バトルオブフラワーズ⑦~燃え盛れ、この歌と魂よ
「soulfull singing battle! それが今回の任務だぜ!!」
グリモアベースに集まった猟兵達の前で、自身の武器である十字架をマイク代わりに決めポーズをとるエクスデス・エクソシズム(死者還し・f15183)に、白い目が注がれる。とはいえ彼の言っていることは、そう間違いではなかった。
「えー、キマイラフューチャーの『システム・フラワーズ』に侵攻が開始されて久しいが、つっても『ザ・ステージ』を疎かにしてるとオブリビオンに再び占領されかねねえ。つーわけで、大ボスとの殴り合いをやってる愛すべき猟兵の皆を援護するためにも、こういう土台を固める仕事は大事なわけさ」
六つの『ザ・ステージ』を占領しようとするオブリビオンの戦力は日に日に補填されていく。フォーミュラや強大なオブリビオンに挑む者達の後押しの為にも、戦い続ける必要がある。
「んでさっきも言った通り、今回攻略して貰う『ザ・ステージ』のルールは歌がカギになる。『パッショネイトソング』……魂の籠った歌を歌いながら戦わないと、ユーベルコードであっても力が発揮されない場所で戦ってもらわなくちゃいけねえ」
己の魂や情熱、主義、嗜好……なんでもいい、とにかく思いの丈を詰め込んだ「熱」を持った自分自身を奮い立たせる歌を歌わなければ、戦えないし生き残れない。そんなステージだ。
しかも、今回通常以上にこの歌の存在が任務の成否に深く関わっている理由がある。
――モニターに映し出されるオブリビオン、『リア充どもは爆発しろ怪人』が現在ステージを独占しラウドロックを彷彿とさせる激しいスクリームで想いを叫ぶ。
「滅びろ、リア充ゥゥゥッ!」
すると、怪人の雄叫びに応えるかのように、どこからともなく降り注いだ爆弾が彼の背後で爆発した。この時、怪人がユーベルコードを使用している様子はないにもかかわらずだ。
「そう――今回のステージじゃ、歌に反応してキマイラフューチャー製のなんかすごいテクノロジーによって、立体映像が演出を強化してくれるのさ!」
猟兵達に衝撃が走る。そんなものがあるのか、と。
「つっても、残念ながらコイツは演出をするだけだ。追加でダメージを与えたり、どんな演出なのかもシステム任せ。まして実体化して都合よく動かしたりとかはできねえ」
だが。そう強く頭に置いてからエクスデスの顔に表示される、「:-)」の文字列。
「最ッッッ高に、Coolだろ?」
今回の戦いは、自分を奮い立たせる歌を歌わなければいけない。そしてそれは何か強い想いが込められていればいるほどいい。ならば、それを補強する演出があったのなら――燃えないわけがない。
「戦いも歌も、技術や腕前ももちろんだが、ココが熱くなきゃ伝わらねえし燃えもしねえ。だからこそ、皆の全力をぶつけてやってくれ。それが世界まで救っちまうんだ、滾るだろ?」
自分の心臓ある辺りを強く叩き、ゲートを開くエクスデス。その先には、戦場がある。叫ばなければ、自分の想いをぶつけなければ決して勝てない戦いが。
「……頼むぜイェーガー。未来を救ってくれ」
佐渡
熱い曲はカッコいい、佐渡です。
今回のシナリオは、歌を歌いながら戦わなければ効果も力もでないステージで、オブリビオンと戦うシナリオとなっています。ルールに沿わない場合、失敗・大失敗になる恐れもありますのでご注意ください。
また、今回皆様のプレイングに合わせて演出が加わります。背景であったり、映像であったりと様々ですが、兎も角感情を爆発させればさせる程敵オブリビオンへ派手にぶちかますことができます。心情をマシマシで頂けるとよりご期待に添える演出ができるかと思いますので、プレイング送信の際はぜひご一考ください。
皆様の行動を熱く、燃え尽きる程に熱く描写させて頂きたいと思いますので、宜しければ是非ご参加のほどを宜しくお願い致します。
●※おねがい※●
迷子を避けるため、ご同行の猟兵の方がいらっしゃる場合には同行者名、あるいはチーム名等目印をお忘れないようにして頂けると幸いです。
またマスタープロフィールに御座います【シナリオ傾向】については是非一度目を通して頂くよう強くお願いいたします。
また、実在する歌詞など著作権に触れる、あるいは「こちらの判断で危うい」と判断したプレイングについてはリテイクさせて頂くことをご容赦ください。
第1章 ボス戦
『リア充どもは爆発しろ怪人』
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POW : リア充は爆破する!
