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バトルオブフラワーズ⑩〜ラビットバニーはエモいのがお好

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ #ラビットバニー

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 グリモアベースの片隅でルベル・ノウフィル(星守の杖・f05873)が説明をする。
「エイプモンキー討伐、お疲れ様でした。これで第二関門に進めるようになったわけですが」
 集まってる猟兵たちがウンウンと頷いている。ルベルはとても真面目な顔で説明を続けた。
「第ニの関門は、カワイイ怪人『ラビットバニー』が守っています。システム・フラワーズの内部の「咲き乱れる花々の足場」はエイプモンキーの時と同様にラビットバニーに集中しており、彼女を倒さないと先に進めません」
 前回同様に敵を倒して先に進む、とこういう作戦なのである。

「ラビットバニーは同時に一体しか存在しませんが、彼女は『絶対無敵バリア』に覆われており、ありとあらゆる攻撃が一切効きません。が、このバリアは、ラビットバニーが「エモい」ものを目撃すると一時的に解除されます」

「ラビットバニーが「エモい」と感じる基準はかなりユルいです。かわいさ、男らしさ、おもしろさ、血だらけで立ち上がる様子、突然のパンチラ、イケメンの壁ドン、水を吐き出すフグなど、ようするに「SNSではやりそうなやつ」はだいたいエモいと感じ、それを目撃するとバリアが解除されてしまいます。最強能力なので制限が厳しいのでしょう、多分」
 台本を読むかのように説明を終えたルベルは、猟兵たちに向かって頭を下げる。
「こんな敵とはいえ、敵も幹部です。きっと苦戦することも……」
 言葉を切り、少し考えるグリモア猟兵。
「ないかな……?」
 意見を求めるように周囲を見て、グリモア猟兵はもう一度頭を下げるのであった。


remo
 おはようございます。remoです。
 初めましての方も、そうでない方もどうぞよろしくお願いいたします。

 ラビットバニーは必ず、猟兵に先制して『絶対無敵バリアを展開するユーベルコード(POW、SPD、WIZ)』を使ってきます。
 絶対無敵バリアは本当に絶対無敵で、あらゆる攻撃を無効化しますが、「ラビットバニーがエモい物を目撃する」と、精神集中が乱れてバリアが消滅します。
 ラビットバニーのエモい基準はかなりユルいので、バリアの解除は比較的容易と思われますが、バリアなしでも彼女は相当の実力者です。

 それでは、どうぞよろしくお願いいたします。
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第1章 ボス戦 『カワイイ怪人『ラビットバニー』』

POW   :    赤べこキャノン
【絶対無敵バリア展開後、赤べこキャノン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    うさちゃんカンフー
【絶対無敵バリア展開後、兎面の目が光る】事で【うさちゃんカンフーモード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    おはなハッキング
【絶対無敵バリア展開後、両手の指先】から【システム・フラワーズ制御ビーム】を放ち、【花の足場を自在に操作する事】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:和狸56

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ノストラ・カーポ
取り合えずウケそうな事をやればいいんだな。
葉巻を取り出し火をつけて味わいながら斜め後ろを向き、呪詛による範囲攻撃で植物を枯らして【指定UC】で風を吹かせて花を散らす。

バリアが消滅すればそのまま風の勢いを強め、強烈な旋風を作りラビットバニーを吹き上げ、【念動力】で自身も浮かせて【Compagno】による抜刀術のような【早業】を使い【2回攻撃】。



●Ognuno ha la sua croce
「取り合えずウケそうな事をやればいいんだな」
 戦場に現れた男は先端に鋭刃備わりし銀の鎖を全身に纏い、竜のドミノマスクを装着している。足元には鋭い爪が剥き出しになり、布と鎖に覆われし胴に覗くは黄金の鎧、頂くは竜の意匠。
 魔道具を埋め込まれし特別な13体の1体、自由なるノストラ・カーポ(無法者・f14707)、此処に在り。

「あっ、エモい!」
 ラビットバニーは何もしてないのに心を乱していた。このバニーはガバガバでチョロい。そして軽い。
「まだ何もしてないんだが」
 ノストラが唸るようにツッコミをする。ラビットバニーはウンウンとウサギの仮面を前後に振った。そして、危うく被り物が取れそうになった。
「気を付けろ、素顔を隠しているキャラの素顔晒しはここぞというタイミングでするものだ」
「わかった! あーし気を付けるよノストラ様!」
 ラビットバニーは従順に頷いた。頷きつつ、先制を繰り出す。
「ノストラ様、あーしのおはなハッキング超エモいから見て!」
 絶対無敵のバリアを張り直しつつ敵が放つのは、色鮮やかなビームだ。花の足場がノストラに絡みつきその動きを封じようとし――枯れた。
「アレッ?」
 光撃は虚空を灼く。光線を避けたノストラはバニーに背を向けていた。
「ノストラ様?」
 バニーがきょとんとしている。
 視線の先でノストラは応えることもなく、葉巻に火をつけて味わっている。特有の臭いがたちこめ、花の薫りと混ざる。薄く白い煙が空気の中を泳ぐように立ち上り、戦場の空気に溶けるように染むように淡く淡くなって。ノストラがふ、と息吐けばふわり、白がまた広がって。

 戦場の花が枯れていく。
 男の呪詛によるものだ。

 ノストラ・カーポは『制御する』。

「え……」
 バニーの声が零れた。
 サア、と。風が、吹いた。

 戦場に風が意思持つように舞い踊り、花が巻き上げられ花弁が散る。花が、散っていく。ひらひら、ひらり。視界一杯を儚き生命が散っていく。
 薄紅が終焉を謳うかのように。舞っている。

 ――その、美しさ。

「エモいよ……」
 バニーの声が感動に震えていた。枯れ散る花は生命の終わりを教えてくれる。散りしのちは二度とは咲き戻らぬ。
「この感情は何と言うの?」
 バニーが呟いた。
「うまくいえない。エモいよ。エモいんだよ」
 その言葉は、感情を表す。
 古来より人は己が感情を伝えるために言葉を使ってきた。己が感動を、心動かされたということを、好いと思ったことを、伝えたい――、

 バリアは消えている。

「あ……」
 声が漏れる。
 風が強まっていた。勢いをぐんぐんと増し、もはや暴力的とまで達した強烈な旋風がバニーの身体を吹き上げる。巻き上げる。
 ふわり、宙に浮きノストラが至近に迫る。

 ――それが、男のカウンターなのだとバニーは理解する。

 男は仕込み杖を素早く奔らせる。Compagno。それは、邪悪なる精霊だ。鮮烈なる杖打が、二度。邪魔するものは、何もなかった。
「きゃあああああっ」
 悲鳴があがる。

 男は、飢餓を持つ。
 男は、欲しければ奪い、嘗められれば殺し、好き勝手しながら生きていた。
 彼は犯罪の傍らオブリビオンと戦うようになり――、

「人間を無闇に殺されまくっては俺も困る」
 最近は少しだけ落ち着いたのか無闇に殺し、傷つけることは少なくなっていた。無法者が閑かに呟く。

「人間を無闇に殺されまくっては俺も困る」
 彼が、世界を救おうとしている。

成功 🔵​🔵​🔴​

明智・珠稀
ふ、ふふ…!
愛らしい強敵ですね…!
負けじとたまちゃんエモパワーで戦い愛してみせましょう、ふふ…!!

■行動
エモさ…ふふ、ルベルさんの説明を参考とさせていただきましょう…!!
「貴女をトキメかせたい…!ふふっ!」
(【変装】【早着替え】でエリート風サラリーマンに。眼鏡装着)
(知的な様子で)
「貴女だけに本当の私を見せたい…!」
(己のシャツを引きちぎり)

(お腹が見えたら)

(顔が描いてある)

「さぁ、明智・ザ・腹踊りです…!!」
くねくね踊り出すド変態。
ネクタイは頭に巻く。

隙が出来たらUCにて流し目ビーム
赤い糸で結べたら、至近距離から黒革の鞭で叩き&更に引き寄せ
【吸血】【生命力吸収】を

※アドリブ&ネタ大歓迎!



●明智・珠稀の華麗なる朝食風景
「ふ、ふふ……! 愛らしい強敵ですね……! 負けじとたまちゃんエモパワーで戦い愛してみせましょう、ふふ……!!」
 フラワーエモエモ大会に明智・珠稀(和吸血鬼、妖刀添え・f00992)が現れた。今日も元気だド変態。

「イケメン!」
 バニーがぴょんぴょん跳ねて喜んでいる。敵は女だ。ならば出し惜しみは必要あるまい。

「貴女をトキメかせたい……! ふふっ!」
「エモみが溢れる」
 バニーのバリアは消えた。一言で落ちている。もう何もしなくても勝てるぞ。

「まだまだこれからですよ? 私に時間をくださいますか……?」
 切なく訴えるように吐息を漏らせば、バニーは全力で頷いた。ラビットバニーはチョロいのだ。箸が転がっただけでもきっと「箸の転げるさまに世の儚さが表れている」的にエモさを感じ取ってくれる。感受性が豊かな敵であった。
 さて、そんなチョロバニーにチッチッチッと指を振り、珠稀は目の前でするりと自身の服に手をかけて脱ぐ。
「そんなっ、出会って1分で……仕方ないにゃあイイよ」
 バニーが何か誤解している中、珠稀は早着替えを終えてスーツ姿になっていた。白襟が清潔感に溢れて眩しい。隙なく身に纏う生地の確りしたビジネス・スーツは機能的で、けれど高貴さをも感じさせるエレガンティス。眼鏡が珠稀の端麗な容貌をより一層引き立て、知的さを盛り立てている。端的に言うとエリート風サラリーマンといったコスプレだろうか。

 瞳に熱を燈した男がバニーへと蕩ける視線をはしらせれば、バニーは腰も砕けんばかりに恍惚とし。
「っべー、たまぴょんマジいけめーん」

 けれど先制はバニーが取る。
「受け止めて! あーしの赤べこきゃのーん」

 つぶらな瞳の赤べこキャノンを構え、撃――、

「貴女だけに本当の私を見せたい……!」
 だがその瞬間、珠稀は己のシャツを引きちぎる!
 ビリィッ!!

「――…!!」
 べこっ。
 赤べこキャノンが地に落ちた。
 荒々しく引きちぎったシャツの下、引き締まった男の腹に。
 顔が描いてある。
 顔は、赤べこキャノンにとてもよく似せてあった。

「さぁ、明智・ザ・腹踊りです……!! あそーれ、べっこべこー♪ べっこべこー♪」
 くねくねと踊り出す珠稀。なお、表情は真剣だ。ネクタイがいつの間にか頭に巻いてある。眼にも止まらぬ早業――これが様々な戦場で鍛え上げられた熟練の猟兵の熟達の技能だ!

