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新しき一年の為に

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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 とある村の外れにある材木置き場。吐く息が白く見える早朝のまだ寒い時間から、村の男達は餅つきの為の薪割りに精を出していた。
「いやあ、今年も晴れてよかったねぇ。これが無いと一年が始められないよ」
「ああそうだなぁ、鏡餅もたんとこさえないとだな」
 快活に笑い合いながら言葉を交わす村人たち。毎年この時期になると、村のみんなで集まって新年のための鏡餅づくりを行うのがこの村の習わしとなっている。
 鏡餅とは年神様と呼ばれる、新年の良運と年齢を授ける神様の神霊が宿る聖なる供物であり依代でもある。村人の話のように、これがないと新年を迎えられないものなのだ。
 各家庭に一つずつの鏡餅。それに冬の間にいただく餡餅などの小さなお餅もこの日のうちに作り上げるのが恒例であった。子供から大人まで老若男女問わずの一大行事で、一年の納にとこの日を楽しみにしている者も多くいる。

「大変だ! 鬼が出た!」
 飛び込んで来た若者が指差す丘の上にはずらりと並んだ真っ赤な異形の者の姿。それらは虚ろな目をし、手には金棒を携えてのろのろとした足取りで今にも村へと押し寄せんと歩を進めていた。
「ひ、避難しろ! 全員、裏の山中に隠れるんだ!」
 斧や薪もそのままに一目散に逃げ出す村人たち。棍棒鬼の群れは村のすぐ側まで迫っていた。

 ――クビ、クビガホシイ。



「君たち、お餅は好きかい?」
 猟兵たちを前に二之舞椿切は柔和な笑みを浮かべてそう問いかけた。深緋色の瞳は弓なりに閉じられたまぶたに隠れ、今はその色を隠している。集めた理由はそれだけかと猟兵の一人がため息を吐くと、椿切は感情の分からない声色で話を続ける。
「サムライエンパイアのとある村で鏡餅作りの集まりがあるみたいだよ。……まぁそれだけでは無いんだけどね」
 話のメインは他にあるらしい。椿切は周りの猟兵たちを見回して本題を切り出した。
「どうやらその村に、棍棒鬼が押し寄せて来ているみたいだね。すぐに行って退治して貰いたいんだ」
 棍棒鬼とは無惨に殺され弔われず捨てられた死体が鬼となったものの事である。かつては鬼の軍団を作り諸国を侵略した戦国大名もいたそうだが、制御に失敗し自国を滅ぼすこともあったらしい。それ以来大名たちは鬼の発生を恐れ、敵味方関わらず弔うようになったそうだ。
「大変だよね。村が壊滅してしまったら餅どころの話では無いよ」
 椿切の話し口調は本気なのかそうで無いのかの判断がつきにくい。しかし村が襲われるということは確かなようだ。
「全てが済んだら楽しい餅つきが待ってるよ。食べてついて、目一杯くつろいでくると良い。兎にも角にもまずは棍棒鬼を退治して欲しいな。どうかよろしく頼んだよ」
 椿切は丁寧に礼をして猟兵たちを送り出した。


温泉スイ
 お目に留めていただき、ありがとうございます。温泉スイと申します。
 迫り来る敵を退治して、新年の為のお餅作りをお手伝いしましょう。
 ご参加なさる方は雑記の方も一度目を通して頂けますと幸いです。どうぞよろしくお願い致します。
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第1章 集団戦 『棍棒鬼』

POW   :    鬼の金棒
単純で重い【金棒】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    怨念疾駆
自身の肉体を【怨念の塊】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ   :    死武者の助太刀
【落ち武者】の霊を召喚する。これは【刀】や【弓矢】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


猟兵たちがサムライエンパイアの大地に降り立つと同時、村の男たちは材木置き場の辺りから避難をし始めたところであった。丘の上に見える棍棒鬼の群れは遅い歩みでありながらも、確実に村へと近付いて来る。
霜月・柊
……眠い…けど、鬼と戦えるなら…頑張ろ…
最初は村の高台から援護射撃で確実に数を減らして、村に被害が出ない様にしつつ様子を見る。他の猟兵が避難誘導等をしている様であれば村には構わず前線に出て鬼を斬りに行く。いざとなればユーベルコードも使って鬼を減らす。



「眠い……けど、鬼と戦えるなら……頑張ろ……」
 朝方のひんやりとした空気に背中を丸め白い息を吐く。昼頃には暖かさが増すだろうか。
 霜月柊は眠たげな目を擦りながら村の見張り台へと登り陣を取った。ここからなら村内の様子も隈無く見渡せる。棍棒鬼の動きも手に取るように分かるだろう。
 後方を眺めると村には未だ幼い子供や走ることの出来ない老人たちが残っていた。村人総出で避難を試みているようだが、完了には今しばらくの時間がかかるはずだ。
「先には進ませません。……必ず、倒します」
 大型の弓に矢をつがえ、キリキリと強く引き絞る。狙いを定めて十秒間。
 ――村には一歩たりとも踏み入らせないと言わんばかりに柊は鋭く正確な矢を放った。
 風切り音が遠ざかり、群れの先頭を歩む棍棒鬼が一矢を受けて倒れ伏す。柊の放った矢は真っ直ぐに鬼の胸部を射抜いていた。棍棒鬼たちがざわめき出す。
 首を回して肩の力を抜くと、眼下で動き出した仲間たちの姿も視界に納め、柊は次の矢に手を伸ばした。
「目標……沈黙。次いくよ」

成功 🔵​🔵​🔴​

紫洲川・珠璃
「随分派手な赤鬼ね・・・」

とにかく鬼の意識をこちらに向けたいので、喚び出した狐火を広域にばらまきつつ真正面から飛び込むわ。
(当然味方は巻き込まないようにするのが優先です)
戦い方は一刀流による、速度と手数重視(2回攻撃)の接近攻撃ね
狐火は注意を引いたり、体勢立て直しの為の牽制に利用するわ

各攻撃の対抗方法
鬼の金棒:敵の挙動に注意しつつ、攻撃させてからのカウンターを狙う
怨念疾駆:伸びきったところで引き戻す一瞬の隙を狙って切り付ける
死武者:本体の鬼の攻撃に注意しつつ、刀なら切り結び、弓矢は狐火で迎撃



燃えさかる様な赤い肌に突き出た棘と尖った耳。ぎょろりとした目玉は虚ろに染まり、頭部には一本の角が生えている。目の前に跋扈するその姿は正しく異形の者であった。
 柊の一矢を受けた棍棒鬼たちは手にした金棒を振り上げながら僅かに歩みの速度を上げていた。
「随分派手な赤鬼ね……」
 紫洲川珠璃の周りには召喚した無数の狐火がゆらゆらと揺れていた。その一つ一つを四方にばら撒きながら、珠璃は棍棒鬼の真正面から敵陣へと飛び込んでいく。炎は瞬く間に天高く登る火柱を巻き起こしていた。
「鬼さんこちら……なんて。これだけ注意を引けばいけるわね」
 辺り一面に轟々と燃えさかる狐火の炎に気付いた棍棒鬼の視線が、一斉に珠璃へと集まった。
 先頭を行く棍棒鬼の身体は次第に澱んだ黒い靄の様なものに包まれて、珠璃目掛けて一直線に伸びてくる。間近に迫るそれを跳び躱すと、なにやら靄の中心が呪詛の様な言葉を吐き出している事に気が付いた。

