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バトルオブフラワーズ⑩〜貫通するエモーショナル

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ #ラビットバニー

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「まじびびった! だってモンキーやられてっし!」
 第一の幹部を打ち破った先で猟兵たちを待ち受けていたのは、美女の体にファンシーな兎面を被り、赤べこの付いた大砲を携えた怪人。
 エイプモンキー撃破の報に仰天したカワイイ怪人『ラビットバニー』であったが、すぐさま気分を切り替えてファサァッと髪をかき上げる。
「でもまあ、あーしが全員始末すりゃいいか。なんつっても、あーしにはこのユーベルコードがあるんだから。それで負けるわけなくない?」
 自慢の『絶対無敵バリア』を張って、システム・フラワーズの攻略を進める猟兵の前に立ちはだかるラビットバニー。
 ――彼女はまだ知らない。どんな能力にも真の絶対も無敵もないことを、先のお猿さんが証明してしまっていることを。


「バトルオブフラワーズへの参戦に感謝します。リムは現在の戦況を報告します」
 グリモアベースに集った猟兵たちの前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(人間の精霊術士・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「皆様の活躍によって、6つの『ザ・ステージ』は制圧され、キマイラフューチャーの中枢である『システム・フラワーズ』への道は開かれました。ここを守るのはオブリビオン・フォーミュラに仕える怪人幹部たち。第二の関門として立ちはだかるのはカワイイ怪人『ラビットバニー』です」
 怪人幹部はいずれも強大なオブリビオン。だが、これを撃破しなければシステム・フラワーズを占領せんとする『ドン・フリーダム』の元へは辿り着けない。
 残る怪人はあと2人。カタストロフ発動までに残された時間は、決して長くはない。

「システム・フラワーズの内部は『咲き乱れる花々の空間』で、花々が集まって足場になる仕組みになっています。現在は全ての『花の足場』がラビットバニーに集中しており、彼女を倒さなければ先に進むことはできません」
 そして先のエイプモンキー同様、彼女もまた強力なユーベルコードを有している。
「ラビットバニーの体は『絶対無敵バリア』に覆われており、ありとあらゆる攻撃が一切効きません。が、このバリアはラビットバニーが『エモい』ものを目撃すると一時的に解除されるようです」
 どうやらバリアの展開には精神集中が必要らしく、『エモい』ものを見て感情が揺らいでしまうとバリアを維持していられないらしい。
「加えてラビットバニーが『エモい』と感じる判断基準はわりと雑です。かわいさ、男らしさ、おもしろさ、血だらけで立ち上がる様子、突然のパンチラ、イケメンの壁ドン、水を吐き出すフグ――何でもアリです」
 たとえばSNSでバズったり閲覧数が稼げたりしそうなもの、が一つの基準になるだろうか。最強能力なので制限が厳しいのかもしれない。
「なのでバリアの解除自体にはそこまで苦戦することは無いかもしれません。ですがラビットバニーはバリアを抜きにした戦闘力で見ても相当な実力者であり、たとえ皆様であっても苦戦は免れぬであろう強敵です」
 バリアの解除は、むしろ彼女に挑むための前提条件と言い換えても良いかもしれない。そこから勝利を掴み取れるか否かは、猟兵たちの実力と戦術にかかっている。
「相手を甘く見ればバリアを解除しても先制の一撃で倒されかねません。努々油断しないよう、ご注意ください」

 カワイイ怪人ラビットバニーは強大なオブリビオンである。猟兵の戦術が上手く嵌って撃破に成功しても、完全に力尽きるまで骸の海から蘇る力を持つ。
「ですが、短期間に許容値を超える回数倒されれば、もはや復活は不可能となります」
 何度でもシステム・フラワーズに出現するラビットバニーに挑み、他の猟兵のチームと合わせた撃破数が一定に達すれば、この怪人を完全に撃破できるはずだ。
「怪人幹部の後にはフォーミュラである『ドン・フリーダム』、加えて所属不明の謎のオブリビオンの存在も予知されています。ここで立ち止まっている余裕はありません。たとえ強敵であっても、皆様なら必ず撃破できる筈です。どうか全力で挑んでください」
 リミティアは真剣な眼差しで猟兵たちを見つめて、手のひらにグリモアを浮かべる。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 本シナリオの攻略目標は「⑩カワイイ怪人『ラビットバニー』」となります。
 困難な闘いが予想されますので、以下の注意事項にも目を通したうえで、苦戦や失敗も覚悟の上で挑戦してください。

 ラビットバニーは必ず、猟兵に先制して『絶対無敵バリアを展開するユーベルコード(POW、SPD、WIZ)』を使ってきます。
 絶対無敵バリアは本当に絶対無敵で、あらゆる攻撃を無効化しますが、「ラビットバニーがエモい物を目撃する」と、精神集中が乱れてバリアが消滅します。
 ラビットバニーのエモい基準はかなりユルいので、バリアの解除は比較的容易と思われますが、バリアなしでも彼女は相当の実力者です。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『カワイイ怪人『ラビットバニー』』

POW   :    赤べこキャノン
【絶対無敵バリア展開後、赤べこキャノン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    うさちゃんカンフー
【絶対無敵バリア展開後、兎面の目が光る】事で【うさちゃんカンフーモード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    おはなハッキング
【絶対無敵バリア展開後、両手の指先】から【システム・フラワーズ制御ビーム】を放ち、【花の足場を自在に操作する事】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:和狸56

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ニレッド・アロウン
無敵バリアなんてもん、簡単に破壊してあげます。と言いたいですが、エモいという意味がいまいち分からないので、そこらへんは味方に任せておきましょうか。

敵に対して、バリアなんかに引きこもって恥ずかしくないのですかという具合に【挑発】して攻撃をひたすら受け続けましょう。ある程度は魔力障壁の【オーラ防御】や水晶鋏の【武器受け】で防ぎきれますが、障壁崩壊後は負傷を【覚悟】して味方への攻撃を【かばう】ことにしましょうか。
泥臭い?知ったことないです、味方の猟兵が何とかしてくれるはずなんです、それまで耐えりゃ私の勝ちですからねー。それまでの根比べだ、とことん付き合ってもらいましょうか。

※アドリブ・絡み歓迎


トリテレイア・ゼロナイン
エ、エモいとはなんでしょう……
いえ、キマイラFの安寧の為、騎士としてやってみせましょう
勝負です、ラビットバニー!

