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後片付けはお嫌いですか?

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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●ダークセイヴァー
 床を埋め尽くす無数の死体。
 さっき死んだばかりの新鮮な女の身体を手に取る。綺麗な悲鳴をあげてくれたのでお気に入りだったけど、殺してしまえばただの死体だ。それでも気に入っていたのだし、丁寧に肉を削ぐことにする。作業中に流れる血も無駄にせずとっておいて、肉と血を捏ねて混ぜ合わせた。適当に組み直した骨に張り付けて彼女を再構成する。
 出来た。
 ……が、どうもバランスが悪いようだ。飛び出た骨が邪魔で前に進めていない。
 どうすべきか少しだけ思案して、手っ取り早く骨を折った。女は喜んで転げまわっている。これで良し。
 余った骨の欠片はその辺に投げた。そのうち使うだろうが今はいらない。
 今まで投げ捨てたものも、床の死体の中に埋もれているはずだ。
「……片付けないとダメかしら?」
 苦手なのよね。散らかす方なら得意なのだけど。

 おぞましい部屋の中。
 黒い衣を纏った少女が、可愛らしい所作で首を傾げる。

●グリモアベース
「諸君、早急に倒してもらいたいオブリビオンがいるのだが」
 やるせない表情でシェーラ・ミレディ(四連精霊銃・f00296)が言う。
「行ってもらいたいのはダークセイヴァーだ。ある城で、狂気の実験が行われている」
 ダークセイヴァーは既にオブリビオンに支配された世界だ。彼の地の支配者たちは戯れに領民を襲い、手慰みのように殺す。
 実験というのも娯楽の一種にすぎないのだろう、予知で見た光景は陰惨なものだった。夢にまで見てしまいそうだ。少年は頭を振って悪い記憶を追い払う。
「先ずは実験施設を強襲し、中にいる……憐れな、怪物たちの介錯をお願いしたい」

 ──怪物たちの素材は人だ。

 告げられた言葉に、複数の猟兵が驚愕に目を見開く。反応しなかった猟兵たちも、必死に動揺を押し殺しているようだった。
 シェーラは極力感情を込めないよう、淡々と続ける。
「怪物は再生能力を与えられており、自分たちでは死ぬこともできない。助けを求めてか、恨みを込めてかはわからないが、侵入者である諸君を見付ければ襲ってくるはずだ。楽にしてやってくれ」
 少年は真剣な眼差しで猟兵たちを見つめた。
 見返す猟兵の瞳は、ある者は怒りの炎を宿し、ある者は悲しみに沈んでいる。様々だったが、全員、今回の事件を真摯に受け止めているのがわかった。
 一通り視線を合わせた後、シェーラは再び口を開く。
「そして元凶のオブリビオンは、護衛に守られ部屋で実験を続けている。……今も、怪物を生み出し続けている。何としても止めろ」
 予知を見てしまった僕は、諸君を送り届けることしかできないから。
 君たちに頼るしかないのだ。
 グリモアの力を手にした猟兵の限界を感じながら、シェーラは深く頭を下げた。


志崎キザシ
 皆様、こんにちは。新人マスターの志崎キザシです。
 2本目のシナリオになります。オープニングの雰囲気に合わせ、心理描写増量でお送りしたいと思いますので、苦手な方はご注意ください。
 それでは、皆様のプレイングを楽しみにお待ちしております。
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第1章 冒険 『屍血流路』

POW   :    再び動き出さないよう、ひたすら破壊し燃やせばいいだろう。。

SPD   :    最奥にいる元凶を倒せばあるいはすべて解決できるだろう。

WIZ   :    再生の仕組みを解明すれば怪物を生み出せなくできるだろう

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

カイジ・レッドソウル
任務了承

早々ニ乗込ミ、ベルセルクトリガーヲ起動
陽動をかねた殲滅戦ヲ展開
【天獄の雷】ヲ使イ、雷炎ニヨル火葬ヲ試ミヨウ
「本機ニ痛覚ハナイ。故ニ楽ニサセルトイウ意味ハ分カラナイ」
「ダガ、速ヤカニ【妨害する人間】ノ生命活動ヲ停止サセヨウ」
ソレが楽にナルと言う事なら
黒剣ノ【生命吸収】モ使イ
多クノ者ヲ火葬ヲ試ミル

感謝ノ言葉トカ言ワレテシマッタラ
理解出来ナイナガラモ



●カイジ・レッドソウル(プロトタイプ・f03376)
 侵入した城の内部は、グリモア猟兵の言葉通り陰惨な光景が広がっていた。
 壁や床は血で汚れ、肉の破片や骨の欠片があちこちに散らばっている。立ち込める臭気は咽そうなほどだ。
 入口付近でこれなのだから、奥に行けばもっと酷いのだろう。一般人ならば、既に胃の中身を逆流させていてもおかしくはない。
 しかしカイジは、その辺りの機微に疎かった。
「ベルセルクトリガー起動」
 彼は周囲を気にすることもなく最終武装モードに変化し、攻撃力と耐久力を強化する。バイザーが妖しい光を放った。
 カイジの発した音と光に反応したのか、通路の奥から、肉の塊が緩慢に姿を現す。
 人間の四肢を、五体を、適当に縫い合わせればこんな形になるだろう痛々しい怪物は、内側からこぼれた臓器を引き摺りながら、ゆっくりとカイジに近付いてきた。
 泣いているのか、それとも恨み言を喚いているのか。不気味に唸る肉塊はふいに立ち止まると、圧し潰されるように身体を縮める。
 次の瞬間、蓄えた力を開放し、一気にカイジに飛びかかってきた!
 強化の代償として失いつつある理性の中、カイジはスピーカーを震わせる。
「本機ニ痛覚ハナイ。故ニ楽ニサセルトイウ意味ハ分カラナイ」
 試作兵器の男は、突撃してくる怪物を手にした二振りの剣で受け止め、続けた。
「ダガ、速ヤカニ【妨害する人間】ノ生命活動ヲ停止サセヨウ」
 醜悪な肉塊を人間と呼んで、カイジはユーベルコードを発動する!
「天獄の雷始動」
 彼の身体から放たれた雷炎は、至近距離にいる人間を焼くには充分すぎる熱量を持っていた。今にもカイジに掴みかからんとしていた腕が燃え、焦げ、炭化していく。崩れ落ちていく唇が何事か告げるように動いた。
 理性を失った試作兵器のセンサーは、唇の動きを捕らえながらも、意味のないものとして処理をする。兵器には理解出来ない言葉だった。
 死体が燃え尽きる頃、戦闘音を聞きつけたのか、群れを成した肉塊が押し寄せてくる。カイジは燃え残った灰を踏みしめ、怪物に立ち向かった。
 陽動をかねた殲滅戦は、始まったばかりだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

戦場外院・晶
【WIZ】解明出来るほど私は出来がよくありません、ありませんが……【魔なる力】によるものなのは確かでしょう

語るべき事はありません
此処に在るのはもはや人ではなくただの死体……救うべきも助けるべきも「亡い」のですから

ですが、そこに人は「人」を感じるのです
だから手厚く弔うのです

「せめて、冥福を」

【祈り】ましょうとも
攻撃を避けることはしません
【オーラ防御】がございますし多少の傷は【生まれながらは光
】で癒えます

決して逃げずに受け止めて、毛ほども痛まぬように【祈り】ながら【破魔】の力をおくります

分かりません、私の行いが既に死した者にとって救いなのか

しかし分かる事もございます

「殺します」

オブリビオン殺すべし



●戦場外院・晶(強く握れば、彼女は笑う・f09489)
 怪物を前にして、晶は逃げることもせずに観察を始める。しかし、やはり外から見ただけでわかるほど、再生の仕組みは簡単なものではないようだ。
 難しい理屈を紐解けるほど、彼女の頭の出来はよくない。だが聖者としての直感か、再生の力が【魔なる力】によるものだということはわかった。
 目の前のものに語るべき事はない。此処に在るのはもはや人ではなくただの死体……救うべきも助けるべきも『亡い』のだから。
 だけど感じるものはある。
 たとえ死んでいたとしても、人は『人』を感じられる。
 親や子や、連れ添った片割れを残して逝く心残りや悲しみ。
 理不尽に命を、未来を奪われ、どうすることもできない怒り。
 失われた痛みや感情を想像して、共感することができる。
 だからこそ、手厚く弔わなければならない。
「せめて、冥福を」
 座り込んで無防備に祈り始めた晶に、しかし怪物は容赦なく襲い掛かってくる!
 けれど、彼女は避けることさえしなかった。決して逃げずに肉塊を受け止め、優しく抱きしめる。怪物が振り回す腕や脚に打たれながらも、晶は怪物が毛ほども痛まぬように、これ以上苦しまぬように祈りながら、そっと、破魔の力を送り込む。
 途端に再生の源である【魔なる力】──ヴァンパイアの血が払われ、怪物は形を保てなくなった。無理やり繋げられていた腕や脚が根元からもげ、体勢を崩して倒れ込む。骨から肉が剥がれ落ち、接合部や断面から大量の血が流れだしていった。
 残ったのは無数に解体された死体だ。何人分あるのかも判別できない。
 肉と血に塗れた晶は、それらを1つ1つ丁寧に置くと立ち上がる。目を閉じる。
 私の行いが、既に死した者にとって救いになったのか。
 分からない。
 しかし分かることもあった。
 開いた瞳の奥に、決意の炎が静かに燃える。
「殺します」
 オブリビオン、殺すべし。

