちゃんカンフー
【絶対無敵バリア展開後、兎面の目が光る】事で【うさちゃんカンフーモード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    おはなハッキング
【絶対無敵バリア展開後、両手の指先】から【システム・フラワーズ制御ビーム】を放ち、【花の足場を自在に操作する事】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:和狸56

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●イン・システム・フラワーズ
「はん、どうせ誰が来ようがあーしの『絶対無敵バリア』には傷一つ入れられないし! やれるもんならやってみろって感じ!」
 高いヒールをカツカツ鳴らし、ラビットバニーは猟兵の到着を待ち構えている。エイプモンキーは破れたが、さりとて彼女もまたそれに並ぶ実力者。自信たっぷりな態度がそれを物語る。
 奇妙な風体ではあれど、油断して対するには能わぬ強敵である!
「早速お出ましってワケ! サガるようなヤツじゃないといいけど!」
 宙に“門”が開き、猟兵達が飛び出す。花咲き誇るシステム・フラワーズの一画で、また一つ――激戦のワンシーンが刻まれる!

「――さあ、掛かってきなよ、猟兵! あーしの『壁』はァ、カタいよォ!」
 
ショコラッタ・ハロー
エモってなんだ?
わかんねーけど、一発芸すりゃいいか

おいこっちを見ろ、ウサギねーちゃん
どうせ無敵なら焦る必要ないだろ、ちょっとおれに付き合え

バニーがこっちに注目したら、道化師の慧眼を発動
増やしたダガーでジャグリングしつつ、
一本ずつ空中でピタリピタリと止めていく

いや、これだけじゃ何やってるかわかんねえだろ
だがここからが真骨頂よ
おまえ目が光るんだろ、ちょいとこのダガーにライトを当ててみな
ほれ、映った影を見てみなよ
空中に固めたダガーが落とす影が、おまえの顔の影絵になってるんだぜ

どうだ、面白いだろ?
気に入ってくれたなら、このダガーはプレゼントだ、受け取れ!
(バリアが解けたら空中のダガーを一斉射撃)



●ダガーアート・ショーダウン
 まず一番槍に飛び出したのはショコラッタ・ハロー(盗賊姫・f02208)であった。
(エモってほんと、なんだろうな。結局あいつも分かってないみたいだったし)
 答えのある問題ではないのかも知れない。グリモア猟兵の物言いを思い出しつつも、空中で華麗に身を捻りしなやかに降り立つ。
(ま、わかんねーけど……一発芸でもすりゃいいか)
 ショコラッタはまるで自分の命をコインにして宙に放るような気軽さで行動を決める。――勝算がない訳ではない。
 盗賊姫に盗めぬものなどありはしないのだ。人の心だって例外ではない。
「来たね猟兵! 小っちゃくてカワイイじゃん? 見た目は合格って感じ!」
 相対距離七メートル。ショコラッタはラビットバニーと向かい合う。
「小っちゃくては余計だっての。こっち見てろよ、ウサギねーちゃん。どうせ無敵なら焦る必要ないだろ、ちょっとおれに付き合え」
「はん? つっまんないもの見せたらあーしの赤べこキャノンちゃんが火ィ吹くよォ?」
「おっかねえな。最後まで見てから頼むぜ」
 かんッ、かッ!
 ピンヒールを打ち鳴らしてリズムを取り、ショコラッタはダガー『アンティドート』を引き抜く。平を相手に見せ、顔の前に捧げ持つ。
 かつんッ!
 ピンヒールがスタッカートで打音を奏でると、まるでカードのようにじゃらり、とダガーが複製された。
「へえ?」
 ラビットバニーが興味を惹かれた風に身を乗り出す。ショコラッタは直ぐさまそこから片手で、カードを引くように刃を持ち、ダガーを宙に次々と投げ上げる。
 いかなる芸当か宙に放られたダガーがさらに数を増し、重力に引かれて落ちるのを、ショコラッタはたった二本の細腕、十の嫋やかな指先で絡め取っては、再び宙に投げ上げる。華麗なジャグリング。
 瞬く間に数を増していくダガーにラビットバニーが目を瞠る。ショコラッタは薄笑み浮かべ、ヒールを鳴らす。一打ごとに一本、宙でダガーが静止して行く。
 三十一打。すべてのダガーが静止し、ショコラッタが動きを止め――
 パチパチ、と拍手の音。
「大道芸じゃん、ちょっとビビッたし! けどめちゃエモって感じじゃないじゃんね、これで終わりなんならテンサゲって感じだし?」
 がちゃり、と赤べこキャノンを構えるラビットバニーに、ショコラッタは人差し指を立てて揺らす。
「ここからが真骨頂よ。おまえ、目が光るんだろ。こいつは、おまえが見て初めて完成するアートさ。ちょいとこのダガーに、光を当ててみな」
「……?」
 半信半疑――しかしショコラッタの堂々とした、余裕のある態度に圧されるように、ラビットバニーは宙を輝くウサちゃんアイで照らし上げる――
「……えっ、これ!?」
 思わず、と言った風に上がる声。ショコラッタは片目を閉じる。宙に照らし出されたのはラビットバニーの顔。ダガーが光を切り取り、彼女の顔を描いたのだ。当に、影絵のダガー・アート。
「どうだ、面白いだろ? 気に入ってくれたか?」
 悪戯っぽい笑みでショコラッタは応えた。ラビットバニーが照らすことで初めて完成する、観衆参加型のアトラクションの仕組みを取り入れた一芸……!
「ふ、不意打ちずるいし! こんなんエモいに決まってるっしょー?!」
『絶対無敵バリア』が揺らぎ、薄れる……!
 思わずと言った風に言いながら、攻撃を食らう前に格闘戦体勢を取るラビットバニーだったが――
 残念。宙に並べたあのダガーは、すでに攻撃の布石だ!
「その様子じゃ満更でもないみたいだな。気に入ってくれたなら、このダガーはプレゼントだ、受け取れ!」
 フィンガー・スナップ!
 ショコラッタが指を鳴らすなり、ダガーの刃先が怪人を睨む!
「きゃああああっ!? やめやめちょっとタンマッいった、いたたっいたたたーっ?!」
 降り注ぐ刃雨が、ラビットバニーの体を鋭く裂いていく!

成功 🔵​🔵​🔴​

櫟・陽里
突然の謎爆発!
立ちのぼる煙の奥からバイクの大ジャンプで登場だ!
サスペンションを沈ませ華麗に着地した後
後輪滑らせながら“なんかすごいターン”とか
ウィリー的な派手技をやたらと魅せる
腹に振動を感じる爆音とタイヤスモークをあげながら停止
ゴーグルを上げ、うさちゃんと目が合ったら名乗りだ

スターライダーヒカリ参上
お前の胸のエンジンに火を付けるぜ!
二本指敬礼の挨拶ドヤァァァ!
何の疑いもなく浸りきってる
好きだろ?ヒーロー物

バイクの魅力はまだまだこっから
しっかり見てろよ!

留まることなく走り回り敵の攻撃を避け
ターン技発動で魅せる攻撃
地形をカタパルト代わりにFMXトリック風の宙返り
この縦回転もユーベルコードを纏わせる



●イナズマ・ライダー
 きゅどおおおおおおおおおおおん!!
「今度は何だっての?!」
 ダガーから逃げ回り再度絶対無敵バリアをアクティブにしたラビットバニーが突如の爆発に目をひん剥く。
 明らかに戦隊ヒーロー物めいた色つきの煙を突き破るのは――宇宙バイクのカウルだ!
 バイクに空を翔ける翼はない。しかしそのバイク――『ライ』には、優秀なライダーがいる。操縦者という翼を得たライは、文字通り天翔る雷光の如くに宙を躍り、サスを軋ませながら着地、ドリフトターンを決めた。
「あんな高さから着地を――?! や、それだけじゃないし!? えっえっウソ、ウィリーしてるのに?!」
 前輪が浮いたまま二度三度とフローティングターンをキメて、前輪を下ろしたと思えば、まるで氷上にいるかのような滑らかな三連続ターン!
 エンジン音がその場の全員の腹の奥を揺さぶる! スキール音、タイヤスモークとその匂いが、『これがライブ・バイクスタントだ』と主張せんばかりだ。
 刻んだタイヤ跡も生々しく停止したバイクのライダーがゴーグルを跳ね上げる。白い歯をキラリと光らせ、男はラビットバニーと視線を重ね、片目を閉じて見せた。
「スターライダーヒカリ、参上! お前の胸のエンジンに火を付けるぜ!」
 櫟・陽里(スターライダー ヒカリ・f05640)である! 人差し指と中指を揃え、額をかすめるような敬礼!
「か、かっこ……よくなんてないし! この程度じゃあーしのエモセンサーはピクリともしないわけ! 赤べこキャノンをごちそうすっからそこ動くなし!」
 一瞬エモさで震え掛けたラビットバニーだが、なんとか我に返った風に赤べこキャノンの咆哮を持ち上げる。チョロインの汚名だけは返上しておきたい。
「強がんなくたっていいんだぜウサちゃん。好きだろ? ヒーロー物」
「うっさいし、黙れしー!!」
 赤べこキャノンが火を噴いた。しかし陽里がアクセルを開ける方が一瞬早い! ロケットスタートしたバイクが、再び陽里と共に風になる!
「それならカッコいいって認めざるを得なくなるまで魅せてやるだけさ。バイクの魅力はまだまだこっから――しっかり見てろよ!」
 エンジンが唸り、赤べこキャノンの弾幕の間を、陽里とライは当に人馬一体となって駆け抜ける!
「くっ、いくらバイクだって地面がなきゃ走れないはずだし!」
 ラビットバニーは即座にシステム・フラワーズをハッキング。地形を操作し、陽里が走る地面を隆起、分割して、走行を阻もうとするが――
「俺達はそんな小技じゃ止められねえぜ!」
 華麗なターン、そしてジャンプ! モトクロスよろしく、重いはずの車体は軽やかに曲がり飛び跳ね、絶え間なく操作される地形を乗り越え、ラビットバニーに迫る!
「こっの、止まれし――!」
 陽里の前に殆ど壁と言っていいほどの角度で地面が隆起する。しかし――それを前にブレーキをかけることもない。陽里はさらにアクセルを開け、加速――!
「――こいつが、俺達のベスト・トリックだ!」
 阻むための地形すらジャンプ台、カタパルトとして。陽里とライが宙高く、縦回転しながら空を舞う。一回転、二回転、三回転、四回転――
 下から見上げるラビットバニーは、当に特等席からその様子を見ることとなった。前人未踏の七回転――それを目の当たりにして心動かされぬことがあろうか、いや、ない!
「っく、悔しいけど、エモッ……!」
「そいつはどうも、そんじゃ……喰らいなっ!」
 陽里はライと共に、当に稲妻となって、ラビットバニー目掛けて落ちる! 前輪がラビットバニーの顔面を捉え、
「ぎにゃーーーーーっ!?」
 落下エネルギーと纏うユーベルコードの威力で、その体を吹き飛ばすッ!

