バトルオブフラワーズ⑩〜感情の揺さぶり手
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広大な空間が、上下を塞がれた位置にあった。空間を構成する要素は一つ。花弁だ。
咲き乱れる花々は宙のいたるところで舞っており、それだけでは足りないというかのように、下方ではそれらが敷き詰められ、足場となっていた。
舞い散る花弁と花の床。それが、システム・フラワーズの内部の様子だった。
広大な空間にも、やはり終端はある。花の足場が、ある地点に収束するように繋がっているのだ。その地点の上にあるのは一つの影だ。
「…………なんで、モンキーやられてっし……?」
咲き乱れる花々の空間を首を傾げながら転々としているその影は、人型で、頭部が大きなフォルムをしていた。
「はっ……! 弱気になっちゃダメだし! あーしの“絶対無敵バリア”に太刀打ちできるやつなんているわけないし!!
――まあエモいの見て心がグラッときたら、バリアもホニャッてなるけどまぁ心配ないし……!」
怪人軍団幹部ラビットバニーが、そこにいるのだ。
●
猟兵たちの拠点、グリモアベースに一つの声が聞こえる。
「皆さん、怪人軍団幹部、ラビットバニーの位置を予知できましたわっ」
ベースに響くのは、グリモア猟兵であるフォルティナ・シエロによるものだ。
「現場である世界はキマイラフューチャー。その“内部”、システム・フラワーズですわ!
猟兵の皆さんには、当該オブリビオンを撃破してもらいたいんですの」
身振り手振りを交えながら、彼女は集まった猟兵たちに言葉を送る。
「現場の現状を説明しますわ。システム・フラワーズ内部は花が舞い、敷き詰められた花弁が足場となった空間ですの。
ラビットバニーが存在する限りは、全ての“花の足場”がラビットバニーに繋がる上、その先に進む道は出現しませんわ」
つまりどういうことか。
「接敵は不可避であり必須と、そういうわけですわね」
そして、と言葉は続く。
「ラビットバニーの能力について、説明しますわ。ラビットバニーは、必ず先制で、『絶対無敵バリア』を有したユーベルコードを放ってきますの……!」
フォルティナは眉を立て猟兵を見回す。
「――私、大真面目ですのよ? でもまぁ、そのため、こちらのありとあらゆる攻撃が一切効かず、先制の一撃を加えてくるわけですわね……」
しかし、と指を一本上げる。
「手はありますわ……!」
それは何か。
「このバリアは、ラビットバニーが“エモい”ものを目撃すると一時的に解除されるようですの……!」
しばらく無言で固まり、一つ頷く。
「――私、大真面目ですのよ? ともあれ、どうやら敵が“エモい”と感じる基準はかなりユルいようですわ。
かわいさ、男らしさ、おもしろさ、血だらけで立ち上がる様子、突然のパンチラ、イケメンの壁ドン、水を吐き出すフグ……、
ようするに『SNSではやりそうなやつ』はだいたいエモいと感じ、それを目撃するとバリアが解除されてしまいますの!! ――ええ、私、大真面目ですのよ?」
ああ、それと、と言葉を繋げる。
「敵の攻撃はキャノンによる遠距離攻撃や、接近戦上等なカンフーモード、そもそも足場となる“花の床”を操作してこちらの身動きをとれなくするなど、普通に強力ですわ。――ふざけているようで敵も真面目と、そういうわけですわね」
手から、光を生み出す。
オレンジ色の光はグリモアだ。
「事件の現場近くまではグリモア猟兵である私の能力で、テレポートし、皆さんを召喚しますわ」
猟兵たち一人ひとりの顔を確認しながら、フォルティナは言葉を続ける。
「そこから先は危険が予想される場所ですの。何があってもおかしく無い場、そのような意識で用心してくださいまし」
そう言って全員の顔を見渡すと、一転、フォルティナは目じりを下げ、口角を上げた。
「でもまー、皆さんならできますの! 私はそう信じていますわー!」
シミレ
シミレと申します。TW6から初めてマスターをします。
今OPで12作目です。戦争時の敵幹部戦は初めてです。
不慣れなところもあると思いますが、よろしくお願いいたします。
●目的
オブリビオン、『カワイイ怪人『ラビットバニー』』の撃破。
●説明
ラビットバニーは必ず、猟兵に先制して『絶対無敵バリアを展開するユーベルコード(POW、SPD、WIZ)』を使ってきます。
絶対無敵バリアは本当に絶対無敵で、あらゆる攻撃を無効化しますが、「ラビットバニーがエモい物を目撃する」と、精神集中が乱れてバリアが消滅します。
ラビットバニーのエモい基準はかなりユルいので、バリアの解除は比較的容易と思われますが、バリアなしでも彼女は相当の実力者です。
●他
皆さんの活発な相談やプレイングを待ってます!!(←毎回これ言ってますが、私からは相談見れないです。ですので、なおのこと好き勝手に相談してください)
第1章 ボス戦
『カワイイ怪人『ラビットバニー』』
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POW : 赤べこキャノン