成功 🔵​🔵​🔴​

オリヴィア・ローゼンタール
POW
命を弄び、死をも奪うとは……邪悪極まりないですね
一刻も早く彼らを……休ませてあげなくては

【トリニティ・エンハンス】【属性攻撃】で聖槍に炎の魔力を纏い攻撃力を増大させる
持ち前の【怪力】で【なぎ払い】、再生も出来ないほどに叩き潰す(鎧砕き)
邪悪な魔力は私の炎で焼き尽くす――せめて最後は、聖なる炎に抱かれて、安らかに

陰惨さに打ちひしがれる方がいたら【鼓舞】します
皆さん、行きましょう
この悪行を成した邪悪を討ち滅ぼすことが、彼らへの弔いとなると信じて



●オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)
 オブリビオンが許せないのはオリヴィアも同じだ。普段は物静かな彼女だったが、今は金色の瞳を剣呑に光らせている。
「命を弄び、死をも奪うとは……邪悪極まりないですね」
 一刻も早く彼らを休ませてあげなくては、と。決意と共に先へ向かえば、すぐに怪物が寄ってきた。醜い肉塊を直視しても、臆することなくオリヴィアは進む。
 トリニティ・エンハンス。彼女が素早く口にした詠唱によって、破邪の聖槍は炎の魔力を纏った。黄金の穂先が炎を反射して輝く。
 ダンピールの血が騒いだ。
 聖槍が敵を求めて震える。
 衝動に衝き動かされ、オリヴィアは肉塊に駆け寄りながら欲求のままに槍を振るう。
 彼女の怪力に軽々と振り回され、唸りをあげた聖槍は怪物を薙ぎ払い、吹き飛ばす!
 壁に叩きつけられた怪物は骨でも折れたのか、自重を支えきれなくなって崩れ落ちた。弱々しくもがいて起き上がろうとするが、近付いていたオリヴィアに踏まれて失敗し、床に肉を打ち付ける。そうしている間にも傷が、骨が歪に接がれて再生していった。
 オリヴィアは肉塊を踏みつけたまま、やるせない思いを胸に抱く。
 嗚呼……なんて、痛々しい。
 せめて、最後は。
 聖なる炎に抱かれて、安らかに。
「邪悪な魔力は私の炎で焼き尽くす……!」
 聖槍に纏わせた魔力がその光を増した。
 かつて人間だった怪物を、神殺しのシスターが一思いに貫く!
 黄金の穂先が突き刺さった傷口から、炎が溢れた。聖なる炎はオリヴィアの意に従って肉塊の全身を包み、燃やし、浄化していく。
 怪物の、ぐちゃぐちゃになりながらもなんとか頭だと判る部分が、母親に抱かれているかのように安心した表情でゆっくりと目を閉じる。
 オリヴィアは彼が燃え尽きるまで傍らで見守っていた。炎が消えると、聖句を唱える事もなく歩き出す。
 この悪行を成した邪悪を討ち滅ぼすことが、彼らへの弔いとなると信じて。

成功 🔵​🔵​🔴​

イデアール・モラクス
フン…人を素材として戦力を生み出す禁呪、私も扱う術だな。
もっとも、私のは契約を行なって尚且つ死後に霊を縛るだけだが。

・戦法
「この怪物は美しくない、こんなモノは永遠の命でも実験でもない、ただのゴミだ。嬲り尽くされた残滓に過ぎん」
不愉快だ、こんなモノを生み出すオブリビオンが。
「せめてもの情けだ、一瞬で逝かせてやる」
高速詠唱、全力魔法、属性攻撃の技能を乗せたウィザードミサイルの一斉発射で怪物を焼き尽くす、我が火焔が彼らを浄化するだろう。
「悪いが、お前は調べさせてもらうぞ」
しかし一体は残し、煉獄の大鎌で串刺しにしてから噛み付いて吸血、身体を喰って使われている術式を解析する。



●イデアール・モラクス(暴虐の魔女・f04845)
 人を素材として戦力を生み出す禁呪。
 イデアールも扱う術だったが、眼前の怪物たちは許された範囲を逸脱している。契約もせず、生きているうちに強制的に術を行使してしまうのは彼女の美学に反していた。
 イデアールは不快感に眉を顰めて毒を吐く。
「この怪物は美しくない、こんなモノは永遠の命でも実験でもない、ただのゴミだ。嬲り尽くされた残滓に過ぎん」
 彼女を支配していたのは怒りだった。
 理不尽に虐げられ、抵抗も虚しく肉塊に変えられたのだろう人間の弱さも。
 こんなモノを生み出し、己が法だと言わんばかりのオブリビオンの振舞いも。
 どちらも気に食わない。
 不愉快だ。
「せめてもの情けだ、一瞬で逝かせてやる」
 イデアールの持てる技能の全てを駆使し、瞬く間に練り上げられたのは百本近いウィザード・ミサイル。揺らめく火焔の矢の群れが彼女の前方に展開され、周囲の空気を熱で侵し、降し、満たしていった。もはやここは暴虐の魔女の処刑場だ。
 イデアールの合図で一斉に発射された矢は、不気味に蠢く怪物たちに殺到する!
 避けることもできずに火達磨になる肉塊はしかし、喜びの声を上げているようだ。頭を下げているのだろうか、何度も肉の身体を折り曲げ、お辞儀をしているようにも見える。燃え上がる怪物たちの奇行は、燃え尽きるまで止まらなかった。火焔による浄化だった。
 だが、1体だけ。燃え尽きた灰に囲まれ、未だ火傷すらしていない怪物がいた。イデアールが火焔の矢を制御し、無傷で残していたのだ。
「悪いが、お前は調べさせてもらうぞ」
 イデアールはどこからか身の丈程もある禍々しい大鎌を取り出すと、肉塊が動き回らないよう串刺しにする。そのまま無造作に引き寄せ、大口を開けて怪物に噛み付いた!
 彼女は怪物の肉を喰らい、血を啜り、使われている術式を解析していく。やがて解析が終わると肉塊を蹴り飛ばし、赤く汚れた口を拭った。
「フン……このような、児戯にも等しい術だとはな」
 術が稚拙でもあれだけのことができるなら、それは術者の力が大きいということだ。
 口内に残った血を吐き捨てて、イベアールは美しい顔を苦々しく歪めた。

成功 🔵​🔵​🔴​

羽重・やち
やちは、傾城をもとに創られた絡繰人形
なにか、ひとつ、違えれば
やち、も、こうなった、だろうか
それ、が、良いか、悪いか、やちには分からない、が

【SPD】
先を、いそぐ
先、には、怪物、が、いるはず
いちいち相手、している暇は、ない
道中【聞き耳】たてて、物音を拾う、会敵の機会、減らす
もしも、会敵、なら
【三姫】の【早業】で沈め、そのまま、すり抜けだ



●羽重・やち(明烏・f09761)
 グリモア猟兵の先生は言っていた。怪物の素材は人だ、と。
 なにか、ひとつ。違えれば。
「やちも、こうなった……だろうか」
 やちは、傾城と呼ばれた女をもとに創られた絡繰人形だ。人形ともヒトともとれぬ不思議な質の肌は白く、血液が通っていないせいか体温も感じられない。そうあるよう創られた声は途切れがちだが澄んでいた。
 只人とは異なる美貌の女をもとに創られた賤と。
 この、怪物と。
 どこか、似ている気がする。
 それが良いか、悪いかは彼女には分からなかった。疑問に捕らわれそうになるが今は時間が惜しい。頭を振って深く考えるのを止め、先を急ぐ。
 薄暗い通路の角に身を潜め、注意深く物音を拾う。何か重い物を引き摺って歩くような音が聞こえ、そっと陰からうかがえば、案の定。怪物がのろのろと這いまわっていた。
 他の経路は怪物の数が多く、気付かれずに進むのは難しいだろう。ここが一番手薄だ。会敵の機会は減らしたかったが、仕方がない。やちは得物を確認すると、怪物が奥に向かう瞬間を見計らって暗がりから飛び出した。
 やちは怪物の背後に忍び寄りながら、からくり人形の三姫に命じる。彼女の意を受けた傀儡は、闇の中からちょこんと顔を出した。可愛らしい童の人形だったが、瞬く間に姿を消してしまう。刹那。
 絶叫。
 怪物があちこちから血を吹き出し、のたうちながら転がり回る。再生能力があるにも関わらず、何故か傷は塞がらなかった。流血が止まらない。
 やちは人形遣いであるのと同時に咎人殺しだ。拷問の作法だって心得ている。その技を使えば再生を遅らせることだってたやすい。
 やがて怪物の叫びが途絶え、肉塊は血の海に沈む。
 怪物の横をすり抜け、駆け続けていた見目麗しい絡繰人形の影は、もう見えない。