「べっこべこー♪」

 バニーは箸が転げても笑い転げる感性の持ち主だった。もちろん、大喜びで手を叩いて喜んでいる。攻撃どころではない。もう一度言うが単純に笑っている。
「やった! ウケましたよ!?」
 珠稀は一瞬目をお子様のようにキラッと輝かせ。だがすぐに美形たまちゃんモードに切り替えて蠱惑的な流し目を、チラッ。
「エモいと言ってくださらないのですか……?」
 切なげに目を伏せれば、バニーは慌ててエモいエモいと連発し始めた。今や「貢げ」と言われれば貢いでくれるほどにバニーは珠稀の虜になっていた。
 真っ赤な糸がふたりを結ぶ。珠稀は至近距離にバニーを手繰り寄せ、黒革の鞭を取り出した。

「!?」
「ふふ……♪」
 濡れた唇が笑みの形に開かれて赤い舌が覗く。舌はチロりと唇を舐め。
「アアッ!」
 鞭がバニーを打っていた。ひゅんひゅんと空気が唸る。黒い鞭は鋭くバニーの柔肌を切り裂き、血筋を創っていく。更に。ぐい、と荒々しく引き寄せられ。
「ぁ……っ」
 視線をあげると、紫水晶の瞳が至近にあった。それは、狩る者の眼だ。瞳に滲むは――悦楽。妖しく輝く真珠色の牙が肌を喰い破りつぷりと滑り込み、血と紅の舌が交わる。貪るように啜る音が戦場に響く。
「んっ、あぁっ!!」
 力がどんどんと失われていく。吸われているのだ。

「――……!!」
 生命力を吸われ尽くし、くたりと崩れ落ちた敵を放すと、珠稀はラヴリー丁寧に礼をする。くるり、踵を返し、ご機嫌珠稀はプリケツふりふりおうちに帰る。
「御馳走様でした……ふふ♪」
 こうして明智・珠稀の華麗なる朝食が幕を下ろしたのであった。べっこべこー。

成功 🔵​🔵​🔴​

喰龍・鉋
*他猟兵との連携アドリブ歓迎
攻撃を敢えて受け続けて自分のピンチ度を上げていくよ
赤べこキャノンを何度も何度も当たりながらそれでも攻撃を仕掛けて
跳ね返されても何度でも立ち上がるよ
最終的に膝から崩れ落ちても、それでも立ち上がってみせる
ボクのUCはボクの危機に呼応して黒剣が凶悪化する技
完全にぼろぼろになりながらそれでも立ち上がれるのはこの剣がボクを
操ってくれているお陰、瞳に光が有る限り立ち上がり続けることが出来る
何度も立ち上がる信念か、恐怖か、どちらにせよ感情は動かせるはず
その隙を突いて剣の餌にする
「ボクがどうなろうと関係ない、この剣は必ずお前を殺す!!餌の時間だ大五郎!!ボクの体を使えええええッ!」



●覚醒
 淡い紅色の花がやわらかに咲き誇っている。風のない戦場。その花の戦場に小柄な黒騎士が立っていた。
 名は、喰龍・鉋(楽天家の呪われた黒騎士・f01859)。

「まーた猟兵? まあいっか。猟兵は全員あーしが始末するしー」
 ラビットバニーが絶対無敵バリアを展開し、放つのは赤べこキャノンだ。砲撃が痛烈に鉋を襲い、焦茶色の肌が血を飛沫かせた。衝撃に揺れる身体が倒れ込みそうになり、けれど黒騎士は踏みとどまる。歯を食いしばり、悲鳴を噛み殺すようにしながら、立っている。
「もう一発いっちゃうー? アハハ」
 キャノンが次々と迸る。一撃一撃は鮮烈な光を纏い、重い。掠めれば肌を切り裂き、命中の衝撃は小柄な鉋を軽く吹き飛ばす。吹き飛び、地に着けばぐしゃりと花が潰れ地が抉られて衝撃の大きさを物語る。地に着いてなお勢いは衰えず、バウンドをしながら血に塗れた体が花地を転がり――立ち上がる。
「おー?」
 お気楽な声が煽るように笑っている。
 剣風奔る。一刀の距離。握り手に力を籠め。もう一歩を大胆に詰め、剣が地を擦るようにして上へ走る。斬り上げた剣先は、けれど硬質な音と共に弾かれた。優れた体幹が身体を巧みに制御する。弾かれた勢いでバランスを崩すことなく、鉋はすぐさま剣先を下へと斬り下ろし――それもまた、弾かれる。
「くぅっ」
「――あははは!」
 砲撃が至近から発せられ、衝撃が小躯を飛ばす。為すすべなく吹き飛ばされ、地に転がり。立ち上がろうとし――ガクリ、と。膝から崩れ落ちる。
「あっ……」
 ぐしゃり。花を散らして鉋が俯せに地に倒れ込んだ。体が限界を訴えている。気付けば夥しい血が周囲を朱に濡らしている。血だ。

 視界が暗くなる。意識が途絶えてしまう。
(だめ、ボクは、まだ)
 暗闇に沈もうとする意識。もがくように鉋は自身の意識を搔き集め、奮い立たせようとする。
 昏い世界に視えるのは、

 光。

 ――みて。きれいでしょ。

 その程度だった。当たり前に出来ていた。だが、それを視た者は顔色を変えたのだった。
「母、さ……」
 眼を開けなければならない。前を見なければならない。なのに、どんどん力が抜けていく。指先の感覚が、もう、

 ――綺麗ですね……桜も、星も、そして貴女も。

「ぁ……」
 暗闇の中、光差すように。声が胸にある。
 目を開ける。花が広がっている。薄い色の花だ。淡い色の花だ。

 ――……私はまだ、頑張れる。

 夜桜のもと、仲間がそう呟いた声が思い出される。
「ボク、も……」
 ぐ、と力を入れれば、拳が握られる。
(頑張れる)
 鉋はバネのように跳ね起き、地を駆けた。飄風の如く。
「えっ……」
 敵が呆然と呟いた。
「ボクも、――まだ、頑張れる、から!」
 細身に見合わぬ膂力で剣撃が繰り出される。血潮が熱い。体の芯から力が湧いてくる。斬撃の乱舞は血を撒き散らしながら、バリアに弾かれながらも速度をあげていく。冴えを増していく。
「……」
 鉋の金の瞳には、敵が想像していたような絶望の感情が一切浮かんでいない。それどころか、熱が刻一刻と高まり、使い手の危機に呼応して黒剣が鋭さを増していく。黒剣が使い手を駆り立てる。戦え、戦えと。その熱が、敵にまで伝わるのだ。
「!!」
「ボクがどうなろうと関係ない、この剣は必ずお前を殺す!! 餌の時間だ大五郎!! ボクの体を使えええええッ!」
 黒剣大五郎は媒介とする使い手の危機に呼応して凶悪化する。使い手の寿命を削りながらも爆発的に増大した戦気が肉体の限界を超えて黒騎士を動かした。その鬼気迫る姿は敵の心を強く揺さぶる。

 ――揺さぶられて、しまう。

 ふ、とバリアが消失して敵は慄いた。
「あ、」
 しまった、と思ったのだった。それは――バリアがなければ、耐えられないだろうという確信があるからだ。それほどまでの熱量。それまでの激情。決壊した堤を凶水が呑み込み溢れるが如く怒濤の斬撃が敵の身を捕らえる。
 その黒刃は、吸い込まれてしまいそうなほどに澄み、冴えて――美しい。

「あああああっ!!」
 刃は、届いた。

「これがボクの……作戦だよ」
 鼓動を感じる。生きている。鉋はふらつく体で、けれどしっかりと戦場に立ち息を整える。身体はボロボロだ。
「ちゃんと、頑張れた、よ」
 指に填めた婚約指輪をそっと見つめ、鉋は艶やかに微笑むのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ステラ・エヴァンズ
【WIZ】
エモい、とは…要は心を動かせばよろしいのですね?
えぇと、頑張ります

神楽舞の衣装を着て化粧もし、戦巫女として参ろうかと
初手先制で動きを止められてしまうので攻撃を受けるでしょうが第六感で位置を把握
足場のせいで回避はできないでしょうから天津星で受け流します
転じて即座に舞い出します
舞いながら氷属性の衝撃波を放ち、花弁さえも宙へと舞わせるように
此度は貴方様の為だけに、神に捧ぐ舞を披露致しましょう…さぁ、とくとご覧あれ
舞っているうちに周囲の気温が下がってダイヤモンドダストも見れるようになると思いますし
バリアが解けたら即座に【巫覡載霊の舞】を発動し舞いながら攻撃して畳み掛けます

※アドリブ歓迎



●泡沫の星巫女が一差し
 神楽舞の衣装を纏い化粧をしたステラ・エヴァンズ(泡沫の星巫女・f01935)が優雅に礼をする。
「エモい、とは……要は心を動かせばよろしいのですね? えぇと、頑張ります」
「じゃ、まずはおはなハッキング~!」
 敵が先制を放つ。絶対無敵バリアを展開した敵は、システム・フラワーズ制御ビームを放っている。花の足場を操作してステラの動きを封じようとすれば、神聖な導きを得たかのようにステラの天津星が反応し、足元の束縛を断ち切った。その流れの儘に、戦巫女の舞いが始まる。
 両手を横に拡げ、静かに前へ下ろす。背筋は真っ直ぐに伸ばし、軽く膝を曲げ空気を優しく撫でるように掌が迎え合う。
 膝を伸ばし、背はそのままにゆっくりと、天津星を携えた右手を上へ。左手は右の袖元を軽く押さえながら。ピンと伸びた背が清霜とした空気を生む。右腕が高く上がり、榊に代わる天津星が水平に倒されていき、左手が先を支える。薙刀を捧げるかのように。水平に捧げ持つ姿勢でゆっくりと腰を落としていけば、天からの祝福が掬われ湛えられるが如く。すい、と膝を折り――再び、伸ばす。
 タン、と。
 厳かに右足が地を踏む。それは、神聖な儀式。流麗な動作で舞う中、凍える衝撃波が沸き起こる。透きとおる氷の波濤が薄桃の花弁を宙へ舞わせる。
 
