バトルオブフラワーズ⑩〜Emotional heart
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柊木・ましろ(ミューズの描く奇跡・f03701)は、グリモアベースに集まった猟兵たちを差し置いて、プロジェクターに映し出された敵の姿とにらめっこしていた。時折妙な唸り声をあげている辺り、何か作戦でも考え込んでいるのだろう。
「ぐぬぬ……ましろを差し置いてカワイイ怪人だなんて許せない……」
違った。
「皆ももう知ってると思うけど、今度の相手はカワ……」
意地でもカワイイと言いたくないのだろう。苦虫を噛み潰したような顔で一旦押し黙ると、すぐさま再び言葉を続けた。
「……怪人ラビットバニー。お猿さん退治から立て続けで疲れてるかもしれないけど、まだ先は長いから、頑張ろうね」
渋々といった形ではあったが、ましろは映し出されたラビットバニーを背に、情報の開示を始めた。
「システムフラワーズ内は、お花畑の道みたいな足場があるだけ。それも全てラビットバニーに集中してるから、復活しなくなるまで倒さなきゃ先に進めないの」
もしかしたら、先のエイプモンキーとの戦いで経験している猟兵も居るかもしれないが、早い話が隙を突いて通過するようなことは出来ない、ということだ。
「ラビットバニー自身、幹部っていうだけあって結構やり手みたいだから気を付けないとね。まずはこの豚ちゃん砲」
拡大されたのは、紫色の豚のような飾りが付いた、大砲のような武器。赤べこキャノンと記されたそれは、見た目通り射撃攻撃を行うものだ。攻撃方法も多様で、命中力を重視したものや、連射速度を重視したものなど、状況に合わせて切り替えることが可能である。中でも特に注意すべきは、一発でも当たると痛い攻撃力を重視したものだろう。
どうでもいい話だが、赤べことは牛のことで、人間が暮らしていた頃のキマイラフューチャーに存在したエンシェントマスコットである。豚ではない。
それから、とスライドし次に移されたのは、大きなウサギの頭だった。どうやら接近戦もこなすらしく、ユーベルコードにて自己強化まで行ってくるようだ。強化中は青い瞳が赤く変化するので、知らない内に強化されていたという意味での不意打ちは考えなくてもいいだろう。
最後に、と映されたのは手の指先。システムフラワーズを制御するビームで、足場を操作し猟兵の行動を阻害してくるだろう。
「それぞれ今までのオブリビオンよりずっと強力だからね、油断しちゃだめだよ」
なによりラビットバニーの最たる脅威は、絶対無敵バリアーと呼ばれるものを展開してくることだ。これは文字通りどんな攻撃も通さず、壊れることはない。
それでは倒せないのではないか、という結論には、誰もが容易に辿り着いた。しかしそれが疑問として言葉にされなかったのは、彼女の話がまだ続いていたからだ。
「対策は当然あるよ」
そう言って掲げられたのは、一枚の紙。達筆な字でこう書かれていた。
エモい。
「なんか精神的に揺さぶりを入れると、集中が乱れてバリアーが一時的に解除されるみたい。相手は栄えそうなものとか、エモいのに弱いみたいだから、なんかそんな感じで頑張ってね!」
説明を終えると、ましろは携帯端末を手に自撮りを始める。撮った写真を確認しながら、何度か首をひねった。
「……やっぱましろの方がカワイイと思うんだけどな」
カワイイ怪人のカワイイは自分を指している訳ではないのでは。猟兵たちは訝しみながらも戦場へと送り出された。
朝霞
お世話になります、朝霞です。
今回は戦争シナリオの幹部戦と言うことで、以下の注意点を良くお読みください。
ラビットバニーは必ず、猟兵に先制して『絶対無敵バリアを展開するユーベルコード(POW、SPD、WIZ)』を使ってきます。
絶対無敵バリアは本当に絶対無敵で、あらゆる攻撃を無効化しますが、「ラビットバニーがエモい物を目撃する」と、精神集中が乱れてバリアが消滅します。
ラビットバニーのエモい基準はかなりユルいので、バリアの解除は比較的容易と思われますが、バリアなしでも彼女は相当の実力者です。
エモいかどうかの判定は上記の通り割と緩いですが、曲がりなりにも幹部ですので強敵となります。
それではどうか御武運を。
第1章 ボス戦
『カワイイ怪人『ラビットバニー』』
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POW : 赤べこキャノン
【絶対無敵バリア展開後、赤べこキャノン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : うさちゃんカンフー
【絶対無敵バリア展開後、兎面の目が光る】事で【うさちゃんカンフーモード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : おはなハッキング
【絶対無敵バリア展開後、両手の指先】から【システム・フラワーズ制御ビーム】を放ち、【花の足場を自在に操作する事】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:和狸56
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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まるで花畑のようなその道の先に、バニーは一人立っていた。
「モンキーがやられたのはビビったけど、ここまで来たことは正直に誉めてやる」
やる気の無さそうな拍手が猟兵たちを迎える。しかし、ひりつくようなこの空気は、決して彼女を侮ってはいけない何よりの証拠だ。
「なんだよ、あーしだって誉めるときゃ誉めるさ」
気の抜ける態度。意外となんとかなるのかも――。
「だってさ、これから死ぬのに、良い思い無しとかヤバくない?」
否。相手は幹部なのだ。油断など微塵も有ってはならない。
命運は、猟兵たちの手に委ねられた――!