成功 🔵​🔵​🔴​

キール・ラトシエ
旅団牛舎で参りました。

なんと非道な!
これが意思の持つもののやる所業だというのですか!
永遠に苦痛を受け、死ぬこともできないとは地獄……
ネフラさん、それはあまりにも……
いえ、そうですね、甘いことを言っている場合ではありませんでした。

ヒールで敵を停止できるか試みますが、これは疲労が激しいのでできてもできなくても次は無理ですね
止まった個体もあるのですか?
なるほど、取り込みさせられたヴァンパイアの血ですか…
ネフラさん、せめて苦しまぬよう一気にしてあげてください

許せませんね
絶対に止めましょう


オリオ・イェラキ
牛舎の皆さまと供に

血は嫌いではありませんけど
これはわたくしの趣味ではありませんわ
そうでしょうだって
無理やり動かすモノに輝きはありませんもの

あら、ネフラさま楽しそう
わたくしも一緒に
怪物……彼等にはせめてもの餞に
メテオリオで星を降らせ、後は一思いに黒い大剣で仕留めていく
どうか貴方達の最期の夜が安らかでありますように

キール、わたくしも怪我したらヒールして下さる?
ふふ、勿論これしきに手間取らないつもりですけれども

斬るだけでは眠らせてあげられないのなら
弱った彼等を集めて周りに影響しない程度の火で火葬を
おやすみなさい

失うのは悲しい事
それを理解できない事も、哀しい事よ
……奥の子には、確りお仕置きが必要ね


ネフラ・ノーヴァ
【旅団:酒場付き宿屋『牛舎』で参加】血の匂いに誘われてやって来たが、いかんせん相手が多過ぎるというものだ。というわけで皆と協力して進もう。【目的】グールドライバーとして血を求めに。多少鮮度は落ちているだろうがかまわん。人間のそれを浴びれる機会は少ないしな。見咎めてくれるな、血が好きなだけだ、フフッ。【行動】手当たり次第、怪物に刺剣を繰り出し血を吹かせる。服が血に塗れようが傷を受けようがお構いなしだ。血の花はせめてもの葬送になるかな?


アルトニア・スカディアナ
旅団牛舎より供に参りまし。
惨い、再生の哀しみに、溢れる涙を袖に拭いますわ…
どんな意図があろうとも、斯様な現状、認めてはなりませぬ…!
僅かながら助太刀しませう、ネフラ様、カイジ様!
参りましょう、わらわの灯火!
赤きドラゴンのダルファを槍と変え、来る斬撃は受け払いまし。
【串刺し】にして、哀しみの再生をしっかりと焼きつけ拝見しませう。
痛み…苦しいでございましょうね、けれど、暫しの忍耐を祈りまし。
再生を促している正体を見極めたらミレナリオ・リフレクションで、その呪い、相殺して解きましょう。
ごめんなさいね、わたくし、こんなことしかできませんの…
せめて、その苦しみに報いましょう



●『牛舎』一行:ネフラ・ノーヴァ(羊脂玉のクリスタリアン・f04313)、オリオ・イェラキ(緋鷹の星夜・f00428)、キール・ラトシエ(古き知識を読み求める者・f04006)、アルトニア・スカディアナ(隻眼よりあまねく白夜・f09479)
 先行したウォーマシンの戦友。囮になった彼の活躍か、旅団『牛舎』の一行が進む通路に怪物の影はなく、静かなものだ。たまに見かける肉塊もすでに争った形跡があって、横たわったまま動かない。辺りには肉の焦げた異臭や血生臭さなど、様々な悪臭が混ざり合い、行き場もなく澱んでいた。鼻が曲がりそうになりながらも堪えて先を急ぐ。奥に進めば進むほど、死骸の数が増えていく。
 死体を横目に見ながら角を曲がると、ついに生きている怪物と遭遇した。それも大勢だ。通路を埋め尽くさんばかりの肉塊の群れは『牛舎』の一団に気付くと、肉をふるふると揺らしながら彼らに近付いていく。

 真っ先に飛び出したのはネフラだった。
「血の匂いに誘われてやって来たが、いかんせん相手が多過ぎるな」
 呟かれた言葉とは裏腹に、彼女の表情は喜びに歪んでいる。
 グールドライバーであるネフラは、生存の為に他者の鮮血が必要だ。獣の血でも良かったが、目の前の肉塊なら申し分ない。多少見た目が変わっていようが怪物ももとは人。ヒトの世で生きていると、人間の血を浴びる機会なんて滅多にないのだ。心置きなく浴びておきたい。……ただ血が好きなだけというのも事実だが。
 ネフラは手近にいた怪物に迫ると、一切の躊躇なく血棘の刺剣を突き出した!
 刺剣は怪物の肉を貫き、抉り、出血を強いる。噴出した赤黒い液体はネフラを染め、渇望を満たしていった。
「血の花はせめてもの葬送になるかな?」
 疑問の声は怪物の上げた悲鳴にかき消され、誰にも届かない。
 返答を待つこともなく、羊脂玉のクリスタリアンは次の標的に狙いを定めた。

「あら、ネフラさまったら。とても楽しそう」
 含み笑いを漏らしたのはオリオだ。
「キール、傷付いたら回復してくださる?」
 勿論、これしきに手間取らないつもりですけれども。
 言い置いて彼女はネフラの後を追い、怪物たちの前へと駆け出していく。
 オリオは、血は嫌いではない。だって紅は彼の色だ。鳥籠を壊した鷹の色。わたくしを背景に舞う彼の。あの時の事を思い出すだけで、胸がおかしくなりそうな。そんな。
 だけど。この胸の熱さと、目の前のこれは、真逆だ。
 そうでしょう? だって。
「無理やり動かすモノに輝きはありませんもの」
 ときめきも煌きもしないなんて、趣味じゃない。
 ならば、せめてもの餞を贈ろう。
「さぁ……お往きなさい、わたくしの星達」
 オリオのルーンソードが輝きを放った。
 剣は星の煌きを纏った無数の黒い花びらとなって宙を舞い、怪物たちに降り注ぐ!
 痛みに慄き逃げようとする怪物たちだったが、頭上から降る星を避ける術はない。更には星空の大剣を抜いたオリオが肉薄し、一思いに仕留めていく。
「……どうか、貴方達の最期の夜が安らかでありますように」
 祈りの言葉は届いただろうか。

 怪物の集団を見たキールの胸に怒りが募る。
「なんと非道な! これが意思を持つもののやる所業だというのですか!」
 人を無理やり連れてきて、ただ気紛れに実験を繰り返し。
 施術された者は永遠の苦痛を受け、死ぬこともできない地獄に突き落とされる。
 人としての尊厳なんて、微塵も感じない悪行だ。
 例え彼らを殺せたとしても、今の状況では埋葬も満足に出来ず打ち捨てるしかない。クレリックのキールにとっては歯痒い事態だ。ネフラの行動にも口を挟みたくなるが、堪える。甘いことを言っている場合ではなかった。
 とにかく出来ることをしなければと、キールは手のひらから柔らかな光を生み出す。漂う光は無傷の怪物に当たったが、特に変化はないようだ。
 治療できない。
 疲労を感じながらもたどり着いた結論に、キールの絶望は深まった。原因にいくつか推測は浮かぶが、一々実証している暇を怪物たちは与えてはくれない。肉塊が仲間に群がっていく。
 回復に専念することにして、古き知識の探究者は彼女たちに思いを託した。
「せめて苦しまぬよう一気に……、して、あげてください」
 それが、わずかでも救いになるのだとしても。
 殺してあげてほしいと請うのは、罪だろうか。

 キールと同じように憤っていたのはアルトニアだ。
「斯様な現状、認めてはなりませぬ……!」
 どんな意図があろうとも、こんな惨状は認められない。
 彼らにだって、幸せに生きる権利があったはずなのに。
 固い絆で結ばれた人と共に星空を眺めたり。
 暖かな仲間に囲まれて好きなお菓子を食べたり。
 いつか現れるだろう愛しい人の笑顔に頬を染めたり。
 そう言った、当たり前の日々を生きる幸福が。
 望まない実験の被験者にされて、もう、戻らない。
 静かに溢れる涙を、仲間たちに見咎められないようこっそりと袖で拭うと、アルトニアは走り出す。
「参りましょう、わらわの灯火!」
 付き従う赤いドラゴン、ダルファを槍へと変化させ、アルトニアは怪物たちの中へと突っ込んだ。肉塊を切り払い、押しのけ、突き刺しながらも彼女の表情は痛ましいものだ。
「痛み……苦しいでございましょうね、けれど、暫しの忍耐を祈りまし」
 アルトニアは目を閉じたくなるのを耐え、傷付いた怪物が再生する様をしっかりと焼き付けてその正体を見極める。どうやら聞いていた通り、吸血鬼の血が作用しているようだと、彼女に潜む呪いが囁く。
 正体さえわかれば話は早い。ミレナリィドールの機能を十全に発揮すればいい。
 アルトニアは吸血鬼の血と同じものを創り上げると、怪物目掛けて解き放った!
 撃ちだされたそれは肉塊に当たると、傷口から全身を廻っていく。吸血鬼の呪いが駆逐され、怪物は姿を維持できずに崩れていった。肉片と血と骨が辺りに散らばる。
「ごめんなさいね。わたくし、こんなことしかできませんの……」
 せめて、その苦しみに報いましょう。
 決然と言う白き夜の担い手の頬に、再び光る雫が伝う。