【絶対無敵バリア展開後、赤べこキャノン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : うさちゃんカンフー
【絶対無敵バリア展開後、兎面の目が光る】事で【うさちゃんカンフーモード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : おはなハッキング
【絶対無敵バリア展開後、両手の指先】から【システム・フラワーズ制御ビーム】を放ち、【花の足場を自在に操作する事】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:和狸56
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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周囲全てが花弁。猟兵達が駆け付けた先はやはりそんな場所だった。
「あちゃー。捕まった感じ?」
前方、その位置にいるオブリビオンはその巨大な被り物の後方に手を当て、振り向く。
「まぁ、あーしの能力だと捕まってもモーマンタイなんだけどね?」
肩に担いでいた牛砲を降ろし、構える。
「――んじゃぁイッチョ、バトろうぜー猟兵~」
その言葉を皮切りに、戦闘は開始された。
ゼット・ドラグ
「エモいって何だ・・・俺には分からない・・・」
特殊な弱点に困惑する戦闘狂。
困惑しているためか赤べこキャノンを無抵抗で受ける。
死ぬ直前にリヴァイヴモードを使用し復活。赤べこキャノンで死にきれないようならば自分の竜を殺す百の刃の黒剣形態で自分自身を貫く。
血だらけで復活し立ち上がる男らしさ。無敵バリアとは別のベクトルで無敵のUC等々でバリアの突破を狙う。
「俺は何度やられても絶対に諦めない!必ずお前のバリアを突破してやるぜ!」
更にリヴァイヴモードは自身の攻撃力を一時的に上げる効果がある。
これで逆転を狙うぜ!
「さあ、俺の攻撃だ、行くぜ!」
黒剣形態の竜を殺す百の刃で相手を攻撃。一刀両断を狙う。
ドラグは、戦場であるシステムフラワーズの内部へ降り立ち、
「…………」
しかし、動かなかった。
「んー? アンタがあーしの相手? ……って、おーい? 聞いてる?」
自身の前方、少し離れた先にオブリビオン、ラビットバニーがこちらに何か呼びかけているようだが、しかし動かない。
「おいおーい。戦場で無防備子猫ちゃんとか、ちょっとエモいぜー……? バリア的に危なかったぜー……?」
「エモいって何だ……」
は? と相手の声が聞こえるが、疑問の感情はこちらも同じだ。
「分からないんだ……。エモイって。俺には分からない……」
「ん~~~~~~~! 敵が特殊な弱点すぎて困惑するけど、身体は戦いの場である戦場へ向かってしまい、でもやっぱりそこでも物思いにふける男子~~~~!! 花丸~~~~!」
「分からない……。お前が何を言っているのか、分からないんだ……」
敵の言葉を理解しようと額に手を当てて考えれば、敵が一度、二度、身もだえして、被り物の上から汗をぬぐう仕草をする。
「ふぅ~……、あ、危ねー……。破壊力ゲキヤバだしこの男子……。――む! よく見れば目元が涼しいイケメンフェイス……!」
でもまぁ、と言葉は続く。
「こっちの倒し方分かんないのに来たのは、イイけど、ワルいよねー。分かんない? んー、それじゃ……」
そこまで言うと相手は手に持った牛砲を構え、
「――またのご来店、お待ちしてま~す」
射撃した。
●
爆発の音と圧力が、システムフラワーズの全域を揺らしたことをラビットバニーは知覚した。
危なかったー……。
花弁で出来た足場が舞いあがり、視界を遮る中、思う。
「あれで攻撃されてたらマジやばかったし……。世間知らずイケメン男子サイキョーだし……」
とりあえず今あったことをSNSに書き込もうと、手持ちの端末を開こうとした瞬間、気付いた。
「――――」
敵が、倒れていないのだ。否、正確には倒れていたのだが、
「……何で立ち上がれるわけ~? 直撃弾なのに。マジ卍なんですけど……」
猟兵が血だらけの身体を起こし、立ち上がったのだ。
「分からん……。何が、エモい、なのか……」
血だらけだが確かな足取りで立ち上がり、こちらへ相対する相手を見て、思う
「むぅ……!! 血だらけで立ち上がるイケメン……! カレーにご飯みたいな組み合わせだし……!」
じゃなくて。
「じゃなくて」
言う。
「――死んでないわけ? 今の、直撃っしょ?」
「いや、俺は死んだ。それは確かだ」
「は?」
見れば、血だらけの身体の上、衣服がところどころ爆発の衝撃で吹き飛んでいるが、
「む……! 鍛えられた体! カツカレー! ――じゃなくて。再生したわけ?」
「前半ははく分からないが、後半は、そうだ」
腕を組み、仰け反る。
砲弾受けても血だらけで立ち上がるイケメン世間知らず戦闘系男子……!
