7
バトルオブフラワーズ⑩〜花園の決戦~

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ #ラビットバニー

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#キマイラフューチャー
🔒
#戦争
🔒
#バトルオブフラワーズ
🔒
#ラビットバニー


0




●心の融点
「お前ら、急ぎの仕事だ。悪いが口頭の説明だけで進めさせてもらう」

 浅沼・灯人(ささくれ・f00902)はその場にいた猟兵達へと声を掛け、速やかに今回の依頼についてを話し始める。

「『バトルオブフラワーズ』は知ってるな。OK、それさえ知ってりゃ問題ねぇよ。結論から言うと新しい戦場だ」

 多くの猟兵の活躍により制圧の進む戦場。システムフラワーズ内部への行軍も順調に進み、マニアック怪人『エイプモンキー』が倒されたという報が届いたのもつい先程の話ではある。が、道が拓けたという事は新たな強敵の登場を示していた。
 次なる強敵、カワイイ怪人『ラビットバニー』は特殊なユーベルコード『絶対無敵バリア』を発動してくる。その名の通り如何なる攻撃も通すことのない堅牢なバリアに守られているため、ただ普通に殴って倒す、などという事は出来ない。

「が、弱点は既に露呈している。やつは――エモいものに弱い」

 エモい。
 思わず復唱した猟兵達に、灯人は静かに頷き眼鏡を光らせた。

「そうだ。エモいものだ。とにかく、えーっと、なんだ。そういう感じの行動とかをとってくれたら集中が乱れてバリア展開に回してる力が削がれるんだと」

 つまり、その隙に攻撃しろという事だ。
 エモいと言っても相手の判定は非常にゆるがばい。たいていの事は彼女のエモ判定によってエモいと認定されるため攻撃すること自体は簡単だ。
 が、相手も相当の猛者。接近するにしても、離れて好機を狙うにしても、敵の戦闘能力は馬鹿にならない。
 それでも、完全無敵の敵に対して攻撃の隙を生み出せるのならば十分な勝機はある。

「俺からの提案だが、いっそ突き刺さるほどのエモさを見せつけたなら反撃の隙も奪えるんじゃねぇかな」

 即ち、まずエモさで殺せと。
 ただでさえストライクゾーンが広い彼女の、ど真ん中を狙って行けというのが男の提案だ。一体どの程度のものが該当するかは不明だが、身動きが取れなくなるほどの精神攻撃を行えば、攻撃が通りやすくなるという考えは間違いではないだろう。試す価値はあるかもしれない、頭の片隅に提案を挟み込み猟兵達は男を見た。
 ひとりひとりの視線に応え、灯人もまた強く見つめ返す。

「よし、準備はいいな。行ってこい!!」

 短くも明快な喝を叩き込み、灯人は猟兵達へとグリモアを差し出す。白く柔いそれに触れた猟兵は瞬く間もなく花溢れる戦場へと降り立った。


日照
 ごきげんよう、日照です。
 8作目は短期エモーショナル決戦です。簡潔に説明させていただきます。

●敵について
 ラビットバニーは必ず、猟兵に先制して『絶対無敵バリアを展開するユーベルコード(POW、SPD、WIZ)』を使ってきます。
 絶対無敵バリアは本当に絶対無敵で、あらゆる攻撃を無効化しますが、「ラビットバニーがエモい物を目撃する」と、精神集中が乱れてバリアが消滅します。
 ラビットバニーのエモい基準はかなりユルいので、バリアの解除は比較的容易と思われますが、バリアなしでも彼女は相当の実力者です。

●プレイングの採用について
 上記の通り、バニーさんは非常に判定がゆるいようですが、せっかくならばエモのオーバーキルを叩き込みたいと思います。
 今回採用させていただくのは「日照の中のバニーさんが膝から崩れて嗚咽を漏らし泣き出すほどのエモいプレイング」とさせていただきます。
 あなたのエモが、何より鋭いナイフとなるのです。
 勿論、攻撃についても対策を。オープニングでも触れていますが、エモだけでは倒せません。よりエモく攻撃してください。

 では、良き猟兵ライフを。
 皆様のプレイング、お待ちしております!
119




第1章 ボス戦 『カワイイ怪人『ラビットバニー』』

POW   :    赤べこキャノン
【絶対無敵バリア展開後、赤べこキャノン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    うさちゃんカンフー
【絶対無敵バリア展開後、兎面の目が光る】事で【うさちゃんカンフーモード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    おはなハッキング
【絶対無敵バリア展開後、両手の指先】から【システム・フラワーズ制御ビーム】を放ち、【花の足場を自在に操作する事】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:和狸56

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※受付は5月13日(月)朝8時半より。皆様のエモを一晩寝かせてお待ちくださいませ※
●スタイリッシュエモーショナルバトルステージ
「来たねオジャマ虫ども!!モンキーを倒したことだけは褒めたげるわ!!」

