バトルオブフラワーズ⑩〜あつまれ! このよすべてのエモ
●ばりあっていえばいいとおもいやがってしょうがくせいか
「……皆、心して聞いて欲しい。今まさに作戦進行中の『バトルオブフラワーズ』だが、遂に其れが新たな局面を迎えた」
いつにも増して神妙な面持ちで、ニコ・ベルクシュタイン(虹の未来視・f00324)が集まった猟兵に対して告げる。今日は時間も惜しいのか、いつもの懐中時計は既にしまわれ、代わりにいつでも転送ができるようにと虹色に輝く星型のグリモアをかざしていた。
「システム・フラワーズ内部、第二の関門を守る怪人の名は、カワイイ怪人『ラビットバニー』と言う。今度は此の女怪人を倒さぬ事には、先に進めない。しかも予知で判明したのだが……非常に厄介な事に此の怪人め、其の名もズバリ『絶対無敵バリア』たるユーベルコードの効果で、口だけでは無く本当に『ありとあらゆる攻撃が一切効かない』のだ」
子供か、と思わず小声で言い捨ててしまうニコ。この世に爆誕した時からいきなり27歳だったヤドリガミたるニコが何故人間の子供の生態を知っているのかはさて置き。
「……其れだけを伝えたとて、皆「どうしろと」とお困りの事だろう。よって、唯一にして最強の対抗策をお教えしよう」
――それは? 集った猟兵たちがニコの言の続きを待つ。
「皆は『エモい』という単語というか、概念を把握しておられるだろうか。ラビットバニーは「エモいものを目撃するとバリアを一時的にだが解除してしまう」弱点を持っている」
――えっ。そんなことでいいんですか。
――待って。エモいのは見るのは好きだけど自分が見せるのはちょっと。
様々な声が聞こえる中、ニコは真顔で説明を続ける。
「皆、安心して欲しい……というのは些か慢心か。ラビットバニーが「エモい」と感じる基準は、俺から見ても正直かなり緩い。『可愛い』『あざとい』『面白い』『イケメンの壁ドン』果ては『突然のパンチラ』『信じていた人間に裏切られて怨嗟の表情を浮かべるエイ』に至るまで、要するに「SNSでバズりそうなもの」には大体エモさを感じるようだ。能力が強過ぎる分、課せられた制約も厳しいのだろう……多分だが」
という訳で、とニコはいよいよ手にした星のグリモアを回転させ始める。
「我こそはラビットバニーの絶対無敵バリアを完璧に解除させる猛者である、というエモさを秘めた者から、此の転移ゲートを潜って欲しい。対策さえ確りして頂ければ無敵の状態こそ敗れるが、其処はやはり怪人というべきかバリア無しでも強敵だ。抜かり無く、よろしくお願いする」
次々とシステム・フラワーズ内部へと転送されていく猟兵たちの背に向けて、ニコはそっと一礼をした。
かやぬま
●とくしゅるーるです
====================
ラビットバニーは必ず、猟兵に先制して『絶対無敵バリアを展開するユーベルコード(POW、SPD、WIZ)』を使ってきます。
絶対無敵バリアは本当に絶対無敵で、あらゆる攻撃を無効化しますが、「ラビットバニーがエモい物を目撃する」と、精神集中が乱れてバリアが消滅します。
ラビットバニーのエモい基準はかなりユルいので、バリアの解除は比較的容易と思われますが、バリアなしでも彼女は相当の実力者です。
====================
●ごあいさつ
初めまして、もしくはお世話になっております。かやぬまです。
合法的に皆様のエモいプレイングを拝見できると聞いて、思わず椅子をぶっ飛ばして立ち上がってしまいました。ラビットバニーに、そして私に、皆様のエモさを存分に見せつけてやって頂けますと幸いです。
正直に申し上げますと、エモくても苦戦する可能性は充分に有り得ます、その点は何卒ご承知おき下さいませ。苦戦でもエモい……そういうシチュもありますよね……。
●ごあんない
プレイングは「5/13(月)AM8:30」からの受付とさせて下さいませ。
今回は戦争シナリオということで、頂戴したプレイングの数によりましては、全採用が難しくなる可能性もございます。力及ばずの時は、本当に申し訳ありません。なるべく頑張ります。
それでは、よろしくお願い致します!