成功 🔵​🔵​🔴​

花狩・アシエト
俺のエモさは…「幼い頃からの親友と、大きくなって一晩戦い合う」だ!
実体験じゃないです、相棒は親友じゃないです

(なりきり)
待たせたな、ラビットバニー
いきなり呼び出して悪いな
…実は戦ってほしい
俺とお前、ずっと競り合って生きてきた
そろそろ決着をつけたほうがいいと思うんだ

…花狩アシエト、ラビットバニーに決闘を申し込む!

ただ打ちあう、一晩、夢中に
結局決着がつかなくて、大の字になって笑い合う
お前とは、ずっと親友、だな
拳を上げてコツンとする

(なりきり終了)
隙あり、界刀閃牙!
ラビットバニーの攻撃は武器受けで防ぐ
二回攻撃、力溜めで攻撃もする

まだやり足りねーってか!?
俺はクタクタだぜ!



●ディア・マイ・イマジナリ・ベストフレンド
「ふんっ、このくらいじゃまだまだあーしは止めらんないし!」
 片手をついてバック転。つけたかぶり物が危ういバランスで揺らいでラビットバニーの素顔を守る。
 幹部怪人の名は伊達ではない。絶対無敵バリアがなかろうと、彼女の耐久力と攻撃力は群を抜いているのだ!
               ベストフレンド
「――なら俺が止めてやるぜ、 親 友 !」
「?!」
 高らかな宣言と共にまた新たな猟兵が進み出る。踏み出したのは花狩・アシエト(アジ・ダハーカ・f16490)。その目は真剣そのもの、他の猟兵が思わずラビットバニーと彼を見比べるほどだ。
「待たせたな、ラビットバニー。……否、親友!」
 力強くアシエトはラビットバニー目掛け呼びかける。両手に刀の柄を執り、二刀をスタイリッシュ抜刀!
 一種異様な空気が辺りを支配する。ロマンスにも昼メロにもはたまた青春物にも転がりそうなフックを、周囲の猟兵が固唾を呑んで見守る中――
 ラビットバニーが口を開いた。
「つーか、アンタ誰?」
「「「ベストフレンドじゃねえーッ!?」」」
 周囲の猟兵が一斉に突っ込みをカマす。あっこれやべえ奴じゃん、という空気が場を支配しかけるが、真にやばいのはそこからであった。
「いきなり呼び出して悪いな。……実は、俺と戦って欲しいんだ」
「「「続けたーッ!??!!?」」」
 超ド級の芝居である。メンタルがオリハルコンかなんかで出来ている。アシエトの揺らぐことのない瞳は、ラビットバニーの内心にありもしない記憶を呼び覚ますほどだ。こいつとあーしは……親友だった……?!
「俺とお前、ずっと競り合って生きてきたじゃないか。そろそろ決着をつけたほうがいいと思うんだ。……受けて、くれるだろ?」
「えっ、えっ、い、いいけどぉ!」
(((チョロい――ッ?!!?!!?)))
 周囲の猟兵の心の声もよそにアシエトは勢いのまま、二刀を翳して踏み込んだ!
「――そう言ってくれると思ったぜ、親友! ……花狩アシエト、ラビットバニーに決闘を申し込む! いざ尋常に、勝負!」
「あーもうよくわかんないし! わかんないけど……戦わなきゃ負けの気がするワケ! 絶対無敵バリアがある限りあーしが負ける訳なんてないけどぉ!」
 ラビットバニーは言葉を並べながらアシエトと打ち合った。徒手であるにもかかわらず、二刀を携えるアシエトを前に一歩も退かない。圧倒的なスピード、そしてタフネス。手に纏わせた絶対防御バリアがアシエトの二刀を打ち返す。
「へヘッ……やるじゃねえか、親友!」
 夢中になって打ち合うアシエトの表情は無邪気で、楽しげで、競い合うことそのものに意義を見いだしているかのような――澄んだ眼差しだ。
(あーし……もしかして、どこかでホントにこいつと会ったことが……)
 幾多打ち合っても決着はつかず。鍔迫り合いに似て、手刀と刀が軋り合う。
「決着なんて、やっぱりそんな簡単には付きゃしねえか――」
 ふっとアシエトは淡く笑い、ラビットバニーと視線を重ねる。肩を跳ねさせるラビットバニーに、男は笑みのままに云うのだ。
 まるで、日暮れの河川敷、力の限り打ち合った後――大の字で顔を合わせたときのような表情で!
「お前とは、やっぱり、ずっと親友、だな」
(え、エッモ……!)
 笑みに瞳を撃ち抜かれ、思わずよろめくラビットバニー。ぷすん。消えるバリア。ギラリ。光るアシエトの眼。
 
「隙あり、界刀閃牙ァー!!!」
 ズバッシャアアアアアアッ!
「にぎゃーーーーーーーーっ!?」
 バリアが解けた瞬間、アシエトの二刀がラビットバニーをざっくりぶった斬った。
「「「手のひら返したァー!?!!?」」」
 ――そう、芝居だ! 周りさえ呑み込んでしまう芝居! 『幼い頃からの親友と、大きくなって一晩戦い合う』シチュの芝居だったのだ! その芝居のエモさがバリアを打ち消し――今ここにアシエトの刃が届いたのである!
「ちょ、ちょっと待つし!? じゃあ今までの台詞とか表情はァ?!」
「フィクションだよ! まだやり足りねーってか!? 俺はクタクタだぜ!」
 いっそ清々しいばかりの掌返しに、ラビットバニーはふるふる肩を震わせ……
「お、お、乙女の純情返せし、この、この、まだお(まるで ダメな 男)ーッ!!」
 まだおー、まだおー、まだおー……
 今日一番のラビットバニーの絶叫が、あたりに木霊するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神埜・常盤


エモい……お嬢さんはハイカラな言葉を使うのだねェ
お望みと在らば存分に、君を楽しませて差し上げよう!
但し誘惑と催眠の術は確り活用させて貰うとも

ユーベルコードで雪を降らせようか
攻撃の為では無く、バニー君の目を楽しませるために
ほら、季節外れに降る雪なんて風情が――あァ
此の雪の中、その薄着では寒いのではないかね
良ければ着給えと、羽織っていたインバネスを差し出して

――ふふ、エモかったかね?
だまし討ちして済まないが、実はそれ毒の雪なのだよねェ
バリア無効化後は、全力魔法でより多く雪を降らせダメージ付与を
反撃は第六感を活かして見切り、痛みは激痛体勢で堪えつつ
体力が危うい時は少し吸血させておくれ、バニー君