「此度は貴方様の為だけに、神に捧ぐ舞を披露致しましょう……さぁ、とくとご覧あれ」
「あーしのために舞いを?」
 ラビットバニーはきゅんとした。神に捧げる厳かな舞いが自分ひとりに捧げられるというのだ。特別感。それがラビットバニーをひたひたと浸して悦ばせた。
 星の如く煌めく瞳が楚々として戦場を見渡す。舞手ステラの雪白の肌は軽く紅潮して桜のようだ。足運びは楚々として、場を正しく整えるように。気の流れを導くように。
 くるり、
 身を翻せば淡く光る氷がさざ波を起こす。
 綺羅びやかな世界を泡沫の星巫女が奉納する舞いは只管に神聖で壮観だ。
 ふわり、
 幻想的な煌きの中を星巫女が廻る。
 清廉な乱れ舞は流麗な水の流れにも似て優婉で、神楽鈴が聞こえてくるかのよう。天から舞い降りたかのような巫女の淡く輝く美しい長い髪が清らかに広がる。氷の破片がキラキラと光っている。可憐な唇から吐息が漏れる。細身がクルリと躍動し、巻き付くように青髪がさらに舞う。凛とした眦がほんの僅か、只一人の観客へと注がれて。

 トクン、と。
 鼓動が高鳴り、バリアが消える。

 す、と右足がまたひとつ、大きくあがり。
 長い睫毛に彩られた優し気な瞳がそっと伏せられ。
 トン、と花地に踏み下ろされる。

 その背筋のなんと美しく伸びていることだろう。
 氷花と戯れるように舞う繊細な髪のなんと幻想的なことだろう。
 桜色に染まる頬のなんと蠱惑的なことだろう。
 巫女がふ、と息をつき。瞳をそおっと開ける。美しい。見る者は皆、そう思うことだろう。音もなく舞われるその所作が驚くほどに神聖に感じられる。穢してはならない新雪にも似て、瞬きができぬほど、それはそれは綺麗なのだ。

 見る者は、惹きこまれずにいられない。
 心奪われずには、いられない。 

 戦ぐは氷風。
 満ちるは冷気。
 舞う花弁は氷粒と風に踊り、やがて地に落ちる。
 
 巫女が躍る世界は、絶麗。
 花と氷に世界は清涼だ。静謐が泉の如く齎され、息を吸うことさえも躊躇う空気がそこにある。

 ステラはふと敵の気配が変わったことを察知する。身を護るバリアが解けていた。心乱すことに成功したのだ。
(……今!)
 巫覡載霊の舞が、はじまる。
 優艶なる星巫女は機を悟りて神霊体へと身を変じる。より一層神聖に霊力が満ち、敵の目さえも誘惑する舞踏を舞いながら清らかなる巫女の天津星が、身動き一つなく彼女に見惚れる敵へと注がれる。
「あっ……!?」
 眼前に振り下ろされる刃に敵がようやく声をあげる。身を捩り、回避の動きをしようとし――もう、遅い。
 舞いの締めくくりに悲鳴が轟く。

 やがて訪れた静寂のあとには、冷えた空気のみが残る。

成功 🔵​🔵​🔴​

スサノオ・アルマ
まずはさくせんかいぎだ
トリたちは空からせめるんだ
ヘビたちは花にまぎれてすすむ
ゾウとシカたちは真正面からいく
……わかったかい?
そこ、花をたべない
たぶんふつうの花じゃないからおなかこわすよ
イヌは自分のしっぽ追いかけてあそばない
ちゃんとはなし聞いてたかい?
ネコは起きて

……こんなかんじでいいかな
お前たちもうじゅうぶんだ、とつげき

※ ※ ※

予めゴッドクリエイションで白い炎の動物の軍団を創造
そして敵の目の前で作戦会議です
動物たちが自由すぎて言うこと聞かない演出をします

頃合いを見て攻撃に切り替え
人間以上の筋力を与えているので各々の攻撃能力は充分でしょう
自身は動物たちへの攻撃を庇い軍団の戦力を維持していきます



●ゴッド・クリエイション
「まずはさくせんかいぎだ」
 白炎に包まれた狼がそう言った。スサノオ・アルマ(遍く照らせ・f16425)だ。
「うん?」
 ラビットバニーがおはなハッキングを使っている。花の足場が操作されているが、狼には慌てた様子もない。
「さくせんかいぎだ」
「うん」
 ラビットバニーは頷いてスサノオの隣に座った。もちろん、敵意はあるがラビットバニーはガバガバのゆるゆるだ。猟兵が何をするのか見てみた~い☆ とそんな好奇心が彼女の戦意に勝ったのであった。
 スサノオの周りには、沢山の動物たちが集まっていた。鳥、蛇、ゾウ、シカ、イヌ、ネコ、金魚、家から追い出された何処かのお家のおっちゃん。
 そんな動物たちにスサノオはとても真面目に作戦を告げる。
 ビチビチ。
「金魚死んじゃうじゃーん」
 ラビットバニーが金魚鉢を持ってきた。ぽちゃん、と金魚を入れてあげると金魚は気持ちよさそうに泳ぎ出す。
「エモエモ」
 バリアがするっと消えた。

 ゾウが戦場をお散歩している。
「トリたちは空からせめるんだ」
 そんなラビットバニーと金魚を背にスサノオは作戦会議を進めていた。
「ヘビたちは花にまぎれてすすむ。ゾウとシカたちは真正面からいく。……わかったかい?」
 その尾をらびっとばにーがモフモフしている。手触りはメレンゲにも似てふわっ、もふっとしていた。
 シカが「自分にも構ってよ」と言いたげにラビットバニーへと鼻を寄せる。
「えもー」
 ラビットバニーは大喜びだ。
 しかし、スサノオは幼稚園の先生のように動物たちにかかりっきりであった。
「そこ、花をたべない。たぶんふつうの花じゃないからおなかこわすよ」
 鳥とヤモリが喧嘩しながら花を食べていた。
「喧嘩しないで。花はたくさんあるから。いや、たべちゃだめなんだけど」
 喧嘩の仲裁をするスサノオ先生。その目の前でイヌが自分のしっぽを追いかけてクルクルまわっている。とても楽しそうだ。
「イヌは自分のしっぽ追いかけてあそばない。ちゃんとはなし聞いてたかい?」
 スサノオ先生は困った様子で尾をゆらし。眼を瞬かせた。
「ネコは起きて」
 その背によじ登ったネコがスヤスヤスヤァと眠っている。

「カワイイ」
 ラビットバニーはすっかり和んでしまっていた。バリアはだいぶ前から消えていた。

「……こんなかんじでいいかな。お前たちもうじゅうぶんだ、とつげき」
 スサノオ先生はこのタイミングで動物たちに改めて命令を下した。
「んっ?」
「ホー、ホケキョー!」
「パオーン」
「ばぅあぅ!」
「ぅにゃぁー!」
 動物たちが一斉にラビットバニーに襲い掛かる。

「ええー!?」
 スイ、スイ。
 金魚が気持ちよさそうに泳いでいる中、敵はあっさりとやられてしまったのであった。
 そう、このフリーダムな動物たちはスサノオがユーベルコードで創造した動物軍団。人間以上の筋力を与えられた彼らは、ゆるっゆるのフリーダムのように見せかけてスサノオに忠実なスーパー軍団なのである。
 敵は、倒……、

「コケーッコッコ」
「ニワトリは卵を産まないで」
 スサノオは卵を拾い上げた。
「シュルシュル」
「え? お腹空いた? ……卵食べたい?」
 ヘビが卵を欲しがっている。

「わん! わぅ!」
 イヌが遊んでくれとせがんでくる。
「フーッ!」
「イテテテテ」
 おっちゃんが猫に引っかかれている。

 彼らはやっぱりちょっとだけフリーダムなのであった。
「かえるよ……」
 スサノオは少し困った様子で耳を垂らすのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

石籠・むぎ
えっと、あのうさぎのおねーちゃんをメッてしに行くのね
えもいってよく分からないけど、がんばるの

むぎ知ってるのよ
大体の人はドウブツすきって
なので笛ふいてライオンライドはつどう
しーちゃん(メス・9歳)よびだすの
そのまえにコウゲキ来たら、ハヤザブロウのやせいのカンにたよってよけるのよ
いきおいあまって、ころがるかもなの
目がまわるの~

気を取りなおして、しーちゃんよんだらもふもふアピール
むぎがしーちゃんナデナデしてかわいいってのを見せつけるのよ(尻尾パタパタ
ハヤザブロウもしーちゃんにのって仲良くアピールしてなの

バリアがとけたらしーちゃんにのって体当たり
当たらなかったら、すかさずむぎが扇ふってフォローするのよ



●花咲く戦地のおきつねさん
 薄桃の花咲き乱れるフィールドを、とてとて、と歩む者がいた。銀髪の幼い女の子、石籠・むぎ(白銀稲荷・f02944)だ。うっかり転んでしまうのではないか、そんな風に心配してしまうような頼りない足取りでむぎが花の中を歩み、歩みにあわせて狐尾がふわふわとゆれている。

「なんかちっちゃい子がきた!」
 ラビットバニーがうさぎの被り物の下で早くもエモさを感じていた。
「でもあーし、猟兵相手に手加減は一切しないかんね!」
 と、言いつつも、超エモかったら今回はボーナス特盛の許可が出ている敵でもあった。
 被り物のうさぎの眼がビカビカと光る。
「わあ、ぴかぴか」
 むぎが琥珀の瞳をくりくりさせて呟いた。その無邪気な様子にバニーは心打たれ、ちょっとだけ様子を見ようかな? としゃがみこむのであった。
「お嬢ちゃん、なにすんの? あーし見てるからさ、やってごらんよ」
「ありがとう!」
 むぎはぺこんとお辞儀をした。さらり、と銀髪が流れる。頭の耳がぴょこりと揺れ、小さな首をかしげるようにしてむぎは篠笛を吹く。
 ラビットバニーは妹を見守る姉のようにじっと見守る。

 ――♪

 どこか懐かしくあたたかみのある音が花のフィールドに反響する。吹き終えた時、そこには艶やかな毛並みのライオン、しーちゃんがいた。しーちゃんはむぎへと保護者のような眼を向け、バニーから守るようにふたりの間に立ち塞がる。頭上ではシロハヤブサのハヤザブロウが兄のような目をして飛んでいる。2者は敵が不穏な動きを見せれば即座にむぎを守るために動くだろう。

「もふもふのライオンさんじゃん! いいね!」
 ラビットバニーが明るい声をあげた。むぎはコクリ、と頷いた。
「でも、あーし敵だからさ。ごめんね、攻撃するね」
 バニーがサバサバと切り替えた様子で言い、超スピードで蹴り技を放つ。ハヤザブロウが野生の勘でその動きを察知し、むぎの体を押して回避を助ける。勢い余ってころころ、と転がるむぎ。
「目がまわるの~」
「くっ、なんか可愛くて追撃しにくいじゃーん」
 ラビットバニーが動きを鈍らせていた。カワイイ怪人は可愛いものが大好きな女怪人。猟兵はもちろん敵だ。敵なのだが、小さな女の子相手についつい攻撃の手が緩んでしまう部分もあったりするのだ。
「あのね、あのね」
 小さなおひめさまが今、戦場を支配していた。
 むぎはうんしょと起き上がると、しーちゃんに小さな手を伸ばし、
「なで、なで」
 と口で言いながらニコニコと撫でる。しーちゃんは気持ちよさそうに目を細め、尾をのんびりとゆらした。同じくらいのんびりと、むぎの尻尾もゆれている。ハヤザブロウがお兄さんぶった所作で「やれやれ、仕方ない」と加勢すべくしーちゃんの上に舞い降りた。
「あのね、むぎはね、おねーちゃんをメッてしにきたの」
 そう言いながらまっすぐにバニーを見上げる目は、ピュアだった。
「えもいってよく分からないけど、がんばるの。おねーちゃん、ドウブツすき? すきだったら、いいなあって」
「くっぅ」
 バニーが目頭を押さえ――ようとして被り物に手があたっていた。被り物の内側でバニーは涙を流していた。この小さな子は自分のために一生懸命さくせんを考え、この戦場に来たと言うのか!

