バトルオブフラワーズ⑩~『エモい!』は世界を救う
●『エモい』ものには弱い
「みんな、急いで集まってほしいのねー!」
大慌てで猟兵たちを招集すると、ユニ・エクスマキナは慌ただしく宙に浮いたディスプレイを操作する。
ディスプレイに浮かんだのはピンクの兎の被り物をした褐色肌の女性――カワイイ怪人『ラビットバニー』。
「みんなが頑張ってくれたおかげでエイプモンキーを倒したと思ったら……次の怪人が出てきたのね!」
第二の関門を守るのは、カワイイ怪人『ラビットバニー』。
システム・フラワーズの内部の「咲き乱れる花々の足場」はラビットバニーに集中しており、彼女を倒さないと先に進めない。
「彼女は『絶対無敵バリア』に覆われてて、ありとあやゆる攻撃が一切効かないの」
でもとユニは苺色の瞳をキランと輝かせて嬉しそうに口を開いた。
「このバリアは、ラビットバニーが『エモい』ものを目撃すると一時的に解除される仕組みになってるみたいなのねー!」
一言で『エモい』といってもどんなものがあるのか。
困惑した様子の猟兵たちに気づいたのか、ユニはケロリとした顔でパタパタと顔の前で手を振って見せる。
「あ、ラビットバニーが『エモい』と感じる基準はかなりユルいのね。かわいい仕草とか、血だらけで立ち上がるとか……」
可愛さは純粋無垢なものはもちろん、あざとくったってオッケー。
可愛らしい猫の写真とか、羽を膨らませて怒ってる小鳥とか、もう大好物。
イケメンの壁ドンといった男らしさといったようなものの他にも、心に沁みる美しい景色の写真や、思わずプッと吹き出してしまう面白さ……例えば水を吹きだすフグなんかでも十分『エモい』と感じるという。
ようするに、『SNSではやりそうなやつ』はだいたいエモいと感じ、それを目撃するとバリアが解除されてしまうというのだ。
本当にゆるゆる基準なので、自分が『エモい!』と思うものを心行くまで見せつけてやるだけでいいのだとユニは笑った。
「大丈夫! みんなだったら超ステキな『エモい』ものを見せてくれると思うのね!」
いってらっしゃいとユニは笑顔を浮かべ、猟兵たちを送り出す。
――さぁ、いざ行かん。キマイラフューチャーへ!
春風わかな
はじめまして、またはこんにちは。春風わかなと申します。
オープニングをご覧いただきありがとうございます。
●注意事項
ラビットバニーは必ず、猟兵に先制して『絶対無敵バリアを展開するユーベルコード(POW、SPD、WIZ)』を使ってきます。
絶対無敵バリアは本当に絶対無敵で、あらゆる攻撃を無効化しますが、「ラビットバニーがエモい物を目撃する」と、精神集中が乱れてバリアが消滅します。
ラビットバニーのエモい基準はかなりユルいので、バリアの解除は比較的容易と思われますが、バリアなしでも彼女は相当の実力者です。
●『エモい』について
OP記載の通り、ラビットバニーが『エモい!』と感じる基準は超ゆるいです。
ですので、皆様が『エモい』と感じるものを思いっきりラビットバニーに見せつけてやってください。
●共同プレイングについて
ご一緒される方のID(3人以上で参加される場合はグループ名も可)を記載ください。 また、失効日が同じになるように送信していただけると大変助かります。
以上、皆さまのご参加を心よりお待ちしております。
第1章 ボス戦
『カワイイ怪人『ラビットバニー』』
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POW : 赤べこキャノン
【絶対無敵バリア展開後、赤べこキャノン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : うさちゃんカンフー
【絶対無敵バリア展開後、兎面の目が光る】事で【うさちゃんカンフーモード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : おはなハッキング
【絶対無敵バリア展開後、両手の指先】から【システム・フラワーズ制御ビーム】を放ち、【花の足場を自在に操作する事】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:和狸56
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
肩にかついだ赤べこキャノンを撫でながら、カワイイ怪人『ラビットバニー』は余裕綽々の笑みを浮かべている(多分)。
『ふっふーん。どんな攻撃も、あーしには全部無効なんだから。そんなんで負けるわけなくない?』
ねぇ? と(きっと)嬉しそうに赤べこちゃんに話しかけるラビットバニー。確かに、彼女の持つユーベルコード『絶対無敵バリア』はその名前に偽りなく、本当に全ての攻撃を無効化する。
『まあ、エモいもの見ちゃったら、心が乱れてバリアも解けるけど……。まーなんとかなるっしょ! アゲてくぞー!』
拳を突き上げ、気合も十分。
よっしゃ! と張り切るラビットバニーだったが、残念なことに彼女はその桃色ウサギの被り物のせいで対峙する猟兵たちの口元がわずかに緩んだことに気が付かなかった。
だって、猟兵たちは知っているのだから――彼女の『エモい』基準はちょ~ゆるいことを。
アテナ・カナメ
【心情】え、エモい…?要はSNSで流行りそうな物って事ね…難しいけど宛那(中の人)とちょっと相談して考えてきたわ!これで行くわよ!