セレヴィス・デュラクシード
エモい‥‥感動的、感傷的、心が突き動かされた時の感情?(端末チェック
つまり「この子凄い」って思わせる様なSNS映えする何か‥‥ダンスかな?
そこのボンキュッボン!勝負なんだよっ!
大事なのは余裕さを演出する笑顔、淡々としたダンスは良くないよね
先手で攻撃されるその前に、即興味を惹く様に最初のステップが肝心
1・2・3・4・1・2・3・4~♪
徐々に動きを大きくして【ジャンプ】と【狐百まで踊り忘れず】で舞台を空中に
1・2・3・4~♪
バランスを取りつつ軽快なアクロバットも加えて【誘惑】する様に
‥‥からの急降下踵落としだよッ!
迎撃された場合、体を捻って【見切り】回避しつつ体重を乗せた一撃をお見舞いするんだよ
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セレヴィス・デュラクシード(複製サレシ幻想ノ狐姫・f04842)はラビットバニーの姿を捉えると、まずその身体を凝視した。そこには、現実が立ちはだかっていた。
ここはあえて何がと言及するするのは避けておこう。ただそこに、超えられない壁が確かに存在した。
「そこのボンキュッボン! 勝負なんだよっ!」
それが全てを物語っていた。
「あ? ガキがあーしに喧嘩売るなんて、せめてあと10年早くね? てかマジウケるっしょ、アンタそれマジ?(笑)」
現実とは時に残酷である。
「おーけーおーけー、そんな怒んなってマジ。ダイジョーブだって、あと10年すればおっきくなるって」
ちなみにセレヴィスは19歳になったばかりだ。これは明らかな挑発である。だがそんな彼女が挑発に乗らず、油断もしなかったのは。
「ま、10年後が来ればの話だけどね」
バチッと何かが弾ける音がした。蜃気楼のように揺らめくバニーの姿、その瞳が紅く色を変える。何をしたのかハッキリとは分からないが、感覚で分かる、これがバリアーなのだと。それを理解した瞬間セレヴィスは一歩前へ出た。
「?」
一歩前へ。かと思えばまた下がって、一歩、一歩、右へ左へ、飛んで、跳ねて。そこでバニーは、その動きがダンスなのだと理解した。
「……てかマジ、あーしのこと舐めてんの? んな揺れるモンも持ってねーのに、他人の心が揺れるワケねーっしょ!」
言い切ったバニー。しかしその視線の先に、もう既にセレヴィスは居なかった。それもそのはず、彼女が居るのは、空中なのだから。
「こっちだよー! ほらほら、付いて来れるかなー、1・2・3・4~♪」
飛んで、跳ねて、宙を舞って、空を蹴ってくるっとターン。空で織り成す軽快なダンス。繊細に、しかしアクロバティックに、バニーの目を惹きながらそれは続く。
「空中ダンスとかマジヤベェっしょ! ちゃけパネェっしょ!」
死語を使う過去の残滓であるオブリビオンは、その割りに秒間30コマ撮影と超最新機種の携帯端末で連写していた。なるほど情報に聞いていた通り、確かにこのやり方でバリアーを無効化することが出来るようだ。原理は――集中を乱すと言っていたのでその通りなのだろう。そこにいちいち疑問を持っていても仕方が無い。
思っていたよりも簡単にバリアーは消失した。攻めるならば今しかない。
飛んで、跳ねて、空を蹴って、一気に急降下。
「喰らえッ!!」