 ――ホシイ、クビガホシイ。
 クビガ……ナカマガ――

 霞が尾を引き伸びきったその一瞬を見極めて、珠璃は素早く二撃、刀を振った。
 手応えを感じた二撃目に、黒い靄が唸り声を上げて霧散する。
「残念だけど、あなたの仲間にはなれないのよ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

藤野・いろは
今年の仕事は今年の内に片付けないといけませんね。
ええ、これが僕に出来る数少ない死者への弔いでしょうから……。
よい新年を迎えるためにも助太刀致します。
住人は勿論のこと村や建物にも被害がいかぬよう、「殺気」を飛ばしてできる限り棍棒鬼の注意を引くとしましょう。
数が多いようなら「なぎ払い」で出来るだけ纏めて攻撃をあえていき、単体相手であれば間合いを維持したまま「フェイント」を交えたり「鎧無視攻撃」で迅速に処理に処理していきましょう。
若干の無理や不手際も「勇気」で乗り切れるはずです、誰かの為の正義は決して負けたりなんかしない、そう母さん達が言っていました。
それでは気を引き締めていきましょうか――。



「今年の仕事は今年の内に片付けないといけませんね。よい新年を迎えるためにも助太刀致します」
 一年の憂いはここで一掃しておかなければ。藤野いろははそう呟くと手にした刀を構え、棍棒鬼に向かって震えるほどの殺気を送る。自身に注意を向けることによって村や建物の被害を逸らそうと考えていたのだ。
『誰かの為の正義は決して負けたりなんかしない』――母さんたちはそう言っていた。胸に沸き立つ勇気を抱きしめたいろはは、柄を握る手に力を入れ気を引き締める。全ての棍棒鬼を引き付けることは出来ないが、向かってきた数体は必ず仕留めると棍棒鬼へ向かって駆けだした。
 群れから突出した一体の棍棒鬼と間合いを取る。じりじりと対峙し、狙いを定めて刀を振りかぶる。棍棒鬼がそれに反応したところ、いろはは一端身体を引き、鬼の金棒が振り下ろされたところへ一閃を食らわせる。
 棍棒鬼を深く切り裂いたその一撃をすかさず振り払い、周りに集まる纏まりを持っていた棍棒鬼たちを鋭い一太刀で一掃する。見事な一撃は棍棒鬼たちを瞬く間に絶命させていた。
「これが僕に出来る数少ない死者への弔いでしょう……安らかに」
 目の前で消えていく棍棒鬼たちを見つめながら、いろはは深く目を閉じた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紬雁・紅葉
(呑気な風)まぁまぁ、これはこれは…戦の怨鬼が十重二十重…
無念執念これだけ並べは…
(一転、決然と)捨て置く訳には到底参りませぬ!

【武器(薙刀)を振り回しておき】ながら正面から悠々と歩み寄り、触れるを幸い【薙ぎ払う】

天地神明に於きまして
畏み畏み申し賜う
黒曜石の鬼が怨仁(おに)へと
畏み畏み申し賜う
天照大御神月読大神の御名の元
怒らず嘆かず比良坂へ
いざやいざや去り罷り賜え

僅かでも動きが鈍れば幸いと祝詞にて【恫喝】

※アドリブ、緊急連携、とっさの絡み、大歓迎です※


鈴鳴・藜
新年をすがすがしい気持ちで迎えるためにも。
今年の内にちゃんと掃除はしねぇとな。
他の猟兵ともし手が組めるんであれば頼りにさせてもらいたいね。

数が多いみてぇだし頭数も増やしたい。
っつーことで、ほら出番だぜ相棒。
と、『狼影』を自身の陰から出し共闘していくか。
敵を屠ってくれる頼もしいヤツさ。
俺はコイツ(愛刀)でできるだけ敵を薙ぎ払くとするかね。

落ち武者の霊っていうことは鎧とかも着てるんだろ?
そしたら『鎧砕き』の技能と『剣刃一閃』を組み合わせて切断できねぇかな。



「まぁまぁ、これはこれは……戦の怨鬼が十重二十重……」
 紬雁紅葉は眼前に蠢く赤い群れにのほほんとした声を上げ、周囲をぐるりと見渡した。辺りには前を行く仲間たちによって倒された棍棒鬼の亡骸たちが、そこかしこで霧となっては消えていく。
 見る限り棍棒鬼の群れは残り半数になろうかという程に減っていた。しかし未だ数は多く、その歩みは止まることは無い。
 歩み寄ってくる棍棒鬼を見据えると、紅葉は決然とした意志を浮かべ手にした薙刀を振り回す。
「無念執念これだけ並べば……捨て置く訳には到底参りませぬ!」
「ああそうだ。新年をすがすがしい気持ちで迎えるためにも、今年の内にちゃんと掃除はしねぇとな」
 前を行くいろはに倣うかの様に鈴鳴藜もこの鬼の群れを一掃してしまおうと気合いを入れる。
「相棒頼むぜ、一緒に狩りに行こうや!」
 藜が虚空に声をかけると自身の影が長く伸び、全長二メートルを優に超える大型の狼――狼影が現れた。隣に並ぶ紅葉は現れた狼影に僅かに瞠目しながらも珍しげに藜へと声をかける。
「まぁ……大きな狼ですのね」
「俺の相棒、敵を屠ってくれる頼もしいヤツさ」
 残存する敵の数も未だに多い――頭数は少しでも多い方が良いだろう。
 藜は狼影を連れて棍棒鬼へと駆けだした。群れる鬼たちを蹴散らしては、藜の一閃に合わせて狼影も食らいつく。その後ろからは悠々と薙刀を振り回しながら紅葉が歩み寄る。

 ――天地神明に於きまして
 畏み畏み申し賜う
 黒曜石の鬼が怨仁(おに)へと
 畏み畏み申し賜う
 天照大御神月読大神の御名の元
 怒らず嘆かず比良坂へ
 いざやいざや去り罷り賜え――

 読み上げられる神聖な祝詞と紅葉の気迫に棍棒鬼が怯みを見せた。その隙を見計らい紅葉は薙刀を振りかぶる。悠然と立ち進むその動きは次に振るう一撃を敵に悟らせ、棍棒鬼は警戒心も顕わに紅葉から距離を取った。
「いけません……っ」
 空を切った紅葉の薙刀を払い退け、棍棒鬼は襲いかかる。
「おっと、俺を忘れちゃいけないぜ!」
 鈍重な金棒を紅葉へと振り上げる棍棒鬼の背後から、藜の刀が棍棒鬼の右腕を切断する。返し刀で胸を一突き。刺し貫かれた棍棒鬼は恨みの雄叫びを上げながら霧散していく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