【作戦】えっとこれよ!たくさんのクリームやアイスが乗った派手なパンケーキ!!美味しそうでしょ!?これがエモいってやつよ!
バリアがとけたら戦闘開始よ!
敵のカンフーに関しては【怪力】、ビームは【見切り】で回避!そして「バリアがなきゃあんたなんて怖くないわ!かかってきなさい!」と手招きして【挑発】して乗った所をフレイムショットで迎撃するわ!
「え、エモい……?」
頭上に『?』をいっぱい浮かべながらアテナ・カナメは呟きを漏らす。
聞きなれない言葉に戸惑いを隠せないアテナだったが、要するに『SNSで流行りそうな物』が『エモいもの』と解釈すれば何となくイメージもつく気がする。
「正直、難しかったけど、宛那とちょっと相談して考えてきたわ!」
『はぁ~? そんな簡単にあーしのバリアは破れねーし!』
アテナの言葉にフンっと鼻で笑うラビットバニー。
そして『絶対無敵バリア』を展開するとアテナに向けた指先からビームを放った。
「おっと!」
ギリギリでかわしたアテナの足元を咲き乱れる花々が覆う。
花たちに動きを封じ込められたアテナだったが、これも想定の範囲内。
アテナは努めて冷静に予め準備してきたものを取り出した。
「これを見なさい!」
『はっ!?!?』
ばばーんっとアテナが取り出したもの――それは、乙女心をがっしり掴むインスタ映え抜群のパンケーキ。
焦げ目一つない綺麗な焼き色のパンケーキはふっくらと厚みのあるスフレタイプ。
パンケーキの傍らにはピンと立った美しい形のホイップクリームとほんのり溶けたバニラアイスクリームが添えられている。
苺やオレンジ、バナナ、ブルーベリーといった彩り豊かなフレッシュなフルーツで飾られ、ちょこんと乗ったミントの葉の位置が絶妙でなんともいえず可愛らしい。
パンケーキが乗った皿を手に、ドヤッとポーズを決めるアテナを、ラビットバニーは思い切りガン見していた。
「どう? 美味しそうでしょ!?」
『ちょ、まった、これズルくない!? まじに美味しいヤツなんですけど!!』
アテナの言葉にラビットバニーはこくこくと頷く。
食べなくてもわかる、このパンケーキは絶対に美味しいと――。
「これがエモいってやつよ!」
アテナの言う通り、フォトジェニックなパンケーキはがっちりとラビットバニーのハートを掴むことに成功した。――その証拠に、ラビットバニーのバリアが解除されている。
「バリアがなきゃあんたなんて怖くないわ! かかってきなさい!」
フッと鼻で笑い、腰に手を添え、チョイチョイっと手招きをするアテナ。
ラビットバニーを挑発するのもアテナの作戦のうち。
「あーしを甘くみないほうがいーし!」
カチンときたのか、ラビットバニーは目にも止まらぬ速さで近づくと、アテナへと襲い掛かった。
(「来た……!」)
グッと両手に力を籠めてアテナはラビットバニーの一撃を受け止めると、両掌を敵へと向ける。
「炎よ敵を焼き払え!」
アテナの掌から放たれた炎がラビットバニーの左腕を包み込むのだった――。
成功
🔵🔵🔴
仁科・恭介
※アドリブ歓迎
カイト君(f12063)と
ふとカイト君を見ると装備の下に贈ったパーカーを着ているようだ
POW
【携帯食料】を食み細胞を活性化
先制攻撃に備えていたが意識をパーカーに持っていったため判断が遅れた
カイト君への赤べこキャノンに対して【学習力】で最短ルートを策定
UCを乗せた【ダッシュ】でもギリギリと判断し【吸血】本能を上乗せ
UC対象に指定したバニーが笑うのを感じる
カイト君を覆うように抱きしめ、背中でキャノンを受けきる
「あ、大丈夫だった?パーカー汚れちゃったね。申し訳ない」
「怪我はない?怪我させちゃったら想い人に悪いから」
「あぁでも無茶はする」
立ち上がり【ダッシュ】を乗せた【鎧無視攻撃】で反撃
杜鬼・カイト
恭介くん(f14065)と
エモいってなんだろうね?