●口説き文句も道化の流儀
 また一つ宙に“門”が開く。
 軽やかに外套を翻して、ラビットバニーのいる足場の上へひらりと舞い降りる、大正浪漫の香一つ。
「エモい……エモい、と。お嬢さんは随分、ハイカラな言葉を使うのだねェ。良いだろう、お望みと在らば存分に、君を楽しませて差し上げよう!」
 歌うように言って前に出るのは神埜・常盤(宵色ガイヤルド・f04783)。飴色のインバネスを翻す優麗な風貌の男性だ。
「ハイカラ? ハイセンスって言ってほしいんですけど! つーかアンタにあーしを楽しませられそうな気がしないっていうかー、遊びの趣味合わなそーっていうか! 喰らえし!」
 返礼は砲声! ラビットバニーは構えた赤べこキャノンのトリガーを引き、常盤を砲弾で迫撃する! 常盤は真横に向けて跳ぶように駆けた。
「いやはや、これは手厳しいね。そう言わず、少しばかり僕に付き合ってくれないか、きっと退屈はさせないよ」
 自身目掛けて殺到する砲雨を、常盤はまるでそれこそ小雨をやり過ごすような調子で軽快に走り躱す、躱す、躱す。
「こっの、チョロチョロしないで止まってろっつーの! 大人しく当たれし!!」
「流石に直撃は避けたいところではあるよ、今し方君を愉しませると云ったばかりだからねェ」
「スカした台詞ばっかりじゃん、なら、やってみろ、っつー、の!!」
 唐突に足場が音を立てて分割、隆起! 走る常盤の行く手を遮るように地が割れ、盛り上がる! ラビットバニーによる地形ハッキングだ! 瞬く間に後ろもまた地割れ、ピザのピースのように常盤の足場のみが切り離される!
「これはこれは――」
 反射的に足を止めた常盤を赤べこキャノンの咆哮が睨む!
「赤べこちゃん、フルオーーーートファイアッ!」
 きゅどどどどどどっっ!!
 正に砲雨、否、砲嵐といっても過言ではない連射! 瞬く間に常盤のいる足場が爆炎に包まれ、濛々たる煙に覆われる――高火力の赤べこキャノンの砲弾をこれほどまでに叩き込まれては、いかな猟兵とて無事では済まぬ。
   ・・・・・・・・・・
 ――当たっていたのならば。
 立ち上る黒煙を切り裂いて飛び立つ無数の蝙蝠!
「!?」
 赤べこキャノンを反射的に振り向けるが、その全てを射落とすような精密射撃が咄嗟に出来るわけも無い。ラビットバニーが的を絞れずにいる間に、蝙蝠達は一所にまとまるように飛び集まり、――魔法のように人型を成した。常盤である!
「全く、乱暴だ。僕は少しばかりバニー君と話がしたいだけなのだけど」
「蝙蝠に化けるとかちょっとビビらされたけど、あーしのバリアはそんなもんじゃびくともしないしバリシャキだし! 手品はそれでおしまい?!」
「待ち給えよ。……ほら、空を御覧」
「?」
 常盤は長い指先で虚空を示す。ゆらりとラビットバニーが目を上げると――宙から、はらり、はらりと落ちる白い結晶があった。
「えっ、これ……雪?」
 室内、しかもシステム・フラワーズの中。現界して一度も見たことのない雪が、冷たい風と共に舞い降りてきたのだ。
「何でこんなトコに雪が――、でも雪ってテンションアガるよね、わ、だんだん強くなってきた」
 最初はちらりちらりと視界に混じる程度だったのが、徐々に勢いを増し、花々に積もるほどになる風雪。上がったラビットバニーのテンションと加速度的に落ちる気温の釣り合いが取れなくなる前に――常盤は、滑るように前に進んだ。
「――ッ!」
 反射的に赤べこキャノンを向けかけるラビットバニーの肩に、ふわりと被さるものがある。
「え――」
「風情のあるものだね、春に吹く雪風も。――然し、此の雪の中、その薄着では寒いだろう?」
 常盤が纏っていた外套をラビットバニーの肩にスマートに着せたのだ。腕を通せばきっと袖が余ってしまうほどの身長と体躯の差がある。きちんと着なくてもすぐに解ってしまう。
「あっ、え、ちょっ、ちょっと待っ……」
 顎元に曲げた人差し指を当て、常盤は流し目をくれて笑って見せた。
「良ければ着給え、バニー君。――そうすれば、この季節外れの雪を、もう少し長く二人で愉しめるだろう?」
「クッソエモかーーーーっ!!!」
 心臓が喧しい、といわんばかりだ。ラビットバニーの顔が紅潮していることは、見える範囲、首元辺りまでが赤くなっていることからも確定的に明らかである。絶対無敵バリアが……消える!
「――ふふ、エモかったかね? 光栄だなァ」
 その刹那、常盤がやや声のトーンを落としてとん、と飛び下がる。雪の勢いが増していく。
「え、ちょっと何で離れ――」
 風雪が勢いを増し、増し、いや増し、
「だまし討ちして済まないが、実はそれ僕が降らせた毒の雪なのだよねェ」
「こういうオチかーーーーーーーーーーい!!!」
「相済まないねェ。異形狩には一家言ある身なもので」
 ぱち、と指を鳴らすとラビットバニーの身体を覆う外套が、いかなる芸か蝙蝠の群れに化け解ける。あとは――毒の雪が荒び、彼女の体温と体力を奪うばかり!
 呪うような叫びを上げながら赤べこキャノンを乱射するラビットバニーに、常盤は片目を閉じて嘯いた。
「けれども甘い毒を呑むのも、満更悪くは無かっただろう?」

大成功 🔵​🔵​🔵​

矢来・夕立
エモ。語源は「エモーショナル」ですがハッキリとした定義は不明です。
日本語では「形容が難しい」ことを「得も言われぬ」と言いますよね。

というわけで言葉を繰るより感性に訴えかけましょう。

タブレットとスマートスピーカーを無線接続。
ちょっとウサギの人。これ聞いてください。
この曲イントロからバチクソエモくないですか?アガるじゃないですか。誰の曲だかご存知ですか?曲名メモります?これはですね、

――人類が初めて作ったロックです。

タブレットを見せる所作から《だまし討ち》【神業・絶刀】。一気に近づいて斬りかかる。
これもまたロックです。
ていうかなんでもありと書いてロックと読みます。ひとつ賢くなりましたね

ウソですけど



●ライ・ウィズ・ロックンロール
 エモ。語源は『エモーショナル』ですがハッキリとした定義は不明です。感情に強く訴えかけるような心の動き、情動を示すとか、気持ちをストレートに表現出来ないがとにかく心が揺さぶられた時などにも使うようですね。
 ところで日本語では「形容が難しい」ことを「得も言われぬ」と言いますよね。これもエモの語源の一つです。まあウソですけど。今考えました。
 とまあ言葉を繰れば尽きもしないわけですが、今回の相手には長々喋るのは鬼門の気がします。喋り方を見てるに多分小難しいことを言っても理解できな……エンッ(咳払い)。とにかくこれ以上言葉を繰るよりも感性に訴えかけていきましょうそうしましょう。
「そういうわけでウサギの人。ちょっとこれ聴いてください」
 矢来・夕立(影・f14904)はスマートスピーカーとタブレットの黄金コンビを携えラビットバニーと対する。
「なんかバチクソ失礼な前置き入った気がするし。ケンカ特価バーゲンみあるけど買うか? 買っちゃうぞ今あーし傷心なうだし」
「気のせいですよ」
 ウソですけど。
「とにかくいい曲なのでちょっとだけでも聴いてください」
 勢いのままに夕立は距離を詰める。赤べこキャノンからさりげなく射線を外しつつ、タブレットを操作して再生開始。
 カウントを軽快に告げるヴォーカル、合いの手を入れるようにギターが、ウッドベースが、パーカッションが歌い出す。
 音質云々の話をすればそれはとても近年の楽曲には及ばない。演奏技術からしてもそうだ、決して超絶技巧ではない。しかし数人の男達が紡ぎ出す音の組み合わせとリズムが、思わず体を揺らしてしまうようなグルーヴを作り出している。
 最初は半眼になって赤べこキャノンを夕立に向けようといていたラビットバニーだが、夕立があまりにも機敏に射線を躱しつつ再生を続けるため、嫌が応にも曲を聴くこととなり……そしてすぐにリズムにつられるように体を揺らし出した。
「この曲イントロからバチクソエモくないですか? アガるじゃないですか。どうです?」
「ん、んんん、ま、まあまあじゃん? クッソエモいってほどじゃないけど!」
 絶対無敵バリアがゆらゆら揺れる。まだ辛うじて絶対無敵中。ラビットバニーの目がタブレットを追い出すのを確認して夕立は口八丁、畳みかけるような追撃。
「最後まで聞けばきっともっと気に入りますよ。誰の曲だかご存知ですか? 曲名メモります? これはですね、」
 言葉を切り、夕立はタブレットをゆるりと差し出し、画面をラビットバニーに見せ――たっぷり溜めてから口を開いた。

「――人類が、初めて作った『ロックンロール』です」

「はーーーーーっ!!! やめろしマジその人類最初のとか前人未踏のとかそういう心くすぐるワードォーーーーー!!!」
 ラビットバニー、アウトー。バリア消失。夕立はタブレットとスピーカーをその辺のお花の上に放り出し抜刀踏み込み。汚いな忍者、さすが忍者汚い!
 抜き放つは永海・鉄観作、斬魔鉄製脇指『雷花』ッ! 消滅したバリアを嘲笑うが如く夕立はそのままラビットバニーに一閃を浴びせ駆け抜ける!
「いいッったぁーーーーーっ!!!?」
 ラビットバニーの脇腹から血が飛沫くのを後目に、夕立は嘯く。
「これもまたロックです。ていうかなんでもありと書いてロックと読みます。ひとつ賢くなりましたね」
「ウッソ! そんなん聞いたことねーし?!」
「ま、ウソですけど」
「死ねこのクソ眼鏡ーーー!!!」
 乱射される赤べこキャノン。残像を残しながら高速回避する夕立。
 きゅどんきゅどんと爆音爆炎、狭間を駆け抜ける黒き影は、そこだけ見ればかなりロックだった、かも知れない。経緯はどうあれ。

成功 🔵​🔵​🔴​

クロト・ラトキエ
おカタイ程、崩し甲斐があると燃えるもの。
これ、男の性ってことで。

鋼糸とワイヤーを駆使して足場を渡り四方八方フィールドにして、
バリア後の攻撃には見切りを試みつつ、鋼糸にて反撃を。
通じない?でしょうねぇ…。
それでも。幾度でも。
例え足場を乱されようとも。例え宙を奪われ、接近を許そうとも。
『これで終わり』?
そう言われたとしても。

――そうでもないさ。

ご存知ですか?お嬢さん。
終わりってのは存外、しぶとく避けきれるものですよ。
切り札ってのは…
隠しているから、奥の手なんです!