坂月・陽波
結構前に鬼退治したことあるけれど、またすることになるとはね。首は駄目だけど酒ならあげよう。

接近戦は避けて【般若大飛泉】で迎撃。怨念や霊は【破魔】で対処。

新しい年を迎えられなかったことはさぞ無念だろうね。けどそれはそれ。宴の邪魔をするなら容赦はいらないだろう。


御剣・刀也
たく、新年の催しを邪魔するなんてな
ま、鬼に風流を説いたところで無駄な事か
美味い餅の為にさっさと退場していただくか

鬼の金棒は一撃の威力が乗り切る前に受け止めて鍔迫り合いにするか、重心をずらして受け流す
怨念疾駆を使われたら慌てず進行方向を落ち着いて見極めて移動する方向へ追いかける
死武者の助太刀を使われたら邪魔をする刀使いがいたら優先的に倒して棍棒鬼を攻撃する。弓矢はそんなに気にしない。
「俺は戦場に立ったら既に死人だ。死人が死を怖がる道理はねぇだろ?」


ランゼ・アルヴィン
ほうほう、サムライエンパイア……懐かしき我が故郷か。しばらく見ない間に鬼が出るようになってるとは、物騒だねぇ。

そういやここ数年は餅も食ってなかったし、コイツらを倒した後でご馳走になるとしようかね。

●戦闘
羅刹旋風を使って攻撃力を上げ、一体ずつ確実に切り伏せていく。
村に入られて建物を壊されても困るし、敵を挑発してこっちに注意を引くとするか。
家の修理に時間取られたくねえしな。

「はっ、どうしたどうした!この程度じゃ俺様は倒せねえぞ!」
「おう、俺様の首級が欲しけりゃ死ぬ気で掛かってこいや!」



「しばらく見ない間に鬼が出るようになってるとは、物騒だねぇ」
 久方振りに故郷の地を踏んだランゼ・アルヴィンは、眼前に広がる懐かしい景色に目を細めた。連なる山並みと稲の植わった田園風景。やはり見慣れた風景とは良いものだ。
「俺は結構前に鬼退治したことあるけれど、またすることになるとはね」
 やれやれと肩を諌めながらランゼに言葉を返すのは坂月陽波。見た目こそ未成年であれ、かつては鬼神に毒酒を飲ませる為に使用されたと謂われる大盃のヤドリガミである。懐かしい記憶を呼び起こし、陽波は小さくため息をついた。
「新しい年を迎えられなかったことはさぞ無念だろうね。けどそれはそれ。邪魔をするなら容赦はいらないだろ?」
「本当にな。たく、新年の催しを邪魔するなんて……ま、鬼に風流を説いたところで無駄な事か」
 御剣刀也も陽波の隣に歩を進め、呆れたように大きく頷いた。丘に残る鬼たちは重く腹に響く程の苦しげなうめき声を上げている。残る数は多くない。逃走の気配も見せない棍棒鬼に、刀也はならば切り捨てるのみと睨み付けるように前を見据えた。
 ランゼは一瞬眉を顰めて村の方を振り返る。村人たちは避難し終わったようだが村に入られて建物を壊されでもしたら面倒だ。そうなる前に、今直ぐにでも倒してしまいたい。頬を叩いて気合を入れる。
「そういやここ数年は餅も食ってなかったし、コイツらを倒した後でご馳走になるとしようかね」
 明るく言い放っては手にした剣を担ぎ上げる。
「俺も同感だ。美味い餅の為にさっさと退場していただこう」
 刀也も不屈の獅子のように雄々しく輝く日本刀を構え、攻撃の機会を見計らう。

――クビガホシイ。
 クビヲクレ……アラタナクビヲ――

 呪詛の様な重苦しい言葉を吐き出す棍棒鬼たちの前にゆらりと陽炎のような落ち武者の姿が現れる。あれは棍棒鬼の生前の姿であろうか。手に手に鈍色の刀を構え、一斉にこちらへと駆け出した。
 陽波は距離を取ったまま手にした酒盃をかざし語りかける。
「首は駄目だけど酒ならあげよう。そら、一杯どうぞ」
 勢いよくなみなみと注がれた酒は盃から溢れ出し、辺り一面に飛沫を迸らせる。距離もまだ遠く飛沫が掛かることは無かったが、地面に落ちたその雫をどうやら落ち武者たちは嫌がっているようだ。まるで結界でも張られたかのようにその場で立ち止まり地団駄を踏む。
「ほう、これは興味深い。その場で潔く消えてもらおう」
 陽波は破魔を投げつける。触れる端々から落ち武者の霊たちはたち消えて、棍棒鬼も崩折れた。
「はっ、どうしたどうした! その程度じゃ俺様は倒せねえぞ!」
 一方、ランゼは棍棒鬼に挑発の言葉を投げかけながら、剣を大仰に振り回し棍棒鬼へと立ち向かう。相対する鬼たちはランゼの挑発に怯む事無く殴りかかる。手にした金棒を振り上げながら。
「おう、俺様の首級が欲しけりゃ死ぬ気で掛かってこいや!」
 振り下ろされた一撃は周囲の地面を破壊する。それを躱して飛び退いたランゼは棍棒鬼へと確実に一撃を食らわせた。
 背中合わせになったその場。刀也の刀がギチギチと音を立てて棍棒鬼の金棒と鍔迫り合う。押し合う力はなかなかに強く、一瞬でも気を抜けば完全に押さえつけられる事もあり得るほどだ。
「おお、なかなか良い力持ってんじゃねぇか。だけどな、ただ押すだけが全てじゃ無いんだぜ」
 刀也は重圧のかかるそれを重心をずらして受け流し、そのまま一閃。柔よく剛を制す。棍棒鬼の横っ腹を深々と切り裂き押し払った。

 冷たい風が丘の上を滑り降りる。日の当たりだした丘の上にはいつの間にやら、棍棒鬼の赤い群れは跡形も無くその姿を無くしていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『用心棒』

POW   :    剛なる居合い
【居合い 】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    飛刃縮地の構え
自身に【修羅の気 】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    死者の誘い
【用心棒が殺した死者 】の霊を召喚する。これは【悲痛な叫び声】や【生前持っていた武器になりそうな物】で攻撃する能力を持つ。
👑17
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠犬憑・転助です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


棍棒鬼たちが居なくなった丘の上に、ゆらりと影が立ち昇る。刀の柄を苛立たしげに鳴らしながら現れたのは用心棒風の男であった。
『某の使い、還してしもうたのはお主らか。許されぬ……誠許されぬ』
 男は片手に人の首を引き摺り、血染めの刀を揺らしながらこちらへと向かってくる。
『戻らぬならば増やせば良い。まずは貴様らから。そうしてじっくりとあの村の者たちを嬲り殺すとしよう』
 丘の上には男の愉しげな声が木霊していた。
藤野・いろは
お次は貴方ですか、いいでしょう。お相手致します。
お相手の居合いに狙いを絞って戦っていきましょうか。
超高速の一撃といえど、それが分かっているのなら対処は可能です。
相手に打ち込ませる隙をつくり、そこに一撃を誘導させます。
「オーラ防御」によりその傷は大きなものにはならないはずです。
ええ、場所が分かるのなら防御を固められます。
そして相手には、剣刃一閃でカウンターを決めてしまいましょう。
後の先っというやつですかね、ふふ。
生憎と先に動いて頂いてから対処するのは、僕も得意分野でして。

