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青春!!!イェーガーナイン!!!

#キマイラフューチャー

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#キマイラフューチャー


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「9回表ツーアウトツーストライク! キマイラフューチャーズ後がありません!」
 チームメイトの、観客の、画面の向こうのファンの、全ての期待が双肩にかかる。
 果てしないプレッシャー。それでもやるしかない……!
 バットを強く握りなおし、神経を集中させる。
 逆転劇は……ここからだ!

「うおおおおお!!」
 放たれる球に狙いを定め、振り抜く! だが!

「何ッ!!!」
 何ということか!
 放たれた豪速球の速度たるや驚異の時速三百メートル!
 気合を入れた渾身のスイングが振り抜き終わる前に、キャッチャーのミットに球が収まっていた!!!

「ああー!! ここでゲームセット! キマイラフューチャーズ、まさかの敗退です!」
 あああ……という落胆の声が、スタジアムに響く。
 キマイラフューチャーズ背番号四番、エースバッターの男は今日、引退を静かに決意した……。


「野球やろうよ!」
 ユニフォームにキャップをつけてバットをぶんっと振り回してから、グリモア猟兵、ミコトメモリ・メイクメモリアは言った。
「え、説明が足りない? 嘘でしょ、昨日の試合を見てないの?」
 グリモアベースの背景が切り替わる。
 キマイラフューチャー世界で行われている野球の試合の一シーンらしい。
 キマイラの野球選手達は、球を投げては撃たれ、投げられては振り抜き、ボコボコのメッタメタにされていた。
 そしてその対戦相手は……。

「そう、オブリビオンなんだ、えー、チーム名はヌルヌルオンナマーズだそうです」
 ナマズ女の怪人達が、ミットをつけバットを振り、野球をしているのだった。なんだこれ。
「試合結果は33-4……キマイラフューチャーズの歴史に残る記録的大敗だったよ……」
 猟兵の一人が反射的に『なんでや関係ないやろ!!』と叫んたがそれに関しては誰も何も言わなかった。
「キマイラフューチャー球界でもエースチームの敗北に、皆戸惑いと困惑を隠せていない! しかーし! このままオブリビオンの好き勝手にさせて良いものか! 否、ダメだとボクは思うね! というわけで」
 にこっと笑って、ミコトメモリは宣言した。

「野球やろうよ!」
 最初に戻ってきた。

「では改めて説明するね、場所はキマイラフューチャーにある野球スタジアム。敵はヌルヌルオンナマーズ。まずは野球で勝って見せて、『怪人達よりも猟兵が強い!』って所を皆に見せてから、改めて倒してほしいんだ。ユーベルコードも使ってオッケー、だって向こうも使ってるし」
 あ、道具は向こうで借りれるけど持ち込みオッケーだから、と付け加える。
「ちなみに補欠選手とか代走を使いまくるから、参加するのは何人でもいいよ、人数はあまり気にしないで」
 いいのかそれで。
「いいの! みんなの得意分野を活かして活躍して頂戴! 本塁打よし! 盗塁よし! うまく行けば子どもたちの人気者になれるよ、サインとか頼まれちゃうかも!」
 ……まあ、オブリビオンは倒さないといけないし。

「あ、そうそう、チーム名も決めてあるんだ! じゃーん!」
 取り出された小さな幕には、達筆でこう記されていた。
『青春イェーガーナイン』
「さあ、青春をこの一夏にかけよう! えいえいおー!」
 誰も『今は冬だよ』とは言わなかった。


甘党
 野球やろうぜ!!!!

 どうもこんにちは、甘党MSです。
 今回は皆さんに怪人たちと野球で対決していただきます。
 皆様の発想力と勢いと何かそんな感じのあれを駆使し、

 溢れるスポーツマンシップで返り討ちにしてやりましょう。
 なお何をやっても基本的には自由です。

 ちなみに私は野球にあまり詳しくありません。
 ホームランすると点が入ったりスリーアウトでチェンジすること、ゴールキーパーが居ないことは知っています。
 以上です、よろしくおねがいします。
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第1章 冒険 『怪人とスポーツ対決!』

POW   :    体力を活かした正統派パワープレイ

SPD   :    速度を活かした敏捷派スピードプレイ

WIZ   :    知性を活かした策略派頭脳プレイ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●開会セレモニー(必要ですか?)

 キマイラフューチャーズのホームであるフューチャードームは満員御礼!
 楽しいことが大好きなキマイラ達が押し寄せて、すでに観戦準備は万端だ!

『さあ今ここフューチャードームで今回も熱い戦いが繰り広げられようとしています、実況は私サナダと――――』
『タガメがお送りいたします』
『はいそんなわけで、突如プロ野球界に殴り込んできたヌルヌルオンナマーズですが……』
『ええ、シーズン一位のキマイラフューチャーズに大差をつけて勝利したことで、今最も注目されています』
『そんなヌルヌルオンナマーズに今回試合を挑むのは……彼ら!』
『青春イェーガーナインの皆さんです!』

「「「「ワアアアアアアアアアアアアアアア!!!」」」」

 観客のボルテージはすでに絶好調!
 楽しければ良いんだこいつらは。キマイラだから。

『さあ、マウンドに立ったのはヌルヌルオンナマーズのピッチャー、ナマーズ4選手です』

「ヌールヌルヌルヌルヌル」

『何ですか今の』
『鳴き声ですね』
『鳴き声』

『さて一番バッターは…………おや? あれは……』
『あれは前回大敗を喫したキマイラフューチャーズの四番バッター、セタゴロー選手だ!』

「まずはオレと勝負しろ! この前のはまぐれだ! 本気の力を見せてやる!」
「ヌルヌルヌルンル…………愚かねぇ」

『おっと、イェーガーナインの手は借りないということか! ナマーズ4、振りかぶって投げました!』

 シュゴッ!
 ボッッッッッ。

「…………ガ、ハ…………!」

 ドサッッッ。

『な、何ということでしょう! ナマーズ4選手の投球が! 腹部を! セタゴロー選手の腹部を貫通しています!』
「ヌルンヌルヌルヌル……馬鹿ね、アンタはお呼びじゃないヌルのよ……」
『こ、これはどうなるんですかねサナダさん』
『ナマーズ4選手の投球はスポーツマンシップに則っているのでノーギルティ、セタゴロー選手は野球続行の意思が見えないのでレッドカード、退場です』
『はい、セタゴロー選手退場です。では改めましてこれより、青春イェーガーナインvsヌルヌルオンナマーズのゲームを開始します!!!』

「「「「ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」」」」

 ――――かつて無い熱い戦いが幕を開けようとしている!!!
旗村・グローリー
野球をしよう。

なるほど、全て理解した(してない)
オクラホマパンダーズで4番ファーストを任されていた
このおれが来たからにはもう安心だ。年俸は8億円でいい。

バットは自前の片手斧があるから大丈夫だ。
両手に一本ずつ持つのでこれで打率も2倍になる。
ホームランを狙ってもいいが、ここはひとつピッチャー返しを決めよう。
敵エースを真っ先に潰す。それこそがベースボールだからだ。

これでもう勝ったも同然だろう。
というかもはや優勝したといっても過言ではない。

祝賀会の準備を進めておいてくれ。
恒例のビールかけもしなくてはならないから……
パンダビール(笹が入っている)をとりあえず500本だ。
報道陣も呼んでおいてくれ。



●1回オモテ バッター 背番号04986番 旗村・グローリー

「なるほど、全て理解した」

 バッターボックスに立った旗村・グローリー(ザ・ジャイアントパンダ・f04986)は全てを理解した表情で静かに頷いた。
 キマイラフューチャーズにおいてはさして珍しい事ではないのだが、一応描写しておくと彼はパンダの被り物をしたヒーローマスクであり服装はスーツである。

『えーイェーガーナインのトップバッターは旗村グローリー選手。こちらの資料によりますとオクラホマパンダーズで四番ファーストを努めていたそうです』
『どこのチームですか?』
『不明です』

「ヌルヌルヌル――――わかるわ、アンタ、野球は素人ね。構えでわかるのよ、アタシは」

 投手――ヌルヌルオンナマーズのピッチャー、ナマーズ4はヌルヌルと笑った。

「御託はいい」

 対するグローリーは、それぞれの手に重厚な片手斧を手にしている。

「ヌルヌルヌル――アンタのそれは何かしら?」
「見てわからないか? バッターボックスに立った物の手にある長物だ……バット以外ありえない」

『どうなんですかタガメさん』
『スポーツマンシップに則っているのでバットと判定します』

「ヌルヌル…………なら遠慮は――――いらないわねぇ!!!!」

 ナマーズ4はその独特の構えから――――放たれる予備動作無しの投球!!!!
 その最高速度は時速300km!! 何人ものバッターの選手生命と脊髄を引き裂いてきた剛球!!!
 それが――――おお! 何という事か! グローリーの顔面めがけて放たれたではないか!

「ヌールヌルヌルヌル! ぶちまけなぁあああああ!」

 ガンッ。

「――――――――――――」
「………………………………」

『タ、タガメさん! これは……どうなったんですか?!』
『えー、こちらスピードカメラでご覧ください。ナマーズ4選手の投球がグローリー選手の顔面ヘ飛び…………』
『あー、避けてますねこれ。素晴らしい反射神経です』
『更にこちら、御覧ください。避けると同時に斧を投擲しています』
『斧はどちらへ?』
『ナマーズ4選手の頭部ですね』

 ゴロリ。パァンッ。
 これは何の音か?
 一投目がナマーズ4の首を切断し、二投目が飛んだ頭部を直撃、破壊した音である。

「敵エースを真っ先に潰す。これこそがベースボールだ。戦術を間違えたな」

『この場合どうなるんですかタガメさん』
『ナマーズ4選手は野球続行の意思が見えないのでレッドカード、退場です。ピッチャーが退場したのでキルホームランが適用され、グローリー選手、ホームランです』

「「「「ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」」」」

「これは勝ったも同然だな……祝賀会の準備を始めておいてくれ。あぁ、ビールかけの用意もだ。パンダビールをとりあえず500本。ちゃんと冷やしておけよ」

 グローリーは淡々とした動きでベースを一周する。
 一回表バッター一人目、開幕ホームランである。

「ヌルフ…………ヌルフフ……次はアタシの出番のようねぇ……」

 だが、試合はまだ始まったばかりだ……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

桜庭・英治
POW

いいぜ、掛かってこいよヌルヌルオンナマーズ!
キマイラフューチャーズの仇を取ってやる!

この…背番号4番、4番バッターの桜庭英治がな!
え、背番号と打席順って関係ないの?
まじか…

打席に立ったら『パフォーマンス』でホームラン宣言だ
こいよ、てめぇの全力で投げてこい!
え、ちょ
時速三百メートル…?
ごめん無理
俺、体育の時間でしか野球やったことなかったんですけど!!
サッカー派でごめーんね!!


いいぜ、俺も全力のバッティングを見せてやるよ
まず【サイコキネシス】で相手のボールを減速!
バントで堅実に当てて
そのボールをサイコキネシスで運んでスタンドに入れてやるぜ
必殺バントホームランだ!!

やべぇな…伝説を作っちまった



●この○回オモテっていうの管理してたら大変なことになりそうなのでやめます。

「いいぜ、次は俺の番だ!! かかってこいよヌルヌルオンナマーズ!」

 バッターボックスに立った桜庭・英治(NewAge・f00459)は、バットを堂々と敵投手に突きつけ宣言した。

「ヌルヌルヌルヌル……」

 新たな投手……ナマーズ5は不敵な笑みを崩さぬまま、静かに投球体勢に入る……。

「こいよ、てめぇの全力で投げてこい! 正面からぶっ飛ばしてやるぜ! この――――背番号4番、4番バッターの桜庭英治がな!」

『二番バッターですがこれはどういうことでしょうタガメさん』
『背番号と打順を勘違いしてる模様ですね』

「え、嘘、マジで?」

 ショックを受ける英治……だが!

「よそ見してる暇が……あンのかいッッッッッ!!!」

 ゴッッッッッッッッッッ。
 バキッッッッッッッッッッ。
 ソブッッッッッッッッッッッッッ。

「………………」

 何の音か解説すると、一つ目が投球が空を切る音。
 二つ目が英治が反射的に振ったバットに命中しへし折る音。
 三つ目がバットを破壊したボールがキャッチャーの頭部を貫通した音です。

「ストラーーーーーイク!」

 審判の高らかな宣言! バットを振ったがボールが飛んでいない以上、これは間違いなくストライクである!

「……え、何今の」
「ただ軽く投げただけよ……軽くね」

『恐ろしい速度です……今の球速は、時速345km! 新記録です!』
『なおキャッチャーのナマーズK選手は野球続行の意思が見えないのでレッドカード、退場です。新たなキャッチャーが補充されます』

「アタシにはわかるよ」

 ナマーズ5は新たなボールを受け取りながら宣言した。

「筋肉のつきかた……呼吸……体温……脈拍……あンたの身体は野球戦士の体をしてないンだねぇ」
「くっ……やべえ、体育の時間でしか野球やったことないのがバレてる!!!」
「だがアタシは雑魚が相手でも遠慮しないよ…………オラァ!!!」

 放たれる剛速球! その球は英治の頭部を確かにとらえている!!!

「――――――手が届かなくても出来ることはあるんだよ!」

 ピタッ、と。
 ボールが突如空中で減速した!

「な――――」
「今だ……くらえ必殺バント!」

 緩やかに迫りくるボールに放たれるバント!
 バットにあたった球がヘロヘロと跳ね返る!
 そのままヘロヘロと飛んでいく!
 どこまでも!
 どこまでも!
 客席を超えてディスプレイまで!

『おっとこれはバントからホームランですね! ボールがありえない動きをかました気がしますがいかがでしょうタガメさん』
『起きたことが事実なので、ホームランですね』
『なんと二打者連続ホームランです! これはイェーガーナイン幸先が良い!』

 サイコキネシスでボールを減速させ、バントを当てて、そのままサイコキネシスで場外へ運ぶ!
 これが必殺サイキックホームランバント打法である!

「やべえな……伝説を作っちまった……」

 英治は自らの行為に苦笑しながら、塁を辿ってホームベースへ帰還するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マリアブリレ・ニネヴェマスナガ
選手のスカウト、育成、球団運営。野球というスポーツは、とにかく金が掛かると聞いた。そう、『掛かる』……この一点においては野球も眼鏡も同一の存在。眼鏡女王たる私が負ける道理はひとメガネとてない! 今日も明日もホームランで逆転スクイズ満塁ホームランだ!!

★具体的には、『バントで止めた球を5000兆円パンチで強引に押し出して場外ホームランを狙う』正統派パワープレイをするぞ。庶民は圧倒的資本のパワーを思い知って悔し泣け。
 とはいえ、実は一瞬で消えてしまう、まやかしの札束だが……あぶく銭でも点を買うことぐらいはできたようだな?(眼鏡に優しい女王なのでちゃんと両手で眼鏡のふちをつかんで位置を直す)



●そもそもスリーアウトチェンジする日が来るのか。

「選手のスカウト、育成、球団運営。野球というスポーツは、とにかく金が掛かると聞いた」

 バッターボックスに立った打者三人目は一言でいうと眼鏡だった。
 何を言っているかわからないが眼鏡である。王冠には眼鏡がかかっているしタイツは眼鏡柄だし手にしたバッドは視力検査のあれだし眼鏡めいたオーラを放っているしちゃんと眼鏡をかけている。

「そう、『掛かる』……この一点においては野球も眼鏡も同一の存在。眼鏡女王たる私が負ける道理はひとメガネとてない!」

『ちょっと何を言ってるかわからないのがえーっとどなたですかタガメさん』
『マリアブリレ・ニネヴェマスナガ(サイバー都市SABAEに降り立った最後の眼鏡女王・f02341)選手ですね、私大ファンですので個人的に応援させていただきます』
『あ、そうなんですか……おっとナマーズ5選手振りかぶって――――投げました!』

「ヌルヌルヌルヌル! 何が眼鏡よ! ナマズに眼鏡はかからねえ!!!!」

 今まさに放たれかける剛速球! だがその時! マリアブリレの力が発動する!

「――――ところでこれがお前の移籍金なんだが」

 バンッ、と何処からか現れたトランクを開けると――――そこには5000兆円が入っているではないか!
 バサッと広がる5000兆円! ばらまかれる札束!!!!

「あっ!!!! 手が滑った!!!」

「5000兆円に目を取られたナマーズ5! ついうっかり偶然にも手が滑った!!」

 思わずすっぽ抜ける投球! へろへろ球が迫る!

「今だ! 逆転ホームランッ!」

 ぽかんっ、と構えられたバントにヘロヘロボールが命中!

「行け、5000兆円パンチだ!」

 なんと! ヘロヘロボールが転がる! てくてくとかさばるスカートで走るマリアブリレ!

『――――どうしたことでしょう!? ヌルヌルオンナマーズ。動きません!』
『眼の前の5000兆円に心奪われているようですね……』
『おっとマリアブリレ選手今ホームイン! ランニングホームランです!』

「「「「ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」」」」

「…………あ、5000兆円がない!?」

 役目を終えたマリアブリレの5000兆円はすぅっと消えてしまった……。
 そう、それは一瞬の幻……儚い夢……非実在5000兆円とも言うべき存在……。

「ヌ、ヌルヌルヌルヌル……! 騙したな貴様ぁー!!!!」
「まあそう怒鳴るな……まやかしの札束だが、あぶく銭でも点を買うことぐらいは出来たようだな?(くいっ)」
「あっ(きゅんっ)」

『おっと、マリアブリレ選手、相手のずれた眼鏡を直してあげています、タガメさん、これは』
『スポーツマンシップに則っているのクリーンなプレイなのでセーフですね』
『セーフです! 青春イェーガーナイン3点目を叩き出しました!!! 止まりません!!!』

「ふ……私は眼鏡に優しい女王だからな、これぐらい造作もない……」

 声援に片手を上げて応じながら、マリアブリレはベンチへと下がっていった……。
 ここまでは好調なイェーガーナイン……しかし真の戦いはこれからだ……!