オレよくわかんないや。とにかく壊しちゃえばいいんでしょ?
「恭介くん、サクッとヤッちゃおうよ」
恭介くん笑顔で声をかけ薙刀を構える
って、そんなことしてたら相手の攻撃!?
「やばっ」
【見切り】でなんとか回避を試みるも間に合いそうにない
耐えようと踏ん張る
痛みは感じない。恭介くんが護ってくれたらしい
「ありがとう。ふふ、カッコいい事してくれるじゃん」
「まあでも、オレもそんなにやわじゃないし、あんま無茶しないでよね?」
「わかった?」と、恭介くんと小指を差し出し指切り
さてと、反撃開始といこうか
「さあ、壊してあげるよ。うさぎちゃん?」
【恐怖を与える】
■アドリブ歓迎
「あービックリした」
腐ってもラビットバニーは怪人軍団の大幹部の一人。
炎の消えた左腕をさすりながらもケロリとした顔で立っている。
「エモくてヤバって思ったけど、ま、偶然っしょ」
そう簡単にエモいものが出てくるわけないっしょとタカをくくるラビットバニー。
そんな彼女を前に杜鬼・カイトは黒い髪をさらりと揺らして傍らの仁科・恭介に視線を向けた。
「恭介くん、エモいってなんだろうね?」
「考えたこともなかったな。カイト君はわかるかい?」
逆に尋ねる恭介にカイトはゆるゆると首を横に振る。
「ううん、オレもよくわかんないや。でも、とにかく壊しちゃえばいいんでしょ?」
無邪気に答えるカイトの言葉に恭介も異論はない。
「恭介くん、サクッとヤッちゃおうよ」
にこっと可愛らしい笑みを浮かべ、カイトは愛用の薙刀を構えてラビットバニーを見据えた。
ああ、と頷く恭介の視界の端に見覚えのある服がチラリと映る。
(「これは……」)
カイトが羽織っているパーカーは、先日原宿に行った際に恭介が贈ったものだ。
――気に入ってくれたのだろうか。
【携帯食料】を頬張りながら目を細める恭介の前で、ラビットバニーは不快感を滲ませながら2人を睨み付けた。
『はぁ? 何か寝ぼけたこと言ってるし。ヤッちゃうのはあーしっしょ』
再びバリアを展開したラビットバニーは赤べこキャノンを構える。
ターゲットは……カイト。
「しまった!? カイト君……っ!」
敵は先制攻撃を仕掛けてくるとわかっていたのに。
パーカーに気をとられていたため、恭介の判断はわずかに遅れた。
慌てて恭介がラビットバニーへと視線を向けた時には、ドォォンという大きな音ともに、赤べこが炎を放つ。
「やばっ」
カイトは咄嗟に攻撃を見切ろうと試みるが、間に合いそうにない。
思わずぎゅっと目を瞑り、カイトは攻撃に耐えようと両足に力を籠めた。
(「――まだ、間に合う!」)
恭介は瞬時の判断で最短ルートを策定すると、全身の細胞を活性化させてダッシュでキャノンの軌道へと躍り出る。そして、カイトを覆うようにぎゅっと抱きしめた。
背後でラビットバニーが笑うのを感じた次の瞬間。
「っぁ……」
恭介の背中を焼けるような熱さと同時に猛烈な痛みが襲う。
(「……あれ?」)
ふわりと温もりを感じた後、いつまでたっても痛みを感じなかったことで、カイトは恭介が自分を守ってくれたのだと悟った。
「あ、大丈夫だった?」
痛みを堪えて自分を気遣う恭介を見て、カイトは嬉しそうに口を開く。
「ありがとう。――ふふ、カッコいい事してくれるじゃん」
「カイト君、怪我はない? 怪我させちゃったら想い人に悪いから」
「へーき。まあ、オレもそんなにやわじゃないし」
「でも、パーカー汚れちゃったね。申し訳ない」
「そんなの大丈夫。汚れなんて、洗えば落ちるよ」
そして、カイトは恭介をじっと見つめた後、「約束」と小指を差し出した。
「それよりも、あんま無茶しないでよね?」
「あぁ――」
恭介は差し出された小指に自分の小指を絡めて指切りをかわす。
今、この世界はカイトと恭介の2人だけのもの――。
完全に除け者にされたラビットバニーはどうしていたのかというと……。
『やぁぁぁん! エモっ! ちょ、まって! 超エモいんですけどー!!』