さて……赦されないのはどちらか――理解して頂きましょう。
太刀にて紅引き、紅を差す。飾る銀に見惚れるなかれ。


紬雁・紅葉
あらあら?鬼の統領は剣鬼でしたか…「都牟刈」として捨て置けませぬ

【風の魔力】を防御力に付与。抜き身のルーンソードを浮舟(横流し)に構える
ゆるゆると正面から近寄り、敵の攻撃に打ち合わせて風圧で弾く
敵が大きく体勢を崩したら打ち込むが、基本守勢を崩さず、積極攻勢は仲間に任せる(こちらに気を引くのも狙いの一つだが、真意は敵の動きを圧する事)

その血気、その狂念、都牟刈の魂と布都の御名に於いて…御鎮めします
斬られて傷ついても、柔和な笑みは崩さない

とどめが打てるなら踏み込んでの胴薙ぎ

上首尾に終わったなら瞑目、祈念
嗚呼、来世あらば和魂と生らん事を…


坂月・陽波
あなたが御大将か。何があったかは知らないが、あなたの勝手にさせるわけにはいかないな。

俺は味方の援護に徹することとする。
大将の高速移動が厄介だから隙を見計らい【七星七縛符】で封じてしまおう。その間に倒せてしまえばいいのだけれど。皆を信じよう。
霊は【破魔の札】でお帰り頂こう。こんなになっても駆り出されるとはかわいそうだしね。



「あらあら? 鬼の統領は剣鬼でしたか……」
 紬雁紅葉は現れた用心棒風の男に意外そうに目を丸くした。てっきり棍棒鬼たちを纏めているのはもっと異形然としている者だと思っていたが、目の前に立つ男は普通の人間と全く変わらない見た目をしている。
「あなたが御大将か。何があったかは知らないが、あなたの勝手にさせるわけにはいかないな」
 坂月陽波の言葉に男は片眉を上げて首を傾げた。
『何があったか……? 何か理由があると思うのか。クク、某は斬られた首の持ち主の苦痛に歪んだ顔が好きでな。ただそれを見たいだけなのだ』
 数多の人々を殺してその首を集めると、皆それぞれに悲壮な表情を見せるのだと男は愉悦に目を細める。
『鬼たちが屠られた今、某手ずから斬り捨てるのも悪くはない。――いいや、いいや……この上ない程の喜びか』
 男は至極愉しげに笑いながら淀んだ眼で猟兵たちをぐるりと見渡す。もう片方の手に引き摺っていた首を投げ捨てると手にした刀で空を切った。
『さぁて、某に首を差し出す者は誰からだ』

 鬼が消えたと思えば次は殺人鬼か。藤野いろは一歩前へと踏み出した。
「いいでしょう。お相手致します」
 あちらも刀の使い手だ。先に動かれてから対処するのは得意分野だといろはは後の先を狙う。相手になると前に出て、男と対峙し一定の距離を取る。じりじりと相手の出方を窺いつつ、いろはは打ち込ませる隙を僅かに作った。
 瞬間、男が仕掛けてくる。踏み込む一瞬。
『何……ッ』
 陽波の放った七星七縛符の護符が男の攻撃を封じ込める。
「藤野さん、今です!」
『グゥッ……!』

 ――太刀にて紅引き、紅を差す。飾る銀に見惚れるなかれ。
 いろはの太刀が男の左肩を一閃。男は直ぐさま距離を取り、陽波をぎろりと睨め付けた。
『サシの勝負に水を差すとは無粋なまねを……』
「残念だけどサシだかどうだかは俺には関係ない事だからね。目的はあなたを倒す事だけだ」
 陽波が言うと、男は目をつり上げて怨嗟の籠もった呻きを上げる。
『許されぬ……誠許されぬ……』
 男の呻きに合わせて重なる声が二重三重。その声は徐々に悲鳴となり、肌を震わす叫びとなる。
 男の前に並ぶ刀を手にした者の影。その表情は一様に苦痛に満ちた顔をしている。これは男が殺した者たちの霊であろうか。死してなお苦悶から逃れることを許されぬ者の叫びが辺りに鬱々と満ち溢れる。

「これは、なんてこと。……赦されないのはどちらか――理解して頂きましょう」
 苦々しげに眉を顰め、いろはは太刀を握りしめる。
「『都牟刈』としても捨て置けませぬ」
 紅葉はルーンソードを浮舟に構えると、ゆるゆると男に向かって正面から歩みを進める。
 男が腰の刀に手を添えると鍔鳴りの音がカチャリと鳴った。暗い影たちが苦痛の声を上げながら手にした刀を紅葉に向かって振り上げるのを、陽波が破魔の札で討ち払う。
 剣と刀が交差する。紅葉の一撃は男の刀を風圧で弾きよろめかせた。逃さずそこに二撃目を打ち込む。
「その血気、その狂念、都牟刈の魂と布都の御名に於いて……御鎮めします」
 ふらつく身体を刀で支え、男は怒りを顕わにした。
『グゥウッ……貴様ら、生かしてはおけん。――死して震えよ!』

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

霜月・柊
やっと強い人来た〜。僕と遊ぼうよ〜。
柊は高台から降りて【目立たない】と【暗殺】、【だまし討ち】を組み合わせて奇襲し、そのまま打ち合う。一方で【オルタナティブ・ダブル】で呼び出した雪華には【援護射撃】をしてもらう。



見張り台から棍棒鬼を倒していた霜月柊は、強敵の予感にその場から直ぐさま降り丘へと足を運んでいた。丘の上方で仲間たちが戦っていたため到着が少し遅れてしまったのだが、これ幸いと敵の裏に潜み襲撃の機会を窺う。
 男が刀で身体を支え憎悪の言葉を吐き出したその時。
「やっと強い人来た~。僕と遊ぼうよ~」
 柊は緩く遊びの誘いをかけるかの様に躍り出て背後から刀を振るい上げた。
 男は突然の襲撃に驚き振り返る。柊の襲撃は男に驚異を与えたが、刀は男の右肩を薄く掠めただけで致命傷を与えるには至らなかった。
『貴様、どこからっ』
「どこってあそこからだよ」
 柊は村の入り口に見える見張り台を指さし微笑んだ。視線を逸らさず修羅の気を纏った男に、柊は勢いよく次の一撃を振り下ろす。
「いくよ! 雪華!」
 男が瞬時に一撃を避けたところに、オルタナティブ・ダブルによって現れたもう一人の自分――雪華が弓を引き援護射撃を行う。その一矢は男の太腿を深く射抜いていた。
『ぐっ……まだだ。まだ某の首は差し出すものかァ!』
 ぐちりと音を立てながら太腿に刺さる矢を引き抜き、男は虚空に恫喝を放った。

