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バトルオブフラワーズ⑩〜その猟兵、エモエモにつき

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ #ラビットバニー

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●キマイラフューチャーの危機を救え
「このたびはエイプモンキーとの戦闘、お疲れさまでありました!」
 ノエラ・ビュイヤール(碧水のマジックナイト・f09610)が敬礼にも似た仕草をしながら言う。
 猟兵たちの奮闘により、『システム・フラワーズ』内部に控える第一の強敵『エイプモンキー』は撃破され、ノエラにもその報が届いていたのだ。
 が、彼女の言葉が意味していたのは、戦いの終結ではなく。
「まだ油断はできません。次なる相手『ラビットバニー』の存在が明らかになったのであります!」

 カワイイ怪人『ラビットバニー』──バニースーツをまとった豊満な体躯、ウサギのぬいぐるみのような被り物。
 実際にカワイイかどうかは各自のセンスに委ねるとして、このラビットバニーもまた敵の大幹部の一人だ。
「こいつには厄介な点があり、我々の先手を取って、
 何の攻撃も通用しないバリアを展開してくるのであります」
 ノエラは忌々しそうに眉間に力を入れる。そのバリアはいかなる攻撃も、いかなる刃も、火も嵐も防ぐ。当然、そんな状態で戦闘を続けても、猟兵側に勝ちは見えない。
「一見、我々側の不利な状況かと思われるでしょうが、それを打ち破る手はわかっているであります。それは──」
 手元の紙を一瞥して、彼女は小さく息を吸った。
「奴に『エモい』ものを見せることであります!!」
 エモい、それは、心の琴線に触れたときの感情を表す言葉の一つ。
 カッコいいもの、カワイイもの。
 綺麗なもの。泥臭いもの。
 切ないもの、面白いもの。
 喜劇、悲劇、逆転劇。
 ラビットバニーがそうしたものにエモさを感じた瞬間、コンセントレーションを乱され、バリアが消えるらしい。と、ノエラは説明した。
「なので皆さんには、そうしたエモい見た目であるとか、
 行動であるとかいったものの演出を意識して頂きながら戦って頂く形になるであります」
 ノエラの声が慎重なトーンに変わる。
「バリアが解けさえすれば奴にも攻撃が通るとはいえ、まがりなりにも大幹部の一人。
 その戦力を侮っては、必ず手痛い反撃を受けることになるでありましょう。
 くれぐれも、お気をつけて。よろしくお願いするであります!」


比留川資源
 こんにちは。エモいという言葉自体は今まで口にしたことがなかった比留川です。

 今回は、ボス戦です。
 カワイイ怪人『ラビットバニー』を倒してください。
 グラマラスな容姿に目を奪われそうですが、強敵ですのでご注意を。

●特殊ルール「絶対無敵バリア」
 ラビットバニーは必ず、猟兵に先制して『絶対無敵バリアを展開するユーベルコード(POW、SPD、WIZ)』を使ってきます。
 絶対無敵バリアは本当に絶対無敵で、あらゆる攻撃を無効化しますが、「ラビットバニーがエモい物を目撃する」と、精神集中が乱れてバリアが消滅します。
 ラビットバニーのエモい基準はかなりユルいので、バリアの解除は比較的容易と思われますが、バリアなしでも彼女は相当の実力者です。

 繰り返しますが、バリアを展開している間は一切の武器・攻撃系技能・ユーベルコードが通用しません。
 またオープニングにも記載させていただいたように、敵は幹部ですので、バリアの解除後も心して掛かってください。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『カワイイ怪人『ラビットバニー』』

POW   :    赤べこキャノン
【絶対無敵バリア展開後、赤べこキャノン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    うさちゃんカンフー
【絶対無敵バリア展開後、兎面の目が光る】事で【うさちゃんカンフーモード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    おはなハッキング
【絶対無敵バリア展開後、両手の指先】から【システム・フラワーズ制御ビーム】を放ち、【花の足場を自在に操作する事】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:和狸56

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

雛月・朔
武器:念動力
持ち物:サムライエンパイア製の蒔絵皿
UC:水まんじゅうのヤドリガミSPD

◆攻撃の回避
敵の攻撃は念動力で宙に浮きながら回避します、いくらスピードに優れていても空を飛ぶ相手には攻撃手段も攻撃パターンも限られるでしょう。三次元的に攻撃を回避し続けます。

◆エモい行動
敵の攻撃が止んだら宙からUC『水まんじゅうのヤドリガミ』で身体を水まんじゅうに変えて降り立ちます、念動力で持ち物の皿の上に乗りながら敵の前に登場します。突然、目の前に美味しそうな水まんじゅうが降ってきたらカメラを起動しちゃいますよね。

