バトルオブフラワーズ⑨〜己を知れば危うからず
「さぁ、いよいよ本丸に切り込むよ。準備はいいかい?」
グリモアベースに集まった猟兵たちを見渡し、京奈院・伏籠(K9.2960・f03707)が意気込んで問いかける。
キマイラフューチャーの中枢、『システム・フラワーズ』を巡る戦いは、新たな局面を迎えようとしていた。システムをブロックしていた6つのステージを突破し、猟兵たちはついにシステム内部に足を踏み入れたのである。
突入した猟兵たちの目の前に広がっていたのは、咲き乱れる花々の空間。明確な通路などは見当たらないが、足元に目を向ければ、ひらひらと舞う花々が集まって足場になっていく様子が見て取れる。どうやらこの花の足場に乗って進んでいくしかないらしい。
「ところが、だ。この足場、どう進んでも最終的には『エイプモンキー』と呼ばれるオブリビオンの元に繋がっているみたいなんだよね」
そして、このオブリビオンを越えた先の道は今のところ観測されていない。おそらくはエイプモンキーがある種の関門の役割を持っているのだろう。彼を倒さなければ、システムの奥に進むことは叶わないわけだ。
「マニアック怪人『エイプモンキー』……、コイツを撃破するのが今回のミッションだ」
たとえ撃破されても、エイプモンキーは骸の海から何度でも復活してしまう。しかし、短期間の撃破回数が許容値を超えるとやがては復活が不可能になる。復活と移動を繰り返し、花々の空間を転々とするエイプモンキーを見つけて戦闘を挑むのだ。
「敵の能力についても情報があるよ。曰く、『自らの想像力が及ぶ限りのあらゆるものを創造できる能力』だとか。厄介な能力だから、よく聞いてほしい」
眼鏡の蔓を摘み、真剣な表情で伏籠がオブリビオンの情報を告げる。彼が語るところによると、それは以下のような能力であった。
●重要:敵オブリビオンの能力について
エイプモンキーは、猟兵が使用するユーベルコードの設定を元に、そのユーベルコードを無効化する武器や戦術を創造し、回避不能の先制攻撃を行ってきます。
(ユーベルコードで無効化したり相殺した後、強力な通常攻撃を繰り出す形です)
この攻撃は、ユーベルコードをただ使用するだけでは防ぐことは出来ません。
この先制攻撃に対抗する為には、プレイングで『エイプモンキーが自分のユーベルコードに対抗して創造した武器や戦術を、マニアックな理論やアイデアで回避して、攻撃を命中させる』工夫が必要となります。
対抗するためのプレイングは、マニアックな理論であればあるほど、効果が高くなります。
「無策で突っ込めば敵の思う壺だね。けど、タネがわかっていれば対策は練れるんじゃないかな」
一息に説明を吐き出した伏籠が顎に手を当てて思考を回す。完璧な能力など、この世には存在しない。こちらのユーベルコードにはきっと穴があるし、それを利用する敵の能力にも穴があるのが道理だ。
「自分のユーベルコードの弱点は、自分自身がもっとも理解しているものだと思う。敵はその弱点を『必ず』狙ってくる。そこに更なるカウンター・ロジックを捻じ込むんだ」
想像するのは、『これをやられたらヤバイ』というシチュエーション。それが現実になると考えれば、対策も思い付きやすいかもしれない。
ただし、複数のユーベルコードを使用することで問題を解決しようとするのはリスキーだろう。こちらが多くのユーベルコードを使用するほど、敵もその分だけカウンターを仕掛けてくるのだから。
「敵を知り、己を知れば百戦危うからず。自分自身を見つめれば、必ず勝機はあるはず。頼んだよ、みんな!」
灰色梟
こんばんは、灰色梟です。
バトルオブフラワーズもいよいよ、ボスクラスの強敵とのバトルが始まりましたね。
本シナリオもマニアック怪人『エイプモンキー』とのバトルシナリオとなります。
なお、ユーベルコードに関するアイディア合戦になるため、基本的にリプレイはひとりずつお返しする形になります。複数人で協力して突破を狙う場合は、協力する仲間がわかるようプレイングに記載してください。
高難易度なので判定は厳しめです。皆さんのプレイングで見事状況を打開してやってください。
それでは、一緒に頑張りましょう。
第1章 ボス戦
『マニアック怪人『エイプモンキー』』
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POW : マニアックウェポン
対象のユーベルコードの弱点を指摘し、実際に実証してみせると、【敵に有効なマニアックな装置】が出現してそれを180秒封じる。
SPD : マニアックジェット
【敵のユーベルコードを回避する装置を作り】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : マニアックマシン
対象のユーベルコードに対し【敵の死角から反撃するマシン】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:柿坂八鹿
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
四軒屋・綴
ふーむ……さしずめ猿の王、キングコ……なぜ遮るッ!?
と言うわけでもはや語ることもないだろうッ!エイプモンキーッ!
真っ直ぐ駆け込み大振りな縦一閃、唐竹割ッ!まさか避けるとは言うまいなッ!
……が、受け止めては来るだろうな、奴の性格から考えればより大型の剣で、正面から……接触起爆式ナノマシンを制御し刀身を形成、エネルギーを供給する事で活性化、連続爆破による超振動で叩き斬るこの技は存外欠点が多い、供給されるエネルギーの吸収、ナノマシンへの機械的な干渉による機能不全、だがそれは俺自身には影響を及ぼさないッ!元より徒手こそ俺の得手ッ!切り結んだ瞬間にグラップリングへ移行ッ!一本背負いに全てを賭けるッ!
