バトルオブフラワーズ⑩〜ウサギのハートは誰のもの?
「連戦が続くけど、みんなコンディションは大丈夫かい?」
京奈院・伏籠(K9.2960・f03707)がグリモアベースに集まった猟兵たちを気遣う。
システム・フラワーズを巡る争乱に終わりは未だ見えない。
強敵・エイプモンキーを打倒した猟兵たちだが、その進路には新たな幹部怪人が待ち構えていた。
「資料を用意した。……カワイイ怪人『ラビットバニー』、コイツが次のターゲットだ」
猟兵たちに手渡された写真。そこに映っていたのは、ピンクのウサギ(?)の被り物を被ったグラマラスな女性(?)怪人だ。背に携えたベコ顔のキャノン砲といい、どうにもカートゥンチックな印象である。
システム内部の『花の足場』の行先は現在この怪人に集中している。エイプモンキー同様、彼女を倒さねば先への道は開かれないようだ。
「いいかい、ラビットバニーもかなり強力な能力を持っている。しっかりと確認してから戦場に向ってほしい」
指を立て、伏籠が真剣に注意を促す。難敵に立ち向かうにはその能力の攻略が不可欠。
彼の語るラビットバニーの『特殊な能力』とは、以下のようなものだった。
●重要:ラビットバニーの能力について
ラビットバニーは必ず、猟兵に先制して『絶対無敵バリアを展開するユーベルコード(POW、SPD、WIZ)』を使ってきます。
絶対無敵バリアは本当に絶対無敵で、あらゆる攻撃を無効化しますが、「ラビットバニーがエモい物を目撃する」と、精神集中が乱れてバリアが消滅します。
ラビットバニーのエモい基準はかなりユルいので、バリアの解除は比較的容易と思われますが、バリアなしでも彼女は相当の実力者です。
「『絶対無敵バリア』は正真正銘、『絶対無敵』だ。これがある限り、あらゆる攻撃は通用しない。……絶対に、だ」
渋い顔の伏籠。捻りがない分、効果は強烈。事前に情報を得られなかったら惨いことになっていただろうことは想像に難くない。
しかし、実に理不尽極まる能力だからこそ、明確な弱点があるのかもしれない。
「エモい――あー、改めて言葉にしようとすると難しいな。『感動』というか、もっとカジュアルに『心が動く』的な? とにかく、ラビットバニーが『エモい』と感じればバリアは消える。つまり、攻撃する前に何かしら『エモい』行動を取ればいいわけだね」
ちなみに『カワイイ怪人』だが、別にカワイイものでなくても相手はエモいと感じる。その上、基準はかなり緩い。感性は人に近いようなので、猟兵自身がエモいと感じる行動を取ってみるのもいいかもしれない。
「強敵が続くけど、システム中枢には近づいてきている。頼んだよ、イェーガー!」
灰色梟
こんにちは、灰色梟です。
ボス級怪人2戦目、『カワイイ怪人』ラビットバニー戦です。
OPの通り、攻略にはバリアを突破するプレイングが必須となります。つまり『エモい行動』ですね。
怪人の判定基準はだいぶ緩いです。が、バリア無しても彼女はかなりの実力者。くれぐれも油断されぬようご注意を。
それでは皆さんのエモいプレイングをお待ちしています。一緒に頑張りましょう。
第1章 ボス戦
『カワイイ怪人『ラビットバニー』』
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POW : 赤べこキャノン
【絶対無敵バリア展開後、赤べこキャノン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : うさちゃんカンフー
【絶対無敵バリア展開後、兎面の目が光る】事で【うさちゃんカンフーモード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : おはなハッキング
【絶対無敵バリア展開後、両手の指先】から【システム・フラワーズ制御ビーム】を放ち、【花の足場を自在に操作する事】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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村井・樹
くそ、なんて能力だ
このままあの女に踊らされるしかねぇのか?
相手の技を受け、共存共栄を発動
『不良』一人じゃ、これは処理できない
『紳士』、指示を寄越せ
その通り、俺が動く
俺達は『村井樹』を守るための人格(プログラム)
やつはそれを侵す敵(バグ)
だったらお前と手を組んででも、あれを排除してやる
忘れるな、俺とお前は、『かわいい僕』の為にここに居る
……俺はお前は嫌いだけどな
さて、やつは俺が満足に動けない所を、容赦なく襲ってくるだろう
敵を懐に入れた上で『盾受け、オーラ防御』からの『カウンター』でも叩き込むか?
或いは、『ロープワーク』をどこかに引っ掻けて足場から脱出し、状況を仕切り直すか?