キメ顔!からの、横手への跳躍。
潜め切ったナイフの投擲…ユーベルコードはとっておきの、
羈束――玖式。
バリアを破れたなら、短矢も用い追撃を。



●穿つは影刃
 女はガードが堅い方が、オトしがいがある。
 クロト・ラトキエ(TTX・f00472)は内心で小さく笑う。男の性というのは、どこまで行っても変えられないものだ。
「もう油断ヤメだし!! あーし今激おこだかんね、本気で全員始末すっから!」
 怒髪天といった様子のラビットバニーは、すでに相当な攻撃を受けているはずだが未だその動きに陰りを見せぬ。
 次は自分の番だとばかり、クロトは鋼糸により、宙の足場を飛び渡ってラビットバニー目掛け駆け参ずる。
「そう怖い声を出さずに。踊りましょう、お嬢さん。僭越ながらダンスパートナーを務めますよ」
「うっさいし! もう話すことないから!」
 ぎらりとラビットバニー(のかぶりもの)の眼に光が点る。ウサちゃんカンフーモード起動!
 どッ、と音を立てて地面が捲れ上がり、ラビットバニーが疾歩。たった一歩で十メートルばかり開いていた彼我の距離が埋まる。
 一打目は顔面を狙った蹴り。クロトは辛うじて見切り、スウェーして蹴りを回避。
 ピンヒールにもかかわらずラビットバニーの軸足は一切ブレない。そのまま脚を入れ替えながらに四連脚。回避の度、蹴撃が起こす風が不吉な音を立ててクロトの前髪を嬲る。当たればただでは済むまい。
「荒っぽいダンスですね――」
 敵の攻撃の合間を縫い、クロトは鋼糸を放つ。狙いは太腿と頸。どちらも深く裂けば多量の出血が見込める箇所だ。しかし、巻き付こうと伸びる鋼糸が透明な壁に阻まれ弾き返される。
「無駄無駄! あーしの絶対無敵バリアはそんなヘナチョコな糸なんて通さないし!」
 貫手から距離を詰めての打撃に繋げつつ、得意げに胸を張るラビットバニー。
「でしょうねぇ」
 クロトもそれは織り込み済みである。分かっている。絶対無敵バリアがある限りは自分の攻撃が通ることはないのだと。
 しかし、それでも。何度だろうとも。
「足下注意よぉ!」
 ラビットバニーの手から放たれる光条がシステム・フラワーズの内部機構に干渉し、二者がいる地面が鳴動! 防戦・後退を強いられるクロトの脚を取るように地面が隆起する。
「くっ」
 喉を鳴らすような微かな苦鳴、咄嗟に地面を蹴り離してクロトは飛び退る。追うラビットバニーの動きは飛鳥の如き勢いだ。
「ふふん! 作戦ナシに正面から来たってあーしには勝てないって教えてやるし!」
 放たれる槍の如き跳び蹴り! クロトは咄嗟に腕を上げる。強烈な跳び蹴りがガードの上から突き刺さった。凄まじい撃力がクロトの両腕の骨を軋ませる。そのまま後方に吹っ飛ぶクロト、尚も追走するラビットバニー!
「あーしが本気出したらこんなもんよ! まず一人目、これで終わり!」
 吹っ飛ぶクロトに一瞬で追いつき、再び目を光らせ拳を繰り出すラビットバニーを前に――
 砕けかけた腕の骨を微塵も感じさせることなく、クロトは不敵に笑う。
「――そうでもないさ」
 終わりは確かに、いつもすぐそばにある。傭兵にとって、死は親しき隣人のようなもの。
 或いは、それ故に――クロトは、その匂いをよく知っている。死の匂いを嗅ぎ分け、その接近を予期し、潜り抜け、彼は生き延びてきた。
「ご存じですか、お嬢さん。終わりってのは存外、しぶとく避けきれるものなんですよ」
 言い終える前に、クロトは鋼糸を放っていた。しかし今度の的はラビットバニーではない、近くの木立だ!
「切り札ってのは……隠しているから、奥の手なんです!」
「なっ?!」
 木立に絡むワイヤーを急激に巻き上げ、拳をギリギリで回避。地面を踵で削りながら蹴り離し、木を軸にして体を振り回す。その勢いを載せ――空いた左手で抜くのは三本のスローイング・ナイフ。
「小細工ウザいっての! 黙って死ねし!」
 方向転換して追い縋らんとするラビットバニー。クロトはそれをあやすように笑い、一瞬だけ眦を尖らせた。加速度。想定されるナイフの速度と位置関係。予測、計算、照準。
 
「羈束――玖式」

 刃と共に声が飛び。
 ナイフは、過たず――ラビットバニーの『影』を射貫く!
「なっ――」
 初めからそれを狙っていたのか。絶対無敵バリアは確かに、ラビットバニー自身を絶対に守るが、その影までは意識せねば守れぬ!
 或いは鋼糸による攻撃もバリアの効果範囲を緻密に確認する為の前哨戦だったか。布石を打ち、詰め将棋のように狙い澄まし、逆転の一瞬にすべてを賭けてきたのか――!
「どうです? ――これが、僕の『エモ』というやつですよ」
「こ、こいつッ……!」
 それを理解した瞬間、ラビットバニーの動きが軋むように止まる! ユーベルコード『玖式』の力が、乱れたバリアを超えてラビットバニーの体に届いたのだ!
 クロトは木に結びついた鋼糸をパージ、勢いのままにラビットバニーへと突貫し、その胴に勢い任せに拳を打ち込む!
「んぐっ……!?」
「捉えましたよ!」
 殴り飛ばすと同時に、ガントレットから短矢を斉射!
 突き刺さり飛び散る血、漏れる苦鳴と共に、今度はラビットバニーが後ろへ吹っ飛ぶ……!

成功 🔵​🔵​🔴​

小夜凪・ナギサ

正純さん(f01867)と

あら、腕利きの狙撃手さんに歓迎されるだなんて
この巻き鍵、憶えて下さっていたの?
そう―まさに貴方の腕が試されるわ

行動は正純さんの※共通事項に準じる
彼がバニーの指先に傷を負わせてくれたなら、私のUCを発動
一斉攻撃は光線銃を用いるわ

●エモい会話
常に信頼の微笑みを湛えたまま
廻らぬ巻き鍵を取り出す

…あの事件で、この巻き鍵の価値が見出せたの
私は『知ることができた』
価値や評価は、行動の後で着いてくるものだと

猟兵である自分が曖昧な存在かだなんて
もう、迷わない

―だからこそ信じるわ、正純さん
貴方の一発勝負の鉛玉が、確実に届くのだと

…なぁんて、これがいわゆる『エモ』かしら?


納・正純

ナギサ(f00842)と
まさかお前と一緒に戦場に立てるとはね、ナギサ? 光栄なことだ
懐かしいな、それ。あの時のだろ?
買われてるね。それなら良く見といてもらおうか。――さァ、一発勝負だ


※共通事項
遠距離から戦闘開始
適宜距離を離して互いに走り牽制などし、ハッキングを誘発
敵がハッキングの構えを取る瞬間、指先を狙ってUC発動
エモいやり取りを行い、スナイプでハッキング阻止を狙う
後はナギサのUC発動後に接近、二人で手持ちの武装による同時一斉攻撃


この動きの意味が『曖昧』だと思うかい? 違うぜ、これは膳立てさ。
俺は『知ってる』。――それが、絡繰に差し込むものではないことを
お前を殺すのは銃弾じゃない。『エモ』だ



●魔鍵魔弾の二重奏
「あーっもう、ウッザいっての! 全員まとめて吹っ飛べし!」
 次々に披露される猟兵達のエモがラビットバニーのバリアと鬩ぎ合い、絶対無敵のはずの防壁から確実性を奪う。
 それに苛立ったようにラビットバニーは赤べこキャノンを乱射し、近距離戦を行う猟兵達を牽制した。しかも、システム・フラワーズ内部の地形はラビットバニーの支配下に置かれている。彼女が指から光条を発し念じれば、足場は割れ、或いは別の足場と結合し、まるでアクションゲームのアスレチックステージめいて縦横に動く。
 極めて難しい戦場。しかし、猟兵達は決して気後れすることなく戦いにその身を投じる。
 足場の一つに降り立つ二つの影。固い音を鳴らしてヒールを衝く、赤茶の髪をした怜悧な風貌の女、そして巨大な狙撃銃を携えた短髪の男。無論彼らも猟兵である。名を小夜凪・ナギサ(人間のUDCエージェント・f00842)と納・正純(インサイト・f01867)という。
「まさかお前と一緒に戦場に立てるとはね、ナギサ? 光栄なことだ」
「あら、腕利きの狙撃手さんに歓迎されるだなんて、私も捨てたものじゃないわね」
 正純の言葉に、コールドカラーのリップを薄い笑みに歪めてナギサが応える。それは信頼の笑みだ。狙撃手として、同じ猟兵として――正純のことを信じている。
 答えるままに彼女が手に携えるのは『廻らぬ巻き鍵』。逆さ街角ビルディングに彼女を導いた鍵。
「懐かしいな、それ。あの時のだろ?」
「この巻き鍵、憶えて下さっていたの?」
「忘れるはずもないさ」
 かつて正純が担当した案件で、ナギサが用いた『曖昧物』。正純は知に貪欲な猟兵だ。一度見聞きした物は忘れない。況んや、自ら担当した事件のことなど。
「あの事件で、この巻き鍵の価値が見出せたの。私は『知ることができた』。価値や評価は、行動の後で着いてくるものだと」
 語るナギサもまたその事件を思い起こすかのようだ。冴えた湖氷のいろした瞳が少しだけ、遠くを見るように細まる。
「あの時は、確かに惑った。……けど、あの事件があったからからこそ、私は。猟兵である自分が曖昧な存在かだなんて――もう、迷わない」
「ああ。……いい目をしてるぜ。それなら、今やるべきことだって正しく見えてるだろ?」
「勿論」
「そこぉッ、エモい雰囲気出して二人で喋んのやめてほしいんですけど!」
 ラビットバニーの赤べこキャノンが、二人の立つ足場を睨む。
 唇を引き結び、ナギサは正純を横目に一瞥。視線が絡む。
「まさに貴方の腕が試される時よ。――鍵穴を穿って。信じているわ、正純さん。貴方の一発勝負の鉛玉が、確実に届くことを」
「買われてるね。それなら一射ご披露といこう、良く見といてもらおうか。――さァ、一発勝負だ」
 応える正純は気負わずに軽い調子で応えた。軽妙洒脱な二人のやりとりが醸し出す空気、これもまた強いエモ……!
 ラビットバニーはバリアが薄れ、消えていくのにのに舌打ちをしながら赤べこキャノンを連射! しかしそれを即座に、正純が手を翻して射界に捉える。
 その手には電瞬、クイックドロウしたブラスター! ZAPZAPZAPZAP! 放たれる熱線が立て続けに赤べこキャノンの弾頭を穿ち、空中で爆ぜさせる!
 轟音と爆炎をスタートピストルとして、ナギサと正純は地面を蹴った。空中を舞う煤煙を体で切り裂き突き破り、二人の猟兵が宙翔ける!
「近づけさせないし!」
 足場を動かすため、ラビットバニーが掲げた指先から制御ビームを放つ。宙を動く足場の動きが不規則になり、ナギサと正純の道を阻まんとする――
 しかし、手を挙げたならばそれが的。空気の密度分布、風速、射角、トリガープルの重さ。慣れ親しんだスナイパーライフルの重量。地面を蹴ったときの力、落下を開始する自身の速度、位置座標の推移。ありとあらゆる変数が計算式として絡み合い、左辺として正純の脳裏に展開される。右辺にあるのは、『命中』という結果、ただ一つ!
 空中で、魔弾の射手がスコープを覗く。狙うは一点。地形を司る、敵のその手!
「ナギサ! 走れ!」
 それは、『俺がハッキングを止める』という宣言に他ならない!
 二の矢はない。彼の狙撃銃は単発式だ。――だが、それで充分なのだ。一発目を当てれば、二発目など不要。
 正純は落下軌道に入りながらトリガーを絞った。激発するたった一発の銃弾。フル・メタル・ジャケットの弾頭をライフリングが噛みしめ、強烈な廻転を与えて射出する。膨大な計算の元、音速の数倍の速度で射出された銃弾が、
「つッ――!?」
 ――ラビットバニーの右手を、弾くように穿つッ!
 ハッキングが途絶え、正純とナギサの行く手で縦横無尽と動いていた足場が停止する!
「流石」
 ナギサはそれを疑っていなかったように着地予定だった足場に淀みなく着地、そのまま前進する。
「くっ――こんなのすぐ治るし! その銃、一発しか出ない癖に、無駄撃ちじゃん!」
 二の矢がないことを直ぐさま看破し、傷の再生に掛かるラビットバニー。しかして正純は駆けながら、謳うように応えた。
「無駄、ね。この動きの意味が『曖昧』だと思うかい? 違うぜ、これは膳立てさ。俺は『知ってる』。――それが、絡繰に差し込むものではないことを」
「何を言って――」
 傷を塞ごうとするように右手を胸元に抱くラビットバニー目掛け、ナギサは手にした巻き鍵をバックスイング。
「魔弾が穿つは魔鍵の鍵穴。――お前を殺すのは銃弾じゃない。『エモ』だ」
 正純の言葉を引き金としたかのように、ナギサが巻き鍵を投射する。流星の如く鍵は直進し――ラビットバニーの手に穿たれた銃創――『鍵穴』に突き立つ!
「っ、あああああ!」
「――逆巻け、巻き鍵!」
 ナギサが手を翻せば、『廻らぬ巻き鍵』が自ずから廻り、ラビットバニーの主観時間を停止する! 悲鳴は凍り、動きは止まり、無防備を晒すラビットバニー。
 これぞナギサのユーベルコード、廻らぬはずの曖昧物を意味づける――『逆さ巻き鍵エンディング』!
「正純さん!」
「ああ!」
 呼びかけるナギサ。速力を上げ、追いつく正純。二人はラビットバニーのいる足場に降り立ち、互いの腕を支えるように添い立つ。
 ナギサの左手に光線銃、正純の右手に熱線銃! 二人は真っ直ぐに銃を突き出し、照星と照門を一直線に重ねた。標的は同一――

