バトルオブフラワーズ⑩〜勝利の鍵はE・M・O~
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「! 皆さま、お集まりいただき有難うございます」
猟兵達が集まったのを確認し、無供華・リア(夢のヤドリギ・f00380)が一礼した。
「皆様のおかげで、キマイラフューチャーを脅かす怪人のひとり、マニアック怪人『エイプモンキー』の復活は阻止されました。ですが、まだまだ安心は出来ません。次に皆様に討伐に向かって頂きたい相手は……その名も、カワイイ怪人『ラビットバニー』です」
カワイイ怪人? 首をひねる猟兵達に、リアはキマイラフューチャーで手に入れたタブレット端末に予知で視た映像を投影する。そこにはカワイイようなカワイクナイような、微妙なウサギの被り物をしたオネーサンが映っていた。
「カワイイ……かな?」
「いやでも、こういう美人っぽい人が敢えて顔を隠してるっていうのは俺的にはなかなかエモい」
「エモ! それなのです」
素晴らしいです、とリアが頷く。エモいと発言した猟兵は何が何だかわからず戸惑い顔。
「実はラビットバニーさまは、絶対無敵バリアという説明不要のバリアに身を護られているのですわ。よいですか、絶対無敵バリアですよ」
子どもが考えた名前みたい。
「この名前の通り、バリアはいかに強力なユーベルコードであろうと解除する事は出来ません。ですがただひとつ、解除する方法があるのです。それは」
「まさかそれが」
「エモなのです」
エモなのでした。
「エモさとは。その概念は人によって多種多様だと思われます。SNS映えする綺麗な風景にエモさを感じる方もいれば、漫画やドラマの登場人物達の感情の動きに情動を掻き立てられる事もあるでしょう。ですがそこはご安心なく。皆さまがエモいと感じる事ならば、だいたいラビットバニーもエモいと感じると予知には出ております」
チョロいな。
「ですが無事バリアを取り除いたとしても、彼女が強力なオブリビオンである事は変わり有りません。攻撃重視も命中重視も自由自在な『赤べこキャノン』、爆発的な身体強化を可能とした『うさちゃんカンフー』、敵の動きを封じる『おはなハッキング』といった、攻守に優れた強力なユーベルコードを駆使してくる強敵でございます」
技の名前にイマイチ緊迫感がないが、ひとまず強敵のようだ。
「バリアを解いただけでは、戦いはまだスタート地点。ですがエモさ無くしてはそのスタート地点に立つ事さえ出来ないのです。どうか皆様、楽園を護るために力を貸してくださいませ」
リアはそう言って、猟兵達を送り出すのだった。
ion
お世話になっております、ionです。
ちょっとシナリオ出すペースを落とそうか、と思っていたのについついやってしまいました。ラビットバニーとの戦いです。
今回は特殊ルールが御座います。必ず下記の事にお気をつけてくださいませ。
ラビットバニーは必ず、猟兵に先制して『絶対無敵バリアを展開するユーベルコード(POW、SPD、WIZ)』を使ってきます。
絶対無敵バリアは本当に絶対無敵で、あらゆる攻撃を無効化しますが、「ラビットバニーがエモい物を目撃する」と、精神集中が乱れてバリアが消滅します。
ラビットバニーのエモい基準はかなりユルいので、バリアの解除は比較的容易と思われますが、バリアなしでも彼女は相当の実力者です。
バリアの解除は、皆さまが「エモい!」と感じる事であればさほど難しくはありません。
ですが彼女は強敵。バリアを解除したとしても、勝てるかどうかはまた別問題です。エモい事を語りすぎて戦闘を疎かにしてしまうと、折角バリアを解除したのに殆どダメージを与えられないまま返り討ちにあってしまうかも知れませんので、お気をつけて。
それでは、皆さまの「エモい」プレイングを、お待ちしております。
第1章 ボス戦
『カワイイ怪人『ラビットバニー』』
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POW : 赤べこキャノン
【絶対無敵バリア展開後、赤べこキャノン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : うさちゃんカンフー
【絶対無敵バリア展開後、兎面の目が光る】事で【うさちゃんカンフーモード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : おはなハッキング
【絶対無敵バリア展開後、両手の指先】から【システム・フラワーズ制御ビーム】を放ち、【花の足場を自在に操作する事】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:和狸56
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
七那原・望
おはなハッキングの足場から逃れるために空を飛んだまま近づいて、飛んだまま戦うのです。
さるの次はうさぎなのですね。
動物さんが大集合なのですー。
【マジックオーケストラ】を発動。影の大人のオラトリオに守ってもらいながらねこさんをたくさん呼ぶのです。
こんなにいっぱいのねこさん、きっとエモいのです。
みんな、頑張るのですよー!