結論から言うと、ヤバい。
仰け反ったまま、尋ねる。
「ふ、不死身?」
「否、――無敵だ」
敵が、告げる。
「お前が無敵のバリアを張るなら、こっちも無敵でバリアの突破を狙う、それだけだ」
さらに仰け反った。
ん~~……!! 敵とはちょっとベクトルが違うけど似たような技で戦う展開……!!
結論から言うと大分、アリだ。
「俺は何度やられても絶対に諦めない!」
「ちょ、そこでお手本みたいな台詞言っちゃう?、マジで?」
「必ずお前のバリアを突破してやるぜ!」
「アァ――! ヤバ、ソレ、ヤバ、アァ――!!」
敵が黒剣を携え、ゆっくりとだがこちらへ近づいてくる。
「しかも武器が黒色って……! イイ……」
「さあ、俺の攻撃だ。行くぜ!」
「マズイマズイマズイ、今、今はアァ――! 武器変形したァ――!」
猟兵の刃が、こちらの身体を切り裂いた。
成功
🔵🔵🔴
シュバルツ・ウルリヒ
エモい、エモいとは…感情が動いた時に言う言葉だったな奴の感情を動かす……出来るか分からないが……やってみるか
UC、血統覚醒を発動、そして僕は……ただ真っ直ぐ単純に奴に向かって走る、敵の攻撃は避けられるなら避けるが避けられないなら防御して受け止める。そして接近したら…ひたすらバリアを殴る、例え敵の反撃が来ようと…殴る、……それが僕に出来るたった一つの手だ。相手からは無駄だとも呆れられかもしれない、……だが僕は決めた、オブビリオンには……過去からは逃げない……未来へ進むと……だから、だから僕は……例え腕が動かなくなったら脚で、脚が動かなくなったら頭でお前のバリアを…破壊する…!
●
グリモア猟兵による転移が終わったシュバルツが立った場所は、花咲き乱れる戦場、そこだった。
「エモい……」
確かめるように、小さく呟く。
……エモいとは……、感情が動いた時に言う言葉だったな。
そうして、顔を上げた先、花が敷き詰められた足場の上に立つのは一人。
「……んー? アンタがあーしの相手?」
オブリビオン、カワイイバニーだ。
すると、
「……んン……?」
相手が身体を傾け、こちらを窺ってきた。
「む……? むむ……?」
左右に顔を揺らしながら、唸ったかと思えば、
「むむっ! よ、よく見なくても美少年……!! むむむっ……!! これはエモ、――はっ……! 危ないところだったし……。えいえいっ。よし、痛くない。バリア効いてる。セーフ!」
視線の先、敵が自分の頭を叩いているがあれは何だろうか。よく分からない。
ただ、
「感情を動かす……。出来るか分からないが……やってみるか」
「は、はー? 少年にそういうこと出来るかなー? どーかなー?」
直後、自分は力を解放した。
「おぉぉお……!」
自身に流れる血統。それを解放させる力は正しく発揮され、己の身体を血に従った姿へと変質させた。
「むぅ……、八重歯美少年……」
敵が小声で何か言っているがよく分からない。
そう、よく分からないのだ。
ならば自分がするべきことはなにか。
「――ただ、進むだけだな」
だからそうした。
「――!」
花弁で出来た足場を踏みしめ、一直線に駆けたのだ。
「ぉぃぉぃぉぃぉぃ……! 一直線で来る感じか少年……!?」
敵が驚いた声を上げるが、
「――でも、それってメチャ狙いやすいってことだかんね?」
直後、敵が携えた牛砲から砲弾が飛来した。
「――!」
砲音がその圧力と共に空間の大気を打撃し、
「たーまやー」
迸った。
●
「はい、シューリョー」
砲口を上に向け、ラピッドバニーは戦闘の終了を告げた。
「んー……。クールな八重歯ダーク美少年……イイね……」
爆発の圧力によって花弁が荒れ狂ったように空間を走り、視界は不明瞭だ。
何か、祭りの縁日とかでよくあるくじ引き撹拌するあの機械の中みたいな感じ……。
益体もないことを考えながら、視界が落ち着くのを待っていると、
「んん……?」
花弁の隙間からそれが見えた。色だ。
それは黒と金の色、そして、
「――紅」
そう言った瞬間、眼前の空間が震動した。
●
シュバルツは、荒い呼吸の中、一つの動作を繰り返していた。
「――!」
殴打だ。
右と左。それを交互に、時に両方一度に敵へと放っていく。
砲弾の直撃によって身体の各所から血が吹き出て、腕を振うごとに周囲に散っていくが、構わない。
だが、
「効かない、か……」
「あったりまえじゃーん。絶対~無敵~バリア~」
敵が、殴打を続けるこちらの頭をその長い腕で押さえた。
「くっ……!」
頭の傷を容赦なく掴んできて、意識が飛びそうになるが、耐える。
「むっ……! 自分でやっててなんだけどこの画ヤバい……! エモい……!」