※アドリブ大歓迎
花舞う道に、兎は佇む。
カワイイ怪人『ラビットバニー』が兎面の下で目を細める。
その瞳に映るのはゆっくりとこちらに歩いてくる『一人の』猟兵。
貴族然とした格好だが、着こなしはラフ。執行者たる『不良』の人格を表に出した村井・樹(Iのために・f07125)とラビットバニーの視線が交差した。
両者の距離はまだ遠い。
だが、言葉なく懐からハンドガンを取り出す樹の姿に、ラビットバニーは小さく溜め息をついた。
「モンキーがやられた分、あーしが働かないとかぁ。ま、ちゃちゃっとやっちゃおう」
そう言うなり、ラビットバニーは腕を伸ばし両指を樹に向って突き出した。
まるでピアノを弾くかのように両指をうねらせる怪人。その指先から桃色のビームが迸り、樹の付近の足場に着弾する。
「そーら、踊れ踊れー!」
「ッ!? チッ、足場が!」
桃色の閃光は『システム・フラワーズ制御ビーム』だ。怪人の指の動きに合わせ、樹が立つ足場が揺れ、うねり、激しく波打つ。
足場を踏み外せばどうなるのか。どう考えても碌なことにならないだろう。
迂闊な移動はできない。樹はしゃがみ込み、足場に手を置いて安定を取りつつ、なんとかハンドガン型記憶消去銃の引き金を引く。
ZAPZAPと銃声が響いた。……が。
「キャハハ! あーしのバリアは完璧! むっだむだー!」
「くそ、なんて能力だ!」
樹の手元から放たれた閃光はラビットバニーに届く直前に全て霧散してしまう。
『絶対無敵バリア』だ。
臍を噛む樹の下で、足場がひときわ大きく上下に撓んだ。
数瞬、樹は宙に浮き、強かに背を打ちつつ足場に落下する。落下の衝撃で花が舞い散る中、彼は懸命に態勢を整えようともがいている。
その様子をラビットバニーは愉快そうに眺めている。
……しかし。
「……あれ? なんか『ひとり増えてる』?」
ふと気が付けば、膝を着く樹の背後に誰かが佇んでいた。よく似た服装、よく似た顔。しかし、纏う雰囲気は正反対のように感じられる。
双子か、それとも、何かのユーベルコードか。ラビットバニーは首を傾げる。
「このままあの女に踊らされるしかねぇのか?」
「弱気とは、らしくないですね」
訝しがる怪人を余所に、『二人』が互いに言葉を交わす。
ユーベルコード・共存共栄。『不良』の背後に立つのは、樹の人格のひとつ『紳士』が実像を持った姿だ。
ラビットバニーを睨む『不良』。彼は前を向いたまま、悔しげに後ろに向って声を掛ける。
「『俺』一人じゃ、これは処理できない。『紳士』、指示を寄越せ」
その通り、俺が動く。そうぶっきらぼうに言い放ち、『不良』が立ち上がる。
背後の『紳士』は腕を組み、興味深そうに『不良』の様子を見つめていた。
「俺達は『村井樹』を守るための人格(プログラム)。やつはそれを侵す敵(バグ)。だったらお前と手を組んででも、あれを排除してやる」
足場は今も揺れ続けている。それだというのに、『不良』は両足でしっかりバランスを取り、両の手でハンドガンと忍者手裏剣を構えてみせた。
劣勢は変わらず。けれど、彼は不敵な笑みを浮かべて、肩越しに背後を振り返り、照れくさげに言葉を放った。
「忘れるな、俺とお前は、『かわいい僕』の為にここに居る。……俺はお前は嫌いだけどな」
最後の言葉は、取り繕うような早口だった。
『紳士』はやれやれ、といった風情で肩を竦め、しかし、すぐに『不良』に並び立つ。
『紳士』の眼鏡が光り、『不良』の視線が鋭くなる。勝負は、ここからだ。
●
「いや、ちょい待って。なにそれ。普段はいがみ合ってるけど、大事な時はめっちゃ息が合う感じ? てーか、『かわいい僕』ってなによ? 二人の秘密の合言葉とか? 嫌いとか言ってるのに以心伝心なわけ!? あー、もー……」
「エモい!」
