バトルオブフラワーズ⑨〜メガロマニアック
キマイラフューチャーで続く『バトルオブフラワーズ』。
その戦いは『システム・フラワーズ』への突入という新たな局面を迎えていた。
フラワーズ内部には無数の花々が咲き乱れ、それらが寄り集まって足場を作っている。
その足場は関門として立ちはだかるボス怪人へ続き、倒さなければ先へは繋がらない。
そして、第一の関門として立ちはだかるのがマニアック怪人『エイプモンキー』。
「懲りない奴らウッキー!」
そのゴツい外見に似合わぬ軽快さで、花の足場を飛び回る。
「何度来ようが、ミーのマニアック知識の前には無力ウッキー!」
負けるとは微塵も思っていない様子で、怪人は猟兵達を挑発するのだった。
●
グリモアベースにて。
「花畑にサングラスの猿……あまり美しい光景ではないが。ともかく厄介な相手だ」
ツェリスカ・ディートリッヒ(熔熱界の主・f06873)は物憂げに足を組み替える。
「奴とは既に交戦した者もいるかもしれないが、念のために改めて説明しておこう。
エイプモンキーは『自分が想像したものなら何であろうと創造できる』能力を持つ。
つまり、理論上はあらゆるユーベルコードを無効化する装置を開発することが可能だ」
妙にマニアックな知識でこちらの弱点を見抜き、的確に対応して完全に相殺する。
冗談みたいな名前と顔からは想像できないほど万能な能力。正面突破は不可能だ。
「要するに、奴の能力を突破するには、あらかじめ奴が作るであろう装置の予測が必要。
それはすなわち、己のユーベルコードの弱点を自分自身で正しく把握することである」
相手が突いてくるであろう弱点を認識し、そこを突こうとする敵の更に先を読む。
弱点潰しを更に潰してカウンターの一撃を叩き込めば、大ダメージは必至だろう。
「マニアックな知識を誇るような輩は、往々にしてウンチクを語りたがるものだ。
奴が自信満々に装置を披露したら、そんな知識は予測済みだと言い放ってやるがいい」
ツェリスカは頬杖をつきながら不敵に微笑んだ。
「奴の猿知恵を上回るような、真の知性の輝きを見せてやれ。期待しているぞ」
滝戸ジョウイチ
こんにちは、滝戸ジョウイチです。
今回は幹部怪人との特殊シナリオとなります。
下記の通り特殊ルールがありますので、注意してください。
●特殊ルール
エイプモンキーは、猟兵が使用するユーベルコードの設定を元に、そのユーベルコードを無効化する武器や戦術を創造し、回避不能の先制攻撃を行ってきます。
(ユーベルコードで無効化したり相殺した後、強力な通常攻撃を繰り出す形です)
この攻撃は、ユーベルコードをただ使用するだけでは防ぐことは出来ません。
この先制攻撃に対抗する為には、プレイングで『エイプモンキーが自分のユーベルコードに対抗して創造した武器や戦術を、マニアックな理論やアイデアで回避して、攻撃を命中させる』工夫が必要となります。
対抗するためのプレイングは、マニアックな理論であればあるほど、効果が高くなります。
難易度は『難しい』のため、プレイングの内容等によっては失敗判定や不採用もありえます。ご了承ください。
それでは、皆さんのプレイングをお待ちしています。
第1章 ボス戦
『マニアック怪人『エイプモンキー』』
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POW : マニアックウェポン
対象のユーベルコードの弱点を指摘し、実際に実証してみせると、【敵に有効なマニアックな装置】が出現してそれを180秒封じる。
SPD : マニアックジェット
【敵のユーベルコードを回避する装置を作り】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : マニアックマシン
対象のユーベルコードに対し【敵の死角から反撃するマシン】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:柿坂八鹿
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
雛河・燐
よーしやってみよう。
いやー本日はお日柄もよく。
そちらさんは調子どうだい?
とか当たり前のように世間話を振りながら近づく。
まだUCは使わない。
ま、初対面のご挨拶に宴会芸でも一つ。
いくぞー?やるぞー?ほい!