敵が口元に手を当てながら早口で何かを言い、でもさぁ、とこちらへ言葉を投げかける。
「ほら、パンチ空振りだよ少年? 諦めたら?」
「……これが、僕に出来るたった一つの手だ」
「……ぉお? いや、ダカラサ。少年のパンチ、意味無さげじゃん? あーし、間違っ――」
蹴った。やはり弾かれるが、構わない。
こちらの頭を掴む相手の腕にぶら下がることで、右脚と左脚のコンビネーションを叩き込んでいく。
「……ワオ。クールかと思ったけど以外にワイルド系じゃん、少年」
「お前は呆れるかもしれない。……だが、僕は決めたんだ」
「……何を?」
敵が、こちらの言葉に興味を向けていると思うのは、気のせいだろうか。
「オブビリオンには……、過去からは逃げない……!」
刹那、こちらの頭を掴む、相手の腕を蹴り飛ばした。
「えっ……」
腕を跳ねあげられ、半ば万歳状態の敵の懐へ飛び込み、
「未来へ進むと……!」
渾身の頭突きを打ち込んだ。
「ぁ……。」
頭突きによって頭の傷が一気に開き、朦朧とする視界の中、敵が被り物拭う仕草が見えた。「……少年ー……。これ、チョーエモいよー……」
直後、意識が途絶えた。
苦戦
🔵🔴🔴
イサナ・ノーマンズランド
SPD
カンフーの猛攻を【盾受け】で凌ぎ、【激痛耐性】で立ち上がる。
同時にUCを発動。相手に有効な拷問具として高音質のラジカセから主題歌っぽい曲が流れ、ドラスティックかつメロディアスにエモさを演出。
祈りを込めたショットガンで、これまでの戦いで負った【傷口をえぐる】ように【零距離射撃】。
「ほんとうに、わたしたち戦わなきゃいけないの……?」
「おねえさん、本当はわるい人じゃないでしょ…… なんかちょろそうだもの! いい人そうだもの……!」
「でも、こうしてぶつかりあう事でしか、ふれあえないなら…… 今は、たたかうよ!」
「その先に、おねえさんとわかりあえる明日があると信じてるから!!」
アドリブ歓迎です。
●
「む……! モッズコート隻眼少女……! エモい……!」
イサナは戦場に辿りついた瞬間、正直な感想を食らったと、そう思った瞬間、
「――!」
敵の被り物の目が光り、一瞬の内にこちらへ距離を詰めてきた。
「でも先手必勝だし……! うさちゃんカンフーモード……! バイブスアゲて行くっしょ……!」
「来て早々にこうげき……!」
自分は敵の攻撃を棺桶型の武装コンテナで受けるが、
「くっ……!」
「どうしたどうしたぁ! そんなんじゃ、ダメダメっしょ!」
拳や掌底が伸びてコンテナが打撃され、肘と膝によって砕くような一撃が送り込まれる。
そうして、度重なる連撃の衝撃によってコンテナを固めたところで、
「ぐぁ……!」
爪先の一発が、コンテナの外側から弧を描いて届いた。
横腹、そこにめり込んだのを実感できる。
「ぁあ……!」
側面からの衝撃に吹き飛んで、花弁を撒き散らせながら花の足場を転がっていく。
「ぉ……? 今の食らって起き上がれるんだ。ゴイス~」
まぁ、立てなくなるまでボコるんだけどね? という相手の声はしかし、動作として続かなかった。
「――!」
自分が先ほどまでいた場所、ラビッドバニーの目の前から音が生じたからだ。
「これは……」
ラビッドバニーの足元、そこにあるのは
「ラジカセ……? ってデザイン超いいじゃ~ん! エモー! なんかグロテスクな感じだし~。
てか、音質バリ良くない? 曲も超良くない? 見た目も性能もイケてるとか、イイネイイネ!」
ラジカセを頭の上に掲げて興味深げに眺めている敵に向かい、こちらは、
「――おねえさん」
ラジカセから流れる曲に合わせて美しく、声を乗せる。
「むっ…!! モッズコート隻眼少女がボロボロな姿……! 横っぱら押さえてるの私のせいだけどそれはともかくエモい……!」
しかし、魅せる演出は美しさだけではない。
「むむっ!! よく見ればポンプアクションのショットガンを杖代わりにしてなんとか立ってるじゃん……! しかも、ウッドストックって言うのが杖っぽさ増してダブルミーニング的なエモさあるね……!!」
過激さも合わせるのだ。
「ほんとうに、わたしたち戦わなきゃいけないの……?」
だからといって、儚さといった情緒的な面も忘れない。
「い、いや、猟兵とオブリビオンってそういうもんだし? あーしら世界超恨んでるし? あぁ、でもなんか戦闘中にこういうこと言う子いるよね! エモい!」
もうひと押し。その念で言葉を続ける。
「おねえさん、本当はわるい人じゃないでしょ……?」
「んんんんん……!? お、お姉さん君の横腹蹴り飛ばしたっしょぉ? 大丈夫かー? この子大丈夫かー? お姉さん心配な感じ? つまり今心鷲掴みされてる? エモってる?」