そう叫んでラビットバニーが感情のままに両指を動かし始めた。当然、足場の揺れも今まで以上に激しくなる。
立っているのも難しい足場の上で、『紳士』が『不良』に指示を出す。
「ロープを! 足場は捨てましょう!」
「任せとけ!」
躊躇いもなく、『不良』は足場を蹴った。同時に、素早くロープを手裏剣に接続し、足場に思い切り撃ち込む。
足場の揺れに合わせ、掴んだロープを振り子の要領で勢いに乗せる。今なら『バリア』は消えているはず。タイミングを計り、彼はラビットバニー目掛けて宙に飛び出した。
「オラァ!」
「フギャッ!」
滑空からの空中飛び膝蹴りがラビットバニーの顔面を蹴り飛ばした。
もんどりうって足場を転がる怪人。揺れの収まった足場に着地する樹。
遠くの足場から『紳士』の称賛が聞こえる。『不良』はそちらには目も向けず、ただ腕を上げるだけで応えるのだった。
成功
🔵🔵🔴
荒谷・ひかる
うーん、「エモい」かぁ。
通じるかはわかんないけど、やってみようっ。
【助けておじいちゃん!】を発動
守護霊のおじいちゃん(筋骨隆々な2.5m超えの巨漢)を呼んで、ラビットバニーさんに紹介するね。
わたしね、昔わるい鬼のオブリビオンに攫われたの。
村で一番強い戦士だったおじいちゃんが助けに来てくれたんだけど、その悪い鬼と相討ちになっちゃって……
血まみれのおじいちゃんは、泣くわたしを、それでも心配させまいと優しく撫でてくれたんだ。
……ぐすっ。(思い出して涙ぐむ)
※以下、おじいちゃんの行動
孫を泣かしたな、とばかりに睨みつけ、ひかるを肩車してラビットバニーを殴りに行く
ひかるの鼓舞を受け、気合十分
「……あーしとしたこが。さっそく心を乱しちゃうなんて」
反省反省。と、呟きながらラビットバニーが立ち上がる。
彼女は首をぶんぶんと振り意識をはっきりさせ、傾いた兎面を両手でキュッと整えた。
「落ち着いてればあーしのバリアは絶対無敵! 平常心平常心」
てゆーか、エモいことじゃなければあーしのメンタルは基本鉄壁だし。と心の中で自身を鼓舞する怪人。
そう、弱いのはあくまでエモいという感情についてのみ。痛みや驚きで彼女が動揺することはないのだ。
「あー、だから、いきなり目の前にでっけーじいちゃんがいても平気なわけよ、うん」
態勢を立て直して視線を上げたラビットバニーの正面。そこには2.5mを越える、筋骨隆々の老翁が腕を組み仁王立ちしていた。よくよく観察すれば生者とは違った気配が伺える。幽霊や精霊、あるいは守護霊の類だろうか。
心臓の弱い人間なら卒倒しそうな威圧感を放っているが、言葉通り、ラビットバニーは特に気にした様子もない。
「こんにちは、ラビットバニーさん」
「うん? あー、おチビちゃんが本体かぁ」
ラビットバニーがついつい見上げていた視線を下に向ければ、巫女服の少女――荒谷・ひかる(精霊ふれんず癒し系・f07833)がぺこりと頭を下げていた。
ラビットバニーはオブリビオン。相手が猟兵であれば一目でわかる。
彼女にとって目の前の少女は吹けば飛ぶような印象しかないが、猟兵であるのならば始末するのに躊躇いはない。
「こっちは私のおじいちゃん。……わたしね、昔わるい鬼のオブリビオンに攫われたの」
「……あーしも悪いオブリビオンなんだけど? おチビちゃん、結構マイペースね」
祖父の守護霊の脚に縋り、俯きがちに語りだしたひかるに、ラビットバニーは呆れたように肩を竦める。
無論、怪人とて抜け目はない。ひかるが言葉を選んでいる隙に『絶対無敵バリア』は展開済み。加えてシステム・フラワーズ制御ビームもこっそり足場に照射している。ひかるの話が詰まらなければ、さっさと足場から叩き落してしまう腹積もりだ。
それを知ってか知らずか、ひかるはか細い声で話を続ける。