ここでUC【驚いた?】発動
大きな花束を一瞬で手に取り出す。
だが、このUCの効果はあくまで『驚かせ動きを止める』事!
事前に予告していた事でその効能は無い。
つまり、相殺すべき効果は存在しない。
相殺されるなら先に自分で自分のUCを潰してしまえ
ただし、呆気に取られるとか頭の中を疑問符で埋め尽くす事は出来る。それはこのUCの効果じゃない。
あとは【目立たない・コミュ力】で自然に近づいて
【早業・暗殺・騙し討ち】
「ウッキッキ! 片っぱしから返り討ちにしてやるッキー!」
花の足場が続く先で、ふんぞり返って猟兵達を待ち受けるエイプモンキー。
自らの能力に対する圧倒的な自信。負けるなど欠片も思っていない顔だ。
と、そこに一番乗りでやってきたのは。
「いやー、今日はお日柄もよく。これは絶好のキマイラフューチャー日和だねぇ。
そちらさんは調子どうだい? なーんて、ご機嫌なのは見れば分かるんだけどね」
雛河・燐(笑って嗤って後悔を・f05039)は緊張感のない様子のまま歩み寄る。
話しているのも敵とのやり取りというよりは、ただの世間話といった印象だ。
「なんだかヘラヘラした奴が来たウッキー! 胡散臭いウッキー!」
「心外だなぁ。真面目も真面目、大真面目だよ。ほら、この真剣な顔見てって」
「お前は鏡見たことないのかッキー!」
戦場らしからぬやり取りに、流石のエイプモンキーも調子を狂わされる。
「このままお前のペースに巻き込まれたらかなわんウッキー! ミーの発明で……」
「あ、その前にさ。初対面のご挨拶に宴会芸をひとつ」
「ウキ?」
「これからこの左手の中から花束出るからね」
燐のとぼけた台詞を聞いて、エイプモンキーの脳裏にびっしりと疑問符が浮かんだ。
これから燐が発動しようとしているのはユーベルコード『驚いた?』。
手のひらから花束を出す手品で、相手を驚かして隙を作るという技なのだが……。
「こっちから出るからね? ちなみに花の色は赤・白・黄だから」
「いやそれ先に言っちゃっていいウッキーか?」
「いくぞー? やるぞー? ほい!」
かけ声と同時に、左手から赤白黄色の花束が魔法のように現れた。
エイプモンキーは驚かなかった。というか事前に説明されて驚きようがなかった。
代わりにしばらく呆気に取られ……我に返った途端に憤慨し始めた。
「な、なんてことするウッキー! 自分からネタをバラしてどうするウッキーか!?
これでは古今東西あらゆる手品のタネを事前に説明することで驚きを失わせる、
全自動手品ネタバレ装置『がっかりイリュージョンくん』が台無しウッキー!!」
自分の能力で作り上げた装置を使う機会がなかったと悔しがるエイプモンキー。
一方の燐は一切意に介した様子もなく、おもむろに花を持っていない右手を引いた。
直後、エイプモンキーがよろめいた。何かに引っ張られたかのように。
いや、いつの間に仕込んだのか、その体にはフック付きワイヤーが引っかかっている。
「それじゃ、これはお詫びってことで……!」
「ウッギィィィィィ!?」
右手でワイヤーを引きながら、燐は左手の袖口に仕込んだ短刀で一撃を見舞う。
「手品ってのは、派手な動きの裏で本命を仕込んどくものさ」
鮮やかなる騙し討ち。
いくらネタを知っていようが、手品については燐のほうが上手だったようだ。
成功
🔵🔵🔴
ララドランカ・アルトリング
何あれ…流石キマイラ・フューチャー…アレが幹部って…性能と見た目の乖離が酷すぎるでしょう…はぁ何か微妙に気が抜けるけど殺りますか…
と言っても、私の手札なんてそんなに種類ないのよね。えっと…【鎖斬禍】なんて使ったら何されるか解らないわよね…マニアック知識なんて解んないし…複雑なUCだとどうなるか解らないから、単純な攻撃を…
【砲閃火】っと……
此れの対処なんてなんでも作れるっていう彼奴ならまぁクラッキングよね?だから予め外部から干渉されたら一切のコマンド(私からのモノも)を放棄して無差別攻撃をするように設定しておいて、っと。
後は、私も巻き込まれないように全力で逃げる!