成功 🔵​🔵​🔴​

メルエ・メルルルシア
おいおいおい、野球勝負とは熱いじゃねえか。こう見えてオレ、故郷で一番の野球選手だったんだぜ。まあ他に野球やる奴はいなかったがな

WIZで行こう

この24cmのミニマムボディ……針の穴を通すコントロールでもなけりゃ、全部フォアボールだ……
そうなりゃあいては球速を犠牲に、コントロール重視でボールを置きに来る

その時、オレ様のバッド……は持てないから、水の竜が火を噴くって寸法よ

守備……無茶言うなよ、空中に来たボールを弾き落とすぐらいは出来るが……交代したほうがいいよなそこは

【自身の小ささを利用し、相手の投げるコースを限定させ、水で作った竜で玉を弾き飛ばします】



●それはずるくないですか(試合後、ナマーズ5選手のインタビューより抜粋)

『さあ次はイェーガーナインの四番バッター! 選手は――――』
『おっとこれは――――選手はどこだ!?』

「おいおい小さくて見えねーとか言うつもりじゃねえだろうな!」

 メルエ・メルルルシア(宿り木妖精・f00640)は吼えた! な、なんということか!
 身長にして24.7cm! バットは爪楊枝のように細い! しかし!

『これはメルエ選手、非常にその――狭いですね』
『ええ、ボールが物理的にストライクゾーンに入りません』

「ヌルヌルヌルヌル!? え、ずるくない!?」
「おいおいおい難癖つけてくれるじゃねえか。こう見えてオレ、故郷で一番の野球選手だったんだぜ。まあ他に野球やる奴はいなかったがな」
「じゃあ何を根拠に一番を名乗ヌルのよ!?」
「おいおい決まってんだろ――ハートだよ」

『どうなんですかタガメさん』
『青春ですからいいんじゃないですかね』

 スパーンっ! ボール!
 スパーンっ! ボール!
 スパーンっ! ボール!

『さああっという間に3ボールノーストライク、追い詰められましたナマーズ5選手』
『おっと、目の色が変わったぞ?』

「ヌルヌルヌル――――そんなに塁に出たいなら、出してやるぁあああああああああああああ!」

 ゴッ

『おっとここでまさかのデッドボール狙い! あれは直撃したら不味いのでは!?』
『前例を考えると跡形も無く吹き飛びかねませんね』

 ドームに緊張が走る!!!! しかし!!!!

「はっ、それを待ってたんだぜ!」

 対するメルエはユーベルコードを発動!(事前動作無し) 空中に巨大な水の竜が出現!

「ヌルッ!?」
「ナマズと竜、どっちがつえーか試してみるか!」

 水の竜はボールを飲み込んでそのままドーム中を滑走!

『おっとこれはヒットですかタガメさん』
『球がキャッチャーの手に収まっていない以上、ヒットです』

「ヌルゥー!!!!」
「おっと、やりすぎたかな。つってもなぁ、広いんだよなー塁と塁の間が」

 …………。

『結局ボールを回収するのに手間取り、メルエ選手、二塁打です』
『いやあ、こういう野球もあるんですねー』

「ヌルヌルヌル……いいわ、ここから先は地獄を見せてあげる……!」

成功 🔵​🔵​🔴​

満島・ショコラ
ショコラはね、いつものウェディングドレスでバッターボックスに立つよぉ。

だって、いつ旦那様に見られてもいいように、ずっと可愛い格好をしておきたいじゃない?この前もね、結婚式場で衣装合わせしに行ったときにね、今のウェディングドレス姿が一番可愛いって……なんの話だっけ?

そうそう、だからね、ウェディングドレスって野球とかし辛いと思うんだけどね、旦那様のための可愛い格好だからこそ、パワーが出ると思うんだ。これぞショコラの一途な乙女心なんだよぉ。

バットはね、もう持ってるの。ほら見て、これ女子力っていうの。可愛いでしょ。釘……?お肉に引っかかりやすくていいよね!

いくよー、ショコラ、幸せになります!打法!



●五番バッター、狂気のスイング

『さてまだまだノーアウトで好調のイェーガーナイン、五番打者は…………』

「旦那様ー! 見ててー! ショコラ、ホームラン打つからねーっ!」

『おっと、満島・ショコラ(ネバーエンディングハッピーエンド・f05988)選手、まさかのウェディングドレスを着ての参戦です、タガメさんこれは』
『幸せそうなので、セーフです』
『なるほど、羨ましいですねー』

「ヌルヌルヌルヌル……小娘、そのドレスを血で汚したくないなら退き…………なにそれ」
「え? これはねえ、ショコラの女子力だよ!」

 女子力。
 そう名付けれたショコラの獲物はバットである。
 厳密に言うとえげつない角度に曲げられたり錆びたり歪んだりしておおよそ対人殺戮凶器である。

『ショコラ選手による事前説明に寄ると、婚約者の旦那様が会場に見に来てくれているとのことです』

「「「「ヒューヒュー!!!!!」」」」

 楽しいことが大好きなキマイラ達、よくわからないが大盛り上がり!!

「えへへ、そうなの、旦那様ー! ショコラの可愛い所、見ててねー!」

『おっと花嫁からの心強い宣言! 旦那様からのリアクションは……おや?』
『どうしましたタガメさん』
『いや、今調べてもらった所、特にそういう方が来場してらっしゃらないようで……』
『…………ん?』

「「「「ザワザワザワザワ……」」」」

 楽しいことが大好きなキマイラ達、流石に困惑!

「ヌ、ヌルヌルヌル―――よくわからんがその顔面、ザクロに変えてやヌルァ!!!!!」

『おっとでましたナマーズ5選手の剛速球!』
『例によって顔面狙いですね』

「いくよー、ショコラ、幸せになります!」

 物怖じもしない。怯えもしない。
 ショコラの女子力がフルスイング!
 ゴッ  ガッ。

「………………?」
「………………?」

『おや、球はどこに行きましたかタガメさん』
『命中はしたように見えたのですが……あ、御覧くださいサナダさん』
『ん? あ、成る程……ボールが釘に突き刺さってますね』

 女子力。
 そのあまりの尖り具合と球速350kmを超えるストレートがかち合った結果、見事女子力の釘にボールが突き刺さっていたのである!

『これはどうなんですかタガメさん』
『ボールを持って打者に接触しないとアウトにはなりませんから、論理的に考えてヒットです』

「やったー! 旦那様の、愛情たっぷりの応援のおかげだよぉ!」

 悠々と塁を走るショコラ。
 慌ててナマーズの選手たちが取り押さえにかかる。
 ボールを取られまいと抵抗した際に何人かのナマーズ選手が女子力の餌食となったが、何とか1アウトをもぎ取る。
 しかしその隙に二塁のメルエがホームイン(高く空に飛んでからの急降下)、イェーガーナインの四点目が刻まれたのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

トルメンタ・アンゲルス
野球、ですか。
データベースでしか見たことはないですが、まあ、やり遂げて見せましょう!

【SPD】
俺は足が自慢ですからね、代走に出してもらえれば瞬く間に盗塁して差し上げましょう!
もちろん、バッターでもお役に立ちますよ!
ぼてぼての当たりでも、相手が拾っている間に一塁二塁三塁と、何ならランニングホームランも目指してみましょうか!
防御でも、この足を生かしますよ!
一二塁間や三遊間を打ち抜くようなヒットも間に合わせてみますし、
ファールだったりホームラン級の当たりも、スマッシュ・エアで空を駆け抜けて、捕ってフライにしてやりますよ!


ゼン・ランドー
野球とものは初めて知りましたがどうやらかなり
普及した遊びのようですね。
客席が満塁で飲食物も飛ぶように売れているのがはっきりと見えます。
…あの客をナメた水増しされた値段でも飛ぶように…ッ!
なぜ私はあちら側で商売出来て居ないのか、なぜ打席に立つことになっているのか?
全ては敵チームが悪い。
ヌルヌルオンナマーズを……ッ潰す!!
財布の痛みが私の力となる!

そんなわけで特注のバットを作ってみました。まるで体の一部のように馴染みますね。
打席に立つからには狙うは満塁ホームラン。
もしくはピッチャーの顔面です。


キャナリニア・カルコメラン
野球、でありますか。生憎、スポーツとは無縁でありましてバットを持つのも初めてなのでありますが。

大体覚えた、のであります。

相手ピッチャーの投球傾向にボールの速度、それを投げる際のフォームの癖。幾らオブリビオンと言えども完全無欠ではないようでありますな。

打席に立ちますのは代打自分、に変わりまして更に代打の代打。この騎士型駆動人形が見事打ち倒してご覧にいれてみせましょう。
狙うはストレート、ではなくフェイント球のインコースであります。脱力状態で前に倒れるようにバッタボックス内で一歩、ただ一歩踏み出しボールと接触する寸前、UC発動。時速300キロだろうがなんだろうが、そのままの速度で打ち返すであります。



●魔のピッチャー返し! 何がお前らをそうさせる!

「はぁい! ビール一杯580円でーす!」
「あ、こっち一つちょうだーい」
「こっちーも!」

「おつまみいかがですかー、ホットドッグ600円でーす」
「一個くれー」「こっちもー」

「ソフトドリンク一本380円でー…………」「くれー」

「……何故あの値段で売れるので……?」

 ゼン・ランドー(余燼・f05086)は自問自答した。
 何故、足元見まくりボッタクリ値段でも商品が飛ぶように売れる娯楽特需パラダイスではなく、こんな空寒い一円の儲けにもならないバッターボックスに居るのか……と。

「あなた方が余計なことをしなければ……今頃私はあちら側に……憎い……ヌルヌルオンナマーズが憎い……! ヌルヌルオンナマーズを……潰す……ッ!!」

『おっとタガメさん、あの邪悪なオーラは大丈夫ですか』
『他の選手に影響を与えていないので精神集中の範疇と認識でき、セーフです』

「ヌルヌルヌル……ここいらでもう一個アウトを取ろうか――――キェエエエエエエエエエエエエ!」

『ナマーズ5選手、振りかぶって投げました! これは速い! 時速は400km!』
『ランドー選手、線が細いですからねえ、これは死んだか!』

 カキンッ。
 ズボッ。

「…………………………」
「あぁ、舐めてもらっては困ります。この試合の為に特注のバットをわざわざ作ったのです、400kmぐらい打ち返せずしてなんとします」

『……えー、これはナマーズ5選手どうでしょう』
『ピッチャー返しが顔面を貫いて――おっと生きている! ナマーズ5選手生きています!』

「な、舐めんじゃあな――――ヌルヌル……」
「ちなみにこのバット、私の故郷の山にある御神木から切り出したものでして、現地の神のご利益がものすごくこの様に運動に向いていない私でもこの通り剛速球を弾き返すだけのテクニックが――――」
「聞けぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

『おっとランドー選手、一塁へたどり着きつつそのまま流れるように商売に入りました』
『一本二百万キマイラ$だそうです、お買い求めの方はランドー選手まで』

「あ、走るのは面倒なので代走よいですか」

 ………………。

『えー、ランドー選手の代走に入ります、一塁はトルメンタ・アンゲルス選手です』

 ブルォン、ブルォン、ブロロロロロロロ……。
 トルメンタ・アンゲルス(流星ライダー・f02253)は愛用のスポーツサングラスをキラリと光らせ、愛車に跨がりながら塁についた。
 エンジン全開、何時でもアクセルフカしてダッシュできる姿勢である。

「ちょっと審判あれはズルなんじゃあないの!?!?!?!」

 ヌルヌルオンナマーズ、流石に抗議!

『これはどうなんでしょうねえタガメさん』
『バイクはさすがに……おっと、審判が近寄りました』

「そのバイクはなんですか?」
「このバイクは私の相棒にして相方、肌身離せない存在でして……」
「なら仕方ないですね」

『おっと審判セーフの判定を出しました、セーフです』
『スポーツマンシップに則っている以上やむを得ないですね』
「ムキーーーーーーーーーーーーー!!! ええい次のバッターは誰よ!!!」

「はっ! 自分であります!」

 ピンク色の髪の毛を揺らし、キャナリニア・カルコメラン(スクラップドール・f07077)はバッターボックスに立たなかった。

「ん? ちょっと待ちなさいヌルヌル。なにそれ」

「これでありますか? 自分スポーツは初めてでありますので、代打の代打、騎士型駆動人形であります」

 ガシャガシャガシャ。
 カクンッ、カタカタカタ。

「ちょっとちょっとちょっと審判これはありなワケ!?!?!?」

「その駆動人形はなんですか?」
「これは自分が丹精込めて作った騎士人形でありまして……もはやこの体の一部と言っても差し支えなく……自分が操りますし……」
「体の一部なら仕方ないですね」

『セーフ判定が出たようです』
『体の一部ですからね』

「あ"ーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」(ダンッダンッダンッ)
「ピピー!!!!」

『おっとナマーズ5選手にイエローカードです』
『スポーツマンシップに則らないといけませんからねえ、地団駄はマイナスです』

「ヌルヌルヌル…………ええい! どっちにしてもぶっ壊せば同じよぉおおおおおおお!」

 今度こそ放たれる剛速球! 速度は402km! 直撃すれば――――死!

 ゴッ。
 ガッ。
 ボッッッッッッッ。

『えー、なんですかタガメさん今のは』
『ナマーズ5選手が投げたボールがキャナリニア選手の代打騎士人形に触れた瞬間、そのまま跳ね返しましたね』

「いくら速かろうがフォームの癖は誤魔化せないでありますよ、であれば対策は容易であります」

『ゴッ! が玉を投げた音でガッ が球を跳ね返した音でボッッッッッッッ がその球がナマーズ5選手を貫いた音ですか』
『野球のルールには【ピッチャー返しでピッチャーが死んだ時、その打席はホームランとなる】というルールがありますが――』

「生きてるわぁああああああああああああああああああああああああああ!」
「げ、しぶといでありますな……」
「ボールはキャッチしたわよぉおおおおおおおおアウトよアウトぉおおおおおおおおおおお」
「片腕吹っ飛んでるのに元気でありますな……いえ、別に構わないでありますよ。――――――代走はもう帰ってきましたので」
「………………あんですって?」

 得点票を見るナマーズ5! おお、そこにはイェーガーナインの真下に輝く五点目の文字!

『では、ここでカメラを見てみましょう』
『ごらんください、ナマーズ5選手が球を投げた瞬間』
『あっ! トルメンタ選手すでに走り出している! タガメさんこれはどういうことですか!』
『速すぎて会場の誰も盗塁が始まっていたことに気づいてませんでしたね』
『ピッチャー返し炸裂と共に、すでにホームインしています! 一瞬! 一瞬で二塁三塁を通過していました! トルメンタ選手は今!』

「いやあ、やっぱり速さが大事ですよねぇ速さが」

『すでにベンチで差し入れのスポーツドリンクを飲んでいますが、これはどうですかタガメさん』
『ルールから逸脱している行為ではないので、セーフです』

 一回オモテ、ツーアウト5-0。
 ヌルヌルオンナマーズ達もそろそろ気づき始めた。
 『これは自分たちも常識を捨てるべきかも知れない』と。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​


●なんやかんやあってチェンジ

『ではダイジェストで一回オモテを振り返ってみましょう』
『えー、ヌルヌルオンナマーズのヌルヌル魔球が火を吹きましたね。これによって次の打者は三振、スリーアウトチェンジです』
『ヌルヌルオンナマーズの攻撃が試合にどう影響するか、目が離せません』
『ヌルヌルオンナマーズの一番バッターはナマーズ1。前回キマイラフューチャーズとの試合ではワンスイングスリーキルの成績を持っています』
『さあしのげるかイェーガーナイン。一回ウラスタートです』
新堂・澪美
よーっし!! (腕をぐるぐる振り回してやる気に満ち溢れる)

は???? (キャッチャーに入ったおにい(新堂・十真)を見て絶句)

ま、まあ好都合だし。兄妹パワーで意思疎通してやるもんね。
10年以上一緒に暮らしてきた絆をナメんなって感じ!!

(指で「お風呂上がりさっさと服着て」のサインを送る)

(指で「聞いてもいないのに宿題に口出ししてくるのやめて」のサインを送る)

……………………ムカムカしてきたので顔面のあたりに剛速球投げよ。

(指で「うっさいバーカ!」のサインを送る)
(サイキックブラストを補助に使い対象(バッター)の動きを一時的に封じ実質的な兄妹のキャッチボールと化したままバッターアウトへと追い込む)


新堂・十真
野球とは戦略が物を言うスポーツ。
体力は勿論だが知力こそがカギを握る…

特に重要なのはサインだ
敵に気取られることなく作戦を伝達できれば勢い既に破竹

その点俺は妹の澪美がいるからな
ピッチャーとキャッチャーでバッテリーを組めば
兄妹パワーでサインを完全に通すことができる

(指で「お兄のプリンを勝手に食うな」のサインを送る)

(指で「ネイル道具を広げすぎるな」のサインを送る)

……。

(「ペディキュア塗る時下着見えんぞ」のサインを送りつつ剛速球を予見してミットを構える)
(サイコキネシスを補助に使い、剛速球をキャッチする助けにする)



●兄妹の絆! 二人の野球を見せつけろ!