「猟兵か。やはり来たウッキーね」
幻想的な花びらの道の果てに、そのオブリビオンは待ち構えていた。
頭部だけを見ればサングラスをかけた猿と評することができるだろうその怪人は、まるでアニメーションのロボットが如き鋼の四肢で腕を組み、この場に辿り着いた猟兵を見下ろしている。
コミカルとも取れる外見だが、その躯体に秘めた能力は並みのオブリビオンとは一線を画す。彼から発せられるプレッシャーは対峙する猟兵の肌をも震わせていた。
「ふーむ……、さしずめ猿の王か」
小豆色の偉丈夫、四軒屋・綴(大騒動蒸煙活劇・f08164)が感心したように息を漏らした。ふと、彼の脳裏にとある大怪獣の名前が脳裏に過る。なるほど、目の前の怪人もその名を冠するにふさわしいかもしれない。
「ちなみにコングは造語であって、元々はゴリラとか類人猿とかいう意味はないウッキー」
「……先読みッ!?」
マニアック怪人・エイプモンキー。その名の通り、マニアックな知識が大好物のオブリビオンであり、同時に、敵の行動を予測することにかけても天才的な怪人だ。
思わず声をあげた綴の出方をさらに窺っているのだろうか、エイプモンキーはニヤニヤと笑みを浮かべて猟兵を観察している。
「……もはや語ることもないだろうッ! まさか避けるとは言うまいなッ、エイプモンキーッ!」
迂闊な問答は不要か。気炎万丈。長剣を大上段に構え、綴が大地を蹴った。手にした長剣には腕部の蒸気機関ユニットが接続され、大量の煙を吐き出している。
花弁を巻き上げ、花の道を吶喊する蒸気機関車・ヒーロー。その一挙手一投足を怪人は冷徹に見つめている。
怪人がサングラスの奥を怪しく光らせ、にやけた口元を一層歪めた。それを合図にしたかのように、怪人の目の前の空間が揺らぎ、綴のユーベルコードに対抗するための武装が召喚される。
「お前のユーベルコードは接触起爆式ナノマシンで刀身を形成し、その連続爆破による超振動を利用して斬撃を強化するものウッキーね。キキッ、だったら、これで打ち合ってやるウッキーよ!」
空間の揺らぎに手を突っ込んだ怪人が、一本の武器を取り出す。肉厚の大剣のように見えるそれを構え、怪人が綴を待ち受ける。
綴とて、敵が防御行動を取るのは織り込み済み。上等ッ、とばかりに速度を緩めず跳躍、長剣を唐竹に振り下ろした。
「捨・礼・列・車ッ!」
渾身の一閃。同時に、ナノマシンにエネルギーが注ぎ込まれ、超振動で斬撃が強化される。
その一撃は、違いなく怪人の剣に吸い込まれ……。
――べちゃり。
「ぬッ!」
そう、文字通り『吸い込まれた』のだ。綴が予測していた硬質の手応えはなく、粘性を帯びた敵の武器に捨礼列車が絡めとられる。
まるでトリモチ。刃を振り抜こうともがけばもがくほど、粘着物で構成された大剣に取り込まれ、ナノマシンによる振動もどんどん弱まっていく。
「振動を止めるのだったら、硬いもので固定するより、柔らかいもので包んでしまった方が衝撃が和らぐものウッキー! そのまま普通の斬撃も封じられて一石二鳥ッキね!」
得意げに笑うエイプモンキー。事実、綴の剣はもはや超振動どころか、通常の斬撃にも耐えない状態である。
互いの武器が繋がれて硬直した状況。先に動いたのは、こうなることを予期していたエイプモンキーだ。武器を介した腕の拘束はそのままに、鋭く重いキックを綴に放つ。
「ウッキキー!」
「ぐっ……、だがッ!」
綴の腹部に怪人の脚が突き刺さる。体が浮き、肺から空気が漏れ、臓腑が軋む。
それでも、彼が反撃に移れたのは、『武器が機能不全になる』こと自体は予測していたからだ。
腕を引き寄せるように折り曲げ、勢いに乗せて、『武器を手放し』エイプモンキーの懐に滑り込む。
「武器への干渉は俺自身には影響を及ぼさないッ! 元より徒手こそ俺の得手ッ! 覚悟ッ!」
「ウキ!?」
幸いだったのは、敵が『武器を封じる』ことに専念したことか。綴の武器を自身の武器を媒介にして封じたエイプモンキーは、先ほどとは反対に、武器を捨てた綴の動きに対して反応が遅れたのだ。
綴はエイプモンキーの腕を取り、身体を反転。勢いのまま後ろ足に敵の脚を跳ね上げ、テコの原理で背中に持ち上げる。
「せぇいッ!」
「キ、キー!」
気迫の背負い投げ。エイプモンキーのロボット・ボディが背中から花の足場に叩き落された。轟音と共に落下地点の花びらが宙に舞い上がる。
全てを賭けた投げ技を放ち、綴も膝を着く。やはり、腹部へのダメージはかなり大きいようだ。
一方、投げ飛ばされたエイプモンキーは足場に手を突き、ゆらゆらと立ち上がる。
「ぜ、ぜんぜん効かないッキーよ。ち、ちょっとびっくりしただけウッキー!」
と、言う割には声が震えているが。態勢を立て直したエイプモンキーに大きな負傷は見当たらない、が、直立した瞬間に怪人の両足に震えが走ったのは綴は見逃さなかった。
成功
🔵🔵🔴
仁科・恭介
※アドリブ歓迎
このUCの弱点は実証済み
指定した対象のテンションに呼応して細胞が強化されること
つまり、指定した対象のテンションが下がればパワーダウンする
そして肉の質だ
これが下がればテンションに関係なくパワーダウンする
だが、どちらが欠けても発動しないUCだ
これでフェイクをかける
SPD
【携帯食料】を【目立たない】ように食べたと見せかける
そして声でエイプモンキーに対象を定めたと宣言
その二つを宣言したら【残像】を残すような【ダッシュ】で攻撃しても回避装置で避けるだろう
それを見て【携帯食料】を食み、改めて対象をエイプモンキーに
UCを発動して更に加速した【ダッシュ】の勢いそのままに【鎧無視攻撃】で斬る