御宮司・幸村
共闘希望
おじさんのUCの欠点か…夢を見ない、悪夢と言える状況ではなくする、って所か
なら…状況次第で、敵が悪夢のような状況にすればいい
すなわち「仲間の猟兵が優位な状況」は敵にとって、客観的事実
悪夢と言える状況を見逃さず、素早くUC発動
敵の思い込みや仲間が優位な状況がない場合で使えなかったら
反対に悪夢を奪う対象を「苦戦している猟兵」に変更
苦戦や失敗は「悪夢みたいな状況」な筈!
味方の苦境を力に変えて、戦闘力増強を図る
パワーアップしたらこっちのもの
飛翔からマックススピードの【鎧無視攻撃、怪力、鎧砕き、2回攻撃、咄嗟の一撃】に加えて【武器改造】したタクティカルタッチペンで【串刺し、傷口をえぐる】よ!
「ウッキー! 不意打ちとは卑怯だウッキー!」
さっそく一撃を食らい、地団駄を踏んで悔しがるエイプモンキー。
その姿は、とてもとてもシステムの関門を守る幹部怪人には見えない。
「何あれ……流石キマイラ・フューチャー、性能との乖離が酷すぎるでしょう……」
ララドランカ・アルトリング(Δ-6:人造タール・全域戦闘型・f18090)は困惑する。
ブラックならぬアルビノ・タールの彼女は、しかし呆れながらも足を止めない。
その体色と同じく真っ白な長髪をなびかせ、花の足場から跳躍してステージに降り立つ。
「キキッ? また次のが来たウッキー! 今度こそケチョンケチョンだウッキー!」
「はぁ……何か微妙に気が抜けるけど、殺りますか」
ふざけていても敵は敵。ララドランカは精神を研ぎ澄ませ、一瞬で思案を巡らした。
(とは言っても、手札はそんなに種類ないのよね。マニアック知識なんて分かんないし)
例えば、特殊効果を持つ複数の剣で貫く『鎖斬禍(サザンカ)』を使えばどうなるか。
相手はそれぞれの魔法や呪いを相殺する装置を出してくるに違いない。
それらが衝突したらどうなるか想像もつかない。複雑な技は避けるべきだろう。
「それなら、あえて単純な攻撃……『砲閃火(ホウセンカ)』っと」
直後にララドランカがユーベルコードで召喚したのは、五十基にも及ぶ浮遊砲台。
エイプモンキーを包囲するように展開したそれらが、一斉に目標へと砲門を向ける。
あとは号令ひとつで、全方位からの一斉射撃によって蜂の巣に出来る状況だ。
だが、そうなるわけがない。案の定、エイプモンキーは得意気にサングラスを光らせた。
「砲台を遠隔操作するなんて、まるで乗っ取ってくれって言わんばかりウッキー!
そんなのミーのマニアックなスーパーハッカー知識の前では玩具同然ッキーよ!
出でよ『エレクトリカルコミュニケーションくん』! 砲台をハッキングだッキー!」
エイプモンキーの能力で出現したよく分からない装置が、謎の電波を放出した。
瞬く間に統制を失い、ララドランカのコントロール下から離れていく浮遊砲台。
成功を確信してニヤリと笑うエイプモンキー。そのまま砲台を操作しようとして、
《外部からの干渉を確認。全コマンドを放棄し、無差別攻撃を開始します》
「ウキッ?」
突然の電子音声。不測の事態に狼狽えるエイプモンキーに、ララドランカは言い放った。
「これへの対処なんて、まぁクラッキングよね? だから初めから設定しておいたの。
干渉された時点で、全ての命令を受け付けない無差別モードに移行するようにって」
「そ、そんな馬鹿なウッキー! そんなことしたらお前も巻き込まれるウッキーよ!」
「そうね。だから……全力で逃げる!」
ララドランカが脱兎のごとく走り出した直後、空から無数の放火が降り注いだ。
暴走を始めた五十基の浮遊砲台が、デタラメな方向に砲撃を開始したのだ。
「無茶苦茶だウッキー!?」
そこかしこで巻き起こる爆炎の中で、エイプモンキーの悲鳴が響いた。
▼ ▼ ▼
「おじさん、もういい歳だし鍛えてないからさ! こういうのキツいんだけど!」
ララドランカの浮遊砲台から、引っ切りなしに砲撃が打ち込まれ続ける。
その中を、御宮司・幸村(いいかげんサマナー・f02948)は全力疾走していた。
レトロゲーをこよなく愛するごく普通の43歳男性にとって、この運動は少々酷だ。
とはいえ立ち止まったら流れ弾に当たるので、走らざるを得ない。
「ろくに難易度調整されずにリリースされたSTGの鬼畜面みたいだな、これ!