共達・アマービレで更にねこさんを呼びながら【動物と話して】指揮を執って、ねこさんに【誘惑】されたと思われるラビットバニーをねこさんの【全力魔法】の【一斉発射】で攻撃させるのです。
攻撃を受けてしまったら、それ以上の攻撃を受けないように飛び回りながら残ったねこさんに戦ってもらうのです。
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「あーし超無敵ー! 猟兵なんか叶う訳ないしー!」
猟兵達の出現を察知したラビットバニーは絶対無敵バリアを展開し、花の足場を制御するビームを放って猟兵達を妨害しにかかった。無敵バリアもチートだけど、システムフラワーズ制御ビームも大概チート。
だが勿論、そんな事で降参する猟兵ではない。目隠しのオラトリオ、七那原・望(封印されし果実・f04836)は空を飛んでラビットバニーへと接近する。
「さるの次はうさぎなのですね。動物さんが大集合なのですー。次は何の動物さんがくるのでしょう?」
「バカにするんじゃねーんですー。あんたら猟兵に次なんてないんですー」
無敵バリアに護られたバニーは余裕綽々。やれるもんならやってみやがれと赤べこキャノンを構え、ついでに口調も真似て挑発してきた。
「ならやってみるのです! さぁ、開演なのですよ!」
望が鈴つきの白いタクトを振るえば、どこからかぽぽぽぽぽんと大小さまざまな沢山のねこさんが召喚された。同時に召喚された影のオラトリオは若干ねこに埋もれつつも望を護るように動く。
「……な」
うさぎの被り物の下でバニーが明らかにたじろいだ気配。
白いの黒いの茶色いの、ふわふわなこもシュッとした子も、とろんとした子も凛々しい子も、様々なねこさんが所せましと視界を覆いつくす。
「……こ、こんなの」
「まだまだ行きます。みんな、頑張るのですよー!」
タクトを翳せばねこが増える。望の指示に合わせてねこさんは一斉にごろごろしたりにゃーんと鳴いたり。そのしぐさのエモさもさることながらちいさな望が一生懸命タクトを振るうエモもさることながら気まぐれなイメージの強いねこさんが少女の指示に健気に従うエモさもさることながら、とにかくエモかった。
「こ、こんなの無理に決まってるーー!」
耐え切れなかった。
「今なのです!!」
猫が飛びかかる。ウサギめがけて全力の猫パンチの応酬。いたい。かわいい。
「エ、エモみの極み……!」
抵抗する術もなくバニーは倒れ伏す。あれ、『バリアなくても強い』というのはフリだったのでしょうか。
成功
🔵🔵🔴
イリーツァ・ウーツェ
【POW】
情緒も感動もわからん。
わからんがわからんなりに死力を尽くそう。
強敵なのはわかりきっている事だからな。
あまりこちらの姿は好きではないが、
少しでも頑丈さを増すために竜人形態へ移行
まずはバリアとやらを解除させねば話にならん。
なので先に撃たせる。
もちろん先んじてUCを使用しておく。これで威力は半減する。
加えて魔杖により水の壁を作り、両翼を前に出して盾に。
(覚悟+激痛耐性)
ここまでやっても満身創痍は免れまい。
だが構わん。ああ、絶対に倒れてはやらんぞ。
解除さえしなければ、カウンターダメージが直に入る。
食らえ、強敵。
(エモ対策:瀕死でも膝を折らず、強気に笑い返す姿)
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(情動も感動も、私にはわからん。わからんが、わからんなりに死力を尽くそう)
敵は強敵。ならばとイリーツァ・ウーツェ(盾の竜・f14324)は日頃封じている竜人の姿を開放して敵の元へ向かう。