「もう負けでいいよ……」
 思わず呟いてしまう、それほどまでの愛らしさであった。もちろん、バリアも消えている。
「バリア、消えたの。今なのよ」
 むぎがすかさずしーちゃんに乗り、しーちゃんが勇猛に突進する。
「しーちゃん、がんばって。むぎもがんばるの」
 銀尾扇を懸命に振るうむぎが危うくしーちゃんの背からずり落ちそうになり、ハヤザブロウが「こらこら、気をつけろよ」とたしなめるような眼をしながらしっかりと体を支え、落ちないようにしてあげている。

「あーしの負けだよおお」
 バニーはヒーローショーのやられ役怪人のように大きな声で宣言し、しーちゃんに倒されるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アイン・セラフィナイト
エモいことをする、ってまたアバウトすぎない!?
ま、まあいいや……制御ビーム、それはつまり『光』ってことだよね。それなら『忌み断ちの魔導鏡』の出番だ。周囲に展開する鏡の結界でビームを反射、続けて【聖空に羽撃く者】でさらに連続反射、光の乱反射で周囲に拡散する『虹』を作り出すよ。
そのまま反撃、連続反射したビームを1箇所に集中させる。圧倒的な熱量を伴ってラビットバニーを薙ぎ払うね!
エモい、ってこういうことかな。光の乱反射で出来上がる虹、少なくとも大衆にはウケ……エモいと思うけど。
(アドリブ等歓迎)



●その虹に手を伸ばし
「エモいことをする、ってまたアバウトすぎない!? ま、まあいいや……」
 アイン・セラフィナイト(精霊の愛し子・f15171)が頬に汗を掻きながら呟いた。
「アバウトイエー!」
 ラビットバニーは軽かった。
「エモいことしてくれるの? っべーマジヤッベーあーしの弱点だよ心乱れちゃうよ」
 言いながらちょっと期待した目でラビットバニーはアインを見ている。
「お、おかしいな。被り物のウサギの眼から感情がすごく伝わってくるよ」
「あーしの気持ちわかってくれるの? やさしーんだね」
 ラビットバニーはウサギの眼をしばしばと瞬かせた。
「か、被り物の眼が……っ、いや、それは置いておこう」
 敵の被り物の謎は、どうでもいい。倒せばいいんだ。少年は気にしないことにした。
「ま、まあいいや……制御ビーム、それはつまり『光』ってことだよね」
 気を取り直したようにアインは白翼の杖を構えた。ピュア・ホワイトの柄の先、黄金の装飾を従えて黒の宝玉が光っている。アインは大きな杖の先をピタリと敵に据え、周囲に魔導鏡を展開する。
「えっ、あーし光ってる? やばみー」
「そ、そうじゃないよ?」
 アインは決して敵を侮らない。だが、今だけは思った。このラビットバニーは侮ってもいい敵かもしれない、と。
(いやいや。油断はだめだよね!?)
 青髪をぶんぶん振り、アインは小さな水晶の鴉を大量に呼び出した。
「でもあーし、手加減とかまじしないからー先制ー」
「あっ、うん。先制はしてくれていいんだよ」
 ラビットバニーは愛らしい猟兵にエモさを感じながらユーベルコードを発動させた。
「見て見て。おはなハッキング。エモい?」
 絶対無敵バリアを展開し、システム・フラワーズ制御ビームがビーッと発射される。
「うん。それだよ!」
 アインはそのビームに対策を練ったのだ。少年猟兵の眼がキラキラと輝いていた。
「あらかわいい。喜んでもらえてあーし嬉しいよ!」
 ラビットバニーは嬉しそうに跳びはねた。だが、肝心のビームはアインが展開した鏡の結界に反射され。反射された光が周囲を跳ぶ水晶の鴉によりさらに反射し。光が乱反射すれば、周囲に拡散する虹が生み出されていた。

「わあ……!!」
 ラビットバニーがびっくりしている。
 そっと手を伸ばせば届きそうなほど、虹が近く視える。だが、手を伸ばしても手ごたえは、ない。それは決して掴むことのできない夢――、

 バリアが消えていた。

(思った通りだ! ぶっつけ本番だったけど……)
 うまくいった。アインはニッコリと微笑んだ。
(うまくいくと思っていたよ!)
 それは、予知にも似て。

「さあ、反撃させてもらうよ」
 アインが指揮者の如く杖を舞わせれば連続反射したビームが一箇所に集中される。圧倒的な熱量を伴うビームは、そのままラビットバニーへと放たれた。

「えっ、そのビームあーしが出したやつ……!!」
 ラビットバニーは一瞬で薙ぎ払われた。

「エモい、ってこういうので合ってたみたいだね」
 アインは安心したように力を抜いた。純白の万象と漆黒の神羅がその身を護るように傍にいる。
「光の乱反射で出来上がる虹、少なくとも大衆にはウケ……エモいと思ったんだよね」
 エモいとさえ思ってもらえたなら、あとは大丈夫だと思っていた。エモさはバリア消失後においても賽を味方につける。バリアさえ消えれば戦いの成否はほぼ決まったようなものだ。
 それにしても、とアインは敵怪人のコスチュームを思い出す。
「ねぇ神羅、このファッションってキマイラの人達的にはエモいのかな?」
 ボクは格好いい服のほうが好みだな、と子供らしい声色で呟き、翻すマントはその心根を表すような純白だ。
「まあ、いいか。帰ろっと」
 にこり、笑う顔は戦闘中の理知的な様子と雰囲気を変え、アインはグリモアを操る。夕焼け空が見たいな、と、そんなことを考えながら。

成功 🔵​🔵​🔴​

才堂・紅葉
深い呼吸でマインドセット。
制服姿で、神事に臨む巫女のように厳かに入場します。
兎さんを神前と見立て一礼し奉納舞い。
【礼儀作法、パフォーマンス】

柔術の体幹を活かした日本舞踊をベースに、アルダワの舞踏の要素を加えた独創の舞い。
その眼差しには凛とした気迫を湛え、その身を回転すれば束ねた髪が円弧を描き、花弁が舞い上がる。

兎さんに一礼し髪の毛を解けば。
髪と眼が紅葉の紅に染まり、一回りすれば夜闇の色のドレスに【早着替え】。
重力の操作で花弁が舞うように周囲を彩ります。
そして私も再び舞う。
赤と黒と舞う花弁が世界を彩る中。

兎さんに手を伸ばし、
この手を取るなら優しく首をへし折りましょう。
【優しさ、手をつなぐ、怪力】



●工作員の需要は高い
 すう、と深く吸い。
 ゆっくりと息を吐く。眼差しは真っ直ぐに前を向き。
 制服姿の才堂・紅葉(お嬢・f08859)が神事に臨む巫女のように厳かに入場する。

 パチパチパチ。

 あまりに厳かな入場だったので赤べこキャノンを構えていたラビットバニーがキャノンを地に降ろし、観客モードになって拍手した。これから何を見せてくれるんだろう?と被り物のつぶらな瞳がキラキラしている。
 そんなバニーへと紅葉は静かな瞳を向け、バニーを神前と見立て凛然と一礼する。それはバニーが無言で姿勢を正してしまうほどの礼儀正しい所作であった。暖かみのある色の瞳が一度、伏せられ。
 そして、舞が始まる。
 地と並行に真っ直ぐに足を出す。ぐっと腰が入っている優雅なすり足。肩の高さがしっかりと保たれている。制服のスカートが頼りなく揺れる。正面を見据える眼差しには凛とした気迫を湛えられている。背筋はピンとなっている。
 くるり、その身を回転すれば束ねた髪が円弧を描き、花弁が舞い上がる。どこか暖かみのあるその舞いは、柔術の体幹を活かした日本舞踊をベースに、アルダワの舞踏の要素を加えた独創の舞いだ。
 腕がまっすぐに伸びる。指先にまで注意が行き届いているのが素人目にもよくわかる。それは美しく、滲み出る気品を感じさせる舞いだった。単なる学生には到底出せない空気感。

 ラビットバニーが見惚れている。声を挟むことが躊躇われるような空気の中で、女子学生は折り目正しく一礼した。

  パチパチパチ。

 敵が思わず拍手する。夢から覚めたように瞬きするバニー。その視線の先では、しゅるり、と束ねていた髪の毛を解く紅葉の姿があった。
 さらり、髪が流れ。ごく自然な動作で女子学生がくるりと一回りすれば、なんと一瞬で制服が夜闇の色のドレスに着替えられている。
「えっ!? すごい」
 思わず驚愕の声が漏れる。
 しかし、それだけではなかった。
「うわ……あ」
 さあ、と。髪と眼が紅葉の紅に染まり。ドレスが翻れば少女の印象がガラリと変わる。同時に重力に働きかけがされていた。花弁が舞うように周囲を彩り、ひらひら、ひらりと舞い降りる。その中で佇む少女は夜に咲く紅の花にも似て艶やかで美しい。花満ちる戦場をドレスを翻して紅葉が舞う。
 それは、現実離れした幻想的な光景だった。
 赤と黒と舞う花弁が世界を彩る中。

