バトルオブフラワーズ⑨〜彼を知り己を知れば
猟兵達の活躍により、舞台の幕は遂にあがる。
演目示されるとするならば、猟兵達による活劇か、はたまた、オブリビオンの跳梁跋扈か。
どちらとなるかは、激突する両者の勝敗の結果次第と言えよう。
その舞台たるは花の路。
彩り豊か、形豊か、香り豊か。数多の花々が咲き誇り、足場となる空間で、かの者は猟兵達を待ち受ける。
「ウッキー! 予想より、随分と早い登場だウッキー!」
その名は怪人幹部がひとり、マニアック怪人『エイプモンキー』。
鋼の鎧に身を包む威容は冗談のようでもあり、だがしかし、確かに強敵であるのだという存在感を放っている。
「だが、ユー達の進撃もここまでウッキー! ミーの知識と想像力で、ユー達の猿知恵なんて、全部打ち砕いてやるウッキー!」
防護ガラスの向こうで猿が歯を剥き出して嗤う。それは正しく、嘲笑の色。
どうにせよ、エイプモンキーを倒さねば先へと進むことは出来ない。
ならば、ここでどちらが猿知恵であったかを叩き込んでやるのもいいだろう。
舞い散る花弁を観客として、今、猟兵達とエイプモンキーとの激突が始まる。
「と、まあ、このような感じですねぇ~」
それはハーバニー・キーテセラ(時渡りの兎・f00548)が見た予知の欠片。
その内容を猟兵達へと語りつつ、彼女はザ・ステージから続くシステム・フラワーズの新たなる舞台を指し示す。
「そこにあるのはぁ、幹部が1人のエイプモンキーですぅ」
お猿さんですねぇ。と、ハーバニーは言うが、勿論、ただの猿ではなく、ただのオブリビオンという訳でもない。
その特殊性――『想像した全てを創造する』という力が故に、猟兵達の如何なる攻撃を持ってしても、対策を取られてしまうというところに、それはある。
つまり、猟兵達が如何なる攻撃を持って相対したとしても、1度は必ずそれを凌駕されてしまうのだ。
「ですがぁ、それが常に発揮できるのであればぁ、幹部の座に留まっている筈もありませんよねぇ」
その能力が万能であるのならば、エイプモンキーは如何なる攻撃をも覆せる筈だ。それは無敵とも言えるものであり、幹部の立場に甘んじる必要性はないものの筈。
だが、エイプモンキーは幹部の座に留まっている。それが示すことの意味。
「つまりぃ、想像力にも限界というものがあるのですよぉ」
如何に想像の翼を広げ、知識を深めようとも、たった1人では限界というものが存在する。
今回、かの強敵を打破するのであれば、そこが突破口となりえるであろう。
「とは言ってもぉ、強敵は強敵ですぅ。言わずとも大丈夫とは思いますがぁ、油断大敵ですよぉ」
1度は必ずこちらの攻撃は打ち破られ、先制を許してしまうことは間違いない。
ならば、その上で猟兵達が如何な対応を行うのか。それが肝要となると言えるだろう。
「システム・フラワーズへの深奥へと至るには未だ障害は数多。1歩1歩、確実に歩んでいきましょう」
――お気をつけて、いってらっしゃいませ。
そして、道は拓かれる。
ゆうそう
オープニングへと目を通して頂き、ありがとうございます。
ゆうそうと申します。
皆さんの力もあり、バトルオブフラワーズは新たなる局面へと進みました。
そして、そこで対面したのは新たなる強敵。
今回はそれを打破してもらうことが趣旨となります。
ですが、ただ打破するのではなく、今回はそれに特殊なルールが存在します。
エイプモンキーは、猟兵が使用するユーベルコードの設定を元に、そのユーベルコードを無効化する武器や戦術を創造し、回避不能の先制攻撃を行ってきます。
(ユーベルコードで無効化したり相殺した後、強力な通常攻撃を繰り出す形です)
この攻撃は、ユーベルコードをただ使用するだけでは防ぐことは出来ません。
この先制攻撃に対抗する為には、プレイングで『エイプモンキーが自分のユーベルコードに対抗して創造した武器や戦術を、マニアックな理論やアイデアで回避して、攻撃を命中させる』工夫が必要となります。
対抗するためのプレイングは、マニアックな理論であればあるほど、効果が高くなります。
このルールが存在するため、猟兵の皆さんは必ず後手となります。
如何に自分の技の、行動の弱点を理解し、それを突かれた時にどう対処するか。それが肝要となることでしょう。
また、今回は敵が幹部であり、相応に難易度も高いものとなりますので、普段より厳しい判定になるかと思いますが、それでも皆さんならば越えられると信じるものです。
皆さんのプレイング、活躍を心よりお待ちしております。
第1章 ボス戦
『マニアック怪人『エイプモンキー』』
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POW : マニアックウェポン
対象のユーベルコードの弱点を指摘し、実際に実証してみせると、【敵に有効なマニアックな装置】が出現してそれを180秒封じる。
SPD : マニアックジェット
【敵のユーベルコードを回避する装置を作り】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : マニアックマシン
対象のユーベルコードに対し【敵の死角から反撃するマシン】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:柿坂八鹿
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「ミーの知識と想像力で、ユー達の猿知恵なんて、全部打ち砕いてやるウッキー!」
それは予知の焼き直し。
開かれた道を進み、エイプモンキーと相対した猟兵達はその台詞を耳にする。
だが、ここから先はまさしく未知であり、猟兵達自身が切り拓かねばならない道。
それを示すかのようにエイプモンキーは高らかに宣言するのだ。
「そして、猟兵達が1人ではなく、ゾロゾロと群れてくるなどミーには分かっていたウッキー!」
だから。と、エイプモンキーは続け、1つの機械――装置を創造する。
それは光を放ち、エイプモンキー自身を包み込んでいくではないか。
そして、その光が収まった時、そこにあったのは――
「これで」「数の上では」「ユー達と」「ほぼ互角だ」「ウッキー!」
複数に分身したエイプモンキーの姿!
だが、一斉に襲い掛かってこない様子をみるところ、余裕を見せつけているつもりなのだろう。
それが間違いであったと、想像力の欠如であったと教えるべく、猟兵達はそれぞれの戦いを始めるのであった。
大神・零児
敵行動予測
【自身からレベルm半径を覆う自分の意識】意識範囲拡大を封じる
【それを用いた対象全員の意識に触れる感覚】自身の意識を隠すかダミーを掴ませる
【その感覚により敵意を可視化し回避する意識】敵意を隠す
だが、敵意以外の意識すら創造物や所持していたありとあらゆる物に乗り移るし、無機物にも存在を保つための意識はある
システム・フラワーズの花も
UC全開
俺の意識拡大を封じるなら俺の意識に触れなければならない
ならば封じようとしている意識に俺の意識を這わし、敵の意識がつながっている創造物やエイプモンキーが乗り込んでいるメカ、又はシステム・フラワーズの花の意識にも俺の意識を這わせ、それらの意識の波を読みとり攻撃
妖刀の一閃が煌き、奔る。
だが、その軌跡は常と比べたならば、あまりにも遅い。いや、常であるならば理解できる、最短最速の道を通せないと言うべきか。
故に、エイプモンキーが遊ぶように、その間合いからいとも容易くと飛び退くのを見逃すしかない。
ザリザリと世界にノイズが走り抜ける。
それは視覚的なものではない。聴覚的なものでもない。
目は見える。耳も聞こえる。風混じる花の甘きも分かる。吹き抜けたそれが黒の内にある皮膚を撫でていくのも。
大神・零児(人狼の妖剣士・f01283)の世界は、何一つとして変わってはいない。
だが、確かに感じる世界は常とは異なっていた。
「……何をした」
常ならば拾い上げられるはずの感覚――五感以外の、野生の勘とも、第六感とも言える意識が鈍い。
だからこその問い。否、確認か。
「キキッ! ミーはユーを知っているウッキー!」
零児は既に幾度かエイプモンキーとの交戦の経験がある。
そのことを指しているのか、はたまた、ここへ至るまでのザ・ステージでの戦いを言っているのか。
だが、現実の問題として、エイプモンキーが創造した装置――意識の広がりを阻害するジャミング装置は、確かに零児の意識を蝕み、妨害していた。
常人には分からぬものが分かる。それは零児にとっての長所であり、それを知る者ならばその対策をするのは当然とも言えた。
ザリザリと世界のノイズは酷くなる。
まるでブラウン管のTVが見せる砂嵐の様に、その向こう側に敵意が隠れる、隠される。
――エイプモンキーが動いた。
ズンと踏みしめる鋼鉄の足。その勢いに花弁が舞い散り、風に乗って流れていく。
大丈夫だ。見える。聞こえる。感じられる。
意識読み取る感覚はやはり鈍いが、それでも五感は十全だ。
「……来るか!」
「牙を抜かれた狼なんて、少しも怖くないウッキー!」
鋼鉄の拳が空気を孕み、その大きさを何倍にも感じさせる圧力となって迫りくる!