 春夏秋冬関係なく咲き乱れる花々が、女の一歩で踏み散らされる。
 堂々たる仁王立ちで猟兵達を迎えたのはうさぎの被り物をした一人の女だ。ファンシーな被り物とは裏腹に、目のやり場に困るセクシーダイナマイトボディーをこれでもかと見せつけてくる。傍らには何故だか赤べこがくっついた奇怪な砲塔。正確には紫色をしているのだが細かいところを気にしている余裕など猟兵達にはない。

「言っとくけど、あーたらに勝ち目なんてないし!あーしのバリアは絶対無敵!あーしのカンフーは完全無欠!ようするにー……えーっと、なんだっけ……あ!そうそう!あーしは難攻不落の門番ってわけ!!」

 なんだかやや頭が足りてない台詞を吐くも、その実力は本物だ。全身に滾らせるオーラ、この可視化された闘気が件のバリアだというのだろうか。一部の隙もない敵を前に猟兵達は各々武器を握り締める。
 その様子を見ることなく、余裕さえも見せるラビットバニーは赤べこキャノン(紫)を軽々と担ぎ上げ、猟兵達へと砲口を向けた。

「いっくよー!あーたら!!別に仲良くなかったけど一応仲間だったしエモいあれこれめっちゃ教えてくれた恩はあるからあーしがモンキーの仇を討ーつ!!」

 咆哮と共に、轟音。砲弾は猟兵たち全員へと瞬く間に放たれた。
兎乃・零時
アドリブ歓迎
エモってなんだろ…
いや、ともかく俺様の全力、出しきりゃいいんだ!

…良いぜ、やってやんよ畜生! パルも、準備良いな!!

闘うのは怖いけど
護りたい子のいる世界を護るため
そいつにカッコいい所を見せるため

恐怖に震えながらも【勇気・覚悟・気合】を抱く姿が、あった



・紙兎
【オーラ防御・拠点防御】で俺様達の防御を
兎乃を【誘導弾】として扱う事で兎乃の動きを加速して
カンフーに対抗させる

【属性攻撃・スナイパー・援護射撃】で攻撃!

・兎乃
【全力魔法】(ぽい魔力の固まりビーム)で攻撃

【ダッシュ・逃げ足】で回避

ボロボロになろうとも
ラビットバニーの元へ紙兎と共に近づく
そして至近距離でバリアが消滅したタイミングでUC



●躊躇いを消す光
 ラビットバニーの赤べこキャノンが轟音を吐き出して間もなく、猟兵達のいたその場所には踏み荒らされた花の残骸だけが残っていた。少し離れた場所からは墨色の煙と焼け焦げた臭いが漂っている。そう、彼らは超高火力の一撃を前に五体満足を保っていた。砲口の向きから攻撃を予測し回避した者、飛び退き直撃は免れたものの爆風により別の足場に吹き飛ばされた者、ユーベルコードを使用して身体強化し弾丸を弾き飛ばした者……各々が瞬時に己の最大出力を持って行動を起こしたのだ。
 その内、兎乃・零時(大きな帽子に夢抱え、目指すは《最強/最高》魔術師!・f00283)は爆風で吹き飛ばされた者に分類された。ラビットバニーの放つ強者の闘気に気圧されながらも砲弾をダッシュで回避した零時ではあったが、運がいいのか悪いのか弾き飛ばされた砲弾がすぐ近くに着弾。盛大に吹き飛ばされながらも紙兎の救援もありどうにか別の足場に着地したのだった。

「ぅぅ、いってぇ……!」

 服の裾を焦げ付かせながら、爆風でずれてしまった帽子を被り直す。焦げた衣服の匂いも爆発沙汰も魔術実験の失敗のおかげで慣れていたが、やはり痛いものは痛い。ぐらつく頭を押さえて敵の姿を遠くに見つける。
 そもそも零時には事前に教わったラビットバニーの弱点――エモいものについて全く理解できてなかった。恐らくはエモの語源が何かも知らないのではなかろうか。エモってなんだろ……と停止しかけた思考を頬を叩いてどうにか呼び戻した。

「いや、ともかく俺様の全力、出しきりゃいいんだ!」

 方向性が定められ、零時はふん!と立ち上がる。吹き飛ばされた際の衝撃でまだ四肢に痺れは残っているが戦えないことはない。紙兎も少々焦げ目がついていたようだが、この程度の爆発では燃え尽きない。零時の援護をせんと気合十分に跳ねていた。

