魔の手から村を救え
●とある村、不穏の影
質素で貧しい村だった。
山々に囲まれ他の村や町との交流もなく、
ただごく少ない人々が、それぞれの暮らしを営む。
楽な暮らしではないが然し、人々の顔は決して暗くない。
日が昇る方を除いて崖と言わんばかりの山肌に囲まれる村なれど、
山の恵みは豊かで、湧く泉も清らかで。
後は小さくはあれ、畑で作った作物と、
ごく僅かながらもいる家畜から貰う乳や卵、肉とで食べていける。
慎ましいながらも、決して不幸ではない、自然と共にある、
この世界ではありふれた村だった。
が。
「……今月はこれで3頭目か。いつやられたやら」
壮年の男性がぼやく。溜息は深い。
切れたロープがその手の中に一本。
本来ならば家畜であるヤギが繋がれていた筈だった。
しかし、ヤギの姿はどこにもなく。
「また例の足跡か……?」
「おう、しかも増えてるみてぇだ」
近寄ってきた近隣の男性と、足元を見つつ怪訝そうに話す。
そこには、いくつかの足跡。
獣のそれとは違う、然し靴の跡でもない、素足らしきもの。
大きさは人の子ほど。
だが、彼らはそれの持ち主がそのように愛らしいものではない事は知っている。
「……なぁ、今までこんな事無かったよなぁ」
「四十年はここで暮らしたが、覚えはねぇな」
切れたロープを手から離し、男性が隣人に言う。
「やべぇんじゃねぇか?……なあ、村全員で逃げ……」
「逃げる?何処にだよ」
「…………」
へ、と吐き捨てるように、壮年の男性は言う。
それに隣人も、答える事は出来ない。
そう、自分たちはここしか知らない。
ここに生まれ、ここで暮らし、ここで死ぬだろう。
少なくとも、ここを捨て新たな場へ。そう思った事はない。
例え捨てたとて、何処へ行く?
身寄りなどない、馬で駆けて10日は最寄りの村まで掛かる。
そことてここの人々を受け入れる余裕など、恐らくない。
此処を捨てれば結局、野で朽ちるか獣なりに喰われるか。
そんな運命しかないのだ。だから。
「……戦うしかねぇだろうよ」
足掻くのなら、それしか術はない。
決して先行きの明るくない防衛戦が幕を開けんとしていた――。
●光明を齎せ
「――と、いうのが僕の見た予知の一部だ」
グリモアベースに集まった猟兵たちを見つつ、赤縁メガネの少年、零井戸・寂(f02382・PLAYER)は言う。
一同の前には投影されたヴィジョン。寂が予知で見たものをそのままに映し出す。
「見てもらった通り、事件が起こるのはアックス&ウィザーズ世界。その片隅にある小さな村だね」
山間にぽつんとある小さな村落。村民は決して多くないそこに訪れるのは――、
「ゴブリンの群れ。それがこの村を襲おうとしてる」
中空に展開されたヴィジョンが切り替わり、緑色の肌を持つ凶悪な貌をした小鬼が映る。
ゴブリン。剣と魔法の世界ではありふれているかもしれない、けれど確かな脅威。
「遠からず、この村に大規模なゴブリンの群れが押し寄せるらしいんだ。その時は狙いは家畜だけでは済まない。人も当然、ターゲットにされる」
男であれば殺され、女であれば――いや、皆までは言うまい。
敗れた先に待つのは暗い未来であると言うのは、分かりきったことだ。
「彼らだけでは勝つのは難しい。……だから、君たちに村にいって、彼らを助けてあげて欲しいんだ。――要は、村を守る為の"防衛戦"になるね」
砦を築くなり、罠を仕掛けるなり、攻撃用の装置や装備を作るなり。
村人の手を借りて、或いは自らの手腕を駆使して、防衛に挑む形になる。
村人たちは渡りに船とばかりに訪れた冒険者、即ち猟兵たちには好意的に接してくるだろう。
協力関係の構築に問題はない。
で有るならば。肝心なのはどのようにゴブリン襲撃に備えるかだ。
「幸い、自然には囲まれた村だ。――防衛に役立つ色んなものが、山の中にはある」
或いはそれは固く鋭い、即席の武器になり得る石類かもしれない。
或いは軽くしなやかでかつ丈夫な、罠に適した木々や蔦草等かもしれない。
或いはそれは強力な毒素を含む野草、はたまた薬になる生薬かもしれない。
兎も角、山にあるものはなんだって使って良いだろう。
「とにかく、各々好きな方法で村を守るのに有用なモノを集めて、ゴブリンに対抗する為の備えを村に施して欲しい。――本格的なゴブリン襲撃までの猶予は、およそ一日」
一日という限られた時間で、大挙するゴブリンどもに耐えうる防衛網を敷く。
「それが今回のミッション攻略の最初のカギになる。――ただ、防衛網だけでゴブリンを退けるのはきっと難しいと思う」
いかな防衛網と言え、24時間で作った即席のものだ。
それでも猟兵の手を借りたならば強固なものになるだろうが、
恐らくゴブリンたちは防衛網を突破してやってくる。
複数で村内に入しつつも、誰にも気付かれずに家畜を攫うなどする、賢しさのある小鬼。
それらを村にと差し向ける、今回の黒幕というべきものの存在故か、統率性もあり練度も高いらしい。
たかがゴブリンと侮るべきではない。
きっと村人たちだけでは、勝つことは難しい。
「――だから、君たちには防衛網構築後も。引き続き村に留まって、村人たちを助けてあげてほしい」
それが第二のカギ。
戦闘でゴブリンたちを狩るもよし。
恐らく戦闘による村人や猟兵の怪我も避けられまい。
そういった怪我人を癒すのも、ひいてはおおいに助けとなるだろう。
「――侵入してきたゴブリンたちの討伐をしてれば、痺れを切らした親玉もやって来る筈だ。それを倒せば、今回のミッションはコンプリート」
親玉さえ倒せば残りのゴブリンなど烏合の衆だ。例え残党がいたとて蜘蛛の子を散らすように逃げてくだろう。
「……さて、長くなったけどイントロダクションはおしまいだ。準備はいいかい?」
寂が言うが早いか、猟兵たちの前にレトロなゲームめいたワープゲートが出現し、転送の準備をはじめる。
「グッドラック、イェーガーズ。……頼んだよ」
どうか彼らに光明を。
そんな祈りと共、転送が開始されるのだった――。
戦雨匠
戦雨匠です。
一作目となります。
慣れぬゆえ戸惑いもあるかもしれませんが、ホットミルクのような暖かな眼差しで見守って頂ければ幸いです。
さて、初作と言うことでお題としてはある程度シンプルに。
・1章:ゴブリン襲撃に対する防衛の構築、
・2章:対ゴブリン戦、
・3章:対黒幕(ゴブリンたちのボス)戦 となります。
第1章の防衛網構築においては皆様方の得意な手段を用い、好きに備えをして下さい。
第2章、第3章においては純戦となります。
思うまま敵をなぎ倒して頂ければ幸いです。
頂くプレイングの数によっては須らくの採用は難しいと思われますが、なるべく全力を尽くして頑張りたいと思います。
それでは宜しくお願いいたします!
第1章 冒険
『切り立つ山で素材集め』
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POW : すぐ傍に崖がある山道で命懸けの採取
SPD : 獣の足跡を辿りながら落ちている物を採取
WIZ : 図鑑を手に散策しながら採取
👑11
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ロク・ザイオン
(偵察が来ている。その痕跡をまずは【野生の勘】も駆使して【追跡】
奴らが使う道をしっかり特定する。ねぐらがわかるなら、一番いい)
(森の中は森番の領域だ。
【地形利用・拠点防衛】の知識で
悟られぬように獣道を狭める。導いて罠を張る。
罠が得意なものと組むのもよい。毒草や強い蔦が欲しいなら、探せる。
おれの声が、嫌でなければだけれど)
森から来るものから、ひとを守るのも。
森番のつとめだ。
ヴィクティム・ウィンターミュート
・アドリブ歓迎
ハッ!防衛戦だって?結構結構
俺ァ守る方が得意なのさ
さて、まずは情報が必要だ
奴らがどこから来るのか
どれだけの戦力を用いるのか
分散しているのか、一極集中なのか
要警戒箇所は?罠が効率的に作用する場所は?
UCを起動、偵察ドローン190機を展開
木の上、草むら、岩陰…半分を『固定用』として隠し置き
もう半分は広域を巡回させて【情報収集】
奴らの拠点なんか見つかれば儲け
練度が高いなら、斥候を出してる可能性は大いにあるな
そいつを見つけたらドローンで【追跡】し、拠点を割り出すのもアリか
情報持ち帰られたら困るから、最後には静かに装備で殺すけどな
得た情報は共有し、罠の配置や防衛策の設置の参考にさせるぜ
●明け方、敵情視察
朝焼けが地平線を染める頃。
橙の閃光が、陽に照らされ茜色に萌える草野を駆ける。
音もなく、身を低くしつつ疾るそれはまさに獣と言えたろう。
然し"獣"の目は実に理性的に、
手折られ或いは踏まれた草を見極め、それの跡を正確に辿っていく。
ロク・ザイオン(明滅する・f01377)。
見目は凛々しき青年めいた、その実は純朴な少女である。
そして彼女の後を追う形で駆けるもう一つの影が。
「Whiz!流石だなロク、このペースならインジャン・カントリーまでも早そうだ」
にやりとした不敵な笑みを浮かべつつ、スラングで敵地を指す青年。
ヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)はサイバネ甲状腺で強化した身体能力を以て、野の獣の如く地を征くロクに何ら遜色ないスピードで走る。
「……森から来るものから、人を守るのも」
ざり。鑢を鉄にかけてゆく様なざりざりとした声を喉から出し、森番が言葉少なに言う。
「森番の、つとめだ」
ざらり。その後はまた口を噤む。
多少は気心の知れた仲のヴィクティムだから、言葉を零すが。彼女自身は喋るのを好まない。故に、後は森番としての職務に忠実に。
ゴブリンたちが歩いた後であろう箇所を的確に追いつつ、彼らが棲まうであろう場所に続くそれを追っていく。
「OKチューマ、その意気や良しってな。仕事に前向きなのは良いことだ――っと」
カウボーイが橙の野が広がるその先を見据え声を上げる。
「Swag、でかしたロク。早速お目当てのがおいでなすった」
「……」
こくり、森番も頷く。
いくらか先にみえるのは、鬱蒼と茂る、森。
朝日に照らされ、紅く朱く赫々と染まるそれ。
不気味にも見えるその森の入り口。
武器を構えたゴブリンが一匹、うろついていた。
●Sneaky
「ごるる…… っ
!、……」
ぶしゅぅ。
喉から血が吹き出る。
今際の際の鳴き声も出せぬまま、うろうろとしてたゴブリンが地に伏し斃れた。
「あばよウィルソン、Ferrymanにゃ御用心ってな」
何もいない、只背景に森を映すだけの空間からカウボーイの声がした後。
ばちり、その斃れたゴブリンの背後。電子クロークを解除したヴィクティムが現れる。
華麗にアンブッシュを成功させた彼がロクを森の入り口に呼び寄せ、二人で森の中へと入っていく。
「……ゴブリンが入り口に偵察なぁ。情報通り知恵はそこそこ回るみてーだな」
声を潜めつつ囁くヴィムティム。
先を行くロクも微かに首肯したのが、森の中に偵察機を散らして飛ばすカウボーイからも見て取れた。
ロクは引き続き先導。
森の中に蔓延る草蔦や枝葉、それを手折り、切り、路となるだろう森の選択肢を狭めていく。
いくつかあると思しき通り道、それを剪定するように切り落としてら、一つ大きな通り道だけを残す。
「……よし、十分だチューマ。そのくらいでいい」
頃合いと断じ、ヴィクティムが先んじて飛ばしたのとは別に偵察機を召喚。
木の上や草叢、岩陰などとにかく目立たない所に、偵察機に迷彩も施した上で設置する。
「……?何を?」
言葉少なに問うロク。彼女はカウボーイに請われる侭に、"敵の通りやすい路"を作ったのみ。
いつか共に仕事をした時にみた、ふしぎなとぶ"め"を飛ばさずに置いていく意味をイマイチ解さない。
そんなロクに不敵な笑みを浮かべヴィクティムは返す。
「監視網ってヤツだよ。こーしときゃ、こっちはいつでも敵さんの来るタイミングを把握できるって訳さ」
要は監視カメラを即席で作ったのだ。
これを聞いた森番、刹那の間のみ宇宙と交信の後みょんみょん考える。
目が良いのは戦において大事だ。数が多いのも有利となる。
すなわちたくさんの目があることはよいことだ。
「そうか」
ほんわりと理解をし、手短に理解した旨の回答をする。
「さて、偵察はこれでいいだろ。腐れウィルソン共に見つかんのも面倒だ。Slot & runってな」
この場を離脱する意をカウボーイが告げ、森番も野生の勘で彼の意する所を察し続くとする。
「さて、定置用はあれでいいが他は……お、見えたな」
鬱蒼とした森を離脱しながら、サイボーグの青年は虚空にディスプレイを展開。
数多の天の目、"Argos Eye"が偵察した情報を映す。
鬱蒼とした森、視界は悪い。だが、森の中にいるゴブリンの影らしき物は確認できる。
ディスプレイには代わる代わる、飛び交う機械の瞳からの映像が映され。
「Whiz、いいぞぉ最高の取れ高だ。どのカメラにも連中が
………………」
盗撮の成功に喜ぶ彼の言葉がやがて止まり、表情に苦味が混じる。
隣を駆けるロクも、よくわからぬままに映像を見て。
端的に感想を零した。
「……たくさん」
切り替わるカメラの全て。森の中には、無数の。
あまりにも多いゴブリンの影がある。
百?二百?或いはその倍?多すぎて把握も容易くない。
――バツン、ブチ。
「――チッ、Drek!」
舌打ち混じりにヴィクティムが唸る。
映像が破壊音のちに消える。
最後に見えたのは火の玉めいた何か、或いは鏃、もしくは石飛礫。
飛び交うそれが見つかり破壊されたらしい。
単純に巡回させただけとはいえ、思った以上に早い被撃。
「……数といい、あっさりArgosがヤラれた事といい――」
拠点たる村に向け早駆けをしつつ、ヴィクティムが言葉を吐く。
「……おれもそう思う」
続けられたヴィクティムの言葉に、ロクもざらつく肯定を、ぽつりと返した。
このゴブリンどもは、思った以上に手強いかもしれない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
虜・ジョンドゥ
【WIZ】
グッドラック、イェーガーズ…
ヒヒッ、任せといて!
ボクはお喋りが大好きなんだ!
【コミュ力】を活かして村人さん達との会話を通じて、【情報収集】をしつつ山で薬草を採取してみよう
現地に住んでる村人さんの知恵を借りつつ、怪我や毒を治せる効能がある薬草を充分に集めたいな
猟兵の皆からの救援が来るまでに、応急手当ができるお薬があった方がいいと思うからさ
こうして探索したり冒険したりって、なんだか懐かしいなあ…
…ああ、ううん、何でもないよ!
ボクは一介の冒険者…それも道化(ピエロ)だからね
勇者様というほどお偉いものでは無いけれど
村を守り抜きたい気持ちはみんな一緒さ
―このクエスト、必ずクリアしてみせるよ
雨宮・いつき
人々の安寧に危機が迫っているとなれば、見過ごすわけにはいきません
まずは分身達を呼び出して、と
分身達と手分けしてゴブリンの足跡を辿ったり、山の【動物と話す】事でゴブリン達の動向を探ります
得た情報を元に、他の猟兵や村の方達とゴブリンの侵攻経路を予測しましょう
罠を仕掛けるにしても、効果を最大限に発揮出来る位置に仕掛けた方がいいですものね
そうしたら、後は分身共々時間ギリギリまで皆さんのお手伝いです
猶予は1日、人手は多い方がいいですもの
皆さんが村を守るための備えを作るなら、僕はその備えを作るための労働力を作りますよ!
●朝: 採取を 実行しますか?▼
――お薬になる葉っぱ?知ってる!あたし、よくおかあさんに言われて採りにいくの!
――最近はね、危ないからって、採りにいけてないけど……えっと、どんなのかね?
「……うーんと、これかな?」
村からはやや離れた野道、その草木生い茂る中。
この世界ではあまり見かけない、少し奇抜な装い。そしてビビッドなピンクとライムグリーンの髪がひょこひょことしている。
その鮮やかな髪の持ち主――虜・ジョンドゥ(お気に召すまま・f05137)はわさわさと、野道の茂みの探索に勤しんでいた。
「あ、あったあった!きっとこれだぁ!」
ぱぁぁとにこやかに言いつつ、がさっと顔を上げる。
キラキラとした笑顔を浮かべる頬、涙マークの辺りに千切れた葉がついてるのはご愛嬌。
そんな彼が手にするのは、ギザギザの歯が特徴的な草。
もぎ立てのそれからはどうにも酸っぱいような、苦いような。
青々とした香りがする。
ジョンドゥがしているのは、野草の採取。
村人――その中の一人、小さな女の子から聞いた、村でよく使う薬草を探しに来たのである。
流石と言うべきか、閉ざされた村の中に棲まうだけあって、村人たちは自分達である程度の怪我や病気を治す民間療法には精通しているらしかった。
ジョンドゥ持ち前のコミュ力もあり、どんな薬草を使うのかは直ぐに聞き出すことが叶ったのだ。
只、難点を挙げるとすれば――、
「よし、漸く1種類目……んーと、あとひーふーみ……11種類だったかな?」
そう、種類が多い。
数だけで12種類。
切り傷、解毒、解熱に鎮痛など、薬草ごとに効能も様々。
そして勿論、戦うとなれば数もいる。
12種類の薬草、それをまとまった数採取する。
中々の難題だ、普通にやれば時間もかかる。
そう、普通にやれば。
「じゃあはい、君はこれ探して来てっ!」
つい、とジョンドゥが隣に採取仕立ての薬草を渡す。
『はいっ、わかりましたっ』
彼の隣にいるもの、それは。
眼鏡をかけ、ふさふさの尻尾と耳を持つ和装の少年。
――それも、ちんまりとしたものだ。
立っていても、草叢の中でしゃがむジョンドゥと目線が合ってしまうくらい。
『では、僕はこの薬草を担当しますのでっ。他の薬草は別の子にお願いしてくださいっ』
ちんまりした眼鏡狐っ子がわさわさと、尻尾を振りつつ茂みの中に入ってく。
ゆらゆらふわふわした尻尾を目で追いながら――、
「――かぁいい。ひ、一人くらいお持ち帰りしても」
『……だめですよ?』
「ひょぁっ!? あ、べ、別の子だね!?ご、ごめんよ可愛かったからつい……えぇと、そうだ、君には……」
たははと誤魔化し笑いを浮かべつつ、"新たにやってきた小さな妖狐の少年"に、次に採取して欲しい薬草をジョンドゥは指示するのだった。
●けものの道はけものに尋ねよ
一方その頃。
「そうですか、ここを通ってくのを見た。行き先は森――うん、情報通りです」
《くぇー》
野道の木、そこに留まる鳥に話しかけるのは一人のふさふさな狐の尻尾と耳を持つ少年。
先ほどジョンドゥといたのと瓜二つだが、こちらは普通の少年らしい背丈をしている。
鳥と話す少年の名前は雨宮・いつき(歌って踊れる御狐様・f04568)。
動物との対話を可とする彼は、獣たちから情報を募り、ゴブリンたちの進行路を特定せんとしていた。
飛び立つ鳥を見送る彼の背後、がさごそと複数の影が彼に近づいていく。
まさかゴブリン?いや、それにしては尻尾が愛らしい。
『他の動物さんたちからもお話を聴けましたっ』
『統合すると、やっぱりこのあたりの開けた野道がメインの経路になりそーですっ』
現れたのは、いつきをミニチュア化したような分身たち。
"稲荷八百万"。
やおよろず在わすと謳われる日の本の国の神の如く、彼の化身として召喚された分身体たちだ。
今回はハンディーと言うには少し大きいが、この度担った仕事としてはこのくらいが丁度良いので、やや大きめで呼び出している。
「……ん、だいたい経路の特定は叶いましたか。罠を仕掛けるのは他の型に任せるとして……」
採取も終わった頃合いの筈だ。
「そろそろ合流して戻るとしましょうか」
●採取・調査クエスト CLEAR!▼
「あ、いたいたっ。いつきクーンっ」
合流地点。
手をふりふり、一緒に採取を手伝ってくれた妖狐の少年にジョンドゥが近寄っていく。
「お疲れ様です、ジョンドゥさん。採取はどうでした?」
「バッチリっ!ちっちゃないつきくん達のおかげで捗ったよー!」
晴れやかに言うジョンドゥの後ろ、各々の腕の中に抱える程の薬草を採ったいつきの分身たちが控えている。
「そうですか、助けになったならよかった……では、戻りましょうか」
「オッケー!……へへへ」
いつきもにこやかに返して、また村へ続く道を歩く中。くすりとジョンドゥが笑う。
「? どうかしました?」
「ん?あー、いやぁ……なんていうかねぇ」
はにかんだように、ジョンドゥが続ける。
「なんだか懐かしいな、って」
「……?薬草摘みを昔されてたのですか?」
こてり、不思議そうにいつきが尋ね。
「あー、いやえっとね……へへ、やっぱなんでもない!……ただねぇ」
「……? ただ?」
きっと妖狐である彼には、"ゲーム"のことはよくわからないかもしれない。
ただ、村人から話を聞き、こうして野道を歩き、薬草を集め。
人のために、仲間と一緒に戦う、そのための支度をする。
――なんて、王道な。それこそRPGみたいだ、なんて。
まぁ、短く纏めるならば、こうかな?なんて、道化な彼は思う。
「……この"お仕事(クエスト)"は、必ずクリアしたいな、って」
「……。ふふ。そうですね」
笑顔の中、確固たる信念を思わせる口振りでそういうジョンドゥに。
いつきも頷きを返し、そうして二人、村に戻っていく。
薬草は必ずや、村の人たちの助けになるだろう。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
石上・麻琴
ふむ……ゴブリンですか。
なかなか面倒な敵ですしね、しっかりと準備していきましょう
ユーベルコードで召喚した白虎と共に、道中に落ちているものを拾っていきます
そこそこの大きさの石でもあれば投石に使えますし、木の枝なども加工すれば即席の矢として使えるでしょう。蔦などはうまく束ねれば罠にも使えそうですね
フェル・ドラグニエル
POWの行動を取ります。
村を守るために私も出来る事を…だね。
ドラゴニアンの飛行能力なら…崖があるような場所でも安全に採取できるね。
うんうん。これくらい尖った岩なら即席の武器に使えそうだね。
それと…投石器が使えるのなら、それ用の石も沢山持ち帰っておこうか。
[怪力・空中戦・勇気]の技能を使用します。
それと、もしかしたらゴブリンがどこかに潜んでいたり、攻めてくる方角が分かるかもしれないね。
[情報収集・逃げ足・第六感]を使用し、
可能ならゴブリンの動向も探ってみます。
多勢に無勢。見つけても攻撃はせずに、ゆっくり。そぉっと。ばれないように逃げて情報を持ち帰ります。
夷洞・みさき
時間が少ないし、運搬速度も大事だよね。
だから僕は防衛網構築のための資材運びを頑張ろうかな。
勿論、物だけじゃなくて人でも大丈夫だよ。
【POW】
UCによるガレオン船を呼び出し、運搬が大変な所を重点的に集められた物資を空路を用いて運搬。
運搬をしつつ、周囲の地形を確認、地上からは死角になる侵入経路を調査し、逃げ道に使えない、防衛設備が不足している道があれば、周囲を砕き、侵入経路を減らしておく。
もしもの時に村の人達用の避難場所があるかも確認。
ちょっと賑やかになるのが気になるけど…それであっちの足並みが乱れたらそれはそれで良いかな。
アドリブ絡み歓迎
蒼焔・赫煌
【POW】
よーし! 村の皆を守る!
正に正義の味方らしい仕事じゃないか!
頑張るぞー! えい、えい、おー!
ボクは技術とかそういうのは持ってないから皆や村人さんたちが使う材料を集める係をするよ!
とりあえず頑丈な木とか! 使うんじゃーないかな!
丸太とかそういうの!
ガガーーっと外に出て集めて、ババーーっと持って帰ってくるよ!
【ブラッドアンプル】でエネルギーを補給しながら、どんどこどーん!
今日の可愛いボクは木材でりばりーさ!
【アドリブ、他の方との絡みは歓迎】
レイラ・エインズワース
チーカサンと(f00890)
平和な暮らしが一変、ナンテ
させるわけにはいかないカラ
必ず守りぬこうネ、一緒に
山賊も一緒に倒したカラ、今度もきっと大丈夫
二人で野山に交じって薬草と毒草を採集
私たちはともかく、村の人たちのけがは心配だカラ
かつての所有者たちのメモを片手に【情報収集】と【世界知識】で使えそうな草を集めるヨ
手の届かないところノハ、チーカサンに頼むか竜を呼ぼうカナ
持ちきれない分はチーカサンに仕舞ってもらうヨ
集めた毒は矢じりに塗って落とし穴の底や村のヒトに
薬は集めて包帯に漬けたり、瓶に詰めたり
チーカサンもお手伝いありがと
いっぱい作っておいたら、きっと安心できるカラ
しっかり準備シヨ
アドリブ歓迎ダヨ
エスチーカ・アムグラド
レイラお姉さんと!(f00284)
むむむ……ゴブリンの襲撃ですか
それに親玉も居るんですね……
でもでもっ! チーカとレイラお姉さんで山賊から村を守ったこともありますしっ!
また前みたいにばーっちり!と村の平和を守りましょうっ!
レイラお姉さんとなら、きっと、大丈夫!
チーカはお父さんお母さんから聞いた植物の話を思い出して役立つ植物を探します!【世界知識】
狭いところや高いところにあったら飛んでいって引っこ抜いてきますねっ!【空中戦】
フェアリーランドを使えばたーっくさん植物が見つかってもぜーんぶ持ち帰れるかなって!
お薬作りはチーカにはちょーっと難しいですけど、必要なところに運んだりでお手伝いしますよっ!
●日は昇りゆく――友情出演:後で出てくるアフロ神
オーイェーース……
イェーース……
イェーース…(残響)
「…………えっ」
高き山々にこだまする謎の歓声めいた声、それを耳にし竜騎士見習い――フェル・ドラグニエル(蒼翼の竜騎士見習い・f01060)が怪訝そうな顔を上げる。
なんだろうこの、この……自然に囲まれた幽くもおごそかな巌山に相応しからぬ声は?
「……そ、それよりお仕事だね」
きっと幻聴に違いない。そういうことにしよう。
そういうことになった。(断言)
気を取り直し、山の中に転がる素材の回収を再開する。
今彼女が集めているのは石や岩。投擲に適していそうなものから、武器として使えそうなもの、丈夫そうなものまで。大小様々なものを、落ちてるのを拾い、或いは岩肌から持ち前の怪力を使い、引き剥がすように毟り取るなどして採掘している。
――と、そうしてる内に。
「ああ、いたいた。こちらでしたか」
ザザ、と近づく一人――否、二つの影が。
「……ああ、麻琴さん」
認めた人影、同じ猟兵たる彼に、手に大量の石を抱えたままフェルは応じる。
「フェルさんの方は問題なく集まってそうですね、良いことです」
「ありがとう。麻琴さんも順調そうだね?」
石上・麻琴(虹の彼方の空の星・f01420)もまた、丁寧な言葉でフェルに言葉を返した。己が召喚した相棒たる式神の白虎、"虎厳沱"の背には数多の、鋭くしなやかな木の枝それが山のように纏められ、白い虎の背中に置かれている。
「ええ、木の枝やらは問題なく集まったかと。……あとは丸太ですね」
こればっかりは白虎の力を使っても、なかなか一度にそう多くは運べない。
ので、進捗の確認がてら、怪力を有し空も飛べるフェルの手を借りれないかと思って麻琴はここにきたのだった。
「婦女にお願いするのも心苦しいのですが、今回は効率優先で。後ほどお手伝いをお願いしても?」
「ん、勿論。……うーんと、あと二往復くらいで、石とかは運び終わるから、その後で……」
空を経由すれば村と山との往復はぐっとしやすい。
しかし幾ら怪力があれ、人一人に運べる量というのはどうしても限界がある。
フェルの力を持ってしても、あと二往復。だいたい昼前までは時間が掛かるだろうか。しかし背に腹は変えられない。
そう思ってた所――、
「おっとぉー困りごとっ!そんな時は正義の味方にお任せさっ!」
「「!?」」
唐突にかかる、やや場違いにも聞こえそうな快活で明るい声。
気がつけば二人の前には青髪の少女。
「……え、えっと、あなたは?」
誰だろうと、やや訝しみも込めつつ尋ねる麻琴の意に介さず、やはり少女は目一杯元気に応えるのだった。
「なぁに通りすがりのヒーローさっ!ちょっと遅れたけどそれもまたヒーロー!」
時として遅れて登場するのが英雄ゆえ!
そう堂々と言う青髪の少女、蒼焔・赫煌(ブレイズオブヒロイック・f00749)はあくまで快活だ。ややあっけに取られる二人を意に介さず話を進める。
「そんなわけで必要なのは丸太だねわかったとも!かわいくてつよーいボクにお任せあれっ!」
「えっ、は?あ、いやえっと」
「いざ!レッツ伐採っ☆」
「話を聞いてくれないタイプの人ですね!?」
二人が止める間もなく赫煌は山の奥へと入っていき。
がいーんばりーんぎゅぎゅぎぃーん、
ずばばーんすとんずぱーんどんどこどーん、
どざぁぎゅんぎゅんずたたたー!
何やらこう少し変わった伐採音と木の倒れる後だとかの後、いい仕事したぁと額の汗を拭う赫煌が森の奥から現れたのだった。
「伐採☆完了っ」
「「早っ!?」」
彼女の肩の上には丈夫そうな丸太が数多。体格的に抱えきれないだろうものを、部分的に巨大な骨めいて変形した武装でも以って支えているようだ。あまりに高速な伐採も、その武具らの支援あってのものだろう。
とはいえこの行動も、よく言えば高出力高燃費、悪く言えばガス欠の早い彼女なりに最善を考えた動きである。
まぁ結果的に超速で伐採も終わったので問題はないであろう。
「え、えぇと……兎に角仕事が早く片付いたのは良い事でしょう。後は運送ですね」
気を取り直し、麻琴がそう進言する。
「そちらもばっちりこの可愛いボクに任せておけばお茶の子さいさいっ!こっちこっち!」
「え、あ……先行っちゃいました。ど、どーします麻琴さん?」
「うーん……まぁ、見るからに後発の猟兵でしょうし……とりあえず付いて行ってみましょう」
そう言い、麻琴の白虎が山の中を駆けてく赫煌を追い、更にそれをフェルが素材の石と共に追う。赫煌の行く先は村を眼下に収めうる切り立った崖、その筈だ。ぐるりとまず山を駆け、それを麻琴は確認してる。当然、先にあるのは崖である事は変わりなく、但し――――、
「……え」
「ただいまでっす!可愛くて賢くてできるボクの帰還ですよっ!」
「ああ、おかえり赫煌君……おや、他の猟兵と合流したのかい?」
崖の上には、一人の女性。
――正確に言おう。"崖の上を『飛ぶ』巨大なガレオン船"、そしてそれを繰る女性だ。"涸れた波"号と呼ばれる朽ちたガレオン船、その操り手の夷洞・みさき(海に沈んだ六つと一人・f04147)は、新たな船客を見て妖しくも見える笑みを浮かべる。
「ようこそ、僕の船へ。朽ちた船だから気の利いたもてなしは出来ないけど、そうだね」
「ふぃー!頑張りましたっ!一仕事後の飲み物がおいしー!」
どさり。伐った木材を船に下ろし、ちゅるると小型のストロー付ボトルから栄養を補給してる赫煌を見やり、また二人に視線をやって。
「荷物の運送くらいは担おうか。石やら木やら、なかなか重たいだろう」
光景にこそ呆気に取られたが、まさに渡りに船とはこの事だ。
これで資材運搬の効率は格段に上がる。
●山中、灯と妖精
一方、同じく森の中。
二人の少女が緑の中を探索しており、うむむと考え込んでいた。
うち、三つ編みの方の少女――その実は幾多の時を過ごし人としての身体を得たランタンのヤドリガミ、レイラ・エインズワース(幻燈リアニメイター・f00284)は、繁々と目の前にある木々と、手に持つ古びた、然し丈夫な装丁の手記とを見つめている。
同様にもう片方の少女――というより人と比べ遥かに小さい体躯を持つフェアリー、エスチーカ・アムグラド(Espada lilia・f00890)もまた、レイラの肩に乗りじぃぃと草花を、あるフェアリーから借りた図鑑と交互に見ていた。
「……あ、チーカサン。あった、あったヨ。アレじゃなイ?」
「あ、ほんとだ!チーカが聞いたことある形と一緒です!図鑑とも!」
二人があれだ、と指す先にあるのは、木になった真っ赤な果実。見惚れるような鮮やかな朱が惹きつけるかのようで、心なしか芳醇な甘い香りもする。が、然し。
「5個くらいでいいかナ?気をつけてね、チーカサン」
「なんのその、チーカにお任せ下さいっ!"毒"があるとはいえ直接は触れませんしっ」
いかにも、二人が採取しているのは毒花・毒草・毒果の類だ。
生薬・薬草の類は別班のジョンドゥが担っている。こちらの班は罠用の毒に使う為のもの。それをメインで探しに来たのがこの二人だ。
レイラは、彼女がヤドリガミとなる前。彼女の所有者だったもののが書き記した手記、その中に書かれた植物の知識を元に。
エスチーカは、彼女の父親と母親から聞かされた話。そしてとあるフェアリーから託された図鑑も一緒に持ち、それも見ながら。
それぞれ持ち前の知恵を使い、必要なものを探索しているのである。
さて、ともあれ目当ての毒の実は見つかった。高いところにあるそれに、エスチーカが飛んで行き。
懐から取り出した小さな壺で触れた。
――きゅぽん。
壺が触れた途端に実が虚空に消える。
正確には壺の中、"フェアリーランド"の世界へと。
同じように、ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ。
「レイラお姉さーん!無事取れましたよーっ」
とりあえずの採取が完了した旨を、体目一杯を使いエスチーカが報告する。
「ふフ、見てタヨー。それなら沢山、一度に取れルネ」
「ふふーっ!ばっちりですね!このペースで行きましょうっ!えぇと、お願いされたお使いは……」
んーと、と顎に指を当てつつチーカが考える。
「もう何種類かノ毒草と……後ハ、山菜かナ?」
「そーです、そーでしたっ!」
「ふフ、山菜は最後ニちゃんト毒草トカと別けて採るカラ……まずハ次の毒草だネ。次のお目当てハ、山のモット高い所にあるみたイだから……」
手記を見つつ、レイラが言う。歩いて移動するには少し時間がかかりそうだ。ならばどうすれば良いか。
「また手伝っテ貰おうかナ」
からん。
ランタンが揺れ音を立てる。
紫色の焔が灯る。
――潰えた夢を数えヨウ。
――強さ故の慢心、喪失への恐怖。
――死してなお宝物に執着し続けた魔竜の見た夢。
――過去の幻だとしても、今再び夢は舞い戻る。
呟きめいた詠唱のち、ランタンの火がごぉぅと燃え上がり。
その中から黒い焔が現れ、更にそれが広がり――、
《――Grrr
......》
やがて、魔竜の姿を象る。
"驕慢たる魔竜の夢"。かつて財宝を守りその上で朽ちた龍、それを"再演"した形ある幻だ。
顕れた魔竜は首を項垂れるようにしてしゃがみ、レイラを乗せんとする。
「それじゃア、次の所に行こうか、チーカサン」
「はぁい!前みたいにばっちり村を守りましょーねっ!それじゃあお邪魔しまーす!」
遠慮なくレイラもその背に乗り、そのレイラの肩の上、エスチーカがちょんと座る。
「ふふ、そうダネ。山賊だって倒しちゃったから、今回もきっと大丈夫。……じゃ、お願いするヨ」
《Grr――》
レイラが龍の首を撫でれば、龍は地を蹴り翔び立ち、二人を次の目的地へと運んでいくのだった。
後ほど、村には罠向けの毒草、そしてそれとは別にふんだんに山菜が届くこととなる。
――さて、毒草類はこれで良し。では他資材の方はどうなったろうか?
●村への出航
「――よし、これで終わり」
はたまた場面は船の方へ。最後の石の積荷を降ろし終えたフェルがふうと息を吐く。
「……ん、ああ、おしまいか。お疲れ様だったね」
船の外をぼんやり見てたみさきもそれに気付き、フェルに労いの言葉をかける。
「いえ。……空を見てたの?」
空の綺麗さに見惚れていた――と言うには、みさきの目は鋭い。
「ああ、強ち間違ってはないよ……空から見ればゴブリンたちがやってきそうなルートもわかるかな、なんて思ったんだけど」
地上からはわからぬ死角的な侵入経路。そういったものがあった場合、早期にそれを発見する為の上空観察。その意図もあり、みさきはこの船を繰り出したのだが。
フェルの言葉に返しつつ、ふふと笑う。
「そっちの方は、あまり意味はなかったかもね」
「……そうだね」
フェルとて同様だ。持ち前の翼をもって上から村を眺め、観察した。
主に日が昇る方、それを除き三方向、きっちりと山肌と崖とに囲まれるこの村は、山の凹みの間に上手く村が嵌ってると言ってもいいかもしれない。
日の出の方向以外からは険しき山を登っていかねばならない。それも大きな迂回路となるし、何より奴らは数が多い。この村の人口数を遥かに上回るそれをもって、ゴブリンたちが態々迂回路を通り険しい山を経て、山から攻めて来る可能性は、恐らく限りなく低い。
事前に偵察班から手に入れた情報も加味すれば、奴らの進行経路は堂々と日の出ずる方から、軍隊めいた数を以て堂々と正面からやってくるだろう。
「……まぁ、敵は十中八九真正面から来る。それがわかっただけでも良しとしよう」
とまれ、此処にいる者達の仕事はひとまず此処まで。後は資材を村にと運ぶだけだ。ガレオン船に積まれた数々の丸太、石、枝、蔦草。これだけあれば――、
「……?」
ん?とフェルが首をかしげる。
「蔦草の回収、誰がしてたっけ……?」
麻琴は枝類、赫煌は丸太。自分は石。
所々で自分の担当素材以外も回収はしてたが、メインは各々が集めてたものを回収していた。
蔦草担当はいなかった筈だがそれにしてはこんもりと集められてる。
「ん、ああアレだ、それは別の人が集めてったよ」
「別の人、ですか」
「うん、人……というか神」
「神??」
神。
「神。先に崖の下の村まで空中ジャンプで降りてった」
「空中ジャンプで」
情報のとんちきっぷりにフェルの思考が宇宙へと飛ぶ。
のちほど村の上空、オーゥイェースという甲高い誰かの声がしたとかしてないとか。
閑話休題。
なお資材は須らく無事に運ばれたのでご安心めされよ。
大成功
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マリス・アップルズ
ゴブリンってどんな生き物かしら。
狡賢くって強いのでしょうね。恐ろしいわ。
恐ろしいから。私達も恐ろしい罠を仕掛けないとダメね。
【WIZ】で罠に必要な物を採取する
【罠使い】【毒使い】【医術】で罠を仕掛ける。
自前の毒は数が足りるかは分からないし。
毒を与える罠も必要だから、森からもらうわ。
即効性のある致命的な物か筋肉や神経を阻害すものを選んで集める
それを鋭利な罠に塗布しましょう。
自然の物を使った罠なら堀や杭なんかが簡単かしら。
草を結ぶだけの足掛けの罠も戦では重要になるわ。
簡単な罠なら村人にも手伝ってもらい数を作りましょう。
後は家に火を掛けられる困るかしら。
屋根を濡らすか泥を掛けておくといいかしらね。
カタラ・プレケス
アドリブ連携歓迎
世界が違えど無辜の人々を守るのは変わらないね〜
とりあえず村で毒を作るよ〜
村の人には近づかないようにお願いして、
トリカブト、イチイ、紫陽花、彼岸花その他多数の有毒植物を纏めて磨り潰した後
大釜代わりの矛盾宝瓶に清呪神薬と一緒に軽く煮込めば大半の生物には効く猛毒の出来上がりだよ〜
一応、解毒薬も作っておくね〜
あとは柵に塗ったり落とし穴に流し込んだりしておこうか
さてと、どんな風に苦しんでくれるかな〜
人では流石に試せないからね〜
終わったら死体は回収させてもらおうか〜
●昼前――鍋の中、生かすも、殺すも
「ゴブリンってどんな生き物かしら?」
――きっとずる賢くて強いのでしょうね。恐ろしいわ。
幼げな声と、その言葉の中身からすれば子供が怖がっているようにも受け取れる。
然し、声の主――マリス・アップルズ(血嗅ぎの跳梁者・f06184)の顔は凛としており怯えらしいものは滲んでいない。
ただただ、対峙者として事実を確認するように言葉を紡ぎつつ、用意した具材を刻み下拵えしながら目の前の壺を見る。
「――ああ、ダークセイヴァーじゃいないもんねぇ」
一方、壺にどばどばと切った草の根を投げ込み、火にかけ煮込む青年もぼやくように返す。
白化した曼珠沙華を一輪咲かすこの青年、カタラ・プレケス(呪い謡て夜招く祈りの烏・f07768)も、マリスも。互いにダークセイヴァーの出。カタラも普段はUDC暮らしとはいえ世間知らずの嫌いがある。別世界の敵にはさほど詳しくはない。
「まぁ、でもさぁ。どの世界でも無辜の人々を守るのは変わらなくて」
ぐつぐつ。鍋代わりの壺から煮立つ音が聞こえる。壺から水を"湧かせ"、少し水を足す。
「ひいては、どの世界でもおっかない敵を斃すのは変わんないよ」
「……そうね、だから」
マリスが返す。――赤く熟れたような木の実を、木の板で拵えた即席の俎板において。
「私達も、恐ろしい罠を作らないとね。……種に毒があるのだったかしら、これ」
「ん、その通り~。実ごとでいいから包丁の背で種を砕いてくれるかなぁ」
二人並んでるのは、ともすれば年の少し離れた兄弟が料理をしてる風にも見えたかもしれない。然しその実二人が調合しているのはもっとおそるべきもの――即ち、毒薬である。
村の離れ、誤って誰か近づいてこないような場所で二人。
カタラの持つ摩訶不思議な壺、"矛盾宝瓶アクエリアス"の中で、ことことぐつぐつと山に登った採取班、即ちレイラとエスチーカが採ってきた毒物を煮込んでるのだった。
「入れるわ」
「どーぞぉ~」
どぱぱ、とぷん。赤い実が砕かれた種ごと鍋の中に落ちる。
煙が白くもうもう上がり出す。さながら魔女の大釜のようだ。
その後もすり潰した毒草の葉や根、実などを入れ、壺の中の毒性はどんどんと増していく。
マリスは持ち前の拷問に関する知識、その延長として。カタラもまた呪いを繰る者として、人を害し呪うための術の一つとして。二人とも毒の扱いには長けている。なればこそ、罠として使う毒を調合に専任するとして、こうして毒を調合しているのである。
「……そろそろいいかしら?」
煮詰まった毒はつんとする匂いすら出し始めている。そろそろ猟兵とは言え近くにいるのもキツい。
「ん~、そうだね……あ、そうそう、これ」
「……? なあに、それ?」
料理の隠し味を入れ忘れた、とばかりにはっとして小瓶を取り出すカタラを見て、マリスが不思議そうにする。
「ん~……トドメ?」
果たして、その小瓶――"清呪神薬スクナ"が一雫落ちると、ボム!と鍋の中で爆発が起きる。壺が跳ね、つい驚いたマリスもぴょんと小さく跳ねた。
「……大丈夫なのそれ?」
飛び上がったことはさっと流し、さも何も無かったという風に装いつつマリスが聞く。カタラもそんな彼女を特に気にせず。
「……ん、大丈夫。いい塩梅みたいだよぉ」
ぐり、と鍋を棒で突き、毒を軽く混ぜた後に棒を引き出す。
どろり。
おどろおどろしい色の、黒と紫の中間色の粘体。
「……効果は期待できそうね?」
このようにして、此処にゴブリン退治用の毒は相成ったのである。さてさてこれにて二人の仕事は完了――ではなく。
「うーんと、後はお薬の方だねぇ」
「ええ、夕方までには作ってしまいたいわ」
罠を仕掛ける都合上、先に毒の方を作ったが。ジョンドゥ達がせっかく採取した薬草達もあるのだ、それを調合し傷薬を作っておかない手もない。
此処にいる二人は毒と呪も理解する。然し裏を返せばそれは、人を治す薬も、癒す術も知ることに繋がるのだ。
「そんなわけで……引き続きお手伝い、お願いねぇ」
「いいわよ、勿論。さくっと終わらせましょ」
そういう訳で、即席のペアながら。
殺す為の薬を作り終えた二人は、今度は生かす為の薬を作り始めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
相模・恭弥
「さてさてさて、小鬼を退け村守る。やぁ〜実に実に英雄的じゃあないの。」
山を散策して、気が向くとこに罠を仕掛けて行く。
「罠を作成は任せろと大言壮語ぶちかましてやったは良いけど、作る技術なんざ丸々持ち合わせてはいませんよっと。」
あちこちに、雑な罠を作る。
「ま、それも工夫次第では、ほらこの通り。殺意充分120%でお届けでさ。」
ユーベルコード【挨拶】を使い、「だまし討ち」によって雑な罠の隣に普通に誂えた罠を造る。
「さてさてさて、これでここら一帯デンジャーゾーン。」
「ま、しかし、当たるも八卦当たらぬも八卦。結果如何じゃ、恭弥君はクソサボり野郎!やだこわーい♡」
「だから、もちっと盛っちゃえ♪」
一日中罠造り
ヴァリアブル・タイプオメガ
期限一日!?期限短いね!?でもその短さがボクの高性能さを際だたせる演出になるんだよ!!