 怪物たちを退け、殺し、浄化しながら奥に進む4人は、やがて果てにたどり着く。城の最奥には両開きの、重苦しい扉があった。
 扉の前には既に幾人かの猟兵が待機している。どうやら全員が揃うのを待っていたらしく、『牛舎』の一行が最後のようだ。謝罪しながら合流し、怪物の情報を共有する。
 やはり、再生の鍵となっているのはヴァンパイアの血らしい。この城の奥に巣くっているのはおぞましき吸血鬼なのだろう。それも拙い呪術で人を怪物に変え、更には延々と再生させてしまう能力を与えられるような、馬鹿げた力の持ち主。
 改めて扉を見ると、先ほどよりも威圧感を増しているように思えた。誰かが唾を飲む音がやたらと響く。
 だが猟兵たちの中に、今更逃げ出すような者はいない。
「……奥の子には、確りお仕置きが必要よね」
 オリオが口を開くと、猟兵たちはそれぞれに賛同を示した。覚悟は、決まっている。
「いつまでもぐだぐだとやっていても始まらん。行くぞ」
 進み出たネフラが、重い扉を開いた──

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『篝火を持つ亡者』

POW   :    篝火からの炎
【篝火から放たれる炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【赤々と燃える】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    篝火の影
【篝火が造る影に触れた】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    新たなる亡者
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自分と同じ姿の篝火を持つ亡者】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
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※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●実験準備室
 扉を開けると、先ず目に入ったのは大きな机だ。
 机の所々に入った切れ目と拘束具。全てが赤く染まっていて、元が何色だったのかもわからない。この机の用途は、これまで散々怪物を相手にしてきた猟兵たちには、深く考えるまでもなくわかってしまう。
 人を解体するためのもの、なのだろう。
 部屋を見回してみても、壁にかけられた何本もの鋸や鉈も、天井から吊るされた鉤も、どれもこれも解体のための設備だ。吐き気を堪える。
 血の匂いも、肉の腐臭も、嗅覚が麻痺して感じない。部屋に入った瞬間に気付けなかったのはそのせいだ。
 いや、気付きたくなかったのかもしれない。人を解体する部屋を用意するなんて、正気の沙汰とは思えなかった。
 そして、部屋の奥。次の部屋に続く扉の前に、ローブの集団が佇んでいる。篝火を手にした彼らのフードからは、腐り果てた肉と黄色い骨が覗いていた。
 どうやらこの城の主は、人の身体だけでなく魂までも玩具にしているらしい。
 亡霊は猟兵たちに気付くと、篝火を掲げて向かってくる──!
戦場外院・晶
「或いはあなた方も、憐れむべき存在なのやも知れませんが……」

一体、また一体、壊して差し上げます

「私、慈悲とは無縁の女にて……」

【祈り】とは己が心を一つする事
【祈り】ましょう……必滅を!

向かってくるというなら好都合
私からも間合いを詰めさせて頂きます
【オーラ防御】で守り、手と手が触れ合う距離まで肉薄致します
我が祈りに賭けて、怯みませんとも

どれ程身動ぎしようとも私の【手をつなぐ】から逃げること叶いません
【怪力】と【グラップル】で離しませんし、UCを使うなら……

「……そこです」

我が【奥義・不生】が掻き消します

拳に【破魔】を宿し、断固として打ち消しましょう

「……つまらない」

……虚しいばかりでございます



●戦場外院・晶
「或いはあなた方も、憐れむべき存在なのやも知れませんが……」
 亡霊たちに対して、晶は冷静に告げる。
「私、慈悲とは無縁の女にて……」
 指を鳴らして構えると、不用意に近寄ってくる亡霊に彼女の方から踏み込み、ローブを掴んだ。虚を突かれた亡霊に避けようもなく、体術に優れた晶からは逃げられない。
 亡霊は暴れても無駄だと悟ったのか、手にした篝火を高くかざした。未だこの城を彷徨う魂に仮初めの肉体を与えようと、術式を構築しはじめる。篝火の勢いが増し、火の粉が散った。
 不審な行動を見逃さず、晶が言う。
「……そこです」
 それは、今まさに組まれた術式が効果を発揮せんとした刹那だった。
 晶の拳が破魔の力を宿し、亡者の篝火を持った手を狙って奥義・不生を放つ!
 正確に撃ち込まれた拳打は亡霊の指を砕き、篝火を取り落とさせた。床に落ちた火は乾いた音を立てて飛び散り、幾許もなく消えてしまう。
 同時に亡霊の抵抗がなくなった。腕が垂れ下がり、脚の力も抜けて晶に身体を預けてくる。晶は咄嗟に受け止めたが、亡者は塵になって崩れ、外套だけが手の中に残っていた。どうやら篝火が核だったようだ。
「……つまらない」
 手の中のローブを見つめ、呟く。
 怪物たちには感情があった。叫びや呻きといった悲痛や、殺した際の安堵や。形は歪んでいたものの、晶には確かに感じられた。
 しかし、この亡霊にはそれがない。掴んでも殴っても声を上げず、反撃さえもあらかじめ決まっていたかのように正確だった。合理性の塊だ。
 まるで、そうあるべしと定められているかのように。
「……こんなものを倒しても、虚しいばかりでございます」
 おそらく、亡者をこんな風にして使っているのも、この城の主なのだろう。魂すらも冒涜し、自らの駒とする吸血鬼。唾棄すべき悪だ。
 改めて、晶は決める。外套を投げ捨てた。
「我が祈りに賭けて、怯みませんとも」
 オブリビオンの必滅を誓う聖者は、勇ましく宣言する。

成功 🔵​🔵​🔴​

オリヴィア・ローゼンタール
POW
死を奪われた成れの果て……
とうに朽ち果てたその骸に囚われた魂、解放してさしあげます

【トリニティ・エンハンス】【属性攻撃】で聖槍に炎の魔力を纏い攻撃力を増大
浄化の炎よ、邪悪の軛を焼き払え――!
【怪力】で骨を粉砕(【鎧砕き】)し、ローブを焼き尽くす
放たれた炎の軌跡を強化された【視力】で【見切り】、
聖槍に纏った浄化の炎で相殺する(【武器受け】【オーラ防御】【火炎耐性】)
邪な炎では私の浄化の炎を越すこと能わず……!



●オリヴィア・ローゼンタール
 オリヴィアは亡霊に向かって駆けながら唱えた。
「浄化の炎よ、邪悪の軛を焼き払え――!」
 聖槍が詠唱によって導かれた炎を纏い、力を増す。亡者たちの篝火とは違い、神々しささえ感じる炎は荘厳な光を放っていた。感情がないはずの亡霊が、光に気圧されたように後退る。
 だが、そんな亡者たちをオリヴィアは逃がさなかった。
 亡霊に肉薄して槍を振るえば、亡者の骨が折れ、外套が燃え、篝火が消える。反撃の炎が亡霊たちから放たれるが、彼女は射線を見切って聖槍に帯びた炎で打ち消した。仄暗い篝火では、神聖な炎に敵うはずもない。
「邪な炎では私の浄化の炎を越すこと能わず……!」
 オリヴィアは威勢よく言い放つと、次々と亡霊たちを塵へと変えていく。舞い上がった粉塵が聖槍の炎に焼かれ、小さな音を立てて燃え尽きた。
 黄金の穂先を亡者に突き立てながら、彼女は思う。
 生きたまま怪物にされ。
 死にそうになっても死にきれず。
 気紛れで命を弄び、魂さえも利用する。
 死を奪われた成れの果て。
 それがこの、亡霊たちなのだろう。怪物の魂を、そのままでは使い物にならない腐った肉と黄ばんだ骨で作った入れ物に押し込め、使役する……なんて。
 感情がないはずだ。擦り減ってしまって、何も感じないと言った方が正しい。文句も言わない従順な下僕は、上に立つ者にとってはさぞ扱いやすいことだろう。
 シスターにあるまじき暴言を吐きそうになって、寸前で堪えた。悔しさに噛んだ唇が切れ、血が滲む。
 ならばせめて、私に出来ることをしよう。
 オリヴィアは白銀の柄をしっかりと握り直した。
「とうに朽ち果てたその骸に囚われた魂、解放してさしあげます!」
 炎を纏った聖槍が、唸りをあげる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イデアール・モラクス
フン、今度は亡霊どもか…ここの主人はつくづく度し難いな。
相当な魔力の持ち主なんだろうが…気に食わん、必ず間違いをそのカラダに刻んでやる。