脳天めがけた踵落としが、バニーへと急迫する。しかしバニーもただ黙ってやられる相手ではない。いくら勢いを付けて急降下したといえど、ただでさえ強大な力を更に強化したバニーの反応速度を超えることは出来ない。何処で覚えたのか、大陸拳法の構えを取ると、二人が接触する瞬間を狙って拳を――。
「!?」
突き出した先にセレヴィスは居ない。僅かに身体を捻って反撃を逃れたセレヴィスは、その勢いのまま、全体重を乗せた一撃を叩き付けた。手応えは十分、確実な一撃を入れることが出来た。そう確信していた。
足が、掴まれていると気付くまでは。
「……あんさ、もっかい聞くけど、あーしのこと舐めてんの?」
ぎりぎりとその手に力が込められる。慌てて逃げようにも、腕ならともかく足を掴まれては満足に身動きも取れない。
「軽いんだよッ!!」
そのまま花畑へ叩きつけると、少し離れた場所へ投げ捨てる。転がったセレヴィスは僅かに呻いた。一瞬相手の反応速度を上回ったということは、おそらく有効な手段だったのだろう。だが、バニーに一撃を与えるには、決定打が足りなかった。若しくはただ、バニーがたまたま反応することが出来ただけだったのか。
ラビットバニーの表情からは、焦りも、しかし余裕すらも読み取れなかった。
苦戦
🔵🔴🔴
小林・夏輝
【犬兎】で参加
知ってても使う機会無ぇしなー、エモい
まぁ可憐さで言ったら俺の中では
技も存在も澪きゅん最強だけど?
澪が花畑を仕込む間
全力【ダッシュ+逃げ足】で動き回りながら
ロケランに変形させた★バット+★R-Lで
何度も【クイックドロウ+援護射撃】の爆煙で視界潰し
足音で囮に
澪、危ねぇ!
攻撃は澪を【庇う覚悟で激痛耐性】
大丈夫か、怪我は?
手を差し出し
あれれ、俺の心配してくれるなんて珍しいじゃん
なっちゃん超丈夫だから安心して!
ツンデレには思わず俺もきゅんきゅんしちゃう
※二人は友達です
澪の花嵐に合わせUC発動
RPG的キャラ達に先制させ
その隙に急接近
キャラの影から姿を現しロケランの【零距離射撃+フェイント】
栗花落・澪
【犬兎】で参加
うぅー、エモいってなにぃ…?
風の【全力魔法】を宿した★Venti Alaで移動しながら
着地のたび★花園+【破魔】を複数展開
★杖から【高速詠唱】+炎の【属性攻撃】
敵の足元の花を燃やしつつ顔面を狙い視界を奪う
ひゃっ!?
敵の攻撃は自主的に避ける前に庇われ
え、あ…うん
僕は、平気だけど…夏輝君は?
手を引かれ立ち上がりつつ
夏輝君が無事と知り安心すると同時
拗ねたように顔を背け
別に僕、助けてなんて頼んでないし
夏輝君が怪我する方が困るんだから…
無茶、しないでよね(ぼそっ/ツンデレ)
あれ?なんでバリア壊れ…まっまぁいいや!
今のうちに畳み掛けるよ!
【指定UC+誘惑催眠歌唱】による破魔の花嵐の斬撃で攻撃
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ラビットバニーのエモい基準は、どうやら他人と比べて圧倒的にガバッガバのようだ。それは見ていたらなんとなく想像できる。だがそこにはある問題があった。
「うぅー、エモいってなにぃ……?」
栗花落・澪(泡沫の花・f03165)はこてんと首をかしげる。そう、エモいとは、公用語ではないのだ……!