 手が伸ばされた。

「あ、あーし?」
 バニーが戸惑いながら手を伸ばす。一緒に躍ろうと言うのだろうか――、

 ぐい、と手が引かれ、バニーの眼に鮮やかな紅色の眼が映る。その瞳は鮮烈な美しさを湛えていて、どこまでも優しく感じられ、

 めきょり。

「――……ッ」
 バニーの身体がビクリと跳ね、やがて沈黙した。
 バリアが消えていることに気付いた紅葉が優しく優しく首をへし折ったのだ。

 敵は沈黙している。
 紅葉の仕事は完了だ。
「追加料金の交渉の余地はあるかしら」
 手の甲に浮かぶ紋章を軽く撫でながら、紅葉は再び制服姿に戻り、髪を束ね直す。UDCアース出身の歴戦工作員は、俗物だがプロ意識は高い。スカートの裾を直し、敵への興味を一瞬で失ったかのように紅葉は踵を返す。
 一見すると愛らしくいたいけな学生に見える紅葉は、猟兵の中でも精鋭と呼ばれる実力を有している。戦時ともなれば工作員の需要も高い。何気に面倒見の良い彼女は、様々なグリモア猟兵の依頼を受け、仕事をこなしているのだ。

「次の仕事は、と……」
 仕事人は、次の戦場へと意識を巡らせ。
 花溢れる戦場を後に、歩き出す。

成功 🔵​🔵​🔴​

マックス・アーキボルト
「無敵のバリアだって、破る方法はあるはずだ!」

カンフーモードのスピードに対抗して【加速魔法式:防性】で攻撃を【見切り】で避けてみる…攻撃は激しくて身を正す暇もない!
そう…【制服の下側のボタンも開いて】…身を翻す度に【素肌やへそが垣間見える】ほど…

諦めちゃダメだ、エモさが何かはイマイチわからないけど、基準がゆるいなら消滅の瞬間はある!その瞬間を【情報収集、学習力、見切り】で見逃さず、【クイックドロウ】で撃ち抜いてみせる!

「やっぱり…一筋縄じゃいかないね…。」(額が見えるよう髪をかき上げる)

※アドリブ・アレンジ歓迎。



●激戦!ラビットバニー!
 マックス・アーキボルト("ブラス・ハート"マクスウェル・f10252)はとある研究者夫婦に作られた魔導蒸気機械人形だ。大切に育てられた彼は、「一人前の一人暮らし」を志している礼儀正しく庶民的な15歳。

 彼の目の前に、敵がいる。
「無敵のバリアだって、破る方法はあるはずだ!」
 優しい瞳が正義に燃える。胸元では魔力炉心『マキナ・エンジン』が瞳と同じ色で煌めいている。
「無敵っていったら無敵ー!」
 跳ねるように接近しながら、ラビットバニーは楽しそうにうさちゃんカンフーモードへと変身する。うさぎの被り物の眼が爛々と光る。右手を上へ、左手を下へ。腰を落としたかと思えば瞬きする間にくるりと回転し、衝拳の姿勢。身体の調子を確かめるかのようなそれは、尋常ならざる速さ。速さを確かめるようにしながらバニーは推掌を繰り出した。
「くっ」
 マックスは敵の速度に対抗すべく加速魔法式を発動させた。この魔法式は、彼自身を加速させ相対的に世界をスローに見せてくれる。ゆえに、攻撃の予測と回避が容易にできる見込みであったのだ。だが、
「――速いっ」
 バニーは全身がバネであるかのように異常なジャンプを魅せ、至近から左脚を蹴り上げた。かろうじて防ぐマックスへと挑発的に笑い声をたてながら脚を降ろし、左腕を大きく引き――右の拳が突き出されている!
 空気が唸る音が耳朶を打つ。紙一重で避けながらマックスの動きに合わせて乱れた制服がチラチラと素肌を見せる。へそがチラリと視えた瞬間、バニーのバリアが見間違いようもなくグラグラと揺らいだ。

(今、バリアが! いったい、何故だ? エモいことをした? いや、心当たりが、ない!……でも、諦めちゃダメだ、エモさが何かはイマイチわからないけど、基準がゆるいなら消滅の瞬間はある!)
 バニーは必死で心を乱さないように集中しようとしていた。このバニーはゆるゆるのガバガバだが、それなりに空気も読める。
「諦めちゃダメだ、何かエモいことを! でも、エモってなんだろう。……いや、でも諦めちゃダメだ」
 マックスが真剣な貌で呟く。バニーもまた呟いた。
「心乱しちゃだめ。あーしはヘソチラに心乱れたり……するけど! 見ないようにしよ!」
 バニーの拳がワイヤレスヘッドセットの横を通り過ぎていく。
「あーし、負けないっ」
 蹴りを繰り出せばマックスがギリギリで避け、はずみで上着が一層はだけて鎖骨が視える。バリアがぐらぐら揺らいでいる。
(くっ、ヘソに鎖骨とサービスしてきやがって!)
 バニーは内心で必死に湧きあがるエモさと戦っていた。まだだ、まだ負けてはいけない――。ぴょん、と後退して距離を取り。両者は肩で息をしながら睨み合う。

「ハア、ハア」
「ゼエ、ゼエ」

(この敵は、あーしの心をかき乱す……!! 見てはいけないっ、)
 バニーがそう思った時。
「やっぱり……一筋縄じゃいかないね……」
 マックスがふと額が見えるように髪をかき上げた。それはとても自然な仕草で。
「あああああっ、視ちゃったよおおお」
 バリアが消えた。必死に堰き止めていたバニーの心が今、エモみの波に圧されて決壊してしまったのだ。

「!? 消えたっ!? ど、どうして。いや……消えたなら理由はなんでもいい。今だっ」
 ここぞとばかりにマックスは必殺の一撃を叩きこむ。動揺した敵の反応速度を完全に上回る神速の一撃は敵を穿ち。
「うわああああん!!」
 敵は悔しそうにしながら倒されたのであった。

「やった……! でも、どうしてバリアが消えたんだろう」
 マックス・アーキボルトは優れた情報収集能力と学習力を持っている魔導蒸気機械人形だ。大切に育てられた彼は、純朴だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジェラルド・マドック
タブレットと市販品未開封のお茶・お菓子のみ手持ち

よければお菓子をお供に休憩しない?
戦うなら全力の君でいてほしくてね
俺は武器を持ってないし俺を花で縛ってもいいよ

お茶しながらタブレットで、少年の手がピアノを弾くのに合わせて犬が歌うように吠える動画を開く)
そうだ、君こういうの好き?
動物って可愛いよね
演奏もまあまあじゃない?

動画を見進めた後)
実はこれ俺の実家の犬でね
まだタトゥー無いけど弾いてるの俺なんだ
でも加工して今の俺が弾いた音を入れてるから当時より上達してるかな
それで君は動画を見て演奏に意識を向けてどんな感想を抱いた?
…さあ休憩はここで終わりだ

俺がこの演奏に込めた思いはただ1つ
君自身を攻撃するんだ



●fascination
「よければお菓子をお供に休憩しない? 戦うなら全力の君でいてほしくてね。
 俺は武器を持ってないし俺を花で縛ってもいいよ」
 その演奏家はそう言った。
 ラビットバニーが花の足場を操作する。花咲く蔦がしゅるりと演奏家を縛り、けれど演奏家ジェラルド・マドック(しがない演奏家・f01674)は穏やかな笑みを湛えている。
「お兄さんイケメンだから特別だよ? お茶のあとはブッコロだからね?」
 ラビットバニーはテーブルセットを運んできた。テーブルの上にジェラルドが持ってきたお菓子が並ぶ。ストロベリークリームにピンク色のハートチョコレートを添え、てっぺんにサクランボを乗せたカップケーキ。真っ白クリームに小さなカラフル・スターを散らしたカップケーキ。底のパープルが上にいくにつれピンクに変化するゼリーには♪型のチョコが乗っている。素朴なスコーンと愛らしいミニサイズのジャム瓶をいくつか並べ。ラビットバニーが紅茶を淹れてくれる。
「わあああっ、エモー!」
 バニーが大喜びで写真を撮っている。ジェラルドはタブレットで動画を見せる。
「そうだ、君こういうの好き?」
 ――♪
 動画の中で、少年がピアノを弾いている。少年の隣には犬がいた。毛並みの良い犬だ。

 ポロロン、ポロロン……♪

 ピアノの音が鳴り響く。小さな手が驚くほど繊細な指の動きを見せ、鍵盤を叩いて音を紡ぐ。

 わ、ぅ~♪
 ばぅあぅ~♪

 犬は尻尾を振りながら、鳴いた。長く伸ばすように、けれど乱暴ではなくどこか切なげともいえる声を紡ぎ、犬が鳴いた。
 ピアノにあわせて歌うように吠えて――否、歌っている。
 犬は、歌っているのだ。

 わぅ~♪
 ――♪
 あぉーん……♪

「!! エッモ」
「動物って可愛いよね。演奏もまあまあじゃない?」
 動画の中で、やがて少年が曲調を変えて犬と一緒に歌い出した。楽し気に。

 ――♪濡れた道は茜色に輝き夕暮れに木々がおめかしされて

 ポロロン、ポロロン♪
 わぁ~う♪ わぅ~♪

 ――♪雨がぽつぽつ
 ポロロ♪ ポロロロ♪
 わぅっ♪ あぅっ♪

 ――♪雨靴パシャパシャ
 ターン、タンッ♪
 わんっ♪

 ――♪きみが笑ってくれるのをみたいんだ♪

 少年の透き通るような声にピアノの音がぴったりと寄り添い、犬が跳ねるように後を追いかけて歌っている。
 その光景は、観る者の心を弾ませてやまない。

「かわいいねー! ピアノめっちゃうまい!」
 バニーはすっかりバリアを消していた。
「実はこれ俺の実家の犬でね。まだタトゥー無いけど弾いてるの俺なんだ」
 ジェラルドがはにかむように言う。紅茶をひとくち頂きながら。
「えっ! そうなの」
 バニーがびっくりしている。
 紅茶の芳香がふたりの間に揺蕩い、ティーパーティはすっかり和やかな雰囲気になっていた。
(いやいや、ちょっと休憩したらちゃんと戦うしー!)
 バニーは敵なのだが、ちょっと寄り道してしまう不真面目なところもあった。可愛いものと楽しい遊びが大好きな女の子メンタルなのだ。
「すごいねー!!」
 バニーがお菓子を被り物の中につっこんで器用に食べながら褒めている。
「でも加工して今の俺が弾いた音を入れてるから当時より上達してるかな」
 懐かしむような顔をして動画に視線を向けていた青年は、ちらりとバニーに視線を向けた。
「それで君は動画を見て演奏に意識を向けてどんな感想を抱いた?」
「エ、エモ……」
 言いながらバニーは立ち上がる。そして、おもむろに自身に向かって赤べこキャノンを向けた。
「あ、あれ? あ、あ、あれ……あーし、変、」

「……さあ休憩はここで終わりだ」
 青年の瞳が残酷に告げる。

「俺がこの演奏に込めた思いはただ1つ。君が、君自身を攻撃するように」
 音楽の魅惑がじわじわと敵の精神を冒していた。キャノンで自身を穿ち、倒れる敵に背を向けて青年演奏家はそっと動画に思いを馳せる。
 夢のため、彼は家を出た。だが、家族の思い出は今でも心の灯火となっているのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジャック・スペード
エモ……エモーショナルの事か
彼女の感情を揺さぶれば良いのだな、了解した

激痛体勢で気合を込めてバリアに幾度か体当たり
何の成果も得られず悔しげに膝を付き
ボディの損傷個所から電気撒き散らしながら敵を睨む
――未だだ、此の躰が朽ちる迄は、終れない
斯ういうの「エモい」だろう?