ゲームだったらそれはそれで良しだけど、現実ではおじさんちょっと御免こうむる!」
このままでは埒が明かない。スタミナが切れる前に反撃の糸口を見つけなければ。
幸村は砲撃を掻い潜りながら、エイプモンキーの様子を伺った。
「ウッキー! いい加減にするッキー!」
好都合なことに、無差別砲撃はエイプモンキーにも容赦なく撃ち込まれているようだ。
「……これは好機かな?」
幸村のヘッドマウントディスプレイに隠れた瞳が、一瞬真剣な光を帯びた。
瞬時にユーベルコード発動。『Dream of Dreams.(アクムハジョウネツノユメヘ)』。
召喚されたのは獏。悪夢を食い、その力を召喚者である幸村に与える幻獣だ。
敵の危機的状況は、ある意味では悪夢そのもの。十分効果の対象になり得る。
その姿を認めたエイプモンキーが、砲撃を防御しながら奇声を上げた。
「キキッ! その獏を使ってミーから悪夢を奪い、利用するつもりだウッキーね!?
そうはさせないウッキー! どんな白昼夢でも自由に見ることが出来るこの装置!
名付けて『デイドリームビリーバーくん』! これで悪夢は無効だウッキー!」
誇らしげな顔のエイプモンキーを一瞥し、幸村はふっと苦笑した。
「ま、そう来るよね。だけど、狙いはそっちじゃないんだな」
幸村が視線を向けた先には、砲撃から逃げ回る少女――ララドランカの姿。
「あれもあれで十分悪夢だな。それじゃ、利用させてもらうよ!」
獏は一息にララドランカの「悪夢」を飲み込み、幸村に向かって吐き出した。
実体化した悪夢が幸村の体を覆い、莫大な力と飛翔能力を与える!
「こうなればこっちのものだ。オールドゲーマーの戦い方を見せてやろう。
大抵のシューティングゲームってのは……懐に飛び込むのが必勝法なのさ!」
瞬きひとつで最大速度まで加速。超強化された幸村がエイプモンキーに肉薄する。
その突進の勢いをも込めて、愛用のタクティカルタッチペンが敵の装甲を打ち貫いた。
「ウキィィィィ!?」
逆境を力に変えるゲーマー魂が、鬼畜ステージを乗り越えた瞬間だった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ユキ・コシイ
わたしのUCは歌…真空、防音、逆位相…など、音を消す方法が弱点
死角も上下に後ろと…盛りだくさんね
されど…これらは越えられる壁。今それを示して見せるー
そう言い、【パフォーマンスドローン】の眩い光の下、戦場にUCを響かせる
…今歌ってるのはドローンが作り出した立体映像の囮だけどね
歌声は切り離した【ブテスT】の録音
生歌でなくとも…「サウンドデバイスを介したわたしの歌」というUCの発現条件は満たされる
電気信号の形で解析・編集し…臨場感ある精巧な再現が可能なのは音の強み
本物のわたしは【迷彩】機能で姿を消し、別方向から【スターブリンク】で狙う
敵の音対策で動きが悟られ難くなる…その瞬間にチャンスがあるはず…!