第1章 ボス戦
『カワイイ怪人『ラビットバニー』』
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POW : 赤べこキャノン
【絶対無敵バリア展開後、赤べこキャノン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : うさちゃんカンフー
【絶対無敵バリア展開後、兎面の目が光る】事で【うさちゃんカンフーモード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : おはなハッキング
【絶対無敵バリア展開後、両手の指先】から【システム・フラワーズ制御ビーム】を放ち、【花の足場を自在に操作する事】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:和狸56
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●ぜったいむてきばりあをぶちやぶれ
『はぁ!? もう猟兵来たの、早ない!?』
どこからともなく転送されてくる猟兵たち――しかもどれもが選りすぐりの「エモ」を携えている――の気配に、思わず声を上げてしまうカワイイ怪人・ラビットバニー。
しかしすぐに気を取り直すと、フフンとその豊満な胸を張って鼻を鳴らす。
『まー『絶対無敵バリア』あるし、ヨユーっしょ! それでもあーしに傷一つでもつけたかったら、どちゃくそエモいモンでも持ってこいっつーの』
――先に倒されたマニアック怪人・エイプモンキー同様、盛大なフラグを立ててくれた。
クロト・ラトキエ
エモさとは?
しかし世界の為、やる気を出さねば…Emotion、つまりが感激、強い感情をいうのであれば…
さぁ存分に僕をご覧なさい…!
風そよぐ木々を思わす豊かな黒髪、果てなき海原の彩に似た青碧の瞳、白磁もかくやの肌理、
容貌はあたかも神の手による奇跡の造形、長身に強くしなやかな体躯は実は脱いでも凄いんです!
貴女もまた雷に打たれたか、生まれたての仔鹿の様に尊崇の念を感じているだろう事…
ならば!ここに高らかに宣言しましょう!
僕こそがエモであると…!!
(ネタです。
心底冗談です。
しかし全力の嘘八百です。
極振りの笑いはエモ)
極力見切りで傷を避け、
フェイントのナイフ投擲からUCで攻撃力強化、鋼糸で急所狙いますね
●いまこそエモのていぎをとう
(「エモさ、とは……? しかし、世界の為、やる気を出さねば……」)
最初の転送を受けたクロト・ラトキエ(TTX・f00472)は、無数の花が咲き乱れるシステム・フラワーズ内部に降り立ちながら、思案していた。具体的な「エモさ」についてはなかなかに言語化が難しい。単に把握しきれていないこともあれば、理解しすぎているが故に尊すぎて言葉にできないこともある。クロトはどうか。
(「Emotion、つまりが「感激」「強い感情」をいうのであれば……」)
クロトはそう思い至り、いよいよカワイイ怪人・ラビットバニーの前に立つ。かつん、と一つ靴音が響き、それに気付いたラビットバニーが振り返り、クロトを一瞥する。
『あっは! ホントに来たわー! ウケるー! 悪いけどあーしマジで無敵だから! 攻撃とかしても無駄だし!』
シュールな顔が描かれたウサギヘッドの怪人は、余裕の声でそう言うなり――噂の『絶対無敵バリア』を展開する。
対するクロトはどんなエモを魅せてくれるのか? と思われた矢先、クロトが懐からおもむろに取り出したのは――スマートフォン。その様子を見たラビットバニーはまさかと一瞬身構えてしまう。無敵なはずなのにひるむとか大丈夫です?