「知ってても使う機会無ぇしなー、エモい」
小林・夏輝(お調子者の珍獣男子・f12219)の言う通りである。意外と界隈では多用されているのかもしれないが、猟兵たちの会話にエモいという言葉が用いられることは、少なくとも彼らの周りでは無かった。いくら相手の基準が緩いといえど、エモいというのがそもそもどういうことなのか理解していなければ、バリアーを破ることなど出来はしないだろう。
「まぁ可憐さで言ったら俺の中では、技も存在も澪きゅん最強だけど?」
「……?」
話を聞いていなかった澪に、夏輝は何でもないと手を振る。
「何ゴチャってんのか知んねーけど、手加減するつもりねーし?」
展開されたバリアーが、蜃気楼のようにバニーの姿を歪めていく。その向こう側で、瞳が赤に染まっていくのを夏輝は確かに見た。相手の出方が分からない内は、身体を強化し対応力を上げる。それは確かに正しい判断だっただろう。だが猟兵たちにとって、この技は二回目だ。反応速度の限界もその目で見ている。
「遅ぇよッ!」
敵が動き出す前に飛び出したのは夏輝。手にした金属バットを変形させると、その砲身をバニーへと向けた。
「は?」
砲身、つまりそれは銃火器であるということ。拳銃など銃弾と比べ速度は劣るが、肩撃ち式の発射機から放たれるロケット弾は、小型のものでも圧倒的な破壊力を持つ。そう、その名は、ロケットランチャー。
バリアーが張ってある以上それでダメージを負うことはないだろうが、生物としての本能が反射的にロケット弾を避けた。しかしその先にも、更にその先にも次々とロケット弾は撃ち込まれる。装填というプロセスを簡略化しているのか、それとも装填そのものが必要ないのか、夏輝の手が休まることは無い。
「ウゼーっしょ、マジでっ!」
爆発の衝撃で吹き飛ぶ花々と爆煙が、徐々に視界を埋め尽くしていく。その中を駆けまわる夏輝の足音と声がやけにはっきりと響いた。視界を塞がれたバニーは音を頼るしかない。わざと足音を意識して走ったのはそのためだ。
翼の生えた靴で軽やかにステップを踏む僅かな足音。まるで踊るように駆ける澪の姿を隠すため。
「そこっ!」
奔る炎の矢が、空を切りバニーの足下を撃ち抜いた。花畑に燃え移った炎が、徐々に行動範囲を狭めていく。更に追撃の魔法が視界を奪い、夏輝との連携も相まってバニーを着実に追い詰めていく。
だが彼にはひとつ誤算があった。
「……見ぃつけた」
魔法によって煙を吹き飛ばしてしまった澪へ、赤い瞳がぎょろりと向いた。そこからの行動は早い。そもそも絶対無敵バリアーを展開している時点で攻撃を避けるという選択肢を選ぶ必要は無いのだ。真っすぐ、対象だけを目掛けて、ただ駆け抜ければいい。
「やば――」
「遅ぇって今更!!」
急迫するバニー。きゅっと瞼を閉じる瞬間見えたその拳は間もなくして澪へ――は届かなかった。いつまで経っても、しりもちをついたこと以外の衝撃が伝わってこない。
ゆっくりと目を開いた澪がまず見たものは、夏輝の大きな背中だった。
攻撃を受け止められたバニーが追撃を恐れて再び距離を取る。その間に夏輝は、後ろでしりもちをついていた澪へ手を伸ばした。
「大丈夫か、怪我は?」
「……え、あ……うん。僕は、平気だけど……夏輝君は?」
手を引かれながら、おそらく攻撃を受け止めていたであろう腕の部分から血が滲んでいるのを確認する。むしろあの攻撃を正面から受けて、血が滲む程度で済んでいる理由はよくわからなかったが、特に深刻なダメージを負っているようには見えない。
「あれれ、俺の心配してくれるなんて珍しいじゃん」
引っ張り上げた当の本人は、どこかわざとらしいほどに調子よく笑ってみせる。
「なっちゃん超丈夫だから安心して!」
その笑顔を見た澪は。
「別に僕、助けてなんて頼んでないし」
明らかに拗ねていた。ちょっと居心地悪そうにしているバニーを差し置いて、若干ショックを受けた様子の夏輝。口をへの字に結んだ澪は、やがて視線を背けたまま、自分の髪をいじりだした。
「夏輝君が怪我する方が困るんだから……無茶、しないでよね」