「っしゃあ!!良いぜ、やってやんよ畜生!!パルも、準備良いな!!」
「いいねぇ、そういう青臭い感じもちょーっとエモいよ?」

 が、体勢が整いきれていない零時を目ざとく見つければラビットバニーは急接近し、跳躍。回転を加えての強烈な蹴撃を零時へとお見舞いする。咄嗟の事ではあったが零時は間一髪で回避。が、続く二撃目の蹴りが紙兎の展開した防御のオーラ越しに胴を凪げば隣の足場まで真っ直ぐ叩きつけられた。
 喉の入り口まで胃液がせり上がって来たのを感じる。口の中は切ってしまったか、血の味が広がって来て気色が悪い。
 呻く零時のすぐそばに着地すれば、ゆっくりとラビットバニーは近付いてくる。追撃をするような動作はなく、完全に零時の事を敵とは見なしていない。まるでお前などいつでも殺せるのだと言わんばかりの余裕で、被り物の下で嘲笑した。

「でもでもぉ、さっきも言ったよーにあーしは無敵だよん?あーたみたいな弱っちそうなのはあーしに一撃だって入れられないし!」

 鍛えられながらも女性らしい柔らかさの保たれた片脚をこれ見よがしに上げてふらふらり。どうするー?どうするー?とくすくす笑い声をもらいながら挑発気味に揺らしてみせる。内心、零時は恐怖を感じていた。紙兎がいなければこの腹はどうなっていただろうか。苦しいし、痛いし、このまま意識を手放してしまえば楽になれるのだろうかなどと弱さが心を侵食していく。
 だが、少年は立ち上がる。

「闘うのは怖いけど、俺だって男なんだ!怖いからって逃げてらんねぇよ!」
「うっ」

 小さい呻き声、心と共に揺らめくバリア。それに気付いていないが、燃える闘志の赴く儘に口を滑らせていく零時は無意識にラビットバニーを追い詰めていく。強敵を前に膝が笑っている、だからといって背を向けられない。少年は恐れながらも前を向く。勇気を胸に敵を睨んで肺の中の空気全部を声に変換して叫ぶ。

「護りたい子のいる世界を護るため、そいつにカッコいい所を見せるため、俺はこんなとこで負けらんねぇんだ!!」
「ぐ、ぐはああああああっ!!!」

 少年の熱き魂と眩き魔砲を前に、乙女らしからぬ叫び声をあげて吹き飛ばされるラビットバニー。王道少年漫画的光景を前にバリアも秒で溶け落ちる。バリアの解除を視認すれば零時と紙兎は足場を跳ねた。ラビットバニーの至近まで迫れば、玉枝の杖の先端を彼女へと向ける。

「今のはただのビームだ!本気の一撃ってのはこう撃つんだぜ!」

 紙兎が蓄えていた魔力を零時へと返送。同時に周囲のマナを瞬時に変換して増幅すると、魔力に満ちた長い髪は海よりも空よりも青く煌き、零時の眼差しにもまた藍玉の眩さが宿る。少年の周囲を魔力が文字通りに渦巻き、青く、深く、鮮やかに。
 零時自身の、膨大な魔力だけではない。まさに全身全霊、最大出力の魔力は瞳から杖先の宝珠へと移り、映り、激しく輝いた。

「避けられるもんなら……避けてみやがれぇぇ!!」

 例えるのならば、陽光さえも照り返す朝の海。勇敢の意を持つ水宝玉はありったけの光を収束し、放出。被り物の奥で見開いたラビットバニーの目が視界を覆い尽くすほどの青を捉え、全力全開の零時の本気がラビットバニーの心までも呑み込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

支倉・新兵
※アドリブ連携歓迎

俺には正直エモはよく分からないし狙撃しか能はない
…だから俺に『エモ』が示せるというなら、それは取繕った付焼刃の言葉や行動じゃなく培った技術、矜持…狙撃という行為の中にある、筈
…今回は俺の狙撃を信じてくれる相方…仁科君もいる
彼に応える為にも…銃弾が届くと信じて、引鉄を引こう

SPD
仁科(f14065)君と連携
彼がバニーに肉薄、「俺ごと撃て」と動きを止めた所を俺が狙撃

俺ごと撃て? 此の儘だと相方にも当たる?
「…問題ない、撃ち抜く」
…【跳弾狙撃】
直接でなく跳弾(足場や花弁での跳弾が無理なら自前のドローンを介する)を利用し、仁科君に当てる事無くバニーだけを正確に、スマートに撃ち抜こうか


仁科・恭介
※アドリブ、連携歓迎
支倉さん(f14461)と

支倉さんが後ろに居たら…絶対に負ける気がしない
何故か分からないが…そう思う
多少の傷なら細胞の活性化で何とかなる
怖いがやれる
後ろに信頼しているスナイパーが居るのだから