クロトは画面をタップしたりスワイプしたりいくつかの操作をした後、スッ……と画面をラビットバニーに向けて突き付けた。そこに表示されていたのは、男性の艶姿(具体的な内容はご想像にお任せします)だらけのカメラロール。
『……ちょっ!? 何この……何!? イケメンやんけ!! このメンズ、自分がイケメンだって分かってるじゃん!!』
「そうですね……風そよぐ木々を思わす豊かな黒髪、果てなき海原の彩に似た青碧の瞳、白磁もかくやの肌理、容貌はあたかも神の手による奇跡の造形……」
思わずスマホの画面にがっついてしまうラビットバニー。画面を次々とスワイプさせて、クロトの解説通りのイケメンが、時には微笑み、時には憂いの表情をたたえ、ごく稀にきわどい衣服脱ぎかけのショットなども不意打ちで飛んでくる、そんなラインナップを次々と披露していく。
「ふふ、長身に強くしなやかな体躯は、実は脱いでも凄いんです!」
『ファーーーーーーーーーーーーーーっっ』
かっちりと洒落た衣装を着込んだ男性が胸元をはだけて顔を軽く背けている一枚に、ラビットバニーが思わず奇声を上げてしまう。
『エッなにこれマジエモ……ヤバい……あーたこれどこで撮ったの……ハッ!!?』
今までは慢心と、そしてスマホの画面に食い付いていたせいで心底気付かなかったのだが、ラビットバニーが遂にあることに思い至り、顔を上げてスマホの持ち主を舐めるように見る。
一方のクロトはスマホをスッ……と懐にしまうと、片手を胸に当てて力強く宣言した。
「――さぁ、存分に僕をご覧なさい……!」
『あーたかよおぉぉーーー!!? が、ガチ本物おるやんーーー!!!』
今まで画面ごしに堪能したエモいイケメンが、リアルで目の前にいる。ラビットバニーは雷に打たれたかのごとく、生まれたての仔鹿のように眼前のクロトに尊崇の念を感じ、打ち震えるばかり。当然『絶対無敵バリア』はすっかり消滅しているではないか。
それを確認したクロトは、バッと手を天高くかざしてトドメの一言を放つ!
「ならば! ここに高らかに宣言しましょう! 僕こそがエモであると……!!」
『エっモーーーーーーーーーーーい!!!!! ちくしょうエモいわ!!!!!』
ラビットバニー、いわゆる萌えギレというヤツである。勢いでぶっ放した赤べこキャノンだが、タイミングバッチリの見切りでクロトはそれをヒョイとかわしてみせる。
身をかがめた体勢から、ラビットバニーの死角になる位置に隠した手からナイフを投げ放つと間髪入れずに【トリニティ・エンハンス】を発動させ攻撃力を高めると、愛用の鋼糸を伸ばしラビットバニーのむき出しの首元を狙い、ギュイっと思い切り締め上げた。
『うぐっ……!?』
「(ふふ、全力の嘘八百のために身体を張った甲斐がありました。極振りの笑いはエモです、まさか本当にエモみを感じてくれるとは予想外でしたが)」
そう、自撮りなのか誰かに協力をあおいだのかは不明だが、クロトが用意した『エモい僕写真集』は、心底の冗談に端を発するネタだったのだ。決してクロトさんにそういう趣味があるという訳ではないことを、一応申し添えておきますね!
『メガネがやべーんだよ……メガネが……マジ……イケメンじゃんか……』
だが、文字通り身体を張ったクロトの大作戦に、無敵を誇るラビットバニーに一撃喰らわせることができたのもまた事実である。
続け猟兵よ、この調子で渾身のエモを叩きつけるのだ――!
成功
🔵🔵🔴
●ごあんない
急で申し訳ありません、主にこのままだとラビットバニーより先に地の文が皆様のエモいプレイングで死んでしまうおそれがあるため、現時点(5/14 23:00)をもちましてプレイング受付を〆切らせていただきます……!
ラビット・ビット
アドリブ歓迎
今度こそビットくんは負けません!
今回ご紹介するエモはそう!ビットくんのペットのきょむ!
見てくださいこのかわいいフォルム
え!?みえない!?はーこれだからリア充は!創造力が足りません!
目をつぶって!想像して!
丸いもちもちしたフォルムの…ミニドラゴン!
普段は何も返してくれないクールなのに気が向いたときだけ尻尾びったんしてくれるきょむのかわいさ!見えますか!?
あーかわいい
そんなかわいいきょむと!かわいいラビット・バニーが戯れてる!?
エッッッモ!!えっこれはかわいい大賞では!?
かわいいですね!?ありがとう!
そのエモさで【二人組を作ってください】発動!
さあろくろうさん全力スパークで殴りますよ!
●びっとくんのちょうせんはかぎりなく
開幕早々とんでもねえエモいものを見せられ、先制攻撃を喰らってしまったカワイイ怪人・ラビットバニー。ダメダメこんなん怪人の名折れじゃんとその大きな頭を数度振って気合いを入れると、次なる猟兵を迎え撃つ。
カラフルな花が咲き乱れる足場に意気揚々と踏み込んで来たのは、ラビット・ビット(中の人等いない!・f14052)さん、21歳。えっ21歳!? あ、ああ……(事情を察する)。
「今度こそビットくんは負けません!」
『何あーた今度こそって何があったの』
胸を張って宣言するラビットに対し、当然事情を知らないラビットバニーは真顔で尋ねる。お二人ともお名前がそっくりすぎるので皆様混乱するかも知れませんが、頑張って識別して下さい!
