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おはようからおやすみまで

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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●『11人の王と滅びの予兆』
 少年は語る。

 昔々あるところに11人の王さまがいました。
 王さまたちは小さな国々でした。けれど国同士で同盟を組み、互いに協力しあって困難を乗り越え仲良く暮らしていました。
 ある日、国の民たちが次々と原因不明の病に倒れ急死していきました。原因を突き止めようと王さまたちは協力しましたが、原因究明には至らず、王さまたちは悩んでいました。
 そんな時、それぞれの王さまたちの元に1通の手紙が届いたのです。その手紙には、こう書かれていました。

「下記の合言葉を完成させよ、さすれば救われん。
 蛇足であるが、このままでは下記の合言葉は未だ不完全である。
『gdmrig』

 王を間に入れ合わせて11人の円卓議会がやっと完成した。
 今日は顔合わせだ。
 やってきた私は円卓議会の役員であろう騎士の間に座る。
 どうやら私は9番目の席のようだ。

 P.S.騎士は騎士であってそうでないもの。王は3人居る。」

 1人目の王さまは、その合言葉は『夜』と関係していると言う。
 2人目の王さまは、その合言葉は『朝』に関係していると言う。
 3人目も『朝』、4人目は『夜』、5人目も『夜』、6人目は『朝』、7人目以降は全員が『夜』と同じように答えたのです。
 『夜』に関係していると答えた王さまが8人、『朝』と関係していると答えた王さまが3人でした。

 この謎を解ければ民を救えるかもしれないと、藁にも縋る思いで王さまたちは謎解きをしました、が、どの王さまの答えも不完全な解答で、正解ではありませんでした。

 こうして原因が分からないまま11の国は滅びを迎えたのでした。

 おしまい。

●滅亡の予兆再び
 パタンと本を閉じて、猟兵たちを横目で見る。宮前・紅(絡繰り仕掛けの人形遣い・f04970)は怪訝そうな表情をしたまま口を開いた。
「誰かが、ダークセイヴァーで変な『おはなし』をしてるみたいでさ。しかもその『おはなし』の中に出てくる“謎”を解ければ救われるとか何とか……胡散臭いよね?」
 そして宮前は手に持った『11人の王と滅びの予兆』とタイトルの書かれた本を猟兵たちに手渡す。どうやらこの本の作中に書かれた“謎”を解き明かせば、救ってやろうということらしく、それを吹聴して回るオブリビオンが居るという事らしいかった。
「そこで、君たちにはある場所に向かって欲しい。
 そこはダークセイヴァーの郊外にある館、『11人の王と滅びの予兆』の“謎”を解答しなければ館には潜入できないみたいだね。そこに向かった住人が帰って来ない事からもオブリビオンが潜伏していると予想される」
 纏めると、館に潜入及び奇襲作戦ということらしい。そして館に潜入し、消えた住人たちの調査にあたる。消えた住人たちと同様の手順を踏むことによって何があったかを調査せよ、との事だ。
「先ずは、館の“謎”攻略だね。猟兵である事を隠して潜入して調査をお願いするよ。
 生きているか死んでいるかはさておき、消えた住人たちが何処かにいる筈。きっと…君たちなら正しい答えを見つける事が出来るよ」
 そう言ってグリモアのタロットカードをふわと宙に浮かばせ、カードの表面を人指し指でトンと軽く押す。すると、地面に描かれる魔方陣が君たち猟兵を連れ去っていく。

「おやすみなさい。気をつけてね」


LichT
 はじめましてもしくはお世話になっております、LichTです。

 今回はダークセイヴァーでのシナリオとなります。
 第1章では、猟兵の皆様方にはダークセイヴァーの郊外のある館に潜入し攻略して頂きます。館の扉には『謎』の『解答入力キー』がありますので、そこに皆様の答えを入力して頂きたいのです。 謎を解かずに他の猟兵に任せる、というのもありですが、出来るだけ解答して頂きたいです。(解法はプレイングして頂かなくとも結構です。勿論、解法のプレイングをしたい場合もご自由に構いません)

 『謎』を解くには『11人の王と滅びの予兆』の謎部分だけを読むのではなく、全体を読んだ方が良いかと思います。

(※第2章、第3章の情報についてですが、次の章に進むごとに随時公開して参ります)

 猟兵皆様のご解答をお待ちしております。
 おはようからおやすみまでお付き合い願います。
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第1章 冒険 『扉の『謎』を解け』

POW   :    勘を大事に力任せに解答を導き出し、手がかりがないか館をしらみ潰しに調査する。

SPD   :    速攻で答えを導き出して、素早く館に潜入し消えた住人を探しだす。

WIZ   :    知識や閃きで解答を導き、館と消えた住人の調査を行う。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

火土金水・明
【WIZ】で参加です。
「ヒントの文字で分かっているのは『gdmrig』の六文字ですか・・・。」
「『王』を『o』の文字に変換して、『夜』を『good evening』に、『朝』を『good morning』に、それぞれ十一文字に変換します。」
「このうち、三人の王(o)が間に居るのは、『good morning』の方なので、答えは『good morning』でしょうか?。」
館の解答入力キーに『goodmorning』の十一文字を打ち込みます。
「これで答えが合っていればいいのですが・・・。」


雲烟・叶
さてさて、合ってますかねこれ。まあ、間違えたからって死ぬ訳じゃあねぇんで、気楽にやりましょう。

私は騎士であってそうでないもの(knight≠night)の間に座る
つまり、nとnの間に私が来る
私=i(I'm)
gdmrig→gdmrningは確定
残りは王(o)が3人
私(i)が9番目になる

答えは「goodmorning」
どうです?

中に入れたら、管狐たちを喚び出して方々に散らせましょうか。
住人やその痕跡を見付けたら連絡なさい。

この程度のことで救われるんなら世話ないですよ。
兎穴に落ちても不思議の国には辿り着けねぇし、豆を育てても雲の上まで辿り着きません。
物語は所詮物語、夢と現実の区別くらいつくでしょう。


カレリア・リュエシェ
【POW】
救いをちらつかせ、足掻く姿を楽しんでいるのか悪趣味な。

立ち寄った村で本のことを聞いた。
謎を解きにいった者が戻ってこないと依頼され探しに来た、という建前で遍歴騎士として館を訪れる。
入り込めたら人に尋ねたり、屋根裏や地下室がないか探そう。

問題は謎解きか。苦手なのだよな……。
答えは『good morning good night』、「おはよう」と「おやすみ」。
不完全な合言葉を見ての勘頼り。自信はない。
なにしろ朝3人夜8人が単語作成に関わるんだろうくらいしか解らない。
騎士は夜と掛けているのだろうが、王が3人の部分はサッパリ。

いかん。熱が出る前に、人がいたら入力前に相談を持ちかけるとしよう。


サンディ・ノックス
どんな救いを求めて館に来た人物を演じようかな
そうだな…「多くの人を救いたい、それが自分の救いになる」と願う聖者ということにしよう
聖者風の黒の衣服を着ていく

ヒントが多いから謎としては易しい
謎解きの形にして解いた満足感と救いの信憑性を上げているのかな
敵は狡猾な奴かも、警戒したほうがいいかもね

騎士も夜も「ナイト」
あとはその言語に沿って考える
不完全な合言葉は小文字表記、円卓議会は11人だから空白は不要

解答入力キーには『goodmorning』と入れる

潜入後は不安げに周囲を見回しつつ
「謎は解きました、救ってください!」
と懇願するように声をあげる
一般人らしく振る舞えば住民に起きたこともすぐわかるかなってね


黒蛇・宵蔭
朝を選んだ王と円卓を作り、騎士ではない騎士を置き。
合い言葉は『goodmorning』
正解していればいいのですが……

無事中に侵入できたならば周囲を窺い。
館内部で動けるのかは不明ですが、無理の無い範囲で人を探し、見つけられたならば話でも。
どういう経緯で本を受け取ったのか。
まあ、簡単な世間話のようなもの……追求されたくない方もいるでしょうけどね。
私自身は住処を追われた旅の果てで、としておきます。

救いを求めて、知恵を絞って扉を開いた方々。
如何なる形であれ、その希望を摘み取るのならば、なかなかに残酷。

思わせぶりな物語をばらまき、何を目論んでいるのでしょうか。
さて、良き朝を迎えられる夜となるように。



●ダイメイヲヨクミテ、ジュウニンハ
 館の扉の前までやってきた火土金水・明(人間のウィザード・f01561)、雲烟・叶(呪物・f07442)、カレリア・リュエシェ(騎士演者・f16364)、サンディ・ノックス(闇剣のサフィルス・f03274)、黒蛇・宵蔭(聖釘・f02394)の5人は扉に掛けてある木目調の板をじっと見つめていた。