動力を使い果たした浮遊砲台が次々と機能停止し、ようやく静けさを取り戻した戦場。
「ひ、酷い目に遭ったウッキー……って、今度は何ウッキーか?」
砲撃の雨あられに加えて渾身の一撃を叩き込まれたばかりのエイプモンキー。
それでも妙なしぶとさで立ち上がった怪人が見上げた先には、新たな飛行物体があった。
ドローンだ。それもスポットライトなどを搭載した、演出用のパフォーマンスドローン。
そのドローンに先導されユキ・コシイ(失われた時代の歌い手・f00919)が姿を現す。
身に纏うその華やかなステージ衣装が、色とりどりの花の足場にはよく似合う。
先ほどまでの砲火飛び交う戦場とは、まるで雰囲気が一変したかのようだ。
「今度は歌手かウッキー? 対処しやすいのが来てくれて有り難いッキー!」
エイプモンキーは余裕綽々といった様子で胸を張った。
(そう……わたしのユーベルコードは歌……。真空や防音など、音を消す方法が弱点。
死角も上下に後ろと……盛りだくさんね。それは、私自身が一番よく分かってる)
エイプモンキーに言われるまでもなく、ユキは自分の弱点を十分把握していた。
「されど……これらは越えられる壁。今それを示して見せる――」
その言葉は決意の証。パフォーマンスドローンからの眩い光が差す場所が、彼女の舞台。
サウンドデバイスを片手で握り、ユキ渾身のユーベルコードが響き渡る。
曲はポップス「The Purple」。すれ違う二人の心情を切なく綴った歌。
聴いた者の心を揺さぶり、一時的に戦意を喪失させて行動不能にする力があるが……。
「やっぱり歌だウッキー! そんな見え見えの技にやられるミーじゃないウッキーよ!
大してマニアックじゃないけども、ここはノイズキャンセリングで応戦ウッキー!
指向性音波発生装置『サウンドオブサイレンスくん』! 歌を打ち消すウッキー!」
エイプモンキーの生み出した装置から、逆位相の音波が発せられる。
音波とは即ち波。山と谷が真逆の波形の音をぶつければ、打ち消し合って消えてしまう。
ヘッドホンなどにも使われるノイズキャンセリングの原理が、ユキの歌を相殺する。
だが、音波を打ち消してなお歌い続けるユキの姿に、エイプモンキーは疑問を覚えた。
「……あーっ分かったウッキー! あれは偽物! ていうか立体映像ウッキー!」
慌てて周囲を見渡すエイプモンキーの死角に、ユキは迷彩で姿を隠して回り込んでいた。
(電気信号の形で解析・編集し……臨場感ある精巧な再現が可能なのは音の強み)
今までの歌はテレビウム型のアームドモジュール『プテスT』が再生したもの。
ユキのユーベルコードは、ユキの歌声でさえあれば録音でも問題なく発動する。
遠隔再生した本物のユーベルコードを囮に、奇襲を掛けるこの作戦。
「音を消すことに夢中で私の足音に気付かなかった……その隙を狙う……!」
「ウッギーーーーー!?」
浮遊光学砲スターブリンクから放たれた光条は、鮮やかにエイプモンキーを飲み込んだ。
成功
🔵🔵🔴
ユーイ・コスモナッツ
ユーベルコード【天球の虚数変換】!
受けるエネルギーを虚数に変換してしまうわけですが、
これを相殺するエネルギーを加えるとすると……?
数学的にものすごく高度な装置を作るのでしょうが、
そこは問題ではありません
結果だけに着目すれば、
「バリアが消えるかわりに自由に身動きできるようになる」
つまり五分の条件で仕切り直しになるというだけです
マニアックを極めるということは、
必ずしも複雑さを極めることとイコールではありません
シンプルイズベスト!
さあ、小細工抜きで正々堂々戦いましょう
そして「正々堂々と戦う」ことにかけて、
騎士以上のマニアなど存在しません!