「だって……」
「だって?」
とどめの一押し。
「――なんかちょろそうだもの!」
「ちょ――」
間違えたのでラジカセの音量をリモートで上げて誤魔化した。
「――いい人そうだもの……!!」
「アァ――! 大丈夫かぁー! この子大丈夫かぁ――! ヤバイヨヤバイヨ――! かなり警報出てるっしょ――!」
被り物の頭を抱えてうろたえ始めたので、痛む体を堪え、一気に距離を詰める。
「でも、こうしてぶつかりあう事でしか、ふれあえないなら……。今は、たたかうよ!」
「んんんンン? ちょいちょーい。キミキミ、そこ、お腹。さっき別の猟兵に斬られてガパァしてるお姉さんのお腹。痛いか痛くないかで言うとポンポンペイ――アァ、銃口の冷たさが何か新感覚ゥ――!」
「その先に、おねえさんとわかりあえる明日があると信じてるから!!」
撃った。
零距離だ。
「ぉぉぉおおおおおお!? そう来たかァ――!?」
耳をつんざくような爆音が鳴り響くなか、射撃の衝撃と反動で互いに吹き飛び、花の床に倒れ伏した。
成功
🔵🔵🔴
日和見・カナタ
エモい……難しい概念ですが、映像資料でそれらしいものを勉強してきました。
私の“エモさ”、あなたに通じるかどうか試させてもらいます!
まずはラビットバニーの攻撃を掻い潜って近づくことにしましょう!
【ガジェットドローン】のカメラアイと【機械蜂】で相手の初動を観測し、その情報を【サイバーゴーグル】に送ることで攻撃を予測、回避します!
もちろん相手は幹部です。攻撃は避けきれないかと思いますが、それもこの後の攻撃のため!
至近距離まで近づいた後は、傷だらけのまま懐に潜り込んで【ロケットパンチ】をゼロ距離で撃ち込んでやります!
「この距離なら、外さないっ!」
●
カナタは『システムフラワーズ』内部、花が咲き乱れる空間にて、オブリビオンと相対していた。
「おぉっと。マジでやって来たっし、猟兵」
カワイイ怪人、ラビットバニーだ。
「お嬢ちゃんがあーしに勝てるかなー? ……ってうっわ、よく見ればゴッツイ腕! 義腕? カックイー! そのゴーグルも可愛くてイイネ……!」
「あ、ありがとうございます。それと、はい! 勝つつもりで来ました!」
「マジでー? あーし、控えめに言っても“無敵”だけど?」
ラビットバニーの言葉を聞きながら、思う。
絶対無敵バリア……ですか
前方の敵の能力は、それだ。あらゆる攻撃を無力化する能力だが、突破する方法は一つだけある。
エモい……。
相手の感情を揺さぶること、それが鍵なのだが、正直、自分にとっては難しい概念だ。
とりあえず、映像資料でそれらしいものを勉強してきました……。
すなわち、自分に出来ることは事前にしてきたつもりだ。
「なら、後は現場で全力を尽くすだけですね……。――ラビットバニー、私の“エモさ”があなたに通じるかどうか、試させてもらいます!」
「む……!! 真面目系義腕メカニック少女……!! エモい……!」
何か初手から目的が達成されたような。
しかし、そう思った瞬間、
「――――」
来た。
敵が瞳から青緑色の残光を棚引かせながら、眼前にまで距離を詰めたのだ。
「貰ったっしょ……!」
言葉と共に、こちらの顔狙いの攻撃が飛んで来る。高速で放たれる動きは下から打ち上げるような軌道の掌底だ。
不意打ち。正しくその言葉通りの一撃だった。
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ラビットバニーは思う。貰った、と。
こちらのユーベルコード、“うさちゃんカンフー”によって爆発的に増大したスピードと反応速度が乗った今の一撃は、不可避のタイミングを狙っていた。
「――――」
しかし、そうではなかった。
「は……!?」
敵がこちらの一撃を、首を傾ける動きだけで回避したのだ。
「くっ……!」
超高速によって生じた衝撃波が敵の肌を切り裂き、血を流させるが、それだけだ。
「今の完全に行けたタイミングだったくない……!?」
驚愕の声を上げながらも、こちらは更なる攻撃を放っていく。
拳による打撃、投げ狙いの掴み、それらを布石として、止めの回し蹴り。
だが、
「無駄です……!」
「あり得ないっしょ……!?」
やはり、それら連撃の尽くも相手は回避していった。
拳による打撃は屈んで躱し、こちらを掴もうとする動きは義腕で払って阻害し、暴風のように迫る回し蹴りは僅かな後退とスウェーバックで無効化したのだ。
血飛沫きは派手に舞うが、敵の攻撃に衰えはない。
何で避けれるし……!?
