バトルオブフラワーズ⑩~HeartShaking~
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「はいな、ちゅーわけで」
夕月・恋(ゲーマードール・f00771)は集めた猟兵の前、手をパンと一つ打って言葉を作る。
戦争やで戦争!
戦争はやばい。だって戦争だもの。国どころか世界を賭けて戦っているのだ、そりゃもうヤバくない? マジヤバくね?
「マジヤバイから説明聞いて!」
胸中で思った思考そのままに説明を始めた。
「まずは、みんなの尽力で妄想逞しいお猿さんは落ちたわけや。勢いのままにドカーンして、敵の首魁を討ち取りたい所なんやけど、まだ関門が残っとる」
それは、
「ラビットバニーや」
直訳するとうさぎ子うさぎだ。なんてセンスしてやがる、負けてられへんやんけ。
まあでも最近のヒーロー物でも名重ねはあったしトレンドばっちりという感じなのだろう。と、思いつつ。
「こいつは強力なオブリビオンやで。素の能力だけ見ても、今までの敵とは次元がちゃう。それに加えて、絶対無敵のバリアを持っとる」
力業では乗り越えられないモノだ、と、恋は続ける。
なにせ。
「なんせこれ、どんな攻撃も無効化してまう。自分の領域、それを何人も侵すことを許さん鉄壁や」
言ったもん勝ちだなぁ。
そんな能力だ。
しかし、強い力に代償は付き物で。
「弱点がある。このバリア、維持しとるんはラビットバニーの屈強な精神力なんやけど」
一息。
「エモにゲロ弱なんや」
言った。
エモ。最近出来た造語。由来は諸説あるが、特に、心に来るシーンや台詞、行動を見て、"揺らぐ"というイメージのモノ。
「んーまあ要はな? うわめっちゃかいらしいやん! みたいな、うひょイケメンきたー! とか。はーこの組み合わせエモエモのエモかよ保存したわ、的な」
SNSで拡散されそうな、なんか一万いいね付き添うな、そういう感じのものだ。
「それをみるとラビットバニーの精神は一瞬、または少しの間そっちに傾倒する。そうするとバリアはーー消える」
攻撃が届くのだ。
ただし、気をつけなければならない。
「ええか?」
前置きをして、一息。
猟兵の清聴を待って、
「バリアを無くして、ようやくスタート地点や。例えバリアが無かったとしても、さっきも言った通りに、ラビットバニーの戦闘能力は次元がちゃう」
油断は敗北の一歩。
十分な警戒と対策で事に当たってほしい。
そう締めて、恋はグリモアを取り出して。
「道を繋ぐで。ラビットバニーを見つけて、エモさの海に溺れさせたれ!」
世界を繋ぎ、花が咲き乱れるシステム・フラワーズの中へ送り届けた。
ぴょんぴょん跳び鯉丸
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ラビットバニーは必ず、猟兵に先制して『絶対無敵バリアを展開するユーベルコード(POW、SPD、WIZ)』を使ってきます。
絶対無敵バリアは本当に絶対無敵で、あらゆる攻撃を無効化しますが、「ラビットバニーがエモい物を目撃する」と、精神集中が乱れてバリアが消滅します。
ラビットバニーのエモい基準はかなりユルいので、バリアの解除は比較的容易と思われますが、バリアなしでも彼女は相当の実力者です。
====================
やったー戦争だぁああああ!
落ち着きましょう、まだボス戦です。
マジヤバくね?
というわけで今までと同じ、特殊能力への対抗策をした上で、敵の強さに負けない様にプレイングをする、いつもより少し頑張っちゃうシナリオです。
よろしくお願いします。
第1章 ボス戦
『カワイイ怪人『ラビットバニー』』
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POW : 赤べこキャノン
【絶対無敵バリア展開後、赤べこキャノン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : うさちゃんカンフー
【絶対無敵バリア展開後、兎面の目が光る】事で【うさちゃんカンフーモード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : おはなハッキング
【絶対無敵バリア展開後、両手の指先】から【システム・フラワーズ制御ビーム】を放ち、【花の足場を自在に操作する事】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:和狸56
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
エモいって言われてもなかなか難しいけど、まあ何とかやってみようか。
奇麗な物とかを見せればいいんだよね?