『モノガタリのカイトウを入力セヨ』

 木目調の板の下の方には不釣り合いな電子機器が設置されており、入力画面とキーボードが置かれていた。どうやら、此処に入力するらしい。
「ヒントの文字で分かっているのは【gdmrig】の六文字ですか…」
「でも、所々にヒントが多いから謎としては易しいね」
 火土金水が呟いた言葉に頷いて答えたノックスは、トントンと人指し指で木目調の板を軽く叩く。謎解きの形にして、解いた満足感と救いの信憑性を上げているのかもしれない、だとしたら敵は狡猾な奴かもしれない。警戒は怠らない方が良さそうだ。
「謎解きは苦手なのだよな……」
 リュエシェはそう言いつつ思考を巡らせるが、やはりよく分からない部分も多い。王が3人──その部分はサッパリ分からない、思いつかない。不完全な合言葉を見て勘頼りでもいいが、正答となるかは不安だ。リュエシェは他の猟兵にも意見を求めることにする。
「特にこの『王は3人いる』という部分が、理解に及ばなくてな」
「……その部分だったら“王”って文字は“おう”じゃなく、“おー”って読んだ方が分かるとおもいますよ。
 そう読むと自ずと分かる。つまりは、O(王)が3つあるってことですからねぇ」
 彼女の疑問に答えたのは雲烟だった。リュエシェは雲烟の説明で理解したようで、礼を述べる。
「いやいいですよ、お礼なんて。
 まあ、間違えたからって死ぬ訳じゃあねぇんで、気楽にやりましょう」
「確かにそれもそうだな…。気負わずにやるか」
 猟兵たちが今、現時点で分かったのは【gdmrig】にOが3つ入るという事だ。火土金水は、このOがどこに入るのだろうと考えていた。『朝』と関係するのであれば、なんとなくだが分かりそうな気もするが。
「Oを入力する箇所、ですか。なら王の言葉を考えてみましょう。
 『朝』と答えたのは3人だった。順番にすれば2、3、6人目です。で、あるのならOを『朝』に【gdmrig】を他の空いた箇所に代入して見れば分かるのではないでしょうか?」
 黒蛇はそう言って手際よく、分かりやすいように紙に記していく。

『1人目:夜 g
 2人目:朝 o
 3人目:朝 o
 4人目:夜 d
 5人目:夜 m
 6人目:朝 o
 7人目:夜 r
 8人目:夜 i
 9人目:夜 g
 10人目:夜
 11人目:夜』

「書き記していくと、こうなりますね」
「でも、これだと合言葉の完全体が11文字だとしても文字があと2つ必要で合言葉は不完全なままですね?
 普通に考えれば『朝』を「goodmorning」に、『夜』を「goodevening」と変換して、この内3人の王が居るのは「goodmorning」の方なので、合言葉はgoodmorningなのかとも思ったのですが。
 騎士の件は少し理解し難いのです」
 火土金水は頭を捻って、書かれた紙をじっと見る。ノックスは火土金水の持っている黒蛇の書いた紙と、本の内容を交互に吟味していた。
「騎士からの件が気になるのであるのなら、
『やってきた私は円卓議会の役員であろう騎士の間に座る。
 私は9番目の席のようだ。』
 の文に注目したらいいんじゃないかな?
 P.S.の部分もヒントにして考えていくと、その解答も出てくる筈だよ」
 そう言ってノックスは本の文面をなぞる。「私」はつまり9番目の席に座ったのだ。私を英語で「I」と仮定してみようか。ノックスは黒蛇が書いた用紙を丁寧に手直しする。

『1人目:夜 g
 2人目:朝 o
 3人目:朝 o
 4人目:夜 d
 5人目:夜 m
 6人目:朝 o
 7人目:夜 r
 8人目:夜 ×
 9人目:夜 × i
 10人目:夜 g
 11人目:夜』

「成る程。私を読み解けば『I』となり、『I』は9番目だから9つめの場所に来る、ということか……だが待て、騎士の件はどうした?」
 リュエシェは納得したようで軽く頷いてみせるが、騎士~の件については何も解決していない事に疑問符を浮かべていた。
「私は騎士であってそうでないもの(knight≠night)の間に座る。
 つまり、nとnの間に私が来る──私=i(I'm)っていう事です。
 もう私(I)の場所は9番目って分かってますから、8番目と10番目に(N)を入れちまえば、合言葉の完成ですよ」
 雲烟はそう言って、更に紙に書かれた文字の羅列に手を加える。

『1人目:夜 g
 2人目:朝 o
 3人目:朝 o
 4人目:夜 d
 5人目:夜 m
 6人目:朝 o
 7人目:夜 r
 8人目:夜 n
 9人目:夜  i
 10人目:夜 n
 11人目:夜 g
              A.合言葉は「goodmorning」』

 解答を見つけた5人の猟兵は入力キーボードに手を伸ばす。一つ一つ間違えがないよう、よく確認しながら打ち込んでいく。「OK?」と表示された画面に「YES」と答えれば、正解かそれとも───?固唾を飲んで見守る猟兵たち。
「これで答えがあっていればいいのですが……」
「大丈夫、5人で出した答えだきっと正解だ」
 火土金水の不安そうな声にリュエシェは、大丈夫と語気を強めて言う。そして、画面がぱっと移り変わったそこに表示されていたのは────。

『Success!』

 正解を表す英単語だった。その瞬間扉の施錠が解除されたか、カチッと音が鳴る。
「正解──みたいですねぇ」
「ええ、そのようです。先ずは一安心と言った所でしょうか」
「此処からが、問題だね……何しろ情報が出回っていない、未踏の地と言っても過言ではない、館の様だからね」
 雲烟、ノックス、黒蛇の3人が安堵の声を漏らしたのも束の間、注意を扉の向こう側へと向け警戒する。彼らがグリモア猟兵から聞いたのは扉に謎があるという事と、謎解きに向かった住人が次々と消えたという情報だけだ。つまり内部の情報は何一つ無い。

「何があるかは分かりませんが…入りましょう」

 黒蛇の乾いた声が猟兵たちに緊張感を与える。そして、館の両開きの扉を押せば簡単に扉は開くだろう。中からは何も聞こえない。物音が無いことから少なくとも入ってすぐに誰かとエンカウントする事は無いだろう。
 ギィィィィ。
 古くなった両開きの館の扉が木の軋む音を立てながら開く。館の内部は───真っ暗であった。何も見える事のない深淵を覗いているかのような気持ちの悪い暗闇。5人が全員館の中へ入ると、背後にあった扉は勢いよく閉まる。ただ一つだけあった光源も何も無くなる。そして、館のガス灯がひとりでに付いていく。
 まるで君たちを誘うように───。

●モウモクノオカン
「(不気味、過ぎやしませんかね?これは正に“異端”だと…“異常”だと言った方がいい。
 それに何と言っても───)」
 『悪趣味だ』、と雲烟はその言葉を思考を飲み込む。どうにも此処にいると生きた心地がしない。肌寒いようなその空間に嫌気を覚えつつも、雲烟は喚ぶ。
「おいで、お前たち」
 契約した管狐は煙で実体化されて、喚び出される。【招来・管狐(テマネクユビサキ)】によって喚び出された管狐は、四方六方へと散り散りになって消えていく。
「(嫌な感じですね、こう何か全てが崩壊してしまうような…そんな嫌な感じ……ああ、もう嫌だ、嫌だ。
 こんな不気味な所に来ちゃったからですかね?兎にも角にも、管狐が住人や痕跡を見つけてくれれば良いんですけどね」
 あの『謎』程度で救われるのであれば、誰も苦労しないで暮らせる。そんな馬鹿げた良い話がある筈もない。兎穴に落ちても不思議の国には辿り着けなければ、豆を育てても雲の上まで辿り着くことはない。
「物語は所詮物語、夢と現実の区別くらいつくでしょう」
 そんな事をポツリと呟く。
 それが真っ当な者であるのなら──という事だけど。

●シンジツヲシルノハ
「住人……は探しても全く見当たりませんし、静か過ぎる気がします」
 館を見回しながら火土金水は手掛かりを探す。館の中は思ったよりも豪勢で、大きなシャンデリアと高価そうな壺、シルクのカーテンやペルシャ絨毯のような豪華な作りの絨毯など、貴族が住んでいた館であると、安易に憶測出来る。普通ならば素敵な館であるが……ただ、ここの部屋の空気は重い。
「(心なしか、他の方々の顔色も良くない……気がします)」
 嫌な雰囲気は此処にいる猟兵全員が感じ取っているようで、緊迫した状況が続いている。使い魔のクロも何かを感じ取ったのか威嚇するように火土金水の前に立つ。
「(調査しなくては。でなければ真実は掴めませんから)」
 七色に輝く不思議な杖をぎゅっと握り直して、館の部屋を隈無く調査する。