これは本命? それとも、フェイント?
拳が見えはしても、敵意の示す軌道は見えない。
零児は凝縮された世界の中でどう捌くかを迷い、迷い、迷うのをやめた。
――世界への意識拡大が封じられたというのなら!
彼の意識は内に、内に。
外が封じられたというのならば、誰にとっても絶対であり、譲れない自身という存在に意識を向ける。
――鋼の拳が黒を撃ち抜く。その触れるか触れないかの一瞬、零児が動いた。
鋼の拳が零児の額に突き刺さり、世界がその衝撃に身を竦ませる。
「逃げなかったのは褒めてやるウッキー。だが、それは蛮勇――」
「その言葉が最後の言葉でいいんだな?」
「――ウッキー!?」
奔ったのは銀閃。斬り裂いたのは鋼であり魂。
「な、なんで、動ける……ウッキー……」
「御自慢の知識と想像力で考えてみるといい」
それが零児と相対したエイプモンキーの最後の言葉。
はらりはらりと存在が解け、宙へと、花吹雪の中へと還っていく。最後まで出せぬ答えをその胸に抱きながら。
何故、零児が攻撃を受けながらも無事であったのか。
それは、攻撃を受けるその一瞬。僅かに動かした身体でもって、攻撃受けるポイントをずらし、自身の内側に広がる敵意を、衝撃を外へと突き抜けさせ、威力を殺していたのだ。
と、言葉にすれば簡単ではあるが、それは筆舌に尽くしがたい技量があってこそなせる業。細胞の一片に至るまで把握した意識があってこそ為せる業であった。
そしてなにより、もう1つの理由。
彼は、零児は遍く世界の放浪者――
「世界から隔絶されてるなんて、慣れたもんさ」
それを知らなかったことがエイプモンキーの敗因。
成功
🔵🔵🔴
クトゥルティア・ドラグノフ
※紅と蒼の祭典で参加。
強敵登場、だけど故郷を守るために奮闘するよ!
ハシュマールさんから授かったこのユーベルコードで貴方を討つ!
と思ってたけど、掴めなければそもそも攻撃に派生出来ない。そんな弱点があったなんて…ど、どうすれば…
『珍しく弱気だね、クー』
その声は、ハシュマールさん!?
その弱点はそう克服するんだね!
別に掴んでから派生する必要はない。サイキックエナジーを最大限に発揮すれば、掴まなくとも巨大な拳の一撃になる!ここまできたらもう別のユーベルコードだね!
なら二人で命名しよう!うん、その名前で決定っ!
『いくよクー、合言葉は覚えてるかい?』
「うん、ハシュマールさん!」
「「ジャックポット!!」」
ステラ・ハシュマール
※紅と蒼の祭典で参加
「珍しく弱気だね、クー」
案の定ピンチになっているじゃないか。
『その声は、ハシュマールさん!?』
仕方ないね、ボクがそのユーベルコードの本当の使い方をご教授しよう。
確かにこのユーベルコードは掴まないと殴ることも投げることも出来ないと思われても仕方ない。
でも別に掴む必要はないんだよねこれが。ならなんで掴んで派生してたかって?プロレス的にそっちの方が派手で目立つからさ!
地獄の炎を最大限に発揮すれば、巨大な拳の一撃になる!もはや別のユーベルコードだねこれ。
そうだね、蒼紅滅腕崩撃なんてどうかな?
『いくよクー、合言葉は覚えてるかい?』
「うん、ハシュマールさん!」
「「ジャックポット!!」」
ぬるり、ぬめり、掴めども掴めず。
サイキックエナジーによって生み出された怪腕ではあったが、それは目的を果たせず、ただ虚しく空を切る。否、標的の体表を撫でていくだけと言うべきか。
「故郷を守る! と、ユーは力強く言っていたウッキーが、この程度ウッキー?」
それを嘲るように、敢えて身体で受け続けるのはエイプモンキー。
そして、それへと挑み続けるのはクトゥルティア・ドラグノフ(無垢なる月光・f14438)だ。
果たして、何度目かの力がクトゥルティアの目前で、エイプモンキーから逸れていくのを感じ取る。
「強敵登場。と思ってはいたけれど、ここまで通じないだなんてね」
冷たくも優しき蒼の色。そこから零れる汗一滴。
何を隠そう、彼女の備える技は相手を掴むことから全てが派生するのだ。
故に、それを為すこと出来ねば、全ては始まらない。
「ウッキッキ! ミーの身体に触れようとすれば、その瞬間だけ摩擦がなくなるッキー! つまり、ユーはもうミーには届かないウッキー!」
シンバル抱えた猿の玩具。まるでそれを思わせるかのように、エイプモンキーは手を叩いて囃し立てる。
だが、悔しいがそれは事実なのだ。
今のクトゥルティアでは、エイプモンキーに届く一撃を与えることは出来ない。
「そんな……あの人から授かったユーベルコードに、そんな弱点があったなんて」
――ど、どうすれば……。
逡巡が、迷いが、クトゥルティアの思考を支配し、その動きを止めてしまう。
それは諦観であったのか。
「もう諦めたウッキーか? なら、ユーの命もここまでだウッキー」
ゆっくりとした歩調で鋼の身体が迫ってくる。
それは処刑台への階段を上らされているかのような錯覚をクトゥルティアに与えていた。
その時――
「珍しく弱気だね、クー」
――力強い言葉と共に炎が伸び、クトゥルティアとエイプモンキーとの間を分かつ壁となる。
「その声は!?」
驚き、炎奔った先をクトゥルティアが見れば、そこには威風堂々たる紅。
軍服のコートと言うには優美さを備えたそれを身に纏い、そこにあったのはステラ・ハシュマール(炎血灼滅の死神・f00109)。
「ハシュマールさん、どうしてここに!?」
知人の登場に、クトゥルティアの瞳へ光が戻る。
「案の定、ピンチになっているじゃないか」
歩む姿は慌てず、騒がず。炎の熱にコートをはためかせながら、その身を蒼の傍らに。
それらを待っていたかのように、炎の壁が音を立てて消え去った。
「まあ、足止めぐらいにはなったか」
「ウキー! 援軍が来るなんて、想像の内だウッキー!」
煙の奥から現れるは無傷の身体。
ガラス越し、サングラス越しの視線を無遠慮に2人へと送りながら、エイプモンキーはそれすらもが創造の範囲内であったと嘯く。
だが、それが防がれるであろうことは、ステラにとっても予想の範囲内。なにも驚くには値しない事であった。だからこそ、その内面には一つの波風すら立ちはしない。
「クー。君にには伝えていなかったけれど、今こそ、そのユーベルコードの本当の使い方をここでご教授しよう」
クトゥルティアの用いたユーベルコード――月腕滅崩撃。それは、クトゥルティアがステラから学んだ技。ならば、それをステラが用いることが出来るは当然と言えるもの。そして、その扱いを熟知していることもまた。
サイキックエナジーが満ち、蠢くように怪腕が生じる。
「ウッキッキ! 何度やろうとも、誰がやろうとも、結果は同じだウッキーよ!」
ならば、それを打ち破り、再びの絶望を与えてやろうとでも言わんばかり。
それ故に、エイプモンキーはその足を止め、それが放たれるを待つのだ。
「確かに、このユーベルコードは掴まないと殴ることも、投げることも出来ない」
――そう、教えたからね。
紅に宿るは悪戯な光。それを見上げる蒼は、なら、どうすれば、と不思議な光。
サイキックエナジーがエイプモンキーを掴み損ね、逸れていく。
「でも、実は別に掴む必要はないんだよね、これが」
「ウッキー!?」
掴み損ねた腕が跳ねあがり、拳となって、エイプモンキーの身体を叩く。
摩擦がなければ殴打と言えども、逸れるのではないのか。否、芯を捉え、打ったならば!