さてそこでラビットがあたかも古傷をえぐられたかのような顔になりながら、無言でスッ……とスマホの画面をラビットバニーに向けて差し出した。んー? とそれを覗き込むラビットバニー、何しろ自分には『絶対無敵バリア』があるからと慢心し放題である。
『こっ……これは……! 別個体のあーしがやらかしたことだけど、これはヤベーわ』
「ひどい……事件でした……」
そう、ラビットのスマホに映し出されていたのは、ラビットが請け負ったとある猟兵仕事の報告書。結論から言えば、ラビットはこの戦いで秘蔵の同人誌の山を、宝の山を、一切合切灰燼に帰されてしまったのだ……!
皆様ご存知のことかとは思いますが、同人誌というものは一般に流通している書籍とは異なり、一度手に入れそびれたりやっぱり後から欲しいと思ったり、改めて買い直そうと思ってもそれは土台無理な話であるという、文字通り一期一会のシロモノです。
そんな貴重な宝物が……即売会に足を運んで直接吟味したり通販でドカ買いしたりでせっせと集めたラビットの性癖ドストライクのバイブルたちが……。
『な、なんか……当たり前のことしただけなんだけどさ……うん、その、ごめん……』
「いえ、いいんです! 勝負の世界は非情ですから!」
事の深刻さを何となく把握したラビットバニーは、何となく謝ってしまう。対するラビットの方はスマホをしまいながら気丈に返す。そう、この戦いは仕切り直しなのだ。
ラビットは足元を指差し、堂々と「何か」を紹介した。
「今回ご紹介するエモはそう! ビットくんのペットの『きょむ』!」
『……は?』
ラビットバニーは気の抜けた声を出す。ご紹介と言われても、少なくともラビットバニーの目には――何も見えない。
「見てくださいこのかわいいフォルム」
『いやちょっと待ってなんも見えない』
「え!? みえない!? はーこれだからリア充は! 想像力が足りません!」
『誰がリア充だヤんのかてめ……いや落ち着けあーし……ごめん、続けてみ?』
今一瞬キレかけませんでした? 大丈夫? 本当に話続けても平気? ビットくん節はまだまだ続くよ!
「目をつぶって! 想像して!」
ラビットに言われるがまま目を閉じるラビットバニー。余裕すぎる。
「丸いもちもちしたフォルムの……ミニドラゴン!」
『……これ、もしかしてバディペットってヤツ……!?』
「もしかしなくてもそうです!! イマジナリーフレンドじゃないです!!」
今度はラビットの方が半ギレ気味になる。落ち着いて! 今のところはラビットさんのペースで話が進んでいますよ!
「そう……普段は何も返してくれないクールな性格なのに、気が向いた時だけ尻尾をびったんしてくれるきょむのかわいさ……! 見えますか!? 見えてきましたね!?」
『ええっ、この尻尾びったんそんなレアだったん!? 今むっちゃびったんびったんしてんだけど!?』
気がつけば、しゃがみこんで一見『何もない』空間を指差して驚愕の声を上げるラビットバニーの姿がそこにはあった。え、ええ……!?
「あーかわいい……」
少なくともラビットと、ラビットバニーとの目には、見えていた。丸いもちもちしたフォルムの……ミニドラゴン『きょむ』の姿が……! 実際アイテムとして装備もしているのだから『いる』と認めざるを得ないんです……!
「そんなかわいいきょむと! かわいいラビットバニーが戯れてる!? エッッッモ!! えっこれはかわいい大賞では!? かわいいですね!? ありがとう!!」
『あーたがエモがってどーすんのさ!! あーきょむくんっていうんだキミー!! かっわいいねー!!』
よーしよしよしよしよし。エモはエモを呼ぶとは誰が言ったか、エモがるラビットにつられるように、きっちりツッコみながらもきちんと貴重なエモは摂取していく姿勢のラビットバニー。当然ご自慢の『絶対無敵バリア』は――いつの間にか消滅している!