「宣言する。エイプモンキーを『共鳴』の対象としよう」
「ウキ?」
柔らかく、しかし厳かな声がシステムフラワーズに響いた。
花の足場に降り立った仁科・恭介(観察する人・f14065)が一方的にオブリビオンへ宣告する。彼の白い指先がエイプモンキーを射抜いた。
猟兵に対峙するエイプモンキーは、今の宣言は如何なる意図かとサングラスの奥で目を細める。僅かな沈黙を挟み、怪人の頭脳と能力はすぐさまその解を弾き出す。
「キキ? 奇妙なユーベルコードを使うみたいッキね? 食べた肉と対象のテンションに応じて戦闘力が増加するウッキか。……つまり、ミーのテンションに応じて強くなる、と」
「その通りだ」
敵にユーベルコードが見破られてしまうことは承知している。気負いもなく敵の推論を肯定し、恭介は懐から干し肉の携帯食料を取り出す。……実のところ、これも作戦の内。
敵の推測通り、恭介のユーベルコードは『肉を食べること』と『対象を指定すること』で発動条件を満たす。ブラフを仕掛けるのは、携帯食料を口にするタイミングだ。
油断なく怪人を見据える恭介に対して、しかし、エイプモンキーは「ウキャキャ」と笑い腕を前方に突き出した。空間が歪み、上向きに開かれた掌の上に何かが出現する。
「ミーのテンションが影響するとは、なかなか面白いウキね。ならば、こんなのはどうかなウッキー!」
「……風船?」
恭介が訝しげに目を細めるのも無理はない。エイプモンキーの掌に出現したのは真っ赤な風船のような物体だった。
ほわほわと揺れるその風船を怪人は両手で挟み……。
「ウッキー!」
「なに!?」
思いっきり、押しつぶした。
パン、と破裂音が響き、風船の中身がばら撒かれる。
一瞬にして、周囲の空気が塗り替えられた。鼻を突くのは、強烈な獣臭。風船の中身は『臭いを持つ気体』だ!
「嗅覚がメンタルや味覚に与える影響は大きいウッキー。この臭い――『猿の体臭』はミーにとってはホームの匂い。リラックス効果でテンションが落ち着くくらいの馴染みっぷりウッキ。……けど、ユーが食事をするにはちょーっとキツイかもしれないウッキね?」
嬉々として語るエイプモンキーは、なるほど、周囲の臭気を気にも留めていない様子だ。恭介のユーベルコードを構成する2つの要素、『食べること』と『テンションを上げること』の双方を妨害する算段である。
一方で耐性の薄い恭介は思わず顔をしかめてしまうが……、これはこれで好都合かもしれない。
「そう上手くいくか、試してみるか?」
ごくごく自然に、臭いを防ぐように左手で鼻を摘む。そうやって口元の空間を敵から隠し、その下で食料を『食べるフリ』をするのだ。
これでエイプモンキーはユーベルコードが発動したと誤認するはず。
あたかも身体強化が有効であると装い、恭介はサムライブレイドを構える。
「いくぞ!」
「ウキキキ! 遅い遅い!」
花の足場を蹴りつけて敵の間合いに踏み込む恭介。『共鳴』が発動していない以上、その速度は通常の身体能力そのままのもの。
しかし、エイプモンキーは自身の妨害行動の結果として『ユーベルコードが発動してもこの程度の速度』と認識する。恭介が狙うのは、この認識の齟齬だ。
「ウッキャー!」
「くっ!」
余裕を持ってサムライブレイドの斬撃を避け、カウンターのパンチをエイプモンキーが放つ。肩口に叩き込まれた剛拳に苦悶の声をあげ、恭介はたたらを踏んでしまう。
……『成功』という蜜は甘美なものだ。反撃が華麗に決まれば、否が応でもテンションは上がるはず。
ダメージを受けた肩を抑えるフリをしつつ、恭介は携帯食料を今度こそ本当に口に運んだ。敵に悟られぬよう、小さく肉を噛みしめるたび、全身の細胞が活性化するのを感じる。
顔を上げ、敵を睨む。本番はここからだ。
「まだまだ!」
「何度やろうとも……ウキ!?」
サムライブレイドを脇構えに地を蹴った恭介の動きは、先ほどよりも明らかに速かった。虚を突かれたエイプモンキーが僅かに困惑の声をあげる。
ブラフが有効なのは、おそらく一度だけ。肩の痛みを無視し、全力で疾駆した恭介が、サムライブレイドを逆袈裟に斬り上げた。
「キキ……!」
「……浅い、か」
懐に潜り込むことはできた。しかし、渾身の一閃はエイプモンキーを薄く切りつけるのに留まった。
辺りを包む臭いの効果か、あるいは怪人の自制心によるものか。想定よりも敵のテンションの振れ幅が小さい。
この怪人は、やはり強い。最大の効果が得られないよう妨害されたユーベルコードでは、有効打にはほんの僅かに届かなかった。
「ウキャキャ! やはりミーの能力は最強ウッキー!」
「チィッ!」
ラリアットのように腕を振り回し、恭介を吹き飛ばすエイプモンキー。
花の舞い散る足場で、怪人は勝ち誇るかのように哄笑するのであった。
苦戦
🔵🔴🔴
シエナ・リーレイ
エイプとモンキーって同じ意味じゃなかったっけ?とシエナは首を傾げます。
『お友達』を求め彷徨うシエナは無理な気がするけれどお猿さんを『お友達』にする事を試みます
まずはスカートの中から呼び出した『お友達』と一緒に仲良く成ろうとしますがお猿さんが放つ謎の機械にシエナは叩かれてしまいます
本来なら『お友達』が皆スカートの中に帰ってしまうのですがそうはなりませんでした
■■■■■!とキメラはお猿さんに突撃します。
何故なら、シエナにとっての本体とは普段は見えない繰り手が直接操る『お友達』の事なのです
普段は初めての『お友達』であるジュリエッタ・リーレイ人形が本体なのですが今回はキメラ人形を本体として突撃をします
