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バトルオブフラワーズ⑩〜得も言われぬエモさ~

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ #ラビットバニー

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●Emotionalでぶち破れ
「やぁ諸君、キマイラフューチャーでの戦争お疲れ様だよ」
 労う声と同時にメモをパラパラめくり、グリモア猟兵エンティ・シェア(欠片・f00526)は「早速で悪いんだけどね」と切り出した。
 エイプモンキーを討伐したことで開けた道だが、その先には第二の幹部、ラビットバニーが待ち受けている。
 可愛い怪人という通り名があるだけあって、見た目は愛らしいし技もなんとなく可愛い感じなのだという。
「まぁ、能力の内容自体はエグいくらいだけどね。何せ『絶対無敵バリア』などという幼少期の鬼ごっこなんかで横行しそうなチート技が前提にあるのだから」
 その名の通りどんな攻撃も受け付けないバリアを張った状態のラビットバニーとそのまま対峙すれば、一方的に蹂躙されるしかない。
 だが、そんな最強技だとて、弱点はあるものだ。
「彼女が『エモい』と思う物を見ると、心が乱されてバリアが維持できないらしいんだ」
 エモい、とは。
 端的にいうと心を揺さぶられる何か、と認識すればいいらしい。
「ほら、例えば少女漫画のキュンとする展開から少年漫画の熱い展開……見開きや大ゴマを使うようなシーンが有るだろう。ああいうのでいいらしいよ」
 SNSで流行りそうなやつ、と言ったほうが分かりやすいかな、と小首を傾げつつも、エンティは続ける。
 ラビットバニーの『エモい』基準は結構ガバガバらしく、対策自体は難しくない。
 しかしバリアがなくとも彼女は精鋭であり強力な怪人だ。バリアの対策同様に、ラビットバニーをどう打倒するか、そこもしっかり考えていかねばなるまい。
「キマイラフューチャーの命運……というとやや重みがあるかね。まぁ、皆で力を合わせて世界を救うなど、最高に『エモい』結末のために務めておくれ。武運を祈るよ」
 対峙する敵は常に一体だけだからそこは安心していい、と付け加え、戦場へ至る道を開くのであった。


里音
 ラビットでバニーな兎さんとの戦闘です。
 張り切ってまいりましょう。

 ※ラビットバニーは必ず、猟兵に先制して『絶対無敵バリアを展開するユーベルコード(POW、SPD、WIZ)』を使ってきます。
 絶対無敵バリアは本当に絶対無敵で、あらゆる攻撃を無効化しますが、「ラビットバニーがエモい物を目撃する」と、精神集中が乱れてバリアが消滅します。
 ラビットバニーのエモい基準はかなりユルいので、バリアの解除は比較的容易と思われますが、バリアなしでも彼女は相当の実力者です。

 ※このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「バトルオブフラワーズ」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 皆様のプレイング、お待ちしております。
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第1章 ボス戦 『カワイイ怪人『ラビットバニー』』

POW   :    赤べこキャノン
【絶対無敵バリア展開後、赤べこキャノン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    うさちゃんカンフー
【絶対無敵バリア展開後、兎面の目が光る】事で【うさちゃんカンフーモード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    おはなハッキング
【絶対無敵バリア展開後、両手の指先】から【システム・フラワーズ制御ビーム】を放ち、【花の足場を自在に操作する事】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:和狸56

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リグ・アシュリーズ
気合と根性で超絶エモいバリア突破シーンを実現してやるわ!
ホントは突撃槍やロボあたりが似合うとこだけど、我流よ我流!

出たわね、ラビットバニー!
バリアがあろうと私の剣で切り開いてみせる!
言うが早いか、猛烈ダッシュで斬りかかります。
流石に歯が立たないでしょうけど、不屈の闘志で何度も挑む。
なんのっ!これまで超えてきた壁に比べたら、こんの……ぐらい……!!

息も絶え絶えで黒風鎧装、魔狼のオーラを呼び覚まし尚も斬りかかる。
なんで諦めないのかって?決まってんじゃない!