『さあイェーガーナイン、マウントに立ったのは新堂・澪美選手です』
『キャッチャーを務めるのは実兄の新堂・十真選手、兄妹間のコンビプレイを期待したいところです』

「フン……アタイが相手なんて運がないね、アンタら…………ヌルヌルルル」

 おお、何ということか。
 投手のナマーズ達と比べて明らかに過剰発達した腕!
 手にしたバットの太さは丸太の如し!
 これはナマーズが守備以上に攻撃を得意とすることを意味している!

「アンタたちはピッチャー返しが得意だったみたいだねえ……アタシモナンダヨ、ヌルッヌルヌルヌル」

 凶悪すぎるピッチャー返し宣言! 死の恐怖が新道兄妹を襲う――――――!

「(ちょっと、なんでおにいがキャッチャーなのよ! という意思を示すサイン)」
「(しょうがないだろそうなっちゃったんだから。 という意思を示すサイン)」
「(はーないわー。ていうかおにいさあ、最近だらけすぎじゃない? お風呂でたらさっさと服着て という意思を示すサイン)」
「(うっせ。それよりお前勝手にプリン食うなよ人のをよ という意思を示すサイン)」
「(はーーーていうか聞いてもないのに横から人の宿題に口出すのやめてくんない? という意思を示すサイン)」
「(んだとお前そもそもリビングの机の上にネイル道具ごちゃごちゃ広げんのやめろ  という意思を示すサイン)」

『激しいサインの応酬が続いています』
『強敵相手ですから無理もないですね……』

「(――――――ムカムカしてきたから顔面に投げよ)」
「(あ、こいつ絶対俺の顔を狙いに来るな)」

『おっと動きがあった! 澪美選手大きく振りかぶりました! 投げるつもりか!』
『キャッチャー十真選手、顔の前でミットを構えた! 非常に厳重な防御だ!』

「どんな球だろうが――――アタシの敵じゃ――――ん?」

「(黙ってなさいよナマズ女!)」
「(黙ってろナマズ女!)」

 …………余談だが二人はサイキッカーの兄妹である。
 この瞬間、二人のサイキックは同調・増幅し、強化されたサイコキネシスはナマーズ1の動きを完全に拘束していた。

「っだらぁっ!」

 バスッ 「ストラーイク!」

「ペディキュア塗る時下着見えてんぞバーカ!!!」
「はぁ!? ていうかそんなとこ見てるほうがキモいんですけどー!!!!」

 バスッ 「ストラーイク!」

「だったらもうちょっと年頃の女子らしくしろや!!!!」
「うっざ!!! 捨て犬見つけて何も出来ずに無言で一時間目の前で突っ立ってたくせに不良名乗ってるやつがよく言うわー!!!」

 バスッ 「ストラーイク! スリーストライクバッターアウト!」

『おっとナマーズ1選手、びくとも動きません、これはどうですかタガメさん』
『見逃し三振と言ったところですね』
『次のバッターがボックスに入ります、おっとその前にイェーガーナイン側が何か言っているようですが』

「すいませーん、ピッチャーとキャッチャー交代おねがいしまーす」
「えっ」「えっ」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ジャガーノート・ジャック
(ザザッ)――これもまた任務。
で、あるならば全力で全うするのみ。ミッションを開始する。

(ザザッ)
【SPD】を活かす。
投手として立候補。
腕で弾を放てば良いのだな。
本機に勝算がある。

(ザザッ)技能『武器改造』を使用。
本機の巨腕を硬球装填式に変更。
クイックドロウにて発射する弾を硬球に変更、射出する。
『スナイパー』による的確な送球コントロール、『誘導弾』による魔球もかくやの変化球も実現。

得点手の打者としての活躍、及び万一にも打たれた場合のサポートは
他猟兵に任せる事とする。

本機の作戦概要は以上、実行に移る。オーヴァ。(ザザッ)


十河・アラジ
野球は技術と体力の他に頭脳を使うっ競技って聞いたよ。
だからボクも頭を使って勝ちに行こうと思うんだ。(WIZ)
それに野球は団体競技らしいから今回はみんなのサポートをメインにしていくよ。//
やろうと思っているのは「生まれながらの光」を使ったサポートさ。
具体的には相手のプレイ中に激しい光を放って目つぶし、これだよ!
勿論味方の妨害にならないように相手が捕球する時とか、
ピッチャーが投げる時に使うとか、使い所にも頭を使わないとね。
塁に出る時とか絶好の使い所だと思うんだ。//
始めましての人ばかりだけど、みんなの力になれるよう頑張るよ!
チームプレイで勝利を掴もう!



●プレイングが真面目だったのでリプレイも若干真面目になります。

 『――野球。スポーツ・ゲームであれど任務であるならば全力で全うする』

 マウンドに鎮座する黒豹型の機械鎧――ジャガーノート・ジャック(オーバーキル・f02381)は、バッターボックスのターゲットを静かに見据えた。

「フン……そのナリで球ぁ投げられるのかい? ヌルヌルヌル……」

『バッターボックスにはナマーズ2選手が立ちました』
『前回の試合ではワンスイングフォーキルの記録を持っています、さぁどう戦うか』

『…………………………(キュイーーーーン)』

『おっと、ジャガーノート選手の腕がなにやら変形していくぞ? これはなんですかタガメさん』
『あれは硬球を装填できるようにしていますね』
『といいますと?』

『――――投擲開始』

 ――――1/18秒、予備動作無しで放たれる硬球。
 【どのタイミングで放たれるか】は投球において非常に重要な要素だ。
 だが、ジャガーノートの放つ球には、その予見ができない。
 バッティングセンターのマシンよりも無慈悲に、狙った場所にピンポイントで着弾する硬球なのだ。

「ワンストラーイク!」

 審判の声が高らかに鳴る。

「…………へえ」

 ペロリ、とナマーズ2が舌なめずりした。

『(ザザッ――)』
「いい球だ。アンタ、野球戦士になるつもりはないかい?」
『否定する。本機は猟兵。オブリビオンを狩る者だ』
「そうかい、じゃぁ死ぬしかないねえ―――宣言するよ、今の球はもう、アタシには通じない」
『――――――』

 その予告は、ブラフか、あるいは本当か。
 どちらにしても、この場で行う事ができるのは『投球』のみだ。
 敵のほうが野球の経験が多い。それは事実。
 だが――野球というスポーツは『チーム戦』である。
 チカチカ、とジャガーノートは瞳に当たる部位を明滅させた。即ち――――。

(ボクの、出番だ――――)

 キャッチャーとしてミットを構える十河・アラジ(マーチ・オブ・ライト・f04255)は、自らの出番が来たことを悟った。
 とはいえ、野球の経験があるわけではない。よって論理的に、具体的にどうしたらいいか、の判断はつかない。
 だが、出来ることはある。アラジはすでにその答えを用意していた。

(内角低め、カーブ……)

 即興のサインに対し、即座に了解の反応を示す投手、ジャガーノート。

「ヌルヌルヌル、どんな球が来ようが――アタシに打てない球はないよぉ!」

 二投目。指示通りの投球。だが、ナマーズ2のスイングはジャガーノートの球が発射された直後に、もう定まっていた。

(今だ――――――!)

 アラジは、光った――――。

●ここまでは真面目でした。

「うおっ! まぶしっ!」

 パァンッ

「ワンストラーイク!」

 審判が高らかに宣言する。よし、もう一回ストライクでアウトだ。

「ちょっとちょっとちょっと待ちなよ」
「なんですか?」

 バッターの抗議! 審判が駆け寄る!
 審判の決定は絶対、妨害を認められたら即時退場もあり得る!

「アンタ今光っただろう! アタシのバッティングを妨害したろう!? ヌルヌルヌル!!!」
「本当ですか? 光りましたか? 何故ですか?」
「はい、ボクは生まれつき光るんです」

 アラジは答えた。そして光った。

「答えになるかあああああああああああああああ!!!」
「えっ、でも生まれつき光っちゃうから……参ったな……」
「審判!!! 今すぐこいつを退場させろ!!!」

『えー、これはどうですかタガメさん』
『これは生まれつきですからセーフですね』

「セーフです」
「ありがとうございます」
「ああああああああああああああああああああああああ!」
『……バッターボックスにつけ、オブリビオン』

 異様に明滅する少年を背負うナマーズ2に、ジャガーノートは告げた。

『――――まだ貴様をアウトにしていない』

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


●ダイジェストでお送りします。

「好き勝手やりやがって―――――アタシ達を怒らせちまったようだねぇ――――」

 そう呟いたヌルヌルオンナマーズの選手たちが、一箇所に集まっていく。

「…………なんだ、あれは!」

 猟兵の誰かが叫ぶ。

『おおっと! ここでヌルヌルオンナマーズが本性を表しました!』
『キマイラフューチャーズにとどめを刺した……あれ、ですね』

 ナマーズ2から補欠まで含めたナマーズ30まで……。
 それら全員が一つに混ざり合い、新たな巨人を作り出す。

「――――――ハァァァァァ………………」

 頭部に『30』と記された、怪人オンナマズ。
 そう、ヌルヌルオンナマーズとは、怪人オンナマズが作り出したバトルキャラクターに寄る一人遊戯チーム!
 故に、このナマーズ30(サーティーン)は今までのナマーズ達の……30倍の力を持つ!

「アンタ達…………覚悟は出来てるんだろうねえ……!」

 どうでもいいけどまた第一章です。
紅桐・灯
感じるぞ……数多の野球戦士たちが放つ青春の波動……
聴こえるぞ……"甲子園"を目指す球児たちを讃える惜しみなき声援ッ!!
はだかんぼ野球団主将、紅桐ライトーーピンチヒッターとして青春イェーガーナインに助太刀するッッ!!!

ヒマラヤで10年、ただ一球をバックスクリーンに叩き込むため、ひたすらに野球の鍛錬を重ねたおれの打撃ッ……否、"覇撃"ッッ!!
易々と討ち取れると思うなッ!!

いくぞピッチャー!!ホームラン予告を決め、狙うは本塁打!!
ウォォォォアアアアーーーーーーッッッ!!!(天地裂け闇は晴れ冬が夏に変わるかのような裂帛の怒号と共にフルスイング)

美事に本塁打を決めたなら、敵は感動のあまり動きを封じられる



●決着は第三章にお預けだ!

「ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 ゴッッッッッッッッッ!!!

 怪人オンナマズの作り出した合体バトルキャラクター……ナマーズ30の放った野球ーラ(野球力をオーラに変化させたもの)によって、生半可な野球力を持つものは立つことすら許されない。
 バッターボックスに、あるいはマウンドに立つ者がいなければ野球は成立しない。即ち最後に立っていたヌルヌルオンナマーズの勝利となる。

「――――だが、そんな幕切れはこの俺が許さん……っ!」

 誰もが強烈な野球ーラに怯む中、一人バッターボックスに立った者がいる。
 身体から、心臓から、いや、魂から野球ーラを絞り出す一人の男、彼こそは猟兵随一の打者!

「はだかんぼ野球団主将、紅桐ライトーーピンチヒッターとして青春イェーガーナインに助太刀するッッ!!!」

『ここでピンチヒッターが登場です、タガメさん』
『えー、我々には見守るしか出来ません』

「宣言する――――俺はこの打席でホームランを打つ」

 その宣言に――――ナマーズ30はヌルヌル、と嘲笑った。

「「「 馬鹿が! 誰が来ても変わらないわ! 私の球は止められない!!! 」」」

 その宣言通り。
 ナマーズ30の投球速度はマッハを越えた。ジャイロ回転しながら、音の壁を突き壊し、ソニックブームを発生させながら、死の球が迫る。

 避けるか? 否。
 見送るか? 否。
 宣言した以上は、打つのだ。
 何故か?
 そこに"甲子園"があるからだ。

「ウォォォォアアアアーーーーーーッッッ!!!」

 裂帛の気合と共に放たれるフルスイング。
 ヒマラヤ山脈で十年間。
 ただ只管、一心不乱にバットを振った。
 最後の局面、最後の一瞬。
 ツーストライクツーアウト満塁…………その瞬間、一打で勝利を決める為に――――彼はバッティングを研鑽し続けてきた。
 そのスイングの名こそ、"覇撃"。

「ぐうっ…………!」

 バットと球が直撃し、そして拮抗し合う。
 回転しながらバットをへし折り、打者の命まで奪わんとする殺人魔球と。
 その球をバックスクリーンに叩き込むために、上腕二頭筋が限界まで膨れ上がり、きしむ手首を抑え込む。
 ギャリギャリギャリギャリ、とバットを削り続ける

(くっ……打てるのかっ! この球をっ! 俺に……っ!)

「主将……!」
「主将……!」
「主将……!」

 誰の声だ…………幻聴か?
 いや、違う。
 これは勝利を望む声だ。
 そうだ、打てるかどうかではない。
 "打つ"のだ。

「――――――これでっ!」

 前へ、腕を突き出す。
 振り切る。全力で。
 見ろ、空は雲を裂き、闇は割れ、光が注ぐ。

「ゲーム――――セットだあああああああああああああああああっ!」

 カキィンッ。

 バックスクリーンに、白球が突き刺さった。
 ――――ホームラン。

「ヌル……な、なんてこと……」

 バトルキャラクター……ナマーズ30達は投球の反動で自らを崩壊させてゆく。
 残ったのはオリジンである、怪人オンナマズ唯一人。

「こうなったら…………最後の集団よ! ヌルヌルヌルヌル!」

 背を見せて逃げ出す、怪人オンナマズ。
 だが後は追わない、ここから先は野球ではないからだ。
 また野球がこの地に現れる時、彼もまた惹かれるように現れるだろう、多分。

『えー、ヌルヌルオンナマーズが試合放棄しましたので、勝者は青春イェーガーナインです。解説・実況は私サナダと』
『タガメがお送りしました』

「「「「「ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」」」」

 キマイラ達の歓声がドームいっぱいに鳴り響く。
 だいぶグダグダだったが、いいのかこれで。いいんだ、だってまだ一章じゃないか。

「………………いやオブリビオンは追えよ!!!」

 誰かが叫んだ。しかし、すぐにそれどころでなくなる事を彼らはまだ知らない、

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『立ちはだかる子供たち』

POW   :    力自慢を生かしてアピールし、子供を説得する

SPD   :    芸を見せることで子供の気を引き、猟兵への協力をお願いする

WIZ   :    言葉で話しかけて説得し、子供たちから情報を聞き出す

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「「わあああああああああああああああああ!!」」

 試合が決着した瞬間、会場にいたキマイラの子供たちが、一斉に観客席を飛び越えて、試合場になだれ込んできた!

「すっげー!!! サイン頂戴! サイン!!!」
「どうやったらあんな球投げられるのー!」
「俺もホームランうちたーい!」

 そう、イェーガーナインの無茶苦茶な試合にすっかり影響された子供たちである。
 ファンサービス大いに結構、だが……。

「…………子供たちが邪魔で、オブリビオンを追えない……!」

 そう、あくまで試合は前哨戦、オブリビオンである怪人オンナマズを倒さないことにはこの戦いは終わらないのだ。
 子供たちを傷つけるわけにはいかない、どうにかして、彼らにどいてもらわねばならない!
旗村・グローリー
こどもたちをなんとかしよう。

マスコミが発表した、今年のちびっこが好きなものランキングによると、1位:パンダ、2位:ヒーロー、3位:ハンドアックスという結果が出ている。すなわち全てを備えたおれの出番だ。

PHK(パンダ放送協会)の年末恒例番組である白黒歌合戦でもトリをつとめるおれの持ち歌、パンダちゃんサンバを歌いながら、こどもたちを誘導しようじゃあないか。

ぱーんだぱんだぱーんだーぱんだちゃんサンーーバーーーオレィ♪
オブリビオンとは逆の方向に華麗なるサンバを踊りながら、ちびどもを引き連れて練り歩こう。ファンサービスも兼ねたこの一連の動きにチームの人気は高まる一方だろう。よきかなよきかな。



◆ちびっこたちの好きなもの

 CWIPRというものをご存知だろうか。
 キマイラ・ワールド・イイネ・パンダ・レコードの略であり今年のキマイラたちが「イイネ!」だったものをランキング化したものである。
 なお非公式かつ調査内容は不明である。

 このCWIRによると今年のちびっこ達が「イイネ!」だったランキングは以下の通りである。

 一位:パンダ
 二位:ヒーロー
 三位:ハンドアックス

 どうだろうか、誰かを思い出さないだろうか。
 そう、僕らは知っている。
 パンダでヒーローでハンドアックスな彼の名を。そう彼こそは――――。

 ●

「ぱーんだぱんだぱーんだー♪」
『ぱーんだぱんだぱーんだー♪』

 旗村・グローリー(ザ・ジャイアントパンダ・f04986)が歌っているのは皆おなじみパンダちゃんサンバである。
 PHK(パンダ放送協会)の年末恒例番組である白黒歌合戦では例年トリを務めるグローリーの生サンバにキマイラの子どもたちは大はしゃぎだ。

「ぱーんだぱんだぱーんだーぱんだちゃんサンーーバーーー」
『オーレィッ♪』

 それはさながら現代のブレーメンの音楽隊。
 ジャイアント・パンダ(哺乳綱食肉目クマ科ジャイアントパンダ属)のマスクを被った男(実際はマスクそのもの)の踊る軽快なサンバに釣られ、子どもたちはその後を追ってオブリビオン達とは逆方向に向かってゆく。
 もちろん彼らは行方不明になることなく、そのままスタジアムに逆戻りし残っていた観客達とマスコミの前で子どもたちとレッツサンバ。
 その光景はカメラにも撮影され翌日の一面に『パンダちゃんサンバ、今年も絶好調!』の見出しと共に翌日の日刊大熊猫新聞の一面を飾るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マリアブリレ・ニネヴェマスナガ
子どもは国の礎、何にも代えられぬ至高の宝……どうか健やかに育ってもらいたいものだ。ゆえに今回は「5000兆円で札束の池を作る」ぞ。

「金で作った池に子らを誘い込み、彼らが遊んでいる隙に女王は横を華麗にすり抜ける!」 日々の手入れを欠かさぬゆえ、いくら駆けても眼鏡はズレる心配がないし……女王にふさわしい完璧な作戦だな。

知っているか、子らよ。
ピン札は木の実のように芳醇な香りがする。肌触りは絹の羽二重。身を包み押し返す弾力はまさに生娘の太腿ぞ。

現世で最もぜいたくなプールがここにある。
欲望に身を任せ、思うがまま味わっていけ!