ならここは花畑なんだし、こういうのはどうかな。
斧を思い切り振り回して衝撃波を生み出し、咲いている花を吹き飛ばして奇麗な花吹雪を作り出すよ。
そして花吹雪は、敵の赤べこキャノンから自分の姿を隠す目くらましにもなる。
できるだけ身を低くして目立たないよう忍び足で接近したら、【崩天地顎】で掴んで床にどーんと叩きつけるよ。
床ドンって奴だっけ?なんか違う気もするけど、まあたぶん似たようなもんでしょ。
「お、来たな来たな~!」
それは、仁王立ちだった。
カワイイ怪人、ラビットバニー、その存在だ。
「……エモかー」
ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)は、それを見て呟く。ラビットバニーの体には見える現在、包むような楕円の膜がある。
あれが絶対無敵のバリアーなのだろう。そして情報によれば、エモいものをみるとそれは揺らぐらしい。
「まあ、何とかやってみようか。要は綺麗な物を見せればいいんだよねぇ?」
ザッと踏み出した足に、花弁の感触。見渡せばそれは散らばっていて、
「なら、こういうの、どうかなーー!」
両手に握る巨斧を、頭の上で一度、回して振る。
それからその行き先を足元へ、花弁の大地を掠める様に全力で弾く。
「これは……!」
それは、花吹雪と言うには余りに荒々しく、しかし密度の濃い、嵐だ。
「え、やば、チョー綺麗じゃん……」
ラビットバニーは、景色に魅蕩れた。
故に、そのバリアは一瞬の解消を良しとし、
「もらった!」
低姿勢から突進を行ったペトニアロトゥシカの接近を許してしまう。
行く。
猩々の腕を振りかぶり、敵の体を掴みにかかる。
ーー獲った!
確信を得て、しかし。
「あーしは負けないし……!」
掴む寸前の腕、その手首をラビットバニーは蹴り上げ、力の方向を逸らした。
「まだだよ!」
腕はダメだ。だけど、体は前へ出ている。
だから彼女は花地を蹴って前進し、体当たりでの一撃を選んだ。
「うわわ痛いし!」
絡み合い、もつれるように二人は倒れこむ。
「え」
「お」
そうして、目と鼻の先にお互いの顔が合って、
「エモ恥ずかしいし!!」
照れ隠し、のような赤べこキャノンの連射が、ペトニアロトゥシカに叩き込まれた。
成功
🔵🔵🔴
ペイン・フィン
……エモい、というのは、よく分からないけど、全力で行くよ
回避系及び情報収集系技能をフルで使用
敵の攻撃を予測、回避を行うよ
一瞬でも、時間が稼げれば、それで良い
稼いだ時間でコードを発動
スタンガン以外の装備を外して、自分も高速戦闘モードに入り、再度回避戦闘
……自分は、拷問具、指潰しのヤドリガミ
拷問に使われ、自分でも、苦しんできた
器物から、人の身になっても、悪夢を見た
でも、もう、大丈夫
仲間が、友人が、そして、大切な人が、そばに居る
悪夢は、もう見ない
自分は、今……。幸せ、だよ
もし敵のバリアが壊れたら、すかさず攻撃
最も、回避中心の戦闘は、変えないけどね
……帰る場所がある。だから、無理はしない、よ
ペイン・フィン(“指潰し”のヤドリガミ・f04450)は最速を選んだ。
ペトニアロトゥシカとのやり取りを見て、ラビットバニーの動きはほんの少しだが見えた気がする。
だから行くのだ。
