バトルオブフラワーズ⑦〜つよく、うたえ
●り、り、り、りん。
まっぷたつに割れてしまった、キマイラフューチャー。
それはキマイラフューチャーの中枢『システム・フラワーズ』のメンテナンスルートが開放されたという証拠であった。
りん、ころ、りん。
ステージに甘く響くオルゴールの音色。
それは、過去を、思い出を唄うメリーゴーランド、ギヴの言葉なき歌。
ころ、りん、ころ。
その歌は、切なく、悲しく、心に沁みる音色。
彼女は唄う。
骸の海に捨てられた筈の過去を。
●グリモアベース
小さく会釈をしたケビ・ピオシュ(テレビウムのUDCメカニック・f00041)はハットを手に猟兵達を見渡し、首を傾いでから言葉を紡ぐ。
「皆、事情は大体もう知っているだろうが、もう一度聞いてくれるかい?」
キマイラフューチャーのオブリビオン・フォーミュラ、『ドン・フリーダム』。
オブリビオン・フォーミュラとは、世界にオブリビオンを染み出させる能力を持つ、各世界に1体のみ存在すると言うオブリビオンである。
そのドン・フリーダムに占拠された、この世界の中枢『システム・フラワーズ』が救援要請を行った事を発端とする、大戦争『バトルオブフラワーズ』。
猟兵達が『システム・フラワーズ』にたどり着く為には、周囲を守る6つのステージをすべてオブリビオン達から取り戻す必要がある、と。
ケビは顔のモニタをキマイラフューチャーのイラストからステージへと切り替え、ハットを被り直す。
「今日はそのシステム・フラワーズへの道を塞ぐ敵を、皆には倒してきて貰いたいのだが……、ステージ毎に特殊なルールがある事はもう聞いているかな?」
『ザ・ステージ』にはそれぞれ特殊な戦闘ルールがあり、ルールに沿わない戦い方は何の意味も成さない。
今回の目標のステージに居る敵は一体。
そしてこのステージのルールは、『パッショネイトソング』だ。
「ここでは、戦闘中に自分自身を奮い立たせる歌を歌い続けて貰う事となる。歌わずに行った攻撃は無駄になるだけのようでね。……君たちの心の歌、聞かせて貰えるかな?」
ケビはもう一度首を傾ぐと、ぱちりとモニタを顔に切り替えて猟兵達を見やった。
君たちならば、ステージを取り戻す位朝飯前だろう、と言うように。
絲上ゆいこ
こんにちは、いつもお世話になっております。
絲上ゆいこ(しじょう・-)です。
今回もよろしくお願い致します。
●ザ・ステージ『パッショネイトソング』
このステージでは、歌を歌わずに行った攻撃は効果を発揮しません。
『秘密にしている事をカミングアウト』したり『恋人への告白を歌にして捧げる』など、強い思いを歌に乗せる事ができれば、より強力な攻撃を行う事が出来るでしょう。
また、歌を歌わずに敵を撃破した場合、強制敗北となってしまいます。
つまり、歌いながら敵をいっぱい叩いて下さい。
ギヴはオルゴールの音色で歌っています。
過去を、楽しい思い出を、幸せな記憶を。
すべて断ち切るように。
ネガティヴソングにはハッピーソングで!
猟兵の皆様には、是非是非、未来を、希望を、幸せを、愛を。
強い思いで歌っていただける事を絲上は希望しておりますが、大体なんでも大丈夫です。強い思いが籠められていればいればいるほどパンチ力が増します。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております!
第1章 ボス戦
『ギヴ』
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POW : あそんであげる
小さな【メリーゴーランド】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【遊園地】で、いつでも外に出られる。
SPD : しあわせになあれ
いま戦っている対象に有効な【すてきなプレゼント】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ : ……わすれちゃったの?
自身が戦闘で瀕死になると【楽しかった思い出】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
イラスト:棘ナツ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠コルチェ・ウーパニャン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
メミニ・トリスティス
オルゴール、綺麗な音色ね。
でも、どこか悲しい音色。
いつまでも聴いて居たいけれど、オブリビオンは放っておけないの。
ここでは歌の力が必要なの?