「はぁ……エモ……エモ充填完了です……今こそ【二人組を作ってください!!!(フラグ・ビルダー)】発動の時です!!」
それを確認したラビットが、すかさずユーベルコードを発動させる。なにこの……なに? 対ラビットバニー戦にぴったりなユベコ……!?
『や、やべっ!! きょむくんエモすぎてやらかしたわ……!』
「さあ「ろくろうさん」、全力スパークで殴りますよ!」
ここで取り出したるはラビットの話をきちんと聞いてくれる貴重なお友達でもある継ぎ接ぎスクラップ「ろくろうさん(2m)」。攻撃までしてくれるなんて貴重! エモい!
ぼこん。
それはもう良い音を立てて、バリアが解けたラビットバニーの後頭部を一撃。思わずガッツポなラビットと、いたーい! と緊張感の欠片もなしに後頭部をおさえるラビットバニー。最後までややこしいままの二人の関係、これにて(ひとまず)完結ッ!
成功
🔵🔵🔴
セツ・イサリビ
●装備
・よれよれの段ボール箱(みかん箱)
・透明ビニール傘
●事前準備
相棒の猫を段ボールに入れて設置
バニーに雨を降らせる
「見たいんだろう? エモいものを。雨、降らせてくれよ」
●実演
仏頂面で傘を差して歩く。その先に段ボール発見
濡れた段ボールの中から子猫の声
無視して通り過ぎようとするが、何度か振り返り
戻って箱を開ける
「お前、捨てられたのか」
「飯なんか持ってないぞ」
「いい人に拾ってもらえよ」
傘を段ボールに残して離れるが
何か悩むようにして立ち止まり、走って戻る
「雨が上がるまでだぞ」
猫を抱き上げ
慈しむような目をして不器用に笑う
猫を上着の中に入れて立ち去る
指輪を竜巻に変え攻撃
「生涯添い遂げることは誓ってるさ」
●あざとい! かみさまあざとい!
『ウッソでしょ、あーしがこんなにもあっさりと攻撃喰らうとかマジありえねーっつーか……』
したたかに殴られた後頭部をさすりながらマジ今日は厄日かも、と思うカワイイ怪人・ラビットバニーを待ち受けていたのは――。
「ここによれよれのダンボール箱を設置する」
まるでここをキャンプ地とする的なノリで、おもむろに年季の入ったみかん箱の段ボール箱を花畑の片隅に置く、セツ・イサリビ(Chat noir・f16632)の姿であった。
『ちょ、ちょっとあーた! 何勝手にそんな小汚いダン箱置いちゃってくれてんの!?』
一見、エモさの欠片もないように見えるみかん箱。そう、確かにそれ単体ではラビットバニーがおこになる通り、何の変哲もないただの段ボール箱だった。
しかしラビットバニーは果たして気付いただろうか、その段ボールの中に確かに存在する「何か」に。
やれやれ、という風に小さく肩をすくめると、セツはおもむろに言い放つ。
「見たいんだろう? エモいものを」
『い、いやちょっと、エモいもん見ちゃうとあーしのバリア消えちゃうからヤバい』
「――見たいんだろう?」
『ちょ、ちょい待ち! 圧がすごい圧が!』
それは、もはや質問ではなく圧力だった。何しろこの一見何の変哲もない人間――強いて言うなら眼鏡の奥で光る紫水晶を思わせる瞳と、同じ色をした豊かな長髪が印象的だが――に見えるセツだが、実はれっきとした「神」であるからして、圧がすごいのも当然と言えよう。きっとアレですよ、人数数える時に単位が「人」じゃなくて「柱」になるんですよ。ヤバい! この時点でエモいですよ! 種族だけでおいしいです!
「雨、降らせてくれよ」
セツ自身にはそのつもりがなくとも、あふれ出る神オーラというか威厳というかそういうものが、怪人の中でもトップクラスの実力を備えるはずのラビットバニーを圧倒する。
いうてシステムを掌握したシステム・フラワーズの足場を操作するのは容易いが、そんな気軽に天候を操作しろなんて言われましても状態である。さすがというか何というか、神視点での頼みごとはスケールが違う。
『あ、雨ね! あーハイハイ! わーったわーった、ちょっとタンマ!』
しかしここで「無理です」とお断りをする選択肢はラビットバニーの中にはなかった。それは怪人としての矜持か、それともやっぱりエモいものを見たいという衝動か。
(『こう……それっぽく両手バッと上にして……雨よ降れー的なポーズすれば……』)
その辺のモノをコンコンすれば適当なモノが出てくる世界の中枢なんだもの、きっと何とかなるはず。そんな思いを込めて、ラビットバニーは強く念じつつ、両手を天に突き上げる。すると――!