手に持つ装備は、スタンガン。
「ーーは? なにアンタ、あーしとやろうっての?」
突き立て、流し込む電流は命に関わる電圧を持つ。
バリアが無く、相手がラビットバニーでなければ、だが。
「ま、いいけど。遊んだげるわ、暇潰しに」
「ーーッ」
攻撃は届かず、いや、むしろ敵は強化を得た。
「うさちゃんモード……!」
速度だ。動きの初速が、爆発的に上がっている。
先程の比で無い。
「っ、く……!」
対抗してペインも、スタンガン以外の拷問器具を離し、加速を得る。
が。
「ははっとろいとろい! ハエがとまるっての!」
ラビットバニーの乱打に、反応が追い付かない。
当然だ。
敵は上げたのは速度ではない、反応速度だ。ペインの取る行動への反応、効果的な攻撃の方法を選択する、思考の向上。
「つぁ……」
動きを予測し、回避する方向へ、攻撃が来る。それを防ぎつつ、しかし間隙の無い次撃を再予測し、回避を選んで追撃が叩き込まれる。
「……なんで」
それでも、彼は動き続けた。
「なんで諦めないわけ? 何したって無駄だし、さっさと負けちゃえば?」
回し蹴りを屈み、問われた声にペインは見上げて、言う。
「……自分は、拷問具。指潰しのヤドリガミ……道具だ」
ずいぶんと苦しんだと、そう思う。
使われていた時もそうだし、人の身になった事で、眠れば悪夢を見る事もあった。
「じゃあやっぱりここで、あーしにさっさとやられちゃいなよ!」
ラビットバニーの拳が、ペインの胸を捉えた。
息が詰まる。体が折れそうになる。だが、拳がめり込むより早く、上体を後ろへ逃がして衝撃を殺す事は出来た。
「ダメだよ」
倒れる訳にはいかない。やられるわけには。
「理由が出来たから」
仲間が、友人が、そしてなによりも大切な人がいるから。
だから。
「悪夢はもうない。自分は今、幸せだからーー!」
「は、エモ……」
突き出したスタンガンは、消えたバリアーを越えて、ラビットバニーへと。
「うわあぶなっ」
届かなかった。
苦戦
🔵🔴🔴
宮落・ライア
エモイとか何だとか意味分からないけれど、とにかく邪魔だから斬り開かせてもらうよ。
PL的には分かってるけど、PC的にはどうでもいいとにかくぶった切る精神でバリアに攻撃しまくる。不可能を可能にしてやるってくらい本気で切りかかる。
で、
自身が瀕死。傍から見てももう立ち上がれないという状態で
【未到再起】が自動発動。
限界を超えて再び立ち上がる。
肉体的にも精神的にもリミッターが外れた身体能力で
驚異的な速度で再接近し切り捨てる。
「エモとか何とか、わたしにも意味は分からない。けれど」
前の二人と同じだと、宮落・ライア(ノゾム者・f05053)は自覚する。
理解が出来ない、と。
けれど。
「とにかく、邪魔なんだ。だからーー斬り開かせてもらうよ」
考えるな、感じろ。パワーで解決出来るなら、ただひたすら突っ走るだけだ。
「は……!」
息を短く吐き、止め、左手に持った骨剣を叩きつけに行く。
「無駄無駄、無駄だっつーの!」
バリアだ。今まで何度も猟兵の攻撃を阻んだ、絶対に破れない壁が攻撃を受け止め、その内側から赤べこを模した砲口がライアに向けられる。
「く、そ……!」
一瞬の間。砲撃のチャージで出来た一瞬を使って、ライアは骨剣の腹を前に。
「ーー!」