少し恥ずかしいけれど、必要とあらば歌って見せる。
まずは、ユーベルコード【リザレクト・オブリビオン】を発動。
呼び出した本人が戦えないデメリットも、【歌唱】に集中できると考えれば悪くはないかな。
歌にはヤドリガミとして身体を得る前、
器物として過ごした思い出を乗せて歌うね。
わたしを大切に扱ってくれた主の事。
何気ない日常を見詰め続けていた事。
いつの頃からか、主に恋をしていた事。
そのどれもが、今のわたしの心の支え。
アドリブや他の方との絡みも歓迎です。
ユーリ・ヴォルフ
炎のように現れるが
歌おうとするとどうにも照れる
だが遊園地への強制吸引は『オーラ防御』で断固拒否する
くっ、ここまで来たのだ…覚悟を決めるか…!
私には恋人はいないが…思いを寄せる相手がいる
この気持ちは気づかれてはいない筈だ
知られることのないこの戦場だからこそ!
力の限り歌うとしよう!
真雪のように白い耳
触れれば綿の柔らかさ
弾ける笑顔は真夏のパッション!
毛玉ではない。獣人だ!
『属性攻撃』炎で爆発を起こしドラム代わりに
盾を奏でてアクセントをつける
情熱に滾るこの愛の炎で
未来の先まで守護しよう!
それは熱さなのか照れ故なのか
歌い全身が赤く染まっていく【皇竜炎陣】!
照れ隠しに敵を無差別攻撃だ
うおおおおおおお!
●恋のうた
りん、ころ、りん。
回るメリーゴーランドは、どこか切なく甘い響きを絶え間なく零し。
くうるりくるり、回るギヴは過去を唄う。
あの愛しき人の香りを。
「……綺麗な音色ね、でも、どこか悲しい音色」
いつまでも聴いていたいような、人を戀しむ音色。
それは、自らの音にも似ているような気がして。
メミニ・トリスティス(ホーンテッドコール・f03253)は銀髪を揺らして、ステージへと立つ。
おいで。
彼女の小さな声かけに応じるは、二体の死霊の姿。
伝える事は、唄うことは、語ることは、少しだけ恥ずかしいけれど。
このステージでは、心を籠めた歌を歌わなければ攻撃が通る事は無い。
火花を散らして、ステージへと降り立ったユーリ・ヴォルフ(叛逆の炎・f07045)へとキリキリと軋む音を立ててオルゴールは、瞳なき貌をへと定め。
りりんと響いた甘い音を、宙に炎の魔力を散らして振り払ったユーリは、息を大きく吸った。
吐いて、吸って。深呼吸。
唇を小さく噛むと、首を幾度か振る。
そう、彼は今とても照れていた。
そりゃあ。
心をこめて即興の歌を歌えだなんて、恥ずかしいにきまっているのだ。
くうるりくるり。
プリマのように回るオブリビオンを睨めつけて、一度口元を手のひらで覆ったユーリは喉を鳴らす。
ここまで、きたのだから。
「――く、……覚悟を、決めるか……ッ!」
彼がここまで恥じるには、そりゃあ理由があるもので。
『強い思いをこめた』歌と言われて、一番強い思いをこめられる事を考えた結果だ。
「……あなた、恋をしているのね」
メミニの言葉はただの勘であるが、ユーリが問いかけに肩を跳ねた事に確信を得る。
わかってしまうものなのだ、告げる事の出来ない想いを胸に秘めた瞳は。
だって。
片目を眼帯に覆われた眸を細めると、メミニはギヴを指差した。
死霊の騎士と蛇竜が、駆ける。
「わたしもよ」
「……!」
唇を開いた彼女は唄う。
メミニを大切に扱ってくれた、主の事を。
自らがまだ、ただの時計であった頃の記憶を。
かち、こち。
揺れる振り子のように、リズムをとって。
ギヴの鋏と死霊の騎士の刃が交わされ、どこか澄んだ音が響く。
何気ない館での日々。
見つめるだけで幸せであったはずなのに。
いつか、その想いは。
――。
そう、これは恋と呼ばれるものであったのでしょう。
メミニの歌にあわせて、駆ける死霊達。
それに応じたギヴは巨大な鋏を振るって応戦する。
ちりちりと爆ぜる火花。
その歌声に背を押されるかのように、ユーリはぎゅうっと拳を握った。
恋の歌を、先に少女に歌わせてしまった後ろめたさも少しはある。
少しはあるが。
「――私には、思いを寄せる相手がいる」
いつも一緒に行動する事の多い彼女は、今日は一緒にはこの戦場に来ていない。
この気持ちは、彼女には未だ気づかれていない筈だ。
その思いを、知られる事の無い戦場だからこそ。
……本当は、少し言葉にしてみたかったのかもしれない。
さあ、未だ告げる事のできぬ思いを唄おうか。
ユーリは、片足を軸に旋回するように一気に地を蹴って。
火球の弾幕を叩き込んでリズムを作り出す。
真雪のように白い耳。
触れれば綿の柔らかさ。
弾ける笑顔は真夏のパッション!