その様子を遠巻きに見ていたバニーは、戦慄した。これは。これは間違いない。エモいとかそういうレベルのものではない。エモみなんてモノを遥かに凌駕した、まさに。
「お、お尊み――」
聖なる輝き(バニー視点)によって、絶対無敵バリアーは浄化された。夏輝も若干浄化によるダメージを負っているように見えなくもないが、死にはしないので気にする必要は無いだろう。
「あれ? なんでバリア壊れ……まっまぁいいや!」
今がまさに攻撃のチャンス。これを逃すまいと発した歌声は、花畑の中から点々と花弁の刃を生み出していく。否、正確には生み出しているのではない。これまで澪が歩いた足跡すべてに、自らの力を宿した小さな花園を仕込んでおいたのだ。それらを一斉に歌によって操りだした。
バリアーが浄化されるほどの精神的衝撃を受けて動きを止めていたバニーは為す術もなく飲み込まれるかと思われたが、すぐに正気を取り戻すと、回避しようと動き出した。しかしそれを抑え込んだのは。
「マジこれなんだよ、ウザっ!」
わらわらと、一昔前のロールプレイングゲームに出てきそうなキャラクター達が、バニーを花嵐の中へ押し戻そうと押し寄せる。それ単体ではあまり戦闘力は無さそうだったが、数にモノを言わせた物量作戦が、本来の狙いから意識をそらす。やがて、その時が来た。
「何度だって言ってやるぜ――遅ぇよッ!!」
ゲームキャラクターに紛れて接近していた夏輝が、その波から飛び出すと、バニーがそれに反応しきる前にロケットランチャーを向けた。零距離であるにも関わらず、ためらいなく引き金を引く夏輝。召喚されたキャラクターたち諸共ロケット弾が吹き飛ばした。
上手く爆風を利用して距離を取った夏輝は、その煙と花嵐の中に、未だ立ち続けるバニーの姿を見た。
どうやら戦いはまだ、終わりそうにない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アリス・セカンドカラー
無敵バリアごと夜(わたし)の中へご招待☆満天の星空に浮かぶはスタールビーを思わせる赤い紅い朱い双子月。やがて星は流れ行く、一つ二つ時間と共に増えていき天が墜ちてくるかと錯覚するような流星雨へと。
この天体ショーで心揺れ動かなかったらどうにもならんわ。
さて、無事にバリア剥げたら念動力による催眠術と誘惑で心への盗み攻撃を行い全力で堕としにいくわよ☆ここにキマシタワーたてましょう♪ロケーションも雰囲気もバッチリ整えた確実に堕とす。
さぁ、夜に覆い、夜に融け、どこまでも深く深く夜に堕ちていきましょう?
禍神塚・鏡吾
技能:ハッキング、念動力、騙し討ち、オーラ防御
「西洋鏡の禍神塚鏡吾、推して参る」
複製した鏡を周囲に展開、攻撃ポイントを定めます
その後格闘戦を挑みますが、こっそり念動力で「電子の鏡界」を操作し、システム・フラワーズをハッキング
幹部怪人と正面からハッキング勝負をしても勝てませんが、おはなハッキングが「使われていない」今なら、花を足に纏わりつかせ、攻撃のスピードと威力を削ぐ程度はできるはず
途中からは防御に徹し、攻撃ポイントへ誘導
わざと頭に攻撃を掠らせ、顔から仮面を落とします
「私の美しい顔に傷をつけましたね?」
血を一筋流し、髪を掻き上げて、肩肘を張り腰を捻ったポーズを取ります
バリアが消えたら焼きます
セレヴィス・デュラクシード
■POW
「ボクにも、意地があるんだよね」
深呼吸、落ち着いて、静かに‥‥
ボクがするのは神楽舞、故郷の神社ではサボり気味だったけど
狐のお面を被って恭しく礼、扇の代わりに親指を曲げて他の指を伸ばして
誘う様に、魅せる様に、【誘惑】する様に
一歩、二歩、三歩、円を描く様に周って
深呼吸
【指定UC】使用、銀の狐耳が、追加の8尾が生える、広がる(瞳が碧化
お面の鈴を鳴らし、江戸打紐を、尻尾を揺らして、揺らして
飛び掛る
赤べこキャノンをスライディングで潜り、見切り身を捩り、ジャンプで飛び越え、靴底で受け蹴り上げて
狙うは心臓への掌底、そして顎への【2回攻撃】
首筋に牙を突き立ててでも必ず倒すんだよ!