防御と同時に砲撃が来た。
圧倒的な火力だ。無理繰り作った盾など無かった様に衝撃が襲い、少女を飲み込む。
「で、も、まだーーまだうごけ、る……!」
左は、ダメだ。痛みも無く感覚もない。
「お」
だから右の手で刀を逆手に抜き、その動きのままに横薙ぎ。バリアへと叩きつける。
「うおおお!」
「だから、無駄だって……その必死さはちょっとキュンとくるかもなんだけどさぁ!」
結果は同じだ。そして今度は、盾に出来る力も無い。
キャノンを正面から浴び、肌の焼け焦げる感触にライアは吹き飛ぶ。
(あ……やば)
脚から力が抜けるのを感じる。いや、全身からだ。頭の重さがそのまま、仰向けに体を落とさせる。
ーー倒れる。
「……倒れてる暇なんてっ、ない!」
だかライアは踏み留まった。
ぶっ飛んだ意識を無理矢理引き戻し、抜けた力を底から溢れさせ、二つの刃を握り締める。
戦える。
「まだ、行ける……!」
「えぇ……嘘……健気すぎ……」
折れない心意気が、ラビットバニーの精神を揺るがした。
彼女風に言うなら、そう、
「エモ……!」
そういうことだ。
故に、ライアは強力になって戻ってきた底力を振り絞り、最速で駆け、
「しまっ」
「でりゃあああ!」
二刀を腹へぶちこんだ。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィルジニア・ビアジャンティ
エモい、ですか。わたくしくらいの歳になると若者言葉はさっぱり……いえ、ここはわたくしが若かった時代の若者言葉でお相手するべきでしょう。
あかべこキャノンを墓護りで防ぎつつ【盾受け】
『ャナ₌" ξ σ カゝ,ζ,"レ」⁼し σ 干ョ→カゝゎレヽ<ナょレヽ?
(やだそのかぶりものチョーかわいくない?)
⁼し U カゝU 乙=れカゝ"ヱ⁼L?ヱ⁼Lっ乙ゃ⊃ゐナ₌レヽナょ!?
(もしかしてこれがエモ?エモってやつみたいな!?)』
などと言って相手の動揺を誘い、バリアが解けたらすかさず熊狩りで閃光弾を発射、隙を作ったうえで絶命赤糸を使って、その長い耳をふんづかまえてやりましょう。
……エモい、ですかー……。
「若者言葉、でしょうねぇ……」
ヴィルジニア・ビアジャンティ(要塞椅子・f08243)には昨今の若者事情はわからない。
歳だ。
三十路を越えた時分、輝かしい10代の関心や感情は、理解の及ばない領域だった。
「いえ」
諦めるには早い、と、女は思った。
かつて自分にも、多感な時期があったのだ。
……そう、ここはわたくしが若かった時代、その若者言葉を使うのです。
「いいですか!」
「うわびっくりしたし」
息を整える。
バリアがあるからか、ラビットバニーはまず様子見だ。
念のため、防御にリソースを割きつつ、液体金属を前面に出して、
『ャナ₌" ξ σ カゝ,ζ,"レ」⁼し σ 干ョ→カゝゎレヽ<ナょレヽ?』
「ーーん???」
文字だ。液面を平らな薄い壁として、そこに言葉が浮かび上がる。
「……え、なに、え……?」
俗に言うギャル文字というやつだが、ラビットバニーにその知識は無い。
訳にすると、やだそのかぶりものチョーかわいくない? だ。
『ー⊂″⊇レニぅっτゑ@?ゎナニ<ιもレまι─!』
「えぇ……やば……」
どこにうってるの? わたくしもほしー!