赤べこキャノンをぎゅっと抱きしめながら、幸せそうに身悶えしていた。
ラビットバニーの絶対無敵バリアが解除されているのは言うまでもない。
「エモい……?」
そんなことを言われても。
自覚のないカイトは、きょとんとした顔で恭介を見つめ、ちょこんと首を傾げる。
恭介もまた不思議そうな顔をカイトに向けた。
「エモい……」
――これが、エモ。……わかったような、わからないような。
「わかった?」
ポツリとカイトが恭介に問えば。
「なんとなく」
ぽそりと恭介は答える。
いまだにエモさに浸っているラビットバニーを見据え、カイトは恭介へと目配せを一つ。
「さてと、恭介くん。――反撃開始といこうか」
「あぁ――」
恭介は頷くと、カイトの名前を呼ぶ。
「さっきの話だけど……悪いけど無茶はする」
そう、宣言するや否や恭介はダッシュでラビットバニーとの間合いを詰めると渾身の力でサムライブレイドを振り下ろした。ラビットバニーは咄嗟に赤べこで刀を受け止める。
「もう、恭介くんってば……」
カイトは溜息をつくと改めて薙刀をぎゅっと握り、素早く薙ぎ払った。
「さあ、壊してあげるよ。うさぎちゃん?」
どこか楽しそうな口調のカイトが放つ衝撃波をギリギリでかわし、ラビットバニーも嬉しそうに答える。
『あーし、いいエモを見てちょー幸せだし。今ならぜーんぜん負ける気がしないっしょ!』
「「――」」
カイトと恭介は無言のまま目線だけで合図をかわすと。
再び、カイトの衝撃波がラビットバニーへと襲いかかり、と同時に恭介もまた鎧をも砕く強烈な一撃を打ち据えた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
白木院・雪之助
ふんっ。カワイイ怪人だとか、らびっとばにーだとか訳わからぬ兎には負けぬであるぞ!
さぁ見るが良い!この我の愛くるしい狐姿を!
狐化状態となり、愛らしさの【存在感】ともふもふしたくなる毛並みで【おびき寄せ】【誘惑】するである!
まさにえすえぬえすで流行るきゅーとでちゃーみんぐな動物の姿じゃぞ?
ついでに【すまーとふぉん】で自撮り【撮影】して本当にねっとにあげておこうか
絶対無敵ばりあとやらが破れたら……【勾玉の首飾り】の【封印を解く】
抑えていた妖力を溢れさせUCにて雪嵐を引き起こすぞ
足場を崩して我の動きを止めてもこの自然の脅威は止まらぬぞ?
なんせ今回はわざと制御をせず暴走状態で動かすからな
メリー・メメリ
えもーい?えもい?
うーん、よくわからないけどライオンはかわいいよね!
ぴゅーひょろろーってライオンを呼んだらかっこいいポーズをしてもらう!
ライオンライオン、すごーくかっこいいポーズ
からーの、おねだりかわいいポーズ!
えもいでしょ!
かっこいいのに子猫みたいにかわいくもなるんだよ!
それにこのしっぽ!この体なのに細いしっぽ!
えもい!
それにねそれにね、じゃじゃーん!
これはかかさまとくせいライオンパン!
かっこいいライオンとかわいいライオンぱんのコラボもえもえもでしょー!
えもいけどライオンはすっごく強いんだよ!
それに足も速いしうさぎにも負けないからね!
『エモってほんとイイっしょ……』
いまだ余韻に浸っているラビットバニーだったが新たな敵の存在に気づくとおもむろに両手の指先を向けてビームを放つ。
『せっかく、あーしがエモに浸ってるんだから、邪魔しないでほしーし』
「何をしておる! 我にあたったら危ないではないか!」
慌ててビームを避けた白木院・雪之助は、ふんっと鼻を鳴らしてラビットバニーを睨み付けた。
「かわいい怪人だとか、らびっとばにーだとか訳わからぬ兎には負けぬであるぞ!」
そして、雪之助は手にした扇をバサッと開く。
次の瞬間――雪之助が立っていたはずの場所に彼の姿はなく、かわってその場にいたのは美しい銀色の毛並を持った狐だった。
「さぁ見るが良い! この我の愛くるしい狐姿を!」
どうじゃ――?