~実演開始~
――天気予報通りの雨に、傘を用意しておいて良かったと内心思いつつ、透明なビニール傘を差したセツは仏頂面で家路を急いでいた。
だが、見慣れたいつもの路地にふと違和感を覚えて目線をやると、何と道端によれよれの段ボール箱がちょこんと置かれているではないか。
今日は資源ごみの日ではないし、ましてやここはゴミ捨て場でもない。不埒な輩もいたものだとこそ思ったが、別にセツがそれを片付けねばならぬ義理も義務もない。
捨て置いて通り過ぎようとしたその時、セツの耳にか細い何かの鳴き声のような音が飛び込んできた。
「……猫?」
――みぃ。みーぃ。
しとしと雨でよれよれになった段ボール箱の中から、確かに聞こえた、子猫の鳴き声。一瞬、ほんの一瞬だけ気を取られるも、それでもセツは無視を決め込み通り過ぎ……数歩進んだところで、一度、二度、そして何度も振り返ってしまう。
気がつけばセツはしゃがみ込み段ボール箱を開けて、鳴き声の主とご対面していた。
「お前、捨てられたのか」
「みぃー」
「飯なんか持ってないぞ」
「みー……」
「……いい人に拾ってもらえよ」
「みぃ……」
子猫特有の青いつぶらな瞳で鳴いて訴えかけてくるかのような子猫に、しかしセツは今の自分にできることはこれが精一杯という風に、手にしていたビニール傘を段ボール箱の上にかぶせてやると、今度こそその場を後にすべく、普段より気持ち大きな歩幅で歩き出す。
「……みー……」
去りゆく背中に、まるで突き刺さるような弱々しい子猫の鳴き声。遂にセツは何かを思い悩むようにして立ち止まると、今度は駆け足で段ボール箱の前に戻った。
「みぃ」
「……雨が、上がるまでだぞ」
「みー」
子猫を抱き上げ、その小さな身体を上着の中にそっと入れてやるセツの表情は、不器用ながらも慈しみに満ちた、不器用な笑みで――。
~実演終了~
『ンギャアアアアアアアアアアア!!!!! エモいってモンじゃねーし!!!!! 尊い!!!!! 尊すぎるわ!!!!!』
アッ本日二回目の萌えギレですねラビットバニーさん! ここまでのご清聴まことにありがとうございます! 最後の方涙目じゃありませんでした? 大丈夫?
『でもさ結局……ウッ、その拾った子のこと何だかんだ言ってちゃんと面倒見るんでしょ……? あーし詳しいからわかるっつーか……』
グスッと鼻をすするラビットバニーは、あまりのエモさにまたしてもバリアを解除してしまっていた。
今なら攻撃が通る、そう確信したセツは悟られぬようそっと指にはめた「叡智の指輪」をかざすと、それを超次元の竜巻に変えるユーベルコード【クライシスゾーン】を発動させる。
荒れ狂う竜巻を御し、狙うは尊さの余韻で打ち震えるばかりのラビットバニー!
『猫ちゃんと末永くお幸せにねえええええええええ!!!!!』
竜巻に巻き上げられ、盛大に吹っ飛んでいくラビットバニーの言葉に。
「……生涯、添い遂げることは誓ってるさ」
「ニャーン」
な、と懐から出てきた小さな黒猫――成長した今では翠玉の瞳をしている――に、今一度誓うようにそう返すセツであった。
成功
🔵🔵🔴
クリスティーヌ・エスポワール
双子姉のニコ(f02148)と一緒
アドリブ大歓迎
「エモさ」自体はわからなくもないわよ
でも、何で私達がその対象なのよ!
「そんなんじゃエモ取れるわけないじゃないバカニコ!ちょっと考えれば分かるでしょ!?」
涙目になってニコに食って掛かる
「ニコだって、大人しくしてれば可愛いのに、もう少し落ち着きなさいよ!!」
ニコの肩を掴んで、上気して潤んだ瞳で見つめ合う……
って、私のドローン勝手に持っていかないでよ!