スラスターを吹かして滑るように●スライディングしつつ接近。キャノンの攻撃は●盾受け、●武器受けを駆使し軽減しつつ、動作不能にならない身体の箇所で●かばいます
攻撃を受けたら装甲に仕込んだ●破壊工作を起動させ、見た目は派手な爆発を起こすことで●目潰し。やられたように見せかけます
その隙にUCを発動、ダメージを回復し「煙の中から合体形態で飛び出す」ことでバリアを解除しつつ、自身を●ハッキングし出力を機動力に割り振り熱センサーで位置を●見切りつつ●だまし討ち
●怪力でのランスチャージで攻撃します


ソナタ・アーティライエ
『エモい』って、なんでしょう?
『可愛い』とかでしょうか?
なら、ここはにゃんこさんたちの出番です
【幻妖童歌】で呼び出された可愛らしく愛らしい仔猫たちの姿に
心動かされない人なんていないと思うのです
あっ、そんなとこ入っちゃ駄目ですよ~

『エモい』というもので感情を揺さぶられる相手なら
仔猫たちを蹴散らして暴れるのを多少なりとも躊躇してくれるはず
そのうえで仔猫たちの能力、『触れたものを透明にする』で
足場の花々のあちこちを見えなくさせたり元に戻したりで攪乱すれば
普段通りに動くのは難しいと思うのです

わたしにも仔猫さんたちにも直接的な攻撃手段がないので
他の方と連携お願いできたら助かります



 システム・フラワーズ内部に転移し、咲き乱れる花々の空間を駆け抜ける猟兵たちの前に立ちはだかったのは、第二の幹部たる兎面の怪人。
「こんな所までわざわざごくろーさん。ケド、こっから先は通行止めだし!」
 絶対無敵バリアを展開したカワイイ怪人『ラビットバニー』が指先からビームを放つと、周囲の足場が崩れ始め、荒れ狂う花吹雪となって猟兵たちを襲う。
「このバリアがある限りあーしが負けるわけないし。エモいものでも見せられない限り!」
 フラグを立てるのは怪人の性分なのか。しかし容易ならざる強敵には違いない。

「無敵バリアなんてもん、簡単に破壊してあげます。と言いたいですが、エモいという意味がいまいち分からないので、そこらへんは味方に任せておきましょうか」
 先陣を切ったのはニレッド・アロウン(水晶鋏の似非天使・f09465)。視界を埋め尽くさんばかりの花吹雪を、その身に纏った魔力障壁で受け止め、愛用の水晶鋏で切り払い、後方への被害を防ぐ。
「にしても、バリアなんかに引きこもって一方的に攻撃なんて、恥ずかしくないのですか?」
「ぜんぜん! せっかくの無敵能力なんだからバンバン使ってナンボっしょ!」
 ニレッドの挑発にラビットバニーは耳を貸さず、バリアを維持したまま【おはなハッキング】で花の足場を操作し続ける。
 このままでは、猟兵たちの立つ足元まで無くなりかねない。

 そうなる前に、ニレッドが敵の攻撃を受け止めている間に、ソナタ・アーティライエ(未完成オルゴール・f00340)がバリア解除のために動く。
「『エモい』って、なんでしょう? 『可愛い』とかでしょうか? なら、ここはにゃんこさんたちの出番です」
 言葉の意味を掴みかねながらも彼女が出した結論は、幻妖童歌 其之百六十六『迷子の仔猫』による仔猫たちの召喚。
「可愛らしく愛らしい仔猫たちの姿に心動かされない人なんていないと思うのです」
 ソナタの歌声に惹かれて呼び集められた妖(あやかし)の仔猫たちが、にゃーおにゃーおと鳴きながら花の足場をぴょんぴょんと跳び回る。

 それを見た瞬間のラビットバニーの反応は劇的だった。
「え、なにそれなにそれ! ぬこじゃん! やっば激エモ! 激カワ! ちょっと撫でさせて!」
 感情を揺さぶられバリアが消滅――というより自分から解除したようにも見える――した怪人は、きゃーきゃーと騒ぎながら仔猫に抱きつく。いたずら好きで甘えん坊な仔猫たちは怪人の抱擁も拒むことなく、可愛らしい仕草と鳴き声で誘惑する。
「あー、ヤッバ、マジエモい。って、あっははは、くすぐったいし!」
「あっ、そんなとこ入っちゃ駄目ですよ~」
 ラビットバニーの髪の毛や胸の谷間に飛び込んで悪戯する仔猫を、たしなめつつも見守るソナタ。
 戦闘中にも関わらず、ものすごくエモエモで和やかな光景がそこにはあった。

「エ、エモいとはなんでしょう……」
 いきなり骨抜きにされてにゃんこと戯れる敵を見て、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は困惑する。強敵だと聞いてやって来てみればいきなりこの様である。それは困惑もしよう。しかしこれがエモの力なのである。
 果たしてトリテレイアはこんなエモさを見せ付けることができるのか。
「いえ、キマイラFの安寧の為、騎士としてやってみせましょう。勝負です、ラビットバニー!」
 儀礼剣と大型盾を構えた機械騎士は脚部のスラスターを吹かし、崩れゆく足場の上を滑るように疾走する。

「あっ、そうだったバトッてる最中だった! ごめんねぬこちゃん!」
 一瞬マジで戦闘のことを忘れていたらしいラビットバニーだったが、戦意を向けられた瞬間の反応は速かった。
 仔猫たちを蹴散らしてしまわないよう、花の足場を操作して遠くへ押しのけながら、両手で担いだ【赤べこキャノン】の砲口を猟兵たちに向ける。
「そんじゃアゲてくぞー! どっかーん!!」
 ふざけた掛け声と合わせて発射された砲弾は空中で分裂し、トリテレイア、ソナタ、ニレッドの三者を同時に襲う。
「!!」
 トリテレイアは咄嗟に剣と盾で主要な部位を守りながら、動作に支障のない身体箇所であえてその砲撃を受けた。
 激しい爆音と共に巻き起こる爆煙。半分はトリテレイアが装甲に仕込んでいた爆薬によるものだが、残り半分は砲弾そのものの爆発によるものだ。
 その威力、破壊力は先のエイプモンキーが創造したマニアック兵器と比較しても遜色ない。これが幹部の実力ということか。