・戦法
「死とは美しくなければならん、死を怖れにしてはならんのだ」
高速詠唱、全力魔法、属性攻撃を全て乗せたウィザード・ミサイルの斉射で遠距離から一方的に焼き尽くす。
「私が浄化してやる、迷わずに逝け!」
囲ませず、反撃させず、散開させず、我が炎で二度と目覚めぬように念入りに焼いておこう。
仮に近寄られた場合は煉獄の大鎌で串刺しにして、傷を抉り踏み付けて抹殺する。



●イデアール・モラクス
 悲惨な部屋や亡霊を前にしたところで、イデアールは緩慢な態度を崩さない。怪物を相手にした時と同様の、不機嫌な表情も隠そうとはしなかった。
「フン、今度は亡霊どもか……ここの主人はつくづく度し難いな」
 言うと彼女は亡者の群れを、怜悧な瞳で注視する。
 此方に向かってくる亡霊は歩くだけでも腐肉がずり落ち、それを気にする様子もない。最奥にいる者にとっては亡者たちも、怪物と同じように、大量に作ることが出来る程度のもののようだ。代わりなどいくらでもいるのだから、使い潰しても惜しくないのだろう。
「相当な魔力の持ち主なんだろうが……気に食わん」
 必ず、間違いをそのカラダに刻んでやる。
 嫌悪感も露わに吐き捨てると、その苛立ちのままに詠唱を始める。言語を圧縮したのかと思うほどに高速で紡がれる呪文はやがて、炎の矢を形作った。
「私が浄化してやる、迷わずに逝け!」
 生み出された端から射出される炎は次々と亡霊を射抜き、撃ち抜き、焼却していく。亡霊のローブと腐った肉が燃え、火焔が揺らめいた。亡霊が燃え尽きてしまうと炎も消え、後には灰しか残さない。
 囲ませず、反撃させず、散開させず。
 敵に行動させる暇など与えない。
 亡霊を、二度と目覚めさせない。
「死とは美しくなければならん、死を怖れにしてはならんのだ」 
 怖れては逃げるしかなくなる。
 肉体を再生しようが、魂の器を挿げ替えようが、それは死からの逃避でしかないのだ。イデアールのような魔女にとって、エロスとタナトスは双方揃ってこそのもの。死が美しくあればこそ、生が輝くのだから。だからこそ、このような邪道を捨ておけない。
 正義感ではなく、自らの欲望のためにイデアールは裁きを下す。灼熱の饗宴は続き、猛る炎が彼女の顔を明るく照らし出した。
 暴虐の魔女は妖しく笑う。

成功 🔵​🔵​🔴​

ネフラ・ノーヴァ
【旅団:酒場付き宿屋『牛舎』で参加】 【真の姿:両瞳が赤く灯る】 
カイジ殿は先行ご苦労様だ。さて、血の匂いは好きだがやはり鮮度が大事だな。道具は品の無いものばかりだ。血を奪うものも美しくなくては。 そして次は腐肉の亡者か、血は期待できんな、早々に散らそう。火の攻撃に晒されようが間合いを詰め刺剣で串刺しにする。少なかろうが体液はあるだろう、浴びれば服に付いた火も消えようか。 
おっと、アルトニア殿はこんな室内でドラゴンとは、豪快なものだ。まあ亡者の動きも狭まろうが。 
さて、腐液では不満が募る。次の扉はブーツのヒールで乱暴に蹴り開けてしまいそうだ。城主にはぜひとも新鮮な血を頂かなくてはな。


オリオ・イェラキ
「牛舎」と供に

全く本当に趣味の悪い事
確かに下品な御道具ばかり…あら、アリア
泣かないで、優しい子ね

ここに散らばる紅も、貴方達も
かつては美しい血と魂だった筈なのに…
憂と供に黒風鎧装で身の夜を深める
さぁ、もう一度
彼らに鎮魂の夜を

彼らが放つ炎にメテオリオの星を合わせ
仲間の陽動と消火の手助けしながら、間合いを詰める
アリアの白い輝きに目が昏みまして?
その隙に、この夜が星夜の大剣で貴方を切り裂きますわ
汚れてしまった炎では、わたくしを照らす事等できませんの

更なる亡者を生まぬ様、素早く確実に心の臓を突き
首を刎ね一思いに
安らかな夜に、御眠りなさい

ネフラさま、最後はまた血を浴びられそうね
目指しましょう、最奥を


アルトニア・スカディアナ
旅団「牛舎」より供に参りまし。
扉の先の有り様に、眼を覆いたくなりまし。
酷い…非道でありまし…。
わたくし、涙を禁じ得ません!
けれど、腐肉の臭みに涙も引っ込みますわ。

仄かに光るこの身に、白き翼を纏う真なる姿で問題の篝火を消しませう。
距離をとり篝火の影を踏まずに陽動を承けまし。
炎には炎を…ダルファ!
ネフラ様の素早い攻勢に合わせ槍を振り回し音を鳴らして、亡者の注意を引き遊撃しましょう。
亡者の身に【串刺し】を奮い、
忌まわしき吊るされた武器を利用して風を起こし篝火を掻き消しまし。
例えわらわが影でとめられたとしても、ドラゴンは自由の身。
フフフ…かかりましたわね!
ドラゴニック・エンドでドラゴンを放ちませう。


カイジ・レッドソウル
[旅団・酒場付き宿屋「牛舎」]のメンバーと合流の為、ベルセルクモードは解
「構ワナイ、引キ続キ戦闘ヲ続行」
ネフテの言葉に答えながらも【黒風鎧装】で真の姿強化
部屋に入っても淡々と周囲の警戒
「・・・アルトニア、気ヲ引キ締メタ方ガ良イ」
悲しい顔をするアルトニアに機械的に気の使った言葉をかける
陽動に合わせ遠距離の【サイコキネシス】
呪剣で応戦【2回攻撃】【生命吸収】と【天獄の雷】、【サイコキネシス】で攻撃
戦闘後
物言わぬ人だった物達を数秒見て
「次ノふぇーず二移行、最終ふぇーずダ」
機械的に淡々と次にみんなと向かいます



●『牛舎』一行:ネフラ・ノーヴァ、オリオ・イェラキ、アルトニア・スカディアナ、カイジ・レッドソウル
 扉の先の有様は、目を覆いたくなるほどの惨状だった。『牛舎』の一行は思わず立ち止まってしまう。
 部屋の中を見回して、ネフラが眉をひそめた。
「品のない道具ばかりだな」
「……全く、本当に趣味の悪い事」
「酷い……非道でありまし……」
 用意されている道具を使って繰り広げられた惨劇を想像してしまい、アルトニアの目に涙が浮かぶ。オリオがそっと寄り添った。
「泣かないで、アリア。優しい子ね」
「オリオ……」
 縋りつくように身を寄せたアルトニアに、部屋に入っても周囲の警戒を怠っていなかったカイジが声をかける。
「……アルトニア、気ヲ引キ締メタ方ガ良イ」
 彼が普段から行動を共にしている仲間でなければ、ただ注意されたのだと感じただろう。だが、違う。カイジは機械なりに気を使える人物だとアルトニアは知っていた。
「ありがとうございまし、カイジ様」
 涙を拭って、アルトニアは気丈に笑う。
 
「ご苦労様だ」
「構ワナイ、引キ続キ戦闘ヲ続行」
 カイジの背面を軽く叩いて、ネフラが前に出た。既に戦闘は始まっていて、あちこちで敵を斬り、殴り、燃やす音がしている。急がねば獲物がなくなってしまいそうだ。
 とはいえ、今回の相手は腐肉の亡者。血の鮮度を重要視しているネフラにとっては、旨みの少ない敵だった。
 早々に散らそう。
 ネフラは亡霊が放つ炎を素早く避け、時には火に晒されながらも間合いを詰め勢いのままに刺剣で貫く。亡霊が避けようとしたが遅い。剣を捻りながら抜いて傷口を広げ、わざと体液を噴出させて服に付いた火を消した。
 少量の体液だったが、ないよりは良い。しかし不満が募るのも事実だ。
「城主にはぜひとも新鮮な血を頂かなくてはな」
 次の扉は、乱暴に蹴り開けてしまいそうだ。
 鮮血の予感に興奮を覚えながら、ネフラの剣は死肉を穿つ。
 両の瞳が赤く灯る。