ということでボクは【ヴァリアブル・ウイルス】を展開!納期の短さは手数で補う!うーん、流石ボク、一人で百人力にもなるなんて!!
さらにボクは高性能過ぎて夜戦である可能性も考えている!地面にまるで剣山のように木を鋭くした棒を村の周りに突き刺してゴブリンの足を取る作戦にするよ!
さらにそれに油をまぶしていざとなったらその罠自身を薪にして簡単に燃えるようにするのさ!
どうだい?村のみんな、ボクの作戦があれば完璧さ!(ドヤァ)
リュシカ・シュテーイン
困りますねぇ、やになりますねぇ
あまり商品が売れないこちらの世界でもぉ、お客様となりうる方を減らされるというのはぁ、捨て置けませんねぇ
私はルーン魔術を付与した鉱石のぉ、法石を作っていきましょうぅ
今回はぁ、村近くにある不要な石材や鉱石製の物資をいただいてぇ、投擲用と罠用の爆破の法石をぉ、ルーンライターを用いてぇ【高速詠唱】で作成いたしましょうぅ
ふふふぅ、いやぁ、タダで物資が作れるなんてぇ、ありがたいですねぇ
とりあえずはぁ、罠用としてぇ、生体感知で近くに来るとぉ、鉱石もろとも爆破する法石をぉ……
あっぁ、近くに来られる方は気を付けてくださいねぇ
あまり大きな爆破を設定していないとはいえぇ、危険ですのでぇ
クロゥ・クガタチ
ゴブリンとは、まさにファンタジーの世界だな
実際に目にするとなると、なんとも不思議な気分だが、まずはやるべきことをやるとしよう
UCを使えば、険しい山道も比較的通りやすい
罠に使えそうなものを集めていこう
できるだけ時間を稼ぐなら毒の類が良いか……
比較的わかりやすい罠を設置
そして、その傍にそれ以上に隠した罠を設置
二重の罠を用意しておこう
【だまし討ち】は比較的得意なんだ
敵の意識の隙間を狙っていくとしよう
相手の嫌がることをするのが、ヴィランの本懐さ
まぁ元だけどね
●昼――罠&罠&罠
さて、昼に差し掛かる頃。
ロクやヴィクティム、そしてジョンドゥにいつきが調査し判明したゴブリン達の進行路と思しき場所。そこに4人の人影があった。
「期限1日――っていうかもう残りはその半分っ!」
納期が短いにも程がある!
全くもって大変な仕事だ。
そうやれやれと言いたげにぼやくのは、ヴァリアブル・タイプオメガ(変幻自在の仮想人格・f00247)。
「だが、なんにしたとてやることはやらねばな」
その隣には壮年の男性。クロゥ・クガタチ(オールドクロウ・f16561)が、手に袋を持ちつつ言う。
「そうですねぇ……ただでさえ少ないこの世界のお客様を減らされるのは、私も困ってしまいますしぃ」
商売人めいた思想のもと、そうぼやくのは"法石"を売り渡り生計を立てる魔女、リュシカ・シュテーイン(StoneWitch・f00717)。
「ま、ともあれ時間も押してるんだ。――"英雄的"に仕事してきましょぉや」
のらりくらりへらへらり、そう嘯くのは相模・恭弥(レッツエンジョイ・f18126)。彼はそう言うものの、これから行う事は英雄的かと言えば首を傾げてしまいそうになる。――或いはそれすら彼の虚言の一つか。ともあれ。
「楽しい"工作"の始まり、ってね」
そう、工作。具体的にはゴブリンたちに向けた破壊工作。
要は、これから彼らが為すのは"罠の設営"だ。
●人海戦術
「まぁ時間くらいなんのその、その程度はかえってボクの高性能さを引き立てる為のモノさっ!」
どやぁと言わんばかりの顔でヴァリアブルが言う。
そんな彼女は村から持ってきた枝――麻琴が主に集めたもの――を取り出しつつ、バイザーを下げて、"準備"を開始する。
「ヴァリアブルネットワーク展開!スプリットホライズン構築……」
きゅいん。ヴァリアブルの宣告に伴い、人工的かつ工業的な電気などないこの世界にも、ヴァリアブルを起点としたネットワークが構築される。やがて、きゅいいと光の粒子が彼女の周辺に集い出す。
「システムスキャン……オールグリーン!来い!ヴァリアブルウイルス!!」
――キュオン!彼女の詠唱に応じ現れたのは、ドット絵めいてデフォルメされた彼女の分身。それが十、二十、三十、五十……まだまだ無数に!
「さぁやるぞボク達!納期の短さは手数でカバーだっ!」
"ヴァリアブル・ウイルス"。彼女がそう呼ぶミニマムな分身達が、挙って枝を切り、折り、尖らせて罠設置の用意をし出す。
「おう、頼もしい限りだな」
そんなヴァリアブルを見て、クロゥは呵々と笑いつつ、持ってた袋から硬い木を出す。これ自体はある浅葱色したフェアリーの少女から託されたものだ。罠の一部として使って欲しい、と。それを――、
ちゅいん。
「……ん、こんなものだろうな」
腕から先を"風"――鎌鼬めいた真空の刃を瞬時に、部分的にだけ形成し切断してく。
この木をくれた彼女の要望に沿う形で、三角錐状に切り落とす。要は"撒菱"めいた体裁を整えて、ぽいと道すがら、適当にも見えるような形で。ぐりぐりと地に押し付け、簡単には動かないようにしつつ。
「おいおいダメだろ、そんな乱雑に置いたら踏むもんも踏まなくないぞ?」
高性能な擬似人格AIを自称するヴァリアブルが、クロゥを見て進言してくる。対するクロゥはどこ吹く風。特に気にせず、ゴブリン達や獣などが踏んで草の禿げた地に撒菱を置き、
「いや、これでいい。……ヴァリアブル、この脇に枝を刺せ。草叢に隠れるように」
「え、あ、うん……?」
何だかんだ喧しく人をおちょくるのが好きだとして、彼女はAI。つまる話人の為に作られた人工知能である。彼の行動を不思議に思いつつも、言うがまま茂みの中に罠をぐさりと突き刺す。鋭く尖ったそれは剣山のようだ。
「いいぞ。そのまま何個か同じように。円周を書くように、この撒菱に沿ってだ」
「……、ああ、なるほどね!」
漸くヴァリアブルも意図を掴む。
「理解が早くて助かる、優秀だ」
「へへぇ、褒めても何もでないぞぅ」
照れるヴァリアブル。それを尻目に、今度はクロゥが袋の中から瓶を取り出し開け、"風"化させた手で一つまみ中身を取る。マリスとカタラが調合した毒だ。
「気をつけろ、刺した後は触れないようにしろよ。俺は生身で触らなくて済むから良いが」
風圧を上手く調節しながら、クロゥは刺された枝に毒を塗ってく。
「うひぃ、えぐっ。毒まで持ち出すとかまるで悪役だなぁっ!」
「はは、違いない」
からからと気風よくクロゥが笑う。――むしろそれこそが本懐。相手の嫌がる事はよくわかる。
「悪役だったからな」
「……ん?」
「何、昔の話だ気にするな。……それより次の場所だ」
仕事の続きを進言するクロゥの言葉にヴァリアブルもはっとし、
「あ、うんそーだね、こーしちゃいられないっ!さあさあボクについておいでっ!」
「あんまり急くなよ、転んで怪我とかしないようにな」
せかせかと、ヴァリアブルが次の設置先に向かい、クロゥもそれを追うのだった。
●法石屋の困惑
「……ええとぉ、それでなんですけどぉ」
「うん、はいはい?」
一方こちら、リュシカと恭弥の班。
この時点で二人はまだ動き出してない
ただひたすら前準備という事で、村から採取の際に集めたクズ石を用い、リュシカが空色のガラスペンでルーンを石に転写していく。
彼女のルーンを刻まれた石は"法石"となり、様々な効能を齎す。今回はそのうち一番慣れ親しんでいるとも言える、"爆破"のルーンを刻んだものだ。『在庫処分』と称し普段からオブリビオンへの投擲物として一番活用してるのもあってか、淀みなくすらすらと転写は済んで行く。が、ここに至って恭弥が設置をせんとする様子はなく、先んじて罠を仕掛けている二人を鼻歌混じりに見てるだけだった。
「け、結構法石もできましたしぃ、そろそろいいかとぉ、思うんですけどぉ……」
遠慮がちにリュシカが尋ねるのを見て、恭弥がふむ、と顎を擦る。
「二人が罠全部仕掛け終えるまで待ってもいいかとも思ったけど……まぁいいや、そんじゃそろそろやりますかね」
「は、はぁい」
にかりと笑い、恭弥が先導する。それにわたわたとリュシカがついていく。
●三手先を読む
「あ、気をつけてな。その辺毒の罠あるから」
――注意を促しつつ彼が来たのは、先んじて別働の二人が仕掛けていた罠、その周辺。
「……えぇとぉ、……さ、先のお二人と場所が被ってませんかぁ……?」
「いいのさ、これで」
首を傾げるリュシカの質問はのらりくらりと躱しつつ、恭弥はあっけらかんと言葉を紡ぐ。彼は罠の配置などを見つつ。
「はいじゃあ今から言うところに石置いてって。こことこことそことそことここ」
「え、えっえっあの、は、はいぃ」
慌てるリュシカを気に留める風もなく置き場を支持してく恭弥に従い、リュシカはぽてぽてと法石を設置してく。
「……あ、あのぉ、これはぁ、一体どういう意図がぁ……?」
「ん?あぁ、……要はあれさ」
罠を仕掛けすがら、恭弥が説明する。
「布石ってあるでしょ?」
設置してある木片の撒菱。
踏んでくのは痛い。
埋まってるから取り除くのも手間。
……ならば、と隣の茂みの中、何もなさそうな迂回路へ。ゴブリンたちはそのように歩を進める筈だ。
――その実、一歩茂みの中に踏み出せば毒の塗られた剣山。
「剣山踏んで敵が弱れば儲けもん。ただその内看破される。もっと遠回りに迂回路してこうとするよね。……はいここ」
――その迂回路の上、リュシカの法石がぽてんと置かれる。
「……あぁ、なるほどですねぇ……」
つまり、二重に張り巡らされた罠。
剣山をも迂回し進もうとした敵を、生体感知の地雷めいてリュシカの法石が吹き飛ばす。
一つ目の見つかりやすい罠を布石とした、二重、三重の罠、騙し討ち。
「さてさてそんな訳でここら一体まるっとデンジャーゾーンになった訳で」
いかにも愉快、と言った笑みを人畜無害を自称する青年が浮かべる。
後はどのように罠にかかるか。当たるも八卦当たらぬも八卦。
「結果を楽しみにしよぉじゃないの。……あ、石余ってる?ならもうちょい駄目押ししてこうかぁ!」
このどうにも無害とは到底言えない悪辣な青年と対峙する事になるゴブリンたちに、リュシカは少し同情したとかなんとか。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
非在・究子
※アドリブ・連携歓迎
あっ、アックス&ウィザーズの、せ、世界は初めて、だけど。
て、典型的なファンタジーRPGの、世界って、感じで、わ、悪くはない、な。
ご、ゴブリン、襲来に、向けた、防衛網の、こ、構築、か。
た、タワーディフェンス系だ、な。
げ、ゲームじゃ、ないって?
ぐ、ぐひひっ。
げ、ゲーム、ゲームだよ。す、少なくとも、アタシにとっては、現実も、げ、ゲームさ。
ゆ、UCで、そこら辺のマップをゲームのオブジェクトに、改変する、ぞ。
も、モンスターを、抑える、柵。
あ、足止めする、落とし穴。
じ、自動で、弓矢を、発車する、バリスタ。
こ、こんな、ところか。
す、ステージの、雰囲気に合わせたら、こ、こんなところ、か。
アダムルス・アダマンティン
よくある話だ
武器持たぬ者どもが魔の手によって害されようとするなど、まったく嫌になるほどにありふれた事件だ
俺には看過できぬ。伸ばされんとするその魔の手も。そして、その魔の手に抗う術持たぬ人の子らも
ゴッドクリエイション。木彫りの狛犬に生命の息吹を。そして戦う術を
人の子らから若い男どもを募り、動物を使いながら、最低限自衛できるための訓練を指導する
猟兵が機械仕掛けの神となることは簡単だ。だが、二度、三度と同じ境遇に陥った時。……再び猟兵が幕の上から降り立つとは限らん
手薄なところを蹴撃され、抗うこともできず殺されもするだろう
貴様らは武器に選ばれてすらいないだろう。だが、武器は必ずや貴様らの思いに応える
●昼やや過ぎ――とある非実在少女の憂鬱
「う、うむむ。むう……」
非在・究子(非実在少女Q・f14901)はどうしようかと迷っていた。
年の割には豊かな胸を組んだ腕に乗せ、てくてくくるくると歩くたびに同じく豊かなヒップが揺れる。ついでにぽってりしたお腹も。神は豊かな体という括りにおいて彼女に二物を与えたどころか三物まで与えたもうた。三つ目は余計だったかもしれない。
とまれ彼女が何に悩んでいるかというと、"何をするか"だ。いや、何をするかは決まってる。彼女の"ゲームナイズ"。現実にある無機物をゲームに出てくる仮想現実の被造物に置換する事で、防衛網を張ろうとしている。
構築自体は速やかだ。かつ効果的だろう。ドット絵で出来た柵、落とし穴、自動迎撃するバリスタ。どれをとっても敵には効果を発揮するだろう。
無機物には幸い事を欠かない環境だ、弾切れの心配もない。では何が問題か。
「じ、時間がな……」
そう、時間。足りないのではない、むしろ逆。"ありすぎる"。
ゴブリンたちが来るまでは凡そ1日、明日の朝頃だろうか。
例えば今すぐ"ゲームナイズ"を展開したとしよう。
要は明日の朝まで待たねばならないのだ。
自動迎撃のバリスタや落とし穴は確かに有用だが、敵あってこそだ。
敵の来ないうちに展開しても仕方がない。更に言えばこのユーベルコードは"解除すると無機物は元に戻る"。即ち非起動状態ではただの無機物に逆戻り。
備えるならばあと半日以上、このユーベルコードを敵もいないのに起動し続ける必要がある。大いなるムダだ。
クソゲーとは時に苦労をするもので、そう言ったものを究子は特段嫌いはしない。だが、特に必要のない苦労は避け省力化するのもゲームのコツだ。
従って、"ゲームナイズ"を展開するのはゴブリンたちが攻めてくる、その時ギリギリでも問題ない。――まぁつまるところ、
「あ、あまりに時間が、余ってしまった……ひ、暇、だ」
言語化するならこれで済む。彼女は暇を持て余していた。
ぼーっとしてるのもなくはない。しかし周りがタワーディフェンスに向けわいわいとゲームめいてクリアのために向かってく中、一人何もしないのもこう、あれだ。ゲーマーとしての沽券に関わる気もするのだ。
さて、ほかに何ができることは……そう思う彼女の視界に、何やら面白いものが映った。
「へ、へぇ……」
ので、当然。そっちの方へと進んでくのである。
●武の器、人の器
さてではその面白いものがいかなものの見てくれはいかなものだったかといえば。
それは一匹の狛犬の形をしていた。木彫りである。
そしてなんとも愛嬌のない顔をしている。
「――武器持たぬ者どもが魔の手によって害されようとするなど、まったく嫌になるほどにありふれた事件だ」
そして狛犬の後ろに立ち、そう零す男にも愛嬌のあの字もない顔だった。子は親に似るように、被造物も創造主に似るのかもしれない。
ともあれ創造主、神たる漢、アダムルス・アダマンティン(Ⅰの“原初”・f16418)がこの件に何を思うかと言えば、彼が呟いたようなことだ。
あまりにありふれた事件。恐らく予知をされた今件以外にも、探せば似たような事件は幾らでもあるだろう。
だからこそ。
ある少女が片手間に作ってくれた武器たちを握る、村の男達――それをアダムルスの厳しい顔がじぃと見る。
村人たちもまた威圧感に満ちたアダムルスの視線に喉を鳴らしつつも、じっと見返す。
そう、ここで目をそらしてはならない。
何故ならこの程度で竦むようでは、いざという時にこの脅威に立ち向かえまい。偵察を担ったという冒険者たち――燃えるような赤い髪の容姿端麗で寡黙な美青年、そして不思議な鎧を纏う青年。彼ら曰く、明日にはゴブリンたちが大挙となって押し寄せると言う。攫われたヤギと言い、その予兆はあった。故に彼らのいう事は真だろう。そして、だからこそ。
彼の視線程度に怖けては、本物の脅威に立ち向かえない!その想いを胸に、村人たちは武器を握る。
「……何も今回だけではない。貴様らが生きていれば似たような事は起こりうる。或いは俺には与り知らぬが、過去に起こっていたのかもしれない」
村人たちが此方を見返す中、神は言葉を紡ぐ。
「であるならば」
狛犬がぎぎ、と動く。"ゴッドクリエイション"で命を吹き込みし木の像。硬度を上げたそれ。要はこの場における、村人たちの訓練用の駒。
「武器を持て。手に取れ。己の手で勝利を掴むための術を知れ」
アダムルスは想う。
――正直に言うのならば。猟兵が此度の出来事、厄事を一掃する機械仕掛けの神として振舞うのはいとも容易いだろう。多少の苦戦はすれ、特に大きな問題もなく此度の事件を納められる筈だ。
が、次はどうだ、その次は。慮外の力を持つ、今回の猟兵らの助けは偶然に他ならない。そして村の脅威は、何も今回だけではないのかも知れない。
であれば。
「己の身は、己で守って見せよ。その術を学べ、識れ」
前に狛犬が歩を進める。即席の槍、そして投石用のスリング。それらを持つ村人の方へと、じりじりと間合いを詰め――、
「う、ぉぉぉおおお!!」
一番槍、村の中で一番若いだろう青年が狛犬に突撃をしかける。
「……突きが甘い、手ではない、腰だ。体でぶつかり敵を貫け」
アドバイスをしつつ、アダムルスが村人たちを見つめる。
その視線は先程より、幾許かのみ見守る者としての暖かさが滲む。
そう、彼らは弱い。アダムルスなりに言うならば、"武器に選ばれてなどいない"者たちだ。
しかし例え、この者らが武器に選ばれる器足らずとも――武の器は、必ず人の思いに応える。アダムルスは其れをこの場の誰より知っている。
――しかしいかんせん、狛犬だけでは教練の駒としては数が足りぬ。即席でもう一体作るのも時間が足りない。仕方ないがこれのみで訓練をするか、そう思ってた所。
ずるり。
ただの草地から、仮想空間の敵キャラめいて。"ドット絵で出来たクリーチャー"がポップアップする。
「……む」
「お、面白そうだ、な……ア、アタシも、手伝うぞ」
無論、究子である。そして、"ゲームナイズ"!究子が無機物を変換して出現させた雑魚敵だ!
こんな一昔前の、チュートリアル的な戦闘シーン!それも誂えたように、訓練相手は神が創り命を吹き込むゴーレムと来た。いかにも古典的なRPGでありそうな!なかなかに究子の好みである。
「む、村人の……レ、レベル上げだろ?ま、任せろ……アタシ、結構、得意だ」
ふへ、と笑いを浮かべて究子が言う。
その進言に対しアダムは、
「助かる」
そうとだけ、端的に述べ。
そうして村の片隅、村人たちが謎のブロックで出来た怪物やら、動く木の犬やら。そんなものと訓練を積む姿が、村の片隅で見て取れたのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
寧宮・澪
防衛戦、ですかー……頑張り、ませんとねー……。
【Wiz】
防御用に、1mくらいで塹壕と、通行止め、構築しましょー……。
ええと、村の方に【情報収集】、してー……丈夫な、木と、蔦を探して集めましょー……。
集めたら、囲える部分は、柵を作ってー……柵の、村の外側のほうを1mほど掘り下げますよー……。
【拠点防御】と、【戦闘知識】、【地形の利用】で、良さげなように組みましょー……。
柵作り、穴掘り、頑張りますね……。
疲れたら、【Resonance】謳ってー……。
防衛戦がんばりますよー……。
村守りましょねー……。
と想い込めて、回復、しながら、いけます……かねー……。
アドリブ、連携、歓迎ですよー……。
壇・骸
小鬼からの防衛戦、ね。経験はないが、仕事ならやってみせよう
……壊すより、守る方がきっと気分もいいだろうさ
だが、俺に何ができるだろうか。頭も回らず、手先も良くなく、人と話すのも捗らず、何も持ち合わせてはいない
それでも、無為に過ごすよりは、何かできる事を
……穴でも掘るか。単純に障害物になるだろうし、少し工夫してやれば罠にもなる
墓を掘るのは得意だ。何度も、何度も、繰り返した
掘り返した土は積んで壁にでもしておこう。使える物は有効に使うべきだ
偵察がいるかもしれん、極力気配を消し、迅速に行動を心掛ける【目立たない】
他に力仕事があるなら言え。いくらでも手伝おう
屍に出来る事など、その程度くらいしかないのだから
●昼過ぎ――墓掘りの壕と夢見姫の柵
さて、こちらは村の入り口付近。
外と村中との境界線。当然、村を守る上で間違い用もない重要な防衛拠点たりうる。さてここにどんな防衛が施されているかと言うと。
うぃーん、がしゃん、がしょん。がしゃしゃしゃしゃー。
とんかんとんかんずがががーかんかん。
急工事めいて施工が進んでいる。
建造物は柵。施工班は、琥珀金の電子機械兵たち。
「がんばれー……れぎおーん……」
蕩けるような、蜂蜜めいた声でそう声援をするのは、寧宮・澪(澪標・f04690)だ。そして召喚され実作業をしているのは、彼女が呼び寄せた"ElectroLegion"たち。一体一体は小型たれ、その総数は150を優に超える。そんな機械軍が、伐採し終え、ある空手家少年の手に寄り適切にカッティング加工され鋭くなった丸太をとんかんとんかんと地面に刺しては埋めていく。
その少年?澪ともう一人、この場にいる青年、その二人のとあるやり取りを眺めた後"それじゃ後は若いお二人で"などとよくわからぬ事を言い何処かに行ってしまった。
まぁともあれ素材が届き次第手をつけ始め、凡そ四時間程度だろうか。村の入り口、その八割以上は柵を立てる事が叶った。夕暮れ時までにはどうにか柵の設置も終わるだろう。
「……そっちはきっかり夕時には終わるか」
そんな声が澪の元に届く。どこから?地面の下だ。
正確には、地面の中、村の外側にて壕を掘る男――壇・骸(黒鉄・f17013)が澪に向かって言った言葉だ。この場で作業をするもう一人でもある。
「はいー……おかげさまでー
……。……あのぉー……」
「あ?んだよ」
ざっくざっくざっくざっくざっくざっく。
結構な速度で穴を掘り広げていく骸へと、澪がひょっこり穴を覗き込む形で声を掛ける。それにぶっきらぼうに骸は返す。
骸の手つきはとても慣れている。硬い土をプリンか何かでも掘るかの如く、スコップを突き立てては外にと土を放り出してく。されどさすがにその作業量、メートルにして100はあろう長さを掘っているからか、額には汗が滲み、顔には疲労が見て取れる。
それでも頑なな様子で一人で掘り進めてく骸だが。
「やっぱりー……私も手伝いましょうかー……?」
「却下だ馬鹿。さっきみてーにかえって足手まといになるからやめろ」
「あぅ。……手厳しいですねー……」
しゅんとしたらしい澪の様子に少し気まずさを感じつつも、骸は手を止めない。
左様、Legionたちの手で柵を施工するにあたり澪本人の手は空いてたので、最初は空いた手を活かし村人たちが掘ってた壕作りを手伝おうとしたのだ。
ただ、いかんせん華奢な澪がそれをすると恐ろしく効率が悪い。猟兵でないとは言え肉体労働に慣れた村人たちのペースより些か……結構?だいぶ?劣る感じのペースだ。
そこでやって来た骸が見兼ね、澪を壕の中からぺいっと放り出したのである。ついでに村人たちも。教練だの何だのでむくつけき男神が男衆を呼んでたし、こんな力仕事自分だけで十分だ、そう思った。"足手まといだ、俺だけの方が早い、お前らは他の事してろ"。出た言葉としてその様な所になってしまったのは、骸の性分ゆえに口も態度もだいぶ悪くなってしまったが。ただ、事実として村人たちが掘るよりは、そして澪がやるより遥かに早く進んだろう。
ともあれ穴掘りも7割は完了している。あと残す所は3割、気張りどころだ。額の汗をぐい、と拭って骸は気合を入れ直す。
「……頑張りますねぇー……」
「……あ?まだいたのかよ。あっち行ってろ」
しっしっと言わんばかりに手をぶんぶんと追い払う様に動かし。
「……どーしてそんなに……穴掘りを一生懸命にー……?」
「……」
そろそろ無視した方がいいだろうか。いや最初からそうするべきだったのでは?そんな思考も過るが、どうにもずっと掘り続けていた疲れからか。
或いは口先と態度は悪くとも、悪意はなく。そして口下手ゆえに口を滑らせ。
「……俺にできんのは、こんくらいだからな」
ざくりざくりと土を掘り進めるまま、骸は答える。
「……」
一拍、煩くはなくも甘やいだ言葉を延々流していた澪の言葉が途切れる。
骸も吐いた言葉にやや後悔したが時すでに遅し。ぶっきらぼうに、
「……忘れろ」
そうとだけ言って。
それを受けた澪は、とろりと眦を下げ、柔らかな微笑みを作り。
「……骸さんー……」
言葉を、静かに歌う様に紡ぐ。
「……村、頑張って、守りましょ、ねー……」
不思議と、心地よい音色めいた言葉として、それは骸の耳朶を打つ。
それを表に出す事は、ないけれど。
「……いいから、さっさとどけよ泥被すぞオラ」
「……はぁーい……」
やっと澪も満足したのか顔を引っ込め、いざ残りの仕事をとスコップを振る。
さくり。
「……ん?」
腕が軽い。疲れが取れ力がより上手く入る。はて、何故?
――訝しむも、仕事が捗るなら困るものでもない。そう思い、青年はまたスコップを振るうのだった。
「……元気、出たみたいですねー……」
壕から離れた澪はぽつり、歌う様に言う。
"Resonance"、唄声を人の力に変えるユーベルコード。
此度流れたそれは、唄と言うより、囁く微かな甘い言葉として骸へと向けられた。
ひとつだけ制約めいたものがあるが、彼が回復したのなら上々だ。――その制約、即ち"言葉への共感"。"共振"の名が指す通り、誰かと心を一つにする事で効果を発揮する技。
――それは転じて、あの不器用な青年も、"心の裡は村を守ろうと思っていた"。それの証左に他ならない。それを澪は、どこか嬉しく思う。
「……さあ、私もあとひとふんばりー
……。……がんばれー、れぎおーん……」
また澪も、琥珀金の機械たちにエールを送る仕事(?)に戻る。
壕と柵が完成したのは、ほぼ同時。日が村の背にある山の奥へと沈んでいく頃だった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
雷陣・通
とりあえず、話は聞いていると思うけど、ゴブリンが来る
ヤギがやられたのもそれが原因だ
それで防衛策なんだけど堀と柵はどうだろう?
堀は村人のみんなが掘ってくれ
俺は柵を作るために丸太を切ってくる
みんなは丸太を三角に縛って片方を尖らせれば、相手も刺さりたくないから大丈夫だと思うんだ
……斧?
要らないよ、丸太くらい『手刀』で切れるから!
(アドリブ、協力など歓迎です)
ヌル・リリファ
◆簡単な言葉は平仮名、難しめの言葉は漢字でお願いします
◆アドリブ、連携歓迎です
防衛戦。すごく得意ではないけど。
がんばるよ。
簡単な、武器をつくるよ。とおくからでもたたかえるもの。むらの、たたかうちからをもたないひとにわたすもの。
わたしは投石機をつくる。
UCで身体能力を強化しつつ、【怪力】で、木材とか、伸縮性のたかい蔦とかをあつめてきてくみたてる。一緒にいしもあつめるよ。
つくりかたは【戦闘知識】として、データベースにあるから。
自分の剣を見本にしながら魔術刻印をほどこすことで、強度をあげて、ねらいをすこし補正する。
これで、協力すればおんなのひととかでもつかえるよ。
剣よりはおとる刻印だけどね。
●夕方前――年若くとも侮るなかれ
さて、柵と壕の方ではそんなやりとりがあったりした中、そのやや内側、村寄りの方。
「……あれは……父ちゃんが言ってた!ロマンスの香りだ!」
きゅぴーん!閃いた!と言わんばかりの顔で道着の少年、雷陣・通(ライトニングキッド・f03680)が言う。
「……ちがうきがするけど」
一方冷めた顔で冷静に断じるのは華麗な銀髪に水晶めいた瞳と額の宝石が特徴的な少女、ヌル・リリファ(出来損ないの魔造人形・f05378)だ。
「いや!ライトニングな俺の勘が言ってる!」
だってこう、"お前なんかにこの仕事はやらせられねー(優しくおだっこして穴の外へ出す)”、”きゃっ!(だっこされた時特有のかわいらしい悲鳴)”だったのだ。
なお事実としては骸がぺいっと澪を粗雑に壕の外へと放り投げただけなのでかなーーり通目線での脚色を含んでいる。
「きっと王道的なこー……ラブになる!かも!!」
「あやふやだね?」
いかにもふわっとした推論。ヌルの視線も思わず摂氏で3度くらい冷ややかさを増す。
まーまー年頃の男子といえば何かとそーやって野次馬めいて大人の恋愛とかカップルとか見てみたかったりするのだ。なので澪と骸のやりとりを見た通は任された一仕事、丸太の加工を終えればあとはシュタッと若いお二人に!ってな具合で抜け出してきたのだ。なおラブだとかロマンスだとかは99.999%通の勘違いなので安心してほしい。
「それに!女の子一人だけだと木を切るのとか大変そうだしな!」
――まぁ実際の所、どちらかと言えばここに通が来た理由の9割はそれだ。いくら猟兵とは言え女の子、一人でこれからやる作業をこなすのは大変だろうと。そんな少年らしい優しさと気遣い故のものだ。
「……てつだってくれるのはうれしい。ありがと」
簡易ながらも、彼の気遣いに感謝をしつつ、二人は目の前にあるものを見る。
複数本の丸太、そして布、蔦。
「うん、武器とかは簡単にできるけど……こっちは、流石に」
石や木を組み合わせた簡易な槍などの武器、スリング。
データベースを活用してそれらを作成するのは簡単だ。
しかしこれから作るもの――、
即ち"投石機"となると手間が大きい。
武器やらスリングやらとはサイズからしてかなり違う。かかる手間も比べ物にならない。元々ヌル一人でも出来る、そのくらいの気概でいたが。協力者がいるならそれはそれで効率化できるし助かる。
「俺設計とかそういうのはわかんないけど、組み立て手伝うのは出来るからな!遠慮なく言ってくれ!」
「ん、わかった……じゃあまず、まるたを三等分して――」
「三つに切るんだな!分かった!」
ひゅぱっ!!
「……!?」
電光石火と呼ぶに相応しい速度!言うが早いか、いや言うより早いか。
ヌルが頼んだ通りに丸太が綺麗に切断されている。
驚くべきはその加工速度――よりも加工手段だろうか。
「……今、どうやって……」
「ん?そりゃもちろん素手さ!こうっ!」
しゅぱんっ!平手で空を切るモーション。いわゆる空手チョップだ。そう、通は刀は刀でも手刀、自分の肉体を以って綺麗に丸太を割ってみせた。ヌル的には"後ろで背負ってる剣は使わないんだ"とか思ったりもしたがまぁ目標は達成してるので何も言うまい。
「んで、この後どしたらいい?女の子が組み立てとか大へ……」
「あ、うん。えっと、この材木と丸太をくみあわせて……」
「 」
ひょい。特に苦もなく玩具でも持つ軽々しさで、ヌルが丸太を持ち上げる。
これにはライトニング少年も思わず一瞬フリーズ。
「……?どうかした?」
丸太を持ったままヌルがそう尋ねる。
「ん?!あーいや、ただすごい力持ちだなって!」
自分とそう背丈も変わらないのに!どこにそんな力がと真剣にびっくり通だった。
「ああ、そういうこと。……ただ魔力のちからで自己強化してるだけだよ?」
さもなんでもない、と言いたげにそう返すヌル。実際、"トリニティエンハンス"で自分のパワーを底上げしているからこそ出来る行動だ。
「へぇ……よくわかんないけどヌルってすごいんだな!」
「……ありがと。あなたも十分すごいとおもうけど……」
褒められ、謙遜めいて通の事も褒めつつも、少し照れたはにかむヌル。それを見て通もへへ、と笑う。
「よし、とにかく頑張ってぱぱっと作っちまおう!あ、そいえば石とかってどうすんの?」
「うん、複数回の投石はむずかしいだろうし、つかうのは一回ってわりきって――いしはリュシカさんが法石を――――命中精度はわたしの刻印術で向上して――――」
「ふんふん、へー……なるほどなぁー」
そんな形で、歳と見た目と、おそらく内面もそれぞれ見た目相応ながら。しかし猟兵らしいどこか常識の埒外さをみせつつ、彼と彼女は無事投石機(リュシカ特製の特大爆破ルーン付き)を完成させたのだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
浅葱・シアラ
ゴブリン……アックス&ウィザーズのような世界だと、やっぱりよくいる魔物なんだよね……
でも、ゴブリンって、集団で襲って来る上に野蛮でひたすら強固なの……だから……シアたちで助けてあげよう……!
【WIZ】で判定
山で役立ちそうな図鑑をいっぱい持って来たよ……!
防壁を組み上げるとかシアは苦手……だからね、硬い木を一杯採取していくよ……!
これは後で鋭く削って村の周りにまきびしのように設置しておくの……!
単に踏んで痛いだけでも進行は大きく防げるよ
皆には設置した場所を説明して踏まないようにしてもらうね
後は、美味しい山菜とか採っていくよ
皆で戦うからね、美味しい料理を振舞って元気出してもらうの……!
リンタロウ・ホネハミ
戦が始まるっすね
敵は人道を知らぬ無道の化物、背には戦を知らぬ無辜の民
そしてオレっちは歴戦の傭兵
ならばすることはただ一つ
どーもどーも!イノシシ狩ってきやした~!!
いやぁ獣道に罠仕掛けてた(地形の利用・罠使い)んすけどね
こんな立派なイノシシが捕まるたぁ!さぁぼたん鍋にするっすよぼたん鍋!
ん?いやいや、こんなときだからこそっすよ
腹が減っては戦は出来ぬっす
精がつくもん食って明日精一杯動けるようにする、これもまた戦の準備の一つっすから
あ、ちなみに行軍ってのは基本的に道を行くもんなんすね
で、その道ってのには獣道も含まれるっす
さて、今日しこたま仕掛けた罠で明日どれだけ小鬼が殺れるっすかね?
アドリブ大歓迎
●
ゴブリンの居住地に置かれた監視の目。
侵入経路に敷かれた無数の罠。
村入り口の壕と柵。
その内側、備え付けられた特別製の投石機。
そして電脳世界より出でし迎撃装置。
村人たちにも訓練を積み、ほぼ万全の態勢を敷いた。
後はゴブリンたちを待ち構えるのみ。
日も暮れた後となればできる事も限られる。
それに何せ猟兵と村人とも、今日一日の突貫作業でへとへとだ。
故に、作業はこれにておしまい。
そう、作業は。
では何もできないか?と聞かれれば否となるだろう。つまり、そう。
何事も頑張った後は、労いもあってこそである。
●夕暮れのち――腹が減れば戦はできぬ
「そんなわけではい、お待たせっす!猪肉の鍋ができたっすよー!」
カンカンカン!と鍋を鳴らしつつ、今日の重労働を終えた面々に大声で呼びかけるのは、リンタロウ・ホネハミ(Bones Circus・f00854)。彼の元気さ溢るる呼び声、そして何より漂ってくる、えもいわぬ美味そうな香りに、力が底を尽きそうだった村人たちもわらわらとリンタロウの方に集まり出す。
「う、美味そうだけど……いいのか?」
ごくり。唾を飲み喉を鳴らす村人の一人に、にかりとリンタロウは笑いかける。
「勿論っす!今日は皆頑張ったみたいっすからね!」
「そ、それじゃあ遠慮なく!」
「お、俺も!」
「はいはい慌てず押さずにっすよぉ!いやぁ立派な猪が掛かったもんで!おかわりはたんまりあるっすから!」
ぞろぞろと、自分たちの家の器を持って村人たちが並び、差し出された器の中に暖かなスープがよそわれる。キラキラ光っているようにも見えるそれは、ごろごろとした大きな猪肉、それに山から採れたきのこや野草、根菜など、山で採れる各種山菜がふんだんに使われている。山菜においてはレイラとエスチーカが、毒草のついでに取ってきたものだ。
「……あぁ、うめぇ……こんなにうめぇ汁初めてだ!」
「生き返るみてぇだ、疲れが取れるどころか力が漲ってくる……」
「おーおー、喜んでくれて何よりっすね!手伝ってくれた子も喜ぶの間違いなしっすよ」
変わらず笑顔を浮かべるリンタロウ。そんな彼に、村人の一人が尋ねる。
「ところでこの鍋、なんか隠し味か妙薬でも入ってんのかい?」
ありふれた素材の割に、普通の味とはどこか違う。それに気づいたらしい。やたら不思議な輝きを湛えてるようなのも気になる。が、リンタロウは変わらずの笑みを湛えたままににししと返す。
「そりゃあ企業秘密ってやつで。ともかくこれ食って英気養って、明日の闘いに備えるっすよ!はいはいまだ食ってねぇ人はいねっすかー!」
「あ、俺オレ!」
「嘘つけ、お前さっき食ったろぉに!」
――ハハハ。
今日の戦の備えでの疲れも忘れ、夜空の紫が滲む空の下、笑い声がこだまする。
――やがて、誰も彼も、村人も猟兵もたらふく鍋を食べ、満足したのち。
「いやぁ、見事な売れ行きだったすねぇ……あ、そろそろ出てきていいんじゃないっす?」
「ひぅっ……ほ、ほんと?」
ふらふらふわふわと、リンタロウのローブの影から小さな影が現れる。
薄く明るい青色の髪、そして揚羽の如き羽、小さな体躯。フェアリーの浅葱・シアラ(黄金纏う紫光蝶・f04820)だ。引っ込み思案な彼女らしくおずおすとしており、人見知りの気もあるので、村人たちがいるうちはリンタロウの陰に隠れていたのだ。ただ、おずおずとしているだけでなく、今日はなおその飛ぶ様に力がなくも見える。
「……流石にお疲れっす?頑張ってたっすもんね」
「……えへへ、ありがと……」
止まり木代わり、リンタロウがどーぞと差し出した肩に留まり、シアラが細く息を吐く。
「……ご飯、みんな美味しく食べてくれてた……?」
「へへ、もちろんすよ。シアラが一生懸命作ったんすから」
そう、大いに頑張ったのだ。それは隣で見てたリンタロウが一番理解してる。
何せ、図鑑を持ち出しての採取――エスチーカにも図鑑を渡し協力を仰いだ――その他にも、罠にも使いうる硬く丈夫な木を、罠を仕掛けに行く面々に渡したり。取ってきた、或いは採取班のレイラとエスチーカに取ってきて貰った山菜を、リンタロウと一緒に調理したり。
なによりも。
「"おまじない"、ばっちり効いてたすよ」
「……へへ、良かった……。シア大成功……」
そう、一番村の人々に助力をしたところ。
鍋にこっそりと入れた隠し味、"紫光蝶"、その光の鱗粉。
おまじないめいて一振り、二振りと掛けた光の粉は、触れた相手を高速治癒する魔法の粉。こうして鍋に入れれば、食べた人たちを癒す魔法のスープとなる。ただそのかわり、鱗粉を出しただけシアラは疲労する。人を癒す代わりに自分が疲れる、当然といえば当然の代償で。それを厭う事なく受け入れたからこそ、こうしてシアラはふらふらなのだ。気を緩めれば、今にもリンタロウの肩の上で寝こけてしまうだろう。
「……ん、よく頑張ってたす。……硬い肩ですんませんっすけど、そんなでよかったらなんぼでも貸すっすから」
「…………えへへ、ありがと、リンタロウ
…………」
何やら村の中心が騒がしい。誰かの話す声、そして暫くのち地を蹴る大きな音、空を駆ける影。村人たちの息を呑むような声。
「おーおー、明日が本番だってのに……まぁこんなんも悪くないっすかねぇ」
「…………ん、そうだね
…………」
きらり。
「お、流れ星……わぁすっげぇす、たくさん。シア……」
「…………zz」
「…………あらら、惜しいっすね?」
こてり。リンタロウの頬に寄りかかるように、寝息をたてながら。今日一みんなに元気を分け与えたであろうフェアリーが夢の世界に旅立つ。
「……おやすみっすよ、いい夢を」
こうして、夜は更けゆく。
――因みにシアラが女性面子に回収されるおおよそ1時間後まで、地味に首を動かせなくて困るリンタロウ・ホネハミだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アポロダスト・ディラマティウス
【アドリブ歓迎】
オーイエス!困ってる人たちを助けるのは髪として当然デース!!
村を襲うヴィランたちはワタシのダンスでボコボコにしてやりマース!!
【POW】
危険な作業もドンと来いデース!
なぜならワタシには『スカイステッパー』がありマース!!
落ちる心配を気にせず山を進めるのがワタシの強みデース!
でもワタシそこまでパワーはありまセーン…。
なので軽い蔦やしなやかな枝とかそういうの集めマース!
これで罠とか作れるはずデース!
ワタシは出来ないので他の人よろしくデース!!
何もしないのもアレなので後ろで応援のダンス踊ってマース!
ウェンディ・ロックビル
防衛線構築かぁー。んへへ、ワクワクするよねっ。でも、僕そーゆー知識とかないしどうしよっか……。そだっ、こーゆー時は!
――もしもし?僕だよっ。……って、パパかぁ。うそうそ、元気してた?かくかくしかじかなんだけど――
うーん、「俺様の勇姿を見せ付ければ防衛戦だろうと屁でもねえ」って言ってたけど……。
あ、そかそか!村人さんたちを元気づけて、手伝ってもらおう!
僕らだけだと限界あるもんね!
僕のダンスパフォーマンスで村人さんたちを鼓舞するよっ。所々アクションも入れちゃおっか。僕らはこんなに頼りになるぜ、ってね!
みんなの士気が高まったら、柵や罠を作るの手伝ってもらおうねぇ。
ただし、危ないことはしないようにっ!
●
さて、流れ星などいかにも都合が良い。
そりゃもう大いに盛り上がってしまうってものだ。
だがしかしそんな都合よく星なんて降るだろうか?