 In-Sight!

 トリガーは同時、迸る二条の光がラビットバニーの体を穿つ――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蓮花寺・ねも

では、ぼくの話に付き合って貰おうか。

普通のトランプを手に、単身、前へ。
ひとりだと思うかい。

これの持ち主はぼくより小さな子でね。
一緒に遊ぶと花が咲くように笑うんだ。
思えばあの子は、ここの出身だったんだろう。
どこからか舟に流れ着いて、帰れず還ってしまった子。

ぼくは記憶を連れていく。
善い記憶も、傷む記憶も、すべて現在に繋がっている。
託された未来を、過去になど呑ませはしない。
世界を救う理由はないが、
世界に恩を返す理由はあるんだ。

この記憶は、この世界に還さないといけない。

ぼくのすべては、残るものは、誰かの遺した想いの積み重ね。
ひとりだけれどひとりじゃない。

未来を望む想いを防げるものなら、防いで見せろ。



●きみをわすれない
 光条に射貫かれ吹き飛ぶラビットバニーだったが、それも絶対無敵バリアが復活するまでのことだ。バリアが回復した瞬間に攻撃を弾きつつ、隣の足場まで後退。
「こんなもんじゃ、まだまだ――あーしを殺せやしないよォ!」
 虚勢か。或いは真実か。多数の猟兵がダメージを積み重ねて尚、ラビットバニーは動く。
「――では、確かめてみよう。僕の話に付き合って貰おうか」
 声がした。凜とした――しかし可憐な声。宙に空いた“門”より、蓮花寺・ねも(廃棄軌道・f01773)が飛び出して、ラビットバニーのいる足場に降り立つ。
 彼女が手にするのは一組のトランプ。単身、進み出てラビットバニーと向かい合う。
「ガキは引っ込んでろし! たった一人でアンタに何が出来るワケ?!」
「――ひとりだと思うかい」
「二人以上にゃ、あーしには見えないね!」
 赤べこキャノンが火を噴く。迫撃する如く放たれる砲弾から身を避け、ねもは走り出す。
「だろうね。……ぼくはね。ラビットバニー。ひとりじゃあない」
 ねもは攻撃を回避しながら、一束のトランプを握りしめる。
「これの持ち主はぼくより小さな子でね。一緒に遊ぶと花が咲くように笑うんだ」
 ――みんなで遊ぶのって、たのしいねえ。……もう一回やろう?
 決着が付くたび一喜一憂して、何度もカードを配りなおし、次のゲームをせがむ。楽しげに笑うあの笑顔を憶えている。
「思えばあの子は、ここ――キマイラフューチャーの出身だったんだろう。どこからか舟に流れ着いて、帰れず還ってしまった子」
 砲弾が迫る。ねもは『orbit』から弾丸を放ち、ラビットバニーの砲弾を空中で撃墜。黒く広がる煤煙と爆炎の中を、カードと大切な記憶を片手に握りしめて駆け抜ける。
「ぼくは記憶を連れていく。善い記憶も、傷む記憶も、すべての現在に繋がっている。もう思い出の中にしかいない、いつかどこかにいた彼らから託された未来を、過去になど呑ませはしない」
 煙を抜ける。明けに霞む星の海めいた藍色の瞳が、強い意念に煌めいた。
「世界を救う理由はないが、世界に恩を返す理由はあるんだ。だから、ラビットバニー。ぼくは――きみを、ここで倒すよ。この記憶は、」
 カードを握りしめ、胸に当てる。
「この世界に還さないといけない」
 それが、ねもの戦う理由。
 うしなわれるものを見送り、見守り、記憶して、ああ――いっとき、確かに生きて、胸の奥に刻まれた、彼らの生きた証を。夢のかけらを。希望のひかりを。
 伴って彼女は往くというのだ。――ラビットバニーを打倒せしめようと、そう言うのだ!
 ねもは、高く高く、目一杯に伸ばした指で天を指す。
 システム・フラワーズの中天が歪み、その向こう側に映るのは星空。いつか彼女が舟に乗り、彷徨い流れた無限の星海。住める星が喪われ、恒星のみが煌めく、残酷で美しいソラ。

「――ぼくのすべては、残るものは、誰かの遺した想いの積み重ね。――だからこそ。ぼくは、『一人』だけれど『独り』じゃない」
「……ッ!!」

 訴えかけるでもなく、ただ、彼女の信念と共に静かに紡がれるねもの言葉は、厳粛ないのりに似ていた。――絶対無敵バリアが喪失する!
 赤べこキャノンを構え直す、疾風の如きラビットバニーの挙措を、尚も上回る速さで――ねもは、天を衝いた指先を振り下ろす。
「――未来を望む想いを防げるものなら、防いで見せろ。注げ――『星の雨』!」
 いつか游いだあの空で、枯れて潰えた夢の成れの果て。無数の衛星片が、虚空に開いた漆黒の星海より来たりて、嵐が如く降り注ぐ!
「く、あああああああああああああっ!?」
 降り注ぐ衛星片がラビットバニーの身体を次々と穿ち、足場を貫き、崩落させる!
 崩壊に巻き込まれ、ラビットバニーは墜ちる、墜ちる――

成功 🔵​🔵​🔴​

草間・半蔵

【童】

たくさん傷つけられている姿を見て思わず割ってはいる
凪ぎ払い、恫喝してできるだけ距離を開けさせ
チラッと倒れている子供を見る
コイツも人じゃないのか
でもきっと弱いんだろう
なら、守る…!
左手を噛み血を纏わせて
轟焔を握る
さぁ―!廻れ
【獄炎転臨鍵・心法】
炎を燃やし
命を燃やして
剣を振るう

…エモだ何だは知らない
ただこれしか出来ない
だから、守る
凪波の言葉に端的に答え
視線はまっすぐ敵へ

無理に止めずどうにもできない不器用さを押してくれるような歌に身が軽くなった
助けるように飛んでくるダガーも背を押してくれるようで
…思ったより全然
弱くないのかもしれない
後で、名前を聞いてみよう
思い笑みを浮かべて轟焔の炎で焼き斬る