「武器受け」「盾受け」そして「勇気」を武器に
いざ! 勝負ですっ
「きょ、今日は不意討ちばっかり食らってる気がするウッキー……」
高出力ビームで焦げ目のついたエイプモンキー。流石にダメージが蓄積してきたようだ。
だが敵もさる者ひっかく者。この程度で倒れるようでは、システムの門番は務まらない。
冗談みたいな名前と顔だが、幹部怪人の実力は伊達ではないのだ。
そのエイプモンキーの前に凜として立ちはだかる、新たな猟兵がひとり。
「これより先は、宇宙の騎士が真っ向からお相手します!」
ユーイ・コスモナッツ(宇宙騎士・f06690)は朗々と名乗りを上げる。
まだ幼い少女ながらも、敵を前にして一歩も引かない姿は騎士を名乗るに十分。
エイプモンキーもその気迫を感じ取ったのか、仁王立ちの姿勢で腕組みをした。
「真正面から来るとはいい度胸ウッキー。もっともミーには通じないウッキーが」
「果たしてそうでしょうか? あなたの能力こそ、私の盾を突破できはしません!」
「ムキー! ミーの能力は絶対無敵ウッキーよ! どんな技でも無駄ウッキー!」
憤慨して勢いよく突っ込んでくるエイプモンキーへ、ユーイは真っ直ぐに立ち向かう。
直後、発動したユーベルコードが球状のバリアとなってユーイを覆った。
「お手並み拝見ですっ! 天球の虚数変換(セレスティアルスフィアシールド)!」
外部から加えられたエネルギーを虚数に変換し、完全に無効化してしまう不可侵の壁。
ユーイ自身も身動きが取れないのが欠点だが、本来ならば突破は不可能なはずだ。
「キキッ! ミーのマニアック知識の前では、虚数化くらいお見通しウッキー!」
だが、その不可能を可能にするのがエイプモンキーの能力が生み出す装置なのである。
「マニアック知識によれば、高次元では虚数も意味を持つようになるらしいウッキー。
つまり高次元時空に超ひも理論でなんやかんやすれば虚数もなんやかんやウッキー!
超ひも理論演算装置『ストリングプレイスパイダーベイビーくん』で突破ッキー!」
エイプモンキー自身も分かってなさそうな理論だが、恐るべきことに装置は作動した。
装置から発せられる波動が時空を歪ませ、虚数化を中和していっているようだ。
バリアが完全消滅するのは時間の問題。喜び勇んだエイプモンキーが豪腕を振り上げる。
「これで終わりウッキー!」
「いいえ、始まりです!」
「ウキッ!?」
エイプモンキーが振り下ろした腕を、ユーイの盾と剣とが受け止める。
バリアが無効化されたことで行動不能も解除され、自由に動けるようになったのだ。
「これで状況は五分と五分! 仕切り直しです!」
「いいや、どのみちミーのマニアック知識にお前は及ばないウッキー!」
「マニアックとは、複雑さを極めることとイコールではありません!」
全身に力を込めてエイプモンキーを押し返し、ユーイは剣を構え直す。
「そして『正々堂々と戦う』ことにかけて、騎士以上のマニアなど存在しません!
騎士の誇りと勇気、そして私なりのマニアックさに懸けて、真っ向勝負ですっ!」
堂々と言い切られてしまっては、流石のエイプモンキーも応えざるを得ない。
「それがお前のマニアックなら、ミーが正面から蹴散らしてやるウッキー!」
「望むところです! いざっ!」
交錯する両者。鉄の豪腕と白銀の剣とがぶつかり合い、そして。
「な、なかなかのマニアックだウッキー……!」
ユーイのクレストソードは、確かにエイプモンキーへ一太刀を見舞ったのだった。
成功
🔵🔵🔴
千栄院・奏
弱点か。私の評判……なんてどうしようもないだろうし、鎖鋸剣を使う以上UCの弱点=鎖鋸剣の弱点だからそこだろうね。
硬い物、遠距離に弱いといえば弱いけど、そんな知識も何もない対策じゃないだろう。
チェーンソー固有の弱点と考えると……熱可塑性樹脂を切ると刃にこびりついて切れ味が落ちることを突いた熱可塑性樹脂の壁なりの生成かな。
・対策
樹脂が刃にこびりつくのは摩擦熱で軟化するせい。刃を冷やしながら切れば樹脂は付着せず削り取られるだけだよ。