「掴む必要性がなかったの!? なんで、それを?」
「なんでって、掴んでから派生した方が、プロレス的に派手で目立つからさ!」
悪びれもせずに言い放つステラのその姿。どこまでもステラはステラであった。
「――さあ、ボーっとしている暇はないぞ、クー。摩擦への対応は、今、見せただろう?」
「芯を捉える。うん、そうやって克服するんだね! そして、これは掴んでから派生する必要はない。なら!」
「そうだ! サイキックエナジーを最大限に発揮するんだ!」
まさかの一撃を受けたことに態勢を崩していたエイプモンキー。その眼前で、巨大なる力が編み上がっていく。
それは巨大なる拳であり、燃え盛る煉獄。過去の残骸屠る、必滅なる業。
最早、摩擦でどうにか出来るモノではなく、消火でどうにか出来うるモノなどではない!
「力が融合しているとでも言ウッキー!?」
幾ら数を増やそうとも、エイプモンキーは1人でしかない。
心合わせた者同士が織りなす力の増幅は、想像など出来なかったのだ。
――最早、別のユーベルコードだね、これ。
――なら、二人で命名しよう!
――そうだね、蒼紅滅腕崩撃なんてどうかな?
――うん、その名前で決定っ!
蒼と紅織り成す共演。新たなる業の誕生は、勝利でこそ彩られるもの。
「いくよ、クー。合言葉は覚えてるかい?」
「うん、ハシュマールさん!」
拳が、煉獄が、鋼の巨体に突き刺さる!
それは穿ち、融かし、過去の残骸を正しく塵芥へと変えていくもの。
「ジャックポット!!」
2人の声が唱和し、響いた後、そこには巨大な力が荒れ狂った痕のみが残されていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ガイ・レックウ
【SPD】で判定
想像し対処してくるんなら…度肝を抜くだけだ!!
【オーラ防御】で防御を固め、ユーベルコード【呪詛解放『霧時雨』】を発動。妖刀を自在に操り【2回攻撃】のスキルで連続して攻撃しながら相手を【情報収集】のスキルで観察。
回避運動を【見切り】と【戦闘知識】で読み、相手が対処し、回避したところを狙い【怪力】と【吹き飛ばし】のスキルを乗せたランスで複製した妖刀をはじいて攻撃の軌道を変えるぜ
防御は【武器受け】と【拠点防御】スキルで耐える!!
さらに【フェイント】と【残像】を織り交ぜた状態でかく乱し、アサルトウェポンの掃射を混ぜるぜ!!
もし、一本でも刺されば…そこに連続して射撃を撃ち込んでやらぁ!!
雨が降りしきる。
しかし、それはただの雨に非ず。それは呪詛纏う刃の雨。
「想像し、対処してくるんなら、度肝を抜くだけだ!!」
ガイ・レックウ(相克の戦士・f01997)が持つ妖刀――名をヴァジュラ。その炎は敵対するもののみならず、使い手の魂をも焼き焦がす程のもの。
だが、それをガイは歩んできた歴史が故に、耐え、振るうに至っているのだ。
そんなガイにのみ振るうを許された刃が数多。雨の如くと迫るのは、まさしく度肝を抜く光景であると言えるであろう。
「これは壮観だウッキー!」
エイプモンキーから漏れ出るのは称賛の声。
刃の煌きが、炎の輝きが、サングラス越しであっても色褪せぬ美しさを感じさせているのだ。
「ならば、そのまま朽ち果てろ!」
「――そうはいかないウッキー」
ガイの繰る数多の刃が踊り、エイプモンキーの魂を焦がさんとする。
だがしかし、それをただ許すは幹部としての名折れ。
ガイの気迫を否定するかのように、首を振り、『それ』を生み出した。
「な!?」
「見たところ、鞘にある間は呪詛の効果も発揮しないようだウッキー?」
生み出されたのはガイの腰元――ヴァジュラを納めていた鞘と同じもの。
それが数多と生み出され、迫る刃を、炎を、喰らうようにその身へと納めていくではないか。
後に残るのは雨上がりの後。呪詛の力封じられ、花の上に横たわる数多の刃達の姿。
ガイ自身、己の業に対してエイプモンキーが対処をしてくるであろうとは読んでいた。
だからこそ、それを越える算段も。
だがしかし、その読みが、相手がどう対処してくるかへの思考が、僅かと足らなかったのは確か。
そのための僅かな忘我が隙となってしまった。
「動揺してるウッキー?」
気付いた時には、鋼の巨体が踊り、その拳は目前。
身体が拳を受け止め、ガイの身体が宙を舞う。
だが、その手応えのなさに、エイプモンキーは思わずと首をかしげた。
「……まだ、ユーは抵抗するウッキーか」
「――当然だ」
宙舞う身体を制御し、地を削りながらも着地を見せたガイの瞳。そこは意志折れぬなど、ありえぬを示す。
重ねてきた経験というものは、時に本人の意識を越え、身体を動かすもの。
それは攻撃を受け止める直前、狙われると理解した部分へオーラを集めて硬め、自身の身体を後方へと飛ばし、衝撃を最小限にと留めるための行動。
反射的に身体がそのように動いていた。染み付いてきた戦いの知識が、経験が、生き抜くための力を今こそと発揮していたのだ。
だが、すべてを逃しえなかった衝撃の名残が、口元の端から零れた血の滴となって現る。
しかし、まだ止まれない、倒れられなどしない。
心が、魂が叫びをあげる。
「呪詛解放! 我が妖刀よ、縦横無尽にすべてを斬り伏せろ!」
鞘に包まれ、カタカタと鳴いていた刃達が命令を待っていた。
それは鞘に包まれたままであったが、確かに応え、その身を宙へと躍らせる。
「鞘に包まれたままで、何をするつもりだウッキー。最初に業を破られた時点で、ユーの負けだッキー!」
エイプモンキーの顔にあるのは困惑。
だが、そんなことなど、ガイには関係ないのだ。むしろ、困惑を覚えさせたということは、つまり、敵の想像力の上を行ったということに他ならない。
「オオォォォォォ!!」
鞘包まれた刃と共にガイが奔る。
「無駄だッキー! そんな鞘に包まれた刃だなんて!」
「無駄かどうかは――」
手にしたドラゴンランスが叩きつけられる。
「――俺が決める!」
エイプモンキーに? 否。鞘包まれた妖刀達に。
怪力宿す一撃に、鞘へ罅入る音が響く。そうなれば、後は雪崩の如く。
――光が、零れた。
それは刃の煌きであり、炎の輝き。
「そんな、力技で……ウッキー!?」
刃が雨と突き刺さる。燃え盛る。焦がし喰らう。
そこに駄目押しとばかりに叩き込まれた銃撃のリズム。
痛みを得こそはしたが、まごうことなき勝利が、ガイのその手には掴まれていた。
苦戦
🔵🔴🔴
トリテレイア・ゼロナイン
人々を護る騎士としてキマイラFの安寧の為、押し通らせて頂きます、エイプモンキー
貴方の想像力を超えてみせましょう
私のUCは格納銃器をパージしないと戦闘形態に移行できないという弱点があり、敵はパージするシステムに干渉する装置を作り実証してくるでしょうね
意気揚々と攻撃を仕掛ける敵に大盾を投げつけ●一瞬目潰し
その隙に、事前に●防具改造で格納銃器に●破壊工作を仕込んでいたものを起動させ、UC使用と同時に爆裂ボルトで無理矢理パージすることで形態変更を完了し反証とします
システム干渉を自身を●ハッキングすることで対抗しながら限界駆動で敵に接近。●武器受けで攻撃を受け流し、空いた手の●怪力の貫手で●カウンター
白銀なる鋼と黒鉄なる鋼の意志がぶつかり合う。
それは硬質な音を辺りへと轟かせ、物理的な衝撃として圧し、周囲にそれを伝えている。
「人々を護る騎士として、キマイラフューチャーの安寧の為、押し通らせて頂きます」
「キキッ! ミーを倒すつもりウッキーか? なら、ミーを越えてみせることウッキー!」
「無論、言われるまでもなく。貴方の想像力を越えてみせましょう」
緑の光が瞬いて、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)はその機能を十全に果たさんと己の身体に命令を下す。
それは確かな力となり、エイプモンキーの身体を圧し、弾き出した。
距離が生まれ、空白の時間が生まれる。
ならば、その隙逃すを良しとはする筈もない。
「格納銃器強制排除、リミット解除、超過駆動――」
それは、己の限界を超えるもの。トリテレイアが騎士たるを示す、己だけの道。
だが――
「――パージ不可? まさか!」
その道を阻む者がここにはあった。
それは仰々しい機械の塊。エイプモンキーの生み出した想像の産物。だが、それは確かにこの世に生まれ落ち、その効果を発揮していたのだ。
「ウッキー! どうやら、ミーの想像は当たったようだッキー!」
その効果とは他の機械に干渉し、その機能を制限するもの。言うなれば、ハッキング装置だ。
それがトリテレイアの機能を阻害し、視界をぐらりと揺らしていく。
エラー、エラー、エラー。
緑の光の奥、トリテレイアの視界が赤へと染まる。
足が止まり、力は抜け、身体は今にも倒れ伏さんと欲している。
「そのまま、そのまま寝てもいいウッキー」
チラつく視界の向こうで、猿が嗤う。
だが、膝は屈さぬとトリテレイアは己自身をハッキングし、その誇りを、矜持を貫くのだ。
「まったく、往生際が悪いウッキーね。なんでだッキー?」
待てども倒れ伏さぬトリテレイアに業を煮やし、エイプモンキーは花踏み散らしてトリテレイアの傍へと歩む。
その歩みは、最早己の勝利を疑ってなどはいないかのよう。
「――想像力が足りてませんね」
なんで。などと問う時点で、エイプモンキーの想像力はトリテレイアを理解するには程遠い。
それ故に、見落とすのだ。騎士を標榜する男の意地というものを!