 知ることも知ろうとすることも悪い事じゃない。
 まあ、そのシンジツを受け入れるだけの器が在るか、それだけの事。
 ───其れが希望でも絶望でも、ね。

●デンドロビウム
「こうやって……こうやって救いをちらつかせ足掻く姿を楽しんでいるのか悪趣味な」
 悔しそうに呟くリュエシェ。立ち寄った村から本の事を聞き、謎を解きに行った者が戻って来ないと依頼され探しに来た、という建前で遍歴騎士として今潜入している彼女は、騎士らしく堂々と歩いていく。
「(この場所……特に人が居たような形跡が無さすぎる)」
 不気味な空間を見回しながら、そんな事を思っていた。確かに、靴跡すらなければ何かに触れた跡もない。住人が行った時、少なからずとも雨が降っていた時があったのは基本情報として、リュエシェにはあった。だが、そうであれば、この館の床は泥だらけになる筈、それがないという事は……?
「いいや……まさか此処に来ていないなんて事は無いだろう」
 頭を横に降って、館内を歩き回る。どの部屋も全くの無人で人の気配が何1つない事に疑問を抱きつつ、警戒をしながら進む。
「(屋根裏や地下室があれば……きっとそこに何かがある筈)」

 真新しい水の入ったデンドロビウムを飾る花瓶が、部屋全てを彩る。紫の花は、不気味に笑うのだ。
 それが彼らの求める───欲望だから。
 欲望が満たされた彼らは嬉しくて、嬉しくて堪らないという風にただただ笑う。
 
 彼らが何者なのかは未だに不明だ──けれど、間違ってはいけない。
 人としての倫理を踏み外してはならない。出すぎた欲望は、自身を殺す。

●イノチノアリカ
「謎は解きました、救ってください!」
 そう救いを求めるノックスは、声を大にして懇願する。きっと此処の『謎』を解き明かした住人たちも、同じようにしただろうから。だが、そう懇願しても何も起こる気配がない事は明白だった。
「(……ふむ、気付かれた、かな?気付かれるなんて事が無いようにしてる筈なんだけどね)」
 不安げに周囲を見回しながら、またもう一度、助けを求めるように声を上げるノックス。『多くの人を救いたい、それが自分の救いになる』と願う聖者を演じながら、聖者風の真っ黒な衣服を着た男は歩き回る。煩いくらいに、切羽詰まったように何度も何度も、「お願いします、救ってください!」と声を上げ続ける。それがノックスが考える───誘引作戦だ。
 キラッ。
「(?……今何か一瞬光った気が)」
 ノックスはその場所に近づいていく。どうやら床の大理石に嵌められた金属の枠のようなものがキラッと光ったらしい。その金属の枠は────。
「(───これは)」

 救いを求める者だけを欲しがっているのだから、自ずと彼らの求むる事は分かってくる。
 さて、此処には何を求めて来るのであろうか?

●ルロウノタミ
「(思わせぶりな物語をばらまき、何を目論んでいるのでしょうか)」
 そう熟考して居たのは黒蛇だ。人を探すが、やはり黒蛇も人の気配が無さすぎる事には不信感を抱いているようで、警戒を解かぬまま辺りを見回す。
「(館の中を自由に動き回れるという点は良かったのですが……逆に、何も無さすぎて怪しい)」
 不自然過ぎる位に何も起こらない。警戒をし過ぎだと言われてしまえば返す言葉もない。が、何も起こらないと言うことは、本当に何も無いか、実は潜んでいる何かが居るのか2択に絞られるのみだ。どういう経緯であの物語の本を受け取ったのか、それすらも分からない。
「(救いを求めて、知恵を絞って扉を開いた方々。
 如何なる形であれ、その希望を摘み取るのならば、なかなかに残酷)」
 希望と絶望は表裏一体。それを分かっているが故の行動か、彼らの目的は未だ不明で、暗雲が立ち込めているかのようだった。
 黒蛇がある部屋に入ると、そこには異臭が漂っていた。何かの腐敗臭だろうか?気持ち悪くなるくらいの腐敗臭。だが調べた限り、この部屋には何も無い。死体はおろか、人っ子一人の姿さえ無いのだ。
 では、何処からなのだろうか───?

「さて、良き朝を迎えられる夜となるように」

●解答と真実とその悪意
 5人が全員集まって、情報共有をする。猟兵たちが見つけた中で目ぼしいモノはたった一つだけ。
「……成る程、地下通路か」
「これは益々怪しいですねぇ」
 リュエシェが大理石に付いた銀の取っ手を引っ張り上げる。そして、地下へと続く階段の先が見えない暗闇を覗き込んだ雲烟は、苦笑いしながら言葉を漏らす。
「異臭が、凄いね……」
「ええ、私が行った部屋からもこの腐敗臭がしましたから…ですが、此方の方が些か異臭が酷い」
 顔を怪訝そうに歪ませてノックスと黒蛇が話す。此処を進まなくては何も分からない。猟兵たちは嫌な予感が頭を過るのを、考えないようにしていた──それは、消えた住人が。
「死んでいるかも知れない。ですが、私たちに出来る事をやりましょう?」
 火土金水がそう言うと七色に輝く杖の輝きを頼りに、地下通路を進んでいくのであった。進んでいけば突き当たりに、扉があるのが目に入る事だろう。この先が残酷な、絶望の光景でありませんように。そう思いながら扉の取っ手に手を掛ける。

 ガチャ。

 扉の開く音だけが鮮明に聞こえる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『屍血流路』

POW   :    再び動き出さないよう、ひたすら破壊し燃やせばいいだろう。。

SPD   :    最奥にいる元凶を倒せばあるいはすべて解決できるだろう。

WIZ   :    再生の仕組みを解明すれば怪物を生み出せなくできるだろう

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●幻想の果て
「は………………?」

 あまりの光景に言葉を失う猟兵たち。
 扉を開けばまたそこは同じような通路となっていた。ただ一つ──首の無い死体が転がって居る事以外は。
 君たちが部屋に入れば、転がっていた屍はぐらりゆらりと動き出す。何処から来ているのかは分からない。君たちは直感するだろう、この屍は消えた住人のものでは無いかと。考えたくはなかっであろう最悪の光景。

「………!」

 君たちが足を踏み入れれば、金槌で頭を打たれたような激しい頭痛が襲う。痛い、痛い痛い痛い痛い痛い!痛みで視界がぐらつく。そして、突然痛みから解放される。君たちの目には救われた幸福な情景が映る事だろう。

 それが幻覚だと知らずに踊るか、幻覚を破って進んでいくのか───それは君次第だ。



●追記
 第2章では「貴方が思う最も幸福な情景」が幻覚として映ります。そして、「貴方が思う最も幸福な情景」を映し出すことによって、もういいやともう何もしなくとも良いかと諦観させようとしてきます。

 「貴方が思う最も幸福な情景」をプレイングに描写してください。幻覚から逃れる方法は、何度も再生し動く屍をどうにかするしか方法はありません。

 幸福とは人各々、貴方が死ぬ事こそが幸福だと思って居るのなら『死』を体感する事が出来る。
 一つだけ注意を───それを願えば一生目を覚ますことは無いでしょうが。
サンディ・ノックス
最も幸福な情景:
傷つけたであろう故郷の人々
利用した多くの人々
今の大切な人達
ここは俺の心に刻まれた人達が共に幸せそうに暮らす街

でもこれは夢だ
先程見た死体こそ悪夢だったと錯覚しそうになるけど
目の前で「もう傷つかなくていい、楽しく暮らそう」と言っているヒトは…
彼は俺の幸せをなにより願ってくれるけれど現実から逃げるよう唆したりはしない!穢すな!

