バトルオブフラワーズ⑩〜貫け、バニーハーツ!
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赤、白、黄色と様々な花が咲き乱れる空間。その花畑の中心にはウサギの被り物で顔を覆った女性が1人。
「まじびびった! だってモンキーやられてっし!」
人によっては耳障りに感じるかもしれない甲高い声が誰もいない空間に響き渡る。
びびったと口にはしているが、本当に怖がっているような雰囲気がしないのはその容姿の愉快さのせいなのか、はたまた彼女の実力のせいなのか。
「まーなんとかなるっしょ!アゲてくぞー!」
拳を高く突き上げる彼女のすぐ後ろで、勝利を確信しているように紫色の赤べこが首を揺らしていた。
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「皆様、キマイラフューチャーで展開されている戦争に進展がありましたわ」
リコリス・シュピーゲル(月華の誓い・f01271)が集めた猟兵たちの前で、いつもの無表情で話し出す。
システム・フラワーズ内部で立ちふさがっていたオブリビオンが撃破されたことでさらに奥に進むことが出来るようになったが、進んだ先でまた強力なオブリビオンが猟兵たちを待ち受けているということらしい。
オブリビオン・フォーミュラがいるのはまだまだ先であり、システムをオブリビオンの手から解放するためにはこの敵も倒さねばならない。
「道を塞いでいるのはカワイイ怪人『ラビットバニー』という、ウサギの頭を被った怪人軍団の幹部の一人ですわ」
赤べこキャノンによる攻撃を筆頭に強力なユーベルコードを繰り出してくる相手だが、その攻撃以上に厄介なものがあるとリコリスは語る。
「このラビットバニーですが、ありとあらゆる攻撃を無効化するという反則級のバリアを展開してきますの。……はっきり申し上げましょう。このバリアを破壊することは不可能です」
まっすぐと猟兵たちを見据える彼女の目は真剣そのもので、嘘をついているといった様子は全く見えない。
しかし、絶望や悲しみといったものもその青い瞳から読み取ることはできなかった。
「破壊することは不可能ですので……攻撃する前にバリアを解除する必要がありますわ」
破壊できないのなら発動を止めてしまえばいい。それだけのことだ。
「強力すぎて制御が難しいのかしらね。そのバリア、使い手である『ラビットバニー』の心を強く揺さぶってしまえば一時的に解除できますの。おまけに彼女はかわいい仕草や男らしさ、果てには水を吐き出すフグまで、様々なものに反応してしまうようですわ」
エモいと言っていたかしら、とリコリスは首をかしげながらつぶやいていたが、彼女が列挙していくものから察するに、SNSではやりそうなものであればなんでも大丈夫らしい。
「重ねて申し上げますが、バリアなしでもラビットバニーは十分に強敵ですわ。こうして送り届けることしかできませんが、どうかお気をつけて」
リコリスの胸の前で薄紅色の彼岸花が光り輝き、猟兵たちを飲み込んでいった。
灰猫
御覧いただきありがとうございます。灰猫と申します。
本作品はキマイラフューチャーを舞台とした戦争シナリオでございます。
●第1章:ボス戦『カワイイ怪人『ラビットバニー』』
怪人軍団の大幹部の1人です。
第二の関門を守っており、この先に進むためには彼女を倒す必要があります。
●特殊ルール:絶対無敵バリア
ラビットバニーは必ず、猟兵に先制して『絶対無敵バリアを展開するユーベルコード(POW、SPD、WIZ)』を使ってきます。
絶対無敵バリアは本当に絶対無敵で、あらゆる攻撃を無効化しますが、「ラビットバニーがエモい物を目撃する」と、精神集中が乱れてバリアが消滅します。
ラビットバニーのエモい基準はかなりユルいので、バリアの解除は比較的容易と思われますが、バリアなしでも彼女は相当の実力者です。
それでは、皆様のプレイングを心よりお待ちしております。
第1章 ボス戦
『カワイイ怪人『ラビットバニー』』
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POW : 赤べこキャノン
【絶対無敵バリア展開後、赤べこキャノン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : うさちゃんカンフー
【絶対無敵バリア展開後、兎面の目が光る】事で【うさちゃんカンフーモード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : おはなハッキング
【絶対無敵バリア展開後、両手の指先】から【システム・フラワーズ制御ビーム】を放ち、【花の足場を自在に操作する事】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:和狸56
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
グレース・マクローリン
まず最初にUCを発動、鉄笛の洞簫棒を素振りして力を貯めるよ!