花舞う道を人形たちが行進するという、どこかファンシーな光景。
『お友達』の人形たちと連れ立ってエイプモンキーの前に姿を現したのは、人形のヤドリガミ、シエナ・リーレイ(年代物の呪殺人形・f04107)だった。
エイプモンキーを視界に収めた人形たちが行進を終えると、先頭に立つ銀髪の少女がコテン、と首を傾げる。
「エイプとモンキーって同じ意味じゃなかったっけ? とシエナは首を傾げます」
少女の口をついたのはストレートな疑問。緊張感のない問いかけに怪人はキョトンと目を丸くするが、すぐに嬉しそうに蘊蓄を語りだした。
「エイプは尻尾のない類人猿、モンキーはお猿さんのことウッキよ。……ミーがどっちなのかって? それは内緒だウッキー!」
マニアック怪人らしく、実に楽しそうに知識を披露するエイプモンキー。彼の尻尾がどうなっているかは、機械のパンツに隠されていて杳として知れない。
笑顔を浮かべる怪人に、銀髪の少女も嬉しそうに笑みを深める。両者の間にほんわかした空気が流れる中、人差し指を唇に当てて少女がそっと呟く。
「あなたも『お友達』になってくれるかしら。とシエナはお猿さんを『お友達』にする事を試みます」
「……ウキキ?」
字面だけ見れば可愛い台詞。だが、エイプモンキーはその裏に潜む危機を敏感に感じ取った。少女にとっての『お友達』は、世間一般の『お友達』とはまた別の意味も持っているのだから。
緩んでいた空気が一瞬の内にぴりぴりとしたものへと変貌した。
エイプモンキーの瞳が光り、シエナの能力を看破せんとする。
「ウキキ……、お前のユーベルコードは自分と同じ強さの人形の群れを召喚する能力ウッキね。大型の人形で30体強、小型の人形なら180体以上! キキ! 纏わりつかれたらひとたまりもないウッキー!」
見極めた能力の脅威を語るエイプモンキー。しかし、能力の内容に反して、彼の口調には焦る様子が見受けられない。
一方で能力を看破された少女の方もつかみどころのない笑顔を崩さない。人形たちを引き連れて、彼女は花の足場を歩き始める。
「お猿さん、すぐにそこまで行くね。とシエナは前進を開始します」
「ウキキ……、ちょーっと怖い雰囲気だ・け・ど!」
ゆっくりと歩を進める『お友達』の集団。段々と近づく彼女たちを前にして、エイプモンキーは右腕を天に掲げる。彼我の距離はまだ十分。怪人は彼女たちに接触される前にユーベルコードの弱点を突くつもりだ。
「お前の弱点、それは本体が傷を受ければ人形たちも停止することだウッキー! カモン、モンキー・ハンマー!」
怪人が高らかにユーベルコードの弱点を吟じ、掲げていた右腕を振り下ろす。
その動きに連動し、人形たちの死角――先頭を歩く少女の直上の空間に亀裂が入り、そこからハンマー型の機械が飛び出した。
右腕の振り下ろしに合わせて落下するハンマーは、銀髪の少女の頭上に真っ直ぐ向かっていく。
「……あっ」
避けることもできず、ハンマーが少女の額を強かに叩き込まれた。
吐息が漏れるように小さな悲鳴をあげ、少女は右手で額を抑えて俯く。
たったのそれだけで、怪人の計算通り、人形たちはピタリと動きを止めてしまう。
その様子にエイプモンキーはにんまりと口角を吊り上げる。
「ウキャキャ! 本体がそんなに無防備なんて、ミーを甘く見過ぎウキね!」
少女を指差して哄笑する怪人。
さて、能力を失ったあの娘をどうしてくれようか。と、彼が一歩踏み出した、まさにその瞬間。
「■■■■■! とキメラはお猿さんに突撃します」
停止したはずの人形が、一斉に動き出した。揃って首を怪人に向け、花の足場を『お友達』が往く。
その中でも、猪と鹿のキメラ人形が驚くべき瞬発力で怪人に向って突進していった。
「な、何故! ミーの計算は間違ってなんか……ウギィ!」
驚愕の言葉は最後まで紡がれず、キメラ人形の角と牙がエイプモンキーを突き刺して吹き飛ばした。怪人は花の足場をもんどりを打って倒れながら、這う這うの体で人形たちと距離を取ろうとする。
ごろごろと転がりながら態勢を立て直す彼の目に人形の群れが映り、ようやくエイプモンキーは自身の誤りに気付いた。
「キキ! お前、『本体じゃない』な!」
「私が本体だ、なんて名乗った覚えはないものね。とシエナは指摘します」
そう、邂逅からこれまで会話を担ってきた『少女』はシエナの本体ではなかったのだ。『本体が弱点』というユーベルコードの特性を餌にしたトラップ。あたかも人形たちの指揮者であるかのように振る舞う『少女』にエイプモンキーは見事に引っ掛かってしまったのである。
「屈辱ウッキー! けど、本体はどこに……?」
「それは答えられないな。とシエナは韜晦します」
遠巻きにエイプモンキーを取り囲む『お友達』の群れ。声の主は確かにその中にいるはずだ。
しかし、反響しどこからともなく響く声に幻惑され、怪人は終ぞその正体を探り当てることができなかったのであった。
成功
🔵🔵🔴
ゲンジロウ・ヨハンソン
○アドリブ歓迎
ちっと紳士的じゃない方法じゃが、悪く思わんでくれよ?お猿さんよ。
○先制への対応
シンプルな殴りかかるUCを選択、とくれば相手の対応も大体予測できる。
同威力での相殺、防護壁の展開や重装甲化…ってとこじゃな。
わし自身の殴打の威力への対応と考えりゃ、答えは簡単。
わし個人の要素以外で威力を高めてやりゃいい。
お前さんは知っとるか、比重がとても高い金属…ヘビーメタルを。
そう、タングステンじ!この手のひらサイズの大きさの棒でも、
1kgを超えるそうじゃよ。
つまりこいつを握り込んで殴ってやれば…その分、諸々威力が上がるってこったな。