ユーリに龍気が満ち、ギヴがガードに上げた鋏に押し込まれた炎と死霊の刃がきん、きん、きん、とリズムを刻む。
毛玉ではない。獣人だ!
炎がユーリを包み。
飛び込んだ彼の捻られた身体の遠心力は脚へと委ねられ、ギヴへと振り下ろされる。
駆ける炎の軌道は半円を描き、交差させた鋏で蹴りを受け止めたギブの死角。
逆側より喰らいつく牙は、死霊の蛇竜のものだ。
情熱に滾るこの愛の炎で、未来の先まで守護しよう!
彼女をいつまでも護ると、ユーリは唄う。
――そのどれもが、今のわたしの心の支え
過去がいつまでも自らを支えると、メミニは唄う。
歌の照れを隠すかのようにユーリは闘気を炎に変えて、赤く燃える拳を叩き込み。
同時に死霊の騎士は、逆袈裟斬りに刃を振り上げた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
メリー・メメリ
キマフューはメリーが守る!
お歌もとくいだよ!
何を歌おうかな……
そうだ!!かかさまに教えてもらったお肉がおいしくなる歌!
じゃーん、かかさま特製のお弁当!
メリーのお弁当箱に、おにくをぎゅぎゅっとつめこんで
あいじょうたーっぷり塩コショウ!
ととさまのしっぱいハンバーグだって歌といっしょにおいしくなーれ!ってかかさま言ってた!
これを食べればね、元気いっぱい!
フードファイト・ワイルドモード!
かかさまがメリーのために作ってくれたお弁当と、その歌があれば
ぜったいぜーったい負けないもん!
大食いをつかってたくさんたべて、たくさん戦う!
とーっても楽しい歌でしょー!
寧宮・澪
謳い、ましょー……幸せに、いつまでも、楽しい、歌をー……。
いつだって未来は決まらない。
これまでの過去がそれを支えるから。
どうぞ断ち切らないで。
貴方が歩んだ道は貴方の幸せに繋がっているの。
さあ幸せな告白を歌いましょう。
優しい眠り、ふかふかなもの、可愛い子猫、美味しい食べ物。
きれいな景色、寂しい夕日、星空。
出会った人、出会う人すべて。
今までの過去、これからの未来。
私を包む、世界を私は愛してる!
そんな思い、【祈り】、【鼓舞】乗せて、【歌唱】、しましょー……。
全部、大好き、なんですよー……。
【謳函】にのせて……強化しながら、戦いましょう、ねー……。
アドリブ、連携歓迎ですよー……。
●大好きの歌
歌に包まれたステージ。
こし、こし、と瞳を擦った寧宮・澪(澪標・f04690)は、夜色の翼を小さく広げて、畳んで。
「謳い、ましょー……、幸せに、いつまでも、楽しい、歌をー……」
「メリーも、メリーも! お歌はとくいだもん!」
「では、ごいっしょにー……?」
立派な黒い角。ぴしーっと手をあげて宣言した良い子のメリー・メメリ(らいおん・f00061)が、澪の返事にうわーいと跳ねて、跳ねて。
「でも……何を歌おうかな……?」
そのままメリー周りをキョロキョロ、鞄を確認。
「あ!! そうだ!!」
「わ」
だんだんウトウトしてきた澪が、その声にびっくりして目を開き。
あっ、やっぱりちょっと閉じた。
「じゃーん、かかさま特製のお弁当! かかさまに教えてもらった、お肉がおいしくなる歌!」
メリーはライオンのマークのフォークを片手に、ぴかぴか笑顔。
ぱんぱかぱーんっな感じでお弁当箱を取り出した。
「なるほどー……、では、ごいっしょにー……」
微睡みに眠たげな瞳を瞬かせた澪は、吐息に喉を震わせる。
いつだって未来は決まらない。
これまでの過去がそれを支えるから。
軋む、軋む、オルゴールの音。
ギヴの奏でる、思い出を断ち切る音を柔らかく包み込む。
どうぞ断ち切らないで。
貴方が歩んだ道は貴方の幸せに繋がっているの。
響く歌声はひどく澄んだ音で、ステージの隅から隅まで凛と紡がれ。
お弁当箱をあけたメリーが、一口ハンバーグをぱくり。
もちろん、メリーだってふざけているわけではない。
彼女はフードファイターだ。
食べる、齧る、飲み込む。
おいしい!