「竜人とかなかなかマブくない!? でもそのくらいじゃあーしのバリアは解けないっていうか!」
ラビットバニーが赤べこキャノンを構える。瞬時に無敵バリアが彼女を覆い、赤べこからは殺傷力を強化した赤べこ砲弾が放たれる。
イリーツァはそれを避けはしない。魔杖“竜宮”を翳して水の壁を編み出し、壁と己の翼の双方を盾として受け止める。これはバニーの知らぬ所だが、イリーツァは更に、耐久力を高め反撃を可能とする術『逆鏡返報・還討』を己に施していた。その三重の護りを以てしても攻撃特化の砲弾は重く、身が砕けるような衝撃が襲い掛かる。
「ぐ……っ」
痛みにイリーツァが呻いた。口腔内にせり上がってきた苦みを吐き棄てれば赤が散る。それでも竜人は兎を見据えた。
「やだ、痛いのこらえるドラゴニアン、ちょっとヤバいかも」
兎、心の声ダダ洩れ。
「これはさっさと倒さないとあーしが持たないかもね! というわけで猟兵、かくごー!」
再度構えられた赤べこから今度は速射重視の連弾が火を噴いた。イリーツァは再度護りを固めるが先の傷は深く、精度を欠いた水壁の穴をつくように砲弾が襲い掛かる。
「ほらほらぁー、降参したらどう? あーし達を邪魔しないって誓うなら、おにーさん特別に見逃してあげてもいーよ?」
「……舐めた、真似を」
低く、呻くような声だった。満身創痍のイリーツァはそれでも膝を折らず、口角を吊り上げる。全身を赤に染めた竜人のそれが不敵な笑みだと気づいたバニーはどっきーん、心臓が早鐘を打つ。
「絶対に倒れてはやらんぞ、ましては逃げなど、してやるものか」
さーて今週のエモエモ★バトルオブフラワーズは、不屈のイケメン竜人。血も滴るイイ男。逆境からの起死回生。の、三本でお届けします。
「えっもーーーーー!!」
バニーが叫ぶと同時にバリアは解除され、ついでに身を裂くような激痛が彼女を襲った。
「いだいいだいいだい、なんでぇ!?」
「強敵に何の策もなく突っ込むものか。カウンターの術を仕込んでおいたのだ」
「ううう~、竜人おそるべし…っ」
憐れ兎は調子に乗ったしっぺ返しに苦しむのであった。
成功
🔵🔵🔴
春日・釉乃
エモさがなんだかよくわかんないけど……あたしとキリカさん(f03333)なら行ける筈!
まずは、先制攻撃の赤べこキャノンを[一斉発射]した[早業]の[盾受け]『シールドスレイヴ』を展開して、更には【ラプラスの瞳】のUCを発動。二段構えでキリカさんを庇うよ
半径5m以内に侵入した相手の砲撃の軌道の因果を改変して、逸らしていくんだから!
へ、へいきだよ……このくらい。貴方が背負ってきた傷に比べたらこんなは……
きっと、あの子もこんな感じにキリカさんことを守りたかったのかな……?
魔眼の反動の痛みにだって、絶対に負けないよ。あたし、大切な貴方を失いたくないから――!
だから、あとは任せたね……キリカさんっ!
キリカ・リクサール
春日(f00006)と出撃
新たなる敵か
なかなかに手強そうだが
二人ならば必ず突破できるはずだ
春日…!無茶なことを…!
いや…それは後だ!
まずは私がすべきことをやらなくては
春日の献身を無駄にはできん
攻撃が逸らされた隙を見計らい【苦痛の嵐】を発動
フルオートにした『シルコン・シジョン』で無数の銃弾を相手の死角に放ち攻撃
さらに[クィックドロウ]と[早業]で『オーヴァル・レイ』を飛ばし
相手の逃げ道を塞ぐように粒子ビーム線で攻撃を行う
春日…私はお前まで失うわけにはいかない
私もいつまでも誰かに守られてるわけには行かないんだ
任せてくれたお前のために誓おう
この一撃は必ず奴に届かせると!