◆攻撃
バリアが解けたら念動力で敵を攻撃します、主にバニーの頭部を狙い仮面を剥がしてやります。



●透き通るもの、包むもの
「はぁ?もう来たの!?あり得なくない?」
 花咲く区域へと予想を超えた速度で進入してきた猟兵に対し、カワイイ怪人『ラビットバニー』は露骨な不快感を示した。
 対する雛月・朔(たんすのおばけ・f01179)はその身をふわりと宙に漂わせながら穏やかな表情で返した。
「油断は大敵ですよ。あなたがたには野望があり、私たちはそれを阻止しに来た。ある程度は予測できたことでしょう?」
 挑発を含んだ言葉を放つ朔を見据え、小さく舌打ちをするラビットバニー。その被り物の奥に隠れた眼差しに小さく苛立ちが燻っているのは容易に想像ができた。
「はっ、まーいいや、こっから先は進ませねーから、マジ覚悟して」
 そんな言葉とともに、怪人は重心をやや低く落とす。瞬間、薄紫の光のオーラが彼女を包むように発生した。
「はいこれで超無敵。ほらどっからでもかかってこいよ」
 強力な盾を生み、いよいよ豪気さを前面に出すラビットバニー。その声には盤石なる自信に溢れていた。それは彼女がまぎれもない幹部の一人なればこそ持ちうるもの。
「なるほど、それが無敵のバリアですか……」
 一方の朔に恐れの色はなく、むしろ好奇の目をもって、顎に指を添えながら至って冷静にその様子を見届けていた。
「なに?そっちがこねーんならこっちから行くかんな!」
 怪人の被り物、その青い目がキンと光る。次に身をくるり翻せば、その服飾は一瞬にしてチャイナドレスにも似たものに変わった。
「破ァ!!」
 カンフーモードに移行したラビットバニーは間を置かず、爆発的な脚力で地を離れ、鋭い蹴りを繰り出す。
 迫る蹴撃を、朔は高度を下げ文字通り間一髪で回避する。結んだ髪の一房が、前髪が、風圧を受けて乱れた。
 次は朔の一手。回避の勢いのまま、彼女は縦にひと回転。人間の形をしていた彼の身体が、まばたき一つの間に硝子のように透け、丸く、水晶に似た、けれども弾力のある物体に変わる。着地せんとする瞬間、その下に白い皿が滑り込む。かくして、朔は水まんじゅうへと変貌を遂げた。
 蹴りを回避された怪人が振り返れば、頭上にも左右にも見覚えのある青年の姿はなく、足元には黒曜石のような餡を包んだ小さな水まんじゅうが、繊細な空気を醸し出しながら鎮座していた。
「え?やべぇ、超キレーじゃない?写真映えしそうなんですけど」
 思わずラビットバニーの目元が緩み、その感情を声で表しながら歩み寄る。丸く雨粒のように透き通った菓子に対し、珍しさを感じないものは多くないことだろう。カメラこそ持ち合わせていなかったが、この怪人は、上から横から、その神秘的とも言える姿に見とれていた。
 朔はこれを隙と見た。怪人を包んでいた薄紫のオーラは、まさにほとんど消えていたのだ。怪人は、この水まんじゅうの姿にエモさを感じたのだ。
 朔は頭の中、数をかぞえる。一つ、二つ、三つ。
 三つめと同時に彼はその姿を人間のそれへと戻し、飛び上がる。そして自身を支えていた皿に念じて浮かせると、そのままそれを怪人の被り物めがけて一直線。狙うは怪人の素顔。
 バン、と皿の叩きつけられる音が響く。が、被り物は固く、ラビットバニーの頭を離れることはなかった。
 皿が地に落ち、乾いた音を立てて悄然と回る。
「あっぶねぇー、ちょっと不意打ちってズルくね?」
 怪人は少々肝を冷やしたようだが、遠目に間合いを取って呼吸を一つ。
「ふむ、やはりおいそれと素顔を晒してはくれませんか……」
 一方の朔も、平静の中に少々の無念さを滲ませた低い声を発し、見据える。
 次なる手はどう来るか、互いに譲れぬ状況は続く。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ナナシ・ナナイ
エモいやつか、それならとっておきのがあるで。自分とこのお猿さんはつよかったわ、けどな、そのおかげで新技を編み出ことができたんや!

UC発動、そして複製した拷問具(蛇腹式鉄条網)を全身に巻き付け念力で操って即席パワーアシストスーツに!そして複製したアサルトウェポン(突撃銃)を空中に念力で固定し飛び回りながら格闘戦やで!

どや、強敵との闘いで編み出したリスクのある新技は!あと、血も滴るいい男のわいは!(【激痛耐性】)



●男の戦い方とは
「はー、こないなわがままボディの姉ちゃんも敵なんやなぁ」
 ラビットバニーの姿を見て、ナナシ・ナナイ(ナニワのマンハンター・f00913)は感心にも似た声を漏らす。カワイイ怪人『ラビットバニー』、頭の被り物は除くにしても、その四肢は異性の本能をくすぐらんばかりに魅惑的。それを見た誰しもが、視線を繋ぎとめられても仕方のない、そんな容姿だった。
「まあ、なんやろ、さっきまで戦っとった自分とこのお猿さんはつよかったわ」
 ナナシは怪人に先の戦闘の記録の一部一部をしみじみと語る。お猿さん──つまりエイプモンキーのことだが──は、相手の行動に合わせた創造物で対抗してくる、厄介な敵。『知恵比べ』、まさにそんな言葉がふさわしい戦いだったのだ。
「けどな、そのおかげで新技を編み出ことができたんや!」
 自信たっぷりに声を強めて言うナナシ。知恵比べを経た彼には、勝利とは別に得たものが一つあった。
「新技ぁ?よくわかんないけど、このバリアがある以上あーしの敵じゃねーから!」
 猟兵の言葉を斜に構えながら聞いていた怪人が口を開くと、その宣言の通りに再びバリアを展開した。生まれた薄紫のオーラは厚く、不敵な輝きを湛える。
 
「ほなわいはコレで行かしてもらうわ」
 対するナナシが見せたのは、鋭い棘を至るところに生やした鉄線、それは、さながらねじのように規則的な螺旋を描いていた。
 それで叩きに来る?こいつ、このバリアが無敵だって知らないの?ラビットバニーはそんなことを心の声にしながら、対峙する男の挙止動作から目を離さずにいた。
 すると、彼は何を思ったか、本来罪人に苦痛を与えるために用いるその鉄線を、あろうことか彼自身の腕に巻きつけ始めた。
「ふぅッ……!」
 棘のもたらす鋭い痛みを、深い呼吸で打ち消そうとする。腕から肩に達した鉄線は、そのまま胸部へ、胴へ。ナナシの全身が、鉄の棘に包まれていく。
「ねぇ何やってんの!?自分に武器巻きつけたら意味なくない!?」
 予想外に過ぎるその行動に、敵であるはずのラビットバニーも思わず驚きの声を上げる。
「ええからそんまま見ときや!おおおッ!」
 ナナシは雄叫びを上げながら、鉄線を巻きつける速度を一気に速めた。やがて、足にまで達した鉄線を軽く固定すると、自身の念力により外側に向く棘を一層長く伸ばした。
「どや、これが即席パワーアシストスーツや!」
 棘の鎧に包まれた彼は痛覚を精神力で遮断させていたものの、その下に見える服は赤い点が数多滲んでいた。中には赤い糸さえ垂れる箇所もあった。その姿はあたかも、絶望的な戦いに身を投じた悲壮、自身にあえて傷をつけてまで敵を倒さんとする意思の表明であるようにも見えた。
「どや、強敵との闘いで編み出したリスクのある新技は!あと、血も滴るいい男のわいは!」
「え、まって、それ超カッコよくない?すげぇ前のめりって感じ……」
「そやろ、エモい言うんはこういうことや!!」
 ナナシは力強く地を蹴って怪人に向かっていった。彼の演出に胸打たれた怪人の張っていたバリアのほとんどが消え、ごく一部のみを庇うばかりであることを確認したためだ。
「あっ、やべぇ、バリアが!」
 怪人がそれに気づく頃には、念力により猟兵の頭上に控えていた2丁のアサルトライフルから連続的な破裂音が響いていた。怪人は辛うじて残った皿ほどの大きさのバリアで銃弾を防ぐが、いざ修復しようとする段になると、先の悲壮的な演出が頭から離れない。
「おおおぉっ!」
 咆哮と共に、鉄の棘に守られたナナシの拳が眼前に迫る。怪人も負けじと構えを取ろうとするが──。
「がっっ!?」
 拳はラビットバニーの頭部を強く殴りつけた。被り物にこそ守られていたが、その強い衝撃に二つ後ずさる。
「ぃったいんだけど!ちょっと、そういうのズルくない?」
 ウサギ頭の怪人はその被り物を押さえながら、それまで発しなかったほどの声量で訴えた。一方のナナシは、一発見舞ってやった愉悦に口角を上げる。
「ほなら姉ちゃんもバリアなんか張らんで拳でかかってきたええんや」
「チッ、超ウザいわ、こいつ」
 言い返された怪人は露骨な舌打ちをした。