○戦闘
上記の勢いで重金属握り込みUCで殴打。泣いても続ける。
花の小径を踏みしめて、ひとりの偉丈夫がシステムフラワーズを往く。
壮年の戦場傭兵、ゲンジロウ・ヨハンソン(腕白青二才・f06844)はブリーフィングの情報から作戦を練り、敢えて火器や刀剣の類を装備せずエイプモンキーの元へと歩を進めていた。
拳を握っては開いて筋肉の稼働状態を維持しつつ、やがて彼は怪人の元へと辿り着く。現れた猟兵の姿を認め、エイプモンキーが甲高い声をあげた。
「ウキキ、これまたわかりやすいユーベルコードだウッキ!」
ゲンジロウを挑発するかのように指差してエイプモンキーが呵々と笑う。
癇に障るその様子を睨むでもなく、ゲンジロウは冷静に、また冷徹に敵の動きを観察している。
「筋力任せの高威力パンチ! ウキャキャ、びっくりするくらいシンプルだッキ!」
「おう、そうさな」
ユーベルコードを看破されるのはブリーフィングの情報通り。さして驚くこともなく、ゲンジロウは頷いて見せる。
まるで動揺も見せない彼をつまらなそうに眺める怪人に向かって、ゲンジロウは右腕を回しつつゆっくりと歩み寄る。
「ちっと紳士的じゃない方法じゃが、悪く思わんでくれよ? お猿さんよ」
「正面からとか、脳味噌まで筋肉ウキね……」
うんざりした表情を見せるエイプモンキー。どうやら『紳士的じゃない方法』をシンプルに『力任せの方法』と受け取ったようだ。……本当はもう少し捻ったことを考えているんだけどな、とゲンジロウは心の中で舌を出す。
「まぁいいウキ。ミーの計算に狂い無し! カモン、エイプ・アーマー!」
「……装甲か。ま、そうくるじゃろうな」
叫びと共にエイプモンキーの胸部に追加装甲が召喚される。一枚、二枚、三枚……、いくつもの装甲が層を成してエイプモンキーの守りを固める。
膨れ上がった胸部を掌で叩き、エイプモンキーは得意気に断言する。
「ウッキッキ、お前のパンチ力はまるっとお見通しウキよ。ミーの積層式硬質装甲を突破することは絶対にできないウキ!」
「そうかい? それじゃ、試してみようじゃねえか!」
そう言い放ち、にまにまと笑うエイプモンキー目掛けてゲンジロウが矢のように飛び出した。一歩、二歩、強く踏み込み三歩目で怪人をパンチの射程に捉える。
真っ向勝負。豪腕一閃。ただただ固く握りしめた『筋絆仲の拳』がエイプモンキーの装甲に突き刺さる。
「ラァッ!」
「キキィ!」
ベキリ、と乾いた音を立て一枚目の装甲がへし折れる。硬い手応え。怪人本体は、まだ遠い。
胸を張り、腰に手を当ててマッスルポーズを取るエイプモンキーは喜色も隠さずに自身の計算をひけらかす。
「エネルギーは速度と質量の係数だウキ。武器も持たないお前の質量は見たまんま。パンチの速度もミーの想定を越えていない。キャッキャッ、計算通りウキ!」
「オオォッ!」
二枚目。篭めた力を緩めずに怪人の言葉を反芻する。なるほど、どうやら敵はまだこちらの仕込みに気づいていないらしい。
その事実がゲンジロウの背中を押す。三枚目の装甲に拳を突き立て、彼は口を開く。
「じゃが、お前さんの計算には間違ってるところがある」
「……ハッタリかウキ?」
ミシリ。四枚目に罅が入る。拳の勢いはまだ衰えない。
怪人も馬鹿ではない。計算に間違いがないか、思考をフル回転させる。速度は自分の目で見た。質量も見た通り。知覚が及んでいないのは……、『拳の内側』?
だが、たったの一握り分の物質で質量がそうそう変わるハズは――。
「お前さんは知っとるか、比重がとても高い金属……、ヘビーメタルを」
「!?」
五枚目。鈍い音を立てて拳が装甲に衝突する。
ゲンジロウの言葉を耳にした怪人の脳裏にいくつもの金属名が浮かび上がる。鉄のようなメジャーな金属ではなく、ヘビーメタルを持ち出すこの男の発想。これはひょっとして。
「タングステン。比重にして19.3、鉄の2.5倍の重量じゃ。つまり、手のひらサイズの棒でも十分な質量を持つ!」
「ウキキッ、なかなかにマニアックな……! ハッ!?」
六枚、七枚、まとめて一息に突き破る。
実際に増加した質量は僅かかもしれない。しかし、パンチ自体の速度が速ければ速いほど、質量の差は破壊力に如実に影響を及ぼす。
加えて怪人が思わずマニアックさを認めてしまったためか、装甲に僅かな綻びが生じている。
好機到来。
「し、しかし、限界を超えたパワーには反動も大きいはずウキ!」
「そんなのは筋肉をリスペクトすれば解決するものじゃ!」
「やっぱり脳筋ッキィー!」
拳に伝わる感触が変わる。筋肉質だが、温かい。これは敵の肉体だ。
悲鳴をあげるエイプモンキーの顔を見て、ゲンジロウが獰猛な笑みを浮かべる。
もう、泣いても遅い。
ダメ押しとばかりに筋繊維が隆起し、重金属を握り込んだ拳が怪人の胸板を殴り抜いた。
「ゼェイっ!」
「ウギャギャー!」
重く響く打撃音と共に、エイプモンキーが横っ飛びに吹き飛んだ。身体の側面で花の足場を擦りながら数メートルの距離を転がっていく。
一方で攻撃を成功させたはずのゲンジロウの拳からも血が流れ、腕の筋繊維が軋みを上げていた。怪人の言葉通り強固な装甲を貫いていくたび、彼自身にも反動が蓄積していたようだ。
しかし、その代償を払った価値は確かにあった。
震える足で立ち上がろうとする怪人を視界に収め、ゲンジロウは左腕を天に突き上げるのだった。
成功
🔵🔵🔴
荒谷・つかさ
【五行同期・精霊降臨術】
発動さえしてしまえば単純な能力強化術であるこのコードの弱点は「五芒星の陣を媒介にする必要がある」点。