バリアの無力化次第、粘液で自己強化
攻撃はクイックドロウ用いながらリボルバーで
援護射撃で仲間のサポートする他
目立たない技能活かしそっと距離を詰め、不意打ちで零距離射撃を
撃ち込む弾丸には電気纏わせ属性攻撃を

反撃は敵の動きを観察・記憶し
学習力を生かし行動パターン予測することで対処を
花の足場はカワイイが、お前の遊び場では無い
――返して貰うぞ



●Dark Vengeance
「エモ……エモーショナルの事か。
 彼女の感情を揺さぶれば良いのだな、了解した」
 ジャック・スペード(J?・f16475)はそう告げて現地へと向かった。機械仕掛けの胸は感情を理解する。有能に依頼をこなすウォーマシンの言葉は聞くもの全てに頼もしさを感じさせるのであった。

「猟兵、あーしと遊んでくれるのー?」
 ラビットバニーが先制でユーベルコードを発動させる。絶対無敵のバリアを展開し、システム・フラワーズ制御ビームが放たれれば花の足場がジャックの脚を絡み取り、動きを封じようとする。
 バニーはぴょこぴょこと跳ねるようなステップでジャックのもとへと近寄ってきた。物珍し気にボディに指を這わせ。
「スペードだー! ハートとかダイヤもいるの?」
「そうだな」
 鋼の精神が花の束縛を振り切り、バニーに体当たりをする。何度も、何度も。その悉くをバリアが弾いていた。
「キャハハハハ! なに? 自滅すんの?」
 バニーが笑っている。纏うバリアは微塵も揺らがない。
「まだだ」
 嘲笑う敵へともう一度ウォーマシンの巨体が突進し、やはりバリアにその身を弾かれた。弾かれるたびにボディは少しずつ損傷している。
「もうやめときなよ。このバリアは無敵なんだからサ」
 敵の声が優しささえ感じさせる声色だ。ジャックは悔しげに膝をついた。
「……」
 ボディの損傷個所から電気を撒き散らしながら、ジャックが敵を睨む。
「んー?」
 敵が面白がるように脚をあげる。バリアを纏ったまま、膝をついたウォーマシンをガツンと蹴れば黒の装甲に入った亀裂がより深くなり、火花が散る。
「ふふーん!」
 興が乗った様子でガンガンと蹴るバニー。その顔は、大きな玩具を手に入れたかのように楽しげだ。ジャックのブレインには機体のエラーと稼働危機を知らせるシグナルが鳴り響いていた。
 終わる気配のない攻撃。ある程度は行動パターンを予測し、学習してダメージを軽減するようにと耐えている。が、損傷は大きくなる一方だ。

 ――ああ、壊され棄てられたあの時と同じだ。

 為すすべなく地を転がりながら漆黒のウォーマシンは思う。だが、本当にそうだろうか?
「いや」
 違う事も、ある。
 彼は立ち上がろうとし――もう一度膝をついた。

「まだ動くんだ」
 まるで子供の用に無邪気な声が上からかけられた。
 声は驚きを滲ませ。何もせず観察するように機械を見下ろしている。

 見上げるウォーマシンは、不屈の闘志を漲らせて敵を睨む。
 胸には「こころ」が燃えている。彼は、それを手に入れた。

 ――俺は未だヒトに恩を返していない。
 こんな所で終わってたまるかよ、畜生。

 ――未だだ、此の躰が朽ちる迄は、終れない。

 それは、男の意地のようなものだった。
 その気配を感じたバニーは息を呑む。そして、バリアが消えた。

「カウンターモードへ移行、ダメージを攻撃力に変換」
 漆黒の粘液が損傷した装甲を覆っていく。バニーは粘液に気を取られ――ハッとした。粘液に気を取られている間に『いつの間にか』リボルバーが彼女を狙っている。零距離から放たれた弾丸は電気を纏い、バリアなきバニーの身体を容易く貫通した。
「きゃああっ」
「花の足場はカワイイが、お前の遊び場では無い――返して貰うぞ」

 ミッションが終わり、ウォーマシンは通常モードへとボディを戻す。粘液が引き、ボロボロに損傷し至るところでパチパチと小さな火花すら放つ漆黒のボディが現れる。スペードの意匠は、誇らしげに其処にある。

 黒の機体は足元の花を観る。同じ花なのに観る場所や状況により、受ける印象はガラリと変わってしまう。
 それが「こころ」の影響なのだと、彼はもう知っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ゲンジロウ・ヨハンソン
○アドリブ歓迎

○エモい
「バトルオブフラワーズ③~激突! 海怪人ロボ」で作ったキッチンカーを持ってきて、作る工程を見えるよう○出来立てチーズ・モッツァレラ&リコッタ を作ろう。
リコッタはハート型のザルで水気を取り形をつくり、モッツァレラは細かい工程はすでに済ませておる。
すぐにカードをこねる段階をこなし、次々にモッツァレラを丸々と形作っていこう。
最後に2つのチーズを木皿に一つずつ並べ、ミルクピッチャーに入れたメープルシロップとハニーシロップを好きに掛けて食べて貰う。

○戦闘
怪人が食べ終え満足し、バリアも消えたらクリームチーズソース掛けチョコバナナを与えて待機させておいた蒼衣の剣士に倒して貰おう。



●ゲンチャンズ・キッチンはのんびりと
 その猟兵とキッチンカーが出現した瞬間、ラビットバニーが歓声をあげた。
「あっ、あれはゲンチャンウォーカー!!」
「さあさ、こっちに寄っといで。ゲンチャンズキッチン始まるぞい」
 ゲンジロウ・ヨハンソン(腕白青二才・f06844)が料理を始める。ラビットバニーは一応先制として赤べこキャノンを構えたが、蒼衣の剣士が口を挟む。
「いいのか」
 何が、とは言わない。だが、その一言で充分だった。
 ラビットバニーは赤べこキャノンから手を放し、ワクワクとキッチンカーに寄っていく。
(バリアは張れてるしー。それに、ザ・ステージの動画見てコレ気になってたんだよねー)
 鍋には真っ白な液体が入っている。そっと匂いを嗅げば、牛乳と生クリームのように思えた。
「何を作るのー?」
「お楽しみじゃ」
 そっと窺い観る猟兵ゲンジロウは飯屋のオヤジといった風体で、話しやすい空気を纏わせている。バニーは「うーん」と首をかしげた。
「お肉を入れて煮るとかー?」
「牛乳煮が好物なのか?」
 さりげなくバニーの好みを知ろうとしながら、ゲンジロウはヘラで鍋を混ぜる。やがて緑色の瓶を取り出して加え、さっと混ぜ。蓋をした。
「それ、舐めてみてもいー?」
 バニーは緑色の瓶を手に取った。一滴を指に垂らして被り物の中に指をつっこみ舐め。
「すっぱれもん~」
「ははは」
 鍋に垂らしたのは、レモン汁だったのだ。

「こっちは……こっちモッツァレラチーズだね」
 いつの間にかもうひとつ用意されていることに気付き、バニーが呟いた。
「ねね、ゲームしようよ。モッツァレラチーズって順番に言って段々テンションあげていくやつ」
 料理をしながらゲームが始まった。

「……モッツァレラチーズ」
 蒼衣の剣士がテンションを抑え気味に自分の順番を終え、ゲンジロウは取り出したハート型のザルを高く抱えて叫ぶ。
「モッッツ゛ァレーーーッラ! チーズッ☆ じゃ」
 一気にハードルを高くしながらゲンジロウは何事もなかったような顔でキッチンペーパーを敷き、鍋の中身を流しいれた。
「ええー! いきなりアゲてきたねー!」
 バニーが大喜びで順番をこなす。順番を何巡りかし、彼らは烈しいゲーム展開ののちに……。

「さ、そろそろできるぞい」
「ゼーッ、ゼーッ」
「ハア、ハア」
 味方と敵がハイテンションゲームに疲労している中、ゲンジロウは手際よくカードをこねる段階をこなしていた。モッツァレラが丸まると形作られ、2つのチーズはあたたかな印象を与える木皿に優しく並べられた。
「オヤジィ……美味しいそうだよぉ」
 呟くバニーの前にミルクピッチャーが。
「こっちはメープルシロップ、こっちはハニーシロップじゃ」
「わああああっ」
 バニーは大喜びで料理を味わい、バリアもさくっと消えてしまった。

「バリアは消えたな。出番だ」
 がらりと雰囲気を変え、傭兵然とした目のゲンジロウが蒼衣の剣士に声をかける。声をかけられた剣士は座ってクリームチーズソース掛けチョコバナナを味わっていた。
「食べ終わってからではいけないか」
 一瞬そんなことを言いかけ、だが剣士は立ち上がる。口の端にソースをつけたまま。

「あっ、あーしもまだ食べてる途中だし」
 バニーが急いでチーズを頬張る。剣士は華麗に口上を捧げる。食べ終わるのを待つようにゆっくりと。
「刻み付けろ、」
 もぐもぐ。

『我が刻剣の冴え」
 ごっくん。

「蒼刻と碧刻の剣閃!」
 手を合わせ、ご馳走様でしたと礼をして。

 ――蒼衣を纏う剣士の細剣による一閃が敵を討つ。
「美味しかったよおおぉ……」
 それが、敵の断末魔だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

月凪・ハルマ
エモいとは(困惑)