成功 🔵​🔵​🔴​

宙夢・拓未
▼エモ
まず敵の攻撃を、左肩にわざと食らう(【激痛耐性】で耐える)
傷口からは機械部品や火花が見える
「見られたか」
「一つ教えてやる。俺の正体を知った者は二通りいる」
「まず仲間。あとは、骸の海に還った敵だ!」

▼戦闘
【目覚める正義】を発動
バイクに【騎乗】
『アンバーアイズ』で【情報収集】、敵の赤べこキャノンの性質を観察
攻撃回数重視なら、左右に素早く蛇行する、【操縦】技能を駆使した【運転】で回避
それ以外の場合は蛇行はせず、安定した【操縦】の【運転】で正確な回避を狙う

接近できたら【二回攻撃】。ワンツーパンチで撹乱
本命は【属性攻撃】。『チクタクエンジン』からの電流を意図的に体外に流し、帯電させた回し蹴りを放つ



●正義の心は弾丸をも受ける
 突如、身の芯を揺さぶるようなエンジン音が辺りを支配はじめる。バリアを展開したラビットバニーが焦点を遠くにやると、その正体はすぐに判明した。宙夢・拓未(未知の運び手・f03032)のバイクが接近していたのだ。その赤い車体が想起させるのは薔薇の花弁か燻る炎か。加えて水晶のようなくっきりとした光沢を放つそれは、駆け抜けた景色を次々と映していく。
 拓未は挨拶代わりか、そのまま怪人へと一直線に迫る。来る──対する怪人が確信すると、その身体能力で高く飛び上がり突進を難なく回避した。
 怪人の身の下を駆け抜けたバイクは高い声を上げながらUターン、怪人の正面へと戻ると。背を隠すように再び旋回、停止した。
「あんたがここを守るボスか」
 低く乾いた破裂音の連続を残しながら、拓未は黒いヘルメットのシールドを開いて言葉を投げる。
「なにお前、ずいぶんハデハデな登場だけど、簡単に倒れてガッカリさせないでくんない?」
 意外な形で現れた猟兵に対し、豊満な怪人は先の回避で乱れた髪を振り整えながら挑発した。
「もちろんだ。証明してやる。ほら、来いよ」
 怪人の挑発に一切乱されることなく、拓未は堂々と言い返す。その片手の指先は自身の方へと招くよう。怪人へ先手を譲ることを意味していた。
「マジで言ってんの?こんなん喰らったらマジヤバイよ?」
 ラビットバニーが手を寄せた先は、大筒にも似た、否、大筒を超える口径を持つ巨大な銃器。その銃身の上には、独特な意匠により成形された牛のオブジェが異様な存在感を放ちながらのしかかっている。
 脅し半分で投げつけられた言葉にも、不敵な笑みを崩さない。
「いいんだな?後悔すんじゃねーぞ!!」
 怪人は腹から突き上げるような大声を上げ、トリガーを力任せに引く。瞬間、重い音とともに銃口から飛び出したのは、拳より一回りは大きい弾丸だった。サメのようなデザインの塗装がされたその弾丸は、拓未の身体目がけてほぼ一直線に襲い掛かる。が、彼はその弾丸をまっすぐ見つめるばかりで、一切身を翻す素振りを見せない。それどころか、またがったままのバイクと運命をともにしようとしているようにさえも見えた。そして──。

 激しい衝撃が空気に大きな波を生む。怪人の撃った一発が炸裂し、猟兵はおびただしい煙に包まれた。
「……なんだったの?あいつ」
 怪人が銃身を下ろす。自分が言い放った通り、あの男は本当に竜頭蛇尾だったのだろうか。
 やがて残響が消え、煙に覆われた視界も晴れだしたとき、その推察は否定されることとなった。
 いまだ獣のようにエンジン音を低く唸らせるバイク。そしてそれに腰を置いた拓未が、口角を上げていたのだ。
 ただ大きく変わっていたのは、その左肩。爆発のほとんど直撃状態に晒されたその皮膚は裂け、金属のワイヤーやポンプ、工業的な組織が露出していた。そう、彼は機械の身体に意識を移植した存在。電気エネルギーを動力とすることを証明するかのように、露出した機構の一部から断続的に火花が落ちる。
「あんた、生身の人間じゃなかったの……?」
「ああ。見られたか」
 怪人の問いに、その左肩を一瞥しながら応じる。
「一つ教えてやる。俺の正体を知った者は二通りいる」
 拓未は左の拳を寄せ、右手を開いて前に突き出すポーズをとった。
「まず仲間。あとは、骸の海に還った敵だ!いくぜ!トランスフォームッ!!」
 彼の全身がまばゆい光に包まれ、まばたき一つの間に鋼鉄の戦士へとその姿を変える。そのアーマーは、拓未が心に刻んだ強い正義の脈動を現すかのように炯々たる光を放っていた。
「え……ちょっとヤバいんだけど」
 その様子を見て、ラビットバニーは明確に心を揺さぶられた。こちらの先制を恐れずにまっすぐ受け、それでいて立っていられた者は過去に見たことがない。あまりに予想を超えていた事態に、彼女はその被り物の下ふるりと瞼を震わせていた。
 