早期警戒機De108Eに【騎乗】して足場の悪さを回避、【ハッキング】で足場のハックを押さえる!
「今のうちに決めなさい、ニコ!」
01の鎖で打ちすえて叫ぶ!
●エモ要素
『ツンデレ双子姉妹百合(天然物)』実演
ニコレット・エスポワール
双子妹のクリス(f02149)と一緒
※アドリブ大歓迎
何とかなるって、ホラ!
エモさをぶつければいいんでしょ?
ならボクは可愛いし、クリスもイケてるよ♪
だってクリスはいぢめるといー顔するんだよ?
これがエモくなくて何なのさ!
ってクリス、なんか煩い…
あーもー、そーやってグダグダー!
ニコニコしたり顔真っ赤の涙目だとかーいーのに!
理屈っぽく怒りすぎだよ!
やだよ、落ち着かない!
もっとクリスいぢめたいもんっ!
あ、チャンス?
ドローン借りるよ、クリスっ
【バトル・インテリジェンス】起動!
必殺の飛び蹴りー☆
●本当のエモ
『ツンデレ双子姉妹百合(天然物)』実演
2人に激しい惚気の自覚はないが
涙目の掴み合いも熱いハグに見える程
●てんねんもののつんでれふたごしまいのゆりです!
『サブタイでネタバレすんのやめーや』
絶対無敵のはずの自分が、ここまで猟兵たちに好き勝手されるとは。これはさすがに予想外とご自慢の赤べこキャノン(紫だけど)をかつぎ直すカワイイ怪人・ラビットバニー。
おまけに開幕早々次のエモネタのバレを喰らって、気分はサガるばかり。いや、猟兵対策としては完璧なのだが。やはりエモを摂取したいという気持ちには逆らえない。
『しゃーない、見せてもらおうじゃん! 双子姉妹の百合ネタってヤツをさぁ!』
勇ましく言い放たれた台詞の先には、今まさにグリモアベースからの転送を受けて花咲く大地にふわり舞い降りた、ニコレット・エスポワール(破璃の黒百合・f02148)とクリスティーヌ・エスポワール(廃憶の白百合・f02149)の二人の少女がいた。
「ちょ、ちょっと! こちらの手の内が露見してるじゃないの!」
「大丈夫、何とかなるって、ホラ!」
ニコレットとクリスティーヌが携えてきたエモは、ラビットバニーが先んじて言った通り『ツンデレ双子姉妹百合(天然物)』である。何故バレたし、そう慌てるクリスティーヌに対し、あくまでも楽天的にキャッキャとその手を取るニコレット。
「エモさをぶつければいいんでしょ? ならボクは可愛いし、クリスもイケてるよ♪」
『ホラ来た、そんな分かりきったあからさまなネタに引っかかるほどあーしはチョロくなんて』
「そうよ、「エモさ」自体はわからなくもないわよ!? でも、何で私達がその対象なのよ!」
直球の褒め言葉に、照れ隠しなのか、それとも。おもむろに取られた手を思わずバッと振り払ってしまうクリスティーヌに、しかしニコレットは意にも介さぬ風に無邪気に絡みを深める……!
「だってクリスはいぢめるといー顔するんだよ? これがエモくなくて何なのさ!」
「そんなんじゃエモ取れるわけないじゃないバカニコ! ちょっと考えれば分かるでしょ!?」
ねえ! とむしろ助けを求めるような目線をラビットバニーに送ってしまうクリスティーヌに、ええ? と同意を求める目線を同じくラビットバニーに送るニコレット。
――ラビットバニーは、正座していた。そっと手を差し出す仕草で、言った。
『続けて、どうぞ』
「やったー! やっぱりクリスってばエモーい!」
「だから! 何で! そうなるのよ!!」
頼りにしちゃいけない相手を頼った結果がこれだよ! いよいよ涙目になったクリスティーヌは涙目になってニコレットに食ってかかる! 対するニコレットは、意固地になって自分の魅力を認めようとしない妹(註:姉がニコさんで妹がクリスさんです)に思わず憎まれ口を叩いてしまう。
「ってクリス、なんか煩い……。あーもー、そーやってグダグダー!」
「煩いとは何よ! ニコが悪いんじゃない!」
「ニコニコしたり顔真っ赤の涙目だとかーいーのに! 理屈っぽく怒りすぎだよ!」
「ニコだって、大人しくしてれば可愛いのに……もう少し落ち着きなさいよ!!」
姉妹は二人してとっ掴み合っている。ただ、それだけなのに。潤んだ涙目のクリスティーヌの顔は心なしか上気し、至近距離で掴まれた側のニコレットはどこか愛おしそうに微笑んでいる。これはもはや掴み合いではなく……熱い抱擁なのでは……!?