「攫われた私を、村で一番強い戦士だったおじいちゃんが助けに来てくれたの。だけど、おじいちゃんはその悪い鬼と相討ちになっちゃって……」
語るたびに記憶が蘇るのか、話が進むごとにひかるの声に震えが混じる。そんな彼女の小さな肩を祖父の霊がそっと抱いた。
守護霊も幽霊だ。肩に置かれた手に、温かみはない。しかし、ひかるは肩の感触に祖父の顔を見上げ、小さく頷いて記憶の続きを話し始めた。
「鬼をやっつけて、血まみれのおじいちゃんは、泣くわたしを、それでも心配させまいと優しく撫でてくれたんだ」
やっぱり、涙が零れた。最後まで語り終えたひかるの脳裏には、過去の記憶がまざまざと映っている。
嗚咽を漏らして涙を流す彼女を、霊となった祖父が優しく撫でる。それは、あの日の情景の焼き直し。
時は流れ、祖父はもう生きておらず、少女も成長した。それでも、変わらないものがあるのだ。
●
「べ、別に悲惨な過去があるくらいで心が揺れたりしないし? ただ、家族愛ってゆーの? じーちゃんがおチビちゃんをちゃんと見守ってて、おチビちゃんもじーちゃん大好きなのが伝わるってゆーかさ。その絆が時間を越えて繋がってるとかさ……」
「……エモい! でも、今度はきっちり始末すっからね!」
動揺したって仕事は果たす。膝を着いたラビットバニーがドンドン、と両の掌を足場に打ち付けた。システム・フラワーズ制御ビームが効力を発揮し、ひかるの足場が大きく沈み込む。
次の瞬間、沈んだ足場が大きく跳ね上がった。俯いていたひかるは反応もできずに宙に放り出されてしまう。
「きゃっ! お、おじいちゃん、助けてーっ!」
思わず上げてしまった悲鳴。それを聞き逃す守護霊ではない。
ひかるの隣まで飛び上がった祖父の霊が、彼女の身体を掴み、自身の肩に乗せる。
肩車。これも思い出のひとつの姿なのかもしれない。
祖父に支えられ視点が安定したひかる。眼下にはこちらを見上げるラビットバニーの姿が見えた。
ひかるは怪人を指差し、愛すべき守護霊を鼓舞する。
「頑張って、おじいちゃん!」
霊体に尋常の物理法則が通用するだろうか。守護霊は『空を蹴り』ラビットバニーに向って走り出す。振りかぶるのは固く握られた鬼の拳。
対するラビットバニーはハイヒールで足場を叩き、膝を折って力を溜める。
「ホアチャー!」
「おじいちゃん!?」
地を蹴り撃ちだされたラビットバニーのハイキックが守護霊の拳と激突した。
凄まじい衝撃が起こり、両者とも大きく吹き飛ばされる。
ひかるは守護霊に庇われつつも、花を撒き散らしながら足場をごろごろと転がっていく。
……彼女の身体が停止したときには、守護霊のボディはぼろぼろになっていた。それでも、祖父は孫の頭を優しく撫でる。ひかるは言葉もなく、その分厚い掌に頬を押し付けた。
「……最後まで、エモいし」
一方のラビットバニーは獣のように四肢を用い、衝撃を殺しつつ足場に着地していた。しかし、衝突の瞬間は確かにバリアが解除されていたようだ。怪人が再び両足で立ち上がろうとしたとき、その身体は大きくよろめくのだった。
成功
🔵🔵🔴
メテオラ・エルダーナ
私たちちょっと服装似てますね!
オブリビオンじゃなきゃ友達だったかも…
だからって容赦しませんよ!
魔法の準備が出来るまで、敵の攻撃は【ダッシュ】【ジャンプ】で回避!
指先で花びらを操るなら、そこそこ動きは読めるはず!
それじゃあ見せましょう、私の全力のファンタジア!
ひと際大きく【ジャンプ】して『カオティック・ミックス』を発動、
七属性・七色の魔力を【範囲攻撃】で周囲に一斉展開!
この一面の花園に、ありったけ大きな「魔法の虹」をかけましょう!
一瞬でもバリアが解けたなら、展開した魔力全てを発射します!
熱狂、涙、笑顔…エモが溢れるこの世界!
絶対壊させたりしません!!