「さあ、今度はこっちの番だぜ!」
 鋼鉄の戦士は、バイクのスロットルを全開にした。タイヤが地を引っ掻く高い音を立て、一気に加速する。対するラビットバニーはキャノンの口を慌てて向け、1発、2発と弾を吐かせるが、既にその武器の性質に当たりをつけていた拓未は、大胆な蛇行で掻い潜る。
 と、彼は加速のついた赤いバイクに突然足を乗せ、飛び上がりながら離脱。怪人が3発目の狙いを定めあぐねている間に、懐に飛び込みバリアを貫いた左右2発の拳にその頭部を揺さぶられた。
「うぐっ!」
 重心を崩されかけた怪人への追撃。拓未がその右脚へと力を込めると、無数の電気の帯が包む。
「喰らえ!!」
そして、拳を繰り出した反動に乗せてその身を回転させたまま、女怪人の肩に叩きこんだ。
「がっl?」
 この電光石火の反撃にはさすがの怪人も一瞬よろめくが、すぐに身のバランスを取り戻すと、いよいよもって怒りを露わにした。
「くっそぉ……超ムカつくんだけど!!」
 形勢はわずかながら猟兵側に寄っただろうか。しかし、対する怪人もこのままでは済ませておくわけにはいかなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フロース・ウェスペルティリオ
身体の1/3を人型(身長60cm程の幼体)に、残り2/3を液状体にした上で転移をお願いするねぇ
幼体は囮としてうさぎさんの前に、液状体は花びらの下を目立たないよう移動して、うさぎさんを中心に薄く網のように広がるよ

ひとまずうさぎさんには感謝を
キマフュの世界の先駆者さんだしねぇ
せっかくなのでうさぎさんをデフォルメした姿にでもなってみようかな?
幼体ベースなので、可愛いめにしておくよ

んで、幼体はうさぎさんの周りを回りつつ、加速しながらダガーで攻撃
幼体に気を取られてる隙に網で捕縛したり
体術に当たったと見せかけて液状になって弾けつつ、うさぎさんに体当たりするねぇ

狙うはお顔
鼻と口、そして目を覆い塞いでみようか



●瞳の奥に隠すもの
 カワイイ怪人『ラビットバニー』の目の前に、何かがぽとりと着地する。
 不意打ち!?──片足を引いて速やかにキャノンの口を向けた先には。人の姿をした、けれども炭のように黒く、人の腰にも満たないほどの大きさの存在があった。
「やぁやぁ、びっくりさせてごめんねぇ」
 声の主はフロース・ウェスペルティリオ(蝙蝠花・f00244)だった。女性と見紛うような長い髪を包むフードは瞳の輝きをも深く隠し、口元こそ見ゆれど、飄々とした雰囲気も加わり真意を読み取ることが難しい、そんな風貌の持ち主だった。
「なに、ずいぶんちっこいじゃんお前、それであーしに勝てると思ってんの?」
「どうだろうねぇ。まあまあ、それはそうと、ちょっと面白いものを見せてあげたいんだ。この世界の先駆者さんとしての敬意を、感謝の意を込めてねぇ」
 フロースは怪人から視線を外すと。全身の力が抜けたように肩を下げた。そして次の瞬間、彼は器を突然失った水のごとく、その姿を抽象化させはじめた。
 それまでフロースのものであったシルエットが、呼吸一つの間に溶けていく。そして、一旦原始的な姿になると、重力に抗いながらその身の丈を保ち、再び具象化した。己の身を自在に変化させることができるのは、ブラックタールである彼なればこその芸当。
 彼の新たなる姿は、今まさに対面しているラビットバニーほぼそのものだった。背丈こそ異なれど、頭の被り物からつま先に至るまで、フロースの認識した彼女がそのまま形となっていた。もっとも、ブラックタールなりにその肌は黒く、つまびらかには曖昧になってはいるが、本物と並べてラビットバニーであると分からない者はいないだろう。
「それ……あーしなの?」
 怪人が小さく訊ねると、彼女の姿となったフロースは無言でポーズを変える。愛想を振りまく、手に持つキャノンを肩に乗せるといった、おそらく彼女がするであろう仕草を、次々と見せつけた。
「……ちっちゃいあーし、かわいくね?」
 カワイイ怪人の名を持つ彼女は、自身──正しくは小さなもう一人の自分ではあるが──のカワイさにも心を揺さぶられることとなった。膝上ほどしかない分身が、軽く跳ね、回る。その愛くるしさに震えながら、しばしそのさまを見つめていた。

 しかし、そんな分身の正体が猟兵であることを忘れればどうなるか。
 小さなラビットバニーは、本物の周りをスキップしはじめる。しばらくはその様子も目で追っていた彼女だが、スキップが徐々に疾走へと変わった頃、綻びかけた心に再び警戒の念がうっすら生じだした。
「ふっ!」
 ラビットバニーへと姿を変えたフロースが次に声を発したのは、その手元に隠していた短剣を素早く放ったときだった。
 短剣の刃は怪人の右肩をかすめ、小さな赤い糸を描いた。怪人を包んでいたはずのバリアは、すでにその穴を露呈させていたのだ。
「つっ……!だまし討ちかよ!」
 思わぬ手とフロースの声に、突然現実へと引き戻される怪人。
「ほら、こっちこっち。もっと素早く動いてうさぎさんらしいところ見せてよ」
「くそっ、超ムカつくんだけど!そんなら手加減しねーから!」
 ラビットバニーは声を上げて身を翻し、バニースーツをチャイナドレスのような装いに変化させた。それは、彼女の身体能力が爆発的に高まったしるしだ。
「おらァーッ!」
 周囲を軽快に走り回るフロースを目で追うと、力の発動により冴え渡った判断力をもって、彼の行く先を的確に予想、鋭い蹴撃を繰り出した。駆け回るフロースをその脚が捉えるも、彼は液状の生命体。球のように変化させた身に対する手応えは弱かった。
「さてさて、ウチがこんなに小さい身体なのは何故なのか、わかるかな?」
「はぁ?」
 その身を自在に変化させる猟兵による突然の問いに対し、忌々しげに返すラビットバニー。その答えを考えるつもりも、教えてもらうつもりもなかった。が、軽視をするべきではなかった。
「あぁっ!?」
 怪人がそんな声を上げた頃には、黒く大きな網のような物体が覆いかぶさっていた。そう、フロースはただ怪人を翻弄していたわけではなかったのだ。そして、彼が怪人に投げかけた問いへの答えも明らかとなった。
 小さかった彼の姿、それはあくまで彼の『一部』。
「くそ、ウザっ……!」
 ラビットバニーはフロースのもう一部である網を振り払わんともがくが、液状生命体である彼は粘りつくように堪えて離さない。
 一服ほどの間だったろうか、振り払えねば突き破る、そう判断した怪人は、その身をコマのように回転させ、網から脱けだすことに成功した。
 が、しばしもがいた怪人にもいくらかの消耗があり、猟兵のさらなる追撃に応じる暇はなかった。
「よく頑張ったけど、こっちを忘れてもらっちゃさみしいねぇ」
 着地した怪人の目の前には、身を球のようにし、空を切って一直線に向かってくるフロースの姿があった。
「痛って……!」
 それは、バシン、と音を立てて怪人の頭部に叩きつけられ、まるで卵が割れたような形で粘りついた。正面からの衝撃に加えて視界を塞がれた怪人は、よろよろと後退し尻餅をついた。
「おやおや、うさぎさんにも転んだりすることがあるんだねぇ」
 ようやく『一つ』となったフロースが尻をさする怪人を見下ろす。フードの奥、隠れた瞳が送る視線に込めるは慈しみか、それとも嗜虐か。
 その答えは、へらりへらりと口角を上げる彼のみが知っている。