つまり、陣を描いている途中で妨害されれば止まる。
武器は持たず、素手で対峙。
そのまま詠唱を開始し、これ見よがしに空間に手で五芒星の陣を描いて発動させようとするわ。
実は詠唱は不要だけど、発動開始のお知らせにはちょうど良いので。
多分、陣を描く両腕と、ついでに詠唱妨害の猿轡が来ると予想。
これは素直に受けつつも睨みつけるわ。
これでお猿は封印成功と思い込むでしょう。
次の瞬間「肉体に直接刻んでおいた陣」を媒介に無言でコード発動。
攻撃力強化して頭から捨て身の体当たりを敢行するわよ。
猟兵たちの攻勢により、エイプモンキーは着実にその戦力を削られつつあった。怪人の胸部装甲は拉げ、全身には大小無数の傷が刻まれている。
戦況が傾きつつある今こそ攻め手を緩めるわけにはいかない。白染めの小袖に緋の袴を纏い、荒谷・つかさ(風剣と炎拳の羅刹巫女・f02032)がエイプモンキーの前に進み出る。
「まだ来るウキか。しつこいヤツらッキね……」
「あなたもしぶとい部類だと思うわよ。いい加減、諦めたらどう?」
舌戦を交わし対峙する両者。巫女装束の猟兵は、小兵ながら無手の構え。彼女は巨躯を誇る怪人を見上げ、唇を湿らすと敵に先んじて動き始めた。
右手を天に掲げ、左手は顔の前で祈りの形。視線はエイプモンキーに定めたまま動かさず、右の指先に精霊の力を灯す。
「木は火を生み、火は土を生む」
詠唱に合わせ天頂から斜めに線を引き、続けざまに相生の軌跡をなぞる。指先に灯る力の残滓が、眼前の空間に陣を描いていく。
彼女が仕掛けるのは五芒星を媒介としたユーベルコード。陣の完成まで、あと三手。
「土は金を生み、金は水を生み……」
「そうはさせないウキ! カモン、モンキーチェイン!」
無論、それを見逃すエイプモンキーではない。叫びと共に空間が揺らぎ、怪人の両手に拘束具が召喚された。右手には手錠、左手には猿轡。刹那の間もなく、出現した拘束具をエイプモンキーが投擲する。
「水は木を……むぐぅ!」
正確無比なコントロール。投げつけられた拘束具はまるで意思があるかのようにつかさの身体に絡みついた。手錠は彼女の上腕ごと両腕を固く縛り上げ、猿轡はものの見事に彼女の口の動きを封じ込める。
集中を乱されたのか、つかさが衝撃にたたらを踏むのと同時に、描きかけの陣も霧散してしまう。
「んん……! んっ!」
「ふぅ、危ない危ないウキ」
手錠を外そうと身じろぎするつかさ。しかし、いくらもがこうともジャラジャラと鎖が擦れ合う音がするばかりで、拘束具の締め付けから逃れることができない。
ひとしきり抵抗を試みたものの、今はもう、荒い息を吐き潤んだ瞳でエイプモンキーを睨みつけるばかりだ。
怪人はその様子にほっと息をつき、次いで意地の悪い笑みを顔に張り付ける。
「お前が使おうとしたのは五芒星を介して精霊の力を獲得するユーベルコードだウキ。当然、陣を描き切らなければなーんにも効果を及ぼさないウキー!」
得意気に解説を挟みつつ、怪人が拳を鳴らしながらずかずかと距離を詰めてくる。敵はもはや身動きの取れない人間ひとり。如何に羅刹が頑健な種族であろうが、『潰す』のは容易なこと。
エイプモンキーが両手の指を組み、拳を天高く掲げる。ダブルスレッジハンマーの構え。怪人は拘束されたつかさを見下ろし、凶器と化した両拳を叩きつけんと一層口角を吊り上げ……。
【五行同期、精霊降臨!】
「ふぅっ!」
「ウギャッ!?」
瞬間、腕を拘束されたままの状態でつかさの姿が掻き消えた。虚を突かれ動転するエイプモンキーのがら空きの胸部に、高速で飛び込んできた彼女の頭突きが突き刺さる。
尋常の体当たりではない。明らかに理外の力――ユーベルコードで強化された攻撃力を以て、彼女は怪人を突き飛ばした。
「グギギ、何が起きたウキ!」頭突きを受けた胸を抑え、怪人が吠える。
「んむぅ、ん。……てやーッ!」
気合一喝。動揺するエイプモンキーの目の前で、つかさは手錠を千切り飛ばし、自由になった両手で猿轡を剥ぎ取ってみせた。
先程までは確かに拘束具のパワーが彼女に勝っていたはず。身体能力が倍増したかのような突然の変貌。目の前の状況から、怪人の頭脳が答えに辿り着く。
「まさか、ユーベルコード? ウキキ、い、いつの間に陣を!?」
「敢えて言うなら『最初から』よ」
流石に捨て身が過ぎたか、つかさも左手で頭を抑えながら、右手で丹田のあたりを撫でてみせる。右手の下によくよく目を凝らせば、巫女服を透かしてうっすらと彼女の『肉体に描かれた』五芒星が光を放っていた。
「五芒星を描くのを妨害されるのは簡単に予想できたわ。それなら、あらかじめ別のところに陣を準備しておけばいいだけのこと」
実際は詠唱も要らないのよ。と、つかさが気風の良い笑顔でタネを明かす。つまり、拘束されて追い込まれるところまでは、彼女の仕込みだったというのだ。
清々した様子の彼女とは対照的に、エイプモンキーは不明を悔やむように幾度も歯軋りしている。
悔しがる怪人を余所に、つかさは小袖を翻し、長髪を風に靡かせて構えを整えた。
「さぁ、まだやるの?」
「ウギキィ……」
強気の表情で問うつかさに対して、エイプモンキーの歯切れは悪い。彼女の頭突きをもろに受け、怪人の負傷は更に嵩みつつあるようだ。
決着の時は、近い。
成功
🔵🔵🔴
オブシダン・ソード
【剣狐】
剣として、いすゞに背負ってもらって参戦
彼女への先制攻撃に、『死角になるであろう背中側にあらかじめヤドリガミを配置しておく』ことで対抗
攻撃に対して人の姿を取って、【属性攻撃】【オーラ防御】で炎の壁を展開
たまには僕が守ってあげるよ、喜んで?