◆ ノブリスオブ眼鏡リージュ

 マリアブリレ・ニネヴェマスナガ(サイバー都市SABAEに降り立った最後の眼鏡女王・f02341)は一人の高貴なる者としてこう思う。
 眼鏡という種をその顔に芽吹かせ、新たな地に運ぶ天使であり、未来。
 人口とは即ち、眼鏡を掛けられる人間の数を指す。
 そんな彼女が、子供たちを無碍に扱えるだろうか。
 国の礎、何にも変えられぬ至高の宝である。なればこそ。
 どうか健やかに、健全に、健康に育ってほしい。
 だから、マリアブリレは杖でとん、と地面を軽く突いた。
 波動が空気を伝い、波紋のように広がる。
 女王の力にて大地に芽吹くのは―――力強く、そして壮大に、あらゆる願望と欲望を飲み込み、人の心を満たす力。
 そう、5000兆円である。



「すっげー! お金が一杯だー!」
「こんだけあったらドーナツ腹いっぱいくえるなー!」

 キマイラの子どもたちは5000兆円の泉に夢中だった。
 札束の風呂どころではない、札束の海である。
 大人も溺れる物理的欲求の限界値がここにある。お年玉だとしても壮大過ぎる。

「子らよ――聞くが良い。ピン札は木の実のように芳醇な香りがする。肌触りは絹の羽二重。身を包み押し返す弾力はまさに生娘の太腿ぞ。
 味わえ……存分に味わえ……心を満たし、身体を満たし、顔(かんばせ)を眼鏡で満たすが良い……」

 子供たちが夢中になっている間に、本人はすすっと間を通り過ぎてゆく。
 あまりに洗練された所作に、スカートは乱れること無く、眼鏡もズレることはない。
 女王がその場から立ち去ったことを気づいた者は、いなかった……。

 なおキマイラフューチャーの通貨は多分、円ではないと思います。

成功 🔵​🔵​🔴​

ロク・ザイオン
●WIZ
(「生まれながらの光」を放ち、注目を集める。こちらに出来る限り引き付けて、追うものたちが先を行く礎になるといい)
(さっきアラジが使っていたように、光は、更に追いすがろうとする子供たちの目をくらまし、足を止めることが出来るだろうか)

…………。
(それにしても)
…………っ。
(子供かわいい。小さく愛らしく健やかで新しいものが足元でもちょもちょしている。かわいい)
………………っ。
(顔をうずめたい。息を吸い込みたい)

……こどもたち。
………………わるいやつらを追わせてほしい。

(みにくい声を子供の耳に入れたら逃げられてしまうかも知れないので。できれば引き付けた子供の説得は、口のうまい者に任せたい)


メルエ・メルルルシア
わかった、わかった。子供が相手なら超プリティな妖精さんの出番だな

なあお前ら、妖精の野球選手には不思議な力があるって知ってるかい? ほら、よく言うだろ、子供が不思議な世界に迷い込んでしまう……押入れとか、知らない森とか、野球場とかが異界へとつながる、そういう話

お前ら全員、オレ様の世界へ招待してやる……オレ様の箱を大量に大人買いした、野球選手スナック(カード付き)でもてなしてやんよ

あ、飽きたらすぐ出れるから安心しろな……お菓子食べてもいいけど、あんまり散らかすんじゃねえぞ……年末大掃除したばっかりなんだから
【自分の秘密基地へと子供を招待することで、子供を傷つけずに退かします】



◆ 抱きしめたいけど我慢して。

 先だっての試合で、一人の聖者の行動を思い出す。
 生まれつき、光る―――そうか、それは許されるのか。
 ロク・ザイオン(疾走する閃光・f01377)もまた、生まれながらにして光を宿す聖者である。
 ならば、その光は子供たちの目をくらまし、足を止めることが出来るはずだ。

「わー、っすっげー! 兄ちゃんもイェーガーナイン!?」
「………………」

 いや、お姉さんだよ、とか。男ではないのだよ、と説明したいが、己の声は――――。

(子供を怖がらせて、しまう)

 ……かも、知れない。
 良くも悪くも無邪気の化身、天真爛漫で楽しいことが大好きなキマイラの子どもたちだ。
 酷く怯えるかも知れないし、対して気にしないかも知れない。
 けれど、『もしかして』があるのなら、動けないのも人というものだ。
 だって……。

(…………それにしても)

 わちゃわちゃ群がる子供たちをみて、ロクの心は――――。

(子供、かわいい)
(小さく愛らしく健やかで新しいものが足元でもちょもちょしている。かわいい)
(顔をうずめたい。息を吸い込みたい)

 ロクの『大好物』である。満喫したい。折角向こうから来てるんだから、遠慮する必要もないのでは?
 わずかに抱いた邪心を、いやいや、と振り払う。今の彼女の仕事はオブリビオンを倒すことであり、子供たちから遠ざからねばならないのだ。
 それは傍から見ていて、子供に囲まれて、困っているように見えたかも知れない。

「わかった、わかった。子供が相手なら超プリティな妖精さんの出番だな」

 ティリリリリリリリリリリ。
 妖精がその羽根で空中を移動する時、実は空気を叩いているのではない。
 妖精は妖精だから宙に浮き、妖精だから飛べるのだ。
 そして、その際に生じる音は、妖精が「夢」を消費している音なのだという。
 誰もが妖精に抱く幻想を、彼女達はエネルギーにする。皆が幻想を失えば、妖精もまた消えるだろう。
 ここまで全部ただの妄言だがそれはそれとして。

「大丈夫か? ったく、しょうがねえなあ」
「……い、いや……その……」

 顔の横に飛んできたフェアリー、メルエ・メルルルシア(宿り木妖精・f00640)は、やれやれ、ほうっておけねえぜ、と近寄ってきた。
 困っているのは事実だが、それは己の欲望を抑えるためと、子供たちを恐怖させないためである。
 ロクは小声で、ひそひそとメルエの耳元(体全体)で囁いた。

(ふんふん……うん? なるほどな。だったら、オレ様にまかせとけ、合図をしたら、光れよ)
(…………わかった)

 くるりと子供たちに向き直ったメルエ。試合で一点をとった小さな妖精の人気はやはり高い。子供たちのテンションもうなぎのぼりだ。

「よーしよしよしわかったわかった。所でお前ら、妖精の野球選手には不思議な力があるって知ってるか?」
「「不思議な力ー?」」

 子供たちの声が唱和する。

「そう、押入れや知らない森……あー、この世界森とかあんのかな……ほら、路地裏とか、そういう所に足を踏み入れると、気づいたら不思議な所にいるっていう……」

「あー、よくあるよねー」
「穴に落ちたら上に上がってたりとか」
「滑り台からジャンプしたらずーっと落ちてったりとか」
「壁を叩くとドーナツが出るんだよな!」

「この世界やべーな!」

 良くも悪くもキマイラフューチャーに既存世界の常識は通じない。
 だが、常識が通じないのは、猟兵もまた同じ、だ。

「…………野球選手スナック食う?」
「「「食べるーーー!!!」」」
「よぉし、だったら不思議な世界へご招待だ。いいか? こっちの奴をよーくみとけ、3,2,1で連れてってやる」

 示されたロクは小さく頷き。

「いいかー! 3! 2! 1!」

 ピカッ。

「「「うおっ! まぶしっ!」」」

 全身から放たれる『生まれながらの光』が、子供たちの目をくらます。
 その瞬間を見計らい、メルエは飛び立ち、てちてちてち、と子供たちをタッチ。
 妖精の小さな手に触れた子供たちは、次々とメルエの秘密基地にご招待、その場から姿を消した。
 行き先は、お菓子が沢山用意された、ユーベルコード製の亜空間だ。理屈はよくわからんが出るのも自由。
 親御さんが心配するまでに、お家に返せばそれで良い。

「あ、そうだ、あんまり散らかすなよな! 年末大掃除したばっかなんだから!」

 一応手のひらに向けて声を上げる。聞こえているだろうか。あのテンションの子供たちだもんな、多分無理ですよメルエさん。

「っと、よし、先に行こうぜ」
「……協力、感謝、する」
「何、いいって、ビビらせたくなかったんだろ? そういう奴には妖精さんが、そっと手を貸してやるものさ」

 小さいけれど子供ではない妖精。大人のメルエは、それでも愛らしくにひひ、と笑った。

「優しいやつは、嫌われちゃ駄目なのさ。そうだろ?」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夢幻・天魔
【WIZ:数々の俺の伝説を語り子供たちを引き付ける。その隙に仲間たちには進んでもらう】

フハハハハハ!!!
また俺の輝かしい伝説の1ページを作ってしまったようだな

フッ、未来の戦士達よ!
今日はこの俺の数々の輝かしい栄誉の数々を聞けることを幸運に思うが良い

そう、アレは第18の世界のことであった
大宇宙甲子園にて決勝戦、ツーアウトの場面で代打に出た俺
点差は100点という絶望的な状況だ
しかし、この俺が出て負けるはずがない
我が打球は天を越え月を砕き、1万点のボーナスで優勝したのだ!!
これこそが我が奥義ムーンブレイカー!!!

(バトルキャラクターズで数々の伝説(※厨二妄想)を演劇の如く再現します)


ジャガーノート・ジャック
(ザザッ、ガ、ピー)――まさか子供達がこう言った形で立ちはだかるとは。
いや、問題ない。修正できる範囲内だ、任務を再開する。

(ザザッ)
SPD使用。
使用UC:『Craft: Bomb』。
生成対象は『かんしゃく玉(打ち上げ花火)』。

芸と言えるかはわからないが、子供達の目を惹くのには十二分と推察。

打ち上げはせっかくバッターが多いのだ、
友軍の何れかに任せるとする。
猟兵ならこの程度、華麗に打ち上げられると信じている。

もしくは該当者がいない場合
技能『武器改造』を使用し自身の腕を打ち上げ砲に改造、かんしゃく玉を射出する。

本機の行動指針は以上、作戦の実行に移る。オーヴァ。
(ザザッ)



◆伝説は語るものではなく。

 キマイラフューチャーの子供たちにとって、猟兵は「ヒーロー」だ。
 だから際限なく期待をし、上限なく希望を見出す。
 言い換えれば、自らハードルを上げ続ける限り、彼らは無限にその理想値を高めていく。
 故に……。

「そう、あれは第18世界のことであった――――」

 夢幻・天魔(千の設定を持つ男・f00720)の語る言葉は、己の武勇が如何に誇らしく英雄的であったかどうかである。
 それが例えば、良識のある大人であれば、『はいはい、なるほどね』と流す内容であったとしても、子供たちにとっては心躍り高ぶる物語であり、伝説を生きた当人から語られる英雄譚の一つなのだ。

「大宇宙甲子園にて決勝戦、ツーアウトバッター三塁。誰もが敗北を覚悟した――点差は百点。ホームラン一回では足りなかったからな――そこで、俺の出番が来たというわけだ」

 異様に格好いい本片手に、天魔は己の『設定』を語る。
 彼が手をかざせば、生み出されたバトルキャラクター達が当時の状況を再現(?)してくれる。
 臨場感のある演出に、子供たちの目はもう夢中である。

「――――お前達は月を壊したことがあるか?」

 天魔はピッチャー(役のバトルキャラクター)に向けてそう告げた。

「フハハハハハハハ! 俺にならば出来る! 見るが良い、俺の奥義ムーンブレイカーを!」
「「「「ワアアアアアアアアアア!」」」」

 ヒーロー番組もかくやという勢いで、今か今かと続きを期待する子供たち。

 ある者は本当に月を指差す。「本当にあれを壊せるの?」と。
 ある者は感動で前が見えない。「やべえマジモンの天魔だ……」と。
 ある者はもうなんかすごい。「とにかく面白けりゃいいや!」

 しかし周りの猟兵達(モブ)は思った。
 おいおい、期待値上げすぎちゃう?
 どうすんだこれ、ただ打っただけで満足してくれるのか?
 ……いや、ある意味子供を萎えさせていなくさせればそれはそれで良いのだが。

「さあ……かかってこい!」

 天魔がバットを構えたと同時――――【何か】が剛速球で飛んできた。

 ●

 (ザザッ、ガ、ピー)

 ――まさか子供達がこう言った形で立ちはだかるとは。
 ――問題ない。本機の作戦行動に支障はない。
 ――本機単体の計画修正で事足りるレベルだ。任務を続行する、オーヴァ。

 現在進行系で組み上げられているのは、野球球型の打ち上げ花火だ。
 ジャガーノートのユーベルコードによって、精密・緻密に再現された火薬の塊。
 彼はそれを、ヌルヌルオンナマーズから三振を奪い取ったその腕に装填した。

 これを打ち上げれば、音・光による視線誘導が子供たちの認識を妨げ、任務は速やかに進行するだろう。
 だが――――――。

 ――子供達の注目が一点に集まっている。
 ――猟兵の一人の話に集中していると判断。
 ――…………該当猟兵からの視線による支援申請を受諾。
 ――作戦開始。

 ●

 バトルキャラクターの投球モーションに合わせて、ジャガーノートが射出したかんしゃく玉。
 天魔が振り切ったバットに直撃し、天高くぶち挙げられる。
 高く、高く……上空へ、更に上へ、雲を突き抜けて!

 カッ

「「「「わああああああああああああああああああ!?」」」」

 たった一発の球の中にどれだけの火薬が、どの様に加工されて入っていたというのだろう。
 その光は周囲の雲をすべて吹き飛ばし、昼間だというのになお強い輝きでキマイラ達を夢中にさせた。

「月が出ていないから、この程度で済んでしまったか……ククク、だが、まだまだ、伝説はこれで終わりではないぞ。これは俺が闇のサッカー組織と争った時の話だが……」

 子供たちは食い入るように身を乗り出し、目を輝かせる。
 皆が天魔の話の続きを待ちわびて、手を叩くのだった。


 ●
 
「フハハハハハハハハハハハ!!!」
『……質問。先程の視線は支援要請ではなかったのか?』
「何のことだ? いや、しかし……自らの力が恐ろしい、あそこまでの威力が出るとは……ククク」
『…………任務を続行する。オーヴァ(ザザッ)』

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルース・リース
目立って!!
良いんですね!!!
ええ目立ちます目立ちます目立ちますともさ!
僕のユーベルコード、見えざる交響楽団で試合に疲れた選手達を癒しつつ
指揮棒を振るっただけで音楽が響くことで子供達を驚かせます!!!
方向性としてはSPD判定ですね!僕スピードそんなにないんですけど!
オーケストラの音楽が子供達のお気に召さないならなんだって鳴らせますよ!効果音でも爆発音
でも!歌だって歌えますよ!
とにかく芸を披露した後で子供達に協力をお願いして、オブリビオンを追跡します!
一番最初に頼むのは…指揮棒を振るって疲労困憊になった僕を運んでもらうことでしょうか……。
あ、指揮棒を持って行かれたら僕何も出来ないのであしからず。


照崎・舞雪
少し離れた場所で存在感1を発揮しつつ
特性マイマイクでキマイラの子供達へ呼びかける

「さぁ皆さん
ヒーローたちへのサインのおねだりもいいですが
今からそんなヒーロー、イェーガーナインのグッズを販売するのですよー!」
「なんと、今スタジアム限定グッズもあるのです!数に限りがありますので欲しい人はこちらにどうぞー。あ、早い者勝ちなんて言いませんよ?そうですねー、じゃんけん大会とかで決めましょうか」

と勝手にイェーガーナイングッズを作って販売することで
子供達をある程度自分に引きつける

(さぁ皆さん、今の内にあのナマズ怪人たちを!)
アイコンタクトが伝わるか否かは不明



◆野球と言ったら。

『オーオー! 彼らの勇姿を刻みつけろー! レッツゴー! イェーガーナイーン!!』

 ルース・リース(選ばれし者だったから・f07737)が指揮棒を振るう度に、《見えざる交響楽団(インビシブル・フィルハーモニー・オーケストラ)》による演奏・歌唱が響き渡る。
 指揮棒を振る事によって、自在に音を生み出せるこのユーベルコードが、ルースの真骨頂だ。
 即興で作り上げた歌だが、イェーガーナインの活躍に心奪われた子供たちにとっては好評だったようで、アンコールが止まらない。

(ああ、僕は今、ものすごく目立っている……っ!)

 荘厳かつ重厚なメロディーを生み出しているのが、彼であると気づけば、その視線は集中し続ける。
 目立つ、イコール、満たされる承認欲求である。
 その快感は新たな音楽を生む。指揮棒を振るえば音が生まれ、音が生まれれば声援が生まれ、声援が生まれればまた承認欲求が満たされる。
 幸福の無限ループ! 脳内物質フェスティバル! ああ、今こそ我が音楽よ、世界に満ちて賛美するが良い!