成功 🔵​🔵​🔴​

アンネリーゼ・ディンドルフ
【SPD】
アンネリーゼは今日もおいしいオブリビオン料理を求め依頼を受ける

「ラビットバニーですか。兎料理……」
お腹がぐーぐー鳴っている

「スピード勝負なら負けませんよ」
UC発動
「エルフでグールの私の寿命とあなたの寿命、どちらが早く尽きるのでしょう?」
ラビットバニーの攻撃を【ダンス】のように回避する
「エモいと感じてくれるまで避け続けますよ~」

バリアが解けたら高速に動き回りつつ【早業/2回攻撃】で宛ら弾幕系シューティングゲームのように矢を連射し、芸術的圧倒的物量でラビットバニーを仕留めようと試みる

「兎料理、ぜひ食べてみたいですね」



●狩人は肉を欲す
「なるほど、ラビットバニーですか」
 そう言いながらラビットバニーの元で歩みを止めたのは、アンネリーゼ・ディンドルフ(オブリビオン料理研究所の団長・f15093)だ。
 藍色の髪を揺らし片手に竪琴を抱いて立つ華奢な姿、その落ち着いた表情、それらは、平和と自由を愛する森の詩人たるエルフのイメージを正しくなぞるかのようだった。
 すると。
「兎料理……」
「はぁ?」
 ぽつり呟くアンネリーゼの腹が、低く唸るような音を立てる。彼女は空腹だった。
 が、それはこの猟兵がひとえに健啖なるゆえにあらず、かつてオブリビオンを喰らいて血肉とする異能を手にしてしまったがゆえに。彼女が向ける視線はオブリビオンに対するものであると同時に、己の飢えを満たす者に対するものでもあった。
「兎料理って、おいしいですよね」
 アンネリーゼはその表情を変えずに言葉を繰り返した。その様子には、怪人も困惑模様を見せる。
「あーしに言われても困るんだけど……ってゆーか、あんた、あーしが何モンなのかわかってて言ってんの?」
 怪人は腕を組み、アンネリーゼに対して威を張る。だが、この空腹の猟兵はそれに対しても冷静だった。
「はい。あなたはオブリビオンで、私はおいしいオブリビオン料理を求めている。
 私は兎料理をおいしいと感じていて、あなたは兎の頭をしたオブリビオンである。何もおかしいことはないですね」。
「そういうこと訊いてるんじゃねーんだけど!」
「はぁ。まあいずれにしても、私が勝ったらおとなしく兎料理になってくださいね」
 ここにきてついに、アンネリーゼの表情が変わった。それは狩人として相手を仕留めんとする、不敵な表情。
「オイオイ、大幹部の一人であるあーしをなめないでくんない?」
 怪人はすでに薄紫のオーラをまとっていた。

「スピード勝負なら負けませんよ」
 アンネリーゼの腹が再び唸る。その音が鳴り終えるのを待たずに、彼女を取り巻く空気の流れがうっすらと変化した。自身の飢えを再認識することにより、何としてもそれを満たさんと力を解放した瞬間だった。
「エルフでグールの私の寿命とあなたの寿命、どちらが早く尽きるのでしょう?」
「はっ、言ってくれるじゃん。そんなん、すぐにわからせてやっから!」
 猟兵の挑発に笑って返すラビットバニー。その拳を握って身を翻すと、やはりその激烈な力の枷を外した。
「さあ、避けきれっかよ!」
 怪人は一番に拳のラッシュを繰り出した。雹のように降りつける拳。アンネリーゼはそれを髪に耳に肩に掠めながら回避する。
「ほら、当たってませんよ」
「はっ、多少はできんじゃん?ならこっちはどうだよ!」
 ラビットバニーの目が光る。
 猟兵を襲う拳の連打は、次の瞬間には脚のラッシュに変わった。上中下に左右も加わり、不規則な蹴撃がナイフのように打ち出される。アンネリーゼはこれも一つ一つ冷静に見切る。
「エモいと感じてくれるまで避け続けますよ~」
 アンネリーゼは再び挑発するように言った。彼女はこれを狙っていたのだ。
「オイオイ、ただ避けてるだけであーしがそんなこと思うかよ!」
 ラビットバニーも負けじと突っぱねる。次には、その蹴撃に再び拳も織り交ぜ、七色の攻撃にシフトした。

 攻める側といなす側、拮抗した状況はしばし続いた。
 が、力を一時的に爆発させているとはいえ、わずかながらにも疲弊の色が現れた点は同様だった。両者は共に飛び退くように間合いを取る。
「なんだよ、ここまでやっても当たんないの?」
 小さく肩で息を切らしながら、怪人は苛立ちを表す。対するアンネリーゼも同様、その表情は冷静ながら、やはり呼吸を激しくさせていた。
「あなたと同じように身を軽くしましたからね。それに、命まで削ってますから」
 そう、彼女はその身体能力を得る代償として、命の蝋燭に灯る火を一時的に激しくさせていたのだ。
 その時、怪人を包む光の鉄壁に綻びが見えた。
「ちょっと、それってあーしと同じじゃん。なに、互いに命削りながらやりあってたっていうの?」
 わずかながらも、それはラビットバニーの琴線に響いたらしい。
 自身の命を追い込んででも相手を打ち倒す。喰う側の意地と、喰われぬ側の意地。同じ強さがぶつかるならば、命すら費やそう。そんなビジョンが、怪人の心をちくりと突いた。
 アンネリーゼは隙を逃さず、竪琴を構えた。弓としての機構をも持つその竪琴にいくつもの矢をあてがい、怪人の横に駆け込みながら射続けた。
「兎料理、ぜひ食べてみたいですね」
 ぽつりと言う。いくつもの矢はその間にも、音階の異なる弦のように規則的で段階的な筋を描いて怪人に向かっていく。
「喰われて、やるかよー!!」
 と、ラビットバニーは叫んだ。そうして、低く飛ぶと、アンネリーゼへと蹴りを放った。
 向かい来る矢の2本ほどが怪人の脚をわずかに裂く。直後、怪人の足が、アンネリーゼの左肩を捉えた。
「くっ!」
 思い切った一手に思わず声を発しながら、彼女は身を横に捻ってその衝撃を流す。