相手が赤べこキャノンを撃って来たら砲弾の球威とコースを【見切り】して【武器受け】で芯を捉え、【怪力】で空高くカッ飛ばす!
何球でも全部打ち返してやる!と【気合い】を入れて【恫喝】するのも忘れずにね。
これでバリアを解けたら接近戦で行くよ!
相手も強敵だし最初は【見切り】【残像】で極力避けに徹するよ。
しかし気付いたかな?アタシが打った砲弾はアンタの背後じゃなく上に空高く飛んでった事に…上空に飛ばした砲弾が落ちてきたら組打ちに持ち込み【怪力】で【敵を盾にする】!
これでダメージが入って隙が出来たら鉄笛でカッ飛ばす!今度は本物のホームラン狙いでね!
「さて、そこをどいてもらうよ」
誰もいなかった空間で1人大はしゃぎしていたラビットバニーの後方から話しかけたのは、グレース・マクローリン(副業海賊・f12443)であった。
グレースは花畑を踏み荒らして歩み寄りながら、手にした洞簫棒の握りを確かめるようにびゅんびゅんと振り回す。
「それで殴っちゃう感じ?ざーんねん、あーしのバリアは絶対無敵!その程度の攻撃が通用するはずないんですけどー!」
「どうだろうね?試してみたら?」
一触即発の空気が場を支配する。
「言ってくれるじゃん?消し炭になっても、あーし知らないよっ!」
ラビットバニーの姿が淡い光に包まれたと同時に、背負っていたキャノンの口がグレースへと突き付けられる。
「泣いてももう遅いっしょー!」
爆音とともに放たれた砲弾はまっすぐとグレースの元へと飛んでいくが、グレースの笑みは崩れなかった。
半身の構えで洞簫棒を大きくテイクバック。
――球威、さっきのチャージで足りる。軌道、まっすぐだから読みやすい!
――ここだ!!
完璧なタイミングで振り抜かれた洞簫棒が体の中心で砲弾の芯を捉え、空高く打ち上げる。
ラビットバニーもまたその砲弾を追いかけるようにして宙を見上げていたが、攻撃力を高めていた砲弾は高く高く飛んでいき、ついには見えなくなった。
「は、はぁ!?無茶苦茶っしょ!偶然に決まってっし!」
打ち返されたことが受け入れられないラビットバニーは手にしたキャノンの火を噴かせ続けるが、その全てがグレースを撃ち抜くことなく頭上の空間へと消えてゆく。
「まだ100本も打ち返してないよ。ほら、何球でも全部打ち返してやるから!」
まだまだ余裕だとばかりにグレースは声を張り上げる。
「あーし、汗臭くなるのはテンサゲーって感じなんすけど……」
煙の先でラビットバニーは俯いて小さくその体を震わせていたが、不意にその顔を勢いよくあげる。
「けど……汗臭い展開はアリアリのアリっしょー!」
被り物の目が輝くことはなかったが、そのかわりに彼女の周囲で砕けたバリアの欠片が輝く。
「はしゃいじゃってるってことは気づいてないかな?」
「は?」
グレースの指は上を向いている。
何かしたのだろうかと見上げると、目の前には砲弾の雨……先程グレースが打ち飛ばしていたすべての砲弾が2人のすぐ上に迫っていた。
その光景が飲み込めなかったことで生まれた一瞬の隙を見逃すことなく、グレースは素早く距離を詰めてラビットバニーに掴みかかり、自由を奪って彼女を盾にする。
「ありえないんですけどぉー!?」
1人もろに砲弾の雨を受けることになったラビットバニーの叫びが虚しく響いた。
成功
🔵🔵🔴
ミスト・ペルメオス
【POW】
え、エモ…?
何となく分かるような、分からないようなッ…、ともかくやってみますッ。
――ミスト・ペルメオス。ブラックバード、出ますッ!
自前の機械鎧を駆り、戦闘領域に進出。
敵怪人を発見後、スラスターを全力稼働させて飛翔しつつ戦闘を仕掛ける。
「出し惜しみは無しだ…!
【フォースド・アサルト】、スタンバイッ!