あたしより強くて!エモくて!目障りなのに何だかほっとけない!
アンタに会いに来てやったのよーー!!
(何故かここでキュン要素?足しつつぶち破り攻撃)




 花の道が続く。幻想的な光景の中、奇抜な配色の人物が立っている。
 ウサギの被り物をつけた豊満な女性……カワイイ怪人『ラビットバニー』の姿を見据え、リグ・アシュリーズ(人狼の黒騎士・f10093)は剣を抜いた。
「出たわね、ラビットバニー!」
 リグの持つ剣は、とても無骨な鉄塊のような黒。
 しかしそれも、スラリと構えればぴたりと場面に噛み合うのだ。
「バリアがあろうと私の剣で切り開いてみせる!」
 タンッ――! 宣言と同時に踏み切った足元で花が舞う。
 その勇ましい姿に、ラビットバニーは一瞬きゅんとときめいた様子を見せたが、そこは幹部の意地。絶対無敵バリアをなんとか維持し、リグの一閃をあっさりと弾いた。
「くっ……まだまだ!」
 リグが備えてきたのは、気合と根性、そして、不屈の闘志。
 超絶エモいバリア突破シーンを演出するためならば、攻撃を弾かれることも織り込み済み、だ。
(ホントは突撃槍やロボあたりが似合うとこだけど、我流よ我流!)
 身一つ、刃一つ。それだけで果敢に挑む姿は格好いいものだ。
 しかし、ラビットバニーのバリアを破るには、まだ、足りない。
「あーしの絶対無敵バリアを破りたかったらもっとエモくなってから出直してきてくんなーい?」
 ちゃんと我慢できました。を誇らしげに主張するように、肉薄するリグの至近、突きつけるように赤べこキャノンを放つラビットバニー。
 何度切りかかってもびくともしなかった絶対無敵バリアをするりと抜けて放たれた一撃は、リグの小柄な体を吹き飛ばす。
 攻撃力を重視して放たれたキャノンに、リグの体はそれだけで満身創痍にさせられる。
「ッ……なんのっ!」
 それでも。リグにある選択肢は、立ち上がるということだけだ。
「これまで超えてきた壁に比べたら、こんの……ぐらい……!!」
 ふらふらになりながら、傷の痛みに苦悶の表情を浮かべながら、震える声で、しかし黒剣を握る手の力だけは、緩めずに。
 無理やり立ち上がらせた体を支えるように、漆黒の旋風を身に纏わせる。
 魔狼のオーラを呼び覚まし、一度、咆哮を上げるように声を張ったリグは、再び地を蹴り、ラビットバニーへ斬りかかった。
 その姿に、ラビットバニーが打ち震える。
「は? なにそれ、なにそれ! 超エモいんですけど!」
 絶対無敵バリアが揺らぎ、掻き消える。
 しまった、と思うより早く眼前に迫ったリグの一閃を赤べこキャノンで受け止めて、ああもう、とラビットバニーは抑えきれない興奮に声を上げる。
「さっさと諦めてほしんだけど!」
 でももっとエモい姿も見たい気もする複雑な心地。
 表情の見えない被り物の瞳を見据え、リグは黒い風に覆われおぼろげな口元に不敵な笑みを浮かべた。
「なんで諦めないのかって? 決まってんじゃない!」
 踏み込む。この拮抗がラビットバニーがエモさを感じているためなら、その機を逃すまいと。
「あたしより強くて! エモくて! 目障りなのに何だかほっとけない!」
 押し込んだ鉄塊の剣が弾かれる。握りしめる手に、痺れるような感触を覚えたが、まだ、その手は剣を握っている。
 赤べこキャノンが素早くこちらに向けられるのを見留め、それでもリグは、そこを動かなかった。
「アンタに会いに来てやったのよーー!!」
 無理な姿勢。それでも渾身の力を込めて薙いだ切っ先は、ラビットバニーに届き――。
 ドゥン――!
 二発目の、至近からの発射音と共に、リグの意識は途絶えた。
 既に致命的な損耗があったがため、与えられたダメージは多くない。
 だが、ラビットバニーの心には、強い感銘を与えられたらしく。
「超、エモいんですけど……」
 自らが受けた、その傷さえも。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