「賢いあーしは気づいたわけよ。アイツらが近づく前に落としちゃえばいい、ってね!」
機先を制し、ラビットバニーの指先からシステム・フラワーズ制御ビームが放たれた。問答無用の先制攻撃。桃色の閃光が群れを成し、花の足場を駆け抜けるメテオラ・エルダーナ(まほうつかいキャット・f05337)に殺到する。
足元に着弾していくビームを視界の隅に捉えつつ、しかし、メテオラの視線は怪人の手元に集中していた。
「指先を観察していれば、そこそこ動きは読めるはず!」
ピクン、と怪人の人差し指が右に滑る。コンマ秒の判断。メテオラが小さく床を蹴った直後に、花の足場が右にズレた。動いた先の足場に彼女は危なげなく着地する。
よし。と心の中で小さくガッツポーズ。だが、後手になって対応しているだけでは勝利の目はない。『絶対無敵バリア』を攻略すべく、メテオラは足場を駆けまわりながら自身に描かれた呪印を励起させ、特大魔法の準備を進めていく。
彼女の操る魔力が短杖に集う。が、今回は攻撃を杖から直接撃ちだすわけにはいかない。発射過程にプラスアルファの術式を構築し、魔力をストックしていく。
「ちょっとぉ! いつまでちょこまかしてんのさー!」
勿論、それらは回避運動と並行しての作業。ラビットバニーがめんどくさそうな声をあげているが、メテオラの方は集中力をフル稼働させて走り回っているのだ。
正直、しんどい。だが、その甲斐あってか魔法の準備はなんとか完了。怪人の親指が上を向き、足場が跳ね上がったのに合わせて、メテオラはひときわ大きくジャンプした。
「それじゃあ見せましょう、私の全力のファンタジア!」
そう叫び、彼女は短杖で円を描くように自身の周囲を振り払った。
ようやく攻撃が来るのかとラビットバニーは目を細める。もっとも、『絶対無敵バリア』が展開されている以上、防御姿勢を取る必要もない。彼女の心にあるのは、猟兵がどんな攻撃を仕掛けてくるのかという、ちょっとした好奇心だけだ。
そうして、見上げる怪人の視線の先で。
虹が咲いた。
「花園に、魔法の虹を架けましょう!」
楽しそうに声をあげるメテオラの短杖の軌跡をなぞり、七色の魔力が円を描く。気象現象の虹とは違った、属性の力を秘めた七色だ。
それは怪人を攻撃するでもなく、中空に留まって輝きを放ち続けている。メテオラの杖が降られるたびに魔力の虹も一回り膨らみ、花園に彩りを添えていく。
花舞う空間に、魔法の虹。それは、美しくもあり得ざる光景だった。
●
「そもそもさ、コノ花もアノ虹も天然自然のモノじゃないわけじゃん? しかもさ、虹作ってんのが、スク水キマイラとか属性盛りすぎっしょ。でも、あーしがキレイだとか思うときに天然とか人工とかは関係ないワケ。花も虹もスク水も自然のものじゃないからこそ、逆に幻想的なのかもしれないし。つまるところ……」
「エモい!」
アッパレ、と天を仰ぐラビットバニーが肩に赤べこキャノンを担いだ。空中の相手を狙うにはコレに限る。エモい感情でバリアが解けてしまった気がするが、勝負はまだ終わっていないのだ。
一方、大砲に狙われたメテオラもバリアが解除されたと見るや、短杖のターゲットを怪人に切り替えている。展開された魔法の虹が指向性を持ち、ラビットバニーに狙いを定める。
一触即発。緊迫した空気の中、ふと、なんでもないようにメテオラがラビットバニーに声を掛けた。
「私たちちょっと服装似てますね!」
「バニー・コスはスク水じゃねーよ!?」
とぼけた問答の瞬間、不意を突くように、両者の引き金が引かれた。
片や赤べこのキャノンから放たれた巨大な砲弾。白煙をたなびかせ、メテオラ目指してぐんぐんと高度を上げていく。
片や空中に展開されていた魔法の虹。短杖の指揮に従い、七属性の力を引き連れてラビットバニーに向って降り注ぐ。
「熱狂、涙、笑顔……、エモが溢れるこの世界! 絶対壊させたりしません!!」
先程とは一転。決意を固めて叫ぶメテオラは、覚悟を決めて短杖を振り下ろした。
砲弾の迎撃は、ナシ。すべての『虹』をラビットバニー本体に向けて射出する。
悪しき企みを壊すため。飛来した砲弾をその身に受け、空中から叩き落されながらも、彼女の杖は怪人を指し示し続けた。
「そのガッツも、エモい!」
よもや攻撃に全振りされるとは予想していなかったのか、両足が地面にめり込む勢いで砲弾を放ったラビットバニーももはや魔法の回避は間に合わない。
撃ち落されたメテオラの根性に親指を立てつつ、怪人も魔力の奔流に飲み込まれていくのだった。
成功
🔵🔵🔴
マリアドール・シュシュ
【螺子猫】
アドリブ◎
バリア解除へ
油断や敵を甘く見ていないが純粋に彼への信頼が厚い
マルコの手を握り微笑
気遣いに感謝
厄介なバリアなのだわ
でも大丈夫
マリアにはマルコがいるから(隣見て
負ける気がしないのよ
あら、マルコの方が強いわ
絶対
バリア解除後、前線へ
蠱惑的で嫋やかな銀河の竪琴の旋律で攻撃(マヒ攻撃・おびき寄せ・楽器演奏
隙を作る
マリアが前へ往くわ
っ…!