最大稼働ッ――行くぞォッ!!」
念動力とエネルギーのバリアで機体を覆い、最高で“熱の壁”にも迫ろうかという超高速に戦闘機動を織り交ぜて飛翔。
可変速ビームキャノンを用いた一撃離脱、またはバリアとビームブレードを利用した体当たり込みの近接戦を仕掛けていく。
※他の方との共闘等、歓迎です
「――ミスト・ペルメオス(新米猟兵・f05377)。ブラックバード、出ますッ!」
プラズマスラスターの出力を上げ、飛翔。さらに速度を上げて勢いよく飛び出していく。
ミストの視線の先では、ラビットバニーが服や被り物に着いた煤を払い落としていた。
加速しながらラビットバニーに迫るミストであったが、その突撃はすんでのところで展開されたバリアに阻まれる。
「おっとと、新手が来ちゃった感じ?激やばじゃーん」
その言葉とは裏腹に冷静さを保ったままキャノンに手をかけるラビットバニー。
怪人軍団の大幹部。
その称号は伊達ではなく、今のやり取りだけでもその実力はウサギのようなかわいらしいものではないとミストは感じた。
「なんかやっべー速度だったけど、あーしの赤べこキャノンからは逃げられないよ」
構えた砲口の上では赤べこがとぼけた表情でミストを見据えている。
高出力のスラスターを全力稼働させた突撃を止められたのだ。
出し惜しみをする余裕など、彼にはない。
「最大稼働ッ――行くぞッ!」
「あったれぇーーー!」
ミスト操るブラックバードが再び動き出すと同時に赤べこキャノンが火を噴く。
攻撃回数を増やし蜂の巣にしてしまおうと考えたラビットバニーであったが、次の光景に瞠目することになる。
けっして捉えられないほどの速度ではないと感じていたブラックバードが、砲撃をビームキャノンで撃ち落とし、さらに続く砲撃の雨をかいくぐって離脱を繰り返していたのだ。
しかし、これもある意味当然のことであったのだ。
今度の速度はわざわざサイキック・フィールドとエネルギーバリアで機体を守らねばならないほどの速度……音速を超えた先にある関門、高速移動に伴い高温になった空気に機体が加熱される『熱の壁』に挑まんとする速度に達していたのだから。
最初の速度に合わせていたのであれば、超高速移動する鳥を撃ち落とすことはできない。
パキリと軽い音を立ててバリアにひびが入る。
「漢のロマンってやつっしょ。あーし、そーゆーロマンも守備範囲だから」
どうやら超高速移動による攻撃が見事に心に刺さったらしく、穏やかな笑みを浮かべて親指を立ててみせるラビットバニー。
ひびが全体に走ったバリアも浮かべられた笑顔のように儚く散っていく。
再度の特攻にバリアのない華奢な身体が堪え切れるはずもなく、袈裟懸けに斬り捨てられた彼女の肉体はその場に崩れ落ちた。
しかし、震える足を叱責しながらラビットバニーは再び立ち上がる。
「あたたた……。で、でもまだ終わってないかんね!反撃はこれからっしょ!」
成功
🔵🔵🔴
御形・菘
くっ、猛烈に恥ずかしい!
方向性を模索していた配信活動の最初期以来、封印していたのであるがな
……普段の化粧は落としてナチュラルメイク、そしてフリフリのドレス、
ギャップ萌えカワイイ全振りに再挑戦しようとトチ狂った、少し前の自分をブン殴りたい……!(プルプル震えている)
邪神オーラも空気を読んで(?)綺麗なピンクになるし!
せめて肉眼での目撃者は全員消す……!(でも動画配信はする)
砲身が一つならば、角度を見て頭、胴、尻尾のどの部位を狙うかぐらいまでは読めるであろう
攻撃の都度、その高さを両腕でガードしつつ突っ込むぞ
意思だけで動かせる邪神オーラと尻尾、どちらかの武器が無事であれば問題ない!
ブッ潰れるがよい!