夜乃・瞳
かっこいい方面でエモいを目指すのです
私は月光(ドレスアーマーのような見た目)にラウザーを使用
花に拘束されないように【ファイア】と【ドレス】のカードをスラッシュして赤い焔のドレスを身にまとうのです

更にエモさを加速させるため【クイーン】カードを使うのです
「あのバリアを破るにはもうコレしかないのです。まだ試作段階だけど、やるしかないのです」

【ファイア】【ドレス】【クイーン】のカードをスラッシュ
蒼い焔のドレスに変身なのです
まぁ実はただの見た目変更だけで無意味なのですが
「長くは持たないから、一気に決めるのです。【ファイア】【スパイラル】【ラビット】螺炎蹴撃なのです」
焔を渦をまとってのとび蹴りなのです




「強化デバイス接続、術式カードオープンなのです」
 静かな声と共に、夜乃・瞳(ミレナリィドールのスターライダー・f01213)は二枚のカードを取り出した。
 流麗な所作で滑らせた二枚のそれは、カードリーダーを通して凍結されていた術式が解凍され、展開する。
 ――ファイア。
 ――ドレス。
 読み込まれた二つの術式が、瞳の纏を包み込むや、その装いは焔の如き真紅を宿す。
 いや、それはまさしく焔だった。瞳の周囲の空間はゆらりと熱に揺らめき、システムフラワーズが作り上げる花の道からはぐれ舞った花弁をちりりと焦がす。
 術による変身は、少女の永遠の憧れ。その憧れが生む『エモさ』に磨きをかけるべく、瞳は更にカードを取り出す。
「あのバリアを破るにはもうコレしかないのです。まだ試作段階だけど、やるしかないのです」
 意を決したように、するり。素早く切られた札は、更なる術式を解く。
 ――クイーン。
 読み込みと同時に展開されるのは、荘厳な光。
 力強さと華やかさをあわせた赤い焔のドレスを優しく包んだその光は、赤を、蒼へ。
 より華麗で美しい、蒼い焔のドレスへと転じた。
「あぁー! イイじゃんそれ、超ッ、エモい!」
 テンションぶちアゲなんですけどー! とはしゃぐラビットバニーは、むしろアガり過ぎて絶対無敵バリアの維持ができていない。
 エモさの演出は上手く行ったようだ。
(まぁ実はただの見た目変更だけで無意味なのですが……)
 残念ながら、炎の色に能力差分は付与されない。この辺りは、今後の改善点の一つだろう。
 ともかく、変身シーンを終えれば、後は果敢に立ち向かうのみ。
「長くは持たないから、一気に決めるのです」
「っとぉ? あーしナメられてる系? まじウケる」
 ウサギの被り物の下で軽く笑って、ラビットバニーは両手の指先からシステムフラワーズの制御システムへ介入するビームを放つ。
 瞬間的にその場を掌握したラビットバニーは、瞳が立つ花の道を覆い隠すように、大量の花弁を纏わりつかせた。
 ――ラビット。
 カードが与えた跳躍力が、寸でのところで花を躱す。
 だが、その軌道を読んだかのように、花は瞳を包み込む。
「変身系ヒロインは追い詰められるところからが最高にエモいんじゃん?」
 捉えたと、確信した瞬間だった。
 ――ファイア。
 ――スパイラル。
「螺炎蹴撃なのです」
 瞳が纏う焔の熱量は、本物だ。
 カードを通すことで一気に膨れ上がった焔が花を燃え散らし、更に渦を描いて収束する。
 至極単純な飛び蹴り。だがそこに付与された螺旋の焔が、ラビットバニーを貫いた。
「はぁ!?」
「確かにその通りなのです」
 二撃目は、通るだろうか。そんな綱渡りではあるが、追いつめられた所からの、反撃は確かに決まった。
「ここからが、最高にエモいのです」
 見開き獲得、間違いなしである。

成功 🔵​🔵​🔴​

シャオ・フィルナート
あらかじめ★氷の翼と★死星眼発動
ハムスターな着ぐるみパジャマ+ぷきゅぷきゅ鳴る靴で
子供のように走る

持参した苺タルトを差し出し【誘惑】

戦いの前に…一緒に、食べよ…?