僕のユーベルコードは誰か持ち手がいないと発動しない
だから、『僕の周りに水の壁を張って分断される』と、剣と炎で対抗できない僕は手詰まりになる
――まぁそれは事実なんだけどね
そこのところは頼んだよいすゞ。陰陽五行ってやつ、得意でしょう?
無事合流できたならもう一度彼女の手に剣を
今度こそユーベルコードを発動
さあ行こうか、相棒
一緒にあいつをぶった斬ってやろう!
小日向・いすゞ
【剣狐】
器物化したセンセを背負って、花の上を駆ける
相剋符を使って攻撃相殺
あっしの死角への攻撃は任せたっスよセンセ!
センセの弱点は、あっしが使ってあげないといけない事っス
だからこそ、あっしは相剋符を持ってきたンスよ
土は水を堰き止める、五行相剋である所の土剋水っス!
炎が来れば、水を
陰陽道の基本は陰陽五行
アンタも得意技かも知れないっスけど
あっしも職業柄、相殺する事は得意技っス!
さあさ
センセ
そんなの相殺してあげるっスから
ちゃちゃっとあっしの手に収まるっス
ココに居てくれないと困るっスからね
逃げる訳じゃァ無いっスが
逃げ足にはちょいと自信があるっス
もちろん駆ける事も
了解っスよォ、相棒
ぶった斬ってやるっス!
「ムッキー! もう頭にきたウッキー!」
度重なる苦戦にエイプモンキーが癇癪を起こす。周囲の花々を地団駄で踏みつぶし、再び近づきつつある猟兵たちの姿を遠目から睨みつける。
次こそ、殺す。鼻息荒く足元に力を篭め、エイプモンキーが天高く跳躍した。
機械の出力と獣のしなやかさを掛け合わせた大跳躍。高空からターゲットを定めた怪人がミサイルの如き勢いで猟兵に襲い掛かる。
「いすゞ、上だ!」
狙われたのは花の足場を駆ける小日向・いすゞ(妖狐の陰陽師・f09058)。前傾で走る彼女の背を狙った強襲を察知したのは、黒曜石の剣――ヤドリガミのオブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)だった。
死角からの奇襲は予測通り。いすゞに背負われていた黒曜石の剣が素早く人の姿を取り戻す。オブシダンは己の器物を右手に掴み、急降下と共に打ちつけられるロボット・アームをその刀身で受け止めた。
「くぅっ!」
「センセ!?」
大質量の金属がぶつかり合う音がシステムフラワーズに響く。加速度を増した怪人の突撃力は尋常なものではない。辛くも衝撃を刀身に逃し致命打を避けたものの、オブシダンは花の足場にめり込むように膝を折る。
のっそりと振り返るエイプモンキー。いすゞとの距離が近い。怪人が足の止まった彼女に鋼の拳を振り上げる。
「……たまには僕が守ってあげるよ、喜んで?」
「ウキッ!」
両者の間に割り込むように、オブシダンが転がり込んだ。彼の周囲の空間が熱に揺らぐ。揺らめく炎のオーラがエイプモンキーの指先を焦がし、怪人はそれを嫌って距離を取る。
オーラを纏ったオブシダンは剣を杖に立ち上がるが、彼の膝はまだ笑っている。敵の怪力は想像以上だ。
「助かったっスよ、センセ!」
「ウキー! 倒れておけばいいものを!」
甲高い声で苛立たしげに怪人が唸った。サングラスの奥の血走った目で二人の猟兵を睨み、瞬時に彼らの能力を把握、カウンターとなるギミックを想像する。
その想像は、現実となる。エイプモンキーが右手を高く掲げ、伸ばした腕の先の空間の歪みから奇妙な機械を掴み取った。
「カモォン、エイプ・マジック・ウォール!」
エイプモンキーが右手に掴んだ機械を足場に叩きつけ、そのまま地面の中に埋め込む。謎の機械が足場の中で起動したのか、大仰な駆動音が猟兵の耳にも届く。
次の瞬間、今度はオブシダンといすゞの間を引き裂くように、土石流が壁となって地面から噴き出した。
「おっと!」
「あっぶな!」
二人は咄嗟に左右へ別れて飛び退り直撃を避ける。回避に成功したあとも土塊の勢いは止まらない。それどころか、二人の移動に合わせて土壁もすぐさま追いかけてくる。どうやっても二人を合流させないつもりらしい。
「ヤドリガミのお前! お前の能力は誰かに剣を握ってもらわなければ発揮されないウキ! 壁の向こうでおとなしくしてるッキィ!」
周囲を大声で威圧し、エイプモンキーはいすゞの側のフィールドに侵入する。怪人が最初に仕留めるべきと判断したのは、遠隔支援を得手とする彼女だ。
エイプモンキーの言葉通り、オブシダンには大質量で蠢き続ける土石流を突破する手立てがない。だが、二人が分断されるのも想定済みのシチュエーション。いすゞは懐から霊符を取り出し、一呼吸置き意識を高め、土の壁に向って投げ放った。
「唵、蘇婆訶――鑁、吽、怛落、纥利、悪!」
放たれた符が土壁の根本に刺さる。呪力が足場に伝わり、無数の樹木を生み出した。いすゞの意に従い、樹木の群れが土塊を押しのけるように覆いかぶさる。
五行相剋・木剋土。陰陽五行の理により土の壁は勢いを減じる。
……だが。