成功 🔵​🔵​🔴​

紫洲川・珠璃
「親玉が来たわね、赤鬼よりかはやるんでしょうけど」

妖剣解放を使って、中距離から高速移動で一気に距離を詰めて、接近戦に持ち込むわ
居合の間合いには入らないよう注意しつつ斬衝撃波と刀の攻撃の二段構えで攻撃。
相手が飛刃縮地の構えの構えを使って来たら
「悪いわね、同じ技同士で戦うのは初めてじゃないのよ」
と言いつつ手数の多さ主導権を得ようとするわ。

妖剣解放詠唱句
「我、此処に解き放ちたるは、死して尚現世に留まらんと欲す者達の怨嗟。
亡者の鬼哭を以て、いざ此処に力顕せ!虚鐵!!」



「親玉が来たわね、赤鬼よりかはやるんでしょうけど」
 紫洲川珠璃は目の前でしぶとく立ち上がる男に刀を向ける。
「我、此処に解き放ちたるは、死して尚現世に留まらんと欲す者達の怨嗟。亡者の鬼哭を以て、いざ此処に力顕せ! 虚鐵!!」
 妖剣解放を詠唱した珠璃はその身に妖刀の怨念を纏い、一気に男へと距離を詰めた。
 柊との戦闘で男の技も自身のユーベルコードと同じである事を感じ取っていた珠璃は口端を上げて男に語る。
「悪いわね、同じ技同士で戦うのは初めてじゃないのよ」
『ほう、同じ技……とな。某と貴様どちらが使い手として相応しいか証明してやろう!』
 瞬間、互いの斬撃から放たれた衝撃波が交差しぶつかり合う。修羅の気を纏った男の一撃は強大な力で珠璃の刀身を圧倒する。
「くっ……なんて力なの……」
『そら、どうした! お主の力はこの程度のものか!』
 珠璃は手数でもって主導権を握ろうと画策していたが、男の一撃は想定以上の力であった。反撃の隙さえも与えられずに珠璃の刀は押し切られる。
「!!」
 強い衝撃に吹き飛ばされ、地面に腕を付き体を支える。――珠璃の肩口には受けた刀傷がざっくりと刻まれていた。

失敗 🔴​🔴​🔴​

満月・双葉
紫洲川さん、大丈夫ですか。

他の猟兵との連携を重視します。

敵の攻撃は見切りや、第六感によるカンで避け、避けられない場合はオーラ防御や盾受けで耐える

戦場を把握し地形の利用、フェイントによる翻弄、忍び足で目立たない動きを心がけ騙し討ちする


本や馬の置物を用いた怪力による気絶攻撃
桜姫で串刺しからの大鎌への変形を行いながら生命力を吸収する2回攻撃による吹き飛ばし
パパ直筆御札による呪詛でジワジワと生命力を削る攻撃
大根による傷口をえぐる攻撃
虹瞳による零距離射撃
等間合いも戦法もコロコロ変えて翻弄していく

虹薔薇の静踊使用時は眼鏡を外します
他の猟兵への技能スナイパーを用い援護射撃

残像を残す早業もご覧に入れます


紬雁・紅葉
調子に乗らないで下さい

【風の魔力】を状態異常力に付与
今度は【属性攻撃】で弓矢に風を纏わせ、矢継ぎ早に敵を打ち据える
矢に風圧を乗せ、敵を強かに転倒させる

卑怯だ、等と罵られたら冷淡に返す
先の鬼、兵の屍ばかりではないでしょう?
逃げまどい泣き叫ぶ民女子供、それすら手にかけたのでしょう?
だからあの数も居たのでしょう?
それを以てなお武士を気取るのであれば、それこそが妄念!
「桃生(もむのふ)」を語るならば先ず己の弱念を斬りなさい!剣鬼!!

ひたすら【破魔】の風矢を射ち込む
仲間の行動があれば即座に【援護射撃】

※アドリブ、緊急連携、とっさの絡み、大歓迎です※


紫洲川・珠璃
「・・・これはなめてかかりすぎたわね」
一太刀もらったとはいえ、これで諦めるほど人間できてる訳じゃないの
負傷した肩の腕は動かないでしょうけど、右腕一本でも食らいついてみせるわ

月無き夜の静寂亭の人たちと合流して再攻撃

しんどいけど今回2回目の妖剣解放を使って接近戦闘を試みるわ
敵の攻撃は一度斬り合っているわけだし【見切り】で回避を試み、
攻撃は【2回攻撃】で再度手数中心で攻撃
他の猟兵の攻撃の為の隙を作り出すのか、作ってもらった隙に一撃加えるのかは状況次第ね
でも、相手に隙ができれば多少強引にでも一撃加えにいくわ
やられっぱなしというのも癪だし
斬撃は片手ではつらいので、高速移動の勢いを乗せた刺突で勝負かしら


佐之上・権左衛門
(【POW】【月無き夜の静寂亭 】の面子と参加)・・・なるほどね。この世界はあういう類がいるのか。 なら・・・初めて見る技にどう反応するか試してみようか。 愛用のグレートアクスを右手に構えて用心棒と対峙する。 「すまんな、こう見えてもおいちゃん人々を守る立場なんよ。だから勝手ながら助太刀させて貰うぜ」 【怪力・鎧無視攻撃・二回攻撃・マヒ攻撃・第六感・挑発・おびき寄せ】を用いて用心棒と戦う。 こちらへの注意が向いたらUC【氷結手榴弾】の範囲に人がいない事を確認し、相手の目の前で【氷結手榴弾】を。 これで一瞬でも隙が出来てくれたらいいんだけどねぇ。 回避は直感(第六感)頼りで。


鈴鳴・藜
手負いの猟兵には労いの言葉を。
遅くなって悪かったな、少し休んでてくれ。
俺は治療関係はからっきしだから知識ある仲間がいればそいつに頼みたい。

さて、それじゃ相手願おうか。
多少なりとも剣の扱いを心得ていてね。
敵がどれほどの腕を持つかは他の奴らの手負いで分かる。
油断は命取りだ、集中していくぜ。

戦闘技能の恩恵は有り難く。
見切り、2回攻撃、カウンター、先制攻撃、なぎ払いなどを駆使して。
他にも仲間はいるから隙は必ずできるはずだ。
戦闘に参加しつつその好機を逃さないよう気を付けておこう。
そして『剣刃一閃』で敵の動きを鈍らすことができればいいんだが。



「……これはなめてかかりすぎたわね」
 男の力は想像以上に強かった。それでも珠璃は傷を受けた片腕を押さえてなんとかその場に立ち上がる。
 一太刀浴びせられたとはいえそれで諦めるほど人間が出来ている訳では無い。右腕一本でも食らいついてみせると珠璃は僅かに眉を顰め、手にした刀を強く握りしめた。
 男と珠璃の間にひりつく様な緊張が走る。どちらともなく動き出す、その瞬間。
『グッ……?』
 男の身体がぐらりと傾ぎ、強打によろめく体勢を立て直そうと試みる。
「紫洲川さん、大丈夫ですか」
 男の背後に悠然と立っていたのは満月双葉。彼女の手にはまるで武器とは思えない『馬の置物』が握られていた。
 硬質なそれは所謂鈍器――。男は鈍い痛みと目の回るような衝撃に心を乱す。
『一度ならず二度までも……ええい! 不意打ちとは卑怯な!』
 背後から音も無く近付き不意打ちを食らわせた双葉に男は酷く激高する。武士の矜持は無いのかと肩を怒らせて双葉を睨み付けていた。 
「戦いに不意打ちも何もないよ……。そもそも武士じゃないし」
 面倒くさそうに呟いた双葉に、男は苛立たしげに口端をひくつかせる。
 男の周囲に薄暗い妖気が燃えはじめ、轟々と勢いを増していく。それは男の表情を醜く妖しげに染め上げた。
『ククク、さすれば容赦はせん……ここに居る者残らず殺し尽くしてやろうではないか!』