いつでも翼で防御できるよう内心警戒しつつ
乗ってくれたらいい子に座り
両手でタルトをちまちま食べる

俺…いちご、スキ……
お姉さんも、スキ…?

さり気なく死星眼での【催眠+生命力吸収】と
自分の足場への氷の【属性攻撃】による凍結

俺…人と関わるの、得意じゃなくて…
だから…その、ありがとう…

攻撃動作を【見切り】
【暗殺】技術を生かした素早い動きと
攻撃を受けても耐える【激痛耐性】で
【UC:氷の津波+範囲攻撃】で花畑ごと飲み込む

走り方は、演技でしたぁ…


リオ・フェンブロー
一応は、見開きっぽいのを狙ってみましょうか
先輩ポジの意地のような感じで
途中で退場するポジとか言われましたが頑張ります

一先ず、アンサラー を展開し、通常の砲撃を
まぁ、届かないでしょうね
それでも、確かめずにはいられなかったのですよ
貴方は強者だ

受けた傷はそのままに、血濡れのまま魔術の全てを回す
砲身が焼き付いても構わない
この身を費やす覚悟を見せましょう
髪がほどければ雑にかきあげて

レディの方を見据え静かに笑う

ですが、挑みますよ
自棄になったんじゃありません
ただ覚悟を決めただけです
それに、今日は死ぬ日では無いですから

貴方から退場していただきましょう? レディ

バリアが解ければ全武装での攻撃を
少しでも削れれば




 ぷっきゅ、ぷっきゅ。
 弾むように花の道を歩めば、それに合わせて可愛らしい足音が響く。
 ぷきゅぷきゅ言わせているその姿はふんわりしたハムスターの着ぐるみパジャマ。背中にひょこりと備えた氷の翼がきらきら感を演出している。
 小柄な体躯でぱたぱたっと無邪気に駆けるのはシャオ・フィルナート(悪魔に魅入られし者・f00507)。
 おずおずとラビットバニーの元まで近寄ると、後ろ手に隠していた箱をそっと差し出した。
 ふわ、と甘い香りを漂わせるそれは、苺のタルトだった。
「戦いの前に……一緒に、食べよ……?」
「はぁ?」
 向かってくる猟兵を返り討ちにしてきた光景を見ていたのか? とでも言いたげな声で、ずい、とシャオを覗き込むラビットバニー。
 被り物の兎の眼は虚無そのもので、そのまま襲いかかってきても何ら不思議ではなかったが、シャオは警戒は維持しつつも、誘う姿勢を崩さず、はにかんでみせた。
「おいしい、よ……?」
 つやつやの苺がたっぷり敷き詰められたタルト。ふわふわ華やかなお花の背景。ぷきゅっと可愛い足音で歩く、ふんわりハムスター。
 可愛いの詰め合わせかよ……!
 そんなモノローグがどこかに見えたような気がした。
「しょーがないから食べたげるかー!」
 ころっと乗るのは、シャオに対する侮りも僅かにあったのだろう。
 それを心の端で感じ取りつつも、おくびにも出さないまま、シャオはいい子でその場に座り、どうぞと笑顔で差し出してから、自らもタルトを食べ始める。
 両手で持って、ちまちまと食べながら、時折「えへへ」と笑顔を向けるのも忘れない。
「俺……いちご、スキ……。お姉さんも、スキ……?」
「好き好きめっちゃ好きー。苺ってカワイイじゃん?」
 そんな風に、会話を交えながらちらちらとラビットバニーを見上げるシャオだが、さり気なく催眠をかけようにも、被り物をしたままの瞳と視線が合わない。
(ちゃんと食べれてる……のかー……)
 死神の瞳との別名を持つ金色に覚醒した右目の効果は、見込めないようだ。
 だが、自分が立つ足元を徐々に凍らせていくことは、できていた。
「俺……人と関わるの、得意じゃなくて……」
 ぽつり、ぽつりと語る声に、興味があるのかないのか。あるいはエモを見出しているのか。
 ラビットバニーは黙って聞いていた。
「だから……その、ありがとう……」
 ふわりと、柔らかく微笑むシャオに、うっ、と呻くラビットバニー。
「はぁ~、カワイイが過ぎるんですけどー!」
 超エモい、とこぼした所で、ラビットバニーは足元がひやりと冷えていることに、気がついて。
 見下ろした笑顔が、その柔らかだった微笑もまた、鋭利に冷えていくのを見た。
「この絶対零度に……耐えられる……? 凍てつけ……」
 数瞬の後、シャオの座る場所を起点に津波のような氷の塊がラビットバニーへと押し寄せる。