予め【リア充への爆破予告を行う】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD : リア充は爆破する!!
【リア充爆破大作戦】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : リア充は爆破する!!!
単純で重い【嫉妬の感情を込めて】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
イラスト:くずもちルー
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「アルル・アークライト」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
忠海・雷火
人格をカイラへ切り替え
やる事は一つ。歌いながら刀で斬り、血を飲む
ユーベルコードで長舌が顕れたら、舌も使って突き刺し、巻き付け、啜り取る
血を喰う度に再使用、強化上限を上げていく
何度も何度も。相手が自己強化する間も与えない
●
全て奪われたあの日
悲鳴に濡れた命の雨が、心を穿つ
慟哭を呑んだ狂気の宴で、砕けて墜ちる
何もかも置き去りにした果て
虚に染まる私を見下ろして
声が囁く 「まだ終わらない」
心を、想いを憎悪の火に焚べようとも
凍て付き、優しい春の息吹を忘れても
私は進む それが存在証明
振るう爪牙が、己さえ侵しても
私は戦う それが存在意義
声がさざめく 「まだ終わらない」
過去を切り裂き、喰い破れ
命の限り
命果てても
●燃える嫉妬をかき消す憎悪
燃え盛る爆炎の立体映像を背に、リア充どもは爆発しろ怪人は現れた猟兵に鼻を鳴らす。
「来たか猟兵、しかし、ここは最早オレの領域だ。見るがいい、この炎を! リア充への怨嗟の業火を!」
両手を広げ、大きく訴える怪人。この立体映像は本人の意志の強さによってその激しさや範囲は変化する。それを加味すれば、成程確かにその執着や怨嗟は大きいものであるのだろう。だが、ここで怪人は気付く。
天から降り注ぐように見える何か。細く、冷たい色のエフェクト。それは、雨だ。
全て奪われたあの日
悲鳴に濡れた命の雨が、心を穿つ
慟哭を呑んだ狂気の宴で、砕けて墜ちる
何もかも置き去りにした果て
虚に染まる私を見下ろして
俯いた事で紫黒の髪が垂れ、表情が読めない。小さく動く口が紡いだその歌の始まりは、実に静かで微かな声だった。どこからともなく響く物悲し気なピアノの音。抜き身の刃を引き摺るように歩きながらやってくる猟兵の心もとない姿を敵ではないと判断した怪人は、自身の歌で猟兵の歌をかき消してやろうとマイクを手にした。
相手の動きに一切興味を示さぬまま、白刃を自身の指先に当てる猟兵。白魚の如き肌を裂いて溢れる粒に口を押し当て喉を潤し――彼女は、顔を上げた。
声が囁く――
「まだ、終わらない」
忠海・雷火(襲の氷炎・f03441)の鮮血の如くに赫々とした瞳がぎらりと輝く。飢えた獣の様に。睨みつけられたリア充どもは爆発しろ怪人はその威圧感に声を上げ損ね、苛立ちながらも自らのリア充がいかに爆発するべきかを説くロックを歌おうとし……その背後から感じた異様な気配に思わず振り向いた。