「さあ――――もう一曲行きましょうか!」

 ●

「はーい、こちらの応援歌を収録したCDはこちらで販売していますよー!」

 勿論、それだけで終わらないのが猟兵という連中である。
 照崎・舞雪(未来照らし舞う雪の明かり・f05079)は早速、イェーガーナインのグッズ販売(完全非公式)に乗り出し、子供たちの興味を引く。

「数に限りがありますので、欲しい方はお早めにー! ああ、こらこら、喧嘩しちゃ駄目ですよ、ほら、じゃんけんで決めましょう、じゃーんけん」

 あれが欲しい、これが欲しい、そして数量限定とくれば、子供だけに喧嘩も始める。
 仲裁をしながら、舞雪はオブリビオンを追う猟兵達を見送った。

(さあ、今のうちにあのナマズ怪人を! ……うまくいくと良いんですけどねえ)

「…………?」

 いつの間にか、音楽が消えていた。
 くうるりと振り返った先、ルースが指揮棒を掲げたまま、横にぶっ倒れていた。

「……あの?」
「……いや、これ、滅茶苦茶体力使うんですよ……すいません、起こしてもらっていいですか……」

 力には代償が伴う。
 舞雪は頬に手を当てて、はぁとため息を吐いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

トルメンタ・アンゲルス
【SPD】
(流石に多いですね。子供の思いは無下には出来ませんねぇ。彼らの方から、離れてもらいませんとね)

何故こんなに我々が強かったか。
そして何故俺があんなに速かったか。
秘密を教えてあげましょう!
……ぁ、ちょっと離れててくださいね?危ないですから。

何故なら!
「MaximumEngine――Formula」(ベルトの機械音声)
我らはヒーロー、猟兵(イェーガー)だからですよ!
変身!アクセルユニゾン!

変身ポーズの後、眩い光と共に宇宙バイクNoChaserと変身合体!
子供らがまた集まる前にハアッ!と高く跳躍し、スマッシュ・エアで空を駆け抜けて人混みを飛び越えて、最速で怪人オンナマズを追跡しますよ!



◆ヒーローは飛ぶ。

(流石に多いですね。子供の思いは無下には出来ませんねぇ。彼らの方から、離れてもらいませんとね)

 子供たちが何かに憧れたり、自らもそうなりたい、と思う気持ちは当然だ。
 だからこそ、力づくで退けるのは憚られる。そもそも、彼らの心に火をつけたのは猟兵達なのだし――。

「ねえねえ、何であんなに速かったの!」
「俺もあんなかっこいいバイク乗りてぇ!」
「もう一回やってー!」

 子供たちに取り囲まれたトルメンタ・アンゲルス(流星ライダー・f02253)は、服の裾をグイグイ引っ張られながらも、嫌な顔ひとつしなかった。

「……実は、私の力には秘密があるんです。こっそりお教えしましょうか?」

 小さな声でそう言うと、子供たちはキラキラと目を輝かせる。

「本当に!?」
「ええ、勿論……ぁ、ちょっと離れててくださいね? 危ないですから」

 秘密を教えてもらえるとあらば、素直に引き下がる子供たち。

「何故こんなに我々が強かったか――――」
『MaximumEngine』

 腰部に装着された、トルメンタ専用ベルトに触れる。
 機械音声と共に、周囲に光のパネルが展開。構築されるのは相方の宇宙バイク――『NoChaser』。

「そして何故俺があんなに速かったか――――」
『――Formula』

 トルメンタの背後に出現した、機械回路のような光の罫線が、バイクの各部ポインターに接続されていく。
 【OK】【OK】【OK】【OK】【OK】――――システムオールグリーン。
 全ての【OK】が自身の形を【CONNECT】の文字に変えた。

「何故なら――――我らはヒーロー! 猟兵(イェーガー)だからですよ! 変身! アクセルユニゾン!」
『Accel Unison』

 『NoChaser』のジョイントが変形、パーツに分解、再構築され、光のラインを辿ってトルメンタの体に装着される。
 一瞬の後、まばゆい光に包まれ、変身合体は完了した。

「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」

「ハアッ!」

 子供たちが興奮で駆け寄るその一瞬前に、トルメンタは跳躍した。
 空中を蹴り上げ、超跳躍する姿はまさしくヒーロー!
 ぴっ、と指を立てて子供たちに別れを告げ――――トルメンタはオブリビオンの追跡に入った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

桜庭・英治
そのとき英治に電撃走る
これは『ここは俺に任せて先に行け』を言えるシチュエーションでは!?

「みんな!」

『おびき寄せ1』『誘惑1』で大声を出しながらマウント上で大きく手を挙げ目立つポーズ
子供たちの目を引くために全力アピール

「ここは俺に任せて!!」

『パフォーマンス16』で意味もなくスタイリッシュなポーズ
なんやかんや感銘を与えます

「先に行け!!!!!!」

ここは俺に任せて先に行けのポーズをします
かっこいいぞ

「グワアアアアアッ!!」

味方の追跡を支援するために子供たちの殺到を受けて揉みくちゃにされて姿が見えなくなる
レストインピース


ロカロカ・ペルペンテュッティ
第六感に従って、敵が逃亡に入った辺りの時点で標本番号342《追跡者》呼び出し、押し寄せるキマイラの皆さんの合間を抜けて、敵の追跡に入りましょう。
並行して、キマイラの皆さんからは、怪人オンナマズの捜索に協力してもらえるように話を聞いてみましょうか。
ボクは正直話術は不得意ですが、彼らも強かった、次に当たったらどうなるかわからない、次に向けて意気込みなど、彼らの話も聞いてみたくはないか?というような風に、オンナマズのチームに対する興味を引く方に話をしてみましょう。
脱出が困難そうなら最悪《グレイプ二ル・ペンデュラム》を適当なところに伸ばして脱出します。(技能:地形の利用+ロープワーク)



◆影は過去の姿を追い。

 標本番号342《追跡者》。
 ロカロカ・ペルペンテュッティ(《標本集》・f00198)の体内に封じられた数多の《標本》の一つ。
 『それ』は速やかにオブリビオンの後を追う。
 逃げに徹していても、そこまで速度は速くない上に、こちらに注意を払う様子がない。
 怪人オンナマズの姿はすぐに見つかった。そして――――。

(――――見つけた)

 根城を抑えた。
 キマイラスタジアムから少し離れた場所にある、小さく、寂れ、今は誰も利用してない閉鎖した野球場。

「…………ぁなぁ! サインくれよサイン!」
「っ!」

 《追跡者》は五感を共有する故、目を閉じて集中していたからか、集まった子供たちの気配に気づくのが遅れてしまった。

「え、ええ、失礼しました……」

 不慣れなサインに応じながら、子供たちの質問を通じて、さり気なく情報を引き出していく。

「なあなあ、やっぱり楽勝だった?」
「いえ、彼女(?)達も強敵でした、次当たったらどうなるかわかりません……応援してくれますか?」
「勿論! アイツラずるいんだもん、前からさー」
「……前?」
「そうだよ、ヌルヌルオンナマーズって昔はプロ球団の一つだったんだけど、ドーピングとかが発覚して球界を追い出されたんだよ」

 ねー、と顔を見合わせる子供たち。

「そうですか、そんな事が……ありがとうございます、では、ボクはこれで」
「えー! もっと話聞かせてよー!」
「ホームラン打ってー!」「ねえねえー!」

 居場所も突き止めた。あとは倒しにゆくだけなのだが、子供たちはどうにも、まだ話を続けたいらしい。
 無理やり離脱することは可能だろうが、子供たちの期待の視線から逃げるのも、なんとなく心苦しいものがある。

「―――大丈夫だ」

 その時、一人の男が現れた。
 桜庭・英治(NewAge・f00459)はロカロカに近づくと、その肩を軽く叩いてそう言った。
 試合でホームランを決めたスター選手(?)の登場に、子供たちがより一層沸き立つ。

 何かの確信に満ちた顔。
 何かを決意した顔。
 これは――覚悟を決めた者の顔だ。

 それを一目で読み取ったロカロカは、小さく頷いて一歩引いた。
 英治は子供たちを前に、大きく息を吸い込んで――――叫んだ。

「みんな――――――――――!!!!!!」

 大声に、周囲の全員が一斉に英治を注目する。

「ここは!!!!! 俺に任せて!!!!」

 跳躍。
 知っているだろうか、ヒトの垂直跳び世界記録はUDCアース基準で言えば公的には129cmと言われているらしい。
 彼はその三倍飛んだ。回転も加えて。

「先に!!!!!!」

 五回転半捻り。意味はあるのか? 無論無い。
 だがパフォーマンスに意味を求めてどうするというのか。
 派手であり、注目され、勢いがあり、それでいてかっこいい。
 大事なのはそういう物だ。何せこの世界の連中は皆そういうのが大好きだ。

「行けええええええええええええええええええええええええ!!!」

 着地、片手を振り上げる。コングラッチュレーション。
 確かな感動、確かな情熱、勢いは大事だ、細かいことを捨て置ける。

「「「「「ワアアアアアアアアアアアアアア!!!!」」」」」

 『よくわかんねえけどすごいし盛り上がってる!』
 それでいいのだ。それがよいのだ。

「グワアアアアアッ!!」

 殺到したキマイラ達に飲み込まれながら、英治はサムズ・アップした。
 親指がモッフモフのキマイラ毛皮に沈んでいく様を、すでに脱出していたロカロカはしっかりとその目に焼き付けた。

(――――でも別に飲み込まれる必要はなかったような)

 必要かどうかではない、熱量かどうかなのだ。
 こうして戦いは最終局面を迎える。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『怪人『オンナマズ』』

POW   :    ジャイアントナマズ
自身の身長の2倍の【巨大ナマズ怪人 】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
SPD   :    ナマズ人召喚
レベル×1体の、【後頭部 】に1と刻印された戦闘用【ナマズ人】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    矢ナマズ発射!
レベル×5本の【雷 】属性の【刺さるデンキナマズ】を放つ。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠鳥渡・璃瑠です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


◆ナマーズスタジアムにて。

 もはや誰も利用していない。
 利用していないということは、手入れもされていない。
 天井は崩れ、客席は朽ち果て。
 バックスクリーンに映し出される映像は無く、スポンサー広告枠には文字のかすれたパンダビールの看板が貼り付けてあるのみ。

「――――――」

 オブリビオンは過去から至る化物だ。怪人たちも例外ではない。
 では怪人オンナマズが野球戦士であったかどうかというと、明確に否だ。
 オンナマズは別に野球戦士ではない。普通の怪人である。
 なのに何故、野球で勝負を挑んだか。
 全てはこの地に因縁があった。

…………。

『ドーピングなんてしてない! 私達は無実よ!』

 ヌルヌルオンナマーズ。かつてキマイラフューチャー666球団の一つに数えられた、れっきとしたプロ・チームだ。
 ウナギ、ナマズ、ドジョウといった若干ヌルヌル目のキマイラ達で構成されたチームは、ある日ドーピングの不正を疑われた。
 あげられた証拠はどれも明確とは言えない。
 しかし、一般大衆にとってスキャンダルとはそれだけで面白く、一度ついた印象は拭えない。
 彼らをまっさきに切ったのはスポンサーだった。不評を受けた球団の評判回復に努めるよりも、見捨てたほうがコスト面で良い、という結論だった。
 何せ後665球団もあるし。

『どうして……どうしてなのよ……!』

 なお何故ドーピング判定が出たかと言うと彼女たちが分泌する体液に含まれる『ムチン』と言う成分に滋養強壮の効果があるからであり、
 いわば始まった時点で全てが終わっていたという悲劇なのだがこれはまあどうでもいい。

…………。

 キマイラフューチャーで新たなブームを起こす。
 過去から現れた怪人が、過去に忘れ去られた球団の皮を借りて挑む。
 滑稽で面白いではないか――――たまたま、自分と造形が重なった。
 怪人オンナマズが野球を選んだのは、他!1d10それだけの理由に過ぎない。

「来たわね……」

 猟兵達の気配に、怪人オンナマズは振り返った。
 場所はマウンド。ボールは鉄球。

「ヌールヌルヌルヌル――――野球をしましょう」

 猟兵達に向かって、オンナマズは告げた。

「投げる。打つ。どちらでもいいわ。一人ずつ勝負よ。打たれるかアウトを取られた者は……一撃を無防備に受ける。どう?」

 バンッ!
 死んだはずのスタジアムに明かりが灯る。
 おい、こっちだこっちだ! と騒ぐ声。
 猟兵たちを追いかけて、スタジアムにキマイラ達が集まり始めたのだ。

「さあ……どうする!!! 猟兵(イェーガー)!!!!!」

【追記補足】
 『バットで打つ』か『ボールを投げる』、どちらかを選んでプレイングをどうぞ。
 熱い野球バトルを期待します。審判はいません。
旗村・グローリー
この勝負、受けて立とう。

投手としてマウンドに立つ。
両手に持った斧と斧の間にボールである鉄球を掴むように挟み、助走をつけた上で前方宙返りを。
その遠心力を活かし鉄球を投擲する。
……分かっている。それではただの超絶豪速球にしか過ぎないことは。
この投法の真価はここからだ。

鉄球を解き放った双斧をその勢いのまま、地面に叩きつけグラウンドクラッシャーによる衝撃を発生。
局地的な地震を起こすのが狙いだ。

ナマズ……それは地震が起これば他のどんな生物よりも敏感にビチビチ反応してしまう哀しき生物……。そこを突く!

いつの日かナマズと野球勝負をすることもあろうかと準備していた対鯰用投法、とくと見るがいい。



◆ 第一投

「この勝負、受けて立とう」

 背後に子供を引き連れ、パンダちゃんサンバと共にスタジアムに入場した旗村・グローリー(ザ・ジャイアントパンダ・f04986)は、そのままマウンドへと立った。
 子供たちは他の猟兵たちに連れられ、そそくさと観客席に移動する。

「ヌルヌルヌル……さっきはいいのをくれたわね」

 自身のバトルキャラクターの首を獲られた事を覚えているのだろう、オンナマズはバッターボックスに入った。
 その手に握られているのは……おお、何ということか、重金属プルトニウム性の特別性である。
 オンナマズの手から伝わる電気によって帯電しており、強い衝撃を受ければユーベルコードの影響もあって強い放射線ビームが投手を襲うだろう。
 つまり――デッド・オア・ヒット。
 当たれば殺す。当たらなければ死ぬ。その獲物を握ることは、強い覚悟を示すことと同義だった。

「あの程度でか?」

 だが、グローリーは淡々と答えるだけだった。その顔に恐怖も動揺もない。

「バッターとしての素質はあるようね、なら、投手としては?」

 応答は、もはや言葉ではない。野球だ。
 両手に構えたハンドアックスの間に、静かに鉄球を挟み込む。
 後方に跳躍したグローリーは、着地と同時に加速をつけて、前方宙返りを行った!

「「「おおお!?!?!」」」

 その回転は止まらない。まるで車輪、あるいは蒸気エンジンによって回り続ける歯車の如く。
 斧に挟み込まれた鉄球にその回転が伝わっていく。
 それはまさに黄金――――いや、白黒の回転エネルギー!

「ハッ!」

 鉄球が両斧から解き放たれた。
 摩擦によって白熱化した豪速球がオンナマズのストライクゾーンめがけて迫る!

(ヌルヌルヌル――――)

 だが――――だが! だが!
 あろうことか! 怪人オンナマズは!
 その回転を……見切っていた!

(技巧は認める、勢いも確かにある――――だが! 所詮この程度、ただの豪速球に過ぎない――――!)

 その程度ならば問題なく打ち抜ける。
 何故か? オンナマズは今この場においてのみ、野球戦士だからだ。

(初球、獲った――――!)

 帯電するプルトニウム・バットの握りを強める。あとコンマ0.2秒後、描くのは力強いアーチと殺人放射線ビームだ。
 パンダの英雄は地に倒れ死ぬ、そのはずだった。

「おれの心は燃えている」

 だが。
 だが――――だが!
 誰も言っていない。
 旗村・グローリーの一投が終わりだとは、誰も言っていない!
 なぜなら一投を投げても二刀のハンドアックスがその手に握られているからだ!

「止まることなく――――燃えている」

 ズズンッ と。
 スタジアムを、いや、大地を揺らす一撃だった。
 その瞬間起こったことは、ある種の必然がもたらす悲劇。

 ピチピチピチピチッ。
 オンナマズは……はねていた。
 体を横に寝そべらせ、ひげをピクピク動かし、はねていた。
 何故か? オンナマズは今も過去も未来も、ナマズだからだ。
 ナマズとは地震に敏感な生き物であり、オンナマズはナマズであるがゆえにその振動を察知してしまいはねてしまったのだ。

(馬鹿な――――こんなアンチ・ナマズ・ベースボールテクニック――即座に編み出せるわけ――いや!)