POW
【携帯食料】を【大食い】で食べ全身の細胞を活性化
UC対象をバニーに定める
テンションから先制攻撃がどちらをターゲットにしているかを判断
放たれた赤べこキャノンを【ダッシュ】で近づき斬る
精度を上げるため【学習力】で最短距離を即座に摸索
間に合わなそうなら【吸血】本能も使ってやる
「ここから先は侵入不可だ」

その上で【ダッシュ】で近づき動きを制限するよう組み付く
「いけるか。邪魔なら私ごと撃て!」



●真剣に笑え
 初撃を完璧に避け切ったのは二人の男。
片方は幼げな顔立ちの狙撃兵。形や大きさは異なると言え銃器の扱いには慣れていた、故にラビットバニーが仕掛けてきた攻撃の軌道や着弾位置を予測する事ができた。もう片方は紅い目をした観察者。周囲の足場の内、着弾地点から限りなく離れ、且つラビットバニーの接近を容易に許さないであろう足場を即時に探し出し、アイコンタクトひとつで後方退避。
 支倉・新兵(狙撃猟兵・f14461)と仁科・恭介(観察する人・f14065)、二人は互いの長所を活かし合い、ラビットバニーから距離を取っていた。

「……ふぅ、どうにか喰らわずに済んだか。仁科君、そっちは?」
「大丈夫。煤ひとつついてないさ」

 互いの被害状況を短く報告し合い、新兵と恭介は戦況と戦場の把握に努める。
 ラビットバニーはどうやら自分達ではなく、遠く吹き飛ばされた少年に照準を定めたようだ。彼へと接近していくのを遠目に、二人はバニーから視線をそらさず行動のすり合わせを行う。方針は決まっている。故に恭介は既に一つ目の干し肉を噛み千切り、口に放り込んでいた。

「距離は取れたけど、相手の事だ。俺が狙撃手と分かれば直ぐに潰しに来るだろう。仁科君、前は頼めるかい?」
「勿論。そのために一緒に来たんだし、何より私は支倉さんの腕を信じているから」

 新兵はバニーの監視を一時だけ恭介に任せて、愛銃へ今回の狙撃に必要な装備を追加していく。必要な距離は稼いでもらえるからと、延長用のアウターバレルではなくサプレッサーのみにした。よく動く標的が相手であることも考えると銃架も必要はないだろう。
 恭介も咀嚼の合間に言葉を返し、動向を見守る。どうやら少年の予想外の反撃にラビットバニーは狼狽えているようだ。先程の動きを見る限りあともう二つは食べ溜めておきたい。取り付けたスコープ越しにラビットバニーを狙う新兵を横目で見て、追加を口にねじ込んだ。あの強敵を前に、足が竦まないだろうか。一瞬過った不安は早々に取り払われる。

(支倉さんが後ろに居たら……絶対に負ける気がしない。何故か分からないが、そう思う)

 恭介は数個目の干し肉を素早く咀嚼し喰い切ると、少年の全力魔法を喰らいながらも耐え切ったラビットバニーへと接近した。共鳴(ハウリング・レスポンス)、喰らった肉の総量と己が指定した対象の感情の高揚、それらの総量と質を己に呼応させ戦力の増強を図るユーベルコードだ。指定対象であるラビットバニーは絶賛エモ死にかけてることもあり、精神の昂りは最高潮。全身の細胞がそれを恭介に伝えていた。
 これだけの力、これだけの速度、視界もクリアで、肩で切る風も心地よい。何より、後ろに信頼しているスナイパーが居る。臆する要素はひとつとしてない。
 
「次は私の相手をお願いしようか」
「……へぇ、あーた結構やりそうじゃん」

 バリアを張り直そうとするより早く一撃、大振りながらに痛烈な裏拳を叩き込む。咄嗟に防御はしたものの強化された恭介の一撃は腕一本では防ぎ切れない。軽く吹き飛ばされた細身の四肢が花畑の上を横切り、あと少しで背中から落下というところで体勢を整え着地。高いヒールで花を踏みにじり、女は兎面の目を光らせて軽やかに恭介へと跳んだ。
 バリアは不完全ながらに貼り直され、精神的な揺らぎから回復できないまま恭介へと襲い掛かる。繰り出された右脚の一閃を恭介が避ければ、軌道を変えて垂直に踵を落す。それさえも寸でのところで回避されれば落とした足に力を籠め、右を軸足に今度は左で薙ぐ。怒涛の攻撃をかすり傷程度の負傷で抑えながら、恭介は改めて彼女の強さに敬意を表した。
 彼女が冷静に、ただ淡々と、心一つ動かさず敵を屠るためにここにいたのならとうに倒されていた。あくまでエモ――なんらかの言動に対して感情を昂らせやすい彼女だからこそ、ここまでついてこられているのかもしれない。頬を斬る女の拳は鋭く、恭介の無意識下で零れた微かな笑み。ラビットバニーの心はその一瞬にさえも簡単に揺らいだ。
 が、彼の後方で距離を測る青年の姿に気付いたことで保たれていた拮抗は崩れる。その手には銃、十二分の警戒が必要であることは直ぐ分かった。だからこそラビットバニーは冷静さを取り戻し、標的を恭介から新兵に。その微かな揺らぎから恭介は彼女の心変わりを察知した。