「……調子に乗らないで下さい」
 紅葉が呟く。男の高笑いに鋭い一言を返した紅葉の瞳には冷ややかな怒りが携えられていた。
「先の鬼、兵の屍ばかりではありません……。逃げまどい泣き叫ぶ民女子供、それすら手にかけたのでしょう?」
 脳裏にこびりつく無数の悲鳴。その中には女性や子供と思しき声も含まれていた。紅葉はぎりりと唇を噛みしめる。
「それを以てなお武士を気取るのであれば、それこそが妄念!『桃生』を語るならば先ず己の弱念を斬りなさい! 剣鬼!」
 心のままに言い放ち紅葉は弓を引き絞る。
『ええい、五月蠅い! 刀というものがこの世にあるのだ。人を斬って何が悪い……! 貴様らも某の刀の錆にしてくれる!』
 男が叫び紅葉に刃を向けて走り出す。
 紅葉は向かってくる男へと狙いを定め矢を放った。渦巻く風を一矢に纏い勢いよく飛翔するその矢は、強力な圧でもって男を激しく地面へと転倒させた。
 次いでそこに双葉が駆ける。
『グゥ……ッ、ヌン!』
 突き刺す剣で男の腹部を傷付けると、不穏な気を感じさせる間もなく男は双葉の体を蹴り上げ刀を振り下ろした。その一撃を咄嗟に剣で防ぎ、双葉は『パパ直筆』の御札を放つ。御札は男の身体にぴたりと貼り付き剥がれない。
 双葉はかけていた眼鏡を外し男へと語りかけるように呟く。
「一緒に踊らない?」
『ちょこまかと五月蠅い小娘が!』
 双葉が男に視線を向けると、オーラで構成された虹色の薔薇が男の周りにひらりひらりと花弁を散らせて襲いかかる。双葉はついでとばかりに腹部の傷口目掛け、取り出した大根をぐりぐりと押し付けた。
『――!』
 男は苦悶の表情を浮かべて刀を振るう。双葉を突き飛ばし後方へ跳ぶと、そこにすかさず紅葉の放った破魔の風矢が突き刺さる。
「逃しません――!」
『グヌウゥ……』
 男が唸り、腹部に手を当てる。
「しんどいけど……負けないわ」
 仲間の攻撃の合間にと、隙を見計らっていた珠璃も俊足で駆け出し、勢いのままに男の身体に幾度も刺突を繰り出す。武器の重さと腕の痛みを堪えながら繰り返される攻撃は、確実に男の命を削いでいた。
 修羅の気を纏い出す男に珠璃は警戒を強めた。
 ――またあの技だ。
 珠璃は男と距離を取り回避の構えを取った。
 ――来る!
 すんでのところで攻撃を躱すが、男の間合いに入られる。切りつけられた腕が痛む――このままでは押し切られてしまうと刀を構えたその瞬間。

「遅くなって悪かったな。少し休んでてくれ」
「すまんな、こう見えてもおいちゃん人々を守る立場なんよ。勝手ながら助太刀させて貰うぜ」
 珠璃と男の間に立ち塞がる者が二人――鈴鳴藜と佐之上権左衛門は珠璃を背に庇い、悔しさに唸る男と対峙した。
『どいつもこいつも邪魔ばかりしおって――!』
 男は傷だらけの身体を支えながら、それでも大地に立っていた。数多の首を斬り奪ってきたオブリビオンだ。少しの油断も命取りだと藜は目の前の男に集中する。
「多少なりとも剣の扱いを心得ていてね。アンタがどれほどの腕を持つかは他の奴らの手負いで分かる。――さて、それじゃ俺とも相手願おうか」
『ほう、面白い。某に真正面から挑んでくるとは』
 珠璃が安全な場所へ下がる様子を見届けた権左衛門も男の様子を注視する。
「……なるほどね。この世界はあういう類がいるのか」
 それならばと権左衛門は男が初めて目にする技にどう反応するのか試してみようと心の内で呟いた。愛用のグレートアクスを構えて男の出方を窺う。

 張り詰めた空気が動き出す。藜はここぞとばかりに黒漆の鞘に収まる刀身を抜き、男へ向かって先制の一撃を繰り出した。次いで二撃、男の間合いに滑り込み切り上げる。紫色を帯びた刀身がきらりと光り輝いた。藜は隙を作らせること無く次々に男を切りつける。
『貴様……なかなかやるではないか』
 男は斬撃を受けたにもかかわらず、藜の刀裁きに感心した様に口角を上げ笑っていた。
 劣勢のはずが何故――藜が一瞬脳裏に思い浮かべた瞬間、男は一気に間合いを詰め瞬時に一撃を振り上げた。藜は重厚なその一振りを自身の刀でなぎ払い、反撃の刃を一振りした後剣刃一閃を放ち間合いを取る。
「あっぶねーな」
『チィ……ッ!』
 舌打ちをする男の側面からは権左衛門がグレートアクスによる一撃を叩き付ける。不意を突かれた強烈な一撃に男の手は痺れを覚え、唯一の武器でもある刀を取り落としてしまっていた。
「おっと、そう怖い顔をするのはやめてくれよ。……ところでそろそろ降参か?」
『まだだ……まだ、某はッ』
 武器を失ってもなお諦めない男を無視し、権左衛門はにやりと不敵な笑みを浮かべた。
「冥土の土産にこれをやろう。液体窒素がたっぷり詰まったお土産だ。存分に味わいな!」
 男の周囲に巻き込まれる者が居ないことを確認した権左衛門が懐から取り出した氷結手榴弾を放り投げる。男の足下へと落ちたそれは身体を凍結させ身動きのとれないほどに凝固させてしまう。
『な……ッ、これは! 貴様、某に何をした!』
 呪術や法力といった文明があるこの世界だが化学というものは存在していない。男は覚えの無い力に自身の動きを止められてしまったことに驚愕した。
「知る必要はねぇだろ。――もう終わりだ」

 ――ぼとり。首の落ちる音がする。風の吹く丘に現れた災厄は骸の海へと消え去った。
 数多の首を落としてきた用心棒のオブリビオンは、終には自身が手にかけた者たちと同じ運命を辿ることになったのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『餅つきしようぜ!』

POW   :    力いっぱい餅をつく!食べる!

SPD   :    素早く餅を返す!食べる!

WIZ   :    きな粉やあんこ等を用意する!食べる!