否、断じて否。
それこそ神の力でも借りねばなるまい。
だがお誂え向きな神というやつが此処にはいたのだ。
●夜――僕とパパと時々銃声
さておき、神のことは一度横に置いておくとして。
ウェンディ・ロックビル(能ある馴鹿は脚を隠す・f02706)はどうしたものかちょっと迷っていた。
ウェンディは一点、彼女の最も矜持を持つ武器を除きほぼありふれた、普通の少女だ。踊りとダンスと歌とが好きな、どこにでもいるかもしれないキマイラフューチャー出身らしいキマイラである。
飛び抜けて力がある訳でもないし、強力な魔法を使えるわけでもなければ電脳関係に詳しいわけでもない。猟兵には稀に見られる、暗くも闘志の支えになるような過去もない。父親が宝くじ1等級の弩屑である点は辛うじて暗い過去に分類されるかもしれないがウェンディ当人が露ほども気にしてないのでノーカンである。
まぁそんなウェンディ、こう言った場で出来ることはそれほど多くない。故に頼れる家族に自分がどうするべきか、相談するため電話したのである。電波?ユーベルコードの万能性と家族の絆の前ではそんなの関係ないのだ?(断言)
そして以下がその電話のやりとりだ。
――√V^――
「よいしょ、っと。さー、誰が出るかなぁーっと」
さて、奇しくも出たのはこの世で一番頼れる姉でもなく、大好きな母でもなく。
(ガチャ)
「あ、繋がった。もしもーし?」
『おう誰だぁコラァこのクソ忙しい時に電話なんて掛けてくんのはゴラァァン!?』
「……ちぇっ、パパかぁ」
ワイルド(精一杯マイルドな表現)な父君であった。
なんか後ろで銃撃音とかガラスの割れる音も聞こえる。
『テメェ一言目がよりによってそれかオイゴルルァ!!』
「えへへー、嘘ウソ。元気してたー?」
『おう元気だぞォそりゃもう天上天下唯我独尊の俺様だからなァ鉛玉も俺様を止められねぇz(チュイン)ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ!?何しやがる三下ァ俺様の流麗で超絶スタイリッシュな頭毛がぁ!!!死ねェ!!!(ドゴォン)(ギャー!!)』
「ねーそれよりパパー、実は角々鹿々なんだけど」
『親のピンチそれよりって言う辺りお前も中々だなァウェンディ
!!!?』
わいのわいのとやった後、チンピラなりに愛娘にとあるアドバイスが贈られる。
『要はアレだろォその村だの守ればいいんだろォ!!そんなもん決まってらァ!!このら俺様のありがたーーい姿をちょいと見せてやらァ村人どころかクソゴブリンどもも涙流して跪き俺様を崇め奉るって寸法よォ!!ゲーーッハッハッハァッ
!!!!』
「……むむ、姿を見せる……」
『つーわけでよウェンディこーなんかお前のマーベルモードだかグリトグラだか何だかで俺様をらその場に今すぐ転送しろォ!!それで俺も助かる!!オメーがいる村も助かる!!WIN-WINって』
「わかったよパパー!大丈夫、パパならきっとピンチを抜け出せるから!僕も頑張るねー!ばいばいっ」
『アッ待ておいウェンディ俺様の話を聞』
(ぷつん)(ツーツー)
――√V^――
とまぁこんなそんなだったので。
この馬鹿げたやり取りからどうにか村の助けになる為のヒントを思いつかんとしていたのだ。もはや大喜利かトンチの領域かもしれない。
「んんんー……姿を見せる……」
頭を真横にするくらい捻るウェンディ。お題の難易度は中々に高いと見えるがどうなのだろうか。
「姿……見せる……見せ…………そっか!」
ぺかーん!そんな顔でガバッと顔を上げる。さてさて、どうやら何かを思いついたらしい彼女が取った行動、それは――、
●明日を恐るる事なかれ!
さて、食事をとり終えた村へと場面を戻そう。
旨いスープを頂き、なんなら明日の気つけとして秘蔵の酒を出す村人たちもいる中。
それでも村人の幾人かは、明日やってくるだろう戦いに膝の震える思いをしていた。
それは或いはまだ若い青年だったり、まだ年若い子供を持つ父親だったり、年場のまださほど行かぬ先ある少女だったり、色々だ。
当然だ。ともすれば、明日自分の命が潰えたとしてもおかしくはない。その事実に怖気つかない人などいようか。それも彼らは今日この日になって、その事実に直面したのだ。
そんな、心の内に恐怖心を持つ人らの居る中で。
カッッ!!
何故か村の中心。ライトが点る。
「「「「……!?」」」」
何事か!?中心にいるあれは誰だ。敵か!?悪魔か!?
あのアフロは……否!!
「OH, YEEEHHHHS!」
煌々とスポットライトに照らされしサングラスと見事なボディ!アポロダスト・ディラマティウス(踊り踊らば踊りまSHOW!・f17392)その人、もとい神だ!
なんかこうサタデーでナイトでフィーバーなポーズでそのまま停止している!
なんだあれは。走るどよめき。
突然の出来事に動揺する村人たちの視線が集まる中、ウェンディが歩み出る。
「えーっと、みなさーん!今日はお疲れ様ーっ!」
スポットライトに照らされる彼女は、村人に向け声を掛けた。
「今日はね、とっても大変だったと思いますっ!……そして、明日はもっと大変だね」
パフォーマーとしてよく通る声で、村人と、この場にいる猟兵たちも込みで言葉を放つ。
改めて明日来る大いなる困難に、何人かの村人が頭を重々しく下げそうになる中――
「But!!」
アポロダストがウェンディの言葉を継ぐ。
「皆サン、とても頑張ったデース!!ほぼ準備は完璧デース!」
胡散臭い外人みたいな喋り方だが、アポロダストの言葉は至って真摯だ。
「だからどーか、自信もって下さいデース!大丈夫!皆さんならきっと勝てマース!」
謎の自信溢れる言葉に、そうかもしれないと村人たちが頷く。
「えーっと、それでそれでっ!今日頑張った皆を応援する意も込めてっ」
手をパン、と叩いてウェンディがはきはきと喋る。
「……僕と神様のスペシャルライブダンス、ご披露しちゃうぜっ!」
「見て驚ケ!ノリに乗って皆で楽シメ!デース!!」
ピッカァー!!衛星スポットライトがなお眩く輝く。
もはやよくわからないが、ともあれ彼女たちの勢いが凄いのはわかる。
村人も、一部の猟兵とてその勢いに呑まれてるのが見える。赤毛のキマイラとかは三つ編みをふんふん振ってる。
これも、パフォーマンス力の賜物。そう、視線はとうに彼女たちに釘付けだ。
そして。
「よーく見ててね」
にこりと笑って。ウェンディは言う。
「君たちの味方は、こーんな事だって出来ちゃうんだぜ!」
「O.K!!C'mon Buddy!!」
「「Let's Dance!!」」
ドンッッ!!!
猛烈な音と共に、二人が地を蹴る。
何処へ?煌びやかな光は上へ……そう、上!空へと!
一跳び毎に高く、高く、高く――
螺旋を描く様に宙を駆け、時に片方の腿を踏み台にしてより高く!
正しく空をも駆ける豹の様に。或いは名の示す通り明けき太陽の様に。
空をも自在に奔り、踊る。
村人たちが、或いは猟兵たちとて今まで見たことのない様な。
自由極まりなく野放図で、だがとても愉快なダンスで。
「Oh!とても楽しいデース!!なのでこれはサービスデースネー!!」
くるり、宙で一転するアポロダスト!
するとどうか!
満天の星空より、いく筋もの光!流星群が煌めき迸る!
"流星群舞踊"!
星すら魅了する女神の舞踏が、天空に流星を流させたのだ!
奇跡めいた光景に、村人たちも息を呑み拍手を送る。
「……へへ、大成功っ、かな?」
まだ宙を舞いながら、ウェンディは呟く。
猟兵としての自分たちを以てして、明日の戦いに挑む村人たちを鼓舞する。それがウェンディのしようとした事で、だからああしてアポロダストの力も借りたのだ。
下を見ればこのダンスに乗って、その手の事に覚えのある猟兵もまたパフォーマンスに加わったらしい。例えば狐耳の少年の笛の調べにのって、眠たげな歌姫がささやかに歌い。そうして音楽の輪は広がり、また人々を勇気づける。もはや明日に怯える顔の者は誰一人とていない!
そう、恐るなかれ。
いくら脅威が押し寄せようと、前を向け!
何を怖がることがあろう、村人たちよ。君たちには頼もしき味方たる猟兵たちがついているのだから!
士気は高い。
備えも万全だ。
後はゴブリンたちの進行を待ち構え、返討ちにするのみ!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『ゴブリン』
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POW : ゴブリンアタック
【粗雑な武器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 粗雑な武器
【ダッシュ】による素早い一撃を放つ。また、【盾を捨てる】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : 足払い
【低い位置】から【不意打ちの蹴り】を放ち、【体勢を崩すこと】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:あなQ
👑11
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【連絡】
受付は断章追加後を想定しております。
断章投下と受付期間の詳細についてはまた後ほど。
――――
●"侵略者"の視点
蚊蜻蛉のように、みたこともない"鳥"がやってきたのが、今昇る日が出る一つ前の事だ。
なんの事はない、矢じりに火の玉、或いは石ころを投げてやればすぐ死んだ。
先にバラして食ってしまったヤギを調達した、あの村の精一杯の反抗があれか?
なんて哀れな。
ヤギは痩せてて歳嵩もあって大してうまくなかった。
が、あの村には他の家畜も、若そうな肉もいた。偵察に行ったのだ、当然知ってる。
歳の行った男は殺してしまおう。使い道がない。
人のガキは他の獣と一緒くたにばらして煮て焼いて食おう、肉が瑞々しくてうまい。
女なら孕み袋にしよう。俺たちの子を産んでもらおう。
ああいや、しばらく番で飼ってみるのもいいか?
産まれたての人の子を我らが"王"に捧げるのもいいかもしれない。骨まで柔い、特に上等な馳走だ。
或いは王は"人畜"として増やすのを望むだろうか?
なんにせよ楽しみだ。
なに、大した抵抗など奴らはできまい。
奴らの顔が絶望に染まるのを見るのは好きだ。だから。
いっそ可哀そうなくらい、弱弱しい、精一杯の抵抗をしてくれてもいい―――
―――そう思ってた。抵抗なんてまともにできない。できない筈だ。
じゃあこれはなんだ?
いざ村に進み、涙ぐましい愚かな木の礫、
奴らの精一杯の抵抗――――そう思ったものを避けて進めば、茂みの中には棘の罠。
刺さった仲間は苦しんで泡を吐いて死んだ。
不気味に思いつつ、棘の上に倒れる無残な仲間の骸を避けて進もうとした。
突然地面が爆ぜる。仲間の身体が粉々になった。
ある者はその爆発の余波で崩れた山肌、その岩の雪崩に巻き込まれ死んだ。
どうにも雲行きが怪しい。――訝しみつつ、それでもそれらを乗り越えた先、がら空きだった村の入り口には。深く掘られた溝、そして木の壁。
――なんだそれは!そんなものこの前来た時はなかったのに!
壁と溝とに侵入をまごついていれば、俺らを狙って石の礫が。
ただの石礫じゃない、あの爆発する石だ!
小さくとも俺らの頭がぶつかった先から粉みじんになっていく!
そしておまけとばかり、一際大きな石が空から飛んできて。
――ずどぉぉぉんっ!!
俺らの後ろにいた仲間の群れ、それがいた場所に馬鹿でかい穴が開く。
巨大な獣にばくり、食われたように地面が抉られて。俺らの仲間だったものの肉だとか腕だけとかが千切れて散ってる。
なんだ、これは。
村の連中は何をした!何をしている!?
やっと村に入ったと思えば今度は落とし穴!
落ちた仲間はその穴の中、仕掛けられてた鋭い枝に刺されて死んだ!
それを躱しても無尽蔵に、槍めいた矢を飛ばす異形の弓!
腹を、喉を撃ち抜かれて仲間が次々に死ぬ。
なんだこれは!誰がこんな事をした!
――見渡せば、ちらほらと偵察の時は見なかった連中が。
――お前らか?お前らか!お前らがこんな悪知恵を!!お前らさえ!!お前らさえいなけりゃ!村人くらいなら脅威でもなんでもなかっ――
(ぶすり、ぐちゃり。)
●
「今だ!!」
「三人同時だ!!」
―――ぶすり。ぐちゃり。
「よし、また仕留めた!次だ!」
「油断するなよ!槍で刺すときは体で当たれ!」
「「おう!!」」
脅威でもなんでもない筈の村人。
それらに槍で刺され、とどめに石斧で頭を潰された。
――それがあるゴブリンの最期だった。
●いざ、戦の時
朝日の中、繰り広げられる血みどろの戦い。
高い士気も相まってか、村側の損耗はまだまだ軽微だ。善戦しているという他あるまい。
だが。
「ぐるる……がぁっ、ごるぐるる!!!」
対する怪物、ゴブリンたちとて唯でやられている訳ではない。
多くの仲間を倒され怒るもの、手傷を負ったが故なお激昂するもの。
ここまで辿り着いたゴブリンたちは数多の罠と迎撃対策とを乗り越えてきている。
そして百を優に超える敵を迎撃策で屠ったであろうに、まだまだ彼奴らは村へとやってくる!
だがだからと言って村人たちの闘志は砕けない。
何故ならそう。
この村を救う為にやってきた君達冒険者、猟兵たちが共にいるなれば!
ゆえにこそ、君達もまた村を救う為にぞんぶんに力を振るうといい!
さあ、魔の手から村を救う時だ!!
――――
【業務連絡】
5/16 AM8:30より第2章受付を開始します。
非在・究子
あ、あれだけ仕掛けた、わ、罠を、超えてくるのか。
な、なかなか、気合の入った連中だ、な……親分が、怖いのか?
ふむふむ。(状況を把握しようと『戦場マップ』を眺める……少なくとも彼女の視界にはそれが見えているし、味方は青丸、敵は赤丸で表示されている)
て、敵の多い所に、UCで、迎撃装置を、追加していく、ぞ。(UCにより、『現実』の【ハッキング】、『ゲーム化』が行われていく)
そ、そこには、自動バリスタだ。
あ、あっちには、防護壁を、増やして、敵を誘導して、火炎放射器で、出迎えて、やる。
そっちは、落とし穴、だ……ぐ、ぐひひっ。じ、ジャンプで、越えようと、した所に、隠しブロックも、置いてあるから、な。
●開戦
「ごる、がるる、うぐぁぁ!!」
数々の罠と柵、防衛網を乗り越え殺到するゴブリンたち!
村に押し寄せるそれは緑の波のよう!
数多ある敵を罠で屠ったというに、それはまだまだ湧くように出てくる!
数とは一種の暴力だ。いくら猟兵と言えどこの殺到する数、手こずるのは必至だろう!村の中、"助けてくれぇ!"という叫びや"父さん、母さん、怖いよぉ"という悲鳴も聞こえてくる。怯え慄く村人たちの声に気を良くしたのか、或いは興奮したのか、ゴブリンはなお勢いをつけ村に侵略し――
そんなゴブリンたちに対し、八面六臂の活躍をしたのはとある"ゲーマー"だった。
●INVADER
「あ、あれだけ仕掛けた、わ、罠を、超えてくるのか」
――親分が怖いのか?
戦場と化した村の中、非在・究子は呟く。
語調が辿々しいのは恐れ故ではなく、単純に滑舌があまりよろしくないだけ。
「な、なかなか、気合の入った連中だ、な……」
むしろ、究子からすれば恐怖を与える手合いどころか好ましい。
ゲームとは適度な難易度あってこそなれば。彼らがいてこそこの"現実(ゲーム)"が面白くなるのだから。
そんな彼女が何もない筈の虚空を眺める。――そう、ゴブリンから、あるいは似たような能力を持たない限り仲間からもそうとしか見えないかもしれない。その実、彼女の目はディスプレイの如く虚空に浮かぶ画面を見やる!
「ふ、ふむふむ。……よ、し」
無数の赤丸、そして点在する青丸――敵と味方の数を表示された"戦場マップ"で確認。その間、1Fも掛からず!そしてにたりとした笑みと共に、
「そ、それじゃ、こうだな」
敵の侵略なにするものぞ!究子の"侵略(インベイジョン)"が広げられる。即ち――"ゲームナイズ"!!
「そ、そっちには、バリスタ」
「うぎっ !?」
角ばったドットブロックでできたような巨大弓!ばしゅうと弓を撃ちゴブリンを射抜く!
「あ、あっちは火炎放射器」
「ぎ、ぎぃぃ゛ぃ!?」
ごぅぅ!燃え盛る炎が数匹ゴブリンたちを呑み焼き払う!
「そ、そこには、落とし穴」
きゅおん!突如ゴブリンの前に開く穴!だがその程度飛び跳ねれば!にやりと嫌らしくゴブリンが笑い飛び跳ね、究子へと刃物を振りかざし――
「き、気をつけろ」
「ぐ? がっ!?がふっ !?」
ガツン!!
何もない筈の空間、そこに思い切りゴブリンが頭を打ち付ける!
「そ、そこ、透明なブロック、あるぞ」
ずるり、ぼて、穴の中に落ちてくゴブリンを見送るように現れるのは宙に浮くレンガブロック!有名な配水管工が主役のゲームを彷彿とさせるギミックだ!
おまけとばかりにブロックから亀の甲羅が出てきてぽてんと落ちる。1Hit!2Hit!3Hit!狭い穴の中で甲羅が乱動!
「ががぎぎぎがぎ!?」
哀れなゴブリンの悲鳴!甲羅がぁ!!穴の端ぃ!!まだ(コンボが)入るぅ!!
なんやかんやで究子の残機が増えたり増えなかったりしてるかもしれない!
まあそれはさておき。さすがの究子も額の汗を拳でぐいと拭う。なんにつけても
「――か、かず、ほんと多い、な?」
これだけ始末してもまだ入り口からは湧き出るように来るわ来るわ。
雑魚敵のポップアップするさまのようだ。
だがそれがどうした、何の問題があろう?
「がる、ごるるがぅぁ!!」
迫り来るゴブリン、その数35、36、――37匹!数多のそれに怖じることなく敵の数を正確に把握しつつ、究子の目が戦場マップを今一度見る!近くの青丸の場所をチェック!
「ぐ、ぐひひ」
思わずにたりと笑い、究子の手が宙を掻く!
「お、おまえらは、あっち」
「――ぎっ!?ぐ、ぎぎ!?」
――ズラァァァ!!!
展開される分厚いドットブロックの防護壁!それが一個群のゴブリンたちを分断し、進路を阻む!
「ぐぅ、ごぁぁ!!」
怒りのままに壁を叩き、武器で叩くもびくともしない!進路は壁に遮られ一方のみが開く。
「ぐるるぎぃ……!」
腹わたの煮えくり返ったような形相で、然し分断されたゴブリンたちは仕方なしとばかり残った道を壁伝いに進んでいく――!
「……よし、あ、あのゴブリンたちは、あれで、いいな」
マップに目をやりつつ、満足げに究子が言う。
防護壁を"ゲームナイズ"で呼び寄せる事による敵軍の分断・誘導!
此度この地に呼ばれた猟兵の中では、その精度・速度・判断力と言った総合力で究子以上に巧みに敵を誘導できるものはいないだろう!
故にゴブリンたちがわらわらやってくる入り口付近、そこに留まりゴブリンたちを"振り分け"しているのだ!即ち彼奴等が向かう先――!
「あ、あとは好き勝手に、やるだろ」
待ち構えるのは、歴戦の猟兵たち!
「こ、これはこれで、結構、楽しいな……」
猟兵を"ゲームの駒"に見立てた戦略RPG。なかなか贅沢な遊びじゃあないか!
そう笑う究子の手によって、ゴブリンたちが各々の死神の元へと派遣されていく!
大成功
🔵🔵🔵
ヴァリアブル・タイプオメガ
計画通りだね(にやり)
低脳なゴブリンごときが叡智そのものであるボクの計略に気付くはずもないんだよ!(どやぁ)
さて、ボクの高度な演算によればそろそろ直接戦になるね、村人や猟兵の指揮を取りつつ、【グッドナイス・プレイヴァー】で戦場全体にドローンを展開し、戦線を撮影!それを元に敵の動きを分析して、支援と指揮中心の立ち回りをするんだよ。ボクは高性能だからね、戦場全体を見ながら戦闘できるのさ!
村人は安全に罠にかかったりしているゴブリンを掃討をメインに指示するよ、安全第一!目指せ怪我ゼロ!
一番怖いのは裏どりによる奇襲だね。ボクはその可能性もあると睨んで後方にもドローンを展開する。これで詰みかなぁーっ???
フェル・ドラグニエル
この村の明日を守るために…行くよ、シルヴァ!!
相棒のドラゴンランスの子竜を〈蒼雷の銀竜槍〉に変化させ、装備してから戦場に赴きます
広範囲で…は建築物を巻き込むのはマズイから各個撃破ね!
村人の皆さんも、怪我を負ったらすぐに引いてください!
と[鼓舞]で励ましつつ出撃します
「おっと!誰にも手出しさせないよ!」
〈竜腕の籠手〉を展開し、可能な限り村人や他の猟兵への攻撃を[盾受け・かばう]を用いて捌いたりします
「ゴブリン共よ!この地で朽ち果てろ!ドラゴニック・エンドッ!」
〈蒼雷の銀竜槍〉を構え
[2回攻撃・怪力・力溜め・串刺し・カウンター]を用いて1体ずつ確実に敵を刺し貫いて行きます
アドリブや絡みは大歓迎
雷陣・通
よし、ゴブリンどもが出てきたな。
ちょっと頭を使おうか
おびき寄せで奴らに舌を出し、自分の尻を叩く
来たらすぐに『前羽の構え』でかばいに行くぞ
この間に他の猟兵の兄ちゃん達が展開するのを視力と戦闘知識で確認
負傷者の後送も確認出来たら攻撃に移行
『紫電の空手』で攻撃回数を増やし、二回攻撃でさらに上乗せ
残像とフェイントを生かして、手数で徹底的に殴り倒し、動きを止める
一撃で倒せるならそれでいいが、無理なら攻撃を当てて動きを止めていくんだ、あとは仲間がトドメを刺す
「先駆けは雷陣・通が頂いた」
「素手だと思って舐めてたら痛い目見るぜ!」
ちなみに痛い目見たくないから敵に攻撃は視力で見切って回避な
●村人の奮戦、それを護り導く者たち
壁に隔てられ仲間たちと分断されるゴブリンたち!
忌々しく思いつつも、壁伝いにその先へと侵入してく小鬼の群れ。
訳の分からない壁を操るヤツなんてどうでもいい、それより村人どもだ!
もともと狙いはそちらだったのだ、狙いを村人たちに絞るのは当然とも言える。
――そんな愚かなゴブリンなど、格好の的に他ならない!
「低脳なゴブリンたちが僕らの計略に気づく訳もないんだよなぁ!」
ノコノコとやってくるターゲットをカメラ越しに見つつ、ヴァリアブル・タイプオメガがにやりという。
村の上空には無数のドローン達!ヴァリアブルはそれらの上空偵察により得たゴブリンの侵入経路・個体数などを確認しつつ――マイク越しに声を発する。
《対象個体3。一番部隊、準備、武器構え。会敵まであと3、2、1――》
別途飛ばすドローン伝いに届くヴァリアブルの伝令。それがカウントダウンをして。
《今っ!!》
「「「ぅ、おおおおお
!!」」」
「ぐぎっ!?ぐがっ―― 」
家の壁や物陰などに潜む村人が、合図に乗じ手に持った武器でゴブリン達を刺し穿つ!
こうしてドローンの通信機能をも使い、村人を手足代わりに、ヴァリアブルは村人達によるゴブリン迎撃のブレイン役として司令を出し各個撃破をしてく!
しかしゴブリンたちの数も多い。迫る敵影は8体、撃破に出た村人たちを後続が襲わんとする!
「ぐる、ぐぁぁ!!」
作りが荒いながら鋭く射られる矢!それが押し寄せ――!
《――通、フェル、前に!》
だがそれに動じるヴァリアブルではない!
「おう、任せとけヴァリア姉ちゃん!」
「おっと!誰にも手出しはさせないよ!」
号令に応じ村人の前に立ちはだかる二つの影、雷陣・通とフェル・ドラグニエル!
「チェリャァァァアッッッ!!」
通の"前羽の構え"!胸前に出した両掌、力は脱力した状態で――己の手の届く範囲に来た鏃を素早く打ち払う!
《――――!!》
一方のフェル、宣言をひとつ!余人に与り知らぬ言語のそれは竜の言葉での"防壁"!それに応じ彼女の籠手が盾を形成、飛来する矢を弾いた!
「ぎぃぎぎ……ぐる゛ぁぁ!!」
だが矢を退けられた程度で止まるゴブリンでもない。悍ましい叫びとともに剣を構え二人へと襲いかかる!
「――すぅ」
迫る敵影に動じる事なし。息吹の呼気、のち。
「――――セイリャぁぁッッッ!!」
前羽の構えはそのままに。こちらの頭をかち割る為振るわれる剣、それが制空圏に触れるや否や拳で武器の横っ面を痛打!
「ぎ゛っ!?」
瞬きの間すらなく、次の刹那には肘鉄砲がゴブリンの顔面にめり込む!
「ぐぎ、ぎぁぁ!」
しかしまだゴブリンはいる!残り7体のうち3体が少年へと押し寄せ――
「なんの、まだまだぁぁ!!」
「「「ぎぎぃ
!?」」」
疾風迅雷!肘鉄を打った状態から素早く摺足、左のゴブリンの腹に正拳突き、真ん中のゴブリンには顎に掌底、右のゴブリンの側頭部に蹴撃一閃!それぞれをノック・ダウン!"紫電の空手"――生体電流すら己がままにする通の空手、その速度はまさに雷の如し!
「ぐぎ!ごるるごぁ!!」
そうして通を組みしづらいと考えた残りのゴブリンはフェルへ殺到!
「なんのそれしき――!」
石斧を、鈍の剣を、棍棒を正面から盾で受ける!小鬼の4体程度何するものぞ、事もなしに持ち前の怪力で凌ぎきり、攻撃を受け止められて止まる敵に返し刀の一閃!ゴブリンたちを切り裂き――
「――この地で朽ちよ、ゴブリンども!!」
フェルの言葉とともに煌めく銀の槍!それが光を放ち銀龍と化し――!
《Grrrraaahhhhh――――!!》
「「「ぎ、ぎ゛ぃぃぃい
!?」」」
通が一撃を加えた小鬼ともども、銀の顎が敵を穿ち破る!
「――ふぅ、この場は良し。皆さん、怪我はありませんか!」
村人に確認を取るフェル。幸い村人たちに怪我はないようだ。
「っし、ここはこっちで――お、新手?」
ゴブリンたちの鳴き声が近づいてくるのが通の耳に届く。
「よーし、そんじゃあ俺あいつらおびき寄せてくる! やーいべろべろばー!!」
舌を出しお尻を叩きつつ敵を誘導せんとする通、それに釣られ怒声の唸りを上げるゴブリンたち。
「げ、元気だなぁ……何にしても、まだまだ平気そう、だね」
やや呆れ混じりにフェルが呟きつつも、戦線を確認する。村人たちも健全、士気も高い、連携も問題ない。
《ん、順調じゅんちょー!猟兵のサポートもあれば村人たちも怪我なく戦えるね!》
安全第一!目指せ怪我ゼロ!そんな掛け声を言いつつドローンからヴァリアブルが応じる。
「この調子でいこう!次の司令、お願いするね」
《ん、ラジャー!……っと、》
「……ん、どうかした?」
何やら不可思議な声を発する司令塔に、龍騎が疑問の声を口にするも。
《あーいや、さすが僕っていうか懸念が当たったっていうか?……ま、平気だね見る限り!次に行こう!》
「……?」
首を傾げつつもヴァリアブルに応じるフェル。
「……裏かかれるかなと思ってたけど、ビンゴかな?……おっと、見るのはやめとこう」
――なんだか撃たれかねない視線の鋭さだったし。
そう零すヴァリアブルが、戦域を事細かに見渡すドローンで何を見たのか。
それが分かるのは、しばし後だろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
蒼焔・赫煌
来たね、来たねっ!
入れ食いってヤツさ、ヤツだとも!
さぁ、可愛い正義の味方の参上さ!
よーいっ、どんっ!!
ゆーげき、てのをするよ!
車輪の炎で【存在感】をアピールしながら村中を高速移動!
ゴブリンを見つけたら炎のキックで【属性攻撃】!
ピンチになってる村人さんや猟兵を見つけたら割って入って【かばう】よ!
敵の攻撃は【野生の勘】で【見切り】ながら、靴で【武器受け】してから【カウンター】でドカンとキツーイのをお見舞いさ!
キミよりも可愛いボクの方がー! 速い!
何故って可愛いボクは正義の味方だからさ!
【アドリブ、他の方との絡みは歓迎】
トルメンタ・アンゲルス
さて。
俺としたことが出遅れるとは、実にスロウリィ。
ですが、クライマックスには間に合いましたかね?
さぁ、仕事を始めましょうか、相棒!
変身!
『MaximumEngine――Mode:Formula』
高所から状況を確認し、アクセルユニゾン始動。
攻撃力重視の装甲と変身合体し、行動開始!
あまり余波の出過ぎない、超音速ぐらいまで減速しつつ、物理法則を無視した軌道でダッシュ!
ありえない角度から飛び蹴りをねじ込み、蹴り穿つ!
こちらへの攻撃は第六感で見切り、残像を残して回避し、咄嗟の一撃でカウンターを叩き込みます!
しかし、数が多い。
OverClock始動!
時間を置き去りにする超加速で、多数の敵を纏めて蹴り穿つ!
●Nobody can chase us!
「いやぁ、俺とした事が遅れるとは」
参ったまいった、という風に頭をかきつつ呟く影が一人。
他の面々と一日ずれでやってきた猟兵、その一人だ。普段の自分からすればスロウリィだと言わざるを得ない、そう思いぼやく。
「まぁ、クライマックスには間に合ったし」
サングラスをかちゃりと掛け直しつつ、"彼女"はにやりと笑みを作る。
「さぁ、仕事を始めましょうか相棒ォ!」
――MaximumEngine――Mode:Formula!
電子音と同時に装着される蒼い装甲、変形した愛機。
高度演算デバイスから分析した情報を元に第一目標地点を設定。
友軍が会敵中――
「よォしあそこだァ!駆け抜けるぜ――――!!」
流星が一条、戦場へと駆ける。
●青い流星、二条
「ぐるる……ぐぎぃ!」
村内を武器を持ち徘徊するゴブリン!究子により分断された一派のうちひとつだ。
あたりに人影はいない。
――小癪な村人に謎の冒険者どもめ、どこに?
そんな憎々しさくら篭る目をぎょろつかれるゴブリン。
あんなに仲間を殺してくれたのだ、ただでは――
「来たねきたね、入れ食いってヤツさ、ヤツだとも!」
家の屋根の上、何者かの声!
「っ!? ぎg」
ヒュカッッ!!
ぐしゃり。ごとん。
声の方を向こうとした瞬間、ゴブリンの首が一つ千切れ飛ぶ。
「「……ぎぎぃ!?」」
「ははーっ残念っ!鬼さんこちらっ!」
声はいつの間にやら向こうとしてた方の反対側へ!いつの間に!?
あまりにも驚異的な速さに狼狽えるゴブリン、それが見た先にいたのは。
「さぁさぁとくとごらんあれっ!可愛い正義の味方の参上さ!」
燃え盛る車輪を付ける戦闘靴、そして――なにやら猫めいた装いと化したそのコスチューム!蒼焔・赫煌その人だ!
ぐるぐると空回りしつつ火を噴く車輪、"火足九道カシャ"と彼女が名するそれを装備する彼女は、
「さぁ行くよぉー!」
元気よく吶喊宣言。命を燃料にして吹き荒ぶバーニアが火を噴き、屋根を蹴る。
「よーいっ、どんっ!!」
――――ドッッ!!
爆発音すら伴いながら猛烈な勢いで、青髪の少女ヒーローは空を駆ける!
邪魔だとばかりに赫煌に向け投げつけられるゴブリンの盾、それを明後日の方向に蹴り飛ばし、迫る刃を靴の車輪で受けてみせ!
「そいりゃぁ!」
どぐしゃ!カウンターめいた猛烈なキック!サッカーボールのようにゴブリンの頭が体から離れて飛ぶ!
「ぎ!?ぐg」
「残念っ!正義の味方からは逃げられないっ!」
背を向けんとした別のゴブリンにも追撃とばかりの燃え盛る蹴り!めしゃりと首が180度回転!
「キミたちよりも僕の方がぁー!早いっ!」
何故かって?それは僕が可愛くて強い正義の味方だからさ!
皆目理解不能な、しかし一点の曇りもないその宣言がゴブリンたちに通じたのか、気圧されるようにじりりと退がる残りのゴブリン達。
怖気付くならそれはそれで構わない、だが逃げてはくれるな!
さぁ後は何体だ、1、2、3、4、5――そうカウントしていたところ!
――――シュパァァァアン!!!
「……へっ?」
空気を裂くような音!真一文字一線、並んでたゴブリンたちの首から下だけを残し頭が消し飛んでいる!
「――ん、咄嗟に脚が出ちまいましたが」
シュタッ。
降り立つ蒼いシルエット。機械鎧装めいたどこか特撮ヒーローめいたものすらも感じさせるクールなデザイン!
「余計なお世話でしたかね?」
やってきたのはトルメンタ・アンゲルス(流星ライダー・f02253)だ!
正しく流星の如きスピードで駆けつけたその速度そのままに、ゴブリンたちの頭を纏めて蹴り散らしてみせたのである。遅れて残ったゴブリンたちの体が、ぐしゃりと力を無くし地に伏せる。
「……」
「――にしても、予想より敵が多いみたいですね?」
「…………」
「まぁ何にしてもせっかく会ったんだ、協力して――あの、もしもし?」
フリーズしたようにこちらをじっと見る赫煌に訝しげに声をかけるトルメンタ。
「か」
「……か?」
「かっこいい!!!」
「……へ?」
思わず気の抜けた声を出すトルメンタを気にするでもなく、目をキラキラさせて近寄って、彼女の周囲を回りながらまじまじとその装甲を観察する赫煌。
「くぅーーーこういうヒーローもいいよねまさに正義の味方っ!」
「えっいやあの」
「それじゃあ僕と二人で競争だっ!」
「待って訳がわかりませんが!?」
「多くゴブリンを倒せた方が勝ちってことで!!」
「俺の話聞いてます
!?!?」
残念!!彼女は話を聞かないのだ!!!一章でもそんなだったからね!!!
「それじゃよーい……ドンっっ!!」
「あっちょっと!?」
似たような蒼い姿のヒーローに興奮したのか、より疾い速度で空を駆ける赫煌。
それを見やってしばらく。
「……仕方ないですねぇ!!」
競争、即ちレースだ。速さを競うものなれば。
突然降って湧いた勝負であれ、それに絶対の自負を持つ自分が負ける訳にもいかないのだ。
「どうせだ、数も多い、本気を出しましょうか!!」
《TurboBoost Over――Acceleration》
機械音声が流れる。トルメンタの体感時間時流が切り替わり、全てがスローモーションと化す。
「俺は何よりも速く――――」
――――――ギュオンッッッ!!!
「駆け抜ける!!」
超加速により村を駆ける青のシルエット二つ!
片方は炎の脚で、片方は音すら置いてく速度で。小鬼たちを蹴り穿ちながら、キルマークを稼いでいくのだった!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リュシカ・シュテーイン
大切な大切なお客様候補となる方がぁ、いらっしゃるのであればぁ、あなた方に好き勝手に荒らされるわけにはぁ、行きませんのでぇ
私からは恨みは特にありませんがぁ、商売上の敵としてぇ……しっかりと撃退させていただきましょうぅ
私はぁ、洗浄を見渡せる高台などからぁ、【スナイパー】【援護射撃】【視力】を用いましてぇ、皆さまを後方から援護させていただきますよぉ
使用するのはぁ、罠用と一緒に作成しておきましたぁ、衝撃感知で敵に触れると起動するぅ、爆破の法石をスリングでぇ、味方の攻撃の隙間からぁ。射出していきましょうぅ
……一匹倒せば小銭が積りぃ、小銭も積もれば金貨と変わるぅ
さぁさぁ稼ぎ時ですよぉ!
ヌル・リリファ
◆アドリブ、連呼歓迎です
全体がみおろせそうな場所にたって、【視力】で、みんながたたかってるところをみるよ。
それで、死角から攻撃しようとしているゴブリンとか、そのばにいるひとだけだと対処が大変そうな場所をみつけたら、UCのひかりの武器を【属性攻撃】で強化、その方向にとばしてフォローする。
とくに村人は、戦闘のプロではないしね。どうしてもそういうひとがでてくるっておもうから。
武器は余裕があったら相手のかずをへらすためにもつかうよ。
……もし、これでもひとでがたりなさそうなら、シールドをつかっておしこぃつつ、【一斉発射】とかで数をへらそうかな。
●光の雨と法石と
「わぁぁ……す、すごぉい勢いですねぇ」
ピシュンッ――!
何処と無くのんびりした口調で、嵐の如き二つの青、それに巻き込まれ死んでく敵を見つつ、リュシカ・シュテーインが呟く。
「そうだね、あれだけはやいと……」
ヒュバッ――!!
それに淡々と少女、ヌル・リリファも応じるのだった。
「わたしたちも、仕事がしやすいね」
「そ、そうですねぇ……」
二人がいるのは村の中心に座す石造りの教会、その最上部。
遊撃で飛び回る蒼い二人が消し飛ばす敵たち、その残党がいれば撃ち。
他にも困窮してそうな村人などがいれば援護射撃をここから撃つのが二人の役目だ。
《狙撃チーム、村西側距離180m!援護よろしく!》
「わたしがやる。リュシカさんは遊撃班の援護をおねがい」
「はぁい、おまかせあれぇ、ですよぉ」
静かな声でヌルが呟き、リュシカが応じた。
――キュィン。"天眼"にて目標補足。敵数12。照準を合わせ、サイキックエナジーを凝縮していく。ヌルの前に現れるのは光の剣、その刃。練り上げられ強化されたサイキックエナジーを以て、それら更に強化され。
「発射」
――ぎぃぃっ!?――
"死斬光雨"!光の刃の雨が、防衛戦に参加する村人へ押し寄せようとしたゴブリンたちのを穿ち貫く!
《ナイススナイプ!あと北側240mと南側75m・300mも頼む!東側はフェルと通を送る!》
「ん、わかった」
ドローン越し連携を取りつつ、指定された箇所に寸分の狂いもなく光の刃が飛ぶ。
「頼もしいですねぇ……わたしもぉ、仕事が捗りますぅ」
のんびりといいながら、リュシカが構えるのは大型のスリング。
正直に言えば特にゴブリンには恨みはないが、この地を彼奴等に荒らされればそれはひいては自分の客を失う結果にも繋がりうる。
「商売上の敵としてぇ、しっかり撃退させてもらいましょうぅ」
――ぐ、と張られるゴム。
――ヒュパッッ!!
引き絞られたそれは解放されると同時、勢いよく飛んでいく。
スリングにて投擲したのは小粒の石、されどそれには手製のルーンが刻まれている。
罠用の石と同時、大量に作っていたのは衝撃感知で起爆する爆破の法石!
――パァン!――
小指ほどの礫、それに当たったゴブリンの頭が弾け飛ぶ!
「まだまだぁ、もっと撃ちますよぉ」
――ヒュパッッ!
――ヒュパッッ!!
――ヒュパッッ!!!
一投ごと、ゴブリン達の胴が、頭が、体が消し飛んでいく。その狙撃は正確無比の一言に尽きる。彼女の持ち前の腕も勿論だが――
「小銭がひとぉつ、小銭がふたぁつ、小銭がみっつぅ……」
独自のカウント法で撃破数を数えてくリュシカ。
敵を倒せば小銭が積もり、小銭が積もれば金貨ともなる。
「ふふふぅ……さぁさぁ、稼ぎ時ですよぉ!」
「…………」
目がお金マークめいた感じになってたりなってなかったりするリュシカを見て。
「……おとなって、大変だね?」
そんな感想を誰へともなく、ヌルが小さく溢したりするのだった。閑話休題。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アポロダスト・ディラマティウス
ハッハー!襲う度胸はあっても襲われる度胸はないようデース!
弱い相手しかいないと油断しきってるその舐めた態度ごと叩きのめしてやりマース!!
イッツ・ショーターイム!!
【Wiz】
いくらバリケードがあるとはいえ大量のゴブリンが突っ込んできたら危ないデース!
なのでワタシはあえてバリケードの外で目立つことでゴブリンたちの数を分散させマース!!
「サテライト」からの光を浴びれば『大宇宙舞踊(アポロナイトフィーバー)』のスタートデース!!
ゴブリンが注目すればするほどワタシのダンスは激しくなりマース!!!
●
さて、村内の各所で戦闘が行われる中。
ある一角はかくも煌びやかなバトルが繰り広げられていた。
●🕺It's SHOW TIME!!💃
ピッカァァーーーー!!
目を眩まんばかりの眩い光!
時刻は朝、確かに朝焼けとて眩しいがそれをはるか凌駕する光量!
むしろ此処に太陽があるかの様な――
是!是である!此処に太陽はいるのだ!
「OHHHHHHH YEAHHHHHHH!!!」
「「「「ぎぃぃぃ
!?」」」」
喧しいまでのシャウトとゴブリン達の悲鳴!
おお――見よ!ゴブリン達がまとめてすっ飛ばされて宙を舞う!
「イェース!!体温まってきマーシタ!」
愛もかわらず胡散臭い日本語で溌剌というはOh my God!アポロダスト・ディラマティウスだ!ピカピカと光るスポットライトに照らされつつノリノリでダンスを披露する!
「Hooooooh!どーしマシタ!襲う度胸はあっても襲われる度胸はないデースか!」
自分を囲いながらも攻めあぐねるゴブリンを、反撃されて怯んでると断ずるアポロダスト。なおゴブリン達が怯んでるのはアポロダストの奇抜さに対してなのは言わぬが花だろう。だが何に怯もうが神には関係ないのだ!!
「そっちから来ないなら――C'mon MUSIC!!」
――――Revo-Luuuuuuuuuuuuuuu・TION
!!!!!!!
何処からともなく発されるノリノリなBGM!
更に光度を上げてく衛星スポットライト!
音楽に釣られアポロのダンスも激しさを増し――!
「Fever☆TIMEデーーーーース!!!」
「「「「「ぎ、ぎいいいぃぃぃぃ
!!?!」」」」」
振り回される手が、足が、時にその豊かなヒップやバスト、果ては収束されたスポットライトの光すら!嵐の如き暴乱となってゴブリン達を吹き飛ばす!!
"大宇宙舞踊"!!彼女の踊りが目立てば目立つほど彼女に力を与えてくれる!奇異の目であれなんであれアポロダストから目を離せなかった時点でゴブリンの負けは決まっていたのだ!
ずしゃっと吹き飛ばされた空の果てから落ちてくるゴブリンたち。それが全て地に刺さった後で――ビシッとポーズ!
「Oh YES!!!満客御礼デース!」
溌剌とした笑顔と言葉!戦の場にあって尚こうも力を漲らせるのは神たる所以か!
そして騒がしかったこの戦場に引き寄せられる様に、アポロダストの元に第二波が!
「オーゥ、次のお客サンデース!どんと来いデスネー!まだまだ引きつけマース!」
そう、こうして自分の元にゴブリンを惹きつけられれば、敵は分散される。敵が多いのは注目されればされる程力が漲る自分にとってもメリットになる。一石二鳥だ。
「――それじゃ、ラウンド2デース!」
指をパチン!始まるミュージック!困惑するゴブリンたち。哀れな次の観客を前に、女神のショータイムがまた始まる――!
大成功
🔵🔵🔵
虜・ジョンドゥ
子供達は大丈夫?怖がっていないかな
村を出て戦う前に『コミュ力』で会話して不安や恐怖を和らげたいよ
だいじょーぶ、この村はボク達が必ず救ってみせるよ
だから戦いが終われば
「ただいま」ってみんなを迎えてあげてね
…ボクも行ってくるよ
―さあ、バトルスタートだ!
危険な状況でも、道化たるもの笑顔は忘れずに!
おっとゴブリンくん、キミ達の遊び相手は僭越ながらボクが務めるよ
8bitサングラスから瞳を覗かせ、ウインクぱちり☆
リセットボタンで相手のUCを相殺!
直後、柵や穴などの障害物に身を隠し――『だまし討ち』でBalloon Blume!を投擲!
その血色の悪い緑の肌をメイクアップしたげるよ
アドリブ・連携歓迎!