今度はどうなったかなぁ
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花畑は何処までも続いていた。正確には、半分は鏡に映し出された反転世界ではあったが。
ばらばらと楕円形の西洋鏡を複製しながら、禍神塚・鏡吾(魔法の鏡・f04789)は白い仮面を被る。
「西洋鏡の禍神塚鏡吾、推して参る」
まっすぐに見据えた先に、その標的は居る。頭は大きな兎の被り物のようで、仮面と同じように表情は見えない。これまでの戦いで多少イラついているような素振りを見せていたバニーだが、果たしてどうなのか、それは変わらない表情から読み取ることは出来なかった。
「自己紹介とか余裕ありすぎっしょ」
バニーの周囲が歪む。何度目かのバリアーを展開したようだ。瞳の色は青ではなく赤、カンフーモードに移行しているのは間違いない。寿命を省みない、オブリビオンらしい戦い方といえば、その通りなのかもしれない。
「そもバリアーある限り無敵だし!」
蹴りだすように一歩踏み込んだバニーは、強化された脚力を駆使し、一気に鏡吾との距離を詰めようと迫る。だがそれは想定内の出来事。格闘戦の心得は一応程度にしかなかったが、バニーからの攻撃をいなし、反撃、と見せかけてフェイント、の振りをして距離を開ける。しかし再び距離を詰め、挑む振りをしてまた身を引く。あまり長くは続かないだろうが、鏡吾はただ時間が稼げればそれでよかった。もとよりバリアーのあるうちは攻撃など通用しないのだから。
「……?」
やがて鏡吾が、あまり近接格闘に明るくないと悟り始めた頃、バニーは異変に気付いた。
視界が暗い。まるで突然夜が訪れたかのように、辺り一面が闇に包まれていた。だがそこにあったのは闇だけではない、それを照らす光が、星が、地面を埋め尽くす花々のように空に溢れていた。
「ふふ、当店自慢の天体ショー、お一人様ご案内よ♪」
僅かに掛かっていた雲が晴れると、宝石のような紅い双月が姿を現す。鏡吾の複製した鏡を利用し、地面にも星空を映し出すと、そこはもう何処までも続く星の海。アリス・セカンドカラー(不可思議な腐海の笛吹きの魔少女・f05202)は不敵に笑った。その視線の先で、バニーの意識の中から姿を消した、彼女が立ち上がっていたから。
セレヴィス・デュラクシード(複製サレシ幻想ノ狐姫・f04842)の表情に迷いは無かった。貰った一撃は重かったが、いい目覚ましになったのだろう。
「あら、大丈夫なの?」
「ん……大丈夫。それに――」
真剣なまなざしは変わらず敵を捉え続けている。
「――ボクにも、意地があるんだよね」
親指を折り、四本の指をぴんと立てて広げる。これは意地だ。負けたままでは終われないという、ちっぽけで大きなプライドの問題。だがあくまで冷静に心を静める。身体は熱く、心はクールに。深呼吸をひとつ、狐巫女は星の海へ飛び出した。
両の手を扇に見立てて、舞をまう。それはかつて彼女の故郷で行われていた神楽舞。ゆったりとした優雅な舞にあわせるようにして、空に瞬く星が流れた。一歩、腕を振ってひとつ。二歩、扇を仰いでふたつ。三歩、弧を描いてみっつ。身を翻し、くるりと回ると、ついに星は雨のように降り注ぐ。上から、下から、光の奔流を受けて踊る姿は、湖面を舞う女神のようで。
「―――」
いつしか言葉も失って、バニーはその光景を見つめていた。今のこの感情を表す言葉が見つからないのだ。エモいなんて言葉が最早どうでもよくなるほど、ただそれに見蕩れていた。ひとつ誤算があったとすれば、あまりに美しく神秘的な光景に、逆に集中を乱すという目的を果たせなかったということだ。揺らいで消えかけたバリアーに気付き、バニーは我に返る。
「残念だけど、あーしの勝ちってことでさ」
赤い瞳が踊るセレヴィスに向いたそのとき、彼女は見た。
軌跡を描く碧色の双眸を。
「ッ!!」
反射的にバニーは武器を抜いて、引き金を引いた。感覚的には反射よりも早かったかも知れない。それでもその一撃は、本来セレヴィスのいるはずだった場所を通り過ぎて、鏡のスクリーンをひとつ、破壊しただけだった。
割れた鏡の破片が舞う。その部分だけ現実へと引き戻されたかのような光景。それはいい。それはいいのだが。
「どこに……ッ!」
セレヴィスの姿は無かった。すぐにバニーが視線を向けたのは、空。先の戦いで、セレヴィスが空中を跳び回ることが出来るのを、バニーは知っていたからだ。だがそこにも無い。姿を見失ったバニーの次の手は、足場を無くすことだった。場所が分からないのなら、足場を弄って、立てる場所を制限してしまえばいい。指先から、システムフラワーズを直接ハッキングする光線を出し、足場となる花畑を強制的に移動――させるはずが、反応が無い。それどころか、逆にバニー自身の足に絡みつき始める。
「そんなに焦ってどうしたのかしら」
にやにやとチェシャ猫のようにいやらしい笑いを浮かべるアリス。彼女こそが元凶か、そう判断を下そうとしたそのとき、アリスの背後に白い仮面が見えた。表情が見えないため正確なところは分からなかったが、その視線は足下に向いている気がした。瞬間バニーは悟る。仮面の主、鏡吾こそがその犯人だと。これまでの彼の行動が、このときのための時間稼ぎだったのだと。
一旦見失ったセレヴィスのことは後回しとし、先に叩かなければならないと、大きな砲門を鏡吾に向け、間髪いれずに引き金を引く。速度を重視した一撃だったが、複製された鏡によって弾道を逸らされ、周囲を取り巻くスクリーンをまたひとつ破壊した。
きらきらと光を反射しながら散る鏡の破片。そのひとつが、鏡吾の頬を掠めた。衝撃で仮面が落ち、掠めた頬に一筋の血が流れた。仮面を拾うことなく髪をかき上げる鏡吾。視線はバニーを捉えていた。ぐっと腰を捻り、肩肘を張って口を開く。
「――私の美しい顔に傷をつけましたね?」
ドドドド!!