得意気な様子の雪之助だが、たしかに愛らしさ全開のその姿は存在感も抜群で。
ふわっふわな毛並はもふもふ出来たらどんなに幸せな時間をくれるのだろうかと想像するだけでもウットリしてしまいそうだ。
「まさにえすえぬえすで流行るきゅーとでちゃーみんぐな動物の姿じゃぞ?」
『やーん、ちょっとマジかわいいんですけどぉー!!』
雪之助の発言に偽りなし。
可愛らしい狐を前に、ラビットバニーはデレデレしながら頬を押さえて『エモい!』を連呼している。
そんな敵の様子を見て、雪之助はフッと余裕の笑みを浮かべると,ゴソゴソと何やら荷物を漁り始めた。そして、【すまーとふぉん】を取り出すと、カシャカシャと自撮りを始める。
――しかし。
「む、むむむ……」
とはいえ、今の雪之助は狐の姿。なかなか思うように上手く写真が撮れず苦戦を強いられていた。だが、そんな様子もまたエモいとラビットバニーは嬉しそうに写真に収める。
『へへへー、後でSNSにあげちゃうっしょ』
「何を言っておる! 我が先にねっとにあげるのじゃ!」
全身の毛を逆立てて全力でラビットバニーに抗議する雪之助。
大急ぎで写真をネットに投稿してホッと胸を撫で下ろした。
「えもーい? えもい?」
うーんうーんと首を傾げて悩んでいたメリー・メメリだったが。
『かわいい』『エモい』とはしゃぐラビットバニーを見て「そっか」と何かに納得した様子。
「よくわからないけどライオンはかわいいよね!」
メリーは早速、ぴゅーひょろろーと笛を吹いてライオンを呼ぶ。
……しかし。
『はぁ? ライオン? しかもなんかデカいんですけどー』
ガッカリした様子で溜息をつくラビットバニーがバリアを纏うと同時に兎面の目が怪しく光った。
だが、メリーは自信たっぷりにライオンの首元を叩く。
「ライオンライオン、すごーくかっこいいポーズ!」
メリーの言葉にライオンは思わず『え?』とメリーに顔を向けた。
――かっこいいってどんなポーズだろう?
ライオンは困惑した表情を浮かべてじっとメリーを見つめる。
だが、メリーも「あれ?」と首を傾げてもう一度ライオンに話しかけた。
「ライオン、すごーくかっこいいポーズだよ!」
『…………』
ライオンはガァッと牙を剥くと右前足をあげてラビットバニーを威嚇する。と、間髪入れずに再びメリーが叫ぶ。
「からーの、おねだりかわいいポーズ!」
すぐさまライオンはごろ~んと寝転ぶと甘えるように『みゃぁ』と鳴いて前足を口元に添えてみせた。
『……ちょ、エモっ!? このギャップはズルいっしょ!』
「でっしょー! かっこいいのに子猫みたいにかわいくもなるんだよ!」
ギャップ萌えに喜ぶラビットバニーにメリーはさらにライオンのかわいい……もとい、エモいポイントを語る。
「見て見て! このしっぽ! この体なのに細いしっぽ!」
『アンバランスがズルいし! エモっ!』
「でしょでしょ! それにねそれにね、じゃじゃーん!」
効果音と共にメリーが取り出したのは、かかさま手作りの焼きたてライオンパン。
「これはかかさまとくせいライオンパン! このライオンパンを、おねだりするライオンにあげると……」
『あげると……! ってエモい予感しかしないしー!』
「そう! かっこいいライオンとかわいいライオンぱんのコラボも、えもえもでしょー!」
『エモエモっ! まじこのコラボは反則エモエモっしょ!!』
エモエモ言っているラビットバニーを横目に、ライオンはライオンパンをそっと咥えるとメリーに目配せをした。
「あ、バリア! なくなったかなー?」
メリーが懸命に目を凝らしてもバリアは見えない。
口を尖らせるメリーに、雪之助は背後から声をかけた。
「えもえも言っておったし、絶対無敵ばりあとやらは破れたじゃろう」
ニヤリと笑みを浮かべ、雪之助は『勾玉の首飾り』の封印を解く。抑えていた妖力を開放すれば、雪之助自身、一気に妖力が溢れ出るのを感じた。
「よーし、ライオン、メリーたちもこうげきするぞー!」
ひょいっとライオンの背中に飛び乗り、メリーは敵に向かうように指示を出すも、ラビットバニーはひらりとライオンの突撃をかわす。
『あーしの速さについてこれるもんなら、ついてこいっしょ!』
「えもいけどライオンはすっごく強いんだよ! それに足も速いしうさぎにも負けないからね!」
急遽始まったウサギとライオンの追いかけっこ。
ウサギが優勢のように見えていたが、突然、辺りは一瞬にして雪嵐に包まれた。――雪之助が【銀世界に咲く不香の花】を発動させたのだ。
『ちょっと! 寒いのマジ勘弁してほしーし!』