(マリアが軽はずみな行動を取ったのに
こういう時あなたはマリアを責めないのね
知っていたわ
マルコが優しいひと、だと)
祈りのポーズで【シンフォニック・キュア】使用
敵の攻撃は音の誘導弾で追い音の刃でカウンター
きちんと倒して帰るのよ
マリア達の世界を壊させはしないわ
マルコ・トリガー
【螺子猫】
アドリブ◎
バリア解除へ
敵は強敵だが、マリアのためにも負けるわけにはいかない
手を握られてちょっと恥ずかしい
絶対無敵のバリアか
ハァ、マリアって恥ずかしげもなくそういう事をよく言えるよね
まあ……嫌いじゃないけど
前に出てもいいけど怪我しないでよね…まあ、させないけど
後衛から戦場全体を見渡して適宜マリアにアドバイス
2回攻撃で誘導弾を混ぜて援護射撃
敵の攻撃は牽制攻撃をしつつギリギリでフェイントで回避を試みる
第六感でマリアに危険が及びそうになったら【竜飛鳳舞】で駆けつけて身を呈して庇う
自分が怪我をしても自分の未熟さのせいと言い切り、逆にマリアを心配する
この世界、案外気に入ってるんだ
やらせないよ…
「あいたた。やってくれるなぁ、もー」
続けざまに猟兵たちの攻撃に晒されているはずのラビットバニー。だというのに、彼女は当初のカルい雰囲気を崩さず、呑気に兎面の角度を調整している。
こちらの攻撃は本当に通用しているのだろうか、ともすれば不安になりそうな光景だが、怪人に歩を向けるマルコ・トリガー(古い短銃のヤドリガミ・f04649)の瞳に怯えの色はない。
彼は並んで歩くマリアドール・シュシュ(蜜華の晶・f03102)の表情を横目に見て、自身に言い聞かせるように呟く。
「マリアのためにも負けるわけにはいかないな」
ぽつりと零れた言葉は、マリアドールの耳にもしっかり届いた。彼女は微笑を綻ばせ、敵を見据えるマルコの顔を覗き込む。真っ直ぐに前を見つめる彼の瞳が、少し照れくさそうに揺れたのは気のせいだろうか。
マリアドールはマルコの手を取り、緊張で少し固くなった指を絡ませ、ぎゅっと握りしめる。視線を前に戻せば、ラビットバニーが待ち構えている姿が目に入った。怪人の周囲が歪んで見えるのは、件のバリアが既に展開されているからだろう。
「絶対無敵のバリアか」
ただでさえ強力な幹部怪人を守る強固な障壁。呟くマルコの眉間に皺が寄るのも無理はない。
マリアドールも決して敵を甘く見てはいない。しかし、それ以上に彼女は隣の少年のことを頼もしく感じていた。握り合った指をそっと引き寄せ、彼女はマルコに囁きかける。
「厄介なバリアなのだわ。でも大丈夫。マリアにはマルコがいるから。……負ける気がしないのよ」
そう言ってマルコの横顔を見つめる金の瞳は、彼への信頼で爛々と輝いていた。
はっきりした物言いに、思わず彼女の瞳をまじまじと見つめてしまうマルコ。暫しの後、優しく微笑むマリアドールと見つめ合う形になっていると気づき、彼はぷいっと前に向き直った。
「……ハァ、マリアって恥ずかしげもなくそういう事をよく言えるよね」
まぁ、嫌いじゃないけど。そっけなくそう言う彼の表情は、怪人の方を向いたままで、マリアドールにはよく見えない。
けれど、たとえ見えていなくても彼女には彼の表情がはっきりと想像できた。
「大丈夫、オブリビオンなんかより、マルコの方が強いわ。絶対」
強く言い切り、彼女は竪琴を構える。名残惜しく指を離しつつ、マルコも短銃を右手に構えた。もう一度だけ、二人は見つめ合い、小さく頷きあう。
さぁ行こう。隣のパートナーを信じて二人は駆け出した。
●
「青春か! あーしの目の前でいい度胸してんじゃん。シチュ的に強敵を前に絆を確かめてたワケ? ……強敵ってあーしか!? ダシにされた気もするけど、いいもん見れたわ! うんうん。ツンデレボーイはピュアガールに弱いもんね。少年少女の純粋な関係ってのはどうして、こう……」
「エモいのかな!」
絶叫したラビットバニーの目が光った。怪人は両腕を斜めに肩の上へ伸ばし、片足を上げた独特の構えで猟兵たちを待ち受ける。
花の足場を走るマリアドールは、怪人の姿を認めて更に強く踏み出した。
「マリアが前へ往くわ」
「……いいけど怪我しないでよね」