刃を冷やす手段はスピリットヒーローとしての魔術に頼ろう。
両手の武器を別々に振るうとか、武器を振るいながらの魔術行使とか、そういうのは得意だしね。
「ウッキー……まさか猟兵共がここまでやるとはウッキー……!」
斬撃をその身に浴び、いよいよ息も絶え絶えといった様相のエイプモンキー。
その姿を見据え、千栄院・奏(『スプラッター』・f16527)は冷静に分析する。
「あと一押し、と言ったところかな」
これまでの戦いで、敵の能力は万能であっても無敵ではないと十分に理解できた。
敵の対策をあらかじめ読むことさえ出来れば対処は可能。奏は静かに得物を構える。
「さて、私のユーベルコードの弱点は、果たしてどう突いてくるつもりかな?」
直後にエンジンの始動音。奏の武器は徐々に速く、激しく、けたたましく唸りを上げる。
奏のヒーローネーム『スプラッター』の由来でもある愛用の武器、即ちチェーンソーが。
「な、なんて物騒なウッキー! ご近所さんの目が気にならないウッキーか!?」
「いや、もうとっくに噂になっているというか……確かに弱点ではあるね、私の評判」
「ならばお前を社会的にアレする装置を……いや、それじゃつまらんウッキー!」
エイプモンキーは謎の装置を能力で生み出し、奏に向かって掲げた。
「どのみちミーの能力の前では、お前のチェーンソーなんてまったく無意味ウッキー!
そしてお前が惨めに負けてしまえば、どのみち評判もガタガタ間違いなしウッキー!」
「それは……困るかもしれないな。もっとも、ありえない仮定だけれどね」
「あり得ないかどうか、試してみるウッキー!」
言われなくてもそのつもりだ。奏は片手で唸るチェーンソーを構えた。
普段は両手もって二刀流ならぬ二鋸流で戦うことを、エイプモンキーは知らないだろう。
だが今回は一振りでいい。敵の講じる策を破るには、これが最善と奏は判断した。
「鎖鋸剣【桜花】……リミッター解除!」
ユーベルコード発動――血塗れの『スプラッター』。
触れるもの全てを肉塊に変えかねない凶器を前に、しかしエイプモンキーは怯まない。
「こんなもの、ミーのマニアック知識を前にすればちょちょいのちょいウッキー!
チェーンソーは何でも切れそうウッキーが、切っちゃいけないものもあるウッキー!
それは『プラスチック』! どろどろ溶けてチェーンに絡みついてしまうウッキー!」
装置から勢いよく流動性の何かが噴出され、瞬時に硬化して半透明の壁となる。
このプラスチック製の壁にチェーンソーが触れた瞬間、壁は溶けて刃を絡め取るはず。
だが鎖鋸剣【桜花】は全く減速しない。それどころか唸りを上げて壁を切断していく。
「そんな馬鹿なウッキー! なんで溶けないウッキー!?」
「プラスチック……正確には『熱可塑性樹脂』は、確かにチェーンソーの天敵だよ。
でも、樹脂が溶けるのは刃が熱を帯びるからだ。それなら、冷やしてやればいい」
片手のチェーンソーで斬りつける一方、奏の反対の手は既に魔術を行使していた。
スピリットヒーローに由来する力、氷の魔力によって冷却された刃が壁を切り開く。
少しずつ、少しずつ、樹脂を削り取り、その後ろにいる獲物へとチェーンソーが迫る。
「ウッキィィィィィィィ!?」
スプラッター映画さながらのシチュエーションに、エイプモンキーの絶叫が響き渡った。
大成功
🔵🔵🔵
真守・有栖
狼と猿。
どっちがお山の大将か決着をつける時が来たようね!
刃狼たる私が受けてたつわ……!
剣刃一閃。
中れば斬れど、中らねば斬れぬ。
すっっっごいよけるっキー(仮)で対策してくるはずね!
まずは猛狼たる勢いで手数で勝負!
ぜぇ……っ…ぜぇ……や、やるじゃないの!?
お猿さんにきっきーと連撃を捌かせ、弱点を実証……したと思わせるわ。
うっきー!と調子に乗って反撃してくるでしょうね。
そう、この時を待っていたの!
相手の拳の軌道に攻撃を防ぐ素振りで刀を“置く”わ。
中らないなら、中ってもらうまでよ!