ぷんすか怒りながらラビットバニーはライオンの追撃をかわしながら花の足場を操り、雪之助の足元を崩そうと試みるも。
「おっと、そんなことをして我の動きを止めてもこの自然の脅威は止まらぬぞ?」
雪之助はニヤリと笑みを浮かべてラビットバニーを見据えた。
「なんせ今回はわざと制御をせず暴走状態で動かすからのぅ」
雪之助の言う通り、雪嵐は勢いを衰えることなく、ラビットバニーに襲い掛かる。
寒さを奪う真っ白な世界で、ライオンの鋭い爪がキラリと光るのが見えた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
スノウ・パタタ
えも、あるですっ
見て見てとバディペットのウミウシを掌に乗せ、目の前へ。
「ユキさんね、あるだわの進化ペットさんです。たくさん増えるのよー」
柔く撫でると、ぷるぷるしながらぐんぐん増殖。
白くてぷにゃっとしたウミウシが周囲でぴょんこぴょんこ、じゃれていたり登って来ようとしたり、ちょっと色の違う個体が出ていたり様々。
「メインの子はリボン、お揃いなんです!」
返事をする様に青いリボンが付いたウミウシが「ぴゃ」と鳴く
懐っこく友好的に近寄り、隙を作り出せたら【白雪姫の童話】でウサギおねーさんを囲んだウミウシ達がくっ付いて毒で侵食。(技能「毒使い」)
御話の白雪姫は蘇ったけど、これは蘇られないどく、なのよー。
『あーしのエモ基準はガバいとはいえ、こんなに心が乱れるなんて……』
兎面をゆるゆると横に振り、ラビットバニーは反省の溜息をつく。
次は絶対に心乱されまいと決意を胸に、彼女は猟兵へと狙いを定めてビームを撃った。
だが、その攻撃を恐れる様子もなく。
とたたたと花の足場を駆けてラビットバニーへと近づいていく黒い液体の少女が一人。
彼女の名前は、スノウ・パタタ。
スノウはラビットバニーの腕をツンツンと突くと誇らしそうに胸を張る。
「えも、あるですっ」
見て見てとスノウが掌に乗せてラビットバニーの目の前に差し出したのは、仲良しのウミウシだった。
『わ、初めて見たけど、ちょっとエモいかも……』
スノウとウミウシに好奇に満ちた視線を向けるラビットバニー。
先程の決意は一体何だったのか。早速、心が乱されていることにはラビットバニーは気づいていない。
「ユキさんね、あるだわの進化ペットさんです。たくさん増えるのよー」
スノウが柔く背中を撫でると、ウミウシはぷるぷると体を震わせながらぐんぐん増殖していく。
気づけば周囲はあっという間にウミウシ・パラダイスへと早変わり。
白くてぷにゃっとしたウミウシがあっちてぴょこぴょこ、こっちでぴょんこぴょんこ。
互いにじゃれ合っていたかと思うと、ラビットバニーの身体をよじ登ろうと頑張っていたり。よく見るとちょっと色の違うコも混じっているようだ。
「メインの子はリボン、お揃いなんです!」
スノウがウミウシと自分の頭を交互に指差すと、お揃いの青いリボンが揺れている。
ねーとスノウが話しかければ、ウミウシは『ぴゃ』とドヤ顔で鳴いた。
『……触ったら、ぷるぷるしてんの?』
ウミウシへと手を伸ばそうとするラビットバニーに、スノウは得意気に答えた。
「ユキさん、もちもちぷるぷるなのー。ウサギおねーさん、さわる? さわる??」
どうぞどうぞと言わんばかりにスノウはぐいぐいとウミウシをラビットバニーに押し付ける。
愛らしさと好奇心に負けたラビットバニーはそっとウミウシの背中を突いた。
ぷるるんっ。
『何これ!? やだ、エモーい!』
大はしゃぎでウミウシを突くラビットバニーを見て、スノウはこそっとウミウシ達に合図を送る。いつの間にかラビットバニーを囲んでいたウミウシ達が、ペタッと彼女にくっつくと毒で浸食を始めた。
『身体が、痺れ……る……し……』
不快そうに顔を歪めるラビットバニー。
スノウはくすっと笑みを浮かべ、口を開く。
「御話の白雪姫は蘇ったけど、これは蘇られないどく、なのよー」
ばいばい、ウサギおねーさん。
毒で薄れゆくラビットバニーの意識の中で、スノウが小さく手を振っていた……。
成功
🔵🔵🔴
なんとか毒から回復したラビットバニー。
『ふぅ……こんなにエモいものがあるなんて計算外っしょ』
思わず漏れた言葉は彼女の本音に他ならない。
とはいえ、予期せずエモいものをいっぱい見ることが出来て幸せだったりするのも事実なのだが、そろそろこの楽しい時間にも終止符を打たねば――。
アルバート・クィリスハール
SPDです。
エモ……エモかぁ……うーん。
あっ、これならいけるかな?