 再び両者間合いを取り、状況が膠着すると、アンネリーゼは一時的に強化させた力に再び枷をはめた。
 この敵を倒すのにはまだ時間がかかる。しかし、ここで時間をかけて命脈尽きては意味がない。
 猟兵も、怪人も、しばし次なる一手をうかがっていた。
 食うか食われるかの勝負は、いまだ決せず。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

アヤネ・ラグランジェ
見た目と違って強敵というわけだネ
じゃあ僕なりにやってみよう

手紙を封筒から取り出し読み上げる

Dearソヨゴ
君に告げていない言葉を綴るよ
「雪色の咲く」世界で
初めて君と出会い、作戦に参加したネ
実を言えば僕も初めての戦いで緊張していた
素振りも見せずにいたけど
一人で挑むのはちょっと寂しいと思っていたんだ
だから君が最後に
これからも宜しくですよ
と言ってくれて
実は心底うれしかった
あの時は言えなかったけど
僕からもずっとよろしくネ

読み終えた手紙を破り捨てる
言葉は届かなくていい
気持ちだけ、届け

UC展開
対UDCライフルを触手で支えて射撃
重いからネ
赤べこキャノンと撃ち合いだ
おはなハッキングは【気合い】とUCで対抗するよ



●信ずる者があればこそ
「Dear、ソヨゴ」
 突然、紙の広がる乾いた音に続いて、別の声が響いた。
 アヤネ・ラグランジェ(颱風・f00432)が開いたのは一通の手紙。それは、彼女から、親愛なる相棒に宛てたものだった。
「!」
 その姿を視界に捉えたラビットバニーは、キャノンの口を向け、その挙止を見届けようとしていた。
「──君に告げていない言葉を綴るよ」
 怪人を一瞥だにすることなく、落ち着いた声を続ける。
 紡ぐのは、いまだ伝えきれていなかったアヤネの想い。

──「雪色の咲く」世界で
──初めて君と出会い、作戦に参加したネ

 振り返るは、猟兵として初めて足を踏み入れた氷の迷宮。
 冷たい風の包む地で果たした運命的な出会いの瞬間を、そしてともに歩を進めた白い道を、アヤネは改めて思い出した。

──実を言えば僕も初めての戦いで緊張していた
──素振りも見せずにいたけど
──一人で挑むのはちょっと寂しいと思っていたんだ

 初めて出会ったときから頼もしそうにしてくれていた。だからこそ今、打ち明けられることがある。
 それは、結果的にそうなりはしなかったのだけれど、もしもあの仕事に一人で向かっていたならばという、仮定と推測。
 誰にも負けない努力の量でここまでのし上がってきた。その誇りが、自分の弱さを見せることを許さなかった。
 雪の花のように固く、けれども握れば脆く崩れてしまいそうだった。
 彼女と出会ったことが、そんな心を解きほぐしてくれた。

──だから君が最後に
──これからも宜しくですよ
──と言ってくれて
──実は心底うれしかった

 これからも宜しく。些細だけれども、ありふれてはいるけれども、太陽のように暖かな一言。
 あの言葉で、どんなに癒やされただろう。
 冬の迷宮を、どんなに暖かく感じることができただろう。
 あの出会いが、あの言葉があったからこそ、今の僕でいられることができる。
 その感謝を、今、言葉に乗せて、君に返そう。
 願わくは、彼女とのこの関係がいつまでも続かんことを。

──あの時は言えなかったけど
──僕からもずっとよろしくネ

「……。」
 アヤネは手紙を読み終えると、目を閉じてひとつ大きく息を吸う。そうして、手紙の上端を両手で掴むと、それを真っ二つに引き裂き、さらにはそれを四つ、八つと千切りだした。
 彼女のずっと言えなかった想いが、小さな紙片となっていく。
 やがて、コインほどの大きさにまで破った手紙を、頭上へと放り投げる。
 それはまさに花弁のように、冬を耐えて一杯に咲いた花の一片一片のように、はらり、はらりと、舞い落ちるのだった。

「……や、やば、超顔赤いんだけど」
 沈黙を先に破ったのは、ラビットバニーのほうだった。アヤメに向けていたはずのキャノンの口は下を向き、トリガーに添えていたはずの片手は、恥ずかしさに火照る頬を包んでいた。
 アヤメはいまだ言葉を発することなく、小さく笑う。
「ちょっと、不意打ちでのろけるとかマジずるくない!?」
 純粋なる想いの告白に冷静さを失った怪人を包んでいた光の壁は、気づけば消えていた。
「さて、僕の気は済んだよ。さあ、撃ち合いといこうか」
 ようやく言葉を発したアヤメは、その左手に握るライフルを見せながら怪人に言葉を投げる。同時に、彼女の足元からは、数本の黒く太い触手が姿を表した。
「な……なんなんだよお前!もう!やってやるんだから!」
 対するラビットバニーが再びキャノンをアヤメへと向ける。もはやバリアを再展開するどころではない彼女は、叫びながらすぐさま先制の一発を放った。大きな爆発音を立て、弾丸がアヤメへと向かっていく。当たれば、手痛い傷を負う。
 アヤメの対応は迅速だった。怪人が叫ぶとほぼ同時に、彼女は左手にあった重いライフルを触手に持たせていたのだ。そうして、怪人の発砲とやはりほぼ同時に、そのライフルから弾が撃ち出されていた。
 重量のあるキャノンの弾と小さなライフルの銀弾が正面からかちあい、爆風と煙が二者の間を圧した。
「くそっ……当たらなかったし」
 煙に視界を遮られた怪人はすぐさま二発目を篭めようとする。が、対する猟兵がわずかに早かった。
 消えきらない煙の流れを貫いて、銀の弾丸がまっすぐ向かい来る。
 怪人はとっさに回避を試みるも、弾丸はその右肩に容赦なく飛び込んだ。
「いっっ!?」
 怪人の声が苦痛に歪む。
「撃ち合いは、僕のほうに軍配が上がったようだね」
 アヤメは、寄ることもなく怪人に言う。その眼光は、戦う者の色を強く滲ませていた。
 ともに歩んで来、これからもともに歩みゆくであろう我が親愛なる相棒のために戦う者の色を。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒鵺・瑞樹
メイド服を纏い女装。
がっつり普通の女性のように化粧、行動も気を付ける。
武器は自分自身でもあるナイフをスカートの中に隠し持つ。