幸せ笑顔で、がおーっとポーズを決めたメリーは歌を唇に乗せて。
重ねて唄う澪は、くうるりくるり、箱の形をしたガジェットを手のひらの上で回す。
メリーのお弁当箱に、おにくをぎゅぎゅっとつめこんで、あいじょうたーっぷり塩コショウ!
ととさまのしっぱいハンバーグだって歌といっしょにおいしくなーれ!
もう一口、もう一口。
これを食べれば、げんきいっぱい!
お弁当箱をすっかり開けてしまったメリーは、赤い頭巾の襟をはたはたはためかせて、一気に跳ねた!
優しい眠り、ふかふかのおふとん、ふかふかのまくら。
美味しい食べ物、可愛い子猫に、きれいな景色、寂しい夕日。
空一面の星空。
ガジェットに籠められた澪の歌声はくうるりくるり、周りながら戦う者達を鼓舞する力を生み出す。
思い出を断ち切るような旋律を軋ませるギヴの脚が掲げられ、メリーのフォークとカチあう。
鋏を蹴り上げるみたいにステップを踏んだギヴが、刃を掲げ。
メリーは飛び跳ねて、交互にみぎ、ひだり。
かちん、かちん。
交互に繰り出されるスプーンとフォークが、鋏と当たってリズムを刻む。
出会った人、出会う人すべて。
今までの過去、これからの未来。
「ね、ね! たくさんあそんだあとのご飯のおいしさをしってる? かかさまのお弁当はとってもおいしいんだよ!」
だからね、だからね。
かかさまのお弁当と、かかさまのお弁当の歌があれば、ぜったいぜーったい負けないもん。
ぱ、と笑んだメリーはバックステップ。
地面を蹴って、一気にギヴの懐へと潜り込んで。
メリーと澪の歌声が重なる。
――私を包む、世界を私は愛してる!
キマフューはね、さいきょうメリーが守る!
澪の強化の加護の乗った、メリーのぐるぐる、ぱんち!
「えっへん、とーっても楽しい歌でしょ!」
「……本当、ですねー」
ぴょーいと飛び退いたメリーは胸を張って、ふふーんとポーズ。
澪は瞳を細めて、小さく頷く。
この世界は幸せでも満ちていて。
この世界の未来は決まっていない。
……だから、全部、全部、大好きなんですよ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
真守・有栖
歌っていいのね?思う存分に歌っていいのね!?吠えてもいいのね?!
えぇ、この歌狼たる私にお任せあれ!
存分に歌い吼えてあげるわ!
もっちろん!歌うのは狼のこと。
つまりは才色兼狼たる私のことよ!
私が如何に素敵で可憐で猛々しい狼かを教えてあげるわ!
せぇーの。
わったっしはおおかみ
とっっってもおおかみ
かしこく!賢狼っ
きれいで!麗狼っ
つよくて!強狼っ
ゆうかん!勇狼っ
まっだまっだあるわよ
(以下あまりの狼っぷりに省略)
どう?とっっっても狼でしょっ
わったっしはおおかみ
すっっっごいおおかみ
おみみをぴくぴく
おめめをぱちくり
おはなをくんくん
しっぽはもふもふ
くるりとまわって
わぉぉおおおぉおおおぉぉおおおおん……!!!
ペイル・ビビッド
あたしは
人より歌がうまいとか
華麗なダンスが踊れるとか
そういうのはないけれど…
乗るしかないよね、この舞台に!
平筆で地面やステージを叩きつつ
足踏みと手拍子を交えて
リズムを取ったら
思いつきの歌を
♪道具がなけりゃなにもできない?
そんなことないもん
腕をゆらゆら
足をぐいぐい
ちょっとのひらめき足したなら
ここがあたしたちの遊び場
今日はどんな
ゲームにしよう?
最後に大きく筆を振り上げ
スパッタリングスターを花火のように打ち上げる
他の仲間の歌にも
手拍子や平筆でのストンピングで応援してみよう
●わたしのうた
きょろきょろ。
ステージの端からひょっこり顔を出した真守・有栖(月喰の巫女・f15177)は獣の耳をぴーんと立てた。
「歌っていいのね?」
首を傾げる。
「思う存分に歌っていいのね!?」
いいよー。
「吠えてもいいのね?!!!?」
それはどうかなー。
「えぇ、えぇ! この歌狼たる私にお任せあれ! 存分に歌い吼えてあげるわ!」
立派なお胸に掌を当てて、私にお任せなさいのポーズをとった有栖がふふふ、と笑った。
狼の尾がゆっくりとふさふさと揺れて、有栖の大きな心を顕すかのよう。
もちろん、歌の題材は決まっている。
狼の事だ。
しかも、ただの狼では無い。
才色兼狼たる、有栖の事だ!