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

紬雁・紅葉
ティファーナ(f02580)と一緒に行動

やっぱりお餅つきはこうでなくちゃ♪(すごく嬉しげ)
襷をかけて、三角巾を冠ってお餅をつく

手慣れてる
最初は杵で臼の中のもち米を捏ねて、粒を潰して餅の肌理にする
ある程度まとまった所で搗き始め、ふっくら感を出す

そーれえいやー♪
搗くところで自然と掛け声が出る

そして仕上がったお餅をみんなで食べる
用意された餡子や黄粉の他に、大根おろしなど
誰かが海苔を持って来たら磯部など
色々な食べ方を楽しむ

ティファ―ナのお餅を小さく切ってあげる
彼女のほっぺを拭く

今年が良い年でありますように…


祝聖嬢・ティファーナ
紅葉さん(f03588)にお呼ばれしたので来て(参加)みました☆
ご飯を見て『おにぎり作るのかな?』と見ていたら杵が振り上げられて「ほへ〜☆」と見ていたら(フェアリーからしたら)スゴい勢いで振り下ろされるから「ひや〜☆」とアタフタするも、でき上がる直前で鼻を啜り「泣いてないモン!」と誰か(紅葉)の後ろからお餅を見ています♪

お餅のままだと『蜘蛛の巣』を連想するからお団子をニコニコ食べて楽しみます☆
お餅に触れたら「取れないよ!?」と慌てますが紅葉さんや誰かが指先や手のお餅を食べて取ってもらったらお箸で次から食べます♪


霜月・柊
終わっちゃったぁ〜。
少し名残惜しそうに村に戻る。でもおもち食べれるんだっけ?お手伝いしてちょっともらお〜。
村の人に鬼がいなくなった事を伝えて、餅つきの時には【SDP】でおもちを返す手伝いをする。
皆で楽しく食べるのはやっぱ良いよね〜。


藤野・いろは
なんとか平和を取り戻せましたね。
それじゃあ、お餅をつきましょうか!
ん?子供たちがこちらにやってきましたね、僕ら猟兵に興味があるのでしょうか?
折角ですし一緒にやりましょう、「手をつなぎ」を歓迎します。
子供と一緒に手を重ねて杵を持って作業をしたりと出来るだけ交流をしていきましょうか、「破魔」の力を込めて作れば今年の危険を祓ってあげられますかね、そうだといいのですが……。
ともあれどうやら楽しい1年になりそうです、ふふーふ。
出来ましたね!どうぞ、君が頑張ってくれたからとても上手に出来ました。
僕と一緒に食べたい、ですか……?ええ、構いませんよ
……ふふ、とても美味しいお餅ですね
台詞改変・アドリブ歓迎です。


坂月・陽波
皆、お疲れ様だ。無事でよかった。

老いも若きも新年を祝って、こうして変わらず流れていく時間のありがたさよ。

力仕事は皆に任せよう。俺は応援しかできないからね。
代わりと言ってはなんだが、きな粉というものを用意したよ。確かこの粉を付けて食べれば良いのだったね。
あと
それと【掃除】なら任せておくれ。

鬼のいた方へ手を合わせてからいただこう。
鏡餅は一ついただいて帰れるかな。


紫洲川・珠璃
「過程はどうあれ終わったわね」

餅つきはとりあえず材料の用意かしら(WIZ)
きなこやあんこもいいけれど、砂糖醤油や、醤油と海苔をつけて焼いたものもいいわね
あとあんこはこしあん派

片手で適当に手伝ったら、手当てした腕を気にしつつ反省ね
全く、腕をまるごと持って行かれなかっただけましというべきかしら



「あ~あ、終わっちゃったぁ~」
 丘下の村へと足を進めながら、霜月柊は残念そうに言葉を溢す。強敵であるオブリビオンとの戦いが終わってしまった事が、ほんの少しだけ名残り惜しかったのだ。
 早朝から長時間に渡って続いた鬼や用心棒風の男との戦い。最後はまるで男と遊んでいるかの如く対峙していたのだが、その楽しみも今はもう骸の海へと消え去ってしまった。
 柊はうとうとと眠たげに頭を揺らしながらこれからの事を考えた。頭の隅に浮かぶ丸く白いものが、ぷくっと膨れて弾けた。
「でも、おもち食べれるんだっけ? お手伝いしてちょっともらお~」
 次の楽しみはお餅を食べること――柊の目標は早々に決まっていた。
 脅威が去ったことを伝える為に、柊は村人達が隠れる村の裏山へと駆け出した。その足取りは軽く、どこか楽しそうに弾んでいる。

 日も高く昇った昼の頃、オブリビオンの襲撃を逃れた村では、当初の予定通りに餅つきの準備が行われていた。男達はかまどに薪をくべ火をおこし、大きな石臼と杵を運んでは村の中央へと設置する。女達は晩から用意しておいた餅米を蒸籠で蒸して、餅を丸めるための準備に脇の長屋へと入っていく。
 慌ただしく大人達が働く中、猟兵の周りに集まった人々は村を守った英雄達を歓迎し、心の底から感謝の意を伝えた。小さな子供から年寄りまで一人も欠けること無くこの時を迎えられたことは、サムライエンパイアに生きる村人達にとってなによりもの喜びでもあったのだ。

「なんとか村に平和を取り戻せましたね!」
 藤野いろはは賑わいを見せる村人達に囲まれて、ほんのりと眉を下げて喜んだ。小さな子供達が集まってきて無邪気に笑顔を見せるその様子は、見ているだけでも心が洗われるようであった。
「皆、お疲れ様だ。無事でよかった」
 共に戦った仲間や村人達へ向けて坂月陽波も声を掛ける。棍棒鬼の退治だけかと思っていたが、現れた敵は想像以上に強かった。一時は苦戦を強いられたものの、こうして皆生きている事が此度何よりもの成果だ。
「過程はどうあれ、終わったわね」
 紫洲川珠璃は肩に受けた傷に小さくため息を溢しながら、陽波の言葉に相槌を打った。村には一歩も立ち入らせなかったのだ。猟兵としての役目は十分に果たしたと言えるだろう。
 しかし珠璃は僅かな悔しさを感じていた。小さく唇を噛んで首を振り、反省は後だと長屋の方へと足を運ぶ――。
「とりあえず餅つきの準備ね。私も手伝うわ」