という背景を設定して、いつの間にかバニーは超連写していた。鏡吾に向けてキャノンを構えていたと思ったら、いつの間にか写真を撮っていた。何を言っているのかわからねーと思うが、バニーも何をされたのかわからなかった。
「恐ろしいものの片鱗を味わったぜマジで……」
満足げに写真を保存しながら、携帯端末を仕舞いこむバニー。彼女の周囲に、歪みは確認できなかった。つまり。
「鏡は光を集め、光は熱を呼び、熱は刃となる」
その瞬間を待っていた鏡吾が、複製した鏡に光を集める。集中した光は熱気を呼び、やがて一斉に放出される。光は全て、一点を目指していた。その先には、足を絡まれたままのバニー。
「焼き切れなさい」
巨大な奔流がバニーを飲み込もうとした直前、すんでのところでシステムフラワーズの制御を取り戻した彼女は足元の地形を変え飛び退いた。
「あったんねーよ、そんなんマジ!」
表情は見えずとも、言葉に焦りが混じり始めていることを誰もが感じた。それを聞いたアリスは、更に笑みを深くした。
「そう、じゃあこれはどうかしら」
強化された恐るべき反応速度でアリスへ振り向くバニー。しかしその速さが仇となった。一瞬で視線を向けたその先で、アリスは何もしていなかったのだ。
じゃあ何故声を上げたのか。その理由に気付いたときには、バニーは既に地面に叩きつけられていた。
「待っていたよ、この時を!!」
九本の尾が、江戸打紐が、共にたなびき、壁色の流星が奔る。立ち上がるより先にその場を飛び退いたバニーに、セレヴィスは再び迫ると、心臓に向って掌底を一突き。離れる前に顎を左足で斜めに蹴り上げ、勢いを利用して軸足を入れ替えると、ぐるりと一回転、今度は右足の回し蹴りを顎に入れた。
よろよろと後退するバニーは、ノイズに表情を歪めるセレヴィスを睨み付ける。
「んだよ、今まで何処に……!」
「さあ、何処でしょうね」
応えたアリスは、指を鳴らす。すると帳のような闇が、セレヴィスの姿を覆い隠した。
「さ、わたしの出番をあげたんだから、これで貸しひとつね」
「うー……お手柔らかにお願いするんだよ」
「まだ油断をする段階ではありませんよ」
拾い上げた白い仮面を被る鏡吾の言う通り、まだバニーは倒れたわけではない。だが既に決着の時は近いのかもしれない。そんな予感をそれぞれは感じていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シュガー・ラビット
アドリブ歓迎UC使用
彼女には親近感と好奇心と嫉妬心(主に胸)を抱いています
(宣戦布告!!)
バニーちゃん。どちらが真のラビットにふさわしいか、ここで決着つけよう。覚悟してよねっ!
■行動
私は【キャロット☆ストライカー】に乗って軽快に登場っ☆
ラビットの誇りをかけてウサギらしく魂震えるくらい“可愛らしい”攻撃でバニーちゃんと真っ向勝負するよ!ラビットたるもの、にんじん推しであれ!
ということで追尾型の【にんじん☆ミサイル】(一斉発射)や【キャロット☆ストライカー】(吹き飛ばし、捨て身の一撃)を遠隔操作して攻撃したり
兎キマイラ自慢の身体能力(メルティ☆キャラメルで強化)と自慢の翼をうまく活かして戦うよ!