ブレーキを掛け、マルコがマリアドールの後方をカバーする。飛び出したマリアドールは竪琴を爪弾き、嫋やかな旋律を奏でる。不可視の音撃がラビットバニーを取り囲む。
……だが。
「おっそーい!」
「っ……!」
刹那の間もなく、ラビットバニーが『音を潜り抜け』マリアドールの眼前に踏み込んできた。
光る兎眼。名付けて、うさちゃんカンフーモード。限界を超越した速度と反応速度を以て、ラビットバニーのミドルキックがマリアドールに襲い掛かる。
「させないよ」
「マルコ!?」
寸前、怪人とマリアドールの間にマルコが割って入った。戦場を広く視界に収めていた彼はラビットバニーが急加速した瞬間、自身の直感に従い空を駆けたのだ。
飛び込みざまに牽制射を仕掛けるが、二、三発の被弾ではラビットバニーの速度はまるで緩まない。覚悟を決め、左腕を盾にした彼に怪人の豪脚が叩きつけられる。
「ほあっちゃー!」
「ぐぅっ」
左腕が鈍い音を立て、マルコの胴体が地面に叩きつけられた。衝撃に肺から空気が抜け、急激な酸欠に喘ぎが漏れる。
ラビットバニーは余裕のカンフー・ポーズで足場に降り立つ。見下ろすような怪人の視線を遮り、マリアドールがマルコを背に庇う。
「大丈夫、マルコ? ごめんなさい、マリアのせいで……」
「いや、ボクが未熟だっただけだから。それより、次が来るよ」
軽率に前へ出たことを悔やむマリアドールの背に向って、マルコは自身の未熟に責があると言い切ってみせる。痛みに耐え絞り出すような彼の吐息がマリアドールの耳に届いた。
(知っていたわ。マルコが優しいひと、だと)
優しさに、甘えているのかもしれない。それでも今は、彼を守るためにも、目の前の脅威に対抗しなくてはいけない。
マリアドールは両手の指を胸の前で組み、祈りの姿でユーベルコードを起動する。彼女が口ずさむのは、癒しの歌。
それは、ただひとりのための唄声。本来、共感した者すべてを癒す『シンフォニック・キュア』は、今この場においては、マルコだけにその癒しの旋律を届けていた。
「あーしもまだまだ仕事があるからねー。そろそろバイバイだよ?」
祈りのポーズを取るマリアドール目掛けて、ラビットバニーがジャンプする。空中で横方向に一回転。勢いをつけて放つのは、強烈な回し蹴りだ。
怪人の脚の軌道は、マリアドールの顔面にきっちり狙いをつけている。直撃しようものなら無事では済まない。
だが、その攻撃にまたもや割り込む者がいた。
「やらせないよ……」
「アチャ?!」
空中に躍るラビットバニーの肢体に熱線が突き刺さる。マリアドールの治癒により、最低限の身体機能を取り戻したマルコが、片手の肘を地面につけつつも短銃で怪人を迎撃したのだ。
大技のため宙に飛んだのが仇となったか、熱線の衝撃にラビットバニーの軸がズレ、怪人は空中でバランスを崩す。
僅かに生じた隙。指を組んだマリアドールが、怪人に向けて思いの丈をぶつける。
「マリア達の世界を壊させはしないわ!」
「ピギャ!?」
彼女の耳でジャスミンのイヤリングが揺れた。それは、拡声効果を持つシンフォニックデバイス。武器を持っていないと彼女を侮ったラビットバニーの身体を、強化された音の刃が切り裂いていく。
勢いを殺され、空中に縫い留められる怪人。その眉間目掛けて、ようやく立ち上がったマルコが銃口を向けた。
「この世界、案外気に入ってるんだ。……きっちり倒させてもらうよ」
人差し指に力が込められ、引き金が引かれる。放たれた熱線が狙い違わず、兎の被り物に穴を空けた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
純・ハイト
礼儀正しく飛びながら「こんにちは」と話す。
敵の先制攻撃は飛びながら回避して、鼓舞と礼儀作法・パフォーマンスでかっこよく喋り、ユーベルコードのフェアリーの世界大戦争を発動する。発動したフェアリーの世界大戦争でレベル×100×軍の(階級での持てる部隊数5万)召喚された1億6千万のフェアリーの精鋭を隊列をパフォーマンスを見せるように組ませて召喚して攻撃させるこの流れなら相手にエモいと感じさせて絶対無敵バリアを一時的に解除できるかな?