 ネフラの攻勢に合わせ、アルトニアが躍り出る。
 彼女の身体は僅かながらも真の姿に近付いて、仄かな光を宿していた。同時に纏った白い翼で亡霊の炎を防ぐと、叫ぶ。
「炎には炎を……ダルファ!」
 呼ばれた小さなドラゴンはその姿を赤竜の牙槍へと変え、アルトニアの手に収まった。
 彼女はそのまま演舞するかのように槍を振り回し、音で亡者の注意を引く。亡霊たちの虚ろな眼窩が、一斉にアルトニアの方を向いた。
 怯むことなく、アルトニアが亡者に迫る。
 回転の勢いを乗せた槍で亡者を突き刺し、打ち据え、切り裂いていく。
 舞うように戦うアルトニアだったが、やがて敵に囲まれてしまった。四方から亡者がにじり寄り、今にも篝火の炎を撃ってきそうだ。
 そんな状況にあっても、彼女は不敵に笑う。
「フフフ……かかりましたわね!」
 ドラゴニック・エンド。
 先に打ち据えていた亡霊めがけ、白き夜の担い手から放たれたのはドラゴンだった。竜は取り囲んでいた亡者たちを圧し潰し滅ぼすと、自身も消えていく。
 衝撃に足元が疎かになった亡霊の頭を斬り飛ばし、アルトニアが優雅に裾を翻す。
 彼女の目に、もう涙はない。

 アルトニアの陽動に合わせ、カイジが動いた。
 今度は集団戦だ。ベルセルクモードではリスクが大きいと判断して、代わりに起動したのは漆黒の旋風を纏う黒風鎧装だった。黒い風が、機械の体躯を更に巨大に見せる。
 カイジはアルトニアに釣られて動く亡霊を狙って、サイコキネシスで攻撃を加えていく。目に見えないサイキックエナジーに弄ばれ、何事かと周囲を確認する亡霊だったが、気を取られた隙に接近していたネフラが亡者の頭蓋を打ち砕いた。骨の砕ける軽い音がして、辺りの床に塵が降る。
 ネフラが一瞬だけ視線を寄越したのに頷いて返し、カイジは近付いてくる複数の亡霊を次の標的に定めた。呪剣と黒剣の二振りを抜く。
 亡者の攻撃を受け止め、一部を自分の力へと変換しながらも流し、高圧電流や見えざる力も交えながら敵を次々と切り捨てる。
 燃える死体が砕け、崩れ、灰塵となる頃には、小規模な亡霊の集団は一掃されていた。
 しかし、近寄ってきた亡者たちを倒しても、別の場所にはまだ雲霞の如く残っているのだ。カイジのセンサーは既にそれらの動きを捕捉している。
 空いた空間を埋めるようにやって来た亡霊に向かって、試作兵器の男は剣を構えた。

「ここに散らばる紅も、貴方達も。かつては、美しい血と魂だった筈なのに……」
 憂いを供に、オリオは黒風鎧装で自身を飾った。彼女を彩る夜が深まり、星が一層鮮やかに輝きだす。
 さぁ、もう一度。
「彼らに鎮魂の夜を」
 メテオリオの星々が舞い遊ぶ。戦場を舞台に踊る星は放たれる篝火を次々に打ち消し、仲間たちに襲い掛からんとしていた亡霊の出鼻を挫く。教養のある者が見れば喝采したであろう星の舞踊も、血生臭いこの場では物騒な威力を誇っていた。
 同時に、オリオが間合いを詰める。
 星に翻弄される亡霊に肉薄し、星夜の大剣で切り裂いていく。篝火の炎が飛んでくるも無意味だ。オリオを飾る星に撃ち落とされ、彼女の大剣に心臓を突かれる。大剣が引き抜かれ閃くと、亡霊の首が刎ね飛んだ。
「汚れてしまった炎では、わたくしを照らす事等できませんの」
 安らかな夜に、御眠りなさい。
 赤子にするようにそう告げて、貴婦人は上品に微笑んだ。

 ネフラが、最後の亡者に止めを刺した。剣を振って鞘に収める。
「これで終いか」
 部屋を見渡して確認するが、猟兵たちの持つ灯りの他に火はなさそうだ。あれだけあった篝火が消えたためか、室内が肌寒く感じられた。
 亡霊を全て倒しきり、猟兵たちの意識は自然、奥の扉に集まる。
 素材を運び込むために大きく作られていたこの部屋の入口とは違い、奥に続く扉は質素なものだ。圧迫感なんて微塵もないが、それだけに何とも言えない違和感がある。普通な事が、薄気味悪い。
 だが、いよいよだ。
 この奥に奴がいる。
 悪辣極まる吸血鬼。
 すべての、元凶が。
「目指しましょう、最奥を」
 言ってオリオは扉を指差した。猟兵たちが次の部屋に向かって、警戒しながらも歩みを進める。
 途中、カイジは立ち止まって足元を見た。燃え残った塵が溜まり山になっている。
「……次ノふぇーずニ移行、最終ふぇーずダ」
 物言わぬ、かつて人だった物を数秒眺めた後に、そんな合成音を残して彼は仲間たちの後を追った。
 機械的に、淡々と。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『ゼラの死髪黒衣』

POW   :    囚われの慟哭
【憑依された少女の悲痛な慟哭】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    小さな十字架(ベル・クロス)
【呪われた大鎌】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
WIZ   :    眷族召喚
レベル×5体の、小型の戦闘用【眷族】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は吾唐木・貫二です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●実験室
 入口は全員一度に入れるほどの広さはなかったが、部屋自体は広かった。
 実験中に手元を暗くしないためか、壁には灯りが設置されていて明るい。床には肉片や骨が転がっていて、踏んで滑らないように注意する必要があった。臭気は相変わらず、麻痺していても鼻を突く酷いものだ。
 部屋の中央に置かれた台の前に、黒衣の少女が立っている。一所懸命、何かを弄っているようだ。灯りに照らされ、彼女の手元で赤黒く光っているのは血の滴る肉だった。
 猟兵たちが全員部屋に入っても、彼女は肉を捏ねるのをやめない。
 何度も何度も台に叩きつけ、幾度も幾度も弄繰り回す。
 べちゃり。
 べちゃり。
 べちゃり。
 べちゃり。
 べちゃり。
 ふいに、手を止めた。
「んん、ダメね。足りないのは脂肪かしら、筋肉かしら、内臓かしら……」
 眼球かしら。
 神経かしら。
 皮膚かしら。
 毛髪かしら。
 血管かしら。
 幼い声で呟きながら、彼女は床に転がる肉片を眺め、視線を彷徨わせる。
 やがてその瞳が猟兵たちを捉えると、喜色満面に手を叩いた。

「なんだ、新鮮なのがここに揃ってるじゃない!」 

 少女が晴れやかに笑う。
オリヴィア・ローゼンタール
POW
忌まわしい……
続きは骸の海で、自身の身体を使ってやるがいい――!

【トリニティ・エンハンス】【属性攻撃】【破魔】
聖槍に破邪の炎を纏い攻撃力を増大させる

【怪力】を以って【なぎ払い】、【衝撃波】を叩きつける
聖なる炎の嵐よ、不浄の輩を焼き尽くせ――!

大鎌によって応戦してきたら【視力】で【見切り】、槍で受け流す(【武器受け】)
槍の間合いを維持し、敵の必殺の間合いである超至近距離には近づかない
相手が突っ込んできたら、ガントレットで殴り飛ばし(【カウンター】【怪力】【グラップル】)、距離を保つ

慟哭の衝撃波を放たれたら味方を【かばい】、気合いと根性で耐える(【オーラ防御】【呪詛耐性】【激痛耐性】)



●オリヴィア・ローゼンタール
「忌まわしい……続きは骸の海で、自身の身体を使ってやるがいい──!」
 少女の言葉に、一番に反応したのはオリヴィアだった。
 彼女の豊富な戦闘経験は、眼前のオブリビオンの本体が、少女の纏う黒衣であると看破していた。仕草だけは愛らしい少女に惑わされず、聖なる槍を構える。
「イヤよ。だってまだ遊び足りないんですもの」
 少女は頬を膨らませた。弄っていた肉に代わり、虚空から刃の欠けた大鎌を引き抜く。
「ワガママ言わないで、ね? すぐすんじゃうんだから、大人しくしてて?」
 言うことを聞かない子供に大人がそうするように、少女は曖昧な笑みを浮かべた。
 オリヴィアは歯を食いしばる。
 恐らく、黒衣は少女の精神を完全には支配出来ていないのだろう。感情のままに振舞う幼さと、物事を円滑に進める思慮深さが同居しているように感じる。
 まだ、助け出せるかもしれない。
 だが、同時に手遅れかもしれないのだ。
 詳しく診てみる必要があるが余裕はない。何しろ黒衣は、少女を捨てて逃げることも出来る。最悪、猟兵たちの誰かを乗っ取られてしまう可能性だってあった。
 どうするにしたって、先ずは弱らせなければ。
 オリヴィアは迷いを無理やり振り切り、聖槍に破邪の炎を纏わせて駆けた。場数を踏んでいる彼女は切り替えも早く、勢いよく少女に突撃する。
 オブリビオンがオリヴィアへの対処として選択したのは、少女の支配を、ほんの少しだけ、緩めることだった。
 少女の口から悲痛な慟哭が放たれる。
「■■■■■──!!」
 聞くに堪えない、錯乱したような叫び声。言語にもならない悲鳴は黒衣の力によって、猟兵を襲う呪詛となる。
 しかし、仲間たちにも襲い掛かるはずだった攻撃を、オリヴィアは1人で受け止めた。
 音の広がりを見極め、その全てを阻むように立ち塞がる。槍に刻まれた祝福や防具の耐性、後は気合と根性で呪いを跳ね除けると、そのまま少女に突っ込んだ。
 無傷で呪詛を退けたオリヴィアに唖然としていて、オブリビオンは無防備だ。
「聖なる炎の嵐よ、不浄の輩を焼き尽くせ――!」
 叩きつけた聖槍は、黒衣の少女に大きな衝撃を与える──!