これが、これが妹のあざとさ、そして姉の余裕なのか……!?
「やだよ、落ち着かない! もっとクリスいぢめたいもんっ!」
(「バカニコ! そろそろじゃない……!?」)
多分、ニコレットは本気の本気でもっと妹を弄り倒したかったに違いない。だが、本来の目的を忘れてはならぬとクリスティーヌが目配せを送ると、そこはさすがの双子と言うべきか、ニコレットも即座に意を汲んでラビットバニーの様子をうかがう。
――ラビットバニーは、拝んでいた。良きものを見た、そんな気持ちを込めて。
『……あーし、知ってた……。ツンデレ双子姉妹の百合とかそんなんエモいに決まってるって……』
そして正座の姿勢から立ち上がると、足のしびれも見せずにバッと片手を天にかざす。
『生で見れて最の高ってヤツだったわー! かーっ!! これはお礼ね!!』
ラビットバニーが遂に牙をむく。【おはなハッキング】で、ニコレットとクリスティーヌの足元の花を崩し、奈落の底へと叩き落とさんとする!
「やばっ、ドローン借りるよ、クリスっ!」
「って、私のドローン勝手に持っていかないでよ!」
ニコレットは自前のドローンを所持していないため、こうやって妹であるクリスティーヌのドローン「De108E デルタ・アイ」を拝借することが多いのだ。
『ちょっ、飛ぶとか聞いてねーし!?』
そろそろいい加減自前のドローンのひとつでも用意して欲しいのか、それとも頼られるのもまんざらでもないのか。
クリスティーヌはなんやかんやでニコレットの分のドローンも出してやりつつ、自身は「De108E」を巧みに乗りこなして足場の悪さをやり過ごす。
『……っ!? 【おはなハッキング】が、止まった!?」
電脳魔術士の面目躍如といったところか、若干手こずったためニコレットの足場が崩れるギリギリ直前の発動となったが、すんでのところでクリスティーヌの「ハッキング」が効果を発揮し、花の足場の崩壊は止まった。
「――今のうちに決めなさい、ニコ!」
「チャーンス! 喰らえっ、必殺の飛び蹴りー☆」
『ヒエッ……双子姉妹のコンビネーション……! エモの追撃とか聞いてねーし!?』
「世界を支える言葉の力、受けなさい! 【始まりの言葉は鎖となる(オリジヌ・シェーヌ)】!!」
「それじゃ、よろしくねっ! 【バトル・インテリジェンス】!!」
クリスティーヌが放った0と1とで構成された電子の鎖が、バリアが消えたラビットバニーの身体を鞭のようにしたたかに打ち据える。
そこへ、最愛の妹のドローンにその身を委ね戦闘力を極限まで高めたニコレットが、渾身の飛び蹴りを叩き込む!
『あぐっ……!! よ、予測可能……回避不可能……!!』
「その台詞は、本来の用途とは少し異なる気がするけれど」
「クリス、今ツッコんじゃかわいそうだからやめとこ??」
姉妹の完璧なコンビネーションアタックの前に思わず膝をつきながら声を絞り出すラビットバニーに、容赦ないツッコミを入れるクリスティーヌと、それを笑顔でたしなめるニコレットの姿が、そこにはあった。
大成功
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●しいんはエモし
『な、なるほど……ね……。あの、エイプモンキーが……ヤられるワケだわ……』
カワイイ怪人・ラビットバニーは、胸元に手を当てて数歩よろめくように前進し――そして、遂にその両膝から一面の花畑の中に崩折れた。
『エモ死、か……あーしらしいっちゃ、らしい……かも、ね……』
ああ、舞い散る花弁がきれい。これめっちゃ映えんじゃね?
ラビットバニーは変わるはずのないウサギの顔で、しかし心底から満足したという声で、そう言い残すと、それきり動かなくなった。
倒れ伏したラビットバニーの身体を、無数の花弁が覆い尽くしていく――。