ウェンディ・ロックビル
……うん。村人さんたちは、大丈夫そうだね、安心。
ゴブリンさんたちに、ちょっと申し訳ないような気持ちにもなるけど……でも、僕らは、君たちに殺されてあげるわけにはいかないから。
だから――覚悟してよね。
最速乱舞!村中を駆け巡りながら、踊るような足技で攻撃するよっ!
建物とか罠がいっぱいで、踊るようなスペースはないんじゃないかって?
見くびらないでほしいねっ。
壁も、柵も、天井だって――全部僕のステージだよっ!
立体的にジャンプしながら、空間すべてを使うように踊るよぉ。
なるべくなら――できる限り、目立つ場所で、派手にやろっか。昨日の続きじゃないけど、村人さんたちを勇気づけられるように、ね。
●GOOD COMMUNICATION
『――ねぇ、みんな大丈夫だよね?』
――うん、大丈夫
『――誰も怪我したりしないよね?』
――平気さ、ボクらが守るから
『――あなたも、怪我したらだめよ?』
―― ――――
『――どうしたの?』
――ううん、ちょっと驚いただけ
『――そう? あ、これ』
――なんだい、これ?
『――お薬、私が煎じて作ったの。――冒険者さん達が作ったのの方が、よく効くみたいだけど……お守り代わり』
―― ――――――
――ありがと
――大事に使うよ
――ボクも、いってくるね!
『――いってらっしゃい』
『――おかえりも、言わせてね』
――もちろんさ!
あるお守りを手にした、一人の少年が、戦いのステージへと向かう。
●
「村人さん達は、大丈夫そうだね」
ほっとしたように言うのはウェンディ・ロックビル。
彼女の言う通り、村人達は猟兵のサポートもあり善戦を続けている。
重大な怪我の報告も耳には届いてない、このままならば大丈夫だろう。
「さ、僕も負けてらんないねっ!」
――Ohhhhh yeeeeeeees!
壁を隔てたとなり、アフロ神の快活な声が聞こえる。昨日に引き続きその持ち前の武踊で大活躍をしてるらしい。
であれば、昨晩相棒を務めた僕とて負けられないとウェンディの闘争心が燃え上がる!
「君たちにはちょっと申し訳ないけど」
――それでも代わりに、殺されてあげるわけにはいかないのだから。
「覚悟してよね――僕のダンスはちょっとすごいよっ!」
「がる、ぐるるぐぁぎ!」
目の前にいるゴブリン、その十数匹!それに恐る事なくウェンディはとん、とんと軽やかにつま先を地面で叩き、靴のチェック。後、
「目を離しちゃ嫌だぜ――」
ぐ、と地を足で踏みしめ、
「なんてったって"三十六界最速"だからねっ!」
――――ぎゅん!!瞬く間も無く見えなくなる!
★別の戦域から臨時中継をお届けします★
「今なんか俺的に聞き捨てならない言葉が聞こえてきた気がするんですけど!?」
「あっ、そっちのゴブリンもーらいっ!(ずばしーーっ!)」
「「ぎーーーっ!?」」
「なぁっしまったぁ!?くっそぉスピードを上げますよォ相棒ォ!!(ギュイーン!!)」
「「「ぎぃぃぃーー
!?」」」
★中継終了★
●天上天下唯我独走
「――ぎぃっ!?」
弾むようにゴブリンが吹き飛ぶ!仲間がそれを成した輩に目を向けるも――
「ぐぎぃ!?」
もう遅い!!その次の間には別のゴブリンが!また別のゴブリンが、次々と跳ね飛ばされるように宙を舞う!ゴブリンたちを踏み台にし、ウェンディもあちこちを飛び回っては村を駆け回る!
ウェンディ・ロックビルはありふれた少女でありふれたキマイラだ。力は人並み、ハッキングスキルや魔法も使えない。一点を除き、普通の少女――そしてその一点が彼女の猟兵たる理由であり、常識外の存在たる所以!
「もー、ちゃんと見てくれないとダメだぜっ?」
"家の壁"に立ちつつ――正確には跳躍の勢いで壁に張り付くように足を付け、また勢いを蓄えている――ウェンディが言う。
そうして足に溜めた力を一気に解放するような、発条めいた跳躍!地を、家々の壁面を、或いは究子が出した防護壁すらも足場とし目にも留まらぬ速度で跳ねる!時として、それは武踊のように可憐に上下左右前後を隈なく跳ねては舞うのだ!
"スピード"!父親譲りの万象を置き去りにするかの如き圧倒的速度、ウェンディの誇る最強の武器!それを用いた最速乱舞は誰も止める事能わず!況やゴブリン如きには止められはしない!
「ぎぃぎぎ……ぐがぎごるる!!!」
「ぐがぎぃ!!!」
唸るゴブリンども!何匹かが武器を捨てて素早くウェンディのいる戦域を離脱する。
「ありゃ、何匹か逃げた?……ま、追うのはやめとこっか」
戦意を失って逃げたのなら少し可哀想だ。此処にいるものが彼女の親友である燃えるような髪の森番か、或いは黒豹の鎧を纏う機械兵だったら逃さなかったかもしれない。だが、彼女はゴブリンを殺める事にも幾許か心を痛める優しさを持つ。故に見逃した。代わりに、逃げぬものには容赦はしない。最速を謳う彼女のダンスは止めどなく、風のようにゴブリンたちの間を吹き抜け――
「ごるるがぁっ!!」
「がぁぅ!!!」
「……っ、にゃぬぅ!?」
突如の驚きの声!彼女が驚いたのはゴブリンたちが持ち出したもの――逃げたと思った数匹が持ち寄った、粗雑ながらも大きな"投げ網"!それが複数枚ウェンディの翔びゆく進路に向かって投げられる!
恐らくは家畜を丸ごと捕まえる為に作ったもの、それを持ってきたのだろう!
(うわぁやだなぁ……変に優しくするのは良くないね)
あの程度の投げ網、恐らく蹴り破ることは可能だが絡み付かないとも言い切れない。脚を取られると面倒だ。さてどうしよう、無理矢理にでも宙を蹴って躱すか。そう考える一拍後、
「あ、ウェンディちゃーん、そのままどーぞっ!」
掛かるのはどこか幼げながらも元気な一声!
「!? っ、わかった!」
声を信じ、ウェンディが網へとそのままの勢いで突っ込んでく!
「――それじゃ、そのアミアミは無かった事にっ♪」
にひりと笑みを浮かべ何時の間にかやって来たバーチャルピエロ――虜・ジョンドゥがウィンクを一つ、パチン!
角ばったサングラスの奥で"I"のカタチの瞳孔がシャッターを切る!
するとどうか!
「――!?ぎ、ぎぇっ――――ぎぃぃぃ
!?!?」
――AMAZING!手品か魔術めいて網が消失する!何も"なくなった"空間をウェンディのキックが飛び交い――
ズドン、ズガァァァン!!馴鹿豹の蹴り足を喰らい、また1匹ゴブリンが水平にと吹き飛びドットの防護壁にめり込む!
「「――ぎ、ぎぃ!?」」
あの女を捕らえる筈だった網はどこに!?煙のように消えてしまったそれを探すゴブリン達。
「おっとぉ、どーしたのかな顔色が悪いよっ☆」
困惑するゴブリンを尻目に、屈託ない笑顔と共に近寄るジョンドゥ。ぱちん!と指をスナップすれば、虚空から無数のボールめいたカラフルな球が現れ――
「そんな君達にお化粧をどーぞっ!」
ひゅんっ!パァン!
「ぎぎっ!?!」
顔に炸裂するのはペイント風船"Balloon Blume!"、それが破裂しゴブリンの顔を彩る!
「お、素敵なカラーになったね!それじゃあ他のみんなにもサービスだよっ☆」
みっつ、よっつ、いつつと現れる風船玉をジャグリングで手慣れた様に操りつつ、次々にゴブリンたちへ放っていく!
「「ぐぎぃぃいぃっ!?」」
ピンクにオレンジ、ライトイエロー!ビビッドな色でゴブリン達の顔がペイントされていく。一通り"お化粧"が終わり――
「あとはお任せ、お気に召すままっ♪」
くるり反転、道化らしく、おどけた振舞いで彼らを背にしてぺこりと一礼。それを受け――
「――そぉれっっ!!」
「「ぐぎぃーーーっ!?」」
――Fast Step-Fastest!!四方八方無尽蔵無軌道に飛び跳ね廻るダンスがゴブリン達を遥か彼方に蹴り飛ばす!
「ナイスストライクっ!良いキックだねウェンディちゃん!」
「どいたしましてーっ!……へへ、助けられちゃった」
すとんと着地しつつ御礼を述べるウェンディ。この辺りのゴブリンは掃討しおえたらしい。一度呼吸を整えるように息を吐くウェンディに、ジョンドゥが問う。
「なぁに、手助けできたなら何よりさっ。……ところでお一人?」
「え? うん、そだけど……」
「……そっかぁ」
にひ、と笑うジョンドゥ。
「ぴえろが 仲間になりたそうに そちらを見ている!」
「……なるほどね?」
ゲームめいた言い方だが、その意をウェンディは察した。
「仲間への報酬は何がいいかなっ?あんまりムズカシーのは無しだぜっ?」
くす、と笑うウェンディの一言。それにジョンドゥは、
「そーだねぇ――"村人の笑顔"で手を打とうじゃないかっ!」
そう、返して。
「――らっくしょーじゃん!」
溌剌と、ウェンディも答えるのだった。
「PT成立だっ!じゃ、早速報酬を勝ち取りに行こうか――」
「おっけー!先陣はばっちり任せてー!」
キマイラフューチャー出身、陽気で活発な明るい二人。
それが村人達の奮戦する方へと、助太刀しに向かっていく。
戦域を彩るペイントに戯けた振舞い、少女の空舞う舞踏も、確かにまた村人達を勇気付け鼓舞する事となるだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リンタロウ・ホネハミ
村一つにこんな大群がぞろぞろと
この村をしゃぶり尽くす勢いで蹂躙するつもりだったつーことっすか?
それなら残念、蹂躙されるのはテメェらの方っすよ
――無辜の民を傷つけるなど、断じて許さねぇ
コウモリの骨を食って【〇〇六番之卑怯者】を発動!
そしてそのままゴブリンの群れへと無造作に突っ込むっす!
360度敵だらけ、しかし敵の動きは全てが手に取るように分かるっす
なら、同士討ちを誘うのも難しいことじゃあないっすね?(戦闘知識・だまし討ち・敵を盾にする)
アクロバティックに立ち回り(ジャンプ・ダッシュ)
オレっちも積極的にゴブリン共を叩き斬るっす!
敵はわんさかいるんす、効率的に殲滅しましょうや!
アドリブ・絡み大歓迎
●
神といい、馴鹿豹と道化師のコンビといい、
その戦う様は華やいで煌びやかであった。
一方で、何処までも泥臭い戦いをする者もいた。
●Bones Circus
――ゴゴゴ。
あまり見慣れない、変わった形の壁――究子の操る電脳防護壁が形を変え、細目の剣士――リンタロウ・ホネハミの元へとゴブリンどもを運ぶ。
その数、なんと多い事か。十、二十――否、三十余り!
罠を乗り越え、猟兵たちが各個撃破して尚この数。異常とも言うべきゴブリン達の数だった。
「――村一つに、こんな大群がぞろぞろと」
対峙するリンタロウは、押し寄せる数そのものには何ら心揺るがす事なく。
ただ胸中で、彼らの目的を思う。
これだけの数、着実に村を陥落させるつもりだったのだろう。
骨までしゃぶり尽くすかの如く。――ならば、そうはいかない。
ここには猟兵達がいる故に。蹂躙されるのはこの村に非ず、侵略者たる小鬼どもの方だ、と。そう戦士の心が叫ぶ。
「――無辜の民を傷つけるなど、断じてゆるさねぇ」
三下めいた口調をひと時忘れ、"骨喰"の騎士が征く。
――そう、かれとて騎士の端くれ。
なれば、人を守る為戦うのが矜持でもある故に!その志を胸に、ゴブリンの群体へと突き進む!
「「「ぐるる……ぎぁがぁがが
!!」」」
敵を見据え武器を抜き、攻撃を仕掛けんとするゴブリンども!
対してリンタロウは小さな翼めいた骨、それをひと齧り!
「安っちぃ骨でよかったっすよ……とぉ!」
無謀にも覚える勢いで、リンタロウはそのまま群れの中へ飛び込む!
当然彼へと攻撃が殺到する!
――キィィィン。
「おう、そうそう、こっちっす」
二体のゴブリンがその間に入るリンタロウの体を、それぞれが持つ剣で刻もうとする!横薙ぎに振るわれる刃!人間を両断するのなど容易い、強力なそれは。
「「ぎっっ!?」」
互いの首を切断する一撃になるのみ。同士討ちだ!リンタロウは何処か?上だ!圧倒的跳躍を以って剣閃を回避!しかし宙に逃げたリンタロウを貫かんと粗末な刃が天を向き――、
――キィィィィィン!
「――あらよっとぉ!」
三回転半捻り!!空中で身を捻り、刃を紙一重で躱しつつ返し刀で骨剣での切り払い!うぎぃとゴブリンの怒る声、着地したリンタロウをまた刃が狙い――!
「残念、わかってるっす」
――キィィィィイイイイン!
左から突かれる槍を半歩引いて躱す。右奥にいるゴブリンの頭が貫かれる。
正面からの唐竹割りには目の前の槍の柄、それを引き寄せ槍を繰ったゴブリンを身代わりにする。思わぬ同士討ちに呆然とする唐竹割りしてきた小鬼は、頭を貫かれ死んだ小鬼のボロい剣で、股から上方向に裂いてやる。弓矢が飛んでくれば骨剣の腹で弾いて別のゴブリンの目を貫かせ。石斧の振り下ろしはその辺のゴブリンの脚を引っ掛け、その爪先を砕いてもらう。痛みで呻いて武器を手放したゴブリン、その槍で三匹纏めて頭を串刺しに。背後から切りつけんとしてきた奴は、
「――甘いっすよ!」
ずんばらり!振り向き様骨剣の袈裟斬りで斜めに両断。
「「「ぎぃぃぃ――
!?」」」
360度の包囲網すら突破する彼、食んだ骨より得し力は"〇〇六番之卑怯者"!蝙蝠の超音波での反響定位、それを以って正確に敵の攻撃を予測し回避する!そしてその攻撃軌道を予測のち、あえて自分をすら囮にして、敵の同士討ちを誘い、自滅させつつ己の剣でも敵を屠る!
時に敵を掻い潜り、時に地を這い、時に空をも飛び交う細目の男!まさに"曲芸(サーカス)"とも言える身のこなし!
己の身を危険に晒しつつ、しかし敵の力をも利用する事で速やかに、効率的に殲滅していく。決して万人にはできない、戦場に多く身を置いた歴戦の戦士だからこそできる戦法だ!
同士討ちや身体を盾にされ刻々とゴブリンの数は減り――
「ぎぃっ!?」
最後の一体は直接リンタロウが首を狩る!三十を超えるゴブリン、それの殲滅が終わる。肩に骨剣を乗せ、屍塗れの戦場をぐるり一望、次の敵陣を見据える。
「っし、まだまだ!敵はわんさかいるっすからね……!」
数多の小鬼を撹乱しつつ屠った疲れも見せず。骨の騎士は新たな敵の群れへと果敢に突き進んでいく――!
大成功
🔵🔵🔵
壇・骸
さすがに、そう簡単にはいかねえか。だが、数は減ったみたいだな?
それでも突っ込んでくるのは、勝算があるのか馬鹿なだけなのか
どちらでもいいか。どうせお前らは、ここで屍と化すのだから
どう戦うか。といっても、俺に出来る事などたかが知れている
故に、ああ、愚直に突っ込むとしようか
どうせ俺に連携など取れん。ならば、囮になった方がまだ味方に貢献できるというものだ
といっても、別にただ盾になってやるつもりも、ましてや死ぬつもりもない
傷ついた端から喰らい、亡くした端から得ていく
この特攻こそが俺の基本戦術だ。さあ、やるぜ「禍」。好きなだけ鬼の血を吸わせてやる
「骸」を相手に戦った事はないだろう?
●
一方、骨の騎士とは別――もう一人、泥臭い戦いをした男。
壇・骸の戦いはリンタロウ以上に泥塗れであった。
●亡骸は土に塗れ、されど
愚直に過ぎる猛進であった。
骸は連携が苦手だ。そんなに器用な生き物ではない。器用だったのなら、この様に生きも死にもしないどっちつかずになどならなかった。器用であれば或いは人として生き、或いはしっかりと己の命を終わらせ果てていただろう。だが、そうではない。そうではなかった。
その不器用さ故に誰とも組まず連まず、ただ単騎で。リンタロウと同じようにゴブリンの群れの中へと突っ込んでいく。
違いがあるとすれば、リンタロウのように同士討ちを狙ったものでも、回避をする気もなかったという点だろう。
「ぎぃい、ぐるうががぁ!!!」
1匹のゴブリンが剣を振り下ろす。
「――フンッッ」
めしゃり。
剛毅とも言うべき一撃。ましらの如き装いの籠手が、鈍の刃ごと敵の首を捥いで殺す。籠手が浴びた血に喜ぶように紅く煌めいた。
「ぐぎぃ!!」
「ぐるる、がぁぁ!!!」
なお迫り来るゴブリン。それを、貫手で胴を穿ち熊手で顔を引き剥がす。紙切れの様に小鬼の身体が千切れ飛んでいく。
が。
所詮は単騎、多勢に無勢。飛び交う剣閃、粗雑ながらも殺す為の武器、それが骸の身体を掠めじりじりと削っていく。
「ぐぎぃぃ!!」
「がるる!!」
――やがて。
「……っ、」
襤褸の剣が、骸の身体を貫く。腕を、脚を、脇腹を。
「ぐぎぃ、ぎひひぎぎ」
なんとも嫌らしい嗤いを小鬼が浮かべる。この忌々しいものどもを一人殺せた、溜飲が下がる、とばかり。
「…………」
貫かれ、異物感のある身体。気怠さめいたものに襲われそうになりつつ。
ず、ずず。
剣に刺さったままの腕を前に。肉が裂ける感覚がする。知ったことではない。
「……ぎ、ぎぃ? ぎッッ!!?」
幽鬼の如き有様の骸に、ゴブリンがなんだこいつはと言う目を向ける。隙だらけのそいつを、猿の手で以て素っ首を掴む。握りしめた。ぐしゃり。
「……ぐぎ、ぎぃ?!」
ぼとり、腐った果実のように仲間の首が落とされたのを見て、彼を貫いたゴブリンが慄き武器を離し退がる。獣の籠手がぎらり、獰猛に紅く輝いた。
「……美味いか、『禍』」
その呼びかけに応えるかの如く。「禍」、猿の籠手は朱々と燃えるように灯る。
命を吸い上げる禍々しき、呪われし籠手。それがぎしりと命を噛み締めるように軋む。
「……好きなだけ啜れ」
ずるり。刺さったままの剣を引き抜く。血が溢れ――否。
黒かった。どろり、泥の様に溢るるそれが骸の身体を覆う。
黒泥は骸をくまなく覆う。それは奇しくも、黒い鎧めいて。
「……」
――ブンッッ。
腕を振る。此方を刺し、後怯んでいた小鬼の数匹が肉屑になる。
血を浴びて「禍」がなお凶々しく輝く。血を啜りあげて、それを骸に生命力として与える。刺された傷が塞がってゆく。
「……肩慣らしは終いだ。お前ら……」
ず、と前に、黒泥の騎士は歩を進めた。
「……骸を前に戦った事は、ないだろう?」
亡骸の黒騎士が征く。
疵を負うごとに喰らい、亡くした端から得る。
敵の骸を重ねに重ね、血に汚れ、己の躯をも敵の刃と土と血とに汚しながら、屍の山を築く。
その、生ある者の戦い方とは言い難き、亡者の如き戦姿であれど。
その戦いが、誰かの。誰かが生きる為のものだったなら。
――亡骸の騎士は土に塗れ。
されどその志は、ひとつの気高さを持っていただろう。
大成功
🔵🔵🔵
寧宮・澪
おー……いっぱい、来ましたねー……。
速やかに、彼岸に、お帰りください、なー……。
再び、活躍してもらいましょー……【Call:ElectroLegion】、で、レギオンをいっぱい呼びましてー……。
村人さん達の護衛と、建物の【拠点防御】をー……。
あんまり、村壊されても大変、ですし、ねー……。
一発殴られ、消えても……いっぱいいますよー……。
自分に向かってきたゴブリンは、飛んで上から、眠りを誘う夜糖蜜で、【毒使い】、【催眠術】、【範囲攻撃】ー……。
謳って魔術を使って、風を少し起こして……眠りに、誘いましょー……すやすや、お休みなさい、なー……。骸の海へ、送りますので……。
アドリブ、連携、歓迎ー……。
雨宮・いつき
ついにやってきましたね…
上手く罠は機能しているようですが敵もさる者、数に物を言わせて強引に突破してきているようです
…ならばこちらも数で対抗といきます
喚び出すのは管狐
こちらの策が筒抜けにならぬよう、戦の喧騒に消されぬよう、
天狐の横笛の音を以って管狐達に指示を出します
敵の多くが白兵戦を得手としているなら、距離を取って相手をさせます
罠へ誘い込み、追い込み、地の利を生かして
複数の小隊に分けた管狐達で敵を囲み、狐火で炙り、生み出した隙を突いて小刀で仕留める
その繰り返しです
苦し紛れに僕へ向けて得物を投げてくるやもしれませんが
手が塞がっていても霊力は繰れます
起爆符を飛ばし、爆風で撃ち落とし迎撃としましょう
●
風に乗って、何処からか。
無謀で、己を顧みず、不器用で――それでも。
誰かの為に戦うものの調べが、流れてきた様な。
●甘き唄声と宵蜜と
「……気のせい、ですかねー……」
眠たげなぼやきを寧宮・澪の唇が唱える。
歌唱術師ゆえの耳の聡さか、はたまた別の理由か、それともただの気のせいか。
ともあれ。今すべきはそれを気にかける事ではない。故に意識を敵へと割く。
「……がんばれー……れぎおーん……」
――がしょんがしょんがしょん!
――ぎぃぃぃ!!ぐる……ぐぎぃ!!
昨日に引き続き、直接的な会敵・戦闘という力仕事は琥珀金のレギオン達に担ってもらっている。200近い数の小型機械、それを駆使して拠点の防衛を半分ほどに。
――村攻めというのをしっかり考えていたのか。いくつか、ただの"簡素な武器"ならぬものを連中は持ち出していた。それのうち一つはウェンディに使われんとしていた投げ網出会ったり、また――
「ぎっ、ぎぎ!!」
しゅぴんっっ!
敵が今しがた放った様な、"火矢"であったりする。木造の家も多いこの村、もし備えなくば効果は覿面だったろう。幸い、マリスの案により屋根には泥が塗られ防火対策もしてる上――
――がしょん、ばきん!
「ぎぃ、ぎぎぎぃ
……!!」
いくつかのレギオン達が家々の屋根やその周囲に配置され、防衛に当たっている。
時折矢などが当たり、或いは攻撃され壊れて消滅するもレギオンも数が多い。澪も消える毎に適宜補充をしてるので、尽きることはまずないだろう。
なんにせよ、地団駄を踏む様にして悔しがるゴブリンたち。
――がしょんがしょんがしょん!
「「「ぐるる!?……ぎぃい
!!」」」
それにわらわらと群がり押し寄せるレギオン達の一個団体。
20近くいるゴブリンの塊に対し、その倍の数で壁の如く押し寄せて行く。
反撃をしいくつかのレギオン達を破壊しつつも、じりじりと追い詰められるゴブリン達。そこへ、
「……偉いですよー……」
琥珀機械達に労いの言葉をかける、その主人。
拠点代わりにした屋根の上から、誘導されたゴブリンたちに。
「……まだ朝ですけど、おやすみの、時間ですよー……」
とろり。
霞色の小瓶から、指を伝い流るゝしずく。
蜜は夜色、鳥たちの祈りも混ぜて、きらりきらり。
朝日に散る宵の残滓は、空に融け――
「――La―― ―― ――――♪」
透き通る、高らかで微かな音。
それに共鳴するかのよう、風が微かにそよぎ。
甘やかな香りを小鬼たちに贈る。
「ぎ、ぎぐ……ぐぃ…………z」
澪の唄が呼び寄せた風に乗り、そよそよと運ばれた眠りを誘う魔法薬。
それを吸い、ゴブリンたちが夢の世界にうつろに飛び立ち。
「……あとは、まかせましょー……」
ころり、可憐な声で澪がそう締めくくる。
●笛の音色
ぴくり。優しい、甘い歌声を狐耳が聞き届ける。
昨日の宵に共に音を紡いだその人の歌だ。
「罠、かかってくれたみたいですね」
雨宮・いつきは音の聞こえた方に耳を揺らしつつ、口元に銀色の横笛を構えた。
――――♪
高き笛の音が朝日の中を飛び、司令を出す。
――さぁ、出ませい、出ませい!
《――こゃん!》
音に反応し、紅蓮の残光がちらりちらりと尾を引きながら、甘やかな歌のする方へと駆け抜けていく。
●深き眠りへ
とろり、体が融かされたかのようだった。
微睡みはあまりにも深く、体が重い。
地面に膝をつけ、こくりこくりと項垂れ夢現にし――
そうして、己たちへと駆けくる獣達の姿が半分閉じた眼に映る。
《こゃん!こゃー!》
――細い狐達、その群れ。
"御狐戦隊(フォックス・ミニオンズ)"、咥えた小刀と狐火とで、いつきの配下として飛び交い敵を打つ管狐である。
数多のそれら、尾を引く狐火は橙の火矢が此方に飛び来るようで。
それすら微睡みの中の小鬼達は、綺麗だとぼんやり夢見心地に見るばかり。
――小刀がその喉を裂き、斃れた小鬼達を狐の焔が荼毘に伏す。
確かな手応え。笛を一度放し、いつきが息を吐く。
「……よし、あちらはケリがつきましたね。……次と行きましょう」
再度流れる笛の調べが、管狐達を導き小鬼達の蔓延る地へ、焔の群れが流れていく。
笛の音、蜜の如き歌声。それらが小鬼達の断末魔をも呑み込み、戦場へと静かに響くのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
石上・麻琴
■心情
さてさて、他の方達が仕掛けた罠もいい感じに機能してて善きかな善きかな。
しかし、まだまだゴブリンは居るようで……面倒ですね、えぇ。
■戦闘
技能【破魔】をあわせ、朱雀招来式・紅蓮天翔の炎で遠距離からゴブリン達を攻撃します。
相手がそれでも突撃してくるようでしたら、技能【なぎ払い】、【属性攻撃】もあわせ、薙刀と刀でお相手しましょう。
不意打ちを食らうのだけは避けるようにしたいものですね。
相模・恭弥
う、うわぁぁあ、たすけてくれぇ!だれかー!
ひ、ヒィっ、や、やめ……___
【挨拶】
__なーんでこう、下手に知能ある奴って怖じ気惑う奴見ると甚振ろうとするのかねぇ。
ま、お陰で大根役者の三文芝居で釣れるわ釣れるわ。
全く、油断大敵って言葉を知らねぇのかね。
(妖刀を死体にぶっ刺して血を与える)
さぁて、結構殺った気がする、罠も中々に良さげな効果あったみたいだしぃ?
ちょーっとぐれー趣味に走っても怒られんだろ。
【影の追跡者の召喚】(逃げ出す敗残兵を追跡)
おいおいおい、今更逃げるとかツレない事せずによぉ、俺の刀の餌になってくれや。
ついでにその汚え悲鳴と醜い絶望で俺の心を満たせてくれよ、なぁ?【妖剣解放】
●
誘導の手練手管は数多であった。
例えばそれは村の入り口に布陣し猟兵各々へと敵を割り振り続ける究子であったり、いやが応にも目がつく派手さで惹きつけるアポロダストであったり、物量で敵を追い詰め屠る澪といつきであったり、そのやり方は多岐に渡る。
――そして、誘導の手練手管は何も魅了や物量押しだけではないのだ。
●紅蓮の鳥、悪鬼魍魎を灼く
「ひぃ、いやだぁあ!」
みっともない迄に、がむしゃらに。足をもつらせながらも逃げるひとりの男。
なんと情けないザマか。
あまりの哀れさにゴブリン達もわざと歩みを緩めつつ、敵を追う様にする。嗜虐心に満ち溢れた笑みをどれもが浮かべていた。或いはそれはここまでさんざ罠なりに嵌められた鬱憤もあっての事だったろう。
「うわぁぁあ!!助けてくれぇ、誰かぁぁ!!」
その声色のなんと必死な事だろう。
そろそろその恐怖から解放してやる時だ。見ろ、とうとう転んだぞ。
「ぐぃぃ、ぎぃぃ」
「ぁ、ああ、やめ、――やめ、」
嫌らしい笑みを浮かべたまま、緑の小兵が一歩、また一歩と近づき――
「――――やーめたぁ、飽きちまった。んじゃああばよ」
――前二朱雀火神家在午主口舌懸官凶将!
「「「ぎ?ぎg……ぎぃぃぁ
!!?」」」
目の前の男が転んだ手前、ゴブリン達の立つところ。その左右にも通路があり、そこから二羽の焔鳥が小鬼を挟む様に飛来し、焼き"祓う"。追い詰めていたのは自分達でなく、この人間だったと知る事もなく。赤い鳥の炎に呑まれ、ぶすりと焼け焦げその命を終えた。
●それは日常の何気ないやりとりの様に
「……全く、呆れた手練手管ですね?」
火の鳥が飛来した通り、その片側からやってくる石神・麻琴が、この場で生き残ったもう一人へと声を掛ける。
「は、なぁんでこういう連中は腰抜け見ると甚振ろうとすんのかね?」
応じるのは当然相模・恭弥、昨日最も悪辣なる罠を敷いた張本人だ。
吐く嘘と騙りは日常の"挨拶"をする様と何一つ変わらずに、呼吸をするように自然に。そうしてゴブリン達を騙してみせた。
「侵略者の性分なのでは?……まぁ、何にしても助かりました」
麻琴の"朱雀招来式・紅蓮天翔"。朱雀めいた形の炎、それをより効率よく敵に当てるが為、恭弥は囮役を担ってたのだ。
「ん、ぁー別にぃ?気にしなさんな、こっちも楽させてもらったし」
――性分には合う戦い方だし。 とは、麻琴には言わないが。取り敢えず焼け残りの遺骸にぶすり、恭弥は剣を突き刺す。
「――? 何を?」
「いやぁあれよ、言ったじゃん飽きたって」
眉をひそめる麻琴にはおざなりに応じ、へら、と笑いつつ。
ついでとばかり影から"追跡者"を出す。
「……あ、そっちはいらねぇか。ちっ」
詰まらんとばかりに舌打ちをし、刀を骸から引き抜く。殺された怨嗟と血をも吸い、それは禍々しく煌めく。
「……よくわかりませんが、剣を抜くということは前線に?」
「そーそー、ちょいとくらいふつーに斬り結んどいたほうがいいっしょ?」
ぶわっっ。怨嗟めいた負のオーラ、それを帯び。恭弥が不吉な旋風を纏う。
「前線、出ようかなぁってさ」
「……そうですか、それではご一緒しましょう」
ん?と麻琴の言葉に首を傾げる恭弥。
「別に一人でもいいんだけど、俺?」
「とは言え僕が助けなければ危なかった場面、結構ありませんでした?」
…………。
恭弥、沈黙。煽るのが生き甲斐な彼、何度か逆にとちり足元を掬われそうになった事も今日の連携の上であった。恭弥当人はそれすら楽しんでいるが――
「いやぁ、うへへ」
誤魔化し笑い。助けられたのは事実だ、ぐうの音も出ない。
「はぁ、……では、御準備はよろしいですか?」
「おー、ばっちこいよ。そんじゃあ行くかぁ!」
「ええ、では――いざっ!」
方や妖刀の怨嗟、それを纏い疾風の様に駆け。
方や八卦紋刻まれし薙刀、そして隕鉄の剣を佩いて、紅蓮の鳥を傍らに呼びつつ。新たなる敵を屠らんと戦場を走り出す。
(――それにしても)
追跡者にてあるもの――逃げていく幾匹かのゴブリン残敗兵を見た恭弥は、内心で憐れむ。
(可哀想に――あれは俺よりえぐいぜ)
――――憐れみとは裏腹、ゴブリンたちの末路を知った男は、なんとも愉しげな笑みをその顔に滲ませていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ロク・ザイオン
※ヴィクティム(f01172)と
……ヴィクティム。
こどもみたいだな。
(増え過ぎた獣か。
病であるなら尚の事。
全て、焼き潰す)
(【忍び足】でヴィクティムを追う群れを後ろから【追跡】
袋小路の退路を断つよう立ち塞がって)
――ああァアアア!!!
(「惨喝」で号令に応えよう。
【恐怖を与え】動きを狂わせ
【地形利用、ダッシュ、ジャンプ】で狩り場を馳せ回り
鋭さを増した山刀で【先制攻撃、薙ぎ払い】
逃げ惑うならば。竦むならば、格好の餌だ)
……うたうなら。
うたうほど。
病(おまえ)たちの、絶望が。わかる。
(聞こえてしまうものを拒んでも、仕方無い)
(ああ。「心のままに」狩るのは。
こんなにも、心地がいい)
ヴィクティム・ウィンターミュート
【ロク(f01377)と】
よし、今回はお前が主役だ
チャンスは作るぜ
まずは【変装】で無力なジューヴを装う
涙声で演技、「速く"戻らなきゃ"」なんて言ったりして…『非戦闘員がいる場所があり、追えば強襲できる』と誤認させる
子兎が巣穴に戻るのを追っていくなんざ、よくある手法だろ?
あとは簡単だ
【ダッシュ】と【フェイント】と【地形の利用】で逃げながら敵の集団を釣り、『展開しづらく、退路が後ろのみ』な場所へ【おびき寄せ】
そこから一気に反転、【騙し討ち】
ロクと火力を叩きこんで殲滅
ここまでが俺のUCさ
「父さん!母さん!怖いよ!助けてー!」
「このままじゃ!このままじゃ!」
「──コイツらが死んじまう」
「やれ、ロク!」
●
"欺き"もまた一つ、誘導の手練手管だ。まさに恭弥がやって見せたように。
そして持ち得る全てを駆使し、罠を敷くという点において。
"彼"もまた一級の腕前を持っていた。
●
小鬼どもが走る。
追い掛けるのは、一人の小さな背丈の"子供"。
"戻らなきゃ"、とでも言ってたろうか。辛うじてこの緑の小鬼どもは人畜生の言葉を介する。あの言葉はやつらが巣穴に戻る時に吐く言葉だ。
その先にはきっとやつらの巣。残らず攫ってしまおう、雄は肉だ、女は孕み袋だ。
下卑た笑いを浮かべつつ、緑の矮躯が追い縋る。
"子供"は時々悲鳴らしいものを漏らして、それでも必死に逃げる。
――が、何処までもは逃げられない。後の無い袋小路に追い詰められて、壁を背にしわなわなと震えている。
「と、父さん!母さん……怖いよ!助けて……」
じりじりと躙り寄る小鬼ども。
「このままじゃ……このままじゃ」
助けを呼ぶか?くるものか。下卑た笑みを浮かべ、それはじりじりと。愉快そうに――
「――――こいつらが死んじまう!出番だロク!」
「「「――ぎぃ?」」」
何かがおかしい、小首を捻るゴブリン。
それを意に介さず涙声をあげていた筈の"子供"――変装したヴィクティム・ウィンターミュートが愉快そうに告げる。
そう、この陽動は全てがヴィクティムの奸計!一計を用い敵を陥れる為の老獪な端役の罠だ!そして袋小路への追い詰め、ここまでの誘導――それは今日この場にいる"主役"の為にこそ!
――ざっ。
足音一つ。
緑の悪鬼どもが振り返る。
朝焼けの中だった。燃える様に立ち昇る陽を背にして。
赫々とした髪を持つ青目が、静かに立つ。
その手には、"病"を斬り払い、剪定する刃。
「「「――ぎぃぃ
!?」」」
「やっちまえ、ロク。――今回はお前が主役だ」
悪鬼どもの前に立つ、森番――ロク・ザイオンの足がじり、と地を摺る。
主役と呼ぶ彼の声が、合図となったのか。
「 ――ぁ」
獣が
口を開ける。
「――ぁあァア゛ア゛ァァ゛ア゛ア゛ァア゛ア゛ァア――ッ
!!!!!!!!」
狂声。
警告音。
金裂く咆哮。サイレンめいたそれが否が応もなく、ゴブリンどもの耳を右から左へと駆ける。
身を竦ませ耳を塞ぎ、武器を取り落す小鬼ら。
それを見るが否や、森番は地を蹴り跳ぶように駆けた。
哀れな1匹目の喉笛を裂いた。
2匹目、唐竹を破るように天から地へ山刀が閃く。真二つに開く緑鬼の身体。
3匹目、地を這うように伏せた反動、そこから跳ぶようにして逆袈裟に胴を斬り、壁を蹴り、飛び――
4匹目をすれ違い様、焼き鏝を押し当て焚き灰と為し、悲鳴を上げつつ逃げようとした5匹目。後ろから首に真一文字。
ごとり、頭が落ち、"病"は須く灼かれ、斬り伏せられた。
「――Chill. 流石だなロク」
労いの言葉を、ヴィクティムがほ変装プログラムにより纏ってたホログラムを解除しつつ言う。それにロクもこくりと頷きつつ、じぃとヴィクティムを見る。
「――ん、どうかしたか?疲れたか?」
首を横にふり、ざらり。
「……子供のようだ、ヴィクティム」
「ん……おう、なかなかなモンだろう?カウボーイにかかりゃこんなもんよ」
へへ、と不敵に笑うヴィクティムにロクが続けて問う。
「……匂いは」
「あん??」
「匂いも、子供になるのか」
「………………。いやすまん、流石に匂いは」
「……そうか」
どこかしゅんと残念そうなロク。
「ぁー、あーともかく!次だチューマ!主役の活躍をジューヴ達も待ってんぞ!」
そんな森番に気を取り直せとばかり、端役は言って。
「……わかった」
子供、と言われロクも気を取り直し、袋小路を後にせんとして――一度だけ後ろを見る。
横たわる、裂かれ斬られた亡骸。首のない胴。――上げられた"悲鳴"。
「どうしたロク、行くぜ?」
「……今、行く」
ざり。ざり。言葉は少なく、そうして返して。
――"うたう"ならうたうほど、"病"達の絶望が判る。昔は知らなんだ、その意味を。その甘やかな讃美歌の如き音の意味を、森番は知る。己の耳の"悪さ"も。
聞こうるものを避けるは易くなし。拒んでも、仕方のないならば――
――最近、友が度々口にする言葉を思い出す。
"心のままに"。
心のままに刀を振るい、狩るのは。心地が良くて。
――その気持ちを抱くのが、良いことなのか、否なのか。まだ正解は、森番には判らない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エスチーカ・アムグラド
レイラお姉さん(f00284)と!
準備はしーっかりとしましたし、ここからが本番ですね!
えへへ、ご心配なくっ!
最前線で戦うのが剣士のお仕事ですからっ!
チーカはゴブリンの群れの中を飛び回って注意を引いて、レイラお姉さんの準備が終るまで注意を引きつけますよ!【空中戦】
ふふふー、チーカには道が沢山ですけれど傍に仲間がいるゴブリンたちは動き辛いでしょうっ?
武器を振るってきたって、その動きで出来る風に乗ってひらり!すぱっ!っと剣で攻撃していきます!
レイラお姉さんが邪魔されないように、あとあと、ゴブリンたちを身を隠せるようなものの無いところに留められるようにも心がけます!【おびき寄せ】
アドリブ大歓迎ですっ!
レイラ・エインズワース
チーカサンと(f00890)
サァ、反撃開始ダヨ
平和な村の暮らし、壊させるわけにはいかないカラ
一緒に守り切ろうネ
私の魔法は少し時間がかかるケド、時間はチーカサンが稼いでくれる
頼りにしてるヨ
でも、無理はしないでネ
エヘヘ、ありがとう!
【全力魔法】の威力を籠めたエインズワースの魔法
そのママ撃ってもいいんだケド、【高速詠唱】を重ねて、多重に詠唱するヨ
敵の数が多いナラ、こっちもいっぱい出さなきゃネ
詠唱が終わったらチーカサンに退避の連絡を
おびき寄せてくれてありがト!
そんなに固まっちゃって、動いて避けられるのカナ
逃がすつもりは、ないけどネ!
【呪詛】たっぷりの槍の雨ダヨ
じっくり味わってネ
アドリブ歓迎ダヨ
●
さて、老獪なる2名のブレインらは虚言とその計策とで小鬼らを騙して見せた。
が、何も囮は奸計を持つ者のみの特権ではなく。
その点二人は実に真っ当な誘導と敵の殲滅をしたと言えよう。
●妖精の導きと
ひらひらと、小さき桃色の影が舞う。
「「ぐぎぃぃ……!がるぐぁ!!」」
それに向け、振るわれる棍棒と剣!
「当たりませんっ!」
空中を泳ぐように、その小さな桃色――エスチーカ・アムグラドがするりと武器を避ける!風の中を舞うように飛ぶフェアリーたれば、振り抜かれる武器、それの風圧を感じ取り。それに逆らわず、寧ろ流れに乗るようにして交わすのもいとも容易い。
更に彼女は一回の魔法騎士、風の精霊の加護すら持つ。いくら業を煮やしたようにゴブリン達が剣を振れども、捕らえることは敵わない。
「えいっ!」
「「ぎぎっ
……!」」
むしろその風にすら乗って、エスチーカは素早く剣を振り抜く!
すぱり!フェアリーサイズに見合う剣なれど、彼女の家に伝わる宝刀"グラディオラ"はその刀身を伸ばしたようにゴブリン達を裂く!
「「「ぎぃぃ
!!!」」」
「あやや、怒らせちゃいましたっ!?」
鋭き風のような剣閃もそこそこ、ぴゅーんと文字通り素早く飛んでゴブリン達を掻い潜る。村のあっちを飛んではゴブリンを斬り、こっちを飛んではゴブリンを斬り――どうにも斬るのが浅いからか、一向にゴブリンは倒せず数は増えるばかり。ただ、それすらも難なく舞うように躱してみせて、やがてエスチーカはある方向へ。
「こっち、こっちですよー!」
「「「「ぐぎぃぃごるるぎ
!!」」」」
逃さぬとばかり追い縋るゴブリン!
――果たして妖精を追った先、そこにあったのは拓けた広場で――
「――サア、反撃開始ダヨ」
紫髪の少女が、そこで待ち構えていた。
●
――なんだあの女は。
――どうでもいい。村人と一緒に捕らえて、いや面倒だ、殺してくれる。
さんざ小さき妖精に弄ばれて怒り心頭の鬼どもは冷静な判断などできはしなかった。
おびき寄せられたのが、自分達の墓場となる場所とも知らず。
「チーカサン、ありがト。後は大丈夫ダヨ」
「了解ですっ!やっちゃってくださいレイラお姉さんっ!」
すれ違い様、エスチーカと紫髪の少女、レイラ・エインズワースがコンタクトを交わす。90度直角に曲がり上空へ退避するエスチーカ、その後を追うゴブリンども!
「「「「ぐるぎぎぎぃぎが――――
!!」」」」
「ふふ、お任せあレ。全力のエインズワースの魔法――」
――ご賞味アレ。
からん。ランタンが揺れ、灯が怪しく揺らぎ。
ゴブリン達の足元、地面がぞわと波打った。
次の瞬間。
――ずざぁぁぁぁぁああああ
!!!!!!!
――ぶしゅぅぅ!!
「ぎぃっ!?」
「ぐぎぃぃ!?」
「げ、がふっ!!?」
――林の様に乱生し、人の身の丈のおよそ二倍は有ろうかと言う高さまで伸び、地面から生える杭――否、槍!!
冥き炎をも湛えるそれが、ゴブリン達を槍襖にし串刺してその身を持ち上げる!