依世・凪波

【童】

ズタボロスタート
難敵にひとり立ち向かう無謀からの奮闘&協力&成長エモ

攻撃は逃げ足で避けるがジリ貧
倒れた所に現れた俺より小さな子が助けてくれた
でもあいつ俺より無茶してる!
そんなのダメだ!
自身を省みない姿を心配し口を出す

守ってくれた
それだけしか出来なんてはずない
もっとあいつも大事にして欲しい

でも今はまだ届かないかもだから…
なら俺があの子を助けたい!
このまま守られるだけではいたくない
【慈雨の唄】で彼と自身を回復

足元が不安定ならそれ以上に早く動けばいいし
動けなければ狙うタイミング見計らい
野生の勘でダガーを投擲しフェイントや援護射撃
助けられた恩返し

終わったら俺もお礼と貰った優しさも返せたらいいな



●轟焔協奏曲
 落下したラビットバニーを追い、次に駆けたのは依世・凪波(元気溌剌子狐・f14773)であった。ダガーを握りしめ、ラビットバニーの着地際を狙いたった一人で襲いかかる。
 貫きに掛かる刺突の一撃は、しかしラビットバニーの手のひらに容易く受け止められた。絶対防御バリアを纏う手が『イクシオン』の刃先を弾き、甲高い音を立てる!
「次から次へとウッザいっての、群れなきゃ何も出来ないくせにさ!」
「確かに俺たちはあんたに比べれば弱いかも知れない――でも、俺はそれでも、俺と友達のいる世界を守りたい!」
「ハッ、弱っちいくせに何言ってんだって感じだし!」
 ラビットバニーは格闘戦の構えを取る。目がギラリと光り、彼女はカンフーの構えを取った。身構える凪波に繰り出される打撃、嵐の如く! 凪波もよく捌くが、しかしこの強大なオブリビオンは通常のオブリビオンとは格が違う……!
 数十秒も打ち合えば、明確な攻撃速度の差が凪波を追い詰めていく。
「ほらほら、カッコいいさっきのセリフ、もっかい言ってみなよちびっ子!」
「ぐっ……!」
 ひゅうっ、と呼気。大きな攻撃が来る。
 凪波は身構えた。しかし、攻撃の速度は予測以上。痛烈な打撃、一瞬にして八打!
 五打まではイクシオンと、逆手抜剣した予備のダガーで受けた。しかし二打を顔面に貰い、蹈鞴を踏んだところに胴への寸勁が極まる。
「かっ……は?!」
 痛烈な打撃に凪波の身体が、抗うことも叶わずに浮く。ラビットバニーはショートジャンプから右足、左足、右足の連続蹴り、変則型の連環腿を凪波に叩き込み、最後に身を捻り薙ぐような左足で凪波の脇腹を抉る。
 少年の小柄な身体が、言葉もなく吹き飛び、地面に叩き付けられて転がる……! 左手を離れた予備のダガーがけたたましい音を立てて地を滑った。
「くう、っ……」
 並の猟兵ならば戦闘不能となっても、或いは死亡していてもおかしくないほどの苛烈な連撃。反撃の糸口すら掴めない。どうすれば勝てるか……そのビジョンが見えない。
 ボロボロになりながらも、しかし凪波は左手で地面を掴む。システム・フラワーズの地面に爪を立てる。
 立ち上がらなくては。守るために、戦わなくては。
 悠然と、余裕ぶった歩みでラビットバニーが歩いてくる。依然その目には光が宿り、功夫に満ちている。
「俺、は……負けるわけには、いかない……!」
「まだ生きてんの? さっさと死ねし、ウザ――」
 嗜虐的な声で応えるラビットバニーの声が、唐突に途切れる。
 ごおうっ……!
 燃える焔の音が轟く、上方から新たな猟兵が乱入したのだ!
「そいつから、離れろ!!」
 その大太刀、当に焔柱が如し。四尺あまりの丈持つ大太刀を振り下ろしラビットバニーを唐竹に叩き斬ろうとしたのは、草間・半蔵(ブレイズ・ハート・f07711)である!
「うっさいし、あーしに命令すんなっつーの、ガキンチョ!」
 ラビットバニーは大太刀の一撃を両腕で止める。絶対無敵バリアが攻撃を阻むが、その撃力まで殺せる訳ではない。ピンヒールが、半蔵の攻撃の威力により地面に僅かに沈む。
「オオオッ!」
 まるでけものが如く声低く吠えると、半蔵は着地するなり、自分の身体を振り回すようにして大立の刀身を加速、渾身の薙ぎ払いをラビットバニーに叩き付ける。
 これも当然の如く手に纏うように張ったバリアに阻まれるが、インパクトがラビットバニーの身体を後ろに圧した。ヒールで地を削りつつ後退するラビットバニーと油断なく間合いを取りながら、半蔵は肩越しに凪波を見た。不器用ながらに気遣わしげな目だ。
「大丈夫か。立てるなら、立って、退がれ。それまで守る。……後はオレがやる」
「……ッ」
 端的な言葉に凪波は唇を噛む。助けられたことへの礼。力になれない歯痒さ。さまざまな思いが、喉でつかえて声が詰まる。
「よそ見すんなし、心配しなくても二人まとめて地獄行きだから!」
 再び踏み込んでくるラビットバニーを前に、半蔵が大太刀を振るう。数合打ち合い、力で圧され、打撃を受けて仰け反る半蔵。しかし、倒れることなくそれでも尚前に出る。
「……まだだ、もっとだ! 燃えろ、『轟焔』!」
 半蔵は左掌を噛み裂き、溢れ出る血を地獄の焔へと変換、それを意念を熱へと変える妖刀『轟焔』に流し込む。苛烈に燃え上がる大太刀は、まるで半蔵そのものを表すかのようだ。
「さぁ……廻れ、『獄炎転臨鍵・心法』ッ!」
 速度では完全に負けている。受けきれず打たれる。だが半蔵は倒れない。地獄の焔を。命を。ただ熱く熱く燃やし、真っ向からラビットバニーと渡り合う!
(――あんな、ちいさな身体で)
 凪波は歯を食いしばる。自分よりもまだ小さな少年。その戦い方は、後ろで見ている凪波からしても一目瞭然、無茶で無謀だ。
「そんなの、ダメだ」
 自身を省みない戦い方。誰かを守るため戦うのに、その『誰か』に自分が含まれていないような戦い方。
 凪波は地面を突き放すように腕と足に力を込め、ふらつきながらも立ち上がる。
 半蔵がまたも打たれ、蹌踉めいたその瞬間、凪波はダガーを抜いて投げ放つ。追撃をかけようとしたラビットバニーが舌打ち交じりにそれを弾く。たった一瞬のタイムラグ。しかし、半蔵が復位するには充分だ。
「守られるだけは嫌だ。あんたが捨て身の無茶をするなら、俺が――あんたを助けたい!」
「――」
 ラビットバニーとの格闘戦を続ける半蔵から、僅か息を呑むような気配。
 しかし、すぐに。芯の強い声で返答が成される。
「エモだとか、なんだとか、知らない。オレにはただこれしか出来ない。――だからこれで、あんたを守る。……背中は、任せた」
「ああ!」
 半蔵の言葉に力強く頷き、凪波は息を吸う。彼はシンフォニア。その歌声には力が宿る。
 凪波が奏でるは『慈雨の唄』。共有する思いはただ一つ。
 ――守りたい。
 半蔵は、凪波を。凪波は、半蔵を。
 互いの名も知らないが、重なる思いが共感を生み、共鳴するかのように二人の傷を癒やす!
 半蔵の腕に今再び力が満ち、その身のこなしが精彩を取り戻していく。凪波の両足にもまた、駆けるための力が漲る!
「あ、あんたらッ……!」
 ラビットバニーが悟ったときにはもう遅い。
 逆境に負けず、守るための力を振るう二人の少年! 
「オレたちは――」「――負けないッ!」
 ――これがエモでなくてなんだと言う!
 絶対無敵バリアが爆ぜ割れるように消える!
「今だ!」
「ああ!」
 半蔵がより強く、己に許された最大熱量で『轟焔』を燃やす! 薙ぎ斬るように横一線に放たれる大紅蓮、一閃! 刀身を受けずに回避するラビットバニーだが、轟焔から迸る焔がその身体を灼く!
「っつッ!?」
「逃がさねぇ――!」
 焔に気を取られ足の止まったラビットバニーの側面に、凪波が回り込んだ。残った予備のダガーを手挟むように全抜剣! 身体の捻りと腕のしなりをフルに活かし、投擲、投擲、投擲ッ!!
「きゃああああっ!?」
 ダガーが突き立ち迸る血。兎面の目から光が失せ、カンフーモードが時間切れであることを告げる。

 二人の少年は殆ど本能的に視線を重ねる。
 ここが、最後の好機。無意識のうちに、彼らは同時に頷いた。
((――ああ。終わったら))
(後で、名前を聞いてみよう)
(きちんと、お礼を言おう)
 ――相互確認は一瞬。

「いっけえええええええええっ!」
 凪波は、力の限り叫んだ。蹌々と脚を一歩退くラビットバニーの元へ、半蔵が飛び込む!
「オオオオオオオオオオオッ!!」
 全力で振り抜かれた妖刀『轟焔』が、ラビットバニーの身体を深く断つ――!!
 響く悲鳴、苦鳴! ラビットバニーの身体が焔に蝕まれ、燃える!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

真守・有栖
『けっちゃく!あにまるばとる!』

主演 らびっとばにー

脚本・出演 わたし
監督・演出 すもーく

設定 あどりぶ

あ「他のあにまるはぜーんぶやっつけたわ!残るは貴女のみよ!らびっとばにー!」

ら『らすぼすっぽい台詞』

向かい合う両者。
兎は拳を。狼は刃を。
それぞれ構えて、激突!

うさちゃんかんふーが炸裂!命がけの拳打に苦戦する私!

あ「それっぽい台詞」
ら『同じく』

~回想~


怪人さいどのえっもいえぴそーど


あ「……ふん。ちょろい兎さんだとばかり思ってたけれど。覚悟を決めた本気の貴女は……なかなかにえもいじゃないの」

この辺で私も本気出す!

狼牙と兎打。
命と誇りを賭けた戦いの行方は如何に……!