言ったでしょう?
受けて、断つと。
吼えろ、月喰……!
念じるは“断”の一意。
迸る光刃が相手の勢いのままに断裂するわ!成敗……!
「ふふん、なかなか良いタイミングで登場できたみたいね!」
真守・有栖(月喰の巫女・f15177)はビシッと満身創痍のエイプモンキーを指さした。
「ついに運命の時よ! 猿と狼、どっちがお山の大将か決着をつける時が来たようね!」
「自分からお山の大将を名乗るウッキー!? ていうか勝手に因縁付けるなウッキー!」
「昔から言うじゃない、犬猿ならぬ狼猿の仲って。私たちは戦う定めにあったのよ!」
別にそんな言葉はないし定めもないが、何となく雰囲気に飲まれるエイプモンキー。
「ミーの知らないマニアック知識とは生意気ウッキー! 狼は猿の敵ウッキー!」
「いいわ、掛かってきなさい。刃狼たる私が受けてたつわ……!」
有栖が抜き放った光刃『月喰』の刃が煌めき、光の斬撃がエイプモンキーを襲う。
ユーベルコード『剣刃一閃』は、斬りつけた物体を問答無用で切断する必殺の一撃だ。
「ウキーッ! なかなか素早いウッキー! 速すぎて装置に名付ける暇ないウッキー!
とにかくこの『すっっっごいよけるっキー(仮)』でお前の剣は避け放題ウッキー!」
適当極まる名前の装置が起動すると、エイプモンキーの体がぐにゃりと曲がった。
そして続けざまに繰り出される有栖の斬撃を、柔軟な体を駆使して避けていく。
「や、やるわね、猛狼たる私の連撃を捌くなんて……!」
「ウキキッ! 当たらなければ斬りようがないウッキー!」
いかな剣刃一閃といえども、命中しないのであれば素人剣法と変わらない。
怒濤の斬撃を悠々と躱し続けるうちに、有栖の勢いは徐々に衰えていった。
「ぜぇ……っ…ぜぇ……や、やるじゃないの……!?」
荒い息をつく有栖。エイプモンキーはそんな姿を見てここぞとばかりに調子に乗る。
「どうしたもう終わりウッキーか? やはり狼にお山の大将は務まらんウッキーな!」
ぐにゃぐにゃに曲がっていた腕が硬度を取り戻し、そのまま大きく振りかぶられた。
体力を使い果たした有栖にとどめを刺そうと、エイプモンキーは一撃を繰り出す――。
「――そう、この時を待っていたの!」
繰り出されたエイプモンキー渾身のパンチ、その軌道の先。
有栖は己の愛刀を、敵に刃を向けてそっと『置いた』。
避けられるなら、振るわなければいい。中たらないなら、中たってもらうまで。
今更パンチの勢いを殺すことも、腕を流動化させることも間に合わない!
「ウッギィィィィィィ!!!」
進路上に『置かれた』刃が勢いあまって拳に食い込み、絶叫を上げるエイプモンキー。
そして、この好機を見逃す有栖ではない。
「最初に言ったでしょう? 刃狼たる私が――『受けて』、『断つ』って」
全ては読み通り。最後の最後で敵が勝ち誇るところまで読んでの一撃だ。
そして、一度当たってさえしまえば……後は、そのまま断ち割るのみ!
「念じるは“断”の一意――吼えろ、月喰!」
月の光の奔流が月喰の刀身から迸り、刃となって相手の勢いそのままに斬り進む。
そして僅か一刀の元に、光の剣はエイプモンキーの巨体を両断した。
何度もしつこく復活し続けてきたはずのエイプモンキーの体が大きく傾く。
「み、ミーはここまでウッキー……あとは……たの……」
仲間の怪人に託す言葉を残し、エイプモンキーは数多の装置ごと爆発四散した。
既に幾度となく撃破され続けたエイプモンキーが、これ以上復活するのは不可能だ。
「成敗っ!」
有栖が月喰を鞘に収める。
それと時を同じくして、猟兵達の前から次の関門へ続く花の道が伸びるのだった。
成功
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