「おっと、ここから先は侵入不可だ」
「ウザッ!なら別のやり方があるよーんだ!!」

 行く手を遮られればラビットバニーは素早く赤べこキャノンを構える。それを察したうえで恭介は敢えて行動を変えた。弾丸を斬り落とすことから、より確実な的を作るための方法。
 即ち――背後からの羽交い締めである。

「支倉さん!!今だ!!邪魔なら私ごと撃ってくれ!!」
「ちょ、ちょっとぉ!そんな命を投げ捨てるようなやりかたであーしを倒す気!?」
「なぁに、最悪骸の海までデートするだけだ!」

 爽やかな口ぶりでラビットバニーの胸と心とバリアが揺らぐ。なにちょっと、そういうのズルくない?敵を倒すために自分の命さえも犠牲にして仲間に未来を託すシチュエモくない?と小声早口で呟く。剥がれ始めたバリアを見て、新兵はスコープを覗いた。

(俺には正直エモはよく分からないし狙撃しか能はない)

 新兵の手に握られる狙撃ライフル。整った呼吸の中で静かに構え、引き金に指をかける。ごく自然に、ナイフとフォークを使うのと同等に手に馴染んだ武器はすんなりと新兵が望むべき場所へと照準を合わせる。

(だから俺に『エモ』が示せるというなら、それは取繕った付焼刃の言葉や行動じゃなく培った技術、矜持……狙撃という行為の中にある)

 筈だ。とどこか自信なく。しかし、彼の覗いた先には今もラビットバニーを引き留め、此方に近づけさせないようにと身体を張っている恭介の姿がある。己を信頼し、己の腕を信頼してくれる彼の心は、エモという理外の感覚への不安を埋めてくれた。ならば、やるべきことは等に定まっている。
 相方に応えるべく、その名に似合わぬ沈着さで新兵は引き金を引いた。

「……問題ない、撃ち抜く」

 発射。音なき銃声は一発のみ。
 しかしその弾丸の行く先にラビットバニーの姿も、ましてや彼女の動きを止めさせた恭介など素通りする。弾丸は崩れる瓦礫の破片を置き去りに彼らの周囲を、足場の一部を削り取りながら標的へと空を裂き駆けてゆく。
 ラビットバニーも恭介も弾丸が何処からやって来るか、それどころか既に弾が放たれた事実にさえも気付いていない。
 跳弾による狙撃。戦場を隈なく把握し、障害物のすべてを利用した弾丸は消えたバリアの先、虚ろな目をしたうさぎの被り物へ吸い込まれ、大きなへこみを作った。

「エモっ……」

 結果として仲間を傷つけることなく、的確な狙撃を可能としたその技術は、何より互いを信頼し合ったうえでの戦闘に、ラビットバニーは崩れ落ちた。
 着弾と、恭介の無事を確認して新兵は胸を撫で下ろす。今回もこれは使わずに済んだな。と、抜かないままの拳銃へと一度視線を落としてから、此方へとやってくる恭介の軽く上げた右手に、同じ高さに構えた右手で応えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

渦雷・ユキテル
砲弾はクロックアップ・スピードで反応速度を上げ回避、
その勢いのままクランケヴァッフェでバニーを狙います
あぁ全然効かない。一度UCを解除
それでも距離を取り、笑って何度も銃を撃ち
零れる言葉

だって自分はそういうふうに造られたんです
戦うために壊すために。戦闘テストに投薬、手術、潰れれば廃棄
生きたいように生きて、なりたいものになりたかったんですけど
でも、ダメですね
男の身体。傷跡。指先から漏れる電流
己が身を抱いて力なく笑い

こーんな感じです?
バリアを壊せたら電撃の【属性攻撃】【マヒ攻撃】で隙を作りたいです
再びUC発動。Cry&92に口付け【クイックドロウ】【零距離射撃】で
弾丸をお見舞いします