「あちらは大丈夫ですかね……」
「あなたも、ですよ……?」
 爆煙の中に消えたトリテレイアを気にしながら、ニレッドは口元から零れた血を拭う。それを心配そうに見つめるのはソナタ。ラビットバニーの砲撃の瞬間、ニレッドは負傷を覚悟の上でソナタをかばい、二発分の攻撃をその身に浴びたのだ。
 致命傷こそ避けたものの、その全身は爆炎の煤と血で赤黒く汚れ、魔力障壁でも防ぎ切れなかった砲弾の破片が至る所に突き刺さっている。
「あーらら、ボロボロじゃん。あんたってそういうドロ臭いキャラなわけ?」
 嘲るような口調でラビットバニーが笑う。しかしニレッドは怒るどころか逆に不敵な笑みを浮かべて、満身創痍の体に鞭打ち水晶鋏を構えなおす。
「泥臭い? 知ったことないです、味方の猟兵が何とかしてくれるはずなんです、それまで耐えりゃ私の勝ちですからねー」
「そのお味方はさっそく一人脱落っぽいけどー?」
 トリテレイアが消えた爆煙をくいと指差すラビットバニー。だが、それでもニレッドは揺らがない。
「なら戻ってくるまで耐えてみせますよ。それまでの根比べだ、とことん付き合ってもらいましょうか」
「くっ……あーしこういうの弱いんだけど! ちょーエモくてバリアの再展開もできねーし!」
 ボロボロになりながらも不屈の反骨精神を示すニレッドについ動揺してしまうラビットバニー。これもまたエモさであった。

「ほら、掛かってこないのですか? この程度で参ったなんて言いませんよ?」
「ちっ、舐めるんじゃねーし!」
 挑発にかかったラビットバニーが、再び赤べこキャノンの砲撃を放つ。傷ついた敵を確実に仕留めるべく命中率と攻撃回数を重視した、小型の散弾が降り注ぐ。
 ニレッドは背後のソナタに一発も弾丸を届かせぬよう体を張りながら、魔力障壁と水晶鋏で散弾を弾き落とす。だが、いかに手練の猟兵と言えども全ての散弾を弾くことは不可能であり、脚を貫いた弾丸がついに彼女に膝をつかせる。
 そこに砲弾の再装填を終えたラビットバニーが、無慈悲に砲口を向ける。
「はい、これで二人目、っと――!?」
 怪人がトリガーを引かんとした、まさにその瞬間。
 高らかな馬蹄の音を響かせて、一騎の白き騎士が煙の中から飛び出した。

「申し訳ありません。ダメージの回復に時間がかかってしまいました」
 白き騎士――その正体はトリテレイア。爆煙に消えたはずの彼は、パージした損傷部位を愛騎たる機械白馬『ロシナンテⅡ』と合体することで補い、更なる力を得て戦線に復帰したのだ。
 これぞ機械騎士トリテレイア・ゼロナインの強化形態、【マシンナイツ・ケンタウロスモード】である!
「な――なっにそれぇぇぇ?! めちゃくそエモいんですけどぉぉぉっ!!」
 エモ展開からのエモ展開に大興奮のラビットバニーは、バリアどころか完全に隙だらけである。その間にトリテレイアは自らのボディの出力系にハッキングし機動力を120%に。馬上槍を手に、花の戦場を人馬一体の騎士が駆ける。

「って、ヤッバ……! おはなハッキング!」
 我に返ったラビットバニーは慌ててシステム・フラワーズ制御ビームを放つ。
 戦場中の花の足場を自在に操作するこの能力ならば、敵の進路を阻みながら退路を作り出すことも自由自在に――。
「――って、足場がない?! どーして?!」
 そこで彼女は、自らの周囲にあったはずの足場が消えていることに愕然とする。
 正しくは「消えた」のではなく「見えなくなった」のだ。ソナタの召喚した仔猫たちは、触れたものを透明にする力がある。
 ラビットバニーが仔猫と戯れている間も、ニレッドへの攻撃に夢中になっている間も、ソナタは密かに仔猫たちに命じて花の足場のあちこちを透明化していたのだ。
「わたしにも仔猫さんたちにも直接的な攻撃手段はありません……でも、あなたを撹乱することはできます」
 武力だけが戦う手段ではない。搦め手も交えた仲間との連携は、猟兵の力を何倍にも高めるのだ。

「くぅぅっ! こ、こっちの足場はある? ない? どっち?!」
 消えたり現れたりを繰り返す花の足場にラビットバニーが翻弄されている間に、一気に距離を詰めるトリテレイア。熱センサーを初めとする各種センサーを搭載した彼ならば、透明な足場にも惑わされることなく進むことができる。
「この一撃に騎士の誇りと、皆様の想いを籠めて――!!」
 放たれるのは加速度と質量、そしてこの瞬間へと繋いだ仲間たちの意志を乗せた渾身のランスチャージ。それは狙い過たず、無防備な標的の胸の中心を貫いた。
「ぐっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ?!?!」
 突撃の衝撃に耐え切れず、吹き飛んでいくラビットバニー。刻まれた負傷が浅からぬことは、誰の目にも明らかだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

月守・咲凛
エモいは良く分かりませんけど、いきますよー!
武装ユニットでフワリと浮き上がり、先ずはガトリングを撃ちながら全速力で突撃して、ウサギさんにバリアを展開させましょう。
ウサギさんがバリアを展開したらミサイルを発射して爆風の煙幕を作って相手の射撃を撃ちにくくします。
そのままそこを突き抜けて煙をたなびかせながら一気に急上昇。
一気に決めます!
ユニットシフト【テンペスト】で身体中の武装ユニットをガチャンガチャンと巨大ビームサーベルに変形させて一気に振り下ろします。
攻撃後は地面に落ちる前にユニットの変形を解除して再武装、浮かんだまま戦闘体勢で警戒です。



 吹っ飛んでいったラビットバニーを即座に追跡にかかったのは、武装ユニットを纏った月守・咲凛(空戦型カラーひよこ・f06652)。
「エモいは良く分かりませんけど、いきますよー!」
 機甲の翼を広げた少女の身体はフワリと浮き上がったかと思えば、戦闘機さながらの勢いで花の舞う戦場を翔ける。あっという間にトップスピードに達した咲凛は、ラビットバニーに突撃しながら腕部ユニットに内蔵したガトリング砲を連射した。

「あー、のっけからちょーエモかった……でもまだやられるわけにはいかねーし!」
 ダメージを負ったことで冷静さを取り戻したラビットバニーは、絶対無敵バリアを再展開して弾丸の嵐を防ぐ。直後に彼女は吹っ飛ばされた時に落とした赤べこキャノンを担ぎなおすと、再びその砲口にエネルギーを充填し始める。
「カワイイひよこちゃん、降りといでー、なんて!」
 放たれた砲弾は命中率を重視した追尾弾。咲凛がどれだけ複雑な機動で振り切ろうとしても、ピタリとその後を追ってくる。
 その分威力は下がっている筈だが、それでも翼やスラスターを破壊されれば、空中戦を主体とする咲凛にとっては命取りだ。