と言っているが、やはり通じない。
「……エモとは難しい」
若さとは、流行りとは。ヴィルジニアにはエモが分からない。
『⁼し U カゝU 乙=れカゝ"ヱ⁼L?ヱ⁼Lっ乙ゃ⊃ゐナ₌レヽナょ……?』
「だからあーしには読めない……! でもその必死さはちょっとキュンと来るかも……」
「なるほどこれがエモ……!」
全く分からないがバリアの緩みはわかった。だから、ヴィルジニアはランチャーを即座に構え、トリガーを引き、一発、放物線を描いて発射する。
「そこです!」
それは、閃光弾だ。
ラビットバニーの目の前へ飛んだそれは、内部から炸裂して目映い光を空間に満たす。
「うわっ」
目眩ましだ。
被り物の視界に効果があるかは疑問だったが、うめきとよろめきを見れば、その程は図れる。
「その長い耳、ふん捕まえます……!」
チャンスだ。
ランチャーを手放し、ミサイル用の銃器を肩に構えて、UDCの腕を射出した。
内部で熱を加えられたそれは赤熱の赤を宿して飛び、ラビットバニーに直撃すればそれは爆散する。
「ーー赤べこちゃん!」
だが、バニーはそれを許さなかった。
視界は戻らないが、ヴィルジニアの位置はわかっている。だから、そこから何か来るならばと、キャノンの設定を連射に傾倒。
「飛ばして!」
密度の濃い、壁のような弾幕で、それを防ぎきった。
苦戦
🔵🔴🔴
春霞・遙
エモいとは違うかもしれませんが、私が展示会で見てすごいと思ったものを見せてあげようかと思います。
というか、折り紙の達人である職場の後輩から珍しい折り紙を教わってから行きます。
手始めに折り紙で花やハートや風船等を作って【仕掛け折り紙】で増やして目くらましとします。
それを利用しつつラビットバニーの攻撃を回避しながら、今度はリアルなうさぎやベコやペガサスや竜を折って相手の周囲へ飛ばします。
たかが折り紙と侮るなかれ。どれも切れ目も入れず一枚の折り紙で出来てるんですよ!
私が感動した折り紙の技術、どうです?
そんな折り紙の弾幕に紛れて拳銃で「スナイプ」。
【紙片鋭刃】も使えたなら作品で攻撃も出来たのですけど。
「超目が痛いし……!」
閃光が引いた後も、ラビットバニーの視界は眩んでいた。
被りの頭を振って、何度か目を瞬かせ、白い光景に色を取り戻す。
「……ん?」
すると、目の前に、ハートがあった。
(んんん?)
赤いハート。それはナゼか角が立っていて、丸みが少ない。
いや、よく見れば、それが正方形の紙を折って作られた、所謂折り紙なのだと分かる。
「ふっ」
出所は、春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)だ。
色紙を折って、一つ出来た穴に息を吹き掛けて膨らませ、それは花や風船、ハートとなって。
「くるり、くるり、さあ舞って」
景色を占めた。
色とりどりのそれらは、元はただの紙だ。
そう思うと、技術がすごい。感心するほどにだ。
「はーエモ……しまった!」
ラビットバニーのバリアはそれで消える。
「で、でもでも油断しないし!」
バリアが維持出来ないなら、もう気にしない。肩幅に開いた足を片方、一歩下げて構える。
「カンフーモードだし……!」
行った。
足場を蹴り、遙へ向かう。
目の前にちらつく折り紙はエモいが、今は邪魔なのだと払いつつ、しかしちらりと見て、そうして気付く。
……種類増えてる!
「どうです、凄いでしょう」
折り紙で、限りなくリアルなうさぎの形がある。
バリエーションとしてはベコやペガサス、果ては鱗を表した竜もだ。
「マジやば……」
芸術だと、そう思った。
一枚の紙を使い、切れ目も使わず作り上げるその技術を。
目で追ってしまったバニーは、遙から意識を逸らし、そして。
「ーー!」
弾丸が撃ち込まれた。
虚を衝いた一撃だ。反応出来るわけがない。
「な……!」
普通ならば。
しかし敵は、普通じゃなかった。
胸に向かって飛んだ弾を、バニーはしゃがんで回避する。耳を抉ったそれに気を向けず、握った拳を軽く引いて、遙の懐へ。
「セイッ!」
腹へ拳を押し当て、力を込めて、爆発するような衝撃で吹き飛ばす。
「危なかった……さすがのあーしもエモ紙は予想外……ん?」
と、一息を吐いた時だ。
目の前に、折り紙が舞っている事に、改めて気付いた。
それは、先程までの作りとは違う単純な紙飛行機で、ふわりと浮かんで飛び、バニーの脇腹を掠める。
「いつっ!」
それは、敵の体を切り裂く、遙のユーベルコードだ。
芸術の中に紛れ込ませた、目立たない一発が、バニーへ一紙報いた瞬間だった。
成功
🔵🔵🔴
アウル・トールフォレスト
前のおねーさんから、エモの意味は教えて貰ったよ!