「キ?」
何を言っているか分からない。と、目の前で間抜け顔を晒すその顔。
――嗚呼、その防護ガラスが邪魔ですね。
それへと目掛け、叩きつけるは己の誇り。数多の敵意を受け止め、友を、仲間を護り続けてきた、そして、護り続ける白銀の盾。
今はそれを武器として、トリテレイアは反撃の狼煙とするのだ。
突然の再起動に虚を突かれたはエイプモンキー。
だが、それを弾き、躱したのは他のオブリビオンとは一線を画す幹部としての誇りか。
しかし、迫る盾を弾くその一瞬、意識はトリテレイアから逸れ、視界は外れるを防ぐことは出来はしない。
――トリテレイアが爆炎に包まれ、パーツの一部がはじけ飛ぶ。
下手人はエイプモンキーか? 否。当人は突然の出来事に、己が想像の埒外の出来事に、困惑の色を深めるばかり。
ならば、それを為したのは――トリテレイア自身。
エイプモンキーがその答えに辿り着き、落ち着きを取り戻すより早く、爆炎の中から騎士が動いた。
その動きは十全を越え、身体に掛かる負荷で、先程のエラーとはまた異なるエラーが画面を染める。
だが、今はそれは無視すべき時だ。
再びにハッキングで不調訴える自分自身の身体を黙らせ、限界超えて駆動する身体から貫手が放たれる!
「ッギ!」
「……これが、私の騎士道です」
その貫手は間違いなく、エイプモンキーの芯を穿ち、貫き、身体の向こうへと突き抜けていた。
「まさか……自分の身体を爆発……させるなんて……ウッキー」
一か八かの賭けではあった。
トリテレイアは己の身体に仕込んだ爆裂ボルトを用い、無理矢理に銃器を分離。リミッター解除へと至るための道を切り拓いたのだ。
そして、その一か八かを掴んだ結果が、目前に。
「――言った筈です。貴方の想像力を越えてみせると」
――まったくもって、クレイジーだッキー。
エイプモンキーのそれは言葉とならず、風の中に溶け消えていく。想像の産物もまた。
残されたのは、リミッターを再起動させるトリテレイアのみ。
その手は掴んだ勝利を放さないかのように、突き出されたままであった。
成功
🔵🔵🔴
古高・花鳥
マニアック、とは違うけれど
わたしの信念はわたししか知り得ないのだから
今ここで、拘らせてもらいます
ずっと【月下抜刀流・花鳥一閃】を放ちます
直線的な軌道、足を止める構え。装置は障害物に加え立ち止まらせない仕掛けでしょう
装置の攻撃は「見切り」避けますが、わたしの技はきっと届かない
でも、それで良いの
ずっと同じ型。それを愚直に続ければ、次も同じと思い込む
......【居合染】
構えも動作も変えず、しかし鞘でなく左の肘から掌にかけて刀を滑らせます
飛び散る血が、一面を染めるように
痛みなんて些細なこと(「激痛耐性」)です
たとえ避けられても、染めた地面は後に続く方々を支えてくれる
わたしの思いはこの血染めに残すから
リズ・ルシーズ
連携、アドリブ歓迎だよ!
【SPD】
いくよ、ルシーズ!
【ルシーズ】で量産型Rシリーズを召喚して、敵を迎え撃つよ。
高速回避で、数の暴力から逃げるつもりかな?じゃあ、こっちは、最大火力で行くよ!
ルシーズたちを合体させると、そこには巨大な一人のルシーズが。
数で行くと思った、今回は力技で行くよ!
『ルシーズ自爆シーケンス承認、起動、爆破』
巨大ルシーズによる広範囲自爆攻撃にあわせて、ボクは遠くから狙撃だね!ルシーズが自爆して、残った鏡面体を利用して、全方位から攻撃だよ
花を散らして鳥は翔ぶ。
その動きはどこまでも愚直。ただ、己が道と定めたを一心に、真っ直ぐと駆けるのみ。
だが、その脚が十分な速度を乗せようとする、その直前。
「愚直すぎて、想像するまでもないウッキー」
防護ガラスのその向こう。鋼とそれに守られた中から、エイプモンキーが古高・花鳥(月下の夢見草・f01330)のそれを嗤う。
それへと呼応するかのように、現れ出でたのは槍衾の壁。
花鳥とエイプモンキーとの間を隔てるかのように出現したそれ。
流石に、それへと突っ込むだけの愚は犯さない――そう、エイプモンキーは想像を広げる。
しかし――
「わたしの信念は、わたししか知り得ない」
花鳥の脚は止まらない。1歩、1歩と踏み抜く度に、その身体は加速を帯びる。
「――ルシーズさん!」
「はいはい、任せて。いくよ、ルシーズ!」
己が信念貫く花鳥の声に応え、無数の自分と共に宙へ現れたのはリズ・ルシーズ(Re-Z・f11009)。
銀を揺らすその身体に、今は刻印浮かばせて、光を雨と降り注ぐ。
輝き放ち、無数とある姿はまるで神話の光景か。それは戦乙女の降臨を思わせる。
そんなリズ達が光を持って指し示すのは、レーザーによる槍衾の瓦解。それに伴う、進むべき道の示唆。
それがあると知っていたから、道を拓いてくれると信じていたから、だから花鳥は止まらなかったのだ。
速度は充分。跳んで避けるだけならば、追撃の動作見せるルシーズが瞬く間に撃墜させることだろう。
「――やぁっ!」
「攻撃承認。皆、よろしくねっ!」
月下に冴えるその一閃。それをフォローする数の暴力。
まさしく、エイプモンキーは袋の鼠。ただ、蹂躙されるを待つだけの獲物。
「キキッ、逃げ場がないと思ったウッキー?」
――その筈であった。
だが、花鳥の刃は空を斬り、囲むルシーズの網は虚しく空を捕らえる。
そこにあった筈のエイプモンキーの姿はどこにもない。言葉だけを残して、消えていたのだ。
――いったい、どこに?