男が演じる「女性らしさ」にエモさを感じて貰えればと。
惜しむらくは変装のスキル持ってない事だが、容姿がそっくりな元主もメイド姿は自信があったのでいけると思いたい。
カメラの接写にも耐えられるよう、肌の調子とか化粧だけでは誤魔化せない所には気を付ける。

バリアが解けたら錬成カミヤドリで本体のナイフの弾幕を張り攻撃。
おそらく回避なり迎撃されるだろうから、その隙を【第六感】で感知、シーブズ・ギャンビットで【暗殺】の一撃で仕留めにかかる。
もちろんメイド服は早脱ぎし目くらましに使う。



●突き立てられた刃
 猟兵たちはカワイイ怪人『ラビットバニー』の展開する絶対無敵バリアを幾度も貫き、その本体へと少しずつ、着実に打撃を与えていた。
「う、う、くっそぉ……あーしがここまでやられるとかマジありえない……」
 ラビットバニーは奥歯を食いしばり、苛立ちを露わにする。彼女の頭部やバニースーツは煤でところどころが汚れ、今や、カワイイ怪人の名とその実態の差を気にしている余裕などなかった。
 煤を軽く手のひらで拭うと、怪人は拳を握り、再びバリアを展開する。
「けど、まだあーしにはこのバリアがあるから!負けねーから!」
 そして誰に向けるでもなく、その意地を叫びに表す。展開された光のオーラが、一層の強さを増した。

 その時、ゆっくりと近づく足音とともに現れたのは、メイド姿の人物。
 銀色の長い髪が垂れ絹のように揺れ、細く開いた目の奥に水宝玉に近い瞳が待つ、実に落ち着いた雰囲気だ。
「……あ?メイドぉ?どうせあんたもあーしらのジャマをしにきたんでしょ?」
「……」
 黒鵺・瑞樹(辰星写し・f17491)は怪人の問いに声も出さず、カーテシーをひとつ。
 ゆったりとした動作でスカートの裾を取り一礼するさまは愛らしく、『彼女』が本物のメイドであるか否かにかかわらず、異性の心を捉えて離さないことだろう。
 やがて顔をわずかに上げると、影が避け、仄白い肌があらわになる。その目鼻立ちからは若く見えるが、『彼女』が醸し出す雰囲気や仕草は大人びており、その齢を特定することは難しい。
「もしかして、あーしがカワイイ怪人って言われてんのを知ってて、カワイイ対決でもしようってわけ?
 悪いけどこっちは今そんな暇ねーし、なんなら今ならその顔をふっ飛ばしてやることだってできんだけど?」
「……」
 瑞樹はいまだ黙す。しかして視線もまた離さず、何を発するか分からぬ不安が怪人の中に湧いていた。
「ちょっと!何か言えよ!!」
 業を煮やしたラビットバニーが恫喝する。すると、瑞樹はようやく姿勢を崩し、発語しはじめた。
 
「……やれやれ、せっかちな怪人だな」
 『彼女』から発せられたのは、女性とは思えぬ低い声だった。予想していなかったトーンに、怪人は思わず顔を寄せる。
「え、待って、あんた男だったの!?」
「まあな。男が演じる『女性らしさ』というのもいいもんだろ?」
 笑いながら、瑞樹はその身をひらり一回転させる。そう、彼はその身の丈を、年下に見られがちな顔立ちを利用し、女性へ扮装していたのだ。動き始めた回転木馬のごとく広がる絹のような銀髪の下、化粧の乗った彼の頬が、まぶたが、さらりと違和感なく存在していた。その緻密さは、たとえ間近に寄られたとしてもほとんどの人が男性と気づかなかろうほどであった。
「どうだ?エモいと感じてくれたか?」
 瑞樹はそっとスカートを小さく上げ、手を添えて訊ねる。
「う、うるさい!女だと思ってたからビックリしただけだし!!」
 ラビットバニーの顔は既に仄かに赤く染まっていた。彼女はすっかり騙されていた自分に、そして自分の目をまんまと騙した瑞樹の中性的な顔立ちに恥じらいを覚えていたのだった。その身を包んでいたオーラが弱まっていることを忘れて。
「ビックリしただけか。そいつは……残念だ!」
 言い終えると同時に、瑞樹はスカートに添えた手を素早く突き出した。
 その手から放たれたのは、黒く光る刃。五つの影がまっすぐ一直線に、怪人の胸元へと向かっていく。
 が、隙を突いたかと思われたその不意打ちを、怪人は見落としていなかった。
「はいぃやァー!!」
 彼女はその目を光らせ、再び力の枷を外すと同時、迫るナイフの1本を片足で蹴り上げながら飛び上がる、浅葱色の髪がふわり揺れた。
「ふっ!」
 打ち上げられたナイフを手に戻した瑞樹が今一度、上空を舞うラビットバニーめがけて素早く振り投げる。切っ先の定まったナイフは、ターゲットである怪人の身を掠め、柄から叩き落とされた。
 飛び上がったラビットバニーが着地体勢に入る。その瞬間、瑞樹はなんと着ていたメイド服を脱ぎ払った。
「!?」
 大きなスカートを提げたメイド服が、躍るように舞いながら地面へと力なく落ちる。この予想外の行動に怪人は一瞬怯みかけつつも足を地に着く。
「ぐぅっ!?」
 突如、ラビットバニーの背中に激痛が走り、彼女は片膝を着いた。
 そうして痛みの根本にそっと指を寄せると、そこには、あの猟兵が投げたはずの黒い刃の先が刺さっていたのだった。
「飛んで避けるさまは見栄えがいいが、自由が利きにくいのが難点だな」
 背後に回り込んでいた瑞樹が皮肉めかして怪人に言う。先に身軽になったのは、視界を惑わせるためだけにとどまらなかったのだ。
「いっ、た……!!」
 ラビットバニーの目が苦痛と憤怒に染まる。徐々に追い詰められる自身の不甲斐なさを、彼女は確かに感じ始めていた。
 戦いの天秤は、猟兵の側に傾きつつある。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ノイエ・ウインタース
アレンジ歓迎