 システムフラワーズの制御ビームを放つも、それに伴うはずの絶対無敵バリアは怒涛のカワイイ攻めによるエモさで発動しない。
「チッ……!」
 舌打ちして、花の壁を作り凌ぐも、近くの花は殆どが凍ってしまっており、壁の構築に時間を要した。
 だが、周囲の花も何もかも氷で飲み込んでも、それで、彼女が倒れるわけも、なくて。
「あー、騙された騙された! ま、カワイイのは確かだったし? あーしからタルトのお礼してあげる」
 凍りついた足を振り、まあ動けるからいっか、と軽く流して攻撃の姿勢を取ったラビットバニーは、不意に何かに気がついて即座に赤べこキャノンを構え、バリアを展開する。
 瞬間、バリアに叩きつけられた砲弾が飛散し、代わりに赤べこキャノンが見舞われる。
 それは先程まで対峙していたシャオではなく、別の標的を捉えた。
「させませんよ。……それにしても、舌打ちは品がありませんね、レディ」
 幹部と名のつくだけあって、不意打ちでも通らない上に、しっかり反撃までされた。
 確かめられただけ良し、と展開したアームドフォートを指先で撫で、崩れかけた膝を律し、リオ・フェンブロー(鈍色の鷹・f14030)は氷と花の混ざる戦場に歩を進めた。
 そんなリオを値踏みするように見つめ、ラビットバニーはふーん、と呟く。
「カワイイの次はイケメンでくるって? ふふーん、あーしはもう騙されないし!」
 もう心は乱れない、などと盛大なフラグを立てつつバリアの内側で胸を張るラビットバニーに、リオは「ええ」と静かに告げる。
「まぁ、届かないでしょうね。それでも、確かめずにはいられなかったのですよ」
 ただの武器攻撃が通用するとは、それほど思っていない。
 だが、その武器と共に戦場を抜けてきた代物でもある。
 一撃目に込めたのは、意地だ。
「貴方は強者だ」
 そして強力な反撃を受けたその身で、それでも立つのもまた、部隊の長を務めた者の、意地。
 途中で退場するポジだとか言われたりもしたが、先輩ポジでもある以上、強者を前にして尻込みなどしていられない。
 身の丈ほどの杖が、魔力を高める。まるで流れる血に呼応するかのように、増強される力が展開した砲身に込められていく。
 焼き付きそうな砲身へと視線を落とせば、ゆるく編んでいた銀糸が解け、はらりと零れてくる。
 雑にかきあげ、真っ直ぐに見据える視線を通して、リオは口元に笑みを浮かべた。
「ですが、挑みますよ」
 体が軋むように感じたのは、受けた攻撃ゆえか、魔力の酷使のせいか。
 定かではないが、その程度でふらつくような真似もしない。その程度の一撃に、するつもりはない。
「自棄になったんじゃありません。ただ覚悟を決めただけです」
 ――この身を費やす覚悟を見せましょう。
「それに、今日は死ぬ日では無いですから」
 死に場所も死に時も決めている。そんな口ぶりで。
 砲撃の反動で倒れることのないように、しっかりと踏み込んだ。
「貴方から退場していただきましょう? レディ」
 見据える瞳に添えられた微笑は鋭くて。最大限まで練り込まれた魔力を宿す武装は重厚で、乱れた髪と血も合わされば、リオの姿は正しく戦場に立つ猛者そのもの。
 だけれど、ラビットバニーはその物腰の柔和さを見て、穏やかな言葉を聞いている。
 ギャップだけでも大したものだというのに、覚悟と来た。
 あの砲身が火を吹けば、赤べこキャノンといい勝負をするのだろう。
 それほどの威力を伴うために、ボロボロになってもなお立ち上がり、全霊を込める姿など、見てしまえば……。
「エモい……!」
 悔しいが、心が震えないわけがなかった。
 まるで長年の好敵手と相対するかのような、そんな心地に肌が粟立つ。
 絶対無敵バリアが掻き消えたのを合図としたように、リオは、そしてラビットバニーは、同時に砲撃を放つ。
 凍りついた戦場を溶かすほどの熱量がぶつかり合って、爆ぜた。
 使用者がそれぞれに吹き飛ぶほどの爆発が落ち着いた頃。足元に砕けた氷の破片を踏み砕いて、ラビットバニーは、高らかに笑う。
「……っ、はぁ……あーしの、勝ち!!」
 その高揚は、彼女の徐々に増えていく傷の感覚さえも、曖昧にさせていた。
 気付いていないのは、その高揚に浸る、彼女のみ――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