誰もがその姿を探し、周囲を見渡し、その姿を発見する。
「ルシーズさん、後ろですっ!」
「っ! このっ!」
警告。振り返り、リズの認めた先には既に両の拳を組み、掲げたそれを振り下ろすエイプモンキーの姿。
辛うじて防御は間に合うも、姿勢の制御は最早間に合わない。
鋼叩きつけられ、地に叩きつけられ、意識は繋ぐが、すぐさまの起動はサイボーグとしての調整を受けたリズであろうと困難。
正確には、リズであったからこそ、その程度で済んでいたとも言える。
「数も、速度も、ミーの速さがあれば、ユー達では追い付けないウッキー!」
キッキッと嗤い、手を叩くエイプモンキーは満足気。
その黒鉄の背中から、排熱の蒸気が音を立てて流れ出る。
速さ。そう、速さだ。刃避け、網が完成しきるその前に、その場を脱せる程の加速装置。それが姿掻き消した要因。
黒鉄が降りてくる。地に伏す銀へ止めを刺そうと。
「させませんっ!」
だからこそ、それをさせじと花鳥は駆け、翔ぼうとするのだ。
だが、それも。
「もう、それも何度もと見飽きたッキー」
ガチリ、脚に喰い込む鋼の感触。
あっ。と零れた吐息は痛みによるものか、それとも、思うように踏み出せなかった脚によるものか。
痛みより先に熱が来た。それは自身の身体から零れる熱さ。そして、遅れて痛みが。
虎鋏。
見れば、道衣を越えて喰い込んだそれ。じわりと赤黒さが広がる。
これでは走れない、動けない。届かない。
動き止める2人目を見やり、エイプモンキーは胸中に更なる満足感を得る。
想像の通りに、考えた通りに事の運ぶ爽快感。
ならば、あとは動けぬ2人にとどめを刺すのみ。
まずは銀色から。そう拳を振り上げ、見据えた先のリズの瞳。だが、そこに怯えの色はない。それが少しだけ、エイプモンキーの癇に障った。
「どうして、諦めないッキー?」
「どうして、諦めないといけないの?」
動けぬ身体。召喚したルシーズ達に命令を伝達しようとも、それも満足に伝達できない。
だが、その瞳にはまだ負けぬと意志が渦巻いていた。
だからこその時間稼ぎ。
相手が言葉を投げかけてきたのなら、それを利用して、時を稼ぐのだ。
そうすれば――
「――お待たせしました」
仲間が駆けつけてくれるのだから。
エイプモンキーがその言葉の先に目を向ければ、そこには花鳥の姿。
だが、その姿は傷だらけで、血だらけで、それでも気高き乙女の姿。
「そんな、そんな姿で、なにをするつもりウッキー?」
リズが視線の端で見つめていた、虎鋏からの脱出。鞘と刃を歯の間に挟み込み、ルシーズが自己判断の下に手伝い、隙間を作っての無理矢理の脱出。
その代償として、脚の血は止まらない。走ることも、跳ぶことも、それでは出来まい。
だからこそ、エイプモンキーはやはり疑問を投げかける。その胸中に、自覚なく、知らずと不安を広げながら。
「――こうするんですよ」
――あとは、お願いしますね。
するり奔った無銘の刀。痛みにあげる苦悶の声は、その勇気ある決断と共にが呑み込んだ。
それは花鳥自身の身体を裂き、脚の血と合わせて周囲を染め上げる。
「ウッ、ウッキー!?」
突然の自傷行為。それに驚かぬ訳もなし。
虎鋏で相手の機動力、動きを止めた時点で、想像を止めていた。それがエイプモンキーの隙。
飛び散る血はリズにも届き、その熱さは新たなる熱さを引き起こす!
「ありがと。あとは私の役目だね」
想い込めて渡した、花鳥の命の滴。それは傷付き、倒れた者を癒す慈愛の。
「――承認、読込、再構築」
漲る力が全ての機能を瞬く間に取り戻していく。
十全、充足、十二分。 召喚したルシーズ達との繋がりも、今は完全に。
「――ボクはルシーズ、ボク達はルシーズ。ボク達の本質、見せてあげるよ!」
リズと繋がることで、再びに力を取り戻したルシーズ達が一斉に蜂起する!
「キキッ! 数で押すだけなら!」
そのままでは先の焼き直し。再びに加速装置を生み出し、態勢を整えるべく一端の退きを見せるエイプモンキーを逃がしてしまうだけ。
だからこそ、対策を講じるのだ。
リズ自身、数に対して高速での回避を試みるであろうことは予想していた。
先程は花鳥も居た故に、巻き込むことを考え出来なかった、その策。
だが、今ならば遠慮など要りはしない。
「数で行くと思った? 違うよ」
数多のルシーズが集まり、合体し、巨大な一と変じていく。
それが襲い掛かるのか? それでは高速に追い付けないのではないか。否。
『ルシーズ自爆シーケンス、承認』
――起動、爆破。
無機質な音声が外部に響き、膨れ上がる爆炎が空間を舐めていく。
リズ自身は花鳥を抱え、護り、自身と共に護り、衝撃と熱をやり過ごす。
当然、加速の最中であり、自爆など予想もしていなかったエイプモンキーには護りの術などあろう筈もなく。
「ウギィィィィッ!?」
それへとただなす術もなく呑み込まれるのみ。
「――今回は、力技だよ」
爆炎晴れた後には、傷だらけの、しかし、貴き勝利がそこにはあった。
苦戦
🔵🔵🔴🔴🔴🔴
タンケイ・オスマンサス
※くおんさんと連携
嘲笑…傲慢は身を滅ぼしますよ
弱い存在だからこそ成長し続けることが出来ると
私は大切な人から教わったんです
その油断、慢心。それがあなたの弱点です!
木の根を敵の周りを囲むように召喚
それはそれは太い根です
敵は恐らく炎で焼き尽くそうとしてくるでしょう
木ですから、炭化します
ですがそれは表面だけ。実は太い木は鉄よりも炎に強いんです
それに、ありったけの【火炎耐性】の魔力を込めた【属性攻撃】です
敵は慢心していますから、一見黒焦げなのを見て嘲笑うでしょう
その隙を見計らい、串刺しに
今ですくおんさん!…って、え!また自分の体食べるつもりですか!?
あ!ほんとに食べないんですね。じゃ回復いらないですね
佐藤・くおん
※たんけさんと連携
敵が燃やす炎を利用して肉を【料理】して食べる
【フードファイト・ワイルドモード】でパワーが上がる
肉が無くなったら確かにそれは弱点だけど…自分の体も肉だよね?つまり、弱点なし!
たんけさんの攻撃で串刺しにされているところに【捨て身の一撃】【鎧無視攻撃】を叩きつける!
「……え? 自分を食べるわけないから……いやいや、ジョークだって……あ、回復は欲しいなって!くおんさん攻撃当たってるから!すごい痛いんですよ!」
ぞわり動く花と木々の根。
まるで龍のようにとぐろを巻いて、ぐるりぐるりとエイプモンキーを取り囲む。
それを従えるのはタンケイ・オスマンサス(魅惑のシンフォニア・f08051)。金木犀の香りと共に、その姿はあった。
その瞳は油断なく、木の根の隙間から時折見える、黒鉄の姿を見据えている。
「嘲笑……傲慢は身を滅ぼしますよ」
それは複数に分身しつつも、1人1人として猟兵達に相対していることを言っているのか。
「含蓄ある言葉だッキー。それは、天使としての言葉ウッキーか? それとも、ユー自身のウッキー?」
「さて、どちらでしょう」
仄めかすような言葉も駆け引きの内。口元に指当て、零す声は凛と響いた魅力の声。
だが、タンケイ自身の胸中では、大切な人から教わった想いが息づいていた。
――弱い存在だからこそ、成長し続けることが出来る。
その想いがあるからこそ、油断とは無縁の佇まいを見せていたのだ。
「うーん。分からないッキー。ミーを持ってしても分からないから、まずはこの邪魔な木を除けてしまウッキー」
瞬間、とぐろ巻く木の根が轟と燃え盛る。
それは木の肌を焼き、焦がす焔の砲火。
木の根は黒ずみ、のたうち、はたりはたりと力なく、火を纏ったままに地へとその身を横たえる。
「っ……やはり、炎を使ってきますか」
「想像していたのに、それを使ったッキー? 焼かれないとでも思っていた、ユーの判断こそ傲慢だッキーね」
油断はなかった。炎を使ってくることも想定の範囲内。
今は傲慢と嘲笑われようとも、構いはしない。これも、織り込み済みなのだから。
パチリ、弾けた火の粉の名残が宙に溶け消える。
それに、ふわり混じるのは――焼けた肉の匂い。
――なぜ、ここで?