わたしのエモ、見ててね!
手でハートを作ってぇ…
あなたのハートに!もえ!もえ!キューン!
…どうかな?心にグッときた?(純真無垢な瞳で尋ねる)
あ…そうだ、戦わなくっちゃダメなんだよね
残念…今度こそ、おともだちになりたいと思っていたのに
でも仕方ないよね
【破光・森羅龍輝】…は、最後のとっておき用
最初のうちは、苔や蔓を足場に広げていって、おねーさんを捕まえるよ
痛いのは…我慢する。兎に角蔓を苔を広げ続けるの
捕まえられたなら、それでいい。出来なくても足場を無くす…そうすればきっと、他の足場へ大きく飛び移ろうとする時が来るはず
止めはその時に。わたしの渾身だよ!
「前のおねーさんから、エモの意味は教えて貰ったよ!」
事前の準備は完璧だ。アウル・トールフォレスト(高き森の怪物・f16860)は思い、ラビットバニーの前に立った。
息を整えつつ、無駄な力を抜いて、発育の良い長身からは想像の出来ない無邪気な笑みを浮かべる。
「く、あーしのエモに弱いとこむちゃくちゃ突いてくんじゃん……! やられる前に、やるっての!」
バリアは全開、カンフーモードを継続に。
アウルへ向かってバニーは駆けた。
「ーー両手を、会わせて」
しかし少女は動じない。
両手を捻り、手のひらを上にして指同士を当てる様に合流させる。
そして、それを左胸に向かわせて、一息。
「あなたのハートに! もえ! もえ! キューン!」
「巨女のあどけなさエモ……!」
効いた。
バリアは砕け、しかしバニーの動き自体は止まらない。
行く。
「戦わなくっちゃ、ダメなんだよね。今度こそ、おともだちになりたいと思ってたのに、残念……」
心から悲しそうにアウルは言って、それから、手を伸ばす。
「捕まえて……!」
体表に生息する、謎に根付いた蔦を使役した。同時に、脚を伝って苔を花びらの大地に繁殖させる。
「小細工とか、みえみえだっての!」
対したバニーが待つしたのは、踏み込みだ。
足元に広がる苔を、その衝撃で吹き飛ばし、重心を固定しての回し蹴りを放つ。
狙いは、蔦の破壊だ。鋭い一蹴で散らす。
「まだまだ、兎に角、広げて!」
「だから無駄ー!」
アウルから伸びる蔦と苔、それを蹂躙しながら距離をどんどん詰めるバニー。
その間が、終にはゼロになる。
「これで、終わり!」
瞬間叩き込んだのは、バニーの蹴り上げだ。
下から上への単純で最速の一撃。それが、腕を盾にしたアウルをぶっとばす。
「それから止め、だー!」
空へ上がる自分を追って、飛んだバニーを見下ろした少女は、
「もう、怒った、んだから!」
両手を上へ。手で作った空間にマナを全部ぶちこんで、
「わたしの、渾身!」
「ぬぉお!?」
迸る光の槍となったそれを叩き付けた。
成功
🔵🔵🔴
雪華・グレイシア
でかっ
……じゃなかった、こほん
エモ、ね
キミの心に響くかは分からないけれど、ボクはボクらしく
怪盗らしく行かせてもらおうか
予告する……キミのお宝、頂くよ
レディの足元へと【予告状】を【投擲】
記された標的は赤べこキャノン
予告状に視線が向いた隙に行動開始だ
これだけ御誂え向きの場所なんだ、【地形の利用】をしない手はないよね