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めっちゃデカいキャロットが花畑を疾走していた。それだけを聞くと何事かと思うかもしれない。だが安心してほしい、これはバイクだ。ニンジンの形をしているので、少女のような見た目のシュガー・ラビット(白くて小さなふわふわ☘️・f02321)が跨っていても何ら問題も違和感もない。多少大人向けなアイドルのイメージビデオみたいな見た目にはなってしまうかもしれないが、その辺りはまあご愛嬌と言ったところで。
「どちらが真のラビットにふさわしいか、ここで決着つけよう」
びしっと人差し指を突き立てて、バニーへと迫るシュガー。
「覚悟してよねっ!」
「せめて胸じゃなくて顔を見ながら言えってマジ」
どうして猟兵はすぐ自分から地雷を踏み抜きに行くのだろうか。バニーは訝しんだ。
しかしシュガーも遊んでいるわけではない。すぐさま切り替えると、敵の様子をじっくり観察する。既にバリアーは張られているようで、ついでのように身体強化も済ませてある。そこまではずっと同じ戦法で来ているし、今更何かを変えるというのも考えづらい。相手の攻撃さえしのぎ切れば、バリアーの解除は難しくないはずだ。
「ラビットたるもの、にんじん推しであれ!」
気合を入れるように一言放つと、彼女はニンジンに跨ったままニンジンを展開し始めた。正確にはニンジン型のバイクに跨ったまま、ニンジン型の自動追尾ミサイルを展開し始めた。早速バニーはニンジンがゲシュタルト崩壊を起こした始めていたが、別段バニーの好物がニンジンではないといった覚えはない。だからといって好物ではないのだが。
ウサギであるからにニンジン推しだというのはバニーにも理解できた。しかし、だ。一度冷静になって考えてみよう。ファンシーな星を撒き散らしながら爆走するニンジンに跨り、キラキラ輝く自動追尾ニンジン弾頭を操りながら、ニンジンを推せと強要するウサギ。これは推す前にトラウマになってしまいそうだ。
「せめてもっとこう……あーーもう……なんだコレマジ……」
勘違いしないでいただきたいが、バニーは便利なツッコミ役ではない。
そんなうなだれる彼女の足を、何かがてしてしと叩いた。
「なー」
「うー」
「ぴよぴよ」
猫、ウサギ、ひよこ、と小動物が群れていた。どうでもいい話だが、バニーはこの時初めてウサギの鳴き声を聞いたという。
次の瞬間には、バニーはまとめて抱き上げていた。
「おーよちよち、どうちたんでちゅか~? 迷子になっちゃったんでちゅか~?」
シュガーはそれを聞いた瞬間引いた。バリアーが消失しているのは確認できたので、それはそれでよしとしよう。ここまで存在意義のない絶対無敵バリアーなど、そもそも存在する必要があったのかも疑問であるが、ただシュガーの狙いはそれではなかった。
「……?」
違和感を感じたバニーは、その正体を探ろうとして、あることに気付く。自身を強化していたはずのユーベルコードが解除されているのだ。
「は? 何で――」
顔を上げたバニーの視界に飛び込んできたものは、視界を覆いつくすほどのニンジンだった。その全てが、問答無用でバニーへと群れた。
「何でって、だって――」
ちょうど着弾したのか、ユーベルコードで生み出した小動物の群れを抱え上げると、そんなシュガーの背後でチープな爆発が連鎖した。
「――そういう、技だもの」
全て命中すると、相手のユーベルコードを封じる。普段はそう全てを命中させることのできる機会なんて訪れない。しかし今回は、バニーが自ら当たりに、というか寧ろ拾いに行っている。それによってバリアーともども全てを封じられたバニーは、ものも見事にニンジンの餌食になってしまったという訳だ。
煙が晴れる頃、そこには満身創痍のバニーの姿があった。
「クソ……ウサちゃん……もっと撫でたかった……」
許容の限界を超えたダメージを負ったバニーは、居合わせた全ての猟兵たちから思い思いのツッコミを入れられながら、空に解けるように消滅していった。終わってしまえば何というか、あっけないものだ。だが、ウサギ大戦はひとまずここに終結を迎えたが、まだ戦争が終わったという訳ではない。
キマイラフューチャーを救う戦いは、更に激化の一途を辿ろうとしていた――。
成功
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