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「新たなる敵か。なかなかに手強そうだが、二人なら突破出来る筈だ」
「エモさがなんだかよくわからないけど、あたしとキリカさんなら大丈夫だよね!」
キリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)と春日・釉乃(”CHIPIE”・f00006)は揃って花の足場を駆ける。
「先手ぇー必勝!」
迎え撃つラビットバニーが赤べこから機関銃のような連射を放つ。踊り出たのは釉乃。自身の遠隔操作兵装『シールドスレイヴ』を展開し、更には『ラプラスの瞳』を発動させる。金茶の瞳に宿った揺らめく赤が因果律に干渉し弾丸の軌道を逸らす。
「キリカさんを、みんなを、守護るためなら……!」
軌道を変えられた弾丸が花々の足場に落ちる。無数の色が散る。だが彼女の魔眼を以てしても全てに干渉する事は出来なかった。キリカを狙ったそれはシールドスレイヴが弾いた。だが魔眼を開放している彼女自身は避ける事すらままならず弾丸の直撃を受ける。
「くぅ……っ!」
身体が、軋む。だが彼女は斃れず、その片眼に深紅を宿したまま次の攻撃に備える。
「春日……無茶なことを……!」
外傷に加え、強力な力の開放は釉乃の身体を蝕み続ける。それを知るキリカは狼狽えるが。
「へ、へいきだよ……貴方が背負ってきた傷に比べたら、このくらい」
釉乃が気丈に微笑む。その献身を無駄には出来ないと、キリカは『シルコン・シジョン』をフルオートに切り替えて構えなおす。
「……そうだな。私は、私がすべきことをやらなくては」
「むむっ、エモの気配!?」
バニーのカワイイうさ耳がぴっこーん。だがまだ未だバリアは健在。
「そっちのおねーさん、あーしのバリア程じゃないとはいえ攻撃無効化してくるのナエるんですけど」
後ろに通そうとした攻撃が弾かれるなら、無理に狙わず盾を砕けばいい。バニーの砲弾が今度は全て釉乃を狙う。
「させるものか」
キリカの期間拳銃が火を噴く。死角を狙った的確な射撃さえ未だ綻ばぬバリアに弾かれて無効化されるが、バニーの狙いを逸らすのに一定の効果はあった。釉乃まで届いた砲弾は先ほどより少なく、そして釉乃がそれを全て逸らしきる。
「魔眼の傷みになんて、絶対に負けない。……きっとあの子も、こんな風にキリカさんを守りたかったのかな」
「……春日。私は、お前まで失うわけにはいかない」
二人の静かな声は、銃声と火花の飛び交う戦場においてもはっきりと響き、バニーの耳に染み渡った。
それは敵の護りを砕く為の手段でもあった。ただしそれは嘘偽りない彼女たちの本心でもあった。
―――友を失いたくない。護りたい。
パリィィンとガラスの砕けるような音がしてラビットバニーのバリアが消え去った。
「友情。仲間。辛い過去を乗り越えて、勝利。こんなん……こんなん、エモすぎて無理っしょ……」
項垂れるバニーの顔は相変わらず被り物のウサギだが、その声音が涙ぐんでいる。
「あとは任せたね、キリカさんっ!」
「ああ……私もいつまでも、誰かに護られているわけにはいかないんだ」
美しい金の紋様浮かぶキリカの浮遊砲台がバニーを捉える。
「任せてくれたお前のために誓おう。この一撃は、必ず奴に届かせると!」
「さ、させないっちゅーの!」
「あたしこそさせないよ!」
赤べこ砲弾は瞳の前に敗北し。オーヴァルレイの粒子ビームが、バニーを灼いた。
緊張の糸がほぐれたように崩れ落ちる釉乃の身体を、キリカが受け止めた。
「……春日」
「よかっ、た」
その瞳にもう赤はなく。いつもの双眸が気丈に微笑む。
辛くも掴み取った、勝利だった。
苦戦
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フィロメーラ・アステール
「いいぜ、最高にエモい光景を見せてやる!」
自然を失ったこの世界で、見る事はあっても!
……愉しむ事は無くなったかもしれない物だ。
【星の遊び場】を使うぞ!
聖なる【破魔】属性の日の出を発現!
【全力魔法】で時間すら制御し、戦場を夜に!
そして朝に!
普段と違う舞台から見た夜明けは絶対エモい!
これでバリアを解く!
ついでに鮮烈な光パワーであたしが【鼓舞】される!
【気合い】充填完了!
【空中戦】だ!
たぶん花びらを操って攻撃してくるから【第六感】で察知し【残像】の速度で回避!
【迷彩】魔法を活用して華麗な【ダンス】で幻惑!
太陽を利用した【目潰し】も使いつつ、【踏みつけ】や【オーラ防御】をまとった体当たりで攻撃するぞ!