人型の影を模した数多の立体映像。邪悪な笑みを浮かべて無数に迫るそれに思わず悲鳴をあげる怪人。しかしそれらはオブリビオンに一切興味を見せず、ただ雷火へと襲い掛かる。無論立体映像でしかない、雷火へ向かってもすり抜けるだけだ。
しかし。彼女がその影を切り払うと――ばっと飛び散る、赤。胴を薙がれて溢れ出す血。それを皮切りに、流れる歌のテンポが、曲の印象が、完全に一変する。
弦を引き千切る程の激しいギター、叩き壊さんばかりに打ち鳴らされるドラム、腹の奥底まで痺れて響くベース。雨のしとしととしたエフェクトは真っ赤な血の雨に変わり、小雨から全身に降りかかる豪雨の如くになって怪人の視界を遮った。
心を、想いを憎悪の火に焚べようとも
凍て付き、優しい春の息吹を忘れても
私は進む それが存在証明
振るう爪牙が、己さえ侵しても
私は戦う それが存在意義
サビに入り、血の雨のエフェクトは更に激しさを増す。視界を覆う程のそれに怪人は動く事すらままならない。自身の歌で流れを取り戻そうとするも、出した声は全てサウンドに掻き消されて一切届かない。
直後怪人の背後から斬撃が飛来する。ガードさえできずに膝を付くと、すぐさま腕にも傷が、そして足が、胴が、矢継ぎ早に切り裂かれる。
視界が効かずに防御もできず、歌が歌えなければユーベルコードも使えない。ただ痛みと、全身に刻み付けられるその「想い」の強さに打ち据えられるオブリビオン。
声がさざめく 「まだ終わらない」
過去を切り裂き、喰い破れ
「な、なんだ!? う、うぉあああ!?」
怪人に「何か」が巻き付き浮き上がる。そしてその胸に突き刺さるその「何か」。苦悶と悲鳴の声を上げていると気付いた、徐々に晴れていく視界。浮き上がらされたまま捉えた――自分が、猟兵の舌に絡められ、舌に突き刺されている事。
彼女が吸血という過程を経て、戦闘力を爆発的に増大させ――自らの過去を歌い上げたその覚悟が、映像の支配権を握り自らを奮い立たせたことを。
命の限り
命果てても
『――――まだ、足りない』
音楽が止まるのと同時に、怪人は自分がずたずたに引き裂かれていることを知覚した。だが、猟兵が来る前に歌う事で積み重ねていた自己強化でなんとか死んではいないことも。だが、一瞬にて十を飛ばし百を超す斬撃を与え、溢れる血を啜った猟兵とこれ以上戦えば――死ぬ。切っ先が再び向けられる前に脱兎のごとくに逃げ出した怪人。それを追うことなく――彼女は、呟く。
「――怨嗟なんて生温い。雷火(わたし)と、ライカ(わたし)のこの感情は」
そんな、陳腐な言葉では括れない。
映像が止まり、偽物の血の雨は止む。それでも怪人か自分、そのどちらかが流した赤い雫が残っている。彼女は、それを静かに飲み干し、口元を拭った。
大成功
🔵🔵🔵
影山・弘美
……あ、えっと、歌いに来ました
よろしく、お願いします
ギターを鳴らしながら静かに歌いつつ、途中で指を傷つけて血を流す
その血から現れるもう一人の自分、彼女とのデュエットを聞かせましょう
●
私の中のワタシ
命はなんて軽いんだろう
捨てられれば、すぐに朽ちる
命はなんて重いんだろう
簡単に壊れて、治らないから……
私に残った命の種は
ワタシを生み出した
ワタシは望まれない姿
私に残る、悪の顕現
私は人として生まれた
ワタシがそれを、邪魔してる
それでもいい、そう言う人がいた
私を見ても、いいといった
ワタシを見ても、そう言えるのかしら?