自身の鼓舞も兼ねた叫びで死体を認識できるようになればよし
できないなら
幻覚がこの場に留めようとさせる=離れればつけ入る隙ができる
であっていてくれと街から全力で離れる

死体を認識できたら
…死体と割り切っていてもやりたくはないけど動けなくなるまでUCでバラバラに切り刻む


雲烟・叶
嫌ですねぇ、死屍累々じゃねぇですか
全滅ですか、これは

ッ……!
痛みにも声は上げず、唇を噛み締めて頭を手で押さえて悲鳴を飲み込んで……ふ、と痛みが消える。
映し出された世界は、ただの穏やかな世界。
ひとと触れ合って、笑って、道具として大切に愛されて使われる夢。
その手に触れられて、良き道具だと使って貰える白昼夢。
呪詛も怨嗟もなく、祝いの品として造られた通りに祝福を齎す道具として──……「馬鹿馬鹿しい」

吐き捨てる。
夢は夢だ。
もうとっくに思い知って、諦めてますよ。そんなもの。
そういうのはね、まだ夢を見ていられるかわいいお子さんたちにしてやってくださいよ。
呪具は夢なんぞ見ねぇんで。

おいで、呪血馬。
蹴散らせ。



●夢現と魅せるまほろば
 扉の向こう側──それは幸福に満ち溢れた幻想を映す、誘引の楽園。サンディ・ノックス(闇剣のサフィルス・f03274)と雲烟・叶(呪物・f07442)はそんな紛い物の夢を見る。

「嫌ですねぇ、死屍累々じゃねぇですか。
 全滅ですか、これは」
 紫煙を燻らせて、眉を訝しげに歪めた雲烟は死体の山の通路を見、辺りを見回す。そこは首を失くした死体死体死体………そんな情景が目に映る。
「ああ……生きてる者は──…居なさそうだね」
 難しい顔をしたままノックスは雲烟の言葉に反応する。そして、ぐらりと動き出す屍を視認したその瞬間。ズキンズキンと頭が割れるような痛みが二人を襲う!
「「ッ……!」」
 激痛にも声を上げず、耐える二人の見る幻想は───。

 この声は───なんて懐かしい。
 自分が傷付けてしまった故郷の人々と、利用した多くの人々、今の大切な人たち。笑い声と笑顔の絶えない幸せな空間。そこには幸せが…幸福の終着点があった。
「サンディ」
 名前を呼ばれる。ああ、先ほどまで見ていた死体の山こそ悪夢だったのだ。そうだ、ここには幸せがある。
「もう傷つかなくていい、楽しく暮らそう」
 そうだね。もう傷付かなくて良いんだ。
 でも───やっぱりこれは俺の望む終着点じゃない。これは夢だ。「楽しく暮らそう」と、そう言ってくれたヒトは…彼は俺の幸せを何より願ってくれるけれど、現実から逃げるように唆したりは───。
「しない!
 お前たちが、俺の記憶に眠った彼を…彼等を勝手に利用して穢すな!」
 咆哮が響く。瞬間、ノックスが彼と呼んだ人物も、人々も全て首を失った屍へと変わっていく。いいや、これは変わっているんじゃない。戻っているんだ。そこにあった幸せな光景も全てドロドロと溶けていくように失われていく。
「(やっぱり……全て嘘まやかし物か、そんな…そんな都合のいい夢を利用して……最低だ)」
 グッと暗夜の剣を握る手に力が入る。もう終わりにしよう。せめてもの苦しまないように、安らかな眠りを。
「さぁ、宴の時間だよ」

 一方、雲烟は苦痛に顔を歪め、頭を手で押さえていた。悲鳴を飲み込むように口を閉じ、唇を噛み締める。
 だが、ふっと頭が軽くなったように感じる。あまりの痛さに目を瞑ってしまっていた雲烟が、瞼をゆっくりと開けるとそこには。

 笑い声、笑顔。その身に触れて、愛されて、大切に大切に使われる夢。道具としての最高の幸福がそこにはあった。ただの穏やかな光景であろうとも、それは自分が最も欲しかった幸福な時間だ。
「本当に…本当に良い品だ」
 ふふ、と微笑するのは自分を使うその人。その手に触れられて、良き道具だと使って貰える、そんな白昼夢。呪詛も怨嗟もなく、祝いの品として造られた通りに祝福を齎す道具として───…。
「馬鹿馬鹿しい」
 吐き捨てたその言葉には、諦めと確かな信念が込められていた。
 夢は夢だ。もうとっくに思い知って諦めてますよ。そんなもの。そういうのはね、まだ夢を見ていられるかわいいお子さんたちにしてやって下さいよ───。
「呪具は夢なんぞ見ねぇんで」
 ゆっくりとまた、瞼を閉じる。この幸福が夢だと切り捨てて。
「おいで、呪血馬。
 ───蹴散らせ」

 長煙管「雲烟」の紫煙を燻らせ、天駆ける首無し汗血馬に騎乗した雲烟は通路の最奥地点まで駆けていく。道を切り開くように、ノックスは破壊の限りを尽くす。
 【解放・宵】、これは黒剣で対象を攻撃するノックスの技だ。素早く斬り込み、そしてバックステップで屍の攻撃を回避しつつ、破壊していく。
「(ここはあんたに任せますよ…)」
 雲烟は、【招来・呪血馬(テマネクユビサキ)】によって煙で実体化させた汗血馬に騎乗しながら、急いで最奥まで駆け抜けていく。屍が動かなくなるまで、何度も何度も破壊するノックスの様子を横目に雲烟は駆ける。
「(多分、この屍は何度でも生き返る…生きる屍だ。
 なら、破壊するまで!
 せめて、彼が…雲烟さんが最奥に辿り着くまで、引き付けよう))」
 ノックスは最奥へと向かう雲烟の背中を、確認すると刻み込む。破壊して、それでも立ち上がるのであればまたもう一度破壊。何度も何度も同じことを繰り返す。

「さ、くたばって貰いますよ……自分、今機嫌が悪いんで」
 最奥の地点に居る屍を、周辺の屍ごと紫煙が包み込んでいく。霧のように、靄のように広がるそれは、屍たちを再起不能にしていくのだ。

 夢現と魅せた幻想は、二人には紛い物にしか映らない。それがどんなに現実的であろうとも、事実は小説よりも奇なりと言うように、きっと彼等を待つ幸福な情景は違う。

 私たちの想像の範疇を越えた、そんなまほろばの筈だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カレリア・リュエシェ
お茶会が開かれている。
両親、家で働いていた者、騎士物語の主人公、周囲の街が有志で作ったという自警団のなりをした者までが参加している。
誰もが親しげに会話し、時折笑い、母の手作りの焼き菓子をつまむ。
私を待つように人の輪の一部が空いていた。

ひどい光景だ。

無性に喚きたいが幻覚を破るのが先だ。
自分を傷つける痛みがいい。あれを見続けるより遙かにマシだ。

【怪力】で周囲にいる動く屍を手当たり次第に斬る。再生しなくなるまで何度でも。彼らに剣を振るうのは心苦しいが、救うすべは私にはないし、心を砕く余裕もない。

悔しい。腹立たしい。許せない。憎い。
物語の騎士らしくないが、あんなものを見せられて冷静でいられるものか!



●騎士はヴァルハラに導かん
 カレリア・リュエシェ(騎士演者・f16364)が首のない屍が蔓延るその場に足を踏み入れた途端、襲ったのは金槌で頭を殴られたような鈍痛だった。───その目で確かに見ていた光景も何もかもが、霞んでいく。音も遠ざかる。どうにかしなくては、とそう思った頃にはもう遅い。
「(………この痛み。立っていられなくなる程の痛み、とは)」
 瞼を閉じて、痛みに耐える。音も聞こえない、目も霞んで良く見えないそんな閉塞感に苛まわれていた。

「!」

 突然痛みから解放されたリュエシェは、瞳を開ける。目に映るのはお茶会の光景。自分の両親と、家で働いていた者、彼女が尊敬する騎士物語の主人公。それに加えて、周囲の街が有志で作った自警団のなりをした人たちも参加していた。
 談笑して笑い合うその光景は幸せそのもので───自分の母が作った手作りの焼き菓子をつまみながら、親しげに話す。そしてその中に、リュエシェが座るのを待っていると言わんばかりに人の輪の一部が空いていた。
 なんて────。

「ひどい光景だ」

 ぐしゃ。屍が見えていない筈だのに、リュエシェは手当たり次第に斬っていく。無性に喚きたくなる。この幻覚からどうにか逃れなくては……それだったら自分を傷付ける痛みがいい。あんな幸せな光景を見続けるよりも遥かにマシだ。

『どうして……?』

 斬られた母が悲しそうにリュエシェを見る。嫌だ嫌だ嫌だ……その顔で声で、私を引き留めるな。私には救う手だてがない、心を砕く余裕も。
 心苦しそうに、屍を斬っていく。何度でも立ち上がる屍を再起不能にするまで────。

『カレリア。どうしてこんなこと───』

 まただ。悔しい。腹立たしい。許せない。憎い。人の幸福を勝手に利用するだなんて、最低だ。だってあの人たちは自分にとって大切な人たちで───もうこの自分がいる現では会えない人たちなのだから。物語の騎士らしくありたいが、あんなものを見せられて冷静で居られる筈もない。

「はぁっ!」

 振りかぶった剣先が屍を掠めて、リュエシェは猛追を止めることなく、斬り込む。飛び散る屍と消える美しい幸せな光景。彼女は正義を振るう。譲れない信念の下に───。

 騎士が騎士らしくある為に、守るのだ。
 生き抜いて、自分を抑えてでも守り貫く。

 祈るように剣を振るうその姿は───さながらワルキューレのようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒蛇・宵蔭
【血梅】
痛覚を何処か他人事のように受け止めながら。
この生業を始めてから知り得た存在が不意に強く浮かび上がる。

桜色の髪をもつひとと、金と翠の髪をもつひと。
共に戦場を駆ける。
いや、きっと彼ら「と」戦ってみたいと考えている。
この呪われた血を何処までも深く覚醒させ。
苦痛を刻む鉄鞭を以て……

なんて。
この類の呪いは効きが悪い身体でして。
鉄錆の刃を握り、骸を薙ぎ払いましょう。

おや、お二人ともいらしていたのですね。
困りました……私、情けない顔をしていませんかね?