>行動
【SPD】
※あざといです(あざといです)
でも本人は本気の本気

まずは名乗りですね!ノイはノイエです
ラビットバニーさんですか
お姉さんですからラビットバニーねえさまですね!
よろしくお願いします!いざ!(しゃっと構える6歳児。ふんす)

大真面目に戦闘はします
UC【灰燼拳】を軸に【グラップル】

なんと言う技(ぽてっと倒れ…たと思ったらがばっと起き上がり)
ラビットバニーねえさま!今の技なんですか?うさちゃんカンフー!?
凄い!ノイもやってみたい!(ちょう目をきらきらさせて上目遣い尻尾ぱたぱた耳ぴこぴこ)
こう!そしてこうですか!(一生懸命トレースする6歳児)
そして至近距離で発動するUC。



●花を潤すのは清き心か
 ──ここまでエモいと感じまくったことがあったかな。
 一度は折った片膝を立てながら、カワイイ怪人『ラビットバニー』は記憶の糸を手繰った。
 猟兵たちの手痛い攻撃を受け続けた彼女の息は乱れ、十全の力を出すにも少しの苦痛が伴うような状態だった。ウサギの姿をした頭部、バニースーツ、露出した肌、今や傷や煤のついていないものはなく、大勢はすでに決しているかのように見えた。
 ──ちょっと思い出せないな。もしかすると、なかったかもしんない。
 全信頼を寄せてきた自身の絶対無敵バリア。それが猟兵たちの数々の演出によって、何度も破られた。彼女の琴線に触れる、エモい演出によって。
 こんなにも精神を乱される自分が悔しく、けれどもエモいものはこんなに溢れている、そう感じることができたのもまた事実であり、やっぱり悔しかった。
 彼女の脳内は、燃えるような慙愧により混沌としていた。
 
 そんな彼女の前に現れる、純粋なる進攻者。名は──。
「ノイはノイエです!」
 ノイエ・ウインタース(拳狼・f16246)はあどけない声で高らかに名乗りを上げた。怪人の腰ほどの身の丈しか持たぬ彼の瞳はサファイアの輝きを放ち、銀髪は細く柔らかに揺れる。
「……あんたも、あーしに用があるワケね」
 怪人の声は低く、すでに愛想を手放していた。今となっては、愛想など何になろう。
「はい!ラビットバニーさんですか。お姉さんですからラビットバニーねえさまですね!」
「……」
 ノイエは無垢なる瞳で、またある種の憧れをもって、ラビットバニーへと投げかけた。彼女は答えず、ウサギの頭部、無機質な視線を送っていた。
 御託は並べない。そうする必要性も感じなかったし、並べたところで、あの純粋な瞳には決して届かないと思ったから。ただ一言──。
「……来なよ」
「はい!よろしくお願いします!いざ!」
 その声にも怯まず、気合の礼と共に構えるノイエ。対する怪人も、静かに力を解放させた。
「たぁー!!」。
 ノイエは先手を取ってラビットバニーの懐へ飛び込むと、左の拳を繰り出し、続いて身を一回転させ右足を繰り出す。しかし、すでに光の鉄壁に包まれていた状態の怪人は、痛みを感じるどころか衝撃に身を退くこともなく、その構えを一切崩さない。
「ふっ!」
 反撃とばかりに怪人が軽く脚を払うと、ノイエはバランスを崩して尻餅をついた。
 が、ノイエはすぐさま起き上がると、今度は三歩引き直線的に飛び込みながら脚を突き出す。
「えーい!!」
 が、怪人は横に身を翻し、その蹴撃を回避する。ノイエは再び、その腰を地につけることとなった。
「わう……!」
「ほら、どうしたよ?さっきの勢いがもうなくなったわけじゃないっしょ?」
 猟兵の見せる背に対して軽く挑発するラビットバニー。
 すると。
「ラビットバニーねえさま!今の技なんですか?うさちゃんカンフー!?」
「はぁ?」
 再び起き上がり、三手目を放ってくるかと思われたノイエは、怪人に駆け寄り瞳を輝かせた。
「凄い!ノイもやってみたい!教えてください!」
「な、なんなの……?」
 理解不能に過ぎる猟兵の要求に、ラビットバニーはただうろたえる。が、そのまっすぐな目に、裏のない表情に、黙ったままその場で先の回避を繰り返した。
「ほうほう!こうですか!……わっ」
 見よう見まねでそれを真似るノイエ。しかし、バランスを崩し、よろめく。
「こうだってば」
「おおっ、こうですか!……おっと」
「違うって、こうだから!」
「こう!ですか!」
「だーかーらー!」
 繰り返すごとに、ラビットバニーの声に徐々に覇気が戻ってくる。
 ノイエの奇をてらわず、水晶のように淀みない感情が、悔しさに囚われていたラビットバニーの心を氷解させた。
「ありがとうございます!ここから先はもっと練習してうまくなります!!それじゃあ、続きをやりましょう!!」
 小さな少年から提案された、第二ラウンド。ラビットバニーの心境は明らかに変化していた。
「てーい!!」
 ノイエの純粋さはただ陽の光のように眩しく、秘境の川のように清廉で。
「はぁたァー!!」
 けれども訴える力はハンマーのように強く、火のように激しかった。
「うりゃりゃー!!」
 彼女が触れた数々のエモい人、こと、状況。どれが一番かなど決めることはしない。けれども確かに、ノイエのこのひたむきな姿も、悪しきに触れれば染まってしまいそうな純白さもまた、エモいことを知った。
 そうしてラビットバニーの感情のピースが一つはまったとき、光の壁はその輝きを消した。そして──。
「たぁー!!」
 ノイエが放った強烈な回し蹴りが、ラビットバニーの頭を捉えた。
「ぐ……っ」
 瞬間、これまで受けたすべての傷が火を吹くように痛み、怪人はとうとうその背を花咲くフィールドの地面に着けた。
 
「勝った!お手合わせありがとうございました!!」
 爽やかな声を発すノイエを一瞥だにせず、倒れたまま天を見つめる。
「ははっ……最高にエモかったよ。あんがとね」
 感謝の言葉を残したカワイイ怪人『ラビットバニー』は、地に咲く花の花弁のように、風にさらり触られるように消えていった、
 かくして、一つの戦いが幕を閉じる。しかし、キマイラフューチャーの命運を賭けた戦いはまだ終わらない。
 『システム・フラワーズ』のうっすら広がる花香の中を進み、猟兵たちは最中枢を目指すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月19日


挿絵イラスト