厄介なバリアだけど結果がどうなるかやってみないと分からないね。
(1億6千万ですが描写が難しい場合は無理せず数が多いなどでいいです)
「あーしとしたことが、ひょっとして、結構ピンチなんじゃ?」
被り物に穿たれた穴からプスプスと煙を昇らせつつ、ラビットバニーが腕を組んで唸る。エモい事件の連発でテンションがアガりっぱなしだったが、よくよく考えるとダメージの蓄積が危険域に達しているような。
あーしのバリアは無敵なハズなんだけどなー。とカルい口調は崩さず独り言ちるラビットバニー。花の足場で首を傾げる彼女に、どこからともなく声が掛けられた。
「こんにちは、レディ」
「……まーた猟兵かぁ」
声の主には目もくれず、ラビットバニーが無造作に赤べこキャノンの引き金を引いた。空気を震わす轟音。撃ちだされた砲弾が空気を抉る。
砲撃は声の出所を撃ち抜いたハズ。クリーンヒットを確信するラビットバニーだが、彼女の予想に反していつまで経っても手応えはナシ。この段に至り、ようやく怪人は面倒そうにゆるゆると声の方向に顔を向けた。
「んん?」
「これはこれは、なかなか過激なご挨拶だね」
しかし、彼女が振り向いただけでは、声の主の姿は捉えられなかった。思ったよりも声の位置が高い。
ラビットバニーが視線を上げると、30cmほどの小さな人影と目が合った。声の主、黒の軍服をきっちり着こなしたフェアリーの純・ハイト(数の召喚と大魔法を使うフェアリー・f05649)が軍帽を胸にお辞儀してみせる。
「さて、まずはゆっくり挨拶といきたいところだけど、せっかちなレディは気に食わない様子。拙速ながら我が朋友をご覧いただくとしよう」
「……回りくどいヤツだなぁ」
大仰に手を広げて声を張るハイトに、ラビットバニーはイラついた様に次々と砲弾を撃ちだす。
自身とのサイズ比で考えれば一発が致命傷になるような砲撃の嵐をひらりひらりと縫いつつ、ハイトは軍旗を取り出して両手で天に掲げた。
「さぁ、我に付き従うフェアリー達よ、戦いの時は来た! 全軍出撃せよ!」
大きく左右に振られる戦神の軍旗。返報は細波の如く。小さな小さな鬨の声が、やがて大きなうねりとなってシステムフラワーズに響き渡った。
システムに咲く花々の陰から、フェアリーの英霊たちが姿を現す。一人や二人ではない、群れなす彼らは小隊を作り、大隊を経て、師団を形成し、軍と成る。
文字通り、雲霞の如し。万軍の将兵が筒を捧げ、ハイトが掲げる軍旗の元に参集する。それは、軍の名に恥じない整然とした行進であった。
「構え」
短く令を発しハイトが右手を上げる。その言葉に呼応してフェアリーの精兵たちが一斉にラビットバニーへと銃を向ける。
一糸乱れぬ、完成された戦闘機構。その冷酷な銃口が怪人を捉えた。
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「あーしってばミリタリーのことはよくわっかんないのよね。話聞いてると頭がこんがらがって眠くなるし? だからさぁ、アイツらの装備がどーとか、編成がどーとか、そんなのわかんないわけ。ただ、まぁ、あれよ。すっげー大人数がすっげー息合わせて動いてるのを見るのはやっぱ気持ちいいわ! うん、これもまた……」
「エモい! ……んだけど、これヤバくね?」
形としてはラビットバニーも大砲を構えているが、どう取り繕っても数が違い過ぎる。彼女が一発砲弾を放つ間に、いったいどれだけの銃弾が飛んでくるのやら。赤べこキャノンを攻撃速度重視で扱うにしても限度というものがある。
眼前の大軍勢は一分の隙も見せずに銃を構え続けている。指揮官の男――ハイトも油断する素振りはない。ただ冷徹にラビットバニーの動向を見定め続けている。
「ま、ここはしゃーないか。バイバイ、またね、猟兵ちゃん?」
溜め息をついたラビットバニーは、最後までカルい雰囲気のまま、おもむろに赤べこキャノンの引き金を引いた。
轟音と共に飛来する攻撃力を重視した砲弾がフェアリーの部隊をいくつもひき潰す。
しかし、味方の被害に眉も動かさず、ハイトは無慈悲に右手を振り下ろした。
「撃て」
瞬間、赤べこキャノンの何倍もの轟音がシステムフラワーズに響いた。
小柄なフェアリーたちに似つかわしくない黒鉄の嵐が花の足場を穿つ。
衆寡敵せず。なす術もなく、ラビットバニーはその暴力の奔流に飲み込まれていった。
「……撃ち方、やめ」
怪人の姿すら視認できない激しい銃弾の雨。
一刻の後、ハイトの号令により銃撃が止んだ花の足場には、怪人の痕跡すらも残っていなかった。
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斯くして、猟兵たちはラビットバニーの撃退に見事成功した。
敵がオブリビオンである以上、彼女もいずれ骸の海から戻ってくるのだろう。
しかし、他の戦場と協力して撃破を重ねていけば、一時的にせよ復活が押し止められシステム中枢に向かう隙が必ず生まれるだろう。
勝利の喜びもそこそこに、猟兵たちは次の戦場へと向かうのであった。
成功
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