大成功 🔵​🔵​🔵​

イデアール・モラクス
フン、あれだけの事をやる強大な魔力の持ち主にしては痩せっぽちだな?
クク…仮初めの肉体か?
まぁ何でもいいさ、次に肉片になるのは…お前だからなぁ!

・戦法
「クク…お前が好きな遊び方で遊んでやろう」
高速詠唱、全力魔法で鏖殺魔剣陣を展開、無数の魔剣を敵に目掛けて一斉に放つ。
「イイ声で啼けよ?」
遠距離から魔力の限り鏖殺魔剣陣を殺到させ、相手を近寄らせず、相手の遠距離攻撃を尽く潰して押し切る。
「アーハッハッハ!簡単に壊れてくれるなよ、お前が肉片になるまで遊んでやるからさぁ!」
魔剣が一本でも到達したら串刺しにして動きを止め、更に四方から魔剣で斬り刻み、跡形も無くなるまでバラバラにしてやる。



●イデアール・モラクス
 強烈な一撃をまともに食らったオブリビオンは、あまりの衝撃に、小さな身体を宙に躍らせていた。
「フン、あれだけの事をやる強大な魔力の持ち主にしてはやせっぽちだな?」
 少女を目にして、イデアールは皮肉な口調で感想を漏らす。
 黒衣に包まれた彼女からは、魔力をほとんど感じない。おそらく仮初めの肉体なのだろうと、オブリビオンに真っ先に突っ込んでいったシスターと同じ結論に至っていた。
 だが、そんな事はどうでもいい。
「まぁ何でもいいさ、次に肉片になるのは……お前だからなぁ!」
 一方的に告げて、喜悦に満ちた瞳で吹き飛ばされている少女を見据える。途端、空中に無数の魔法陣が展開された。イデアールの周囲に所狭しと浮かぶ紋様は、例外なくオブリビオンを正面に捉えるよう動く。
 少女が壁に全身を打ち付けた、瞬間だった。
「魔力よ、我に仇なす尽くを串刺しにしてしまえ!」
 膨大な数の魔法陣から、一斉に魔剣が放たれた。撃ち出された魔剣の群れは、魔女の意思を体現するかのように黒衣の少女に殺到する!
「簡単に壊れてくれるなよ、お前が肉片になるまで遊んでやるからさぁ!」
 高笑いを上げるイデアールは、勝利を確信していた。
「遊ぶのはあなたじゃなくってわたしなんだから! ジタバタしないの!」
 ふらつきながらも少女は立ち上がり、手放さずにいた大鎌を振り回して魔剣を迎え撃っているが、押し寄せる剣の豪雨は対処しきれるものではない。魔剣が次々に少女の黒衣を、身体を刻んでいく。
 だが、魔剣ではオブリビオンを串刺しにするには力不足だったようだ。少女の身体は傷だらけだが、貫けてはいない。
「大人しくバラバラにされていれば良いものを……!」
 舌打ちしたイデアールが、忌々しく吐き捨てた。

成功 🔵​🔵​🔴​

キール・ラトシエ
旅団【牛舎】と共に

唾棄すべき行為をせりし魔女
ネフラさん気を付けてください、見た目通りの中身とは限りません

得てしてこういう類の敵はこちらの話など聞いてくれなどしません
すべて無駄
ならばもはや何も語ることはなく、殲滅するのみ

何を仕掛けているかわかりません
味方が敵に接敵しているところにウィザードミサイルで部屋中の備品、棚、桶など破壊
念のため薬品の棚は避けましょう

眷族召喚?
大丈夫です、私がウィザードミサイルで一掃しますので皆さんは奴に集中してください


すべてが終わったら犠牲者の墓標くらいは作りましょう
滅びを阻止するその日までどれほどの人が犠牲にならなければならないのか…
一人でも多くの人が救われますように…


オリオ・イェラキ
【牛舎】と供に

あの子ね
なら教育的指導を始めますわ
代償は貴女自身

わたくしは貴女が観る最期の夜
黒風鎧装で染めた黒は誰よりも深いの
少女の慟哭を囀りと聴き突き進み
かの大鎌の一撃を大剣で抑え込む
その獲物、使い熟ていて?
大振りを扱うのは淑女の嗜みですわ

仲間の援護も頼もしい事
それでも眷属がわたくしに立ち塞がるのなら
メテオリオで本体諸共
わたくしの星は血肉より綺麗でしょう?

生きながら裂かれ肉塊にされる側になった御気分は如何?
それとも感じないのかしら
さぁ後は夜明けの為に
その首刎ねて差し上げますわ

墓標…そうね
犠牲者が眠る為に
わたくしも手伝いますわ
この黒は葬送を示す色でもありますから
おやすみなさい…どうか
安らかな夜を


ネフラ・ノーヴァ
【旅団:酒場付き宿屋『牛舎』で参加】
「なあに、貴公も劣らず新鮮そうじゃないか。」
奴の台詞に応じ、新しい血を求めるように刺剣を指先で拭う。 
剣の間合いは奴も得意そうだ。妖剣解放の高速移動と衝撃波で様子見、隙を見て踏み込み刺し貫こう。 
「貴公の好みそうな血肉でなくてすまんな。」 
奴の斬撃を食らうかもしれないが、あいにくクリスタリアンは人間のそれとは違う。 
「貴公がそこらの人にしたのと同じように血肉を晒すといい。」とどめをさされた後か先かに関わらず、胸に刺剣を突き立て血の花を咲かせよう。 
 ここで決着をつけるつもりだが、逃げられる事もあるかな?しかし血の匂いは憶えた、次は仕留めよう。


カイジ・レッドソウル
旅団・酒場付き宿屋「牛舎」ト行動
「目標ヲ戦闘開始、ネフテ気ヲツケロ」と同時に黒風鎧装
キール ガ眷属を抑エテクレルノデ、ボスに集中攻撃ダ
「キール、眷属ハ頼む」
オリオ ガ大剣で押さえ込んでる隙に呪剣、黒剣ノ【2回攻撃】【串刺し】ヲシカケル
「ソコダ」
【憑依された少女の悲痛な慟哭】ニ対シ【激痛耐性】デシノギ、即【生命力吸収】ヲ仕掛ケル
中ノ少女ニハ悪イガ【鎧無視攻撃】
「・・・恨ンデカマワナイオブリビオンニ囚ワレタ名モ知ラヌ少女ヨ」
ネフラ ガ刺した時に少女に憑依してたオブリビオンガ逃走シソウダッタラ【踏みつけ】【天国の雷】デ確実ニ排除スル
「キール・・・本機モ手伝オウ」
憑依サレタ少女モ安ラカニ眠レルヨウニ


アルトニア・スカディアナ
旅団牛舎より供に参りまし。
中央の黒衣の少女に、この状況の異質さを肌で感じまし。
既に、壊れてあられませ?
ならば、救いの手は1つだけ。

仲間の攻勢に同調し後方支援を。
部屋の死角、黒衣の少女を視野に入れ【第六感】から危険な動作に注意を払い周知しましょう。
肉片や骨を踏まぬようダルファの【属性攻撃】
燃やし消炭と成しませ。
承知致しまし、キール様
少女へ至る間の眷属は【串刺し】で瞬殺しませう。
囚われの慟哭をミレナリオ・リフレクションで相殺しませう。
小さな十字架を懸念して【盗み攻撃】でダルファに大鎌を狙わせ気を散らせましょう。