エイプモンキーが抱いたその疑問は、考えるまでもなく、巡らせた視界の先で解決する。
「お、いい感じに焼けたね」
木の根焼く炎を調理の火と代えて、そこには肉汁じゅうじゅう熱々の肉を手に持つ、佐藤・くおん(らぶ&ぴーす・f02218)のその姿。
串に通したそれは齧り付いて食べたら、如何ほどの上手さを口内に広げることだろうか。
兎耳を揺らし、くおんのお腹がグーっとなる。
――うん、美味しそうだ。
「ねえ、たんけさんも食べる?」
「いえ、私はいいので、早くそれを食べて下さい」
一応の確認を取りはするが、分かっていた返答がくおんへと。
そっかー。と返す声は戦いの場だと忘れてしまう程ののんびりさ。
がぶり。
くおんの齧り付いた肉串から、肉汁じわり。香ばしい香りも広がり、周囲のお腹に直撃していく。
惜しくはない。惜しくなどない。
断りはしたが、思ずと、ごくり唾を呑み込んだのは誰が責められようか。
だが、それをくおんが食べたことの意味が、すぐさまに発揮される。
一口食べれば力が倍に。二口食べれば存在感が増し。三口食べれば――。
「そこまで許す訳がないッキー!!」
まるで冗談のような光景に、思わずと見守ってしまっていたエイプモンキーも、くおんの変化を流石に放置は出来ぬと動き出す。
創造されたのは開口器。食すのであれば、口を閉じさせず、食す自体を封じれば良い。
ガチリと嵌ったそれは、如何な猟兵の手であろうとも外す叶わぬもの。
「ふぁっ! ひゃっふぇふふぇふふぇ!」
やってくれるね。食すと同時、語るをすら叶わぬくおんの口。
樹々は焼け落ち、くおんも肉の力を得られない。
「もう手はないウッキー?」
最早、八方塞がりか――そう、思ったのはエイプモンキーのみ。
ああ、それは慢心だ。油断だ。それこそが――
「――それこそが、あなたの弱点です!」
タンケイの張りある声に応え、燃え尽きた筈の木の根がぞろりと動き出す。
表面は黒く焼け焦げ、見るも無残な姿を晒すそれ。
だが、知っているだろうか。生木はその実、燃えにくく、太く大きな木はそれだけで芯にまで火を及ばせるには余程の火力がなければ難しい。ただ火を噴きつけただけでは、殺しきるなど出来ないのだ。
ましてや、タンケイが喚び出した木の根である。そこに炎対策をしない訳がない!
太い木の、元々の対火能力に加え、付与されたのは火炎に耐えうる力。
森の奥の隠れ里で自然を友としてきた知識。属性操るその手腕。タンケイが今迄を生きてきた時間の凝縮が、そこにはあった。
「ウギィッ!? こ、この程度でミーが……!」
木の根が鋼を穿ち貫き、その身を宙へと縫い留める。
「今です、くおんさん!」
「応さ!」
確かに響いた、くおんの声。それは僅かにくぐもってはいたが、明確な音として耳へと届く。
口から流れる血の滴。口内は噛砕いた開口器の部品によって、傷だらけ。
痛い、痛い。これではお肉だって美味しく頂けはしない。
そんな恨みつらみが籠った一撃は、我が身省みぬ一撃。
食べ物の恨みは恐ろしいとは誰が言ったか。
「や、やめ――」
刺し貫かれ、中空に掲げられたエイプモンキーに、それを避けうる手段はない。
「――これでも喰らって、くたばれ!」
その一撃の前には黒鉄の鎧など、あってなきに等しきもの。
くおんのドラゴンランスが、深々とエイプモンキーの心の臓へと突き立った。
戦い終わってひと時の静けさ。
他ではまだ戦いも続いているところはあるだろうが、ここではひとまず、だ。
「いてて、肉も食いそびれたし、いっそ、自分の身体でも……」
「え! また自分の体食べるつもりですか!?」
冗談交じりのくおんの言葉。それに、血滴る傷を癒そうと手を伸ばし駆けていたタンケイは、ギョっととして手を引っ込める。
『また』という言葉が、なにやら前科を臭わせていた。
「いやいや、ジョークだって」
冗談と笑うくおんの声に、頬っぺた膨らみ心配して損した、と天の御遣い様は御立腹。
あ、これはまずいかも。と、くおんは思うがもう遅い。
「じゃ、回復いらないですね!」
「いやいや、くおんさん攻撃当たってるし、口の中とかすごい痛いんですよ!」
ぷんすこ煙を噴き上げ、離れるタンケイ。それをくおんも急いで後追って。
互いに気を許しているからこそのやりとりがそこにはあった。
事態の原因である深奥への道はまだ遠い。
だが、束の間の勝利の余韻に浸るのも、悪くはないことだろう。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
フィーナ・ステラガーデン
「弱点?猿が何いってんのよ!ぶっとばしてやるわ!」
『深淵のブラックオニキス』を杖に取り付けた状態で参戦
爆発の弱点というと耐熱と爆風による耐衝撃だと思うので
ブラックオニキスを解放しオニキスを盾を投げると同時に
全力魔法、高速詠唱にてUC発動、爆風で盾を相手に飛ばす
もしくは砕き破片で攻撃を試みる
それに耐えうる防御力もかね揃えたものが創造されていると思うので
耐熱、対衝撃、防御力をかね揃えたものは総じて重い
UCのもう一つの効果である「地形を破壊する」で
破壊された足元にその重量を持って生き埋めとする
埋まり隙が出来れば防御できてない箇所狙いをもう一度爆破
(アレンジ、アドリブ、連携大歓迎)
「弱点? 猿が何いってんのよ!」
舌鋒鋭く、爆風迸る。言葉から次いだその動作は最早ノータイム。
だが、それはただの爆風のみではない。
フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)が持つ杖。その先端に今あるは、昏き深淵映し出すかのような宝石。
それが生み出すのは粗削りで、だが、どこか心惹かれるような、そんな印象を与える盾。それはまるで、当人の映し鏡のようにも。
普段であれば、盾としての特性上、それを護りとして使うのであろう。
だが、今回は相手の意表を突くべく、先の爆風と同時、それを吹き飛ばし、弾丸の如くとしていたのだ。
豪胆にして豪快な一撃。型破りとも言えるそれは、フィーナらしさに溢れるものであった
「問答無用は悪くないッキー。ミーが相手でなければウッキー!」
見敵必殺の一撃に対しての称賛。
しかし、そこにはまだ余裕というものが感じられる。
それも何故なら――エイプモンキーもまた、想像さえあれば、そう間を置かずに創造を行うことが出来るが故に。
何もない空間が揺らめき、次の瞬間、そこに顕れたのは正しく鉄壁。
熱が、オニキスの弾丸が、容赦なくとそれを叩く。その奥にあるエイプモンキーを呑み込まんと。
だが、重く、何物にも揺るがぬそれは壁となり、エイプモンキーを爆風から、散弾の嵐から、彼を守り抜くのだ。
「キキッ! 如何な攻撃であろうとも、ミーに届かなければ、問題なんてないウッキー!」
「なによ! 安全な檻の中から猿が自分は無敵だ。なんて、誇ったって、悔しくともないっての!」
重厚な鉄壁の向こう、そこから届く声を一刀両断とするフィーナ。
「キッキー! 負け犬の遠吠えなんて、怖くとも何ともないッキー!」
だが、エイプモンキーは自身の安全を確信しているが故に、それすらも歯牙に掛けはせず、嘲笑を向けるばかり。
フィーナの感情のバロメーターがあがっていく。
それはフィーナの思考をよりクリアに、より早く回転させていくもの。
自身の手札を確認した時、エイプモンキーの生み出した鉄壁を砕き、突破するものがない訳ではない。
だが、それをするには些かの溜めが必要となる。それ故に、腐っても幹部級であるそれを前にして、その時間は致命的。
他に何か方策は、と考える彼女の直感が叫ぶ。他にも手はある筈だ、と。
爆発。抉れた地面。敵は動かない。重さのある盾――様々な情報が、その紅の眼を通して脳へと繋がっていく。
そして――
「――よし、ぶっとばす!」
笑顔は本来攻撃的なものであると、どこの誰が言ったものか。
だがしかし、答えを得たフィーナの表情に浮かぶイイ笑顔は、確かにそれを感じさせるものであった。
――紅蓮が生まれた。
始まりは小さな火種。それは周囲の空気を、フィーナの魔力を、感情を喰らい、瞬く間に大きく、より大きく。
「キキッ! 多少、趣を変えたところで、ミーには届かないウッキー!」