幸福を与えられ、そのまま死ぬのは救いかもしれませんね。
けれど遠慮します。救いは、我が身に不相応なので。

どうも、ぬるま湯よりも悲鳴が好きな性質でして。


シノア・プサルトゥイーリ
【血梅】
転がされてばかりの屍では、
どちらの寝覚めも悪そうね。さてーー……

首を振れば教会の鐘の音が響く穏やかな幻覚の向こう、猟兵となってから出会った二人の姿が見える
戦場にて頼もしい二人
駆け抜けるのはひどく心地よくて、幸せで…
二人を最後に見て、灰となって消えられれば……

ーーいいえ
幸せな夢は私、向いていないもの。
終わりが来るにはまだ早い
刃を抜き払い、骸を斬り捨てましょう

困ったの?(ゆるり首傾げ
ーーいいえ、きっと

幸福な終わりは微睡みに似るのでしょう
けれど、私には向いていないもの

凪紗の視線に微笑み頷き
えぇ、ぬるま湯よりも血の通ったものの方が私、好きよ
(二人と共にある現実の方が、ずっと


蓮条・凪紗
【血梅】

部屋の惨状に軽く舌打ちするも。
直後、頭痛に膝を付き。

実家の神社の境内に設けた宴の席。
桜が咲いて散り、蛍が飛び交い、紅葉を見つめ、積雪を踏み締める。
異世界の友人二人が四季の色彩に目を見張るの見つめる穏やかで心地よい時間――

「んな訳あらへんがな」
あの二人、穏やかな幸せが似合うタマやあらへんのは知っとるし。
血生臭い世界以外を知って欲しい思うんはオレのエゴや。
「愚者(フール)みたいに幸せな脳味噌で崖から落っこちかけてる暇や無い」
式神顕現、愚者。幻影の先に光の道が延び、幻覚を割り砕く。

「悪いけど刺激の無いぬるま湯はオレら好きやないんよ」
(なあ?と二人に同意求める視線)
愚者の放つ光の道で敵を絶つ。



●偽りの幸福が齎すのは
 黒蛇・宵蔭(聖釘・f02394)、シノア・プサルトゥイーリ(ミルワの詩篇・f10214)、蓮条・凪紗(魂喰の翡翠・f12887)の三人がこの場に足を踏み入れる。通路の惨状は酷いものだ。辺りを見れば首なし死体が転がり、所狭しと死体の山が積み上げられていた。
「転がされてばかりの屍では、
 どちらの寝覚めも悪そうね。さてーー……」
 プサルトゥイーリが、眉を潜めながら気分が悪いと言わんばかりに辺りをよく、見渡していた。その横でこの惨状を目の当たりにした蓮条は、小さく舌打ちする。
「「「!」」」
 三人の足取りは重い。だがその時、激しい激痛が彼らを襲うのだ。あまりの痛さに目を閉じれば、暗転した世界に何かが、何かの映像がフラッシュバックする。それは───。

 多分、痛いのだろう。そう感じた時には素でに黒蛇の目には違うものが見えていた。桜色の髪を持つひとと、金と緑の髪をもつひと。彼らの背中が近くにあって、心強く感じるその戦場を駆けていく瞬間(とき)。
「(きっと彼ら『と』戦ってみたいと考えているのでしょうね)」
 何処か他人事のように、今自分の目の前で起こっている事を把握する。自身の呪われた血を何処までも深く覚醒させ、苦痛を刻む鉄鞭を以て────。
 なんて。
「この類の呪いはあまり効きが悪い身体でして」
 黒蛇にとっては幸福な情景だったのかも知れない。この情景を享受するのか、否定し続けるのか───いいや。きっと彼はどちらでもないのだろう。俯瞰から見たように自分の感覚を把握する彼にとっては、これは『呪いの類』なのだろうから。
 鉄鞭の刃を握って、薙ぎ払う。迫り来る骸を次々に殲滅していく。
「幸福を与えられ、そのまま死ぬのは救いかもしれませんね」
 目の前を血飛沫が舞う。有刺鉄線のような鋭い刃が骸の身体を打ち付けて切りつけて、ズタズタにしていくのだ。
「けれど遠慮します。救いは、我が身に不相応なので」
 それは黒蛇が、彼が───。
「どうも、ぬるま湯よりも悲鳴が好きな性質でして」
 悪い呪いは、ゆっくりと消えていく。赤い鮮血の海に立った黒蛇は静かにそう言葉を紡ぐ。

 痛みから逃れるように首を振るう。はっとして、プサルトゥイーリは目線を前に戻す。此処はもう既に教会の鐘の音が響く穏やかな幻覚の向こう。彼女の前に背を向け立っていたのはあの頼もしいひとたち───猟兵となってから出会った二人の姿。戦場を駆け抜けるのはひどく心地が良い。これを幸せと言わずして何と形容しようか。
「(二人を最後に見て、灰となって消えられれば……)」
 仲間の為に命を張ったこと、命を預けられるような頼もしい仲間を得たこと。それだけで幸せだから、此処で朽ちるのも悪くはない。
「───いいえ」
 帯刀していた黒剣を抜刀する。鞘から抜き出された刃は骸を斬る。プサルトゥイーリの言葉と共感するように切り捨てられる死体の残骸。
「幸せな夢は私、向いていないもの」
 閑かに呟いた言葉は、空に消えた。終わりが来るにはまだ、早すぎる。「困ったの?」と、ゆるりと首を傾げればまた「違う」と否定するのだろう。
「──いいえ、きっと。
 幸福な終わりは微睡みに似るのでしょうけれど、私には向いていないもの」
 ただ、それだけ。
 プサルトゥイーリは夢と信じきっていた。これは現実ではないのだと解っていたのだ。こんな都合の良いものは夢くらいでしかないのだと、そう思っているのだろうか。
 ───こんな悪い夢から覚めるように、プサルトゥイーリは幸福な情景の裏に潜んでいた骸を斬り棄てる。

 意識が朦朧としていたのが晴れたと思えば、蓮条の目の前に映るのは自身の実家の風景。蓮条が直ぐに気付いたのは神社の境内に設けた宴の席。
 春。満開に咲く桜が自分たちを見下ろして、やがて散る。
 夏。淡く光る蛍が飛び交い、真夏の夜を美しく飾って。
 秋。紅葉を見つめれば、少し鼻を掠めたのは微かな金木犀の香り。
 冬。積雪を踏みしめて、白一色に広がる白銀の世界を眺める。
 異世界の友人二人が四季折々の色彩に目を見張るのを見つめる。───こんな穏やかで心地の良い時間がずっと、ずっと続けばいいと。
「んな訳あらへんがな」
 溜め息を落として、幸福な情景を否定する。蓮条はよく知っていた。理解していた──あの二人の事を。
「(穏やかな幸せが似合うタマやあらへん)」
 血生臭い世界以外を知って欲しいと思っていたのは自分のエゴだということも。よく解っている。
「愚者(フール)みたいに幸せな脳味噌で崖から落っこちかけてる暇や無い」
 そう言って蓮条は【式神顕現「正逆之秘霊」(サモン・アルカナヴィジョン)】を発動する。タロットから具現化した幻影の先に光の道が伸びる。その光の道は幻覚を切り裂き、割り砕く。

 悪い夢から覚めた三人は、現実───骸の海の中に立っていた。驚いた風もなく飄々として、或いは此れが普通であるとなんでもない風に。蓮条は二人を横目で見る。
「悪いけど刺激の無いぬるま湯はオレら好きやないんよ」
 プサルトゥイーリはそんな蓮条の視線に気づけばふっと微笑んで頷く。
「えぇ、ぬるま湯よりも血の通ったものの方が私、好きよ」
(二人と共にある現実の方が、ずっと)
 二人の会話を聞いていた黒蛇は、少し驚いたような困ったようなどっち付かずの表情を見せていた。
「おや、お二人ともいらしていたのですね。
 困りました……私、情けない顔をしていませんかね?」
「大丈夫や。情けへん顔なんてしてへんよ」
「そうね。心配しなくとも大丈夫よ」
 快活に笑って言う蓮条、可笑しいと言うようにくすりと微笑むプサルトゥイーリ。その二人の言葉に少し安堵する。これこそ、偽りでない本当の幸福だろう。彼等にとってはあの情景は偽りの幸福(もの)でしか無かったわけだ。

 偽りの幸福が齎したのは、彼ら自身への侮辱だったのだ。
 人一人を完全に理解するのは難しい。一生かかっても分からない事を夢で、それも偽りの幻想で映し出されてたまるものか。