◆SPD

よく分かってないので序盤は普通に戦う
当然、バリアは破れずに苦戦するけど

……強敵なのは分かった上で、挑んでるんだ。
進む理由はあっても、退く理由は無いよ

【降魔化身法】発動。以降、戦闘終了まで解除しない
当然反動があるが、それは【激痛耐性】【毒耐性】で耐える

……なんでそこまでするのかって?決まってるだろそんなの。

この、やたらと陽気な世界を守る為だ。他の誰でもない。
俺が、そうしたいからだ

敵の攻撃は【見切り】【残像】【武器受け】で躱しつつ、
手裏剣で攻撃(【投擲】+【範囲攻撃】)して隙を作る

隙が見えたら【忍び足】で死角に入りつつ接近して
魔導蒸気式旋棍で攻撃(【早業】+【2回攻撃】)



●その感情の名を
(エモいとは)
 月凪・ハルマ(天津甕星・f05346)が困惑しながら敵に手裏剣を放つ。正直なところ、敵への対策が良く分からない。だが、戦わなければ。
 ハルマの手裏剣は多種に渡る。十字、三方、五方、六方、八方、火車剣。器用に投げ分けながらその全てがバリアに阻まれることを知ると、ハルマは眉を潜めた。
 その懐に一瞬で敵が潜り込んでいる。敵は、疾い。その目が煌々としている。魔導蒸気式旋棍で咄嗟に初撃を耐えれば敵影がふと掻き消え――両脚を曲げ、身を沈めている。両脚を揃え身を深く柔らかく沈めた敵は一瞬で右脚をひいてバネのように体を起こし、捻りを加えながら左脚を蹴り上げる。巧みに棍を返して蹴りを防ぎ、逆手で手裏剣を至近投擲すればバリアの音が耳朶を打つ。攻撃は、通らない。
(厄介だな)
 踵を押し込むように圧がかかる。押されている。敵は、幹部だ。侮ってはいけない。ハルマはそう思った。その瞬間に敵は拘りなく脚を引き、腰を落として力を溜めて再び攻撃へと気を練る。その起伏が瞬きするよりも速い。
(敵のペースをなんとか乱さないと)
 ハルマは棍を繰り出す。その一撃を敵の左腕が正面で難なくガードしていた。もちろん、バリアあってこそ成功しているガードだ。ハルマは奥歯をぎりと噛みしめる。攻撃が通らないのは、マズい。すぐに右拳が繰り出されている。手裏剣を放ちながらハルマは後方へと全力で跳ぶ。
 敵は余裕をみせていた。右の拳を脇を閉めながらしっかり引き、右膝を柔らかく使って折り、左は爪先を立てるようにして軽く浮かし持ち上げ。
「あーし、幹部だからね。エイプモンキーより弱いけどバリアは強いんだよ」
 視線が笑うようだった。
 バリアがある限り、倒すことはできないのだと、語るような気配。
「……強敵なのは分かった上で、挑んでるんだ。進む理由はあっても、退く理由は無いよ」
 いつの間に痛撃を掠めたのか、全身には痣ができている。だが、まだ動くことはできた。降魔化身法を発動させれば幽鬼がその身に宿り、全身に力が漲るのがわかった。代償として毒気が身体を蝕む。だが、ハルマは毒には慣れていた。

「まだやるんだぁ……?」
 敵が笑む。
 少年は敵へと駆け。溜めていた勢いを乗せた敵の右蹴りが凄まじい威力でそれを向かい打ち、バリアが手裏剣を悉く弾き地へ転がしてしまう。脚を降ろすや否や左腕が突き出されている。強化されたハルマの速度はそれに十分に対応はできた。身を捩り、腕を避け。だがそれすらも嘲笑うように敵は腕をひき、鋭く左脚を蹴りあがる。避けようがない――否。ハルマはそれを受け止めた。がっしりと、棍をクロスさせて。

「なんで、そんなに頑張ってんの!」
 イライラと敵が呟く。この猟兵は全く諦める様子がない。それどころか、だんだんと動きが速くなっているではないか。
「……なんでそこまでするのかって? 決まってるだろそんなの」
 返される声は意外なほどしずかだ。
 その瞳は敵を通り越し、はるか彼方を見つめるかのようだ。色の深い瞳に揺蕩う感情は、なんだろう。
 バニーは吸い込まれるようにその瞳に見惚れた。ほんの、一瞬。

「この、やたらと陽気な世界を守る為だ。他の誰でもない。
 俺が、そうしたいからだ」
 バニーは自分にはない何かをその瞳から感じ取った。
 そして、思った。

 ――この在り方が猟兵だ。これこそが猟兵が特別と言われる理由だ。ドン・フリーダム様のために、ここを通してはいけない!

 敵が鋭い蹴りを放つ。だが、手応えはなかった。そこにはもう猟兵はいない。
「残像っ!?」
 言葉はなかった。一瞬のうちに背後を取ったハルマの操る魔導蒸気式旋棍は雷の如く敵を打ち、眼にも止まらぬ速度で二撃が入る。
 バリアは、いつの間にか消えていた。
「なんとかなったな。よかった」
 少年はぽつりと呟き、次の戦場へと向かうのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

栗花落・澪
エモいって、なに…(混乱)

★聖痕で足元に【破魔】の花畑を展開
一瞬くっと気合を入れ

う…ウサギのお姉ちゃん見て見て!
えへへ、お花畑、お姉ちゃんとお揃いだねー(笑顔/恥)

指定UC発動
風で花弁を舞い上げくるくる【ダンス】し
天使達の舞い遊ぶ幻想風景を擬似演出し【誘惑】
一部分身に【催眠歌唱】を仕掛けさせ弱体化狙い

とてとて近付き
敵の服の裾を指先で握ってから恐る恐る【手を繋ぎ】
無邪気に誘うつもりが恥ずかしさに負けた結果
頬を染めながらの上目遣いで

お姉ちゃんも…一緒に、遊ぼ…?

攻撃は【空中戦+オーラ防御】で回避
自分の領域に誘導
分身と共に風の【属性、全力魔法】の花吹雪+破魔の刃で攻撃

※援護寄りなので出来れば連携希望



●泡沫の
「エモー♪ これも、これも~」
 ラビットバニーが目の前でスマホを見て燥いでいる。
「エモいって、なに……」
 栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が混乱していた。
「あっ、猟兵じゃん。バトる? それともエモる?」
 ウサギの被り物の眼がピカピカと赤くなっている。澪は魔力を込めて聖痕をかざし、足元に花畑を展開した。
(くっ……)
 決死の覚悟で気合を入れる。これは作戦だ。恥じらっている場合ではないのだ。澪は笑顔でバニーに声をかけた。
「う……ウサギのお姉ちゃん見て見て! えへへ、お花畑、お姉ちゃんとお揃いだねー」
(この子、女の子かと思ったけどよく見たら男の子じゃーん)
 自分を惑わすために女装したのだろうか? とバニーは考えた。
 少し恥ずかしそうな笑顔は、愛らしい。眉をへの字にして、目はきらきら、うるうるとしている。一生懸命作っている笑顔は、とても恥ずかしそうだ。
(なんか、すっごく頑張ってるんだね)
 笑顔は、バニーの心をぐっと掴んだ。掴みはオッケーだ。澪はホッとした。
「きれーじゃん。いいね。写真撮ろっか」
 バニーはしゃがみこみ、お花をツンツンとつついている。その声は少しだけ、妹や弟の相手をするお姉さんじみた響きを伴っている。
「花は、さ。すぐ枯れちゃうけど。だからいいよね」
 バニーがしんみりとそんなことを言う。放置していてももうこれだけでバリアは消えそうだ。だが、澪とて手練れの猟兵。手は抜かない。

 お花のいのちは 儚いけれど……♪

 愛らしい歌声が戦場に響く。ふわり。そよ風が優しく吹き付けて、バニーの目の前の花弁を舞いあげていく。
「あ……」
 花の中、澪が控えめなステップを踏む。花を踏まないようにと気を付けながら。慣れていないのか、少しだけ恥じらいの滲むステップは観る者のこころを微笑ましく和ませ。その周囲にはいつの間にか小さな澪が天使のように舞い遊んでいる。天使たちが愛らしい声で歌っている。

 ♪おどろ、おどろよ
 ♪いっしょに おどってたのしもう

「きれー」
 バニーが呟く。
 ちょこん、としゃがみこんだままバニーは和やかな光景を楽しんだ。

 ♪いつか 消えてしまっても
 ♪おもいでは のこるから……

「うん」
 バニーはそっと呟いた。
「過去がのこらないのは、さびしーから」
 とてとて、と。
 そんなバニーへと澪が近づいてくる。

 この猟兵は、自分を怖れたり敵意を持ったりしていないのかな? バニーは一瞬、そう思った。そんなわけはない。猟兵とオブリビオンは、敵なのだ。
「ふふ」
 バニーの口元が緩く笑む。立ち上がり、いつでも戦えるようにとバニーは身構えた。
(何を仕掛けてくるの? あーし、幹部だからサ。舐めないでよね。迎え撃ってあげるから)

 澪がバニーの服の裾を指先で遠慮がちに握る。
「うん?」
 恐る恐る、手が伸ばされた。
 やわらかな手がバニーの手を取り。

 あたたかい。
「お姉ちゃん」

 見上げる澪の頬が羞恥でほんのりと薔薇色に染まっていた。ほんとうは、澪の作戦では無邪気に誘うつもりだった。だが、恥ずかしさが隠しきれないのだ。
 そこまで作戦を理解して、バニーは思わず笑ってしまった。
 だが、この『少年』は一生懸命に言葉をかけてくる。
「お姉ちゃんも……一緒に、遊ぼ……?」

「……ふふ!」
 バニーはニッコリと笑い、だが蹴りを繰り出した。恐るべき速さの蹴撃。『猟兵』はふわりと華麗に空に舞い、回避した。そして、猟兵天使と小さな天使たちとが一緒になって花吹雪を放つ。
 バリアは、消えていた。

「やるじゃん」
 ニッコリと笑ったまま、バニーは花の吹雪に全身を切り刻まれた。
(この猟兵は、あーしのことを覚えててくれるのかな?
 それとも、すぐに忘れちゃうっかな)
 そんなことを一瞬、考えながら。

成功 🔵​🔵​🔴​

セシリア・サヴェージ
エモい……というのはよく分かりませんが、心が震えるといった意味でしょうか。
彼女がどういったものをエモいと感じるかは定かではありませんが単純に私の気持ちを、想いをぶつけてみようと思います。

私の想い。それは人々とこの世界を守りたいというものに他なりません。
その想いをのせてバリアがあるのも反撃を受けるのも承知の上で暗黒剣を打ち込み続けます。何度倒れても傷だらけになっても、立ち上がり立ち向かいます!