「妾を見ろおおっ!」
声の主は転送されてきた御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)であった。
しかし、その様相はいつもと大きく異なっていた。
身にまとう衣装は奇抜でワイルドさに満ちたものではなく、惜しむことなくたっぷりフリルをあしらったフリフリひらひらのドレス。
ぱちぱちと瞬きをすれば浅黒い肌でも馴染みの良いアイシャドウに含まれているラメが輝き、自然な女性らしさを演出していた。
禍々しいオーラも老若男女問わず好感を与えることのできそうな淡いピンクへと様変わりし、足元の花々との相性も実に素晴らしいものとなっている。
「ギャップ萌えカワイイ全振りに再挑戦しようとトチ狂った、少し前の自分をブン殴りたい……!」
この場に配信者としての御形を初期のころから知っていたものがいれば気づいたかもしれないが、その衣装はかつて方向性を模索していた頃に手を出した代物であった。
もっとも、この方向性は諸事情でお蔵入りすることになったのだが。
ギリリと音がしそうなほどに強く拳が握りしめられ、血管が浮かび上がる。
羞恥に染まった彼女の頬は朱がさしており、チークいらずである。
「ギャップ萌えキターーー!これは男がほっとかないっしょ!イケメン入れ食いだしー!」
そこは女性同士ともいうべきだろうか。
無敵バリアよりも男受けとばかりに鉄壁の守りを捨て去り、そのファッションや化粧術を学ぼうとしているのか御形の姿を前後ろとくまなくじっくりと眺める。
それが御形の更なる怒りを買うとも知らずに。
「カメラ映えは譲れないとはいえ……お主は、直接見たお主だけは潰す!」
「来たのそっちっしょー!?」
ラビットバニーのツッコミは華麗に無視し、血の花で飾ってやらんとする勢いで蛇の尾を振り回す。
その攻撃をかろうじて赤べこの背でしのぎ、その力に従って大きく後方に飛んだラビットバニーは荒れ狂う御形めがけてキャノンを発射。
圧倒的火力で放たれたキャノンは御形を直撃。彼女の周囲ごと焼き払ったが、煙の中からわずかにフリルの裾を焦がした御形が顔の前で腕を交差させたまま一直線に飛び出してきた。
恥ずかしい恰好も、攻撃に真っ向から突撃するのも全ては撮れ高のため。
御形からすれば視聴者の興奮のためならば身体を張るのは基本中の基本なのだ。
狙われた1点のみに防御を集中させるのであれば最低の力でしのげるほどに、今の彼女の戦闘力は高められている。
「ブッ潰れるがよい!」
目撃者必殺の精神で振るわれた尾はラビットバニーの無防備な脇腹へとめり込み、花びらを散らしながら地に叩きつけられた。
大成功
🔵🔵🔵
アニカ・エドフェルト
エモい…え、えーと、よくわかりません、ですが、〈ダンス〉の要素も入れた、『演武』を、やってみますっ
(一通り蹴り主体による演武を披露したところで)
うーん、やっぱり一人だと…そうだ、ラビットバニーさん、受け役、お願い、できますか?
一応、寸止めで、頑張り、ますが、もし当たっちゃったら、ごめんなさい、です。
バリア、あるから、大丈夫、ですよね…?
(飛び蹴り等も翼使って寸止め)
一通り、寸止め演武、したところで、『それが当たっていた』という体で、息荒くピンチを、演出するのも、いいかもしれません…?
バリア解除後は、演武同様蹴り…と見せかけての〈グラップル〉その他UC攻撃、ですっ
(アドリブ行動台詞共闘歓迎)
「演武、やりますっ!……そうだ。ラビットバニーさん、受け役、お願い、できますか?」
開口一番、アニカ・エドフェルト(小さな小さな拳闘士見習い・f04762)はラビットバニーを見上げて演武の相手にならないかと頼んでいた。
一瞬は罠を疑ったラビットバニーであったが、ほんの少し興味をそそられてしまったらしい。
バリアを展開していつでも動けるように軽く腰を落とすが、それ以上の動きを見せなかった。
「あーしのバリアは最強だかんね。当たっても痛くもかゆくもないっしょ」
おいでと指を軽く折り曲げてアニカを誘う。
「一応、寸止めで、頑張り、ます」
ピンクの髪がわずかに揺れたと同時に、アニカの右足がラビットバニーの脇腹を捉えていた。
しかしその甲と脇腹の間にはわずかばかりの空間が残っており、それ以上右足が振り抜かれることなく、すぐさま蹴りが放たれる前の場所へと収まる。
すぐさまアニカは花びらを散らしてラビットバニーの背中へと回り、無防備な背中へ流麗な動きで回転蹴り。