【空の獣】でシマエナガの群れを呼び出すよ。
この子ら、すごく人気があるよね。小さくて白くてお団子みたいとかなんとか。
みんなで身を寄せ合ったり、一斉に小首傾げたりして貰おうか。
あとは、それ。その足の甲の奴。その近くに並べたり。似てるよね。
どうだろ、エモくないかな?
バリアが解除されたら、ウサギのお面に全員で体当たりして貰う。
避けにくいようシマエナガの群で視界を潰しつつ、僕が全力ダッシュで胴狙いの串刺し攻撃をするよ。
言動に緊張感がないけど、なんだかんだで幹部だものね。
いつ仕掛けられても反応できるよう、最初から最後まで油断だけはしないさ。
泉宮・瑠碧
エモ、という言葉は初めて聞いたな
説明で意味だけは何となく分かったが…
僕は風鳥飛行で
形作った鳥の可愛さを
威嚇で更にもふもふになってみたり
見詰めた後に首を傾げて見たり
僕に甘えて頭を擦り寄せてきたり
撫でればうっとりとして、もふもふと膨らんだり…
バリアが解除されたら弓で射かけ
その後も風鳥と連携して動こう
空中に足場と、なるべく距離を取り
距離がある間は僕が射る
近くなれば風鳥が嘴か蹴り、羽搏きで距離を開けよう
速さも増すようなので
風鳥の妨害で一瞬でも動きが鈍ればそこも狙う
風鳥は都度、威嚇もするぞ
攻守に第六感を使い
射る際にはスナイパーや
風鳥自身も僕を守ろうと庇いがちなので援護射撃
相手の攻撃には見切りやオーラ防御
ラビットバニーの兎面の目が光るのを視界の端で確認しつつ。
さらにエモいものを見せるべく、アルバート・クィリスハールは腕を組んで考える。
「エモ……エモかぁ……うーん」
なかなかピンとくるものが思いつかない。
そんなアルバートだったが、唐突に名案が閃いた。
「あっ、これならいけるかな?」
アルバートが【空の獣】を発動させるとシマエナガの群れがやってくる。
『チーチーチー』
可愛らしい声でさえずるシマエナガたちにアルバートは人の好さそうな笑顔を向けた。
「ちょっと手伝ってもらえるかい?」
『チー!』
まかせて! と言わんばかりにシナエナガたちはつぶらな瞳でアルバートを見つめる。
その様子はまるでぬいぐるみを見ているかのようで、この子たちがとても人気があるというのもわかる気がする。
「そうだなぁ……」
シマエナガに何をお願いしようか。
暫し考えるアルバートだったが、ポンと手を叩くとシマエナガたちを呼び寄せた。
「ちょっとおしくらまんじゅうをしてみて貰えるかな?」
『チーッ!』
シマエナガたちはふわふわもこもこの身体をぷくぅっと膨らませると身を寄せ合い、ぎゅぅぎゅぅと押し合いを始める。
ぎゅっと押すたびに誰かはポコっと群れから押し出されてしまい、やりたいことが上手く出来ない様子のシマエナガたちはきょとんとした顔で一斉に小首を傾げた。
『はぅぁ、エモーいっ!』
愛らしさ全開のシマエナガの姿にずきゅぅんとハートを射抜かれたラビットバニーがメロメロしながら身悶えする。
『マジこの子ら小さくて白くて、お団子みたいっしょ! あーしももふりたいしー!』
キュンキュンしているラビットバニーにアルバートはくすりと笑みを零した。
もう一つ、エモいものを思い付いたので、彼女にも見せてみよう。
「ねぇ、ちょっとその足の甲のとこに並んで見てもらえる?」
アルバートが指差したのは、ラビットバニーのブーツについている白いポンポン。ふわふわな感じがシマエナガたちによく似ている。
「うん、やっぱり似てるよね。どうだろ、エモくないかな?」
『エモいエモい、めっちゃエモいっしょ!』
首を傾げるアルバートにラビットバニーは何度も力強く頷いた。
『チ?』