 木の台座に置かれた大きな石臼に、炊き上がった餅米が投入される。ほかほかと真っ白な湯気が上がり、辺りには食欲をそそる餅米の香りが漂ってきた。
 小さなフェアリーの祝聖嬢ティファーナは美味しそうなその香りに胸を弾ませ、楽しそうに周囲を飛び回りながら首をかしげてお腹を鳴らす。
「おにぎり作るのかな?」
 無邪気に問いかけたティファーナに「まだまだこれから」と言葉を返しながら、村の男達は餅米を杵で捏ねていく。ある程度捏ねたところで周りで見ていた猟兵達を手招きし、杵をずいっと差し出した。
「是非ついてみてくれ。あんたたちなら良い餅が作れそうだ」
 紬雁紅葉はそれに応えて巫女服に襷を掛け、三角巾を頭に被り杵を受け取る。石臼の前に立つと慣れた杵捌きで餅米を捏ね、粒を潰してきめを細かくしていく。もちもちとした感触が手に気持ちいい。
「やっぱりお餅つきはこうでなくちゃ♪ ティファーナ、見ててね」
 紅葉はそれはそれは嬉しそうに手にした杵を振り上げて、少し離れたところで「ほへ〜☆」と何が起こるのかドキドキしながら眺めているティファーナへと声を掛けた。
 石臼の中の餅米に狙いを定め、腰を入れて振り下ろす。
「そーれ、えいやー♪」
 思わず出てしまった声もそのままに、ひとつき、もうひとつきと杵を振り下ろす。
「ひや〜☆」
 もの凄い勢いで振り下ろされる杵に驚いたティファーナは、あたふたとその行方を見遣り声を上げた。フェアリーから見れば紅葉が振り下ろした杵の勢いは風切り音が聞こえてくるほどで、酷く迫力のあるものであったのだ。
 紅葉は弾力のある餅の感触にますます心を弾ませて、村人達も驚くスピードでつき上げていく。一つ目の餅ができあがる頃には、ティファーナは紅葉の後ろで鼻を啜りながらまあるくなったそれを覗き込んでいた。
「ティファーナ? 泣いてるの?」
「泣いてないモン!」
 紅葉は赤くなったティファーナの頬に人差し指をぷにっと押し付けて微笑んだ。
「おいしいお餅、食べましょうね♪」

 二つ目の餅米が石臼に投入され、「次はあなたの番」といろはに杵が渡された頃、周囲には村の子供達が集まって来ていた。普段は村の大人達が行っている餅つきを猟兵達が行っていることが珍しいようだ。口には出さないがそわそわと杵を持ついろはの様子を眺めている。
「一緒にどうですか?」
 いろははそんな子供達に微笑み声を掛けた。折角だから一緒に餅をつこうと思いついたのだ。優しく手を差し出すいろはに、一人の少年がおずおずと小さな手を重ねた。初めて接するいろはに緊張しているのか、少年の手はほんの少しだけ震えていた。
「緊張しなくて大丈夫ですよ。それじゃあ、お餅をつきましょうか!」
 少年の緊張を解すようにいろはは杵を握らせて、そっとその上から手を重ねる。破魔の力を込めてトン……とひとつき。間隔を開けてもう一度。段々とペースを速めながら、いろはは一年の災厄が祓われるよう気持ちを込めて餅をついていた。
「僕も手伝うよ~」
 そんな中、餅の返し手に名乗りを上げたのは柊だった。いろはと少年のペースに合わせて、素早く上手に餅を返していく。
 和やかな空気が流れながら二つ目の餅が綺麗につき上がる。柊は出来た餅をさっと持ち上げて長屋の方へと運び込んで行った。いろははそれを見送った後、子供達と一緒に新年の行事や猟兵の仕事について語り合う。
「どうやら楽しい1年になりそうです、ふふーふ」

 一方、餅が運び込まれた長屋の中では珠璃や陽波が女性達と共に餅を丸める準備を進めていた。出来たてほやほやの餅をいくつかに千切って鏡餅に。残ったものは小さな丸餅に。
 陽波はきな粉を用意した。大豆を炒って皮をむき、挽いて粉にしたものに砂糖を加えると美味しい粉の完成だ。
「確かこの粉を付けて食べれば良いのだったね」
 陽波は散った粉や周囲の道具などを、村の女性達と一緒に手際よく片付けていく。
「そうだ、鏡餅を一つ戴いて帰れるかな?」
 陽波が言うと女性達は笑顔で「勿論さ」と鏡餅を包んで手渡してくれる。陽波は大事そうに手荷物の横にその包みを置いた。

「きな粉や餡子もいいけれど、砂糖醤油や醤油と海苔をつけて焼いたものもいいわね。あと餡子はこしあん派」
 珠璃は片腕で適当に餅に付ける材料の用意をしながらそう呟いた。餡を小分けにし、醤油や砂糖も用意する。美味しい餅の食べ方は沢山あるのだ。餡子は餅で包み、丸めて餡餅にした。ある程度用意が終わったら一息ついて長屋の端に腰を下ろした。
(全く……腕をまるごと持って行かれなかっただけましというべきかしら……)
 手当てはしたが、ざっくりと斬られた腕が気になっていた。先の戦いに思いを馳せる。
 自身と同じ技で相手が打って出る事は初めてでは無かったため、手数の多さで主導権を得られると過信をしていた。実際は想像以上に相手の力が強く、反撃の糸口を掴むことが出来なかった。防御の手段にも気が回っていなかったと珠璃は悔しい思いを胸に抱いていた。
 刀の痕を指でなぞりながら、珠璃はぎゅっと目を閉じる。
「二度目は無いわ。次は必ず……」

 餅つきの終わった村の中央。人々はそこに椅子を置き、出来上がった丸餅を各々好きなように食していた。紅葉も皿にのせた丸餅に、餡子やきな粉、大根おろしなど様々な味付けをしてその味を楽しむ。――やっぱり餅は良いものだ。
「蜘蛛の巣みたいで取れないよ!」
 ティファーナは手にくっついてしまった餅を振り払おうと慌てながら、紅葉に向かって眉を下げる。紅葉はそんなティファーナの餅を小さく切り分け、団子状にして差し出した。
「こうして食べたら大丈夫よ♪ はい、お箸もどうぞ」
「ありがとう☆ 紅葉さん!」
 にこにこと微笑み団子を頬張るティファーナの頬を拭い、次の餅へと手を伸ばす。
(今年が良い年でありますように……)

「沢山お餅が出来ましたね!どうぞ、君が頑張ってくれたからとても上手に出来ましたよ」
 いろはは先ほど一緒に餅をついた少年に、出来た餅を渡しながら声を掛けた。すっかりいろはに懐いた少年は、箸でつまんだ餅をいろはに向かって差し出した。
「おねーちゃんも一緒に食べよう!」
「僕と一緒に? ……ええ、構いませんよ。一緒に戴きましょうね」
 いろはは少年の隣に腰掛け、差し出された餅を口に入れる。優しく柔らかな味が口いっぱいに広がって、いろははなんとも言えない程の幸せな気持ちに満たされた。
 隣に座る少年も餡餅を口いっぱいに頬張り、幸せそうにいろはに笑いかける。
「……ふふ、とても美味しいお餅ですね」
「うん! おねーちゃん、ありがとう!」

「皆で楽しく食べるのはやっぱ良いよね~」
 人々が集まり賑やかに餅を食べている様を眺めながら、柊はのほほんと呟いた。もぐもぐと餅を噛みながらその美味しさに満足する。陽波と珠璃も柊の隣に座り、一年の始まりを共に祝う村人達の様子に目を細めていた。
(老いも若きも新年を祝って、こうして変わらず流れていく時間のありがたさよ)
 例え災厄が訪れようとも人々はこの世界を生きていく。鬼の現れた丘の方へと手を合わせ、陽波はあたたかな餅を一口頬張る。

 猟兵達は此度の討伐成功を喜びながら、村人達と共にゆったりと流れる時間を味わっていた。
 ――今年一年もどうか平穏無事であれ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月04日


挿絵イラスト