※アドリブ等歓迎



●君の名前で終止符
 パチン。
 スナップひとつで渦雷・ユキテル(さいわい・f16385)は人間の枠を平然と超える。花畑を真横に横切る雷霆は砲弾を避け切り最奥へ。ここから相手の様子を伺いつつラビットバニーの死角へと溶け、不意を打つつもりではあったが、隙はあれども他の猟兵達の邪魔になる。魔砲の巻き沿いや狙撃の射程範囲に入り込まないよう気を配った結果、ユキテルは攻撃のタイミングを見失ってしまっていた。
 点滴台の槍を握り締め、一度施した身体強化を解除し命を温存する。見渡す戦場には四季関係なく様々に咲き誇る花達。戦闘ではなくピクニックで来られたのならさぞ楽しかっただろうに。などと息をついていると、眼前で跳ね回っていた弾丸がうさぎの頭部へと直撃する。
 ああ、やっとか、と立ち上がって一回大きく伸び。羽交い締めしていた一人が彼女から離れたのを確認してからユキテルはもう一度スナップし、軽やかに花の舞台へと降り立った。背後に迫り大きく振りかぶった点滴台――ブラッディ&ブランディで横一閃。しかし、側頭部へと叩きこもうとしたそれは寸前で察知されて回避される。

「うっわあっぶな!バリアなかったからマジ危ないし!」

 被り物の目が輝いて、返す拳はクリーンヒット。いともたやすく吹き飛んだユキテルの身体は舞う花弁の中を跳ねて飛ぶ。
 打ち付けられた花の中、四肢を投げ出したユキテルは咳きこみながらもクロックアップ・スピードの解除は忘れなかった。これ以上の負荷は死に直結する――否、既に死は眼前に迫っていた。影を落としてくる兎の被り物が、塗装されただけで光の差しこまない目で自分を見下しているというのに、指一本動かすこともできない。

「でもまー、あーしのがやっぱり強いねー」
「……っふふ」
「何。何がおかしいの?それともおかしくなった?」

 ま、どっちでもいっか。と女が言い捨てる。零れた笑みの理由など別段聞く気はない。先程から痛手を喰らい続けていることもあり、ラビットバニーには余裕がなくなり始めていた。弱者を嘲るような声色に相反して、心はこの敵へ止めを刺さんと拳を握っている。バリアもどうにか張り直し、あとは真っ直ぐと、眼前の乙女へ振り下ろすだけでいい。それで死ななければ至近距離での砲撃で確実に仕留めればいい。そう考える頭はあった。

「そう……ですね。全然効かない。戦う事しか能がないのに、寿命を削ってこんなに頑張って、それで届かないなら――結局、廃棄される運命だったんですよ」

 自嘲気味に吐き捨てて、ユキテルは目を閉じた。これでもう、終わりなんだと。諦めがついたような、何処か安心したような表情でラビットバニーの拳が下ろされるのを静かに待つ。
 が、拳の代わりに振り下ろされたのは何でか震えた声だった。

「待って、え、何。廃棄とかなにがあったのあーた」
「なんですか。いいんですよ一思いにやっちゃってくれて。所詮自分は造られた存在ですから。役立たずにはこういう日が来ることは覚悟してましたし」
「いや、その、ほらー、あれ?冥土の土産に教えていきなってー?ほら、続き続き!で、で、何なの造られた存在とかさ」

 ユキテルのすぐ横にしゃがみ込み、両手で頬杖を突いたラビットバニー。やや演技し過ぎたかと一抹の不安はあったユキテルだが、見事エモに喰い付いたこの強敵をここぞとばかりに弱らせるべく演技に力を入れる。そう、ユキテルの過去は、語るだけでラビットバニーを苦しめる蛇の拘束だ。

「戦うために壊すために。戦闘テストに投薬、手術、潰れれば廃棄」
「うっ」
「生きたいように生きて、なりたいものになりたかったんですけど」
「うぇっ」
「――でも、ダメですね。こんな傷だらけの身体、人間の形なのに、人間じゃないみたいな力。あたし、なれなかったんだ……」
「ヴぁっ……」

 ラビットバニー、ぼろ泣きである。語彙力もバリアも崩壊済み、ついでに涙腺も決壊したようだ。
 決して、ユキテルは嘘を言っていない。己に起きたありのままの過去を、やや感情をこめて語っているだけに過ぎない。勿論すべてを語っているわけではない。過剰ダメージになり過ぎる箇所――もとい、自分だけの秘め事としておきたい箇所を除いて丁寧に解説していた。己の身を抱いて切なげに視線を斜め下へと落とした瞬間にラビットバニーのエモメーターは限界値へ。最早兎とも人とも例えられないあれな声をあげ、何故か被り物の目から流れている涙を拭っている。

「うっ、つら……そんな自由のない世界で物のように扱われて来たとかマジエモ……てかよく生き延びたね……」
「はい……なんやかんやあって研究所からは逃げ出せたけど……けど、あたしはもう普通の女の子になれない……」
「うわあああ!!そんなことないしユッキー!!ユッキーはマジエモいけど普通の女の子だからぁ!!今度レディースデーに映画見に行ってインスタ映えするパフェとかパンケーキとか食べに行こー!!ね!ね!!」
「ほんとに……?バニーちゃん、そんなに優しくしてくれるなんて……」