その炎を前にしても、エイプモンキーの余裕は変わらない。
例え、それが鉄壁とぶつかったとしても、些かの影響もないと知っているからこそ。
そして、紅蓮は解き放たれる――エイプモンキーへ? 否。では、何処へ。
その答えは――
「ウッキー!?」
足元。踏みしめる地を抉り、砕くことこそが狙い。
そして、その狙いをエイプモンキーは身をもって知ることとなる。
崩落していく足場。浮遊感。落下。
巻き上がった土砂が雨となり、クレーターの底に落ちたエイプモンキーを埋めていく。
最早、鉄壁は鉄の棺桶にしかすぎなかった。
だから、それを消して、少しでもそこから逃げ出そうとするのは、当然の帰結。
そこに、金色がある。ということを一瞬でも忘れて。
「言ったわよね、ぶっとばすって!」
降り注ぐ土の向こう、赤熱したそれを従えるフィーナの姿。
ならば、その結末は。
「消し飛べえええええええええ!!」
――光が、熱が、エイプモンキーを包み込む。
それが収まった後には、焼け焦げ、煙をあげるその姿。ぐらり倒れ、クレーターの奥底へと消えていく。
「1人で入るには、立派過ぎる墓標よね!」
それがフィーナから、骸の海戻るエイプモンキーへの餞。
成功
🔵🔵🔴
夕凪・悠那
ふざけた見た目でふざけた能力だねこの猿
対抗手段を創造して無効化するなら、その方向性をこっちで誘導してやれば…
【英雄転身】
マニアックな猿なら当然知っているだろう純物理特化キャラの衣装に転身
キマイラフューチャーのゲームから選択したよ
原作だと物理攻撃以外できない脳筋性能だ
この場合、最も堅実かつ確実な回避方法は"物理無効化"装置の作成ってとこだろう
だからボクは自分自身のUCに[ハッキング]をかける
物理ステを魔法に改竄
これで物理しかできない脳筋の皮を被った魔法使いの出来上がりさ
反撃の通常攻撃を[見切り]、[カウンター]で魔法の[範囲攻撃]を叩き込む
賭けではあるけど、そう分の悪い賭けじゃないはずだ
拳と拳、脚と脚。肉と骨とがぶつかりあうような、殴打の音が世界を奏でる。
それを生み出した1人、夕凪・悠那(電脳魔・f08384)。普段のカジュアルな姿とはまた違う趣のものを今は纏っている。
それも何故なら、彼女の能力こそが所以。
英雄転身――己にゲームのキャラクターの衣装を纏うことにより、その能力を自身へと付与する力によるもの。
それが故、彼女の今の衣装は拳士のそれ。
動きを阻害しない、身体にフィットするかのような衣装。手足には敵を打倒するを追求した厳ついガントレットとグリーブ。
設定の上では自身の肉体を武器とする、純粋な肉体派の物理特化キャラのものであった。
普段の悠那であれば、派手な肉体戦などあまりしないであろうが、能力を用いた今は別。
代償とするものに頓着せず、その胡乱気な金の瞳は数合交えた敵を視るのだ。
「ふざけた見た目で、ふざけた能力だね。この猿」
「キキッ! 褒め言葉と受け取っておくッキー」
先程の音を奏でたもう1人、エイプモンキーの姿もまた他のそれとは若干の趣を変えていた。
その姿はまるで幽体を思わせるように朧げなそれ。
「キマイラフューチャーのゲームから、キャラを選択したのは間違いだったかな」
そう悠那が零すのは、先程の数合で有効打を与えられなかったからか。それとも、入れた筈の数発の手応えのなさにか。
エイプモンキーのその朧げな姿は伊達ではなく、正しく、幽霊のように打撃を無効化していたのだ。
それなのに、ぶつかり合うような音がするのは何故か。それは、本人が直接触れる瞬間にのみ、実体を持つというチートのような、物理へ頼る者には相性の悪い特性によるもの。
「間違いも間違い、大間違いだウッキー! それになにより、ミーの世界のゲームから選ぶこと自体がそもそもの油断だウッキー!」
物理に対するメタのようなキャラクター。
悠那を煽る目的もあったのだろう。敢えて、悠那の能力に合わせ、自身もキャラクターのデータを纏うことで戦うを選んだエイプモンキーは、その結果を嗤う。
「――だから、知ってるッキー。ユーの纏ったキャラのメタがこれだっていうのもウッキー!」
音もなく踏み込んだ脚。まるで滑るように、近付くエイプモンキーの姿。
拳が迫る、脚が迫る。その身を、魂を掴まんと、腕が伸びる。
縦横無尽と迫りくる猛攻。
触れるその一瞬を見切り、触れられるを活かして捌く悠那の手腕は、纏ったキャラクターの性能を十全に活かしている証拠か。
それに合わせ、カウンターと腕を取ろうとするもすり抜け、反撃を合わせようとするも捉えられない。
反撃の糸口は見つからず、増えるのは細やかな傷ばかり。
「……遊んでるね?」
「ゲームは遊んでこそだと思わないかウッキー?」
猫が鼠をいたぶる様にと、少しずつ少しずつ悠那の体力を削ぎ落していく。
それでも、と反撃する悠那の拳が、エイプモンキーの幽体化した身体へと突き刺さる。
「無駄無駄、なにをやっても勝ち目なんてな――」
「分の悪い賭けとは思ってなかったけれど、こうも嵌るなんてね」
突き入れられた拳から弾ける雷光。
あり得ざる魔力の奔流が、幽体化したエイプモンキーの身体を蹂躙し、声にならぬ絶叫が迸る!
「ゲームだって言うんなら、勝ち目もちゃんとないとね。そうでないなら、単なるクソゲーだよ」
ゲームキャラの能力を纏う以上、その能力はその範疇を出ない。本来であれば。
だが、何事にも裏技というのは存在する。それが公式に用意されたものにしろ、非公式に用意されたものにしろだ。
そして、電脳の世界を行使する魔術師たる悠那の手に掛かれば、ゲームデータの改竄など言うに及ばず。
見せていた苦戦は、最初からすべて演技。ここへと至るためのものでしかなかったのだ。
対策を取られるのであれば、その対策の方向性を誘導してやればいい。その上で、対策の対策に打ってでる。それを見事に成し遂げたが故の成果であった。
「チ……チートは、反則ッキー」
「どの口が言うんだか」
再びに電撃が奔り抜け、エイプモンキーのその口は、二度と開くことはなかった。
大成功
🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
ふむ……あの大仰な鎧、伊達ではないようですね
あらゆる攻撃に対してほぼ無敵となる【無敵城塞】
弱点としては機動力の低下……どころでなく、全く動けなくなること
封じるまでもなく、ただ解除を待ち、叩き潰せばいい案山子に等しい
【ダッシュ】、全力疾走
そして棒高跳びの要領で聖槍を用いて空高く【ジャンプ】
自力で動けなくなるならば、慣性と重力を利用し、私自身が無敵の弾丸と化せばいい
その大鎧ごと打ち貫きます!(鎧砕き)
光瞬き、穂先が躍る。
1つ、2つ、3つ……一息の中で繰り出された刺突の数は数多。
オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)にとっては、様子見を兼ねたそれ。
とは言え、様子見とは言っても凡百の相手であれば、それだけでも急所を穿ち、骸へと還すに十分なもの。
だが――
「ふむ。その大仰な鎧、伊達ではないようですね」
「そこらの怪人共とミーを同じに見てもらっては困るッキー」
黒鉄に刻まれたのは傷痕のみ。その奥に秘された身体には届くとは至らない。
改めて、目前に立つ敵――エイプモンキーがただならぬ敵であると理解する。
エイプモンキー自身も口では余裕を気取るが、その胸中において、黒鉄に傷刻んだオリヴィアの腕に警戒を覚えていた。
じり、と互いの距離を測る一拍の間。
――そして、激突。
黒鉄の巨体が動き、近付けまいと黄金が舞う。
オリヴィアの槍が細かく動き、その動きは1本が複数本に見える程。
それは、たった1本で形成された槍衾という矛盾を引き起こす。
だが、それを為しえるだけの技量が、オリヴィアにはあったのだ。
しかし、エイプモンキーもさるもの。黒鉄に傷増えるも構わず、その槍衾の中へと身体を躍らせる。
それは先程の一合の内、手数で押されるであれば致命傷に至らぬと判断したからこその。
口で言うには易いが、凶刃に身を晒して進むは難きこと。
「想像以上にやるウッキー!」
「そちらも、幹部を名乗るは伊達ではありませんか」