……それでもいい、そう言った
私は生き続ける、ワタシを認めた彼のために
死ねない私は生き続ける
●後悔は覚悟に似て
猟兵の攻撃にずたずたになったリア充爆発しろ怪人は、身を引き摺ってなんとか撤退に成功する。しかし、逃げた先にもまた猟兵が待ち構えていた。
どこか落ち着かない様子で視線を彷徨わせながら、胸に下げた十字架を握ったり触ったりする紫髪の少女、影山・弘美(吸血鬼恐怖症・f13961)は、やってきたオブリビオンを目にして一瞬慌てた表情を浮かべるが、すぐに深呼吸して言い放つ。
「あ、えっと、歌いに来ました。宜しくお願いします……」
後ろ手に隠したギターをよいしょと肩に掛けると、深く一礼する弘美。あまりに突然のことに怪人も呆然とするが、はっとすると怪人もまたマイクを取り出す。それはすなわち抗戦の意志の表れだ。
命はなんて軽いんだろう
捨てられれば、すぐに朽ちる
命はなんて重いんだろう
簡単に壊れて、治らないから……
静かなギターの音に合わせて歌い始められた彼女の歌は、まだ場を支配するものには至らない。大声でがなり立てる怪人の激しい歌のインパクトの方がまだ勝っていたためだ。
だが、彼女がそっとギターの弦に指を絡ませ血を流したのと同時に、雰囲気は一変する。陰る太陽、昇る月。映像によって生み出される鬱蒼とした林と闇。そして焚かれたスモークは宛ら夜霧。
私に残った命の種は
ワタシを生み出した
怪人は、首を傾げる。なぜか、猟兵の――弘美の歌声が反響したように聞こえたからだ。だがそれは決して気のせいではない。霧の中に浮かび上がる影は二人分、メロディーが最高潮へと加速していく中で、自分自身とのデュエットが、歌の中にこもった心を、魂を、そして想いを加速させていく。
ワタシは望まれない姿
私に残る、悪の顕現
私は人として生まれた
ワタシがそれを、邪魔してる
一層深くなる闇。そして視界を奪うスモークの霧と吹いてくる生暖かい風。居心地悪く恐ろしい夜の森でステージを支配した弘美。歌う事を委縮した怪人の背を、無慈悲に切り裂く拷問具。悲鳴を上げもんどりうつ怪人の姿に、どこからかクスクスという嘲るような笑いが木霊する。
悪意ある喜色に満ちた声に反し、歌う声は苦し気に、甚振るような行いを悔い、恥じるように呻くようなものへと変わる。
葛藤、後悔、およそ戦いにおいて相応しくない恐怖。けれど歌に乗せられた感情は伝播し、怪人の戦意さえもを削ぎ落しつつあった。だが――この歌は、決して絶望の歌ではない。
それでもいい、そう言う人がいた
私を見ても、いいといった
ワタシを見ても、そう言えるのかしら?
……それでもいい、そう言った
霧の奥。自身も又暗色の木々が立ち並ぶ中で歌い続ける弘美の脳裏に浮かぶのは何者だったのだろう。しかし、それは彼女の胸の中で留めておけばよいことだ。デュエットの声は晴れやかに、のびやかに森の霧を晴らすように響いてゆく。
夜の森というシチュエーションは変わらぬままに、嫋やかな月光が怪人を、そして歌い続ける弘美の姿を照らし出す。そこには、二人の人物がいた。
――癖のある桃色の髪を揺らす、どこか気弱そうな咎人殺し。
――人間離れした白い肌に爛々と光る紅い瞳を持つ、吸血鬼。
どちらも自分、どちらも「わたし」。だからこそ。
「私は生き続ける」
「ワタシを認めた彼のために」
「「死ねない私は生き続ける」」
完全なるユニゾン。二つで一つの調和。放たれた二つの棘付き拷問車輪は、リア充爆発しろ怪人の全身に切り傷を刻み付けながら、その体を吹き飛ばした。
大成功
🔵🔵🔵
死絡・送
歌いながら戦い、敵の撃破を目指す
誰かの求める声がする、飛び出せ悪を切り裂けノーブルバット!