「ぎ、ぎぃ……っ ぎ ……」
ある者は貫かれ、またある者は槍の呪詛に侵され死を迎え、最後には轟々と燃える冥府の焔に焼き尽くされ塵も残す事なし。全てを火に呑んだ後、槍も消える。
「ふ、ふわぁぁ……」
「……んふフ、びっくりしたカナ?」
槍も敵の骸すらも跡形もなくなくなった広場にて、感嘆の息らしいものを吐くエスチーカに宛てて、レイラが言う。
「ちょ、ちょっとだけ……!凄いですねレイラお姉さんっ!あれだけいた敵をバッサリっ!」
「エヘヘ、ありがト。チーカサンが沢山敵を連れてきてくれたお陰ダネ」
そう、ああも山の様な小鬼達を一掃できたのは、エスチーカの巧みな誘導あってこそとも言える。誘導役を担うが故にゴブリン達を浅く傷つけては誘導、レイラの前へ。そうして時間を掛け入念に魔力を込めて放ったのが、あの林の如き槍の磔刑場だ。
「……さ、次の敵だネ。敵も結構減ってきたみたいだシ……」
遠からず、この戦いにも区切りが着くはずだ。そんな予感をレイラは抱く。
「もうチョットだけ、手伝ってもらえるカナ、チーカサン?」
「はいっ!喜んでですよ、陽動はチーカにお任せあれですっ!」
ふんすっ!そんな様子でフェアリーが飛んでくのを見送り。
レイラもまた、次の槍の用意をし始めるのだった。
――いよいよ大詰めも近い。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●
――"王"は怒っていた。
どれほど待てど配下達は獲物を連れてもどらない。
どれだて手をこまねいているのか。
良い。なれば我が手を下すまで。
重い腰を上げる、ゴブリン達の"王"。
ーー"王"は波濤の如き、矮小ながらも今まで以上のゴブリン雑兵どもを戦地へと寄越す。その数、ひと塊りが百を優に超え、それがいくつも。
数えるのも愚かしき冒涜的な量が、村へと駆ける。
正しくそれは、緑の波で――
●EMERGENCE
《――究子!聞こえるかー!敵の大群が――ああ、君には見えてるな!》
「あ、ああ」
入り口を変わらず防衛する究子に、ヴァリアブルのドローンより連絡が入る。確かにわらわらとやってくる緑の塊が彼方に見え、それはじりじりこちらに近づいてくる。今まででも多かったが、あれはそれに更に輪を掛けて多い。絶望的にも思える圧倒的数の暴力。
しかし、それで二人が慌てることもない。
「ぎ、ぎひ、これぞクソゲー……じ、準備は?」
《配置オーケー。カタラによるエンチャントも完了済みだ!手筈通り誘導してくれー!》
「ら、らじゃー。ま、任せろ」
ヴァリアブルからの要請に応じつつ、迫るそれをにたりと笑いながら究子は見据える。――なかなかの大仕事になりそうだ。だがそれがいい、やり甲斐というものも感じられるかのようだ!
「は、派手にやってくれよ、へへ」
――ぎぃぃぃぃぐるるるるぎがぁぁ!!!!――
村の入り口に殺到するゴブリンの津波。それを究子の、分厚く創った防護壁が軋みながらも呑みきり。三股に分けて、敵を分断、誘導する。
――――程なくして、村の中から。
凍てる音と、水の湧く音と、光が降り注ぐ音が聞こえた。
浅葱・シアラ
小さな悪意は群れとなって……やがて大きな怨嗟を巻き起こす……!
それがあなた達ゴブリンの正体だ……!
だから、シアたちは負けない、退かない!
だって……世界を守る猟兵だから!
使用するユーベルコードは「エレメンタル・ファンタジア」
見せてあげる……小さな妖精は、自然の奇跡を、暴力を知ってるってことを!
『氷属性』と『雨』を合成して『氷の暴雨』としてゴブリンたちに降らせてあげる!
【属性攻撃】と【全力魔法】で強化された魔法を【範囲攻撃】で広範囲に、【高速詠唱】で速く、何度でも!
氷の雨はあなた達に降り注ぐ
雨なんて怖くないってきっと思うでしょう
でもその雨が氷の刃になるだけで怖いんだ、よーく思い知って!
●浅葱の蝶と氷の雨
"王"の勅令であった。
速やかに村を潰し、獲物を捕らえ持ち運ぶ、それを望まれておられる。
勅令とあれば隷下たる物に従う他の選択肢はない。
それに従い、数多の――三つに別れて尚、今までの猟兵達が一度に対峙した数、それを優に上回る配下達が殺到した、その先――辿り着いたのは広い、広い空間だった。優に100メートル四方はあろうか。
村が有するスペースの一部、何もない空き地、人もいない場所そこに誘導されたゴブリン達。
ここはどこだ?そう訝しむ。どうにも行き止まりらしい、引き返し村人を探さねば。
踵を返そうとし――
「小さな悪意は群れとなって……やがて大きな怨嗟を巻き起こす」
小さな囁きめいた声が聞こえる。小鬼達が目を凝らす。
誰だ? 何やらよく見れば小粒めいたものが空に。
「それが!あなた達ゴブリンの正体だ……!」
啖呵を切るのは浅葱・シアラ!
普段の気弱さはどこへやら、堂々と並みいる悪鬼魍魎たちに宣言を下す。
「ぎぃぃ?ぐるる――!」
なんだお前は?羽虫の如き小さきものめ、目障りだ!そう言わんばかりに1匹のゴブリンが武器をとる!
それに乗じ他のものらも!
一対――嗚呼、数えるのも馬鹿馬鹿しい、だが百メートル四方はあろうこの広場を埋め尽くさんばかりであるのは確かだ!しかもフェアリーとゴブリン、その体躯の差!あまりにも多勢に無勢!
だが、だが。それが諦める理由になるか!屈する理由になるのか!
「シアたちは負けない、退かない!だって……世界を守る猟兵だから!」
断じて否!この世を、他の世界をその手で守る者たれば――!
故に妖精は手を宙へ!
「見せてあげるっ!小さな妖精は、自然の奇跡を、暴力を知ってるってこと!!」
――かしゃり。
「「「……ぎ?」」」
――あるゴブリンの足元、何かが割れるような音。
透明な破片が割れ、染み込むように地面に溶けていく。
かしゃり。また別の場所で。かしゃり、かしゃ、かしゃん、
――かしゃ、かしゃ、かしゃしゃしゃしゃしゃしゃ――――
――しゃザァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ――――!!!!
「「「「ぎ、ぎぃぃいいいいイイ゛
!?」」」」
氷の雨。シアラが呼び寄せし凍てついた雨礫たち!
氷柱より遥かに細い、針めいた薄さと細さ。それが天上より矢の如く降り注ぐ!すぽりとこの空間を覆い尽くし降る氷雨は、やや出力が過剰にも思えるかもしれない。
その凍針雨の一本一本は、恐らく大したことはないだろう。しかしこの数、幾万と降り注ぐその量と猛威はどうか!最早雨は暴雨と化し、それは余す所なくこの場にいるゴブリンたちの身体を突き刺し苛む!
「――雨なんて怖くないって、きっと思うでしょう?」
だが、それがこうして自然の奇跡の力を借りて、凍てるだけでなんと恐ろしいものになる事だろうか!
「――自然の怖さ、よーく思い知って!」
ゴブリンたちを前に、蝶の騎士はそう宣う。
――魔法の雨が降り止むまでには、3分とかからなかった。
余す所なく氷の針雨に刺し貫かれ、氷像めいて息絶えたゴブリンたちが犇く戦域。雨が止んだ後も暫く地が霜つき、温度はその空間だけ零下にすら達したほどだったと言う。
大成功
🔵🔵🔵
夷洞・みさき
君達がこの世界の生き物なら、それは現世の業なのだろうけども。
オブリビオンである以上、僕達は見逃すわけにはいかないんだよね。
あぁ、ハーフがいたら悩みどころだけど…目の前で咎を重ねるのは見逃せないね。
村の人達も頑張っているし、運の悪い人なんて出てほしくないから、
僕も前に出よう。
殲滅を行いつつも村の方へ向かうゴブリンを優先して攻撃。
【WIZ】
【低い位置】から来るのなら、その【低い位置】そのものを僕の領域にしてしまおう。
そんなに屈むと溺れてしまうよ。
【呪詛】を撒き【恐怖を与え】相手の行動を制限しつつ、車輪で【踏みつけ】【傷をえぐる】
さぁ、ここに怖いモノがあるよ。
アドリブ絡み歓迎
●綿津見のおわす水底
氷の雨、それに雑兵ゴブリン達が呑まれたほぼ同時刻。
三股に別れた雑兵ども、そのひとつがまたその墓場へと辿り着く。
広さとしてはシアラがいた箇所と同じ程度だろうか。違いといえば、そこは村の低地であった。水が溜まりやすい故か、ぬかるんだ泥が小鬼らの脚を搦めとるようにする。
攫うべき獲物はここにはいない。何処に行けば良い?苛立たしげに当たりを見渡すゴブリンらに、
「――オブリビオンなら」
磯臭い匂いが届く。山地に住まう彼らには嗅ぎ慣れない生臭さ、怪訝そうに眉を顰める化生どもの耳に届く冷やかな声。――夷洞・みさきが、姿を現す。その傍には巨大な車輪。
「僕達は、見逃すわけにはいかないのだよね」
仮に彼奴等がこの世界に住まう、ただの生き物だったならば、それはこの世の業である。少なくともみさきの基準においては咎を禊ぐべきものではない。が、過去の化身としてのものならば、それは濯ぐべき罪過の化身だ。
「ぎぃぃ――!」
五体のゴブリンが剣を握り、みさきへと迫る!
「――おっと、人の話は最後まで聞いた方がいいよ?」
「ぎぇっ!?」「ぎっ!?」
真っ先に来た二体の頭が車輪に吹き飛ばされる。
その次の二体、遠心力を加えた車輪で胴を薙いで千切り飛ばし。
「ぎ、ぎい、ぐるぎっ!?」
残った一体、至って冷静に車輪で剣をいなし、そのまま頭頂部に轍を落とす!
「ぎ、ぎ……がぎぇぁぁ!?」
一撃では殺さぬ。ぐりり。その背に車輪を転がし、二度、三度と。
丹念に跡を付けるように、或いは地面と車輪とで磨り潰す様に。
「ぎっ 」
ぱきぽき。ぶちゅっ。
汚い音を立て、肋骨を平たく潰し口から臓を出し、苦悶の表情で息絶える小鬼。
凄絶な死に様を見せつける様にして、みさきは
「――ふふ」
小さく、嗤った。
――――――さあ。ここに怖いものがいるよ?
ぞわり。
身構え、怖け身を引く鬼めら。
ついぞ感じたことのない、背骨に直接氷柱を差し込まれる様な冷たさに襲われる。
思わず並みいる小鬼の群れども、それが皆一堂にじりじりと後退し、高地にいるみさきから遠ざからんとして――
「ああ」
そんな折、そうだ、とみさきが口を開く。
「気をつけ給え、そんなに低いところにいると――」
――――ごぽっ。
「「「「!?」」」」
固まるようにみさきから身を遠ざけ低地へと移動してしまったゴブリンたち。
その足元から、湧き上がるように濁った水が!
――――"浸食領海・潮騒は鳴り響く"。
呪怨の水がぬたりと脚を絡めつつ、その底へと引きずりこまんとしていく。
「「「「ぎ、ぎぇ
……!!」」」」
ごぽり、こぽり。
脚を浸し、腰まで浸かり、首から上へ。じりじりと、やがては"海"そのものが意思を持つ蟒蛇のように。獲物らをまると、濁った水の中に飲み込んで――
「「「「………………」」」」
「溺れてしまうよ……なんて。言うのが遅かったかな?」
とぷん、こぽり。
泡だけがぽつり浮かんだその水の下、数多いた小鬼どもの屍を腹の中に収めた海。そしてそれに浸されたこの一帯――
後で村人が見に来た時には、ゴブリンの遺体どころか、水の一滴も残ってはいないのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ミーユイ・ロッソカステル
あぁ、なんて野蛮で下等な生き物たち――と切って捨てるのは簡単だけれど。
おまえたちにも暮らしがあり、生きていくために狩りをする――要は、それだけのことなのでしょう。
否定はしないわ。人間だって、生きるために他の生き物を殺し、食して命を繋ぐのだから。
単なる生存競争――けれど。
私が人である以上……見過ごす訳にはいかないの。
人の営みの輪を土足で踏み荒らそうとしたことを、後悔なさい。
選んだ楽曲(ユーベルコード)は「夜との闘い 第3番」
大量のゴブリンと混戦になる戦場に最適な、敵意を炙り出し、焼き尽くすほろびのうた。
ひとびとの守護者となると、改めて心に誓ったからには。
そんな想いと共に、高らかに歌いましょう。
●朝焼けと、夜と星と
三股のうちの最後の一つ、それに辿り着いたゴブリンたちは何度もにたついた、下賎な笑みを浮かべていた。何故か?
対峙したのが飛び切り美しく、若い女であったからに他ならない。
背から照らされるような赤く眩い朝日をしっかり日傘で遮りつつ、それでも欠伸を噛み殺しながら――桃色の髪の見目麗しいダンピール、ミーユイ・ロッソカステル(眠れる紅月の死徒・f00401)は眠たげに言う。
「野蛮で下等ね……」
おまけに品もこれひとつとてありはしない。全く、時間帯と言い内容と言い面倒な仕事を任された、そう思う。三つに分断された小鬼の波、その三つめ。それとてこの凡そ百メートル四方、区切られた檻のごとき空間に溢れんばかりに多い。
――ともあれ。じりじりと、こちらに武器を持ちつつ近寄らんとしているゴブリンたちに何もしない訳にはいかない。
「――お前たちにも暮らしがあり、生きていく為に狩りをする、要はそれだけなのでしょう」
否定はすまい。人の営みとてそうだ。生きる為に他の物を、生き物を殺す。それを食し生を繋ぐ。大きなくくりで言えば、人の営みもこの緑の怪物たちの営みも大差はない。単なる生存競争。
「――だけど」
桃色の歌姫が、言葉を続ける。
「私が人である以上、見過ごすわけにはいかないの」
――自分の身に刻まれた、祝福を。愛の形を、知った故に。人々の守護者たらんと、改めて心に誓った故に。私はこの地に住まう人をも、守る者たらん。
そしてなればこそ、私はお前たちの敵である。お前たちは私の敵である。
「――人の営みの輪を土足で踏み荒らそうとしたこと、後悔なさい」
"敵対者"へ向け、鋭い言葉を放つ。それが戦いの火蓋を切る!
「「「ぐがぎぃぃっ
!!」」」
その言葉を聞いて弾かれたかのように、ゴブリンたちはミーユイへと突き進まんとする!
対するミーユイは慌てる事なく、目を瞑り。
甘くもある、されど強かさすらある、響き渡る声で"歌い出す"!
《――聴け この叫びを――!》
高らかな、闘士の口遊む勇唄の如き序章!それを耳にしたゴブリンたちは、ミーユイ を獲物としてではなく"敵"と認める!この歌には何かある、そう思わざるを得ない力強さ!
――そしてそれこそが、この歌の真価、その引鉄となる!
《――見よ この光を――!》
空が曇る――否、曇天に非ず!天座に映るは"宵の闇と星光"!今の刻は朝、しかし空は夜を映し出す――!上空を見た小鬼めらはなおも敵意を刺激され、警戒心を強め――
《――星々の輝きは――》
その感情に、引き寄せられる様に。この戦域を覆う"夜"が煌めく!
《――全て あなたの敵である――!》
――ドォォォぉぉぉおおお!!!
「「「ぐぎ!?ぎ―――っ 」」」
"夜との闘い 第3番"!敵意に感応し、それを持つ者を星光にて灼き払う戦歌。
光の奔流、降り注ぐその様は空から落ちる星々のように。
"夜"から白煌の御柱が天誅の如く墜ち、歌姫の敵対者を須らく焼き尽くす。
それに呑まれたゴブリンたちは、声をまともに上げる間もなく。
熱光の彼方、影すら遺さず消え果てた。
「……眩し。」
"助力"があったからといって、やり過ぎたかしら?
――ぱちくりと、己の技のせいで僅かに眩む目を瞬かせ、そんなことを思いながらミーユイは他の戦域を見る。
――ほぼ時を同じくして、氷の雨、そして潮の満ちる音と香り。
緊急的に3名に申しつけられた、"広域殲滅によるゴブリン掃討"はどうやら成功したと見える。
「――親玉が出てくるのも、そう遠くなさそうね?……ふわぁ」
日傘でしっかりと日は避けつつも、隣の戦域から伝わるひやりとした空気にぷるり、身を僅かに震わせながら。欠伸を噛み殺して、夜の歌姫がその場を後にする。
大成功
🔵🔵🔵
鳴宮・匡
◆アドリブ歓迎
防衛設備が粗方築かれるのを村の外から眺める
知った顔もちらほら見えたし、うまくやってるだろ
人手の薄い一方面を、他のやつらに先んじて受け持つよ
誰も寄り付かない方が都合がいいんだ
――さて
あいつの頼んだ仕事だ、ケチをつけるわけにはいかないんでね
全部殺していいんだろ、なら、遠慮はなしだ
「視える」――知覚機能の全てを用いて
感知できる範囲内の敵を粗方射程内に納め
UC【涯の腥嵐】を起動
40m弱は銃の射程としちゃ短いくらいだが
チンタラ走ってくるのより銃弾の届く方がよほど早い
もし銃弾の雨を抜けてきたやつがいればナイフで応戦
一匹たりと漏らさないよう、全てここで始末する
――俺の眼を掻い潜れると思うなよ
●村の真後側にて
山肌を登って、それらはやってきていた。
あの村は三方を山に囲まれている。
十中八九、ゴブリンは正面からやって来る。
、、、、
十中八九、だ。
、、、
つまり、十に一は。
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
山を越え、やって来るゴブリンとていておかしくないのだ。
土壇場で、その可能性を考慮した猟兵は、二人。
一人は幅広い監視網を持つヴァリアブル。
――そして、もう一人は。
●"凪の海"
――山の頂に近き所であった。
開けた岩肌の上。下には辛うじて村が見える。そこへ降り注いだ光と氷の雨、満ちゆく魔潮も見えた。
そこにいるのは、数十匹――村の背後から不意を突くために選ばれた、選りすぐりの精鋭たる小鬼の軍隊。どうやら普通なら登るなど考えられない、断崖絶壁をも這い上がるようにしてやってきたらしい。いざ村に来られたら厄介――どころか、とてつもない苦戦を強いられていたかもしれない。
――そして、もう一方。その不意打ちを予期し此処にいる人。それは優男とも言うべき、この場に似つかわしくないかもしれない見た目の男だった。名を鳴宮・匡(凪の海・f01612)と言う。ともすれば油断を誘うかのような、強さとは縁のなさそうな顔立ちだがその実は歴戦の傭兵にして兵士だ。その兵士としての経験則、そして長年戦場に在り生き抜いてきたが故の勘がこの不意打ちを見破った。
「――ん、向こうは平気だな」
ともあれそんな匡は自前の発達した知覚機能、そのうちでも特に鋭い"視覚"をもって眼下に広がる村を見遣る。見る限り、どこも大きな問題はない。手助けは今はいるまい、故にこっちに集中していいだろう。――そう言えば何度かこっちをドローンが見てたが、自分を一度認識してからは見には来ない。よくわからないが偵察者はそれなりに優秀で勘もいいのかもしれない。なんにしても助かった。見られるのは苦手だ。
「「ぐる――!!」」
警戒するように唸るゴブリンの方を一度向く。ゴブリンからすれば目標は匡の背後、村へと続く道だ。邪魔な優男は速やかに殺し村へと降りて行きたい。
だが目の前の男、その顔は、いたって普段通り。圧倒的に数で勝る此方を見ても揺らぎがない。ともすれば、どこかの出店でパンを買い食いせんとする時のような、日常めいた朗らかさで――一点の恐怖も、高揚すらも何もないのが、ゴブリン達にとっても不気味だった。
「――さて」
表情は、あいもかわらず変わらない。風一つ吹かない海の水面のように、この戦場においてその心揺らぐことなし。"凪の海"と字される理由の一つだ。
「あいつの頼んだ仕事だ、ケチつけるわけには行かないんでね」
誰に向けるでもない、独白めいた呟き。確認事項のように諳んじる。――頼んだ相手が、"友達"ならば。――前の仕事仲間なら、こんな事を考える自分を知れば怪訝な顔をするだろう。
いや、そんな事を考えるのも「らしくない」か、なんて思って。
「ま、とにかく」
後は、全部。戦う上で余計なものは、"水面の下に沈める"。
そうして、持っていたアサルトライフル"Resonance"を構え直し、更に予備弾薬を五本握った。
「ぐる――っ!!」
応じるように一匹のゴブリンの唸り声!それが合図となり一斉に武器を構え出す。統率の取れた動き、匡にはわかるべくもないかもしれないが、村にいたゴブリンよりは遥かに強い!それが敵意を剥き出して、今にも攻めようと身構えて。
それでも。
凪の海は揺らがない。
「――全部殺していいんだろ?なら遠慮はなしだ」
仕事とあらば、全力を挙げて目標を殲滅する、ただそれのみ。
片手に持ってた予備弾薬を宙空に放る。
――圧倒的集中。
――五感が研ぎ澄まされ、時間の流れさえ遅く感じる。無重力間を漂ってるようにも思える、放った弾薬を一度目で追い、その後直ぐに敵対者を見る。
総数58。
位置関係把握完了、相対距離約38.2m。
照準を、絞る。絞る。絞る、絞る、絞る――――
弾薬を離し空いた手で、"異邦人"を取り出す。
「g」
敵が口を開くのがみえる。"どうでもいい"。
アサルトライフルのトリガを引いた。
マズルフラッシュ。
並ぶようにいた58匹、その左端から正確無比に頭部と胸部、情け容赦なく急所を撃ち抜いていく。
自動発射されてく弾丸一つ一つ、それが吸い込まれる様に眉間と左胸へと向かってくのが"見える"。
対する右側、"異邦人"のトリガを引いていく。引鉄を引く音はほぼ連なって聴こえる。1発の銃声めいて聴こえる発砲音、その実6発を撃ち尽くし。
マガジンを排出。無重力めいてふわり浮かぶように見える予備弾薬、それにマガジンを銃の方から叩き込み無理矢理片手で再装填、また6発の銃声を連ならせる。それをあと四回繰り返す。
――"共振"にて80発、"異邦人"にて36発。その数だけの弾丸が射出された。時間にしてみれば。それは、たった1秒、あるかないか程度の時間で。
――BBBBBBLLLLLLLAAAAAAMMMMMM
!!!!!
音にしてみれば、たったそれだけの、連なり重なった発砲音。
「――uる、る……?」
そして瞬きの間よりも早い弾丸の嵐に。胸と頭とを抉られた小鬼どもは、武器を振りかざす事すらできず。どさりと連鎖する様に、地に伏せた。
――銃声の後は、耳が痛いほどの静けさ。"Calm Carnage"、即ち"凪の殺戮"。彼の通り過ぎた後、其処に残るのは、静寂のみ。
「――ふぅ」
――"凪の海"と呼ばれる所以、そのもう一つたる、圧倒的制圧殺戮だ。
「……ナイフは使うまでもなかったな?」
まるで食材を買いすぎた、その程度の気安さで。
ぽつりと言葉を零す男が、村の防衛を終える。
大成功
🔵🔵🔵
マリス・アップルズ
即効性は無いけど
敵の生き残りを防ぐのにもう一つ仕掛けるわ
仲間の撃ち漏らしたゴブリンや直接村を襲おうとする敵に。
忍び足、暗殺で近づき。
傷口を抉る、鎧無視攻撃、医術で無力化した後
医術と毒使いでウイルスの形(タイプ)を識別したネメシスを
注射器に装填して注射。感染させます。
よく聞いてねゴブリンさん。
他の世界でウイルスと呼ばれるこの毒は
感染から発症までおよそ1日。
高熱や頭痛、筋肉痛から、やがて粘膜や汗腺から出血が始まり。
全身の臓器を冒し破壊し尽くして殺すの。
ウイルスは形ごとに感染可能な宿主が決まるけど、これはゴブリン専用よ。
貴方を中心に見えない感染が広がっているの。
この戦いに関わった仲間はみんな死ぬわ。
カタラ・プレケス
アドリブ連携歓迎
とりあえず、正面からくる敵は他の人に任せて
後ろの方を逃がさないようにしようか~
UC発動
流石に巻き込むわけにはいけないからいつもより機械的にやろうか~
『感染開始 黒風に呪詛混合 対象限定名称:ゴブリン
病状:倦怠感・神経麻痺・高熱及び、
呪詛より敵味方誤認・精神及び肉体的重圧・狂乱を付与
感染率致死性進行速度を最上に
更に生命の樹より参照
基礎・栄光・勝利からなる星幽的三角形を影鼠により仮想形成
この戦場において魔術的効果を上昇開始』
(範囲攻撃・呪詛・祈り・催眠術)
とりあえずこんなところかな~
さあ、殲滅開始だよ~
●
やってきたゴブリンは大方倒し尽くした。
黒幕の送り賜うた大軍も退けた。
隠し球とも言えたろう、背後からの急襲とて破った。
凡そゴブリンは撃退する事が叶った。
これで安心――――
と、言えるだろうか?
それを懐疑的に思うものが2名。
故に彼と彼女は、この27人のうち誰より入念に、小鬼どもを殺し尽くす為の策を用意した。
●明日の日が沈む頃には
――そのゴブリンは敗走していた。
恥も外聞もない、ただ生き延びんと村を背にし駆けていた。
知らなかった。人間があんなに恐ろしいものだとは。
逃げてしまおう。あんなところで死にたくはない。
武器も何もかもを放り出し身軽になり、そうして一目散に駆けて――
「あら、逃げるの?駄目よ」
「ぎ!?ぎぃぃ!?」
露出度の高いゴシックドレスを纏う少女――マリス・アップルズが脚を払って、逃げようとしたゴブリンを止める。そのまま馬乗りになり、関節を抑えつけ動きを抑する。医に、ひいては生きるものの肉体に詳しい所以の無駄のない封殺だった。
「ぎ、ぎぃぃ、ぎぃ
!!?!」
憐れなまでにじたばたともがくも、逃げる事は叶わない。
「――生きたいの?」
足掻くそれに、マリスがぽとり、言葉を含ませる様に零して。――その手には、注射器。
「ぎっ!?ぎ――」
ぷすりと、それを首筋に刺し。
「いい? よく聞いてねゴブリンさん。 ――――」
マリスが言った言葉をしっかり耳に入れる前。そのゴブリンは、早くも意識を手放した。
●病は吹き渡る
「おぉ~、派手だねぇ……」
感心した様な声で、カタラ・プレケスが声を上げる。
声を発した彼が見るのは、村の方、そして光と氷の雨。恐らくは淀んだ海も同時に敵を呑んだのだろう。
「協力した甲斐があるなぁ~」
のんびりとした声の中に、どこか楽しげな、興奮した様な声を滲ませる。何せここから見えたあれら、広域殲滅の魔法たちは自分も出力向上に協力している。
基礎・栄光・勝利からなる星幽的三角形を仮想形成。それを三人がいるところそれぞれに設置し、魔術の出力向上を果たしたのだ。
ともあれそれはあくまでサポート、カタラ自身のメインワークは今いるここ――村から離れた侵入経路、その中間地点だ。何やら大仰な津波めいた大軍、それが出た後は暫く敵がやってくる様子もない。おそらく、配下のゴブリンどもはもう来ないのだろう、そう思う。少なくとも暫くは来るまい。となれば。
「――よぉし、そろそろ出番だねぇ」
それまで隠れていた茂みの中から身を出す。
村の方に体を向け、呪言を紡ぐ。
「――西方の風邪、八千滅す黒き死、蛇に喰われし疱瘡神――太陽隠し世界を蔽え」
ごぽり、泡めいた黒い水めいたものが湧き、カタラを包む。
「――我が身に宿り、災禍為せ」
――どろり、淀んだ黒い粘液めいた何か、それは外套の様にカタラをすぽりとつつむ。"病神流布・大鼠"。悪神としての姿に変じ、万の病を振りまくものとして道の真ん中に立つ。その姿は死神めいても見え――実際、ゴブリン達の死神だっただろう。
「感染開始――黒風に呪詛混合。対象をゴブリンに限定」
宣言と同時、黒い風がカタラの周囲を吹き渡る。
「症状を倦怠感・神経麻痺・高熱に指定――呪詛により敵味方誤認・狂乱を付与」
空気が更に淀む。死の気配を孕む、淀んだものが満ちていく。
「――更に、感染率致死性進行速度を最上に。……こんなもんかなぁ~?……お、丁度だぁ」
機械的に紡いでた詠唱が一度終われば、また普段通りののびやかな口調に戻る。それが見た目とあまりにちぐはぐで、故に恐ろしくもある。ともあれ丁度と言う通り、カタラにとっての獲物がやってきた。
即ち、"ゴブリンの残党"らだ。よろよろと蹌踉めきながら、それらは元来た道を戻ってくる。命からがら逃げ出したのだろう、負傷してるものも多い、格好の餌食だ。昏い風が吹き、ゴブリンがそれを浴びた。
「ぎ、ぐぎぃ、ぎ……!」
よたよたと歩いていた小鬼がぱたりと倒れ、ある者は喉を掻き毟り苦しみ、ある者は泡を口から吐き倒れ、やがて生き絶える。
残党を残せば禍根となる。それがカタラと――もう一人の意見。だからこそ、そうして生き残りを刈る為の一手をこうして村から離れてまで敷いたのだ。
そして。
「ん~、本命がもうそろそろ来ると思うんだけど……おっ、アレかな~?」
"本命"とカタラが呼ぶそれには、首に針で刺した様な跡がある。それを目敏く見とめ、他と同じ様に呪の風を送ってやる。
「ぎ……ぐぎ、ぎぃ!?ぎ、ぎぁ……?」
ぎゅるん、眼を回しふらりと倒れるそのゴブリン。まだ息はある、その様にした。それに歩み寄り、囁きかける。
「や、君ぃ。お使いお願いしたいんだけどぉ」
気安いお願い一つ。最早狂乱の呪にも掛かり敵味方など区別の付かぬ哀れな小鬼が、それを断る筈もなかった。
●??処ウ?離no骸?殲??
――"お使い"だった。
何やら手に持ったこれを、我らが"王"に渡せばいいのだそうだ。
はて、これは何だったろう――そうか、確か村をまるごと手中に手に入れた故の戦果だ、その筈だ。王も喜ぶだろう。
さあ道を開けてくれ、英雄が戻った!この宝を王に――何をする?その槍を何故おれにむけるのだ、何故――ぐぇ゛っっ――――……
●"王政"の終わり
痴れ者であった。何やら"小刀"を持った残敗兵が、我の元へと来た。
当然側近が槍で左右から貫いて殺した。
魔法か何か知らぬが、こんな錯乱した雑兵を刺客として送るなど笑止千万。
それにしても小賢しい。まだあの村を落とせぬとは。だが、まだ我の出る幕では――
――?
おい、どうした側近?なぜ血を吐いて倒れる。
――何故、死んでおる?
――何故
――何故、我の身体に斯様な"病紋"が――――
!?!!!
●"箒星の塵"
「や、お疲れ様ぁ~、マリスさん。お仕事おわったよぉ」
「――あら、そっちもお疲れ様。面倒なこと押し付けてごめんなさいね。首尾はどうかしら?」
元の姿に戻り、村の方へと戻ってきたカタラにマリスが声をかけ、カタラもそれに朗らかに応じる。
「ばっちりだよ~。今頃巣穴についた頃だろうし……」
恐らく死んだろう。狂乱をいい事にナイフを握らせたのだ。"黒幕"とやら、もしくはその側近が殺してる筈だ。
――そして、それでいい。
「"ネメシス"も拡散したんじゃないかなぁ~。効きも良くなってると思うよぉ」
「――えぇ、だといいわ」
●――回想――
『いい?よく聞いてねゴブリンさん』
『他の世界でウイルスと呼ばれるこの毒は、感染から発症までおよそ1日』
『高熱や頭痛、筋肉痛から、やがて粘膜や汗腺から出血が始まり』
『全身の臓器を冒し破壊し尽くして殺すの』
『ウイルスは形ごとに感染可能な宿主が決まるけど、これはゴブリン専用よ』
『貴方を中心に見えない感染が広がっているの』
『この戦いに関わった、貴方の仲間は――』
『――――みんな死ぬわ』
こんな呟きを、すぐ意識を手放したあのゴブリンは覚えてなどいなかったが。
ともあれ、あれはある意味でこの戦における、一番の功労者だったと言えるかもしれない。
●DEAD END
――ゴブリンにのみ効くよう調整されたウイルス兵器。
1日で諸々の症状を引き起こし、宿主を殺し、感染もする病毒。
それが、カタラの悪疫の相乗効果もあり、更に効力を増し感染していく。
引き返してきた残敗兵にも掛かったろう。
巣穴に戻ったあの憐れなゴブリン、それが死んだ時撒いた血を媒介に、巣穴にとて広がったろう。
少なくとも、ゴブリンの命は、明日まで。
どうあがいても未来が潰えたのは、村人たちでなく、ゴブリンらとなった。
なんとも皮肉で
因果応報で。
そうして、ゴブリンの命運はここに尽きたのだ。
●
故にこそ、"王"は怒り狂った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『ゴブリンキング』
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POW : ゴブリン親衛隊の召喚
戦闘用の、自身と同じ強さの【杖を持ち、炎の魔法を放つ、ゴブリンメイジ】と【剣、盾、鎧で武装した、ゴブリンナイト】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
SPD : 王の激励
【王による、配下を鼓舞する言葉】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
WIZ : ゴブリン戦奴の召喚
レベル×5体の、小型の戦闘用【奴隷ゴブリン】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
イラスト:イガラ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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【業務連絡】
三章受付は5/23木曜8:30予定です。なおそれまでのプレイング投稿についても受理はできませんがリプレイ作成の際の参考になるので大いに歓迎します。
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――――――――
●進軍
一日と経たず死ぬだろう。悍ましき病の気配がある。
他の者どもも一匹と余さず我と同じ病に掛かったらしい。
死だ。全き死である。
このに我が王国は途絶える。
明日の日を見る事はない。
故に。
故にこそ!!
貴様らを一匹たりとて余さず我らが死出の旅の供としてくれよう!!
さあ、出ずれ者共!!
限られた命たれば全てを燃やせ!!
我らが怨敵!その首印を我が前に!!
いざや征くぞ!!
者共!!我が配下どもよ!!
此れなるは我らが最後の闘い、戦争と知れ!!
『――ゴルグルヴヴヴヴァァァ
!!!!』
"王"――ゴブリンキングの影より、ぞろぞろと。
配下達が現れる!
●
「――へ、おいでなすったって訳だ」
どよめく奴らの本拠地、それからぞろぞろと次のゴブリン達が現れる。
"Argos Eye"よりそれを知ったヴィクティムがにやりと笑った。
"雑魚(スクウィッシー)"との戦いは終わりだ。
そしてあの"王"さえ倒せば全てのカタはつくだろう。
「――にしても」
監視網より届く敵軍の情報を見つつ、呆れたようにカウボーイが零す。
「Whacked. 1匹いたらなんとやら――連中はゴキブリか?」
森からはぞろぞろと、大軍が押し寄せる。
"王"の影、それから湧き出るように雑兵たちが。姿は小さいもののその数たるや、無尽蔵に湧いてくる。
恐らくあまりにも、異常とも言える数のゴブリンが押し寄せてきた理由はあれだ。
そしてその他にも、鎧を纏う屈強なゴブリン、杖を持つ者もいる。
『ゴルル――グルゥァァア゛ッッ!!』
"王"の咆哮、それが力を与えるのか、進軍速度が増す。
遠からず村へとやってくるだろう。
「――へ、上等ォ。」
ピピッ。
「"Ω"、聞こえてんだろ?」
ピピッ。
《なんだよ"Arsene"、こないだの事ボクまだ忘れてないからな!?》
「お手紙が気に入んなかったか?ちょっとした茶目っ気だろ」
《ぅぎぃぃ!本題!!》
いつかのハッキング勝負で負けた時の悔しさを思い出しつつ、ヴァリアブルが言う。
「おぉ、そォだ。腐れウィルソンどもが来るぞ。主役どもに伝えてやれ」
状況は決して易くない。しかしカウボーイは敢えて不敵に笑う!
「"殲滅(フューミゲイション)"の時間だぜ――!!」
――――
◆特殊ルール(試験運用)
今回の戦いにおいて敵首魁"ゴブリンキング"は配下を用い戦います
配下は
【1】戦奴ゴブリン(雑魚の群体)
【2】親衛隊ゴブリン(強め 騎士か炎魔導師のどちらか)
となります。
プレイングの一番初め、あるいは末尾に
"多対戦(大量の敵を一度に倒す感じ)"をご所望なら【1】
"強めの敵とタイマンでじっくり戦う"のをご所望なら【2】を書いて頂いた場合
それに沿う形でリプレイを作成します。
特に【1】【2】の記載がない場合はプレイングを見つつ
頂いた内容に沿って戦雨が好きなように書きます。
皆さんもお好みに合わせプレイングをしたためて下さい。
――――
【再連絡】プレイング本受付は5/23(木)8:30以降となります。
目標:5/26(日)夜完結。
(再送前提となりますが、プレイングを先んじて送って頂けるとリプレイ作成の際の参考になるのでもし宜しければ送って頂けると戦雨が助かります。)
――――
――――
●前進せよ
地鳴りが聞こえる。
何かがこちらに押し寄せる、そんな音がする。
山々に囲まれたこの村は高い場所にある。
村から見下ろせる低地の方、ゆるやかな登り道、崖に挟まれるようにある山道の先には平野が広がる。
そこに、緑の群れが見れた。
平野を超え、山道に差し掛かる。
多い。
先に始末した"波"、それの何倍だろうか。
村に至る道を丸々と飲み干し、埋め尽くし、それでも余りある量に見える。
いざあれが全て村に押し寄せれば、何もせずともそれだけで村が潰れるだろう。
そしてそれもまた、奴らの策だろう。
緑の塊が蠢く。
地鳴りが更に響く。
黄緑の粘体めいて見えるその一塊は、また波濤をこちらに寄越す。
先遣隊だ、それも、村にて始末したのが小手調べだったとわかるかのような量。
いくら歴戦の冒険者、即ち猟兵がいたとて。流石に先までのように捌き切れるとは言えない圧倒的物量。
地が揺れる。
悍ましき叫びが聞こえる、怨嗟の哭声だ。
明日の日を見ることがないと知るものの、怒りと、明日あるものへの恨みに満ちた叫び。
到底、村にはあれを破る余力がない。
これまで勝利を収めたが、村人とて流石に無傷とは行かない。
それに怪我はさした事がなく、精々が軽傷であったとしても、体力はその限りでなく。
さらに目の前の数の暴力は、もはやそういう次元の話ですらないようにも思えた。
――――ごるるがるるぐるぁぁぁぁぁ!!!!――――
やってくる"波"。
命を燃やすような進軍、その速度は、あまりにも疾い。
それは最早、村の目の前に迫り来て――
寧宮・澪
んー……強いの、来ましたねー……。
支援しますよー……よくあちらが、眠れる、ようにー……【催眠術】、【毒使い】、で、眠気を誘う香りばらまいてー……。
ユーベルコード、【謳函】使用ー……。
敵に死を。
誉れと共に綿津見へ。
骸の海へと帰りたもう。
我らが与えるは彼岸への澪標──。
と、言う感じにー……頑張って倒しましょー……という、【祈り】、【鼓舞】込めて、【歌唱】しましょー……。
おやすみなさい、良い夢をー……。
あちらの攻撃はー……【オーラ防御】や、【見切り】で軽減、計りましょー……。
なるたけ、あたりませんよーに……。
ひらひら、よけれたら、いいですねー……。
アドリブ、連携、歓迎ですよー……。
雨宮・いつき
敵の動きが変わったようですね
まるで命を惜しまぬ…命を捨てるかのような戦い
それを相手取っては村人どころか他の猟兵達もただでは済まないかもしれません
…あまり良い状況とは言えません
なればゴブリンと戦う全ての人の元へ焔の蝶を召喚し、横笛を構え意識を集中
懸命に生き、戦い、明日を掴むのだと想いを込めた音楽を奏で続け、
幽鈴の頚飾で増幅し、この戦場全てに響かせて
村人と猟兵達を【鼓舞】する事で蝶を輝かせ心と身体を癒し、その力を高めます
この光は明日を願う人々の意志があるからこその物
輝き続ける限り、僕らに負けはありません
…過去の亡霊はあるべき姿に戻す
その最期が凄惨であろうと憐情などありません
…あってはならないんです
壇・骸
【1】(状況によって【2】でも可)
終わりが見えてきたか。この面倒な騒ぎも終いだ
親玉をぶちのめせば終わる。最も、1匹たりとも逃がしてやる気はねえがな
ここがお前らの墓標だ。等しく、土に還りな
しかし、まだまだ数が多いな。無限って事はねえと思うが
であれば、もう一度敵陣へ突っ込んでーー
一匹ずつぶん殴ってもいいいんだが、埒があかねえ。ならば、だ
十二分に喰っただろう?吐き出せ、「禍」。そして、切り刻め
俺を中心に、睡蓮の花吹雪を巻き起こす
切り裂き、血を吸えば花弁が増えていくーーこの嵐は止められねえよ
他の奴らは巻き込まん。それくらいの操作はやってみせる
本体を狙う?なるほど、悪くない選択だな
だが、俺は死なねえよ
●
襲撃に備え。
一度敵を退けた。
――そうして、今度は二度目の敵襲。
退けたゴブリンたちより、なお多い。
最早これまでだろうか。
諦めかけた村人もいた。
それに届いたのは、先陣を切ったのは。二つの調べだった。
●笛の音は想奏曲として
聞こえる悍ましき声。
それに痛ましさを、どこか覚えてしまったかもしれない。
少年は些か、全てを割り切るには年若く、優しかったが故に。
しかし、やつらは過去の亡霊。
いかに凄惨な死を迎えようと、それに憐情などあり得ない――あってはならない。
そう、少年、雨宮・いつきは想う。
故に、その命を棄て燃やす様な戦叫に耳を傾けるのではなく。
それに呑まれてしまいそうな、村人らのか細い息遣いに耳を揺らし。
横笛を構え、そして、
、、、、
歩み出る。
小鬼どもの殺到しやってくる、村の入り口へ、一歩。
その直向きさ故か。責任感の強さ故か。
或いはただ後ろにいるだけでは、この場にいるもの全てを鼓舞などできぬと思ったが故か。
だれかがまて、と、声をかけた気がした。
それでも。
二歩、三歩と進み、他の猟兵らより前に立ち。
笛を吹く。
……―――――――― ♪
慈しみの調べだった。
懸命に生き、戦い、明日を掴むのだと。そう想いを込めた、
細く、それでも透き通り遍くものの耳に届いたろう音。
りぃ、りぃと鳴る鈴音がそれに共振するかの如く鳴動し、音を更に広く届け。
そして、朝日の中に。
青い焔の蝶らが生まれる。
「……これ、は……」
鳴り響いた、何処か温かな笛の音に耳を奪われ。
そして突如顕れた蒼く燃える蝶に目を奪われ、幾人の村人らが呆然とする。
猟兵とて幾人かそうしたろう。
そしてその蝶から、光が零れ落ちる。
「……傷が……!」
光に触れたものたちの傷が癒える。
それどころか、力が湧いていくかのよう。
――"月光蝶・朧望月"。いつきの奏でた音、それを聞いたものの高揚を糧に蒼焔の月光蝶を呼ぶ。その光鱗は人を癒し、力づける。
明日を願う人々の意志があるからこその光。
この光あるかぎり、僕たちは負けない、と。
横笛から流るる音色は、言葉としてではなく。
然しその音を以て言葉より雄弁に、優しく、人々を奮い立たせる。
村人の目に、また力が戻る。
ここまでの戦いで少なからず消耗したろう猟兵たちも傷が癒え、その拳に、脚に力が入る。
敵は最早すぐそこに。村の入り口を破り、打ち入らんとする戦奴の小鬼、その波動が来る。猟兵らが、そして村人らも身構え――
真っ先に、彼奴らに応じたのは、もう一つの音色だった。
●幽けき謳は葬送曲として
怖気などはない。
戦場でともに音を奏で、ともに戦った彼がそうして前に出るならば。
同じ音を以て戦場にあるものとして、ともに前に立つ。
そのような思いととも。
彼女――寧宮・澪も、決して前線に立つのに向かない体で、
ふわりと浮きつつも、いつきと並ぶように前に進む。
「お手伝い、します、よー……」
蕩けるような声であった。
柵を築く時とて、小鬼らを退ける時とて。どこに立つとて、変わることなく。
ただ、甘やいだ、砂糖菓子めいた声でそう言って。
手に持つ、金色の。オルゴール型のシンフォニックデバイスが、きりりとぜんまいを巻くように鳴り、そして音を、歌声を奏でる。
――敵に死を。
――誉れと共に綿津見へ。
――骸の海へと帰りたもう。
――我らが与えるは彼岸への澪標── ――
現世と隠世とに響くような、幽かで。
敵にとっては、どこか震え上がる呪の譜ような。
味方にとっては、己らを導く言霊めいた祝詞のような。
それが金の謳函により、遍くものへと広がっていく。
唄は時に風を呼び、さらさらと空にちる宵蜜は微睡み誘うそよ風となって小鬼たちへと届く。
「ぎ、ぎぃぅ
…………」
「が、ぐる……z……」
軍の足が緩やかに、ブレーキをかけられたように減速する。
風に触れ、その甘さを嗅いだ鬼らは昏倒するように意識を霞め取られていく。
ある小鬼は縺れるままに転び、他の者らの下敷きになり。
ある小鬼はそれでもどうにか目の前の怨敵に向け、足を引きずるようにしつつがむしゃらに走る。
「ぎ、ぐ、ぎぁぁ……っ!」
いずれかのゴブリンの号令、武器を手に持ち構える。
あるものは槍で、はたまた弓で、小刀で、投げ斧とてあった。
それが一斉に、二人へと。
歌声、笛の音、そして微睡み誘う風だけでは、ゴブリンたちは止めるには少し足りない。彼奴等もまた残った命を燃やし挑むなれば。
「「……っ」」
いつきは札を、澪は歌声による音の壁を張り。
そうして身構えた二人に――
血飛沫が舞う。
●
――待て、と言ったのにのこのこと前に出る。
キツネのガキも、あのほわほわした女も。
面倒くせぇ。
お前らが前に立ってどうするんだ。
そういうのは
――向いてる奴に任せときゃァいいんだよ。
敢えて彼の胸中を語るのであれば、そのようなところだったろう。
●墓標に送るは手向けの睡蓮
――歌声、笛の音、そして微睡み誘う風だけでは、ゴブリンたちは止めるには少し足りない。足りなかった。
が、謳も笛の音も、己が身を守る為のものではない。
どちらも誰かの為のものであり。
――そしてその点において、二人の奏でた音色は文字通り功を奏した。
護り手、というべき猟兵はこの場に多い。
人を護る事に長けたものら。
或いはそれは、二人へ迫り飛んできた石斧と槍とを骨剣で斬り弾いた骨喰の騎士で。
或いはそれは、二人に飛来した小刀と弓を盾で防ぎきった竜騎士の少女で。
或いは。
「吐き出せ、『禍』」
「「「ぎ、ぎぎぃっ
!?」」」
血飛沫の花弁を以て、飛び交う武器を巻き上げ弾き飛ばし、敵に叩き返した壇・骸とて。
素直に護ったというかはさておき、人を護るに長けていたと言えたろう。
「あ、あれ」
「……ぶじ、ですねー……助けられちゃいましたー……?」
前に出てきた三人の護り手をみて、僅かばかり驚いたような声を上げる澪といつき。
「……引っ込んでろ、お前らは」
舌打ち混じりにそう零す骸は、籠手をぎちりと鳴らす。そんな骸に二人が何か言葉を返す前。
「――散れ」
赤い花弁、それが血を飛沫くように舞う。否、真に血飛沫であった。屠った小鬼どもの血を存分に啜り上げ、紅く咲いては散る徒花。
――どうっ!!