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流れ星のような光が翔ける。
「いいぜ、最高にエモい光景を見せてやる!」
やってきたのは星くずの妖精、フィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)。
「へっへーん、あんたみたいな子供にあーしのバリアが解けるとは思えないんですけど!」
人は、いや妖精は見た目で判断してはいけない。だが兎はそのことを知らない。
「それはどうかな? 自然を失ったこの世界で、見る事はあっても!」
フィロメーラが羽ばたきを強めると、きらきら煌めく鱗粉がより一層舞う。おとぎ話で空飛ぶ術を与えてくれる妖精のように。
だが今回彼女の使うのは、それとはまた違ったとっておきの魔法。
「……愉しむ事は無くなったかもしれない物を、見せてやるぞ!」
フィロメーラが大きく手を掲げた。魔力を込めた流星が空へ宙へと高く打ち上げられる。そして世界は暗転した。
「えっえっ、なにコレ」
突然暗くなった空を見上げ、兎は狼狽える。警戒するように背負った赤べこを構え。
だが次は来ない。かわりに空が巡る。早回しの映像のように。
人工物に恵まれたこの世界では、或いはプラネタリウムでしか見た事がない者もいるかも知れない。満天の星がぐるぐると流れ、時折その中を流星が奔り、燃え尽きる。
そして暗闇の中に白が生まれる。薄明りが星々をまどろませ、わずかばかり顔を出した太陽が、その薄白いキャンバスに赤を橙を金を塗りこめていく。
夜明けが、来たのだ。
「やべー綺麗……忘れかけてた初恋とか青春とか思い出しちゃいそう。むっちゃエモいわ」
ハイテンションだったバニーもどこか神妙に頷くのだった。多分バリア溶けてるの気づいてない。
対して光パワーで元気フルチャージなのは星の妖精。気合一発空を飛ぶ。
「チャンスっ!」
一瞬遅れて気づいたバニーが花の足場を操作しだすが、フィロメーラの接近の方が早かった。至近距離から赤べこ砲弾を放とうとするがこれは。
「うわまぶしっ朝陽まぶしっ」
今まさに顔を出したおひさまの目潰しがクリーンヒット。怯んだ隙に星の妖精が全力で体当たり。
「いった~い」
小さな妖精の意外なパワーに兎は翻弄されるのだった。
成功
🔵🔵🔴
天津・麻羅
エモいとか最近の若い奴らは訳のわからん言葉を使うの。とりあえずラビットバニーとやらをドッキリさせれば良いのじゃろ?ならとっておきの神の御業とゆうものを見せてやろう!
まずわしの力で創ったミニチュアダックス(創造物)を出すのじゃ。これだけでもエモい?とゆうものじゃろう。じゃがこれだけではまだまだ…ここに神の御業であるゴッド・クリエイションでメンチ(ミニチュアダックスの名前)の身長を人間以上にするのじゃ!胴体が伸びるのか手足が伸びるのかわからんがさもエモい光景が見られるじゃろう。バリアが解けたらメンチに突然させるのじゃ!
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「エモいとか何とか、最近の若い奴らは訳のわからん言葉を使うの」
首を傾げるのは天津・麻羅(神・f16621)。そういう彼女こそ、若いというにも若すぎる外見をしている。
だがそんな事は関係ない。何故なら彼女は神だから。
幼い姿をしているだけなのだ。別世界で小学生をしていた気もするが今は神なのだ。
「ほーんとにぃ? どっからどう見ても、ただのお子様にしか見えないんですけどぉ?」
兎は訝しんだ。これには麻羅も若干ムッとして。
「わしを信じないと申すか。ならば神の御業を見せてやろうぞ」
「なによ。何してくれるの」
「生命の創造じゃ」
おお。
彼女が紡ぐ技はその名もゴッド・クリエイション。まず人工物だらけのシステム・フラワーズ内部に土が生まれる。その土が四つ足の動物を形成し、麻羅が念じるとそれが神の意を受けて神々しく輝いた。
光がおさまるとそこにいたのは何とも愛らしいミニチュアダックス。くるくると愛らしい瞳の彼(彼女?)は小首を傾げてくぅんと鳴いた。
「メンチと名づけたぞ。どうじゃ」
「確かにすっごくかわいいけど、これだけでエモいかと言われるとまだまだ」
「勿論これだけではないぞ。わしは生み出した生物を超強化することができるのじゃ。ほれ!」
麻羅が再び神の奇跡を振るう。何が起こるのか。身体能力を強化してパワーで攻めてくるか。頭脳を強化してテクニカルに攻めてくるか。だが何が起きてもこのバリアの前では無力。バニーはタカを括る。
だが目の前に起きた状況を、バニーはすぐには理解することが出来なかった。即ち。
「……なんか、長くね?」
確かに胴の長い犬種だ。だがこんなに長かっただろうか。いやそんなわけがない。明らかに長い。バニーが前足の辺りを持って抱きかかえたとしてもまだ後ろ足が地面についていそうなレベルで長い。何というかうねうねしている。
「どうじゃ、エモいじゃろう」
これはエモなのか? バニーにはわからない。だが自信満々に言う麻羅を見ていると。
「なんか、エモい気がしてきた」
半ばごり押し的にバリア解除成立!