【ワイヤーガン】から射出したワイヤーで辺りの花弁を撒き散らさせて、少しでも目晦まし代わりにするよ
あの被り物ならかなり視界は制限されているはず、側面へ回り込んでから【ダッシュ】で飛び込む
飛び込んだら射出したワイヤーを巻きつけて華麗に標的を盗みたいところっ
【アドリブ、他の方との絡みは歓迎】
●
揺れてる。
飛んだり、跳ねたり、蹴ったり、殴ったり。
驚いたり怒ったり笑ったり。
挙動の度に、揺れていた。
「でかっ」
●
「さて」
マスクを顔に、冷ややかな視線をバニーへと。雪華・グレイシア(アイシングファントムドール・f02682)は始動する。
「エモ、ね。キミの心に響くかは分からないけれど、ボクはボクらしく、怪盗の流儀として行かせてもらおうか」
「怪盗……?」
聞き返しにはハットを目深に直し、口許を笑みに歪ませて、
「そう、怪盗さ」
答えて紙をスルーした。
バリアにぶつからない、その手前に落ちる様に加減した物だ。
「予告する」
それは、
「キミのお宝、頂くよーー!」
予告状だ。
ラビットバニーの宝、と言うよりは持ち物と言った方が正しいか、その紙面には赤ベコキャノンを頂戴する旨が載っている。
「別に宝じゃないけど……ベコちゃんは渡さなーー!?」
視線を予告状からグレイシアへ。
上げた瞬間、バニーの横をワイヤーが掠めて行く。
それも、わざわざバリアの範囲ギリギリ外を、だ。
「は? どこ狙ってんの? 口だけ泥棒さんかっての!」
「それはどうかな。口だけかどうかは、今にわかるさ、っと!」
強がり、ハッタリだ。
バニーはそう判断し、ワイヤーを引き戻す動きを見せる怪盗へ赤ベコキャノンを向ける。
「え?」
疑問は、自分の口から漏れた物だ。
理由は、突然視界を奪われたから。その理由を、彼女は即座に理解した。
「ワイヤー……!」
後ろの花びらの大地に着弾したワイヤーの先が、引き戻される動きに拐われ、自分のバリアにぶつかって目の前に散ったのだ。
「小細工じゃん!」
そう、細かい仕掛けだ。思えば予告状から始まって、視線を幾度も誘導されていた。
動きを、魅せられていた。
これが、怪盗のやり方と、そういうことなのだろう。
「悔しいけどエモいじゃん怪盗……!」
散らばる邪魔な花びらを手で払い、開けた前面、グレイシアの姿は既に無い。
「ーー!」
横か……!
気配がする。自分へ肉薄しようとする、敵の気配だ。だからバニーは視線より先に赤ベコキャノンを向け、追いかける様に顔を動かして、見た。
「予告したろ」
怪盗が跳んでいた。
キャノンの先へ、爪先を乗せる様に着地を目指し、それを実行してキャノンを蹴りさらに跳ぶ。
「うぉ……!」
バランスが崩れ、そこを狙ってワイヤーが赤ベコに絡み付く。
緩んだ所を引っ張られ、キャノンは宙を舞って。
「お宝、確かに頂いたよ。そして、これで終わりだ」
発射の待機状態だったそれをキャッチしたグレイシアによって、バニーへと砲火が落ちた。
「くっそ、ぅ……エモが……全部悪い……」
重なったダメージに、キャノンの直撃は耐えられず、バニーはそのまま霧散するように消えた。
大成功
🔵🔵🔵