 三人は共にある喜びを感じながら、前へ進んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ペンタ・サーペント』

POW   :    断頭斬首
自身に【首を刈り取る執念】をまとい、高速移動と【首を狙う不規則な斬撃】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    五枚舌の白蛇
【弱者を嬲り殺す愉悦】に覚醒して【五枚の舌を持つ巨大な白蛇】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    貪り喰らう白蛇の群れ
【首を斬り取られる恐怖】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【亡者の首】から、高命中力の【毒を持つ白蛇の群れ】を飛ばす。

イラスト:ヤマモハンペン

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠オクタ・ゴートです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●狂乱に満ちた快楽
 蠢く屍の転がる、不可思議な通路を突き当たりまで進む猟兵たち。突き当たりまで行くと、取っ手と金属部分の錆びた扉があるのを目にするだろう。鍵はかかっておらず、覗き窓もない。他の脱出経路もない今、この扉の向こうへと進む他、道はないということはこの館を調べた猟兵には分かっている筈だ。
 ギィと木の軋む音が静寂を引き裂く。開けた扉の向こうは───真っ暗だった。
「な、何だ?」
 動揺した猟兵の一人が声を上げる。部屋が暗くては調査などもっての他だ。猟兵が明かりを灯すと応接間だと分かるだろう。応接間は、来客を迎え入れる為の部屋だ。だからこそ綺麗でなくてはならないだろう───普通であれば、だが。
「あ、あああああ!なんて事だ」
「う、嘘でしょ」
 猟兵たちが見たのは、頭部だけが鎮座した真っ赤な応接間だった。応接間にいたのは、人間の様な身体を持ち、蛇の頭をした足が鳥のようなオブリビオンだった。そしてその隣に居たのは救いを求めてやって来た村の住人、たった一人。

「遅かったですねェ」

 ニタリと薄気味悪く嗤うオブリビオン。猟兵の存在に気が付いた住人は、悲痛な声を上げて逃げるように猟兵たちの元へ行こうとする、が。
「た、助けて!お願いだ!助けてくれぇぇぇぇぇえええええええぇ─────……………」
 彼を助けに入る直前、猟兵たちはぼとりと何かが床に落ちるのをはっきりと目撃するだろう。悲痛な顔をしたままの状態の頭部が転がる。
 どしゃ。
 首なしの身体が床に倒れる。

「あーあ…五月蝿かった。
 ヒヒヒヒ、さっさと逝っちまえば楽だったのにナア?
 ま、コイツにゃもう用済みだから関係ないかァ!!!」

 首なし死体を蹴りながら嗤う。不快な笑みを猟兵たちに向けながら───このオブリビオンから感じるのは悪意と愉悦、そして慢侮だった。

「今度はお前たちの番だ。楽しませてくれよ……ヒヒヒ!」
サンディ・ノックス
※アドリブ、共闘歓迎

敵が何をしようと無表情

怒りは感じている
なぜこんなことをしたのだと強く感じている
でも徹底的に無視
コレはただの害獣、駆除作業をするだけだ

コイツの考え方はすごく馴染みがあるから一番効きそうな対応をしようと思っている
相手が劣勢になったら「警戒してたけど見込み違いだったなあ」
とか言って屈辱を味わわせたい気持ちもあるにはあるけどそれさえ許したくない

胸鎧を基に黒基調の全身甲冑姿へ変身
さらにコイツに相応しい存在…悪意を纏う喰らう者になってやる
「黒化装甲」発動

敵の攻撃は【オーラ防御】でダメージを抑え、【激痛耐性】も活かし苦痛も見せない
【怪力】を発揮し攻撃、同じ場所に攻撃を重ね【傷口をえぐる】



●暮れなずむ空と少年
 無言のまま立ち尽くしていたサンディ・ノックス(闇剣のサフィルス・f03274)は無表情のままじっとサーペントを見ていた。ぐしゃ、と床を濡らす血を踏みながらニタニタと嗤うこの気色悪いオブリビオンを侮蔑の目で見つめる。
「(ああ……コイツみたいな奴は本当にどうもしようがない)」
 最早、ノックスは呆れ果てていた。こんな事をする奴を許せないという怒りが沸々と沸き上がって来る。
「何だァ?怖じ気づいたか、ヒヒヒ!
 弱い癖に良く来ようと思ったなァ!」
 勝手に妄想した設定を決めつけるな。吐き気がする。そう思いながらもノックスは、ただただ冷淡な瞳で見つめていた。不愉快だと嫌悪感を示す理由は───そう、このオブリビオンの下衆な考えはノックスにとって馴染みのある考え方だった。
「(だけど、徹底的に無視だな。
 コレはただの害獣、駆除作業をするだけだ)」
 悪意だだ漏れの言葉と、値踏みする言動はノックスを益々苛立たせた。こういう奴に一番効きそうな手は……屈辱を味わわせる事だ。
「おいおい怖がるなよォ、少年!
 すぐ楽にs」
「煩い」
 ノックスは【黒化装甲(コッカソウコウ)】を発動すると、その体を悪意が変じた魔力で覆っていく。胸鎧を基に黒基調の全身甲冑姿になったノックスは、黒騎士の名を欲しいままにした出で立ちでサーペントと対峙する。極力使いたくない手ではあったが、悪意しか感じ取れない相手には持ってこいの技だろう。
 素早くサーペントの口元目掛け黒剣の柄で殴ると、もう一度構え直す。
「クソクソクソクソがああああ、舐めやがって餓鬼ィ!」
 すぐ頭に血が上ったサーペントは一心不乱に恐怖を与えようと、攻撃をしようとするも、黒化装甲したノックスには効くわけもない。有効打を上手く使えず、判断力が全く無くなってしまった相手なぞ取るに足らない。サーペントが突っ切ろうと前に踏み込むと、ノックスは後方へ少し避ける。見切って敢えてギリギリの距離感で避ける事によって視角を作っていた。
「(今だ)」
 ノックスは一瞬の隙に黒剣を潜り込ませ、サーペントの胸元を切りつける。何度も何度も傷口を抉るように攻撃を重ねていく。劣勢に陥ったサーペントへ、警戒してたけど見込み違いだったと、そう言って屈辱を味わわせたい気持ちもあったが、ノックスは何一つ言わない。
 悪意を纏い喰らうものに変じた彼は、漆黒の鎧に取り込んでしまうかのような包容力で、サーペントを包み込む。

 暮れなずむ空と同じ髪色をした少年が、『おやすみ』と呟いたのを聞いた気がした。

 まだ、刻は進んでいる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カレリア・リュエシェ
猟兵になって様々なオブリビオンを見たが、お前ほど解りやすいと楽でいい。
人々を惑わす悪を討つ騎士として迷いなく戦える。

部屋を見る限り首に並々ならぬ執着があるようだ。
ならば狙ってくる瞬間こそ好機。
【武器受け】で捌きながら断首の恐怖を【覚悟】でねじ伏せ、ワザと隙を作る。
ギリギリまで引きつけてから【第六感】で躱し、腕を狙ってUC【黒鮫】で【カウンター】。

嫌なものを見せてくれた礼だ。
二度と首を狩れないようにしてから滅ぼしてやる。

ここにある犠牲者たちで、身元が分かる者は故郷に帰してやりたい。
解らないなら屋敷ごと燃やせないか提案しよう。
炎や煙が見えれば、村々にも多少なり結末が伝わるかもしれないから。


雲烟・叶
ま、そういうこともありますよねぇ
何時でも誰かを救えるなんて幻想ですし

さて、と
それはそれとして、お仕事しましょうか
だってほら、屑に侮られたままって言うのも面白くねぇでしょう
悪意には悪意を
なんせ、こちとら呪物ですので

殺された哀れな人々の負の感情、有り難く頂きましょうか
猟兵たちの負の感情もね
この空間、餌なら山ほどあるもんでして
喰らえば喰らうほど、己の呪いはどろりと濃度を増して、重く、深く、悍ましく

【誘惑、恐怖を与える】で敵の攻撃を誘発
手に入れたい美味しい獲物に見えるでしょうか?それとも、倒さなければならない恐ろしい敵?
それに合わせて【カウンター、呪詛、生命力吸収】発動

彼らの絶望、纏めてお返ししますよ


鈴木・志乃
真っ暗だね
でもいいよ
その先には夜明けしかない

沢山の想いが漂ってるねえ
UC【旅立ち】【祈り、失せ物探し】
今まで殺された人達の全ての意志、受けとりな!

【歌唱】の【衝撃波】で耳から侵して精神を【誘惑(掻き乱せ)】

悪意駄々漏れなら
【第六感】で【見切って武器受けからのカウンター】狙えるな
鎖で【投擲、早業、念動力】で縛ったり【なぎ払ったり】しよう

【オーラ防御】常時発動


【敵UC対抗?】

お前本当に怖いものに会ったことねえな
首狩りよか恐ろしいものに私は憑かれてるんだが?