そう思った瞬間、自分は違和を感じた。
……?
猟兵や自分を含む周囲に、だ。そこにあるのは舞う花弁だけだか、だからこそ異変は目立つ。
何が……。
前方の敵に集中していた視覚を周囲に、聴覚は頭上に集中させれば、
「――――」
そこでやっと分かった。
それは何か。
「チョー細かい観測機と、ドローンじゃん……!」
周囲の花弁に紛れるように散布された微細観測機群と、視界の外、頭上にドローンがいつの間にか展開しているのだ。
そこまで意識をめぐらせれば、さらに気付くことがある。
猟兵だ。
最初に会話していた時にも触れたものだ。
「――そのゴーグル! 目を保護するために装備したのかと思ってたけど、違うっしょ! それでデータ受け取ってたわけだ!」
こちらが距離を詰め、全ての知覚を猟兵に向けたのを逆手にとって、敵は全てを布石としていたのだ。
やられた。自分の感想はそれだ。
だが、そんな感想が思い浮かぶのと同時、もう一つ浮かぶ気持ちがある。
「やっぱサイバー装備ってイイネ……!」
「ありがとうございます!」
言った瞬間、身体の各所から血を流した敵が、距離を詰めて来た。
拳が届く距離から、もはや密着するような距離に、だ。
「んなっ……!?」
急ぎ捉えようと、手を捌くが、そのとき、こちらの腹に何かが押し当たる感覚がある。
「ぉぉぉお!?」
義腕だ。駆動の感覚が音と振動が腹からこちらに伝ってきた。
「チョ、チョットチョット! それってもしや……!」
「――この距離なら、外さないっ!」
瞬間、爆発的な音と圧力を有した超重量の一撃が自分を襲った。
「うぉおおおおお!?」
猟兵の義腕が零距離で射出されたのだ。
「零距離ロケットパンチとか、ちょっと反則っしょ……!」
もはやバリアを失った身体が吹き飛び、そのエネルギー全てを一身に浴びていった。
大成功
🔵🔵🔵
霧枯・デスチーム
【2m半のガジェットブラザーと行動。アドリブ協力歓迎】
「今回の作戦だけど…ロボットダンス?」
『はい、ロボがダンスします』
「それはロボットダンスだけどロボットダンスじゃねえよ」
まずはテクノな雰囲気の音楽を流し、ガジェットショータイムでガジェット召喚!
ガジェットは攻撃に参加させず踊らせる。
無理させすぎて自壊するかもしれないがそれもまたエモいって言い張る!
敵の攻撃には要注意だ。カンフーは目の光、ハッキングは指先のビームに注意だ!キャノンは適当なガジェットでも盾にすれば?
ガジェットを召喚し続け、相手が攻撃してこなければ本機体も踊りに参加させる。
踊り終わったら召喚したガジェット全部で自爆攻撃だ!
●
『システムフラワーズ』内部、花弁が咲き乱れる超空間の中、駆動音が聞こえる。
音の源は花の足場を撒き散らせて進む、2メートル半の影だ。
「今回の作戦だけど…ロボットダンス?」
脚部のローラーで推進する有猫型ガジェット、“ブラザー”からの声は、しかし一つではない。
『はい、――ロボがダンスします』
「それはロボットダンスだけどロボットダンスじゃねえよ」
相棒の応答に、パイロットである霧古は呆れ声で応答する。
『――前方に敵を視認』
「うっわ! ロボじゃん! デカッ! てか、肩のソレ何? 回んの!? エモッ!」
オブリビオン、ラビッドバニーがその被り物に手を翳し、こちらを見上げる。
「よかったナー、褒められてるぞお前。んじゃマー、作戦通りに行きますか」
瞬間、舞う花弁の全てが大音量で揺れるのと、
「――――」
ラビットバニーの瞳が光るのは同時だった。
『――来ます!』
“ブラザー”の警告が響く頃には、敵はその姿をこちらの左手後方へと移している。
「イイ感じの音楽じゃん……! だから、こっちもノッてくし!」