 あわや撃墜かと思われたまさにその時、咲凛は肩部と脚部のユニットに内蔵した誘導ミサイルを一斉発射した。
「無駄無駄! 矢でも鉄砲でもミサイルでもあーしには効かないし!」
 嘲笑うラビットバニーの言葉通り、何発ミサイルが命中しようとバリアを展開中の彼女は傷一つ付かない。しかし爆発したミサイルは分厚い煙幕を作り上げて怪人の視界を阻み、砲弾の追尾性能も低下させた。
 その隙を突いて咲凛はスラスターを最大まで吹かすと、紙一重で砲弾を回避する。
「ちぇー、外したか。次は当てっから!」
 悔しそうにキャノンに砲弾を再装填するラビットバニーだったが、この煙幕が晴れない限りは照準を定めることもままならない。
 そして、この状況こそが咲凛の狙っていた好機だった。

「一気に決めます!」
 勢いよく煙幕を突き抜けた咲凛は、煙をたなびかせながら一気に急上昇していく。
 そして豆粒のようなサイズになった眼下の標的を捉えながら、ユーベルコードを発動した。
「アーマーフルパージ、シフト【テンペスト】!」
 彼女の身体を覆っていた全武装ユニットの装着が解除され、ガチャンガチャンと音を立てて別の形態に変形していく。
 完成したのは、天を貫き大地を斬り裂かんばかりの巨大なビームサーベル。凄まじい射程と威力の代償に、全武装を解除した咲凛本人は極めて無防備な状態になるという、諸刃の刃。
 事実この瞬間を狙って再び砲撃が飛んでくればひとたまりも無かった筈だが――。
「何その変形めっちゃカッコいいし! しかもハイリスクってとこがエモいね!」
 エモの沸点が低いラビットバニーはそれどころでは無いどころか、思いっきり隙を晒してしまっていた。
「これで――っ!!」
 落下しながら巨大ビームサーベルを一気に振り下ろす咲凛。バリアの解けてしまったラビットバニーは避ける間もなく、閃光の斬撃にその身を斬り裂かれる。

「いっだだだだだだだだ! おにょれ!」
 鮮血を飛び散らせながら赤べこキャノンを上空に向ける怪人だったが、その時には既に咲凛はユニットの変形を解除して再武装し、警戒と戦闘体勢を維持したまま射程外へと退避していたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

駆爛・由貴
ボアネル(f07146)と出撃

サルの次はウサギかよ
ホントに自由すぎるだろこの世界
ま、とにかくアイツをエモらせればいいんだな

ボアネルと一緒に突っ込んで攻撃するぜ
もちろんアイツのUCで身動き取れなくなるよな
で、どうすんだボアネル?
っておい!?お前何してんの!?
は!?驚く!?こっちが驚くわ!!そして多分アイツ別の意味で驚いてるぞ!?
とにかく!敵が身動き取れなくなってる間に【万能機械】を発動!
インプ達と一緒にアイツを攻撃だ!

なんてな!
バサン!オンモラキ!砲撃で花を足場ごとぶっ壊せ!
そしてボアネルに上空へ投げ飛ばされたらミストルティンで奴を『スナイプ』だ!

任せろボアネル!アイツに一撃食らわせてやるぜ!


ボアネル・ゼブダイ
由貴(f14107)と出撃

エモーショナル…ここでは感情を揺り動かすという意味か
いいだろう、猟兵としての底力を奴に見せつけてやろう

まずは奴に突撃をしつつフランマ・スフリスを振るうが
奴の操作によって花の足場が絡みつき動けんだろう
そこでやや強引だが私の『怪力』で足を引き抜き由貴に接近
そのまま由貴の首筋に『吸血』を行う
仲間にいきなり吸血を行う姿を見れば奴も驚きバリアーは揺らぐだろう

奴が動揺した隙を突き【従順たる悪意】を発動
足場をいくら操作しても空を飛ぶ者達には通じまい

そしてこれもフェイクだ
『吸血』で力を付けたならばそのまま由貴を上空に放り投げ
奴に必殺の一撃を撃ち込む
これこそが本命だ

後は頼んだぞ、由貴



 後退する味方にかわって前線へと飛び出したのは二人の猟兵。
「サルの次はウサギかよ。ホントに自由すぎるだろこの世界」
 自律ポッド「バサン」「オンモラキ」を従えながらそうぼやくのは駆爛・由貴(ストリート系エルフ・f14107)。同意とも否定ともつかぬ表情で肩をすくめるのは、その相棒であるボアネル・ゼブダイ(Livin' On A Prayer・f07146)だ。
「ま、とにかくアイツをエモらせればいいんだな」
「エモーショナル……ここでは感情を揺り動かすという意味か。いいだろう、猟兵としての底力を奴に見せつけてやろう」
 異端狩りの剣「フランマ・スフリス」を構え、ラビットバニーに向かって突撃していくボアネル。由貴と彼の自律ポッドもその後に続く。

「あだだ、思ったよりエモいじゃん猟兵。ちょっとタイム!」
 ここまでの交戦で既に手痛いダメージを負っているラビットバニーは仕切り直しとばかりにバリアを再展開すると、指先からシステム・フラワーズ制御ビームを放つ。
 するとボアネルと由貴の足元や進路上の足場が動きだし、無数の花弁が二人の身体にまとわり付いてその動きを封じる。これでは敵に近づけないばかりか、足元が不安定で立っていることすら覚束無い有様だ。
 しかし、ここまでは二人にとっても想定内。敵がこちらの機先を制してユーベルコードを使ってくるのは予期されていたことだ。
 ならば勿論対策も用意してあるはずだ。

「で、どうすんだボアネル?」
「それはだな――」
 問われたボアネルは力任せに花弁を振り払い、足場に沈みこんだ足を引き抜き由貴に近付いていく。
「あーしじゃなくてそっちに行くの?」
 何をするつもりかと首を傾げるラビットバニー。だが、その次のボアネルの行動は彼女の――そして由貴の予想も超えていて。
「――こうする」
 かぷり、と。彼はダンピールの証たる吸血の牙を、相棒の首筋に突き立てたのだ。