敵である彼女にこの想いを訴えるというのはおかしい事かもしれません。ですが、彼女も何かを成すために何度でも蘇る強き意思の持ち主。そういった点で共感することも……うっかりエモいと思うこともあるかもしれません。



●澱み燃やす炎熱
(エモい……というのはよく分かりませんが、心が震えるといった意味でしょうか)
 花の戦場に転移されしは義烈なる暗黒騎士、セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)。
 騎士は、剣を掲げる。
 世界に勝利を誓うように。

 オニキスのように漆黒を纏い、セシリアが暗黒剣を苛烈に打ち込む。硬質な音が戦場に響く。一撃、二撃、何度繰り出しても刃が敵の身に届くことはない。バリアがその身を守っているのだ。
 ゴウ、と敵のキャノンが火を噴いた。砲撃は騎士のセシリアを吹き飛ばし、花咲く大地へと転がし。けれど、すぐに立ち上がる。
 バニーが次々と砲撃を放つ。
 セシリアの剣は何度振られてもバリアに遮られ、敵に届くことが許されない。一方で敵の攻撃は幾度となく猟兵の身体を捉え、傷を負わせていた。
 だが、立ち上がる。
 肩で息をしながら、炯々たる光を瞳に星のように宿して猟兵は立ち上がる。

 肩で息をしながら、ぼろぼろになりながらセシリアが敵にまっすぐに視線を向ける。
「ラビットバニーさん、貴女にこんなことを言うのはおかしい事かもしれませんが」
「なあに? あーし、無駄口はだいすきだよ。言ってみなよ」
 バニーが好奇心を全身から滲ませていた。何度倒されても起き上がる死人のようなこの女性が果たして何を語るのか。バニーはそれが気になったのである。

 セシリアは訥々と語る。
「貴女たちオブリビオンも、何度でも蘇る存在です」
 バニーは目を瞬かせた。
「何かを成すために。強い意思があって、蘇るのでしょう」
 バニーは少し考える様子を見せた。
 バニーは不思議そうに猟兵を視た。その視線の先で、猟兵は血塗れになり、立っている。剣を手に。強い意思があり、だから倒れないのだと全身で訴えるようだ。

「あーし、そんなに強い意思とかないや。めんご」
 バニーは笑った。だが、なんとなくこの猟兵の言いたいことはわかった。
 自分に理解を求めたのだ。共感できないかと、期待をかけてきたのだ。それが不思議に面白い。だから、バニーはくすくすと少女のように笑った。
「真面目ちゃんだ。真面目ちゃんだよ」
 バリアは、消えている。

「面白い猟兵。面白い」
 くすくすと笑い――、
「でも、かっこいいよ。正義の味方って感じ」
 そっと一言付け足した。

「かかっておいでよ、真面目な猟兵さん。あーしがアンタにお似合いの最期をプレゼントしたげるよ」
 あーし、こう見えて幹部だし。
 バニーはそう言ってキャノンを構え、容赦なく砲撃を浴びせた。心が戦意に駆り立てられている。この真面目な猟兵を狩ってやろう。そう思ったのだった。

「参ります!」
 血塗れのセシリアが真っ直ぐな視線を敵に投げ、地を蹴る。
 セシリアは爽涼たる風の如く戦場を駆ける。勝利を掴み取るのだと確信めいた気持ちを胸に。全身に不屈の意思籠めた暗黒のオーラが立ち上り、身を削られ抉られても痛みすらも力に変え、セシリアは敵に肉薄した。

 ――いい眼をしてる。

 バニーがそう思う。思いながら、赤べこキャノンを横にして剣刃を受け止めようとする。世界に揺蕩う昏い澱みを吹き飛ばすようにセシリアが吠えた。裂帛。素早く刃が返される。バニーは、キャノンを持つ手に力を籠め――、敵を見失う。否。下だ。
「!!」
 低く身を沈めスライディングするようにして騎士が地を滑るような廻し蹴りを放っている。兎のように跳躍し、バニーはその一撃をかろうじて避けた。その背にゾクリと悪寒が走る。
「招かれざる者よ!」
 毅然と騎士が声をあげる。剣から迸るは暗黒の炎。炎が宙に逃れたバニーを呑み込まんと立ち上る。闇炎が夜空が広がるにも似て視界一杯に広がり――逃れ、られない。敵を優しく抱擁するようにして、炎が煌々と燃える。

 ――燃え尽きた後には、何も遺さぬ。

成功 🔵​🔵​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
エ、エモい行動……いえ、動揺している暇はありません
騎士として「エモい行動」をとってバリアを解除してみせましょう!
……どんな行動なのかよく分かってないのは兎も角!

●防具改造で自分の装甲に●破壊工作を施し、UCを発動しつつ装甲を自ら爆破、格納していた装備も全て強制パージ
軽くなり向上した機動力でラビットバニーに迫ります

キャノン砲の攻撃を盾を投げつけ●盾受け、剣も投げつけ●武器受けで防ぎ、最後は砲撃を●見切りスラスターを吹かしての●スライディングで回避
最後は●怪力での貫手を繰り出します
拳が砕けたら石頭での頭突きです!
「装甲、武装すべて失ってもキマイラFの人々の為、戦うことは止めはしません」




 戦場に出現した猟兵を見て、ラビットバニーは即座に先制を放った。キャノンの一撃が迫る中、巨体の猟兵は爆発した。

「!?」
(――自爆?)

 爆風の中キュイスとスプールが刃の如く跳びキャノンに穿たれ、小爆発を追加する。銃器が飛来し、目前でやはり爆発した。バニーが回避する一瞬で風を切り裂くように迫る影がある。爆風を抜け、白き騎士鎧姿のウォーマシンが剣と盾を手に。
 バニーは距離を取るよう後ろへ跳びながらキャノンをもう一度放った。砲撃に晒された騎士はおもむろに手に携えていた巨大シールドを投擲して砲撃を受け止めさせ、シールドの影から隠れるように剣を投げる。真っ直ぐ心臓を狙う軌道。それが、バリアで弾かれる。
「あーしのバリアは無敵だよ」
 呟き、バニーは主砲を再度撃つ。近距離の一撃を、騎士は機敏に避けた。体を捉えることこそしなかったものの、地を抉り足場を巻き込んだ余波は疾駆の勢いを削ぐことには成功していた。勢いを殺され横へとステップする騎士に安堵してバニーは大きく距離を取る。

 静寂。

 騎士は一度油断なく剣を拾い上げ、巨大シールドをサバトンの先で蹴り上げて掴んだ。襲来する光撃をシールドで危なげなく往なしてみせればその技能の成熟度が窺い知れる。
 格納装備と装甲の一部をパージし爆破した騎士トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は防御性能の代わりに機動力を得た。敵が悉く攻撃をバリアで凌ぎカウンターを返していけば、一方的な戦いになるだろう。いや、そうなるだろうか?
 トリテレイアは一度全身を確認する。一部装甲は外して軽量化したが、攻撃を防ぐために十分すぎる部位は活きている。堅牢なシールドは光撃を受け止めている。威力と各部位の耐久度を計算し、トリテレイアは手元に視線を落とす。
 鋼の指が五指、握りしめているのは剣だ。柄を握る手に力を籠め敵を視る。目が合った。そう思った瞬間に光が閃く。敵が攻撃を仕掛けている。単純な攻撃だ。純粋な戦闘力で言うなら、それほどでもない。リミットを解除する。
 淡々と地を蹴る。サバトンを残したのは正解だった。激しい踏みこみに地を抉りながら、脳裏に過るのはそんな思いだ。もちろん、彼には更なる加速の手がある。脚部スラスターを吹かして滑るように戦場を駆ければ、敵が――キャノンを豪快に振る。シールドを再び投げれば、キャノンで殴り伏せ。打ち落とした。
「あーしは幹部だし! 見くびらないでほしいんですけど!」

「バリアは……」
 試すように剣を鋭く投げれば、敵はキャノンで剣を薙ぎ払い、落とした。
「力押しで突破できるでしょうか?」

 確認するように発声すれば、敵が動揺したようだった。
 無敵のバリアだ。力押しで突破なんて間違ってもできるはずがない。
 だが、この猟兵の勢いや不可能を容易く可能に塗り替えそうなほどであった。
(まさか)
 バニーは心乱さぬよう自分に言い聞かせながらキャノンを真っ直ぐに向け、迎え撃つように発射する。単調だが、十分すぎる脅威の一撃。それをトリテレイアは難なく躱す。向上した機動力がそれを可能にしていた。瞠目する敵。間合いが近い。超過駆動開始。カウントが始まる。寿命が削られていく。

 代わりに得たものは近接特化の駆動力。

 間合いに踏み込む一瞬、敵はキャノンを大上段から振り下ろした。その一撃を廻り込むように避ければ、素早い廻し蹴りが追ってくる。身を捉えられる刹那、地を踏む右足に力を籠めて左脚をあげてグリーブで蹴りを受け止めれば、バリアが鎧表面に火花を散らし衝撃を伝える。敵は素早く衝拳を繰り出す。そういえば敵も近接の心得があるのだった、と思いながらガントレットで往なし、やはり火花を散らしながらカウンターにと怪力での貫手を繰り出す。鈍重な音が響く。破砕されたのは己の拳だ。無敵の障壁が衝撃をそのまま返していた。放熱音が感知される。脳裏に燈るのは稼働限界をそっと訴えるメッセージ。だが、騎士は即座にそれを遮断した。呼気のような笑みが零れ。
 騎士は逆手を繰り出した。激しい衝撃と共に視界が一瞬ぶれる。炸裂した瞬間に拳は砕けていたが、構わずに今度は頭突きを放つ。
 順に身を砕きながら突貫する狂戦士のような戦いぶりに敵が戦慄する。戦慄せずには、いられない。心が乱れ、その瞬間にバリアは消え去った。

 ぐしゃり。

 一瞬だった。

 膝を屈する敵を見下ろし、砕けた両拳をぶんぶんと振りながらトリテレイアは呟く。
「エモいというのはよくわかりませんでしたが、力押しでなんとかなるものですね」
 そして、骸の海へ還っていく敵に向けて。
 あるいはこの先に待ち構える強敵に向けて、宣言するのであった。

「装甲、武装すべて失ってもキマイラFの人々の為、戦うことは止めはしません」

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年05月14日


挿絵イラスト