直後、衝撃が連打で来た。敵がこちらへの攻撃を開始したのだ。
狙いは、
『脚部側面です!』
「正確には膝横だナ……!」
“ブラザー”の管制通りの箇所へ、殴打と蹴りが集中していく。
「ヘイヘイヘーイ! どうしたどうした!?」
「ちっ……!」
敵の猛攻を阻害しようと、こちらは左腕を振うが、
「あらよっと!」
簡単に回避され、腕の動きに沿えるように回し蹴りを追加される。
「――!」
蹴りを叩き込まれたことで加速していく腕に引っ張られ、機体が体勢を崩すが、
『一旦脱出します……!』
その言葉と共に、回る左腕の前腕部からワイヤーフックが射出された。
「おぉ……!」
離れた位置の花の足場に突き刺さったそこへ、ワイヤーを一気に巻取り、その身を運んで行った。
強引な離脱は、機体を傾け、攻撃が集中した左脚部が異音という悲鳴を上げながらのものだったが、何とか果たされる。
「ちっ……! 容赦ねえナ!」
脱出に成功し、体勢を立て直そうとしたそのとき、
「――!?」
こちらに目がけ、光が突っ走って来た。
『制御ビームです!』
転がるように回避し、ビームから距離を取るが、それはこちらの足元、花の足場に着弾。着弾地点を変質させていく。
足場を形成した花々が集合し、積み重なり、こちらの脚部を覆っていくのだ。
「おいブラザー! 出力マックスで吹き飛ばせ!」
『もうやっています!』
増加した出力によって、しがみ付いた花々が吹き飛んで行くが、未だ離脱は出来ない。
「――おっおーい。二人? ともさ、コッチコッチ」
ラビットバニーの言葉に振り向いた直後、動けないこちらに向けて、砲弾が飛来した。
「――!!」
“ブラザー”の胴体に直撃し、爆発の勢いに押されるように吹きとんでいく。
「踏んだり蹴ったりだナ……! ――“ガジェットショータイム”!」
言葉を叫べば、周囲に新たな影が生まれる。複数だ。
「……むっ!? ブサカワ……?」
ラビットバニーが追撃の手を止め、見る先。影は皆、そのフォルムが歪だった。
音楽に合わせその身を前後左右に揺らし、踊っているが、
「あっ。壊れた」
ダンスの負荷が高いのか、耐えきれず崩れていった。
しかし、崩れた側からまた新たな影が生まれ、踊りに参加していく。
生まれて踊り、崩れて散る。ラビットバニーの視界の中で生じているのは、そんな流れだ。
「なんかワビサビっぽくてエモくね……!?」
顎に手を当て興味深げに眺めているところに、
「相手の攻撃が止んだナ……。行くぞ、ブラザー」
自分たちも踊りに加わっていった。
「むっ! ボロボロの状態で踊るロボ……! 軋みの音がエモいじゃん……!!」
そうして、機体から流れる音楽が終盤になるにつれ、
「お? おお? キャンプファイヤーぽくね?」
生み出されたガジェット達が、ラビットバニーを中心に円を描く様に囲んだ。
次の瞬間、
「――!!」
全てのガジェットが自爆し、ラビットバニーを全方位から攻撃した。
「ん~~~~……! ダンスからの自爆特攻……! アリ寄りのアリじゃん……!」
空中を吹き飛んで行くラビットバニーのそんな声を聞きながら、
『撤退します……!』
軋む機体を振り絞り、戦場から離脱した。
苦戦
🔵🔴🔴
暁・エリカ
ん…エモい…エモい…なんだろう…わからないな
兎の人、エモいってどういう意味なんだい?
バリア…?結界の事か、なるほど…誰か突破方法に詳しい子は居ないかな?
こゃーんこゃーんと【大量の狐】達を呼び出して聞いてみよう
あっ狐達が【花の足場】の上に…何々?なるほど…狐達に【動物と話す】で聞いてみたら「フワフワして楽しい!兎のおねーさんありがとう!」だそうだよ
…これはエモいなのかい?