 オンナマズは見た。
 グローリーの瞳の中にある、その目の光を見た。
 局地的地震を起こした熱誠(ネッセイ)の一撃から立ち上がるグローリー。

「いつの日かナマズと野球勝負をすることもあろうかと」

 鉄球が、オンナマズの腹に食い込んだ。

「準備していた対ナマズ用投法――――お前は事前の準備を怠った。それだけだ」
「ガハッッッッッッッ!」

 吐血。
 オンナマズが痛みをこらえ立ち上がった時、もうマウンドにグローリーの姿はなかった。
 己のやるべきことは終えた、と言わんばかりに。
 勝負は――俺の勝ちだと言外に告げて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャガーノート・ジャック
(ザザッ)
――敵性存在を視認。
迅速な殲滅の為には勝負に乗る方が効率的と判断。
全力で撃つのみ。

(ザザッ)
SPD使用。
【ボールを投げる】。
使用UC:『Full-Arm Storm』。

『一球勝負』とは宣言されていない。
であるならば、本機の全力を解放し殲滅砲撃を実施するのみ。

『武器改造』により弾丸を鉄球に。
『スナイパー』『誘導弾』『一斉発射』併用、弾幕により制圧する。
一度目の弾幕を制圧されたとして、『二回攻撃』により二度目の弾幕を展開。

(ザザッ)
――撃つ間ハ正気ナク、殺意アルノミ。たダ猛ル獣の如く敵ヲ撃ツ。
コロスイジョウニコロシツクス。

本機ノ行動指針ハ以上、実行ニ移ル。オーヴァ。
(ザザッ)



◆ 第二投。

『――敵性存在を視認』

 続いてマウンドに上がったのは、ジャガーノート・ジャック(OVERKILL・f02381)。
 豹型の躯体は四肢を屈め、大地に根を張り、圧倒的な重心の安定を確保すると、機械的に告げた。

「フンッ」

 オンナマズの鼻から二リットル程の血液が勢いよく吹き出た。

「ヌルヌルヌル……これで良好(よし)。次は……アンタね」

 腹に受けた鉄球を放り投げ、オンナマズは再びバッターボックスに入る。
 たとえそれが野球勝負であっても、オンナマズは強力なオブリビオンだ。
 本来、猟兵たちが徒党を組んで挑む相手なのだ――負傷はしているものの、まだその行動に余力がある。

「次はストライクはないわよ」
『同意見だ、本機もストライクを取る必然性を感じない』

 機械鎧の全砲塔が一斉展開。
 その場で即座に機構を改造し、鉄球を弾丸として装填。
 大小合わせて七十と二、くしくもそれは悪魔の数と等しかった。

【 Limiter off ? 】
【 Yes No 】

 眼前に表示される最終警告。
 Yesを押せば、己を制御するものは無くなる。
 ジャガーノートを『機械の様な』と枕詞をつけて呼ぶのであれば、もう機械ですらなくなる。

(――撃つ間ハ正気ナク)

 躊躇いはない。目的が優先。敵性対象は殲滅。

(殺意アルノミ)

 そうあるべきだと定義したのは他ならぬ己故に。

(たダ猛ル獣の如く敵ヲ撃ツ)

 表示された【 No 】の電子表示枠を、ジャガーノートは噛み砕いて破壊した。

『全兵装展開――、殲滅、開始――Gurrrrrrrrrrh――Gaaaaaaahhhhhhhhhhhh!』

 撃つ。撃つ。
 撃つ撃つ撃つ撃つ。
 鉄球を弾とする一斉掃射、もはやこれは野球ではなく戦争だ。
 いや――――!

「ヌルヌルヌルヌルヌルヌル!!!!!」

 打つ。打つ。
 打つ打つ打つ打つ。
 飛び来る鉄球を無数のフルスイングで打ち返す!
 ならばこれは野球だ。珠を投げて打ち返すのだから野球と言わずしてなんと呼ぶ。

「ヌルヌルヌルヌルヌル! そんなものか猟兵!!!」

 体に鉄球が命中しようと、オンナマズはスイングを止めない。

「殺意があっても意思がないねぇ! アタシからアウトを取ろうとしてたアンタの眼の方が――――」

 カキン。
 プルトニウム・バットが放たれた鉄球の一つを、ついに真芯に捉え、跳ね返す。

「悍ましかったね…………っ!」

 一直線のピッチャー返し。ジャガーノートの頭部に鋭く突き刺さった。

『――――――――――!』

 ザザッ。
 頭部にノイズが走る。
 Error。Error。Error。Error。
 即時修正、攻撃へ戻れ。
 殺し尽くすまで手を止めるな。それが――――。

「――――さぁ、来な」

 動きを一瞬止めたジャガーノートの前で、オンナマズは構えた。
 もはやアウトだとかヒットではない。バントでもホームランでもない。
 投手と打手が構えている。
 だから勝負がある。これはそういう領域であった。

『―――――否定』

 ジャガーノートの瞳部分が赤く光り、明滅した。

『本機は敵性対象を殲滅する』
「ヌルヌルヌルやってみなよ――野球でね」

【 Limiter off ? 】
【 Yes No 】

 再度表示された電子の質問に、ジャガーノートは目を向けなかった。

『―――――勝負』

 角度決定。速度決定。威力決定。
 改造開始……終了。誤差修正。
 球種:カーブ。
 ターゲット:ストライクゾーン。
 目標決定。
 
『―――――射撃』

 跳ね返された鉄球には――オンナマズが帯電していたことによって電気が流れていた。
 頭部のそれから機械鎧に電気を回収、武装を改造――これは、レールガンによる超高速射撃!

「ハッ――――――だがっ!」

 カーブ球を、オンナマズは見切った。
 再度バットで珠の真芯を捉え、足に力を入れる。

「打っ――――――何ぃいいいいいいいい!?」

 バットと球がぶつかり合い、硬直したその一瞬。
 同時に放たれていた【二つ目の鉄球】が、一つ目の球を押し込んだ。
 プルトニウム・バットに罅が入り、強い放射能光線がオンナマズを襲う。

「ば、馬鹿な――!」

 二つの鉄球がバットを砕き、ストライクゾーンを貫いてパンダビールの広告看板を貫いた。
 一瞬の無言、後、観客達の声援。崩れ落ちるオンナマズに、ジャガーノートは追撃を加えようとして――――。

『(ザザッ)…………残弾ゼロ。攻撃続行不可と判断』

 ノイズ混じりの音をこぼすと、くるりと背を向けた。

『――――任務完了。次の投球を猟兵に委ねる。オーヴァ』

成功 🔵​🔵​🔴​

照崎・舞雪
『ボールを投げる』のです
ただボールを投げるのではありません
すっごくかわいいポーズを取りながらボールを投げるのです
ただの可愛いポーズではなく、すっごくかわいいポーズなのです
ボールを投げるとき、ウィンクばちこーん、も忘れません
相手が怪人だろうが女だろうが、私にときめいてもらうのです
激しい胸キュンで行動不能になったあのヌルヌル怪人がまともに私のボールを打てるはずがないでしょう?
つまり、私の勝ちなのです


神威・くるる
『ボールを投げる』
滋養強壮……ぜひご相伴預かりたいさかい、参加してみよかなぁ。ふふ。
野球のルール全然知らへんねけど、とりあえずこのタマを投げればええんやね?
え~~~~い♥(ぽーい、ヘロヘロヘロ~~~)
ああ!ボールが落ちてまう~
猫ちゃんたち助けて~!

落ちた球が地面につく前に猫ちゃんたちに運んでもらいまひょ
とにかくゴール?までタマぁ運べばええんどっしゃろ?
巨大なナマズはんが妨害してきてもマタの間走ればかわせそうやし
猫ちゃんたち、おきばりやすー

……ナマズはんの血、滋養強壮にええいうても、生臭そうやなぁ……
飲ませてもらうん、考えてまうなぁ……飲むけど。



◆第三投。

「はーい! 次は私が投げまーす!」

 マウンドに立った照崎・舞雪(未来照らし舞う雪の明かり・f05079)は、ひらひらと観客手を振りながら自らの存在をアピールした。
 和服の上からコートを羽織った、なんともちぐはぐな印象の彼女だが。

「ヌルヌルヌル……女、子供、手加減しないよ、アタシは」

 新たな重金属プルトニウムバットを構えたオンナマズは、なよっとした舞雪を見て、若干苛立たしげに目を細めた。
 生半可な覚悟でピッチに立つということはどういうことか? 死だ。野球とはそんな甘いものではない。
 だが。

「あーあ、怖い顔してますね。そんな顔をしているから、チームが解散に追い込まれちゃうんですよ」
「…………なんですって?」
「せっかくの女子チームだったのに、花がない、ということです」

 いいながら、舞雪は鉄球に手を伸ばした。
 か弱い女子にはちょっと重い、両手で、んしょ、と持ち上げて、おとと、とふらりと体が揺らめく。

「さあ、投げますよー!」

 ぱちん、とウインクを一つ決めて、ててて、と小さく走って、えいっ、と可愛い声を上げて、ぽいっと愛らしい仕草で球を投げる。

「………………」

 オンナマズの怒りは頂点に達しようとしていた。
 ふざけているのか? 野球を舐めているのか? 媚びてどうする? 可愛くてどうする?
 野球とは戦場だ。ここは死地だ。油断すれば死ぬ。鋭く目を光らせ、積み重ねた研鑽の果てに、ようやく手にした技術という確かなものだけが武器になるのだ。
 花がない? 野球の花はホームランだ。誰もが得点をめがけて争うからこその野球なのだ。
 わかっていない、この小娘はわかっていない。何をそんなにニコニコと笑顔で…………。

「はーい、すとらーいく! えへっ」
「…………はっ!」

 怒りのあまり頭に血が上りすぎた……いや、それだけじゃない。
 思考も、眼も、目の前の小娘に奪われていた。

「言ったでしょう? 花がないって。花とは、そこにあれば目を引くものなんですよ?」

 そもそも勝負ではなかった――――舞雪はただ、『可愛かっただけ』なのだ。
 もしこれが殺し合いであれば、オンナマズでは舞雪をくびり殺しただろう。
 だがこれは野球だ――球を投げ、打てなかった者の負け。
 野球戦士として……オンナマズは負けたのだ。

「私がここに立っている。つまり、私の勝ちなのです」

 もう一度ぱちんとウインク。観客達が一気に湧いた。

◆第四投

「それじゃあ、次はうちの番やねえ」

 口元を長い袖で隠しながら、神威・くるる(神の威を狩る黒猫・f01129)が舞雪と入れ替わった。
 ぴこぴこと動く耳、可愛らしい顔、細腕はとても戦いに向いているとは思えない。

「ヌルヌルヌル……」

 だが、もう油断はしない。
 見惚れる、などということは断じてないが、相手を舐めることもない。戦士としてみる。

「ふふ、ねえ、ナマズの血って滋養強壮にいいんやろ?」
「ヌルヌルヌル……ええ、アタシの血ともなればそりゃあもうすごいわよ」
「せやったら、うちのタマを打てへんかったら、血ぃ吸わせてくれる?」

 くるるからすれば、凶悪なオブリビオンの血を無条件で吸い上げるチャンスだ。
 タマを投げるだけで血が手に入るのだから、そりゃあ儲けものだろう。

「…………ええ、いいわよ。ヌルヌルヌル……ただし球はアンタの顔面に返るわ」

 黒い重量物がこの柔らかく可愛らしい顔に当たって、骨が砕け肉が潰れ、腫れ上がる様を想像して、オンナマズは口を笑みの形に変えた。

「あやや、怖い怖い。それじゃあ……うわ、重たいわぁ」

 鉄球を拾おうとして持ちきれず、しゃがみこんで、両手にぐぐっと力を込めて、なんとか持ち上げる。

「…………」

 だが、それでもオンナマズに油断はない。先程、似たような挙動の小娘はこちらの裏をかいてきたのだ。
 確実に、球を見て、打ち返す。

「ふう……そんじゃ、え~~~い」

 ぽい、っと放物線を描いて投げられた鉄球は、オンナマズまで、そもそも届かなかった。
 半分ほどの距離で地面に落下し始める、打つ、打たないの問題ではない。

(…………買いかぶったか……?)

 だが、投げ損ねはミスだ。オンナマズに攻撃の権利が生まれる。

「ああ~、ボールが落ちてまう~」

 のんきな声、状況が全く理解できていない。

 ――にやりと。
 あるいは、にゃん、と。

 くるるは、小さく笑った。

「!」

 シュバババババッ、と、突如として現れた黒い影達。
 正体は、猫だ。黒猫だ。一匹一匹は小さいが、俊敏で、しかも数が多い。
 黒猫の群れがボールを包み込み運ぶ。鉄球と保護色になってしまっていて、打つに打てない。

「にゃー!」「なぁーん」「みゃおん」

 猫たちはひょいひょいとオンナマズの周囲をくぐり抜け、ボールを運んでいった。
 打てなかった。すなわち、打者の負けである。

「これもあり、でええんどっしゃろ? 何せ、うちらがやっとるのは真剣勝負やさかい?」

 取るに足らない小娘だと、侮ったことが最大の敗因。
 近寄って、顔を寄せてくるくるるに、オンナマズは抵抗しなかった。

「…………うゎぷ、苦…………」

 苦い鉄の味と、生臭い磯の匂い。
 本当にこれ、効くんやろか……とくるるは血を吸い上げながら首を傾げた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

桜庭・英治
『ボールを投げる』

キマイラキッズに揉みくちゃにされた様子で入場する

待たせたな、オンナマーズ
次は投手で勝負を挑む!
俺の本気を見せてやる
だからお前の本気を見せてみろ!

いくぞ
魔球サイコキネシス!


解説しよう
魔球サイコキネシスとは投げたボールを『念動力4』によって加速、制球したもの
ボールは鋭角に曲がり、時には停止し、または後退し、滅茶苦茶な軌道で襲い掛かるのだ!

カキーン
まあ打たれるんですけどね

だがし心配いらない
魔球サイコキネシスの真価は打たれた後にある
打たれたボールがどこへ飛ぼうと、それこそピッチャー返しでも
たちまち軌道を変えて英治のグローブに収まるのだ!

この勝負、貰った!
歯ァ食いしばれオンナマーズ!!


トルメンタ・アンゲルス
いいでしょう、真っ向勝負と行きましょう!
俺は「ボールを投げ」させていただきますよ!

『ModeShift――HotHatch』
ベルトを再起動、防御力重視のスタイルにチェンジし、
『Tune-Up――SteamEngine』
スチームパワーを組み込んで、更に強化!

直球勝負!ど真ん中に叩き込みましょう!

三振取ったならばよし!

打たれる?
ならば、対処は簡単です。
バットがボールを捉え、反発し、バットから離れた瞬間!
飛ぶよりも速く、一気に接近してキャッチしてやりますよ!
例えバットが一緒に飛んできてもね!
地面に落ちなきゃいいんですものねぇ!

アウトにしたら、最大加速からの追撃のブリッツランツェをお見舞いしましょう!



◆第五投

「「「「ワアアアアアアアアアア!!!」」」」

 オンナマズになかなかヒットを打たせない猟兵たち。
 キマイラたちのテンションはガンガン上がっていくが、そんな中、ついにこの男がやってきた。

「「「「ワアアアアアアア!!」」」
「わああああああああああああああああああ!?」

 そして観客席から落下してきたこの男こそ、仲間たちをスタジアムに送る為、身を挺してパフォーマンスを行っていた桜庭・英治(NewAge・f00459)に他ならない。
 どうやらもみくちゃにされたまま観客席についたキマイラに、無情にも放り投げられたらしい。

「よ、っと……待たせたな」

 しかし、くるりと空中で回転して、慣性に逆らいふわっと着地。
 サイコキネシス。
 サイキッカーたる彼に、物理的法則は意味をなさない。

「……アタシの球を舐めたマネでホームランしてくれた奴だったわね、ヌルヌルヌルヌル」

 オンナマズはその顔に見覚えがある。全力投球を止められた記憶がある。

「ああ、今回も同じだ。俺が投げて、お前は打てない」
「一度見た技が二度通じるとでも?」
「やってみなきゃわからんだろ……俺の本気を見せてやる、だから、お前の本気を見せてみろ! 怪人オンナマズ!」

 英治が投球フォームに入る。片足を振り上げ、腰、肩、腕へと効率よく力を伝え、指先にかかったボールが放たれる。

「――――――!」

 同時に、英治の超能力が発動する。ボールは慣性を忘れ、空中をジグザグに駆け巡りながらオンナマズに迫る。
 ありえない挙動とありえない軌道。二つの理不尽が迫る!

「ヌルヌルヌル……言ったでしょう、その動きは――――一度見たわ!」

 だが!
 オンナマズはなんと、バットから手を離した――――そして帯電したプルトニウムバットを電磁力で操り、ハンドレスバッティングを実現!

「そっちが不規則軌道なら――こっちも不規則軌道よっ!」

 自由自在に動くボールと自由自在に動くバットが激突――だが、バットとボールなら、バットのほうが強い。自明の理だ。
 英治の顔面めがけて、殺戮のピッチャー返しが放たれる。
 鉄球は電磁力の影響でジャイロ回転、周囲の空気を巻き込み渦を作りながら突き進む。
 顔面を貫き、歯をへし折る――いや、首から上を吹き飛ばす、圧倒的火力!

(殺った――!)

 オンナマズは確信と共に握り拳を作った。

「――――と、思ったか?」

 ギュルルルルルルルルルルル。
 鉄球は回転を続けている。回りながら、その質量を押し進めようとしている。
 ――――英治の眼前で、空中の一点に留まり続けながら。

「な、何ィーーーーーーーー!?!?!?」

 パスッ、と抵抗なく、ミットで空中のボールを掴む。バチッと最後の抵抗のように放電して、鉄球は動きを止めた。

「言ったろ? 手が届かなくても出来ることはあるんだよ。さあ、今度はこっちの番だ」

 その鉄球を、ほいと空中に放り投げる。
 ぴた、と視線の先で静止した鉄球は、その場で逆ジャイロ回転を始める。

「勝負は俺の勝ちだ――歯ぁ食いしばれ! ヌルヌルオンナマーズ!」

 弾かれるように――いや、文字通り大気に弾かれて、逆再生の様に鉄球がオンナマズへ飛ぶ。
 顔面に直撃した鉄球の重みに、オンナマズはがくりと膝をついた。

◆そして、第六投。

 入れ替わって登板したトルメンタ・アンゲルス(流星ライダー・f02253)は、新たな鉄球を片手にオンナマズと向き合った。

「ヌルヌル……今回は盗塁はないわよ」
「ええ、ですから、真っ向勝負と行きましょう。ご安心を。ちゃんと野球のルールに則りますとも」

 ベルトのバックルに触れ、再起動。

『ModeShift――HotHatch』

 一瞬だけ装甲が剥がれ、変形。再度体に装着される。
 堅牢なる防御重視のスタイル。

『Tune-Up――SteamEngine』

 装甲各部が開放、白熱の蒸気が勢いよく吹き出る。
 同時に搭載されたスチーム・エンジンが勢いよく回転を始め、出力を跳ね上げていく。

「自分より遅い物を投げるのは、どうかと思うんですけどねぇ?」
「御託はいい…………来いっ!」

 プルトニウム・バットを構えるオンナマズに、トルメンタは小細工をしなかった。必要ないからだ。
 鉄球をガッチリとホールドし、各部のエンジンが唸りを上げる。
 放たれたボールの勢いたるや、ミサイルかなにかの様だった。

(――――打てる!)