須辿・臨
エモいかどうかはわからねえっすけど、強敵となれば、腕が鳴るっすね。
その前になんか、すごく目のやり場に困るオネーサンっすけど……!

先制喰らうのは覚悟してるっす。
オレは逃げも隠れもしない――剣を構え、正面から挑むっす。

傷を負っても、剣が届かなくても、相手の攻撃を誘って仕掛ける。
時にキャノンの砲撃で吹き飛んでも、何度でも起き上がる。
この世界がかかっているんすから、オレは絶対倒れない……負けないっすよ……!
相手をじっと見つめて、言うっす。

さぁて、バリアは揺らいだっすかね?
逆境の一太刀。
今までの傷を乗せた反撃っす。
オレはへろへろに見えるかもしれねえっすけど……こいつはかなり効くし、何処までも届くっすよ?


アンネリーゼ・ディンドルフ
【SPD】
アンネリーゼは今日もおいしいオブリビオン料理を求め依頼を受ける

「ラビットバニーですか。兎料理……」
お腹がぐーぐー鳴っている

「スピード勝負なら負けませんよ」
UC発動
「エルフでグールの私の寿命とあなたの寿命、どちらが早く尽きるのでしょう?」
ラビットバニーの攻撃を【ダンス】のように回避する
「エモいと感じてくれるまで踊り続けますよ~」