地を蹴る音と共に、反撃を受け未だ浮き足立ってた戦奴ゴブリンの方へと骸が飛んでいく。
それと同時に――骸を中心とした渦の如く、飛び交ってはゴブリンを刻んでゆく朱色の花弁!
「「「ぎぃぃぃぁぁぁ
!!?」」」
"参式「渦」"!血で模造した花弁は敵を刻んではその血を啜り上げまた花弁を増やす!骸が敵を殴り、抉り、捥ぎ、そうして鮮血をまた『禍』が吸い上げ花弁が増えていく!
手向けの花の如く散る睡蓮の花!それの中心にいる骸は文字通り敵を抉り血路を切り拓いていく!
「ぎ、ぎぃぃ!!」
ざしゅ!
「、……っ!」
しかし無謀で己を顧みない吶喊、当然骸自身も傷ついていき――――
「っ!させません――!」
いつきが笛の音を吹く!
「――、La―――ah――― ♪」
乗じるように、澪もまた謳を紡ぐ!
蝶が骸の傍にきて蒼炎以て光り、傷を癒し!澪の唄が骸を鼓舞し、その身体に、四肢に力を与えていく!
「――――」
――その手助けは、どうにもむず痒く、やはり素直でない骸はとてもそれに礼などいえない。が、その温かみは、仲間を助けんとする二つの音は。
骸にとっても、決して嫌なものでなかった。
――不器用ゆえ、人との接し方を上手く解さぬゆえ、言葉には出さず。
「――ここがお前らの墓標だ。等しく土に還りな」
で、あるからして。骸は言葉ではなく、行動で示す。
花が、腕が、暴乱めいて紙切れの如くゴブリンらを千切り飛ばす!
「「「ぎ、ぐぎぃぃぃぃぃぃぃい
!!!?」」」
赤の暴風、千々に飛び吹き荒ぶ花弁は小鬼らの体を引き裂いて。
その果て、小鬼達への王に続く道を拓いて征く!
「――こういうのは、向いてる奴に任せりゃァいいんだよ」
――先陣を切って前に行くなんてのは。
ぼやく骸の言葉はきっと誰の耳にも届かず。
ただ、少年と天使の乙女が、先に前を行った事に、後押しされるかのように。
亡骸の戦士も、花と蝶と唄とを共に、愚直なまでに突き進んでいく。
「――往くぞ、この先へ。連中の頭をぶっ叩きに」
そう、村ではもう待てない。
ならばこちらもまた歩を進めよ!
敵を破りつつ、首魁のいる場へ赴きその首を取るのだ!
さあ、続け!謳と笛の音色とは、どの猟兵らとも共にある!
待つばかりでなく、こちらから攻める時が来たのだ!
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ピート・ブラックマン
【1】
蟲みてぇに、わらわらと沸いてきやがって
仕方ねぇ。本職じゃねぇが、害虫駆除といくか
相棒のバイクに跨って、敵のど真ん中に突っ込むぜ
敵はうじゃうじゃいるし、足場も悪いかもしれねぇが、
俺も運転や騎乗のテクには自信あるからな
そう簡単には捕まらねぇよ
敵陣の中を縦横無尽に走りながら、手持ちの斧『MasterKey』を振り回す
一撃で叩き割れればよし
そうじゃねぇにしても、猛スピードで駆けながら斧が飛んでくるんだ
ゴブリンどもを攪乱するには十分だろ
何匹集まろうが、てめぇら如きじゃ俺の道を遮れねぇって事を教えてやるぜ
【アドリブ、他の参加者との連携等歓迎です】
マリス・アップルズ
ゴブリン達は自分の死を悟ったようね。
生きる事を捨てた戦士に痛みも恐怖も通じない、それは強いな戦士になるけど。
でも、命を守る丁寧さを忘れてしまう。
注射器で血管を刺すように、静かに確実に一撃で突き殺すわ。
サモニング・ガイストを使用。
白い甲冑騎士の霊を自分に重ねるように呼び出し。
手にした槍で迫るゴブリンの身体の正中線に沿って狙い
頭、首、脊椎、心臓、脚の付け根どこでもその時守りの薄い箇所を貫き炎で熱を通すわ。
医術でゴブリンの急所を見て。鎧無視攻撃と暗殺で的確にそこを突く。
わたしの世界にゴブリンはいなかったけど。
これまでの闘いで、何処を貫かれてゴブリンは動けなくなったか、死んだのかはハッキリ見てたもの。
相模・恭弥
えー、俺ガチるのとか苦手なんですケドォ?
まあ、しゃーねぇか。
とりまヘイト稼ぎ過ぎねぇように茶々入れていくとしますかねっと。
他力本願って言うなよ?役割分担ってやつだよ。
(戦場を駆け回り、他と相対してる敵に【咎力封じ】を投げつけて去る)
ほいっと、あらよっと、そらよっと。
横槍ゴメンよぉ!トドメはまかせーる!
ハッハッハー、鬼さんこっちらー、手の鳴るっ方へー!
うっひょい楽しくなってきたなぁ、命懸けの嫌がらせって奴ァ楽しいねぇ!
※アドリブ大歓迎
配置おまかせ
●続く者らの足取りは
紅い嵐が緑の群れを切り拓いていく!
それを見て、ぼやく男が一人。
「えー、俺ガチるの苦手なんですケドォ?」
そうのらりくらりと宣いつつ、先を行った骸に続くように踏み出していくのは相模・恭弥。
苦手と嘯く割にその笑顔は朗かで愉快げでもあった。
「ま、しゃーねぇよなぁ?ほどほどに茶々ァ入れるとしますかねッ!」
にまりと笑いつつ、弾むように血風の中へと続く。
それは或いは、笛の音と謳とに後押しされてか?否――――
●鉄馬、拷問姫を乗せ征く
さて、もう一組。速やかなスタートを切った猟兵がいた。
「虫みてぇにわらわら湧きやがって……」
そう言いつつ、アクセルを吹かす。
ドルルルルン!!という嘶きとともに、愛女房の"ジェーン"――なんとも大きな宇宙バイクが駆ける支度を仕上げる。
それに跨るのはピート・ブラックマン(流れのライダー・f00352)。運び屋を営むブラックタールだ。敵の群れを見据えつつ、"マスターキー"――ドアを強引にぶち破る故そう揶揄される手斧を持ちつつ、一つぼやいた。
「害虫駆除は本職じゃぁねぇが……」
然り。こうして湧き出た過去の残骸達を潰すのは、運び屋の仕事とは到底言えまい。だが彼はここに来て愛機に跨って、無骨な斧を手にしている。
別に騎士めいた、誰かを救う、救いたいなどという理由ではない。世界の危機などは自分にとってスケールが大きすぎる。しかし、そこに未知が。まだ見ぬ何かがあるならば。
「ま、仕方ねぇよな。……さて、いいかい嬢ちゃん」
肩を竦めつつ、そう零すのだった。アクセルを片手で握りつつ、後ろに話しかける。――そう、もう一組。つまりピート一人ではなく、このバイクには相乗りをするものもいた。
「ええ、いつでも。お願いするわ」
ピートの後ろにちょこんと乗るのは、マリス・アップルズ。
まだ年嵩が少なく幾分小柄で、そしてジェーンの大きさあっての強引なタンデム。
横向きに座り、バイクの左側に淑やかに両脚を出して、腕でしっかりピートの腰にしがみつきつつマリスはゴーサインを出した。
「オーケー、舌噛むなよ……しっかり掴まってなァ!!」
ギュルルルルルルルッッッ!!
――――ブオオオオオオオオオオオッッッ――――!!
バイクの車輪が地面を噛む!山道を一台の鉄馬が駆け出した!
「――ぐるる――――ぎぇっ!?」
突貫!目の前にいた哀れなゴブリンの頭がジェーンの輪蹄に踏み潰される!
「ぎ、ぎぃぃ――っ!?」
「オラァァッ!!」
斧の一閃!吸い込まれるように刃が小鬼の頭へ!めしゃりと言う音と共に敵の頭上半分が吹き飛んでく!そのままバイクを繰りつつ、一匹、また一匹とゴブリンどもを狩り潰す!
「勇ましいわ、素敵ね。……私も」
凛としたピートへの褒句と共、マリスも戦いに加わらんとする。"サモニング・ガイスト"、白い甲冑騎士の霊――それを自身に被せるよう、霊の鎧を纏うようにして呼び寄せる。鉄馬に跨るは白霊の騎士!その槍が正確無比にゴブリンの頭を、胸を、腹を穿ち抜いていく!
「ぎ、ぎぇっ……ぎ゛っっ?!」
首を、脊椎を、心臓を。守りの薄い箇所を選び抜き、針の目に糸を通すように。これまで戦った、或いは倒され死んでいたゴブリン達、それらから何処を倒せば殺しうるのかを、その"医"の知見を癒す為でなく殺す為に駆使する。
「「「ぎぃ、ぎっっ
……!」」」
「無駄よ」
複数匹で盾を構え、壁となるようにして立ちはだかりバイクを吹き飛ばそうとする奴らがいた。霊の槍騎士を前にあまりに涙ぐましい対処だった。部分的に槍を霊化、盾の壁をするりと抜けて。その先にいたゴブリン、その一匹の胸を突き、刃の通った先から灼いて殺す。
「ぎ、ぎぇぁぁ!?」
「今よ、吹き飛ばしてあげて」
「おーおっかねぇ、お嬢様の仰るままァッ!」
「「「ぎぃぁぁぁぁっ
!!!?」」」
ブォォオオオオンッッ!!
吶喊するバイク!一匹倒れ穴となった場所に割り入るように鉄馬が突入、小鬼どもを轢き潰していく!その間にも迫り来るゴブリン達をピートの斧が横薙ぎに切り飛ばしていく!既に五十は倒したろうか!しかしまだまだ並居る戦奴ゴブリンの数々!
「いやぁマジで虫かこいつらは!?キリがねぇぜ!」
「文句を言っても仕方ないわ」
バイクで駆けつつも二人で敵を薙ぎ倒していく。目の前には次の敵の群れ、凡そ二十は犇く塊!どう駆け駆除してやるか、ピートが進路を一瞬逡巡したところ――
――ぎゅるり!!
「「「「「「ぎ、ぎぃっ
!?」」」」」」
小鬼らに巻き付くは猿轡、手枷に拘束帯!
「おっとぉなんだぁ!?」
「――とにかくチャンスね」
是である、マリスの言う通りだ。そして驚きの声を上げつつもそ!を見逃すピートでもない。
ブレーキ!車体をやや斜めに!慣性の法則に基づき滑りターンする
車体!
それに乗じるようにピートが斧を、マリスが槍を突き出す!
「「「「「「ぎ、ぐぎぃぇぁぁぁぁ
!?」」」」」」
旋回するバイクに乗じ斧と槍の刃が竜巻めいて周り、拘束されたゴブリンを裂いていく!
一度の静けさ!辺りに転がるのは屍だけ。波一つ分は雑兵たちを凌ぎ切ったか。
「一先ず、この辺りにいるのは全部潰し終えたかしら?」
「まだまだ敵はわんさかいるだろがなぁ」
一度ジェーンを止めつつ、マリスの言葉にピートが返す。
「そうそう、次の波ももーすぐそこだぜぇ」
「……あら、そこにいたの恭弥」
物陰から顔を出すのは勿論恭弥だ。隙をつきゴブリンたちに拘束具を飛ばし身動きを封じたのである。
「おう、横槍わるぅござんしたってな!そんじゃァ俺はもうひとっ走り!俺は荒事向かねぇんでトドメは頼むぜぇ」
語尾に音符すらつきそうな語調で、鼻歌まじりに胡散臭い青年は駆けて、早くも見えなくなる。
「……いっちまった。ご機嫌だなァだいぶ」
「戦意があるのはいいことだわ、私達も楽に戦えるし」
「ま、それもそうか。……そんじゃあ俺らももうひとっ走り行きますかね」
「ええ、引き続きよろしく」
――そうして、二人を乗せた鉄馬もまた嘶きを上げ、戦場を駆けていく。
――拘束帯が小鬼めらに容赦なく巻きつき、身動きを封じる。
呻きをあげ怨嗟を零すも、既にその場に犯行者はいない。
にたりと笑みをうかべながら、恭弥は疾る。
「うっひょい楽しくなってきたなぁ、鬼さんこっちらぁ手の鳴る方へェーーー!」
ぱんぱん手拍子、それに乗じ縄と帯と枷が飛ぶ。
命懸けの、嫌がらせ。
自分の命を賭けてのそれは樂しい。
そして、相手の命。あと一日で容赦なく潰える、それらが懸けた命を弄ぶのは、殊更愉しい。
笛の音と謳に後押しされるでなく、玩具を前に悦楽を隠しきれぬ子供のように。愉悦と共に、嗤いを口元に浮かべながら、騙り屋が行く。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
非在・究子
や、やっと、レイドボス戦か。待ちくたびれた、ぞ。(実際の戦場が模擬されたタワーディフェンスゲームが映った携帯ゲーム機画面から顔を上げ)
ざ、雑魚を呼ぶし、強化するし、なかなか面倒な、ボスキャラだ……全力で、いくと、するか。
あ、アシストツール【Q】、起動--
--誰もいない空間で、宙に浮かんだゲーム機が起動する。
映るタイトルは『Q子無双』。そして、緑髪のぽっちゃり少女を背後から見る視点で、『現実の戦場』が映し出される。
そして、姿の見えない何者かがゲーム機を操っているかのように、ボタンが勝手に動き出す--
--そして、現実では、涙目になりながら超絶速度で戦場を駆ける究子の姿があった。
Q子無双が、始まる。
●Next Stage!
「や、やっと、レイドボス戦か」
待ちくたびれた、そう言わんばかりに非在・究子が言う。
戦闘イベントの花形、クライマックスだ。盛り上がらないわけがない。
携帯ゲーム機から目を上げて、前を見る。無数の緑色の肌のクリーチャー、ゴブリン達。――ゲーム機の中にも、いかな技術か、これまで護っていた防衛拠点、究子らがいる村らしきものが映る。
さぁ、次のゲームステージだ、先駆けらは既に突入してる!
ボタンを押す。ゲーム機の画面が切り替わる――!
●Tool-Assisted Superplay!
誰もいない空間だった。
虚構の中にあるというべきか、"現実"にいる空間の誰も知らぬだろう、知り得ぬだろう空間。
人も建物も、風も地面も太陽もありはしない。唯一あるのは、宙に浮かぶゲーム機ただ一つ。
その画面にはひとりの少女、その背中。
透明人間が操作しているかの如く、誰も居ない空間の中で、勝手にゲームのボタンとキー達が押されていく。
三人称視点で、画面内のゲームが進行していく。緑髪の少女の背中側から、彼女に破られ散っていく敵らが見て取れる。ばったばったと少女が敵を薙ぎ倒す――そのゲームのタイトルは!
●『Q子無双』
さて仮想空間においてはそのような事が行われていたりするが、肝心のその敵をばったばったと薙ぎ倒す少女はと言えば――
「ぎ、ぎひ、ひ、ひぇぁぁぁ!!」
泣き笑いであった。
汚い笑い声を上げつつ、目からはたぱっーっと靡く様に涙粒が流れてく。
「は、はや、はやゃゃゃーーー!!」
「「「ぐぎぃーーーーーっ
!?」」」
はわわー!超速度でメカクレオタク少女が戦闘を繰り広げる!その速度たるや新幹線も真っ青だ。ゲームウェポンが槍めいて形を変え、犇くゴブリン達――時々目潰しめいて目元がペイントされてたりする――を撫で斬りにしていく。次いで剣に、薙刀に、斧に!縦横無尽に形を変えては敵をばっさばっさとなぎ倒してく!
なおゲームアーマーは特に活性化されてない。TASさんだしね。当たらなければどうという事はないの心意気の元、乱軌道めいた動きで敵の攻撃を紙一重での無駄なき回避!ワザマエ!
「の、のわ、のゎぁぁあーーー!!」
だが操作される究子は割とたまったもんじゃない!肌すれすれを敵の剣とか槍とか矢とかが過ぎてくし何より超早い!自分も動けるぽっちゃりではあれどその限度を超えた超速軌道だ!あとなんかこう、あれだ!ばるんばるんするのでその辺も究子的にこーあれなのだ、察してほしい。割といたい。気がする。気持ちの問題かもしれないが!
閑話休題。
「ぐぎ、げげげぎぃぃ!!」
だがいかに早くても敵も数が多い、一斉に降り注ぐ飛び道具、石と矢の雨!あまりに広範囲な攻撃、ともすれば味方に当たっても構わないという自暴自棄さ!どうする究子!飛び交う刃と礫、それが究子に触れる――その瞬間!
「ひ、ひぁぁぁぃぃ!!」
ぽちっ!――BOOOOOOOOOOOM!!
「「「ぐ、ぐげぎぃぁぁぁ
!?」」」
"ボム"が作動!並んでいたゴブリンらをチュドンと一掃!究子は!?――無事だ!発射時の"無敵時間"、ゲームではままある機能がこの現実においても作用、摩訶不思議にも究子を迫り来る矢と石の雨から守り無傷である!
「「「「ぐぎ――ぎぃっっ
!?」」」」
――パァァァンッ!
そして恨めしげに究子を見遣るゴブリン達の頭上に巨大な風船!それが炸裂する!
中から飛び散るのはパッションピンクのペイント、それがゴブリン達の視覚を奪う――!
「究子ちゃーーん!今のうちーっ!」
「あ、ぁわあゎゎ、ありぁーーー!!」
悲鳴めいた叫びととも、究子が剣を構え駆け――SLAAAAAAAAASH!!ごとりと跳ね飛ばされ落ちるゴブリンの首!!
「ヒューッ!ナイス一閃、究子ちゃ――――」
「ひ、ひ、ひぁ、と、止まらななな――――!!」
だがそんなファインプレーで喜べる状況でないのはむべなるかな!ゲームは急には止まらない!そのまま荒ぶるかのような勢いで、涙目の少女が嵐のように戦場を駆けずり回り、また別の場所へ支援者を置いて駆けてくのだった――!!
●ああっと!!
「――わぁぁ、すごい勢いっ。……なんだか戦闘スタイルにシンパシー感じるよーな気もするけど……」
関心するようにしながら、それでもいっしょに組んでた人がどっか行っちゃうのは参ったなぁ、そんな風に頬を書く、ライムグリーンの髪の少年。
とうに見えなくなった彼女をどうやって追うか、そう考えるうち――。
岩陰から、一つの影が彼に迫る。
「――ん、ぇっ」
――ガンッッ。
大成功
🔵🔵🔵
虜・ジョンドゥ
【2】
ボクは一対一で戦うってガラじゃないから雑魚にまわって―…って、!?
(親衛隊ゴブリンに不意打ちを喰らう)
…いてて、やっちゃったー
痛みは激しい…どうしよう
―ふと、懐から取り出したのは村のあの子がくれた“お守り”
…ありがとう
大事に使わせてもらうね
あの子が精一杯煎じてくれたお薬を使う
…ボクが今まで使ってきた、どんなポーションより癒やされるよ
―さあ、此処からはピエロのイリュージョンタイム!
パチンと指を鳴らせばあら不思議
前髪の長い無個性な勇者様のご降臨!
グリッチだらけの剣を手に…突撃、一閃!
きゅうしょにあたった、ってね!
撃破後すぐに真の姿を解く
勇者だなんてガラじゃないからさ
アドリブ歓迎
ソロ採用希望
●AMBUSH!!
その親衛隊の一員は、特に気配を隠すのに優れていた。雑兵どもの影に隠れて、敵を偵察し。情報を獲得しつつ、隙あらば猟兵らの寝首を掻く。
それが彼の使命であり。
そして、仲間と別れ一人となり、特に戦闘に優れているわけでもない彼――虜・ジョンドゥは、うってつけの獲物だった。
●道化の化粧、その下の――
頭から火花が散るかのような一撃。
目の前が点滅し、クラクラする。
ライフゲージが見れたなら、きっと赤くなってぴこぴこ言ってたろう。
その程度には、ダメージが深い。
「ぐ、ぎ、ぎぎぎぃっ」
「……っ」
揺れる視界の先、鎧を着たゴブリンが嫌らしく嗤ってるのが見える。
獲物を嬲る様な笑み。
彼我の力量差を鑑みる。
こちらは女とも男ともつかぬ華奢な体だ、それに比べて敵のゴブリン。
こちらに押し寄せてきた雑兵たちより、一回り、いや二回りは大きいか。
究子はどこにいるだろう?
助けを呼べば直ぐ駆けつけてくれるだろうか――
そう、冷静に考えて。
ぐぐ、と起き上がろうとして――
かさり。
ポケットの奥で、何かが擦れる音がした。
「――!」
じりり。
起き上がろうとしたのを見て、甲冑を纏う、自分の体躯より大きなゴブリンが。
にじり寄り、剣を振りかざす。
ジョンドゥは固まった様に動けないでいる。
それへ、無慈悲に振るわれようとしたところ――
「ーーふんっ!」
――パァン!
「ぐぎっ!ぎぃっ
……?!」
不意打ちの風船弾!
体力を振り絞り、最適のタイミングでの騙し討ち!
目潰しめいてビビッドカラーの塗料がゴブリンの目へ!
ふらふらと立ち上がりつつ、ポケットを荒い息を吐きつつ漁る。
――手にしたのは、小瓶が一つ。
中身は、ポーション。医に通じた猟兵らが煎じ作ったそれ……では、なく。
村の少女が作ってくれたもの。
敵が目潰しに呻いているうち、きゅぽんと蓋を開け、一気に呷る。
――青臭くて、どこかすっぱくて、更に苦くて。
お世辞にも美味しいなんて言えないけど。
――おかえりって、言わせてね。
――怪我したらだめよ?
「――ラストエリクサーより効くね、へへ」
思考がクリアになる。
言われた言葉を、思い出す。
逃げない。この場は逃げたくない、そう思う。
そう思わせるのは、この"お守り(クスリ)"をくれた少女の優しさと慈しみ故か。
"ボクらが守る"、と――ひいては猟兵として、ジョンドゥ自身も村人を、彼女を守ると言った故にか。
――あるいはもっと、心のうちに秘めたものがあったのか。
――なんにせよ!
「約束はさ、守んないとねっ☆」
目を擦り、インクを強引に剥がしとった親衛隊ゴブリンを前に指を――
「――イリュージョンショーを特別に見せたげるっ!」
――パチンッ!
――――カァッッッッッッ!!
「ぐ、ぎりぃっっ!?――ぎぃぃ!!」
目も眩むような光が一瞬!
またも目潰しか、そうは行かぬとばかりに剣を振り下ろすゴブリン!
しかし!!!
――ガギィイイイイン!!
「ぎ、ぎっ!?」
ゴブリンが振り下ろした剣、それが半分に折れ刃が吹き飛んでく!
――それを吹き飛ばしたのは、ジジジとノイズ走る剣。
度々スパーク奔り一定の形を持たぬそれは、伝説の、稲光纏う勇者の剣の如し!
そしてそれを持つ者とて姿が違う!
明るく目立つ髪色すらもなりを潜め、顔は前髪で覆い隠し――しかしマントを纏い剣を持つその姿は、王道RPGの勇者の如く!!
ジョンドゥの真の姿たる、勇者としての姿だ!
「ぐぎ――ぎぃぃぃぃ!!!」
折れた剣でも負けじと向かうゴブリン、それに対し勇者も剣を握る!
グリッチに塗れた剣を正中に構え――
―― 一閃。
「――――ぎ?」
頭から股下まで、唐竹割りのような斬撃が閃く!
――"Lirycal Critical(ひっさつのいちげき)"!!
「……ぎ、ぎいいいい!?」
ズバッ――――ズドォォォォおおおおンッッ!!!
斬撃音が遅れて聞こえ、斬った後から雷光が溢れ、敵をその爆煌で消し飛ばす!!
「……ふうっ、きゅうしょにあたった! なんちゃって」
――その一撃のみを放ち。
ジョンドゥはまた元の、ライムグリーンの髪の道化の姿へと戻る。
真の姿になったお陰で、負った怪我も元通りに。
「ヒヒッ、これで"怪我"もしてないねっ」
"怪我したらだめよ"という少女の言葉すらも、道化師は守りながら、戯けて言う。
この色が、この振る舞いが今の自分らしい。勇者ってのはガラじゃない。
そんな風に、少しだけ安堵しつつ。
――――お、おぉぉーーーーい……
「あ、あの声は――おーい、こっちこっちー!」
組んでた少女の声を聞いて、ジョンドゥも駆け寄っていく。
――――な、なぁ、なんか、すごい音、聞こえたよーな……?
――――んー?ヒヒッ、気のせいじゃない?
一人の勇者の奮闘。
それは、誰にも察される事はなく、誰にも知られる事なく、幕を閉じたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
奇鳥・カイト
ったく、大勢でやって来るたァあっちもよくやるよな
お陰で面倒ったらありゃしねぇぜ
それに死に体で突っ込んでくるときた、ヤなことは続くもんだ
あんま近くに来んなよ、邪魔だからよ
たくさん来るなら一纏めに巻き込むのが一番かもな、纏めりゃ玉にして転がす事も出来んだろ
纏めて潰すとラクだもんな
ま、フツーに絞めていくのもありっちゃありだが……他のやつの目に毒かね、巻き込んじまうしな
だから近くにいて欲しくないわけだが
【騙し討ち】するにしても【地形の利用】するにしても、平原じゃやりにくいな
…なんか作っとくか
ま、殴る蹴るのラフファイトでもいいんだがな。俺は
【1】、場合によっては【2】も可
(連携・アドリブ歓迎)
石上・麻琴
■心情
さてさて、ようやく親玉の登場ですか。
とはいえ、敵も数が多い模様……よし、強敵は他の方に任せて、有象無象を蹴散らす方に回りましょうか
道は切り開きます!進んでください!……なんてね?
■戦法
ユーベルコードで玄武を敵軍団の頭上に召喚し、そのまま落下させます。一撃与えた後は玄武には好きに暴れてもらって、混乱している敵を仕留めていくようにします
可能なら、技能の鼓舞を使用して味方の士気をあげつつ、それとなく玄武に注意するよう促しますね
夷洞・みさき
【1】
王様自体がゴブリンの王国だったわけだ。
末路を知りつつも突き進む業こそ、ゴブリンであり、王様なんだろうね。
でも、僕等も咎を重ねようとする骸の海の住人を見逃せないんだよね。
だから、僕の業を持って君達を海に還そう。
【POW】
援護砲撃を主とする。
ガレオン船から【おびき寄せ】砲撃により雑魚散し、生き残った場合は鎖【ロープワーク】で捕えて船倉に押し込んでゆく。
さながら奴隷船の様に。
滅びる国の住人は虐殺されるか、捕らえられて何処かに連れ去られるものだよね。
撃沈された場合は船の【呪詛】を破片と共にばら撒き【恐怖を与える】
なお、UCなので再召喚可能
王様の現世の咎が禊ていたら、船での帰還を提案
アド絡歓迎
●激昂
『ゴルギ、グルルァァァアア゛!!!』
村にいる怨敵どもを殺すはずが、その為に群となし戦奴どもを送りつけたはずが!
数で押しつぶし、身動きを封じ、あとは一日掛けて嬲り殺してやるつもりが!
一向にそれを為し得ていない!
いやそれどころか、押し返されている!なんたることか!なんたる不甲斐なさ!
送りつけた親衛隊の斥候たりとて帰ってこないではないか!!
いやいい、我が影より、過去より呼び寄せし戦奴供は無尽蔵!
一個軍で足りねば二個を、三個を!いくらでも送ってくれる!
――敵の波が、また押し寄せる――!!
●地と、空と、その間とを
「――増員されたみたいですね、どうやら」
またぞろりと増えては、波となり押し寄せてくる緑らを見て、物腰の柔らかな、しかし芯の通った声の青年が呟いた。
「いいでしょう、僕らも行くとしましょう……先陣は切りますので、後続はお任せ致します。あとは手筈通り」
一礼を終え、残りのその場にいる二人にそう言って。青年がゴブリン達の方へと向かう――!
●玄武、巌の如く在りて
全力の進軍だった。
王は怒っている。
村に届くばかりか押し戻されるとは、かの王の心境いかばかりか――
故に我々が敵を討たねばならぬ。
そう思い、戦奴らが森を、野を、荒地を駆けて崖に囲まれた山道を往く。
――波と化した小鬼めらには、使命感が見て取れた。
「――生憎ですが、その使命を果たさせるわけには行きませんので」
そこに立ちはだかるのは、一人の少年――石上・麻琴!
崖に挟まれた一本道の山道、それに溢れんばかりのゴブリンらが押し寄せる中、堂々とその真ん中に!
「「「「「「ぐるぁぁぁぁぁあッッッ
!!!!!」」」」」」
野蛮な声を上げ迫りくる緑の鬼めらに向ける視線は冷静の一言に尽きる。
そうして、霊符に呪を込め。
「――名就けしは十二天将が一つ、後三玄武水神家在子主亡遺盗賊凶将――!」
麻琴の言葉に応じ霊符から雷が招じる!
それは天に昇り、そして――!
――――――ず、どぉぉぉおおおおおおんッッッッッ!!!!
「「「「「「「ぎっ
」」」」」」」
めしゃぁ。
巌というに相応しい、丸く、しかし堅きそれ。隕石のようですらあったろう。
崖に囲まれた山道にすぽりと嵌るかのようなそれは、めりめりと地面に半ば埋もれ、その下にいた鬼めらは平たく押し潰され生き絶えていた。そしてそれが、ぐらりと持ち上がる。いや、足が生えた――否。
「お行きなさい、玄武」
《ぶぉぉ………… …… …》
ずしん。
巌――巨大な甲羅からずるりと手と足、そして硬い皮膚に覆われた頭を出して、主に言われるがまま"玄武"、巨大亀の式神が歩を進める!
「「「「「ぎ、ぎぃっ――
!!?」」」」」
剣や弓、石、槍、斧、どの武器もその硬い、鎧と見まごうばかりの皮膚には通じない。むしろ近づけばその歩みに巻き込まれ、踏まれ、擂り潰された肉塊と化すばかり。巨大な重機がのろのろと進み、遍くものをごりごりと押し潰してくようであった。
だがそれだけに留まらない!
――ズドォォォォおおおおん
…………!!!
「「「「「「「げぎ、ぎぇっ
!?」」」」」」」
上空からの爆撃!おお、見よ――玄武の上には朽ちたガレオン船が!!
「――末路を知りつつも突き進む業こそ、ゴブリンであり、王様なんだろうね」
船首には謎めいて宙を浮く車輪。それに腰をかける一人の女の影、夷洞・みさきその人だ!
何処か哀を帯びた眼で、眼下に広がる光景を彼女は見る。
残り一日とない命。それを知ってなお、逃げるでも命を惜しむでもなく、命を自ら立つでもその時をただ待つでもなく、敵対者を殺す事に残りの心血を注ぐ。それでこその悪鬼魍魎であり、その首魁であったのだろう。
――――だが。
「――僕等も咎を重ねようとする骸の海の住人を、見逃せないんだよね」
その咎を禊ぐ為、罪を断ち切る為。
みさきの乗る船が宙を泳ぎ、哀れな咎人らに砲口を向ける。
爆薬を詰め込んだ鉄塊が飛ぶ。地面に当たり爆散する。鉄の嵐の中、緑と赤の肉片が散る。そればかりでない。余波を受け、然し生き残ったゴブリンらにじゃらりと鎖が!
「ぎ、ぎぇっ!?」
いつの間に!?引き千切らんとするもどこか悍ましくすらあるその鎖はびくともしない!
じゃらららら……
「ぎ、ぎ、ぎぁぃぃ――――!?!」
一匹、二匹、三匹――続々と鎖に繋がれたゴブリンどもが宙を釣られ、船へと召し上げられていく!その様はまるで奴隷船が奴隷を引き摺り回し、その中へと呑んでいくかのよう。戦奴どもの群れは爆破され、或いは鎖で釣られ、或いは玄武に踏まれ擂り潰され摩耗していく!
「ぎ、ぎぎっ!!」
「ぎぃぃ!!」
だが奴らとてこの程度で挫けない、とうに惜しくない命たれば!果敢に向かっていく戦奴の波、それが玄武へとたかる!
《ぶぉぉぉ――
………!!》
ゴブリンがたかったところで、堅い玄武はびくともしない。が、その戦う手法は巨体を以て押し潰すのがメインだ。つまり玄武の上に乗り、やり過ごしてしまえば。その上を登り抜いて、相手をせずに通り過ぎてしまえばいい!この馬鹿でかい亀を呼んだやつがいた、それを倒せばこいつも消えるかもしれない。まずはそいつを殺す。
少なくともゴブリンらにとってそれが最適解だった。玄武の上を走り抜けんとするゴブリンらを援護するように、火矢でガレオン船を穿つ弓使いのゴブリンらもいる。
「おや」
みさきが目を細める。ガレオン船の古びた木は格好の燃えやすい的であった。一本、二本と火矢が刺さり、炎が立ち上り始める。
「――残念だね」
が、何一つ、慌てることはない。
「どっちも外れだ」
●天網
甲羅の上にゴブリンがたどり着く。一匹を追うようにして、数匹。他の者らを犠牲にしつつも上り詰めたものたちだ。
「ぎ、ぎぎぃ」
一難は乗り越えた。しかし安心するのは早い、まだ先は長い。一刻も早くこの先へ、そしてこのうすのろ亀をだした奴を殺す!そう思い、甲羅の上を駆け抜け――
スパン。
「――ぎ、ぎ?」
バランスを崩した。何故?転んだか、慌てて足がもつれたのか。そう思い、足に触れようとしたが――ない。
「ぎ、ぎぎ――!?」
「ぐげっ!?」
「ぎ――」
すぱ、すぱん。腕が、足が。或いは首が飛んでいく。当然死んだものとている、死なずとも、何かに絡め取られたように身動きが取れない。何か見えないものに斬られ、巻き取られたかのように。
「――上手く掛かったな」
「ぎっ――――!?」
甲羅の上、ゴブリンたちの見据える先にある一つの影。少し古風な学生服、すなわち学ランに身を包む少年――奇鳥・カイト(燻る血潮・f03912)だ。
「ぎぃ!!がぎぃ――」
「黙れよ、めんどくせぇ」
「ぎ――っ、 、……っ」
ぎりりと糸を使い喉を締める。
哀れなこの緑の鬼達が絡まったのは、カイトの繰る糸。見えぬまでに細く、丈夫で、鋭い鋼糸。
玄武の甲羅と上を飛ぶガレオン船、それの間を張り巡らせるように仕掛けられたそれは、蜘蛛の糸めいてゴブリン達を絡め捉えたのだ。
「一匹一匹首刎ねてっても、殴る蹴るでも俺はいいんだけどよ」
ぎり、ぎり。ぷつり。ガレオン船に繋いでた糸を切り、ぎゅるり、ゴブリンらを纏めあげる。
「「「「ぎ、ぎぁ
……」」」」
「締めたやつ転がしとくと見た目もわりぃしよ……」
苦悶の表情で転がる屍は、あまり見て楽しいものではないだろう。
自分より年若いだろう連中もいる。まぁそれを気にする奴らかは置いといて、そんなもの無い方がいいのは確かだ。
何より。
「それに」
纏め上げられ、長いロールめいて一括りにされたゴブリン達、まだ生きてるそれを足蹴にし。
「効率ってのは大事だからな」
蹴り転がす。
「「「「「「ぎ、ぎぃ……っ
!?」」」」」」
丸い玄武の背を、それは転がり。
まだ登ってた途中だったものらも巻き込んで。
「――ふんっ」
ぎちり。
糸を引き絞る。
「「「「「「「「ぎッ
」」」」」」」」
ぶしゅう。
より一層強固に纏め上げられたそれは肉団子めいて、
圧殺するように材料となったそれらを殺し切り。
ごろりと自重により転がっては。
「ぎっ!?」
「ぐぎっ、ぎが――げぇっ」
「ぎ、ぎぃぃ!!?」
ぷちり、ぷちりと巻き添えを食らったのを踏み潰していく。
「上々……お、」
ふと、カイトが上を見る。
「丁度いい、一纏めにいけそうだな」
帽子のつばを摘み見るその上には火の粉。――燃え盛るガレオン船があった。
●幽霊船は幾度でも
「ぎ、ぎぃい!!ぎががっ!!」
飛び交う火矢。めらめらと上空にある船は燃える。
ぐらり傾いでいる。きっとそれが堕ちるまでもう幾許も無い。
ひとつ倒せばまだ勝ちの目は――!
その思いと共に、火矢を射る小鬼らの手も苛烈さをより増し。
やがてその時がきた。
――――ごおおおぉぉぉぉ――っっ……!!
炎上する船が墜落する。
ごしゃぁぁぁ……。
船体の木材を燻らせ勢いよく火を上げ。
それは幾許か先にあったゴブリンらを巻き添えに、押し潰しつつ。
中で鎖にて捉えてた戦奴達の焼死体、それの手向けとするように、百を優に超えるだろう戦奴達を新たに黄泉路の友とした。
「「「「「「「「「ぎがぉおおおお
!!!」」」」」」」」」
叫ぶゴブリンら。戦友が、仲間が巻き添えで死んだからか?
否。
変えは効くのだ。それより。
見ろ!宙を浮く巨大なそれを討ち滅ぼした!
犠牲は払えども彼奴等を打ち破った!!!
勇ましき、勝鬨にも似た叫びだったろう。
――ぎしり。
「――――ぎ?」
軋る音。
訝しげに声を上げる一匹のゴブリン。
それが空を見る。
――ぎし、ぎし、ぎぃぃぃい…………
軋りをあげて飛ぶ、船が一つ。変わらずある、幽霊船の如きそれ。
――勝鬨が止む。
その代わりとばかり、砲火が吹いた。
「「「「「ぎ、ぎぁぁぁ!?ぐぎぃぃ
!!?」」」」」
爆ぜ飛ぶ鉄礫、屍肉、血。
上がるのは最早勝鬨ではない、
何故だと言わんばかりの悲鳴だった。
「――何故だと言いたげだね」
車輪の上に変わらず腰を下ろしたまま、呻く小鬼らを見下ろし。
みさきが呟く。
端的に言うならば、ユーベルコードで呼び寄せたこの船は壊れようと何度でも再召喚が叶うから。それだけの話。
だが。敢えて言うのなら――
「犯した罪からは、そう簡単に逃げ得ないからさ」
だから、容赦など一つもなく。
この砲火の波濤以て、せめてその咎を禊ごう。
そうして、幽霊船はまた哀れな罪人らを穿ち。
玄武も、鋼糸の蜘蛛の巣も罪過を絡め取るように、それを飲み干していく。
――玄武が征くその後ろ、歳若い陰陽師は油断なく、車輪の魚人と糸繰りの半吸血鬼の手を借りて路を押し広げていく。
「道は切り開きました。――どうぞ、先へ」
ガレオンも玄武も歩みは早くない。しかしそのサイズ、そしてカイトの鋼糸もあり、ゴブリンらを塞きとめる役としてはこれ以上ない。取りこぼした小鬼らを討ち尽くす為の防波堤として、この三人は誰より効果的に機能する。
故に彼は、後続の猟兵らへ、麻琴がそう告げた。
この先の敵を討つのは任せる、と。
――――それを聞き、十いくつかの影が飛び征く。
「……ちょっと格好つけすぎましたかね?」
若輩の身で言葉が過ぎたかな、などと思いながら。
引き続き、己に任された戦線を、己が式神と仲間の協力を以てして全うしていく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヌル・リリファ
【1】
◆アドリブ、連携など歓迎です
つよい相手とたたかうのもきらいじゃないけど。
他の猟兵、邪魔させたくないしね。つよい敵がいっぱいでてがまわらないとかでなければ、よわいのを一体ものこさないように殺す。
じゃあ、いくよ。
UC起動。【属性攻撃】で強化して、よわいてきがだれかにふいうちとかしかけないよう、殲滅する。
それから、右眼のたかい【視力】で戦場をみて、拠点にいなくて病気にかからなかった個体がにげようとしてないかとかをきにしたり、必要そうならほかの猟兵のフォローもするよ。猟兵ならそんなの必要ないかもしれないけど、一応きにしておく。
演算装置があるし、同時にかんがえながらうごくの、結構得意だから。
カタラ・プレケス
アドリブ連携歓迎
UC発動
『夜とは距離にあらず、汝ら逃げ切ること能わず
我が夜とは汝が悪意、自業自得の腕に呑まれ永遠の苦痛を謳いませ。』
『空間に呪詛固定:重力加重6倍・距離希釈10倍 呪夜招来:範囲広域』
『爪ならば掻き毟れ、剣ならば千切れ、槌ならば潰せ
火ならば呑め、我が腕、汝が罪の証なり』
ざっとこんなところだね~
最初から敵意と悪意しかなかったし
少しでも怯えたならそれも悪意とみなして送り込める
強かろうと弱かろうと欠片たりとも逃しはしない
国を滅ぼす夜が一編、ぼくの秘奥を人生最後に見れたんだ
死んでしまうほどの幸運に感謝するといいよ~
フェル・ドラグニエル
【1】
「あれがゴブリン達の親玉か…ここが正念場だね!」
「私は取り巻きを叩くよ!」
私に出来る事は…親玉やそれに近い連中と戦う猟兵が安心して戦えるようお膳立てをする事だね!
翼飛行で空中へと飛翔して[高速詠唱]で詠唱を始めます
「無辜の人々の生活を脅かすなら…ここでまとめて朽ち果てろ!」
詠唱を終えると同時に〈蒼雷の銀竜槍〉を天に掲げながら
【竜技・雷霆光雷】を発動!ゴブリン達を天からの雷で焼き払っていきます!