消え行く少女も犠牲者かしらと傷を生まれながらの光で癒し
墓標に花と【祈り】を捧げましょう。



●『牛舎』一行:ネフラ・ノーヴァ、キール・ラトシエ、オリオ・イェラキ、カイジ・レッドソウル、アルトニア・スカディアナ
 魔剣の雨が止む前に、ネフラがオブリビオンに向かって駆け出した。
「貴公も劣らず新鮮そうじゃないか」
 少女から流れ出る血液で、黒衣は斑に赤黒く染まっている。嘲笑するネフラに、しかしオブリビオンは彼女を睨みつけることしかできなかった。無数の剣を叩き落とすのに手一杯のようだ。
 笑うネフラは、移動しながらも血棘の刺剣の刀身を拭い、剣に宿る力を解放する。怨念がクリスタリアンの五体に纏わりつき、彼女の寿命と引き換えに人並外れた力を与えた。
 ネフラは高速で少女に近寄りつつ、まだ距離があるにも関わらず刺剣を振るう。刃の軌跡が衝撃となって放たれ、オブリビオンに更なる傷跡を刻みつけた。鮮血が飛び散る。
「貴公が、そこらの人にしたのと同じように血肉を晒すといい」
 飛ぶ斬撃と共に肉薄したクリスタリアンは、剣の弾幕を凌ぎ切ったオブリビオンと斬り結ぶ。力を解き放った血棘の刺剣と呪われた大鎌は幾度となく刃を打ち鳴らし、激しい火花を飛び散らせた。
 先に焦れたのは少女だった。大鎌で刺剣を弾くと、大きく飛びのいて体勢を立て直す。
「もう、イジワルしないで! 大人しくしなさーい!」
 間の抜けた少女の言葉と共に床に散らばる肉片が寄り集まり、形を成す。毛皮のない蝙蝠の姿をしたそれは、あちこちから湧き出て猟兵たちに牙を剥く!
 しかし、群れを成して宙を駆ける蝙蝠を撃ち抜く、炎の矢があった。
 キールの唱えていたウィザード・ミサイルが肉の蝙蝠を次々と射抜き、縫い留め、撃ち落としていく。炎が腐肉の表面を舐めるように広がり、跡も残さず焼き尽くしていった。
「気を付けてください、何を仕掛けてくるかわかりません!」
 ここはオブリビオンの居城、地の利は向こうにある。棚や備品があれば壊していた所だが、この部屋には中央に置かれた台と壁の灯り、無秩序に放置された肉片や骨ぐらいしか見当たらない。ならばそれらを警戒するのは当然のことだ。案の定、敵はおぞましい術を使ってきている。
 唾棄すべき行為をせりし魔女。
 見た目通りの中身とは限らないのだ。
 キールは改めて、オブリビオンの脅威を認識する。
 滅びを阻止するその日まで、どれほどの人が犠牲にならなければならないのか。
 まだ、わからない。
 だが、今は。
「殲滅するのみ──!」
 仲間に群がる蝙蝠を、一掃する。そんな思いと共に叫んだ。
 キールが炎の矢で眷属を抑え込むと同時、オリオが大剣を手に走り出す。
「教育的指導を始めますわ」
 黒風鎧装でドレスを染め上げ、煩わしい蝙蝠も煌く星が払う。少女の黒衣よりもなお黒く染まった礼装は、きっと誰よりも深い色だ。突き進む様さえ星空のような彼女。
 オリオは、ネフラとオブリビオンが再び刃を交えていた最中に斬り込んだ。オリオに逸早く気付いたネフラが飛びすさり、少女はバランスを失って前につんのめる。
「その得物、使いこなしていて?」
 優雅に笑う貴婦人は絢爛の大剣を苦も無く操り、たたらを踏むオブリビオンを斬り、裂き、刻んでいく。大剣が閃く度にオブリビオンの傷が増え、黒衣が削られる。
 黒衣の少女が堪えきれずに下がった。大きく距離を取って、大鎌を構え直す。
「もう、もうっ! お気に入りの服なのに! 信じらんない!!」
 癇癪を起こした子供のように、少女は地団駄を踏んだ。ネフラとオリオ、そして猟兵たちを見回し、睨みつけてくる。
「許してなんかあげないんだからね! みんな死んじゃえーっ!」
 拙い言葉であげた絶叫は呪いだ。言語を媒介にした呪詛は、その効力を発揮せんと音の速度で猟兵たちに迫る。
 しかし、そんな物は関係ないとばかりにカイジが矢面に立った。
 意図的に聴覚機能を落とすと、他の猟兵たちをかばうようにして少女に突撃していく。漆黒の風を纏わせながら駆ける彼の姿は、まるで竜巻だ。
 そして、竜巻は雷雲を伴っていた。
「……恨ンデカマワナイ。オブリビオンニ囚ワレタ名モ知ラヌ少女ヨ」
 天獄の雷。
 カイジの身体から発せられた電流が、雷炎となってオブリビオンを襲う。雷は逃れようとする少女の後を、床を破砕しながら追い、追い詰め、捉えた。内側から少女の身体を焼き、痺れさせていく。痛々しい悲鳴があがった。
 オブリビオンが動きを止めた隙に、カイジは二振りの剣を抜く。呪剣と黒剣、双方を構え、すれ違いざまに黒衣を切り裂き反転、勢いを利用して背後から斬りかかる。
 ウォーマシンの恵まれた体躯による連撃は重く、少女の幼い身体は斬られる度に左右に揺れた。なんとか踏みとどまっているが、足元がふらついている。
 アルトニアはこの機を逃さなかった。
 カイジがかばいきれなかった呪詛を同質の呪いを放って相殺しながら、散らばる肉片を焼いていた小さなドラゴンをオブリビオンに向かって走らせる。
 空を裂く赤い弾丸と化した赤い竜が、大鎌を持つ少女を急襲する!
 武器を持った手を狙われ、オブリビオンは呪われた大鎌を取り落とした。拾おうと手を伸ばす度、小さな竜が疾風のように飛んできて邪魔をする。飛び去るドラゴンを憎悪の篭った視線でねめつけ、残り少ない眷属を報復に向かわせた。
 黒衣の少女を注意深く見つめるアルトニアの瞳には、憐みの色が浮かんでいた。
 アルトニアは少女が大鎌を手にしないようダルファに指示を出しながら、部屋に入った時に感じ取った異質さを思い出す。
 肌で感じた、あの怖気。
 人に備わっているはずの、良心や優しさや、心にある暖かい何かが壊れた少女の姿。
 壊された、少女の姿。
 オブリビオンに目を付けられなければ、あるいは幸せな生活があったのかもしれない。
 仲間たちに囲まれ、笑いあうような、そんな。
 自身の状況と比べてしまって、慌てて振り払う。違う。そんな仮定に意味はない。
 だって、わたくしの生まれながらの光でも、壊れた心は治せない。
 ならば、救いの手はひとつだけ。なのに。
 それを悔しいと感じているのを自覚して、白き夜の担い手は歯噛みした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

戦場外院・晶
なるほど、あの黒衣こそ化生、あれなるを滅せ、と

ご安心ください

手はあります。得意分野で
ございます

【忍び足】でしずしず近寄ります
心からの慈愛と思いやりを込めて、【オーラ防御】を身に纏い

「なにも嘆くことはありません。心平らかに、しばしお待ちを」

【グラップル】で肉薄し【手をつなぎ】
【怪力】と【グラップル】をもって捕らえます

「……破ァ!!」

少女の救われん事を【祈り】
手から【破魔】を込めましょう

「……そこです」

化生が抵抗しようとも、この距離ならば奥義で消し去ってみせましょう

「……かくあれかし」

祈りましょう、冥福を、救いを、少女のこれからは、せめて幸多からん事を

「彼女は断じて、穢れてなどおりませんもの」



●戦場外院・晶
「ご安心ください」
 『牛舎』の面々が悲壮な覚悟を決めてオブリビオンを抑え込む中、晶は場違いにも思える慈愛の笑みを浮かべた。
「手はあります。得意分野でございます」
 呪詛や術式が飛び交い、鋼が交差する音が鳴り響く中、そんなものを気にもかけずに、晶はただしずしずと少女に近寄っていく。
「なにも嘆くことはありません。心平らかに、しばしお待ちを」
 血塗られた実験室にあっても静謐な雰囲気を漂わせる彼女に気付き、唖然として手を止める猟兵たちの間をすり抜けて、晶は黒衣の少女の前に立った。
 肩で息をしている満身創痍の少女は、異様な空気を纏う聖者に気圧されて大鎌を盾にするように構える。晶を見上げて、眼光鋭く睨みを利かせた。未だに戦意を露わにするオブリビオンの視線を受けても、晶は変わらず柔らかに笑ったままだ。
 唐突に、予備動作もなく晶の手が伸びる。
 大鎌を支える少女の手を、柄ごと両の掌で優しく包み込んだ。虚を突かれたオブリビオンが狼狽えながら眷属を呼び出そうとするものの、晶が次の行動に移る方が早い。
 仏の微笑が鬼の形相へと変じ、吼える。
「……破ァ!!」
 少女の救われんことを祈り。
 繋いだ手に、破魔の力を込めた。
 脈打つように少女の身体が小刻みに跳ね、自重を支えられなくなって足元から崩れる。
 慈母のような柔和な表情に戻った晶が少女を抱きとめた。大鎌が手から滑り落ち、硬質な音を立てる。
 気付けば、少女の黒衣から煙が立ち昇っていた。
 火もないのに上がった煙は、黒衣の色を道連れにするように天井に広がって消えた。後に残ったのは白く染まったローブだ。それは、例えば死に装束のような。
「……かくあれかし」
 祈りましょう、冥福を、救いを。
 少女のこれからは、せめて、幸多からん事を。
「彼女は断じて、穢れてなどおりませんもの」
 微笑む晶の腕の中、少女のか細い身体は既に冷たく悲惨なものだ。
 けれども、その表情だけは。

 母に抱かれているような、安らかな寝顔だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月07日


挿絵イラスト