くるくるとダンスのように舞い、時には白い翼を羽ばたかせてアニカの頭より高い位置にある兎の面を飛び越え、小さな体から繰り出されているとは思えない鋭い蹴りがラビットバニーめがけて蹴りが放たれる。
しばらくして、全身全霊の蹴りを放ち続けたアニカの動きが止まった。
半身の構えを崩さずにいたが、肩で息をし、こめかみに汗を伝わせる彼女は目に見えて消耗していた。
「……切れ味やっば!え、神アングルじゃん!超ビリビリきたんですけど!!」
絶対無敵のバリアは蹴りに伴って生まれたあきらかに攻撃力のない風を打ち消すことはなく、また幹部級の実力者たるラビットバニーは本当に紙一重のところで攻撃が止められていたのを見抜いていた。
見抜いていたからこそ、その演武の完成度の高さに心揺さぶられたのだ。
バキンッとバリアが砕けるが、ラビットバニーは気づいていない。
「じゃあ、アンコール、いきます!」
再び舞うようにしてラビットバニーの懐へ潜り込むアニカ。
バリアがなくなった以上『演じて見せる』必要はない。
先ほどまで見せていた蹴りではなく、手首をつかんでラビットバニーを地に叩き伏せる。
「ぎゃんっ!」
背中からもろに衝撃を受けたラビットバニーは苦し紛れに指先からビームを放つも、大きく動くことなく組み技で勝負に出るアニカには満足な効果が出ることもなく。
小さな身体を引きはがすには、しばらくの時間を要した。
成功
🔵🔵🔴
エンティ・シェア
エモ…それでは人形のワルツなどはいかがかな
空室の住人で召喚したぬいぐるみに手を取り合ってダンスを披露してもらおう
踊りながらなるべく彼女の近くへお行き
ダメ押しだ、お嬢さんもいかがかな?と私も手を差し出して微笑んでみようか
上手く行けば至近距離から住人達に攻撃させよう
行かなければ趣旨変更だ
住人は帰らせ「僕」と交代を
路線を「己を顧みず戦う処刑人」へ変更
鋒で己の脇腹…なるべく派手に血の出る場所を刺して血液を確保
鋭利な鈍器になる拷問具を顕現させて挑みます
痛みなど知りません
心なんて要りません
僕は、貴方を殺すためにここに居る
バリアが解除できそうであれば、色隠しにて武器を火刑モードに
どうぞ、苦しんでください
「はー……あいつら、やばすぎっしょ」
幾度も攻撃を受けたラビットバニーの服はすっかりぼろぼろになっており、ハート型のボタンも1つは取れかかっている状態であった。
カサリと葉が揺れる音がし、バリアの展開と共に指先を音の先へ向けると、2つのぬいぐるみが手を取り合い、互いに向き合って仲睦まじく踊っているのが見えた。
1つは黒熊のぬいぐるみ。力強いリードで右左。
1つは白兎のぬいぐるみ。回転に合わせて長い耳が揺れる。
くるくるくるくる。
軽やかにステップを踏み、優雅にスピン。
アンバランスな身体をぴったりとくっつけて、短い脚を大きく動かして2人は踊る。
その踊りに合わせて揺れる花々もまた、その愛らしさを演出するのに一役買っていた。
その光景にラビットバニーは目を奪われ、2人が彼女の足元で回り出す頃にはしゃがみこんですっかり夢中になっていた。
「お嬢さんもいかがかな?」
エンティ・シェア(欠片・f00526)はラビットバニーに微笑みながらダンスの誘いを持ち掛ける。
花畑でラビットバニーの前に跪き、優雅に手を差し出す姿はまさに物語に出てくる王子様のようで。
パキャーーーン!
乙女心を撃ち抜かれたのを表すように、盛大にバリアが砕け落ちる。
「……これは、ぶっ刺さりっしょ」
少しばかり揺さぶられすぎたのか、くらくら大きな兎頭を揺らしてエンティの手を取った。
そして二人は立ち上がり、エンティの手がラビットバニーの肩の上に添えられた瞬間、短い夢のひと時が終わりを告げることになる。
白兎の蹴りがラビットバニーの肋骨を折り、黒熊の腕が兎頭を殴りつける。
愛らしいダンスからは想像できない、凶悪な破壊力を持った一撃であった。
攻撃をいなすことすらできずに地面に倒れ伏せたラビットバニーはビームで花を操り着地したぬいぐるみたちを捕らえるが、エンティはすぐにぬいぐるみたちをもとの場所へと帰し、動けないようにとその足で背中を踏みつける。
「どうぞ、苦しんでください」
ラビットバニーが最期に見たのは、赤く燃え上がる炎の向こう側で先ほどまで王子のような微笑みを浮かべていたエンティが、人が変わったかのように残忍な笑みを浮かべている姿であった。
成功
🔵🔵🔴