バリアが解けたら高速に動き回りつつ【早業/2回攻撃】で宛ら弾幕系シューティングゲームのように矢を連射し、芸術的圧倒的物量でラビットバニーを仕留めようと試みる

「兎料理、ぜひ食べてみたいですね」
お腹がぐーぐー鳴っている




 ぐうううぅぅ……。
 緊迫した戦場に、気の抜けた音が響く。
 アンネリーゼ・ディンドルフ(オブリビオン料理研究所の団長・f15093)は、相対したラビットバニーをじぃっと見つめて、ぽつり、こぼす。
「兎料理……」
 ぐーぐー。
 鳴り止まないお腹をそっと撫でて、アンネリーゼはゆるりと微笑む。
 先程までとは毛色の違った、異様さをはらんだ雰囲気に、ラビットバニーは冷めやらぬ興奮は残したまま、警戒するようにアンネリーゼを見つめる。
 彼女の目に、敵意は乏しい。だが、決して温和でも有効的でもなく、もっとそれ以上に純粋な、裏表のない殺意があった。
「兎料理、ぜひ食べてみたいですね」
 すなわち、狩猟者としての、獲物を見る眼差し。
 果たして被り物と衣装にしか兎成分を見いだせないラビットバニーが兎料理に昇華されるかは甚だ疑問だが、ともあれアンネリーゼにとってオブリビオンとは食材。
 だからこそ、仕留めるのだ。
「スピード勝負なら負けませんよ」
 アンネリーゼが地を蹴る瞬間、ぴくり、ラビットバニーはその指先を震わせて、即座に絶対無敵バリアを展開させる。
 そうして、バリアを見て仕掛けようとした攻撃を取りやめ距離を取ったアンネリーゼを追い、キレの良い蹴りを見舞う。
 それをひらりと踊るように躱して、とん、とん、とステップを踏むように間合いを測るアンネリーゼ。
 ――それは、瞬きをするより早い時間でのやりとり。
 お互いにスピードと反応速度を爆発的に上昇させる技を駆使して、コンマ以下の超速の攻防を繰り広げる。
「ふぅ~ん? あーしのスピードについてくるなんてなかなかじゃん?」
 ひらひらと躱し続けるアンネリーゼを前に、きゅっ、と足を止めて愉快げに告げるラビットバニー。
 捉えられない事に焦るでもなく余裕を見せているのは、絶対無敵バリアが維持されているためだろう。
「負けませんと、言ったでしょう」
 くすりと応じて、再びけしかけるべく距離を詰めたアンネリーゼは、ラビットバニーを下から覗き込むようにして小首を傾げた。
「エルフでグールの私の寿命とあなたの寿命、どちらが早く尽きるのでしょう?」
 お互い、これが命を削る技であることは承知の上だろう。
 いかに絶対無敵バリアと言え、己の寿命が潰えていくのを妨げることはできまい。
 そしてその寿命に関して、アンネリーゼは尽きることがないという自信があった。
「エモいと感じてくれるまで踊り続けますよ~」
 我慢比べと行こうではないか。誘い込むようなステップに、ラビットバニーはカンフーで応じる。
 だが、その口が発したのは、臨むところと言うような前向きな言葉では、なく。
「は? 寿命って……ガチで言ってんの? そう言う次元じゃないっしょ」
 ひらひらと踊るように動き回るアンネリーゼは相変わらず捉えきれないけれど、超速で動き回る二人の攻防は、何手重ねようと秒単位でしか削られない寿命への影響ははっきり言って乏しい。
 そんな持久戦では、バリアを張ったラビットバニー側の圧倒的有利は、揺るがない。
「あっは! ほらほらもっと気合い入ったエモいダンス見せてくんないと!」
 チリ、と放った蹴りがアンネリーゼの体を掠める。踊るように躱すその動きに、段々と慣れてきたと言うように笑って、ラビットバニーはアンネリーゼを攻め立てる。
 だが、そうやって追い詰めていくほど、それでもなお紙一重の所で躱し続けるアンネリーゼに、高揚していた。
「あー、イイじゃん、ギリギリで耐えながらーとか、自分の命を削ってでもーってやつ? そういうのも、あーしめっちゃ好き」
 その言葉の裏付けのように、バリアが揺らいで、掻き消える。
 その一瞬の好機に、アンネリーゼは攻撃に転じた。
 出し得るスピードを出し切っての連射。シューティングゲームの弾幕の如く矢を打ち出して、それで、仕留める――。
「ったたた……全避けできないとか流石にあーしも疲れてきてるくね?」
 だが、その大半は、うさちゃんカンフーの前に叩き落とされる。
「エモいダンスがないなら、そろそろ終わりにしたいんですけど!」
 繰り返した攻防の末、ラビットバニーを疲弊させることに成功したため、幾つかの矢はラビットバニーを貫いたが、それを物ともせず、急速に距離を詰めて。
 ぐー。ぐー。
 気の抜けるような音は、ほんの一時、鳴り止むこととなる。