 ちくりと針で刺されるような痛さとむず痒さを感じた由貴は、一体何をされたのか理解するのに数瞬を要し――そして理解した瞬間目を白黒させた。
「っておい!? お前何してんの!?」
「えっなになに、あんたたちそーゆー関係? うっわ激エモ! そして背徳感!」
 由貴とラビットバニーが叫んだのは同時。特にバニーはきゃーきゃーと喧しい。動揺する二人をよそに首筋から唇を離したボアネルは、口元を拭いながら淡々と。
「仲間にいきなり吸血を行う姿を見れば、奴も驚きバリアーは揺らぐだろう」
「は!? 驚く!? こっちが驚くわ!! そして多分アイツ別の意味で驚いてるぞ!?」
 びしっと由貴が指差した先では、ラビットバニーが「女のコと間違われそうな少年と、銀髪褐色の美青年――アリね!」とかなんとか呟いていた。
 まあ確かにバリアはばっちり解除されているし、オマケに隙だらけだが。

「結果は同じだろう。何も変わらん」
「いや俺の気分が変わるんだが……とにかく!」
 なんとか気を取り直した由貴は、敵が動揺している隙にユーベルコード【万能機械】を発動し、武装した大量の自律ポッドを召喚。それに合わせてボアネルも【従順たる悪意】を唱え、ピッチフォークで武装したインプの群れを喚び出す。
「足場をいくら操作しても空を飛ぶ者達には通じまい」
「仕事だぞ! 働けお前ら!」
 崩れる足場を飛び越えて、一斉にラビットバニーに襲い掛かるポッドとインプ。無数の速射砲の銃声と小悪魔たちの鳴き声を聞いて、怪人はようやく我に返った。
「ととと、危ない危ない……このユーベルコードは足場を崩すだけじゃないし!」
 おはなハッキングによって操作された花の足場は、激しい花吹雪となって戦場を吹き荒れる。多勢ではあっても耐久力に劣るドローンとインプは、花弁の嵐に耐える術を持たず、次々に吹き飛ばされていく。

「いいもの見せてもらったけど、これで終わり? なーんか拍子抜けじゃない?」
 勝ち誇りながら挑発するラビットバニー。だが由貴とボアネルは動じることなくにやりと笑う。
 大群による攻撃はフェイク。敵の注意を集団へと引き付けた隙を突いて、由貴がドローンに命令を下す。
「バサン! オンモラキ! 砲撃で花を足場ごとぶっ壊せ!」
 二機に搭載されたライフルとビームランチャーが火を噴き、由貴とボアネルを拘束していた花を強引に吹き飛ばす。
 自由を取り戻した二人だが、これは一時的なもの。ラビットバニーが新しい足場を操作すればすぐにまた身動きを封じられてしまうだろう。
 だからこそ、この一瞬一秒が勝敗を分ける。

 拘束の解除と同時に動いたのはボアネル。相棒の血を吸って力を増した彼は、その膂力で由貴の身体をひょいと持ち上げると、そのまま上空に放り投げる。
「後は頼んだぞ、由貴」
「任せろボアネル! アイツに一撃食らわせてやるぜ!」
 上空高く投げ飛ばされた由貴が構えたのは、漆黒の複合弓「ミストルティン」。吹き荒れる花弁の嵐の中から、射抜くべき標的の姿に狙い定め――限界まで引き絞った矢を、放つ。
 果たして、二人の想いを乗せた本命の一矢は的を逃さず、その特徴的な兎面の眉間に突き刺さった。

「いぃっだぁいっ!!」
 悲鳴を上げて花の足場を転げまわるラビットバニー。その負傷は確実に蓄積しており、幹部と言えども無視できるダメージではない。
「でも、純粋な男同士の信頼と友情、これもエモい……!」
 ――それでも彼女は、エモることだけは決して忘れないのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ミロスラフ・ニードリク
アリス(f02153)と連携
エモいって……要は綺麗なものを見せればいいのかな?
じゃあアリスの独壇場だね。頼んだよ!

おお……すごいなぁ
思った通り綺麗だ。結晶の中に花びらが閉じ込められて琥珀みたい
これは多分……エモいってやつだよ!
それじゃあ僕は【BLEACHING LIGHTER】で【人差し指】を着火点にして、結晶の中の花びらの一つに点火しよう
相手がどんなに速くなっても、既に結晶の壁で覆われてるボクらに攻撃は届かない!
でもボクはアリスの作った【色の導火線】を使って着火させるから結晶の壁は関係ないよ!
この結晶の壁が少し色褪せちゃうのは残念だけど、白は白でまた綺麗かな?
よーし、ボクらの力を見るといい!


アリス・レヴェリー
ミロスラフ(f17233)と連携
随分簡単に言ってくれるわね……!

まずはウサギさんが手っ取り早くわたし達を落とすために、崩れたり押し寄せて来る花弁達を【刻命の懐中時計】の結界を贅沢に使って凌ぎましょう、球状に結界を展開して足場代わりにしながら、ミロくんも一緒に守るわ。

……どこを見回しても花弁ね、まるで密室だわ。
それならむしろ……結晶を張り直す時に舞い込んできた花弁の一枚に【世界の詩う物語】による【伝播】属性の【結晶化】を発動するわ。
色をそのままに美しく透き通る結晶に変じていく花弁達、さっきまでわたし達を付け狙っていたこの子達が、今度はわたし達を守る壁になってくれるはず。

ほら、「線」は繋げたわよ!



「あっれー、楽勝だと思ったんだケド……もしかしてあーし、ピンチ?」
 頭に刺さった矢を引き抜きながらよろよろと立ち上がるラビットバニー。その態度はユルいが、ダメージの蓄積でようやく己の劣勢を悟ったらしい。
 彼女に休む間を与えさせまいと、姿を現したのはミロスラフ・ニードリク(漂白観念・f17233)とアリス・レヴェリー(真鍮の詩・f02153)の二人組。
「エモいって……要は綺麗なものを見せればいいのかな? じゃあアリスの独壇場だね。頼んだよ!」
「随分簡単に言ってくれるわね……!」
 ミロスラフからのさらっとした丸投げに、じとーっと目を細めて抗議するアリスだが、本気で不満を訴えているようではない。信頼、友情、対抗心。多感な年頃の少年と少女は、とある人物を巡るライバル関係でもあった。

「ウッッッ……! あっぶな、なんかエモい関係の匂いでバリア切れかけたし」
「えっ、もう?」
 まだ何もしてないんだけど、と困惑する二人をよそにラビットバニーはキュピーン! と兎面の両目を光らせユーベルコードを発動する。
「しかーし! だからって容赦はしないから! 仲良く流されちゃえ!」
 指先からおはなハッキング用のビームを放つと、それを浴びた花の足場がめくれ上がり、巨大な花の津波のように二人に向かって押し寄せる。
 それに反応して素早く行動に移ったのはアリス。手にした「刻命の懐中時計」をかざせば、球状の結界がアリスとミロスラフを包むように展開される。
 同時に時計の文字盤に嵌め込まれた12個の結晶――「世界の雫」がひとつ、パリンと音を立てて砕けた。