「私が如何に、素敵で! 可憐で! 猛々しい狼かを教えてあげるわ!」
うんうんと頷いたペイル・ビビッド(淡色弾ける筆先の軌跡・f01836)が巨大な平筆でステージを叩いて、リズムを取り出し。
その音頭に合わせて有栖は一度、くうるりと回った。
せえの。
わったっしはおおかみ、とっっってもおおかみ!
かしこく! (賢狼っ)
きれいで! (麗狼っ)
つよくて! (強狼っ)
ゆうかん! (勇狼っ)
何処からともなくコーラスが聞こえてくるわけでは無い。
当然のように有栖が歌声でコーラスを入れているのだ!
まっだまっだあるわよ!
気持ちよさそうに歌う有栖に合わせて、平筆で半円を描いて振るうと、足先でタップタップ。
リズムを取り続けるペイル。
歌のうまい人たちもこのステージには居た。
無闇に自信満々に歌う人もいる。
とん、ととん、とん、ととん。
刻むリズム、響くビート。
ペイルは人より歌がうまいわけでもない、そりゃあスカイダンサーだ。
少しは踊れるが、それでも華麗なダンスが踊れる訳でも無い。
それでも、そういう事はできなくとも。
このステージに来たからには、乗るしかない、と!
道具がなけりゃなにもできない?
そんなことないもん。
人を、ざわめきを、過去を高く響かせたギヴに向かって、同時に駆けだした有栖とペイル。
有栖は地を駆ける獣の勢いそのまま。ペイルは平筆を地面に突き立てて、棒高跳びの要領で高く跳躍を。
ちょっとのひらめき足したなら、ここがあたしたちの遊び場。
今日はどんな、ゲームにしよう?
わったっしはおおかみ、すっっっごいおおかみ。
どう、どう、とっっっても狼でしょっ!
拍子だけ合わせた即興の歌声が絡み、交わり、重なって。
奇妙な調和が生まれる。
おみみをぴくぴく、おめめをぱちくり。
腕をゆらゆら、足をぐいぐい。
おはなをくんくん、しっぽはもふもふ。
頭はぐるぐる、ひらめきぴかぴか。
跳躍の最頂点で、くうるり一回転。
ギヴの頭上に向かって喉を震わせながら、全身で平筆を円の動きで振り下ろすペイル。
メリーゴーランドの直前できゅっと足を止めた有栖は、大きく口を開いて――。
わぉぉおおおぉおおおぉぉおおおおん……!!!
平筆の先から弾かれた塗料が光弾と化して、散弾のように敵へと降り注ぎ。
ギヴにもし鼓膜があれば、壊れてしまっていたかもしれない。
ビリビリとステージを揺るがす有栖の咆哮。
ギヴはガードに腕を上げるが、音には、光には、歌には、そんなもの関係ない!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
境・花世
猟兵だから訪れたキマイラフューチャーで、
初めてアイドルのステージを見たんだ
観客席に降り注いだあの眩い煌きは
わたしにもきっと、少しだけ
取り出すペンライトは
あの日振り翳した記念品
己の色の薄紅に切り替えて
唇から零れる、耳に残った恋の歌
音程も技法もなんにも知らない
ただこの躰を全身全霊で震わせて
ときめきを世界に響かせよう
繋ぐ指先の温もりを唄えば
腕に爛漫の花が咲く
高鳴る鼓動のリズム跳ねれば
花びらが鋭く舞って
未だ知らない筈の恋の詞は
どうしてかこの舌に馴染むから
喉が嗄れるまで歌い続けて
敵を薄紅で切り裂こう
歌はいつも遠くで鳴っている、
さわれないきれいなものだった
――今だけ、許してくれるかな
※アドリブ・絡み大歓迎
ハニー・ジンジャー
『わすれちゃったの?』
――ええ、わすれちゃったのですよ。
ああ、子守唄が聴こえる。
お唄を歌うといいのですよね。
子守唄でもいいですか?愛を紡いだ暖かな子守唄。
誰が歌っていたのだったか、もう、忘れてしまったのですけれど。
乗せた言葉は思い出せないから、旋律を歌って。
綺麗なメリーゴーランド。
もう、休んでよいですよ。
我らは取り込み続けた末のchimeraですから、