残った狐達も遊んで欲しいそうだよ…あっ…残った狐達が一斉に兎の人に飛びついて…狐の毛玉だね、これは
…そういえば戦ってるんだった、身動きが取れないうちに狐に危害が及ばないように【破魔】の力を持った陰陽符で兎の人を封印しておこう
●
エリカは腕を組みながら花弁で出来た足場の上を歩いていた。
「ん……。エモい……エモい……。なんだろう……。わからないな」
それが、倒すべき敵、ラビットバニーの弱点だということが、事前の情報収集から分かったのだ。
でも、それ以上の意味が分からない……。
一体何をすれば、“エモい”で、それをするためにはどうすればいいのか。
分からない……。
なので、人に聞こうと、そう思った。
「――兎の人、エモいってどういう意味なんだい?」
「む……! 銀髪セーラー狐美少女……! エモしっ……!」
人に聞いたら余計に分からなくなった。
「あー……、エモいってのはアレだし。なんか面白いとか色々。カッコいいでも、イケてるでも、バイブス上がる感じで。マジ卍って感じ
てか、今時女子なら常識だし!」
「そうなんだ……。分かったような、分からないような……」
「んー! 分かんないかー……。まぁ、分かんない方があーしの“絶対無敵バリア”的に有利だし」
「バリア……?」
ラビットバニーが漏らした言葉に耳を震わせる。
「結界の事か、なるほど……。誰か突破方法に詳しい子は居ないかな?」
そう言って、ユーベルコードを発動しようとした瞬間、
「――させねーよ?」
敵が抜き打ちで両手の指先をこちらに向け、ビームを放ったのだ。
「――――」
狙いはこちらの足元、花弁で出来た足場だ。
●
ラビットバニーは、自身が放った力の結果を見ていた。
ビームは正しく敵の足元を撃ち抜き、その性質を変化させていた。
言うなればウォーターベッドじゃん……。
表面にある花弁はそのままに、その下にある花弁同士の結合を緩めのだ。そうすれば、表面は保たれているが内部は液状化したような状態になる。
すなわち、その上に立つ者は、足下の花弁が不安定な反力しか返してこず、
「立つことすらままならないはずじゃん!」
実際、眼前では猟兵が簡単に沈み、その直後反発の力を返してくる足場に、
「――――」
苦戦していなかった。
猟兵は立つのを止め、落ち着いた様子で座り込んでいたのだ。
隙だらけだ。とそう思い、攻撃を与えようとした瞬間、気付く。
「――ナニソレ!?」
座り込んだ猟兵の瞳から、否、その辺の花弁の中から大量の狐が出て来たのだ。
「こゃーんこゃーん」
少女が狐の鳴き真似をすると、狐たちが少女の眼前に集まり、
「――!」
じゃれあいを始めた。お互いに噛みつき、転がり、のしかかり、追いかけ回そうとして、足場が不確かなので、こける。
「――超カワイイんですけど……!」
思わず端末を取り出しカメラ機能で連射してしまう。
そうしていると、猟兵が狐たちに顔を近づけ、ふむふむと、頷き始めた。
「……何々? なるほど……」
「……! も、もしや……。狐の言ってること分かる系!」
こちらの驚愕の言葉に、少女は頷きを一つ返し、
「狐達に聞いてみたら、『フワフワして楽しい! 兎のおねーさんありがとう!』だそうだよ ……これは“エモい”なのかい?」
「はぁ~~~~~~~~~~~~???? 狐も猟兵もクソカワかよ~~~~~~~~~????」
床の上で転がるように身もだえしながらもカメラの連打は止めない。
すると、
「あっ、狐たちが」
来た。
足場に寝転がったこちらに向け、瞳を好奇の色に輝かせながらこちらに来たのだ。
「遊んで欲しいそ――」
少女の声を最後まで聞くより早く、狐達が一斉にこちらに飛びついてきた。
「うわ――!! うわ――!! ふわふわでクソカワぁ――!! マジエモいんですけどォ――!! よぉーしよぉーし! ステイ! それは犬か!」
もはや、花弁で出来た足場の上で、狐の毛玉となった自分が転がりながら狐たちと戯れていると、
ん……?
狐たちの隙間から、敵である少女が、あ、そうだった。と言う感じで手を打ったのが見えた。
それを見て、こちらも違和を感じる。
何か……大事なこと忘れてるような……。
何だったか。思い出そうとするが、狐が体中にいてハッピーなのでまぁいいし……。
そうしていると、ウォーターベッドのような足場を這って進んで来た猟兵が、狐の毛玉となったこちらに手を突っ込んできて、言った。
「……そういえば戦ってるんだったよね。――えいっ」
直後、何かを貼られ、身を焼く様な痛みが走った。
「ぐぇえええええ――!? お、思わず女子が出しちゃいけない言葉出しちゃ、ぐぇえええええ――!?」
こちらの声に興奮した狐たちが、身体の上でさらに暴れて愉快な感覚だが、それどころではない。
「な、何貼ったし!?」
「陰陽符だよ」
正直に答えられると、身動きが取れないこちらとしてはどうしようもない。
「大丈夫だよ。――狐は傷つけないから」
「そ、それはなによ、ぐぇえええええ――!!」
「封印、封印……」
結果として出来あがるのは、五体の全てに破魔の力を有した符を貼られた自分だ。
「む、無念……」
息も絶え絶えとなって、度重なる連戦で傷ついた身体が霧へと変わっていく。
限界なのだ。
しかし、だけど、という思いもある。
「最後が幸せ……、いやでもよく考えると符キツかったからな……。どうかな……まぁいいか……。――とりあえずハッピーだったから……」
最後の言葉がこれっていうのは、自分でもどうかなー。と思うが、本心なので仕方ない。
こちらに寄って来た狐の頭を一つ撫で、
「アリ寄りのアリじゃん……」
そう言って、その身を完全に霧へと変えた。
成功
🔵🔵🔴