「へぇ! やるじゃんやるじゃん!」
 アリスの結界が花の津波を受け止めたのを見たラビットバニーは拍手を送り。
「そんじゃあーしも殴っちゃおうかなー。うさちゃんカンフーモード!」
 瞬間、足元の花弁を衝撃波で散らせながら、驚異的な脚力で跳んだ。
 スピードと反応速度の爆発的増大により、その名のとおりウサギのような跳躍力を得た怪人は、花弁に包み込まれた結界に強烈な飛び蹴りを放つ。
「アチョー!!」
 ふざけた掛け声と同時にキックが着弾した瞬間、ビシリと結界全体にヒビが入る。
 アリスは急いで二つ目の世界の雫を代償にして結界を張り直すが、ラビットバニーの猛攻は止まらない。
「かった! でもこんな頑丈なバリア、あーしでなきゃずっと張り続けちゃいられないっしょ! ほぁたぁ!」
 目にもとまらぬ拳打と蹴撃のラッシュと、押し寄せる花弁による波状攻撃。それを防ぎ続けるアリスの懐中時計から、世界の雫が次々と失われていく。

「ねえアリス、これ大丈夫?」
「し、心配ないわ!」
 予想よりも結界を張り直すペースが速いことに焦りを感じるアリスだったが、ミロスラフの前で弱気は見せない。だがもし、このまま刻命の懐中時計の力を使い切ってしまえば、その瞬間にラビットバニーの拳と花弁が襲ってくる。既に二人の足元の花も崩れ去り、足場となる結界が消えれば奈落に真っ逆さまだ。
「……どこを見回しても花弁ね、まるで密室だわ。それならむしろ……」
 結界の外周を覆い尽くした花弁の様子を見ていたアリスは一計を案じ、結界を張り直す瞬間に中に舞い込んできた花弁の一枚をつまむと、静かに詩を紡ぎ始める。
 ユーベルコード【世界の詩う物語】――彼女の詩は世界へと語りかけ、ありえざる属性の自然現象を喚起する。今回発動させた現象は【伝播】属性の【結晶化】。
「間に合って……!」
 最後の結界が失われ、一斉に押し寄せた花の津波に向かって、アリスは結晶化させた花弁を投じる。
 大量の花弁が少年少女を呑み込まんとしたまさにその寸前で結晶と花弁は触れ合い、その瞬間、籠められた【伝播】の属性によって花弁は連鎖的に結晶化していく。
 瞬く間に出来上がったのは、キラキラと彩やかに輝く、花の結晶の巨壁だった。

「おお……すごいなぁ。思った通り綺麗だ。結晶の中に花びらが閉じ込められて琥珀みたい」
 目の前の光景に思わず目を奪われ、思ったままの賞賛を口にするミロスラフに、アリスはありがとう、と少し得意げに答える。
「これは多分……エモいってやつだよ!」
 少年の見立てどおり、これを目の当たりにしたラビットバニーは盛大にエモっていた。
「なにこれちょーキレイ! カメラ持ってくれば良かったわ、迂闊!」
 SNSに画像をアップロードできないのを悔しがる怪人のバリアは綺麗さっぱり剥がれていたが、すぐに気を取り直す。
「はっ、いけないいけない、今までもこうして隙を見せちゃったばっかりにやられてるし……!」
 再び拳脚のラッシュを繰り出すラビットバニーだが、立ち塞がる花の結晶がそれを阻む。色をそのままに美しく透き通る結晶へと変じた花弁は、先程まで二人を付け狙っていたのとは真逆に、二人を守る壁となっていた。

「相手がどんなに速くっても、ボクらに攻撃は届かない。でも守ってるだけじゃ勝てないからね。ボクは冷静だよ」
 そう言うとミロスラフは【BLEACHING LIGHTER】を発動し、人差し指の先に無彩色の炎を点す。まるで墨絵を描くように揺らぐ、温度を持たないその炎には、酸素ではなく「色彩」を糧として燃える性質がある。
 ラビットバニーの攻撃を阻み続ける色彩やかな結晶は、彼にとっては燃料の塊のようなものだ。
「この結晶の壁が少し色褪せちゃうのは残念だけど、白は白でまた綺麗かな?」
「ええ、きっとね。ほら、『線』は繋げたわよ!」
 アリスが指差した所からは、同じ色の花から変化した結晶が一本の「色の導火線」のように細く長く、敵の傍まで繋がっている。それを見たミロスラフは深く頷いて。
「よーし、ボクらの力を見るといい!」
 着火点となった彼の人差し指が触れた瞬間、色の導火線は瞬時に燃え上がり、花結晶の壁に無彩色のラインを描きながら標的に襲い掛かった。

「ちょわーーーーーーーーっ?!?!」
 特定の色のみを素早く一気に燃やす特性を持った"着火式"の炎は、ラビットバニーに避ける間を与えず炎に包み込む。熱を持たないとはいえ"火力"が無いわけではなく、引火した無彩色の炎は怪人の身体を容赦なく焼き焦がしていく。
「あっつっ! いや熱くないけど痛い! でもエモいコンビネーションだったわちくしょー!」
 痛みと悔しさと賞賛を混ぜこぜにしながら、炎上するラビットバニーは再び戦場を転げ回るのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

月代・十六夜
【K+α】で連携。

バンドのステージ演奏とか、これはエモくなくて何がエモいんだって話だよな、任せたぜフローライト君!
高速移動で突っ込んでくるようなら歌の力と【超過駆動:肉体】で自身を強化。【視力】【聞き耳】【野生の勘】で動く足場を【見切り】ながらバニーの動きについていって【時間稼ぎ】を行う。
お客様、ライブ中はステージの立ち入りはご遠慮しておりますってか。

地上から自分が、空中から喰龍嬢に邪魔されちゃそうそう無茶は出来まい。
ライブの〆は任せたぜ、お二人さん!

あ、下手に花畑再構築するとハッキングの恐れもあるしな。ステージ用の資材は担いでいくとしますかね、と。


喰龍・鉋
【K+α】*他猟兵との連携アドリブ歓迎
フローライトのステージを見た時点で
呆気にとられていればその隙に【INARIJET】装着
上空からフローライトの台本にアドリブを加えたMCを
敵に向けて行いながら周りを飛翔してライブ演出開始
ライブ完遂に対する意思で自己強化して
紙吹雪を撒きながら飛びつつ皆を守る
キャノンの爆発も演出にしながら野暮なことはやめてね!
的なサインを送り集中する様促す
敵をよく観察して着弾位置を【第六感】や【野生の勘】で
把握しながら予測して動こう
このライブは止めさせないよ!フローライトの歌が君に届くまで!
ライブが終わる間際、敵目掛けて
最大強化最大出力超高速のダイブを仕掛けて叩っ斬る!