死んだオラトリオが『お前なんか嫌いだ』ってよ
アメジストの呪詛で逆に恐怖を与えられないか試す



●深淵の夜に潜む雲
「真っ暗だね」

 ニタリと薄気味悪い笑みを浮かべながら話すペンタ・サーペントの声を裂き聞こえたのは彼女───鈴木・志乃(ライトニング・f12101)の声だ。ペンタ・サーペントは不愉快だと言わんばかりに、鈴木の方へ視線を向ける。
「でもいいよ。
 その先には夜明けしかない」
 鈴木はペンタ・サーペントへ視線を向けることもなく、独白するようにぽつりと呟いていた。“夜明け”を迎えるのは何だか清々しい気分になれる。心が軽くなったような、希望が見えるような、そんな気分だ。ペンタ・サーペントが夜を産み出すのであれば、自分たちが照らす日輪となり“夜明け”を訪れさせるように。それは、自分たちが必ずペンタ・サーペントを倒す事だろうということを暗示していた。
「猟兵ごときがよくそんな事を口に出来るなァ?」
 苛立ちを隠すことはせずに、ペンタ・サーペントは睨む。そしてずかずかと鈴木の方へ近づきながら、【貪り喰らう白蛇の群れ】を発動させた。召喚した亡者の首から白蛇の群れが飛び出し、鈴木へ襲いかからんとする!
 ヒュンッ!
 が、しかし鈴木の前に何かが立ちはだかる。そして風を切る音が聞こえたかと思えば、サーペントが放った白蛇が真っ二つに斬られ、落ちていた。
「な……何が」

「猟兵になって様々なオブリビオンを見たが、お前ほど解りやすいと楽でいい」

 剣先を下に振るって、血を振り落とす。騎士のような出で立ちのその人物、カレリア・リュエシェ(騎士演者・f16364)はそう冷淡に呟く。どこを見ても悪意、悪意、悪意。悪意の塊でしかないこの非道徳的場景はリュエシェにとっては排除すべきもの。だからリュエシェは戦うのだ。
「人々を惑わす悪を討つ騎士として迷いなく戦える」
 迷いも無い、一点の曇りさえないその瞳は真っ直ぐにサーペントを捉えていた。リュエシェも鈴木も全く負けるつもりはない。二人の眼差しがそう語っていた。この絶望的な情景を見てもなお、膝を折ることも歩みを止めることもしない。
「ヒヒヒヒ……全く五月蝿い猟兵だ。
 何、直ぐに声も出ないようにしてやるさ」
 サーペントは標的を鈴木からリュエシェに変えると、ぐんと距離を詰め【断頭斬首】を使ってリュエシェの首を断頭すべく、不規則な斬撃を放つ!
「(───待っていた。お前が私の首を狙うのを)」
 リュエシェは、放たれた斬撃を受け止め捌いていく。そして十分に引きつけるとするりと躱す。タイミングと呼吸とをずらすように、サーペントのリズムを崩してその隙を狙う。カウンターを狙って【黒鮫(カリハリアス・メライナ)】で、サーペントを猛攻する。
「嫌なものを見せてくれた礼だ。
 二度と首を狩れないようにしてから滅ぼしてやる」
 刀身が鋸状になった二又の剣の殺傷力が増大し、その力を利用して剣撃を繰り広げる。
「クソっ……があっ!」
 サーペントは血をぱたぱたと床に滴らせながら、リュエシェを睨む。そんな睨みにも動じる事なく刃を向ける。リュエシェとサーペントの膠着状態が続く。

「今まで殺された人達の全ての意志、受けとりな!」

 視角から飛んで来た光の鳥、最初は一羽だったものが徐々に増えて、サーペントの周りをぐるっと囲むように飛び交う。それは嵐となって、サーペントの身動きを止める。
 これこそ、鈴木のユーベルコード【旅立ち(テイクオフ)】であった。千羽鶴から、失われた想いを引き寄せる光の鳥を放ち、対象の動きを嵐によって止める技だ。
 この千羽の鳥には様々な想いが乗っていた。薄幸、後悔、願望、嫌悪、憎悪と───それすべてが攻撃となって身動きを封じる。
「な……ヒヒヒ、こんな所で、終わる訳がない、こんな所ではなァ!
 現にお前たちはコイツらを救えなかった!
 その時点でお前らの仕事は手遅れです残念でしたァ!って事で終わってんだよ」

「ま、そういうこともありますよねぇ。
 何時でも誰かを救えるなんて幻想ですし」

 暫し、様子見していた雲烟・叶(呪物・f07442)は、そう呟いてゆったりとしたまま言葉を続ける。
「さて、と。
 それはそれとして、お仕事しましょうか。
 ───だってほら、屑に侮られたままって言うのも面白くねぇでしょう。
 悪意には悪意を。
 なんせ、こちとら呪物ですので」
 ふう、と紫煙を燻らせながら雲烟はサーペントの方を見る。鈴木のお陰で身動きが取れず、苦戦しているようだ。こちらとしてはこの状況は良い状況だ。最低限の傷で済みそうな今がチャンスだろう。
「(殺された哀れな人々の負の感情、有り難く頂きましょうか。
 ───勿論、猟兵たちの負の感情もね)」
 好都合な事に此処は負の感情の溜まり場と化しているのに気付くのにはそう時間が掛からなかった。
 だからこそ、餌は沢山ある。喰らえば喰らうほど、自分の呪いが濃くなって、重く、深く、悍ましくなっていくのだ。吐き気を覚えるような、どろりとした感覚に襲われる。これは【蠱(クラウモノ)】だ。負の感情を喰らって、自身の戦闘力の底上げをはかっていたのだ。
「!
 お前は……くれ!俺にくれ!」
 何を言うかと思えば、自分をくれと言う。恐怖よりも美味しい獲物として魅惑的に見えたのだろう。だがそうだとしても、手に入れることなぞ叶いはしない。
「彼らの絶望、纏めてお返ししますよ」
 雲烟のふかした紫煙がサーペントの鼻を燻らせる。だが、それを攻撃とも思わなかったサーペントは、大きく吸い込んでしまった為か、喉元を押さえながら苦しそうに呻く。内部から侵していくその紫煙はまさに有毒そのもの。おぞましいほどの負の感情がサーペントの精神を壊していくだろう。

「これで終わりだと思わない方がいい」

 紫煙の中から現れた鈴木は、静かにだけれど確かな怒りを込めてそう言い放つ。そして、鈴木はすうと深く深呼吸すると、言葉を紡ぎ出す。それは美しい音色だが何時もより、より一層荒々しく、だけれど繊細さも抜け目なく。そんな歌声はサーペントの耳から精神を侵していく、狂気に堕ちていくように。耳を塞いでももう遅い。
「あああああああああああ!」
「お前、本当に怖いものに会ったことねぇな」
 自分が絶対的な支配者だと信じて疑わない、サーペントに鈴木は言う。
「首狩りよか恐ろしいものに私は憑かれてるんだが?
 ───死んだオラトリオが『お前なんか嫌いだ』ってよ」
 冷酷に淡々と言い放たれた言葉は重くのし掛かる。
「何を、言って………」
 サーペントは鈴木の持つアメジストを見た途端に言葉を失う。目を見開き、怖いものを見たかのように奥歯をガチガチ鳴らしていた。

「此処で終わりだ」

 立ちはだかった猟兵がそんな言葉を残して、剣を振るったのを見た───気がした。それは、何処か見たことがあるような気がして。夜も更けきった空には星一つ見当たらないあの曇り空と良く似ている。
 彼らのその出で立ちは深淵の夜に潜む雲のようだった。

 あと少しで、深淵の夜が明ける。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒蛇・宵蔭
【血梅】
さて『話のわかる』御仁かと思えば、まったくお話になりません。
煩いというなら、くだらない遊びはしないことです。

この首が落とされることなど、恐るるに足りず。
何なら無くても我が身は動く。

司令塔は凪紗さんに任せ、鉄錆にて相手を誘導するような攻撃。
シノアさんが自由に動けるよう支援。

蛇は淡泊な味がすると聴きますが、これは美味しくなさそうですね。
ひとまず焼いてみますか?

苦痛の雨を注ぎましょう。
悲鳴をあげるも耐えるもご自由に。
しかし無様と叫んだならば、煩いですよ、とでも。
逆にシノアさんは苦痛では止まりませんが、どうでしょう?