「今じゃ、メンチ突撃!」
わわわん! 襲い掛かる長い犬。
「そーはさせないし!」
花びらの足場に干渉する兎。メンチが兎へと至る道を絶つ。これで安心、と思ったら。
メンチが伸びた。確かに後ろ足は孤立した足場で置いてけぼりをくらっている。だが長い長い胴体が兎に届いた。
「え、そんなんアリ?」
憐れ兎は振りかぶられた胴体に吹っ飛ばされるのであった。
苦戦
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ハルカ・ラグランジュ
人の心を揺さぶる事こそがアートの力。
アーティストの端くれとして、負ける訳にはいかないわね。
ステージ全体が花で埋め尽くされているなら都合がいいわ。
花の美しさ、儚さを歌と踊りで表現しましょう(歌唱/ダンス/パフォーマンス)。
さらにUC「散るが故に」で花びらを舞わせて、散りゆく花の美しさを伝えるわ。
もちろんこれは、攻撃のためでもあるの。
ダンスと舞い踊る花びらに紛れてラビットバニーに接近。ユーベルコードの射程内に収めておけば、バリアが解除された瞬間攻撃を当てられるでしょう?
動きを封じ来たら、全力の風魔法で飛んで一気に距離を詰めるわね(全力魔法/属性攻撃)。
※アドリブ・連携歓迎
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「アーティストの端くれとして、負ける訳にはいかないわね」
ハルカ・ラグランジュ(人間のサウンドソルジャー・f17426)はそっと気合を入れた。人の心を揺さぶる事こそがアートの力。ならばこの戦い、猟兵としてもアーティストとしても、負ける訳にはいかない。
「もう、まーだ来るの!? 猟兵ってしつこすぎないっ?」
各種エモに殴られ続けたバニーはボロボロ。それでも彼女は幾度目になるのかも分からぬバリアと花の足場を操るビームを展開した。バニーへと続く足場が絶たれる。
色とりどりの花の足場が揺れて姿かたちを変えていくのは美しかった。瞬きする間に色彩が表情を変えていく。きっとここが戦場にならなければ見る事もなかった光景だろう。
(無事に帰ったら、この美しさを歌にするのも素敵かも知れないわね)
ハルカは思う。だがこの芸術を作り出した兎は、自らの術が人の心を揺さぶるなどと気づいているのだろうか。
なら伝えよう。その美しさを。儚さを。
「その目に焼き付けなさい。限りある者の美しさを」
散るが故に。ハルカが告げると彼女のサウンドウェポンもまた散りゆく花びらとなり、戦場を色彩で覆いつくす。
「……わ」
溢れ出る色の洪水に、バニーは思わず状況も忘れて立ち尽くした。
ハルカが歌う。澄みわたった歌声は耳に心地よく、けれども何故か締め付けられるような切なさを観客に与え。
ハルカが躍る。花舞う舞台で軽やかに踊るその姿はまるで花の精。その背に透き通った羽を幻視させるかのよう。
「ね、見上げてみて」
す、とハルカの長い指が空を指差した。彼女の舞に見蕩れていた兎がそれに誘導されるのは自然な事。指先を追えばそこは色鮮やかな絵画のような世界だった。システム・フラワーズの光景。ハルカの技。そしてラビットバニーの技もまた、この光景を生み出していた。
「綺麗でしょう?」
「……うん。あーし、ずっとここでエモいもん見せてやがれって猟兵達に言ってたけどさ。あーしがいたこの場所こそが、エモそのものだったんだね」
護りの溶けたバニーに、美しい花びらが今度は牙を剥く。風の術で射程を詰めたハルカが操る花びらはバニーの身体を無数に切り刻んでいった。
「ああ、なんか、負けるの悔しいけど。楽しかったなあ。エモいもんいっぱい見れて、心が躍ったりきゅってなったり、こんなの、いつぶりだったかなあ」
彼女は被り物の下でハルカに、彼女と戦ってきた猟兵達に、こう言うのだった。
「あーしはオブリビオンだから、まだまだ蘇るよ。だからまたエモいもんいっぱい持ってきてよね!」
それは宣戦布告か、それとも。
サムズアップしたバニーはそのまま霧のように消えゆくのだった。
成功
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