北条・喜夏
【K+α】で連携や!
歌いながら戦うのってめっちゃカッコええやん!
ウチはそこまで器用やないから、マネ出来ひんけど……ほんならせめて、援護したる!

フローくんのステージのおかげで足場については問題なし!
奴さんのカンフーは十六夜はんと鉋がどーにかしてくれるやろ。

ちゅうわけで、後はキャノンをどーにかせんとあかんな。ステージにぶちこまれたら台無しや。
おっしゃやったる、フルバースト!
キャノンの弾にウチの弾をぶつけて迎撃や!

ドラム代わりの発砲音、スモーク代わりの爆煙で、フローくんのステージを彩ったろ!
……ちっと硝煙くさいのはご愛嬌ってことで堪忍なー。

ええなー、十六夜はんと鉋……歌をバックに戦うのってエモいな!


フローライト・ルチレイテッド
【K+α】のチームで参加を

ではライブをはじめましょう!
指定UCを使用、ステージを作成。
【Dress】を起動、衣装をライブ用にチェンジ。
【楽器演奏、歌唱、存在感】を駆使し、【パフォーマンス】を展開。
曲の要所で【誘惑】するような流し目をボスに送ったりしながら歌います。

「翼広げ飛んでいけ!夢見た世界の果てへ!見果てぬユメノムコウへ!」


本格的に交戦状態になったら【鼓舞、援護射撃、マヒ攻撃、催眠術】も駆使して歌を続けましょう。

攻撃は【野生の勘、聞き耳】で感知し、周囲の【地形の利用】をしつつ、突撃しづらいように動きながら、
ステージ上の構造物も利用し【早業】で回避を。
無理なら防御しつつ【激痛耐性】で耐えます



「うぐぐ……まさか猟兵がこんなにエモい連中だとか大誤算だし……」
 度重なるエモ攻勢によって心も体もボロボロになったラビットバニー。
 さりとて彼女も怪人幹部の一人。このままボコボコにされたままでは終われないと、煤けた身体を奮い立たせて立ち上がったが――。
「――うん? なにあれ?」
 兎面に覆われた彼女の耳と目は、上空から近付く謎の巨大物体を捉えていた。

「鳥かな? 飛行機かな?」
 無論違う。それはフローライト・ルチレイテッド(重なり合う音の色・f02666)のユーベルコードによって創造された、巨大飛行ライブステージ。バーチャルレイヤー【Dress】を起動してライブ衣装に変身した彼は、上空よりダブルネックギター「蛍灯」の音色を響かせる。
「バンドのステージ演奏とか、これはエモくなくて何がエモいんだって話だよな、任せたぜフローライト君!」
 舞台端からはステージ作成用の資材をここまで担いできた月代・十六夜(韋駄天足・f10620)がサムズアップを送り。
「ちっと硝煙くさいのはご愛嬌ってことで堪忍なー」
 北条・喜夏(武装召喚JKよしかちゃんとはウチのことやで!・f13043)の召喚した兵器たちが、発砲音をドラムロールに、爆煙をスモークに代えて開幕の演出とする。
 ラビットバニーが呆気にとられてそれを見上げている内に、喰龍・鉋(楽天家の呪われた黒騎士・f01859)は飛行用ジェット搭載型符術鎧【INARI-Type.JET】を装着すると、空中に飛び出しながらMCトークを披露する。
「本日限りの特別ステージ! チーム【K+α】のスペシャルライブ、楽しんでいってね!」
 舞台の用意は整った。満を持してステージの中央に立ったフローライトは、真剣な表情でギターを構えなおし。
「翼広げ飛んでいけ! 夢見た世界の果てへ! 見果てぬユメノムコウへ!」
 大音量と共に始まるライブ。その第一曲目は【Dream-ユメノムコウ-】だ。


 本当にそれでいいの? 答えは、そうだ ひとつさ♪

 砕けた夢を集めて 僕たちは進むよ♪

 夢見た世界の先で 咲き乱れるその日へ♪


 花々の咲き乱れる戦場に響き渡る、伸びやかで力強い歌声。それを後押しする巧みなギター演奏。
 さらに喜夏の兵器が時に軽快に、時に重厚に発砲音を奏で、要所要所で演出を加えてライブを彩る。
「なにこれ……すっごい、すっごい、すっごい!! 激エモだし!!」
 ラビットバニーは語彙力も忘れて、目の前のライブに夢中になってしまう。
 そんな観客に向かって、フローライトは曲の要所で誘惑するような流し目を送る。二人の視線が重なった瞬間、ステージの少年はふふっ、と微笑み――そこでラビットバニーのエモり度は限界突破した。
「あーもうマヂ無理。猟兵エモすぎ。フローライトきゅぅぅぅぅぅぅん☆」
 キュピィィィィィィン!! と兎面の目を輝かせた怪人は、花の足場を操って空中のステージに繋がる道を作ると、両腕を広げて猛然と駆け出した。

 ステージに乱入しようとする怪人の前に、すかさず立ちはだかったのは十六夜。
「お客様、ライブ中はステージの立ち入りはご遠慮しておりますってか」
「何アンタ! フローライトきゅんが見えないじゃん!」
 限界厄介アイドルオタクと化したラビットバニーの繰り出す猛烈な拳打と脚撃の嵐を、十六夜は花の足場の動きを見切りつつ紙一重で回避する。が、ほんの僅かに拳が身体を掠めただけでも、骨が軋むような衝撃が響く。
 うさちゃんカンフーモードによる超スピードと超反応速度に加えて、動作に合わせた足場の操作。今のラビットバニーの挙動たるや【超過駆動:肉体】によって脳内のリミッターを解除した本気モードの十六夜ですら、動きについていくのがやっとだ。
「きっついが、ここで無理しないわけにはいかないよな……!」
 ライブは今だ継続中。奏でられるフローライトの歌とライブステージの力は、猟兵たちの心を鼓舞し力を増幅してくれている。
 脳と肉体への負荷で寿命を削りながらも、十六夜はラビットバニーの行く手を阻み続ける。