路地裏で悪がはびこってる 舞い降りて蹴散らせノーブルバット!
ヴァンプチャージャーで悪を追えノーブルバット!
悪の血をすえ貪り殺せノーブルバット!
空を飛べ闇を駆けろノーブルバット!
とノーブルバットのテーマ(仮)をうたい上げて最後にユーベルコード
の光子魚雷一万発発射!!で光子魚雷を発射し怪人を反物質の光になれと
攻撃します。
フィロメーラ・アステール
「うおー! 猟兵うおーーいえーーー!!」
歌が想いを熱くする! 想いが歌を熱くする!
要するに熱けりゃ熱くなる!
つまり【気合い】だーーー!!
ふぁいやーーーーー!!!
【日輪の帷帳】の炎に包まれ燃え上がるぜ!
【オーラ防御】で攻撃に耐え、突撃する事で武器にもなる!
よし、猟兵の強さと凄さとカッコよさをマシマシにしてビッグバンさせたようなヤバいアレを歌う!
●
猟兵は強い! 最強!! 無敵!!!
究極パワー全開の! 果てしなく凄いエネルギーで!
オブリビオンはイチコロだ!!
(※猟兵はスーパーロボットかな?という勢いの歌詞)
猟兵イエーーーーーー!!!
猟兵ウオーーーーーー!!!
(※やたらテンションが上がるシャウト)
●リア充燃えずも猟兵は燃える
これまで散々にやられてきた怪人、これでは自身の面目も潰れなにより悔しい。それゆえにリア充爆発しろ怪人は高台へと昇り、自身の歌で街全体に影響を及ぼしてやろうと考える。
ビル屋上に設置されたステージ。そこへたどり着いた怪人を……既に二人の腕組をした猟兵が待ち構えていた。
黒と黄金、相反するカラーリングをした猟兵は、しかし同じベクトルの歌を歌う為にここにいる。それは先の戦いで活躍した猟兵達とも違う歌――そう、「熱い」歌だ。
「行くぞオブリビオン、俺の歌を聞け!」
「うおー! 猟兵うおーーいえーーー!!」
腕を突き上げた蝙蝠を模りそこにニンジャとヒーローのエッセンスを織り交ぜたスーツに身を包んだダンピール、死絡・送(ノーブルバット・f00528)は、もう片方の手にマイクを握りつつびしりと敵を指差した。その隣で自身の身の丈ととんとんくらいの大きさのマイクを全身で掴み、音割れせんばかりの声量で叫ぶは綺羅星の輝きを持つ衣装と金髪を靡かせるフェアリー、フィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)。
上等だとばかりに怪人もまたマイクを手にするが――それより先に歌い始めるのはノーブルバットこと死絡。
誰かの求める声がする、路地裏で悪がはびこってる
飛び出せ! 悪を切り裂けノーブルバット!
舞い降り蹴散らせノーブルバット!
レトロなアニメのオープニングテーマを彷彿とさせるテーマソング風の歌詞を載せるのはポップさと同時にどこかダークさか感じさせるのは、ヴァイオリンの音のせいか。熱の入った歌は場を満たし、立体映像の主導権を握る。
キマイラフューチャーの街並みに雪が積もったような映像が投影され、薄暗くなった街にささやかな街灯が点る。ギラギラな蛍光色などが目立つキマフュ特有の街が一気に治安の悪そうな雰囲気のアナログさを醸し出す。
雰囲気に呑まれかける怪人。だが、その一瞬こそが命取り。
ヴァンプチャージャーで悪を追えノーブルバット!
悪の血を吸い貪り殺せノーブルバット!
空を飛べ闇を駆けろノーブルバット!