 乙女と乙女の間に生まれる、確かな絆。人はそれを友情と――

「なーんて、ね」

 呼べなかった。
 手を握り合った瞬間、ばぢぃ!と弾ける音が聞こえたかと思えばラビットバニーがその場に倒れ伏す。

「しび、しびゃびゃびゃ、ちょ、ユッキー、今、いまの」
「あ、話したコトは嘘じゃないですよ。だからほら、こんな感じ?」

 にこーっと悪気の欠片もない笑顔を見せたユキテルは指先に電気を走らせる。指と指の間に生まれた蒼白の電流はどんな痴漢も変態も一撃で彼岸へ渡る驚異の威力。ね、普通ではないでしょう?と言ってるがそういう事を聞きたいのではないのだとラビットバニーはぴくりとだけ動く。

「でもほら、自分猟兵ですし、バニーちゃん怪人ですから。その辺はお仕事なので怨みっこなしってことでお願いしますね」

 Cry&92へと口付ければユキテルは無情に銃口をラビットバニーへと向ける。心のどこかで、どこか別の場所で出会えてたら仲良くなれたかもしれませんねなどと思いながら、しかし決して躊躇はなく引き金を引く。

「じゃーね、バニーちゃん」
「あっでも今の仕草エモ……」

 ラビットバニーの言葉を遮る銃声。弾丸は両の手足を的確に撃ち抜いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朧・紅
朧のみで行動

エモだかなんだか知らんが強ェ奴は好きだぜ
俺と殺し愛しようぜェ?

当たるのは想定済み【第六感】で「致命傷にならぬよう」ギロチン刃で【武器受け】しつつ攻撃を見極め標準定まらぬよう躱しながら肉薄
そのままじゃ持たねェだろうからな
傷は【血糸】で血を止め応急処置
まだ遊べる

ウインクすりゃ一瞬ぐらいバリア解けるかねェ?
ギロチン刃を投げつけ目くらまし足元へスライディング
そのまま組み伏し覆いかぶさるように床ドン

よォ、愛してるぜェ?

恋人に贈るようにやさしく
狂気に溢れた嗤いと共にエモをプレゼント

血糸で止めていた傷口を開きあふれる鮮血が…
今度は無数の血刃と化しラビットバニーを切り刻む


連携不可
アドリブ大歓迎



●傷つけて、愛して
 鈍い音だ。金属同士が擦れ合い、斬りつけ合い、削られる。歯の痛くなる音が刹那に重なり交わり続ける。
 真っ向からぶつけたギロチンの刃は砲弾の前に砕け散りながら、二枚目、三枚目と重ねたそれらが速度を削ぐ。四枚目が砲弾につけた傷に微か、食い込んだところで力いっぱいにロープを繰り軌道変更。砲弾は彼女から遠く離れた箇所で爆散した。
 ギリギリのところで直撃、致命傷は避けたが攻撃の余波は十二分に朧・紅(朧と紅・f01176)の四肢にダメージを与えている。砕けたギロチンの刃は柔らかな少女の肌に幾重もの傷を作り、破れた衣服の隙間からは裂かれて割れた肉の赤が覗く。

「――っくしょお、思ってたより傷が増えちまったな」

 深く切り裂かれた腕の傷を色を薄めた血の糸で縫合する少女の言葉は荒い。今、この場にいるのは平常の大人しい少女・紅ではなく、戦闘狂の朧だ。アメシストの瞳も強者への情熱に熱されてシトリンに変化している。
 最初の標的が自分でない事には少々の不満はあれども、相手の動きをじっくりと見る時間が取れた事は朧にとっては都合がよかったかもしれない。縫合の痛みに耐えながらも、合間を縫ってラビットバニーの戦い方を研究し始める。
 あのふざけた被り物の女は見た目によらず動きはいい。身体の使い方ひとつとっても無駄がない、というのに突然動きが止まったり鈍ったりしては反撃を喰らっている。事前に聞いた情報によれば「エモいもの」に弱いのだとかなんだとか。

(エモだかなんだか知らんがよぉ、強ェ奴は好きだぜ)

 頬の傷を手の甲で拭い、掠れた血を舐める。甘さに残る鉄の苦みが気分を高揚させてくれた。ああ、なんも問題ねェじゃん。朧はロープの先の刃を踏み砕き、複製しておいた新たな刃へ取り換える。その間目当ての女はというと一人の乙女を前に地に伏せっている。目を離した隙にまたエモいだとか言って隙を突かれたのだろう。お陰様で傷は総て縫い終わり、刃は鋭く研ぎ澄まされた。朧は嬉々として戦列に加わり、四肢を穿たれた痛みに耐えながら立ち上がるラビットバニーへと接近する。