読んだわね?
それじゃ、すたーと!



●劇場版『マジ狩る・ありす』 シーン一二
 てーててってってててれってー!
 てーててってってててれってー!
 ててーてーててーてーててー!
 
 鳴り響くアップテンポなBGMと共に炎を振り払い、高々と跳ぶラビットバニー。
 着地した足場、猟兵の攻撃を一時逃れたかと息をつく彼女のその上方!
 樹上より跳ぶ一つの影がある!
 鳥か! 飛行機か! 否! 猟兵だ!!

 てれれっ! てれっ! てれっ!
 てれれれってれっ!

三三三『けっちゃく! あにまるばとる!』(シュゴォッ)

 スライドインするタイトルロゴ!
 うるさいぐらいポップなフォント!
 画面の配色がやかましい!

「他のアニマルはぜーんぶやっつけたわ! 残るは貴女のみよ! ラビットバニー!」
 華麗に降り立った影は紫水晶の眼を瞬かせラビットバニーに挑みかかるように言った!
 九代永海作・光刃『月喰』を抜刀し、燐光纏う刀の切っ先を差し向けるは、お茶の間の皆様もご存じ真守・有栖(月喰の巫女・f15177)である!
「ちょい待つし!? モンキーはともかくゼファーハブるとかアンタ鬼?!」
 ウィンドゼファーも草葉の陰で泣いていようってもんである。渾身のラビットバニーのツッコミを意にも介さず、
「そうよよく分かったわね! 月をも喰らう美狼の剣鬼とは私のこと! 往くわよ、いざ尋常に!! 勝負!!」
「あっコイツ人の話聞かないタイプだ!!!!」
 両者対面から五秒、先手を取るのは有栖だ!
 抜いた刀は光の妖刀、光刃『月喰』! 断つと意念を込めた斬撃を、光の閃へと変えて彼方を断つ!
 七メートルの間を置いて振るわれた斬撃から光が迸り延び、初手からラビットバニーの首を刈りにいく。ラビットバニーは意表を衝かれつつも絶対無敵バリアで斬撃を弾く!
「通じないっつーの!」
 間髪入れずうさちゃんカンフーモードに移行!
 疾歩より震脚、繰り出される拳は最早凶器だ! 顔面狙いの拳を有栖が首の動きで避ければ、拳は即座に手刀と化して有栖の首を狙う!
「疾い……!」
「とーぜんだし! うさちゃんカンフーをただのカンフーだと思って貰っちゃ困るわけ! あーしが使ううさちゃんカンフーは、内家拳三、外家拳六流派のハイブリッドよ!」
「な、なんですってー!?」
 一派の技にしても一朝一夕に修めること罷り成らぬ中国武術、北派内家拳と外家拳を、よもやその身一つに九流派修めるなどとは!
 そこには気の遠くなるような修練があったに違いない……来る日も来る日も木人と格闘し――一つの流派を極めては、その流派と混ざらぬように次の流派を修め、最後には九つ全てを使い分ける境地に達し、それを尚、己の武技として再解釈、混ぜ合わせるなどとは!
 なんたる武錬、なんたる達人の境地!
 絶対無敵バリアを纏う崩拳が、『月喰』の刀身と軋り合い、有栖の身体を後ろに圧す!あまりのインパクトに踵で地面を削りながら後退する有栖だったが、その功夫を誇るならば、それごと斬り伏せて見せようではないかと、武人としての心が叫ぶ。
 負けるかも知れない恐れよりも。死ぬるかも知れない恐れよりも!
 己が武錬では歯が立たぬやもと、疑う方がよほど怖い!
「……ふん。ちょろい兎さんだとばかり思ってたけれど。覚悟を決めた本気の貴女は……なかなかにえもいじゃないの」
「あんたもね――その延びる光の刀、見てるだけでちょいエモ感じるし、太刀筋に迷いが見えない」
 事ここに至り、両者は無窮の武錬を積むもの達として、互いを認めつつあった。
 しかし武人の相互確認は、刃を交えずしては行えぬ……!
「これなるは九代永海が一作、刃銘『月喰』。真守・有栖が振るい、これより貴女を断つ刃!」
「大きく出たじゃん、やれるもんなら……やってみろし!!」
 ラビットバニーが爆発的に踏み込み、有栖もまた地を爆ぜさせ飛び込んだ。
 地を震わす轟撃の兎打! 天を断つ玲瓏の狼牙!
 BGMの高まりは最早最高潮、両者無呼吸にて打ち合い、高速で二者は平行移動しながら刀と手刀で打ち合い続ける! 瞬く間に加速する剣戟、ほんの一息の間に二八合!
 命と誇りを賭けた戦い。どちらが制してもおかしくない格闘戦は――
「――ラビットバニー! 敬意を表するわ!」
 仕掛ける有栖の一撃で、その運びを転じた。
「その動きはっ……?!」
 有栖は突き出された手刀を弾くのでは無く、頬を裂かれながらも潜り込むように前進!
 それは有栖がこの短時間で学んだ、うさちゃんカンフーの多才な動きのうちたった一つ。
 北派外家拳が一、八極拳――その基礎。踏み込んだ脚で力の限り地を踏みしめ、肩を中てる体当たり――靠撃を、ラビットバニーの胴に叩き込む!!
「ぐ――!?」
 互いを認め合った武人。両者譲らぬ打ち合いの涯て。
 征する為に、相手から学んだ技術を用いる――これもまた、エモ!
 バリアが掻き消されたその一瞬、吹っ飛び宙に浮いたラビットバニー目掛け、有栖は月喰を引いた。

 ――ああ。刃は間合いの外。白刃届かねども光は届く!

「はあああああっ!!」
 身体を巻き、渾身の斬撃!
 月喰より延びた光の刃が、ラビットバニーの身体を裂く――!

成功 🔵​🔵​🔴​

深鳥・そと

エモの王道、未来へ向かう前向きさに切なさ少々!
小さな子が困難に立ち向かっているとエモい!
理由があったらもっとエモい!

適度な演出は大事
街中で流れているようなBGMを流す
メイスで殴りながら(光を纏わせエフェクトとしても活躍)

わたしの大事な場所をこれ以上めちゃくちゃにしないで……!
一人迷い込んだところをみんなが居場所を作ってくれた……!
(キマフュで生まれた気持ちなので気にしていない)

コンコンしたら大きなプリンが出た話
テーマパークが楽しかった話など
日常の楽しかった話を連ね

BGMの盛り上がりに合わせてUC

君には君の理由があるように   
わたしにも勝たなきゃいけない理由がある!(遊ぶ場所が減るのは嫌!)



●念ずればエモ通ず
 エモとは、どういったときに生まれる概念なのか。深鳥・そと(わたし界の王様・f03279)は考える。
 例えば未来に向かう前向きさ、そこに切なさをスパイス程度に足したり。小さな子供が、その小さな身体で必死に困難に立ち向かったりだとか。そうせざるを得ない理由がある時だとか――濁流のような運命に翻弄されながらも、それに抗い、ただ一人戦うだとか。
 思わず応援したくなるようなもの。そういうものを見た時に、エモという気持ちは湧き上がるのではないか。
「わたしの大事な場所をこれ以上めちゃくちゃにしないで……!」
 エモセリフそのいち。ドラマで言うならBGMがかかり出す瞬間だ。ラビットバニー目掛け、燐光を帯びて彗星のように走り出すそとの手にあるのは、光纏う一本のメイス。
「一人迷い込んだところを、みんなが居場所を作ってくれた……! この優しい世界を、君達の都合で壊されるなんて、嫌だよ!」
「ハッ、次から次へと好き勝手に――嫌だ嫌だで通るんならとっくに止めてるっつーの! あーしらはあーしらの好きにするし、止めたいんなら力尽くでそうしなよ、猟兵!」
「なら――わたしの全力で、君を止める!」
 敵は強大、ラビットバニー。
 接近したそとは大振りなメイスに遠心力を載せ、光纏う切っ先をラビットバニー目掛け叩き付ける。絶対防御バリアが攻撃を阻み、打音、金属の軋み音! 光が飛び散り、アニメの戦闘シーンさながらに互いの顔を照らす!
 至近距離、そとが打ち下ろすメイスを防ぐのは、絶対防御バリアを纏うラビットバニーの両手だ。防ぐと同時に反撃の手刀や拳が打ち出される。
 そとはギリギリで回避したり、時折数打受けて傷つき、顔を歪めながらも、決して諦めることなくメイスを振るう。
「壁を叩いたら大きなプリンが出てきて――それをみんなでおいしいねって分け合って! テーマパークに遊びに行って、絶叫マシンに乗ったり、お化け屋敷に入って沢山驚いたり! 中で買ったクレープを一口ずつ交換したり――まだまだ、言い切れないくらい、この世界には沢山の思い出がある!」
 そんな、何でもない日常の話。物心つく前にキマイラフューチャーに迷い込み、似たような境遇の子供達と寄り添って生きてきた。楽しいことばかりではなかったが、けれどもすべて大切な思い出だ。
 ――それさえ、オブリビオン達がカタストロフを成就させれば、過去に食われて骸の海に沈んでしまう。
 そとの瞳は悲愴なまでに、紫の焔の如く燃えた。
「ハッ、何言ったって、力がなきゃあーしらは止められないよ!」
 ラビットバニーは絶対防御バリアを纏わせた右足で峻烈な蹴りを繰り出す。辛うじてメイスでのガードが間に合うが、そとの身体は強く圧されて後ろへ吹き飛ぶ。
「粉々になれし!」
 そこにすかさず放たれる赤べこキャノンの弾幕!
 降り注ぐ砲雨がそとを襲い――爆発、爆発、爆発!
 舞う煤煙が弔いの煙となるか――そう思われた瞬間のこと、黒炎切り裂いて影が飛び出す!
「なっ?!」
 メイスで砲弾の横腹を叩き、キャノンの直撃を避け、そとが前に駆ける! 直撃を避けたとは言え満身創痍、傷だらけで、いつ倒れてもおかしくない状況!
 しかし目には、それでも消えぬ光がある!
「君には君の理由があるように――わたしにも、勝たなきゃいけない理由がある――っ!!」
 BGMがあるならばここが最高潮。傷をも厭わず、ただ一つの思いのために駆け抜ける童女――これは、エモい!
「しまった……!?」
 絶対防御バリアが薄らぐ瞬間、そとはメイスを持たぬ左手の指を上げ、真っ直ぐにラビットバニーを指し示した。
「貫け――っ!」
 刹那、天から注ぐは断罪の光、『ジャッジメント・クルセイド』!
「っく、う――!?」
 注ぐ光がバリアの間隙を縫い、また一つ、確かにラビットバニーを追い詰める傷を刻む!