 しかし、オンナマズは確信した。
 速度、超一流。
 破壊力、超一流。
 だが、これまでの猟兵との打ち合いでオンナマズもまた進化していた。
 打ち返せる。確信とともに振り抜いたバットは、その想いに応じた。
 真芯で球を捉え、打ち返す。ボールがバットに弾かれて、飛んでゆく。

 ――――はずだった。

「はい、アウト」

 眼の前に。
 トルメンタが居た。全身から煙を吹き上げ、装甲の放つ熱で空気が歪んでいる。
 その手には打ち返したはずの鉄球が確かに収まっていた。
 野球のルールでは……打者が打ったボールを、地面に付く前にキャッチすればアウトだ。

「簡単なルールですよねぇ、何せ――――」
「な…………」
「ボールが地面に落ちなきゃいいんですものねぇ!」

 だから、【打った直後】に獲った。
 そのための防御形態、そのためのスチームエンジン。
 莫大な運動エネルギーはスチームエンジンの回転へと変換され、回転はさらなる加速をトルメンタに与える。

『Tune-Up――PlasmaJet』

 【MaximumEngine】から放たれる音声と共に、蒸気ではなく光る熱量の尾が全身から伸びてゆく。

「さて…………一撃入れていいというルールでしたねぇ!」

 最大加速。音の壁を超え、物理の限界を超え、高く跳躍し――――あたかも英治の放ったボールの如く物理法則を超越した軌道によってオンナマズに迫る。

「ゴッッッッッ」

 追撃のブリッツランツェ――――蹴られたという自覚を得るのは、その一撃がオンナマズの顔面を捉え、吹き飛ばした後だった。

「言ったでしょう、自分より遅い物を投げるなんて」

 悠々とマウンドを去るトルメンタは、指を二本立て、ピッと空を切った。

「――――どうかしているとね」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

水沢・北斗
『ボールを投げる』

仮にも野球団を名乗る団体に属する者としてやはりこの事態を見過ごす訳にはいかない。
奴を打ち取れ。
野球のルールいまだによくわかってないけど、とにかく私の中の野球戦士の魂がそう叫んでいるのだ。
言ってみればコチラはプロですし。野球の。

野球団の他のメンバーがいるのかいないのかすら実は把握していないが野球団は現状の野球団は個人技メインで連携とかあんまり得意じゃないから大丈夫。大丈夫?

WIZ【スナイパー 属性攻撃 見切り 誘導弾 投擲】
『受けなさい!魔球サウザントフレアレインパーフェクト!!』
ウィザードミサイルの75本の魔法の矢と一緒にボールを叩き込む。

*描写は好きなようにしてもらって可



◆ラスト・ピッチャー

「ヌル、ヌル、ヌル――」

 ゆっくりと身を起こすオンナマズは、見るからに消耗していた。
 猟兵たちの全力攻撃を抵抗せずに受けているのだ、無理もない。
 だが、相対する相手がいる限り、オンナマズがバッターボックスから下がることはない。

「野球を利用する怪人、ね」

 水沢・北斗(ヤドリガミのアーチャー・f05072)はマウンドに立ち、改めてオンナマズを見た。
 どう考えても野球に向いてない造形とビジュアルだ。技能と、オブリビオンの身体能力で誤魔化しているが、まともに戦ったほうが何倍も強いはずだ。
 何故、奴は野球に執着するのか? 答えが出ることはない。
 ただ、一人の野球戦士として、この事態を見過ごす訳にはいかない。
 故に水沢は鉄球を握った。普段使う硬球よりも、重く、硬い。

「ヌルヌルヌル……アンタ、野球戦士の気配がするわね」
「そう、感じ取れるの」

 野球戦士同士が向かい合えば、あとは勝負だけだ。

「はだかんぼ野球団……ピッチャー、水沢・北斗よ。三振して帰りなさい」

 なお彼女が属する野球団において、本来のポジションがピッチャーであるかどうかはこの際考慮しない。
 今は投手だ、それで良いのだ。

「最後の投手が野球戦士とは……運がいい、来なさい」
「言われなくても――――受けなさい!」

 球を振りかぶる水沢の手の周囲に生まれるのは、七十五本の炎の矢!
 それら一つ一つが球を飲み込める大きさ――本物がどこにあるか、もはやわからない!

「魔球サウザントフレアレインパーフェクト!!」
「フン――――拡散タイプの魔球か!」

 野球戦士が放つボールにはいくつかの系統に分類することが出来る。
 サウザントフレアレインパーフェクトは無数の炎の矢と共にボールを放つ、比較的シンプルな魔球だ。
 だがシンプルとはすなわち完成している、ということ。

「グウ――――!」

 先行する炎の矢がオンナマズを焼く。香ばしい匂いが漂う。
 しかし、ここで動じてはいけない。炎に焼かれたからと言って逃げれば球を逃す。
 さりとて、バットを不用意に触っても行けない。どの炎の矢の中に球が混ざっているか、正確に見抜き撃ち抜く必要がある。

「こ、ここよぉおおおおおおおおおおおおおおお!」

 オンナマズ、全力のフルスイング。

「…………誤ったわね」

 パリンッ。
 ……オンナマズ、全力のフルスイングに、プルトニウム・バットはついに衝撃に耐えきれず、空中でスイングと同時にバラバラに砕け散った。
 そう、炎で熱されたことで柔らかくなったバットは、度重なるユーベルコードを受け続け、ついに形を保てなくなった(二本目)のだった。

「いや――――」

 だが、オンナマズは、ニヤリと笑った。

「計算通りよ――――!」
「! しまった!」

 砕け散った重金属プルトニウムの破片は、炎の矢に対する散弾となって機能した。
 無数に迫る、どれに入っているかわからない球への対策――それは全てを撃ち抜く、ということだった。

 ガキンッ、と炎の中にある鉄球と、バットの破片がぶつかりあう。
 ドスン、とグラウンドに落ちる鉄球。だが、バットが命中して球が転がった以上、これはヒットだ。

「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 そして、代償は大きかった。バッターボックスにおいてバットを失うのは、剣も盾も持たずに戦場に躍り出るのに等しい。
 始末できなかった炎の矢がオンナマズの全身を貫き――焼き焦がした。

「そう……それでもあなたは、野球戦士としての挟持を貫いたのね」

 生き残ったほうが勝ちだというならば、水沢は確かに勝利した。
 だが、野球戦士としては……?

「……負け、とは言わないわ。引き分けにしておいてあげる」

 もはや動けぬオンナマズから視線を外し、静かにマウンドを下りるのだった……。

成功 🔵​🔵​🔴​


◆覚醒・オン・ナ・マーズ

 投手たちの投球が終わった時点で、オンナマズは限界だった。
 もはや指一本動かせず、ナマズが焼けるいい匂いだけが漂う。

 だが、野球戦士たちは理解していた。

 もはや、投げずに終わることはあるまいと。

「ヌルヌルヌルヌル……」

 ズンッ、と大地を揺らす音。奇しくもそれは、ナマズが予知する地震のようであった。

「来る」

 誰かがつぶやいた。そしてそれは、現実となった。

「――――――さぁ、野球(しょうぶ)を続けましょう」

 ユーベルコード《ジャイアントナマズ》。
 怪人オンナマズの二倍のサイズを誇る、正真正銘、最後の敵が姿を表した。
ピリカ・コルテット
『バットで打つ』
はーいっはいはーいっ♪私も打ってみたいです~!!
って、ボールは鉄球なんですねっ!?
それなら私は、愛刀プリムを収めた桜の鞘をバットに採用しましょう!
これを使えば鉄にだって負けません!

勝負の内容的に、球に当てさえすればいい感じかなっ?
まずは最初に【妖剣解放】で反応速度にブーストをかけ、
武器受け技能を使ってとにかく球に当てます!!バント狙いですっ!!

成功したら属性攻撃技能で効きそうなマウンドの土属性を付与しつつ近付き、
刀を抜いて強烈な一撃をお見舞いしましょうっ!ご覚悟ーっ☆

もしもアウトで成敗されたら、あーれーって感じですかねっ!?
アドリブとか色々歓迎!



◆第一打者。

「はーいっはいはーいっ♪私も打ってみたいです~!!!」

 攻守交代。猟兵側で最初にバッターボックスに立ったピリカ・コルテット(Crazy*Sunshine・f04804)は、バットの代わりに自らの愛刀を収めた鞘を構えた。

「……ヌルヌル、バットを持たないとはいい度胸だねぇ」

 巨大ジャイアントナマズ怪人が手にする鉄球のサイズは……先程猟兵が投げていたそれの二倍。
 対するピリカの“桜竜刀”は、拵えこそ優美・美麗だが、その細さは如何ともし難い。
 誰もが、球に触れた瞬間、美術品のような刀が無残にへし折れる光景を幻視するだろう。
 だが……。

「大丈夫です、私のプリムは鉄球なんかに負けませんから」

 ピリカは自信たっぷりにそう言い切って、妖刀に収められた怨念を解き放った。

(――――さあ、行きましょう)

 いや、怨念と呼ぶには不適切か。刀に象られた桜竜がピリカに与えるのは、加護と守護にほかならない。
 知覚・反応速度・反射速度、全てが極限の集中によって限界値まで跳ね上がった。

(…………ふん?)

 オンナマズはその様子を見て感じ取った。どれだけ早くとも「当てて」来るだろうと。
 巨大化した己の腕力があれど、鉄球が巨大化したことによる慣性と摩擦の壁を超えるのは難しい。
 ならばこそ――――。

(いいだろう、当てさせて、取る)

 速度以上に破壊を重視する力を込めて、オンナマズは――投げた。

「ヌルッファアアアアアアアアアアアアア!」

 鉄球は音の壁を超えて空気を弾き飛ばし、ソニックブームが巻き起こる。

「―――満ちていますよ」

 ピリカの強化された知覚の世界は、その速度をもってしてなお緩やかに見える。
 刀を水平に構え、バント狙い……だが。

「大地の力を――プリムっ!」

 果たしてそれは、刀に対する呼びかけか。
 あるいは、別の何かを呼ぶ声か。
 ピリカが全身に纏う桜竜の装飾は、属性の力を大幅に引き上げ、任意の物に付与する力がある。
 彼女が見定めたのは、土だ。
 そう、グラウンドの土……野球戦士達の血と汗が染み込んだ、野球の土台、野球そのものとも言えるフィールド。
 甲子園球場で球児が土を持ち帰るように、グラウンドの土には野球の力が宿る。
 その大地の力を、ピリカは刀に宿し――――武器で受けた。
 野球場のグラウンドが、球を受ける。
 それは極めて自然なことであり、口にするのも憚れるぐらいの当たり前。
 故に、プリムに命中した球は激しい衝撃を巻き散らかした後、ぽてん、と眼の前に転がった。

「――――――バント、だと…………!」
「はい! ではでは、ご覚悟ーっ!」

 その土の力を纏った刀を抜き放ち、衝撃波が走る。

「グウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!」

 その斬撃の【圧】に全身を切り裂かれ、ジャイアントナマズは苦悶の声を上げた。

「如何でしたか、私のプリムは、強いでしょう!」

 えへんと胸を張るピリカに、キマイラ達の歓声が湧き上がった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月輪・美月
野球は……僕達が故郷で教えてもらった野球は……戦いの道具なんかじゃない。
ですが、それで貴女の気が済むというなら、とことん付き合いましょう。
ここまで来たら小細工はなし、力と力の勝負で行きます。
鉄球を見事打ち返し、全力で殴り飛ばしてノックアウトと行きましょう。

女性を殴る趣味はないのですが……試合のルールは守るのが野球選手としての礼儀
(影を使って強化する時)お互いドーピング有りなら公平ってもんでしょうが!全力で来なさい……僕が本当の野球勝負ってのを見せてやります
【通常のバッドに影を纏わせた、黒い強化影バットで、鉄球を打ち返します
打ち返せたのなら、あとは影によって強化された拳で一撃だけ入れます】



◆第二打手。

「……僕は少し、悲しい」

 新たにバッターボックスに入った月輪・美月(月を覆う黒影・f01229)は、言葉の通り目を伏せ、ジャイアントオンナマズを睨んだ。

「野球は……僕達が故郷で教えてもらった野球は……戦いの道具なんかじゃない」
「ヌルヌルヌル……ではなんだというんだい?」

 問いかけに、里で過ごした幼少期を思い出す。

(いいかー、大事なのはチームワークだー)

 そう言われて素直な美月は『一人は皆のために』を頑張って実行したが里の連中はどいつもこいつも『皆は自分のために』が心情だったのでチームワークなんてどこにもなかった気がするいいや忘れよう。

「…………絆とかです」
「なんか急にフワっとしたわね」
「とにかく」

 美月は気を取り直してバットを構えた。

「貴女の気が済むというのなら、とことん付き合いましょう。女性を殴る趣味はありませんが……それがルールであるのなら、守るのが礼儀というものです」
「ヌールヌルヌルヌル! アンタ、アタシをオンナ扱いするのかい!」

 ゲラゲラと笑った後――――――ズンッ、とその巨大な足でグラウンドを踏みつけた。
 スタジアム全体がぐらりと揺れて、古ぼけた天井ライトの一部が落下し、砕けた。

「馬鹿にするんじゃあないよ――アタシはオンナである前に野球戦士だ」
「いえ、前も後ろもありません」

 その威嚇行為に、美月は揺るがない。

「野球戦士であり、女性です。どちらかじゃない、どちらもだ」

 それは、否定はせず、しかし己の信念は曲げないという一人の男の矜持であった。
 ふんっ、とオンナマズは鼻を鳴らし、投球姿勢へと入る。

「――――《影狼礼装(シャドウエンハンス)》」

 美月の影がうごめく。一匹、二匹と現れるのは、漆黒の体を持つ影の狼。
 それらがバットに、体に形を変えて纏わりついて、強化する。

「――――ヌルッファアアアアアアアア!」
「はあああああああああああああああああっ!」

 鉄球と影バットが交差し、ぶつかりあう。

「ぐっ――重い…………!」

 決して甘く見ていたわけではないが、それでもこの重さは想定外だ。
 足がずんと沈む、この勢いで球に押し負ければ、そのまま腰までへし折れかねない。

「――――まだだ! 影狼!」

 美月の声に、新たな影狼が姿を現す。
 その一匹は、するりとバットを通り過ぎ……未だ拮抗する鉄球の影に潜り込んだ。
 影は物体より生まれ存在する、切り離せないモノ。
 影を操る美月の能力によって、球速が落ちた、いや、影に引きずられて、その場で止まった。

「何――――!」
「これが……僕の野球だ……っ!」

 カキィンッ!
 小気味の良い音と共に鉄球が飛ぶ。二塁を超えて、グラウンドに落ちた。紛れもないヒット。

「……約束です、行きます」

 影から新たな黒狼を呼び出し、拳にまとわせ、ジャイアントオンナマズの胴体へ一撃。

「ぐっ――――――フッ、甘いねぇ……手を抜いたかい?」

 だが、まだ余裕はありそうだった。美月は小さく首を振って、答えた。

「いえ、本気でした。僕も、貴女の情熱も」
「フン……五年たったらまた来るんだね」

 それはちょっと、と表情で言いながら、バッターチェンジ。

成功 🔵​🔵​🔴​

西園寺・メア
(WIZ)バットで打つ

なるほど、つまり決闘ね。その誘いに乗ってあげましょう
ドッペルゲンガーアームズでバットを強化して、刹那の瞬間を見切り人器一体のバット捌きで鉄球を粉砕して差し上げますわ
見事ヒットを打った暁には、バットの私と手をつないで呪詛で強化した鎧砕きによるフルスイングを怪人にお見舞いしましょう

あら、くの字になって飛んでいくかと思いきや、意外と頑丈なんですね
それならば後は仲間に譲りましょう。あなたの心が砕けるのが先か、体が砕けるのが先か、見届けて差し上げますわ


ピート・ブラックマン
よく分かんねぇが、そのベースボールにかける心意気は良し!
ってな感じで、いっちょやってやるか!
俺は『バットで打つ』方でいくぜ

バウンドボディで体に弾力性と伸縮性を持たせ、体を思いっきり捻じる事で普通にバットを振るよりも勢いをつける
ついでに腕の増やしてバットを2本持つ

バットを二本持って2倍!
通常の2倍の回転を加えることで更に2倍!
あとは熱い魂を乗せることでさらに3倍!
経験や技術、ついでに鉄球の重さをカバーして、敵のボールを打ち返す!