歌に合わせて召喚され飛翔する黒いスポーツカーがどこからともなく怪人を轢き飛ばし、羽あげられた怪人を吸血した死絡は空中で怒涛のラッシュを放ち壁へと叩き付ける。血を得て覚醒したその姿は正に高貴なる蝙蝠、空に浮かぶ赤い月をバックに悠然と空に羽搏く姿は正にダークヒーロー。
しかし、怪人は気付く。どうしてここまで強烈な強化がかかっているのか。単体でこれまでの猟兵以上のスペックを発揮するのは何が何でもおかしい。壁に半分めりこんだ視界の隅に捉えたのは……もう一人の猟兵、フィロメーラの存在だ。
猟兵イエーーーーーー!!!
猟兵ウオーーーーーー!!!
小さな体で喉を潰さんばかりのシャウトを見せる彼女。その歌の目的は自身の能力向上ではなく、自身の得意とする他の猟兵のサポートである。
小規模ながら立体映像によって背後に数十人のサポートメンバーを引き連れ歌い上げるのは、シンプルで明快な応援ソング。熱マシマシなのは彼女の想いをダイレクトに乗せているゆえだろうか。アイドルのステージにも似たお立ち台の上でスポットを浴びながら、続けて彼女は叫ぶ。
猟兵は強い! 最強!! 無敵!!!
究極パワー全開の! 果てしなく凄いエネルギーで!
オブリビオンはイチコロだ!!
勢いを重視し、ギターサウンドとドラムに乗せた歌。奇しくももう一人の猟兵と歌の方向性が似た事も相まって、宛らマッシュアップのように互いの歌の効力が掛け算式に膨れ上がっていたのだ。
力を合わせる戦い。自分自身の欲望だけに任せて歌う怪人の歌とは到底比べ物にならないパワーを与え、そして自らも与えられている。活躍する猟兵を後押しするように、もっともっとと声を上げるフィロメーラの輝きは、最早一等星にも負けはしない。
「なんなんだ、なんなんだよお前らはぁあああああ!?」
リア充爆発しろ怪人が半分泣き声のような無様な声を上げて問う。自分のリア充への憎しみなど遥かに霞み、徹底的に打ちのめされてきた。それほどまでに強い想いを持つこの連中は、何者なのだと。
「まだわからないのか!? だったら教えてやるぜ!」
上空で腕を組んだ死絡の隣へと急上昇したフィロメーラは、はんと鼻で笑う。そして二人はオブリビオンのくだらない問いに答えを出す。拳を、突き出して。
「俺たちは!」「あたしたちは!」
「「世界を守る、猟兵だぁぁぁぁッッ!!」」
死絡の広げた翼の黒から滲む様に現れる光の魚雷、数十の弾頭が一斉に怪人を捕えて発射される。しかしそんな鋼色の群れの中で一等輝く赤い流星は、フィロメーラの魂の如くに燃え上がり突進する。
叫ぶ怪人。そして、二人の全身全霊の奥義が炸裂し……怪人は、大爆発する。それを背にポーズを決める様は、まさにヒーローのようであったという。
●語り継がれるその歌
キマイラフューチャーの『システム・フラワーズ』の異常に端を発し、オブリビオンフォーミュラ『ドン・フリーダム』によって引き起こされた戦争が終わり、それでもなおキマイラの人々は何時もと変わらぬ生活をしている。バズを求め、心を躍るものを尊ぶその生き方に、何一つ変わりはない。
そんな彼らにとって、「この世界を守るために戦った猟兵達の活躍」は最高に心を震わすエモくてバズる最高のエンターテイメント。記録として残る幾つもの映像の中で、特に好まれるジャンルの一つとして、この戦いは取り上げられることだろう。
思いの丈を言葉にし、自身の内を剥き出しにしても世界を守るために戦った猟兵達の勇姿は、この先もキマイラの人々の胸を打ち、心を震わせるものに違いない。
今日もキマイラフューチャーははしゃいだ明日を迎えるだろう。その影に、歌い、叫び、戦った猟兵達の活躍がある事を、決して忘れることなく。
大成功
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