[属性攻撃・範囲攻撃・空中戦]
まだ戦意があるゴブリンにはこの雷で[恐怖を与える]戦う意思を削ぎ落していきます
チャンスがあれば[2回攻撃]を用いてもう1回攻撃を仕掛けてみます。
アドリブや絡みは大歓迎
リュシカ・シュテーイン
【1】
流石にこうも数が多いとぉ、出費が気になってしまいますねぇ
先ほどまでの戦いではぁ、村の資材を頂いて法石にしていましたがぁ、流石に在庫切れですかぁ
……むうぅ、あまりぃ、とてもぉ、全くぅ、使いたくはありませんがぁ、ここで何もしないのはぁ、お店の評判も関わりますからねぇ
”持ち込み”の法石を使うしかぁ、ありませんかねぇ
私は戦奴ゴブリンを標的にぃ、【スナイパー】で高台などから狙撃で後方支援いたしますぅ
今回はぁ……手持ちのサンストーンにぃ、爆炎のルーンを刻んだ法石ですぅ
小粒ですがぁ、威力はゴブリンを炎で包む位はぁ、魔力が籠もってるんですからぁ
……うぅ、行きなさい金貨ぁ!絶対に外してあげませんからねぇ!
アポロダスト・ディラマティウス
【1】【アドリブ歓迎】
オーイエー!ついにボスのご登場デース!!
ワタシも沢山ダンスをしてきた甲斐がありマース!!
一対一も出来るけどワタシは取り巻きの方たちをどうにかしマース!
観客が多いほうがダンスは楽しいデース!!
【WIZ】
ハッハー!今日はゴブリンたちを流星群にしてやりマース!!
カモーン!!ダンスナンバー『無重力舞踊(ゼログラビティダンス)』!!
ユーたち皆フワフワさせてやりマース!
十分に浮いたところでユーベルコード解除デース!
そのまま墜ちていきなサーイ!!
ヘーイ
!!!!!(決めポーズ)
●緑の波濤をも切り裂いて
王のいるだろう場所はまだ彼方――!
そこに辿り着くにはまだまだ!数百はいるだろう雑兵どもを掻き分けて行かねばならない!そしてその緑の一群とて只では行かしてくれるはずもない!
王の喉元に剣を突き立てるのであれば、犇くゴブリン、その雑兵どもを須らく倒して行かねばならぬ!
であれば、どうする猟兵らよ!
●Gravity-Free!!
見よ!目の前に在るのは数えるのも面倒な量のゴブリン達!それだけでも士気を削がれかねない!
「Ah-hah!こんなにたくさんの観客サーン!ワタシ盛り上がってきマーシタ!!」
それを前に、返ってテンションをあげるのはアポロダスト・ディラマティウス!
彼女からすればこの敵めらとて自分のダンスを観に駆けつけたファンも同じと言えた!
「So!まずはワタシに任せて下サーイ!ゴブリン達みんなダンスに釘付けデース!!ウキウキさせちゃいマース!」
そう溌剌と告げる太陽神!
「そういうわけでLet's go!!行ってキマーーーーーーーーーース!!!」
ドップラー効果すら伴う勢いで、他にいた猟兵らが止める間もなく吶喊するアポロダスト――!なんて無駄のない洗練された動きなんだ――!!
女神が滑るように突き進んでいくその先、待ち構えるのは無数の小鬼達!
その目の前にズザァァと土煙を上げながら彼女は馳せ参じる!
「Heeeey boys!!ワタシのダンス楽しみにしてマーシタかー!?Are you ready!!」
「ぐるるぎぃぃ!!」
女神の言葉に彼奴等が聞く耳を持つはずもない!一人だけ先走ってくる敵などネギを背負って来た鴨も同じ!そう思い、ゴブリンらが武器を掲げ襲い来る――!
対するアポロダスト!手を掲げ指をSnap!
「Oh yes!元気の良さ花マル印デース!!それじゃ――」
ピッカァァーーン!!ライトが光る!BGMが流れ出す!
「Let's FEEEEEEEEEVAHHHHHHHHHH――――!!!」
――ブンッッ!!
「「「「「……ぎっ
!?」」」」」
武器が空を切る!目の前にいたはずのアフロヘッドがいない!何処へ!
「ヘーイ!こっちデース!!」
「「「「「ぎぎっ
!?」」」」」
声のする方に一斉にゴブリン達が向く!
なんとそこは敵軍、そのど真ん中!
「ぎぃっ――!!」
いつのまに!?そんな声ととも振りかざされる武器――!が、またもそれがアポロを捉える事はない!
「OH YEEEEEEEEEEES!!!」
歓喜の声を上げつつ、女神はゴブリン達の間をすり抜けるように進んでいく!
時に振られる武器をステップで、ブリッジで、サマーソルトで躱し!ステップを刻む度にその足元から衝撃波が発生し、ゴブリン達の足をも揺らがせ身動きを奪う!
「まだまだデース!!リズムに乗りマーーーーーース!!!」
――Foooooooooo yeahhhhh!!
更に速度を上げるアポロダスト!犇くゴブリンらの間を吹き渡るつむじ風のようにするりするりとダンスと共に渡り行き!彼女を追う剣と槍ですらも舞踊の一部に見立て魅せる!さすがのゴブリン達も目を見張る!
そうして、数百に渡るその群れを遍く駆け抜け!
「HEEEEEEEEEEEY!!!」
TURN & PAUSE!びしりと指を天に掲げてのFINISH!
対するゴブリン達はどうだ――!
「「「「「「……?」」」」」」
首を傾げるばかり!
確かにするすると全ての攻撃を回避する動きに驚きこそすれ、怪我の一つたりとてゴブリン達は負ってない!なんだこいつは、避けるだけか!げひひと舐めるかのような嗤い、侮るゴブリンら!
しかし!アポロダストのダンスの本領は此処からだ!
ふわり。
「……?ぎ、ぎっ??」
謎の浮遊感に襲われるゴブリン。
足元を見る。その足は地に――――付いていない!!
「それじゃ皆サーン!」
呆気に取られるゴブリン達に、アポロダストが快活に告げた!
「ウキ☆ウキしてって下サーーイ!!」
――――ぶわっっ!
「「「「「「ぎ、ぎぃぃっ
!?」」」」」」
彼女が通り過ぎた後――即ち数百にも及ぶゴブリン達!
それが須らくふわりと宙に浮かぶ!
"Zero Gravity Dance"!重力すらアポロダストを、ひいてはそのオーディエンスですら捕える事は叶わない!!
文字通りふわふわと"浮き"、まともに動く事は不可能だ!
そのまま落とすのもいいだろう、しかし此処には他にも頼もしき味方がいる!それらの目の前には身動きの取れない敵――即ち!
「それじゃ次は皆サンの番デーーーーース!!」
――それを逃す猟兵ではないのだ!!
●宵謳い御子と夜の腕
「うわぁ、なんだか壮観~」
呑気にも宣うのはカタラ・プレケス。
吶喊する女神を見送った青年は、無重力と化した空間を彷徨いぎぃぎぃと喚く鬼らを目を細めて見る。毒を作るときとて、薬を作るときとて。そして病以て敵を呪うときとても、彼はいつでも大らかで、虚しさすらある穏やかさのままに呪を齎す。
「……さて、それじゃ~、バイバイの時間だ」
そして、敵にはひと匙の容赦たりとてありはしない。続いた言葉は、彼らを黄泉路に送るための言葉だった。
「――――夜とは距離にあらず、汝ら逃げ切ること能わず。 我が夜とは汝が悪意、自業自得の腕に呑まれ永遠の苦痛を謳いませ」
白曼珠沙華の男が諳んじる。
空間に呪詛固定。
重力加重6倍。
距離希釈10倍。
呪夜招来:範囲広域。
――朝の空に、夜が広がる。
「爪ならば掻き毟れ。剣ならば千切れ。槌ならば潰せ。火ならば呑め」
夜が、近い。いや、距離すらも曖昧だった。遠いのか近いのかもわからないが、確かにそれは"在る"。触れられるほど近くに。そして、それが此方を掴まんとしてるのがわかる。小鬼らの警戒心が跳ね上がる。
「ぎ、ぎぃぃ――!!」
一匹のゴブリンが唸る。それに乗じるように他のゴブリンらも身じろぎし、この重力のない空間から、悍ましき夜から逃れようとして。
然し、夜の呪はそれを赦さない。
「――我が腕、汝が罪の証なり」
――どッッッッッッ。
宵空が、正しく"墜ちた"。
それは巨きな、藍色の掌となり、押し固まり。
宙を泳ぐ哀れな蟻めいた小鬼達を、その掌で、
ぐちゅり。
「「「「「「ぎっ
」」」」」」
――断末魔は短かった。
六倍の重さで押し寄せくる、重石の如き宵の腕。
「……呆気ないねぇ……でも、ぼくの秘奥を最後に見れたんだ」
それは夜の形をした、呪詛返し。
敵意・害意・悪意とを物質と化し、呪いを産みしものらに返す反転呪詛式。
国をも滅ぼす、夜が一編。
"夜謳う御子の祈りと呪い"。
「死んでしまうほどの幸運……感謝するといいよぉ」
屈託のない笑みととも、夜の御子はそう締めくくる。
その夜の呪いを見るために、小鬼めらが払った対価は、百余の命と相成った。
●竜の雷霆
夜の腕が墜ちた場所、その少し進んだ先。空には一人の竜人がいた。フェル・ドラグニエルだ。彼女もまたわらわらと無尽蔵に湧く雑兵ゴブリンどもを見て、自分の役目を露払いであると定めた。
故に彼女の標的は、眼下にいる無数の戦奴ゴブリンら――逃げる事も出来ず地上を浮かぶそれらである。哀れとは思わない。彼奴らはあの村人らに害をなさんとしたのだから。
「――無辜の人々の生活を脅かすなら……ここでまとめて朽ち果てろ!!」
敵に対する無慈悲なまでの宣告ととも、"蒼雷の銀竜槍"を構える!
「我囁くは"雷霆"」
ごろり――。晴天だった空に、一点、フェルの真上。どよめく黒雲が生じる。
「降り注ぐは天ノ怒槌」
それが轟きつつ、稲光を瞬くように光らせる――!
「咆哮・轟音・輝き・全てを以て我が前に立つ敵を焼き尽くせ――!」
雷雲が光り、ついにはスパークを発し出す!
狙いをつけるのは易い!
ケラウノス・ブレード
「 竜 技 ・ 雷 霆 光 雷――――ッッッ!!」
――――ピシャァァァアアン!!!!
「「「「「「ぎ、ぎいいいいいっっっ――
!!!?」」」」」」
稲光は雷雲より二撃!
それが枝別れし数多に割れ、宙で動けぬ的となるゴブリン達を、幾股にも別れた竜の咢めいてその喉笛を、頭蓋を、心臓を雷の牙で穿ち抜く――!!
――どさり。
雷槍が降り注ぎ終わった後、フェルの飛ぶその下にいるのは煙を上げ焼け焦げて命を落とし、地にどさどさと落ちた雑兵達のみ。
「――ふぅ。私の仕事は此処までかな――」
自分の隣でもまた、ゴブリン達が為すすべもなく打ち破られていくのを見つつ、フェルがその槍を収める。
さて、ではその隣ではいかな事が起きていたかと言えば――。
●炎獄、空を舐める
リュシカ・シュテーインの顔は曇っていた。
何故か。
それは、敵とは言えども容易く命が絶えていくこの戦場を見て心を痛めていた――からなどではない。
「…………流石にぃ、在庫切れですかぁ」
左様。法石鞄に詰め込まれ法石。その中で、"爆破"のルーンを刻んだ法石は既にすっからかんだ。
村での防衛戦にて全て使い切ってしまったのは宜なるかな。幸いと言うべきか、これまで使った法石は村での余った石を用い作った物なので直接的にはリュシカの懐は痛んでないからまだマシだが、それにしたって対峙するのがこの量だ。
ここまでは全くの無傷できた。しかし此処からは一撃ごと、懐に傷を負う事となる。常日頃赤字に追われる店主として出費が気になるのは当然と言える――が、ここで何もしないのも信用問題という奴に関わるのだ。
――故に、ここは最大効率で。一射を以て数多を屠る。それが結果としては一番懐に響かない、そう結論づける。
「……むうぅ、あまりぃ、とてもぉ、全くぅ、使いたくはありませんがぁ……」
これっぽっちも気乗りしない様子で鞄から出すのは橙色の宝石、サンストーン。小粒なそれに、ルーン文字が刻まれている。
「――ふぅぅんっ……!」
――ギリ、ギリ。
目一杯、スリングを引き絞る。
高価なそれを撃つ、その悔しさも込めるように。
狙い易い高台などではなく、平地よりの一射。
しかし敵は神の舞踊により足を取られふかふかと浮くばかり!
狙撃手としての確かな手腕のある彼女がどうして外そうか!
況してや!
「……うぅ、行きなさい金貨ぁ!絶対に外してあげませんからねぇ!」
そう、超守銭奴の彼女が!
己が身銭を切って撃った一撃をどうして外そうか!
狙いは寸分違わずに、宙を浮くゴブリン達の真ん中に――!
そして!
――ごおおおぉぉぉぉおッッッ――!!!!
「「「「「「ぎ、ぎげぇーーーっ
!!!?」」」」」」
天が燃える!!
"爆炎の法石"!炎上のルーンが刻まれたそれは火を宙へと放つ広域炎上の法石!
況してや只の石では無く宝石、それも太陽の石と呼ばれるものを使用している!効果の程はご覧の通りだ。火は宙を広がり舐め尽くし、骨すら焼け焦がし燃やし尽くす勢いで燃え盛り、やがて灰だけを降り注がせ鎮火する。
百を優に超える小鬼どもの命を呑み尽くし――。
「うぅ……金貨ぁぁ……」
それを射た麗しの女店主は、失ったもの(商品)に涙したと言う。
●光の矢武雨
「リュシカさんがこまってる……?」
ほぼ時を同じくして、そのまた隣。まだ空が焔に包まれる僅か前。ヌル・リリファの天眼、演算機能が、狙撃仲間が困窮しているらしき事をその"目"で察した。どうしたのだろう?
「……なにかつらいこと、あったのかな……?」
機巧少女は幾許か人の心や気持ち、その機微とも言うべきものに疎い。
少なくともこの場でリュシカが気落ちする要因、それを察する事ができなかった。というかぶっちゃけ身銭切ることになって凹んでるの察しろってのが無理である。
ともあれ判らぬ事を考えてもしょうがない、ので切り換える。集中すべきは目の前の敵。為すすべもなく宙を飛ぶしかできない有象無象達。
「他の猟兵、邪魔させたくないしね――」
この肉壁ともいうべき雑兵達は邪魔だ。故に殲滅する。人形らしい、割り切った、単純明快で。そして無慈悲でもあったろう、演算装置からの解答。
「じゃあ、いくよ」
――ユーベルコードを起動する。
――――ギュオンッッッ。
百八十本の無数の光刃が顕れる。
剣刃であり、槍刃であり、斧刃であり――其れは遍く武の姿を象る。
絶望を祓う無数の耀き。
死を斬り払う光の雨。
味方にとってはこれ以上なく頼もしい威光であり――敵にとって、これ以上なく脅威であり、絶望であったろう、破滅の光。
「ぎ。ぎ――」
「さようなら」
無慈悲な一斉発射であった。
断末魔すら許さぬ速度を以て、数多の刃が断罪の矢としてゴブリン達を穿ち抜く。
一本が一匹の小鬼の命を、的確に、寸分違わずに心臓を貫いて殺し尽くした。
――それで、終わり。
夜の腕が、雷霆が、焔が、光雨が、あれだけいた戦奴の軍隊を全て消し飛ばし――
残すは、親衛隊ともいうべき選りすぐりのゴブリン達、そして、王のみ。
「――ほかのひとたち、大丈夫かな」
戦力の損耗具合は、どうだろう。それを気にしたヌルが、戦域を天眼で見渡す。――目に見える大きな損耗は、どの猟兵にも見当たらない。あったとして、随伴する笛使いの妖狐と謳使いの天使とが癒し鼓舞する。士気に不足はないらしい。
――そして。
「――あ」
ふと、目に留まった、天眼が捉えた、山陰を駆ける姿を見て。機巧少女はくすりと微笑む。
「そっか。――なら、心配ないね」
自分たちが薙ぎ払った先を、幾人かの猟兵たちがまた駆けていく。
――その中に、信を置く一人の傭兵の姿を認め。
彼がいるなら、大丈夫だ、と。
それだけは機巧少女というよりは、一人の少女らしい親しみと、信頼を以て。先を行く猟兵らを見送るのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●勅命、進軍する精鋭ら
雑兵達は遍く刈り尽くされた。
僅かに難を逃れたものが居たとして、その先に控えるガレオン船を、鋼糸の巣を、玄武の壁を。遊撃班として暴れる亡骸の騎士や鉄馬と拷問姫、無双少女を突破できる筈もない。笛の音色と謳との力を借りて、猟兵たちの体力も底知れずだ。
最早雑兵如きでは相手にならない。
『ギゴガァァァァァア!!!』
戦奴如きでは最早奴らは破れぬ!!
ならば、ならば!!
歴戦の我が配下達よ!!
聴け!!我が勅命を!!
その焔で敵を灼き尽くせ!!
剣戟を以て敵の胴を真二つに斬り伏せてみせよ!!
「「「「「「ごるるるぐるぁ!!!ぐるがぁぁ
!!」」」」」」
ガンッ!!ガンッ!!
号令に興奮したように武器を打ち鳴らす、これまでとは一線を画す親衛隊の小鬼ら!!
『ガルグルグァァァア!!!』
いざや進め!!
我も共に征く!!
汝らの力を我に示して見せよ――!!!
いよいよ、王自ら、そしてそれを守る屈強な親衛隊らが動き出す――!!
リンタロウ・ホネハミ
【2】親衛隊ゴブリンの騎士
なるほど、確かにそれらしくはあるっすね
主に仕え、ゴブリンにしては立派な甲冑を被りゃあ騎士っぽくはあるっす
だが足りねぇ
テメェは主も甲冑もねぇ傭兵紛いにすら、騎士として及ばねぇ
見せてやるよ、騎士道精神
騎士が一騎討ちをするとなれば、取る戦法はただ一つ
己の剣技の全てを駆使し、真正面から敵を斬るのみ
敵の攻撃は全て受け、弾き、自らの攻撃は全力をもって叩き込む!
サイの骨を食って【〇六三番之城砕士】を発動したオレっちなら、それを為すだけの膂力があるっす!
戦いの後、勝っても負けても息も絶え絶えに
はぁ……普段騎士らしいことしてねぇからこんな無様晒すんすよね……
くそ、鍛え直しっすわ……
●騎士の矜持とは
――――ごるるるるぐぁぁぁ――――
!!!!!
野蛮な、猛りを隠しもせぬ叫び!
場所は山道を下りきった先、草叢茂り木がまちまちに乱れ立つ草地!
咆哮めいたそれはそう遠からぬ地から聞こえてくる――!
「へ、いよいよ敵本陣も近いぞ――来るぜ!!」
偵察として飛ばしていた"Argos Eye"より得た情報を元に、ヴィクティムがその場にいる猟兵らへ告げる。
そして――茂みの奥、敵影がいくつか見える!
猟兵達へ迫り来る親衛隊たちの姿!
やってくるのは尖兵、本陣とも言うべき王の在り処はその更に奥――!!
先ずは我らが相手とばかり、親衛隊たちが躍り掛かる!!
「敵もそう簡単には行かせちゃくれない――っすよねぇ!!」
ガギィィィン!!
切り掛かってきた一体のゴブリン、それと刃を合わせるのはリンタロウ・ホネハミ!
「こいつはオレっちに任せて行くっすよォ!!」
ぎぃんっ!が、ギィィィ!!
二度、三度と切り結びつつリンタロウが吼える!
それに応じ、猟兵たちもその先へと急ぐのだ!
「うっし、皆行ったっすね……さてと」
改めて、対峙するそれを見遣る。
ヘルムにボディアーマー、手甲。鎧でその身を覆い、剣と盾を持つ屈強なゴブリン。
身の丈は自分ほどもあるだろうか。
「……なるほど、立派な騎士サマって所っすかね」
主君がいる。鎧を纏い、剣と盾とを持つ。
見てくれだけは騎士めいてる、そう言っていいだろう。
だが。
「――足りねぇ」
す、と骨剣を構えてリンタロウが言う。
「テメェは騎士として及ばねぇ」
主も鎧もない、この傭兵崩れにすら及ばない。
「――来いよ」
騎士として及ばぬと言う言葉に反応したのか、続く一言を受けてか。
「――ぐるるごぅぁぁ!!!」
――――いずれにせよ、そうして二人の剣が火花を散らす!!
ぎィんっ!
ガギッ!
ギギギ、ガンっ、ギィィィん!!
「ぐるるる――っ!!」
「……っとぉ!」
袈裟に薙いだ骨剣を盾で受けられ、返す刀とばかりの鬼の強烈な横薙ぎ!
すぐ様剣を引き戻し、それを剣の腹で叩き落とす!
「ウラァァァッ!!」
叩き落としで生じた反発力に逆らわぬまま、敵の頭を狙った一閃!
対するゴブリン!
「ぐるごぉぁ!!」
ガギィィッ!!
まさかのヘッドバット!!
ヘルムを被ってるからこその荒技、一歩間違えば頭が弾け飛ぶものを剛力に物を言わせて強引に弾いた!
「いぃい、マジっすか!?」
呆れんばかりのラフな受け方に思わずリンタロウも呻くも剣閃は至って冷静!
弾かれた剣をまた構え直す!
敵は膂力にものを言わせた強力無比の振り下ろし!
「……なんのぉ!!」
これを骨剣を上へ掲げ、刃を斜め下に向けつつ受ける!
刃を滑るようにしていなされ、逸れた軌道で地面にどむ、と鬼の剣が埋もれる!
「そこっす!!」
敵の剣は地面に埋もれたまま!大きく体勢を崩した鬼、その手を切断せんと骨剣が閃き――
がぎっっ!!
「……っ!」
鬼は剣を離し、鉄の手甲、その掌で"リンタロウの剣戟を受け止め掴む"!
流石に敵の手も無事とはいかない、が、鉄の装甲を凹ませ鬼の皮膚を割いた程度!まだ動く!対する鬼の次手、骨剣を握り引き寄せ――カウンターめいて盾での殴打!!鉄の壁の如きそれがしたたかにリンタロウを打った!!
どごぉんっっ!!!
「ぐ、っは……っ!!」
剣を持ったままに吹き飛ばされるリンタロウ!
「ぐぎぎ、ぎひぃ……!」
野蛮な戦い方である。獣めいた、型のない直感的で、人間的ではない。
だが一種の合理性はあるかもしれない戦闘方法。
正道ともいう剣の術理とは程遠い、邪道たる剣と盾との使い方。真っ当な剣術を識るものからすれば、一種のやりづらさすらあるだろう。そしてこの強さはさすが親衛隊と言うべきか。
――だが。
「――足りねぇ」
まだ、骨喰の騎士は立ち上がる。
蹌踉めく脚に再び力を入れ。
真っ直ぐに骨の剣を構えて。
「全然、騎士として。テメェはよぉ」
――がきり。ばり。
骨を一本、喰みながら。
「なっちゃいねぇんだよ、三下ァ!!」
「げぎ……!!ぐるごぉぁ!!」
雄叫びを上げて騎士鬼が迫る!
言葉はよくわからないが、馬鹿にされた事は解る!!
生意気なひ弱な人間如き――!
そんな思いの元、今までで一番強烈な袈裟懸け一閃――!!
――バキィィィイイイイイイイン!!
「――ぐ、ぎぃ!?」
それに真っ向から打ち合ったのは、なお強力な一撃!!
鉄の剣をばきりと折砕く剛毅な打ち払い!
「ぎぃぃ……ぎごぉ!!」
構わぬとばかり折れたを放り捨て、鉄手甲での拳打!
鬼の拳がリンタロウの胸に突き出され――
ガギィィッッッ!!
「ぎっっ!?」
――硬い!岩を殴ったのかと言わんばかりの衝突!手甲にも皹が入る!
なんだこれは!?
騎士の鬼とてこれには驚く!
一方のリンタロウは、ぎぎ、と骨の剣を真上に構えた。
軋む音は、リンタロウの肌が擦れる音から。
――その肌は、今は巌のようにざらつき、硬く強張ったものと化している!
「……まるで足りねぇ。騎士の矜持ってやつが」
そう呟くリンタロウ。
そう、騎士としての矜持。
剣をいとも容易く手放した。
盾で人を殴ってみせた。
戦い方の無軌道さは、一種の脅威かもしれない――が。
その身を守る為のもので殴りかかり、
信を置くべき剣を捨てることに躊躇わない。
剣に、盾に、その扱いに。騎士たるものとしての志が無い。
これは騎士では無い。たまたまあったものを使うだけの、只の鬼。
何より。
「騎士ってのは先ず、守るべきものの側からは離れたりしねぇんすよ」
そう。
主君を。
守るべきものを置き去りにしてただ暴れる騎士など、何処にいると言うのか。
この鬼には守るべきものを守る、その矜持が無い!
我が身をおして仲間を先へと進める骨喰の騎士と、この鬼!どちらが真の騎士に近いかなど、言うまでもない!
「――見せてやるよ、騎士道精神」
「ぎ、ぎいぃい!!!」
盾を天に翳し身構えるゴブリン!
それに――!
――ず、ドォォォおおおおおおおお!!!!
剛毅なるは"〇六三番之城砕士"、犀の骨より賜った体表硬度、そして溢れんばかりの膂力――!!
骨剣が、真っ直ぐと振り下ろされ。
紙切れのように鉄の盾を引き裂き、兜を割り、ボディアーマーごとゴブリンを真二つに、リンタロウの剣閃が斬り開いた。
――どさっ。
倒れるのは二つの音。
敵の二分割された体がぼてりと地に伏し、その側で荒い息を上げてリンタロウも。
「……どっへぇぇ……疲れたっす……」
慣れぬことをした故か、息も絶え絶えに仰向けになりつつ、リンタロウが細く鳴く。
敵から受けた攻撃で、自身もなかなかに疲労困憊だ。
「くそぉ、鍛え直しっすね……」
帰ったら何から始めるか。そんな思いと共に、鬼と骨喰の騎士、その一騎打ちは終わるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
蒼焔・赫煌
【2】
おー!
まだまだ一杯だね、元気だね!
でもでも、それなら可愛いボクたちだった負けちゃいないさ!
なんたって、正義の味方だからね!
やーやーやー!
そこの魔法使いっぽいの!
可愛いボクが相手だぞ!
ミズチの槍先を向けて強そうな奴に堂々と宣言!
可愛いボクは知っています、火は水に弱い!
だからミズチの水を操る【属性攻撃】!
威力の低そうな魔法は水の刃で【武器受け】しながら斬り消すさ!
すごそうな魔法を使おうと、隙ができたら水の刃を解放!
水流で一気に押し流しちゃうぞ!
ついでに同じ方向に居たゴブリンたちもまとめてどばーっ!だよっ!
【アドリブ、他の方との絡みは歓迎】
浅葱・シアラ
【2】希望
悪意は固まる、集結する
王様がいるなら、話は簡単だよ
平和のために、勝つよ!
だって……世界を救う猟兵が、ここに来たんだから!
使用するユーベルコードは「胡蝶閃」
王様だって、騎士だって、炎魔導師だって……!
負けない……シアは、この蝶々さんと一緒なんだから……!
紫色に光る光の蝶々さんを閃光のように放ち、攻撃する
これはお父さんの紫色と、お母さんの光の蝶が合わされた至高の技
【全力魔法】で強化された魔法を、【高速詠唱】で速く、何度も、何度も!
蝶々は小さな羽虫に見える?あなたたちには。
でもね、今あなた達の力を奪って立ちはだかってるのはこの小さな蝶々達の群れなんだよ!
●"騎士"として
リンタロウが足止めをし、その先へと行く猟兵たち!
しかしゴブリンらはまだまだいる――!
「ごる、がるるる――!」
「ぎぃぃ――!!」
接敵するは二匹の鬼ら、騎士と炎魔導!
この先は行かせぬとばかり立ちはだかる!
そこへ――!
「シアに任せてっ!」
煌めく蝶の一閃!
紫の閃光めいたそれは鋭く飛び交う!
されど相手も親衛隊、只の敵にあらず!ひらり閃くそれを躱す!
しかし――――!
――ピカッッッッッ!!
「「ぎっ
……!?」」
紫の閃光、それがなお眩く煌めき、二匹から力を奪う!
――がくり!
膝の力が抜け落ちたように立ち眩む二匹の隙を突き、他の猟兵らは先へ――!
対峙するのは小さな蝶の如き少女、妖精の浅葱・シアラ!
「「……ぐるる
……!!」」
たかが羽虫風情がとばかり、鬼めらが唸る!
「――蝶々は小さな羽虫に見える?あなたたちには」
対するシアラは、ひらりとはためき翔びつつ、そうぽつりと零す。
その目は毅然と、二匹の。並みの人ほどかそれより大きな騎士鬼に、杖を持つ魔導の鬼を見つつ――!
「でもね、今あなた達の力を奪って立ちはだかってるのは!」
――ザァァァア!!
「この小さな蝶々達の群れなんだよ!」
シアラの周囲に顕現するは紫の羽持つ蝶々たち!
"胡蝶閃"!一羽一羽、その煌めきが戦乙女の槍刃の如き鋭さを秘め、その光は浴びたものの力を奪う!
右眼が赤く変じる!
先んじて皆を庇い騎士鬼を相手どった、骨喰の。心優しき傭兵紛いの、しかし騎士然とした姿にも感化された故か。
今この時は臆病な少女としてではなく、蝶の騎士としてシアラは二匹の前に立ちはだかる――!
●一方、その頃
「……んーーーーーーー」
唸るひとりの少女。
どうした?と誰かが聞けば。
「……やっぱフェアじゃないよねっ!てな訳で可愛いボクは助太刀にレッツゴーなのさっ!」
え、おい、と止める間もなく彼女は駆ける!
何故?彼女が人の話を聞かないから?
否。
ヒーローとは、正々堂々と戦ってこそで。
誰かの窮地に駆けつけて、助けてこそだからで!
その場の誰より彼女がそれを良く知るからだ!
●蛟の槍、蝶の紫刃
場を戻しシアラと二匹のゴブリン達。
戦況は五分五分、いや、数の所為もありシアラがやや不利か!
「蝶々さんっ!」
飛び交う数羽の紫蝶!
幾匹かは騎士に、幾匹かは炎魔導にと飛ぶ!
「ぎ、ぎぇぃぃ!!」
光を浴び騎士の動きが緩み、そこに蝶の光刃が当たる!
炎魔導にも同じく光の蝶が飛んでは、その紫光で眩ませ火を弱める!
――が!
「ぎぃぃ、ぎぁぁ!!」
「ぐるごおおお!!」
「……っ!」
脱力は僅かな瞬間のみ!
また力が戻れば騎士は剣を唸る勢いで振り、炎魔導は炎弾を繰りシアラへ向ける!
騎士はその装甲により光の刃をもってしても決定打を与えられず、浅く傷を付けるのみ。
炎魔導へは彼奴が壁めいて炎を展開し、それが光を弱まらせるからか脱力もやや効きが悪い!片方が脱力し一時的に力を失っても、もう片方が追い縋りシアラを攻める。そちらを攻撃すればもう片方が回復し――その繰り返しが今のシアラとゴブリン達だ。
全力を以て力を溜めた蝶ならば、容易く鎧とて貫ける。その自信がシアラにはあるものの、その全力を撃ち出す――その力を貯める為、その時間を稼ぐ隙が作れずにいる。連携の巧みさは親衛隊ならではか!
シアラとて巧みに身を躱し、敵の焔も剣戟も一つも貰わずにいるが避けるのに力を割く故やはり蝶の一羽一羽に込められる力は少なくなる!
どうやって隙を作るか――!それを妖精の少女が考えていたところ!
「お困りのようだねっ!!」
どこからともなく声が!
「ぎ、ぎ……ぎぇっ!?」
ガギィィッ!
向けられる槍刃、それを辛うじて剣で受け、されど吹き飛び後ずさる騎士ゴブリン!
現れたのは――何故か中華服に身を包む青髪の少女!
「可愛い正義の味方なボクが来たからには安心だっ!」
――そう、なにせヒーローは時に遅れてくるもので!
時に味方のピンチに颯爽と駆け付けるものだから!
「赫煌――!」
現れたのは当然、青髪の正義の味方、蒼焔・赫煌だ!
知った顔の助太刀に、ぱぁぁとシアラの表情が明るさを増す!
「ぎぎぎ……ぎぁぁ!!」
一方、それを見た炎魔導ゴブリンは雄叫び!それに応じボボボと空中に火の玉が現れ赫煌へと飛んでいく――!!
それを何するものぞ!
「可愛いボクは知ってますっ!炎は水に――弱いっ!」
水の刃もつ槍――"静滅貫流ミズチ"で縦横無尽に薙ぎ払う!
一振り、二振り、三振り――!!
――――ジュウウウウウ!
蒸発音と共に全て炎が掻き消された!
「ぎ、ぎぃい!?」
「さぁさぁこれで正々堂々二対二だっ!」
そう、一対二なんて。
一人で二人を相手する味方を助けに行かないなんてヒーローが廃れてしまう!
だからこそ首魁を倒すのは他の猟兵に任せシアラの助太刀に馳せ参じたのだ!
「足止めは可愛いボクにお任せあれさっ!頼んだよシアラちゃんっ!」
――ダッッッ!!!
血液を動力に、活力に!
己の生命すら燃やすように、しかしだからこその力強さと疾さ――!!
「「ぐ、ぎぎぎ……っ!?」」
騎士鬼の剣戟を槍でいなし弾き躱しつつ、的確に炎魔導鬼の炎を水の刃とそれより出ずる水弾とで相殺、抹消!!
「……っ!わかった、シアに任せてっ!」
自分を守るように戦う赫煌を見て、シアラが詠唱を重ねる。
言葉は早く、疾く、風のように紡がれて。
現れるは、ぎらりと紫の光湛える蝶ら。
研ぎ澄まされるようにその光をなお強め――!
「赫煌――っ!!」
声と共に、二匹の蝶を放つ!それは狙いすましたように素早く煌めき二匹の鬼らへ!
「「ぐぎっ
……!?」」
がくり、力を失う二匹!紫の閃光が力を奪い――!
「見事だぜシアラちゃんっ!てな訳で豪快に行ってみようっ☆」
隙を見たり、とばかりにミズチを解放!
――ずごごごごぉおお!!!
解放された槍の穂先、溢るるは渦潮めいた水の竜巻!
「「ごぼ、ごおぉ!?」」
騎士を、炎魔導を順に呑み、それは噴水の如く湧き上がる水柱に!
ぶくりごぼごぼと湧く水の中に閉ざされた二匹に――、
――キィィィィィ――――!!
鳴動しつつ羽撃くは、巨大な紫蝶!
人の身の丈ほどもあろうかと言うそれはシアラが詠唱を重ねに重ね強化した魔力の結晶!
「いっ、けぇぇぇーーーーー!!!」
――ばさり、――シュパァァァアアアン!!!
「「ぐ、ぎぃぃいいいいいい――――!!」」
水柱ごと、二匹の鬼を紫の閃光が飛び交う槍刃めいて断ち切る!
「――いよぉぉっし!ナイスだぜシアラちゃんっ!」
「……ふぅ。えへへ、シア、頑張った……赫煌のおかげだね、ありが」
「そう言うわけで次の戦場だっ!さぁ行くぞ行っちゃうぞー!」
「へ、えっ」
「さぁさぁ遠慮せず共に行こうかーっ!なぁに大丈夫可愛いボクとかわいいシアラちゃんがいれば百人力さっ!さぁ行くぞーー!」
「え、あのまって赫煌、引っ張ら――ひぅぅぅぅーーーー!?」
結局正義の味方は最後まで絶妙に話を聞かないのだった!
そんな感じで青髪の英雄に手を引かれ、次の戦場に赴く浅葱色のフェアリーの姿がいたのだそうな。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
雷陣・通
【2】
大物はこっちで相手だ、来いよ
視力で動きを見切りつつ残像を残すフットワークを生かして、左右に動き
二回攻撃を鎧無視攻撃を込めて当てていく
敵の攻撃にはカウンターと先制攻撃を合わせた雷の属性攻撃とマヒ攻撃を乗せたジャブで動きを牽制して回避へ
相手に「痺れる返し」が来ることを警戒させれば上等だ
そう、左右に振って、サイドからの攻撃を繰り返す
意識を左右へ逸らし、正面への警戒を薄れる時期を見計らう。
頭が動けばその時だ!
殺気を込めた残像をフェイントに懐に飛び込む
「正面、とった!」
『正中線五段突き』
「眉間」
「人中」
「喉笛」
「水月」
「金的」
「空手に勝ちたきゃ、人間構造辞めるところから始めるんだな?」
●疾風迅雷
敵の首魁まではまだ距離はある、しかし確実に近づいてはいる!
小鬼めらのとは言え王、それもこの軍の規模だ!
決して易い敵ではないそれ、その溢れ出んばかりの怒気を感じる――!
そこかしこから殺気が猟兵たちに向けられている!こちらを親衛隊たちが狙ってるのがわかるかのようだ――!
そして、それは来る!
「ぐるる――!!」
両腕に鉄の戦籠手を装備し鎧を纏う小鬼!それが茂みから、先を急ぐ猟兵達の側面から奇襲をかけるように飛び出し――――!!
瞬間、嵐の如き連撃――!!
「ぐぎぃぃ!?」
騎士鬼も咄嗟に防御!鎧と籠手とに阻まれ蓮撃は致命打とはならないものの、当然足は止まる!
「お前はこっちで相手だ――かかって来いよ」
鋭く相手を睨むのは胴着に身を包む少年、雷陣・通!息吹特有の虎めいた、唸るような呼吸と共に敵を見据える!
「ぐるぎ……ぎぎぁぁああ!!!」
親衛隊の身の丈は大人の人間大!正面にて対峙する、自分より遥かに小さいそれに生意気だとばかりに吼えつつ、右の腕を振りかざし抜く!!
「――セイリャぁぁあ!!」
「……ぐ、ぐぎっ!?」
体捌きで半身に開き拳を躱し、空いた的の側面に拳と膝の痛打!
雷撃を交え、そして衝撃の伝播も駆使した鎧通しの拳打蹴撃!
襲い来る痺れと痛みに鬼も呻きつつ、応酬として左で貫手を放つ!対する通は残像すら見せる足運びで難なく躱し、空いた脇腹に今度は痛烈な電磁掌底!更に素早く身を転じ振りかえるかのような勢いで肘鉄、肩甲骨あたりを狙った一撃!
「ぐひゅっ……!」
衝撃とばちりとした痛みに思わず肺腑から息が漏れる!痛みに耐えつつ拳を構えるも敵は既にするりと遠間へ動き身構えている!
「遅いぞ、もっと疾くかかって来い」
「ぐ、ぎぎぎ……ぎぁぁ!!!」
叫びを上げながらゴブリンが吶喊する!
まずは鉄砲めいた掌底の一撃!
振るわれたその一撃、繰り出された掌の逆側側面に滑り込む様に通が躱す!
「――シッッ!!」
雷の速度を以て回避、一撃、横腹へ雷撃を帯びた正拳!
「ぎぃぃ!!」
これをすんでのところ、拳で払うように庇い弾く!
触れた手が痺れを伴うものも、体に直接当たるよりはマシだ。
そして弾いた手、鉄の手甲に包まれたそれを通へジャブめいて繰り出す!
痺れはすれど振り抜く程度はできるとばかり!
「なんの――――セァァァァアッッッ!!」
横に流れるようにスウェー、その体の流れにのるまま後ろ回し蹴りを鞭のようにまた逆胴へ!
「ぎごぁぁ!!」
それをゴブリンもまた戦籠手で庇い防ぐ!
「……っ!!」
二度防がれ、敵も学習したらしきことを察する通。
「ぎひぃぃ……」
その顔を見てか、あるいは守り凌いだ故にかゴブリンもにたりと笑みを作る。
――布石はできた。
そんな思惑を顔には出さず、今一度通は構える。
自然体で、左右前何処にでも体を捌ける型で。
息吹で呼吸を整える。眼は目標のみを見据え、なお研ぎ澄ませる。
「ぐ、ぎぎ……!」
相対する騎士鬼とてその圧を感じる!
次の攻め手は何処だ、守り切りその首を捥ぐ!
両者の眼が鋭く互いを見合い――
――ドッッ!!
先に動いたのは通!雷霆の如き足運びで接敵!
対峙する鬼、狙いを何処か察せんと感覚を研ぎ澄ます――
――――殺気ッッ!!!
己の左右からひりりと射抜かんばかりのそれ!
狙いは両側面か!?いやそのどちらか!?真が判らぬ!
――ならば!!
「ぎぎぃッッッ!!!」
両脇をぐ、と固めカバー!!
痺れる一撃は覚悟の上で受けカウンターで仕留める!
刹那の間にそう判断し――
「正面、取ったッッッ!!」
それが真の通の狙いであった。
殺気は虚。左右に散らせた牽制の連撃は布石。
実となるのは正面吶喊、側面を守り空いたその正中線――!
「――セリャァァァアアアアア
!!!!!」
眉間。
人中。
喉笛。
水月。
金的。
人体、及び人の形を持つものら、五つの急所。
それが正確に、五つの打撃音が重なるかのような速度を以て敵を打つ。
雷速の拳は破砕音を伴い、鎧すらも貫いてみせて――。
どさり。
今際の際の言葉を呟くこともなく、それは倒れた。
「――空手に勝ちたきゃ、人間構造辞めるところから始めるんだな」
倒れた敵を見据え、後。
「――押忍ッ!!」
立礼を以て、死合は終わる。
大成功
🔵🔵🔵
クロゥ・クガタチ
【2章】【他の参加者との連携等歓迎】
たくさんのお供を連れてお出ましだね
誰かに囲まれていないと前に出てこれないとは、ずいぶんと臆病な大将のようだ
嘲笑い挑発するように言葉を投げかけるが、油断はしない
しっかりと確実に倒しにかかるよ
使うユーベルコードは『暗夜の凶眼』
不可視の攻撃でじわじわと削るよ
耐えることはできるかもしれないが、自分には見えず、いつ飛んでくるか分からない攻撃
『恐怖を与える』ことが出来れば、それで仕舞いだ
心を折り、無防備になったところに最大の一撃をお見舞いしよう
油断できない相手は、まず心から責める
ワシの得意分野さ
●不可視の烏
本拠地に近づくにつれ、不意をつこうとする暗殺者めいた輩もいた。
今茂みの中に潜んで、隙を伺うそれもそうだった。
走ってくる変わった男が先導し走ってくるのが見える。変わった鎧を身につけているらしいがどうでもいい。
首を刈ってやればどうせ死ぬのだ。
そう思い、低く低く身を潜め――敵が真横に来る、今だというその時!
「――甘いな小童」
「ぎ?!……ギッッ!?」
驚愕の呻き――後、茂みから弾き飛ばされる!
一度、二度と血を跳ねつつもまた地に四つん這いに低く伏せ、警戒するように身構える鬼。
誰だ?誰が何をした。それが判らない。
「ぎぃぃ
……!!」
出てこい、とばかりに唸るゴブリン。
「――――」
無言無声、音も無し。
代わりとばかり、
――――ギュオン。
「ぎ、ぎぁっ!?」
不可視の一撃が今一度加わる。
威力としては一撃で死ぬものではない、しかし攻撃の予兆すら感じられない。
それどころか、誰が攻撃したのかすら――!
――ザザッ
「ぎっ!?――ぎ、ぐげぇっ!?」
何かが駆ける音が聞こえた気がした。
其方を向く。誰もいない。
また不可視の殴打。
――ザザザッ
「ぎ、ぎぃ、ぐっっ!!?」
駆ける音。
再びの見えない打撃。
――ザザザ
――ザザザザ
――ザザザザザ――
「ぎ、ぎぃ……ぐぎがぁぁぁ!!!」
足音らしきもの……いや、風が吹く音か?
いや、誰かは間違いなくいる!!
何だ、何処だ!!何処にいる、何をしている!!