 ――一念通せば力となる。
 喩え、それが「遊ぶ場所が減るのは嫌!」という思いでも。言わぬが花の余談であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

桜雨・カイ
クロウさん(f04599)と共闘
花を操作するのなら、なら炎を使って…えっ
(【エレメンタルー】を発動しようとして炎が暴走。自分の周囲を駆け巡る)
どうしてこんな時にっ…クロウさん、私は大丈夫ですから行ってください!

※この辺よりエモい展開
どうしてこちらへ!?私はだいじょ…
大丈夫でないこと気付かれてる

ここまで支えてもらって怯えてる訳にはいかない
まっすぐクロウさんの目を見つめかえして、もう一度扇を握る
抑えるのではなく、更に風の力を乗せて炎の勢いを上げる

隣で戦えると信じてくれているなら、その思いを裏切りたくない
バリアが消えたらクロウさんと共に攻撃
隣に負けないよう、足元の草ごと炎でなぎ払うように全力で攻撃


杜鬼・クロウ
カイ◆f05712

エモだか何だか知らねェがまずバリアをどうにかすっぞ

カイのUCを隠れ蓑に敵に近付くも炎のうねりとカイの異変に気付く
一度カイの元へ戻る

どうみても平気じゃねェだろ馬鹿!(精霊との対話失敗の様子に溜息
…焦ンな、少し力抜け(扇持つ手に己の掌重ねて握り離れ
お前一人じゃねェンだ
お前の足りない部分は俺が補う(属性攻撃で短い詠唱を唱え玄夜叉に風宿し炎を扇動

ヤれるだろ、カイ
お前なら(その信頼に値する強さや覚悟を俺は知る

バリア破壊後は一気に叩く
【トリニティ・エンハンス】使用
攻撃力up
咄嗟の一撃で敵の胴体に回し蹴り
カイと同時に2回攻撃で十字切り

今回預けるのは背中じゃねェ
俺の隣でその力、魅せてみろや



●禍を灼き果たせ、払暁の焔嵐
「くう……っ、こんなに強いとか聞いてないし!」
 幹部怪人最強の声も高きエイプモンキーを下した猟兵達の猛攻を前に、ついにラビットバニーは地に膝を付く。花で構成されたシステム・フラワーズの足場を十指より放つビームで操作する。
 猟兵の接近を阻むべく、花で出来た浮島大の足場自体を飛び道具としてぶつけつつ、傷の回復に専念し出すラビットバニー。
 
 ――そこから百メートルほどの位置の浮島よりその光景を確認し、一人の猟兵が呟いた。
「ヤツは守りに入ってる。エモだかなんだか知らねェが――バリアをどうにかして、一撃叩き込みゃ、今なら殺せる」
 杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)だ。今まで積極的に敵と戦っていたのが、交戦自体を忌避し出すということは、後一押しで倒せるということ。冷静にそれを看破し、傍らの猟兵に一瞥をくれる。
「イケるか、カイ。俺たちでヤツにとどめを刺すぜ」
「はい、クロウさん! ――私が、あの足場を焼き払います。クロウさんはその隙に近づいて、ラビットバニーを討って下さい!」
 応じるのは桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)。打てば鳴るような返事にクロウは唇を笑みに引っかけて応える。
「頼りにしてるぜ」
 クロウは式神――巨大な八咫烏を召喚、その背に飛び乗る。八咫烏は胴震いを一つ、跳躍と共に一つ羽撃き、弾丸のように飛び立った。
 その背を見送りながら、彼を撃ち落とそうとする花の足場を炎で灼くべく、カイは自らの本体である人形と並び立ち、『巡り扇』を構えた。聖痕が輝き、巡り扇にぼうと、赤い炎が点る。
「炎よ、我が敵を焼き払え……!」
 念を込め、巡り扇を通して精霊に命を下す。――カイの言葉のままに、何もない中空より紅蓮の炎が迸り、渦を巻くが――
 炎は前に飛ばず、カイの周囲を取り巻くように這い、燃えた。命を拒むように、術者自身を精霊が焼き殺そうとするかのようだ。
「暴走?! くっ、どうしてこんな時に……!」
 既にクロウは飛び立った。彼の足を引っ張ることだけはあってはならない――
「く、うう、う……!」
 巡り扇を通じ、より強く強く命じる。前へ飛べ、宙を舞うあの花を灰燼とせよ、先を行く風雲児を守れ、と。
 炎のいくらかがそれに従った。クロウを撃墜しようと迫る花島に幾許かの炎が吹き付け、空中で炭屑に変える。しかし、より出力を上げれば上げるほど、自分の周りで燃える火勢も強くなる。
 カイは歯を食いしばり、目を閉じて制御に必死になった。肌を焼く炎を御そうとすればするほどに、言うことを聞かない炎が強く反発する。
「大丈夫――大丈夫、私は、……大丈夫ッ、」
「――どう見ても平気じゃねェだろ馬鹿!」
 力強い声が聞こえた。飄風が吹き、カイの腕が何かに捕まれる。
「え――」
 捕まれた腕、浮遊感。全身を嬲る風。カイは目を開く。景色がぐるりと廻った。空にいる。手を掴んでいるのは――クロウだ。
 浮島に舞い戻った彼が、カイと本体を八咫烏により救出したのだ。本体は鴉の脚に捕まれているらしいと本能的に分かる。
「ど、どうしてこちらへ!? 私は平気です、少しだけ失敗しましたけれど……!」
「そんな火傷作って何が平気だ!」
 抗弁も甲斐なく、クロウの一喝にぐ、と詰まるカイ。クロウは溜息交じりに、片手で、巡り扇を持つカイの手を上から包む。
「……ムリすんなとは言ってられねェが、焦ンな、カイ。力抜け。お前は一人じゃねェ」 言い聞かせるような調子で言いつつ、ぐ、と力を込め、振るえるカイの手をあやすように握る。
「お前の足りねェ部分は俺が補う。ただ、炎を燃やせ。――ヤれるだろ、カイ。お前なら」
 お前の強さと、覚悟を知っている。クロウのオッドアイが強い信頼を込め、カイの両目を覗き込む。
「っ――」
 言葉が詰まる。
 ――ここまで支えてもらって、怯えている訳にはいかない。
 カイは真っ直ぐにクロウの瞳を見つめ返すと、一つ、はっきりと頷いた。クロウが笑う。
「よし。……往こうぜ」
 再びラビットバニー目掛け高速飛翔する八咫烏。
 それを知っていたかのように、複数の足場がまたも襲い来る。
「来るぜ――カイ! 炎を燃やせ! 今回預けるのは背中じゃねェ――俺の隣でその力、魅せてみろや!」
「はい――!」
 隣で戦えると信じてくれているなら、その思いを裏切りたくはない。
 カイは巡り扇に念じ、炎を再度迸らせる。やはり暴れ狂うように周囲を渦巻く炎。しかし、それを御するように隣のクロウが大剣『玄夜叉』――アスラデウスを掲げ、
「俺達に――従いやがれ!」
 風の属性魔術を発露、強烈な気流により渦巻く炎の軌道をねじ曲げ、狂犬を御す如くその軌跡を操作する!
 カイもその一挙手一投足を見逃さず模倣。炎に風の精霊の力を織り交ぜ、火勢を更に増す!
 黒き大翼の背に二人並び立ち。
 両者の力を合わせて初めて成される焔嵐を伴い――二人の猟兵が天翔る!

 ――天を仰いだ。燃ゆる払暁の翼。あかつきの焔嵐。
 いくら花の足場をぶつけても、儚く焼けて墜ち散るのみ。
 瞬く間に迫る二人の猟兵。
「――エッモ……」
 ラビットバニーが発せたのは、ただその一言のみだった。
 絶対無敵バリアが、儚く砕けて、手から離れた赤べこキャノンが地面に落ちて転がった。

「燃えろ、アスラデウス! 往くぜ、カイ!!」
「はい! 纏え、火焔! これが最後の一撃だ!」
 真っ直ぐ、最短距離で空を翔けぬけ!
 クロウとカイは同時に八咫烏の背を蹴り、ラビットバニー目掛けて墜ちる!
 クロウは炎を纏わせた、真っ赤に燃えるアスラデウスを!
 カイは巡り扇に風で集めた炎柱を、まるで剣のように構え!
「「おおおおおおおおおおおっ!!」」
 咆哮、炎剣二条。袈裟懸け、十字を描く如く。
 喪われた絶対防御バリアが彼女の身体を守ることは無く。
 ラビットバニーの身体を、クロウとカイ、渾身の一撃がよりX字に断つ!!
「ああああああああああああああああああああっ!!!!!」
 絹を裂くような凄絶な絶叫さえも、燃え上がる焔に捲かれて消えていく。
 ――クロウがアスラデウスを地に突き立て、カイが炎を収めたときには、ラビットバニーのいた場所にはもう、塵屑一つとて残らぬのであった。

 ――幕は下りる。
 この一戦、猟兵達の――そして、猟兵達の『エモ』の完全勝利であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月18日


挿絵イラスト