まんまるふくふくの身体でシマエナガはラビットバニーをじっと見上げる。
その白いお顔にちょこんとついた黒く可愛らしい瞳とばっちり目が合えば。
『エモ……幸せっしょ』
ラビットバニーは堪え切れずにシマエナガをもふろうと手を伸ばした。
ふくふく愛らしいシマエナガにメロメロなのはラビットバニーだけではない。
(「どうしよう……可愛い……」)
ほにゃっと緩んでしまう頬を押さえ、泉宮・瑠碧は慌てて壁の方を向いて顔を隠した。
『エモ』という言葉は初めて聞く言葉ではあったが、意味だけは何となく分かった気がする。
『はっ!? あーしってばまた心が乱れて……いけない、平常心っしょ』
ラビットバニーが絶対無敵バリアを張り直して戦闘態勢をとったことに気づき、瑠碧もコホンと咳払いを一つして気持ちを切り替えた。そして、【風鳥飛行】で形作った風の鳥を呼び出す。
「小さい鳥も可愛いらしいが、大きい鳥も可愛いぞ」
『ピィーーッ』
ラビットバニーを敵と判断したのか、風鳥は羽を広げて威嚇をする。風鳥を落ち着かせようと瑠碧は毛が膨らんでもふもふになった背中を優しく撫でた。
「よしよし、イイコだ」
風鳥はじっと瑠碧を見つめると、おもむろにちょこんと首を傾げる。
そして、瑠碧に羽を撫でられて気持ちが落ち着いたのか、うっとりとした表情でさらにもふっと膨らんだ。指を包むふわふわな感触に、瑠碧は顔がにやけそうになるのを必死に堪える。
『エモ……!』
風鳥も可愛いのだが、何よりもその大きな体で瑠碧に甘える仕草が堪らない。
キュゥンと心を震わせ、瞳を滲ませるラビットバニーなど目もくれず。
風鳥は『キュルルル』と喉を鳴らして瑠碧に頭を摺り寄せて甘えている。
(「よし……!」)
ラビットバニーのバリアは破られた。
瑠碧は気づかれぬようにそっとアルバートに目で合図を送る。
「全員で体当たりして貰ってもいい?」
『チッ!』
アルバートの願いを叶えるべく、シマエナガたちが一斉にラビットバニーに向かって突撃した。
そして、シマエナガたちが作ってくれた死角から瑠碧は水の矢を放つ。
『ちょ!? 不意打ちは卑怯っしょ!』
「何を言っている。鳥たちに心奪われていたせいだろう」
やれやれと溜息をつく瑠碧の言葉にアルバートもこくこくと頷き、同意を示した。
再び瑠碧が射かけた矢をひらりとかわし、ラビットバニーは不満そうな声をあげる。
『エモいんだから仕方ないしー!』
(「速い……!」)
ラビットバニーが繰り出す拳を寸でのところでアルバートは受け止めた。
……先程からずっと思っていたが、ラビットバニーの言動には全く緊張感がない。
とはいえ、相手はなんだかんだで幹部。油断は禁物だと自らに言い聞かせておいたことが功を奏したようだ。
『チッ……!』
風鳥の羽ばたきで行動を阻害されたラビットバニーに出来た一瞬の隙を猟兵たちは見逃さなかった。
シマエナガたちがラビットバニーの視界を遮るように飛び掛かると、瑠碧が弓の弦を引いて水の矢を生成する。
そして、瑠碧が水矢を射るのと同時に全力ダッシュでラビットバニーへと接敵したアルバートが『坤交の槍』を繰り出せば――古びた両刃の矛槍は兎の胴を貫いていた。
『あーしの、負け……かぁ』
花畑へと倒れこんだラビットバニーの身体が猟兵たちの目の前でゆっくりと消えていく。
兎面に隠れた彼女の顔はきっと満足そう表情を浮かべていただろう。
激しく心揺さぶる『エモ』によって敗れたのならば、ラビットバニーも本望に違いない。
何しろ、これだけステキな『エモい』ものを見せつけられたのだから――。
大成功
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