迫るふたつの死から、逃れられはしない。
夜明けと共に、貴方は眠る刻限です。


蓮条・凪紗
【血梅】

応接――にしては下衆にも程があるんとちゃう?
救い、ね。そう、オレ達は求めに来たんよ。
お前の様な下らん奴を葬って得られる村人達の救いを、な。

おー、二人とも殺る気に満ちてるな、と感心しつつ右手の爪伸ばし。
まずは秘符札を投擲して後方援護。特に突っ込んで行くシノアには敵の攻撃を叫んで知らせ。
ま、簡単にくれてやる首でもあらへんな。

二人の攻撃で敵の血が宙に飛び散った所を爪で受け、魂喰の衝動を呼び覚ます。
自分が前に出だしたら、宵蔭にサポート頼むな、と。
蛇って美味しそうやないけど、鶏の味するんやろ?なんて。
ふわりと舞うように剣を爪にて受け流し、相手の傷口広げて引き裂きに。

早う眠りや……永遠に、やけど。


シノア・プサルトゥイーリ
【血梅】
己が命を奪った者を蔑むのであれば、相応の覚悟はすべきよ
次は、貴方の番だと

刀を抜き払い、近接にて仕掛けましょう
眼帯を外し血統覚醒を
さぁ、どちらが先に首を取れるか、一つ仕合ましょう?

凪紗の声をよく聞いて、斬撃がくれば刃で跳ねあげ
二人のエスコートで、とても楽しいわ

敵の刃が二人に向くようであれば攻撃で阻害を
だめよ、貴方の刃では狙わせない

宵蔭の紡ぐ雨に、敵の悲鳴を聞けば微笑んで
痛いのは、貴方も同じようね?
間合いにて敵の刃がくれば受け止め、刃の上を滑らせてカウンターの一撃を
首を狙うわ
受けた傷を気にする気はないの

おはようを告げる頃には、貴方はもう終わりよ
首を落とし、地に伏しなさい
終わりの番よ



●極彩色の夜に眠る
「は、………おのれ猟兵め」
 怒気を込めた声が、血濡れの応接間に響く。先手を打った猟兵にやられたペンタ・サーペントは、明らかな怒りを向けてギョロッと血走った目を向けていた。
「応接――にしては下衆にも程があるんとちゃう?」
 肩をすくめるように話す蓮条・凪紗(魂喰の翡翠・f12887)は、もう一度首が並んだ応接間を眺めていた。この場所には救いを求めてやって来た住人が殆どだろう。けれど、サーペントはその救われるという希望を踏みにじって、絶望に堕ちていく彼らを楽しんで見ていたのだ。そんな事をするだなんて、呆れてものも言えない。
「下衆……?
 なァにが下衆だって?俺は馬鹿で愚かな人間に親切に教えてやろうと思ってただけさ………そんないい話があるわけが無いってのをなァ!
クヒヒヒヒ……お前らも救いを求めて来たんだろ!だったらこの首だけになったコイツらと何ら変わりはねェ!」
 嘲笑うように不愉快に嗤うサーペントに蓮条は勃然として、口を開く。
「救い、ね。そう、オレ達は求めに来たんよ。
 お前の様な下らん奴を葬って得られる村人達の救いを、な」
 ゆっくりと血に濡れた床を踏みながら、サーペントの目の前を歩く。黙って二人のやり取りを聞いていた黒蛇・宵蔭(聖釘・f02394)はふうと一息つきサーペントを横目で見る。

「さて『話のわかる』御仁かと思えば、まったくお話になりません。
 煩いというなら、くだらない遊びはしないことです」
「くだらないとはな!ヒヒヒ!猟兵の言葉とは思えないなァ!
 そんなくだらない遊びと思っているお前たちこそ、“こちら”側の人間だろう!」
「ねえ、何を言ってるの?
 私たちはその高邁さの一欠片も無いような貴方とは違うわ。
 生き物としての性能が違うの。
 己が命を奪った者を蔑むのであれば、相応の覚悟はすべきよ。
 ────次は、貴方の番だと」

 シノア・プサルトゥイーリ(ミルワの詩篇・f10214)は同族だとでも風に言ったサーペントをじっと見つめながら、はっきりと否定する。こんなオブリビオンと一緒にしてもらっては困る。そうこんな低俗なオブリビオンと一緒に、だなんて。
「(おー、二人とも殺る気に満ちてるな)」
 プサルトゥイーリと黒蛇の様子に感心しながら右手の爪をそっと伸ばすと、二十二の秘符札のうち一枚を勢いよく投げた。直線を描いて真っ直ぐに放たれた秘符札は空中でピタリと止まる。これは後方支援の為に投擲した秘符札だ。サーペントは、蓮条の動きを捉えるとその秘符札を破壊する、がしかし。
 ブンッ!───ドシャ。
 破壊する事は叶わず、有刺鉄線のような棘を持つ鞭がサーペントの体を撲つ。肉を抉るように体を傷付けた武器──鉄錆を持つ人物、黒蛇へと視線を戻す。黒蛇の思惑通り、サーペントは攻撃した方へと標的を変える。誘導するように黒蛇は駆け抜けて誘引していく。

「だめよ、貴方の刃では狙わせない」

 プサルトゥイーリの声を合図に、鉄串が天から降り注ぐとサーペントの体を貫いた。
「う、うがああああああああああああ!」
 鉄串というよりも真っ赤なそれは、マグマが降り注ぐかのように赤く煌々としている。これはプサルトゥイーリの技でないと気付いたのはもう手遅れになった後だった。
「おや、聞こえていなかったようですね。
 “死なない程度の痛み”だから安心なさいと言ったんですよ、私は」
 そんなに絶叫しなくとも、と冷酷に告げる。煩いと喚く言葉もそっくりそのまま返してあげよう。それは此方の言葉だと。黒蛇のユーベルコード【苦痛の雨(ペイン・レイン)】がサーペントを貫いていたのだった。熱され苦痛を付与されたおおよそ百四十もの鉄串がサーペントの体を穴だらけにしていくのだ。
「蛇は淡泊な味がすると聴きますが、これは美味しくなさそうですね。
 と、言うことでひとまず焼いてみました」
 冗談でも言うようにおどけて言う黒蛇は、猛追を許さぬ圧倒的な激痛を浴びせる。
「痛いのは、貴方も同じようね?」
 悲鳴を聞いたプサルトゥイーリは、残酷な位綺麗に微笑んで語りかけるように言葉を紡ぐ。サーペントは血が溢れ出す体を無理矢理に動かし引き摺りながら、斬撃を放つ!
「シノア!攻撃や!」
「ええ、わかったわ。
 さぁ、どちらが先に首を取れるか、一つ仕合ましょう?」
 蓮条の指示を聞けば、プサルトゥイーリはするりと眼帯を外す。それは【血統覚醒】の合図だった。深紅の瞳が呼び覚ますのはヴァンパイアとしての性質。戦闘に完全に特化した体を成し、彼女の眠った才能が抉じ開けられた。斬撃を放たれたプサルトゥイーリは軽々と振り下ろされた刃を受け止める。刃の上を滑るように流して、力を別の方向へ流していく。

「おはようを告げる頃には、貴方はもう終わりよ。
 首を落とし、地に伏しなさい。
 ────終わりの番よ」

 力を流すのと同時に、プサルトゥイーリはカウンターを狙う。断頭をして優越感を味わっていたサーペントには相応しい最期になるだろう。それが例え皮肉だとしても。儚く散ってしまった彼らと同じように、幕を降ろしてしまえばいい。受けた傷を気にすること等はせずに、プサルトゥイーリは心から楽しんでいた。蓮条と黒蛇の二人のエスコートで、サーペントの死を誘うのだ。

 ドシュッ。

 宙に舞う紅い紅い花を、蓮条は爪で受けとる。ドクンドクンと自身の体が脈打ち、【魂喰の衝動(グラトニーソウルイーター)】が呼び覚まされる。蓮条はプサルトゥイーリと黒蛇を飛び越え、サーペントの前へ踊り出る。
「宵蔭。サポート頼むな」
「勿論です。
 ───迫るふたつの死から、逃れられはしない。
 夜明けと共に、貴方は眠る刻限です」
 二つ、いやもう一つの死がサーペントを襲おうとしていた。
「蛇って美味しそうやないけど、鶏の味するんやろ?」
 なんて、冗談を挟んで言う。勿論、食べたりはしないけどなとは敢えて言わないが。こんなヤツを食べるのなら普通に鶏肉食べた方が絶対に美味しい。蓮条はプサルトゥイーリと黒蛇が作ってくれたサーペントの傷口を広げて、丁寧に引き裂く。

「早う眠りや……永遠に、やけど」

 どんな声を上げていたのか、それとも声にならずに終わったのか、分かるものは誰も居ない。金輪際、もう会うことは無いだろう。何故なら彼は覚めることのない残酷で美しい夜に閉じ込められてしまったのだから。

 ああ───もうすぐ夜が明ける。

 照らす朝日に挨拶を。

『おはよう』

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年06月06日
宿敵 『ペンタ・サーペント』 を撃破!


挿絵イラスト