抱きしめたなら躯の中へと呑み込んで。
おやすみなさい、よいゆめを。
●未だ、今は、知らないうた
あの日見た煌きは、キラキラしていて。
とてもとても、楽しかったんだ。
ひどく馴染んだ、あの日のあの場の煌き。
喝采と花束を胸に。
「わたしにも、きっと。すこしだけ」
アイドルなんて、あの時初めて見たのだけれども。
取り出したあの日のペンライトは、あの日最後に掲げた薄紅色。
境・花世(*葬・f11024)、自身の色を煌めかせて唇に歌を灯す。
未だ知らぬ、恋の歌を。
煌きは花弁と成り、ちらちらと花吹雪となって舞い踊る。
それは、彼女の花。
薄紅色の牡丹の花。
繋いだ指先の温もりを口に灯せば、腕に爛漫の花が咲いた。
高鳴る鼓動のリズムが跳ねれば、花弁が鋭い刃の如く。
メリーゴーランドを包む薄布を切り裂き、ステージを薄紅色に染める。
ギヴは軋む。
幸せな歌を断ち切るように、りん、ころ、りん。
ステップ、ステップ。
『……わすれちゃったの?』
言葉無き、過去を断ち切る願い。
花弁を振り払うように掛けたのは、思い出の白馬だ。
メリーゴーランドから解き放たれた無数の白馬は、猟兵たちへと。過去の音色に乗って掛け跳ねる。
「――ええ、わすれちゃったのですよ」
ハニー・ジンジャー(どろり・f14738)は、琥珀色を揺らし頷いた。
我らは覚えていない。
我らはしぃらない。
ああ、ああ、子守唄が聞こえる。
ハニーが喉を震わせ口ずさむのは、愛を紡いだ暖かな子守唄。
床スレスレを駆けたハニーは、ダガーを一振り。
すり抜けざまに白馬を叩き潰すように刃を横に一閃して、その首を斬り飛ばす。
誰が歌っていたのかなんて、もう忘れてしまったけれど。
その言葉は。
その思いは。
きっと、どこかに残っているのだから。
聞き馴染みのある旋律を口ずさむ。
未だ知らないはずの詩は、どうしてだか、この舌にひどく馴染むから。
喉が嗄れるまで。
その時を知るまで。
花世とハニーは詩を灯し零す。
歌い方なんてしらない、音程だってあってないかもしれない。
それでも、このときめきを、身体全部で震わせて。
胸の奥のあったかさを、詩にのせて!
白馬が駆けようが、駆けることを止めぬ花世は白馬とすれ違いざま。
花弁が白馬を捕らえ、一斉に叩き込まれると薄紅の八重牡丹がゆうらゆら。
目にも留まらぬ早業は、花世の得意とする所!
ステージを蹴り上げ、柱を蹴り上げ。
弾丸のようにギヴに迫った花世は――。
歌はいつも遠くで鳴っている、さわれないきれいなものだったのだ。
それでも、それでも。
きり、きり、きり、軋むオルゴールの音。
薄紅の花弁は一つの刃のようにざあ、と風を唸らせて。
――今だけ、許してくれるかな。
低い位置からすり抜け、飛び込んできたハニーのダガーが、ギヴの首へと添えられる。
金属板が弾かれる、かきんと響く鈍い音。
ぜんまいのうごきは、ここでおしまい。
口ずさむ唄は、止まらない。
「ねえ、綺麗なメリーゴーランド。もう、休んでよいですよ」
「ねえ、君。君は、歌に触れられたのかい?」
ダガーと花弁が、左右より同時に叩き込まれ。
ちょっきんと、断ち切りバサミのようにギヴの首が落ちた。
りん、ころ――……。
金属板を弾く音が完全に止まる。
ステージに響く、過去の旋律はもう流れない。
首の落ちたギヴの躰を、ハニーはぎゅっと、ぎゅっと抱きしめる。
「おやすみなさい、よいゆめを」
子守唄も、これでおしまい。
とろとろ、砂みたいにとろけて消えるギヴの躰。
過去に消えたのか、喰らわれたのか。
だあれにもそれは分からない。
一つだけ。
誰でも解る事は、過去のしあわせを唄ってしあわせを断ち切る歌よりも。
今の、――未来のしあわせを唄って紡がれた歌が、このステージでは勝利を収めたと言うことであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