いい勝負だったじゃねぇか……

それはそれとして、一撃を与える時は容赦なくバイクで轢く



◆第三打者。

 ドルンッ、ドルン、ドルルルルルル……。
 エンジン音を軽快にかき鳴らす相方のバイク【Jane】から降りて、ピート・ブラックマン(流れのライダー・f00352)はバッターボックスに入った。

「ヌルルル……神聖なグラウンドにバイクを持ち込むとは……」
「いいじゃねえか、体の一部みたいなもんだ。それに……」

 マスクだろうか、あるいは変じた皮膚の形なのか。恐ろしい形相をニヤリと歪ませて、ピートは笑った。

「球を打った後、お前を轢くのに必要だからな」
「ヌルヌル……成る程、殺す覚悟も死ぬ覚悟もあるわけね」

 ならばこれ以上言葉は不要、と。
 ジャイアントオンナマズは静かに投球フォームへ入った。

(でけぇ鉄球、豪腕から放たれた豪速球と来てる、こっちも工夫がいるな……)

 人ならざるその体は、形態の変質を自在とする。
 ピートは両手にバットを構えると、更に肩から新たな腕を作り出し、それぞれを二本の手で握りしめる。
 更に!

「うおおおおおおおおおおおおおおお!」

 全身が柔らかく、しかし強靭な伸縮性と弾力性を帯びる。
 その場で高速回転、体をねじり、あたかもコメディ・アニメーションの様になったピートの肉体は、いわば回転の運動エネルギーを全て、その全身に蓄えているのに等しい。
 ブラックタール特有のユーベルコードが、その理不尽を可能にした。

「野球戦士の前に…………その小細工は侮辱ッ!!!」

 その有様を前に、ジャイアントオンナマズは怒りと共に投球! しかし!

「小細工? 違うね――――こいつは計算だ!」

 バットが二本で二倍!
 二倍の回転を加えることで更に二倍!
 熱い魂を乗せることで更に三倍!
 解き放たれたエネルギーは限界を超えた十二倍の破壊力!

「ダアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 バットと球が激突!
 軋む衝撃を、弾力性のある腕が吸収し受け止める!

(ちっ――)

 ピートの構えるバットにビシッ、と亀裂が走った。

(不味い…………なら!)

 更に腕を増やす。最低限の体幹を残し、己の全ての質量でバットを支える!

「これで――――四倍だあああああああああ!」

 カキィンッ!
 怒声と共に振り抜かれたバットは、快音と共に球を弾き飛ばす。
 信じられない、といった顔をするジャイアントオンナマズに、ピートは体をもとに戻し、素早くバイクに跨って答えた。

「言ったろ――計算だってな」

 アクセル全開、即座に最高速に入った【Jane】の前輪部が、ジャイアントオンナマズにせまる。

「いい勝負だったじゃねえか……なあ?」

 ジャイアントオンナマズはその言葉を肯定するように、無抵抗で一撃を受け入れた。

◆第四打者

「後が支えてるの、早くしてくださらない?」

 西園寺・メア(ナイトメアメモリーズ・f06095)はその装いに似つかわしい、悠然とした態度でバッターボックスに入った。

「ヌル……ヌル――」

 ジャイアントオンナマズの動きが鈍い。度重なる攻撃で負傷しているのだろうが、メアに容赦の二文字はなかった。

「まさか、降参なんて言い出しませんわよね?」
「何を馬鹿な……野球戦士にそんな言葉はない……ヌルヌルヌル」

 再び鉄球を構えるジャイアントオンナマズ。
 メアは安心したように笑った……嘲笑った。

「それはよかった、では、行きますわよ、わたくし」
『ええ、わたくし』

 メアの手にしたバットに、黒い何かが伸びて、染み込んでいく。
 《我が腕は違う他が腕(ドッペルゲンガーアームズ)》……多重人格である己の意識の一つを、物体に付与しコントロールするユーベルコード。
 これによって一人で二人、二体一が実現する。

「ヌルフフフ……」
「? なにかおかしくて?」
「いや……アンタ達はいろんな事をする……と思ってね」

 ジャイアントオンナマズは、面白そうに笑った。

「野球……ああ、奥が深い。この世界できっと大ブームになる。アタシが勝てばね」
「なにか勘違いしているようだけど」

 勝つ。という前提を語るジャイアントオンナマズの言葉を、メアはバッサリ切り捨てた。

「すごいのはアナタではなくて野球。人々は今だって野球を愛していますわ。けどアナタを愛してるわけじゃない」

 来なさい、と構えるメア。

「フッ――――アマチュア風情が生意気な口を!」
「アマチュア風情にあなたはこれから――――」

 放たれた鉄球を、二人の人格が軌道を見極め、同時に反応する。

「敗北」
『するのよ』

 カキンッ。
 ボテボテの、ピッチャーゴロだった。
 だが、ジャイアントオンナマズは、もはや動かない。
 動けない、と言うべきか。
 球を投げた姿勢のまま、動かない。

 ゴッ。

 遠慮なく、その頭部にフルスイング。

「あら」

 倒れるかと思ったが――そうでもないようだ。

「意外と、頑丈なんですね、良いでしょう。あなたの心が砕けるのが先か、体が砕けるのが先か、見届けて差し上げますわ」

 そして――――最後のときが訪れる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ナギノハ・ブライダルベール
後輩の灯がすごく頑張ってた。
はだかんぼ野球団の一員として、灯の先輩としてわたしも頑張らないと。

まずはおやつとして持ってきたプリンをしっかりじっくり味わって栄養を補給する。
すごく甘くて美味しいから、わたしの魔力もすごいことになった。絶対なってる。

これで準備完了。次は魔法を使って大きくなる。
ピッチャーがが大きいなら、それよりももっともっと大きく。

……バットが小さいけど、大きいから問題ない。
ピッチャーがボールを投げる前に、ピッチャーごと打つ。かんぺき。

(純粋でいい子なのですが、思い込みがすごいのとあまり賢くないこともあって、突拍子のない作戦に出ている感じです!
野球の知識はゲームで培っています!)


紅桐・灯
――キャッチボールを知っているか?
球を投げ、受け、あるいは打つ。
ごくシンプルな野球の基本だ。
ただそれだけのことに……人々は古来より、心のコミュニケーションを見出してきた。

お前の球を打って“理解”ったよ。
あの一投には、ただ虚無が宿っていた。
相手を打ち負かすことしか頭にない、哀しい球だ。

構えるがいい、野球戦士……否、野球狂戦士よ。
野球を愛する者として、その一投を何度でも打ち砕こう。
そして教えてやる――お前に、“野球の楽しさ”を!

おれはバッター、故にただ打つのみッッ!
愛の果てに至る9回裏の奇跡、何度でも見せてやろう!

これが――野球だァァアアアアッッッ!!!
(無防備なナマーズを殴るのは仲間に任せます)



◆ラスト・ゲームの前に。

 焦がしたカラメルの香ばしい匂い。
 甘く鼻をくすぐるバニラビーンズの匂い。
 ふんわりと柔らかく愛おしいカスタードの匂い。
 それらをまとめて一匙に掬い、たっぷり口の中で転がしてから飲み込む。
 糖分が全身を駆け巡り、充実していく。

 野球とは過酷なスポーツである。故に事前の栄養補給は必須だ。
 バットを振っている間に、あるいは球をキャッチした衝撃でカロリーをゼロになるまで消費して死んでしまったら?
 その可能性を考慮せずして野球戦士を名乗るなど笑止千万。
 故に、ナギノハ・ブライダルベール(スペースノイドのシンフォニア・f00201)はおやつのプリンを思う存分味わっているのであった。

「んく。ん……とても漲ってる」

 そうしてベンチをぴょんと飛び降りて、バッターボックスへ向かう。

「先輩」

 次の打順を待つ紅桐・灯(主将・f04028)が、ナギノハの背に声をかけた。
 心配? それとも忠告?
 そのどちらでもない。紅桐にとって彼女は野球の『先輩』だ。

「野球は、楽しいものだ、そうだろう?」

 だからその言葉は、お互いの意思を確認するための儀式だ。

「うん。あの怪人も、やっと、わかり始めてきたみたい」

 マウンドで構えるジャイアントオンナマズを見やる。
 熱傷、擦過傷、切傷、打撲、突傷、骨折。
 あらゆる負傷をその身に刻みながら、目の光はまだ消えていない。

「大丈夫、任せて」

 ナギノハは、にこりと笑った。

「私は、先輩だから」

◆第五打者

「ヌルヌルヌル……子供と言えど、容赦しないわ」

 ジャイアントオンナマズは、言葉の通り。
 幼いナギノハに対して、一切の油断を見せていない。
 外見が能力に直結していないのは、もう十分にわかった。
 それでいて――ナマズ由来のひげがぴくぴくと動いて警告を発している。

(確かに感じる、この小娘……野球戦士!)

 そう、野球戦士のみが持つオーラを、ナギノハもまた持っていた。

「ねえ」

 小さな体でバットを持って、構える前に、ナギノハは問いかける。

「野球は楽しい?」
「――なんですって?」
「楽しい?」

 その瞳は真剣だ――故に、ジャイアントオンナマズもまた応じた。

「……楽しい、楽しくない。そんな次元の話じゃあないのよ」

 ミシミシミシッ。
 筋肉が盛り上がり、血管が浮き出て、鉄球に指が食い込み、亀裂が走る。

「忘れ去られた者達の悲鳴(こえ)――やっと届き始めたのよ」

 ヌルヌルオンナマーズの選手たちが味わった無念を。
 続けたくとも続けられなかった野球というスポーツを。
 怪人オンナマズはその体に取り込み力に変えた。
 この手でキマイラフューチャーに新たな野球ブームを巻き起こす。
 それがヌルヌルオンナマーズの悲願、今となっては――怪人オンナマズのなすべきこと。

「それじゃ、私達には勝てない」

 グググ、とナギノハの体が、一回り大きくなった。

「――?」

 ジャイアントオンナマズは目をこする。
 更に一回り、もっと一回り。
 ぐんぐんぐんぐんと。背が伸びているのではなく、全体的な質量の増加。
 怪人オンナマズがジャイアントオンナマズという切り札を持っていたように。

 同じ事が出来る猟兵も存在する――――!

「だって私達は……野球をするのが、楽しい」

 とうとう、スタジアムの天井まで達そうかというほど巨大化したナギノハが、もはや相対的に爪楊枝以下のサイズとなったバットを握りしめ、拳を振りかぶった。

「――――――ヌルッファアアアアアアアアアア!!!」

 勝負は既に始まっている!
 ジャイアントオンナマズは気づくのが一瞬遅かった。
 球が放たれる。だが、その球ごと、ナギノハの手はジャイアントオンナマズを吹っ飛ばす。

「ヌルァアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」

 スタジアムの天井を超え、照明にぶつかり、落下するジャイアントオンナマズ。

「ピッチャーごと打つ。かんぺき」

 しゅるしゅると元の大きさに戻っていくナギノハ。
 同時に、地面に叩きつけられ全身に亀裂が走り、青い血が吹き出る。

「ガハッ……」

 ジャイアントオンナマズはそのまま塵になって、消滅していく。
 これで勝負はついた――誰もがそう思った。
 だが。

「ヌ、ル、ヌルルルウ……」

 ……起き上がる影があった。
 誰であろう、それは――怪人オンナマズだった。
 投手達との野球闘争にて倒れたはずの怪人は、ボロボロの体で、なおも立ち上がり。
 ベンチに座る、一人の漢を見た。

「…………バッターボックスに、入りなさい……」

 ボールを握る。
 マウンドに立つ。
 それはつまり、野球の続行だ。

「ラスト一球……決着を、つけるわ……っ!」

◆ラスト・ラスト・ラストバッター。

「灯、交代よ」
「ああ」

 ベンチに戻ったナギノハは、バットを手にする『後輩』に少し申し訳なさそうな表情を浮かべた。

「私で終わらせるつもりだったんだけど」
「先輩は何も失敗しちゃいないさ。どちらにせよ、おれは、もう一度立たなきゃ行けなかった」
「そう。じゃあ、いってらっしゃい」

 バッターボックスへ向かう『後輩』の背中に、そう声をかける。
 正真正銘――最後の戦い。

◆その名は【はだかんぼ野球団】!

「……キャッチボールを知っているか?」

 バットを握りしめ、構える直前、紅桐は問いかけた。

「球を投げ、受け、あるいは打つ。ごくシンプルな野球の基本だ。だが……」

 それ故に、たったそれだけの行為に、人々は古来から、心のコミュニケーションを見出してきた。
 父と息子が行う、河原でのキャッチボールは、どれだけの思い出を作るだろう。
 青春の練習の中で行われる、ピッチャーとキャッチャーのぼーるのやり取りは、どれだけの絆を育むだろう。

「お前は……誰ともキャッチボールを、してこなかったんだな」
「!」

 甦ったヌルヌルオンナマーズを構成するのは、怪人オンナマズが生み出したバトルキャラクター達だ。
 たった一人によって構成された、たった一人のチーム。
 そこに練習は必要ない。全員が自分故に思考と技術は共有されるからだ。

「だが、野球とは一人で成立するゲームじゃない。打者が居て、投手が居て、そして仲間がいるから……試合がある」

 グリップを握る。指のかかり、柄の硬さ。すべての歯車がカチッと噛み合い、紅桐は確信した。
 ……打てる、と。

「あの時、お前の球を打って“理解”ったよ。お前の球には……虚無が宿っていた」

 ただ野球というブームを広げる為の投球。
 ただ野球というシステムを拡散するためだけの打法。
 そこに魂が宿るわけがない。

「構えるがいい、野球戦士……否、野球狂戦士よ。野球を愛する者として、その一投を何度でも打ち砕こう」

 静かに、紅桐はバットを構えた。

「そして教えてやる――お前に、“野球の楽しさ”を!」
「――――ヌルヌルヌル、ヌルッハッハッハッハッハ!」

 怪人オンナマズは笑い、鉄球を振りかぶり――――放り投げ、代わりに、古ぼけた硬球を一つ、取り出した。

「そこまで言ったんだ――やってみせろ、わからせてみせろ! ヌルォオアアアアアアアアアアアアアア!」

 それはかつてのヌルヌルオンナマーズのエースと同じ構え。
 ナマズ特有の粘液が硬球を包み、バットを滑らせてアウトを奪う魔球!

「打てるものか! 小僧ぉおおおおおおおおおおおおお!」
「おれはバッター、故にただ打つのみッッ!」

 放たれる魔球!

「愛の果てに至る9回裏の奇跡、何度でも見せてやろう!」

 果たして、そのスイングは!

「これが――――」

 ボールの真芯を捉え、衝撃で粘液をすべて吹き飛ばし!

「野球だァァアアアアッッッ!!!」

 カキィンッ!

 ――――誰もがその音に、あるはずのない青空を見た。
 
「ああ――――」

 観客が湧く。選手たちも湧く。
 快音、歓声。スタンディングオベーション。

 なんて気持ちのいいホームランだ。
 敵ですらそう思うほどの、真っ直ぐな打球。

 いや、違う。
 敵とか味方とかではないのだ。
 相手選手ですら――野球というゲームを成立させるための、好敵手であり、ライバル。
 倒すのではなく、共に在る為の試合。

 オブリビオンを倒す為に集まった猟兵たち。
 こちらもそうだったのだから、文句を言う筋合いはないが――彼らもまた、手段を選ばなかった。
 そんな中。

 ただ一人。
 ただ一人この男だけが。

 スポーツマンシップに則り、正々堂々と。
 野球戦士として、純粋に打者として、バッターボックスに立った。

 野球に向き合い、野球を楽しみ、野球に挑んだものだけが放つことができる、正真正銘のホームラン。
 この野球戦士は、まだ完全ではない。若く、未熟で、この先、様々な壁にぶつかり、時には負け、涙を流すだろう。
 けれど、きっとブレる事はない。なぜなら、野球を愛しているからだ。
 勝てるわけがない。勝ち負けの舞台で、戦っていなかった。

「ハハ――――ッ」

 オブリビオンは過去から現れる。
 怪人もまた、過去の残滓だ。だから、この怪人オンナマズが倒れても、また別の怪人オンナマズがどこかに現れるだろう。
 それはもしかしたらヌルヌルナマズエステをブームとして広めようとするかも知れない。
 カードゲームや、スタイリッシュ・メンコバトルかも知れない。

 もしも……もしも、新たな怪人オンナマズが、また野球をブームにしようとしたとしても。
 それは、このオンナマズとは『別』の誰かだ。
 記憶も、感情も、思いも、怒りも痛みも慟哭も感傷も、何も連続性はない。
 今ここにいるのは、ここにいる己だけ。
 それはつまり……絶対的な『個』として相対した、ということだ。
 猟兵たちの――この男の、記憶の中に残る、一人の野球戦士として。

「名前を」

 ボールがバックスクリーンに突き刺さる、文句なしのホームラン。

「聞かせてくれ」

 怪人オンナマズの声に。

「はだかんぼ野球団、キャプテン――――紅桐・灯」

 一人の野球戦士として、紅桐は答えた。

「――――アタシの負けだよ、楽しかったわ」

 本当に、最後の力だったのだろう。
 その言葉を最後に、怪人オンナマズは力尽き、爆発した。

「……次は」

 試合は終わった。
 ならば、選手が果たすべきは唯一つ。

「甲子園で会おう、好敵手(ライバル)よ――」

 一同、礼。
 対戦相手に敬意を称し、深く頭を下げる。
 試合終了。
 勝者、青春イェーガーナイン。

 ●

 これにて……キマイラフューチャーを襲った、滅茶苦茶で、常識外れで、おおよそまともな事など一つもない、ささやかで下らない、しかし確かにそこに存在した、一つの試合が幕を閉じた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月04日


挿絵イラスト