「なァ、俺とも遊んでくれよ」

 殺(あい)し合おうと嗤う朧は強くロープを引き、ギロチンの刃をふらつくラビットバニーの頸へ。身体を仰け反らせ間一髪で回避したラビットバニーは体勢を整えようとするも既に朧はロープを強く引き、刃を素早く手元へ戻す。

「遊ぶってわりに物騒なモノ振り回してるけど!!?」
「お遊戯には小道具が必要だろォ?てめぇのそれと一緒だ」

 ちろりと見た先に転がっているのは赤べこキャノン。本来ならばその銃口を朧へと向けるはずなのだが他の猟兵達との戦闘により最早握る事すらままならない重傷状態。故に、素手。両手首の、足首の傷がひどく痛むが拳を握る。脚に力を籠める。
 相手は負傷しているからと言って、朧も手加減などしない。これは殺し合い、殺し愛。生き残るために懸命に立ち上がり、殺すために凶器を振るう。互いの実力が拮抗していれば盛り上がり、相手が強ければ強いほど燃え上がるものだ。悔しいことに、これだけの傷を負わせて漸く二人は対等になった。
 朧はスカートがめくれ上がる事など考えもせず豪快に蹴りを放つ。それを捌き、ラビットバニーがお返しと言わんばかりの裏拳をお見舞いしようとすれば、ロープを巧みに繰りギロチンの刃で防ぐ。刃に亀裂が走るのを見て被り物の下で女が嗤う。が、刃で身を守っているはずの朧の姿は視界内にない。その時には既に防いだ刃を、それから伸びたロープを手放して朧は低く屈んでいた。武器も放り投げて跳び付いた朧の全体重が、不安定なラビットバニーの両脚から使命を奪い、身体は重力に逆らえないまま花の褥へと埋もれて背中から落ちる。
 後頭部を強打し、痛みでぐらつく視界の中で、ラビットバニーは見た。

「よォ」

 睦言の前に恋人へ囁くような甘い声色、やんわりと細められた蠱惑的な黄金色は月に似た輝きで兎の心を狂わせる。
 両腕は檻のように彼女を捕え、少女の形の影をラビットバニーへと落としていた。

「――愛してるぜェ?」
「は、はぅーーーーん!!!!」

 たとえ相手が幼げな少女であろうと、いや、寧ろ幼げな少女が見せるからこそ威力の上がった床ドン告白はラビットバニーのハートをぶち貫いた。あまりのときめきに被り物の目がハートになったような気がするほどにはめろめろである。
 しかし、朧が捧ぐのはあまりにも乱暴な愛情。
 縫合を解いた朧の身体からごぽりと血が湧き出した。両脚から這いずる赤い蛇はラビットバニーを大地へと縛り付け、両腕から伸びた赤い糸は幾重にも空へと昇りゆく。腕から伸びる血糸の先には――先んじて複製していた無数の断頭刃。

「てめぇは強かったよ。こんなボロボロじゃなきゃ俺のが負けてただろうが――これで終わりだ。しっかり看取ってやるからよォ……」

 ふらりと、その名と同じ虚ろさで朧が立ち上がる。一歩、二歩とラビットバニーから離れていくが、その目は真っ直ぐと射貫くように彼女を見つめている。そこに嘲るような笑みはない。ただ冷たく、刃の鋭利さで獲物を見下ろす処刑人の眼差しがあった。
 ゆっくり、片腕をあげる。その腕が真っ直ぐに空へと向けられて、

「血に、躍りな」

 言の葉と共に振り下ろされると糸を切り落とす。空に縫い留められていた断頭刃は降り注ぎ、身動きの取れなくなったラビットバニーへと降下する。
 最早、言葉を返すこともできない。己の最期を自覚してラビットバニーは静かに唇を閉じ、痛みが、感覚が、四肢が消えていくのをひとり受け入れた。

(エモい、強敵だった……悔しいけどあーしの敗けね……)

 それでも、彼女の心は晴れやかに澄んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​


●きみに幸あれ
 兎は花と消え、戦場に静寂が訪れる。
 確かに強敵ではあったがどこか愛嬌のある不思議な女は猟兵達のエモの前に満足そうに骸の海へと還っていった。
 さらば、ラビットバニー。きみの豊満な四肢と強靭なカンフーを忘れない。
 ありがとう、ラビットバニー。エモって言葉の拡大解釈方法を教えてくれて。
 そしておやすみ、ラビットバニー。出来る事なら次はお約束よろしく、ピンチの時に颯爽と味方になってくれるエモい再登場を待っている。
 思うことは多々あれど、戦場を制圧した猟兵達は次なる戦地へと駆けていった。

 花の中にうさぎの被り物が一つ。置き去りにされたそれは舞い跳ぶ花びらの中に崩れて塵となった。

最終結果:成功

完成日:2019年05月28日


挿絵イラスト