「次のソングは【現夢】! どうか最後までマナーを守って聞いていってね!」
 ステージの上空をジェットで飛び回りながら、紙吹雪を撒きつつMCを続ける鉋は、暗に「野暮なことはやめてね!」的なサインを送るが、相手はさっぱりお構いなしである。
「うっさい蚊トンボ!」
 赤べこキャノンを上空に向けて、発砲。この距離でそんなものを撃てば当然ステージにまで流れ弾が行くが、ここまで度重なるエモさを体感してきたラビットバニーは理性が吹っ飛んでいた。
 対する鉋は冷静に敵の動きを観察し、砲弾の着弾位置を予測するとその軌道上に飛び込み、黒剣「大五郎」で受け止め――その瞬間、凄まじい衝撃と爆発が彼女を襲う。アレでも相手は紛れもない怪人幹部、その威力は一撃で身体の芯まで届く。
「ぐぅ……っ!」
 ダメージで朦朧となる鉋の意識を繋ぎ止めたのは、ステージから届くフローライトの音楽だった。


 夢見て♪ 残酷なこの世界が 少しだけ、優しくなるよう♪

 信じて♪ 悲しみ消えぬ世界も 希望の花は咲くはずと―♪


 希望を歌う優しい歌声と演奏が、聞く者たちの心を癒す。それはユーベルコードではない純粋な音楽のチカラ。
 気力を取り戻した鉋は、爆煙を切り裂いて再びジェットに火を点ける。
「このライブは止めさせないよ! フローライトの歌が君に届くまで!」
 必ずこのライブを完遂させる、という硬い意思が符術鎧の出力を上昇させ、黒い疾風の如く空を翔ける鉋の黒剣が砲撃を次々と撃ち墜とす。砲弾の爆発も、まるでライブの演出の一部のように。
 地上からは十六夜が、空中からは鉋が。二人の猟兵に阻まれて、ラビットバニーはステージに近付くことも危害を加えることもできない。

「ええなー、十六夜はんと鉋……歌をバックに戦うのってエモいな!」
「くっ、それについては同意せざるを得ないんですけど!」
 火砲によるステージ演出を続ける喜夏の呟きに、心底悔しそうではあるが頷くラビットバニー。
「け、れ、ど! あーしはカワイイ怪人ラビットバニー! このまま一人の敵も始末せずに終わったら、モンキーとゼファーに言い訳できないっしょ!」
 ちょっとだけ理性を取り戻した怪人は、担いだ赤べこキャノンにありったけのエネルギーを籠め始める。
「こうなったら纏めて吹っ飛ばす! あんたたちのエモさはあーしの心の中で永遠に生き続けるから!」
 やっぱりあんまり理性的ではなかった。が、その発言にツッコミを入れられる余裕のある者は誰もいない。怪人幹部が放つ全力・最大の一撃を前にしては。
「アゲアゲで、逝っちゃいなーーーーっ!!」
 キャノンから撃ち出された砲弾は空中で幾つもにも分裂し、全てを消し飛ばす鋼の豪雨となって戦場に降り注いだ。

 十六夜はバニー本体の足止めで手一杯。鉋一人で迎撃するには手が足りない。
 このままではライブステージごとチームが全滅しかねない――まさにその時、動いたのは喜夏だった。
「ウチはそこまで器用やないから、マネ出来ひんけど……ほんならせめて、援護したる!」
 歌いながら戦うのは無理でも、出来る事はある。全力の砲撃には、こちらも全力の砲撃で迎え撃てばいい。
「おっしゃやったる、フルバースト! 『ゴシチ』! 『からびん』! 『みなみちゃん』! そしてみんな! やったれやぁ!」
 喜夏の号令に合わせて、拳銃が、ライフルが、機関銃が、戦車が戦艦が戦闘機が。喜夏の召喚出来うる限りの兵器が一斉に銃身と砲身を上げる。
 このステージを台無しにさせはしないと、決意を弾丸と共に火薬と燃焼させて。
「目標、前、後、右、左ぃ! つまり全方向! いっせーの、てぇ!」
 その瞬間、それ以外の音が一挙に消し飛ぶほどの銃声と砲声が轟き。ステージの全方位へと放たれた弾幕が、赤べこキャノンの砲弾と相殺し、凄まじい爆発を巻き起こした。

「な――今のを全部迎撃したってこと? エモいことしてくれんじゃん!」
 濛々と立ち込めた爆煙の中から、無傷のステージが姿を現した時、驚愕のあまりラビットバニーの動きが一瞬硬直する。その間隙を突いて、十六夜が愛用のコートを翻して怪人の視界を晦ます。
「ほい隙ありっと」
「にょわ!?」
「こいつもオマケや!」
 反射的に怯んだラビットバニーの頭上から、【よしかちゃんフルバースト】に紛れて召喚されたよくわからない兵器――ゴロゴロ転がる巨大ボビン的な形状をした爆発物が炸裂する。
 ドォンッ! と激しい爆発音が響く中で、フローライトのライブはいよいよ最後の楽曲へ。そのタイトルは【Evolution World】。喜夏の兵器たちも残されたありったけの弾薬を解放し、クライマックスの瞬間を全力で演出する。
「ライブの〆は任せたぜ、お二人さん!」
 十六夜が呼びかける相手は、ステージに立つフローライトと――黒剣を構え、上空から煤まみれのラビットバニー目掛けてダイブを仕掛ける鉋。


 歌おうぜ 俺達は世界を塗り替えていく

 拳を掲げしラストは歓声の中

 EvolutionNewWorld! Oh、NewWorld!


 新生への希望と滅びへの反逆を歌う歌声に乗って、鉋は翔ける。
 最大強化、最大出力。仲間の援護と歌声による鼓舞、そして重力さえも味方につけた彼女は、その刹那のみ、ラビットバニーの速度と反応を超越し――。
「これで――終わりっ!!」
 振り下ろされた大五郎の刃が、怪人の身体を縦一文字に斬り裂く。
 ――それが【K+α】のスペシャルライブと、この戦いのフィナーレとなった。

「――――あー。あーしの負けかぁ」
 一拍遅れて"斬られた"ことを悟ったラビットバニーは、だらん、と腕を下げてその場に膝をつく。同時にコントロールを失った花の足場が崩壊し、その身体は奈落へと墜ちていく。
「まーでも、悔いはないし? いっぱいエモいもの見られたし――まだあーし"たち"が負けたわけじゃないし!」
 ピシリ、ピシリと音を立てて、その顔を覆う兎面にヒビが入っていき。
「あーしもまだ復活できるかもしれないし! 最後に笑うのはあーしたちだ! 覚えてろよー!!」
 パキン、と面が割れるのと同時に、カワイイ怪人ラビットバニーは骸の海の底へ還っていったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月17日


挿絵イラスト