最早錯乱するかのように、ゴブリンは持っていた虎爪の如き二対の剣を振り回す。当然のようにそれは空を切る。
その間も、ゴブリンの哀れな背を、頬を、脛を容赦なく不可視の拳が殴る。
――フフフ
――――ハハハハハ
――――――ハハハハハハハ
「ぐぁ、ぎ、ぎ……ぎぃぃ!」
見えない殴打は鎧を纏うゴブリンに深刻なダメージは与えない。
しかし、それは心をへし折って余りある。
やがて聞こえた老人の嘲笑めいた声と、自分の周りを駆け抜け回るように立つ、ザザザという足音のようなものも。幽霊に魅入られてしまったかのような錯覚が、ゴブリンを襲う。遂にそれは。
「ぎ、ぎぃい…………ぃぃぃ……」
許しを請うように、頭を抱え蹲る。
それは怯える子供のように、或いは罪に赦しを乞う罪人のように。
そして、無慈悲に。
――――ズパァァン!!
曝け出された兜と鎧の隙間、それを正確に縫うように、太刀風が一風。
ギロチンめいて鬼の素首を落とす。
「――油断できない相手は、心から攻めると良い」
ざり。
首と胴とが離れた鬼の元、足音がひとつ。
「心が弱った相手というのは無防備になる。君のようにな」
――風化した体を駆使し、その一部でざわざわと彼の周りを駆け巡り。同じく風となった喉とその声とで、悪霊めいた嗤いを以てその神経が弱るのを後押しし。"暗夜の凶眼"――不可視の念動力を視線を向けた先に放つ攻撃を以て、じわじわと真綿で首を絞めるように鬼を責めた。
「――が、一番の君の敗因は、我々を相手に油断した事だ」
それを為した灰髪青髪の壮年の男――
「――授業料は命で結構」
クロゥ・クガタチはそう締めくくる。
「さて、次だ。浅知恵の働く小童はまだいるらしい」
脚を風と変え、飛ぶように、吹くように。かつてヴィランだった老獪なる男が、寝首を掻かんとする小鬼めらの寝首を掻く為、戦場を飛び交う――!
大成功
🔵🔵🔵
レイラ・エインズワース
【2】
チーカサンと(f00890)
二対二の勝負
相手も強敵だケド、私たちのコンビネーションも負けないんダヨ
チーカサン、前任せるネ
私がするのは魔導士の相手
焔のランタンを揺らして、【高速詠唱】から【全力】の魔力を籠めて
冥府の焔をぶつけるヨ
敵の焔は【オーラ防御】で軽減して、【生命力吸収】で回復
フフフ、炎の使い手同士負けられないカラ
なんていいツツ、今度は薙ぐように炎を騎士と魔導士に
視界を塞いで見せつつ――
びっくりシタ?
混ぜるように放つのはUC
冥府の腕で動きを封じて、チーカサンの狙いをサポート
過去は過去に帰るトキ、ダヨ
サァ、チーカサンお願いネ!
カッコいい剣士のすごいトコいっぱい見せテ!
アドリブ歓迎ダヨ
エスチーカ・アムグラド
【2】
レイラお姉さん(f00284)と!
剣士と死霊術士、騎士と魔導士、どっちのコンビネーションの方が上か……勝負っ!
チーカは騎士がレイラお姉さんの所に行かないように足止めします!
チーカは飛んでいますから動きも自由自在!【空中戦】
魔導士を倒しに行こうとしたら騎士も迂闊には動けないかなーって!【おびき寄せ】
でもでもっ!チーカの本当の狙いは魔導士っ!
レイラお姉さんの攻撃で騎士が怯んだら魔導士に全力の烈風を!【属性攻撃】
その為にもレイラお姉さんが魔法を使える隙を……
一瞬でも騎士と魔導士両方を相手しないとかもですね!
えっへへー!お任せくださいっ!アムグラド家の剣士の腕前、ちゃーんと見ててくださいねっ!
●風の剣士と死焔の外灯
ぱたりと不意打ちめいた敵の横入りは途絶えた!
途中まで同行し、いつのまにか進む猟兵達の群れを離れて潜兵遊撃を担ったクロゥのお陰だ!
しかし、まだ敵は湧き出るように襲い来る――!!
「ぎぃぃ!!」
「ぐるぁ!!!」
横入りが無駄なら正面からとばかり、次にやってくるのは炎魔導と騎士の組み合わせ!
「っ! チーカサン!」
「……!はいっレイラお姉さん!皆さんっ!」
声を上げたのはレイラ・エインズワースとエスチーカ・アムグラド!
エスチーカが佩いていた宝剣を抜く!ぶわぁぁと風が吹きゴブリンと猟兵との間を阻み断つようにする!
「ここはチーカ達にお任せくださいっ!お二人は先に――!」
「……っ!」
「行くぞロクッ!先に親玉を倒しゃあ万事解決だ!!」
「……、わかった」
ざらりと告げる猟兵が、橙の尾のような三つ編みを揺らしつつ奥へと行く。サイボーグのカウボーイもそれに続き――
「「ぐるる
……!」」
「……サテ、じゃア協力して行こう。私達のコンビネーション、見せてあげないとネ」
「……勿論ですっ!行きましょう、レイラお姉さん!」
二匹のゴブリンに、二人の少女らが対峙する!
先手は騎士のゴブリン!華奢な体躯を見て与し易いと断じたか、直裁にレイラめがけて突き進む!
「させませんっ!!」
それを阻むはエスチーカ!ひらりと舞って宝剣グラディオラを一振りすれば風の一太刀!
「ぐぎぃぃ!」
持っていた盾で其れを防ぐゴブリン!それだけで敵の身を切ることは叶わずとも牽制としては十分に機能した!鬱陶しそうにエスチーカを見遣るも、その刃が後ろにいる炎魔導を狙ってると判ればそれ以上攻めるわけにも行かない!騎士はターゲットをエスチーカに切り替える!
炎魔導はどうか?彼奴は杖を振り、騎士が狙いそびれたレイラ焼き払わんと呪を練り上げては炎弾を呼び寄せる!
「ぐげぎぃぃ!!」
十、二十と空を浮いては燃え、飛び交い死霊術師を狙う炎――!
――カラン、コロン。
そんな音と共に、めらりと濃紫色の炎が宙へ!
それがレイラを球状に包み、迫り来る炎弾を防ぎ、触れるや否や己のうちにと吸い込むように掻き消す!
「ごぎぃぃ
……!!」
「ダメダメ、簡単にはやらせてあげないヨ?」
優しげな笑みなれど、その冥府の火は油断ならず!
「同じ炎使いとして、負けられないからね」
屈託無い笑顔と共、振るわれるのは恐ろしきまでの昏き焔!敵を真似るかのように、レイラも二十余に渡る火の玉を呼び寄せ炎使いの鬼へと打つ!
「げぎぃぃ!!」
炎魔導もそれに負けじと炎を飛ばす!中間地点でぶつかり合い爆ぜる火の玉!
降り注ぐ火の粉の元、大小の騎士の剣戟も火花を散らす!
「ぐるぎげぁぁ!!」
「ふんッッ!」
ゴブリンの一閃、小さきエスチーカの体など易く切ってみせるものだろう!
しかしエスチーカは風纏う剣閃を以てこれを弾いてみせる!
「ぐ、ぐぎっっ!」
「お返しですよっ!」
返す刀で振るわれるエスチーカの斬撃!
「ぐぐが、ぎぃぃ……っ!!!」
どうにか盾で吹き渡る鎌鼬の如きそれを凌ぐ!
報復といわんばかりの凄まじい剣戟!それをひらり、難なく躱すエスチーカの太刀風!剣での戦いはエスチーカに優位に進む。二度、三度とどうにか盾と剣で凌ぐも、"風"の刃は目では見えない故に対処がしづらい!
「――えぇぇぇぇいッッ!!」
故に、それは四度目で騎士の鬼の頭を捉え――!
――ガギィィッ!!
「ぐぎぃっ!!?」
兜を被っていた故に首を取る事は叶わなくとも、頭を揺らがせ一拍、隙を生む事は叶った!
「隙あり――ッッ!」
――――ヒュンッッッ!!
剣が一瞬のうちに四度振るわれる!
それが飛ぶのは炎魔導の方、ヒュンと鎌鼬めいて斬撃が飛び、彼奴の呼び寄せていた炎を消す!
「がるぎぃい!?!」
レイラへと飛ぶ炎もまた消え、それが僅かに猶予を生む!
「今です!レイラお姉さんっ!」
エスチーカの合図!
それを元、レイラが目元を細めて微笑む。
「――ん、任せテ」
詠唱。紡ぐは呪、命を刈り取る為の句。
カラン。ランタンが空々と音を立てて。
――ごおおおぉ!!!
冥府の炎が二匹のゴブリンへと燃え広がり、その視界を遮る。
「「ぐ、ぎぃぃ!?」」
レイラも、エスチーカすらも焔の壁に阻まれゴブリン達からは見えない。
「――風の精霊さんっ!チーカに力を貸して下さい!!」
――ヒュオオオオオオオオ!!
妖精の呼び声に応じるように風が唸る!百と五十に近き数の風の刃が竜巻の様に唸流のが聞こえた!不味い!!炎の壁を突き破ってでも逃げようとするゴブリン達――だが!
――ガシッ。
「「ぐ、げぎぃ!?」」
紫焔より出ずるは土気色の腕!それがわらわらとゴブリン達を絡め取る様に掴み捉えて、そして焔同士寄り添い二匹の動きを封じつつ並べる!その様はまるで十字架に磔にされた罪人の如し!
「フフ――仲間達が呼んでるネ。過去は過去に帰る時だよ。じゃア……」
にこり。死霊術師は可憐に微笑み、妖精に告げる。
「チーカサン、カッコいい剣士の凄いところ、沢山見せてネ」
それに妖精剣士も、元気に応じるのだった。
「えっへへー!任せて下さいっ!アムグラド家の剣術の腕前、ちゃんと見ててくださいっ!」
屈託なく笑うエスチーカ、それが剣に纏う風がビュオオと吹き荒れた!
「ぐ、ぐがぉぁぁあ!!!」
「ぎ、ぐがぁぁぁ!!」
騎士の最後の叫び、そして炎魔導が見当違いな方向、上空へと炎弾を飛ばし爆ぜさせたのが最後。
"烈風"の名に相応しき風の刃――それが二匹を襲い隈なく貫き裂く!!!
「「ぐ、ぎぁぁぁ――――っ
!!!」」
鎧すらも裂き、細切れの肉片となり、それらは斃れた。
「……おぉー、すごいすごイっ!とっても強イネチーカサンっ!」
ぱちぱち、と手を叩きつつ褒めちぎるレイラ。
「……え、えへへ、それほどでもぉー、や、やだなぁチーカ照れちゃいますぅ……えへへ」
いくら素晴らしき剣士であれ、年相応の少女のエスチーカは褒められ大層に照れる。
そんなエスチーカを可愛らしいナと見つつ、レイラは先を行った猟兵達が進んだだろう先を見る。
「……さ、そろそら行こッカ。皆が……」
そして、自分の顔、その真横を飛ぶエスチーカを見て
「あ」
「?……どうしまし……ぇっ」
言うより早く、レイラの手がエスチーカを庇うように包む。
そのレイラに向かって――正しくは、レイラが庇ったエスチーカに向けて。
矢の如き速さで、槍が飛来するのが見えた。
●遺言
"此処に敵がいる"
そう叫ぶ仲間の声がいた。
火が上がった。その後に、断末魔が。
仲間は死んだようだ。憐れなり。
だが、その命の最後まで敵を討つ為に声を上げ力を使った。
ならばそれに応えるべきだ。
音を立てず忍び寄る。槍を引き絞る。
あの小さい妖精がいい、いや奥の三つ編みと重なるように射てやろう。
うまくいけばどちらも死ぬ。
ギリリ。槍を構え。
三つ編みが気づいたらしい、もう遅い。
投げた。
寸分違わず飛ぶ、三つ編みが庇う。
妖精は無理か、まぁいい。
頭蓋を貫いてあの三つ編みは死ぬだ――――
BBLLAAMM。
●生き方は簡単には変えられないから
――槍を持ってこっちを狙ってるゴブリンがいた。
危ないと、言い切るより早く手が伸びて、守っていた。
どうせ、この身体は紛い物で。
カンテラが壊れなければ、自分は死なない。
だから、頭が砕けようと平気。
それより、この小さな可愛らしい、妖精サンを守ろうと。
勝手に、身体が動いて。――後は固く目を瞑って、痛みが来るのを待って――
BBLLAAMM。
――どさり。
「――――、?」
――そうして待っていても、痛みは来ず。
聞こえたのは、何かが爆ぜる様な音と、誰かが倒れる音。
「……レ、レイラお姉さん……く、くるし」
「え、アッ!?ご、ごめんネチーカサンっ!?大丈夫カナっ!?」
わたわたとエスチーカを開放するレイラ。
「けふっ……だ、大丈夫です……えぇと」
周囲を見渡すエスチーカ。辺りには、何やら砕けひしゃげた槍が一つ。何かに穿たれたようになっている。
何処か遠くを見ているレイラに、エスチーカが話しかける。
「……もしかして、チーカ、レイラさんに助けられました?」
むぅ、とした顔で見据えるエスチーカ。ちょっと怒っている様にも見えるエスチーカに、レイラは目を向けつつもほんのりとぼけた様に。
「えぇと、気のせいだと思うヨ?うん、きっとそう。……だって」
「だって?」
「あ、ウン。ほんと、何でもナイヨ?ほらそれより、皆を追わないト!」
「……なんか怪しいですっ!何言おうとしたんですかレイラお姉さんー!!」
そんなふうに、わいのわいのと誤魔化したり誤魔化されまいとしたりしながら、二人はその場を後にする。
――――だって、助けてくれたのは――別の人だもん。
――――ネ?
●それでも傷つくのは視たくないから
高台から、二人を見据えるのはひとりの男。
優男にも見えるその男の目は、普段より真剣みを帯びていた。
眼科には親衛隊、そして王がいるらしき草地。
戦闘音がそこかしこで聞こえる。
目で以て誰がどう戦っているかも視える。
――誰の元に、何が忍び寄っていたかも。
手にしたアサルトライフルから煙が上がる。
撃ったのは二発。
知り合いを狙う槍を撃ち弾き、もう一発で鬼の頭を弾き飛ばした。
「――――、 っ」
大した仕事ではないはずなのに、溜息が漏れた。
何処かホッとした様に息を吐く。それを、息を吐いた本人は自覚するかはさておき。
――いつかの様に、自分が怪我をする事もなく。
――彼女が怪我をする事もなかった。
――いつかよりは、マシに守れた、そう思う。だから。
「――――、よかった」
思わず、漏らした言葉を。
"らしくない"とは、
知りつつも。
その想いを、一度沈め。
けれど水面下で、それはぷかぷかと、
沈み切らずに、浮き沈みを繰り返しながら。
――男は、眼下に広がる戦場を、ただ見守る。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ミーユイ・ロッソカステル
【2】
ある程度、戦況が進んだ後に幹部級の敵を見定め
……あれは、邪魔ね。さて、どう排除したものか……あぁ。
と、思い返すは、先ほどの斥候たちの下卑た視線
下劣な亜人らしいとはいえ。……ま、利用させてもらいましょうか。
歌うのは、誘惑の旋律からの派生でアレンジを加えた「眷属のための葬送曲」その、第2番
目覚めよ 我が子よ 我を欲する勇士達よ
武勲を示さば 褒美を与えん 我を求めよ さあ立ちなさい
――死してなお、欲望に突き動かされる憐れな男(オス)たち。
さぁ、自らの手で同胞の首を獲りなさい。
いい子には――ご褒美も吝かではなくてよ?
なんて、与える気もない褒章でゴブリンの死体を煽り立て、眷属として使役しましょう。
●
王の膝元に向かう猟兵は残り二人!
しかし対するゴブリン、その親衛隊の数は多い!
少なくとも二人で相手どれる数ではないが――!
だがそんな折、ふと後方より地鳴りの音がする!
「――っし、援軍が来たな!!いよいよ最終戦だぜチューマァ!備えはいいかぁ!?」
溌剌と告げるカウボーイ!
それに従い、燃える髪の森番も脚を早める!
その後ろから押し寄せるのは――!
●夜姫の唄は屍をも惹き連れ
時間は少し巻き戻り、かつ二人が進む地からやや離れる。
「――ひどい有様ね?」
日傘をさし、歩くのはミーユイ・ロッソカステル。
色素の薄い肌に一差したりとて日を通すまいと気を使いつつ、他の猟兵らよりはだいぶ遅れて歩んで行く。歌を口ずさみながら。
足元に転がるのは無数の骸。数えるのも馬鹿馬鹿しい、一体幾匹――いや、幾百匹に登るのか。村で屠った数も含めれば、その上の桁をゆくだろう。
「全く、よくもこんなにも――歩くのも一苦労だわ」
可憐なそのドレスに汚れでもついたら大変だ。気をつけて歩きつつ――とある猟兵、口の達者なサイボーグの言葉を反芻する。厄介な親衛隊、それらを押し避け王にまで刃を届かせんが為。
「それじゃ、貴方たちも手を貸しなさいな?」
夜の歌姫は、高らかに謳う。
《――目覚めよ 我が子よ》
《――我を欲する勇士達よ》
……むくり。
紡がれる、甘くも高らかなその声、歌。
それを耳にした、歌に触れたゴブリン、その雑兵達が立ち上がる。
身体の一部が千切れ、斬られ。
落雷に撃たれて焼け焦げ。
心の臓を須らく貫かれていても。
《――武勲を示さば 褒美を与えん》
《――我を求めよ さあ立ちなさい》
頭さえ、耳さえ残り、それに歌声が触れれば!
失った命などこの歌の前には些事とばかりにわらわらと立ち上がる!
"眷属のための葬送曲"、その第二番!
屍と化したものどもを歌にて魂を同調させ、己が眷属と為す調べ!
――ぎ、gi、ぎぁa――
呻く配下が傅く様に、ミーユイへ頭を垂れる!
その数、百や二百では効かぬ!
道すがら、全ての動ける屍を眷属としたのならばこの数も当然だ!
――死してなお、欲望に突き動かされる憐れな雄たち。
其れを猊下し、ミーユイが告げる。
「さぁ――自らの手で同胞の首を獲りなさい」
鈴の音めいて響く可憐なその声は、哀れな屍鬼どもになんと甘やかに聴こえた事か。
「いい子には――ご褒美も吝かではなくてよ?」
にこりと、微笑む桃色の女は。誰が見ても、当然屍鬼が見たとて魅力的に過ぎるのだった。
――Giあァguああァ亜――――
悍ましき死者の呻きを上げ、それらが突き進んでいく!
――我らが姫の為に元同胞らの首印を!!
「――まぁ、褒美は嘘なのだけど」
遺骸の消えた草地で、誰にも聞かれぬままに歌姫は嘯く。
どうせ一日経てば元の木阿弥ならぬ只の屍だ。
だがかくも麗しの姫に嘘であれ褒美について唆されて、奮わぬ雄などいないのだった。
「哀れを覚えないでもないけど――精々役に立って頂戴?」
死した愚かな小鬼どもを配下とし、こうして姫の手先が王への謀反の一手を紡ぐのだ。
大成功
🔵🔵🔵
●王手
愚かしい同士討ちが始まる。
波として押し寄せた、既に死したる小鬼どもが親衛隊を取り囲み押し潰す様に身動きを封じ、先を進む猟兵の道を開く――!!
――――目の前には、王の姿!!
ヴィクティム・ウィンターミュート
【首獲り戦】【2】
──首級を殺りたい?
最高だね
乗った
オーダーは一つ
「勝て」
そんじゃ、俺の相手はお前だ…騎士様よ
とはいえ…"勝つつもりはない"
俺がこんなゴリゴリの戦士に勝てると思う?
無理だ
だから"負けないだけ"
【挑発】と【フェイント】を繰り返してヒット&アウェイ
身体能力増強に各種サイバネを【ハッキング】、オーバロード
さて、"布石"は蒔いたがΩは気づくかな?
──チル
想定通りだ
上手く踊れよ?俺の盤上でさ
──あぁ、そろそろ焦れると思ったよ
勢いを押し返す王の号令が必要だものな
発動予知、鼓舞を反転
増強を減退に変更
お前は「王」だが「指し手」じゃない
だからこそ、支配者である俺には勝てないのさ
王の首を殺れ、ロク
ロク・ザイオン
【首獲り戦】
【2】
ヴィクティム。
(こういうとき、何て言うんだったか)
("色男"に聞いた気がする)
おれを、踊らせてくれ。
「ちゅーま」。
そっち、任せた。
(王の前を塞ぐ大きいのはヴィクティムに任せ
真の姿を解き放ち身体強化
ヴィクティムが騎士の気を引く間に【地形利用、ダッシュ、忍び足】で野伏せて駆ける。
援護狙撃を更なる目眩ましに
烙印刀、剣鉈《閃煌》二刀構えの【早業、2回攻撃】
肉薄し「燹咬」で狙うは、王の首だ)
怒っているな。
苦しいな。
病は。
ちゃんと、お前ごとすべて灼いてやる。
森に、還れ。
……ヴィクティム。
手伝ってくれたの、誰だろうな。
ヴァリアブル・タイプオメガ
【2首獲り戦】
ふぅん?アイツ……いるんだ?なら本気出さないとね!
顔も知らない奴に想いを馳せる。超ムカつくやつだ。絶対見返してやる!
蒐集された叡智を起動!右手をスナイパーライフルに変形させ、2人を援護してやろうかなぁ……ってボクの壊れてるじゃん!?いや、アイツなら……一章でヴィクティムが撒いた偵察ドローンをハッキング、それを眼にして2人を援護するよ
アイツはArseneの味方かな?俊敏で柔軟な動き……いい業物もある。天才ってやつだね!まぁ合わせてみせるさ!高性能だからね!
※ヴィクティムの顔はなんだかんだで見えません
【詠唱の●●はMSの好きな単語にしてくださって構いません、例:スナイパーアームなど】
トルメンタ・アンゲルス
アドリブ歓迎
【2】
さて、本星が来ましたか。
ここを潰せば、一先ずの安息が訪れるんですね。
さぁ、行きましょうか!
大将首を確実に落とす。
その為に俺が確実にやれる方法は、敵の認知範囲外から、対応不能な速度の一撃を叩き込む!
ArmsExtend、始動。
『Buildup――Thorhammer』
右足を、「蹴り」に特化した強化装甲に変異させます!
そして、クラウチングスタートの体勢を取り、OverDrive発動!
『OverDrive――Thunderbolt』
ブースターと右足に全パワーリソースを収束!
目標、敵首領!
風力、温度、湿度、一気に確認完了!
限界までチャージし、最大開放!
追撃のォ!
ブリッツランツェ!!!
鳴宮・匡
◆アドリブ歓迎
集団を黙らせる一番いい方法は
――勿論、頭を潰すことだ
村にある高所か、距離が問題なければ山中の何処か
「敵を射程におさめられ」かつ「相手から妨害されにくい」位置を取る
視覚・聴覚に意識を多めに割り振って
戦場の様子や交わされている会話が拾えるよう
UC【千篇万禍】での狙撃による支援を
首魁へ断続的に攻撃を加え、指揮系統を乱す
特に、王が配下を鼓舞しようとするタイミングは積極的に妨害する
わざわざ敵を強くしてやることはないしな
……副次的には、無茶をしそうなやつへの援護も兼ねる
見知った顔も多くいるし
無茶しそうなやつも覚えがあるからな
捕捉されないよう数発ごとに移動しながら
援護と妨害を継続して行うよ
●
近衛の兵どもは押し寄せてきた雑兵どもに押し込められた。
あれらは手が千切れ、焼け焦げ、腹から腑のはみ出たものとている。
生きてはいない、操られている。
なんたることか、生きて役にも立たぬ、さらに死んでまで我が邪魔をするのか!!
『グルル――!!』
ならば親衛隊でも選りすぐりの者ら!!
剣を取れ!敵を屠れ!!
見事やって来たその痴れ者"たった一人"!
見事に首を刈ってみせ――
『――ゥ゛ 』
――――BLAM
!!!!!!
●
王の膝元、そこにいたのは十匹の近衛騎士!
文字通り最後の、殿としての親衛隊らだ!
凡そ一体一体が猟兵と互角に戦いうる強さ、つまり猟兵十人に当たる戦力!これまでと犇くほどにいたゴブリンどもの量と比べれば雀の涙だが、一人で立ち向かうには部が悪い数だ!
「へ、猿山もすっかり禿げたってぇわけだ腐れウィルソン!」
だがそんな状況にも関わらず、自信満々に啖呵を切るのはカウボーイことヴィクティム・ウィンターミュート!
『グルル――!!』
「がる、ごるるる――!!」
怒る様に唸るゴブリンの王!
王の周辺にはぐるりとそれを取り囲む様にいる五匹の近衛騎士らがいる。そしてその周囲、残りの五匹の親衛騎士が遊撃手めいて陣を作る!
王に向かい無礼にも汚い言葉らしいものを吐き捨てるサイボーグに、怒りを示す近衛騎士が吼えて迫る!
「 ッ、とぉ当たるかよ!!」
瞬間的なサイバネ強化!代償に脳が熱くなる感覚を感じつつも、難なく剣を掻い潜るヴィクティム!
「ぎ、ぎぃがっ!!」
「ぐるる、ぎぃ!」
他にも二匹のゴブリン騎士が接敵、ヴィクティムに刃を向けるも――
「へ、てんでスロウリィだなッ!」
掠りすらさせない!十匹いる鬼どもがただ攻撃をしたとて難なく回避するだろう。少なくとも鬼らにはそう思わせるに足る動き!
面倒だ。
王はそう思う。
それが自然だ。
故に、"激励"を以て配下どもを強化せんとする。
『――ゥ゛ 』
あまりにも分かりきっていて。
――――BLAM
!!!!!!
だからこそ、端役には赤子の手を捻るよりその対処は容易かった。
……ザザッ。
「Chill.ナイスフォロー、チューマ」
●Zero Million
……ザザッ。
《Chill.ナイスフォロー、チューマ。そのまま援護を頼む!》
「了解。――あんま無理すんなよ」
《応、それなら頑張って俺を守ってくれよ?信じてるぜェ!》
「――――」
……ザザッ。
最後に溜息混じりに息を吐き、鳴宮・匡は通信を終える。
側にあるのは"天の眼"一機。通信機がわりに飛んでたそれは、役目を終えればまた何処かへと飛んで行った。何処へ行くのか――いや、"どうでもいい"。
どうあれ、役割を全うするだけだ。
トリガを引く。
五匹いたゴブリンの王を囲う騎士、その一匹の頭が吹き飛ぶ。
激励の声が驚愕に止み、一体何処からと喚くのが見える。
特段躊躇いも何もない、今日一番の面倒な案件は、先程既にクリアした。
恙無く成し終えた、だからそれ以上は考えず。
――そうして余計な想いは"水の底に沈めて"。
BLAM!!
戦地を見渡す崖上、そこから援護射撃を繰り出す匡は引き続きアサルトライフルからの射撃を続行する。
観察による行動予測の元、撃たれる弾丸。それは吸い込まれる様に敵の頭を穿ち破砕していく。それを、あの王とやらが何かを叫ぼうとする度に。
ついでに、近接戦闘はどちらかといえば専門ではない、チームメイトとも言うべき青年を援護する様に。
BLAM!!BLAM!!
ヴィクティムを襲う近衛騎士鬼の腕を穿ち、武器を噛み千切るように銃弾で抉り。
そうしてサポートに専念していく。
"激励"をする事もできず、王の鬱憤は溜まってくだろう。
そして、配下を殺しすぎもしない。
信頼にたるチームメイトの仰せのままに、必要な手を"詰め"ていく。
「これでいいんだろ?後は任すぞ」
そうして、"凪の海"は独りごち、銃を下ろす。
●"Reverse"
何処からとも無く響く音、それが鳴るたびに配下の頭が吹き飛ぶ。
"激励"を上げんとするごとに!
なんたる無礼か!!
この我が声を封じようなどと――!!
――そのように考えてるのが見て取れる。
「いいねえ、そろそろ堪忍袋の限界か?」
へ、と笑いつつヴィクティムがそれを見る。
時に障壁を展開し、時に風のように駆けながら、親衛隊らの猛追を躱してみせつつ、その時が来るのを待つ――!!
『グルル!!』
「「「「「「ぎ、ぎっ
!!!」」」」」」
小さな唸り、それに応じ残った近衛騎士らが王の前に全て集まる!
『グガァァァァァァァァア゛
!!!!』
近衛騎士らを壁として、ついに王は"激励"を出す。それは須らく、騎士を、魔導師を。配下たちを強化する筈で――
――だがカウボーイは、にやりと笑ってみせる。
「――掛かったな、二手目だぜ。――発動予知」
――ギュィィィイイイイイイイン!!
ヴィクティムを中心に電子パルスが広がる!!
それはゴブリンキングを、そしてその近衛騎士らを遍く伝わる!
結果、それが齎すのは――!
「ぐ、ぎ、ぎぃ……っ!?」
ゴブリンらががくりと膝をつく!
それはまるで自らが纏う鎧の重さに押し負けるかのよう――!
『ギ、グル――!?』
何かがおかしい!?
なんだ、こんな筈では!そうとでもいいたげに王は喚く!
パルスを発したヴィクティムはまたも不敵な笑みを浮かべる!
「どうした?取り乱しちまって――まるで盤面が"ひっくり返った"みてーだぜ?」
そう、ひっくり返った。他ならぬこのハッカーがひっくり返したのだ!
攻勢プログラムの名前は"Reverse"!
"激励"による増強を減衰に変更するウィルス、それを撒いて親衛隊らを弱らせた!もはや近衛騎士らは肉壁にすらならぬ!
じり、と近寄るカウボーイ!
『グ、ギ――!!』
「さぁ、次の手を指せよ」
一歩、二歩と威圧をするように。
『グ、ル、ガァァァァア
!!!!』
――痴れ者が!!!
そう吼えるかのように王が叫んだ!
この程度でまだ負けぬ、退かぬと!
"影"からまた配下を呼び寄せる――!それはまたしても数多に蔓延り蠢く雑兵ら!一度に呼び寄せる数は百を超え、それが壁となり王を守りつつ!更にヴィクティムにその命を潰さんと迫る――!
だが。
「――三手目だ。来いよ」
端役は、それに怖ける事はない。
――ただ、彼方、村の方を一度、わずかな間だけ見遣るのみ。
●Back-log
王が攻めてくる、その少し前の話。
とある電脳使い達が通話した、もう片方側からみたやりとり。
それは以下のようなものだった。
――ザザッ。
《"Ω"、聞こえてんだろ?》
唐突な通信。それが飛ばしてたドローンを介して届く。
彼女とて電脳のプロフェッショナル。
だのにそのプロフェッショナルの易 通信網に易々と介入する手腕。
そしてなんとも横柄なような態度、呼び方。
察しはすぐついたのでムっとした声で返した。
「なんだよ"Arsene"、こないだの事ボクまだ忘れてないからな!?」
《お手紙が気に入んなかったか?ちょっとした茶目っ気だろ》
「ぅぎぃぃ!本題!!」
《おぉ、そォだ。腐れウィルソンどもが来るぞ。主役どもに伝えてやれ。"殲滅(フューミゲイション)"の時間だぜ――!!》
不敵な笑みを浮かながら宣っただろう言葉が通信網を通し届く。
そして――。
《ってな!!――と、それとだ》
顔も知らないハッカーとのやりとりは、もう少しだけ続く。
「なんだよ、まだ何か?敵が攻めてくるのは皆に伝えるけど――何さ?」
別に大して相手のことが好きでもない"Ω"はつっけんどんに聞く。
《――おう、どうせだから手伝えよ》
「えぇ、やだめんどい――ってか何で僕が君の事手伝わないといけないワケ!?」
ごもっともと言えよう。仮にも負けた相手だ、しかも性格もヒネてていけ好かない。が――。
《小鬼の王気取りが慌てふためく面はお好きか?》
「――――」
誰かをおちょくるのは、嫌いではなかった。
「へぇ?続きを聞こうじゃんか」
そうして、"Ω"も"Arsene"の計略に一枚噛み――
●Thor hammer
「うぐぎぎぎぃぃぃぃ
……!!!」
その結果がご覧の有様である。
ゴブリンめいた呻きは断じて小鬼らのものではなく、ヴァリアブル・タイプオメガのものだ。
中空に浮かぶ電脳スクリーンを弄り回しつつうぎうぎと鳴いている。
その彼女の側、話しかけるのは蒼色の機械装甲を纏う戦士。
「あの――大丈夫です?」
トルメンタ・アンゲルスだ。どうにも具合が宜しくなさそうに画面とにらめっこするヴァリアブルを気遣いつつどうしたものかと立ち尽くす。
「大丈夫だとも大丈夫さ大丈夫にしてやるさぁ!!うぎぃやっと見つけたぁ!!」
ッターーン!!
画面を強力にタッチ!
そうしてスクリーンにはあるものが浮かぶ!
「あ、繋がりました?目標地点ですね――!」
「あぁそうともっ!しっかり見えるぞ、王もばっちりだ――!」
空に浮かぶ画面、そこに映されたのはヴィクティム達がいる王の御前!
正確には写っているのは王の背中なので"御前"ではないが些事だろう。
ゴブリン達の背後を取るように配置された"Argos Eye"をハッキングして得た視座だ。
がさり。
視座がゆらめき、ちらりと赤く燃えるような髪が見えた。
「――準備もできてるみたいだね」
それを認めたヴァリアブルが言う。
"Arsene"らしい奴と一緒に戦ってた奴だ。
カメラでちらりとその俊敏で容赦ない一閃を観た。
「よし、目標地点も確認できた!これで行けるぞ!」
「ええ、ですね――ところでナンですけど」
「ん?」
トルメンタの問いかけにヴァリアブルがなんだと目を向ける。
「カメラ、自前ので良かったんじゃ?その辺飛び回ってましたけど」
そう、その辺を。詳しく言うなら、"村の中"を。
遅れたがここがどこかを改めて言おう、未だ"村"に二人はいる。
入り口付近、先頭箇所からは遠く――凡そ3キロ超離れた地点だ。
トルメンタの言う通り、ドローンはその辺りを飛び回っている。
残党のゴブリンが身を潜め、不意打ちで襲って来ないかを警戒しての事だ。
適任がヴァリアブルだったので買って出たという経緯もある。
トルメンタが言うのはこれを使い視覚確保すれば良かったのでは?という事だが。
・・・・・。
ピキィッ。
(あっ)
トルメンタ、察する!!
ヴァリアブルの顔に怒りマーク!あんまり触れては良くない奴だった!!
「なんでだろうねぇそれがドローンが村周辺しか飛んでくれなくてねぇ
!!!!!壊れちゃったみたいでね
!!!!!」
「アッハイ」
ブチ切れである。
なおだいたいどっかのカウボーイが通信と一緒にこっそりと、ハッキングでそう調整したからってのが理由である。
ぶっちゃけ敵情視察のついで、腹癒せにいけ好かないハッカーの顔くらいこっそり見てやろうかと思ったが自前のドローンは飛んではくれなかった。おかしいとドローンのコードを漁ったら"電脳使いがリアルの顔なんて晒すと思うか?"なんて一文が紛れ込んでた。地団駄を踏んだ。
防衛戦の際、赤毛の森番と一緒にいた時もどうやら変装してた姿らしいし結局本当の顔は見れてない。今ハッキングしてる"Arsene"のドローンとて絶妙なアングルでその主が映らないようにされている。
いつか痛い目見さす。おちょくり好きの少女AIはおちょくられ続けた故にそう思うのだった。
「ああもういいから!!ほら時間ない!やるよっ!」
「おっと、アイマム!」
スクリーンに映るのは叫びをあげんとするゴブリン!その影が蠢くようにしている!雑兵の群れの召喚予兆だ!
しかし敵との距離は3キロ超!どうするというのか!
まずヴァリアブルが動く。腕を前に突き出し宣言!
「ヴァリアブルネットワーク接続!ウェポンデータダウンロード……システム最適化……OK!」
ピピッ!ギュイイイイイイイイイン!
電子音と共に腕が変形!電脳の世界からパーツを呼び寄せ、望むがままに形を変える!そうして出来上がるのは――!
「"カパタルトアーム"展開――!こっちは準備いいよ!」
カタパルト
射 出 装 置!搭乗したものを発射する為の装置が顕現する!
そして、一方のトルメンタはそれにRide-On!
「ArmsExtend、始動」
《Buildup――Thorhammer》
流星の如きライダーの言葉に続く機械音声!
ギ――ガガッ!!ガキィィン!
起動音を立て変形する超速戦士の片脚!
バチリ、スパークを放ち発光するそれは宛ら雷神の大槌!
《OverDrive――Thunderbolt》
ブースターが唸り、尚スパークが激しく光る!!
発射台の上、トルメンタはクラウチングスタートの様にしゃがみ、構えた!
「いつでも飛翔べるぜ!」
トルメンタの宣言!
「OK!目標地点確認、軌道算定――発射準備完了――!」
「風力、温度、湿度、確認完了――!」
「目標:敵首魁!」
「及びその護衛!――Ready!」
――バリッッ。雷音が一つ、弾け。
「「――――Go
!!!」」
――――――――ヒュッ、ゴォォオオオオオオオオオオオッッッ!!!
ジェットの如き勢いでそれは飛翔する。
流星脚の持ち主、それを弾丸に見立てた"狙撃"!
射出台の勢いに乗ったそれは、本来の射程より長く、勢いはより増して――!!
●checkmate
圧倒的な量、それによる壁。そして、敵を屠る剣でもある。
量とは暴力だ。何もせずとも良い。ただ人の子程の肉礫がそれに降りかかり、押し潰すだけでも命を潰すにはあまりある暴威だ。
この土壇場で呼び寄せた肉壁ともいうべき戦奴ども。"激励"とて呼び寄せたばかりの此奴らにはかけていない、故に弱りもしない。崩れる様に、幾百にも及ぶ雑兵らは憎々しい目の前の痴れ者、その男に殺到するであろ――――
――――追撃のォォ
――う?
「ブリッツランツェェェエエエエエエエエ――――ッッッ!!!」
――ズッッ
――――ドォオオオオオオオオオオン
!!!!!
隕石の如き一撃!!
蒼雷を纏うその一撃は肉壁どもを融かすように蹴り砕き蒸発させる!!
突き刺さる蹴り足、そこから生じた衝撃波は暴風めく!
『ギ、ギガ――ギィィィッッッ!?!』
ゴブリンの王とて叶わず吹き飛ばされる!二度、三度地を転げて――幸いと言うべきか、戦奴らと残った近衛騎士ら、それらがどうにか王を守るが故に、王自身に対した傷は残さぬが――!
『ギ、ギ……ギガ、……ガ?』
見よ。
最早その王の周りには、近衛騎士は一匹たりとて無し。
「「ぎ、ぎぎ……、ぎぃぃ
……!?」」
残るは僅かばかり、辛うじて何を逃れ、それでも傷を負う戦奴らが十数匹。余りにも頼りない、紙切れの如き護り。
「三手目――なかなかいい腕してるじゃねぇか」
またも一歩、端役が足を進めた。
『ギッ、ギ 』
自分を殺しうるものが迫る。
いよいよ、王は怖じけた。
自分の命が残り幾許もない事など、最早頭から消え失せて。
そうして、いよいよ。
『ギ、ギイイイイ――――!!!』
背を向けて。
"己を守れ"とだけ残った戦奴らに告げて、よろよろと走る。
敗走に他ならない、ただ死なぬ為の逃げ足。
「――詰みだ」
全てカウボーイの思うままだった。
「踊れよチューマ。オーダーは一つだ」
――勝て。
●
長き時を、獣にもにた少女は伏せていた。
長い鬣と尾を持つそれは、まるで猫のようであった。
それは一つ、友に願いを言った。
"踊らせてくれ、ちゅーま"、と。
或る銀河にて、今はサーカス一座の長を務める男より聞いた口説き文句だ。
そしてそれを聞いた男は、此度の主役に勝利を齎す為の手を全力を以て計ったのだった。
●センコウ
『ギ、ギイイイイ――――!!』
鬼が啼く。命が惜しいと。
頼りない壁役どもを並べつつ、この場から逃げようと脚を動かす。
が、逃げ惑う獲物など。狩人からすれば格好の獲物なのだった。
――向かう先から、赤い閃光が翔んだ。
「ぎ? 」
すぱん。山刀が首を刎ね。
「ぎ 」
斜めがけ、頭を裂き。
「!―― 」
漸く小鬼らが迫る脅威に気付くも遅し。
声すら上げさせる間も無く、押し当てた烙印以て三匹を灰と為し。
赫閃が、緑を刈る風の如く馳せる。
『――ギ!? ギ、ギァ―――― 』
王が啼く。
此方を見る。
苦しみに喘ぐものだったろう。
死を呼ぶものへの怒りを孕んでもいたろう。
死を、それを齎すものへの畏れとてあったろう。
――怒っているな。
――苦しいな。
その思考は、ただ森番という役目を担うが故の、狩るものへの確認めいたものか。
或いは森から出ずる鬼への、"病"への、哀悼にも似たものだったろうか。
いずれにせよ、"病"を前にした森番の為すことは決まっている。
「――ちゃんと、お前ごとすべて灼いてやる」
ざり。砂鑢の如きざらつく聲。
獣めいた狩人にして森番、それが片手に持つ鉈が白く燃えた。
王の喉元にそれが刺さる。
――――ジッッッ。
灼くように、裂くように。閃煌が、燹咬が、閃光が、きらめいて。
飛び交う赫い残光が緑を縫う。
――遺ったのは、残火と遺灰のみ。それすらすぐ消え、風に散り。
「森に、還れ」
やがては、この地の木々の、草に恵みを齎し、森へとかえるだろう。
そうして森番が――ロク・ザイオンが、王の首を刈り。
猟兵らの勝ちと相成った。
●平和は戻る ――転送までのエピローグ
――万事は恙無く終わった。
村は守られ、脅威は去った。
遺ってしまった小鬼の屍体たちも、猟兵らの協力の元処置が施され綺麗に処理された。それを元に疫病などが流行ることもあるまい。
カタラを中心に幾人かはその死骸を持ってったりしたとかしてないとかだが、まぁこの辺は与太話である。
どうあれそれすら村人たちの為になる事だ、彼らが感謝しない筈もない。転送までのひと時の間、感謝を告げ、別れを惜しんだものらとて居ただろう。
――さてそんな村にて、髪をまた普段のように戻したロクがざりざりと尋ねる。
「……ヴィクティム」
「お?なんだ?」
「……また、子供の姿か?」
首を傾げつつざりざり言う森番。それに端役も応える。
「ん、おお。まぁちょいとな?」
そう、何故かヴィクティムは防衛戦の時に見せた変装時の姿。子供めいた装いと外套だ。
「顔バレると面倒な奴がいてよ」
「……?」
こてり、わからないと首を傾げる。
が、まぁそう言う事もあるかと納得した。
あせんしょんかもしれない。何か違うかもしれないが。
「ま、気にすんな。それよりそろそろ……」
「オイッ!!」
「あん?」
ヴィクティムに声をかける一つの影。
ちんまりとした桃髪の少女だ。
ヴァリアブルに他ならない。
「……?」
知り合いか?の目線をヴィクティムに送るロク。
対する端役、さてどうしたものか。
変装の顔だしそれは相手にもわかってるだろう、なおハッキング対策もバッチリなので間違いなく素顔は割れない。いっそこの顔で変顔でもかましてやろうか?
そう思う間にヴァリアブルが鋭い脛蹴りを一発!!ガギンッ!!
「ォアァ!?」
思わず悲鳴をあげる端役!
脛を抱くように屈む顔面に手のひらをべしん!
「ふんっ!」
そうして嵐のようにすたすたとヴァリアブルは去っていく。
「……いつつ、なんだってんだ一体……」
「……紙」
「ん?……なんだこりゃ」
ヴィクティムの顔にはいつのまにか一枚の紙切れ。
それをひらり、引き剥がせば。
『慌ててるの面白かったからこれでチャラにしてやる。
バーーーーーーーーカ!!!』
そんな置き手紙代わりのメモ帳一枚。
「…………」
呆れる端役。それをみる森番。
「……結局、だれ?」
「ん?あー、そうだな……」
脛を庇ってたのをやめ、立ちながら。
「まぁ、あれだ。遊び甲斐と頼り甲斐のある同業者ってところかね?」
それがカウボーイの本心か、それともリップサービスかは与り知らぬ所ではあれ。
――こんなやりとりがあったのも、まぁ余談と言えようが。
ともあれ、これにて村は救われた!
無事、魔の手から逃れたこの村は、健やかな暮らしを取り戻すに違いあるまい!
――――これにて、一件落着!
大成功
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