「無駄ウキ!」
刹那、地面から生じた刃が樹木を切り裂いて壁となった。
金剋木、新たな障壁が互いに駆け寄ろうとしたオブシダンといすゞに切っ先を突き付けて立ちはだかる。
「五行相関の弱点はそのループ性ッキ! ミーのエイプ・マジック・ウォールは『自動的に』『次の属性』の壁を生み出す夢のマシーン! 何度挑戦しようと、五属性が回転するだけで一生突破はできないウキ!」
一息に言葉を吐き出し、エイプモンキーがいすゞに向って突進する。刃の壁の直前で急ブレーキを掛けた状態のいすゞは僅差で回避が間に合わない。
「ウッキィー!」
「きゃっ」
重量を乗せた強烈なタックル。いすゞの身体がゴム鞠のように弾き飛ばされる。
花の足場を転がり、どうにかして勢いを殺す。衝撃と摩擦の痛みを堪え、なんとか足に力を篭めて立ち上がるいすゞ。
視線を上げれば、エイプモンキーが油断せず徐々に距離を詰めつつある。
「……くっ! 唵、蘇婆訶――火剋金!」
彼女は歯を食いしばり、再び霊符を放った。符から生まれた高温の炎が刃の壁を融解させる。
だが、それも一瞬。地面から噴き出した高圧の水流が炎を消し止め新たな壁になる。
……きりがない。
「何度やっても無駄ウッキー! ミーのマシーンは完璧ウキ!」
まずい。オブシダンと合流できなければ、いすゞに接近戦での切札はない。
近寄りつつある怪人に対して、いすゞは符を構えているものの、じりじりと後ずさるしかない。
……歯痒いのは壁の向こうのオブシダンである。彼女との間を遮る水の壁。手持ちの能力ではこれを突破することは出来ない。
手詰まり。それは認めなければならないだろう。
だからこそ、今は『相棒』を信じるしかない。オブシダンは焦る心を押し殺し、敢えて落ち着いた声色を意識して壁の向こうに声を掛ける。
「頼んだよいすゞ。陰陽五行ってやつ、得意でしょう?」
「……当然っス!」
耳に届いた静かな言葉がいすゞの冷静さを取り戻させる。
よく考えろ、アイツは何て言っていた? 『自動的に』『次の属性』だ。
……本当に? 壁の属性は最初が土で次が金。そして、今は水。つまり『次の』と言いつつ、実態は『一個飛ばし』なのではないか?
『自動的に』判断をしているのは機械。なら、今出現している水の壁が消えたあとに現れるのは。
「センセ! 『火』で合わせて欲しいっス!」
「任された。行くよ!」
ばッと顔を上げて、いすゞが叫ぶ。その声にオブシダンは迷うことなく炎のオーラを纏い水の壁に駆け寄った。気力を振り絞り、炎の壁を水流に撃ちつける。
同時に、いすゞも相剋符を放つ。投げつけたのは、火の属性。
本来であれば火には水が剋つはず。しかし、壁の双方から挟むように過剰な火力を押し付けられれば、話はまた変わる。
水流の一部が炎に飲み込まれ、蒸気となって道を作る。
「なんとぉ!?」
驚愕するエイプモンキーの声が木霊する。
五行相侮・火侮水。陰陽五行の源流、五行思想におけるエラー・コード。相剋のバランスが崩れ、反剋となる状態。
水の壁が消え去り、マシーンは機械的に次の壁、すなわち樹木の群れを生み出す。
しかし、場に満ちているのは炎の力。生まれる端から樹木は焼き払われてしまう。
二連続での属性相殺。それは、オブシダンが壁を乗り越えるのに十分な時間だった。
「さあさ、センセ。ちゃちゃっとあっしの手に収まるっス」
「ああ、行こうか、相棒」
障壁を飛び越えたオブシダンの器物がいすゞの掌に滑り込む。
確かめるよう柄を二、三度握りしめる彼女。欠けていたものが埋まったような感覚に、自然、頬がほころぶ。
「やっぱり、センセはココに居てくれないと困るっスからね」
いすゞは周囲の熱気を裂くように、黒曜石の剣を一閃する。
器物から腕へと確かに伝わる力。オブシダンのユーベルコードがその力を解き放つ。
二人は刃を構え、向ってくるエイプモンキーを見据える。
「一緒にあいつをぶった斬ってやろう!」
「了解っスよォ、相棒。ぶった斬ってやるっス!」
足場を蹴り、長剣を下段に構えたいすゞが低姿勢で突進した。
迎え撃つエイプモンキー。装甲に覆われた右腕を突き刺すようにいすゞの顔目掛けてパンチを放つ。
逆袈裟の一閃。舞い散る花びら。交錯するシルエット。
エイプモンキーの脇を駆け抜けたいすゞが、怪人を背にして停止する。長剣を地面に刺せば、傍らにはオブシダンの姿が現れた。
「こ、これで、勝ったと思うな……うきぃ……」
ごとりと音を立て、エイプモンキーの上体が地面に落ちた。力尽きた怪人が粒子となって消え去っていく。
オブリビオンはいずれ骸の海から復活するのかもしれない。だが、この場を制したのは間違いなく猟兵たちであった。
静寂が戻ったシステムフラワーズの小径。二人の猟兵は拳をカツン、と突き合わせ、この場の勝利を小さく喜んだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