刃と鋼の応酬。だが、遂に黒鉄は黄金の嵐を突き抜け、オリヴィアを射程へと納めるに至るのだ。
巌が振ってくる。
正面から受けるは拙く、槍絡めて逸らすには少しばかり相手の方が速い。
「――ならば!」
ドンと地を突き、その身を宙に。棒高跳びの要領でその身を脅威から逃がす。
眼下で空を裂き、地に炸裂した鋼の拳が花撒き散らすを見た。そして、そこから迫る二撃目の存在も。
逃げ場はもうない。いや、1つだけ方策が。
それは己を要塞と化す、防御の御業。
集中し、身を固めんとしたその瞬間。その集中は霧散霧消となり果てる。
「何かしようとしたッキ?」
そこにあったのは、創造された精神感応装置。
それがオリヴィアの集中を乱し、防御への意識を削いだのだ。
拳が鍛えられた身体に突き刺さり、その身を吹き飛ばす。
地が弾み、空が回り、天と地の上下すらも分からなくなるほど。
攪拌された意識の向こうで猿が嗤う。
無敵要塞を使うは正しくとも、その弱点を攻撃へ転化する術が正しくとも、それを妨げる術への対策が少しばかり足りていなかった。
こほりと咳き込み、必死につなぐ意識の中、オリヴィアはそれを思う。
鋼の巨体がゆっくりと迫る。
死神の息遣いを感じたような気がした。
――だが、まだそちら側へ行くには早い。
「お、オォォ!」
震える脚を叱咤して、混濁する意識は無理矢理にまとめ上げる。
この程度の危機がなんだと言うのだ。
今迄、歩んできた戦の中で、危機のない時などなかった。いつだって、命懸けであったのだ。
身体の支えとしていた槍の柄握る手に力が戻る。
「――オォォォォォッ!」
腹の底から雄叫びをあげ、四肢に力を巡らせる。
鋼の巨体が警戒するように足を止め、死神の息遣いが遠のいた。
――足を止めましたね。警戒しましたね。
正しい。それはとても正しい。だが、オリヴィア・ローゼンタールという女傑を前に、それは間違いであった。
エイプモンキーは早々に、とどめを刺しに動くべきだったのだ。
女獅子の脚が地を蹴った。その動きは愚直なまでの直進。
だが、そこには確固たる意識を乗せて。
「悪足掻きだウッキー!」
黒鉄が迎撃するように動く。もう一撃でもそれを貰えば、オリヴィアとて最早動けぬであろう。
――死中に活。
地を蹴る脚はなお力強く、なお迅く。その身は最早銃弾の如く。
――激突。交差。
身体ごとぶつかったオリヴィアの槍は深々と黒鉄を穿ち、黒鉄の拳はオリヴィアの頭部横スレスレにて止まる。
境を分けたのは覚悟の差か。
死中においてなお更に1歩と踏み込んだオリヴィアのそれが、更なる加速を齎し、エイプモンキーの目測を見誤らせたのだ。
はらり消えていく黒鉄という支えをなくし、オリヴィアの身体がぐらつき倒れる。だが、そこには確かな生命の鼓動が残っている。
ギリギリの戦いを制したオリヴィアは大きく息を吐き出し、勝利を確かめるのであった。
苦戦
🔵🔴🔴
アレクシア・アークライト
さすがは幹部。
圧倒的なユーベルパワーね。
ユーベル=クロリアン値が半端じゃないわ。
でも、全てのものが活動を停止する絶対零度なら、その力も無意味。
(片手を向けて)受けてみなさい、永久の静寂を!
――とやれば、相手は高熱を発生させる装置を生み出し、相殺してくる筈。
その瞬間にベクトルを逆転させて加熱し、装置を暴走させて爆発させるわ。
(両手を向けて)100万ユーベル+100万ユーベルで200万ユーベル!!
貴方の装置が発生する熱が加わって、200万×2の400万ユーベルッ!!
そして、爆発による3倍の衝撃を加えれば、400万×3の、エイプモンキー、貴方を上回る1200万ユーベルよッ!!
纏め上げ、束ねた力場が黒鉄を絡めとる。
それは強く強くと、まるで握りつぶすかのように圧力をかけていく。
ギシリと軋む黒鉄の身体。だが、それ以上には至らない。
「これが念動力というモノウッキー?」
「大人しく潰されるなら、痛くはしないわよ」
黒鉄包まれたるはエイプモンキー。
それを圧し潰さんとするはアレクシア・アークライト(UDCエージェント・f11308)。
派手な動きこそないものの、そこでは静かな戦いが繰り広げられていた。
「だけれど、そろそろ窮屈になってきたウッキーね」
「なっ、ユーベル=クロリアン値があがっていく!?」
軋む黒鉄の音が止み、代わってアレクシアの力場が内から広がる力に軋みをあげる。
恐らく、ユーベル=クロリアン値とはオブリビオンを指すのであろうが、アレクシアの驚愕を示すかのように、その軋みは数値の上昇と共に強くなっていく。
そして――
「やはり、ミーは自由に動ける方がいいウッキー」
遂に束縛を力技で抜け出し、その身の自由を味わうエイプモンキー。
アレクシアとて一角の猟兵。その身に宿す念動力は種々多様であり、その力は抜き出たものがある。
だが、それを力技で抜け出すとは。
「――さすがは幹部。圧倒的なユーベルパワーね」
覚えたのは戦慄か、はたまた、強敵への武者震いか。
どちらにせよ、相手が一筋縄ではいかないことは、容易く理解できることであった。
そして、それはすぐに体感することとなる。
黒鉄の拳が唸りをあげて、アレクシアの華奢な身体を叩き潰さんと迫りくるのだ。
それを身に纏う力場で逸らし、直撃を避けるものの、一時的に散らされた力場がその威力を物語る。
「攻撃に、防御に、色々と使えるとは便利ウッキー」
「くっ、この威力、1000万ユーベルパワーは下らないってとこかしら」
傍目には何もないはずの空間を削り取ると言う不思議な感覚。それにエイプモンキーが興味を示す間、アレクシアの背中に流れるのは一滴の汗。
仮にアレクシアのユーベルパワーを100万とするならば、エイプモンキーのそれは優に10倍もの差があるということだ。
いくら楽観の気質を持つとは言っても、こればかりは楽観も出来ない。
故に、これを打破するには――
「でも、全てのものが活動を停止する絶対零度なら、その力も無意味!」
高らかに掲げた片手に宿すは、如何な生命をすらも凍てつかせる極限の。
念動力が分子の動きすらも掴み、止め、周囲を死の世界へと塗り替えていく。
その余波か、零れだす冷気だけで花々が凍え、散っていく様が見て取れた。
「――受けてみなさい、永久の静寂を!」
「キキッ! わざわざ特性の説明、御苦労だッキー!」
分かりやすい脅威。だからこそ、それへの対策を想像するもまた易し。
冷気に対するには高熱を。
黒鉄のその身に纏うかの如くと生み出されたのは、赤熱する装甲。
冷気の中にあってもなお熱を生み出すそれは、黒鉄の存在を凍てつかせない。
「このまま冷気ごと燃やし尽くしてやるッキー!」
絶対零度を封じ込める程の熱。それを熱線もかくやと射出されたならばどうなるか。最早、塵とて残るまい。
その想像が形となる。その直前――
「――そんなのだから、所詮は猿知恵だって言うのよ」
「キッ?」
響いた声はどこまでも辛辣。
先程までの仰々しい動作が嘘のよう。洗練された動作は冷気を瞬く間に散らし、代わって『熱』を生み出していた。
冷気を見せれば、それに対抗する手段として熱を思い浮かべる者は多いだろう。
だが、ここで1つの落とし穴があった。
アレクシアが操れるのは冷気だけではない。熱をすらも操る事が可能なのだ!
止まっていた分子が瞬く間に加速する。
「片手の100万ユーベル+もう一方の片手の100万ユーベルで200万ユーベル!!」
両手を掲げ、その熱を放射する。
「――貴方の装置が発生する熱が加わって、200万×2の400万ユーベルッ!!」
黒鉄纏う装置の熱が、放射された熱と相まって赤熱は白く白く。
「――そして、爆発による3倍の衝撃を加えれば、400万×3の!」
「ま、まさか、これが……熱暴走が狙いウッキー!?」
冷却装置を創造するより早く、臨界を迎え、白く輝く装置が燃える。
「――エイプモンキー、貴方を上回る1200万ユーベルよッ!!」
温度に下限はあるが、上限はない。
それを示すかのように更に更にと熱は高まり、プラズマとなり、輝きが黒鉄を音もなく呑み込んだ。
アレクシアの語る理論は謎ではあったが、だが、そこに証明されたものは紛れもない勝利。策謀と知恵と機転の勝利であった。
成功
🔵🔵🔴