 倒れ伏すアンネリーゼに、けれど、追い打ちはない。
 構えた剣を真っ直ぐに向け威嚇するように立つ青年を見留め、咄嗟に下がったゆえに。
「そこまでっすよ」
 場に割り込んだ須辿・臨(風見鶏・f12047)は、ラビットバニーを睨むように見据え……ほんの一瞬だけ、視線の置所を探すように泳がせた。
(すごく目のやり場に困るオネーサンっす……!)
 足元から胸部辺りまではちょっと視線を置いておけない。やっぱりウサギの被り物を見つめるしかない。
「エモい登場じゃん」
 ご機嫌に声音を弾ませながらも、バリアは再形成させて。どんな手でくるつもりと挑発するように指先でちょいと招いて見せる。
 その様は強敵の姿そのものだ。あのバリアを解除するエモというやつに到れるかはわからないが、純粋に腕が鳴るというものだ。
(先制喰らうのは覚悟してるっす)
 構えた剣を握り直し、きっ、と強い眼差しと共に、臨は地を蹴った。
「オレは逃げも隠れもしない――正面から挑むっす!」
「へぇ?」
 キライじゃないよ。弾んだ声はそのままに、ラビットバニーはあえて何もせずにその剣を受ける。
 勿論、絶対無敵バリアが、だが。
「もう一声言ってみよっかー?」
 その手でくるのは二人目だ。余裕綽々に赤べこキャノンを構え、放つ。
 覚悟の上とは言え、そのダメージは大きい。思わず苦悶の声を上げる臨だが、まだ、膝を折るには至らない。
「この程度……!」
「あーあー、イイじゃん、その調子」
 バリアが維持されている以上、ラビットバニーはその場を動く気はないようだ。
 果敢に立ち向かってくる剣士たる臨をけしかけては、赤べこキャノンで返り討ちにする。
 威力重視で撃っているためか、絶妙に躱されているらしく、複数回繰り返しても完全に沈黙させるには至らぬが、その分、臨のエモい復活シーンは魅力的になっていく。
「ぐ、く……」
 吹き飛んだ体が、重い。思わず手放してしまった剣は、視線の先だ。
 このまま瞼を閉じれば楽になれるだろう。しかし、臨は諦めなかった。
 ボロボロの体を引きずるようにして剣を掴み、震える膝に鞭を打って。立ち上がろうとする足は、無情にもくずおれるが、それでもなお、臨は真っ直ぐにラビットバニーを見据える。
「この世界がかかっているんすから、オレは絶対倒れない……負けないっすよ……!」
 立つことさえもままならない体を、文字通り引きずりながら。何度も躓き、その度に花畑を血で汚しながら、再び剣を構えようとする姿に、ラビットバニーは天を仰いだ。
「エッッッッッモ……!!」
 尊い。被り物がなければ滂沱の様が拝めたことだろう。
 高ぶりまくった感情を表すように、バリアが派手に飛散する。
 それを見て、臨は痛みに歪めた口元に、ほんのかすか、笑みを湛えた。
 ――ラビットバニーは、傷を負いながら立ち上がる猟兵の姿を何度も見ている。
 それは何度見てもエモいもので、その度にバリアを解除させられてきたが、彼女は都度、返り討ちに成功していた。
 臨の直前に相対したアンネリーゼが目論んだ『寿命』の削減に関しては微々たるものでも、幾百と重ねた攻防は、もっと単純な『体力』を大きく削いでいた。
 更には、その場に存在する花達の多くは焼き払われ、あるいは凍りついており、彼女が制御できる部分は少ない。
 そして何より、ここまでに相対した猟兵達の与えたダメージは少なくないという、その事に。ラビットバニーは、疲弊とエモさのあまり思い至れていない。

 ――さぁ、とくと御覧じろ。

 彼女の傷に、油断に、整えられた環境に。
 積み上げられた彼らの布石に投じられる、その一撃を。
「今までのお返し――覚悟はできたっすか」
 その一瞬に全てを賭けて、臨は斬撃を放つ。
 踏み込みも甘く、切っ先が届くでもないその一閃は、ラビットバニーの視界からは、満身創痍の青年が繰り出す悪足掻きにしか見えない。
 けれどその斬撃は、逆境の一太刀。
 今まで臨が受けたダメージを、限界まで請け負ったその傷を、そのまま威力に上乗せした。
「……は?」
 ラビットバニーが気付いたのは、自身の体が傾いていること。
 いや、傾いているのではない。体をさせるものが、なくなっていた。
 上がった血飛沫の向こうで、臨が勝利を確信した笑みを浮かべて、そのまま、安堵に崩れ落ちるのを見た。
 最高に、エモいんですけど――。
 良いもの見たなぁ、なんて。満たされた心地で、ラビットバニーは崩れ去った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年05月17日


挿絵イラスト